研磨終了時点の予測方法
【課題】導電性膜内の微細な配線に強い磁束によるジュール熱損を及ぼすことなく、研磨終了時点を精度よく予測する。
【解決手段】ウェーハWの導電性膜を除去する研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜に二次元平面のインダクタ型センサ34を近接させて、インダクタ型センサによりウェーハの導電性膜に誘起される磁束をモニタする。インダクタの形状、インダクタと導電性膜との距離、発振周波数などの条件を導電性膜に表皮効果が働く程度に適正化し、研磨終了の直前に磁束のピークが出現するように構成する。研磨終了の直前では導電性膜を磁束が殆ど貫通せず、ウェーハ内の微細配線などを損傷する虞がなくなる。
【解決手段】ウェーハWの導電性膜を除去する研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜に二次元平面のインダクタ型センサ34を近接させて、インダクタ型センサによりウェーハの導電性膜に誘起される磁束をモニタする。インダクタの形状、インダクタと導電性膜との距離、発振周波数などの条件を導電性膜に表皮効果が働く程度に適正化し、研磨終了の直前に磁束のピークが出現するように構成する。研磨終了の直前では導電性膜を磁束が殆ど貫通せず、ウェーハ内の微細配線などを損傷する虞がなくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウェーハに形成された導電性膜の研磨時における研磨終了時点の予測方法に関するものであり、特に、インダクタを用いて、導電性膜の発振周波数の特徴的な変化から研磨状態の検出及び研磨終了時点を予測するようにした研磨終了時点の予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの表面に例えば酸化膜を形成し、酸化膜にリソグラフィ及びエッチングを施して配線パターンに対応した構パターンを形成した後に、この上に構パターンを充填するためのCu等からなる導電性膜を成膜し、この導電性膜のうち溝パターンやスルーホール部分等の埋込み部以外の不要部分を化学機械研磨により除去して配線パターンを形成するプロセスが知られている。この配線パターンの形成では、不要部分の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終点を確実に検出してプロセスを停止することが重要である。導電性膜の研磨が過剰であると配線の電気抵抗が増加し、研磨が不十分で導電性膜の不要部分が完全に除去されていないと配線の絶縁障害につながる。
【0003】
研磨状態のモニタ方法に関連する従来技術として、例えば特許文献1によってフィルム厚の変化をその場で監視する方法が公開されている。この従来技術は、化学機械研磨によって下地本体(半導体ウェハ)上から導電性フィルムを除去する方法において、導電性フィルムの厚さ変化をその場で監視するための方法であって、電磁界に指向性をもたらすように整形するためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路を含むセンサを導電性フィルムに近接して配置し、励振信号源からの掃引出力を動作点設定用インピーダンス手段を介してセンサへ印加する。これにより、センサが励起されると、発振電流がコイルに流れ、交番電磁界を発生する。この交番電磁界は、次いで導電性フィルム中に渦電流を誘導する。渦電流が導電性フィルムに誘導されると、二つの効果が生じることになる。第一に、導電性フィルムが損失抵抗として作用し、その効果はセンサ回路に対する抵抗負荷であり、これは共振信号の振幅を下げ、共振周波数を下げる。第二に、導電性フィルムの厚さが減少すると、インダクタのコイルの中心に配置した金属ロッドが引き抜かれるのと同様な効果が生じ、これによってインダクタンスの変化並びに周波数シフトを引き起こす。このようにして導電性フィルムの厚さ変化に起因するセンサの共振ピークに関連した周波数シフトを監視することにより、該導電性フィルムの厚さ変化を連続的に検出するようにしている。
【0004】
また、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている(特許文献2)。この特許文献2は、背景技術として、一般に渦電流センサは半導体基板の表面に設けられた導電性膜に渦電流を形成し、この渦電流により間接的に膜厚の計測を行う従来技術では、正確な膜厚検出が困難であるということを問題としており(段落0004)、半導体基板に形成される極薄い膜厚から比較的厚い導電性膜まで正確に膜厚等の検出を行うことができる渦電流センサを提供することを目的としている(段落0005)。
【0005】
そこで、この文献では、導電性膜又は導電性膜が形成される基体の近傍に配置されるセンサコイル(渦電流センサ)と、このセンサコイルに一定周波数の交流信号を供給して前記導電性膜に渦電流を形成する交流信号源と、前記導電性膜を含めたリアクタンス成分及び抵抗成分を計測する検出回路とを備え、前記センサコイルは、信号源に接続する発振コイルと、発振コイルの導電性膜側に配置する検出コイルと、振コイルの導電性膜側の反対側に配置するバランスコイルとを具備し、検出コイルとバランスコイルとは互いに逆相となるように接続されている。そして、前記検出回路で検出した抵抗成分及びリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、インピーダンスの変化から導電性膜の膜厚の変化を広いレンジでほぼ直線的な関係として検出するようにしている。
【0006】
特許文献2の場合、例えば、比較的厚い膜で渦電流を生じさせて膜厚を測定する一方、その厚い膜を研磨して減少させて渦電流量を減少させていくと、その渦電流が減少した分において、単純に磁場のエネルギーは表面の導電性膜で消費されず、そのまま導電性膜の下に存在する素子内部に入り込むことになる。すなわち、本来導電性膜で消費される磁場のエネルギーに対して、導電性膜が除去されるにつれて、素子内部が過剰な磁場のエネルギーにさらされることを許容するものである。
【0007】
さらに、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている(特許文献3)。まず、背景として段落0012には、従来の渦電流センサによる研磨終点の検出方法は、渦電流センサに使用する発振周波数が7MHz程度であり、比較的小さいため、研磨対象の導電性膜が十分厚い場合には大きな渦電流損を検出することができるが、導電性膜の研磨が進行し膜厚が極めて薄くなると、渦電流損の大きさが小さくなり、この場合には例えば1000Å以下程度の膜厚検出が困難になる。即ち、従来の渦電流センサは発振周波数が比較裾氏いため、オングストロームオーダの膜厚検出精度が要求されるポリッシング装置の研磨終点の検出には、その精度が十分ではなかったということを問題としている。
【0008】
ここでは、厚い膜厚であっても、薄い膜厚であっても同様に膜内に磁場を侵入させ、その磁場による渦電流の大きさによって単純に膜厚をモニタする方法を開示している。特許文献3の技術も先に示した従来技術と同様に、センサコイルが形成する磁束がそのセンサコイル全面に配置された基板上の導電性膜を貫通し、交番的に変化することで導電性膜中に渦電流を生じさせ、その渦電流が導電性膜中を流れることで渦電流損失が生じ、等価回路的にみるとセンサコイルのインピーダンスのリアクタンス成分を低下させることになるとしている(段落0008)。
【0009】
また、発振回路の発振周波数の変化を観察することで、研磨の進行に伴い、導電性膜が徐々に薄くなると、これにより発振周波数が低下し、導電性膜が研磨により完全になくなるとタンク回路の自己発振周波数となり、それ以降は発振周波数が略一定となる。それ故、この点を検出することにより、導電性膜の化学機械的研磨による終点を検出することができるとある(段落0009)。
【0010】
また、当文献中の図2に示すように、導電性膜の研磨が進行するとこれに伴い渦電流損が変化し、センサコイルの等価的な抵抗値が変化する。したがって、発振回路の発振周波数が変化するので、この発振信号を分周回路により分周し、又は減算器により減算することにより、検出幅の周波数の大きさに対応した信号をモニタに表示する。これにより、上述した図2に示すような周波数軌跡の推移が得られる(段落0025)。
【0011】
さらに、次のような渦電流センサも知られている(特許文献4)。この文献の請求項1は、導電性膜が形成される基板の近傍に配置されるセンサコイルと、該センサコイルに交流信号を供給して導電性膜に渦電流を形成する信号源と、導電性膜に形成された渦電流をセンサコイルから見たインピーダンスとして検出する検出回路を備えた渦電流センサであって、前記センサコイルは、高透磁率材料によって、形成した収容部材内に収容されていることを特徴とする渦電流センサとしている。
【0012】
また、この文献の請求項7においては、導電性膜または導電性膜が形成される基板の近傍に配置されるセンサコイルと、該センサコイルに交流信号を供給して前記導電性膜に渦電流を形成する信号源と、前記導電性膜に形成された渦電流を前記センサコイルから見たインピーダンスとして検出する検出回路とを備えた渦電流センサであって、前記インピーダンスの抵抗成分とリアクタンス成分とを直交座標軸上に表示し、前記インピーダンスの座標と指定された中心点の座標とを結ぶ直線の成す角度から前記導電性膜の膜厚を検出するようにしたことを特徴とする渦電流センサを開示している。
【特許文献1】特許第2878178号公報(第2頁〜第7頁、図1〜図15)。
【特許文献2】特許第3587822号公報(第3頁、図1〜図11)。
【特許文献3】特許第3902064号公報
【特許文献4】特開2005−121616号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1のフィルム厚の監視方法では、センサに電磁界に指向性をもたらすためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路を用いている。そして、研磨初期において20Hz〜40.1MHzの周波数からなる掃引出力をセンサへ印加し、前記コイルから発生した指向性を持つ交番電磁界により、導電性フィルムを貫通する漏洩磁束を生じさせて該導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を研磨初期から誘導させている。
【0014】
導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を誘導するためには大きな交番電磁界、即ち導電性フィルムを貫通する程度の大きな磁束を形成することが必要であり、導電性フィルムの厚さ変化の監視は研磨初期から研磨終期まで導電性フィルム内に誘起された渦電流を利用して行われている。このため、膜厚変化の監視の間、導電性フィルムの厚さ方向に向かって磁束を貫通させることが必要である。特許文献1の図面中には、全ての導電性フィルムの部分に導電性フィルムを貫通する磁束線が記載されていることからもこのことは明らかである。
【0015】
研磨初期におけるウェーハの表面には、無垢なCu膜(導電性フィルム)が最上層にあるのが一般的である。これら無垢なCu膜の全てに渦電流を誘起させるためには非常に大きな漏洩磁束が必要である。しかし、その漏洩磁束は、渦電流を誘起するが、それらはいずれ渦電流損という形でジュール熱になって消費される。最表層の無垢なCu膜に対しては、体積抵抗が小さいため、発熱は比較的小さいが、内部のすでに配線されている部分では、配線断面積が小さく、体積抵抗が大きいため、貫通する磁束により大きな渦電流が誘起され、その結果局部的に大きなジュール熱損を生むことになる。これは、時として一部配線が溶融して断線してしまう問題に発展する。いわゆる誘導加熱の状態になり、特に内部に熱がこもってしまう現象になる。特に、Cu配線などでは、Cuが加熱されるとTaなどのバリア膜にCuが拡散する場合や、場合によってはバリア膜を突き破ってCuが拡散してしまう懸念がある。
【0016】
また、ウェーハの表面部に幾層にも配線が施されている場合では、表層のCu膜だけではなく、すでに処理が完了している内部の配線部分が局部的に暖められて周囲に拡散したり、半導体基板内のp型とn型を形成しているドーパントがさらに拡散したりして、基板内素子の特性を変えてしまうこともある。また、熱が発生しない場合でも、過剰な渦電流が微細配線に流れる場合は、エレクトロマイグレーションを引き起こして断線することがある。
【0017】
素子へ侵入する磁場が素子に与えるダメージは次のように解釈することができる。すなわち、特許文献1の方法では、表面の導電性膜(Cu膜)の部分で、侵入してきた磁場によって渦電流が形成され、その渦電流によって反発磁場が発生する。研磨初期においては、表面を覆っている導電性膜によって内部の素子へ磁場が侵入することを防ぐため素子へのダメージは小さい。エネルギー的には、表面を覆っている導電性膜で生じる渦電流によって、ジュール熱損として導電性膜内で消費される。そのため、研磨初期においては、内部の素子は表面の導電性膜によって、幾分か磁場の影響から保護されている。
【0018】
しかし、研磨が進行して表面の導電性膜を覆っている膜が除去されると、そのまま磁場は軽減されることなく、素子内に侵入する。研磨初期においては、磁場のエネルギーが表面の導電性膜内部でジュール熱損として消費されたが、表面の導電性膜が研磨により除去されると、そのジュール熱損で消費されたエネルギーが、そのまま素子側に負担されることになる。素子内に渦電流を生じるほどの導電性膜がなければ、磁場はそのまま素子内を突き抜けて外部の空間で消費されることになるが、ある大きさの導電性膜が存在した場合、集中的に渦電流が発生して断線を起こすことになる。こうしたことは、素子の構造にも起因するところはあるが、一般的に表面の厚い導電性膜全体で渦電流を発生させるほどの指向性の高い磁場を素子内に侵入させると、所々で渦電流を発生させてしまい、悪影響を及ぼすことは明らかである。
【0019】
さらに、特許文献1の方法では、導電性膜に磁場を導入し、その磁場によって発生した渦電流量の変化をモニタして膜厚を見積もるが、この場合膜厚を見積もるためには、継続的に渦電流を発生させなければならない。なぜなら、渦電流が発生しないと回路系は動作せず、変化した膜厚も見積もれないからである。また、研磨の終了の予測も、除去した膜厚が見積もれないことには、終了点やその終了点付近の予測も不可能となる。よって、膜厚をモニタし、終点予測及び終点検出するには、継続的な渦電流の形成は必須となる。
【0020】
さらに、例えば、研磨終了時点付近のある所定の残膜量になった時点で、研磨条件を変えて処理を行う場合に、所定の残膜量であるか否かを見極めることは困難である。初期膜厚からの変化分で推測することは可能であるが、初期膜厚がばらつく場合は所定の残膜量の見積もりがばらつくことになるからである。この研磨終了時点付近の判断に関し、センサと導電性フィルム間のギャップが研磨の振動によって微小に変化すると、センサ回路系全体の浮遊容量が変化して共振周波数全体がシフトする。このため、仮にある設定の共振周波数になったときに閥値を設定して、研磨終点を判別する設定をしていても、全体的に共振周波数がシフトすれば、その閾値の設定による研磨終了時点の判断は難しくなる。
【0021】
このように、従来方法において、単調かつ連続的に増加もしくは減少変化する共振周波数において、ある値に閾値を設定していたとしても、センサと導電性フィルム問のギャップが微小に変化したり、その間に何等かの誘電体が介在したりすることで、その波形自体が全体的に上下に平行移動することがあり、その結果、予め設定した閾値が意味をなさないことがある。
【0022】
また、さらに、特許文献2や特許文献3などの方法においては、共振周波数や抵抗成分出力は直線的に減少して変化し、終了付近になる場合にその減少する変化が緩やかになる。しかし、その変化の度合いが非常に緩やかであるため、残りの膜厚がどれだけであるかという推測を立てることが非常に困難になる。
【0023】
また、磁束が素子内を貫通するため、素子の構造によっては、導電性膜のみならず、その他の素子内に形成される渦電流などもあるため、完全に渦電流が流れなくなってゼロになることはない。導電性膜を除去しきったとしても素子内に形成された配線などに流れる渦電流から依然として幾分かの渦電流は流れており、そのため、あたかも残り膜厚があるかのような振る舞いを受けるケースもある。
【0024】
渦電流センサを用いた特許文献2に記載の技術においても、導電性膜の膜厚変化の監視を、研磨初期から研磨終期まで渦電流の変化でみていることは、特許文献1に記載の技術とほぼ同様である。
【0025】
また、研磨初期から研磨終期まで渦電流を利用して導電性膜の膜厚を監視する上記の従来技術では、膜内で渦電流を引き起こすのに膜内に浸透する程度の十分強い磁束を作る必要があり、インダクタの形状は磁束に指向性を持たせるために三次元となっている。このため、センサを研磨装置等に組み込む上で、コイルに流す電流が大きくなって消費電力が多くなって電源装置が大型になり、導線をコイル状に巻く工程等が必要になってコスト高になる。また、磁束が周辺に漏れてノイズが発生し易くなるという問題が生じる。
【0026】
特許文献3に記載の渦電流センサは、研磨の初期から磁束が導電性膜を貫通し、終始渦電流を積極的に発生させ、その渦電流変化から膜厚変化を読取るもので、導電性膜を貴通しない程度の磁場しか発生しないハードウェアでは、渦電流が形成できず目的を達成できない。また、導電性膜が研磨により減少することで、渦電流が形成される領域が単調に減少し、そのため、発振周波数が単調に減少する挙動が記載されており、その発振周波数が略一定になったときを終点とみなしてこの部分を検出するとしている。即ち、この従来技術で使用するソフトウェアのアルゴリズムでは、発振周波数の変化とは、減少から略一定になる変化を発振周波数の変化としているのであって、例えば、この発振周波数が変曲点を有するような変化をした場合においては終点検出が困難である。
【0027】
そこで、本発明は、導電性膜内に形成されている微細な配線に強い磁束を及ぼすことなく、その結果電磁誘導によって誘起される渦電流の発生を抑制して、渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることを目的とする。
【0028】
また、センサと導電性膜のギャップの変化やスラリー等の誘電物質の介在状態によって、誘起される渦電流量が全体的にシフトして、閥値の設定が大幅に変化して検出しにくくなるといった事態をなくして、デバイスウェハを貫通しない程度の微細な磁場であっても、十分に精度よく検出することを可能とし、研磨終了時点を精度よく予測・検出し、また除去すべき残膜量及び研磨レート等をリアルタイムに算出して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この発明は、上記目的を達成するために提案するものであり、請求項1記載の発明は、
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、ウェーハ面の研磨加工を行いながらリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0030】
従来方法では、完全に導電性膜を取りきったとしても、素子内に磁束の大半が貫通していることから、素子内に存在する微細な導電性膜に、幾分かの渦電流は依然として流れていることになる。そのため、完全に導電性膜を除去した膜厚ゼロの状態を見積もることが難しく、また、ウェーハによって配線密度が異なるため、導電性膜以外の残留渦電流の影響がまちまちになる。よって、導電性膜がゼロの状態の定義が難しい問題があった。
【0031】
本発明では、表皮効果による影響で急峻な変曲点を持ち、この表皮効果による変曲点位置は素子内の状態によることなく、表面の導電性膜における真の膜厚によって、ほとんど一意に決定されるとして間違いない。例えば、Cu膜の下にTa膜が存在するケースが多いが、表皮効果によって流れる電流は極表面で、また、Cu膜からTa膜のように導電率が大きく変化する材料においては、表皮効果は、Cu部分の変化が支配的になり、Ta膜があっても、ほとんど磁場が消費されず、反射されることになる。
【0032】
本発明の方法によれば、表皮効果に基づく急峻な変曲点が現れる特徴的な磁束変化を基に、それぞれのウェーハの面内位置において、膜厚変化を詳細に捉えて、それぞれの膜厚のばらつき、研磨レート、研磨形状、均一性をリアルタイムに見積もることが可能となる。
【0033】
また、その特徴的な磁束変化は、初期膜厚からの変化量を基準にした変化ではない。完全に除去した状態を基準として残り膜厚の研磨が終了する前に急峻な変曲点として知らせる。それにより、初期膜厚がばらついて不均一でない場合であっても、安定して残り膜厚をモニタすることが可能となる。
【0034】
さらに、初期膜厚をあらかじめ測定するか、または別に測定した初期膜厚値から、リアルタイムにモニタした正碓な残膜量を検出した結果を基に、研磨量を算出することも可能となる。また、研磨した時間から研磨レートを算出することも可能となる。
【0035】
請求項2記載の発明は、リアルタイムに見積もる上記研磨所量は、残り膜厚、平均膜厚、研磨形状、研磨量、平均研磨量、研磨除去量のばらつき、残り膜厚のばらつき、残り膜の形状のいずれかであることを特徴とする研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0036】
本発明では、膜厚減少に伴って表皮効果に基づいた変曲点を含む特徴的な磁束変化が現れ、このような変化そのものが従来技術には見られないものであり、特徴的な磁束変化から残り膜厚、平均膜厚、研磨形状、研磨量、平均研磨量、研磨除去量のばらつき、残り膜厚のばらつき、残り膜の形状などを求めることが可能である。
【0037】
請求項3記載の発明は、ウェーハ面に対して研磨加工を行いながら、ウェーハ面内の複数箇所に対して研磨所量を見積もることを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0038】
この発明においては、この場合は、ウェーハ面内の複数箇所においてそれぞれ検出される共振周波の波形の時間的ずれから研磨均一性をリアルタイムで検知或いは予測することができる。
【0039】
請求項4記載の発明は、導電性膜に近接するインダクタが、二次元平面インダクタであることを特徴とする研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0040】
この方法によれば、二次元平面インダクタの磁場の指向性が鋭くなく、適度に分散した磁場が導電性膜に与えられるため、磁場が導電性膜内に侵入しにくく、表皮効果の影響を顕著にすることができる。それによって、特徴的な波形を基に、それぞれの位置における膜厚ばらつきなどを精度良く見積もることが可能となる。この場合も先と同様に、初期膜厚を基にした変化ではなく、膜厚が全くない状態を基にした残膜量であるため、初期膜厚に依存することなく、安定して終了時点までの残り膜厚を求めることが可能となる。
【0041】
請求項5記載の発明は、スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、研磨による膜厚減少に伴って導電性膜に誘起される渦電流が増大し、且つその後の膜厚減少に伴って渦電流が実質的に減少する過程において、導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の状態を膜厚量に換算し、その相対的なばらつきを基にリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0042】
この方法では、膜厚減少に伴って形成される渦電流によって誘起される磁束が表皮効果によって特徴的な変化を起こすことから、その特徴的な変化の部分を経る時間をモニタすることにより、その経過時間のばらつきを基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求めることができる。
【0043】
請求項6記載の発明は、スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、研磨による膜厚減少に伴って導電性膜に誘起される渦電流が増大し、且つその後の膜厚減少に伴って渦電流が実質的に減少する過程において、その導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の部分を経る時の経過時間をウェーハ面内の複数の位置において求め、その複数の位置における経過時間のばらつきを基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求める研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0044】
本発明によれば、請求項5記載の発明の作用に加えて、ウェーハ面内の複数の位置において、その特徴的な変化の部分を経る時間をモニタすることにより、その経過時間のばらつきを基に、全面的な研磨所量をリアルタイムに求めることができる。
【0045】
請求項7記載の発明は、スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、インダクタを、対向するウェーハに対して異なる軌跡位置に複数配置してウェーハに近接させ、該インダクタで形成される磁束により、所定のウェーハ面内の複数の位置で導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、上記導電性膜の表皮効果に基づいて、その導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の部分を経る時の経過時間を、ウェーハ面内の複数の位置において求め、研磨除去量のばらつきに換算するか、もしくは、複数の位置におけるそれぞれの膜厚量を波形の変化率から換算し、そのばらつきまたは膜厚量を基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求める研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0046】
この方法では、導電性膜に誘起される特徴的な磁束変化の部分を経る時の経過時間から、研磨除去量のばらつき又は複数の位置におけるそれぞれの膜厚量を求めることにより、精度良く研磨所量をモニタすることが可能となる。
【0047】
請求項8記載の発明は、上記導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化の測定手段は、導電性膜中の渦電流の測定、または、導電性膜が渦電流を生じることにより発生する相互インダクタンスの測定、または、導電性膜の相互インダクタンスによる上記インダクタのセンサ回路系におけるインダクタンス変化の測定、または、センサ回路系のインピーダンス変化の測定、または該センサ回路系のインダクタンス変化を高周波インダクタと容量とを並列接続して発振させその共振周波数の変化の測定の少なくとも一つであることを特徴とする研磨終了時点の研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0048】
本発明の予測方法では、膜厚減少に伴って表皮効果に基づいた変曲点を含む特徴的な磁束変化が現れ、このような変化そのものが従来技術には見られないものであるので、磁束変化に基づく種々の数値(渦電流、相互インダクタンス、インピーダンス変化など)により研磨所量を予測することが可能である。
【0049】
以上述べた請求項1乃至請求項8記載の本発明と従来技術との相違点を以下に述べる。先ず、本発明では、渦電流を膜内に積極的に誘発し、膜厚の計測を行うものではない。磁場に対する導体膜の表皮効果を利用して、磁場を導電性膜へ侵入することを極力阻止し、膜厚除去付近で一部の磁場が導体膜から漏れ出すことによって生じる渦電流を検知し、その変化形態から終了点を予測するものである。
【0050】
また、表面の導電性膜に生じる渦電流によって、その導電性膜の下に存在する素子の部分での消費する磁場エネルギーを極力軽減する。導電性膜が除去される直前において、膜摩滅少に伴って、トータルの渦電流が減少していく過程では、磁場のエネルギーが内部の素子に影響を与えるため、素子の内部への磁場の侵入を極力防ぎ、磁場のエネルギーを軽減するようにしている。
【0051】
特許文献2において、導電性膜の膜厚を検出するセンサコイルは、信号源に接続する発振コイルと、発振コイルの導電性膜側に配置する検出コイルと、発振コイルの導電性膜側の反対側に配置するバランスコイルとを備え、検出コイルとバランスコイルとが互いに逆相になるように接続した直列回路に可変抵抗を接続し、検出対象である導電性膜が存在しないときに、前記直列回路の出力がゼロとなるように調整可し、検出回路で検出した抵抗成分及びリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、合成インピーダンスの変化から導電性膜の膜厚変化を広いレンジで略直線的な関係として検出している。
【0052】
しかし、本発明においては、インダクタとして、発振コイル、検出コイル、バランスコイルと3つのコイルを必要としない。また、そのコイルを立体的に3次元的に多段につみ、その磁束変化をモニタするものではない。インダクタとなるコイルは一つだけであり、平面的に2次元で構成するものである。
【0053】
また、特許文献2では、検出コイルとバランスコイルと互いに逆相になるように接続した直列回路に可変抵抗を接続するとしているが、本発明においては、可変抵抗などの抵抗ははさむものではない。本発明の発振回路は、インダクタに対して容量を並列に結合するものである。
【0054】
また、上記公報によると、膜厚変化を抵抗成分とリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、この合成インピーダンスは膜厚変化に対して広いレンジで略直線的な関係を形成して、その直線的に変化する関係から膜厚を求めるとしている。しかし、木発明においては、幅広いレンジにおいて膜厚を測定することを目的としていない。研磨終了時点の直前における特徴的な波形の変化を基に、研磨の終了点を正確に予測するものである。
【0055】
また、その研磨終了時点の直前における特徴的な波形の変化とは、略直線的な変化ではない。表皮効果の影響によって、急峻な変曲点を有し、その変曲点および、その前後の急峻な変化率などの特徴的な点に基づいて、研磨終了時点を正確に予測するものである。
【0056】
また、上記公報によると、段落0027では、図7(b)に導電性膜の膜厚の変化に対する抵抗分の変化を示している。膜厚の変化に対する抵抗分の変化の関係は、膜厚が厚い方から薄い方に変化するに従って、抵抗分Rが図のように変化する。即ち、極薄膜厚の領域(a)では抵抗分Rの出力が直線的に大きく変化し、ある厚さの領域(b)になると抵抗分Rの変化は飽和し、さらに膜厚が厚くなる領域(c)においては抵抗分Rの出力が低下する。ここで、銅膜の場合は、(a)点が約1000Å程度を示し、(b)点が2000Å〜3000Åを示し、(c)点が5000Å以上を示すとある。
【0057】
しかし、導電性膜厚の抵抗分が膜厚によって大きくなり、その後小さくなるといった挙動は、円の軌跡を示すものであって、抵抗成分とリアクタンス成分とのバランスにおいてその位相の兼ね合いからくるもので、本発明のように表皮効果に基づくものではなく、挙動は全く別である。
【0058】
本発明においては、表皮効果によって、磁束が導電性膜内に侵入しない過程から、膜厚減少に伴って一部の磁束が漏洩し、その後、磁束がある程度貫通すると、膜の体積に応じて、渦電流が減少するという一連の表皮効果に基づく減少によって、急峻な変曲点が生まれている。その変曲点は、単純に周波数だけに影響するのではない。後に示すインダクタ距離とインダクタ径を変えてシミュレーションした事例に示すように、たとえ同じ周波数であっても、インダクタの径やインダクタと導電性膜の距離により、磁場の指向性がかわり、磁場の導電性膜内への侵入挙動が大きく変化する場合がある。あるインダクタ径とインダクタ距離では、研磨時の膜厚が減少する過程で表皮効果に基づく変曲点を有していたが、例えば1/1000のインダクタ大きさとインダクタ距離では、研磨時の膜厚が減少する過程では、表皮効果に基づく変曲点を持たない場合が存在する。これは、明らかに、そのときの周波数だけではなく、インダクタの形状や距離などの設定においても、磁場の指向性が変化し、表皮効果によって磁場の導電性膜に対する侵入特性が変化して、変曲点の状態が変化することを示している。
【0059】
本発明では、そうした導電性膜内へ磁場が侵入しない状態から、侵入していく状態における現象的な変化過程を、研磨により膜厚が減少する過程に形成し、その状態変化を利用して精度良く導電性膜が除去される点を予測するものである。
【0060】
このように、本発明における表皮効果に基づく抵抗成分の変化と、従来技術の抵抗成分とリアクタンス成分との位相関係から求める抵抗成分の変化は全く異なるものである。
【0061】
また、特許文献3(特許第3902064号公報)によると、まず、背景として段落0012には、従来の渦電流センサによる研磨終点の検出方法においては、渦電流センサに使用する発振周波数が7MHz程度であり、比較的小さいため、研磨対象の導電性膜が十分厚い場合には、大きな渦電流損を検出することができるが、導電性膜の研磨が進行し膜厚が極めて薄くなると、渦電流損の大きさが小さくなり、この場合には例えば1000Å以下程度の膜厚検出が困難になる。即ち、従来の渦電流センサは発振周波数が比較的低いため、オングストロームオーダの膜厚検出精度が要求されるポリッシング装置の研磨終点の検出には、その精度が十分ではなかったということを問題としている。
【0062】
そして、厚い膜厚であっても、薄い膜厚であっても同様に膜内に磁場を侵入させ、その磁場による渦電流の大きさによって単純に膜厚をモニタする方法を開示している。
【0063】
しかし、本発明では、導電性膜が比較的厚い場合を問題としない。むしろ、導電性膜が厚い場合に、表皮効果によって磁場が導電性膜内に侵入せず、したがって大きい渦電流を検出しないことが求められる。また、膜厚が1000Å程度にまで減少してくる場合、指向性のない磁場であっても、一部導電性膜を貫通して膜厚の減少とともに渦電流を形成して反発磁場を生じるため、それを精度よく検出するものである。導電性膜が除去される直前付近の表皮効果に基づく特徴的な挙動をクローズアップして検出して研磨終了時点を精度良く予測するもので、厚い膜厚であっても膜厚を測定することを目的とするものではない。
【0064】
また、特許文献3の段落0028によると、渦電流センサの発振周波数信号を周波数の時間勾配として捉えて発振周波数の時間微分信号を演算し、この特徴点により、研磨終点の判定を行っている。図5(a)は発振周波数事自体の時間t′の推移軌跡を示し、図5(b)はこの微分値の推移軌跡を示す。
【0065】
このように発振周波数の挙動は、単調に発振周波数が減少する挙動が示されており、この発振周波数の単調な減少点の最下点で研磨の終点の判定を行うものである。また、その波形を微分して単調な減少における変化点を見出すことで終点を判定するとしている。
【0066】
しかし、本発明では、こうした発振周波数の挙動が異なる。すなわち、本発明では研磨による膜厚の減少過程において、導電性膜の表皮効果によって発振周波数が膜厚減少とともに一旦上昇し、その後下降することで、一つのピークを終点間際にもつ。この挙動は、表皮効果によって磁場が導電性膜内に侵入しない過程から侵入する過程によって、生じるものであり、先の公知例で示している挙動は明らかに異なる。
【0067】
そして、本発明は、上昇して下降する変曲点ならびにその変曲点付近の特徴的な部分を検出して、研磨の終了時点を精度良く予測するものである。
【0068】
また、特許文献3では、渦巻状のセンサコイルが基板と直交するように配置されているが、それに対して、本発明におけるコイルでは、基板に平行する形で一つの平面インダクタを配置しており、装置の構成の点でも明らかに異なっている。
【0069】
さらに、特許文献3では、段落0032に示すように、抵抗成分は膜厚減少に従って一度増大し、その後減少する挙動を示すとしている。しかし、これは表皮効果によって現れている挙動ではない。図に示す回路において、その位相差において抵抗成分とリアクタンス成分とのバランスから生じる変曲点である。即ち、本発明における変曲点は、こうした変曲点とは全く異なる。先に述べたように、変曲点はコイルの大きさや形状や導電性膜からコイルまでの距離によって大きく変化し、その設定によっては、高周波帯であっても表皮効果による特徴的な挙動が見られない場合も存在する。
【0070】
本発明では、その導電性膜の導電率、透磁率および周波数やインダクタ形状さらにはインダクタと導電性フィルムの距離などを適正に設定し、研磨による膜厚減少過程において発振周波数が表皮効果によって変曲点をもつ状態として、その波形の特徴的な部分を基に、研磨終了時点を精度良く予測するものである。
【発明の効果】
【0071】
請求項1記載の発明は、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、導電性膜の表皮効果により変化する磁束をモニタし、研磨時にリアルタイムに研磨所量を見積もるもので、研磨終了時点を精度よく予測することができるとともに、導電性膜内に形成されている微細な配線に強い磁束が及ばないので、渦電流のジュール熱損による配線への悪影響の虞がない。
【0072】
請求項2記載の発明によれば、本発明に特有の特徴的な磁束変化から、残り膜厚、平均膜厚、研磨形状、研磨量、平均研磨量、研磨除去量のばらつき、残り膜厚のばらつき、残り膜の形状など任意のデータを取得して、研磨精度を向上させることができる。
【0073】
請求項3記載の発明は、ウェーハ面内の複数箇所において同時に共振周波の波形を検出することにより、共振周波の波形の時間的ずれから研磨均一性をリアルタイムで検知或いは予測することができる。
【0074】
請求項4記載の発明は、二次元平面インダクタを用いることにより、磁場が導電性膜内に侵入しにくく、表皮効果の影響が顕著になり、膜厚ばらつきや残り膜厚などを精度良く見積もることができる。
【0075】
請求項5記載の発明は、膜厚減少に伴って生じる渦電流によって誘起されるが表皮効果によって特徴的な変化を起こすことから、その特徴的な変化の部分を経る時間をモニタすることにより、リアルタイムに精度よく研磨所量を求めることができる。
【0076】
請求項6記載の発明は、ウェーハ面内の複数の位置において、磁束の特徴的な変化の部分を経る時間をモニタし、その経過時間のばらつきから研磨所量を求めることにより、より高速に研磨所量を求めることができる。
【0077】
請求項7記載の発明は、導電性膜に誘起される特徴的な磁束変化の部分を経る時の経過時間から、研磨除去量のばらつき又は複数の位置におけるそれぞれの膜厚量を求めることにより、精度良く研磨所量をモニタすることができる。
【0078】
上記した本発明においては、特有の表皮効果に基づいた変曲点を含む特徴的な磁束変化が現れるので、請求項8記載の発明のように、渦電流、相互インダクタンス、インピーダンス変化、共振周波数変化などのうちの一種類或いは複数種類のデータから研磨所量を高精度に予測することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
本発明は、スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、ウェーハ面の研磨加工を行いながらリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法により、導電性膜内に形成されている微細な配線に強い磁束を及ぼすことなく、その結果電磁誘導によって誘起される渦電流の発生を抑制して、渦電流によるジュール熱損を極小に抑え、初期膜厚の偏差やギャップの変化等による電気的条件の変動に関わらず研磨終了時点を精度よく予測・検出するという目的を達成した。
【実施例1】
【0080】
図1は化学機械研磨装置1を示し、円盤形のプラテン2はモータ3を用いた駆動機構4の上に取付けられていて、プラテン2の上面にパッド5が貼り付けられている。プラテン2の上方且つプラテン2の回転中心から変位した位置に配置された研磨ヘッド6は、プラテン2よりも小径の円盤形であり、その下面に研磨対象であるウェーハWが取付けられている。研磨工程においては、パッド5の上面に薬液供給装置(図示せず)から研磨薬液または研磨スラリーが滴下され、研磨ヘッド6はウェーハWがパッド5の上面へ接触する高さまで下降されるとともに、プラテン2と研磨ヘッド6がそれぞれ回転駆動されてウェーハWの被研磨面(下面)が研磨される。パッド5の下のプラテン2の表面には平面状のインダクタ型センサ34が埋め込まれており、プラテン2が1回転するごとに、インダクタ型センサ34は研磨ヘッド6に装着されたウェーハWの下面を通過する。
【0081】
図2は研磨終了時点の予測・検出装置33の構成例を示す図であり、(a)はブロック図、(b)は平面状インダクタの他の構成例を示す図、(c)は(b)の平面状インダクタの断面図である。研磨終了時点の予測・検出装置33における高周波インダクタ型センサ34の主体を構成している発振回路35は、インダクタンスLとなる二次元の平面状インダクタ36に、キャパシタンスC0となる集中定数キャパシタ37が直列に接続されて、LC回路が構成されている。平面状インダクタ36は、絶縁物からなる方形状等の基板36a上に、Cu等の導電物質を用いてメアンダ形に構成されている。
【0082】
平面状インダクタ36は、図2(a)に示すスパイラル形の他に、図2(b)に示す平面状インダクタ41のように、方形状の基板41a上に、メアンダ形で構成してもよい。また、丸形のスパイラルとしてもよい。二次元の平面状インダクタ36,41は、ガラス・エポキシや紙・フェノール等の絶縁物からなる基板36a,41a上にCu等の導電膜を成膜後、エッチング等で製作することで、線幅を非常に微細化して製作することができ、全体形状も図2(c)に示すように、一辺が23mm程度の方形状等に小型化することができる。そして、平面状インダクタ36,41の小形化により微小な磁場を効率よく発生させることができ、磁場を導電性膜28の内部に深く浸透させることなく、導電性膜28が除去される終点付近の変化挙動を精度よく検出することが可能となる。
【0083】
発振回路35からの出力信号は、オペアンプ等で構成された増幅器38に入力され、増幅器38の出力は抵抗等で構成されたフィードバック・ネットワーク39に入力されている。フィードバック・ネットワーク39の出力信号が、平面状インダクタ36にポジティブ・フィードバックされることにより、該平面状インダクタ36を含めた発振回路35が構成されている。
【0084】
発振回路35は、基本的には、図3の構成例に示すように、その発振周波数帯fが、次式(1)に示すように、平面インダクタ36のインダクタンスLと集中定数キャパシタ37のキャパシタンスC0で決まるコルピッツ型の発振回路となっている。
【0085】
【数1】
【0086】
前記増幅器38の出力端子には、周波数カウンタ40が接続されている。該周波数カウンタ40から後述する膜厚基準点を示す検出信号等がデジタルで外部に出力される。検出信号出力をデジタルで伝送することで、ノイズの影響及び出力の減衰が防止される。また、膜厚データの管理容易性が得られる。
【0087】
高周波インダクタ型センサ34による発振回路35と、その発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタ40とを近接して配置することで、該発振回路35と周波数カウンタ40間の配線・結線部分で分布定数回路を形成してインダクタンスやキャパシタンスが不要に大きくなるのが防止されて、高周波インダクタ型センサ34付近にもたらされる導電性膜28の研磨の進行に伴う磁束の変化を精度よく検出することが可能となる。
【0088】
研磨終了時点の予測・検出装置33は、平面状インダクタ36を除いた他の構成部品ないしは回路がIC(集積回路)化されてパッケージ33aに内装されている。前記平面状インダクタ36は、薄い絶縁膜で被覆されてパッケージ33aの表面に固定されている。パッケージ化された研磨終了時点の予測・検出装置33が前記化学機械研磨装置に組み込まれるとき、図1に示したように、平面状インダクタ36がウェーハWの表面部の導電性膜と対峙するように組み込まれる。
【0089】
また、発振回路35を構成している集中定数キャパシタ37はキャパシタンスが可変となっており、高周波インダクタ型センサ34は発振周波数帯の範囲内で、発振周波数を選択できるようになっている。
【0090】
本実施例では研磨中の導電性膜28が所定の表皮深さδに対応する膜厚になった場合の磁束変化を基に後述する膜厚基準点の検出を行っている。導電性膜28における所定の表皮深さδは、導電性膜28の材質と高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fとに依存して式(2)のように決まる。
【0091】
【数2】
【0092】
ω=2πf、μは透磁率、σは導電率である。
【0093】
そして、表皮深さ∂が、所定の導電性膜28の初期膜厚よりも小さく、研磨終期において埋め込み部を除いた部分を研磨した導電性腺28の膜厚より大になるように高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fが選択されている。研磨除去対象の導電性膜28の材質がCuの場合において、発振周波数帯は20MHz以上が選択される。
【0094】
ここで、前記した「表皮深さに対応する膜厚」及び「表皮効果によって生じる磁束変化」について、図4の(a)〜(d)を用いて説明する。図4はコイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向き((a)〜(d)各図中下方の矢印←)に配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図である。これは、コイルに流れる電流が最大になる場合を示している。同図(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、同図(c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同国(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μm の場合である。
【0095】
電磁シミュレーションの設定は、磁場を形成するインダクタは指向性を持たない平面状インダクタとした。前記「表皮深さに対応する膜厚」とは、「表皮効果によって磁束変化が生じる膜厚」のことである。センサの発振周波数が1MHzではコイルの下側に存在する導体膜上の磁束は縦方向を向いている。この周波数では、膜厚が1μm及び0.2μmであっても、導体膜内を磁束が貫通している(図4(a)、(b))。こうした導体膜内を磁束が貫通する場合は、従来例に示されているように、導体膜内部に発生する渦電流は、膜厚減少に伴って減少する。よって、1MHzの場合、1μm以下の膜厚では、単調な挙動であるため、表皮効果は現れず、「表皮深さに対応する膜厚」も少なくとも1μmよりも厚い膜厚と考えられる。
【0096】
これに対し、センサの発振周波数が40MHzでは、明らかに導体表面での磁束向きが水平であり、膜厚が1μmでは、殆ど導体内部に入り込んでいない(図4(d))。先の発振周波数が1MHzで膜厚が1μmの場合(図4(b))と比較すると、導体膜に入り込む磁束の向きが異なることが分かる。
【0097】
しかし、発振周波数が40MHzで導体膜が0.2μmまで薄くなると(図4(c))、一部の磁束のみが導体膜内部方向へ向いている。これは導体膜がCuでも、ある薄さになると一部の磁束が導体膜内を貫通することを示している。
【0098】
この40MHzの交番変化する磁束の場合、表皮効果に対応して、導体膜内の磁束の貫通状態が変化する。貫通磁束が徐々に増加する影響で、周波数は約700Å前後まで急激に上昇する。なお、膜厚が1μm以上では磁束は殆ど貫通していない。よって、この場合、「表皮深さに対応した膜厚」は、磁束が貫通するかしないかの境界の膜厚とすると、約1μm程度ということができる。このことからも、発振周波数を40MHzと高くし、平面状インダクタを使用すると、1μm 厚みのCu導体膜内に磁束は殆ど入り込まず、これは表皮効果によるものである。
【0099】
Cu導体膜で発振周波数が40MHzの場合、Cuの導電率を58×106S/mとすると、表皮深さδは9.34μmになる。計算上は、膜厚が1μmだと磁束は導体膜内に十分入り込む計算になるが、平面状インダクタを使用しており、磁束に指向性がないことから、実際は発振周波数が40MHzの場合、膜厚が1μmでも表皮効果によって磁場は導体膜内に侵入しない。導体膜が薄くなるにつれて一部の磁束が導体膜内に入り込み、わずかに渦電流が発生する。このことより、渦電流を積極的に利用して膜厚測定するのではなく、終点付近の薄い膜厚になったときに、表皮効果によりわずかに漏洩・貫通する磁束を利用して、導体膜内に誘起される相互インダクタンスの変曲点(極大点)を利用して該導体膜の終点付近の膜厚状態をモニタすることが可能となる。
【0100】
この相互インダクタンスは、一次側コイルのインピーダンス成分にも対応する。コイル回路系のインピーダンス変化を求めるにあたり、導体膜に誘起される渦電流の変化とコイル側インピーダンスの変化の関係を求める。図5に示すように等価回路を形成し、それぞれの構成要素を設定した場合、回路方程式は次式で表される。
【0101】
【数3】
【0102】
ここで、i1, i2は、それぞれ一次側と二次側に流れる電流であり、一次側には、νの電圧がコイルに印加されているとする。一定の各振動数をもつ交流ωの場合、それぞれ
【0103】
【数4】
【0104】
と表され、(3)式と(4)式は次のように表される。
【0105】
【数5】
【0106】
この式を解くと次式となる。
【0107】
【数6】
【0108】
コイル側からみたインピーダンスは以下のようになる。
【数7】
【0109】
以上より、コイル側の抵抗R1はほとんどゼロとみなされるため、インピーダンスの実部は、導体膜に誘起される渦電流によって生じる相互インダクタンスMの二乗に比例し、対応していることがわかる。よって、ここでは、相互インダクタンスの変化量、すなわち、導電性膜に誘起される渦電流の変化を、一次側回路系のインピーダンス実部の変化として示す。
【0110】
図6に、平面インダクタを使用した場合のインピーダンス実部の膜厚依存性について、2次元電磁シミュレーションによって得た結果を示す。40MHzの場合では、0.1μm以下に変曲点を有し、その後急激にインピーダンスは減少する。それに対して、1MHzの場合では、膜厚に依存して単調に減少していることがわかる。これより、本題にあるような変曲点は、まず、扱う周波数の大小によって現れることがわかる。また、このような変曲点の出現は、図4に示したような表皮効果の影響によることが磁束の向きによる変化から理解できる。
【0111】
しかし、周波数を40MHzとしてインダクタ形状を平面インダクタにしさえすれば、表皮効果の影響によって変曲点が現れるかというと必ずしもそうではない。その事例として、平面インダクタを導電性膜に十分に近づけた場合において、図4と同様に2次元有限要素シミュレーションによって確認した。
【0112】
ここでは、平面インダクタを先に示した距離よりも1/1000近づけて2.4μmとし、コイルの大きさも1/1000の半径11μmとして計算した。コイルの周波数を40 MHzとし、導体膜をCuとして膜厚を1μmとして計算したところ、1μmの膜厚であっても、図4の場合とは違って多くの磁束が貫通する。しかし、周波数を1GHzにまで引き上げると、ほとんどの磁束は貫通しなくなる(図示は省略)。
【0113】
図7に、コイル径を1/1000、コイルと導電性膜距離を1/1000とした場合において、コイル側インピーダンスの実部変化を示す。40 MHzの周波数であっても、変曲点を持たないことがわかる。1GHzまで周波数をあげると、1μm 付近に変曲点が生じる。これは先の導体内に入り込む磁場の向きから、表皮効果の影響で変曲点が生じたことがわかる。
【0114】
以上の実験結果から、表皮効果の影響を受けて変曲点を形成するには、ただ単に周波数を高くして、平面インダクタを使用すればよいというわけではない。コイルと導電性膜の距離やコイルの大きさなどを適正に保つことも重要となる。また、被研磨対象膜の導電率、および透磁率など、その材料の物性に起因することは、タングステンを同様に研磨した湯合の波形から明らかとなっている。
【0115】
よって、表皮効果によって、導電性膜内に磁束が侵入する/しないといった挙動を利用するためには、周波数、インダクタの形状や大きさ、インダクタと導電性膜の距離、導電性膜の導電率、透磁率を適正に選択することで達成することができる。こうした表皮効果の影響による変曲点の出現が研磨終点付近に現れるように設定し、その変曲点を検出するアルゴリズムを設定して、精度良く研磨終了点を予測する方法を新たに見出し、発明の骨子とするものである。
【0116】
次に、研磨終了時点予測方法の実際の運用について述べる。図8は、ウェーハに対するプラテンの上のインダクタの軌跡を示し、ウェーハのA点乃至E点における共振周波波形の関係の一例を図9に示す。ここでは、共振周波数のピークの出現がC点で最も早く、B点とD点がそれに続き、A点とE点が最も遅くなっており、ウェーハの中心部であるC点の研磨レートが最速で、外周部のA点とE点が遅いことを示している。図10に図9中の1の時点と2の時点のA点乃至E点における研磨量を示す。各点を結ぶ曲線形状からウェーハの研磨形状(残膜形状)がわかる。
【0117】
図11は、本発明の研磨終了時点の予測方法によりCu膜を研磨する際のリファレンス波形を示し、膜厚710Åに共振周波数のピークがある。同図中に示すように、リファレンス波形の各位置に対して対応する膜厚を求めておけば、実際に得た波形の変化率から各位置における残り膜厚を知ることができる。
【0118】
そして、所定の時間において各位置での膜厚のばらつきから残膜の不均一性をリアルタイムに求める。ただし、以下の式において、fi=位置iにおける膜厚である。
【0119】
【数8】
【0120】
とした場合、不均一性(Nonunif)は
【0121】
【数9】
【0122】
となる。また、別の方法として初期膜厚から残り膜厚を差し引いて除去膜厚を求め、除去膜厚のばらつきにより不均一性を求めてもよい。
【0123】
または、所定の変化率(所定の研磨量)に到達した時間から研磨量の不均一性を求めてもよい。
【0124】
【数10】
【0125】
そして、(数8)と(数9)とから研磨量の不均一性を求めることができる。
【0126】
尚、図1では、プラテン2の上面に一個のインダクタ型センサ34を配置した例を示したが、図12に示すように、プラテン2の上面に複数のインダクタ型センサ34を半径方向へ並べて配置し、プラテン2上にパッド(図示せず)を貼って、ウェーハの各位置における共振周波の波形を同時にモニタしてもよい。この場合は、複数のインダクタ型センサ34がそれぞれ検出する共振周波の波形の時間的ずれから研磨均一性をリアルタイムで検知或いは予測することができる。
【0127】
以上、本発明の研磨終点予測方法を説明したが、研磨終点予測に関わる共振周波の波形の特徴的な変化とは、変曲点に限らず、上昇開始点、上昇率、所定の上昇量、上昇から下降の変化率など、変化を検知するための共振周波波形に含まれる特徴的な項目のすべてを含む。
【0128】
最後に、本発明が先に示した従来公知例と構成的に大きく異なる部分を列挙すると、
1.フェライトコアなど磁場を整形するインダクタではなく、磁場に指向性をなくし、研磨初期には表皮効果によって導電性膜内に積極的に磁場を侵入させない2次元の平面インダクタを使用したこと。
2.周波数を表皮効果が働く程度に高く設定したこと。
3.一次側インダクタの形状や大きさ、およびインダクタと除去対象の導電性膜との距離について、導電性膜の導電率、透磁率を考慮して、表皮効果が働く程度に適正化して行うこと。
4.被研磨対象膜の材質に基づく磁束の侵入する臨界深さを考慮して、インダクタ、周波数、インダクタ対導電性フィルムの距離を設定したこと。
以上の相違点が挙げられる。
【0129】
従来は、表皮効果の影響が現れるような状態で装置の各要素を設定し、そのような表皮効果に基づく変曲点の出現を故意に形成して、それを基に膜厚モニタとして使用したものはない。また、そのピークの存在を巧みに利用して、そのピークの部分を膜厚基準位置として、膜厚モニタや研磨レートなどを算出する方法は従来示されてない。また、従来にない顕著な効果として、渦電流の消費部分として、導電性膜で消資されているのか、それとも導電性膜で消費されず、素子に磁場が漏れ、それが導電性膜で消費されない状態になっているのかなど、変曲点を得ることで磁場の導電性膜への侵入に関する状況を顕著に理解することが可能である。従来の方法では、磁場の素子に対する侵入に関する状況がわからず、素子への磁場のエネルギーによるダメージを考慮していないこと、などが大きな遣いとして考えられる。本発明はそうした明らかに異なる作用効果の違いに基づいて構成されたハードウェアおよびその検出アルゴリズムに基づくものである。
【0130】
尚、この発明は上記の実施形態に限定するものではなく、この発明の技術的範囲内において種々の改変が可能であり、この発明がそれらの改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の実施の一形態を示し、化学機械研磨装置の斜視図。
【図2】(a)は予測・検出装置のブロック図、(b)は平面状インダクタの斜視図、(c)は断面図。
【図3】(a)は発振回路の構成解説図、(b)は発振回路の等価回路図。
【図4】予測・検出装置の動作シミュレーション結果をディスプレイ上に表示した画像の模式図であり、(a)は導体膜厚0.2μm,発振周波数1MHzの場合、(b)は導体膜厚1μm,発振周波数1MHzの場合、(c)は導体膜厚0.2μm,発振周波数40MHzの場合、()は導体膜厚1μm,発振周波数40MHzの場合の図である。
【図5】予測・検出装置の等価回路図。
【図6】予測・検出装置の膜厚:インピーダンス特性のグラフ。
【図7】予測・検出装置の膜厚:インピーダンス特性のグラフ。
【図8】導体膜上の平面状インダクタの計測ポイントの解説図。
【図9】図8の各ポイントにおける共振周波波形の一例を示すグラフ。
【図10】図8の各ポイントにおける研磨量の一例を示すグラフ。
【図11】本発明の予測・検出方法によりCu膜を研磨する際のリファレンス波形のグラフ。
【図12】予測・検出装置の他の配置形態を示す平面解説図。
【符号の説明】
【0132】
1 化学機械研磨装置
2 プラテン
3 モータ
4 駆動機構
5 パッド
6 研磨ヘッド
W ウェーハ
28 導電性膜
33 予測・検出装置
34 インダクタ型センサ
35 発振回路
36 平面状インダクタ
37 集中定数キャパシタ
38 増幅器
39 フィードバック・ネットワーク
40 周波数カウンタ
41 平面状インダクタ
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウェーハに形成された導電性膜の研磨時における研磨終了時点の予測方法に関するものであり、特に、インダクタを用いて、導電性膜の発振周波数の特徴的な変化から研磨状態の検出及び研磨終了時点を予測するようにした研磨終了時点の予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの表面に例えば酸化膜を形成し、酸化膜にリソグラフィ及びエッチングを施して配線パターンに対応した構パターンを形成した後に、この上に構パターンを充填するためのCu等からなる導電性膜を成膜し、この導電性膜のうち溝パターンやスルーホール部分等の埋込み部以外の不要部分を化学機械研磨により除去して配線パターンを形成するプロセスが知られている。この配線パターンの形成では、不要部分の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終点を確実に検出してプロセスを停止することが重要である。導電性膜の研磨が過剰であると配線の電気抵抗が増加し、研磨が不十分で導電性膜の不要部分が完全に除去されていないと配線の絶縁障害につながる。
【0003】
研磨状態のモニタ方法に関連する従来技術として、例えば特許文献1によってフィルム厚の変化をその場で監視する方法が公開されている。この従来技術は、化学機械研磨によって下地本体(半導体ウェハ)上から導電性フィルムを除去する方法において、導電性フィルムの厚さ変化をその場で監視するための方法であって、電磁界に指向性をもたらすように整形するためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路を含むセンサを導電性フィルムに近接して配置し、励振信号源からの掃引出力を動作点設定用インピーダンス手段を介してセンサへ印加する。これにより、センサが励起されると、発振電流がコイルに流れ、交番電磁界を発生する。この交番電磁界は、次いで導電性フィルム中に渦電流を誘導する。渦電流が導電性フィルムに誘導されると、二つの効果が生じることになる。第一に、導電性フィルムが損失抵抗として作用し、その効果はセンサ回路に対する抵抗負荷であり、これは共振信号の振幅を下げ、共振周波数を下げる。第二に、導電性フィルムの厚さが減少すると、インダクタのコイルの中心に配置した金属ロッドが引き抜かれるのと同様な効果が生じ、これによってインダクタンスの変化並びに周波数シフトを引き起こす。このようにして導電性フィルムの厚さ変化に起因するセンサの共振ピークに関連した周波数シフトを監視することにより、該導電性フィルムの厚さ変化を連続的に検出するようにしている。
【0004】
また、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている(特許文献2)。この特許文献2は、背景技術として、一般に渦電流センサは半導体基板の表面に設けられた導電性膜に渦電流を形成し、この渦電流により間接的に膜厚の計測を行う従来技術では、正確な膜厚検出が困難であるということを問題としており(段落0004)、半導体基板に形成される極薄い膜厚から比較的厚い導電性膜まで正確に膜厚等の検出を行うことができる渦電流センサを提供することを目的としている(段落0005)。
【0005】
そこで、この文献では、導電性膜又は導電性膜が形成される基体の近傍に配置されるセンサコイル(渦電流センサ)と、このセンサコイルに一定周波数の交流信号を供給して前記導電性膜に渦電流を形成する交流信号源と、前記導電性膜を含めたリアクタンス成分及び抵抗成分を計測する検出回路とを備え、前記センサコイルは、信号源に接続する発振コイルと、発振コイルの導電性膜側に配置する検出コイルと、振コイルの導電性膜側の反対側に配置するバランスコイルとを具備し、検出コイルとバランスコイルとは互いに逆相となるように接続されている。そして、前記検出回路で検出した抵抗成分及びリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、インピーダンスの変化から導電性膜の膜厚の変化を広いレンジでほぼ直線的な関係として検出するようにしている。
【0006】
特許文献2の場合、例えば、比較的厚い膜で渦電流を生じさせて膜厚を測定する一方、その厚い膜を研磨して減少させて渦電流量を減少させていくと、その渦電流が減少した分において、単純に磁場のエネルギーは表面の導電性膜で消費されず、そのまま導電性膜の下に存在する素子内部に入り込むことになる。すなわち、本来導電性膜で消費される磁場のエネルギーに対して、導電性膜が除去されるにつれて、素子内部が過剰な磁場のエネルギーにさらされることを許容するものである。
【0007】
さらに、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている(特許文献3)。まず、背景として段落0012には、従来の渦電流センサによる研磨終点の検出方法は、渦電流センサに使用する発振周波数が7MHz程度であり、比較的小さいため、研磨対象の導電性膜が十分厚い場合には大きな渦電流損を検出することができるが、導電性膜の研磨が進行し膜厚が極めて薄くなると、渦電流損の大きさが小さくなり、この場合には例えば1000Å以下程度の膜厚検出が困難になる。即ち、従来の渦電流センサは発振周波数が比較裾氏いため、オングストロームオーダの膜厚検出精度が要求されるポリッシング装置の研磨終点の検出には、その精度が十分ではなかったということを問題としている。
【0008】
ここでは、厚い膜厚であっても、薄い膜厚であっても同様に膜内に磁場を侵入させ、その磁場による渦電流の大きさによって単純に膜厚をモニタする方法を開示している。特許文献3の技術も先に示した従来技術と同様に、センサコイルが形成する磁束がそのセンサコイル全面に配置された基板上の導電性膜を貫通し、交番的に変化することで導電性膜中に渦電流を生じさせ、その渦電流が導電性膜中を流れることで渦電流損失が生じ、等価回路的にみるとセンサコイルのインピーダンスのリアクタンス成分を低下させることになるとしている(段落0008)。
【0009】
また、発振回路の発振周波数の変化を観察することで、研磨の進行に伴い、導電性膜が徐々に薄くなると、これにより発振周波数が低下し、導電性膜が研磨により完全になくなるとタンク回路の自己発振周波数となり、それ以降は発振周波数が略一定となる。それ故、この点を検出することにより、導電性膜の化学機械的研磨による終点を検出することができるとある(段落0009)。
【0010】
また、当文献中の図2に示すように、導電性膜の研磨が進行するとこれに伴い渦電流損が変化し、センサコイルの等価的な抵抗値が変化する。したがって、発振回路の発振周波数が変化するので、この発振信号を分周回路により分周し、又は減算器により減算することにより、検出幅の周波数の大きさに対応した信号をモニタに表示する。これにより、上述した図2に示すような周波数軌跡の推移が得られる(段落0025)。
【0011】
さらに、次のような渦電流センサも知られている(特許文献4)。この文献の請求項1は、導電性膜が形成される基板の近傍に配置されるセンサコイルと、該センサコイルに交流信号を供給して導電性膜に渦電流を形成する信号源と、導電性膜に形成された渦電流をセンサコイルから見たインピーダンスとして検出する検出回路を備えた渦電流センサであって、前記センサコイルは、高透磁率材料によって、形成した収容部材内に収容されていることを特徴とする渦電流センサとしている。
【0012】
また、この文献の請求項7においては、導電性膜または導電性膜が形成される基板の近傍に配置されるセンサコイルと、該センサコイルに交流信号を供給して前記導電性膜に渦電流を形成する信号源と、前記導電性膜に形成された渦電流を前記センサコイルから見たインピーダンスとして検出する検出回路とを備えた渦電流センサであって、前記インピーダンスの抵抗成分とリアクタンス成分とを直交座標軸上に表示し、前記インピーダンスの座標と指定された中心点の座標とを結ぶ直線の成す角度から前記導電性膜の膜厚を検出するようにしたことを特徴とする渦電流センサを開示している。
【特許文献1】特許第2878178号公報(第2頁〜第7頁、図1〜図15)。
【特許文献2】特許第3587822号公報(第3頁、図1〜図11)。
【特許文献3】特許第3902064号公報
【特許文献4】特開2005−121616号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1のフィルム厚の監視方法では、センサに電磁界に指向性をもたらすためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路を用いている。そして、研磨初期において20Hz〜40.1MHzの周波数からなる掃引出力をセンサへ印加し、前記コイルから発生した指向性を持つ交番電磁界により、導電性フィルムを貫通する漏洩磁束を生じさせて該導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を研磨初期から誘導させている。
【0014】
導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を誘導するためには大きな交番電磁界、即ち導電性フィルムを貫通する程度の大きな磁束を形成することが必要であり、導電性フィルムの厚さ変化の監視は研磨初期から研磨終期まで導電性フィルム内に誘起された渦電流を利用して行われている。このため、膜厚変化の監視の間、導電性フィルムの厚さ方向に向かって磁束を貫通させることが必要である。特許文献1の図面中には、全ての導電性フィルムの部分に導電性フィルムを貫通する磁束線が記載されていることからもこのことは明らかである。
【0015】
研磨初期におけるウェーハの表面には、無垢なCu膜(導電性フィルム)が最上層にあるのが一般的である。これら無垢なCu膜の全てに渦電流を誘起させるためには非常に大きな漏洩磁束が必要である。しかし、その漏洩磁束は、渦電流を誘起するが、それらはいずれ渦電流損という形でジュール熱になって消費される。最表層の無垢なCu膜に対しては、体積抵抗が小さいため、発熱は比較的小さいが、内部のすでに配線されている部分では、配線断面積が小さく、体積抵抗が大きいため、貫通する磁束により大きな渦電流が誘起され、その結果局部的に大きなジュール熱損を生むことになる。これは、時として一部配線が溶融して断線してしまう問題に発展する。いわゆる誘導加熱の状態になり、特に内部に熱がこもってしまう現象になる。特に、Cu配線などでは、Cuが加熱されるとTaなどのバリア膜にCuが拡散する場合や、場合によってはバリア膜を突き破ってCuが拡散してしまう懸念がある。
【0016】
また、ウェーハの表面部に幾層にも配線が施されている場合では、表層のCu膜だけではなく、すでに処理が完了している内部の配線部分が局部的に暖められて周囲に拡散したり、半導体基板内のp型とn型を形成しているドーパントがさらに拡散したりして、基板内素子の特性を変えてしまうこともある。また、熱が発生しない場合でも、過剰な渦電流が微細配線に流れる場合は、エレクトロマイグレーションを引き起こして断線することがある。
【0017】
素子へ侵入する磁場が素子に与えるダメージは次のように解釈することができる。すなわち、特許文献1の方法では、表面の導電性膜(Cu膜)の部分で、侵入してきた磁場によって渦電流が形成され、その渦電流によって反発磁場が発生する。研磨初期においては、表面を覆っている導電性膜によって内部の素子へ磁場が侵入することを防ぐため素子へのダメージは小さい。エネルギー的には、表面を覆っている導電性膜で生じる渦電流によって、ジュール熱損として導電性膜内で消費される。そのため、研磨初期においては、内部の素子は表面の導電性膜によって、幾分か磁場の影響から保護されている。
【0018】
しかし、研磨が進行して表面の導電性膜を覆っている膜が除去されると、そのまま磁場は軽減されることなく、素子内に侵入する。研磨初期においては、磁場のエネルギーが表面の導電性膜内部でジュール熱損として消費されたが、表面の導電性膜が研磨により除去されると、そのジュール熱損で消費されたエネルギーが、そのまま素子側に負担されることになる。素子内に渦電流を生じるほどの導電性膜がなければ、磁場はそのまま素子内を突き抜けて外部の空間で消費されることになるが、ある大きさの導電性膜が存在した場合、集中的に渦電流が発生して断線を起こすことになる。こうしたことは、素子の構造にも起因するところはあるが、一般的に表面の厚い導電性膜全体で渦電流を発生させるほどの指向性の高い磁場を素子内に侵入させると、所々で渦電流を発生させてしまい、悪影響を及ぼすことは明らかである。
【0019】
さらに、特許文献1の方法では、導電性膜に磁場を導入し、その磁場によって発生した渦電流量の変化をモニタして膜厚を見積もるが、この場合膜厚を見積もるためには、継続的に渦電流を発生させなければならない。なぜなら、渦電流が発生しないと回路系は動作せず、変化した膜厚も見積もれないからである。また、研磨の終了の予測も、除去した膜厚が見積もれないことには、終了点やその終了点付近の予測も不可能となる。よって、膜厚をモニタし、終点予測及び終点検出するには、継続的な渦電流の形成は必須となる。
【0020】
さらに、例えば、研磨終了時点付近のある所定の残膜量になった時点で、研磨条件を変えて処理を行う場合に、所定の残膜量であるか否かを見極めることは困難である。初期膜厚からの変化分で推測することは可能であるが、初期膜厚がばらつく場合は所定の残膜量の見積もりがばらつくことになるからである。この研磨終了時点付近の判断に関し、センサと導電性フィルム間のギャップが研磨の振動によって微小に変化すると、センサ回路系全体の浮遊容量が変化して共振周波数全体がシフトする。このため、仮にある設定の共振周波数になったときに閥値を設定して、研磨終点を判別する設定をしていても、全体的に共振周波数がシフトすれば、その閾値の設定による研磨終了時点の判断は難しくなる。
【0021】
このように、従来方法において、単調かつ連続的に増加もしくは減少変化する共振周波数において、ある値に閾値を設定していたとしても、センサと導電性フィルム問のギャップが微小に変化したり、その間に何等かの誘電体が介在したりすることで、その波形自体が全体的に上下に平行移動することがあり、その結果、予め設定した閾値が意味をなさないことがある。
【0022】
また、さらに、特許文献2や特許文献3などの方法においては、共振周波数や抵抗成分出力は直線的に減少して変化し、終了付近になる場合にその減少する変化が緩やかになる。しかし、その変化の度合いが非常に緩やかであるため、残りの膜厚がどれだけであるかという推測を立てることが非常に困難になる。
【0023】
また、磁束が素子内を貫通するため、素子の構造によっては、導電性膜のみならず、その他の素子内に形成される渦電流などもあるため、完全に渦電流が流れなくなってゼロになることはない。導電性膜を除去しきったとしても素子内に形成された配線などに流れる渦電流から依然として幾分かの渦電流は流れており、そのため、あたかも残り膜厚があるかのような振る舞いを受けるケースもある。
【0024】
渦電流センサを用いた特許文献2に記載の技術においても、導電性膜の膜厚変化の監視を、研磨初期から研磨終期まで渦電流の変化でみていることは、特許文献1に記載の技術とほぼ同様である。
【0025】
また、研磨初期から研磨終期まで渦電流を利用して導電性膜の膜厚を監視する上記の従来技術では、膜内で渦電流を引き起こすのに膜内に浸透する程度の十分強い磁束を作る必要があり、インダクタの形状は磁束に指向性を持たせるために三次元となっている。このため、センサを研磨装置等に組み込む上で、コイルに流す電流が大きくなって消費電力が多くなって電源装置が大型になり、導線をコイル状に巻く工程等が必要になってコスト高になる。また、磁束が周辺に漏れてノイズが発生し易くなるという問題が生じる。
【0026】
特許文献3に記載の渦電流センサは、研磨の初期から磁束が導電性膜を貫通し、終始渦電流を積極的に発生させ、その渦電流変化から膜厚変化を読取るもので、導電性膜を貴通しない程度の磁場しか発生しないハードウェアでは、渦電流が形成できず目的を達成できない。また、導電性膜が研磨により減少することで、渦電流が形成される領域が単調に減少し、そのため、発振周波数が単調に減少する挙動が記載されており、その発振周波数が略一定になったときを終点とみなしてこの部分を検出するとしている。即ち、この従来技術で使用するソフトウェアのアルゴリズムでは、発振周波数の変化とは、減少から略一定になる変化を発振周波数の変化としているのであって、例えば、この発振周波数が変曲点を有するような変化をした場合においては終点検出が困難である。
【0027】
そこで、本発明は、導電性膜内に形成されている微細な配線に強い磁束を及ぼすことなく、その結果電磁誘導によって誘起される渦電流の発生を抑制して、渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることを目的とする。
【0028】
また、センサと導電性膜のギャップの変化やスラリー等の誘電物質の介在状態によって、誘起される渦電流量が全体的にシフトして、閥値の設定が大幅に変化して検出しにくくなるといった事態をなくして、デバイスウェハを貫通しない程度の微細な磁場であっても、十分に精度よく検出することを可能とし、研磨終了時点を精度よく予測・検出し、また除去すべき残膜量及び研磨レート等をリアルタイムに算出して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
この発明は、上記目的を達成するために提案するものであり、請求項1記載の発明は、
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、ウェーハ面の研磨加工を行いながらリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0030】
従来方法では、完全に導電性膜を取りきったとしても、素子内に磁束の大半が貫通していることから、素子内に存在する微細な導電性膜に、幾分かの渦電流は依然として流れていることになる。そのため、完全に導電性膜を除去した膜厚ゼロの状態を見積もることが難しく、また、ウェーハによって配線密度が異なるため、導電性膜以外の残留渦電流の影響がまちまちになる。よって、導電性膜がゼロの状態の定義が難しい問題があった。
【0031】
本発明では、表皮効果による影響で急峻な変曲点を持ち、この表皮効果による変曲点位置は素子内の状態によることなく、表面の導電性膜における真の膜厚によって、ほとんど一意に決定されるとして間違いない。例えば、Cu膜の下にTa膜が存在するケースが多いが、表皮効果によって流れる電流は極表面で、また、Cu膜からTa膜のように導電率が大きく変化する材料においては、表皮効果は、Cu部分の変化が支配的になり、Ta膜があっても、ほとんど磁場が消費されず、反射されることになる。
【0032】
本発明の方法によれば、表皮効果に基づく急峻な変曲点が現れる特徴的な磁束変化を基に、それぞれのウェーハの面内位置において、膜厚変化を詳細に捉えて、それぞれの膜厚のばらつき、研磨レート、研磨形状、均一性をリアルタイムに見積もることが可能となる。
【0033】
また、その特徴的な磁束変化は、初期膜厚からの変化量を基準にした変化ではない。完全に除去した状態を基準として残り膜厚の研磨が終了する前に急峻な変曲点として知らせる。それにより、初期膜厚がばらついて不均一でない場合であっても、安定して残り膜厚をモニタすることが可能となる。
【0034】
さらに、初期膜厚をあらかじめ測定するか、または別に測定した初期膜厚値から、リアルタイムにモニタした正碓な残膜量を検出した結果を基に、研磨量を算出することも可能となる。また、研磨した時間から研磨レートを算出することも可能となる。
【0035】
請求項2記載の発明は、リアルタイムに見積もる上記研磨所量は、残り膜厚、平均膜厚、研磨形状、研磨量、平均研磨量、研磨除去量のばらつき、残り膜厚のばらつき、残り膜の形状のいずれかであることを特徴とする研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0036】
本発明では、膜厚減少に伴って表皮効果に基づいた変曲点を含む特徴的な磁束変化が現れ、このような変化そのものが従来技術には見られないものであり、特徴的な磁束変化から残り膜厚、平均膜厚、研磨形状、研磨量、平均研磨量、研磨除去量のばらつき、残り膜厚のばらつき、残り膜の形状などを求めることが可能である。
【0037】
請求項3記載の発明は、ウェーハ面に対して研磨加工を行いながら、ウェーハ面内の複数箇所に対して研磨所量を見積もることを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0038】
この発明においては、この場合は、ウェーハ面内の複数箇所においてそれぞれ検出される共振周波の波形の時間的ずれから研磨均一性をリアルタイムで検知或いは予測することができる。
【0039】
請求項4記載の発明は、導電性膜に近接するインダクタが、二次元平面インダクタであることを特徴とする研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0040】
この方法によれば、二次元平面インダクタの磁場の指向性が鋭くなく、適度に分散した磁場が導電性膜に与えられるため、磁場が導電性膜内に侵入しにくく、表皮効果の影響を顕著にすることができる。それによって、特徴的な波形を基に、それぞれの位置における膜厚ばらつきなどを精度良く見積もることが可能となる。この場合も先と同様に、初期膜厚を基にした変化ではなく、膜厚が全くない状態を基にした残膜量であるため、初期膜厚に依存することなく、安定して終了時点までの残り膜厚を求めることが可能となる。
【0041】
請求項5記載の発明は、スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、研磨による膜厚減少に伴って導電性膜に誘起される渦電流が増大し、且つその後の膜厚減少に伴って渦電流が実質的に減少する過程において、導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の状態を膜厚量に換算し、その相対的なばらつきを基にリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0042】
この方法では、膜厚減少に伴って形成される渦電流によって誘起される磁束が表皮効果によって特徴的な変化を起こすことから、その特徴的な変化の部分を経る時間をモニタすることにより、その経過時間のばらつきを基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求めることができる。
【0043】
請求項6記載の発明は、スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、研磨による膜厚減少に伴って導電性膜に誘起される渦電流が増大し、且つその後の膜厚減少に伴って渦電流が実質的に減少する過程において、その導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の部分を経る時の経過時間をウェーハ面内の複数の位置において求め、その複数の位置における経過時間のばらつきを基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求める研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0044】
本発明によれば、請求項5記載の発明の作用に加えて、ウェーハ面内の複数の位置において、その特徴的な変化の部分を経る時間をモニタすることにより、その経過時間のばらつきを基に、全面的な研磨所量をリアルタイムに求めることができる。
【0045】
請求項7記載の発明は、スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、インダクタを、対向するウェーハに対して異なる軌跡位置に複数配置してウェーハに近接させ、該インダクタで形成される磁束により、所定のウェーハ面内の複数の位置で導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、上記導電性膜の表皮効果に基づいて、その導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の部分を経る時の経過時間を、ウェーハ面内の複数の位置において求め、研磨除去量のばらつきに換算するか、もしくは、複数の位置におけるそれぞれの膜厚量を波形の変化率から換算し、そのばらつきまたは膜厚量を基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求める研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0046】
この方法では、導電性膜に誘起される特徴的な磁束変化の部分を経る時の経過時間から、研磨除去量のばらつき又は複数の位置におけるそれぞれの膜厚量を求めることにより、精度良く研磨所量をモニタすることが可能となる。
【0047】
請求項8記載の発明は、上記導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化の測定手段は、導電性膜中の渦電流の測定、または、導電性膜が渦電流を生じることにより発生する相互インダクタンスの測定、または、導電性膜の相互インダクタンスによる上記インダクタのセンサ回路系におけるインダクタンス変化の測定、または、センサ回路系のインピーダンス変化の測定、または該センサ回路系のインダクタンス変化を高周波インダクタと容量とを並列接続して発振させその共振周波数の変化の測定の少なくとも一つであることを特徴とする研磨終了時点の研磨終了時点の予測方法を提供するものである。
【0048】
本発明の予測方法では、膜厚減少に伴って表皮効果に基づいた変曲点を含む特徴的な磁束変化が現れ、このような変化そのものが従来技術には見られないものであるので、磁束変化に基づく種々の数値(渦電流、相互インダクタンス、インピーダンス変化など)により研磨所量を予測することが可能である。
【0049】
以上述べた請求項1乃至請求項8記載の本発明と従来技術との相違点を以下に述べる。先ず、本発明では、渦電流を膜内に積極的に誘発し、膜厚の計測を行うものではない。磁場に対する導体膜の表皮効果を利用して、磁場を導電性膜へ侵入することを極力阻止し、膜厚除去付近で一部の磁場が導体膜から漏れ出すことによって生じる渦電流を検知し、その変化形態から終了点を予測するものである。
【0050】
また、表面の導電性膜に生じる渦電流によって、その導電性膜の下に存在する素子の部分での消費する磁場エネルギーを極力軽減する。導電性膜が除去される直前において、膜摩滅少に伴って、トータルの渦電流が減少していく過程では、磁場のエネルギーが内部の素子に影響を与えるため、素子の内部への磁場の侵入を極力防ぎ、磁場のエネルギーを軽減するようにしている。
【0051】
特許文献2において、導電性膜の膜厚を検出するセンサコイルは、信号源に接続する発振コイルと、発振コイルの導電性膜側に配置する検出コイルと、発振コイルの導電性膜側の反対側に配置するバランスコイルとを備え、検出コイルとバランスコイルとが互いに逆相になるように接続した直列回路に可変抵抗を接続し、検出対象である導電性膜が存在しないときに、前記直列回路の出力がゼロとなるように調整可し、検出回路で検出した抵抗成分及びリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、合成インピーダンスの変化から導電性膜の膜厚変化を広いレンジで略直線的な関係として検出している。
【0052】
しかし、本発明においては、インダクタとして、発振コイル、検出コイル、バランスコイルと3つのコイルを必要としない。また、そのコイルを立体的に3次元的に多段につみ、その磁束変化をモニタするものではない。インダクタとなるコイルは一つだけであり、平面的に2次元で構成するものである。
【0053】
また、特許文献2では、検出コイルとバランスコイルと互いに逆相になるように接続した直列回路に可変抵抗を接続するとしているが、本発明においては、可変抵抗などの抵抗ははさむものではない。本発明の発振回路は、インダクタに対して容量を並列に結合するものである。
【0054】
また、上記公報によると、膜厚変化を抵抗成分とリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、この合成インピーダンスは膜厚変化に対して広いレンジで略直線的な関係を形成して、その直線的に変化する関係から膜厚を求めるとしている。しかし、木発明においては、幅広いレンジにおいて膜厚を測定することを目的としていない。研磨終了時点の直前における特徴的な波形の変化を基に、研磨の終了点を正確に予測するものである。
【0055】
また、その研磨終了時点の直前における特徴的な波形の変化とは、略直線的な変化ではない。表皮効果の影響によって、急峻な変曲点を有し、その変曲点および、その前後の急峻な変化率などの特徴的な点に基づいて、研磨終了時点を正確に予測するものである。
【0056】
また、上記公報によると、段落0027では、図7(b)に導電性膜の膜厚の変化に対する抵抗分の変化を示している。膜厚の変化に対する抵抗分の変化の関係は、膜厚が厚い方から薄い方に変化するに従って、抵抗分Rが図のように変化する。即ち、極薄膜厚の領域(a)では抵抗分Rの出力が直線的に大きく変化し、ある厚さの領域(b)になると抵抗分Rの変化は飽和し、さらに膜厚が厚くなる領域(c)においては抵抗分Rの出力が低下する。ここで、銅膜の場合は、(a)点が約1000Å程度を示し、(b)点が2000Å〜3000Åを示し、(c)点が5000Å以上を示すとある。
【0057】
しかし、導電性膜厚の抵抗分が膜厚によって大きくなり、その後小さくなるといった挙動は、円の軌跡を示すものであって、抵抗成分とリアクタンス成分とのバランスにおいてその位相の兼ね合いからくるもので、本発明のように表皮効果に基づくものではなく、挙動は全く別である。
【0058】
本発明においては、表皮効果によって、磁束が導電性膜内に侵入しない過程から、膜厚減少に伴って一部の磁束が漏洩し、その後、磁束がある程度貫通すると、膜の体積に応じて、渦電流が減少するという一連の表皮効果に基づく減少によって、急峻な変曲点が生まれている。その変曲点は、単純に周波数だけに影響するのではない。後に示すインダクタ距離とインダクタ径を変えてシミュレーションした事例に示すように、たとえ同じ周波数であっても、インダクタの径やインダクタと導電性膜の距離により、磁場の指向性がかわり、磁場の導電性膜内への侵入挙動が大きく変化する場合がある。あるインダクタ径とインダクタ距離では、研磨時の膜厚が減少する過程で表皮効果に基づく変曲点を有していたが、例えば1/1000のインダクタ大きさとインダクタ距離では、研磨時の膜厚が減少する過程では、表皮効果に基づく変曲点を持たない場合が存在する。これは、明らかに、そのときの周波数だけではなく、インダクタの形状や距離などの設定においても、磁場の指向性が変化し、表皮効果によって磁場の導電性膜に対する侵入特性が変化して、変曲点の状態が変化することを示している。
【0059】
本発明では、そうした導電性膜内へ磁場が侵入しない状態から、侵入していく状態における現象的な変化過程を、研磨により膜厚が減少する過程に形成し、その状態変化を利用して精度良く導電性膜が除去される点を予測するものである。
【0060】
このように、本発明における表皮効果に基づく抵抗成分の変化と、従来技術の抵抗成分とリアクタンス成分との位相関係から求める抵抗成分の変化は全く異なるものである。
【0061】
また、特許文献3(特許第3902064号公報)によると、まず、背景として段落0012には、従来の渦電流センサによる研磨終点の検出方法においては、渦電流センサに使用する発振周波数が7MHz程度であり、比較的小さいため、研磨対象の導電性膜が十分厚い場合には、大きな渦電流損を検出することができるが、導電性膜の研磨が進行し膜厚が極めて薄くなると、渦電流損の大きさが小さくなり、この場合には例えば1000Å以下程度の膜厚検出が困難になる。即ち、従来の渦電流センサは発振周波数が比較的低いため、オングストロームオーダの膜厚検出精度が要求されるポリッシング装置の研磨終点の検出には、その精度が十分ではなかったということを問題としている。
【0062】
そして、厚い膜厚であっても、薄い膜厚であっても同様に膜内に磁場を侵入させ、その磁場による渦電流の大きさによって単純に膜厚をモニタする方法を開示している。
【0063】
しかし、本発明では、導電性膜が比較的厚い場合を問題としない。むしろ、導電性膜が厚い場合に、表皮効果によって磁場が導電性膜内に侵入せず、したがって大きい渦電流を検出しないことが求められる。また、膜厚が1000Å程度にまで減少してくる場合、指向性のない磁場であっても、一部導電性膜を貫通して膜厚の減少とともに渦電流を形成して反発磁場を生じるため、それを精度よく検出するものである。導電性膜が除去される直前付近の表皮効果に基づく特徴的な挙動をクローズアップして検出して研磨終了時点を精度良く予測するもので、厚い膜厚であっても膜厚を測定することを目的とするものではない。
【0064】
また、特許文献3の段落0028によると、渦電流センサの発振周波数信号を周波数の時間勾配として捉えて発振周波数の時間微分信号を演算し、この特徴点により、研磨終点の判定を行っている。図5(a)は発振周波数事自体の時間t′の推移軌跡を示し、図5(b)はこの微分値の推移軌跡を示す。
【0065】
このように発振周波数の挙動は、単調に発振周波数が減少する挙動が示されており、この発振周波数の単調な減少点の最下点で研磨の終点の判定を行うものである。また、その波形を微分して単調な減少における変化点を見出すことで終点を判定するとしている。
【0066】
しかし、本発明では、こうした発振周波数の挙動が異なる。すなわち、本発明では研磨による膜厚の減少過程において、導電性膜の表皮効果によって発振周波数が膜厚減少とともに一旦上昇し、その後下降することで、一つのピークを終点間際にもつ。この挙動は、表皮効果によって磁場が導電性膜内に侵入しない過程から侵入する過程によって、生じるものであり、先の公知例で示している挙動は明らかに異なる。
【0067】
そして、本発明は、上昇して下降する変曲点ならびにその変曲点付近の特徴的な部分を検出して、研磨の終了時点を精度良く予測するものである。
【0068】
また、特許文献3では、渦巻状のセンサコイルが基板と直交するように配置されているが、それに対して、本発明におけるコイルでは、基板に平行する形で一つの平面インダクタを配置しており、装置の構成の点でも明らかに異なっている。
【0069】
さらに、特許文献3では、段落0032に示すように、抵抗成分は膜厚減少に従って一度増大し、その後減少する挙動を示すとしている。しかし、これは表皮効果によって現れている挙動ではない。図に示す回路において、その位相差において抵抗成分とリアクタンス成分とのバランスから生じる変曲点である。即ち、本発明における変曲点は、こうした変曲点とは全く異なる。先に述べたように、変曲点はコイルの大きさや形状や導電性膜からコイルまでの距離によって大きく変化し、その設定によっては、高周波帯であっても表皮効果による特徴的な挙動が見られない場合も存在する。
【0070】
本発明では、その導電性膜の導電率、透磁率および周波数やインダクタ形状さらにはインダクタと導電性フィルムの距離などを適正に設定し、研磨による膜厚減少過程において発振周波数が表皮効果によって変曲点をもつ状態として、その波形の特徴的な部分を基に、研磨終了時点を精度良く予測するものである。
【発明の効果】
【0071】
請求項1記載の発明は、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、導電性膜の表皮効果により変化する磁束をモニタし、研磨時にリアルタイムに研磨所量を見積もるもので、研磨終了時点を精度よく予測することができるとともに、導電性膜内に形成されている微細な配線に強い磁束が及ばないので、渦電流のジュール熱損による配線への悪影響の虞がない。
【0072】
請求項2記載の発明によれば、本発明に特有の特徴的な磁束変化から、残り膜厚、平均膜厚、研磨形状、研磨量、平均研磨量、研磨除去量のばらつき、残り膜厚のばらつき、残り膜の形状など任意のデータを取得して、研磨精度を向上させることができる。
【0073】
請求項3記載の発明は、ウェーハ面内の複数箇所において同時に共振周波の波形を検出することにより、共振周波の波形の時間的ずれから研磨均一性をリアルタイムで検知或いは予測することができる。
【0074】
請求項4記載の発明は、二次元平面インダクタを用いることにより、磁場が導電性膜内に侵入しにくく、表皮効果の影響が顕著になり、膜厚ばらつきや残り膜厚などを精度良く見積もることができる。
【0075】
請求項5記載の発明は、膜厚減少に伴って生じる渦電流によって誘起されるが表皮効果によって特徴的な変化を起こすことから、その特徴的な変化の部分を経る時間をモニタすることにより、リアルタイムに精度よく研磨所量を求めることができる。
【0076】
請求項6記載の発明は、ウェーハ面内の複数の位置において、磁束の特徴的な変化の部分を経る時間をモニタし、その経過時間のばらつきから研磨所量を求めることにより、より高速に研磨所量を求めることができる。
【0077】
請求項7記載の発明は、導電性膜に誘起される特徴的な磁束変化の部分を経る時の経過時間から、研磨除去量のばらつき又は複数の位置におけるそれぞれの膜厚量を求めることにより、精度良く研磨所量をモニタすることができる。
【0078】
上記した本発明においては、特有の表皮効果に基づいた変曲点を含む特徴的な磁束変化が現れるので、請求項8記載の発明のように、渦電流、相互インダクタンス、インピーダンス変化、共振周波数変化などのうちの一種類或いは複数種類のデータから研磨所量を高精度に予測することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
本発明は、スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、ウェーハ面の研磨加工を行いながらリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法により、導電性膜内に形成されている微細な配線に強い磁束を及ぼすことなく、その結果電磁誘導によって誘起される渦電流の発生を抑制して、渦電流によるジュール熱損を極小に抑え、初期膜厚の偏差やギャップの変化等による電気的条件の変動に関わらず研磨終了時点を精度よく予測・検出するという目的を達成した。
【実施例1】
【0080】
図1は化学機械研磨装置1を示し、円盤形のプラテン2はモータ3を用いた駆動機構4の上に取付けられていて、プラテン2の上面にパッド5が貼り付けられている。プラテン2の上方且つプラテン2の回転中心から変位した位置に配置された研磨ヘッド6は、プラテン2よりも小径の円盤形であり、その下面に研磨対象であるウェーハWが取付けられている。研磨工程においては、パッド5の上面に薬液供給装置(図示せず)から研磨薬液または研磨スラリーが滴下され、研磨ヘッド6はウェーハWがパッド5の上面へ接触する高さまで下降されるとともに、プラテン2と研磨ヘッド6がそれぞれ回転駆動されてウェーハWの被研磨面(下面)が研磨される。パッド5の下のプラテン2の表面には平面状のインダクタ型センサ34が埋め込まれており、プラテン2が1回転するごとに、インダクタ型センサ34は研磨ヘッド6に装着されたウェーハWの下面を通過する。
【0081】
図2は研磨終了時点の予測・検出装置33の構成例を示す図であり、(a)はブロック図、(b)は平面状インダクタの他の構成例を示す図、(c)は(b)の平面状インダクタの断面図である。研磨終了時点の予測・検出装置33における高周波インダクタ型センサ34の主体を構成している発振回路35は、インダクタンスLとなる二次元の平面状インダクタ36に、キャパシタンスC0となる集中定数キャパシタ37が直列に接続されて、LC回路が構成されている。平面状インダクタ36は、絶縁物からなる方形状等の基板36a上に、Cu等の導電物質を用いてメアンダ形に構成されている。
【0082】
平面状インダクタ36は、図2(a)に示すスパイラル形の他に、図2(b)に示す平面状インダクタ41のように、方形状の基板41a上に、メアンダ形で構成してもよい。また、丸形のスパイラルとしてもよい。二次元の平面状インダクタ36,41は、ガラス・エポキシや紙・フェノール等の絶縁物からなる基板36a,41a上にCu等の導電膜を成膜後、エッチング等で製作することで、線幅を非常に微細化して製作することができ、全体形状も図2(c)に示すように、一辺が23mm程度の方形状等に小型化することができる。そして、平面状インダクタ36,41の小形化により微小な磁場を効率よく発生させることができ、磁場を導電性膜28の内部に深く浸透させることなく、導電性膜28が除去される終点付近の変化挙動を精度よく検出することが可能となる。
【0083】
発振回路35からの出力信号は、オペアンプ等で構成された増幅器38に入力され、増幅器38の出力は抵抗等で構成されたフィードバック・ネットワーク39に入力されている。フィードバック・ネットワーク39の出力信号が、平面状インダクタ36にポジティブ・フィードバックされることにより、該平面状インダクタ36を含めた発振回路35が構成されている。
【0084】
発振回路35は、基本的には、図3の構成例に示すように、その発振周波数帯fが、次式(1)に示すように、平面インダクタ36のインダクタンスLと集中定数キャパシタ37のキャパシタンスC0で決まるコルピッツ型の発振回路となっている。
【0085】
【数1】
【0086】
前記増幅器38の出力端子には、周波数カウンタ40が接続されている。該周波数カウンタ40から後述する膜厚基準点を示す検出信号等がデジタルで外部に出力される。検出信号出力をデジタルで伝送することで、ノイズの影響及び出力の減衰が防止される。また、膜厚データの管理容易性が得られる。
【0087】
高周波インダクタ型センサ34による発振回路35と、その発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタ40とを近接して配置することで、該発振回路35と周波数カウンタ40間の配線・結線部分で分布定数回路を形成してインダクタンスやキャパシタンスが不要に大きくなるのが防止されて、高周波インダクタ型センサ34付近にもたらされる導電性膜28の研磨の進行に伴う磁束の変化を精度よく検出することが可能となる。
【0088】
研磨終了時点の予測・検出装置33は、平面状インダクタ36を除いた他の構成部品ないしは回路がIC(集積回路)化されてパッケージ33aに内装されている。前記平面状インダクタ36は、薄い絶縁膜で被覆されてパッケージ33aの表面に固定されている。パッケージ化された研磨終了時点の予測・検出装置33が前記化学機械研磨装置に組み込まれるとき、図1に示したように、平面状インダクタ36がウェーハWの表面部の導電性膜と対峙するように組み込まれる。
【0089】
また、発振回路35を構成している集中定数キャパシタ37はキャパシタンスが可変となっており、高周波インダクタ型センサ34は発振周波数帯の範囲内で、発振周波数を選択できるようになっている。
【0090】
本実施例では研磨中の導電性膜28が所定の表皮深さδに対応する膜厚になった場合の磁束変化を基に後述する膜厚基準点の検出を行っている。導電性膜28における所定の表皮深さδは、導電性膜28の材質と高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fとに依存して式(2)のように決まる。
【0091】
【数2】
【0092】
ω=2πf、μは透磁率、σは導電率である。
【0093】
そして、表皮深さ∂が、所定の導電性膜28の初期膜厚よりも小さく、研磨終期において埋め込み部を除いた部分を研磨した導電性腺28の膜厚より大になるように高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fが選択されている。研磨除去対象の導電性膜28の材質がCuの場合において、発振周波数帯は20MHz以上が選択される。
【0094】
ここで、前記した「表皮深さに対応する膜厚」及び「表皮効果によって生じる磁束変化」について、図4の(a)〜(d)を用いて説明する。図4はコイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向き((a)〜(d)各図中下方の矢印←)に配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図である。これは、コイルに流れる電流が最大になる場合を示している。同図(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、同図(c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同国(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μm の場合である。
【0095】
電磁シミュレーションの設定は、磁場を形成するインダクタは指向性を持たない平面状インダクタとした。前記「表皮深さに対応する膜厚」とは、「表皮効果によって磁束変化が生じる膜厚」のことである。センサの発振周波数が1MHzではコイルの下側に存在する導体膜上の磁束は縦方向を向いている。この周波数では、膜厚が1μm及び0.2μmであっても、導体膜内を磁束が貫通している(図4(a)、(b))。こうした導体膜内を磁束が貫通する場合は、従来例に示されているように、導体膜内部に発生する渦電流は、膜厚減少に伴って減少する。よって、1MHzの場合、1μm以下の膜厚では、単調な挙動であるため、表皮効果は現れず、「表皮深さに対応する膜厚」も少なくとも1μmよりも厚い膜厚と考えられる。
【0096】
これに対し、センサの発振周波数が40MHzでは、明らかに導体表面での磁束向きが水平であり、膜厚が1μmでは、殆ど導体内部に入り込んでいない(図4(d))。先の発振周波数が1MHzで膜厚が1μmの場合(図4(b))と比較すると、導体膜に入り込む磁束の向きが異なることが分かる。
【0097】
しかし、発振周波数が40MHzで導体膜が0.2μmまで薄くなると(図4(c))、一部の磁束のみが導体膜内部方向へ向いている。これは導体膜がCuでも、ある薄さになると一部の磁束が導体膜内を貫通することを示している。
【0098】
この40MHzの交番変化する磁束の場合、表皮効果に対応して、導体膜内の磁束の貫通状態が変化する。貫通磁束が徐々に増加する影響で、周波数は約700Å前後まで急激に上昇する。なお、膜厚が1μm以上では磁束は殆ど貫通していない。よって、この場合、「表皮深さに対応した膜厚」は、磁束が貫通するかしないかの境界の膜厚とすると、約1μm程度ということができる。このことからも、発振周波数を40MHzと高くし、平面状インダクタを使用すると、1μm 厚みのCu導体膜内に磁束は殆ど入り込まず、これは表皮効果によるものである。
【0099】
Cu導体膜で発振周波数が40MHzの場合、Cuの導電率を58×106S/mとすると、表皮深さδは9.34μmになる。計算上は、膜厚が1μmだと磁束は導体膜内に十分入り込む計算になるが、平面状インダクタを使用しており、磁束に指向性がないことから、実際は発振周波数が40MHzの場合、膜厚が1μmでも表皮効果によって磁場は導体膜内に侵入しない。導体膜が薄くなるにつれて一部の磁束が導体膜内に入り込み、わずかに渦電流が発生する。このことより、渦電流を積極的に利用して膜厚測定するのではなく、終点付近の薄い膜厚になったときに、表皮効果によりわずかに漏洩・貫通する磁束を利用して、導体膜内に誘起される相互インダクタンスの変曲点(極大点)を利用して該導体膜の終点付近の膜厚状態をモニタすることが可能となる。
【0100】
この相互インダクタンスは、一次側コイルのインピーダンス成分にも対応する。コイル回路系のインピーダンス変化を求めるにあたり、導体膜に誘起される渦電流の変化とコイル側インピーダンスの変化の関係を求める。図5に示すように等価回路を形成し、それぞれの構成要素を設定した場合、回路方程式は次式で表される。
【0101】
【数3】
【0102】
ここで、i1, i2は、それぞれ一次側と二次側に流れる電流であり、一次側には、νの電圧がコイルに印加されているとする。一定の各振動数をもつ交流ωの場合、それぞれ
【0103】
【数4】
【0104】
と表され、(3)式と(4)式は次のように表される。
【0105】
【数5】
【0106】
この式を解くと次式となる。
【0107】
【数6】
【0108】
コイル側からみたインピーダンスは以下のようになる。
【数7】
【0109】
以上より、コイル側の抵抗R1はほとんどゼロとみなされるため、インピーダンスの実部は、導体膜に誘起される渦電流によって生じる相互インダクタンスMの二乗に比例し、対応していることがわかる。よって、ここでは、相互インダクタンスの変化量、すなわち、導電性膜に誘起される渦電流の変化を、一次側回路系のインピーダンス実部の変化として示す。
【0110】
図6に、平面インダクタを使用した場合のインピーダンス実部の膜厚依存性について、2次元電磁シミュレーションによって得た結果を示す。40MHzの場合では、0.1μm以下に変曲点を有し、その後急激にインピーダンスは減少する。それに対して、1MHzの場合では、膜厚に依存して単調に減少していることがわかる。これより、本題にあるような変曲点は、まず、扱う周波数の大小によって現れることがわかる。また、このような変曲点の出現は、図4に示したような表皮効果の影響によることが磁束の向きによる変化から理解できる。
【0111】
しかし、周波数を40MHzとしてインダクタ形状を平面インダクタにしさえすれば、表皮効果の影響によって変曲点が現れるかというと必ずしもそうではない。その事例として、平面インダクタを導電性膜に十分に近づけた場合において、図4と同様に2次元有限要素シミュレーションによって確認した。
【0112】
ここでは、平面インダクタを先に示した距離よりも1/1000近づけて2.4μmとし、コイルの大きさも1/1000の半径11μmとして計算した。コイルの周波数を40 MHzとし、導体膜をCuとして膜厚を1μmとして計算したところ、1μmの膜厚であっても、図4の場合とは違って多くの磁束が貫通する。しかし、周波数を1GHzにまで引き上げると、ほとんどの磁束は貫通しなくなる(図示は省略)。
【0113】
図7に、コイル径を1/1000、コイルと導電性膜距離を1/1000とした場合において、コイル側インピーダンスの実部変化を示す。40 MHzの周波数であっても、変曲点を持たないことがわかる。1GHzまで周波数をあげると、1μm 付近に変曲点が生じる。これは先の導体内に入り込む磁場の向きから、表皮効果の影響で変曲点が生じたことがわかる。
【0114】
以上の実験結果から、表皮効果の影響を受けて変曲点を形成するには、ただ単に周波数を高くして、平面インダクタを使用すればよいというわけではない。コイルと導電性膜の距離やコイルの大きさなどを適正に保つことも重要となる。また、被研磨対象膜の導電率、および透磁率など、その材料の物性に起因することは、タングステンを同様に研磨した湯合の波形から明らかとなっている。
【0115】
よって、表皮効果によって、導電性膜内に磁束が侵入する/しないといった挙動を利用するためには、周波数、インダクタの形状や大きさ、インダクタと導電性膜の距離、導電性膜の導電率、透磁率を適正に選択することで達成することができる。こうした表皮効果の影響による変曲点の出現が研磨終点付近に現れるように設定し、その変曲点を検出するアルゴリズムを設定して、精度良く研磨終了点を予測する方法を新たに見出し、発明の骨子とするものである。
【0116】
次に、研磨終了時点予測方法の実際の運用について述べる。図8は、ウェーハに対するプラテンの上のインダクタの軌跡を示し、ウェーハのA点乃至E点における共振周波波形の関係の一例を図9に示す。ここでは、共振周波数のピークの出現がC点で最も早く、B点とD点がそれに続き、A点とE点が最も遅くなっており、ウェーハの中心部であるC点の研磨レートが最速で、外周部のA点とE点が遅いことを示している。図10に図9中の1の時点と2の時点のA点乃至E点における研磨量を示す。各点を結ぶ曲線形状からウェーハの研磨形状(残膜形状)がわかる。
【0117】
図11は、本発明の研磨終了時点の予測方法によりCu膜を研磨する際のリファレンス波形を示し、膜厚710Åに共振周波数のピークがある。同図中に示すように、リファレンス波形の各位置に対して対応する膜厚を求めておけば、実際に得た波形の変化率から各位置における残り膜厚を知ることができる。
【0118】
そして、所定の時間において各位置での膜厚のばらつきから残膜の不均一性をリアルタイムに求める。ただし、以下の式において、fi=位置iにおける膜厚である。
【0119】
【数8】
【0120】
とした場合、不均一性(Nonunif)は
【0121】
【数9】
【0122】
となる。また、別の方法として初期膜厚から残り膜厚を差し引いて除去膜厚を求め、除去膜厚のばらつきにより不均一性を求めてもよい。
【0123】
または、所定の変化率(所定の研磨量)に到達した時間から研磨量の不均一性を求めてもよい。
【0124】
【数10】
【0125】
そして、(数8)と(数9)とから研磨量の不均一性を求めることができる。
【0126】
尚、図1では、プラテン2の上面に一個のインダクタ型センサ34を配置した例を示したが、図12に示すように、プラテン2の上面に複数のインダクタ型センサ34を半径方向へ並べて配置し、プラテン2上にパッド(図示せず)を貼って、ウェーハの各位置における共振周波の波形を同時にモニタしてもよい。この場合は、複数のインダクタ型センサ34がそれぞれ検出する共振周波の波形の時間的ずれから研磨均一性をリアルタイムで検知或いは予測することができる。
【0127】
以上、本発明の研磨終点予測方法を説明したが、研磨終点予測に関わる共振周波の波形の特徴的な変化とは、変曲点に限らず、上昇開始点、上昇率、所定の上昇量、上昇から下降の変化率など、変化を検知するための共振周波波形に含まれる特徴的な項目のすべてを含む。
【0128】
最後に、本発明が先に示した従来公知例と構成的に大きく異なる部分を列挙すると、
1.フェライトコアなど磁場を整形するインダクタではなく、磁場に指向性をなくし、研磨初期には表皮効果によって導電性膜内に積極的に磁場を侵入させない2次元の平面インダクタを使用したこと。
2.周波数を表皮効果が働く程度に高く設定したこと。
3.一次側インダクタの形状や大きさ、およびインダクタと除去対象の導電性膜との距離について、導電性膜の導電率、透磁率を考慮して、表皮効果が働く程度に適正化して行うこと。
4.被研磨対象膜の材質に基づく磁束の侵入する臨界深さを考慮して、インダクタ、周波数、インダクタ対導電性フィルムの距離を設定したこと。
以上の相違点が挙げられる。
【0129】
従来は、表皮効果の影響が現れるような状態で装置の各要素を設定し、そのような表皮効果に基づく変曲点の出現を故意に形成して、それを基に膜厚モニタとして使用したものはない。また、そのピークの存在を巧みに利用して、そのピークの部分を膜厚基準位置として、膜厚モニタや研磨レートなどを算出する方法は従来示されてない。また、従来にない顕著な効果として、渦電流の消費部分として、導電性膜で消資されているのか、それとも導電性膜で消費されず、素子に磁場が漏れ、それが導電性膜で消費されない状態になっているのかなど、変曲点を得ることで磁場の導電性膜への侵入に関する状況を顕著に理解することが可能である。従来の方法では、磁場の素子に対する侵入に関する状況がわからず、素子への磁場のエネルギーによるダメージを考慮していないこと、などが大きな遣いとして考えられる。本発明はそうした明らかに異なる作用効果の違いに基づいて構成されたハードウェアおよびその検出アルゴリズムに基づくものである。
【0130】
尚、この発明は上記の実施形態に限定するものではなく、この発明の技術的範囲内において種々の改変が可能であり、この発明がそれらの改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の実施の一形態を示し、化学機械研磨装置の斜視図。
【図2】(a)は予測・検出装置のブロック図、(b)は平面状インダクタの斜視図、(c)は断面図。
【図3】(a)は発振回路の構成解説図、(b)は発振回路の等価回路図。
【図4】予測・検出装置の動作シミュレーション結果をディスプレイ上に表示した画像の模式図であり、(a)は導体膜厚0.2μm,発振周波数1MHzの場合、(b)は導体膜厚1μm,発振周波数1MHzの場合、(c)は導体膜厚0.2μm,発振周波数40MHzの場合、()は導体膜厚1μm,発振周波数40MHzの場合の図である。
【図5】予測・検出装置の等価回路図。
【図6】予測・検出装置の膜厚:インピーダンス特性のグラフ。
【図7】予測・検出装置の膜厚:インピーダンス特性のグラフ。
【図8】導体膜上の平面状インダクタの計測ポイントの解説図。
【図9】図8の各ポイントにおける共振周波波形の一例を示すグラフ。
【図10】図8の各ポイントにおける研磨量の一例を示すグラフ。
【図11】本発明の予測・検出方法によりCu膜を研磨する際のリファレンス波形のグラフ。
【図12】予測・検出装置の他の配置形態を示す平面解説図。
【符号の説明】
【0132】
1 化学機械研磨装置
2 プラテン
3 モータ
4 駆動機構
5 パッド
6 研磨ヘッド
W ウェーハ
28 導電性膜
33 予測・検出装置
34 インダクタ型センサ
35 発振回路
36 平面状インダクタ
37 集中定数キャパシタ
38 増幅器
39 フィードバック・ネットワーク
40 周波数カウンタ
41 平面状インダクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、ウェーハ面の研磨加工を行いながらリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法。
【請求項2】
リアルタイムに見積もる上記研磨所量は、残り膜厚、平均膜厚、研磨形状、研磨量、平均研磨量、研磨除去量のばらつき、残り膜厚のばらつき、残り膜の形状のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測方法。
【請求項3】
ウェーハ面に対して研磨加工を行いながら、ウェーハ面内の複数箇所に対して研磨所量を見積もることを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測方法。
【請求項4】
上記導電性膜に近接するインダクタは、二次元平面インダクタであることを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測方法。
【請求項5】
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、
研磨による膜厚減少に伴って導電性膜に誘起される渦電流が増大し、且つその後の膜厚減少に伴って渦電流が実質的に減少する過程において、導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の状態を膜厚量に換算し、その相対的なばらつきを基にリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法。
【請求項6】
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、研磨による膜厚減少に伴って導電性膜に誘起される渦電流が増大し、且つその後の膜厚減少に伴って渦電流が実質的に減少する過程において、その導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の部分を経る時の経過時間をウェーハ面内の複数の位置において求め、その複数の位置における経過時間のばらつきを基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求める研磨終了時点の予測方法。
【請求項7】
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、
インダクタを、対向するウェーハに対して異なる軌跡位置に複数配置してウェーハに近接させ、該インダクタで形成される磁束により、所定のウェーハ面内の複数の位置で導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、上記導電性膜の表皮効果に基づいて、その導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の部分を経る時の経過時間を、ウェーハ面内の複数の位置において求め、研磨除去量のばらつきに換算するか、もしくは、複数の位置におけるそれぞれの膜厚量を波形の変化率から換算し、そのばらつきまたは膜厚量を基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求める研磨終了時点の予測方法。
【請求項8】
上記導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化の測定手段は、導電性膜中の渦電流の測定、または、導電性膜が渦電流を生じることにより発生する相互インダクタンスの測定、または、導電性膜の相互インダクタンスによる上記インダクタのセンサ回路系におけるインダクタンス変化の測定、または、センサ回路系のインピーダンス変化の測定、または該センサ回路系のインダクタンス変化を高周波インダクタと容量とを並列接続して発振させその共振周波数の変化の測定の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1,2、3,4,5,6,または7記載の研磨終了時点の予測方法。
【請求項1】
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、ウェーハ面の研磨加工を行いながらリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法。
【請求項2】
リアルタイムに見積もる上記研磨所量は、残り膜厚、平均膜厚、研磨形状、研磨量、平均研磨量、研磨除去量のばらつき、残り膜厚のばらつき、残り膜の形状のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測方法。
【請求項3】
ウェーハ面に対して研磨加工を行いながら、ウェーハ面内の複数箇所に対して研磨所量を見積もることを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測方法。
【請求項4】
上記導電性膜に近接するインダクタは、二次元平面インダクタであることを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測方法。
【請求項5】
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、
研磨による膜厚減少に伴って導電性膜に誘起される渦電流が増大し、且つその後の膜厚減少に伴って渦電流が実質的に減少する過程において、導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の状態を膜厚量に換算し、その相対的なばらつきを基にリアルタイムに研磨所量を見積もることを特徴とする研磨終了時点の予測方法。
【請求項6】
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、ウェーハ上の導電性膜にインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束によりウェーハの導電性膜に誘起されて、導電性膜の材質を一因子とする表皮効果により変化する磁束をモニタし、研磨による膜厚減少に伴って導電性膜に誘起される渦電流が増大し、且つその後の膜厚減少に伴って渦電流が実質的に減少する過程において、その導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の部分を経る時の経過時間をウェーハ面内の複数の位置において求め、その複数の位置における経過時間のばらつきを基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求める研磨終了時点の予測方法。
【請求項7】
スラリーまたは薬液を供給しつつ、研磨パッドなどの加工工具と導電性膜を有するウェーハとを摺動させて導電性膜の除去加工を行う研磨工程において、
インダクタを、対向するウェーハに対して異なる軌跡位置に複数配置してウェーハに近接させ、該インダクタで形成される磁束により、所定のウェーハ面内の複数の位置で導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、上記導電性膜の表皮効果に基づいて、その導電性膜に誘起される磁束の特徴的な変化の部分を経る時の経過時間を、ウェーハ面内の複数の位置において求め、研磨除去量のばらつきに換算するか、もしくは、複数の位置におけるそれぞれの膜厚量を波形の変化率から換算し、そのばらつきまたは膜厚量を基に、加工中リアルタイムに研磨所量を求める研磨終了時点の予測方法。
【請求項8】
上記導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化の測定手段は、導電性膜中の渦電流の測定、または、導電性膜が渦電流を生じることにより発生する相互インダクタンスの測定、または、導電性膜の相互インダクタンスによる上記インダクタのセンサ回路系におけるインダクタンス変化の測定、または、センサ回路系のインピーダンス変化の測定、または該センサ回路系のインダクタンス変化を高周波インダクタと容量とを並列接続して発振させその共振周波数の変化の測定の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1,2、3,4,5,6,または7記載の研磨終了時点の予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−71197(P2009−71197A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240282(P2007−240282)
【出願日】平成19年9月15日(2007.9.15)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月15日(2007.9.15)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
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