説明

硬化剤、硬化性樹脂組成物、半導体用接着剤及び硬化反応を制御する方法

【課題】硬化開始温度が高く、潜在性硬化剤として有用な新規な硬化剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される含窒素化合物と、ナフタレンカルボン酸とから形成される塩又は付加体を含有する硬化剤。
[化1]


[式中のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に有機基を示し、互いに結合して窒素原子を含む環状構造を形成していてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化剤、硬化性樹脂組成物、半導体用接着剤及び硬化反応を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルアミン、イミダゾール誘導体等のアミン類は、エポキシ樹脂との反応性が高く、例えば、電子材料用途で硬化剤又は硬化促進剤として頻繁に用いられている。しかし、アミン類は反応性が高い故に、低温でエポキシ樹脂等と反応するため保存安定性が悪く、また、反応制御も困難であった。
【0003】
そこで、アミン類に潜在性を付与する方法が種々検討されてきた(特許文献1〜3)。代表的な手法としては、アミン類(特にイミダゾール誘導体)を有機物で覆ってカプセル化する手法、アミン類に酸等を反応させて塩又は付加体を形成させる手法等がある(特許文献4〜8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2709882号公報
【特許文献2】特許第2777761号公報
【特許文献3】特許第3270775号公報
【特許文献4】特公平07−005708号公報
【特許文献5】特開昭61−210076号公報
【特許文献6】特開平08−113561号公報
【特許文献7】特開平08−225753号公報
【特許文献8】特許第4022679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カプセル化の場合、アミン類を覆うカプセル膜が一般的に有機物であるため、耐溶剤性が十分でなく、カプセルが溶媒によって瞬時に溶けてしまうことがある。そのため、限られた溶媒中でしか用いることができないという問題がある。また、均一なカプセル膜を形成することが困難であることから、反応制御も困難であった。
【0006】
一方、アミン類と酸等から形成される塩又は付加体は、その多くが熱で解離するため、溶剤によって分解する可能性は少なく、より幅広い用途で用いることができる。しかし、用途によっては反応開始温度をより高温化することが求められている。反応開始温度が高温になれば、保存安定性も向上する。
【0007】
そこで、本発明は、硬化開始温度が高く、潜在性硬化剤として有用な新規な硬化剤を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、硬化性樹脂の硬化反応の活性を容易に制御する新規な方法を提供することを目的とする。半導体用接着剤などの用途において、被着体の種類等に応じて硬化反応の活性を容易に制御することができれば、非常に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される含窒素化合物と、ナフタレンカルボン酸とから形成される塩又は付加体を含有する硬化剤に関する。式中のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に有機基を示し、互いに結合して窒素原子を含む環状構造を形成していてもよい。
【0010】
【化1】

【0011】
上記本発明に係る硬化剤は、硬化開始温度が高く、潜在性硬化剤として有用なものである。
【0012】
上記含窒素化合物は、イミダゾール又はその誘導体であることが好ましい。
【0013】
上記ナフタレンカルボン酸が、ナフタレン環に結合した2以上のカルボキシル基を有しており、それらカルボキシル基から選ばれる2個のカルボキシル基がそれぞれ結合する2個の炭素原子が、ナフタレン環において互いに隣り合う位置にないことが好ましい。
【0014】
別の側面において、本発明は、上記本発明に係る硬化剤と、エポキシ樹脂と、を含有する硬化性樹脂組成物に関する。本発明に係る硬化性樹脂組成物は、上記一般式(1)、(2)又は(3)で表される含窒素化合物と、ナフタレンカルボン酸と、エポキシ樹脂とを含有するものであってもよい。本発明に係る硬化性樹脂組成物は、半導体用接着剤として特に有用である。
【0015】
更に別の側面において、本発明は、硬化性樹脂組成物の硬化反応を制御する方法に関する。本発明に係る方法によれば、上記一般式(1)、(2)又は(3)で表される含窒素化合物とナフタレン環並びに該ナフタレン環に結合したカルボキシル基及び他の置換基を有するナフタレンカルボン酸とから形成される塩又は付加体を含有する硬化剤と、エポキシ樹脂と、を含有する硬化性樹脂組成物において、前記他の置換基の種類、数及び置換位置のうち少なくともいずれかを選択することにより当該硬化性樹脂組成物の硬化反応の活性を制御する。
【0016】
ナフタレンカルボン酸のナフタレン環を置換するカルボキシル基以外の置換基の種類、数及び置換位置のいずれかを選択することにより、他の特性を維持しながら、硬化性樹脂組成物の硬化反応の活性を容易に制御することができる。置換基の種類及び置換位置によっては、硬化剤が劇的に潜在性を発揮する。また、反応開始温度を高温化するだけでなく、反応速度等の反応挙動を様々に変化させることができる。特に半導体用接着剤の場合、硬化後の信頼性等の他の特性を維持しながら硬化反応の活性を制御できることは、非常に有用である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、硬化開始温度が高く、潜在性硬化剤として有用な新規な硬化剤が提供される。本発明に係る硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物が硬化して形成される硬化体は優れた耐熱性、耐湿性を有していることから、本発明に係る半導体用接着剤を用いて、高い信頼性を有する半導体装置を製造することができる。
【0018】
また、本発明によれば、硬化性樹脂の硬化反応の活性を容易に制御する新規な方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態に係る硬化剤は、非共有電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物と、ナフタレンカルボン酸とが反応して形成される化合物(塩又は付加体)を含有する。非共有電子対を有する窒素原子を含む含窒素化合物は、例えば上記一般式(1)、(2)又は(3)で表される。
【0021】
上記含窒素化合物は、非共有電子対を有する窒素原子を含んでいればよく、他の部分を構成する有機基であるR、R、R、R、R及びRに特に制限はない。含窒素化合物は、例えば、第一級アルキルアミン、第2級アルキルアミン、第3級アルキルアミン、アリールアミン及び複素環アミンから選ばれる。複素環アミンとしては、ピリジン、ピロール、キノリン、イミダゾール、インドール、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、トリアジン又はこれらの誘導体が挙げられる。その他、シアノ基を有する化合物及びジアゾ化合物も用いることができる。取り扱い性や安定性の観点から、ナフタレンカルボン酸と反応させる含窒素化合物は、第1級アルキルアミン、第2級アルキルアミン、第3級アルキルアミン、アリールアミン、イミダゾール又はその誘導体、トリアジン又はその誘導体、及びシアノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
これらの中でも、イミダゾール又はその誘導体が特に好ましい。含窒素化合物の非共有電子対を有する窒素原子の近隣に嵩高い置換基があると、ナフタレンカルボン酸と付加体又は塩を形成しにくい傾向がある。ナフタレンカルボン酸と反応させる含窒素化合物としてのイミダゾール誘導体は、好ましくは、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル-4-メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンから選ばれる。
【0023】
ナフタレンカルボン酸は、ナフタレン環と、該ナフタレン環を置換する1又は2以上のカルボキシル基とを有する化合物である。含窒素化合物との塩又は付加体の形成のし易さの点から、カルボキシル基のオルト位には置換基がないことが好ましい。オルト位に置換基がないことにより、硬化性樹脂組成物の反応開始温度が高くなる傾向がある。また、ナフタレン環に結合するカルボキシル基は多くなると、反応開始温度が高くなる傾向がある。塩又は付加体を形成する際に障害となるような置換基がカルボキシル基の近傍にない場合、カルボキシル基の酸性度が高くなればなるほど塩又は付加体を形成し易くなり、エポキシ樹脂等の反応開始温度が高温になる。さらに、ナフタレンカルボン酸がナフタレン環を置換する電子吸引性置換基を有すると、カルボキシル基の酸性度が向上して、反応開始温度が高くなる。電子吸引性置換基は、例えば、シアノ基、ニトロ基、トリメチルアミノ基、アリール基、アルキルカルボニル基(メチルカルボニル基等)、アルキルオキシカルボニル基(エチルオキシカルボニル基等)、フルオロ基、クロロ基、ヨード基及びブロモ基から選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、カルボン酸の酸性度を特に高くさせる置換基であることから、シアノ基、ニトロ基及びトリメチルアミノ基が好ましい。
【0024】
好適なナフタレンカルボン酸の具体例としては、1,4−ジカルボン酸ナフタレン、2,6−ジカルボン酸ナフタレン及び1,4,5,8−テトラカルボン酸ナフタレンが挙げられる。
【0025】
含窒素化合物とナフタレンカルボン酸との反応により形成される化合物(塩又は付加体)を硬化剤として含有する硬化性樹脂組成物の硬化反応の活性を、カルボキシル基以外の置換基の種類、数及び置換位置のうち少なくともいずれかを選択することにより制御することができる。置換基の電子吸引性が強いほど、反応開始温度が高くなる傾向がある。ナフタレン環に結合する電吸引性置換基の数が多いほど、反応開始温度が高くなる傾向がある。反応開始温度が高くなると、室温での硬化反応の活性が抑制されて、高い熱潜在性が得られる。
【0026】
含窒素化合物とナフタレンカルボン酸との反応は、溶媒中で両者を混合する方法により行うことができる。具体的には、例えば、含窒素化合物が溶解した溶液とナフタレンカルボン酸が溶解した溶液とを、スピナー等で撹拌しながら混ぜ合わせ、0〜100℃で1〜60分反応を行うことが好ましい。
【0027】
溶媒は含窒素化合物及びナフタレンカルボン酸のうち少なくとも一方が溶解するものが好ましく、硬化性樹脂組成物の用途に不都合がないものを用いればよい。
【0028】
反応の際のナフタレンカルボン酸に対する含窒素化合物のモル比は好ましくは0.3〜3、より好ましくは0.5〜3である。未反応の含窒素化合物及びナフタレンカルボン酸が残存しないようにモル比を適宜調整することが好ましい。
【0029】
反応後、濾紙、濾過、蒸留等により、生成した塩又は付加体を単離することができる。溶媒が残存する場合は、オーブン等で熱処理を行なうか、減圧により乾燥してもよい。生成した塩又は付加体を単離することなく、溶媒に溶解させたまま硬化剤として硬化性樹脂組成物の調製のために用いてもよい。単離や溶媒を乾燥する工程を省略することにより、より簡易な工程で硬化剤を得ることができる。
【0030】
上記硬化剤は、エポキシ樹脂用硬化剤として好適に用いられる。エポキシ樹脂は、2個以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、各種多官能エポキシ樹脂を使用することができる。これらは単独または2種以上の混合体として使用することができる。
【0031】
硬化性樹脂組成物には、含窒素化合物及びナフタレンカルボン酸がそれぞれ単体で含有されていてもよい。この場合も、硬化反応の活性が制御され得る。
【0032】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、含窒素化合物とカルボン酸との反応により形成される化合物(塩又は付加体)及びエポキシ樹脂に加えて、他の硬化剤、フィラー等の他の成分を更に含有してもよい。
【0033】
他の硬化剤としては、以下のフェノール樹脂、アミン系硬化剤、イミダゾール類及びホスフィン類が用いられ得る。
【0034】
(i)フェノール樹脂
例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール、各種多官能フェノール樹脂などを使用することができる。これらは単独または2種以上の混合体として使用することができる。
【0035】
(ii)酸無水物系硬化剤
例えば、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等を使用することができる。これらは単独または2種以上の混合体として使用することができる。
【0036】
(iii)アミン系硬化剤
カルボン酸との塩又は付加体を形成する含窒素化合物とは異なるアミン系硬化剤を用いてもよい。例えば、ジシアンジアミドを使用することができる。
【0037】
(iv)イミダゾール類
イミダゾール類単体を硬化剤として用いてもよい。例えば、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
【0038】
(v)ホスフィン類
例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム(4−フルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0039】
フィラーの種類、添加量は適宜用途に応じて決定すればよく、例えば、絶縁性無機フィラーやウィスカー、樹脂フィラーを用いることができる。絶縁性無機フィラーとしては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ、窒化ホウ素等が挙げられ、その中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン、窒化ホウ素が好ましく、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素がより好ましい。ウィスカーとしては、例えば、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム、窒化ホウ素等が挙げられる。樹脂フィラーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリイミドなどを用いることができる。これらのフィラー及びウィスカーは1種を単独で又は2種以上の混合体として使用することもできる。フィラーの形状、粒径、および配合量については、特に制限されない。
【0040】
硬化性樹脂組成物は、例えば、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、及びイオントラップ剤から選ばれる添加剤を含有してもよい。
【0041】
硬化性樹脂組成物はどのような形態でもよく、例えば、液状、ペースト状、フィルム状、又は粉状であり得る。
【0042】
硬化性樹脂組成物は、フィルム状等の形状の保持が必要とされる場合、高分子成分を含有することが好ましい。この高分子成分は、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルゴムから選ばれる。高分子成分の重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。
【0043】
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、半導体素子と基板及び他の半導体素子等の被着体とを接着する半導体用接着剤として特に有用である。カルボン酸は有機酸であるため、熱により含窒素化合物から分離した後、ハンダや銅表面の酸化膜や不純物を取り除くフラックス活性を示す。さらに、カルボン酸は他の有機酸と異なり、含窒素化合物から分離したときにエポキシ樹脂と容易に反応して架橋構造体に取り込まれて系中に単体として残りにくいため、耐HAST性等の絶縁信頼性の劣化が抑制されるという利点もある。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
1.材料
(a)含窒素化合物(イミダゾール誘導体)
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成株式会社製、2PZCN)
(b)カルボン酸
1,4−ジカルボン酸ナフタレン(東京化成株式会社製)
2,6−ジカルボン酸ナフタレン(東京化成株式会社製)
1,4,5,8−テトラカルボン酸ナフタレン(東京化成株式会社製)
(c)エポキシ樹脂
トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、EP1032H60、以下「EP1032」という。)
【0046】
2.付加体の合成
イミダゾール誘導体及び表1に示すカルボン酸を、N−メチル−2−ピロリドン(関東化学製、以下「NMP」という。)に、1:1のモル比で、不揮発分が3質量%となるように溶解し、室温(25℃)で30分間攪拌して、ナフタレンカルボン酸と2PZCNとの反応生成物である付加体を溶液中に生成させた。生成した付加体は、単離することなくNMP溶液の状態でそのまま硬化性樹脂組成物の調製に用いた。
【0047】
3.硬化性樹脂組成物の調製とその評価
上記付加体を硬化剤として用い、これをエポキシ樹脂(EP1032)100モルに対して0.5モルとなるような比率でエポキシ樹脂と混合した。溶媒としてNMPを用い、全体として不揮発分が40質量%となるように調整した。混合後、80℃で30分、120℃で20分の順に加熱して溶媒を除去して、硬化性樹脂組成物を得た。実験例1では、2PZCNをそのまま硬化剤として用いた。得られた硬化性樹脂組成物について、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量5mg、昇温速度10℃/分で、25℃〜350℃の範囲の測定を行った。硬化反応に起因する発熱ピークから、「反応開始温度」、「反応ピーク温度」及び「発熱量」を求めた。縦軸を熱量(W/g)、横軸を温度(℃)としたときに、発熱ピークの立上り曲線のうちピークの勾配が最も急になった部分の接線と温度軸の交点の温度を反応開始温度(onset温度:平均場近似一次転移温度)とした。測定結果を下記表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実験例1に比べ、ナフタレンカルボン酸を用いた実験例2〜4は反応開始温度が高くなった。また、2個のカルボキシル基を有するナフタレンカルボン酸を用いた実験例2〜3に比べ、4個のカルボキシル基を有するカルボン酸を用いた実験例4は、カルボキシル基の数が多く、さらに、カルボキシル基が隣り合った炭素原子に結合していないため、反応開始温度が特に高くなっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される含窒素化合物と、ナフタレンカルボン酸とから形成される塩又は付加体を含有する硬化剤。
【化1】


[式中のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に有機基を示し、互いに結合して窒素原子を含む環状構造を形成していてもよい。]
【請求項2】
前記含窒素化合物が、イミダゾール又はその誘導体である、請求項1に記載の硬化剤。
【請求項3】
前記ナフタレンカルボン酸が、ナフタレン環に結合した2以上のカルボキシル基を有しており、それらカルボキシル基から選ばれる2個のカルボキシル基がそれぞれ結合する2個の炭素原子が、ナフタレン環において互いに隣り合う位置にない、請求項1又は2に記載の硬化剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化剤と、エポキシ樹脂と、を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される含窒素化合物と、ナフタレンカルボン酸と、エポキシ樹脂と、を含有する硬化性樹脂組成物。
【化2】


[式中のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に有機基を示し、互いに結合して窒素原子を含む環状構造を形成していてもよい。]
【請求項6】
請求項4又は5に記載の硬化性樹脂組成物からなる半導体用接着剤。
【請求項7】
下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される含窒素化合物とナフタレン環並びに該ナフタレン環に結合したカルボキシル基及び他の置換基を有するナフタレンカルボン酸とから形成される塩又は付加体を含有する硬化剤と、エポキシ樹脂と、を含有する硬化性樹脂組成物において、前記他の置換基の種類、数及び置換位置のうち少なくともいずれかを選択することにより当該硬化性樹脂組成物の硬化反応の活性を制御する、硬化反応を制御する方法。
【化3】


[式中のR、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に有機基を示し、互いに結合して窒素原子を含む環状構造を形成していてもよい。]
【請求項8】
請求項7に記載の方法により硬化反応が制御された硬化性樹脂組成物からなる半導体用接着剤。

【公開番号】特開2011−148934(P2011−148934A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12357(P2010−12357)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】