説明

真空蒸着装置及び薄膜の形成方法

【課題】薄膜材料の利用効率が高く、かつ大面積の基板に均一な厚みの薄膜を成膜できる真空蒸着装置及び薄膜の形成方法を提供する。
【解決手段】
薄膜材料の蒸気を生成する蒸発源31〜36と、成膜対象物51が配置される真空槽11と、真空槽11内を真空排気する真空排気装置12と、蒸発源31〜36から蒸気が供給され、真空槽11内に蒸気を放出させる放出装置21とを有し、放出装置21を移動させながら成膜対象物51に蒸気を到達させ、成膜対象物51の表面に薄膜を形成する真空蒸着装置10aであって、蒸発源31〜36を放出装置21と一緒に移動させる移動装置15を有する真空蒸着装置10aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着装置及び薄膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、発光効率が高く、薄い発光装置を組み立てることができることから、近年では、表示装置や照明機器の用途に注目されている。有機薄膜の成膜には真空蒸着装置がよく用いられている。
【0003】
図9は従来の真空蒸着装置100の内部構成図である。
真空蒸着装置100は、薄膜材料の蒸気を生成する蒸発源133h、133dと、成膜対象物151が配置される真空槽111と、真空槽111内を真空排気する真空排気装置112とを有している。
【0004】
蒸発源133h、133dは、薄膜材料を収容する坩堝161h、161dと、坩堝161h、161d内の薄膜材料を加熱するヒーター162h、162dとを有している。ヒーター162h、162dにより坩堝161h、161d内の薄膜材料を加熱すると、薄膜材料の蒸気が生成されるようになっている。
蒸発源133h、133dは真空槽111内に配置されている。蒸発源133h、133dの上方には膜厚センサ118h、118dが配置されている。
【0005】
真空排気された真空槽111内で、成膜対象物151とマスク板152とを位置合わせした後、蒸発源133h、133dから薄膜材料の蒸気を放出させると、蒸気は成膜対象物151の表面のうちマスク板152の開口から露出する部分に到達して付着し、成膜対象物151の表面にマスク板152の開口と同じ形状の有機薄膜が形成される。
【0006】
上記従来の真空蒸着装置100では、蒸発源133h、133dが真空槽111内に静止しているため、大面積の成膜対象物151に対しては、均一な厚みの薄膜を形成することが難しいという問題があった。
【0007】
また、従来の真空蒸着装置100では、成膜対象物151を交換する間にも薄膜材料の蒸発が続くため、薄膜材料の利用効率が低く、また蒸気が真空槽111の壁面に付着してダストになりやすいという問題あった。
【0008】
さらに、坩堝161h、161dは真空槽111内に配置されているため、坩堝161h、161dに薄膜材料を充填するには真空槽111内の真空雰囲気を破って行う必要があり、生産効率が悪かった。また、薄膜材料と成膜対象物151との距離が短く、蒸発源133h、133d内で発生したダストが成膜対象物151に当たる確率が高かった。
加えて、坩堝161h、161dの容積が大きいため、薄膜材料が少ない場合には、蒸気の生成速度の調整が難しく、成膜が難しかった。
【0009】
特許文献1では、真空層内で蒸発源を水平移動させながら成膜する方法が開示されている。
特許文献1で開示された方法によると、成膜対象物に均一な厚みの薄膜を形成することができるが、従来の真空蒸着装置100における膜厚の均一性以外の課題を解決することはできなかった。
【0010】
また、特許文献1の方法では、蒸発源を水平移動させる構造から、一つの真空槽内には蒸発源を最大二つまでしか配置できず、一つの真空槽で最大二層までしか成膜できなかった。有機EL素子は二層より多い多数の層の薄膜を含むため、上記真空蒸着装置を用いた有機EL素子製造装置では真空槽の数を増やす必要があり、またRGB塗り分け式ディスプレイの製造装置の場合には、マスク板と成膜対象物との位置合わせ装置が二台以上必要になるのでコストが高いという不都合あった。
さらに、坩堝の容積が大きく、特にホストとドーパントの薄膜材料の共蒸着を行う場合には走査スパンが長いので、移動装置に高いコストがかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4149771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、薄膜材料の利用効率が高く、かつ大面積の基板に均一な厚みの薄膜を成膜できる真空蒸着装置及び薄膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、薄膜材料の蒸気を生成する蒸発源と、成膜対象物が配置される真空槽と、前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、前記蒸発源から前記蒸気が供給され、前記真空槽内に前記蒸気を放出させる放出装置と、を有し、前記放出装置を移動させながら前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に薄膜を形成する真空蒸着装置であって、前記蒸発源を前記放出装置と一緒に移動させる移動装置を有する真空蒸着装置である。
本発明は真空蒸着装置であって、一の前記放出装置には、前記蒸発源が複数個接続された真空蒸着装置である。
本発明は真空蒸着装置であって、前記真空槽内には、前記放出装置が複数個配置され、前記移動装置は、複数の前記放出装置を一緒に移動させるように構成された真空蒸着装置である。
本発明は真空蒸着装置であって、前記真空槽内には、前記放出装置が二個配置され、前記移動装置は、二個の前記放出装置を別々に移動させるように構成された真空蒸着装置である。
本発明は、蒸発源で薄膜材料の蒸気を生成し、前記蒸気を真空槽内に配置された放出装置に供給して、前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記放出装置を移動させながら、前記真空槽内に配置された成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、前記放出装置を移動させるときには、前記蒸発源を前記放出装置と一緒に移動させる薄膜の形成方法である。
本発明は薄膜の形成方法であって、前記蒸発源が複数個接続された前記放出装置を用いて、一の前記蒸発源から前記放出装置に薄膜材料の蒸気を供給して、前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記放出装置を複数個の前記蒸発源と一緒に移動させながら、前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に一の薄膜を形成した後、前記一の蒸発源から前記放出装置への前記蒸気の供給を停止し、別の前記蒸発源から前記放出装置に薄膜材料の蒸気を供給して、前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記放出装置を複数個の前記蒸発源と一緒に移動させながら、前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に別の薄膜を形成する薄膜の形成方法である。
本発明は薄膜の形成方法であって、前記放出装置を複数個用いて、複数の前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気をそれぞれ放出させ、複数の前記放出装置を一緒に移動させながら、複数の前記放出装置から放出された前記蒸気を前記成膜対象物に一緒に到達させ、前記成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法である。
本発明は薄膜の形成方法であって、前記放出装置を二個用いて、一の前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記一の放出装置を移動させながら、前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に一の薄膜を形成した後、前記一の放出装置からの前記蒸気の放出を停止し、別の前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記別の放出装置を移動させながら、前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に別の薄膜を形成する薄膜の形成方法である。
【発明の効果】
【0014】
薄膜材料の利用効率が高いため、材料のコストを低減できる。また一の真空槽内で複数層の成膜ができるので、成膜装置のコストを低減できる。大面積の基板に均一な膜厚の薄膜を成膜でき、有機EL表示装置の大型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一例の真空蒸着装置の平面図
【図2】本発明の第一例の真空蒸着装置の内部側面図
【図3】有機EL素子製造装置の内部構成図
【図4】本発明の第二例の真空蒸着装置の平面図
【図5】本発明の第三例の真空蒸着装置の平面図
【図6】本発明の第三例の真空蒸着装置の内部側面図
【図7】本発明の第四例の真空蒸着装置の平面図
【図8】本発明の第四例の真空蒸着装置の内部側面図
【図9】従来の真空蒸着装置の内部構成図
【図10】第一の膜厚センサの拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一例の真空蒸着装置の構造>
本発明の第一例の真空蒸着装置の構造を説明する。
図1は第一例の真空蒸着装置10aの平面図、図2は同内部側面図である。
【0017】
第一例の真空蒸着装置10aは、薄膜材料の蒸気を生成する蒸発源31、32、33h、33d、34h、34d、35h、35d、36(以下では31〜36と略す)と、成膜対象物51が配置される真空槽11と、真空槽11内を真空排気する真空排気装置12と、蒸発源31〜36から蒸気が供給され、真空槽11内に蒸気を放出させる放出装置21とを有している。
【0018】
真空排気装置12は真空槽11内に接続され、真空槽11内を真空排気できるように構成されている。
放出装置21は筒状の筐体であり、ここでは長手方向を水平面と平行に向けられた状態で真空槽11内に配置され、放出装置21の上方を向いた面には複数の放出孔22が設けられている。各放出孔22は、放出装置21の長手方向に沿って一列に並んで配置されている。
本実施例では、水平面に平行で、放出装置21の長手方向に対して垂直な一の方向を移動方向と呼ぶ。符号5は移動方向を示している。
【0019】
第一例の真空蒸着装置10aは、第一、第二の配管251、252を有している。第一、第二の配管251、252は、直線状に形成され、移動方向5と平行に向けられた状態で、ベローズ14を用いて真空槽11の壁面に気密に挿入され、第一、第二の配管251、252の一端は放出装置21の一端にそれぞれ接続されている。
【0020】
各蒸発源31〜36は、それぞれ薄膜材料を収容する坩堝と、坩堝内の薄膜材料を加熱するヒーターとを有している。ヒーターにより坩堝内の薄膜材料を加熱すると、薄膜材料の蒸気が生成されるようになっている。
【0021】
本実施例では、各蒸発源31〜36は真空槽11の外側に配置され、ここでは符号31、32、33h、34h、35hの蒸発源は、開閉可能な符号41、42、43h、44h、45hのバルブを介して第一の配管251に接続され、符号33d、34d、35d、36の蒸発源は、開閉可能な符号43d、44d、45d、46のバルブを介して第二の配管252に接続されている。
【0022】
符号41、42、43h、44h、45hのバルブが開状態のときには、符号31、32、33h、34h、35hの蒸発源で生成された蒸気は第一の配管251を通って放出装置21内に供給され、閉状態のときには、生成された蒸気は遮断されて放出装置21内に供給されないようになっている。また、符号43d、44d、45d、46のバルブが開状態のときには、符号33d、34d、35d、36の蒸発源で生成された蒸気は第二の配管252を通って放出装置21内に供給され、閉状態のときには、生成された蒸気は遮断されて放出装置21内に供給されないようになっている。
【0023】
第一、第二の配管251、252の放出装置21との接続部分には第一、第二の逆流防止孔261、262が設けられ、第一、第二の配管251、252のうち一方の配管から放出装置21に供給された蒸気が他方の配管内に逆流して汚染することが防止されている。
放出装置21内に供給された蒸気は放出孔22から真空槽11内に放出される。
【0024】
本発明第一例の真空蒸着装置10aは、蒸発源31〜36を放出装置21と一緒に同一方向に同一速度で移動させる移動装置15を有している。
本実施例では移動装置15はモーターであり、蒸発源31〜36に接続され、動力を蒸発源31〜36に伝達して、蒸発源31〜36を第一、第二の配管251、252と放出装置21と一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させるように構成されている。
【0025】
真空槽11内の放出孔22と対面可能な位置に板状の成膜対象物51を水平に配置した状態で、移動装置15によって放出装置21を移動方向5に沿って移動させると、放出装置21は成膜対象物51の表面と平行な一の平面内を移動し、蒸発源31〜36は成膜対象物51の表面と平行な他の平面内を、放出装置21と同じ方向に同じ速度で移動するようになっている。
【0026】
移動装置15によって放出装置21を一定の速度で移動させながら、放出孔22から蒸気を放出させると、蒸気は成膜対象物51に到達して、成膜対象物51の表面に均一な膜厚の薄膜が形成されるようになっている。
【0027】
第一、第二の配管251、252はベローズ14を用いて真空槽11内に気密に挿入されており、移動装置15により第一、第二の配管251、252を移動させても、挿入箇所から真空槽11内に空気が漏れないようになっている。
【0028】
第一例の真空蒸着装置10aは、防着板17と、第一、第二の膜厚センサ181、182とを有している。
本実施例では第一、第二の配管251、252の上方を向いた部分には第一、第二の測定用ノズル271、272が設けられ、第一、第二の配管251、252内を移動する蒸気の一部は第一、第二の測定用ノズル271、272から放出されるようになっている。
【0029】
防着板17は蒸気を遮蔽する材質により帯状に形成され、長手方向を移動方向5と平行に向けられた状態で、第一、第二の配管251、252の上方に水平に配置され、第一、第二の測定用ノズル271、272は防着板17と対面されている。移動装置15により第一、第二の配管251、252を移動させても、第一、第二の測定用ノズル271、272と防着板17との対面は維持され、第一、第二の測定用ノズル271、272から放出された蒸気は防着板17で遮蔽され、真空槽11の壁面や成膜対象物51に付着しないようになっている。
【0030】
本実施例では、真空槽11内に配置された成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に放出装置21を配置したときに、防着板17のうち第一、第二の測定用ノズル271、272と対面する位置には開口が設けられている。
【0031】
第一、第二の膜厚センサ181、182の構造は互いに同じであり、第一の膜厚センサ181で代表して説明する。
図10は第一の膜厚センサ181の拡大側面図である。
【0032】
第一の膜厚センサ181は、ここでは複数の水晶振動子19aと、筒形状の筐体19bと、回転装置19cと、制御装置19dとを有している。
筐体19bは、中心軸線を水平面と平行に向けられた状態で、防着板17の開口の真上に配置され、各水晶振動子19aは、筐体19bの外周側面にそれぞれ固定されている。回転装置19cはモーターであり、筐体19bに接続され、動力を筐体19bに伝達して、筐体19bをその中心軸線を中心として回転できるように構成されている。回転装置19cにより筐体19bを中心軸線を中心に回転させると、各水晶振動子19aは防着板17の開口から一つずつ露出するようになっている。
【0033】
制御装置19dは、水晶振動子19aに蒸気が付着すると、付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて蒸発源に制御信号を送信し、蒸発源での薄膜材料の加熱温度を制御するように構成されている。
【0034】
<有機EL素子製造装置の構造>
本発明の第一例の真空蒸着装置10aを用いた有機EL素子製造装置の構造を説明する。
図3は有機EL素子製造装置60の内部構成図を示している。
有機EL素子製造装置60は、上述の第一例の真空蒸着装置10aと、搬送室66と、搬入出室61と、基板前処理室62と、電極成膜室63と、封止室64と、マスク室65とを有している。
【0035】
第一例の真空蒸着装置10aの真空槽11と、搬入出室61と、基板前処理室62と、電極成膜室63と、封止室64と、マスク室65とは、搬送室66にそれぞれ気密に接続されている。
搬入出室61と、基板前処理室62と、電極成膜室63と、封止室64と、マスク室65とは、搬送室66にはそれぞれ不図示の真空排気装置が接続され、各室61〜66内を真空排気できるように構成されている。
【0036】
搬送室66内には、搬送装置68が配置されている。搬送装置68は、成膜対象物51とマスク板52とを、大気に曝さずに、搬送室66を経由して、各室61〜65内と第一例の真空蒸着装置10aの真空槽11内に搬入・搬出できるように構成されている。
【0037】
<有機EL素子の製造方法>
上述の有機EL素子製造装置60を用いた有機EL素子の製造方法を説明する。
【0038】
(基板搬入工程)
各室61〜66内と第一例の真空蒸着装置10aの真空槽11内をそれぞれ真空排気する。以後真空排気を継続して各室61〜66内と真空槽11内の真空雰囲気を維持する。
搬入出室61内の真空雰囲気を維持しながら、搬入出室61内に成膜対象物51を搬入する。本実施例では成膜対象物51には表面にあらかじめ陽極電極が形成された基板を用いる。
【0039】
(基板前処理工程)
搬送装置68により、成膜対象物51を、搬入出室61内から基板前処理室62内に移動させる。
基板前処理室62は、内部に酸素などのプラズマを生成できるように構成されている。
基板前処理室62内にプラズマを生成し、成膜対象物51の表面にラジカルを接触させて、成膜対象物51の陽極電極の表面に付着していたゴミ等を除去する。
【0040】
(成膜準備工程)
次いで、搬送装置68により、成膜対象物51を、基板前処理室62内から第一例の真空蒸着装置10aの真空槽11内に移動させる。
【0041】
図1、2を参照し、符号31の蒸発源にホール注入層の薄膜材料を配置し、符号32の蒸発源にホール輸送層の薄膜材料を配置し、符号33h、33dの蒸発源に赤色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号34h、34dの蒸発源に緑色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号35h、35dの蒸発源に青色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号36の蒸発源に電子輸送層の薄膜材料を配置しておく。
すなわち、ホストの薄膜材料は第一の配管251に接続された蒸発源に配置し、ドーパントの薄膜材料は第二の配管252に接続された蒸発源に配置しておく。
各バルブ41、42、43h、43d、44h、44d、45h、45d、46(以下では41〜46と略す)を閉状態にしておく。
【0042】
各蒸発源31〜36で薄膜材料を加熱して蒸気を発生させる。各蒸発源31〜36はそれぞれヒーターを有し、複数種類の薄膜材料を互いに異なる温度に加熱することができるので、各種の薄膜材料の蒸発温度や蒸発速度に合わせることができる。また同一種類の薄膜材料を複数の蒸発源に充填する場合には、一部の薄膜材料が長時間高温に加熱されて変質することが防止される。
【0043】
(ホール注入層成膜工程)
移動装置15により、放出装置21と蒸発源31〜36を一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させて、放出装置21を成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に移動させ、静止させる。このとき、第一、第二の測定用ノズル271、272は第一、第二の膜厚センサ181、182の水晶振動子とそれぞれ対面する。
【0044】
符号41のバルブを開状態にする。符号31の蒸発源で生成されたホール注入層の薄膜材料の蒸気は第一の配管251を通って放出装置21に供給され、放出孔22から放出される。放出装置21は成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に配置されており、放出孔22から放出された蒸気は成膜対象物51には到達しない。
【0045】
第一の測定用ノズル271から放出された蒸気は第一の膜厚センサ181の水晶振動子に到達して付着する。第一の膜厚センサ181の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて符号31の蒸発源での薄膜材料の加熱温度を制御する。
【0046】
移動装置15により、放出装置21と蒸発源31〜36とを一緒に、移動方向5に沿って一の方向(ここでは始点側から終点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、放出装置21を成膜対象物51の下方を通過させ、成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも終点側に移動させる。次いで、放出装置21と蒸発源31〜36とを一緒に移動方向5に沿って前記一の方向とは逆方向(ここでは終点側から始点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、放出装置21を成膜対象物51の下方を再び通過させ、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に移動させ、静止させる。
【0047】
放出装置21が成膜対象物51の下方を通過する間に、放出孔22から放出された蒸気は成膜対象物51の表面に到達して付着し、成膜対象物51の陽極電極の表面にホール注入層が形成される。
ホール注入層を形成した後、符号41のバルブを閉状態にして、放出装置21への蒸気の供給を停止する。
【0048】
(ホール輸送層成膜工程)
第一の膜厚センサ181の筐体を回転させて、別の水晶振動子を防着板17の開口から露出させる。このようにして、第一の膜厚センサ181に異なる種類の薄膜材料の蒸気が入射しても付着膜の膜厚を正確に測定できる。
【0049】
符号42のバルブを開状態にして、符号32の蒸発源で生成されたホール輸送層の薄膜材料の蒸気を第一の配管251を通って放出装置21内に供給し、放出孔22から放出させる。ホール注入層の成膜工程と同様にして、成膜対象物51のホール注入層の表面にホール輸送層を形成する。
ホール輸送層を形成した後、符号42のバルブを閉状態にして、放出装置21への蒸気の供給を停止する。
【0050】
(赤色発光層成膜工程)
図3を参照し、マスク室65内には、複数枚のマスク板52が配置されている。搬送装置68により、マスク室65からマスク板52を取り出して第一例の真空蒸着装置10aの真空槽11内に搬入する。
【0051】
図1、2を参照し、第一例の真空蒸着装置10aは成膜対象物51とマスク板52とを位置合わせする位置合わせ装置55を有している。
成膜対象物51のホール輸送層の表面に、赤色、緑色、青色発光層を成膜すべき成膜領域をあらかじめ定めておく。
【0052】
位置合わせ装置55により、成膜対象物51の表面の赤色発光層の成膜領域が、マスク板52の開口と重なるように位置合わせし、その相対位置関係を維持したまま成膜対象物51とマスク板52とを貼り合わせる。
第一の膜厚センサ181の筐体を回転させて、別の水晶振動子を防着板17の開口から露出させる。
【0053】
符号43h、43dのバルブを開状態にする。符号33h、33dの蒸発源で生成された赤色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料の蒸気は第一、第二の配管251、252をそれぞれ通って放出装置21に供給され、放出装置21内で混合されて、放出孔22から放出される。
放出装置21は成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に配置されており、放出孔22から放出された蒸気は成膜対象物51には到達しない。
【0054】
第一、第二の測定用ノズル271、272から放出された蒸気は第一、第二の膜厚センサ181、182の水晶振動子にそれぞれ到達して付着する。第一、第二の膜厚センサ181、182の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて符号33h、33dの蒸発源での薄膜材料の加熱温度をそれぞれ制御する。
【0055】
移動装置15により、放出装置21と蒸発源31〜36とを一緒に、移動方向5に沿って一の方向(ここでは始点側から終点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、放出装置21を成膜対象物51の下方を通過させ、成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも終点側に移動させる。次いで、放出装置21と蒸発源31〜36とを一緒に移動方向5に沿って前記一の方向とは逆方向(ここでは終点側から始点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、放出装置21を成膜対象物51の下方を再び通過させ、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に移動させ、静止させる。
【0056】
放出装置21が成膜対象物51の下方を通過する間に、放出孔22から放出された蒸気は成膜対象物51の表面のうち、マスク板52の開口から露出する赤色発光層の成膜領域に到達して付着し、赤色発光層の成膜領域に赤色発光層が形成される。
赤色発光層を形成した後、符号43h、43dのバルブを閉状態にして、放出装置21への蒸気の供給を停止する。
【0057】
(緑色発光層成膜工程)
位置合わせ装置55により、成膜対象物51とマスク板52とを分離する。次いで、成膜対象物51の表面の緑色発光層の成膜領域が、マスク板52の開口と重なるように位置合わせし、その位置関係を維持したまま成膜対象物51とマスク板52とを貼り合わせる。
第一、第二の膜厚センサ181、182の筐体を回転させて、別の水晶振動子を防着板17の開口からそれぞれ露出させる。
【0058】
符号44h、44dのバルブを開状態にして、符号34h、34dの蒸発源で生成された緑色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料の蒸気を第一、第二の配管251、252をそれぞれ通って放出装置21に供給して、放出装置21内で混合した蒸気を放出孔22から放出させる。赤色発光層成膜工程と同様にして、成膜対象物51の表面の緑色発光層の成膜領域に緑色発光層を形成する。
緑色発光層を形成した後、符号44h、44dのバルブを閉状態にして、放出装置21への蒸気の供給を停止する。
【0059】
(青色発光層成膜工程)
位置合わせ装置55により、成膜対象物51とマスク板52とを分離する。次いで、成膜対象物51の表面の青色発光層の成膜領域が、マスク板52の開口と重なるように位置合わせし、その位置関係を維持したまま成膜対象物51とマスク板52とを貼り合わせる。
第一、第二の膜厚センサ181、182の筐体を回転させて、別の水晶振動子を防着板17の開口からそれぞれ露出させる。
【0060】
符号45h、45dのバルブを開状態にして、符号35h、35dの蒸発源で生成された青色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料の蒸気を第一、第二の配管251、252をそれぞれ通って放出装置21に供給して、放出装置21内で混合した蒸気を放出孔22から放出させる。赤色発光層成膜工程と同様にして、成膜対象物51の表面の青色発光層の成膜領域に青色発光層を形成する。
【0061】
青色発光層を形成した後、符号45h、45dのバルブを閉状態にして、放出装置21への蒸気の供給を停止する。位置合わせ装置55により、成膜対象物51とマスク板52とを分離する。
図3を参照し、搬送装置68により、第一例の真空蒸着装置10aの真空槽11からマスク板52を取り出してマスク室65内に収納する。
【0062】
(電子輸送層成膜工程)
図1、2を参照し、第二の膜厚センサ182の筐体を回転させて、別の水晶振動子を防着板17の開口から露出させる。
【0063】
符号46のバルブを開状態にして、符号36の蒸発源で生成された電子輸送層の薄膜材料の蒸気を第二の配管252を通って放出装置21内に供給し、放出孔22から放出させる。ホール注入層の成膜工程と同様にして、成膜対象物51の赤、緑、青色発光層の表面に電子輸送層を形成する。
電子輸送層を形成した後、符号46のバルブを閉状態にして、放出装置21への蒸気の供給を停止する。
【0064】
(陰極電極成膜工程)
図3を参照し、搬送装置68により、成膜対象物51を、第一例の真空蒸着装置10aの真空槽11内から電極成膜室63内に移動させる。
【0065】
電極成膜室63は、内部にアルミなどの電極材料の蒸気を生成できるように構成されている。
電極成膜室63内に電極材料の蒸気を生成し、成膜対象物51の表面に電極材料の蒸気を到達させて、成膜対象物51の電子輸送層の表面に電極材料の薄膜から成る陰極電極を形成する。
【0066】
(封止工程)
搬送装置68により、成膜対象物51を、電極成膜室63内から封止室64内に移動させる。
【0067】
封止室64は、内部に封止材料ガスを導入できるように構成されている。本実施例では封止材料ガスにはSiH4ガスとNH3ガスが用いられる。
封止室64内に封止材料ガスを導入し、成膜対象物51の表面で反応させて、成膜対象物51の陰極電極の表面にSiNxの薄膜である封止膜を形成する。
【0068】
本実施例では封止膜としてSiNxの薄膜を形成したが、封止膜はSiNxの薄膜に限定されず、SiNxとは異なる緻密な無機物の薄膜、又は無機物の薄膜と有機高分子の薄膜とが交互に積層された構造の積層膜を形成してもよい。
【0069】
(基板搬出工程)
搬送装置68により、成膜対象物51を、封止室64内から搬入出室61内に移動させる。搬入出室61内の真空雰囲気を維持しながら、成膜対象物51を搬入出室61から搬出して、後工程に引き渡す。
このようにして、有機EL素子が形成される。
【0070】
本発明の第一例の真空蒸着装置10aによると、一つの真空槽11内で三層以上の複数の薄膜を成膜することができ、従来よりも有機EL素子製造装置60がコンパクトになり、有機EL素子製造装置60のコストを低減できる。また、薄膜にゴミや水分が混入して汚染されることを避けることができる。さらに、一台の位置合わせ装置55で赤色発光層成膜工程〜青色発光層成膜工程の位置合わせを行うことができるので、位置合わせ装置55に要するコストを従来より低減できる。
またバルブ41〜46の開閉により蒸気の放出を制御できるので、薄膜材料の利用効率が高く、また蒸気が真空槽11の壁面に付着してダストが発生することを防止できる。
【0071】
<第二例の真空蒸着装置の構造>
本発明の第二例の真空蒸着装置の構造を説明する。
図4は第二例の真空蒸着装置10bの平面図である。第二例の真空蒸着装置10bのうち、第一例の真空蒸着装置10aと同じ構造の部分には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0072】
第二例の真空蒸着装置10bでは、第一例の真空蒸着装置10aの放出装置21の代わりに、第一、第二の放出装置211、212を有している。
第一、第二の放出装置211、212の構造は第一例の真空蒸着装置10aの放出装置21と同じであり、説明を省略する。第一、第二の放出装置211、212の放出孔を第一、第二の放出孔と呼び、符号221、222を付して示す。第一、第二の放出装置211、212は、真空槽11内で、長手方向を互いに平行に向けられて、互いに同じ高さに配置されている。
【0073】
本実施例では、水平面に平行で、第一、第二の放出装置211、212の長手方向に対して垂直な方向を移動方向と呼ぶ。符号5は移動方向を示している。
第一、第二の配管251、252は、第一、第二の放出装置211、212にそれぞれ接続されている。
【0074】
移動装置15は、動力を蒸発源31〜36に伝達して、蒸発源31〜36を第一、第二の配管251、252と第一、第二の放出装置211、212と一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させるように構成されている。
【0075】
第二例の真空蒸着装置10bは、第一例の真空蒸着装置10aの防着板17の代わりに防着板57を有しており、第一例の真空蒸着装置10aの第一、第二の膜厚センサ181、182の代わりに、第一、第二の膜厚センサ581、582を有している。
【0076】
防着板57は蒸気を遮蔽する材質により帯状に形成され、長手方向を第一、第二の放出装置211、212の長手方向と平行に向けられた状態で、ここでは真空槽11内に配置された成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に、第一、第二の放出孔221、222より上方に水平に配置されている。
【0077】
第一、第二の放出装置211、212を成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に配置したときに、第一、第二の放出孔221、222は防着板57と対面され、第一、第二の放出孔221、222から放出された蒸気は防着板57で遮蔽され、真空槽11の壁面や成膜対象物51に付着しないようになっている。
第一、第二の膜厚センサ581、582の構造は、第一例の真空蒸着装置10aの第一、第二の膜厚センサ181、182と同じであり、説明を省略する。
【0078】
第一、第二の膜厚センサ581、582の筐体は、防着板57の上方に、移動方向5に沿って互いに離間して配置されている。防着板57のうち第一、第二の膜厚センサ581、582の筐体の真下位置には開口が設けられ、第一、第二の膜厚センサ581、582の水晶振動子は、防着板57の開口からそれぞれ一つずつ露出されている。
【0079】
第一、第二の放出装置211、212を成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に配置すると、第一、第二の膜厚センサ581、582の水晶振動子は第一、第二の放出孔221、222とそれぞれ対面するようになっている。
【0080】
第二例の真空蒸着装置10bでは、第一例の真空蒸着装置10aとは異なり、第一、第二の逆流防止孔261、262と第一、第二の測定用ノズル271、272は不要であり、省略できる。
第二例の真空蒸着装置10bは上述の有機EL素子製造装置60において第一例の真空蒸着装置10aの代わりに用いることができる。
【0081】
第二例の真空蒸着装置10bを用いた有機EL素子の製造方法は、第一例の真空蒸着装置10aを用いた有機EL素子の製造方法と比べて、ホール注入層成膜工程〜電子輸送層成膜工程における薄膜材料の加熱温度の制御工程以外は同様であり、説明を省略する。
ホール注入層成膜工程〜電子輸送層成膜工程における薄膜材料の加熱温度の制御工程は互いに同様であり、ホール注入層成膜工程で代表して説明する。
【0082】
(ホール注入層成膜工程)
移動装置15により、第一、第二の放出装置211、212と蒸発源31〜36を一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させて、第一、第二の放出装置211、212を成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に移動させ、静止させる。このとき、第一、第二の放出孔221、222は第一、第二の膜厚センサ581、582の水晶振動子とそれぞれ対面する。
【0083】
符号41のバルブを開状態にする。符号31の蒸発源で生成されたホール注入層の薄膜材料の蒸気は第一の配管251を通って第一の放出装置211に供給され、第一の放出孔221から放出される。第一の放出孔221から放出された蒸気は防着板57で遮蔽され、成膜対象物51には到達しない。
【0084】
第一の放出孔221から放出された蒸気の一部は防着板57の開口から露出する第一の膜厚センサ581の水晶振動子に到達して付着する。
第一の膜厚センサ581の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて符号31の蒸発源での薄膜材料の加熱温度を制御する。
【0085】
移動装置15により、第一、第二の放出装置211、212と蒸発源31〜36とを一緒に、移動方向5に沿って一の方向(ここでは始点側から終点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、第一、第二の放出装置211、212を成膜対象物51の下方を通過させ、成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも終点側に移動させる。次いで、第一、第二の放出装置211、212と蒸発源31〜36とを一緒に移動方向5に沿って前記一の方向とは逆方向(ここでは終点側から始点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、第一、第二の放出装置211、212を成膜対象物51の下方を再び通過させ、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に移動させ、静止させる。
【0086】
第一、第二の放出装置211、212が成膜対象物51の下方を通過する間に、第一、第二の放出孔221、222から放出された蒸気は成膜対象物51の表面に到達して付着し、成膜対象物51の陽極電極の表面にホール注入層が形成される。
ホール注入層を形成した後、符号41のバルブを閉状態にして、第一、第二の放出装置211、212への蒸気の供給を停止する。
【0087】
第二例の真空蒸着装置10bを用いた有機EL素子の製造方法では、第一例の真空蒸着装置10aを用いた有機EL素子の製造方法とは異なり、第一、第二の測定用ノズル271、272から蒸気を放出させる必要はないので、薄膜材料を節約できる。
【0088】
<第三例の真空蒸着装置の構造>
本発明の第三例の真空蒸着装置の構造を説明する。
図5は第三例の真空蒸着装置10cの平面図、図6は同内部側面図である。第三例の真空蒸着装置10cのうち、第一例の真空蒸着装置10aと同じ構造の部分には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0089】
第三例の真空蒸着装置10cでは、第一例の真空蒸着装置10aの放出装置21の代わりに、主放出装置21aと副放出装置21bとを有しており、第一例の真空蒸着装置10aの移動装置15の代わりに、主移動装置15aと副移動装置15bとを有している。
【0090】
主放出装置21aと副放出装置21bの構造は第一例の真空蒸着装置10aの放出装置21と同じであり、説明を省略する。主放出装置21aと副放出装置21bの放出孔をそれぞれ主放出孔、副放出孔と呼び、それぞれ符号22a、22bを付して示す。主放出装置21aと副放出装置21bは、真空槽11内で、長手方向を互いに平行に向けられて、互いに同じ高さに配置されている。
【0091】
本実施例では、水平面に平行で、主放出装置21aと副放出装置21bの長手方向に対して垂直な方向を移動方向と呼ぶ。符号5は移動方向を示している。本実施例では主放出装置21aは副放出装置21bよりも移動方向5の始点側に配置されている。
【0092】
第三例の真空蒸着装置10cは、第一、第二の主配管25a1、25a2と第一、第二の副配管25b1、25b2とを有している。第一、第二の主配管25a1、25a2は、直線状に形成され、移動方向5と平行に向けられた状態で、主ベローズ14aを用いて真空槽11の壁面に気密に挿入され、第一、第二の主配管25a1、25a2の一端は主放出装置21aの一端にそれぞれ接続されている。また、第一、第二の副配管25b1、25b2は、直線状に形成され、移動方向5と平行に向けられた状態で、副ベローズ14bを用いて真空槽11の壁面に気密に挿入され、第一、第二の副配管25b1、25b2の一端は副放出装置21bの一端にそれぞれ接続されている。
【0093】
ここでは符号31、33h、35hの蒸発源は、開閉可能な符号41、43h、45hのバルブを介して第一の主配管25a1に接続され、符号33d、35dの蒸発源は、開閉可能な符号43d、45dのバルブを介して第二の主配管25a2に接続されている。また、符号32、34hの蒸発源は、開閉可能な符号42、44hのバルブを介して第一の副配管25b1に接続され、符号34d、36の蒸発源は、開閉可能な符号44d、46のバルブを介して第二の副配管25b2に接続されている。
【0094】
第一、第二の主配管25a1、25a2の主放出装置21aとの接続部分には第一、第二の主逆流防止孔(不図示)が設けられ、第一、第二の主配管25a1、25a2のうち一方の主配管から主放出装置21aに供給された蒸気が他方の主配管内に逆流して汚染することは防止されている。また、第一、第二の副配管25b1、25b2の副放出装置21bとの接続部分には第一、第二の副逆流防止孔(不図示)が設けられ、第一、第二の副配管25b1、25b2のうち一方の副配管から副放出装置21bに供給された蒸気が他方の副配管内に逆流して汚染することは防止されている。
【0095】
本実施例では主移動装置15aはモーターであり、符号31、33h、33d、35h、35dの蒸発源に接続され、動力を符号31、33h、33d、35h、35dの蒸発源に伝達して、符号31、33h、33d、35h、35dの蒸発源を第一、第二の主配管25a1、25a2と主放出装置21aと一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させるように構成されている。また、副移動装置15bはモーターであり、符号32、34h、34d、36の蒸発源に接続され、動力を符号32、34h、34d、36の蒸発源に伝達して、符号32、34h、34d、36の蒸発源を第一、第二の副配管25b1、25b2と副放出装置21bと一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させるように構成されている。
【0096】
真空槽11内の主放出孔22aと副放出孔22bと対面可能な位置に板状の成膜対象物51を水平に配置した状態で、主放出装置21aを移動方向5に沿って移動させながら、主放出孔22aから蒸気を放出させると、蒸気は成膜対象物51の表面に到達して、成膜対象物51の表面に薄膜が形成されるようになっている。また、副放出装置21bを移動方向5に沿って移動させながら、副放出孔22bから蒸気を放出させると、蒸気は成膜対象物51の表面に到達して、成膜対象物51の表面に薄膜が形成されるようになっている。
【0097】
第三例の真空蒸着装置10cは、第一例の真空蒸着装置10aの第一、第二の膜厚センサ181、182の代わりに、第一、第二の主膜厚センサ18a1、18a2と第一、第二の副膜厚センサ18b1、18b2とを有している。
【0098】
本実施例では第一、第二の主配管25a1、25a2の上方を向いた部分には第一、第二の主測定用ノズル27a1、27a2が設けられ、第一、第二の副配管25b1、25b2の上方を向いた部分には第一、第二の副測定用ノズル27b1、27b2が設けられている。
【0099】
防着板17は第一、第二の主配管25a1、25a2と第一、第二の副配管25b1、25b2の上方に水平に配置され、第一、第二の主測定用ノズル27a1、27a2と第一、第二の副測定用ノズル27b1、27b2はそれぞれ防着板17と対面されている。主移動装置15aにより第一、第二の主配管25a1、25a2を移動させても、第一、第二の主測定用ノズル27a1、27a2と防着板17との対面は維持され、第一、第二の主測定用ノズル27a1、27a2から放出された蒸気は防着板17で遮蔽され、真空槽11の壁面や成膜対象物51に付着しないようになっている。また、副移動装置15bにより第一、第二の副配管25b1、25b2を移動させても、第一、第二の副測定用ノズル27b1、27b2と防着板17との対面は維持され、第一、第二の副測定用ノズル27b1、27b2から放出された蒸気は防着板17で遮蔽され、真空槽11の壁面や成膜対象物51に付着しないようになっている。
【0100】
第一、第二の主膜厚センサ18a1、18a2と第一、第二の副膜厚センサ18b1、18b2の構造は、第一例の真空蒸着装置10aの第一、第二の膜厚センサ181、182と同じであり、説明を省略する。
【0101】
本実施例では、真空槽11内に配置された成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に主放出装置21aを配置したときに、防着板17のうち第一、第二の主測定用ノズル27a1、27a2と対面する位置には開口が設けられている。第一、第二の主膜厚センサ18a1、18a2の筐体は開口の真上に配置され、第一、第二の主膜厚センサ18a1、18a2の水晶振動子は、開口から一つずつ露出して、第一、第二の主測定用ノズル27a1、27a2とそれぞれ対面できるようになっている。
【0102】
また、真空槽11内に配置された成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも移動方向5の終点側に副放出装置21bを配置したときに、防着板17のうち第一、第二の副測定用ノズル27b1、27b2と対面する位置には開口が設けられている。第一、第二の副膜厚センサ18b1、18b2の筐体は開口の真上に配置され、第一、第二の副膜厚センサ18b1、18b2の水晶振動子は、開口から一つずつ露出して、第一、第二の副測定用ノズル27b1、27b2とそれぞれ対面できるようになっている。
【0103】
第三例の真空蒸着装置10cは上述の有機EL素子製造装置60において第一例の真空蒸着装置10aの代わりに用いることができる。
第三例の真空蒸着装置10cを用いた有機EL素子の製造方法は、第一例の真空蒸着装置10aを用いた有機EL素子の製造方法と比べて、基板搬入工程〜基板前処理工程と、電極成膜工程〜基板搬出工程は同じであり、基板搬入工程〜基板前処理工程と、電極成膜工程〜基板搬出工程の各工程の説明は省略する。
第三例の真空蒸着装置10cを用いた有機EL素子の製造方法の成膜準備工程〜電子輸送層成膜工程を説明する。
【0104】
(成膜準備工程)
基板前処理工程を終えた後、図3を参照し、搬送装置68により、成膜対象物51を、基板前処理室62内から第三例の真空蒸着装置10cの真空槽11内に移動させる。
【0105】
図5、6を参照し、符号31の蒸発源にホール注入層の薄膜材料を配置し、符号32の蒸発源にホール輸送層の薄膜材料を配置し、符号33h、33dの蒸発源に赤色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号34h、34dの蒸発源に緑色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号35h、35dの蒸発源に青色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号36の蒸発源に電子輸送層の薄膜材料を配置しておく。
【0106】
すなわち、順番に積層する薄膜材料を、主放出装置21aに接続された蒸発源と副放出装置21bに接続された蒸発源に、交互に振り分けて配置しておく。
各バルブ41〜46を閉状態にしておく。各蒸発源31〜36で薄膜材料を加熱して蒸気を発生させる。
【0107】
(ホール注入層成膜工程)
主移動装置15aにより、主放出装置21aと符号31、33h、33d、35h、35dの蒸発源を一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させて、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも始点側に主放出装置21aを移動させ、静止させる。このとき、第一、第二の主測定用ノズル27a1、27a2は第一、第二の主膜厚センサ18a1、18a2の水晶振動子とそれぞれ対面する。
【0108】
また、副移動装置15bにより、副放出装置21bと符号32、34h、34d、36の蒸発源を一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させて、成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも終点側に副放出装置21bを移動させ、静止させる。このとき、第一、第二の副測定用ノズル27b1、27b2は第一、第二の副膜厚センサ18b1、18b2の水晶振動子とそれぞれ対面する。
【0109】
符号41のバルブを開状態にする。符号31の蒸発源で生成されたホール注入層の薄膜材料の蒸気は第一の主配管25a1を通って主放出装置21aに供給され、主放出孔22aから放出される。主放出装置21aは成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に配置されており、主放出孔22aから放出された蒸気は成膜対象物51には到達しない。
【0110】
第一の主測定用ノズル27a1から放出された蒸気は防着板17の開口から露出する第一の主膜厚センサ18a1の水晶振動子に到達して付着する。
第一の主膜厚センサ18a1の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて符号31の蒸発源での薄膜材料の加熱温度を制御する。
【0111】
主移動装置15aにより、主放出装置21aと蒸発源31、33h、33d、35h、35dとを一緒に、移動方向5に沿って一の方向(ここでは始点側から終点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、主放出装置21aを成膜対象物51の下方を通過させ、成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも終点側に移動させる。次いで、主放出装置21aと蒸発源31、33h、33d、35h、35dとを一緒に移動方向5に沿って前記一の方向とは逆方向(ここでは終点側から始点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、主放出装置21aを成膜対象物51の下方を再び通過させ、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に移動させ、静止させる。
【0112】
主放出装置21aが成膜対象物51の下方を通過する間に、主放出孔22aから放出された蒸気は成膜対象物51の表面に到達して付着し、成膜対象物51の陽極電極の表面にホール注入層が形成される。
【0113】
ホール注入層を形成する間に、符号42のバルブを開状態にする。符号32の蒸発源で生成されたホール輸送層の薄膜材料の蒸気は第一の副配管25b1を通って副放出装置21bに供給され、副放出孔22bから放出される。副放出装置21bは成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも移動方向5の終点側に配置されており、副放出孔22bから放出された蒸気は成膜対象物51には到達しない。
【0114】
第一の副測定用ノズル27b1から放出された蒸気は防着板17の開口から露出する第一の副膜厚センサ18b1の水晶振動子に到達して付着する。
第一の副膜厚センサ18b1の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて符号32の蒸発源での薄膜材料の加熱温度を制御する。
ホール注入層を形成し終えた後、符号41のバルブを閉状態にして、主放出装置21aへの蒸気の供給を停止する。
【0115】
(ホール輸送層成膜工程)
ホール注入層成膜工程の間に、符号32の蒸発源におけるホール輸送層の薄膜材料の加熱温度は調整されており、第一例の真空蒸着装置10aを用いた場合よりも、短い時間でホール輸送層の成膜を開始できる。
【0116】
副移動装置15bにより、副放出装置21bと符号32、34h、34d、36の蒸発源とを一緒に、移動方向5に沿って一の方向(ここでは終点側から始点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、副放出装置21bを成膜対象物51の下方を通過させ、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも始点側に移動させる。次いで、副放出装置21bと符号32、34h、34d、36の蒸発源とを一緒に移動方向5に沿って前記一の方向とは逆方向(ここでは始点側から終点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、副放出装置21bを成膜対象物51の下方を再び通過させ、成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも移動方向5の終点側に移動させ、静止させる。
副放出装置21bが成膜対象物51の下方を通過する間に、副放出孔22bから放出された蒸気は成膜対象物51の表面に到達して付着し、成膜対象物51のホール注入層の表面にホール輸送層が形成される。
【0117】
ホール輸送層を形成する間に、第一の主膜厚センサ18a1の筐体を回転させて、別の水晶振動子を防着板17の開口から露出させ、第一の主測定用ノズル27a1と対面させる。
符号43h、43dのバルブを開状態にする。符号33h、33dの蒸発源で生成された赤色発光層のホストとドーパントの薄膜材料の蒸気は第一の主配管25a1と第二の主配管25a2をそれぞれ通って主放出装置21aに供給され、主放出孔22aから放出される。主放出装置21aは成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に配置されており、主放出孔22aから放出された蒸気は成膜対象物51には到達しない。
【0118】
第一、第二の主測定用ノズル27a1、27a2から放出された蒸気は防着板17の開口から露出する第一、第二の主膜厚センサ18a1、18a2の水晶振動子にそれぞれ到達して付着する。
【0119】
第一、第二の主膜厚センサ18a1、18a2の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて符号33h、33dの蒸発源での薄膜材料の加熱温度をそれぞれ制御する。
ホール輸送層を形成し終えた後、符号42のバルブを閉状態にして、副放出装置21bへの蒸気の供給を停止する。
【0120】
以下、赤色発光層成膜工程〜電子輸送層成膜工程は、一の成膜工程中に次の成膜工程に用いる薄膜材料の加熱温度を調整しておく工程以外は、第一の真空蒸着装置を用いた有機EL素子の製造方法の赤色発光層成膜工程〜電子輸送層成膜工程と同様であり、説明を省略する。
【0121】
第三例の真空蒸着装置10cを用いた有機EL素子の製造方法では、一の成膜工程中に、次の成膜工程に用いる薄膜材料の加熱温度を調整できるので、第一例の真空蒸着装置10aを用いた有機EL素子の製造方法に比べて、次の成膜工程を短時間に開始でき、多層膜の形成を短時間で行うことができる。
【0122】
<第四例の真空蒸着装置の構造>
本発明の第四例の真空蒸着装置の構造を説明する。
図7は第四例の真空蒸着装置10dの平面図、図8は同内部側面図である。第四例の真空蒸着装置10dのうち、第一例の真空蒸着装置10aと同じ構造の部分には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0123】
第四例の真空蒸着装置10dでは、第一例の真空蒸着装置10aの放出装置21の代わりに、主放出装置21aと副放出装置21bとを有しており、第一例の真空蒸着装置10aの移動装置15の代わりに、主移動装置15aと副移動装置15bとを有している。
【0124】
主放出装置21aと副放出装置21bの構造は第一例の真空蒸着装置10aの放出装置21と同じであり、説明を省略する。主放出装置21aと副放出装置21bの放出孔をそれぞれ主放出孔、副放出孔と呼び、それぞれ符号22a、22bを付して示す。主放出装置21aと副放出装置21bは、真空槽11内で、長手方向を互いに平行に向けられて、互いに同じ高さに配置されている。
【0125】
本実施例では、水平面に平行で、主放出装置21aと副放出装置21bの長手方向に対して垂直な方向を移動方向と呼ぶ。符号5は移動方向を示している。本実施例では主放出装置21aは副放出装置21bよりも移動方向5の始点側に配置されている。
【0126】
本実施例では第四例の真空蒸着装置10dは、主配管25aと副配管25bとを有している。主配管25aは、直線状に形成され、移動方向5と平行に向けられた状態で、主ベローズ14aを用いて真空槽11の壁面に気密に挿入され、主配管25aの一端は主放出装置21aの一端に接続されている。また、副配管25bは、直線状に形成され、移動方向5と平行に向けられた状態で、副ベローズ14bを用いて真空槽11の壁面に気密に挿入され、副配管25bの一端は副放出装置21bの一端に接続されている。
【0127】
ここでは符号31、33h、34h、35h、36の蒸発源は、開閉可能な符号41、43h、44h、45h、46のバルブを介して主配管25aに接続され、符号32、33d、34d、35dの蒸発源は、開閉可能な符号42、43d、44d、45dのバルブを介して副配管25bに接続されている。
【0128】
本実施例では主移動装置15aはモーターであり、符号31、33h、34h、35h、36の蒸発源に接続され、動力を符号31、33h、34h、35h、36の蒸発源に伝達して、符号31、33h、34h、35h、36の蒸発源を主配管25aと主放出装置21aと一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させるように構成されている。また、副移動装置15bはモーターであり、符号32、33d、34d、35dの蒸発源に接続され、動力を符号32、33d、34d、35dの蒸発源に伝達して、符号32、33d、34d、35dの蒸発源を副配管25bと副放出装置21bと一緒に、移動方向5に沿って同一方向に同一速度で移動させるように構成されている。
【0129】
真空槽11内の主放出孔22aと副放出孔22bと対面可能な位置に板状の成膜対象物51を水平に配置した状態で、主放出装置21aを移動方向5に沿って移動させながら、主放出孔22aから蒸気を放出させると、蒸気は成膜対象物51に到達して、成膜対象物51の表面に薄膜が形成されるようになっている。また、副放出装置21bを移動方向5に沿って移動させながら、副放出孔22bから蒸気を放出させると、蒸気は成膜対象物51に到達して、成膜対象物51の表面に薄膜が形成されるようになっている。
【0130】
第四例の真空蒸着装置10dは、第一例の真空蒸着装置10aの防着板17の代わりに第一、第二の防着板571、572を有しており、第一例の真空蒸着装置10aの膜厚センサ18の代わりに、第一、第二の主膜厚センサ58a1、58a2と第一、第二の副膜厚センサ58b1、58b2を有している。
【0131】
第一、第二の防着板571、572は蒸気を遮蔽する材質により帯状に形成され、長手方向を主放出装置21aと副放出装置21bの長手方向と平行に向けられた状態で、ここでは第一の防着板571は真空槽11内に配置された成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に、主放出孔22aと副放出孔22bより上方に水平に配置され、第二の防着板572は真空槽11内に配置された成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも移動方向5の終点側に、主放出孔22aと副放出孔22bより上方に水平に配置されている。
【0132】
主放出装置21aと副放出装置21bを成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に配置したときに、主放出孔22aと副放出孔22bは第一の防着板571と対面され、主放出孔22aと副放出孔22bから放出された蒸気は第一の防着板571で遮蔽され、真空槽11の壁面や成膜対象物51に付着しないようになっている。また、主放出装置21aと副放出装置21bを成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも移動方向5の終点側に配置したときに、主放出孔22aと副放出孔22bは第二の防着板572と対面され、主放出孔22aと副放出孔22bから放出された蒸気は第二の防着板572で遮蔽され、真空槽11の壁面や成膜対象物51に付着しないようになっている。
【0133】
第一、第二の主膜厚センサ58a1、58a2と第一、第二の副膜厚センサ58b1、58b2の構造は、第一例の真空蒸着装置10aの第一、第二の膜厚センサ181、182と同じであり、説明を省略する。
【0134】
第一の主膜厚センサ58a1と第一の副膜厚センサ58b1の筐体は、第一の防着板571の上方に、移動方向5に沿って互いに離間して配置されている。第一の防着板571のうち第一の主膜厚センサ58a1と第一の副膜厚センサ58b1の筐体の真下位置には開口が設けられ、第一の主膜厚センサ58a1と第一の副膜厚センサ58b1の水晶振動子は、第一の防着板571の開口からそれぞれ一つずつ露出されている。
【0135】
主放出装置21aと副放出装置21bを成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも移動方向5の始点側に配置すると、主放出孔22aは第一の主膜厚センサ58a1の水晶振動子と対面し、副放出孔22bは第一の副膜厚センサ58b1の水晶振動子と対面するようになっている。
【0136】
また、主放出装置21aと副放出装置21bを成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも移動方向5の終点側に配置すると、主放出孔22aは第二の主膜厚センサ58a2の水晶振動子と対面し、副放出孔22bは第二の副膜厚センサ58b2の水晶振動子と対面するようになっている。
【0137】
第四例の真空蒸着装置10dは上述の有機EL素子製造装置60において第一例の真空蒸着装置10aの代わりに用いることができる。
第四例の真空蒸着装置10dを用いた有機EL素子の製造方法は、第一例の真空蒸着装置10aを用いた有機EL素子の製造方法と比べて、基板搬入工程〜基板前処理工程と、電極成膜工程〜基板搬出工程は同じであり、基板搬入工程〜基板前処理工程と、電極成膜工程〜基板搬出工程の各工程の説明は省略する。
第四例の真空蒸着装置10dを用いた有機EL素子の製造方法の成膜準備工程〜電子輸送層成膜工程を説明する。
【0138】
(成膜準備工程)
基板前処理工程を終えた後、図3を参照し、搬送装置68により、成膜対象物51を、基板前処理室62内から第四例の真空蒸着装置10dの真空槽11内に移動させる。
【0139】
図7、8を参照し、符号31の蒸発源にホール注入層の薄膜材料を配置し、符号32の蒸発源にホール輸送層の薄膜材料を配置し、符号33h、33dの蒸発源に赤色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号34h、34dの蒸発源に緑色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号35h、35dの蒸発源に青色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置し、符号36の蒸発源に電子輸送層の薄膜材料を配置しておく。
【0140】
すなわち、ホストの薄膜材料は主放出装置21aに接続された蒸発源に配置し、ドーパントの薄膜材料は副放出装置21bに接続された蒸発源に配置しておく。また、順番に積層する薄膜材料がそれぞれ一の材料の場合(例えばホール注入層とホール輸送層の場合)には、主放出装置21aに接続された蒸発源と副放出装置21bに接続された蒸発源に、交互に振り分けて配置しておく。
各バルブ41〜46を閉状態にしておく。
【0141】
本実施例では、副移動装置15bにより、副放出装置21bと符号32、33d、34d、35dの蒸発源を一緒に、移動方向5に沿って移動させて、副放出装置21bを成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部より終点側に移動させ、静止させる。次いで、主移動装置15aにより、主放出装置21aと符号31、33h、34h、35h、36の蒸発源を一緒に、移動方向5に沿って移動させて、主放出装置21aを成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部より終点側に移動させ、静止させる。
各蒸発源31〜36で薄膜材料を加熱して蒸気を発生させる。
【0142】
(ホール注入層成膜工程)
符号41のバルブを開状態にする。符号31の蒸発源で生成されたホール注入層の薄膜材料の蒸気は主配管25aを通って主放出装置21aに供給され、主放出孔22aから放出される。
【0143】
主放出孔22aから放出された蒸気は第二の防着板572で遮蔽されて成膜対象物51には到達しない。放出された蒸気の一部は第二の防着板572の開口から露出する第二の主膜厚センサ58a2の水晶振動子に到達して付着する。
第二の主膜厚センサ58a2の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて符号31の蒸発源での薄膜材料の加熱温度を制御する。
【0144】
主移動装置15aにより、主放出装置21aと蒸発源31、33h、34h、35h、36とを一緒に、移動方向5に沿って同一方向(ここでは終点側から始点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、主放出装置21aを成膜対象物51の下方を通過させ、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも始点側に移動させ、静止させる。
【0145】
主放出装置21aが成膜対象物51の下方を通過する間に、主放出孔22aから放出された蒸気は成膜対象物51の表面に到達して付着し、成膜対象物51の陽極電極の表面にホール注入層が形成される。
【0146】
ホール注入層を形成する間に、符号42のバルブを開状態にする。符号32の蒸発源で生成されたホール輸送層の薄膜材料の蒸気は副配管25bを通って副放出装置21bに供給され、副放出孔22bから放出される。
【0147】
副放出孔22bから放出された蒸気は第二の防着板572で遮蔽されて成膜対象物51には到達しない。放出された蒸気の一部は第二の防着板572の開口から露出する第二の副膜厚センサ58b2の一の水晶振動子に到達して付着する。
【0148】
第二の副膜厚センサ58b2の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚を計測し、計測結果に基づいて符号32の蒸発源での薄膜材料の加熱温度を制御する。
ホール注入層を形成し終えた後、符号41のバルブを閉状態にして、主放出装置21aへの蒸気の供給を停止する。
【0149】
(ホール輸送層成膜工程)
ホール注入層成膜工程の間に、ホール輸送層の薄膜材料の加熱温度は調整されており、第一例の真空蒸着装置10aを用いたときよりも、短時間でホール輸送層の成膜を開始できる。
【0150】
副移動装置15bにより、副放出装置21bと蒸発源32、33d、34d、35dとを一緒に、移動方向5に沿って同一方向(ここでは終点側から始点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、副放出装置21bを成膜対象物51の下方を通過させ、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも始点側に移動させ、静止させる。
【0151】
副放出装置21bが成膜対象物51の下方を通過する間に、副放出孔22bから放出された蒸気は成膜対象物51の表面に到達して付着し、成膜対象物51のホール注入層の表面にホール輸送層が形成される。
ホール輸送層を形成し終えた後、符号42のバルブを閉状態にして、副放出装置21bへの蒸気の供給を停止する。
【0152】
(赤色発光層成膜工程)
図3を参照し、搬送装置68により、マスク室65からマスク板52を取り出して第四例の真空蒸着装置10dの真空槽11内に搬入する。
【0153】
図7、8を参照し、位置合わせ装置55により、成膜対象物51の表面の赤色発光層の成膜領域が、マスク板52の開口と重なるように位置合わせし、その相対位置関係を維持したまま成膜対象物51とマスク板52とを貼り合わせる。
【0154】
符号43h、43dのバルブを開状態にする。符号33h、33dの蒸発源で生成された赤色発光層のホストとドーパントの薄膜材料の蒸気は主配管25aと副配管25bをそれぞれ通って主放出装置21aと副放出装置21bにそれぞれ供給され、主放出孔22aと副放出孔22bからそれぞれ放出される。
【0155】
主放出孔22aと副放出孔22bから放出された蒸気は第一の防着板571で遮蔽されて成膜対象物51には到達しない。
主放出孔22aと副放出孔22bから放出された蒸気の一部は第一の防着板571の開口から露出する第一の主膜厚センサ58a1と第一の副膜厚センサ58b1の水晶振動子にそれぞれ到達して付着する。
【0156】
第一の主膜厚センサ58a1と第一の副膜厚センサ58b1の制御装置は水晶振動子に付着した付着膜の膜厚をそれぞれ計測し、計測結果に基づいて符号33h、33dの蒸発源での薄膜材料の加熱温度をそれぞれ制御する。
【0157】
主移動装置15aと副移動装置15bにより、主放出装置21aと副放出装置21bと蒸発源31〜36とを一緒に、移動方向5に沿って同一方向(ここでは始点側から終点側に向かう方向)に同一速度で移動させ、主放出装置21aと副放出装置21bを成膜対象物51の下方を一緒に通過させ、成膜対象物51の移動方向5の終点側の端部よりも終点側に移動させ、静止させる。
【0158】
主放出装置21aと副放出装置21bが成膜対象物51の下方を通過する間に、主放出孔22aと副放出孔22bからそれぞれ放出されたホストとドーパントの薄膜材料の蒸気は成膜対象物51の表面のうち、マスク板52の開口から露出する赤色発光層の成膜領域に一緒に到達して付着し、赤色発光層の成膜領域に赤色発光層が形成される。
赤色発光層を形成した後、符号43h、43dのバルブを閉状態にして、主放出装置21aと副放出装置21bへの蒸気の供給を停止する。
【0159】
(緑色発光層成膜工程)
位置合わせ装置55により、成膜対象物51とマスク板52とを分離する。次いで、成膜対象物51の表面の緑色発光層の成膜領域が、マスク板52の開口と重なるように位置合わせし、その位置関係を維持したまま成膜対象物51とマスク板52とを貼り合わせる。
【0160】
第二の主膜厚センサ58a2と第二の副膜厚センサ58b2の筐体を回転させて、別の水晶振動子を第二の防着板572の開口からそれぞれ露出させる。
符号44h、44dのバルブを開状態にして、符号34h、34dの蒸発源で生成された緑色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料の蒸気を主配管25aと副配管25bをそれぞれ通って主放出装置21aと副放出装置21bにそれぞれ供給して、主放出孔22aと副放出孔22bからそれぞれ放出させる。
【0161】
次いで、赤色発光層成膜工程と同様にして、符号34h、34dの蒸発源での薄膜材料の加熱温度を調整した後、主放出装置21aと副放出装置21bを移動方向5に沿って赤色発光層成膜工程のときとは逆向き(ここでは終点側から始点側に向かう方向)に同速度で移動させ、主放出装置21aと副放出装置21bを成膜対象物51の下方を一緒に通過させ、成膜対象物51の移動方向5の始点側の端部よりも始点側に移動させ、静止させる。
【0162】
主放出装置21aと副放出装置21bが成膜対象物51の下方を通過する間に、主放出孔22aと副放出孔22bからそれぞれ放出されたホストとドーパントの薄膜材料の蒸気は成膜対象物51の表面のうち、マスク板52の開口から露出する緑色発光層の成膜領域に一緒に到達して付着し、緑色発光層の成膜領域に緑色発光層が形成される。
緑色発光層を形成した後、符号44h、44dのバルブを閉状態にして、主放出装置21aと副放出装置21bへの蒸気の供給を停止する。
【0163】
(青色発光層成膜工程)
位置合わせ装置55により、成膜対象物51とマスク板52とを分離する。次いで、成膜対象物51の表面の青色発光層の成膜領域が、マスク板52の開口と重なるように位置合わせし、その位置関係を維持したまま成膜対象物51とマスク板52とを貼り合わせる。
【0164】
第一の主膜厚センサ58a1と第一の副膜厚センサ58b1の筐体を回転させて、別の水晶振動子を第一の防着板571の開口からそれぞれ露出させる。
符号45h、45dのバルブを開状態にして、符号35h、35dの蒸発源で生成された青色発光層のホスト、ドーパントの薄膜材料の蒸気を主配管25aと副配管25bをそれぞれ通って主放出装置21aと副放出装置21bにそれぞれ供給して、主放出孔22aと副放出孔22bからそれぞれ放出させる。
【0165】
次いで、赤色発光層成膜工程と同様にして、青色発光層の成膜領域に青色発光層を形成する。
青色発光層を形成した後、符号45h、45dのバルブを閉状態にして、主放出装置21aと副放出装置21bへの蒸気の供給を停止する。位置合わせ装置55により、成膜対象物51とマスク板52とを分離する。
図3を参照し、搬送装置68により、第四例の真空蒸着装置10dの真空槽11からマスク板52を取り出してマスク室65内に収納する。
【0166】
(電子輸送層成膜工程)
図7、8を参照し、第二の主膜厚センサ58a2の筐体を回転させて、別の水晶振動子を第二の防着板572の開口から露出させる。
【0167】
符号46のバルブを開状態にして、符号36の蒸発源で生成された電子輸送層の薄膜材料の蒸気を主配管25aを通って主放出装置21aに供給して、主放出孔22aから放出させる。
【0168】
次いで、ホール輸送層の成膜工程と同様にして、成膜対象物51の赤、緑、青色発光層の表面に電子輸送層を形成する。
電子輸送層を形成した後、符号46のバルブを閉状態にして、主放出装置21aへの蒸気の供給を停止する。
【0169】
上述の第一例〜第四例の真空蒸着装置10a〜10dでは、第一例の真空蒸着装置10aで代表して説明すると、図1、2を参照し、放出装置21の上方を向いた面に放出孔22が設けられ、放出孔22の上方に成膜対象物51が水平に配置されていたが、本発明は放出孔22と成膜対象物51とが対面できるならばこれに限定されず、放出装置21の下方を向いた面に放出孔22が設けられ、放出孔22の下方に成膜対象物51が水平に配置されていてもよいし、放出装置21の側面に放出孔22が設けられ、放出孔22と対面する位置に成膜対象物51が鉛直に立てられて配置されていてもよい。
【0170】
また、上述の第一例〜第四例の真空蒸着装置10a〜10dでは、第一例の真空蒸着装置10aで代表して説明すると、図1を参照し、放出孔22は放出装置21の長手方向に沿って複数個並んで設けられていたが、帯状の放出孔が長手方向を放出装置21の長手方向と平行に向けられて設けられた構成も本発明に含まれる。
【0171】
上述の第一例〜第四例の真空蒸着装置10a〜10dでは、第一例の真空蒸着装置10aで代表して説明すると、図1、2を参照し、蒸発源31〜36の他に、バルブ41〜46と第一、第二の配管251、252と放出装置21には不図示のヒーターが設けられ、それぞれ加熱できるように構成されている。
【0172】
バルブ41〜46の加熱温度を蒸発源31〜36の加熱温度以上にし、第一、第二の配管251、252の加熱温度をバルブ41〜46の加熱温度以上にし、放出装置21の加熱温度を第一、第二の配管251、252の加熱温度以上にすると、蒸発源31〜36と放出装置21との間で薄膜材料の蒸気が詰まることを防ぐことができ、蒸発源31〜36から放出装置21へ蒸気を安定して供給できる。
【0173】
また、上述の第一例〜第四例の真空蒸着装置10a〜10dでは、蒸発源31〜36に互いに異なる大きさの坩堝をそれぞれ配置して、量がより少ない薄膜材料を、より小さい坩堝内に収容してもよい。この場合には、薄膜材料の量が少ない場合でも、蒸気の生成速度の調整が容易になる。
【0174】
上述の第一例〜第四例の真空蒸着装置10a〜10dでは、第一例の真空蒸着装置10aで代表して説明すると、図1、2を参照し、蒸発源31〜36は真空槽11の外側に配置されているが、蒸発源31〜36が真空槽11内に配置された構造も本発明に含まれる。この場合には、ベローズ14が不要になり、装置の構造が単純になるという利点がある。
【符号の説明】
【0175】
10a、10b、10c、10d……真空蒸着装置
11……真空槽
12……真空排気装置
21……放出装置
21a……主放出装置
21b……副放出装置
211、212……第一、第二の放出装置
31、32、33h、33d、34h、34d、35h、35d、36……蒸発源
51……成膜対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜材料の蒸気を生成する蒸発源と、
成膜対象物が配置される真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、
前記蒸発源から前記蒸気が供給され、前記真空槽内に前記蒸気を放出させる放出装置と、
を有し、前記放出装置を移動させながら前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に薄膜を形成する真空蒸着装置であって、
前記蒸発源を前記放出装置と一緒に移動させる移動装置を有する真空蒸着装置。
【請求項2】
一の前記放出装置には、前記蒸発源が複数個接続された請求項1項記載の真空蒸着装置。
【請求項3】
前記真空槽内には、前記放出装置が複数個配置され、
前記移動装置は、複数の前記放出装置を一緒に移動させるように構成された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の真空蒸着装置。
【請求項4】
前記真空槽内には、前記放出装置が二個配置され、
前記移動装置は、二個の前記放出装置を別々に移動させるように構成された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の真空蒸着装置。
【請求項5】
蒸発源で薄膜材料の蒸気を生成し、前記蒸気を真空槽内に配置された放出装置に供給して、前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記放出装置を移動させながら、前記真空槽内に配置された成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜の形成方法であって、
前記放出装置を移動させるときには、前記蒸発源を前記放出装置と一緒に移動させる薄膜の形成方法。
【請求項6】
前記蒸発源が複数個接続された前記放出装置を用いて、
一の前記蒸発源から前記放出装置に薄膜材料の蒸気を供給して、前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記放出装置を複数個の前記蒸発源と一緒に移動させながら、前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に一の薄膜を形成した後、前記一の蒸発源から前記放出装置への前記蒸気の供給を停止し、
別の前記蒸発源から前記放出装置に薄膜材料の蒸気を供給して、前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記放出装置を複数個の前記蒸発源と一緒に移動させながら、前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に別の薄膜を形成する請求項5記載の薄膜の形成方法。
【請求項7】
前記放出装置を複数個用いて、
複数の前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気をそれぞれ放出させ、複数の前記放出装置を一緒に移動させながら、複数の前記放出装置から放出された前記蒸気を前記成膜対象物に一緒に到達させ、前記成膜対象物の表面に薄膜を形成する請求項5記載の薄膜の形成方法。
【請求項8】
前記放出装置を二個用いて、
一の前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記一の放出装置を移動させながら、前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に一の薄膜を形成した後、前記一の放出装置からの前記蒸気の放出を停止し、
別の前記放出装置から前記真空槽内に前記蒸気を放出させ、前記別の放出装置を移動させながら、前記成膜対象物に前記蒸気を到達させ、前記成膜対象物の表面に別の薄膜を形成する請求項5記載の薄膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−193413(P2012−193413A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58483(P2011−58483)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】