説明

研削装置及び研削方法並びに薄板状部材の製造方法

【課題】薄板状の被加工物の端面を的確且つ安全に研削加工を行うことができる研削装置を提供する。
【解決手段】外周に被加工物Wの端面を研削可能な研削面を有し回転する砥石61と、この研削面で被加工物Wの端面を研削するよう砥石61及び被加工物Wを相対的に移動する移動手段と、砥石61の周囲に略等角度間隔に配設され研削面に液体を微粒子化して噴射する複数の噴射ノズル112と、被加工物Wに接触する砥石61の研削加工位置を基準として砥石61の回転方向後方に液体が噴射されるよう複数の噴射ノズル112の噴射を制御する制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研削装置及び研削方法並びに薄板状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置は、略方形(略多角形)の薄板状の被加工物等、例えば携帯電話などの携帯端末で用いられる高脆弱性の薄板ガラスの端面研削を行うのに用いられる。この携帯端末のモニターには略方形の薄板状のガラス板が用いられることが多い。こうした薄板状のガラスは、一般に大形のガラス板から、だいたいのワーク形状で切り出され、その切り出されたガラス板の端面を、研削装置の砥石によって正確に研削することで、所定の形状に形成される。特に、この研削の際には、同時に面取り加工も行うことで、薄板状のガラス板の端面の欠けを防ぐことも行われる。上記研削装置の砥石による研削に際しては、加工の際に加熱される砥石に対して噴射ノズルから研削液を噴射して、砥石を冷却することがなされている。
【0003】
上述のようにガラス板の外形を研削する場合には、砥石をガラス板の周囲に沿って相対的に移動させて行うので、砥石とガラス板とが接触する研削加工位置は砥石の回転軸方向から見て360度の任意の方向に変化する。つまり、例えば略方形状のガラス板の一つの長辺を研削する際には回転軸方向から見て12時方向に研削加工位置が位置すると仮定すると、この長辺に隣接する短辺を研削する際には3時方向に、他の長辺を研削する際には6時方向に、他の短辺を研削する際には9時方向にそれぞれ研削加工位置が移行する。そして、上述のように研削加工位置が研削作業時に順次変化する場合には、研削加工位置に適切に研削液を供給するために研削液の供給手段も砥石の回転軸方向から見て360度方向で必要と考えられる。
【0004】
このような研削液を砥石の周囲に供給する手段の一つとして、(1)砥石を中心としたリング状の供給管を設け、この供給管から砥石中心方向に向けて切れ目なく研削液を供給する技術が開発されている(特開2006−346803号公報参照)。しかし、このような研削液の供給形態の場合、大量の研削液が必要となる問題を有する。この点について詳述すると、砥石はその周囲の空気を連れ回る状態で回転しており、この空気層を突き破り砥石まで研削液を供給するには十分な圧力且つ十分な流量で研削液を供給する必要がある。このため、上記のようなリング状の供給管から研削液を供給する場合には、研削加工位置で必要とされる研削液の約10倍近い流量で、相応の圧力を保って連続供給しなければ、研削加工位置に十分な研削液を供給することができない。
【0005】
また、このような供給形態で研削加工位置に十分な流量を供給しようとすると、大量の研削液が砥石に向かって噴射されることとなり、結果として、砥石周囲に水溜りの様な状況が発生し、その水溜りを砥石が回転する状態となる。この場合、砥石の回転が作り出す水膜で、供給管からの研削液の噴射流が遮られることになり、研削加工位置に必要な研削液が安定して供給されない現象を起こしてしまうおそれがあり、研削液の目的とする機能が果たされないおそれがある。
【0006】
また、他の研削液供給手段として、(2)被加工物である方形状のガラス板の周囲に沿って、複数の噴射ノズルを設置して、研削加工位置に近接する噴射ノズルから研削液を噴射する技術が開発されている(特開へう5−162055号公報参照)。しかし、このように噴射ノズルを設置した場合には、ガラス板の大きさによって多数の噴射ノズルが必要となり、製造装置自体がコスト高になる問題を有するばかりか、噴射ノズルの設置場所を確保する必要が生ずる問題も有する。
【0007】
さらに、他の研削液供給手段として、(3)一つの噴射ノズルが、砥石の切削加工位置に追従して移動及び噴射方向を変更するよう構成することも考えられる。しかしながら、このように構成すると、この追従させる機構のため装置が複雑化してしまい、研磨装置自体のコスト高を招く問題があり、さらには上記追従機構の設置スペースを確保する必要性が生ずるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−346803号公報
【特許文献2】特開平5−162055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、薄板状の被加工物の端面を的確且つ安全に研削加工を行うことができる研削装置及び研削方法並びに薄板状部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の研削装置は、
薄板状の被加工物を載置するテーブルと、
外周に被加工物の端面を研削可能な研削面を有し、回転可能に構成される砥石と、
この研削面で被加工物の端面を研削するよう砥石及び被加工物を相対的に移動する移動手段と、
砥石の周囲に略等角度間隔に配設され、研削面に液体を微粒子化して噴射する複数の噴射ノズルと、
上記被加工物に接触する砥石の研削加工位置を基準として、砥石の回転方向後方に液体が噴射されるよう上記複数の噴射ノズルの噴射を制御する制御手段と
を備えている。
【0011】
当該研削装置は、テーブルに被加工物を載置して、移動手段により被加工物と砥石とを相対的に移動させて、被加工物の端面を砥石で研削することができる。そして、この研削作業に際して、噴射ノズルが微粒子化した液体を砥石に向けて噴射するので、この微粒子化した液体は、砥石の表面(研削面)で砥石の回転により連れ回る空気層を突き抜けやすく、砥石の研削面まで的確に供給されやすい。また、噴射ノズルからは研削加工位置よりも回転方向後方に液体が噴射されるので、砥石の研削面まで到達した液体が、砥石の回転に連れられて、研削加工位置まで到達しやすい。
【0012】
特に、当該研削装置にあっては、端面の研削に従い研削加工位置と砥石の回転軸との相対位置に変更をきたしても、制御手段によって噴射ノズルの噴射が制御されることで、砥石の研削加工位置よりも回転方向後方に液体を噴射することができ、不必要に大量の液体を供給する必要がない。このため、当該研削装置によれば、液体に要するコストの削減が図られ、しかも砥石周囲に水溜りの様な状況が発生することを防止できる。
【0013】
さらに、このような液体の噴射は砥石の周囲に配設された噴射ノズルによってなされるので、被加工物の端部の全てにわたって多数の噴射ノズルを設けることを要しない。このため、当該装置は被加工物の端部の全てにわたって噴射ノズルを設置する場合に比して、噴射ノズルが少なくて済み、製造装置自体のコスト低減が図られると共に、噴射ノズルの設置場所の確保も比較的容易である。
【0014】
また、この発明の研削方法は、
噴射ノズルによって液体を砥石に噴射しつつ、薄板状の被加工物の端面を砥石によって研削する研削方法であって、
上記砥石を被加工物の平面と略垂直な回転軸を中心に回転しつつ、上記砥石を噴射ノズルと共に被加工物に対して相対的に移動して、被加工物の端面を研削する研削工程と、
上記研削工程を行う際に、上記被加工物に接触する砥石の研削加工位置を基準とし、砥石の回転軸との相対位置が変更される際に、砥石の研削加工位置よりも回転方向後方に液体を微粒子化して噴射する液体噴射工程と
を有する研削方法である。
【0015】
当該方法にあっては、液体噴射工程で、噴射ノズルが微粒子化した液体を砥石に向けて噴射するので、この微粒子化した液体は、砥石の表面(研削面)で砥石の回転により連れ回る空気層を突き抜けやすく、砥石の研削面まで的確に供給されやすい。また、噴射ノズルからは研削加工位置よりも回転方向後方に液体が噴射されるので、砥石の研削面まで到達した液体が、砥石の回転に連れられて、研削加工位置まで到達しやすい。
【0016】
特に、当該研削方法にあっては、液体噴射工程で研削加工位置と砥石の回転軸との相対位置が変更される際に、砥石の研削加工位置よりも回転方向後方に液体を噴射することができ、不必要に大量の液体を供給する必要がない。このため、当該研削方法によれば、液体に要するコストの削減が図られ、しかも砥石周囲に水溜りの様な状況が発生することを防止できる。
【0017】
さらに、当該研削方法は、研削工程に際して砥石と共に噴射ノズルが被加工物に対して相対的に移動するものゆえ、被加工物の端部の全てにわたって噴射ノズルを設けることを要しない。このため、被加工物の端部の全てにわたって噴射ノズルを設置する場合に比して、噴射ノズルが少なくて済み、当該研削方法を実施する装置のコスト低減が図られると共に、噴射ノズルの設置場所の確保も比較的容易である。
【0018】
当該発明にあっては、噴射ノズルとして液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルを採用することが好ましい。これにより、微粒子化され噴射された液体が、砥石の回転により生ずる砥石の周りの空気層を確実に突き抜けることができる。
【0019】
なお、当該発明にあっては、噴射ノズルの噴射中心軸を、砥石の外周の接線方向に沿うよう設けることも可能であり、また、砥石の回転軸に略交差するよう設けることも可能である。
【0020】
また、当該発明にあっては、制御手段が、研削作業時において上記研削加工位置と砥石の回転軸との相対位置が変更される際に、噴射する噴射ノズルを切り替えるよう制御する構成を採用することができる。これにより、切削加工位置が砥石の回転軸に対して位置が変更された際に、制御手段が複数の噴射ノズルのうち噴射する噴射ノズルを切り替えることで、的確に砥石の研削加工位置よりも回転方向後方に液体を噴射することができる。
【0021】
なお、上記構成を採用した際には、上記砥石の回転軸が回転可能に軸支される砥石軸受け部材と、この砥石軸受け部材に対して固定されるノズルフレームとをさらに備え、上記複数の噴射ノズルが、ノズルフレームに取り付けられている構成を採用することが可能である。これにより、砥石軸受け部材に固定されるノズルフレームに容易且つ確実に複数の噴射ノズルを取り付けることができ、噴射ノズルの設置が容易である。
【0022】
さらに、上記構成を採用した場合には、同時に噴射する噴射ノズルが二つ以内となるよう制御されていることが好ましく、これにより少量の液体によって的確な研削作業を行い得る効果を奏する。
【0023】
また、上記構成を採用した場合には、制御手段が、砥石が被加工物に対して一方向に相対的に移動している際に一の噴射ノズルから液体を噴射し、この噴射の後に砥石が被加工物に対して上記一方向と交差する他の方向に相対的に移動する際に他の噴射ノズルから液体を噴射し、上記一方向の相対移動から上記他の方向の相対移動に切り替わる間において上記一の噴射ノズル及び他の噴射ノズルの双方から液体を噴射するよう制御する構成を採用することが好ましい。これにより、被加工物の一の方向の端面では上記一の噴射ノズルを噴射しつつ、また、被加工物の他の方向の端面では上記他の噴射ノズルを噴射して、的確に研削作業を行うことできると共に、被加工物の一の方向の端面と他の方向の端面との間(例えばコーナ部)では、上記一の噴射ノズル及び他の噴射ノズルの双方から液体を噴射するため、かかる部分でも的確に液体を供給しつつ被加工物の研削を行い得る。
【0024】
なお、本発明は上記研削装置及び研削方法のみを対象とするものではなく、上記研削方法を具備した薄板状部材の製造方法も対象とするものである。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明にあっては、噴射ノズルによって的確に液体を砥石の研削加工位置まで到達させて被加工物の研削を行うことかでき、このため、薄板状の被加工物の端面を的確且つ安全に研削加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る研削装置の一実施形態を示す上面図である。
【図2】図1の研削装置の正面図である。
【図3】図1の研削装置の側面図である。
【図4】図1の研削装置の搬送ロボットの三面図で、(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が上面図である。
【図5】図1の研削装置の搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図で、(a)が基準状態からワーク保持開始状態を示した図、(b)がワーク保持開始状態から加工ステージへのワーク搬送状態を示した図である。
【図6】図1の研削装置の搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図で、(c)が加工ステージへのワーク搬送状態からカメラ撮影状態を示した図、(d)カメラ撮影状態から次のワークの保持開始状態を示した図である。
【図7】図1の研削装置の第二加工ユニットの上面図である。
【図8】図1の研削装置の第二加工ユニットの一部断面を含む正面図である。
【図9】図1の研削装置の第二加工ユニットの一部断面を含む側面図である。
【図10】図1の研削装置において大径の研削ツールを使用した際の一部断面を含む詳細側面図である。
【図11】図1の研削装置において小径の研削ツールを使用した際の一部断面を含む詳細側面図である。
【図12】図1の研削装置の制御方法を示したフローチャートである。
【図13】図1の研削装置のカメラで加工ステージを撮影している状態を示す側面図である。
【図14】図1の研削装置において撮影したデータの処理及び演算方法を説明する説明図である。
【図15】図1の研削装置の噴射ノズルユニットを説明するための模式的上面図である。
【図16】図1の研削装置のワークを研削している状態を示す模式的上面図である。
【図17】本発明に係る研削装置の他の実施形態においてワークを研削している状態を示す模式的上面図である。
【図18】本発明に係る研削装置の他の実施形態においてワークを研削している状態を示す模式的上面図である。
【図19】本発明に係る研削装置の他の実施形態においてワークを研削している状態を示す模式的上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0028】
まず、研削装置の全体構成について図1〜図3を参照しつつ説明する。なお、各図において、具体的には描いていないが、この研削装置でも、周知のように、作業者の安全性を確保するため、周囲にガード板を設けている。
【0029】
この研削装置Mは、図2、図3に示すように、下部に略矩形状で格子状に組まれたベーススレーム1を備え、この上面に研削加工を行うための様々なユニットを設置している。
【0030】
ベーススレーム1は、周知の鋼製の角材11,12,13を、左右方向、前後方向、及び上下方向に組むことで、上部の各ユニットを強固に支持するよう構成している。
【0031】
ベーススレーム1の上面には、鉄属製の平板材14が載置され固定されている。この平板材14によって、ベーススレーム1の角材11,12,13の間の目隠しを行う共に、ベーススレーム1上に各ユニットを設置できる。
なお、ベーススレーム1内には、電子制御ユニット15(制御手段)が設置され、研削加工を行う各種ユニットの制御を行うようにしている。また、詳細には記載しないが、この電子制御ユニット15内には加工情報等を記憶する記憶手段を備えている。さらに、図示しないものの、この電子制御ユニット15に対して作業者Hが情報を入力するための制御盤も設けている。
【0032】
図1に示すように研削装置Mの上部(ベースフレーム1上)に設置されるユニットは、中央に設置される搬送ロボット2と、その周囲に設置される四つの加工ユニット3A、3B、3C、3Dと、搬送ロボット2の前方に設置される投入取出ステージ4と、搬送ロボット2の左右両側位置で前後方向に延びるように設置される照明移動ユニット5とで、構成されている。
【0033】
上述の搬送ロボット2は、いわゆる水平方向に動く三関節のスカラロボットで構成されている。図1〜図3では、搬送ロボット2が動いていない基準状態で示しているが、動作状態については図4〜図6によって後に説明する。
【0034】
搬送ロボット2には、その前端に上下スライド軸20が設けられている。この上下スライド軸20の下端には、被加工物(ワーク)である略方形状(略多角形状)の薄板ガラスWを吸着保持する吸着ハンド21を設けている。また、上下スライド軸20の上端には、取付ブラケットを介して、画像取り込み用のカメラ23を取り付けている。
【0035】
この搬送ロボット2は、薄板ガラスW(Wo,Wi)を、投入取出ステージ4から各加工ユニット3A,3B,3C,3Dへ、また、各加工ユニット3A,3B,3C,3Dから投入取出ステージ4へ、それぞれ搬送する。このワークWの搬送作業は、上述した吸着ハンド21を利用して行う。また、この搬送ロボット2では、上述したカメラ23によって、載置したワークWを加工ユニット3A、3B、3C、3Dの上方から撮影することができる。
【0036】
上述の四つの加工ユニットは、搬送ロボット2の前後左右にそれぞれ設けられ、第一加工ユニット3Aと、第二加工ユニット3Bと、第三加工ユニット3Cと、さらに、第四加工ユニット3Dとして設置されている。
【0037】
各加工ユニット3A,3B,3C,3Dの構成要素は、全て同じもので設定しており、全て同じの研削作業を行えるようにしている。例えば、第一加工ユニット3Aで示すように、構成要素には、ワークWを研削状態で吸着保持する加工ステージ30と、加工ステージ30の上方からワークWを研削する研削スピンドル31と、加工ステージ30に隣接して複数の研削ツール(砥石)を保持するツールマガジン32と、研削スピンドル31に取り付けられた砥石に向けて研削液を噴射する噴射ノズルユニット110とを備える。
【0038】
そして、このうち、加工ステージ30には、中央の加工テーブル33を左右方向にスライド移動させる左右スライド機構34(移動手段)を設けている。加工テーブル33の左右両側には樹脂製のジャバラカバー35を設けている(加工テーブル33の右側のジャバラカバーは研削スピンドル等で隠れており図示していない)。このジャバラカバー35によって、左右スライド機構34に研削液が侵入するのを防止している。また、加工テーブル33の上面には、矩形ボックス状で上方が開放したキャッチパン36を設けており、このキャッチパン36によって研削液が飛散するのを防止している。
【0039】
また、研削スピンドル31は、前後方向にスライド移動する前後スライド機構38(移動手段)を備えている。そして、研削スピンドル31と前後スライド機構38との間に、上下方向に移動する上下ガイド機構39を設けている。こうして、研削スピンドル31が前後方向のみならず上下方向にも自由に移動するように構成されている。
【0040】
なお、前後スライド機構38は、図2に示すように、前後方向に延びる大型角材のサイドフレーム16に対して強硬に固定している。これにより、研削スピンドル31の支持剛性が高められて、研削精度を高めることができる。
【0041】
ツールマガジン32は、最大五本の研削ツール(砥石)6,…(図2、図3参照)が保持できるように構成している。ツールマガジン32には、径の異なる砥石や研磨材の異なる砥石など、複数の研削ツール6が保持されている。この複数の研削ツール6は、加工内容に応じて選択されて研削スピンドル31に取り付けられる。
【0042】
上述の投入取出ステージ4は、作業者Hが開閉操作する開閉扉40と、開閉扉40と連動して動く長方形形状のカートリッジ設置台41と、カートリッジ設置台41に着脱自在に設置されるワークカートリッジ42と、を備えている。
【0043】
開閉扉40は、下端に水平方向に延びるヒンジ軸43(図3参照)を設けた横長長方形の鋼板によって構成され、上部外面には、平面視略U字形状のハンドル部44を設けている。この開閉扉40を作業者Hがハンドル部44を持ってヒンジ軸43を中心に手前側に回動させることで、投入取出ステージ4を開放することができ、研削装置M内へワークWの出し入れを行うことができる。
【0044】
カートリッジ設置台41は、その両側端が、開閉扉40の上部に連結されたリンク機構45に連結されている。また、カーシリッジ設置台41は、下部を前後方向に延びるスライドレール46(図3参照)にスライド可能に載置されている。このため、作業者Hが開閉扉40を開放操作すると、リンク機構45を介して開閉扉40に連結されたカートリッジ設置台41が研削装置Mの外側方向にスライド移動する。また作業者Hが開閉扉40を閉鎖操作すると、カートリッジ設置台41が研削装置Mの内側方向にスライド移動する。
【0045】
ワークカートリッジ42は、左右方向に四列でワークWの積層体が並ぶように、樹脂壁47で仕切った積層部48を、四つ備えている。このうち、右側二つの積層部48には、未加工のワークWiを積層して、左側二つの積層部48には、加工済のワークWoを積層するように設定されている。このワークカートリッジ42は、作業者Hがカートリッジ設置台41から容易に取り外しできるように、持ち運びする際の把持部49を両端に設けている。
【0046】
作業者Hが、このワークカートリッジ42に未加工のワークWをセット(載置)して、このワークWをセットしたワークカートリッジ42をカートリッジ設置台41に置き、開閉扉40を閉鎖することで、加工前準備を整えることができる。
【0047】
上述の照明移動ユニット5は、搬送ロボット2の両側位置で前後方向に延びる移動スライドレール50と、この移動スライドレール50に上下移動機構51を介して支持された略四角形の照明枠52と、を備えている。
【0048】
移動スライドレール50は、前端と後端とを、支持ブラケット50a,50aを介して金属製の平板材14に固定して設置されている。この移動スライドレール50の後端は、後側の加工ユニット(第二加工ユニット3B、第四加工ユニット3D)のツールマガジン32の位置まで延設している。このため、照明枠52が研削装置Mの後側に大きく移動することになり、照明枠52を使用しない待機タイミング(各加工ユニット3A、3B、3C、3Dで研削加工等を行っているタイミング)では、照明枠52を後側の位置まで後退させることができる。
【0049】
照明枠52は、各枠部52a,…の内周面に、図示しないLEDを複数埋め込むことによって、枠内を照射するように構成している。この照明枠52は、カメラ23でワークWを撮影する際に、加工ステージ30のキャッチパン36に移動して、LEDでワークWを側方から照射することで、ワークWの外形形状(輪郭)を浮かび上がらせて、ワークWの撮影を容易に行えるようにしている。
【0050】
次に、搬送ロボット2について、図4〜図6で説明する。図4は、搬送ロボットの三面図で(a)が正面図、(b)が側面図、(c)が上面図である。図5、図6は、搬送ロボットの搬送時の動作を説明する図であり、図5(a)が基準状態からワーク保持開始状態を示した図、図5(b)がワーク保持開始状態から加工ステージへのワーク搬送状態を示した図、図6(c)が加工ステージへのワーク搬送状態からカメラ撮影状態を示した図、図6(d)カメラ撮影状態から次のワークの保持開始状態を示した図、をそれぞれ示したものである。
【0051】
搬送ロボット2は、上述のように水平方向に移動する三関節のスカラロボットで構成されており、水平方向に移動可能に構成されている。具体的には、図4(b)に示すように、搬送ロボット2は、第一関節2Ja、第二関節2Jb及び第三関節2Jcにおいて回動可能に設けられ、左右方向に移動可能に設けられている。これにより、前側アーム24の前端の上下スライド軸20が水平方向に移動できるようになっている。
【0052】
この上下スライド軸20は、前側アーム24前端を上下方向に貫通設置しており、上下方向にもスライド移動するようになっている。
【0053】
上下スライド軸20の下端には、上述した吸着ハンド21を設けている。この吸着ハンド21は、長方形の平板状のベースプレート25に、下側を向いた四つの吸盤26,…を設けている。この吸盤26に負圧を作用させることで、吸着力を生じさせ、ワークである薄板ガラスWを吸着保持するように構成されている。
【0054】
この四つの吸盤26,…は、図4(c)にも示すように、二つずつ、左右二箇所に配設している。それぞれ二つの吸盤26で一枚のワークWを吸着保持するようにしている。このため、一つの吸着ハンド21で二枚のワークWを一度に搬送することができる。
【0055】
また、この吸着ハンド21には、下向きに突出したピン27をベースプレート25の両端に設けている。このピン27、27は、ワークWに当接する当接部材である。つまり、ワークWを搬送する前に、搬送ロボット2の移動によりこのピン27で一旦ワークWをワークカートリッジ42内に押し込み、ワークWをワークカートリッジ42内で整列させている。
【0056】
上下スライド軸20の上端には、上述したようにカメラ23を設けている。このカメラ23は、吸着ハンド21のワークWの保持位置(ベースプレート25の突出部分)から、約90°ずらした位置に設置している。これは、カメラ23で撮影する際に、ベースプレート25が邪魔にならないようにするためである。このカメラ23は、一般的なCCDカメラで構成しており、二次元の画像データを取り込むようにしている。
【0057】
また、このカメラ23は、取付ブラケット22を介して上下スライド軸20に取り付けている。この取付ブラケット22は、やや下向きに屈曲した腕部22aと、上下方向位置を調整可能なカメラ取付部22bと、上下スライド軸20に筒状に固定されるシャフト固定部22cとで構成されている。カメラ23は、腕部22aを介して上下スライド軸20に固定されるため、上下スライド軸20から離間して位置することになり、撮影時には、前側アーム24が映り込むのを防いでいる。
【0058】
次に、搬送ロボット2の搬送時の動作を、図5及び図6を利用して説明する。
【0059】
図5(a)に示すように、搬送ロボット2は、まず、基準状態から各関節を反時計廻りにわずかに回動させ、ワークカートリッジ42に積層された未加工のワークWiを吸着ハンド21で吸着する。このとき、上下スライド軸20を大きく反時計廻りに回動させることで、吸着ハンド21のベースプレート25を回動させ、左側の吸盤26で未加工のワークWiを吸着する。
【0060】
その後、図5(b)に示すように、搬送ロボット2は、各関節を大きく反時計廻りに回動させて、第一加工ユニットの加工ステージ30に、ワークWiを搬送する。このとき、ワークWiは大体の位置に搬送されて、加工ステージ30に載置されることになる。すなわち、厳密な位置確認を行うことなく、ワークWiは加工ステージ30に搬送されて、大凡の位置に載置されるのである。
【0061】
そして、図6(c)に示すように、搬送ロボット2は、前側アーム24をさらに反時計廻りに回動させると共に、上下スライド軸20を時計廻りに回動させることで、カメラ23を確実にワークWiの上方(真上)に位置させる。こうして、搬送ロボット2は、自ら搬送して載置したワークWiを、カメラ23で撮影するようにしている。なお、ワークWの撮影手順等については、後述する。
【0062】
そして最後に、図6(d)に示すように、搬送ロボット2は、ワークWiの撮影終了後に、次の未加工のワークWを搬送するために、各関節を時計廻りに戻して、ベースプレート25の左側の吸盤26で、次のワークWを吸着するようにしている。
【0063】
そして、その後、搬送ロボット2は、図5(b)の動作を繰り返し、ワークカートリッジ42から次の加工ステージに未加工のワークWを搬送する。こうして、空いている加工ユニットの加工ステージに、次々と未加工のワークWを搬送するようにしている。
【0064】
なお、具体的には図示しないが、搬送ロボット2は、加工が終了した加工済のワークWoを、右側の吸盤26で吸着することで、加工ステージ30からワークカートリッジ42に搬送する。搬送ロボット2は、図5(b)の動作の前に、加工ステージ30から加工済のワークWoを取り上げることで、未加工のワークWiの搬送を行いつつ、加工済のワークWoの搬送も同時に行うのである。
【0065】
次に、加工ユニットについて説明する。図7は加工ユニットの上面図、図8は加工ユニットの一部断面を含む正面図、図9は加工ユニットの一部断面を含む側面図である。
【0066】
加工ユニット3B(便宜上、第二加工ユニットで説明する)は、図7に示すように、上述したワークWを保持する加工ステージ30と、ワークWを研削する研削スピンドル31と、研削ツール6を保持するツールマガジン32と、を備えている。
【0067】
そして、このうち、加工ステージ30には、上述のように矩形の加工テーブル33(テーブル)と、加工テーブル33を左右に動かす左右スライド機構34と、左右スライド機構34を覆うジャバラカバー35と、加工テーブル33の上面に設置されたキャッチパン36と、研削液を噴射する噴射ノズルユニット110とを備えている。
【0068】
さらに、この加工ステージ30は、図8に示すように、さらに様々な構成要素を備えている。
【0069】
まず、加工テーブル33の上面には、キャッチパン36の内側中央にワークWを吸着保持するための吸着台70を設けている。この吸着台70は、上面(受け面)70aが長方形(図7参照)となった略T字状のブロック形状の台座で構成している。吸着台70の上面70aには、負圧を付与するために、複数の吸気口70b(図10、図11参照)を設けている。また、薄板ガラスであるワークWの表面に傷が生じないようにするため、吸着台70の上面70aには、平滑加工を施している。
【0070】
上記吸着台70の周囲には、研削加工の際の機械原点を算出するための二つの基準ピン71,71を、カメラ23側(上方側)を向くように立設している。この基準ピン71,71は、吸着台70にワークWを載置(保持)した状態で、上記カメラ23から撮影できるように、ワークWが重ならない位置に配置されている。また、二つの基準ピン71,71は、ワークWに対して対角に位置するように配置している。なお、ワークWが完全に透明である場合には、基準ピンの位置はワークWと重なるように設定してもよい。
【0071】
そして、基準ピン71の先端部71aは、図8に示すように、その高さhpが吸着台70の上面70aの高さhsと同じ高さになるように設定している。このように設定することで、カメラ23で撮影する際に、ワークWと基準ピン71との間でピントのズレが生じないため、画像データの取り込みを確実に行える。
【0072】
また、キャッチパン36の内部には、上げ底で傾斜した略四角形の背景板72を設けている。この背景板72は、全面を艶消し黒で塗付しており、カメラ23に映り込んだ際の反射を防いで、ワークWと基準ピン71の映り込みを際立たせるようにしている。また、背景板72を傾斜するように設置することによって、研削液が即座に流れ落ちるようにしている。また、この背景板72には、基準ピン71と吸着台70を挿通させるための挿通穴(具体的には図示せず)が形成されている。
【0073】
キャッチパン36の隣接位置には、キャッチパン36に流れ落ちる研削液を排水する排水管73と排水樋74とを設けている。この排水管73と排水樋74とを設けることで、研削液がキャッチパン36内に滞留することを防止している。
【0074】
左右スライド機構34は、周知のLMガイドによって、加工テーブル33が左右方向に自由にスライド移動するようになっている。そして、この左右スライド機構34は、ステッピングモータ34Mによって、スライド量が制御されるように構成されている。すなわち、左右スライド機構34によって、加工テーブル33の左右方向の位置が制御されるようになっているのである。これにより、後述する研削加工の際には、左右スライド機構34が研削経路の左右位置を規定することになる。
【0075】
ジャバラカバー35は、いわゆるアコーディオンのように左右方向に伸縮するように構成されている。このため、加工テーブル33が左右スライド機構34で左右に移動したとしても、加工テーブル33とジャバラカバー35との間で隙間が生じず、左右スライド機構34に研削液が流れ込むのを防ぐことができる。
【0076】
キャッチパン36は、上述のように上方が解放した矩形ボックス状に構成しており、外部に研削液が漏れないように設定している。具体的には、図8に示すように、キャッチパン36の側壁36aを、基準ピン71(hp)や吸着台70(hs)よりも高い位置hcまで延ばして、研削液の漏れを防いでいる。
【0077】
研削スピンドル31は、研削を行う際の回転駆動力を発生する電動モータ31aと、電動モータ31aのスピンドル軸に研削ツール6(砥石)を固定するチャック31bと、を備えている。
【0078】
研削スピンドル31は、上述したように、前後スライド機構38を備えている。この前後スライド機構38は、前後方向に延びるスライドレール38aと、スライドレール38a上を移動するスライダー38bとを備えている。この前後スライド機構38も、ステッピングモータ38Mによってスライダー38bのスライド量が制御されるように構成しており、この前後スライド機構38によって研削スピンドル31の前後位置が制御されるようになっている。よって、研削加工の際には、この前後スライド機構38が研削経路の前後方向位置を規定することになる。
【0079】
また、研削スピンドル31と前後スライド機構38との間には、上述のように、上下ガイド機構39を設けている。この上下ガイド機構39も、上下方向に延びるレール39aと、レール上を移動する移動部材39bとを備えている。さらに、この上下ガイド機構39もステッピングモータ39Mによって移動部材39bの上下移動量が制御されるように構成されている。この上下ガイド機構39によって、研削スピンドル31の上下位置を制御するようになっている。これにより研削ツール6をワークWに位置合わせする際には、この上下ガイド機構39を使って、位置調整するようにしている。
【0080】
また、上記研削スピンドル31が回転可能に軸支され且つ上記移動部材39bに固着された砥石軸受け部材100には、後述する噴射ノズルユニット110のノズルフレーム111が取り付けられている。
【0081】
ツールマガジン32は、上述のように、最大五本の研削ツール6,…を保持できるように構成している。具体的には、図9に示すように、研削ツール6,…を保持する5つのツール保持部32a,…を前後方向に一列に並べて、このツール保持部32aと研削スピンドル31との間で、自動的に研削ツール6のやり取りを行うように構成している。
【0082】
このため、この研削装置Mでは、研削箇所に応じて、複数の研削ツール6,…を自動的に交換することができ、研削自由度を高めることができる。
【0083】
研削スピンドル31の研削ツール6について、図10、図11によって説明する。図10は大径の研削ツールを使用した際の詳細側面図、図11は小径の研削ツールを使用した際の詳細側面図である。
【0084】
上述したように、この研削スピンドル31は、チャック31bによって研削ツール6を着脱することができ、図10に示すような大径の研削ツール6Aと、図11に示すような小径の研削ツール6Bとを切り替えて装着することができる。
【0085】
図10に示す、大径の研削ツール6Aは、ダイヤモンド粒子60を表面(研削面)に付着させた大径円柱状の加工部61(砥石)と、チャック31bに固定される上下方向に延びるシャフト部62とを備えており、加工部61の上側には外方に広がる鍔部63を設けている。また、加工部61の下部には三条で筋状に窪んだ凹部64を形成している。
【0086】
この大径の研削ツール6Aを、研削スピンドル31で回転させて、ワークWの外縁(外形)Waに凹部64を当接させることで、ワークWの外形研削や面取りを行うことができる。なお、70は吸着台である。
【0087】
こうして、大径の研削ツール6AによってワークWを研削することで、研削加工時に研削ツール6Aが安定して切削が行われるため、加工精度を高めることができる。また、研削ツール6Aが大径であるため、ツールの工具寿命も長くすることができ、ワークWを大量に連続して研削できる。
【0088】
図11に示す小径の研削ツール6Bは、表面(研削面)にダイヤモンド粒子160を付着させた小径円柱状の加工部161(砥石)と、チャック31bに固定されるシャフト部162とを備え、加工部161の上側には鍔部163を設けている。また、加工部161の下部には、三条で筋状に窪んだ凹部164を形成している。
【0089】
この小径の研削ツール6Bでは、径が小さいため、研削ツール6をワークWの穴部Wb内に差し込んで、穴部Wbの内縁Wcに凹部164を当接させることで、ワークWの穴部Wbの内形研削や面取りを行うことができる。
【0090】
こうして、小径の研削ツール6BでワークWの穴部Wbの内形を研削することによって、穴部Wbの径が小さく加工しにくい場合であっても、研削加工を確実に行うことができる。
【0091】
噴射ノズルユニット110について、図15によって説明する。図15は噴射ノズルユニットを説明するための模式的上面図である。
【0092】
噴射ノズルユニット110は、上述のように砥石軸受け部材100に取り付けられたノズルフレーム111と、このノズルフレーム111に取り付けられた複数の噴射ノズル112とを備えている。上記噴射ノズル112は、砥石61(加工部)の周囲に等角度間隔に配設されている。本実施形態においては、この噴射ノズル112は、砥石61の外周を囲むよう四つ配設されており、この四つの噴射ノズル112は互いに90度の間隔で配設されている。本実施形態においては、対向する一対の噴射ノズル112を結ぶ仮想線が、ワークWの辺(長辺)と約45度の角度をなすような位置に、噴射ノズル112は配設されている。なお、図17に示すように、上記仮想線がワークWの辺と平行になるよう噴射ノズル112を配設することも可能である。
【0093】
また、本実施形態においては、噴射ノズル112は、砥石61の回転軸に向かって研削液を噴射しており、噴射ノズル112の噴射中心軸が、砥石61の回転軸と交差するよう噴射ノズル112は固定されている。なお、噴射ノズル112を、噴射中心軸が砥石の外周の接線方向に沿うよう固定することも可能である。また、噴射ノズル112を、噴射中心軸の向き(噴射方向)を変更すべく回動可能に設けて、その噴射中心軸の向きが上記電子制御ユニット15によって変更制御されるよう設けることも可能である。
【0094】
各噴射ノズル112は、それぞれ上記電子制御ユニットによってその噴射・停止が制御されている。具体的な制御方法については後述する。
【0095】
また、各噴射ノズル112は、本実施形態においては、液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルを用いている。この二流体ノズルは、高圧状態で供給された液体を、圧搾空気からなる高速気流で粉砕して微粒子化して、この液体を気体と共に噴射するものである。また、噴射ノズルユニット110は、各噴射ノズル112に液体(研削液)及び気体(空気)を供給するための液体接続口113及び気体接続口114を備え、この液体接続口113及び気体接続口114は、それぞれ研削液収容部(図示省略)及びコンプレッサ(図示省略)に接続されている。
【0096】
さらに、上記噴射ノズル112から噴射される研削液としては種々のものを採用することができる。研削液としては、砥石を冷却する冷却機能、研削屑を除去する洗浄機能、研削抵抗を減らすための潤滑機能、及び砥石の錆を防止する防錆機能の何れか一つの機能又は複数の機能を同時に有するものがある。また、界面活性剤、乳化剤等で構成され透明又は半透明で水に溶けるソリューブル系研削液(水溶性タイプ)や、灯油等の単体又はこれに硫黄・塩素等の極圧添加剤を混合したもの等のオイルベース系研削液(鉱物油タイプ)や、鉱物油、乳化剤ほか合成系の物質などで構成され上記ソリューブル系研削液とオイルベース系研削液との中間的なエマルジョン系研削液などがある。これらの多種の研削液のうち、研削条件等に応じて適宜好適なものを採用することができる。
【0097】
次に、研削装置Mの制御方法について、まずワークWの研削経路を演算する際の制御方法を図12〜図14で説明する。図12は研削装置の制御方法を示したフローチャートであり、図13はカメラで加工ステージを撮影している状態を示す側面図、図14は撮影したデータの処理及び演算方法を説明する説明図である。
【0098】
図12のフローチャートに示すように、スタート後、まず初めに、S1で、ワークWのモデルデータ(外形、穴部等)を電子制御ユニット15に入力(インストール)する。この入力作業では、例えば、加工済ワークWoの設計データ(CADデータ)を、一旦別のソフトウェアに取り込んで、研削経路等の研削データに変換した上で、電子制御ユニット15に入力(インストール)する。
【0099】
こうした入力作業が終了した後、次に、S2で、実際のワークWi(以下、実ワーク)を加工ステージ30に載置(搬入)する。この載置作業は、上述した搬送ロボット2によって行う。この載置作業によって未加工の実ワークWiが加工ステージ30の吸着台70に載置される。
【0100】
その後、S3で、カメラ23によって、実ワークWiと基準ピン71,71の画像を取り込む。このカメラによる撮影状態を示したものが図13である。この図13に示すように、研削装置Mでは、ワークWiを搬送した搬送ロボット2の高い位置に取り付けたカメラ23によって、加工ステージ30のワークWiと基準ピン71,71を撮影する。このように上方の離れた位置から加工ステージ30を撮影することで、取り込むワークWiや基準ピン17,17の画像データの歪みをできるだけ少なくすることができる。
【0101】
このようにして取り込んだ画像データの例が、図14(a)に示した図である。ワークWiと二つの基準ピン71,71を、画像データとして取り込み、各々の位置データを算出するようにしている。
【0102】
そして、S4で、基準ピン71,71の位置から加工ステージ30の機械原点Cを算出する。ここで機械原点Cとは、研削加工を行うための機械座標の基準であり、この機械原点Cを規定することで、正確な研削加工を行うことができる。
【0103】
機械原点Cは、図14(b)に示すように、二つの基準ピン71,71を結んだ線Lの中点によって定めるようにしている。なお、他の例として、破線で示すように、基準ピンをさらに二つ71´,71´追加して、この二つの基準ピン71´,71´を結んだ線Nとの交点を、機械原点Cとして規定しても良い。
【0104】
そしてS5で、実ワークWiのデータから、実ワークWiの外形Waの重心位置Pと、穴部Wbの重心位置Qとを算出する。ここで、重心位置とは、図形の重心の位置であり、ワークWの外形形状や穴部形状によって決まるものである。図14(b)に示す黒丸P、Qが、実ワークWの外形Waの重心位置と穴部Wbの重心位置である。
【0105】
その後、S6で、実ワークWiの重心位置(外形の重心位置Pと穴部の重心位置Q)とモデルWmの重心位置(外形の重心位置Pmと穴部の重心位置Qm)とを一致させる。実ワークWの重心位置P、QとモデルWmの重心位置Pm、Qmとを一致させることで、実ワークWiとモデルWmとの差(位置データの差)を明確にしている。図14(c)に示す状態が実ワークWiとモデルWm(一点鎖線)の重心位置P、Q、Pm、Qmとを一致させた状態である。このように、重心位置P、Q、Pm、Qmを一致させることで、実ワークWiとモデルWmとの差を明らかにできる。
【0106】
そして、S7で、加工ステージ30の機械原点Cと実ワークWiの重心位置Pとを比較して、機械原点Cと実ワークWiの重心位置Pとのズレ量(横方向のズレ量X、縦方向のズレ量Y、回転方向のズレ量θ)を演算する。また、実ワークWiとモデルWmとを比較して、外形差により削り込み量Δwも演算する。こうして、実ワークWiの研削量等を明確にできる。
【0107】
図14(d)が、それぞれのズレ量や削り込み量を示したものである。加工ステージの機械原点Cからの実ワークWiの重心位置Pのズレ量は、例えば、この図に示すように、左側にX、上側にY、ズレており、さらに、右側にθ、傾くように傾斜している。
【0108】
そして、削り込み量は、幅方向の削り込み量Δw1が、実ワークWiの幅寸法r1からモデルの幅寸法T1を引いて2で割ることで算出され、長さ方向の削り込み量Δw2を、実ワークWiの長さ寸法r2からモデルの長さ寸法T2を引いて2で割ることで算出される。
【0109】
こうして、幅方向と長さ方向の削り込み量Δw1、Δw2を求めた後、このうち大きな値を最終的な削り込み量Δwとして決定する。このように決定するのは、研削加工を行う際、モデル形状に相似した軌跡で、ワーク全周を一定の削り込み量で削り込みするため、大きな値に決定しておくことで、削り込みを確実に生じさせて、モデル形状により近い形に研削できるからである。
【0110】
そして、S8で、X、Y、θのズレ量、及び削り込み量Δwに応じて、ワークWiの研削経路を算出する。この研削経路は、実ワークWiの形状や、実ワークWiの載置位置の変動によって変化するもので、各々のワークWで異なるものである。
【0111】
その後、S9で、算出した研削経路で実ワークWiを研削する。この研削作業は、研削スピンドル31と加工ステージ30(加工テーブル33)とをそれぞれ移動することで行う。このワークWの研削作業では、上述の大径の研削ツール6Aや小径の研削ツール6Bを用いて研削部位に応じて行う。
【0112】
次に、研削作業時における噴射ノズルからの研削液の噴射の制御方法を図16で説明する。図16はワークを研削している状態を示す模式的上面図である。なお、図16において、四つの噴射ノズルを区別するために噴射ノズルの符号として112a〜112dを用いている。
【0113】
図16(a)に示すように、ワークWの一つの長辺の端面を研削する際には、研削加工位置(ワークWの端面と砥石61との接触点)よりも砥石61の回転方向後方側の第一の噴射ノズル112aから研削液を噴射する。この際、他の三つの噴射ノズル112b,…からは研削液を噴射しない。
【0114】
そして、図16(b)に示すように、ワークWの上記一つの長辺とこの長辺に隣接する短辺との間のコーナー部を研削する際には、上記第一の噴射ノズル112aのみならず、第二の噴射ノズル112b(第一の噴射ノズル112bよりも砥石61の回転方向後方側の噴射ノズル)からも研削液を噴射する。この際、他の二つの噴射ノズル112c,112dからは研削液を噴射しない。
【0115】
そして、図16(c)に示すように、ワークWの短辺を研削する際には、上記第一の噴射ノズル112aからの研削液の噴射を停止して、研削加工位置よりも砥石61の回転方向後方側の上記第二の噴射ノズル112bから研削液を噴射する。この際、他の二つの噴射ノズル112c,112dからは研削液を噴射しない。
【0116】
図16(d)に示すように、ワークWの他の長辺の端面を研削する際には、研削加工位置よりも砥石61の回転方向後方側の第三の噴射ノズル112cから研削液を噴射する。この際に、他の三つの噴射ノズル112a,…からは研削液を噴射しない。なお、図16(c)及び(d)の間のコーナー部においては、上述のコーナー部(図16(b))と同様に、上記第二の噴射ノズル112bのみならず第三の噴射ノズル112cからも研削液を噴射している。
【0117】
なお、上記説明において、大径の研削ツール6Aを用いてワークWの外形研削する場合についてのみ説明したが、小径の研削ツール6Bを用いてワークWの穴部の内形を研削する場合も上述と同様の制御方法によって噴射・停止を制御しつつ研削作業を行うことができる。つまり、研削加工位置よりも砥石の回転方向後方側の一つの噴射ノズルから研削液を噴射して研削作業を行うことができる。また、コーナー部においては、次に使用される予定の噴射ノズルとそれまで噴射していた噴射ノズル双方から研削液を噴射して、研削作業を行うことができる。
【0118】
最後に、S10で、実ワークWiを、加工ステージ30から取出す(搬出)。この取出作業も上述した搬送ロボット2で行い、加工済のワークWoを加工ステージ30から取出す。
【0119】
そして、次に、S11で作業が終了するか否かの判断を行い、作業が継続する場合(NO判断)には、次のワークWを加工するためにS2に移行する。一方、作業が終了する場合(YES判断:電源オフの場合)には、そのままエンドに移行する。
【0120】
以上、このようなステップによって、本実施形態の研削装置Mは制御される。
【0121】
本実施形態にあっては、研削工程で、二流体ノズルからなる噴射ノズル112が微粒子化した研削液を砥石61に向けて噴射するので、この微粒子化した研削液は、砥石61の表面(研削面)で砥石61の回転により連れ回る空気層を突き抜けやすく、砥石61の研削面まで的確に供給されやすい。また、噴射ノズル112からは研削加工位置よりも回転方向後方に研削液が噴射されるので、砥石61の研削面まで到達した液体が、砥石61の回転に連れられて、研削加工位置まで到達しやすい。
また、二流体ノズル112から噴射した研削液は、先に到達した研削液の液体粒が砥石61の生む遠心力にて排出される時に生じる液体飛沫との干渉が少なく、効率よく順次砥石61の研削面に到達し、砥石61の研削面及び研削屑の双方に衝突を繰り返す。この衝突は、砥石61の研削面の砥粒間の空間に存在する気体に対して、一般的な液体供給形態の場合(全面から気体を覆い隠す状態となるような液体の供給形態の場合)と異なる作用を示す。すなわち、個々の空間の気体塊に対して、液体粒が個々に作用することにより、その砥粒間の空間から気体を押し出すように作用して、空間に停滞する気体を液体に置き換える効果を生じる。そして、この砥粒間に到達した研削液は、その周辺との表面張力によりその空間に留まることになる。このため、砥粒間に研削液が安定的にかつ適量保持されることとなり、このように研削液を保持した空間が砥石61の回転に伴い研削加工位置に達することにより、空間の研削液が安定的かつ効果的に供給されることになる。
さらに、この研削液が冷却機能を有するものであれば、研削加工位置における砥粒の冷却状態を安定化させると共に、研削加工位置の周囲からの研削熱の除去に大きく作用し、結果として、砥粒の過熱を防止して、その磨滅を減少させる効果がある。さらに、このような冷却効果に従い、研削屑の加熱を減少して、砥粒や砥粒間の空間への研削屑の溶着現象の防止効果が図られるとともに、その加工状態が熱的に安定する。このため、熱的に脆弱、過敏な材料を加工する際において、その加工品質の安定が実現する。
また、研削液が潤滑機能等を有する場合、砥石61、砥粒及び砥粒間の空間に、研削液が十分に供給されることにより、非付着性作用及び潤滑作用が働き、研削屑の付着低減効果や砥粒の加熱防止効果が得られる。
さらに、当該研削装置によれば、液体粒の断続的な衝突、衝撃力による洗浄効果を発揮することができる。これは、上述の効果によって軽減された砥粒間へ付着した研削屑に対する更なる掃き出し効果である。上述のように軽減されるとは言え、継続して生成され滞留・付着が生じる砥粒間の空間及び砥粒面の研削屑に対して、直接的に液体粒が衝突することによって、研削屑は衝撃を受けて、固着している部位から剥離され、研削液と共に効果的に掃き出される。また上述した潤滑機能を有する研削液の効果により付着物の固着状態が軽減されていることも含めて、相乗的に研削屑の付着に対しての効果が生じる。
【0122】
また、当該研削装置によれば、研削作業において研削加工位置と砥石61の回転軸との相対位置が変更した際、制御手段15によって噴射ノズル112の噴射が制御されることで、的確に砥石61の研削加工位置よりも回転方向後方に研削液を噴射することができ、不必要に研削液を供給する必要がない。このため、当該研削装置によれば、研削液に要するコストの削減が図られ、しかも、砥石61の周囲に水溜りの様な状況が発生することを防止できる。
【0123】
さらに、当該研削装置によれば、研削作業に際して砥石61と共に噴射ノズル112が移動するものであるので、被加工物の端部の全てにわたって噴射ノズル112を設けることを要しない。このため、被加工物の端部の全てにわたって噴射ノズルを設置する場合に比して、噴射ノズルが少なくて済み、装置のコスト低減が図られると共に、噴射ノズルの設置場所の確保も比較的容易である。しかも、当該研削装置は、砥石61の外周を囲むよう四つの噴射ノズル112が配設され、各噴射ノズル112が、砥石61の回転軸との相対位置を変えないよう設けられているので、構造が簡素化され、装置のコスト低減が図られると共に、噴射ノズルの設置場所の確保も容易である。
【0124】
また、当該研削装置によれば、ワークWの長辺及び短辺に応じて適切な噴射ノズル112から研削液を噴射することができ、的確に研削作業を行うことできると共に、ワークWのコーナー部では二つの噴射ノズル112から研削液を噴射するため、かかる部分でも的確に液体を供給しつつ被加工物の研削を行い得る。また、このように制御手段15によって同時に噴射する噴射ノズル112が二つ以内となるよう制御されているので、当該研削装置によれば少量の液体によって的確な研削作業を行い得る効果を奏する。
【0125】
なお、各二流体ノズルの流体各々(研削液及び空気)の流体供給量比/圧力比および、混合流体の供給量、供給圧力などを、砥石の回転数、砥石の種類、砥粒大きさなどの各条件に応じて、適切に設定することで、本実施形態の研削方法によれば、板厚0.2mm〜3.0mmの薄板硝子の研削加工において、端面チッピング量20μm以下での効率的な研削を可能とする。これは、通常の研削方法で行う場合と比べ、約5倍〜10倍の研削速度向上効果である。
【0126】
また、この実施形態の研削装置Mは、薄板ガラス(W)の端面研削を行う研削装置Mであって、薄板ガラスのモデルWmのデータを予めインストール(記憶)して(S1)、カメラ23で取り込んだ基準ピン71,71の撮影データから、加工ステージ30の機械原点Cを算出する(S4)。そして、カメラ23で取り込んだ薄板ガラス(実ワークWi)の撮影データから、薄板ガラス(実ワークWi)の重心位置Pを求めて(S5)、加工ステージ30の機械原点Cと薄板ガラス(W)の重心位置Pを比較して、薄板ガラスのズレ量(縦方向のズレ量X、横方向のズレ量Y、回転方向のズレ量θ)を算出し(S7)、このズレ量に応じて研削経路を演算して(S8)、この演算した研削経路に従って、研削スピンドル31を作動させるようにしている(S9)。
このため、薄板ガラス(W)自体に「基準となるマーク(印)」等を形成しなくても、加工ステージ30に設けた基準ピン71,71によって「機械原点C」を求め、薄板ガラス(W)のズレ量(X、Y、θ)を把握することができ、この把握したズレ量によって、マーク(印)等のない薄板ガラス(W)であっても正確に研削加工することができる。
【0127】
よって、携帯電話などの携帯端末の表示画面に用いられる薄板ガラス(W)の端面研削を行う研削装置Mにおいて、カメラ23の撮影データを利用して研削加工を行うことで、精度よく加工しつつも、薄板ガラス(W)の表面に目印等を設けることなく、研削加工を行うことができる。
【0128】
なお、この実施形態では機械原点を複数の基準ピン71,71で求めるようにしたが、その他、一部を突出させた基準突出部で機械原点を求めても良いし、また、一部を着色した基準部で、機械原点を求めてもよい。
【0129】
また、この実施形態では、薄板ガラス(W)の重心位置PとモデルWmの重心位置Pmとを一致させて、薄板ガラス(W)とモデルWmを比較して、研削スピンドル31の削り込み量Δwを演算するようにしている。すなわち、薄板ガラス(W)がモデルWmに対してどの程度大きいか(例えば、長さ方向の差分と幅方向の差分を検出して、この「差分」の大きさ)を判断して、この大きさに応じて削り込み量Δwを変化させるのである。
このため薄板ガラス(W)の削り込み量Δwを各ワーク毎で変化させることになり、より正確な形状及び寸法に、薄板ガラス(W)を加工することができる。
よって、各ワーク毎で変化する薄板ガラスの削り込み量Δwを、より正確に掴んで研削作業を行うことになるため、複数の薄板ガラスを精度よく加工することができる。
【0130】
また、この実施形態では、薄板ガラスの外形Waの重心位置Pと、穴部Wb形状の重心位置Qとを求めてワークWiの重心位置を算出するようにしている。
これにより、薄板ガラス(W)の外形Waの重心位置Pと薄板ガラスの穴部Wb形状の重心位置Qとを算出することで、穴部のある薄板ガラスであっても、確実にモデルWmに即した形状で、研削することができる。
よって、穴部Wbがある複雑な形状の薄板ガラス(W)であっても、正確に研削経路を演算でき、精度良く研削することができる。
【0131】
また、この実施形態では、基準ピン71,71を、薄板ガラス(W)を挟んだ両側位置に設けている。
これにより、少なくとも2つの基準ピン71,71を結んだ線L上に形成される機械原点Cを、薄板ガラス(W)の重心位置Pに近い位置に形成することができる。
このため、より正確に薄板ガラス(W)のズレ量を演算することができる。すなわち、機械原点Cが薄板ガラス(W)の重心位置Pに近い事で、ズレ量の際の誤差を少なくできるため、正確なズレ量を演算することができるのである。
よって、より精度の高い研削加工を行うことができる。
【0132】
また、この実施形態では、基準ピン71の先端部71aを吸着台70の上面70aと同じ高さ(hp=hs)に設定することで、カメラ23からの距離を、薄板ガラス(W)と略一致するようにしている。
これにより、基準ピン71の被撮影ポイント(先端部71a)が、薄板ガラス(W)の高さ方向の位置と略一致するため、カメラ23のピントを確実に両者に合わせることができる。
よって、確実に、基準ピン71と薄板ガラス(W)とを同時に撮影することができ、薄板ガラス(W)のズレ量をより正確に演算することができる。
【0133】
以上、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、あらゆる研削装置に適用する実施形態を含むものである。
【0134】
この実施形態の研削装置では、ワークWを携帯電話用の薄板ガラスとしているが、例えば、携帯音響機器用の薄板ガラスであってもよいし、また、携帯ゲーム機用の薄板ガラスであってもよい。さらに、携帯ナビ用の薄板ガラス、携帯TVの薄板ガラス等であっても良い。
【0135】
なお、上記実施形態においては、四つの噴射ノズル112を設けているため、略方形状の各辺の端部を各噴射ノズル112によって液体を的確に供給しつつ研削作業を行い得るという利点を奏するものであるが、当該発明にあっては噴射ノズルの個数は四つに限定されるものではない。例えば図18に示すように、噴射ノズル112を八つ設けることも可能である。図18に示す研削装置にあっては、八つの噴射ノズル112が等角度間隔に配設されており、具体的には互いに45度の位置に配設されている。さらには、六つの噴射ノズルを互いに60度の位置(等角度間隔)に配設させることも可能である。
【0136】
なお、この図18に示す研削装置にあっては、ワークWの長辺及び短辺の研削に関しては上記実施形態と同様にそれぞれ一つの噴射ノズル112から研削液を噴射している。また、コーナー部の研削時にあっては、上記長辺及び短辺の研削に際してそれぞれ使用される噴射ノズル112の間に配設された噴射ノズル112のみから研削液を噴射するよう構成することができる。
【0137】
また、噴射ノズル112を四つ設ける場合にあっても、上記実施形態(図16)及び図17に示すものに限定されず、例えば図19に示すように、対向する一対の噴射ノズル112を結ぶ仮想線が、ワークWの辺(長辺)と所定の角度をなすような位置に噴射ノズル112を配設することができる。ここで、所定の角度とは、ワークWのコーナー部の研削に関しても的確に研削液を供給できるような位置とすることができ、例えば30度とすることができる。
【0138】
さらに、複数の噴射ノズル112の制御手段の制御方法は上記実施形態のものに限定されず、本発明の意図する範囲内で適宜設計変更可能である。
例えば、切削加工位置よりも砥石の回転方向前方側に位置する噴射ノズル112も研削液を噴射するよう制御することが可能であり、これにより、上記回転方向前方側の噴射ノズル112によって、砥石61の研削面に付着する研削屑を除去することができる。
この場合において、切削加工位置よりも回転方向の前方側の噴射ノズル112と後方側の噴射ノズル112とは、異なる研削液を用いる(例えば、冷却機能を有する研削液を後方側の噴射ノズルから噴射して、洗浄機能を有する研削液を前方側の噴射ノズルから噴射する)ことも可能である。但し、砥石の径が小さい場合には、二種の研削液の互いの干渉により機能を損なう場合が存在するため、砥石の径が大きい場合にのみ上述の二種の研削液の使用を採用することが好ましい。
【0139】
また、上記実施形態においては噴射ノズルとして二流体ノズルを用いたものについて説明したが、例えば超音波振動子により超音波振動を液体に重畳させて微粒子化した液体を噴射する超音波重畳式ノズルを用いることも可能である。
このように超音波重畳式ノズルを用いることにより、ノズルから対象物(砥石の切削面及びワーク)への噴射水流を超音波伝達媒体として、その研削液が伝播する超音波振動加速度による強い振動作用力を、砥石の研削面の付着物及び砥粒間空間の空気層に与えることができる。このため、超音波重畳式ノズルによれば、付着物及び砥粒間空間の空気層を振動させ、振動によりその周囲との接触点に効果的に研削液を浸透させることによるクサビ効果で、掃き出し、置換効果が得られるという利点を有する。(しかるに、ノズル直近に超音波振動子が不可欠であると共に、ノズルからの水流は対象物との間で途切れないことが不可欠となるため、装置の設置方法(超音波振動子の収容容積、対象物との距離等)や運用には制約が生じるという欠点、及び超音波発振装置含めての装置費用負担が増えるという欠点がある。)
【0140】
さらに、上記実施形態においては、ワークの外形の端面加工及びワークの穴部の内形の端面加工についてのみ説明したが、上記実施形態の装置によって、例えば、研削ツールとしてドリルを使用して、穴あけ加工を行うことも可能である。なお、穴あけ加工の場合、研削液を必要とする切削加工位置は、被加工物の内部になるため、二流体ノズルの直接的な効果は研削加工中には得られないが、穴あけ加工後にドリルの目詰まりを取り除く目的にて適用することで、二流体ノズルの洗浄効果が得られる。また、研削中に排出される研削屑が、被加工物の表面に付着することでの品質低下が懸念されるが、常に二流体ノズルの効果を持つ研削液が、加工付近表面に供給されていることにより、研削屑は速やかに排除されることとなり、表面品質の維持に効果が得られる。また、二流体の衝撃力によりドリル本体に微小な振動を発生することができ、振動量・振動数共に十分とは言えないが、上述した超音波重畳ノズルにより得られる効果と同種の作用効果を持つ現象であり、一定の効果が期待できる。
【0141】
また、上記実施形態では、研削作業時に、ワークWの長辺方向に砥石61が移動し、ワークWの短辺方向にワークWが移動するものについて説明したが、当該研削装置及び研削方法においては、ワークWの平面方向においてワークWと砥石61とが相対的に移動すれば良く、例えば砥石がワークの長辺方向のみならず短辺方向にも移動するよう構成することも可能である。
【0142】
また、研削装置の全体構成についても、この実施形態に限定されるものではなく、例えば、加工ユニットが一つであるものや、逆に、さらに五つや六つなど、多くの加工ユニットを設けるようなものに、適用してもよい。
【0143】
さらに、研削ツール6についても、この実施形態に挙げたようなものに限定されるのではなく、例えば、球型の研削ツールや、円盤型の研削ツール、また円錐型の研削ツールであってもよい。また、砥石材料についてもダイヤモンドに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上のように、本発明の研削装置及び研削方法並びに薄板状部材の製造方法は、噴射ノズルによって的確に液体を砥石の研削加工位置まで到達させて被加工物の研削を行うことかでき、このため、薄板状の被加工物の端面を的確且つ安全に研削加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0145】
M…研削装置
W…ワーク(薄板ガラス、被加工物)
Wi…未加工のワーク
Wo…加工済のワーク
Wm…ワークモデル
15…電子制御ユニット(制御手段)
23…カメラ
30…加工ステージ
31…研削スピンドル
33…加工テーブル(テーブル)
61,161…加工部(砥石)
71…基準ピン
100…砥石軸受け部材
110…噴射ノズルユニット
112(112a〜112d)…噴射ノズル
C…機械原点
P…ワーク外形の重心位置
Q…穴部形状の重心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の被加工物を載置するテーブルと、
外周に被加工物の端面を研削可能な研削面を有し、回転可能に構成される砥石と、
この研削面で被加工物の端面を研削するよう砥石及び被加工物を相対的に移動する移動手段と、
砥石の周囲に略等角度間隔に配設され、研削面に液体を微粒子化して噴射する複数の噴射ノズルと、
上記被加工物に接触する砥石の研削加工位置を基準として、砥石の回転方向後方に液体が噴射されるよう上記複数の噴射ノズルの噴射を制御する制御手段と
を備える研削装置。
【請求項2】
上記噴射ノズルが、液体と気体とを混合して噴射する二流体ノズルである請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
上記噴射ノズルの噴射中心軸が砥石の外周の接線方向に沿うよう設けられている請求項1又は請求項2に記載の研削装置。
【請求項4】
上記噴射ノズルの噴射中心軸が砥石の回転軸に略交差するよう設けられている請求項1又は請求項2に記載の研削装置。
【請求項5】
上記制御手段が、研削作業時において上記研削加工位置と砥石の回転軸との相対位置が変更される際に、噴射する噴射ノズルを切り替えるよう制御する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の研削装置。
【請求項6】
上記砥石の回転軸が回転可能に軸支される砥石軸受け部材と、この砥石軸受け部材に対して固定されるノズルフレームとをさらに備え、
上記複数の噴射ノズルがノズルフレームに取り付けられている請求項5に記載の研削装置。
【請求項7】
上記制御手段が、同時に噴射する噴射ノズルが二つ以内となるよう制御する請求項5又は請求項6に記載の研削装置。
【請求項8】
上記制御手段が、砥石が被加工物に対して一方向に相対的に移動している際に一の噴射ノズルから液体を噴射し、この噴射の後に砥石が被加工物に対して上記一方向と交差する他の方向に相対的に移動する際に他の噴射ノズルから液体を噴射し、上記一方向の相対移動から上記他の方向の相対移動に切り替わる間において上記一の噴射ノズル及び他の噴射ノズルの双方から液体を噴射するよう制御する請求項5、請求項6又は請求項7に記載の研削装置。
【請求項9】
噴射ノズルによって液体を砥石に噴射しつつ、薄板状の被加工物の端面を砥石によって研削する研削方法であって、
上記砥石を被加工物の平面と略垂直な回転軸を中心に回転しつつ、上記砥石を噴射ノズルと共に被加工物に対して相対的に移動して、被加工物の端面を研削する研削工程と、
上記研削工程を行う際に、上記被加工物に接触する砥石の研削加工位置を基準とし、砥石の回転軸との相対位置が変更される際に、砥石の研削加工位置よりも回転方向後方に液体を微粒子化して噴射する液体噴射工程と
を有する研削方法。
【請求項10】
請求項9に記載の研削方法により端面を研削する工程を備える薄板状部材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−11536(P2012−11536A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153503(P2010−153503)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(302031502)株式会社 ハリーズ (16)
【Fターム(参考)】