説明

研磨布

【課題】本発明は、テクスチャー加工用研磨布に関し、基盤表面粗さを0.3nm以下を達成し、スクラッチ欠点、リッジ欠点に優れ、かつ、線密度の高いテクスチャー痕を形成することができる研磨布を提供することにある。
【解決手段】平均単繊維繊度が0.00001〜0.1dtexの極細繊維束からなる不織布と弾性重合体とで構成されるシート状物からなる研磨布であって、JIS L−1907バイレック法(2004年度版)で測定される吸水速度が1〜50mmの範囲であることを特徴とする研磨布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テクスチャー加工用研磨布に関し、基盤表面粗さ0.3nm以下を達成し、スクラッチ欠点、リッジ欠点に優れ、かつ、線密度の高いテクスチャー痕を形成することができる研磨布を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク等の磁気記録媒体は、高容量化、高記憶密度化に伴い、磁気ヘッドの浮上高さが著しく小さくなる傾向にある。そのため、磁気ディスク表面に突起が存在すると、磁気ヘッドと突起とが接触してヘッドクラッシュを起こし、ディスク表面に傷が発生する。また、ヘッドクラッシュには至らない程度の微小な突起であっても、磁気ヘッドとの接触により情報の読み書きの際に発生するエラーの原因となる。
【0003】
ディスク基板上に金属磁性層を形成する際、結晶成長の方向性を制御し、記録方向の抗磁力を向上させるために、記録ディスクの基板表面に微細な条痕を形成するテクスチャー加工という表面処理が行われている。
【0004】
テクスチャー加工の方法としては、遊離砥粒のスラリーを研磨布表面に付着させて研削を行うスラリー研削等が用いられている。しかし、テクスチャー加工によって、磁気ヘッドの低浮上を満足するための表面処理を行う場合、最近の急激な高記録容量化のための高記録密度化に対応するためには、0.3nm以下の基板表面粗さを達成し、かつスクラッチ欠点と呼ばれる基板表面の傷を極小化することが要求されており、その要求に対応しうる研磨布が切望されている。
テクスチャー加工において、基板表面粗さを小さくするためには、研磨布を構成する繊維を極細化し、基板表面への傷を極小化する必要がある。そこで、研磨布にクッション性を持たせるため不織布に弾性重合体を含浸させるという提案が種々なされている。
【0005】
例えば、0.3dtex以下の極細繊維不織布に高分子エラストマーを含浸させた研磨布が提案されており、0.5nm程度の表面粗さを達成している(特許文献1)。
【0006】
更に、近年では平均単繊維繊度0.001〜0.1dtexのポリアミド極細短繊維の不織布からなる研磨布(特許文献2)が提案されており、この研磨布では0.28nmの表面粗さを達成している。
【0007】
ところで、基板表面粗さの極小化が進むにつれて、スクラッチ欠点及び、異常突起欠点に対する許容範囲は狭くなってきている。従来のテクスチャー加工において欠点と判定されなかった傷や突起がエラーの発生につながるため、更なる基板表面の平滑性、均一性の向上が必要となっている。従来の研磨布では、繊維の極細化によって研磨布表面繊維本数を多くすることにより、砥粒の分散性を高め、該欠点を減少させてきた。
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載の従来の研磨布では、スラリーと研磨布の親和性を高める為、親水性の高い研磨布が用いられてきたが、加工に用いられるスラリーが研磨布内部に吸収されやすく、結果として研磨に用いられる砥粒の個数が著しく減少し、基板表面の研磨に対して効果的に寄与できなかった。そのため、基板表面粗さが低く、スクラッチ欠点、異常突起欠点は少ないものの、高い線密度のテクスチャー痕を形成できなかった。
【0009】
こうした問題に対し、研磨布の吸水性能に関して、様々な取組みがなされてきた。例えば、研磨布の加工表面を親水化し、内部および裏面を疎水性とすることにより、研磨布に吸収される砥粒の量が減るため、砥粒の使用量を少なくでき、効果的に研磨できる方法が開示されている(特許文献3)。しかしながら、該研磨布における加工は撥水剤をディップニップ加工で付与後、表面のみにグラビアロール等で親水剤を付与するものであり、溶剤の付量ムラなどが生じやすいだけでなく、研磨布の表面が親水剤により硬化し、表面状態が著しく悪化するという問題がある。
【0010】
また、加工に用いられる砥粒の数を増やす為には、研磨布表面の親水性をある程度低下させ、表面に存在する砥粒を増加させ、効果的に使用することが必要であるが、撥水(疎水)剤などの溶剤を付与する手法は、上記課題と同様、加工による付着ムラだけでなく、表面繊維が固着し、立毛状態が大きく変化する為、大きな問題であった。
【特許文献1】特開2001−1252号公報
【特許文献2】特開2002−273650号公報
【特許文献3】特開2003−170347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、基盤表面粗さ0.3nm以下を達成し、スクラッチ欠点、リッジ欠点に優れ、かつ、線密度の高いテクスチャー痕を形成することができる研磨布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はかかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)平均単繊維繊度が0.00001〜0.1dtexの極細繊維束からなる不織布と弾性重合体とで構成されるシート状物からなる研磨布であって、JIS L−1907バイレック法(2004年度版)で測定される吸水速度が1〜50mmの範囲であることを特徴とする研磨布。
(2)吸水速度が60〜1200秒であることを特徴とする前記1に記載の研磨布。
(3)実質的に撥水剤、疎水剤などの添加剤を含まないことを特徴とする前記1または2に記載の研磨布。
(4)前記極細繊維がポリエステルまたはポリアミドであることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の研磨布。
(5)前記弾性重合体がポリウレタンであることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の研磨布。
(6)前記弾性重合体の含有率がシート状物の総重量に対して10〜80重量%であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の研磨布。
(7)シート状物の表面繊維の線密度が30〜1500本/100μm幅以下であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の研磨布。
(8)目付が50〜800g/mであることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載の研磨布。
(9)密度が0.1〜0.6g/cmであることを特徴とする前記1〜8のいずれかに記載の研磨布。
(10)片面に補強層が積層されていることを特徴とする前記1〜9のいずれかに記載の研磨布。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基盤表面粗さ0.3nm以下を達成し、スクラッチ欠点、リッジ欠点に優れ、かつ、線密度の高いテクスチャー痕を形成することができる研磨布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0015】
本発明の研磨布は平均単繊維繊度が0.00001〜0.1dtexの極細繊維束からなる不織布と弾性重合体とで構成されるシート状物からなる研磨布であって、JIS L−1907バイレック法(2004年度版)で測定される吸水速度が1〜50mmの範囲であることを特徴とする研磨布である。
【0016】
本発明における平均単繊維繊度が0.00001〜0.1dtexの極細繊維束とは、平均単繊維繊度が0.00001〜0.1dtexの極細繊維からなる繊維束を意味する。本発明の研磨布に用いられる極細繊維の平均単繊維繊度は、研磨布表面の立毛繊維の緻密性、繊維強度及び砥粒の把持性の点から、0.00001〜0.1dtexであることが重要である。0.00001dtex以上とすることで、研削に必要とされる充分な繊維強度、剛性が得ることができる。一方、0.1dtex以下とすることで、立毛繊維の緻密性を保ち、砥粒を微分散化でき、研磨布表面における砥粒分布を均一化させることができる。好ましい範囲としては0.00005〜0.02dtex、さらに好ましくは0.0001〜0.01dtexの範囲である。なお、平均単繊維繊度は後述する測定方法により測定した値をいう。
【0017】
0.00001〜0.1dtexの繊度を有する極細繊維を得るには、単純な直接紡糸法では困難であるので極細繊維発生型繊維を用いることが好ましい。極細繊維発生型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分とし、海成分を溶剤などにより溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面放射状あるいは層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維や多層型複合繊維などを採用することができる。
【0018】
海島型複合繊維の製造方法としては、例えば(1)2成分以上のポリマーをチップ状態でブレンドして紡糸する方法、(2)あらかじめ2成分以上のポリマーを混練してチップ化した後紡糸する方法、(3)溶融状態の2成分以上のポリマーを紡糸機のパック内で静止混練器等で混合し紡糸する方法、および(4)特公昭44−18369号公報等の海島型複合用口金を用いて、海島の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式、等が挙げられる。
【0019】
海島型複合繊維を構成する樹脂としては、極細繊維を発生可能な2種類以上の樹脂の組合せが挙げられ、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系等が用いられる。ポリエステル系としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、乳酸共重合体およびポリグリコール酸などの脂肪酸ポリエステル系重合体類や脂肪酸ポリエステルアミド系重合体類などの脂肪族ポリエステル類が挙げられる。ポリアミド系としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12および共重合ナイロンなどのポリアミド類、ポリオレフィン系としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレンおよび共重合ポリスチレンなどを用いることができる。
【0020】
このうち、極細繊維成分(島成分)として、耐摩耗性の観点から、ポリエステル系とポリアミド系が好適に用いられる。中でも、PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、共重合ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリトリメチレンテレフタレートおよび共重合PET等のポリエステル類および、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12および共重合ナイロン等のポリアミド類は、スラリー液との親和性が特に良好であり、スラリー液中の研磨砥粒の保持性と分散性に優れ、被研磨物に傷をつけることなく研磨することができる為、より好適に用いられる。
【0021】
海島型複合繊維の海成分を構成する樹脂としては、島成分を構成するポリマーであるポリエステル樹脂よりも溶解性や分解性の高い化学的性質を有するという点から、PE、ポリプロピレン、ポリスチレン、共重合ポリスチレン、イソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合成分とした共重合ポリエステルおよびPLAなどを好適に用いることができる。
海成分を溶解する溶剤としては、海成分がPE、ポリプロピレン、ポリスチレンおよび共重合ポリスチレンの場合は、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤が用いられ、また海成分が共重合ポリエステルやPLAの場合は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができ、溶剤中に海島型複合繊維(不織布)を浸漬し、窄液を行うことによって、海成分を除去することができる。特に、ニードルパンチしたときの繊維の高絡合化による表面繊維の高密度化の観点から、ポリスチレン、共重合ポリスチレン、ポリエステル、共重合ポリエステルおよびPLAが好ましく使用される。
【0022】
本発明でいう不織布は短繊維をカード、クロスラッパーを用いて幅方向に配列させた積層ウェブを形成させた後にニードルパンチを施して得られる短繊維不織布や、スパンボンドやメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、抄紙法で得られる不織布などが好適に用いられる。
本発明で用いる弾性重合体は特に限定はないが、例えば、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができるが、中でもポリウレタン、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが好ましい。
ポリウレタンは、ポリオール成分にポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のジオール、もしくはこれらの共重合物を用いることができる。また、ジイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族系イソシアネートなどを使用することができる。
【0023】
ポリウレタンの重量平均分子量は100,000〜300,000が好ましく、より好ましくは150,000〜250,000である。重量平均分子量を100,000以上とすることにより、得られるシート状物の強度を保持し、また極細繊維の脱落を防ぐことができる。また、300,000以下とすることで、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑えて不織布への含浸を行いやすくすることができる。
【0024】
また、弾性重合体は、主成分としてポリウレタンを用いることが好ましいが、バインダーとして性能や立毛繊維の均一分散状態を損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良く、必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0025】
本発明の研磨布において、弾性重合体の含有率は、不織布の繊維の総重量に対し、10重量%以上80重量%以下であることが好ましい。含有量によって研磨布の表面状態、クッション性、硬度、強度などを適宜調節することができる。10重量%以上とすれば繊維脱落を少なくでき、80重量%以下とすれば、加工性及び生産性が向上するとともに、表面上において極細繊維が均一分散した状態を得ることができる。
【0026】
本発明の研磨布は、JIS L−1907バイレック法(2004年度版)で測定される吸水速度が1〜50mmの範囲であることが重要である。吸水速度を50mm以下とすることで、研磨布に充分な疎水性を付与し、砥粒が研磨布内部に過剰に吸収されることなく、研磨に有効に寄与することができるからである。なお、測定はJIS L−1907バイレック法(2004年度版)に準拠して行う。すなわち、シートの幅方向に等間隔で縦20cm×横2.5cmの試験片を5枚採取し、各試験片を20℃の水を入れた水槽上の一定の高さに支えた水平棒上にピンで止める。試験片の下端を一線に並べて水平棒を降ろして、試験片の下端が丁度水につかるようにする。10分間の水の上昇した高さをmm単位で測定する。5枚の測定値を平均し、小数点以下第一位を四捨五入し、吸水速度として評価するものである。
【0027】
また、本発明の研磨布の水滴吸収時間は60〜1200秒であることが好ましい。より好ましくは60〜900秒である。60秒以上とすることで、連続的に砥粒を研磨表面上に供給した場合、研磨表面に砥粒が十分に分散でき、スクラッチ欠点を減少させることができる。また、1200秒以下とすることで、研磨布表面での砥粒の保持量の低下を抑制することができる。本発明でいう水滴吸収時間は、FACE/CA−A型の接触角測定装置を利用し、装置付属の注射器に蒸留水を入れ、注射針(外径0.60mm、内径0.45mm)から水滴1滴を研磨布上に滴下し、その水滴を該装置の接眼レンズから観察して、下式により算出する。
tq(水滴吸収時間)=t2−t1 (秒)
ここで、水滴が研磨布上に落ちた時刻をt1とし、水滴は時間経過とともに研磨布中に吸い込まれ、表面上に水滴がなくなる時刻をt2とする。
【0028】
このt1、t2の状態は、通常の場合(およそtqが10秒以上)では目視で測定可能であるが、非常に速い場合や観察し難い場合は、前述の装置で水滴が注射針から滴下開始する時間から水滴が研磨布中に十分吸収されるまでの状態を該装置の接眼レンズを通して水滴の状態の全画像をビデオに撮影する。そのビデオ画像を再生し、t1、t2の状態とその録画時間から水滴の吸収時間を測定することができる。
【0029】
なお、吸水時間tqは、製品から任意に取出した試料で20個の測定を行い、該20個の測定値(tq)の中で、最も大きい方の5個のデータの平均値をとり、小数点以下第一位を四捨五入し、該平均値を吸水時間の値とする。
【0030】
本発明の研磨布において、撥水剤、疎水剤などの溶剤を付与することなく、加工前の均一な表面状態を達成し、吸水速度を1〜50mm、吸水時間を60〜1200秒とする為には、立毛を形成させた後/または前に、仕上げ加工としてシート状物に乾熱処理を行うことにより達成できる。乾熱処理の方法としては特に限定されるものではないが、台車式、トンネル式、ネット式、多孔板式、ノズルジェット式、ローラー式、フローティング式、ドラム式、赤外線式等、各種乾燥装置を適宜用いることができる。乾燥条件としては特に限定されるものではないが、繊維の収縮及び、繊維と弾性重合体、極細繊維束/または極細繊維同士の表面固着を促す温度として110〜190℃が好ましい範囲として挙げられる。より好ましくは130〜170℃の範囲である。190℃以下とすることで、繊維や弾性重合体の軟化、溶解を防ぐことが可能となるからである。なお、処理時間としては1〜30分の範囲が好適に用いられるが、加工性、生産性の観点から、より好ましくは2〜10分の範囲である。
【0031】
加工温度を130℃から170℃の範囲にすることにより段階的に吸水速度、水滴吸収時間を制御することができる。また、各温度において、処理時間を長くすることで同様に吸水性能を制御することが可能である。所望の吸水特性とするためには用いる研磨布の組成により挙動が異なる為、130〜170℃程度にて1、3、5分等と水準を振って吸水特性を調べることで、目的とする特性を得られる処理時間を選択するものである。
【0032】
本発明の研磨布をテープ状として、テクスチャー加工を施す際に、大きな寸法変化が生じると、基板表面を均一に研磨することができないため、研磨布の形態安定性の点から、本発明に用いられる研磨布の目付は50〜800g/mであることが好ましく、100〜600g/mであることがより好ましい。また、同様の観点から本発明の研磨布は厚みが0.1〜10mmの範囲が好ましく、0.2〜5mmの範囲がより好ましい。
なお、本発明の研磨布の密度については、均一な加工性を得るために0.1〜0.6g/cmの範囲が好適である。
【0033】
本発明では、研磨布の表面繊維の線密度が30〜1500本/100μm幅の範囲が好ましい。ここでいう表面繊維の線密度は、以下により定義されるものである。該研磨布の研磨面を観察面として走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、シート連続長手方向において、任意に1mm間隔で100μm幅の30カ所を抽出する。各抽出箇所における最表層に存在する極細繊維の繊維本数を測定し、小数点以下第一位を四捨五入し、表面繊維本数の線密度とする。表面繊維本数の線密度が30本/100μm幅以上とすることで、緻密性に優れ、砥粒を微細に分散させることができ、高精度の加工が達成できる。これは研磨布表面上の繊維が存在しない部分には砥粒が凝集することになり、スクラッチの発生につながるからである。
【0034】
本発明の研磨布では、撥水剤や疎水剤などの添加剤を実質的に含んでいないことが好ましい。添加剤によるコンタミネーションは勿論のこと、添加剤の付与により研磨布の表面の立毛状態や、表面粗さ、シート剛性、クッション性等が不均一となり、結果として加工ムラの発生やスクラッチ、リッジ欠点などにつながるからである。添加剤の含有を調べる方法としては特に限定されるものではないが、例えばICP発光分析などの手法を用いることができる。撥水剤、疎水剤としてはフッ素系、シリコン系等が主に用いられるため、元素としてはフッ素、珪素が含有することとなる。含有量としてはいずれの元素も100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、全く含有していないことがさらに好ましい。
【0035】
本発明では、スクラッチ欠点及びリッジ欠点の抑制の点から、研磨布中に含まれる金属あるいは金属化合物の含有量は、研磨布の総重量に対する金属元素の重量として100ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましく、全く含有していないことが更に好ましい。100ppm以下であれば、金属あるいは金属化合物が基板表面に接触することによる、スクラッチ欠点及びリッジ欠点の発生を抑制できるため、好ましい。
研磨布中に含まれる金属あるいは金属化合物の例としては、鉄、酸化鉄、繊維ポリマーの添加剤として用いられる二酸化チタンなどが挙げられる。
【0036】
更に、テクスチャー加工時のテープ伸びによる加工ムラ、スクラッチ欠点の発生を抑える点から、研磨布の極細繊維を有する面の裏面に補強層を接着する方法が好適に用いられる。
補強層としては、織編物や熱接着繊維を用いた不織布、フィルム状物を用いることが好ましい。中でも、高精度のテクスチャー加工を行うには、厚みや物理特性において均一なフィルム状物を使用することがより好ましい。
【0037】
ここでいうフィルムとなる素材としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系およびポリフェニルサルファイド系などのフィルム形状を有するものであれば使用可能である。汎用性を考えた場合、ポリエステルフィルムを使用することが好ましい。フィルムからなる補強層を設ける場合には、テクスチャー加工時の研磨布の形態安定性、クッション性および基板表面へのフィット性を全て満足させる必要があるため、不織布からなるシート状物との厚みバランスをとることが重要である。不織布からなるシート状物の仕上がり厚みとしては0.4mm以上であることが好ましく、生産性の点からより好ましくは0.4〜1.5mmの範囲である。そのため、フィルムの厚みは20〜100μmとすることが好ましい。不織布からなるシート状物の厚みが0.4mm未満の場合、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えるため補強層が必要である。一方、フィルム層の厚みが20μm未満であると、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えられず、100μmを超えると、研磨布全体の剛性が高くなりすぎ、結果としてスクラッチなどの発生を抑えることができないため好ましくない。
【0038】
次に、本発明の研磨布の製造方法について詳細に記述する。
本発明の研磨布は例えば、以下の工程を組み合わせることにより得られる。すなわち、平均単繊維繊度が0.00001〜0.1dtexの極細繊維を発生する繊維、すなわち極細繊維発生型繊維を複合紡糸し、複合繊維ウェブを作成する工程、複合繊維ウェブに絡合処理を施して不織布を作成する工程、該複合繊維から易溶性ポリマーを溶解除去、あるいは物理的、化学的作用により剥離・分割し、極細繊維化する前および/または後/または起毛処理の後に、ポリウレタンを主成分とした弾性重合体を該不織布に付与し、該弾性重合体を実質的に凝固し固化させる工程、起毛処理を施し表面に立毛を形成する工程、熱処理を行う工程である。
【0039】
本発明の研磨布を構成する不織布を得る方法としては特に限定されるものではないが、単成分紡糸や海島複合紡糸、分割複合紡糸により得られたものなどを用いることができる。またスパンボンド、メルトブローなど紡糸から直接形成する長繊維不織布、抄紙法で得られる不織布などが好適に用いられる。
【0040】
本発明でいう、スパンボンド法とは、特に限定されるものではないが、溶融したポリマーをノズルより押し出し、これを高速吸引ガスにより2500〜8000m/分の速度で吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集して繊維ウェブとする方法を用いることができる。さらに連続的に熱接着、絡合等を施すことにより一体化されたシートを得る方法が好ましい。
複合繊維ウェブの絡合方法は特に限定されるものではないが、ニードルパンチやウォータジェットパンチなどの方法を適宜組み合わせることが出来る。
【0041】
ニードルパンチ処理のパンチング本数としては、繊維の高絡合化による緻密な表面状態の達成の観点から1000〜10000本/cmであることが好ましい。1000本/cm以上とすることで表面繊維の緻密化を達成し、所望の高精度の仕上げが可能となり、10000本/cm以下とすることで、加工性の悪化、繊維損傷により強度低下を抑えることができる。なお、ニードルパンチング後の複合繊維不織布の繊維密度は、表面繊維本数の緻密化の観点から、0.15〜0.35g/cmの範囲であることが好ましい。
【0042】
ウオータージェットパンチング処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常、直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させる方法が好適に用いられる。
【0043】
このようにして得られた複合繊維不織布は、緻密化の観点から、乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
【0044】
本発明の研磨布は、前記不織布シートを極細繊維化処理する前および/または後に、ポリウレタンを主成分とする弾性重合体を付与させることにより得ることができる。かかる高分子弾性体は、表面凹凸や振動吸収のためのクッション、繊維形態保持などの役割を有し、極細不織布の内部空間に高分子弾性体を充填し一体化させることにより、被研磨物へのフィット性および被研磨物表面の傷の抑制効果に優れるものである。
【0045】
なお、繊維と弾性重合体との接着を緩和する目的で、極細繊維を発生さる前後で、弾性重合体を付与する前にポリビニルアルコール等を一時的に付与し、繊維を保護した状態で弾性重合体を付与した後にポリビニルアルコール等を除去する方法を用いてもよい。
【0046】
かかるポリウレタンの複合繊維不織布への付与方法としては、ポリウレタンを塗布、あるいは含浸後凝固させる方法などを適宜採用することができるが、中でも加工性の点から、複合繊維不織布中にポリウレタン溶液を含浸した後に、湿式凝固させる方法が好ましく使用される。
【0047】
使用する弾性重合体については前述の通りであるが、弾性重合体を付与させる際に用いる溶媒としてはN,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を好ましく用いることができる。また、水中にエマルジョンとして分散させた水系ポリウレタンを用いてもよい。溶媒に溶解した弾性重合体溶液に不織布を浸漬する等して弾性重合体を不織布に付与し、その後、乾燥することによって弾性重合体を実質的に凝固し固化させる。乾燥にあたっては不織布及び弾性重合体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。
【0048】
本発明において、弾性重合体の付与量は、製品の柔軟性、表面繊維の緻密性などを考慮し、固形分として対極細繊維重量比で10〜80重量%の範囲が好ましい。
【0049】
弾性重合体には必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0050】
本発明でいう研磨布の立毛は、バッフィング処理により得られる。ここでいうバッフィング処理とは、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて表面を研削する方法などにより施すのが一般的である。特に、表面をサンドペーパーにより、起毛処理することにで均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、研磨布の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。研削負荷を小さくするためには、バフ段数、サンドペーパー番手などを適宜調整することが好ましい。中でも、バフ段数は3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手をJIS規定の150番〜600番の範囲とすることがより好ましい。
【0051】
本発明の研磨布において、撥水剤、疎水剤などの溶剤を付与することなく、加工前の均一な表面状態を達成し、吸水速度を1〜50mm、吸水時間を60〜1200秒とする為には、立毛を形成させた後/または前に、仕上げ加工としてシート状物に乾熱処理を行うことにより達成できる。乾熱処理の方法としては特に限定されるものではないが、台車式、トンネル式、ネット式、多孔板式、ノズルジェット式、ローラー式、フローティング式、ドラム式、赤外線式等、各種乾燥装置を適宜用いることができる。乾燥条件としては特に限定されるものではないが、繊維の収縮及び、繊維と弾性重合体、極細繊維束/または極細繊維同士の表面固着を促す温度として110〜190℃が好ましい範囲として挙げられる。より好ましくは130〜170℃の範囲である。190℃以下とすることで、繊維や弾性重合体の軟化、溶解を防ぐことが可能となるからである。なお、処理時間としては1〜30分の範囲が好適に用いられるが、加工性、生産性の観点から、より好ましくは2〜10分の範囲である。
【0052】
加工温度を130℃から170℃の範囲とすることにより段階的に吸水速度、水滴吸収時間を制御することができる。また、各温度において、処理時間を長くすることで同様に制御することが可能である。所望の吸水特性とするためには用いる研磨布の組成により挙動が異なる為、130〜170℃程度にて1、3、5分等と水準を振って吸水特性を調べることで、目的とする特性を得られる処理時間を選択するものである。
【0053】
次に複合繊維から極細繊維を発現せしめる方法、すなわち、極細繊維発生加工は、除去する成分(易溶解性ポリマーからなる海成分)の種類によって異なるが、PEやポリスチレン等のポリオレフィンであれば、トルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒、PLAや共重合ポリエステルであれば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で浸漬・窄液を行う方法を好ましく用いることができる。
【0054】
また、極細繊維化処理をした後に、極細繊維束の絡合を強め緻密化させるため、さらに極細繊維束の開繊性を高める為に、ウオータージェットパンチング処理などの高速流体流処理や、液流染色機、ウィンス染色機、ジッガー染色機、タンブラー、リラクサー等を用いた揉み処理、超音波処理等を適宜組み合わせて実施しても良い。
【0055】
本発明の研磨布に補強層を接着する方法としては、熱圧着法、フレームラミ法、補強層とシート状物との間に接着層を設けるいずれの方法を採用してもよく、接着層としては、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエン(NBR)、ポリアミノ酸およびアクリル系接着剤などゴム弾性を有するものが使用可能である。コストや実用性を考えると、NBRやSBRのような接着剤が好ましい。接着剤の付与方法としては、エマルジョンや、ラテックス状態でシート状物に塗布する方法が好適に用いられる。
【0056】
本発明の研磨布を用いて、テクスチャー加工を行う方法としては、かかる研磨布を加工効率と安定性の観点から、30〜50mm幅のテープ状にカットして、テクスチャー加工用テープとして用いる。
【0057】
該研磨テープと遊離砥粒を含むスラリーとを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクのテクスチャー加工を行う方法が好適な方法である。研磨条件として、スラリーは、ダイヤモンド微粒子などの高硬度砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。
砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明の研磨布を構成する極細繊維に適合した砥粒径としては0.2μm以下が好ましいものである。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また実施例で用いた評価法とその測定条件について、以下に説明する。
【0059】
(1)ポリマーの溶融粘度
東洋精機製作所(株)製キャピラログラフ1Bにより、ポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
【0060】
(2)融点
パーキンエルマー社(Perkin Elmaer)製DSC−7を用いて2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
【0061】
(3)平均単繊維繊度
研磨布を厚み方向にカットした断面を観察面として走査型電子顕微鏡(SEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、束状繊維の1つの束内を構成する極細繊維の繊維径を測定し、各極細繊維について繊維成分の比重と繊維径から繊度を算出する。同様の測定を合計5つの束状繊維について行い、これを母集団とした標準偏差値および平均値を算出する。
TEM装置 : (株)日立製作所製 H−7100FA型
SEM装置 : (株)キーエンス社製 VE−7800型
(4)表面繊維本数の線密度
研磨布の研磨面を観察面としてSEMにより観察し、シート連続長手方向において、任意に1mm間隔で100μm幅の30カ所を抽出する。各抽出箇所における最表層に存在する極細繊維の繊維本数を測定し、その平均値の小数点以下一位を四捨五入し、表面繊維本数の線密度とした。
【0062】
(5)水滴吸収時間
FACE/CA−A型の接触角測定装置(協和界面科学(株)製)を用い、注射器に蒸留水を入れ、注射針(外径0.60mm、内径0.45mm)から水滴1滴を研磨布上に滴下し、その水滴を該装置の接眼レンズから観察し、吸収時間(tq)を次式にて求めた。
tq=t2−t1 (秒)
t1:水滴が研磨布上に落ちた時間
t2:研磨布中に水滴が吸い込まれ、表面上に水滴がなくなる時間
このt1、t2の状態は、通常の場合(およそtqが10秒以上)では目視で測定可能であるが、非常に速い場合や観察し難い場合は、前述の装置で水滴が注射針から滴下開始する時間から水滴が研磨布中に十分吸収されるまでの状態を該装置の接眼レンズを通して水滴の状態の全画像をビデオに撮影してから測定することができる。
【0063】
このようにして、製品から任意に取出した試料で20個の測定を行い、該20個の測定値(tq)の中で、最も大きい方の5個のデータの平均値をとり、小数点以下第一位を四捨五入し、該平均値を吸水時間の値とした。
【0064】
(6)吸水速度
JIS L−1907バイレック法(2004年度版)に準拠して、シートの幅方向に等間隔で縦20cm×横2.5cmの試験片を5枚採取し、各試験片を20℃の水を入れた水槽上の一定の高さに支えた水平棒上にピンで止める。試験片の下端を一線に並べて水平棒を降ろして、試験片の下端がちょうど水につかるようにする。10分間の水の上昇した高さをmm単位で測定する。5枚の測定値を平均し、小数点以下第一位を四捨五入し、吸水速度として評価した。
【0065】
(7)添加物含有量(珪素)
試料5gに硫酸を添加し、一昼夜放置して炭化させた後、ホットプレートにて硫酸を揮散させた。得られた炭化物を電気炉にて550℃、2時間加熱し、灰化処理を行った。得られた灰化物を炭酸ナトリウム融解し、希塩酸に溶解させたものを試料溶液とした。試料溶液をICP発光分光分析装置により、珪素の定量をppm単位行った。
【0066】
(8)金属含有量(チタン、鉄)
試料5gを白金るつぼに秤り取り、硫酸を加えガスバーナー、電気炉を用いて灰化処理を行った。得られた残留物を重硫酸カリウム融解処理し、蒸留水に溶解させたものを試料溶液として、ICP発光分析装置に導入し、チタンの定量をppm単位で行った。前記と同様の操作にて試料溶液を作製し、原子吸光分析装置により、鉄の定量をppm単位で行った。このチタンと鉄の含有量の合計を金属含有量とした。
【0067】
(9)基板表面粗さ
JIS B0601(2001年度版)に準拠して、シュミットメジャーメントシステム社(Schmitt Measurement Systems,Inc)製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、テクスチャー加工後のディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さをnm単位で算出、小数点以下第三位を四捨五入した。数値が低いほど研磨布として高性能であることを示す。
【0068】
(10)スクラッチ点数
テクスチャー加工後の基板5枚の両面、すなわち計10表面の全領域を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値の平均値を求め、小数点以下第一位を四捨五入した。数値が低いほど研磨布として高性能であることを示す。
【0069】
(11)リッジ点数
原子間力顕微鏡AFMを用いて、テクスチャー加工後の基板サンプル表面の任意の10カ所(1カ所あたりの観察領域はディスク表面上の5μm×5μmの領域である)について、高さ5nm以上の突起をリッジとして、その個数を測定し、その合計点数をリッジ点数とした。
【0070】
(12)ラインデンシティ
原子間力顕微鏡AFMを用いて、テクスチャー加工後の基板サンプル表面の任意の10カ所について、半径方向長さ1μmあたりに形成されているテクスチャー痕の本数を測定し、その平均値を小数点以下第一位で四捨五入し、ラインデンシティ(テクスチャー痕の線密度)とした。数値が大きいほど高性能であることを示す。
【0071】
(実施例1)
ナイロン6を島成分、2−エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレンを海成分とし、島本数200島/ホールの海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率40/60で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、繊度4.0dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0072】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成し、ついで3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチし、目付710g/m、密度0.21g/cmの複合繊維不織布を作製した。この不織布を熱水収縮させた後、ポリビニルアルコールを繊維重量に対し20重量%含浸させてから、トリクロロエチレン中で海成分を溶解除去し、極細繊維束が絡合してなる極細繊維不織布を得た。
【0073】
この不織布にポリウレタン(ポリマージオールのポリエステル:ポリエーテル比率が75:25)を11%に調整したDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFを除去した。
【0074】
次いで厚み方向に半裁した後、サンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いて、非半裁面に対し、3段バッフィングを施し、立毛面を形成させ、立毛シート状物を作製し、最後に、ネット式の乾燥機を用い170℃、3分間にて乾熱処理を施すことで、厚さ0.57mm、目付210g/mの研磨布を得た。
【0075】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.01dtex、表面繊維本数の線密度は49本/100μm幅、吸水高さは34mm、水滴吸収時間は90秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
該研磨布を40mm幅のテープとし、以下の条件でテクスチャー加工を行った。
【0076】
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工し平均表面粗さ0.2nmに制御したディスクを用い、研磨布表面に1次粒子径1〜10nmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを10ml/分の供給量で滴下し、ディスクの回転数を300rpm、テープのディスクへの押付圧を2.0kg/cm、テープ走行速度を5cm/分の条件で10秒間研磨を実施した。
【0077】
テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.13nm、スクラッチ点数は15、リッジ点数は0、ラインデンシティは19本/μm幅であり、緻密でかつ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であって、加工性も良好であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板は、電磁変換特性に極めて優れるものであった。
【0078】
(実施例2)
PETを島成分、2−エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレンを海成分とし、島本数200島/ホールの海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率40/60で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、繊度4.0dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0079】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成し、ついで2500本/cmのパンチ本数でニードルパンチし、目付700g/m、密度0.22g/cmの複合繊維不織布を作製した。この不織布を熱水収縮させた後、ポリビニルアルコールを繊維重量に対し20重量%含浸させてから、トリクロロエチレン中で海成分を溶解除去し、極細繊維束が絡合してなる極細繊維不織布を得た。
【0080】
この不織布に実施例1と同一のポリウレタンを11%に調整したDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFを除去した。
【0081】
次いで厚み方向に半裁した後、サンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いて、非半裁面に対し、3段バッフィングを施し、立毛面を形成させ、立毛シート状物を作製し、最後に、ネット式の乾燥機を用い170℃、3分間にて乾熱処理を施すことで、厚さ0.55mm、目付210g/mの研磨布を得た。
【0082】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.01dtex、表面繊維本数の線密度は50本/100μm幅、吸水高さは20mm、水滴吸収時間は206秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。
【0083】
テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.15nm、スクラッチ点数は19、リッジ点数は0、ラインデンシティは20本/μm幅であり、緻密でかつ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であって、加工性も良好であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板は、電磁変換特性に極めて優れるものであった。
【0084】
(実施例3)
溶融粘度1500poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6と溶融粘度1450poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点105℃のPEとを、ナイロン6/PE比率40/60でチップブレンドにより混合紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、繊度3.5dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0085】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成し、ついで3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチし、目付730g/m、密度0.25g/cmの複合繊維不織布を作製した。この不織布に実施例1と同一のポリウレタンを11%に調整したDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFを除去した後、85℃のトルエン中で海成分を溶解除去し、極細繊維束が絡合してなる極細繊維不織布を得た。
【0086】
次いで厚み方向に半裁した後、サンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いて、非半裁面に対し、3段バッフィングを施し、立毛面を形成させ、立毛シート状物を作製し、最後に、ネット式の乾燥機を用い170℃、3分間にて乾熱処理を施すことで、厚さ0.58mm、目付230g/mの研磨布を得た。
【0087】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.005dtex、表面繊維本数の線密度は78本/100μm幅、吸水高さは26mm、水滴吸収時間は156秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。
【0088】
テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.11nm、スクラッチ点数は14、リッジ点数は0、ラインデンシティは22本/μm幅であり、緻密でかつ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であって、加工性も良好であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板は、電磁変換特性に極めて優れるものであった。
【0089】
(実施例4)
溶融粘度310poise(240℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6(40重量%)、と重量平均分子量12万、溶融粘度720poise(240℃、剪断速度121.6sec−1)、融点170℃のポリ乳酸(PLA)(光学純度99.5%以上)(60重量%)を2軸押出混練機にて220℃で混練してポリマーアロイチップを得た。ここでPLAの重量平均分子量は、以下の方法を用いて求めた。すなわち、試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算で求めた。測定は各試料につき3点行い、その平均値を重量平均分子量とした。
【0090】
スパンボンド法により、上記ポリマーアロイチップを紡糸温度240℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4500m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで、温度80℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付150g/mの長繊維不織布を得た。
【0091】
該ポリマーアロイ繊維からなる不織布に油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、4枚積層し、5000本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施すことで、目付640g/m、密度0.27g/cmのポリマーアロイ繊維からなる不織布を得た。この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した後、実施例1と同一のポリウレタンを11%に調整したDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFを除去した。
【0092】
次いで厚み方向に半裁した後、サンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いて、非半裁面に対し、3段バッフィングを施し、立毛面を形成させ、立毛シート状物を作製した。その後、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて45分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、ナイロン6からなる極細繊維を発生させた。最後に、ネット式の乾燥機を用い170℃、3分間にて乾熱処理を施すことで、厚さ0.66mm、目付245g/mの研磨布を得た。
【0093】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.0004dtex、表面繊維本数の線密度は365本/100μm幅、吸水高さは2mm、水滴吸収時間は351秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
【0094】
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.10nm、スクラッチ点数は10、リッジ点数は0、ラインデンシティは27本/μm幅であり、緻密でかつ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であって、加工性も良好であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板は、電磁変換特性に極めて優れるものであった。
【0095】
(実施例5)
起毛加工後に、170℃、3分間の乾熱処理を行う代わりに、同一の乾燥機にて150℃、3分間の乾熱処理を行った以外は実施例1と同様の方法で、厚さ0.56mm、目付210g/mの研磨布を得た。
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.01dtex、表面繊維本数の線密度は48本/100μm幅、吸水高さは46mm、水滴吸収時間は62秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
【0096】
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.14nm、スクラッチ点数は16、リッジ点数は0、ラインデンシティは18本/μm幅であった。
【0097】
(実施例6)
実施例1で得られた研磨布に、NBR(二トリルゴム)を主体とする接着剤を裏面に塗布し、厚み50μmのポリエステルフィルムを圧着し、ナイロン6からなる研磨布とポリエステルフィルムからなる張り合わせシート状物を得た。
【0098】
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。研磨布の伸びによる加工ムラが抑制されたため、テクスチャー加工後のディスクは表面粗さが0.12nm、スクラッチ点数は14、リッジ点数は0、ラインデンシティは23本/μm幅であり、であり、加工性は非常に良好であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板は、電磁変換特性に極めて優れるものであった。
【0099】
(実施例7)
溶融粘度530poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点220℃のナイロン6(20重量%)と溶融粘度3100poise(262℃、剪断速度121.6sec−1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(80重量%)を2軸押出混練機にて260℃で混練してポリマーアロイチップを得た。
【0100】
このポリマーアロイチップを用いて、特開2004−162244号公報の実施例1に記載の公知の手法を用い、120dtex、12フィラメントの3.2倍延伸糸を得た。
このポリマーアロイ繊維を捲縮数14山/2.54cm、カット長51mmにて捲縮付与、カットを行い、ポリマーアロイ原綿を得た。得られたポリマーアロイ原綿にカーディング、クロスラッピングを施してウェブを作製し、次いで、3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施し、目付610g/mのポリマーアロイ原綿からなる不織布を得た。
【0101】
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
【0102】
最後に、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、ナイロン6からなる極細繊維を発生させた。ネット式の乾燥機を用い170℃、3分間にて乾熱処理を施すことで、厚さ0.59mm、目付260g/mの研磨布を得た。
【0103】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.00005dtex、表面繊維本数の線密度は257本/100μm幅、吸水高さは5mm、水滴吸収時間は68秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。
【0104】
テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.16nm、スクラッチ点数は20、リッジ点数は0、ラインデンシティは21本/μm幅であり、緻密でかつ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であって、加工性も良好であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板は、電磁変換特性に極めて優れるものであった。
【0105】
得られた研磨布の特性は表1に示したとおりであるが、実施例1〜7の研磨布は吸水高さが1〜50mmの範囲であり、水滴吸収時間が60〜1200秒の範囲であって、加工において砥粒を有効活用することができ、結果として、テクスチャー加工後に磁性層を成膜した基板はハードディスクドライブテストにおいて、基板表面粗さ、スクラッチ点数、リッジ点数、ラインデンシティともに優れるものであった。
【0106】

(比較例1)
起毛加工後に、170℃、3分間の乾熱処理を行わないこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ0.55mm、目付210g/mの研磨布を得た。
【0107】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.01dtex、表面繊維本数の線密度は49本/100μm幅、吸水高さは90mm、水滴吸収時間は12秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
【0108】
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.13nm、スクラッチ点数は14、リッジ点数は0、ラインデンシティは11本/μm幅であった。
【0109】
(比較例2)
起毛加工後に、170℃、3分間の乾熱処理を行う代わりに、同一の乾燥機にて120℃、3分間の乾熱処理を行った以外は実施例1と同様の方法で、厚さ0.55mm、目付210g/mの研磨布を得た。
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.01dtex、表面繊維本数の線密度は48本/100μm幅、吸水高さは72mm、水滴吸収時間は36秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
【0110】
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.13nm、スクラッチ点数は15、リッジ点数は0、ラインデンシティは12本/μm幅であった。
【0111】
(比較例3)
起毛加工後に、170℃、3分間の乾熱処理を行う代わりに、液流染色機にて125℃、45分間湿熱処理を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚さ0.61mm、目付250g/mの研磨布を得た。
【0112】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.01dtex、表面繊維本数の線密度は45本/100μm幅、吸水高さは83mm、水滴吸収時間は3秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
【0113】
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.14nm、スクラッチ点数は16、リッジ点数は1、ラインデンシティは13本/μm幅であった。
【0114】
(比較例4)
起毛加工後に、170℃、3分間の乾熱処理を行う代わりに、シリコーン系撥水剤TSF484(GE東芝シリコーン株式会社製)の5%希釈溶液をディップ、ニップにより付与、乾燥した以外は実施例1と同様の方法で、厚さ0.57mm、目付225g/mの研磨布を得た。
【0115】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.01dtex、表面繊維本数の線密度は48本/100μm幅、吸水高さは0mm、水滴吸収時間は1200秒以上で撥水性であった。なお、珪素の含有量は1600ppmであり、金属含有量は100ppm以下であった。
【0116】
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.28nm、スクラッチ点数は25、リッジ点数は13、ラインデンシティは15本/μm幅であった。
【0117】
(比較例5)
ナイロン6を島成分、2−エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリスチレンを海成分とし、島本数16島/ホールの海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率55/45で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、繊度4.2dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
【0118】
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成し、ついで2000本/cmのパンチ本数でニードルパンチし、目付650g/m、密度0.22g/cmの複合繊維不織布を作製した。この不織布シートを熱水収縮させた後、ポリビニルアルコールを繊維重量に対し20重量%含浸させてから、トリクロロエチレン中で海成分を溶解除去し、極細繊維束が絡合してなる極細繊維不織布を得た。
【0119】
この不織布に実施例1と同一のポリウレタンを11%に調整したDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFを除去した。
【0120】
次いで厚み方向に半裁した後、サンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いて、非半裁面に対し、3段バッフィングを施し、立毛面を形成させ、立毛シート状物を作製し、最後に、170℃、3分間にて乾熱処理を施すことで、厚さ0.55mm、目付190g/mの研磨布を得た。
【0121】
得られた研磨布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は0.15dtex、表面繊維本数の線密度は16本/100μm幅、吸水高さは38mm、水滴吸収時間は154秒であった。なお、珪素の含有量は100ppm以下であり、金属含有量は100ppm以下であった。
【0122】
該研磨布を40mm幅のテープとし、実施例1の条件でテクスチャー加工を行った。テクスチャー加工後のディスクは、表面粗さが0.23nm、スクラッチ点数は22、リッジ点数は9、ラインデンシティは8本/μm幅であった。
【0123】
【表1】

【0124】
得られた研磨布の特性は表1に示したとおりであるが、比較例1〜3の研磨布は吸水特性が高い為に基板表面粗さ、スクラッチ、リッジ点数は優れているものの、ラインデンシティの低いものであった。また、比較例4の研磨布は撥水剤の付与により、表面状態が悪化し、研磨性能の低いものであった。比較例5の研磨布は疎水性であるものの、単繊維繊度が0.15dtexと大きい為に、研磨性能が低い結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均単繊維繊度が0.00001〜0.1dtexの極細繊維束からなる不織布と弾性重合体とで構成されるシート状物からなる研磨布であって、JIS L−1907バイレック法(2004年度版)で測定される吸水速度が1〜50mmの範囲であることを特徴とする研磨布。
【請求項2】
水滴吸収時間が60〜1200秒であることを特徴とする請求項1に記載の研磨布。
【請求項3】
実質的に撥水剤、疎水剤などの添加剤を含まないことを特徴とする請求項1または2に記載の研磨布。
【請求項4】
前記極細繊維がポリエステルまたはポリアミドからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の研磨布。
【請求項5】
前記弾性重合体がポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の研磨布。
【請求項6】
前記弾性重合体の含有率がシート状物の総重量に対して10〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の研磨布。
【請求項7】
シート状物の表面繊維の線密度が30〜1500本/100μm幅以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の研磨布。
【請求項8】
目付が50〜800g/mであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の研磨布。
【請求項9】
密度が0.1〜0.6g/cmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の研磨布。
【請求項10】
片面に補強層が積層されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の研磨布。

【公開番号】特開2007−283420(P2007−283420A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111646(P2006−111646)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】