説明

着信表示装置

【課題】携帯通話装置用の着信表示装置において、発光時の視認性を高めること、低電波出力でも確実に検知できること、電池の連続使用時間を長くすることを目的とする。
【解決手段】着信表示装置は、応答信号の受信手段、応答信号の増幅手段、発光素子DL1〜3から成る発光手段、制御手段、動作用電力を供給する電池を備え、携帯通話装置の応答信号が入力されると発光素子DL1〜3を点滅させる。増幅手段により、電波出力が小さいLCX携帯電話機の応答信号でも確実に検知できる。複数の発光素子DL1〜3を点滅させるので発光時の視認性が良く、携帯通話装置の所有者が着信を看過しにくい。発光素子の点滅時間を延長すれば、使用者が着信を看過する確率をより減らせる。制御手段は、信号入力が所定時間以上無いときはスリープモードへ移行して、電池の電力消費を節減する。制御手段で電池電圧を監視し、電圧が設定値より低下したときには警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通話装置が呼び出し信号を着信したときに、着信が有ったことを発光によって使用者へ知らせるための装置に関し、発光時の視認性を高めること、電波出力が小さくても確実に検知できること、電池を交換せずに連続使用できる時間を長くすることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
屋外で修繕や点検等の各種作業を行なうに際し、指令所から現場の作業員へ指令等を伝達する手段として、携帯通話装置が広く使用されている。現在最も普及している携帯通話装置は携帯電話機であるが、例えば鉄道沿線での作業を考えると、山間部やトンネル内など、携帯電話の通信不能な地域がある。従って一般の携帯電話機は、鉄道沿線の作業員との連絡手段としては必ずしも適切ではない。
【0003】
鉄道沿線にLCXケーブルが敷設されている区域では、現場作業員と指令所との間の連絡手段として、LCX携帯電話機が使用されている。LCX(=leaky coaxial cable:漏洩同軸ケーブル)は、シールドに電波漏洩用のスリットを設けた同軸ケーブルであり、このスリットを通じて電波の送受信を行うことにより、ケーブル周辺の比較的短い距離範囲にだけ通信可能領域を確保できるという特質を有している。そして鉄道においては、列車無線、列車公衆電話、及び、指令所と鉄道沿線との間の連絡用携帯電話(LCX携帯電話機)の通信回線として使用されている。新幹線では全線にLCXケーブルが敷設されているので、山間部やトンネル内であっても、LCX携帯電話機により、指令所と鉄道沿線の作業員との間で音声通話及びデータ伝送が可能となっている。
【0004】
LCX携帯電話機は、指令所からのデータ伝送により作業時間帯に入ったことを作業員へ通知したり、指令所から伝達事項が有るときに作業員を呼び出して通話したりするのに用いられる。そして汎用の携帯電話機と同様に、着信が有ったときに表示部を発光又は点滅させる機能、着信音を鳴動させる機能、及び、本体を振動させる機能を有している。従って、指令所からの呼び出しが有ったときに、比較的静かな環境であれば、LCX携帯電話機の点滅発光・着信音・振動により、作業員は着信の有ったことを知ることができる。
【0005】
しかるに鉄道沿線における作業現場は、作業者自身の作業音や、保守用車の走行音・動作音などが発生しているため騒音レベルが高く、着信音が聞き取りにくい環境となっている。また鉄道沿線で作業する作業員は、LCX携帯電話機の落失防止のため、これをポケットに収納したり、ネックストラップを取り付けて首に掛け、衣服内へしまい込んだりすることが多いため、着信時の表示窓の発光・点滅に気づきにくくなっている。さらに作業中は作業員が様々な活動を行なっているため、着信時の振動に気づきにくい。このような事情のため、何らかの異常事態が発生し、指令所から現場作業員を呼び出して緊急連絡を行ないたい場合に、作業員がLCX携帯電話機への着信になかなか気づかず、情報伝達が迅速にできないことがあるという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1に記載されるような、携帯電話に着信が有ったときに、これを発光によって知らせる着信表示装置をLCX携帯電話機に取り付けることが考えられる。この特許文献1に記載される着信表示装置は、携帯電話機とストラップ等で連結される透明な装飾具の内部に着信表示機構を収納させたものであり、当該着信表示機構は、アンテナ、ダイオード又はトランジスタの検波器、トランジスタ又はリレーのスイッチ、LED、及び電池から成っており、携帯電話機から発せられる電波をアンテナ及び検波器で受信すると、スイッチがオンになって電池電力がLEDへ供給され、LEDが発光するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3067121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の如く、鉄道沿線における作業現場では、作業員がLCX携帯電話機への着信に容易に気づかないことがあるという問題があった。
そこで、特許文献1に記載される着信表示装置を、LCX携帯電話機に適用した場合を想定してみる。特許文献1に記載の着信表示装置が、携帯電話機の着信時に発光する目的は、意匠性を高める装飾品として機能することにある。従って、発光状態を確実に認識させるための工夫は特に講じられていないので、使用者が発光を見落とす可能性がある。
また、特許文献1に記載の着信表示装置は、携帯電話機が発する電波のエネルギーによって、トランジスタ又はリレーのスイッチをオン動作させているが、LCX携帯電話機が使用する電波は、一般の携帯電話が使用する電波と比べて小さく、約10分の1程度の出力しかない。しかも。LCX携帯電話機の使用周波数は400MHz帯であり、一般の携帯電話機の使用電波(800MHz〜2GHz)と比べて波長の長い電波が使用されている。このため、LCX携帯電話機が使用する低出力・長波長の電波では、特許文献1に記載される着信表示装置を着信時に発光させることは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記技術的課題を解決して、LCX携帯電話機にも適用できる着信表示装置を提供するものであって、その特徴とするところは、請求項1に記載の如く、携帯通話装置に付属され又は近接して配置され、携帯通話装置が呼び出し信号を受信したときに発信する応答信号を検知して発光するように構成された装置であって、応答信号を検知する受信手段と、受信した応答信号の増幅手段と、複数の発光素子から成る発光手段と、発光素子の発光動作を制御する制御手段と、上記各手段へ動作用電力を供給する電池とを備え、前記制御手段は、応答信号が入力されると、前記複数の発光素子を点滅させるよう設定されていることである。
【0010】
本発明に係る着信表示装置は、応答信号を検知する受信手段、受信した応答信号の増幅手段、複数の発光素子から成る発光手段、及び、発光素子の発光動作を制御する制御手段を、電子部品と電子回路とで構築し、これらと電池とを、ベース部とカバー部とで構成されるケース内に収納して構成されるものである。ケースは、比較的強度を持ち且つ軽量な材質とするのが好ましく、例えばアクリル樹脂等のプラスチックが使用できる。なお、ケース全体または少なくとも発光素子が面する部分は、透明又は透光性とする。当該着信表示装置は、携帯通話装置に付属させ又は近接させて使用するものであるから、携帯通話装置と比較して、比較的小さく且つ軽量であることが望ましい。
【0011】
本発明着信表示装置を、携帯通話装置に付属させ又は近接させるための手段としては、ストラップ等により連結する手法や、クリップ等で携帯通話装置の近傍へ装着する手法が考えられる。要するに、携帯通話装置から若干離した状態で単独に目視できるように配置することにより、携帯通話装置をポケットに収納した状態でも、発光を確認可能となる。なお適用対象が、例えばLCX携帯電話機のように電波出力が小さい場合は、着信表示装置が携帯通話装置から一定距離以上に離れないように規制することが望ましく、そのためには、一定長さのストラップで連結するのが適当である。
【0012】
応答信号を検知する受信手段は、例えば、アンテナと、コイル・コンデンサ・抵抗を組み合わせた同調回路とで構成できる。受信した応答信号の増幅手段は、例えば電池とトランジスタとの組み合わせで構成できる。なお、携帯通話装置の呼び出し信号電波の周波数と応答信号電波の周波数とは比較的近似していることが多いので、受信手段は、呼び出し信号と応答信号とを明確に区別できる受信感度を備えることが必要である。
【0013】
発光手段を構成する発光素子は、例えば高輝度LED(発光ダイオード)を用いることができ、その個数は、2個以上、望ましくは3個以上とし、視認性向上のため各発光素子間には適宜の間隔を設けることが望ましい。発光素子の発光色は、視認性を考慮すると青または緑が望ましいが、必ずしも白色を排除するものではない。但し、赤色は、鉄道用途の場合、信号色と混同するおそれがあるので、使用しないことが望ましい。
上記複数の発光素子は、前記制御手段によって、応答信号の入力時に、所定の点滅動作(例えば順次点滅、アトランダムに点滅等)を実行するよう制御される。制御手段には、例えば適当な制御プログラムを組み込んだマイコンを用いればよい。
【0014】
前記着信表示装置において、請求項2に記載の如く、前記制御手段が、前記発光素子の点滅を、応答信号の入力が終了してから所定時間継続させるように設定してもよい。点滅の継続時間は例えば4〜10秒程度であり、制御手段における時間設定により適宜変更することが可能である。
【0015】
前記着信表示装置において、請求項3に記載の如く、前記制御手段が、応答信号の入力が所定時間(例えば5秒)以上無いときは、必要動作電力が小さいスリープモードへ移行するように設定してもよい。制御手段の必要動作電力は、使用するマイコンの種類によっても異なるが、通常時の電流値が数百μAであるのに対し、スリープモード時の必要電流値は数μA程度であり、消費電力量を数10分の1〜約100分の1まで低減させることができる。
【0016】
さらに前記制御手段が、請求項4に記載の如く、電池電圧を監視して、電池電圧が設定値より低下したときに、発光素子を所定の態様で点滅させて警告するように設定しても良い。例えば公称電圧3Vのリチウム電池を用いたときに、測定電圧が2.5Vに低下したら警告動作を行なうように設定する。
【0017】
なお本発明に係る着信表示装置は、請求項5に記載するとおり、適用対象とする携帯通話装置を、LCX携帯電話機とした場合に、優れた効果をする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載した本発明に係る着信表示装置によれば、受信した応答信号の増幅手段を備えるので、例えばLCX携帯電話機のように使用する電波の出力が小さい場合でも、応答信号を検知したときに、これを増幅することにより、所定の発光動作を開始させるトリガーとして確実に機能させることが可能である。
また本発明では、複数の発光素子を順に点滅させるように設定したので、発光時の視認性が向上し、携帯通話装置に着信の有ったことが明瞭に表示されるので、使用者及び周囲の人間が着信をきわめて容易に認識することができる。
その結果、指令所等(基地局)から鉄道沿線の作業員等(携帯通話装置の所持者)へ連絡の必要が生じたときに、作業員等が着信を看過しにくくなるので、必要事項の伝達を迅速・確実に行えるようになる。
【0019】
請求項2に記載する如く、発光素子の点滅を、応答信号の入力が終了してから所定時間継続させるように設定した場合は、発光素子の点滅時間が延長されるから、それだけ使用者が着信を看過する確率を減らせる。なお、点滅の延長動作中に着信に気づいたときは、すでに通信回線の接続が終了していることになるが、携帯通話装置の所持者が発信元へ電話をかけて問い合わせることにより、必要事項の連絡が実行される。
【0020】
請求項3に記載の如く、制御手段が、応答信号の入力が所定時間以上無いときはスリープモードへ移行するように設定することにより、電池の電力消費を節減して、電池の連続使用時間を延長することができる。例えば、電池に電圧3V、容量140mAH程度のリチウム電池を用いた場合、非スリープモード(動作電流0.3mA)では数日程度で電池が消耗するが、スリープモード(動作電流約5μA)を導入することにより、6ヶ月以上の連続使用が可能となる。
【0021】
請求項4に記載の如く、制御手段が電池電圧を監視して、電池電圧が設定値より低下したときに発光素子を所定の態様で点滅させて警告するように設定することにより、使用者が電池の消耗を容易に把握できるので、現場での使用途中で、電力不足により着信表示装置が動作不良を起こすのを回避することが可能である。
【0022】
請求項5に記載の如く、本発明に係る着信表示装置を、LCX携帯電話機に適用することにより、鉄道沿線における作業者への連絡を確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る着信表示装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る着信表示装置の一実施形態を示す裏面側から見た斜視図である。
【図3】本発明に係る着信表示装置の一実施形態を示すものであって、カバー部を取り外した状態の側面図である。
【図4】本発明に係る着信表示装置の一実施形態を示すものであって、カバー部を取り外した状態の正面図である。
【図5】本発明に係る着信表示装置の一実施形態に関するものであって、基板部分の概略構成を示す正面図である。
【図6】本発明に係る着信表示装置の一実施形態に関するものであって、回路構成を示す図面である。
【図7】本発明に係る着信表示装置の周波数と受信感度との関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る着信表示装置の一実施形態を示すものであって、図(A)は電池ホルダー及び基板を回動させてベース部から引き出した状態を裏面側から見た図、図(B)は同状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、携帯通話装置としてLCX携帯電話機を適用対象とする場合を例にとって説明する。LCX携帯電話機は、新幹線等の鉄道沿線において、指令所と作業員との間で通話又はデータ伝送するのに使用されている。LCX携帯電話機が使用する電波の出力は、通常の携帯電話器の10分の1程度と小さいため、鉄道沿線に敷設されているLCXケーブルの周囲約10〜20mまでが通話可能範囲である。またLCX携帯電話機の使用する電波周波数は400MHz帯であり、一般の携帯電話機の使用電波よりも波長が長い。なお、基地局からLCX携帯電話機に対する呼び出し信号は450MHzであり、これに対するLCX携帯電話機が発する応答信号の周波数は412MHzに設定されている。
【0025】
本発明に係る着信表示装置の外観は、図1,2に示す如くである。ベース部3の上に、機能本体部である基板10及び電池ホルダー20が配置され、その上をカバー部2で覆う構造となっている。カバー部2はベース部3に対し着脱可能である。ベース部3の裏面側には、ヒンジ部5を介してクリップ部4が揺動可能に取り付けられ、両者の間に配置したコイルばね6(図3参照)により、ベース部3とクリップ部4の先端部が常時当接するよう弾性的に付勢されている。コイルばね6は、その両端に設けた延設部で、ベース部3及びクリップ部4の他端側に設けた操作部3a,4aそれぞれを弾性的に押圧するよう配置されており、ベース部3及びクリップ部4の他端側に設けた操作部3a,4aを指で挟みつけて先端部を開き、その間に衣服のポケットなど適当個所を挟持させることにより、使用者の身体表面に装着することができる。なお、クリップ部4の操作部4aには、ストラップを取り付けるための透孔7が形成されている。
【0026】
本発明に係る着信表示装置1は、LCX携帯電話機にストラップ等で付属させて用いるので、あまり大型でないのが望ましく、本例では、長さ40mm以内、幅25mm以内、高さ20mm以内と成るように製作した。但し、LED(DL1,DL2,DL3)の点滅発光時の視認性を確保するため、カバー部2の上面2aは、ある程度の面積を備えることが望ましい。
【0027】
前記カバー部2,ベース部3及びクリップ部4は、適度の強度と耐食性とを有し且つ比較的軽量な材質であることが望ましい。また、カバー部材2における少なくとも基板10のLEDに面する部分2aは、透明か又は透光性を有することが必要である。本例では、カバー部2,ベース部3及びクリップ部4をいずれも透明なアクリル樹脂で製作した。但し、これに限定されるものではない。
【0028】
機能本体部である基板10及び電池ホルダー20の取付構造は、本例では以下の如くである。図3に示す如く、ベース部3の上面に支持柱12を立設し、この支持柱12に基板10の一部をネジ13で止め付ける。基板10と支持柱12との間には、アンテナ接続具11が配置され、このアンテナ接続具11に連結したアンテナATは、ベース部3における操作部3aの周縁部に沿って延設されている(図1,4参照)。従って本例では、基板10のベース部3(支持柱12)への取付手段が、アンテナATの基板10への接続手段を兼ねる構造となっている。
【0029】
電池ホルダー20は、基板10の裏面側へ、スペーサ23を介し、電極21,22により一体に連結される。電池BATは、電池ホルダー20の裏面側に設けた収納部へ装着する構成となっており、一方の電極21が、電池BATの表面を押さえる脱落防止手段となっている。なお本例では、電池BATに、電圧3V程度のコイン型リチウム電池(例えばCR1632)を使用したが、他の種類の電池でもよい。基板10及び電池ホルダー20は、ネジ13を適当に緩めることで、図8に示すように、支柱12を中心に回動させてベース部3に対しほぼ平行な方向へ引き出すことができる。この回動操作は、電池BATを電池ホルダー20に対し着脱する際に必要である。
【0030】
このようにしてベース部3上に取り付けられた基板10及び電池ホルダー20は、カバー部2によって覆われる。カバー部2の下端に形成した係止爪jを、ベース部3の側周面に形成した嵌合凹部kに係合させることにより、カバー部2を着脱可能に装着することが可能である。(図3参照)
【0031】
次に、本発明に係る着信表示装置1の機能本体である基板10の構成とその機能について説明する。当該基板10は、長さ約25mm×幅約18mmであって、図5に示す如き配線構造を有し、また、その回路構成は図6に示す如くである。応答信号を検知する受信手段は、アンテナAT、基板10上のコイルL1・トリマコンデンサCV1・コンデンサC7,C9,C10・抵抗R6等から成る同調回路、及びショットキーバリヤダイオードD1等で構成される。
【0032】
本例の受信手段は、LCX携帯電話機が指令所からの呼び出し信号を受けたときに発信する応答信号を検知するものであるが、応答信号に対する感度が高く、呼び出し信号には反応しないよう、同調回路の反応周波数帯域を狭く調整することが必要である。LCXケーブルによる列車無線が運用されている区域では、基地局と移動局(列車)との間の交信用電波(搬送波)が、LCXケーブルから常時輻射されている。そして、LCX携帯電話機の呼び出し信号は、列車無線の搬送波と共通の周波数(450MHz)が用いられている。これに対し、LCX携帯電話機が呼び出し信号を受けたときに発信する応答信号の周波数は412MHzである。そこで本例では、同調回路を構成するコイルL1・トリマコンデンサCV1・コンデンサC7,C9,C10・抵抗R6等の特性値を図6に例示する如く設定することにより、図7に示す如き周波数感度を得ている。すなわち、応答信号付近の410MHzと呼び出し信号の450MHzとを比較して、両者間に約15dBmの受信感度の差異を実現しており、その結果、応答信号に反応しやすく、呼び出し信号や他の周波数成分ノイズには反応しにくい受信手段となっている。
【0033】
ところで、LCX携帯電話機が使用する電波の出力は小さく、一般の携帯電話機の電波出力と比べて約10分の1程度である。従って、受信した応答信号の出力では、制御手段であるマイコンIC1に所定の動作を実行させるトリガーとして機能させるのが難しい。そこで本例では、トランジスタQ1と電池BATとを使用した増幅手段で応答信号を増幅したのち、マイコンIC1へ信号入力するように構成した。
【0034】
なお、検知対象とするLCX携帯電話機の応答信号は一般の携帯電話が使用する波長よりも長いので、受信感度を高めるには、なるべく長いアンテナを備えることが望ましい。そこで本例では、ベース部3の操作部3aを利用してアンテナATの実効長を確保し、受信能力を向上させている。(図1,4参照)
【0035】
本例の発光手段は、発光素子としての3個の高輝度青色LED(DL1,DL2,DL3)と、ダイオードを用いた高速スイッチング回路とを含む発光回路とで構成される。3個のLEDは、図4,5に示す如く、基板10の表面に適当間隔を置いて分散配置され、好ましくは各LEDが正三角形の頂点に位置するような配置とする。なお、LEDの個数は、2個又は4個以上とすることも妨げない。
【0036】
制御手段には、所要の制御プログラムを組み込んだマイコンIC1を用いた。また基板10上には、電圧制御用マイコンIC2も配設され、同調回路・増幅回路に対する印加電圧を一定(例えば2.1V)に制御している。さらに基板10上には、電池BATの電圧低下を監視するための電圧監視回路が設けられている。
【0037】
制御手段であるマイコンIC1は、ポート10(RB4,AN10)に、応答信号の増幅手段であるトランジスタQ1のコレクタが接続されている。
ポート14(RA2,AN2)には、電圧監視回路を介して、電池BATが接続されている。
ポート2,3(RC5,4)/5,6(RC6,7)/12,13(RC1,0)に、発光素子である3つの高輝度青色LED(DL1,DL2,DL3)が、スイッチング素子としてのショットキーバリヤダイオードD2,D3,D4等を介して接続されている。
ポート1(Vpp,RA3)及び18(Vdd)は、プログラムを書き換える際に外部機器を接続するためのインターフェースに繋がれている。
【0038】
マイコンIC1には、着信表示装置に以下のような機能を発揮させるための制御プログラムが書き込まれている。
(1)LCX携帯電話機が発信した応答信号を受信し、増幅された応答信号の入力が有ったときに、3つのLED(DL1,DL2,DL3)を順に点滅させる。この点滅は、マイコンIC1のポート2,3/5,6/12,13のレベルH/Lを適宜切り替えることで行なわれる。また点滅動作は、応答信号が入力されている間、継続する。
(2)応答信号の入力が無くなってから、所定時間(例えば5秒間)、LED(DL1,DL2,DL3)の点滅を継続させる。この点滅遅延時間の長さは、必要に応じ適宜設定することができる。
(3)応答信号の入力が無い状態が所定時間(例えば5秒以上)続いたときには、マイコンIC1は、動作電流がきわめて小さいスリープモードへ移行する。例えば、通常時の動作電流が0.3mAであるのに対し、スリープモード時は動作電流を5μA程度まで減少させる。応答信号の入力が有ったときは、ただちにスリープモードを解除し、前記(1)のLED点滅動作を実行する。
(4)ポート14に入力される電池電圧を監視し、電圧が基準値よりも低下(例えば初期値3Vに対し2.5Vに低下)したときに、LEDに所定の点滅動作を行なわせて、警告表示する。例えば、特定の1つのLEDだけを長い周期で点滅させる態様が考えられる。なお、応答信号の入力が有ったときのLED点滅動作(1)は、この電圧低下警告の点滅動作に優先する。またスリープモードへ移行する直前に電圧検査を行ない、電圧正常ならばスリープモードへ移行し、スリープモード時は電圧監視を行なわない。
(5)最初の電池装着時または電池交換時に、LED(DL1,DL2,DL3)を短時間発光させるランプテストを行なう。
【0039】
以上の如く構成された本発明に係る着信表示装置1は、携行するLCX携帯電話機に着信が有ったとき、3個の高輝度青色LEDを順次点滅させるから、発光状態の視認性が非常に良い。そして、呼び出しの終了後、つまり応答信号の発信終了後、数秒間はLEDの点滅を継続するから、それだけ鉄道沿線の作業員などLCX携帯電話機の所持者が、着信を看過する可能性を小さくできる。着信表示装置を衣服の外に露出させ、発光面が視野内に入るように携行することにより、LCX携帯電話機については衣服のポケット内に収納していたとしても、指令所等から呼び出しがあったとき、着信表示装置の点滅発光を視認して、着信のあったことを容易に気づくことができる。また、その周囲に人が居れば、その者が着信表示装置の点滅発光に気づいて、LCX携帯電話機の所持者に通知する可能性も高い。
【0040】
なお、LCX携帯電話機の使用電波は出力が小さいから、着信表示装置1をLCX携帯電話機からあまり離さないようにすることが望ましい。このため、応答信号を確実に検知できる距離までの長さに設定したストラップで、着信表示装置1とLCX携帯電話機とを連結することが考えられる。あるいは、LCX携帯電話機をポケットに収納した場合は、クリップ部4を用いて、衣服のポケット入口等に装着することが考えられる。
【0041】
本発明に係る着信表示装置1は、着信の無いときはスリープモードで待機するので、電池の消耗を押さえることができ、電池交換の間隔を非常に長くすることができる。また電池電圧を監視して、電圧が設定値以下になったときは警告表示を行なうものであるから、使用中に電池切れを起こす問題を未然に防げる。
【0042】
以上、本発明をLCX携帯電話機に適用した場合について説明したが、他の携帯通話装置に適用することを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0043】
1…着信表示装置 2…カバー部 3…ベース部 4…クリップ部 5…ヒンジ部 6…コイルばね 7…ストラップ用透孔 10…基板 11…アンテナ接続具 12…基板支持部 13…ネジ 20…電池ホルダー 21…電極(正極) 22…電極(負極) 23…スペーサ 24…開孔 AT…アンテナ BAT…電池 DL1〜DL3…発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯通話装置に付属され又は近接して配置され、携帯通話装置が呼び出し信号を受信したときに発信する応答信号を検知して発光するように構成された装置であって、
応答信号を検知する受信手段と、
受信した応答信号の増幅手段と、
複数の発光素子から成る発光手段と、
発光素子の発光動作を制御する制御手段と、
上記各手段へ動作用電力を供給する電池とを備え、
前記制御手段は、応答信号が入力されると、前記複数の発光素子を点滅させるよう設定されていることを特徴とする着信表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記発光素子の点滅を、応答信号の入力が終了してから所定時間継続させるように設定されている請求項1に記載の着信表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、応答信号の入力が所定時間以上無いときは、必要動作電力が小さいスリープモードへ移行するように設定されている請求項1又は2に記載の着信表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、電池電圧を監視して、電池電圧が設定値より低下したときに、発光素子を所定の態様で点滅させて警告するように設定されている請求項1乃至3のいずれかに記載の着信表示装置。
【請求項5】
前記携帯通話装置がLCX携帯電話機である請求項1乃至4のいずれかに記載の着信表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−23879(P2011−23879A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165813(P2009−165813)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(592077545)株式会社西無線研究所 (4)
【Fターム(参考)】