説明

硬化性アルコキシカルボニルアミノ組成物、被覆、および方法

式(I)[式中、Rは、1〜12個の炭素を有し、かつ酸素、窒素および硫黄から選択される1もしくは複数のヘテロ原子を有していてよい]の官能基を有する化合物、オリゴマーまたはポリマーは、基(I)と反応性の活性水素官能基を有する硬化性組成物中で有用である。式(I)の官能基および活性水素官能基は、同一の材料の一部であってもよいし、異なった材料の一部であってもよい。実施態様次第では充填剤が表面変性により式(I)の官能基を有する。式(I)の官能基を有する材料の製造方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本発明は、アルコキシカルボニルアミノ材料、該材料を含有する硬化性組成物、特に被覆組成物、および関連する方法に関する。
【0002】
開示の背景
このセクションの記載は、単にこの開示に関する背景情報を提供するものにすぎず、従来技術を構成するものではない。
【0003】
アミノ−1,3,5−トリアジンの誘導体は、架橋剤として硬化性組成物中で広く使用されているが、これらの使用は懸念が無いわけではなかった。たとえば、アルコキシル化されたメラミンであるホルムアルデヒド樹脂は、硬化プロセスの揮発性副産物としてホルムアルデヒドを放出するという欠点を有している。多くの適用において、アミノ−1,3,5−トリアジンの誘導体は、トリアジンカルバメート(カルバメート官能性1,3,5−トリアジンとしても知られている)により置き換えられてきており、これはたとえばトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン(TACT)を含む。たとえばFlood等のUS特許第6,506,898号を参照のこと。このトリアジンカルバメートは、エポキシ基および/または活性な水素基を有する、一定の範囲のオリゴマーおよびポリマーと反応性である。しかしトリアジンカルバメートは、多くの有機溶剤中での溶解性が限定されている。従ってトリアジンカルバメートの希釈溶液を使用しなくてはならず、その結果、被覆組成物中での所望の揮発性有機成分(VOC)の値は得られない。さらに、トリアジンカルバメートが環境に与える影響に関して懸念が存在する。
【0004】
従って、硬化性組成物の分野では、硬化の間にホルムアルデヒドもしくはその他の揮発性化合物をほとんど放出しないか、または揮発性化合物を放出しない硬化性組成物に対する要求が存在する。
【0005】
開示の概要
上記で議論した、およびその他の従来技術の欠点および不利益は、官能基(I)
【化1】

[式中、Rは、1〜12個の炭素を有し、かつ酸素、窒素および硫黄から選択される1もしくは複数のヘテロ原子を有していてよい基である]を有する化合物、オリゴマーまたはポリマーである材料によって解決される。該材料は、被覆組成物を含む硬化性組成物中で、活性水素官能性を有する官能基を有する化合物、オリゴマーまたはポリマーと組み合わせて使用することができる。いくつかの実施態様では、単一の材料が、式(I)の第一の官能基と、活性水素を有する第二の官能基とを含有する。特定の実施態様では、官能基(I)は、電気陰性原子、たとえば酸素原子、硫黄原子または窒素原子に結合している。種々の実施態様において、該材料は、式(I)の基を1もしくは複数と、カルボニルアミン基(II)
【化2】

を1もしくは複数有している。
【0006】
ここでは、式(I)の官能基を有する化合物の製造方法も開示する。
【0007】
オリゴマーは、比較的少ない数のモノマー単位を有するポリマーである。一般に「オリゴマー」という場合には、10以下のモノマー単位を有するポリマーを指す。「化合物」とは、ポリマーではない材料を指す。つまり、2以上の繰り返しモノマー単位を有していない材料である。材料の分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、特に材料がオリゴマーまたはポリマーである場合にはポリスチレン標準を使用して測定することができる。
【0008】
式(I)の官能基を有する化合物は、トリアジンカルバメートと類似の反応性を有するが、しかしトリアジンカルバメートの欠点を低減もしくは排除することができる。たとえば官能基(I)を有する化合物は、溶解性が、たとえばコモノマーの選択により、水性条件下での分散性を改善するためのイオン基の組み込みにより、全体の分子の大きさを制限することなどにより、適切に調整されたポリマーまたはオリゴマーであってよい。基(I)を含んでいることによって、硬化性組成物のための分子設計において幅広い柔軟性が可能となり、特に塗料系の設計において幅広い柔軟性が可能になる。
【0009】
便宜上、「樹脂」とは、この開示において、樹脂、オリゴマーおよびポリマーを含むものとして、および「結合剤」とは、被覆組成物の塗膜形成成分を指すものとして使用する。「1の」、「該」、「少なくとも1の」および「1もしくは複数の」とは、互いにそのアイテムの少なくとも1つが存在することを指すものとして使用される。当該アイテムが複数存在していてもよい。実施例における以外は、詳細な説明の末尾に記載されているが、この明細書においては、添付の特許請求の範囲を含めて、パラメータの(たとえば量または条件の)すべての数値は、すべての場合において、これらの数値の前に「約」が実際に記載されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾されているものとして理解すべきである。「約」は、記載の数値が、若干の誤差(正確な数値にほぼ近いこと、当該数値にほぼ近いか、または妥当な近さであること)を含むことを示している。「約」によりもたらされる誤差が、この通常の意味でその他のことを意味するものでない場合には、ここで使用される「約」は、少なくとも通常の測定方法および当該パラメータの使用から生じうる変動を示している。さらに、範囲の記載は、そのすべての範囲内のすべての数値および小数点範囲の開示を含むものとする。
【0010】
本発明の上記の、およびその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者によって理解される。適用可能なその他の分野は、ここで提供される記載から明らかである。詳細な説明および特定の例は、説明のためのものにすぎず、本発明の開示の範囲を限定するものではない。
【0011】
詳細な説明
硬化性組成物は、官能基(I)
【化3】

[式中、Rは、1〜12個の炭素を有し、かつ酸素、窒素および硫黄から選択される1もしくは複数のヘテロ原子を有していてよい基である]を有する化合物、オリゴマーおよびポリマーである材料を含む。いくつかの実施態様では、Rは、1〜8個の炭素を有し、あるいは特には1〜4個の炭素を有する。Rは、飽和または不飽和の、直鎖状、環式または分枝鎖状の脂肪族、芳香族、またはこれらの組合せであってよく、つまりアルキルアリールまたはアリールアルキルである。特別な実施態様ではRは、カルボニル基、カルボン酸基、エステル基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、スルホキシル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、およびこれらの組合せから選択される基の一部としてのヘテロ原子を含む。これらのヘテロ原子の基(たとえばヒドロキシル基)の特定のものは、潜在的に官能基(I)自体と反応性であると理解される。特定のヘテロ原子の基は、アルコキシカルボニルアミノ基が形成された後に別の基の付加または転換により生じてもよい。種々の実施態様では、基(I)は、電気陰性原子、たとえば酸素原子、窒素原子または硫黄原子に直接結合して、前記化合物、オリゴマーまたはポリマーが、官能基(III)〜(V):
【化4】

[式中、Rは、前記のものを表す]の1つを有していてもよい。
【0012】
式(I)の官能基を有する材料は、化合物、オリゴマーまたはポリマーであってよい。これらの化合物、オリゴマーまたはポリマーは、1より多くの式(I)の官能基を含んでいてよい(そして有利には含んでいる)。たとえば前記の化合物、オリゴマーまたはポリマーは、式(I)の官能基を2〜8個含んでいてよい。いくつかの実施態様では、オリゴマーまたはポリマーは、式(I)の官能基に加えてオリゴマーまたはポリマーの主鎖に結合した別の官能基を有している。その他の官能基が存在する場合には、これらは式(I)の官能基と反応性ではないか、または式(I)の官能基と反応性であってもよい。追加の官能基が式(I)の官能基と反応性である場合には、ポリマーまたはオリゴマーは、「自己架橋性」として記載することができ、これは追加の基が、硬化条件下で式(I)の官能基と反応して架橋した網状構造を形成することを意味する。イソシアネート(−NCO)と反応性の基は、式(I)の官能基と反応性である。式(I)の官能基と反応性の官能基の例は、エポキシドおよび活性水素を有する基、たとえばヒドロキシル基、チオ基、アミン基などである。
【0013】
特別な1実施態様では、式(I)の官能基を有する化合物、オリゴマーまたはポリマーは、式(II)
【化5】

のカルバメート基も1もしくは複数有する。
【0014】
官能基(I)を有する材料は、種々の方法で製造することができる。一般に、該材料は、あらかじめ形成されている化合物、オリゴマーまたはポリマーに、基(I)を付加することにより、または化合物、オリゴマーまたはポリマーの前駆体に基(I)を付加し、かつ次いでさらに付加物を変性して基(I)を有する化合物、オリゴマーまたはポリマーを製造することにより製造することができる。2つ目の一般的な方法の場合、モノマーを基(I)に付加し、かつ該付加物モノマーを次いで重合して、基(I)を有するオリゴマーまたはポリマーを製造することができる。基(I)を有する化合物、オリゴマーまたはポリマーを製造するための特別な方法は、第一級カルバメート基
【化6】

を付加することであり、これを参照にするが、しかしこれらの方法は一般に第一級アミド
【化7】

第一級ウレア
【化8】

および第一級チオウレア
【化9】

基から選択される基にも同様に適用される。
【0015】
一般に、式(I)の官能基を有する材料は、1もしくは複数の式(II)
【化10】

(たとえば前記のとおりの第一級カルバメート基、第一級アミド基、第一級ウレア基、および第一級チオウレア基)を有する材料(化合物、オリゴマーまたはポリマー)を、Schneider等のUS特許第7,371,856号およびFlood等のUS特許第6,506,898号および第6,121,446号に記載されているものを含むアルコキシカルボニルアミノ−1,3,5−トリアジン化合物を製造するために使用されている公知の合成法で反応させることにより製造することができる。
【0016】
1つの方法では、式(I)の官能基を有する材料は、1もしくは複数の式(II)
【化11】

の基を有する材料(化合物、オリゴマーまたはポリマー)を、適切な温度で一酸化炭素およびアルコールR−OHと反応させ、かつ出発化合物に応じて、2時間〜24時間でほぼ完全に反応させることにより製造することができる。出発材料が、複数の基(I)を有している場合には、反応は完了する前に所望の時点で停止して、式(I)および(II)の両方の混合された官能性を有する材料が得られてもよい。これらの成分は、バッチ法により、または連続的なフローシステムにより反応させることができる。いくつかの実施態様では、この反応はバッチ式反応器、たとえばオートクレーブ中で実施される。
【0017】
一酸化炭素は、純粋な一酸化炭素であってもよいが、その他の気体または「不純物」、たとえば窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、酸素、空気、炭化水素、またはハロゲン化炭化水素を含有していてもよい。一般に、市販の一酸化炭素を使用することができる。いくつかの実施態様では、一酸化炭素は、実質的に水を含有していない。
【0018】
別の方法では、式(I)の官能基を含む材料は、1もしくは複数の式(II)
【化12】

の基を有する材料(化合物、オリゴマーまたはポリマー)を、アルカリ金属メトキシドまたはアルカリ土類金属メトキシドの存在下に、ジメチルカルバメートおよびROH(式中、Rは、前記のものを表すが、ただし存在する任意のヘテロ原子は、1もしくは2のエーテル酸素原子である)と反応させることにより製造することができる。ジメチルカルバメートは、カルボニルアミノ基あたり、一般に0.1〜10モル、有利には1〜3モルの量で使用される。アルコールは、たとえばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、3−メトキシプロパノールなどである。異なったアルコールを任意の組合せで使用することができる。アルコールは一般に、カルボニルアミノ基に対して50倍までのモル過剰で、有利にはカルボニルアミノ基1モルあたり3〜30モルで使用される。適切なアルカリ金属またはアルカリ土類金属のメトキシドの例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムのメトキシドを含むが、これらに限定されるわけではなく、またカルボニルアミノ基1モルあたり、0.1〜10モル、有利には1〜3モルの量で使用することができる。メトキシドは、所望の場合には組み合わせて使用することができ、かつ固体の凝集状態で、または反応媒体中に溶解または懸濁させて使用することができる。反応媒体としてアルコールを使用することができるが、不活性溶剤および希釈剤をアルコールの代わりに、またはアルコールと組み合わせて使用することができる。触媒、たとえば塩化リチウム、塩化マグネシウムまたは炭酸ナトリウムを使用することができる。
【0019】
反応は20〜180℃の温度で、一般に大気圧下に実施することができるが、圧力は一般に8バールまででもよい。
【0020】
これらの方法の種々の実施態様では、カルボニルアミノ基は、次の構造
【化13】

を有する。これらの実施態様では、反応は所望の完了の程度の後で停止して、構造(I)および構造(II)の両方の基を有する付加物が得られてもよい。
【0021】
基(I)を有する化合物の非限定的な例は、カルバメートエチル(メタ)アクリレート、カルバメートプロピル(メタ)アクリレート、1−カルバメート−2−エチルヘキサン、ジカルバメート、ジエチルオクタン、および脂肪酸二量体のジカルバメートである。この記載において使用するように、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート化合物およびメタクリレート化合物の両方を指す。基(I)を有する化合物が、1もしくは複数の重合性の基、たとえば次の構造
【化14】

[式中、R′は、Hまたはメチルであり、nは、2または3であり、かつRは、前記のとおり重合性のエチレン基を有する]を有するカルバメートエチル(メタ)アクリレートまたはカルバメートプロピル(メタ)アクリレートを有する場合には、重合するか、場合によりコモノマーと重合して、基(I)を有するオリゴマーまたはポリマーが得られる。
【0022】
式(I)の官能基を有するオリゴマーまたはポリマーは、1もしくは複数のタイプの繰り返し構造単位を有していてよい。繰り返し構造単位の例は、ウレタン、アミド、エステル、脂肪族、芳香族エーテル、および前記のものの1もしくは複数の組合せである。官能基(I)を有するオリゴマーおよびポリマーの非限定的な例は、ビニルポリマー、たとえばアクリルポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシド、ポリアミド、ポリカーボネートなどを含み、また、これらの組合せを有するグラフトポリマーおよびブロックポリマーも含む。オリゴマーの1つのタイプは、ハイパーブランチコアを使用して製造される、いわゆる「星形」ポリマーである。
【0023】
式(I)の官能基を有するオリゴマーまたはポリマーは、第一級カルバメート基(II)を有するオリゴマーまたはポリマーを付加して、これらの基を基(III)に変換することにより製造することができる。
【0024】
1つの例では、付加されたポリマーが、第一級カルバメート基を有するアクリルポリマーである。カルバメート基は、カルバメート官能性モノマーを使用して重合するか、または形成されたポリマーの官能基をさらに反応させて当該位置にカルバメート基を製造することによって導入することができる。アクリルポリマーの官能基(b)が、イソシアネート基である場合、該イソシアネート基は、ヒドロキシアルキルカルバメートと反応するか、またはエポキシ基を有するヒドロキシ含有エポキシドと反応させ、引き続き該CO2および次いでアンモニアとの反応によりカルバメートに変換することができる。有利にはイソシアネート官能性のアクリルポリマーは、ヒドロキシエチルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメート、ヒドロキシブチルカルバメートまたはこれらの混合物と反応する。官能基がヒドロキシルである場合、カルバメートを有する化合物の反応性の基は、アルキルカルバメートまたはメチロール、たとえばメチロールアクリルアミド(HO−CH2−NH−C(=O)−CH=CH2)のカルバメート基のC(=O)−O部分の酸素であってよい。アルキルカルバメートのC(=O)−Oの場合には、ポリマーのヒドロキシル基は、C(=O)−O基とエステル交換反応を行い、カルバメート基が付加されたポリマーが生じる。メチロールアクリルアミドの場合、不飽和二重結合は、次いでペルオキシドと反応してエポキシ基に変換され、次いでCO2と反応して環式カーボネートを形成し、次いでアンモニアまたは第一級アミンと反応してカルバメートが形成される。ポリマーの官能基がカルボキシル基である場合、該カルボキシル基は、エピクロロヒドリンと反応してモノグリシジルエステルを形成し、これはCO2と、および次いでアンモニアとの反応によりカルバメートに変換することができる。
【0025】
カルバメート官能性は、ポリマーをカルバメート基へと変換することができる基を有する化合物と反応させ、次いで該基をカルバメートへと変換することによって導入することもできる。カルバメートに変換することができる基を有する適切な化合物の例は、アンモニア、モノグリシジルエーテルとの反応によりカルバメートに変換することができる化合物、およびCO2との、および次いでアンモニア、アリルアルコール(この場合、アルコール基が、イソシアネート官能性と反応性であり、二重結合はペルオキシドとの反応によりカルバメートに変換することができる)、およびビニルエステル(この場合、エステル基が、イソシアネート官能性と反応性であり、かつビニル基はペルオキシドとの、次いでCO2との、および次いでアンモニアとの反応によりカルバメートに変換することができる)との反応によりカルバメートに変換することができるエステルである、活性水素を含有する環式カーボネート化合物(たとえばグリシドールおよびCO2の反応生成物)を含むが、これらに限定されない。上記の化合物のいずれも、ポリマーとの反応の前にカルバメートへ基を変換することによりカルバメートに変換することができる基というよりもむしろ、カルバメート基を有する化合物として使用することができる。
【0026】
このようなポリマーは、遊離基重合可能な少なくとも1の炭素−炭素の二重結合を有するエチレン性不飽和モノマーから製造することができる。具体的なエチレン性不飽和モノマーは、3〜5個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、たとえばアクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸、およびこれらの酸のエステル、ニトリルおよびアミド、4〜6個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、およびこれらの酸の無水物、モノエステルおよびジエステル、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、および芳香族もしくはヘテロ環式脂肪族ビニル化合物を含むが、これらに限定されない。カルバメート官能性のエチレン性不飽和モノマー、環式カーボネート官能性のエチレン性不飽和モノマー、および/またはイソシアネート官能性のエチレン性不飽和モノマーもまた使用することができるが、最も有利にはその他のエチレン性不飽和モノマーと組み合わせて使用される。アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸の適切なエステルの具体例は、1〜20個の炭素原子を有する飽和脂肪族および脂環式アルコールとの反応からのエステル、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、ステアリル、スルホエチル、およびイソボルニルアクリレート、メタクリレート、およびクロトネート、およびポリアルキレングリコールアクリレートおよびメタクリレートを含むが、これらに限定されない。官能基はアクリルモノマーのエステル部分に組み込むことができる。たとえばこのようなポリマーを形成するために使用することができるヒドロキシ官能性アクリルモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートなどを含み、アミノ官能性アクリルモノマーは、t−ブチルアミノエチルメタクリレートおよびt−ブチルアミノ−エチルアクリレートを含み、酸官能性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、およびイタコン酸を含み、エポキシド官能性モノマーは、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレート、エチレン性不飽和イソシアネートモノマー、たとえばメタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(American CyanamidからTMI(登録商標)として市販されている)およびイソシアナトエチルメタクリレートを含む。環式カーボネートエチレン性不飽和モノマーは、当業界では周知であり、かつ(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルメタクリレートを含む。その他のエチレン性不飽和重合性モノマーの代表的な例は、フマル酸、マレイン酸およびイタコン酸の無水物、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、およびt−ブタノールとのモノエステル、およびジエステルのような化合物を含むが、これらに限定されない。重合性ビニルモノマーの代表例は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、たとえばビニルエチルエーテル、ビニルハロゲン化物およびビニリデンハロゲン化物、およびビニルエチルケトンのような化合物を含むが、これらに限定されない。芳香族またはヘテロ環式脂肪族ビニル化合物の代表例は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、および2−ビニルピロリドンのような化合物を含むが、これらに限定されない。代表例は、アクリル酸およびメタクリル酸のアミドおよびアミノアルキルアミド、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを含む。
【0027】
カルバメート官能性アクリルポリマーを製造するための1つの方法は、モノマーのエステル部分にカルバメート官能性を有するアクリルモノマーを製造することである。このようなモノマーは当業界では周知であり、かつたとえばUS特許第3,479,328号、第3,674,838号、第4,126,747号、第4,279,833号、および4,340,497号、第5,356,669号およびWO94/10211号に記載されており、これらの開示をここで参照することにより取り入れるものとする。合成の1つの方法は、ヒドロキシ官能性モノマーとシアン酸(これは尿素の熱分解により形成されてもよい)との反応によるカルバモイルオキシカルボキシレート(つまりカルバメート変性された(メタ)アクリレート)の形成に関する。もう1つの合成方法は、α,β−不飽和酸エステルをヒドロキシカルバメートエステルと反応させてカルバモイルオキシカルボキシレートを形成する反応である。別の技術は、第一級もしくは第二級アミンもしくはジアミンを、環式カーボネート、たとえばエチレンカーボネートと反応させることによりヒドロキシアルキルカルバメートを形成することに関する。次いでヒドロキシアルキルカルバメートのヒドロキシル基を、アクリル酸またはメタクリル酸との反応によりエステル化してモノマーを形成する。カルバメート変性されたアクリルモノマーを製造する別の方法は従来技術に記載されており、同様に使用することができる。次いで所望であれば、従来技術から周知の技術により、アクリルモノマーをエチレン性不飽和モノマーと一緒に重合させることができる。
【0028】
カルバメート官能性アクリルポリマーを製造するための別の経路は、US特許第4,758,632号に記載されているように、すでに形成されているポリマー、たとえばアクリルポリマーを、別の成分と反応させてカルバメート官能基が主鎖に付加されているポリマーを形成することであり、その開示をここで参照することにより取り入れるものとする。第二の成分として使用することができるアクリルポリマーを製造するための1つの技術は、ヒドロキシ官能性のアクリルポリマーの存在下に尿素を熱分解して(アンモニアおよびHNCOを放出し)、カルバメート官能性のアクリルポリマーを形成することに関する。別の技術は、ヒドロキシアルキルカルバメートのヒドロキシル基をイソシアネート官能性アクリルモノマーもしくはビニルモノマーのイソシアネート基と反応させてカルバメート官能性のアクリル化合物を形成することに関する。イソシアネート官能性アクリル化合物は従来技術において公知であり、たとえばUS特許第4,301,257号に記載されており、その開示をここで参照することにより取り入れるものとする。イソシアネートビニルモノマーは従来技術において周知であり、かつ不飽和m−テトラメチルキシレンイソシアネートおよびイソシアナトエチルメタクリレートを含む。さらに別の技術は、環式カーボネート官能性アクリル化合物の環式カーボネート基をアンモニアと反応させてカルバメート官能性アクリル化合物を形成するものである。環式カーボネート官能性のアクリルポリマーは従来技術において公知であり、かつたとえばUS特許第2,979,514号に記載されており、その開示をここで参照することにより取り入れるものとする。別の技術は、ヒドロキシ官能性アクリルポリマーをアルキルカルバメートでカルバモイルエステル交換することである。より困難であるが、可能なポリマーの製法は、アクリルポリマーをヒドロキシアルキルカルバメートによりエステル交換することである。
【0029】
次いでアクリルポリマーの第一級カルバメート基を、たとえば上記の方法で構造(III)の基に変換する。
【0030】
ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、およびエポキシ樹脂は、同様に第一級カルバメート基、第一級アミド基、第一級ウレア基、および/または第一級チオウレア基を有するポリマーまたはオリゴマーを準備し、次いでこれらの基を式(I)の官能基に変換するか、または式(I)の官能基を1もしくは複数有するモノマーを使用してこのようなポリマーまたはオリゴマーを製造することにより製造することができる。
【0031】
1つの実施態様では、該材料は、エポキシ基をカルボン酸基と反応させ、得られたヒドロキシル基をすでに記載した方法または従来技術において公知の方法によりカルバメート基へと変換する工程により製造されるハイパーブランチ状の、官能性材料である。特にハイパーブランチ状の官能性材料は、その構造中にハイパーブランチ状の、もしくは星形のポリオールコアを有するカルバメート官能性樹脂であり、第一の鎖の延長はポリカルボン酸または環式無水物に基づいたものであり、第二の鎖の延長は、エポキシド含有化合物に基づいたものであり、かつコア、第二の鎖の延長、または両方にカルバメート官能基を有している。このようなハイパーブランチ状の化合物は、次いで、そのコアとしてポリオールの残基を有しており、ポリカルボン酸または環式無水物の残基は、その第一の延長として、およびエポキシドの残基は、その次の延長として有している。それぞれのエポキシド環は、内部の、もしくは外部の炭素において開いてもよく、そのような反応生成物は異性体の混合物となる。
【0032】
カルバメート官能性を有する星形もしくはハイパーブランチ状のコアをベースとするカルバメート官能性樹脂は、コアと、カルバメート基、およびコアのヒドロキシル基と反応性の官能基を有する化合物とを反応させることによりコアに導入することにより製造することができる。あるいはこれはポリカルボン酸または無水物およびエポキシ化合物を用いた一連の延長の工程とカルバモイル化により導入することができる。星形のコアは、星形のポリオールをベースとする構造であってもよい。星形のポリオールは、3以上の第一級もしくは第二級ヒドロキシル基を有するモノマーのポリオールである。有利な実施態様では、星形のポリマーは、4以上のヒドロキシル基を有する。星形のポリマーの例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、テトラキス(2−ヒドロキシエチル)メタン、ジグリセロール、トリメチロールエタン、キシリトール、グリシトール、ズルシトールおよびスクロースを含むが、これらに限定されない。星形のポリマーの混合物もカルバメート官能性樹脂の星形のコアを形成することができる。
【0033】
ハイパーブランチ状のコアは、ハイパーブランチ状のポリオールをベースとする構造である。ハイパーブランチ状のポリオールは、2以上のヒドロキシル基を有する第一の化合物と、1のカルボキシル基および2以上のヒドロキシル基を有する第二の化合物との反応により製造される。第一および第二の化合物を反応させて、第一世代のハイパーブランチポリオールを製造することができる。あるいは、第二の化合物を第一世代のハイパーブランチポリオールと反応させて第二世代を形成し、かつ所望であれば、引き続き生成することができる。有利には第一世代または第二世代のハイパーブランチポリオールを、カルバメート官能性樹脂のハイパーブランチ状のコアとして使用する。
【0034】
第一の化合物は、脂肪族、脂環式、または芳香族のジオール、トリオール、またはテトラオール、糖アルコール、たとえばソルビトールまたはマンニトール、ジペンタエリトリトール、α−アルキルグリコシド、たとえばα−メチルグリコシド、または最大で約8000の分子量を有するアルコキシル化ポリマー(これはアルキレンオキシドまたはその誘導体と、上記のアルコールのいずれかからの1もしくは複数のヒドロキシル基との反応により製造される)が適切である。これらの混合物もまた、第一の化合物として使用することができる。第一の化合物として適切なジオールは、2〜18個の炭素原子を有する直鎖ジオールを含む。その例は、1,3−プロパンジオール、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールを含むが、これらに限定されない。ジオールは、分枝鎖状であってもよく、たとえばジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2−プロピル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、トリメチルヘキサン−1,6−ジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールである。その他の適切なジオールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含むが、これらに限定されない。環式脂肪族ジオール、たとえばシクロヘキサンジメタノールおよびペンタエリトリトールの環式ホルマール、たとえば1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノールを使用することもできる。芳香族ジオール、たとえば1,4−キシリレングリコールおよび1−フェニル−1,2−エタンジオール、ならびに多官能性フェノール化合物およびアルキレンオキシドまたはこれらの誘導体の反応生成物をさらに使用することができる。ビスフェノールA、ヒドロキノン、およびレゾルシノールもまた使用することができる。エステルタイプのジオール、たとえばネオペンチルヒドロキシピバレートも適切なジオールである。1,2−ジオールの代替として、相応する1,2−エポキシドまたはα−オレフィンオキシドを使用することができる。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、およびスチレンオキシドは、このような化合物の例として使用することができる。適切なトリオールは、3つの第一級ヒドロキシル基を有していてよい。トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、および3,5,5−トリメチル−2,2−ジヒドロキシメチルヘキサン−1−オールは、このタイプのトリオールの例である。その他の適切なトリオールは、2つのタイプのヒドロキシル基、つまり第一級ならびに第二級ヒドロキシル基を有するトリオールであり、たとえばグリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオールである。環式脂肪族および芳香族のトリオールおよび/または相応するアルキレンオキシドとの付加物またはこれらの誘導体を使用することも可能である。第一の化合物として使用するために適切なテトラオールは、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、ジグリセロールおよびジトリメチロールエタンを含むが、これらに限定されない。環式脂肪族および芳香族のテトラオールならびにアルキレンオキシドとの相応する付加物またはこれらの誘導体を使用することも可能である。
【0035】
ハイパーブランチポリオールを製造するために使用される第二の化合物は、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する一官能性カルボン酸であってよい。その例は、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(ジメチロールプロピオン酸)、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、またはフェニル環に直接下がっている(pendant)少なくとも2つのヒドロキシル基(フェノールのヒドロキシル基)を有するα−フェニルカルボン酸、たとえば3,5−ジヒドロキシ安息香酸を含むが、これらに限定されない。
【0036】
ハイパーブランチポリオールは、第一の化合物と第二の化合物とをエステル化条件下で反応させることにより製造することができる。反応の温度は一般に0〜300℃、有利には50〜280℃であり、最も有利には100〜250℃である。第一世代の中間体は、第一の化合物と第二の化合物とを第一の化合物のヒドロキシル基対第二の化合物のカルボキシル基を、約1:2〜約2:1の当量のモル比で反応させることにより製造される。有利にはこの当量比は、約1:1.5〜約1.5:1であり、さらに有利には約1:1.2〜1.2:1である。第一世代の中間体、およびその後の任意の世代の官能性および多分散性は、それぞれの工程における反応体のヒドロキシル基対カルボキシル基の当量比次第である。ハイパーブランチポリオールの官能性は、第一世代であろうとその後の世代であろうと、4以上のヒドロキシル基である。広い範囲の多分散性を有するハイパーブランチポリオールを使用することができる。多分散度が約2.5より小さい、有利には約2.0より小さい、および最も有利には約1.8より小さい場合に有利である。
【0037】
コアのポリオールは、上記のとおり星形であってもハイパーブランチ状であっても、次にポリカルボン酸またはその無水物と反応して、エステル結合と遊離カルボキシル基を有する第一の鎖の延長を形成する。ポリカルボン酸またはその無水物として有利であるのは、環式カルボン酸無水物である。無水物はこの工程にとって有利である。というのも、開環エステル化は、開環反応により放出されたカルボキシル基を有するコアポリオールの残りのヒドロキシル基の反応よりも早いからである。結果として第一の鎖の延長は、酸の半エステルであり、これは重合またはポリエステル形成をほとんど伴わない。適切な無水物は、隣接炭素にカルボキシル基を有するジカルボン酸の無水物を含むが、これらに限定されない。無水物は、脂肪族、環式脂肪族または芳香族であってよい。その例は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸および無水トリメリット酸を含むが、これらに限定されない。本発明において使用することができるその他の無水物は、無水アジピン酸、無水グルタル酸、無水マロン酸などを含むが、これらに限定されない。ポリカルボン酸または無水物とコアポリオールとの反応により、カルボキシル官能性を有し、コアポリオールの未反応のヒドロキシル基に起因する複数の第一もしくは第二ヒドロキシル基を有していてもよい第一の中間体が形成される。化学量論は、コアポリオールの少なくとも1の第一級ヒドロキシル基が、ポリカルボン酸または無水物と反応するように選択される。有利にはコアポリオールの少なくとも2つのヒドロキシル基が反応する。いくつかの実施態様では、コアポリオールのヒドロキシル基対ポリカルボン酸または無水物のカルボキシル基のモル比は、約1:1であるので、実質的にコアポリオールのすべてのヒドロキシル基がエステル化される。
【0038】
次いで、上記のとおり、少なくとも1のカルボキシル基および場合により第一級または第二級ヒドロキシル基を有する第一の中間体を、エポキシド基を有する化合物と反応させて、ネオ酸、たとえばネオデカノン酸またはネオノナン酸のグリシジルエステル、または脂肪酸の混合物のグリシジルエステル、またはこれらの組合せ(これらの限定されない)を基礎とする鎖延長を有する第二の中間体を形成する。エポキシド化合物と、第一の中間体との反応は有利には触媒を用いずに実施する。この場合、エポキシド含有化合物のエポキシド基は、第一の中間体中に存在していてよい第一級もしくは第二級ヒドロキシル基よりも、カルボキシル基とより迅速に反応する。従って、比較的クリーンな鎖延長が達成されて、エポキシドの開環に由来する第二級ヒドロキシル基、ならびに第一の中間体の形成において、反応しなかった第一級または第二級ヒドロキシル基を有する第二の中間体が形成される。反応条件を選択することによって、エポキシド基はいずれの方向でも開環することが可能になり、その結果、公知の反応条件に従って生成物の混合物が生じる。有利にはエポキシを含有する化合物を、第一の中間体のカルボキシル基に対して約1:1のモル比で反応させる。しかし、カルボキシル基が最終生成物中で所望される(たとえばアミンとの塩を形成して水分散性の被覆を得るために)場合には、カルボキシル官能性の第一の中間体の過剰を使用してもよい。
【0039】
基(II)、特に第一級カルバメート基
【化15】

を有する樹脂を製造するためには、たとえば第二の中間体をホスゲンと反応させ、次いでアンモニアと反応させて、第一級カルバメート基を有する化合物を形成することにより、あるいは第二の中間体とホスゲンの反応、および次いで第一級アミンとの反応により、第二級カルバメート基を有する化合物を形成することにより、カルバメート基を第二の中間体に加えてもよい。あるいは、第二の中間体は、1もしくは複数の尿素と反応させて、第二級カルバメート基を有する化合物(つまりN−アルキルカルバメート)を形成してもよい。この反応は、第二の中間体および尿素の混合物を加熱することにより完了される。別の技術は、第二の中間体とモノイソシアネート、たとえばメチルイソシアネートとの反応により、第二級カルバメート基を有する化合物を形成することである。別の例では、第二の中間体を、尿素の熱分解により形成されたシアン酸と反応させるか、または第二の中間体のヒドロキシル基とエステル交換を行うことができるカルバメート基を有する化合物と反応させる。これらは、メチルカルバメート、ブチルカルバメート、プロピルカルバメート、2−エチルヘキシルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、フェニルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメート、ヒドロキシエチルカルバメートなどを含むが、これらに限定されない。第二の中間体とカルバメート化合物との間のエステル交換反応は、上記のとおりの典型的なエステル交換条件下で行うことができる。次いで、ハイパーブランチ状もしくは星形のオリゴマーの第一級カルバメート基を、たとえば上記に記載したプロセスのいずれかによって構造(III)の基へと変換する。
【0040】
いくつかの実施態様では、式(I)の官能基を有するオリゴマーまたはポリマーは、化学線によって硬化可能な官能基も有している。ここで使用する化学線とは、電磁線、たとえば近赤外線(NIR)、可視光、紫外線またはX線、特に紫外線、および粒子線、たとえば電子線を意味する。基の例は、化学線に曝露された時に反応性になり、他の活性化された同種の結合と、遊離基および/またはイオンのメカニズムに従って進行する重合反応および/または架橋反応を開始する結合を有する基を含む。適切な結合の例は、炭素−水素単結合または炭素−炭素、炭素−酸素、炭素−窒素、炭素−リンまたは炭素−ケイ素の単結合または二重結合である。これらのうち、炭素−炭素二重結合は特に有利である。簡潔にするため、これらを以下では「二重結合」とよぶ。1より多くの二重結合を使用する場合には、二重結合は共役していてもよいが、いくつかの実施態様では、二重結合が個別に存在する、特にそれぞれが、該当する基の末端に存在する場合に有利である。
【0041】
1分子あたり平均して、化学線により活性化することができる基を1より多く使用する場合には、これらの基は、互いに構造が異なっていてもよいし、同じ構造のものであってもよい。これらの基が互いに構造が異なるものである場合、これは2、3、4またはそれ以上の、しかし特に2のモノマークラスから得られる、化学線により活性化することができる基を2、3、4またはそれ以上、しかし特に2つ使用することを意味している。適切な基の例は、(メタ)アクリレート、エタクリレート、クロトネート、シンナメート、ビニルエーテル、ビニルエステル、ジシクロペンタジエニル、ノルボルネニル、イソプレニル、イソプロペニル、アリルまたはブテニル基、ジシクロペンタジエニルエーテル、ノルボルネニルエーテル、イソプレニルエーテル、イソプロペニルエーテル、アリルエーテルまたはブテニルエーテル基、またはジシクロペンタジエニルエステル、ノルボルネニルエステル、イソプレニルエステル、イソプロペニルエステル、アリルエステルまたはブテニルエステル基であるが、しかし特にアクリレート基である。これらの基は、ウレタン、尿素、アロファネート、エステル、エーテルおよび/またはアミド基を介して、しかし特にはエステル基を介してそれぞれの母体構造に結合することができる。通常、これは上記のとおり、慣用の、かつ周知のポリマー類似反応、たとえばラテラルなグリシジル基と、酸基を有するオレフィン性不飽和モノマーとの反応、ラテラルなヒドロキシル基と、これらのモノマーのハロゲン化物との反応、ヒドロキシル基と、二重結合を有するイソシアネート、たとえばビニルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネートおよび/または1−(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−3−(1−メチルエチル)ベンゼン(CYTECからのTMI(登録商標))との反応、またはイソシアネート基と、ヒドロキシル基を有するモノマーとの反応の結果として生じる。
【0042】
硬化性組成物、特に塗料組成物は、式(I)の官能基を含む材料を含み、その際、同一の材料であるか、または式(I)の官能基と硬化条件下で反応性の官能基を含む第二の材料である。同一の材料が、式(I)の官能基と、硬化条件下に式(I)の基と反応する基の両方を含んでいる場合には、この材料は、自己架橋性とよばれる。いくつかの実施態様では、硬化条件下で式(I)の官能基と反王制の官能基は、活性な水素基である。いくつかの実施態様では、活性な水素基を有する材料は、架橋剤として作用する。1実施態様では、硬化性材料は、式(III)の基が結合している炭素原子に対してβ位の炭素原子にヒドロキシル基を有する式(III)の官能基を有する。
【0043】
基(I)を有するポリマー、オリゴマーまたは化合物は、被覆組成物、特に熱硬化性被覆組成物に組み込まれてもよい。このような被覆組成物は、自動車および工業用品を被覆するために使用することができる。工業用および自動車用の被覆は、単層のトップコート、およびベースコート/クリアコートの複合被覆を含む、プライマーまたはトップコートであってよい。ここに含まれうる架橋剤と官能的に反応する適切な例は、エポキシド基、活性水素を含有する官能基、たとえばカルバメート基、末端尿素基ヒドロキシル、アミン、チオール、および活性化されたメチレン基、たとえば次の構造
【化16】

を有するものであるが、これらに限定されない。これらの基は、組み合わせて使用することができる。このような活性水素基を有する架橋可能な材料は、化合物、オリゴマー、またはポリマーであってよい。特定の実施態様では、(a)基(I)を有する材料、および(b)このような活性水素基を有する架橋可能な材料、の少なくとも1つが、1分子あたり、そのような官能基を平均して少なくとも3つ有し、他方の(a)および(b)が、そのような官能基を少なくとも2つ有している。
【0044】
活性な水素基を有する材料の非限定的な例は、ビニルポリマー、たとえばアクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、および非ポリマー材料、たとえばエステル、官能性アルカン、脂肪酸二量体、および脂肪酸二量体の誘導体、および上記の活性な水素を含有する官能基のいずれかを有するものである。
【0045】
被覆組成物はさらに、顔料、充填材、溶剤、触媒、安定剤、スリップ助剤、レオロジー調節剤、分散剤、定着剤、UV吸収剤、立体障害アミン光安定剤などのその他の慣用の材料を含有していてもよい。顔料または充填材は、任意の有機または無機化合物または着色された材料、金属またはその他の無機フレーク材料、たとえば真珠光沢雲母フレーム顔料または金属フレーク顔料、たとえばアルミニウムフレーク、およびこのような被覆に通常含有される慣用の種類のその他の材料である。顔料およびその他の不溶性の粒子状化合物、たとえば充填材は、通常、組成物中で、結合剤成分の全固体質量に対して、1%〜100%の量で使用される(つまり顔料対結合剤の比は、0.1:1である)。非フレーク状の充填材または顔料は、まず慣用の技術、たとえばサンド・グラインド、ボールミル、磨砕機、2本のロールミルにより分散樹脂を用いてミルベースを形成して顔料を分散させることにより導入することができる。次いで、このミルベースを被覆組成物に添加することができる。
【0046】
場合により硬化性組成物中に組み込むことができる触媒の非限定的な例は、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニル酸ホスフェート、モノブチルマレエート、ブチルホスフェート、およびヒドロキホスフェートエステルを含む。強酸触媒はしばしば、たとえばアミンによってブロックされている。本発明の組成物中で有用なその他の触媒は、ルイス酸、亜鉛塩、およびスズ塩(これらにはジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジステアレート、ジプロピルスズジオクトエートおよびジオクチルスズオキシドが含まれる)、脂肪族カルボン酸ビスマス塩、たとえばエチルヘキサノン酸ビスマス、塩基性サリチル酸ビスマス(実験式C7H5O4Biを有する)、オクタン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、タル油酸亜鉛、カルボキシル基中に約8〜14個の炭素を有するカルボン酸亜鉛、および酢酸亜鉛である。
【0047】
本発明の被覆組成物は、単層の顔料着色されたトップコート組成物、ならびにクリアコートおよびベースコートの2層のトップコート組成物を含むプライマーまたはトップコート組成物であってよい。ベースコート−クリアコート トップコート中で、顔料着色された被覆の下層、つまりベースコートは、透明な被覆であるクリアコートの外側層によって被覆される。ベースコート−クリアコート トップコートは、魅力的でスムーズな、且つ光沢のある仕上げをもたらし、かつ一般に改善された性能を有する。被覆組成物は、水性であっても、溶剤ベースであっても、あるいは粉体塗料であってもよく、粉体塗料の場合には、乾燥粉末または水性の粉末スラリーであってよい。クリアコート被覆組成物は透明である。
【0048】
被覆組成物は、従来技術から周知の多数の技術の任意の技術により支持体に適用することができる。これらは、たとえば噴霧被覆、浸漬被覆、ロール塗り、カーテンコートなどである。自動車の適用のためには、更なる1もしくは複数の被覆層が、有利には噴霧被覆により、特に静電噴霧被覆法により適用される。1ミル(約25μm)以上の被覆層が通常、若干の溶剤または水性媒体が蒸発するか、または適用される層から「フラッシュ」されるために十分な時間によって分離され、2以上の塗装(通過)で適用される。フラッシュは、周囲温度でも高めた温度でもよく、たとえばフラッシュは放射熱を使用してもよい。適用される被膜は、0.5ミル〜3ミル(乾燥膜厚)であってよく、かつ所望の最終被覆厚を得るために十分な被覆回数が適用される。
【0049】
硬化したプライマー層は、トップコート層が適用される前に硬化することができる。硬化したプライマー層は、約0.5ミル〜約2ミルの厚さであり、有利には約0.8ミル〜約1.2ミルの厚さであってよい。
【0050】
カラー・プラス・クリアートップコートは、通常、ウェット・オン・ウェットにより適用される。組成物は、上記のとおり、フラッシュにより分離された塗装で適用され、その際、フラッシュは着色組成物の最後の塗装と、クリアコートの最初の塗装との間である。次いで2つの被覆層を同時に硬化させる。有利には硬化されたベースコートは厚さ0.5〜1.5ミルであり、かつ硬化したクリアコート層は、1〜3ミル、さらに有利には1.6〜2.2ミルの厚さである。
【0051】
あるいは、プライマー層およびトップコートを、「ウェット・オン・ウェット」で適用することができる。たとえばプライマー組成物を適用し、次いで適用された層をフラッシュし、次いでトップコートを適用してフラッシュし、次いでプライマーおよびトップコートを同時に硬化することができる。ここでも、トップコートは、ウェット・オン・ウェットで適用されたベースコート層およびクリアコート層を含む。プライマー層は、硬化されていない電着コート被覆層に適用することもでき、全ての層を一緒に硬化させてもよい。
【0052】
ここに記載されている被覆組成物を有利には、被覆層を硬化するための条件に供する。種々の硬化法を使用することができるが、熱硬化が好ましい。一般に、熱硬化は、被覆された物品を、主として放射熱源によりもたらされる高めた温度に供することによって行われる。硬化温度は、特定の結合剤成分に依存して変化するが、しかしこれらは一般に90℃〜180℃の範囲である。硬化時間は、使用される特定の成分、および物理的なパラメータ、たとえば層の厚さ次第であるが、一般的な硬化時間は15〜60分である。
【0053】
本発明をさらに、以下の実施例において記載する。これらの例は単に説明のためにすぎず、本願明細書および特許請求の範囲に記載されている発明の範囲を限定するものではない。全ての部は、その他の指示がない限り質量部である。
【0054】
例1:二官能性アルコキシカルボニルアミノ材料
US6962730の記載に従って製造した、310の当量を有するジカルバメート100g、塩化パラジウム0.6g、塩化銅(II)4.3g、二塩基性リン酸ナトリウム4.8g、1−ブタノール500gの混合物を、一酸化炭素100PSIで2回、圧入し、次いで放圧した。次いでこの系を、97%の一酸化炭素および3%の酸素の混合物で1000psigまで加圧し、80℃で48時間加熱した。次いで反応混合物を室温まで冷却させ、放圧した。次いで反応混合物を濾過し、かつ過剰のブタノールを、真空蒸留により除去して(温度を40℃より低く保ちながら)、2つのブトキシカルボニルアミノ官能基を有し、410g/equの当量を有する生成物が得られた。
【0055】
例2:アルコキシカルボニルアミノ官能性モノマー
2−カルバメートエチルメタクリレート100g、塩化パラジウム1.0g、塩化銅(II)7.2g、二塩基性リン酸ナトリウム8.0g、1−ブタノール800gの混合物を、一酸化炭素100PSIで2回加圧し、次いで放圧した。次いでこの系を97%の一酸化炭素および3%の酸素で1000psigまで加圧し、80℃で48時間加熱した。次いで反応混合物を室温まで冷却し、次いで放圧した。次いで反応混合物を濾過した。4−メトキシフェノール0.5gを添加し、かつ過剰のブタノールを真空蒸留により除去して(温度を40℃より低く保ち、かつ少量の酸素をブリードしながら)、2−ブトキシカルボニルアミノエチルメタクリレートが得られた。
【0056】
例3:アルコキシカルボニルアミノポリマー材料
蒸留液を除去するための装置を備えた反応器に、US5336566の記載により製造した、366の当量を有するジカルバメート100g、ブタノール1000g、メタノール中のナトリウムメトキシドの30%溶液475g、ナトリウムメトキシド79gおよびジメチルカーボネート245gを95℃で2時間加熱した。次いで反応混合物を室温に冷却させ、水中の硝酸30%の溶液350gを添加した。反応混合物を攪拌し、水層を除去した。次いで反応混合物を、水100gでさらに2回洗浄した。次いで溶剤を有機相から除去して、混合されたメチルおよびブチルトリス(アルコキシカルボニルアミノ)イソシアネートベースのポリマーが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基(I)
【化1】

[式中、Rは、1〜12個の炭素を有し、かつ酸素、窒素および硫黄から選択される1もしくは複数のヘテロ原子を有していてよい基である]を有する材料を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
硬化性組成物が、被覆組成物である、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
官能基(I)が、電気陰性原子に結合している、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに基(II)
【化2】

を含む、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項5】
官能基(I)を有する材料が、さらに基(II)を含む、請求項4記載の硬化性組成物。
【請求項6】
Rが、1〜4個の炭素を有する、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項7】
Rが酸素を含む、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記材料が、式(I)の官能基を2〜8個有する、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記材料が、ビニルポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ、ポリアミド、ポリカーボネート、これらのグラフトポリマーおよびブロックポリマー、および星形ポリマーからなる群から選択される成分である、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記材料が、アクリルポリマーまたは(メタ)アクリレートモノマーである、請求項9記載の硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、エポキシド基、活性水素を有する官能基、および活性化されたメチレン基からなる群から選択される官能基(b)を有する、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項12】
ポリマーまたはオリゴマーが、複数の官能基(b)を含み、かつ化合物が複数の官能基(I)を含む、請求項11記載の硬化性組成物。
【請求項13】
化合物が、複数の官能基(b)を含み、かつポリマーまたはオリゴマーが、複数の官能基(I)を含む、請求項11記載の硬化性組成物。

【公表番号】特表2011−509325(P2011−509325A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541513(P2010−541513)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/088460
【国際公開番号】WO2009/088834
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】