説明

石油および再生可能燃料のブレンド用の安定剤組成物

安定化された再生可能な燃料フィードストック、又は、そのような再生可能な燃料と石油系燃料とのブレンドを含んでなる燃料油組成物を開示する。また、再生可能な燃料フィードストック、又は、そのような再生可能な燃料と石油系燃料とのブレンドの安定性を増加させるための添加剤組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して燃料油組成物に関し、特に、再生可能燃料フィードストック、又は、そのような再生可能燃料と石油系燃料とのブレンドの安定化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
再生可能燃料は、石油ディーゼルの市場規模を拡大するためのカッターストックとして市場で益々受け入れられている。再生可能燃料と石油ディーゼルとのブレンドは、ディーゼルエンジンの燃料として使用され、加熱、発電、並びに、船、ボートおよび自動車での移動に利用されている。
【0003】
ブレンドされた燃料の再生可能なカッターストック部分は、一般的に、バイオディーゼルとして知られている。バイオディーゼルは、植物性油または動物性油の脂肪酸アルキルエステルとして定義される。バイオディーゼル製造において使用される一般的な油は、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、獣脂、ヒマワリ油、および使用済食用油または動物性脂肪である。
【0004】
ホールオイル(whole oils)をアルコール(主にメタノール)と、触媒(酸または塩基)、通常、水酸化ナトリウムの存在下で反応させることにより、バイオディーゼルを調製する。このバイオディーゼルの調製法は、CDプロセスとして知られ、多くの特許出願に記載されている(例えば、独公開特許第4209779号、米国特許第5,354,878号、欧州公開特許第562504号(その教示全体が、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0005】
バイオディーゼルは、米国環境保護庁(EPA)に法律的に登録された燃料および燃料添加物である。物質をバイオディーゼルと見なすためには、この物質/燃料は、添加剤を産生するために用いられる油脂または特定のプロセスに関係なく、ASTM D6751−03規格を満たさなければならない。ASTM D6751規格は、バイオディーゼルの質が、20%以下のブレンドレベルのブレンドストックとして使用されることを保証することを目的とする。
【0006】
バイオディーゼルには多くの政治的および環境的利点があるが、この物質を石油ディーゼルの代替燃料として、またはブレンドストックとして利用する際に考慮しなければならない欠点もある。ブレンド燃料が市場でより受け入れられるようにするためには、最終消費者は、この燃料が均一で、安定であり、既存の設備に害を及ぼさないという確信が無ければならない。
【0007】
バイオおよびバイオブレンド石油燃料の均一性/安定性を確実にするために考慮しなければならない3つの独立した貯蔵および使用条件/パラメータがある。最終消費市場では、バイオフィードストックまたはバイオ/石油燃料混合物は、1)貯蔵中(温度は低温から中温、0〜49℃(32〜120°F)で長時間)、2)車両燃料システム中(温度は周囲温度およびエンジンシステムに応じてさらに高温、60〜70℃(140〜175°F)であるが、燃料は通常の貯蔵時間よりも短い期間、これらのさらに高い温度に付される)、及び3)エンジン中(またはエンジン付近)(温度は、さらに短い期間であっても注入またはリサイクル前に150℃(302°F)にも達する)、安定であることが要求される。
【0008】
貯蔵中、車両中およびエンジン中のバイオディーゼルおよびバイオディーゼル/石油ディーゼル燃料ブレンドの安定性に影響を及ぼす主な要因は、バイオディーゼル化学組成、使用および貯蔵の環境条件、ならびにバイオディーゼルが後にブレンドされる石油燃料の特性である。
【0009】
バイオ由来の燃料は、石油系燃料と比較して、本質的により酸化的に不安定であることはよく知られている。本質的に不安定であることは、石油系燃料と比較して、バイオ燃料中の多量のオレフィン(不飽和)物質が原因である。例えば、通常の#2ディーゼルは5%未満のオレフィンを含有し、一方、大豆などのバイオフィードは85%より多いオレフィンからなる。
【0010】
バイオディーゼルまたはバイオディーゼル/石油ディーゼルブレンドを空気(酸素)にさらすと、燃料の酸化が起こる。このプロセスは「酸化的不安定性」として知られている。燃料の酸化の結果、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、およびこれらの官能基のさらなる反応生成物が形成され、その一部はポリマーを生成する。
【0011】
バイオディーゼルは、環境因子によっても影響を受け、この環境因子は、使用中および貯蔵中の貯蔵安定性に影響を及ぼす。これらの環境因子としては(i)水分量、(ii)大気にさらされている表面積、(iii)貯蔵容器の透明性(太陽光への暴露)、(iv)微生物の存在、(v)燃料の前処理(合計酸値TAV)、(vi)輸送または貯蔵中の遊離金属への暴露、ならびに(vii)天然保存料(例えば、トコフェロール)の存在または非存在が挙げられる。
【0012】
水への暴露も、バイオディーゼルおよびバイオディーゼル/石油ディーゼルの貯蔵安定性に悪影響を及ぼす。水との反応の結果、エステル基が加水分解され、バルク組成の酸値の増加に影響する。
【0013】
水も生体成長の促進に不可欠な構成要素である。微生物は、これらの正常な代謝経路において酵素(例えばリパーゼ)を産生し、利用するので、これらの生物は、バイオ燃料および石油燃料を消化し、その結果、バルク組成に有害な変化(例えば、スラッジ形成)をもたらす。
【0014】
露光は、バイオ燃料およびバイオディーゼル石油ディーゼルブレンドの酸化の速度および程度を大幅に促進する。光由来のヒドロペルオキシド形成の化学的メカニズムは、フリーラジカル過酸化物形成と異なる。光により促進されたバイオ燃料またはバイオディーゼル/石油ディーゼルブレンドの酸化は、通常の酸化防止剤の使用により排除できない。
【0015】
バルク燃料中に遊離金属が存在することは、過酸化物の形成および分解の両方を触媒する。特に活性な酸化触媒の例は.銅およびマンガン、ならびにその錯体である。金属は、バイオディーゼルまたはバイオディーゼル/石油ディーゼルの加工、輸送、または貯蔵の際にシステムに侵入し得る。
【0016】
天然の保存料、例えば、トコフェロール(ビタミンE誘導体)は、多くの天然油中に存在する。しかし、これらの物質は、ホールオイルの加工において除去される場合がある。これは、再販売される付加価値製品を製造するために故意に行われるか、または熱分解もしくは漂白により故意ではなく行われる。
【0017】
一般に、バイオ燃料およびそれらのブレンド(酸素および水の非存在下)は熱的に安定である。しかし、高温で長時間保存すると、他の分解プロセス(微生物、加水分解、および/または酸化)の速度が増加し、その結果、貯蔵不安定性が増大する。
【0018】
環境貯蔵因子およびバイオ燃料オレフィン組成物は、バルクバイオディーゼルまたはバイオディーゼル/石油ディーゼルブレンドの不安定性に大きく影響を及ぼす。酸化の分解生成物、例えば、沈殿およびガム状物は、エンジンノズルを詰まらせるか、または望ましくない堆積物を生成させ、その結果エンジン損傷の原因となり得る。バイオ燃料およびバイオ/石油燃料ブレンドの酸化ならびにこれらのその後の使用は、燃料製造業者、エンジン製造業者および最終燃料使用者の大きな関心事である。
【0019】
後にバイオディーゼルとブレンドされる石油燃料の組成も、燃料不安定性において重要な因子である。燃料が酸化生成物を形成する傾向は、超低硫黄ディーゼル(ULSD)とバイオディーゼルとのブレンドにおいて個々の成分と比較して高まることを裏付けるデータがある。具体的には、燃料ブレンドを促進酸化(ASTM法D−2274)に付した場合に、生成されるガム状物質の量が増加する。
【0020】
燃料の安定性を向上または制御するための方法の一つは、安定性添加物を利用することにより、バイオブレンドストックを処理するか、またはブレンドされたバイオ/石油燃料を処理するかのいずれかである。
【0021】
バイオ燃料が安定化を必要とすることは一般的に認められているが、現在、バイオ燃料またはバイオ/石油燃料ブレンドの様々な分解経路を安定化させるために添加剤を使用することを記載する文献は少ない。
【0022】
近年、バイオ安定性に取り組む出願があるが、非常に限定された方法である。米国特許出願第20040139649号(名称「Process for increasing the storage stability of bio diesel and the use of 2,4−di−tert−butylhydroxytoluene for increasing the storage stability of bio diesel(バイオディーゼルの貯蔵安定性を増大させる方法およびバイオディーゼルの貯蔵安定性を増大させるための2,4−ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエンの使用)」は、バイオディーゼルを安定化させるための2,4−ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)の使用を記載している。この出願は主にフリーラジカル阻害剤として機能する1つの酸化防止剤の使用に焦点を合わせている。別の最近公開された米国特許出願第20040123517号、「Additives and fuel oil compositions(添加物および燃料油組成物)」は、一つには、フリーラジカル阻害剤としてのヒンダード(hindered)フェノールの使用を記載している。この出願はBHTのみに焦点を合わせているので、この出願も範囲が限定される。
【0023】
これらの出願は、バイオ燃料またはバイオ/石油燃料ブレンドの多くの分解経路を安定化するために必要なこれらの添加剤の組み合わせの使用を、主張も、示唆も、教唆もしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】独公開特許第4209779号明細書
【特許文献2】米国特許第5,354,878号明細書
【特許文献3】欧州公開特許第562504号明細書
【特許文献4】米国特許出願第20040139649号
【特許文献5】米国特許出願第20040123517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
[原文の段落0024]
本発明は、従来技術の不備に取り組み、一つには、バイオフィードストックおよびバイオ/石油燃料ブレンドの貯蔵および使用中の不安定性に関連する分解の様々な原因に関する。
[原文の段落0025]
本発明は、燃料油組成物に関し、特に、再生可能燃料フィードストックまたは石油系燃料とかかる再生可能燃料とのブレンドの安定化に関する。さらに、本発明は、貯蔵された燃料油の安定化を増大させる方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
一実施態様において、本発明は、例えば、ディーゼルエンジンにおいて燃料として使用される燃料油組成物を記載する。この組成物は、再生可能成分、石油系成分、および多機能安定剤パッケージを含む。
【0027】
本発明の別の実施態様は、前記燃料油の使用および貯蔵における安定性を向上させる方法であって、燃料油に、バイオディーゼルブレンドストックまたはバイオディーゼル/石油ディーゼル燃料ブレンドのいずれか、つまり、フリーラジカル鎖停止剤、フリーラジカル分解剤、酸スカベンジャー、光化学安定剤、ゴム分散剤および金属イオン封鎖剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む添加剤製剤(additive formulation)を添加することにより、安定性を向上させる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】屋内酸化試験装置を表す図である。
【図2】フリーラジカル鎖停止剤の再生可能燃料安定性に対する影響を表すグラフである
【図3】過酸化物分解剤の再生可能燃料安定性に対する影響を表すグラフである。
【図4】酸スカベンジャーの再生可能燃料安定性に対する影響を表すグラフである。
【図5】光化学安定剤の再生可能燃料安定性に対する影響を表すグラフである。
【図6】金属イオン封鎖剤の再生可能燃料安定性に対する影響を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態の説明において、明確にするために特定の専門用語用いる。しかし、本発明は選択された特定の用語に限定されることを意図せず、それぞれの特定の用語は、類似した目的を達成するために同様の方法で行われる全ての技術的等価物を包含すると理解するべきである。さらなる用語の技術的等価性は、本発明に関連する分野の当業者には容易に理解されるであろう。
[発明の詳細な説明]
本発明は、燃料油組成物、特に、安定化された再生可能燃料フィードストックまたは石油系燃料とかかる再生可能燃料とのブレンドに関する。本発明は、再生可能燃料フィードストックまたは石油系燃料と再生可能燃料とのブレンドの安定性を増大させるための添加剤組成物にも関する。
【0030】
一実施形態において、本発明は、ディーゼルエンジにおいて燃料などとして使用される燃料油組成物を記載する。この組成物は、再生可能なバイオフィードストック成分、石油系成分、および多機能安定剤パッケージを含む。
【0031】
本発明の実施形態において、再生可能なバイオフィードストック成分は、エネルギー源として利用できる、天然の補充可能なフィードストック由来の有機物質である。再生可能な成分の好適な例としては、これらに限定されないが、バイオディーゼル、エタノール、およびバイオマスが挙げられる。他の再生可能な化合物は当業者に周知である。
【0032】
本発明の実施形態において、「バイオディーゼル」とは、植物性油または動物性脂肪由来の長鎖脂肪酸のすべてのモノアルキルエステルをいう。
【0033】
バイオディーゼルは、通常、ホールオイル(whole oil)をアルコールと、好適な触媒の存在下で反応させることにより製造される。ホールオイルは、植物または動物源由来の天然のトリグリセリドである。ホールオイルをアルコールと反応させて、脂肪酸エステルおよびグリセリンが得られる反応は、一般に、エステル交換と呼ばれる。あるいは、脂肪酸をアルコールと反応させて、脂肪酸エステルを形成することにより、バイオディーゼルを製造することができる。
【0034】
トリグリセリドの脂肪酸セグメントは、一般的には、C10〜C24脂肪酸から構成され、この脂肪酸組成物は、単一であるか、または様々な鎖長の混合物であり得る。本発明のバイオディーゼルは、単一フィードソースの成分、または植物、もしくは動物起源の複数のフィードストックのブレンドを含むことができる。一般的に使用される単一または組み合わせフィードストックとしては、これらに限定されないが、ココナツ油、トウモロコシ油、ヤシ油、ナタネ油、紅花油、ヒマワリ油、大豆油、トール油、獣脂、ラード、黄色油脂、イワシ油、ニシン油、および使用済み食用油脂が挙げられる。
【0035】
いずれかのエステル化プロセスにおいて使用される好適なアルコールは、脂肪族または芳香族、飽和または不飽和、分岐または直鎖、第一、第二または第三であってもよく、約C−1〜約C−22の長さの炭化水素鎖を有し得る。産業的かつ一般的に選択されるのはメタノールである。
【0036】
バイオディーゼル組成は、ASTM D−6751(その全教示は本発明の一部として参照される)において記載されている特定のパラメータにより規定される。脂肪酸エステルは、ホールオイル供給源またはその製造に用いられるプロセスに関係なく、ASTM D−6751に記載されている確立された特定のパラメータを満たし、維持しなければならない。
【0037】
ASTM D−6751規格は、バイオディーゼル(B100)が炭化水素燃料の好適なブレンドストックと見なされるための要件を概説する。
【0038】
本発明の実施形態において、石油系成分は、精製石油由来またはフィッシャー・トロプシュ(Fischer−Tropsch)プロセスの生成物としての炭化水素である。これらの生成物は、一般に、石油留出燃料と呼ばれる。
【0039】
石油留出燃料は、様々な留出燃料タイプを包含することが記載されている。これらの留出燃料は、自動車ディーゼルエンジンおよび非路上用途を包含する様々な用途において、可変の速度および負荷条件ならびに比較的一定の速度および負荷条件下の両方で使用される。
【0040】
石油留出燃料油は、大気または真空留出物を含むことができる。留出燃料は、分解ガスオイルあるいは任意の比率の直留または熱もしくは触媒により分解された留出物のブレンドを含むことができる。多くの場合、留出燃料を、水素処理または燃料特性を改善するための他の処理などのさらなる処理に付すことができる。この物質は、ガソリンまた中間留分燃料油と呼ぶことができる。
【0041】
ガソリンは、脂肪族、オレフィン、および芳香族炭化水素、ならびに任意にアルコールまたは他の酸素化成分の低沸点混合物である。一般的には、混合物は、およそ室温から約225℃までの範囲で沸騰する。
【0042】
中間留分を、自動車、飛行機、船およびボートでの移動の燃料として、家庭暖房および発電のバーナー燃料として、および多目的固定ディーゼルエンジンにおける燃料として利用できる。
【0043】
エンジン燃料油およびバーナー燃料油は、一般に38℃より高い引火点を有する。中間留分燃料は、脂肪族、オレフィン性、および芳香族炭化水素ならびに約350℃までの沸点を有する他の極性および非極性化合物の高沸点混合物である。中間留分燃料としては、一般に、これらに限定されないが、ケロシン、ジェット燃料、および様々なディーゼル燃料が挙げられる。ディーゼル燃料は、グレード番号1−ディーゼル、2−ディーゼル、4−ディーゼルグレード(軽および重)、グレード5(軽および重)、ならびにグレード6残留燃料を包含する。中間留分規格は、自動車用途についてはASTM D−975(その全教示は本発明の一部として参照される)、およびバーナー用途についてはASTM D−396(その全教示は本発明の一部として参照される)に記載されている。
【0044】
航空用中間留分燃料は、JP−4、JP−5、JP−7、JP−8、ジェットA、ジェットA−1、JP−4およびJP−5などの用語により表示される。ジェット燃料は、米国軍用規格MIL−T−5624−N(その全教示は本発明の一部として参照される)により定義され、JP−8は、米国軍用規格MIL−T83133−D(その全教示は本発明の一部として参照される)により定義される。ジェットA、ジェットA−1およびジェットBはASTM規格D−1655および国防基準91 91(その全教示は本発明の一部として参照される)により定義される。
【0045】
記載された異なる燃料(エンジン燃料、バーナー燃料および航空燃料)はそれぞれその仕様書要求事項(それぞれ、ASTM D−975、ASTM D−396およびD−1655)に対して、許容可能な硫黄含量限度を有する。これらの限度は、一般に、オンロード燃料についてはおよそ最高15ppm硫黄、オフロード用途については最高500ppm硫黄、航空燃料については最高3000ppm硫黄までである。
【0046】
燃料を近代エンジン技術(NOxトラップ、微粒子トラップ、触媒系)に対して適合するために、そして硫黄に富む燃料の燃焼の環境的悪影響を抑えるために、硫黄含量限度(特にD−975オンロード燃料において)が設けられた(Reference World−Wide Fuel Charter、2000年4月、ACEA発行、Alliance of Automobile Manufacturers、EMA and JAMA(その全教示は本発明の一部として参照される))。
【0047】
米国において、環境保護庁(EPA)規定は、超低硫黄(ULS)規格、特に最終燃料中15ppm(質量)未満の硫黄を満足するオンロード燃料の硫黄含量を要求する。同様の規定も世界的に定着している。
【0048】
オフロードに用いられる燃料(海事、電力、家庭暖房)は現在、15ppm限度を免除されているが、硫黄含量については2010年までに規制される。
【0049】
再生可能なバイオフィードストック成分および石油系成分を次にブレンドして、混合燃料を製造することができる。本発明の実施形態において、混合燃料は、「バイオ/石油燃料ブレンド」と定義される。バイオ/石油燃料ブレンドは、バイオディーゼルと石油系燃料またはフィッシャー・トロプシュ(Fischer−Tropsch)プロセスから誘導される燃料との混合物である。これらのブレンドは、Bxx表記法により表示され、ここで、xxはブレンドの再生可能なバイオフィードストック成分組成(%)を示す。ブレンドは、バイオディーゼルと言う名称で入手可能な場合もあるが、厳密に言うと、バイオディーゼルは通例、100%バイオ成分(B100)を指す。
【0050】
所定の最終用途におけるバイオ燃料のブレンド要件は、連邦および/または州指令により指示されるか、または連邦および/または州奨励による市場主導であり得る。
【0051】
ブレンドされた燃料組成物は、約0.5体積%(B.5)〜約50体積%(B50)の再生可能なバイオフィードストック成分を含有し得る。一般に、市場における現在のオンロード用途は、約B2〜約B20の間の範囲であるが、さらに高いブレンドを将来利用できるかもしれない。
【0052】
オフロード使用、例えば、家庭暖房用石油、発電および航海は、一般的には、ブレンドの再生可能なバイオフィードストック成分含量に対する制限が緩和される。これらの用途における再生可能なバイオフィードストック成分の使用範囲は、99.9%(B99.9)もの高含量であり得る。
【0053】
ブレンドの石油系成分含量は、一般に、オンロード用途については約99.5%〜約50%の範囲である。石油系成分含量は、最終使用要件に応じて様々である。石油系成分の使用範囲は、一般的には、約0.1%〜約95%の間である。
【0054】
本発明の別の態様は、バイオディーゼルまたはバイオ/石油燃料ブレンドの安定性である。本発明の実施形態において、「安定性」とは、環境および貯蔵因子に対する暴露の結果としての、貯蔵中、車両中、またはエンジン中の組成の変化に対する、バイオディーゼルまたはバイオ/石油燃料ブレンドの耐性を意味する。
【0055】
本発明の実施形態において、多機能安定剤パッケージは、バイオディーゼルまたはバイオ/石油燃料ブレンドの安定性を増加させるために選択される添加剤を包含する。
【0056】
多機能安定剤パッケージにより遅らせることが求められる組成変化は、(i)臭気(揮発性分解生成物由来)、(ii)全酸価(TAV)の増加、(iii)粘度の増加、(iv)変色、および(v)沈殿および/またはゴム状物質の形成についての傾向の増加である。
【0057】
本発明は、燃料不安定性に関連する問題に対処するための添加剤の組み合わせ(多機能安定剤パッケージ)を記載する。本発明において用いられる、バイオディーゼルおよびバイオ/石油燃料ブレンドの使用中および貯蔵中安定性に影響を及ぼす好適な添加剤は、(i)フリーラジカル鎖停止剤、(ii)過酸化物分解剤、(iii)酸スカベンジャー、(iv)光化学安定剤、(v)ゴム分散剤、および(vi)金属イオン封鎖剤である。
【0058】
多機能安定剤パッケージ中の各添加剤の種または科は、特異的分解経路において対抗または作用するために特異的に選択される。これらの添加剤は選択された態様で機能するが、ある添加剤は二重機能も有し得ることが認められている。かかる二重能力の例は第三アミンである。これらのアミンは同時に過酸化物分解剤(PDA)として、および酸スカベンジャー(AS)として機能することができる。
【0059】
製剤に適した化学物質の第一群はフリーラジカル鎖停止剤(FRCTA)である。これらの添加剤は、主に、過酸化物の増加速度を遅らせるように機能する。この科(ファミリー)の好適な例のリストは、ヒンダード(hindered)フェノール(2,6−ジ−tertブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、没食子酸オクチル、t−ブチルヒドロキノン(TBHQ)、tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(BHA))、フェニレンジアミン(N、N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミンおよびN−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン)、およびニトロ芳香族化合物(ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロ−トルエン、ニトロ−ナフタレン、およびジニトロ−ナフタレンおよびアルキルニトロベンゼンおよびポリ芳香族化合物)を包含するが、これらに限定されない。
【0060】
製剤に適した第二の化学物質群は過酸化物分解剤(PDA)である。これらの添加剤は、酸素と反応して新しい過酸化物を増殖させることができる新規ラジカル中間体を生成させることなく、すでに形成された過酸化物を分解するように、主に機能する。機能的種類の非限定的リスト、および特定の炭化水素鎖長に基づく例を本明細書に記載する。各官能基種について例示されるアルキル基は、(C)オクチルであるが、約C〜C30の範囲の他の鎖長、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、アイコシル、ウンアイコシル、ドコシル、トリコシル、およびテトラコシル、ならびにこれらの組み合わせも好適である。
【0061】
具体的な種類としては、トリ−アルキルリン化合物、例えば、リン酸トリオクチル、アルキル硫黄化合物、例えば、オクタンチオール、オクタンスルフィドおよびオクタンジスルフィド、ならびに第三窒素化合物、例えば、ジメチルオクチルアミン、ジオクチルメチルアミン、トリオクチルアミンが挙げられる。第三アミンはスキーム1(化1)に示される化学式により記載される。
スキーム1
【化1】

ここで、スキーム1(化1)の式中、
R、R’、R’’は、アルキル−直鎖、分岐、飽和、不飽和、C1−30、芳香族、ポリアルコキシ、または環状であり、
R、R’はまた、他のヘテロ原子(例えば、O、N、S、およびP)、並びにそれらから得られる官能基を含有してもよく、
R’およびRを、3〜12員環系に組み入れることができる。
【0062】
アミン官能基種は、第三ポリアミンも包含する。第三ポリアミンは、スキーム2(化2)に図示される式により記載される、
スキーム2
【化2】

ここで、スキーム2(化2)の式中、
R、R’は、アルキル−直鎖または分岐、C1−30、芳香族、環式、多環式、ポリアルコキシ、またはカルボニルであり、
R、R’は、他のヘテロ原子(例えば、O、N、S、およびP)、並びにそれらから得られる官能基を含んでもよく、
RおよびR’は、3〜12員環系に組み入れることができ、
Xは1〜6であり、
Yは1〜6である。
【0063】
カルボニル部分は、ポリアミン部分を他の有機官能基と架橋することができる。これらの官能基としては、アミド、イミド、イミダゾリン、カーバメート、尿素、イミン、およびエナミンが挙げられる。親アミンまたはポリアミンも、これらの対応するアルコキシレートに変換できる。アルコキシレートは、1〜100モル当量のアルコキシル化剤の窒素部分との反応から誘導される生成物である。必要とされるアルコキシル化剤は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびエピクロロヒドリン、またはこれらの混合物を含む群から選択される。アルコキシレートは、1つのアルコキシル化剤または薬剤の混合物から製造できる。アルコキシル化剤の混合物から誘導されるアルコキシレートは、薬剤をアミンに段階的に添加して、ブロックポリマーを形成することにより調製できるか、または混合剤として添加して、ランダムブロック/交互アルコキシレートを形成することができる。これらのオキシアルキレートは、有機酸でさらに誘導体化して、エステルを形成できる。
【0064】
一般に、P、S、またはN原子を含む任意の化合物を、本発明の要求を満たすために用いることができると理解すべきである。
【0065】
製剤に適した化合物の第三の群は酸スカベンジャー(AS)である。これらの添加剤は、主に、酸化プロセスにおいて形成される酸を処理する働きをする。これらのスカベンジャーは、バイオディーゼルの酸性度における変化を防止するために重要である。燃料の酸性度の増加は、バイオエステルの加水分解、存在する過酸化物を分解してアルデヒドおよびケトンを形成すること等の望ましくない反応を触媒し、中間体アルデヒドおよびケトンのアルドール型化学反応の速度を増加させることにより、バイオディーゼルの分解を促進する。これらの反応の生成物は、燃料における固体またはゴム状物質の形成に関与する。
【0066】
この科の例のリストは、第一、第二、および第三アミン、およびこれらの誘導体を包含するが、これらに限定されない。この科のアミン窒素は、直鎖、分岐、飽和、不飽和、または環状、炭化水素、芳香族またはポリ芳香族基、水素、あるいはこれらの基の組み合わせと結合することができる。この窒素原子に結合する各炭化水素基は、約C〜C30原子を含むことができる。飽和アルキルアミンの場合、この基は、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ウンエイコシル、ドコシル、トリコシル、およびテトラコシルとして定義できる。
【0067】
酸スカベンジャーとしても機能できる好適なアミンのサブクラスはポリアミンである。本発明の好適なポリアミンは、ポリエチレンポリアミン、例えば、EDA(エチレンジアミン)、DETA(ジエチレントリアミン)、TETA(トリエチレンテトラアミン)およびそれらの高級同族体、これらのアルキル類似体(これらに限定されないが、N−ココ−エチレンジアミン、N−オレイル−エチレンジアミン、およびN−ブチル−エチレンジアミンにより例示される)、ならびにプロピルおよびヘキシルなどのこれらの産業的に利用可能なスペーサーベースのこれらの類似体(これらに限定されないが、ジプロピレントリアミン、およびビス−ヘキサメチレントリアミンにより例示される)、およびこれらのその後の誘導体、例えば、エステルアミン、アミドアミン、イミドアミン、イミダゾリン、カーバメート、尿素、イミン、およびエナミンである。スキーム3(化3)は、酸スカベンジャーを説明する一般式を図示する。
スキーム3
【化3】

ここで、スキーム3(化3)の式中、
R、R’は、H、アルキル−直鎖、分岐、飽和、不飽和、C1−30、芳香族、環状、ポリアルコキシおよびカルボニルであり、
R、R’はまた、他のヘテロ原子(例えばO、N、S、およびP)、並びにそれらから得られる官能基を含むことができ、
R’およびR’は、3〜12員環系に組み入れることができ、
Zは、Rであるか、または、次の化学式4
【化4】

であらわされるものであり、化学式4の式中、
Xは1〜6であり、
Yは1〜6である。
【0068】
製剤に適した化学物質の第四群は光化学安定剤(PCS)である。これらの添加剤は、増感剤の存在下で、光と酸素の相互作用により発生する一重項酸素と主に反応するように機能する。光酸化は、例えば、BHT、BHAおよびトコフェロールなどのフリーラジカル鎖停止剤として機能する添加剤により抑制できない。
【0069】
光酸化は、バイオエステルよりも迅速に一重項酸素と反応する分子を導入することにより中断できる。この科の例のリストは、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、例えば、ピペリジンを包含するが、これに限定されない。
【0070】
製剤に適した化学物質の第五群はゴム分散剤(GD)である。これらの添加剤は、主に、精製後に燃料中で見られるか、または酸化または熱的破壊の副生成物であるかのいずれかであるポリマーまたは高分子量化合物を分散させるように機能する。この機能を実施するために適用可能である化学物質の非限定的リストは、エチレンおよび不飽和エステル、ビニルアルコール、ビニルエーテルおよびこれらの有機酸とのエステル、プロピレン、エチレン、イソブチレンの不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸およびフマル酸)との付加物、ならびにこれらのアミドまたはイミド誘導体、アクリル酸およびこれらのアミドまたはエステル誘導体、ポリスチレン、ならびにこれらのモノマーの組み合わせから作製されるポリマーである。
【0071】
製剤に適した化学物質の第六群は金属イオン封鎖剤(MAS)である。これらの添加剤は、主に、バイオディーゼルまたはバイオ/石油燃料ブレンド中に存在できる金属をキレート化するように機能する。この科の例のリストは、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、クエン酸、および工業規格DMD(N,N−ジサリチリデン−1,2−プロパンジアミン)を包含するが、これらに限定されない。
【0072】
多機能安定剤パッケージの各成分を、バイオディーゼルまたはバイオ/石油ブレンドを有効に安定化させるために必要な比で組み合わせることができる。
【0073】
一般に、フリーラジカル鎖停止剤は、製剤中、全安定剤組成物の約0.0〜約100%の間で存在することができ、フリーラジカル分解剤は製剤中、0〜100%の間で存在することができ、光化学安定剤は製剤中、約0.0〜約100%の間で存在することができ、金属イオン封鎖剤は製剤中、約0.0〜約25%の間で存在することができる。
【0074】
一般に、パッケージは約25〜約85%のフリーラジカル鎖停止剤、約15〜約65%のフリーラジカル分解剤、約0.0〜約10%の光化学安定剤、および約1〜約3%の金属イオン封鎖剤を含む。
【0075】
本発明はさらに、バイオおよびバイオ/石油燃料ブレンドを安定化させるために前記添加剤を加えるプロセスを提供する。これらの添加剤をB100に添加することができ、このB100を次に石油系燃料とブレンドすることができるか、または添加剤をバイオ/石油ブレンド燃料に直接添加することができる。
【0076】
添加剤パッケージ投与速度は、環境条件(例えば、湿度、貯蔵温度、露光)、燃料処理、および貯蔵条件(例えば、空気にさらされている表面積、貯蔵期間、先の処理からの負荷、微生物、金属および水を包含する系中の不純物)、バイオフィード(脂肪酸組成物)および石油系燃料(粗スレートおよび処理)の特性、ならびにこれらの個々のブレンド比に直接関連する。
【0077】
一般に、添加剤がバイオおよびバイオ/石油ブレンドの使用中および貯蔵中安定性の保護をもたらす有効範囲は、約0.005〜約3体積%のB100またはバイオ/石油燃料ブレンドである。
【0078】
本発明の別の態様は、添加剤組成物/パッケージの取り扱い特性である。パッケージは、バイオ燃料およびバイオ燃料/石油燃料ブレンドの使用中および貯蔵中安定性を向上させるために機能するだけではなく、燃料市場における使用を可能にする、ある特性も有するべきである。添加剤パッケージは、燃料系成分と適合可能でなければならず、これは、北国の冬の気候での使用の温度で、取り扱い可能(ポンプでくみ上げ可能であるために十分低い粘度)であり、流体でなければならない。一般に、燃料添加剤は約−40℃で液体であることが必要とされる。
【0079】
本発明において選択された製剤は、不安定性メカニズム(酸化的不安定性、加水分解的不安定性、および熱不安定性)を著しく阻害すること、および燃料の変化(酸性度、粘度、色、臭気、およびゴム状物質形成傾向)を実質的に減少させ、これによりバイオ燃料およびバイオ/石油燃料ブレンドの貯蔵中および使用中安定性を劇的に増大させて、バイオ燃料およびバイオ/石油燃料ブレンド両方の不安定性の様々な態様に明確に対処する。多機能安定性パッケージは、石油産業において利用される添加剤についての全ての取り扱い能力要件にも対処する。
【0080】
さらに、本明細書において記載される多機能安定性パッケージと、例えば、(a)静電散逸/導電性改良添加剤、(b)低温操作性/コールドフロー添加剤、(c)腐食抑制剤、(d)潤滑性改良剤、(e)セタン価向上剤、(f)洗剤、(g)色素およびマーカー、(h)氷結防止添加剤、(i)殺生物剤、および(j)乳化破壊剤/曇り防止添加剤などの、燃料油において一般的に用いられる当業者に周知の他の好適な添加剤との組み合わせは、本発明の一部とみなされる。
【0081】
静電散逸/導電性添加剤は、炭化水素燃料および溶媒における静電着火の危険性を最小限に抑えるために使用される。静電気は、2つの異なる非導電性材料間で摩擦により移動できることが広く知られている。これが起こる場合、このようにして生じた静電気は、接触材料の表面で現れる。生じた電荷の大きさは、各材料の性質、さらに詳細には、それぞれの伝導性に依存する。静電帯電は、高表面積を有する導管中または「微細」フィルターを通って溶媒および燃料が流れる場合に生じることが知られている。静電着火および爆発の可能性は、製品取り扱い、移送および輸送中におそらく最も高くなる。このように、石油産業にとって最大の関心事である状況は、電荷が可燃性液体中またはその周りで蓄積する状態であり、放電の可能性は発火につながり、おそらくは重大な火災または爆発につながる。接地(即ち、「アース」)および接着した容器などの、充填される容器上の静電気の蓄積を防止するために設計された対策手段が通常用いられる。しかし、接地および接着のみでは、低導電性、揮発性有機液体中の静電気の蓄積を予防するためには不十分であることが認識されている。有機液体、例えば、留出燃料、例えば、ディーゼル、ガソリン、ジェット燃料、タービン燃料およびケロシン、ならびにおよび比較的汚染物質のない軽炭化水素油、例えば、有機溶媒および洗浄液は本質的に不十分な導体である。静電気は、これらの流体中に蓄積する。その理由は、電荷がこれらの液体を通って非常にゆっくりと移動し、接地された表面に到達するまでに相当な時間を要するからである。電荷が散逸するまでに、高い表面電位が達成され、これにより火花が出て、その結果、着火または爆発し得る。低伝導性有機液体によりもたらされる危険性の増加は、それぞれの流体の伝導性を増加させるための添加剤の使用により対処できる。液体の伝導性の増加は、接地された容器の内部表面により液体中に存在する電荷が伝導されてなくなるために必要な時間を実質的に減少させるであろう。
【0082】
燃料が通常操作上の問題を引き起こす温度より低い温度で使用者および操作者が燃料を取り扱うことができるようにするために、低温操作性/コールドフロー添加剤が燃料において使用される。留出燃料、例えば、ディーゼル燃料は、一つには、燃料中のワックス状固体の形成のために、低温で流量が減少する傾向がある。留出燃料の流量の減少は、精製過程および内燃機関における留出燃料の輸送および使用に影響を及ぼす。これは、冬期、特に、燃料中で固体形成が始まる温度(一般に、曇り点(ASTM D 2500、その全教示は本発明の一部として参照される)またはワックス出現点(ASTM D 3117、その全教示は本発明の一部として参照される)と呼ばれる温度に留出物がしばしばさらされる北方で特に問題である。燃料中のワックス状固体の形成は、時間内に燃料が流れることを本質的に妨害し、かくして精製パイプおよびエンジン燃料供給ラインなどの輸送ラインを詰まらせる。留出燃料消費中の低温条件下で、ディーゼルエンジンにおけるように、ワックス沈殿およびゲル化はエンジン燃料フィルターを詰まらせ、その結果、エンジンが操作不能になり得る。
【0083】
潤滑性改良剤は、燃料の潤滑度を増大させ、これは燃料がエンジン中の接触金属表面上での摩耗を防止する能力に影響を及ぼす。燃料の不十分な潤滑能力の起こり得る悪影響は、エンジン部品(例えば、燃料注入ポンプ)の初期の不具合であり得る。
【0084】
腐食抑制剤は、燃料および燃料中に存在する物質と、エンジン部品との有害な相互作用を防止または遅延させるために利用される添加剤の一群である。燃料に対して腐食抑制をもたらすために使用される添加剤は、一般に、潤滑性改良剤としても機能する。これらの添加剤は、駆動金属部品の表面をコーティングして、金属の水との相互作用を抑制する。このコーティングは、駆動金属部品間の潤滑バリヤとしても機能し、その結果、摩耗が減少する。
【0085】
セタン価向上剤は、中間留分の燃焼特性を改善するために使用される。米国特許第5,482,518号(その全教示は本発明の一部として参照される)で論議されているように、ディーゼルエンジンにおける燃料着火は、圧縮行程中にシリンダー中のピストンが動いて、シリンダー容積が減少する際に、空気圧縮による発熱によって達成される。エンジンにおいて、空気をまず圧縮し、次いで、燃料をシリンダー中に注入する。燃料が加熱された空気と接触すると、気化して、最終的に自己発火温度に達したら燃焼し始める。追加の燃料を圧縮行程中に注入し、最初の炎が生じると、燃料はほとんど瞬間的に燃焼する。このように、燃料注入の開始からシリンダー中での火炎の出現までに、ある時間がかかる。この時間は通常「点火遅れ」呼ばれ、「ディーゼルノック」を回避するためには、比較的短くなければならない。ディーゼル燃料性能および「ディーゼルノック」のに寄与する主な要因は、ディーゼル燃料のセタン価である。セタン価が高いディーゼル燃料は、セタン価が低いディーゼル燃料よりも、点火遅れが短い。従って、高セタン価ディーゼル燃料は、ディーゼルノックを回避するために望ましい。ほとんどのディーゼル燃料は、約40〜約55の範囲のセタン価を有する。点火遅れとセタン価の間の関係は、「How Do Diesel Fuel Ignition Improvers Work」、Clothierら、Chem.Soc.Rev、1993、101〜108ページ(その教示全体が、参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている。セタン価向上剤は長年ディーゼル燃料の発火性を改善するために用いられてきた。
【0086】
洗剤は、堆積物形成を防止または減少させるために、あるいは形成された堆積物を除去または修飾するために、炭化水素燃料に添加できる添加剤である。ある燃料は、堆積物を形成する傾向があり、この堆積物は、燃料インジェクタを詰まらせ、インジェクタの燃料噴霧パターンに影響を及ぼし得ることが一般に知られている。燃料スプレーパターンの変更の結果、燃料の不均一な分布および/または不完全な霧化が起こり、その結果、燃料燃焼が不十分になる。堆積物の蓄積は、高負荷始動、失速、ラフなエンジンアイドリング、および加速中のつまずきをはじめとする全体的に不十分な運転可能性により特徴付けられる。さらに、堆積物蓄積がチェックされずに進行するならば、回復不可能な損害が起こり、これは交換または非定期メンテナンスを必要とする。極端な場合、不規則な燃焼の結果、ピストン上にホットスポットが生じ、この結果、全体的なエンジンの故障が起こり、完全なエンジンの分解修理または交換が必要となる。
【0087】
色素およびマーカーは、EPA(環境保護庁)およびIRS(国税庁)により、燃料をモニターし、追跡するために使用される物質である。1994から、燃料中の色素の主な使用は、連邦規制基準、タイトル26、パート48.4082−1(26 CFR 48.4082−1)に定義されている課税対象外の「オフロード」中間留分燃料の、連邦政府により指令された染色またはマーキングに起因する。色素は、航空ガソリンにおいても使用され、赤、青および黄色色素は、航空ガソリンのオクタングレードを示す。処理製品に目に見える色を付与することなく、石油製品を特定、追跡またはマークするために、マーカーが使用される。燃料におけるマーカーの主な用途の一つは、暖房用石油においてである。
【0088】
氷結防止添加剤は、主に、航空産業および寒冷気候において使用される。これらは、遊離水と結合し、混合物の凝固点を降下させて、結晶形成を抑制することにより作用する。
【0089】
殺生物剤は、燃料を汚染し得る微生物、例えば、細菌および真菌(酵母、カビ)を抑制するために使用される。燃料における微生物問題の原因は、一般に、燃料システムの清浄度、特にタンクおよびシステム中の低点からの水除去に起因する。
【0090】
乳化破壊剤/曇り防止添加剤は、主に、安定性パッケージにおいて使用される分散剤により湿潤燃料中の水の分布によって生じ得る曇りの問題に対抗するために、燃料に添加される。
【0091】
所望の燃料特性を付与する働きをする、これらの添加剤科の一般的化学反応および組成は当該分野においてよく知られている。本発明が関連する分野の当業者は、所望の燃料特性の向上を達成するために添加剤を容易に選択できる。
【実施例】
【0092】
本発明は、バイオフィードストックおよびバイオ/石油燃料ブレンドの貯蔵および使用中の不安定性に関連する分解の様々な原因(環境および燃料要素)に対処する。具体的に選択された添加剤の種類または科(フリーラジカル鎖停止剤、フリーラジカル分解剤、酸スカベンジャー、光化学安定剤、ゴム分散剤、および金属イオン封鎖剤)を使用することにより、本発明は、燃料不安定性の原因である様々な特定のモード/分解経路に対抗または排除するために設計される。
【0093】
本発明を、次の例示的であるが、非制限的な実施例によりさらに説明する。実施例は、多機能安定剤パッケージの様々な成分(フリーラジカル鎖停止剤、過酸化物分解剤、酸スカベンジャー、光化学安定剤、ゴム分散剤、および金属イオン封鎖剤)の、バイオおよびバイオ/石油燃料ブレンドの貯蔵中および使用中安定性に対する影響を表す。
【0094】
再生可能燃料、再生可能燃料および石油燃料のブレンド、ならびにかかる燃料の添加剤を定量的に評価するために使用される酸化負荷装置を屋内で開発した。この装置を図1に図示する。
【0095】
屋内酸化装置:
酸化試験装置は、恒温油浴(酸化分解を促進するためにサンプルに負荷を加えるため)、試験管(バイオまたはバイオ石油ブレンドを含む)、および空気送達システム(・・・を制御すべく、ガス流調節装置から構成される)から構成されている。
(原文には、段落[00101]から段落[00103]まで存在せず)
(原文の段落[00104]を翻訳文の段落[0096]とする。以下、段落番号がずれる)
【0096】
屋内法を用いて、バイオ、およびバイオ/石油燃料ブレンドに対する添加剤の安定性向上を証明した。
【0097】
フリーラジカル鎖停止剤
フリーラジカル増加に対する遅延およびその後のバイオ燃料安定性に対する影響を調べた。屋内安定性法を用いて、大豆B100および100mg/lのFRCTAを含む試験管に負荷を加えた。サンプルを次にUV分析法を用いて燃料安定性について評価した。結果を図1に示す。
【0098】
図1のデータは、FRCTAがバイオ燃料安定性に対して市場効果を有することを示す。
【0099】
過酸化物分解剤
過酸化物分解のバイオ燃料安定性に対する影響を評価した。大豆B100および安定性添加剤(%)を含む試験管を表2により調製した。
【表1】

【表2】

【0100】
屋内安定性法を用いて大豆B100サンプルに負荷を加えた。サンプルを次にUV分析法を用いて燃料安定性について評価した。図2は評価の結果を含む。
【0101】
図2のデータは、製剤において使用されるFRCTAおよびPDAの量および種類に応じて、安定性に対して実質的な影響があることを示す。試験管3(75%FRCTA、25%PDAのブレンド)が、バイオ燃料不安定性への対処において最も有効であったことは明らかである。このデータから、その相乗効果を向上させるため、そしてバイオ燃料安定剤としてのその性能を向上させるために、2つの添加剤種類/科の最適なブレンドが存在することも分かる。
【0102】
酸スカベンジャー
酸濃度のバイオ燃料安定性に対する影響を評価した。大豆B100を0.06NのNaOHで中和することにより、酸性度を低下させたバイオディーゼルを調製した。出発大豆および酸低下大豆の酸価は、それぞれ、0.66mg KOH/gおよび0.22mg KOH/gであった。2種の大豆B100および安定性添加物(%)を含む試験管を表3のように調製した。
【表3】

【0103】
大豆B100サンプルに、屋内安定性法を用いて負荷を加えた。サンプルを次に、UV分析法を用いて、燃料安定性について評価した。図3は、評価の結果を含む。
【0104】
図3のデータは、酸分がバイオディーゼル安定性に対して実質的な影響を及ぼすことを示す。未処理サンプル(1および4)と比較して、酸性度が低いサンプルは、より高いレベルの安定性を示すことが分かる。このデータはさらに、酸スカベンジング能力を有する添加剤での安定化に対する影響を示す。この影響は、サンプル2および3を、酸性度が減少した塩基サンプル1と比較することにより発揮され、酸スカベンジング製剤を使用することにより、バイオ燃料の安定性がさらに向上されることは明らかである。
【0105】
光化学安定化剤
バイオディーゼル安定性に対する光の影響を、B100大豆サンプル(その一部に表4のように添加剤(%)を添加した)を含有する一組の試験管に光を照射することにより評価した。
【表4】

【0106】
XX記号を付けた試験管を日光に曝露した(日当たりの良い窓際で保存した)。残りの試験管(5)をアルミホイルで覆い、露光から保護した。全ての試験管を大気に曝した。2週間日光に露光した後、屋内安定性法を用いて試験管の内容物に負荷を加えた。試験管を2時間ごとにサンプリングし、UV分析法を用いて燃料安定性について評価した。図4は評価の結果を含む。
【0107】
図4のデータは、直射日光への露光はバイオ燃料に対してわずかに影響を及ぼすことを示す。サンプル1と5の比較から、露光はバイオ燃料の安定性を低下させたが、その程度は非常に大きくないことが分かる。添加剤を添加されたサンプルは安定性の向上を示すが、これが光による不安定化の阻害によるかどうかは明らかではない。
【0108】
平行実験として、老化(曝気)の影響も評価した。B100大豆サンプルを含む1組の試験管Aに、表5のように添加剤(%)を加えた。
【表5】

【0109】
XX記号を付けた試験管を日光に暴露した(日当たりの良い窓際で保存した)。残りの試験管(2、3、および4)をアルミホイルで覆い、露光から保護した。全ての試験管を大気に曝した。2週間暴露後、屋内安定性法を用いて試験管の内容物に負荷を加えた。試験管を2時間ごとにサンプリングし、UV分析法を用いて燃料安定性について評価した。図5は評価の結果を含む。
【0110】
図5のデータは、空気にさらされて長時間貯蔵されると、バイオ燃料の安定性に対して実質的な影響があることを示す。このサンプルと比較して、デュアルモード安定剤(FRCTA、およびPDA)を含む試験管は、シングルモード(FRCTA)安定剤よりも、長期貯蔵による分解の防止に優れていた。
【0111】
金属イオン封鎖剤
金属(銅)混入のバイオ燃料安定性に対する影響を評価した。B100大豆および添加剤(%)を含む試験管を表6により調製した。
【表6】

屋内安定性法を用いて、大豆B100サンプルに負荷を加えた。UV分析法を用いて燃料安定性についてサンプルを評価した。図6は評価の結果を含む。
【0112】
図6のデータは、銅によりバイオ燃料分解の速度に対して大きな影響があることを示す。サンプル1とサンプル5とを比較して、銅を含まないブランクは2時間の負荷下で安定しており、一方、銅を含有するサンプルは実質的なレベルの分解を示すことが分かる。サンプル4およびサンプル6間で同じ結果がみられる。サンプル6中のバイオ燃料は、サンプル4と同じ安定剤組成物および処理速度を有するが、サンプル6は、金属混入物質(銅)を含有するサンプル4よりも実質的に安定していた。フリーラジカル鎖停止剤のみを含有するサンプル2と、フリーラジカル鎖停止剤ならびに過酸化物分解剤を含有するサンプル4と間の、銅の存在下での向上した安定性に留意することも興味深い。この向上した安定性は、選択された成分間の相乗作用を示す。全体として、ラジカル鎖停止剤、過酸化物分解剤および金属イオン封鎖剤は、バイオ燃料の安定性を増大させるのに最もよく機能する。
【0113】
示された実施例は、バイオ燃料およびバイオ/石油燃料ブレンドの不安定性の多様なメカニズムに貢献する多くの因子があることを明らかに示す。従って、これらの多様な不安定性プロセスに十分に取り組むために、添加剤を適切に選択して組み合わせることが重要である。
【0114】
本発明のある好ましい実施形態を詳細に開示したが、以下の請求の範囲の精神から逸脱することなく、様々な修正をなすことができると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)再生可能なバイオフィードストック成分と、
(b)石油系成分と、
(c)多機能安定剤パッケージと、
を含んでなる燃料油組成物。
【請求項2】
前記再生可能なバイオフィードストック成分が、天然に存在する植物または動物のホールオイルのアルコールとのエステル交換の生成物、又は、天然に存在する油に由来する脂肪酸とアルコールのエステル、であるところのバイオディーゼルとして特徴づけられる、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項3】
前記天然油が、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、アマニ油、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、食用油、ヒマワリ油、ベニバナ油、獣脂、ラード、黄色油脂、魚油およびこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項2に記載の燃料油組成物。
【請求項4】
前記アルコールが、直鎖、分岐、アルキル、芳香族、第一、第二、第三、およびポリオールからなる群から選択される、請求項2に記載の燃料油組成物。
【請求項5】
前記石油系成分が、中間留分燃料、重燃料油、ジェット燃料、またはフィッシャー・トロプシュ油である、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項6】
燃料油の前記石油系成分が、約5000ppm(質量)未満の硫黄を含有する、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項7】
燃料油の前記石油系成分が、約500ppm(質量)未満の硫黄を含有する、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項8】
燃料油の前記石油系成分が、約17ppm(質量)未満の硫黄を含有する、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項9】
燃料油の前記再生可能なバイオフィードストック成分の含量が、最終燃料の約0体積%〜約100体積%である、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項10】
燃料油の前記再生可能なバイオフィードストック成分の含量が、最終燃料の約1体積%〜約30体積%である、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項11】
燃料油の前記石油系成分の含量が、最終燃料の約0.1体積%〜約100体積%である、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項12】
燃料油の前記石油系成分の含量が、最終燃料の約70体積%〜約99体積%である、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項13】
前記多機能安定剤パッケージが、
(a)フリーラジカル鎖停止剤、
(b)過酸化物分解剤、
(c)酸スカベンジャー、
(d)光化学安定剤、
(e)ゴム分散剤、および
(f)金属イオン封鎖剤
からなる群の1つ以上のメンバーの好適な組み合わせである、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項14】
前記フリーラジカル鎖停止剤が、アルキルフェノール、アルキルフェニレンジアミン、キノン、およびニトロ化合物からなる群から選択される、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項15】
前記アルキルフェノールが、アルキルフェノール(2,6−ジ−tertブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(BHA))、ジヒドロキシベンゼン(1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン)、トリヒドロキシベンゼン(1,2,3トリヒドロキシベンゼン)、1〜3個のヒドロキシル基を含有する多環式芳香族化合物および没食子酸誘導体(没食子酸オクチル)からなる群から選択される、請求項14に記載の燃料油組成物。
【請求項16】
前記アルキルフェニレンジアミンが、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミンおよびN−sec−ブチル−p−フェニレンジアミンからなる群から選択される、請求項14に記載の燃料油組成物。
【請求項17】
前記キノン化合物が、2,3,5−トリメチルベンゾキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチルベンゾキノン、2−メチルナフトキノン、t−ブチルヒドロキノン(TBHQ)からなる群から選択される、請求項14に記載の燃料油組成物。
【請求項18】
前記ニトロ化合物が、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロトルエン、ニトロナフタレン、およびジニトロナフタレンからなる群から選択される、請求項14に記載の燃料油組成物。
【請求項19】
前記過酸化物分解剤が、硫黄化合物、窒素化合物およびリン化合物からなる群から選択される、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項20】
前記窒素化合物が、一般式:
【化5】

により表される請求項19に記載の燃料油組成物であって、
この一般式において、
R、R’、R’’は、アルキル−直鎖、分岐、飽和、不飽和のC1−30、芳香族、環状、ポリアルコキシ、多環式のいずれかであり、
R、R’はまた、O,N,SおよびPのような他のヘテロ原子、並びに、それらから得られる官能基を含有してもよく、
RおよびR’は代替的に、3〜12個の原子を含有する環状系中に組み入れることができる、請求項19に記載の燃料油組成物。
【請求項21】
前記酸スカベンジャーが、第一、第二および第三アミン、並びにこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項22】
前記酸スカベンジャーが、一般式:
【化6】

により表される請求項13に記載の燃料油組成物であって、
この一般式において、
R、R’は、H、アルキル−直鎖、分岐、飽和、不飽和のC1−30、芳香族、環状、ポリアルコキシ、およびカルボニルのいずれかであり、
R、R’はまた、O,N,SおよびPのような他のヘテロ原子、並びに、それらから得られる官能基を含有してもよく、
R’およびR’は、3〜12員環系中に組み入れることができ、
Zは、Rまたは次式
【化7】

で表されるものであり、
Xは1〜6であり、Yは1〜6である、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項23】
前記光化学安定剤が、ヒンダード(hindered)アミン光安定剤からなる群から選択される、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項24】
前記ゴム分散剤が、エチレンおよび不飽和エステル、ビニルアルコール、ビニルエーテルおよびこれらの有機酸とのエステル、プロピレン、エチレン、不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸やフマル酸)とのイソブチレン付加物およびこれらのアミドまたはイミド誘導体、アクリル酸およびこれらのアミドまたはエステル誘導体のポリマー、ポリスチレン、並びに、これらのモノマーの組み合わせから調製されるポリマーからなる群から選択されるポリマー分散剤である、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項25】
前記金属イオン封鎖剤が、DMD、クエン酸、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)からなる群から選択される、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項26】
前記金属イオン封鎖剤が、DMDである、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項27】
前記フリーラジカル鎖停止剤が、前記多機能安定剤パッケージの製剤中に約0〜約100%で存在し、前記フリーラジカル分解剤が製剤中に0〜100%で存在し、前記光化学安定剤が約0.0〜約100%で存在し、前記金属イオン封鎖剤が製剤中に約0〜約25%で存在する、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項28】
前記フリーラジカル鎖停止剤が好ましくは、前記多機能安定剤パッケージの製剤中に約25〜約85%で存在し、前記フリーラジカル分解剤が製剤中に約15〜約65%で存在し、前記光化学安定剤が好ましくは、製剤中に約0.0〜約10%で存在し、前記金属イオン封鎖剤が製剤中に約1〜約3%で存在する、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項29】
添加剤を担体または希釈剤と混合することをさらに含むか、または混合することにより得られる、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項30】
前記担体および希釈剤が、芳香族、脂肪族炭化水素、アルコール、並びにカルボニル含有物質(例えば、アルデヒド、ケトン、エステル、およびアミド)からなる群から選択される、請求項13に記載の燃料油組成物。
【請求項31】
再生可能燃料の貯蔵安定性を増加させる方法であって、
再生可能燃料中に、当該再生可能燃料の3体積%までの多機能安定剤パッケージを秤量して添加することにより、再生可能燃料の貯蔵安定性を増加させる方法。
【請求項32】
燃料組成物の貯蔵安定性を増加させる方法であって、
バイオ/石油燃料ブレンド中に、当該バイオ/石油燃料ブレンドの3体積%までの多機能安定剤パッケージを秤量して添加することにより、燃料組成物の貯蔵安定性を増加させる方法。
【請求項33】
(a)静電散逸/導電性改良添加剤、(b)低温操作性/コールドフロー添加剤、(c)腐食抑制剤、(d)潤滑改良剤、(e)セタン価改良剤、(f)洗剤、ならびに(g)色素およびマーカーからなる群から選択される添加剤と組み合わせられた、請求項1に記載の燃料油組成物。
【請求項34】
請求項1に記載の燃料油組成物を燃料として用いて、圧縮点火エンジンのような内燃機関を作動させる方法。
【請求項35】
前記選択された燃料油が、約1%〜約30%のバイオ成分と、残りが石油成分である組成を有するものである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
バイオ石油ブレンドの前記石油成分が、500ppm(質量)未満の硫黄を含有する中間留分燃料である、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−542889(P2009−542889A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518984(P2009−518984)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004289
【国際公開番号】WO2008/056203
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509008455)インノスペック フューエル スペシャルティーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】