説明

硬化性オルガノポリシロキサン組成物、それを含むフラットパネルディスプレイ用シール剤、及びフラットパネルディスプレイ素子

【課題】室温及び紫外線照射下で硬化し、優れた密着性及び離型性を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記(I)成分100質量部と(II)成分1〜200質量部との縮合反応生成物であるオルガノポリシロキサン100質量部、(B)下記一般式(1)
【化1】

で示される(メタ)アクリル官能性アルコキシシラン1〜50質量部、(C)縮合反応用触媒0.01〜10質量部、及び(D)光開始剤0.01〜10質量部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温および紫外線で硬化する硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関し、特に、電気・電子部品及びそれらの回路のコーティング剤や、フラットパネルディスプレイ用シール剤の用途に好適な硬化性オルガノポリシロキサン組成物、それを含むフラットパネルディスプレイ用シール剤、及びフラットパネルディスプレイ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、室温でゴム状弾性体を与える室温硬化性シリコーンゴム組成物(以下、「RTV」という)として種々のものが知られている。RTVから得られる硬化ゴムは、他の有機系ゴムに比較して優れた耐候性、耐久性、耐熱性、耐寒性等を具備することから種々の分野で使用され、特に建築分野において、ガラス同志の接着、金属とガラスとの接着、及びコンクリート目地のシール等の用途に多く用いられている。
また、電気・電子部品用の接着・コーティング剤として、エポキシ樹脂等の被着体に対する接着性等の点から脱アルコールタイプRTVが多用される傾向にある。近年、急速に増産されているフラットパネルディスプレイのシール剤としても、同様に脱アルコールタイプRTVが多用されている。
【0003】
ところで、電気、電子工業の生産ラインのスピード向上に伴い、これらのラインでシール剤等として使用される硬化性組成物について、硬化速度の向上が要求されている。そこで、従来からの縮合型、加熱硬化型、及び白金付加反応型等のシリコーンゴム硬化性組成物に比べ、硬化速度の速い紫外線硬化型のオルガノポリシロキサン組成物が開発されている。例えば、この紫外線硬化型の組成物として、アクリル基含有ポリシロキサンと増感剤とからなる組成物が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この組成物の場合、ゴム状弾性体の硬化物を得るため、ベースポリマーとして高分子量の線状ポリマーを用いる必要がある。このためオルガノポリシロキサンの末端に位置するアクリル基量が相対的に非常に少なくなり、硬化性が低下すると共に、組成物のうち空気と接している表面部分が酸素の硬化阻害によって殆ど硬化しないという欠点がある。従って、この種の光硬化型組成物としては、比較的アクリル基量の多いレジン状のものしか実用化されておらず、得られる硬化物は、引っ張り強さに劣り、また組成物自体も保存性に欠けるという問題があった。
【0004】
この欠点を改善するため、本発明者等は先に、アルコキシ−α−シリルエステルという新規な化合物を、(メタ)アクリル官能性アルコキシシラン、2価の錫系化合物、光重合開始剤、及び硬化触媒と組合せた組成物を提案している(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特公昭53−36515号公報
【特許文献2】特許第2639286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2記載の組成物の場合、実用可能なシリコーン弾性体を硬化物として与えるという利点はあるが、この硬化物のガラスや金属への密着性が不充分であるという問題があり、各種の接着用途やシール用途に適しているとはいえないことが判明した。
一方、近年、フラットパネルディスプレイパネルのガラス基板上の電極と該電極上に接続されるフィルム回路とを含む領域のシールにおいては、完成したパネルの修理や補修のため、シールに用いた硬化物をパネル基材から除去する必要があり、この際、基材表面から硬化物が界面剥離でき、表面に残存しないことが求められる。
しかしながら、従来の技術において、基材表面から界面剥離して表面に残存しない硬化物は開発されていない。例えば、特許文献2記載の組成物のガラスや金属への密着性を改善するため、アミノ基又はアクリル基を有する有機ケイ素化合物を添加することが想定されるが、このようにすると、組成物が基材に接着され、剥離時に基材表面に硬化物が残存する。
【0007】
従って本発明の目的は、室温及び紫外線照射下で硬化し、保存安定性が良好であり、ガラス、金属、プラスチックなどに対して優れた密着性及び離型性を有する硬化物を形成し得る硬化性オルガノポリシロキサン組成物、それを含むフラットパネルディスプレイ用シール剤、及びラットパネルディスプレイ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、上記の目的を達成するために、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(A)下記(I)成分100質量部と(II)成分1〜200質量部との縮合反応生成物であるオルガノポリシロキサン100質量部、但し、(I)成分はRSiO1/2単位(式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表わす)及びSiO4/2単位を繰り返し単位とし、Si04/2単位1モルに対するRSiO1/2単位の割合が0.5〜1.2モルであり、更に、Si04/2単位1モルに対し、RSiO2/2単位及びRSiO3/2単位(各式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表わす)のうち少なくとも1つを各単位がそれぞれ1.0モル以下で各単位の合計が1.0モル以下となるように有していてもよく、かつケイ素原子に結合したヒドロキシ基を6.0質量%未満有するオルガノポリシロキサンであり、(II)成分は官能基含有シリル基で分子鎖末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサンであり、(B)下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは二価の有機基、R及びRはそれぞれ同一又は異なる非置換又は置換の一価炭化水素基、aは0〜2の整数である)で示される(メタ)アクリル官能性アルコキシシラン1〜50質量部、(C)縮合反応用触媒0.01〜10質量部、及び(D)光開始剤 0.01〜10質量部
を含む。
【0009】
前記(II)成分が下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、Xはそれぞれ独立の官能基、aは1〜3の整数、nは10以上の整数である)で表わされるジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0010】
本発明のフラットパネルディスプレイ用シール剤は、前記硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含む。
【0011】
本発明のフラットパネルディスプレイ素子は、前記フラットパネルディスプレイ用シール剤を、該ディスプレイのガラス基板上の電極と該電極上に接続されるフィルム回路とを含む領域のシールに用いたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、室温及び紫外線照射下で硬化し、保存安定性が良好であり、ガラス、金属、プラスチックなどに対して優れた密着性及び離型性を有する硬化物を形成し得る硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得られる。本発明は、特に、電気・電子部品乃至回路のコーティング剤、フラットパネル用シール剤に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る撥水剤組成物について説明する。本発明の撥水剤組成物は、以下の(A)〜(D)成分を必須として含む。
【0014】
[(A)成分]
(A)成分は、被着体への密着性や硬化物の強度を向上させ、下記(I)成分100質量部と(II)成分1〜200質量部との縮合反応生成物であるオルガノポリシロキサンからなる。
(I)成分は、RSiO1/2単位(式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表わす)及びSiO4/2単位を繰り返し単位とする。
Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソ−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、1−クロロ−2−メチルプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、特にメチル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Rはそれぞれ別の基でもよく、同一の基でもよい。
【0015】
(I)成分中のSi04/2単位1モルに対するRSiO1/2単位の割合は0.5〜1.2モルであることが必要であり、好ましくは0.65〜1.15モルの範囲である。RSiO1/2単位の割合が0.6モル未満であると、得られた硬化物の強度が不充分となり、1.2モルを超えると硬化物の透明性に劣ったものとなる。硬化物の透明性が劣ると、UV光が硬化物の深部まで到達し難くなり、深部硬化性が低下する。
【0016】
更に、(I)成分において、Si04/2単位1モルに対し、RSiO2/2単位及びRSiO3/2単位(各式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表わす)のうち少なくとも1つを各単位がそれぞれ1.0モル以下で各単位の合計が1.0モル以下となるように有していてもよい。さらに好ましくは、RSiO2/2単位及びRSiO3/2単位の各単位が0.2〜0.8モルで各単位の合計が1.0モル以下とする。
このような配合割合としては、Si04/2単位1モルに対し、RSiO2/2単位0.2モルとRSiO3/2単位0.7モルの組合せが例示される。
【0017】
(I)成分において、RSiO2/2単位とRSiO3/2単位の少なくとも一方が含有されていないと、組成物が樹脂となって、硬化前に溶液状とならずに作業性が低下する傾向にある。一方、RSiO2/2単位とRSiO3/2単位の各単位の含有量が1.0モルを超えるか、又は各単位の合計量が1.0モルを超えると、組成物の透明性が劣る傾向にある。
【0018】
(I)成分において、上記各単位のケイ素原子に結合したヒドロキシ基を6.0質量%未満有する。ヒドロキシ基は、上記(I)成分を共加水分解・縮合反応により調製する際に生成されてケイ素原子に結合する。ヒドロキシ基は、(I)成分と以下の(II)成分との縮合反応のために必要であり、その下限は0.1重量%以上であることが好ましい。好ましくは、ヒドロキシ基の含有量は0.2〜3.0重量%である。ヒドロキシ基の含有量が6.0重量%以上であると、得られた硬化物の硬度が高くなりすぎて、密着性が低下する。また、含有量が0.1重量%未満であると、得られた硬化物の強度が不充分となる場合がある。
【0019】
(I)成分は公知の方法により得ることができ、例えば、上記各単位に対応するアルコキシ基含有シラン化合物を有機溶媒中で共加水分解し縮合させて、実質的に揮発性分を含まないものとして得ることができる。
(I)成分を得るための具体的な方法としては、例えば、RSiOMeとSi(OMe)とを、所望によりRSi(OMe)及び/又はRSi(OMe)とともに、有機溶媒中で共加水分解し縮合させればよい(各式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表わし、Meはメチル基を表わす)。
上記有機溶媒としては、共加水分解・縮合反応により生成するオルガノポリシロキサンを溶解することのできるものが好ましく、典型的にはトルエン、キシレン、塩化メチレン、ナフサミネラルスピリット等を挙げることができる。また、上記有機溶媒を使用せず、その代わりに、以下の(II)成分であって23℃における粘度が20〜2,000mm/sであるジオルガノポリシロキサンを用いてもよい。
【0020】
(I)成分に係る各単位の含有モル比については、例えば、各単位に対応するメトキシシラン化合物の仕込みモル比を調整することによって適宜設定することができる。
又、(I)成分における上記ヒドロキシ基の含有量は、共加水分解・縮合反応の条件を調整することにより変化させることができる。
【0021】
(II)成分は、官能基含有シリル基で分子鎖末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサンであり、(II)成分は(I)成分と縮合反応する。
上記官能基としては、上記(I)成分のケイ素原子に結合したヒドロキシ基と縮合反応するものであれば、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基;およびメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基;ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロヘキサノキシム等のケトオキシム基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;N,N−ジメチルアミノキシ基、N,N−ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基等の加水分解性基が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基、アルコキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。
【0022】
(II)成分が下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、Xはそれぞれ独立の官能基、aは1〜3の整数、nは10以上の整数である)で表わされるジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソ−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、1−クロロ−2−メチルプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。
Xとしては、例えば上記した官能基を用いることができる。
【0023】
式(2)中のnは10以上の整数であるが、上記ジオルガノポリシロキサン((II)成分)の23℃における粘度が300,000mm/s以下、好ましくは100〜100,000mm/sの範囲の流体となるような数であることが好ましい。
【0024】
上記一般式(2)で表されるジオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、分子鎖両末端シラノール基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0025】
<(I)成分と(II)成分との縮合反応>
(A)成分は、(I)成分100質量部に対し、(II)成分を1〜200質量部、好ましくは(II)成分を5〜150質量部、特に好ましくは(II)成分を70〜120質量部配合し、縮合反応させることにより得ることができる。(II)成分の配合量が1質量部未満である場合、及び200質量部を超えた場合、得られた硬化物の密着性が損なわれる。
なお、上記したように、(I)成分を製造する際に有機溶媒を用いる代わりに上記(II)成分を用いた場合、(I)成分と(II)成分との縮合反応もその時に終了する。従って、この場合、(I)成分製造時の(II)成分の配合量が上記した範囲にあれば、製造後の(I)成分に別の(II)成分を加える必要はない。
【0026】
(I)成分と(II)成分との縮合反応においては、縮合反応触媒を用いることが好ましい。縮合反応触媒としては、チタン化合物、錫化合物、アミン化合物、アルカリ金属化合物等が挙げられるが、アミン化合物を用いることが好ましい。アミン化合物として具体的には、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア水等が例示される。
縮合反応触媒の配合量は、触媒としての有効量とすればよく、特に制限されないが、(I)成分と(II)成分の合計100質量部に対して、通常、0.05〜3.0質量部程度とすればよい。
【0027】
縮合反応温度は、特に限定されるものではないが、通常、1〜120℃、好ましくは10〜80℃の範囲とすればよい。反応時間も特に限定されないが、0.5〜12時間程度である。
縮合反応終了後は、必要に応じて、溶媒及び/または未反応のオルガノポリシロキサン、ジオルガノポリシロキサン、縮合反応触媒等を留去しても差し支えない。更に、縮合反応生成物の粘度を調整するために、末端がトリメチルシロキシ基やビニル基等で封鎖されたオルガノポリシロキサン又はオクタメチルシクロテトラシロキサン等の低分子環状シロキサン;脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;流動パラフィン;イソパラフィン;アクリル酸エステル等の光反応性希釈剤等を添加してもよい。このような粘度調整成分としては、23℃における粘度が5〜1,000mm/s程度のものを使用することが有効である。
【0028】
[(B)成分]
(B)成分は、本発明の組成物に紫外線硬化性を付与するものであり、例えば縮合反応によりベースとなるオルガノポリシロキサン中に組み込まれ、安定した紫外線硬化性を与える。
(B)成分は、下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは二価の有機基、R及びRはそれぞれ同一又は異なる非置換又は置換の一価炭化水素基、aは0〜2の整数である)で示される(メタ)アクリル官能性アルコキシシランである。
【0029】
としては、例えばアルキレン基を例示することができ、特に炭素原子数1〜6のアルキレン基が好適である。またR及びRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基を挙げることができ、これらの基のうち炭素原子数が1〜8のものが好適である。又、Rは必須の基ではない。
(B)成分の具体的な例としては、以下の各式
【化3】

で示される化合物を例示することができるが、これに限定されるものではない。
なお、(B)成分は式(1)に該当するものであれば、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明の組成物における(B)成分の配合割合は、(A)成分100質量部当たり、1〜50質量部とし、5〜30質量部とすることが望ましい。(B)成分の配合割合が1質量部未満であると組成物の紫外線硬化性が低下し、50質量部を超えると(B)成分のみ硬化し、密着性が損なわれる等の不都合を生じる。
【0031】
[(C)成分]
(C)成分は、(A)成分のシラノールと(B)成分のアルコキシ基との縮合反応を選択的に進行させる縮合反応用触媒である。
(C)成分としては、有機錫エステル化合物、有機錫キレート化合物、アルコキシチタン化合物、チタンキレート化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、グアニジル基を有するケイ素化合物、アミン化合物などの公知の触媒が挙げられる。
(C)成分の具体的な例としては、錫オクトエート、ジメチル錫ジバーサテート、ジメチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレートテトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ジイソプロポキシキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート、ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン、テトラメチルグアニジンプロピルトリメトキシシランを例示することができるが、これに限定されるものではない。
なお、(C)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本発明の組成物における(C)成分の配合割合は、(A)成分100質量部当たり、0.01〜10質量部とし、好ましくは0.1〜5質量部である。(C)成分の配合割合が0.01質量部未満であると、触媒としての能力が十分に発揮されず、10質量部を超えると、組成物の保存安定性が悪くなる等の不都合を生じる。
【0033】
[(D)成分]
(D)成分は、組成物を紫外線硬化させるために必要な光開始剤である。(D)成分としては、例えば、ベンゾイン及びその誘導体、ベンゾインアクリルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジル及びその誘導体、芳香族ジアゾニウム塩、アントラキノン及びその誘導体、アセトフェノン及びその誘導体、ジフェニルジスルフィド等の硫黄化合物、ベンゾフェノン及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、(C)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の組成物における(D)成分の配合割合は、(A)成分100質量部当たり、0.01〜10質量部とし、好ましくは0.1〜5質量部である。(D)成分の配合割合が0.01質量部未満であると、光開始剤としての能力が十分に発揮されず、10質量部を超えると、組成物の密着性が低下する等の不都合を生じる。
【0034】
[その他の成分]
本発明の組成物には、上記(A)〜(D)成分以外に、必要に応じ、一般に公知の充填剤、添加剤等を配合してもよい。充填剤としては、粉砕シリカ、煙霧状シリカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、湿式シリカなどが挙げられる。その他、ポリエーテル類等のチクソ性向上剤、防かび剤、抗菌剤等を配合してもよい。
【0035】
[組成物の調製]
本発明の組成物は、上記(A)成分を調整後、(B)〜(D)成分を添加し、好ましくは無水の状態でこれらを混合して調製することが出来る。
【0036】
<本発明の組成物の適用>
本発明の組成物は、フラットパネルディスプレイ用シール剤として好適に用いることができ、特に、図1に示すようなフラットパネルディスプレイ素子のシールに用いることが好ましい。
図1において、フラットパネルディスプレイ素子は、ガラス基板2とフィルム回路(TCP:Tape Carrier Package)8とを異方導電性接着剤(ACF)10で接着して構成されている。ガラス基板2の一方の面の中央部には表示画像部(例えば液晶ディスプレイの場合は液晶の画素)6が形成され、表示画像部6からガラス基板の端に向かって短冊状に電極4が延びている。電極4は通常、ITO(インジウム錫オキサイド)等の透明電極からなり、駆動回路の制御によって各画素に電圧を負荷して各画素をオンオフさせる。ガラス基板としては無アルカリガラスや石英ガラスを好適に用いることができる。
フィルム回路8は、透明電極4と図示しない駆動回路や外部電源とを接続し、例えば、銅箔回路やICをポリイミドフィルムや他の樹脂で覆ったフレキシブル回路である。
【0037】
本発明のフラットパネルディスプレイ用シール剤は、上記のようなガラス基板2、(透明電極)4、及びフィルム回路8をシール領域20とする部分を有効にシールすることができ、これらの素材(ガラス、(透明)電極、及びフィルム回路のフィルム)に対して密着性と離型性に共に優れる。
【0038】
<実施例>
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、実施例において示す「部」及び「%」は特に明示しない限り、質量部及び質量%を示す。
【実施例1】
【0039】
(A)成分の調製:温度計、撹拌棒、還流冷却管及び窒素導入管を備えた四口セパラブルフラスコを窒素置換した。次いで、(I)成分として、(CHSiO1/2単位およびSiO4/2単位からなり、{(CHSiO1/2単位/SiO4/2単位}で表されるモル比が0.74であり、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基含有量が1.62重量%であるオルガノポリシロキサンを用意した。(I)成分の固形分が50重量%となるようにトルエンに溶解した。(I)成分100部(トルエン溶液全体として100部であり、トルエン中の(I)成分単独は50部)に対し、(II)成分として23℃における粘度が20000mm2/sの両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサンを50部加え、均一に撹拌混合した後、アンモニア水0.5部を滴下して20℃で3時間縮合反応を行った。次いで、このものを120℃に加熱しながらトルエンおよび低分子量副生成物を除去し、固形分が50重量%となるように調整し、(A)成分を得た。
組成物の調製:上記(A)成分150部に対し、(B)成分(メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン )20部、(C)成分(錫オクトエート)0.5部、(D)成分(ジエトキシアセトフェノン )2部を配合して組成物を調製した。
【実施例2】
【0040】
(C)成分として、錫オクトエートの代わりにジオクチル錫ジラウレート0.1部を配合したこと以外は、実施例1とまったく同様にして組成物を得た。
【実施例3】
【0041】
(A)成分の調製:(II)成分として23℃における粘度が700mm2/sの両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサンを50部加えたこと以外は、実施例1とまったく同様にして(A)成分を得た。
組成物の調製:この(A)成分を用い、又、(B)成分として、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの代わりにアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン20部を配合したこと以外は、実施例1とまったく同様にして組成物を得た。
【実施例4】
【0042】
(A)成分の調製:(I)成分の配合量を60部に変更し、(II)成分の配合量を70部に変更したこと以外は、実施例1とまったく同様にして(A)成分を得た。
組成物の調製:実施例1の(A)成分の代わりに、この(A)成分を130部配合したこと以外は、実施例1とまったく同様に(B)〜(D)成分を配合して組成物を得た。
【実施例5】
【0043】
(B)成分(メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン )の配合量を10部に変更し、(C)成分として錫オクトエートの代わりに、ジオクチル錫ジラウレート0.3部及びテトライソプロピルチタネート3部の組合せを配合したこと以外は、実施例1とまったく同様にして組成物を得た。
【0044】
<比較例1>
(A)成分の調製:(I)成分を配合せず、(II)成分の配合量を100部に変更し、アンモニア水を滴下しなかったこと以外は、実施例1とまったく同様にして(A)成分を得た。
組成物の調製:実施例1の(A)成分の代わりに、この(A)成分を100部配合したこと以外は、実施例1とまったく同様に(B)〜(D)成分を配合して組成物を得た。
【0045】
<比較例2>
(A)成分の調製:(I)成分と(II)成分を均一攪拌混合した後、アンモニア水を滴下せず、120℃に加熱してトルエンを除去したこと以外は、実施例1とまったく同様にして(A)成分を得た。実施例1の(A)成分の代わりに、この(A)成分を150部配合したこの(A)成分を用いたこと以外は、実施例1とまったく同様に(B)〜(D)成分を配合して組成物を得た。
【0046】
<比較例3>
(C)成分を配合しなかったこと以外は、実施例1とまったく同様にして組成物を得た。
【0047】
<比較例4>
(A)成分の調製:(I)成分を配合せず、(II)成分の配合量を100部に変更し、アンモニア水を滴下しなかったこと以外は、実施例1とまったく同様にして(A)成分を得た。
組成物の調製:実施例1の(A)成分の代わりに、この(A)成分100部と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1部(接着助剤)を用いたこと以外は、実施例1とまったく同様に(B)〜(D)成分を配合して組成物を得た。
【0048】
<評価>
得られた各組成物を3mm厚のシートに成形し、23±2℃で50±5%RHの環境下で1日硬化させ、その後、UV照射装置(日本電池社製コンベアタイプ)により、高圧水銀灯(80W/cm)を距離10cm、速度1m/minで3回紫外線照射し、硬化させた。このもののゴム物性(硬さ及び引っ張り強さ)を測定した。
又、これとは別に、得られた各組成物をガラス上に1mm厚で塗布し、上記と同様な条件で硬化させたもののガラスに対する離型性及び密着性を評価した。
(1)硬さ
JISK-6253に準拠して硬化物のデュロメータ硬度A(Duro.A)を測定した。
(2)引っ張り強さ
JISK-6251に準拠して硬化物の引張り強さ(MPa)を測定した。
(3)離型性及び密着性
以下の基準で判定した。
密着性あり:ガラスから硬化物を簡単に剥がすことができないもの
密着性なし:ガラスから硬化物を簡単に剥がすことができるもの
離型性あり:ガラス表面に硬化物が残らないもの
離型性なし:ガラス表面に硬化物が残るもの
【0049】
得られた結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、各実施例の場合、組成物を硬化したもののゴム物性(硬さ及び引っ張り強さ)、離型性並びに密着性がいずれも優れていた。
【0052】
一方、(A)成分において(I)成分を配合しなかった比較例1の場合、硬化物の硬さ、引っ張り強さ、及び密着性がいずれも劣った。
(A)成分において(I)成分と(II)成分を縮合させずに単に混合した比較例2の場合、硬化物の硬さは高いものの、引っ張り強さ、及び密着性がいずれも劣った。
(C)成分を配合しなかった比較例3の場合、組成物中の各成分が縮合せず、硬化物の硬さ、引っ張り強さ、及び密着性がいずれも劣った。
シール剤として接着剤を用いた比較例4の場合、硬化物の硬さ、引っ張り強さ、及び離型性がいずれも劣った。
【実施例6】
【0053】
図1に示す液晶ディスプレイの実際の製品に対し、実施例1の組成物をシール領域20にシールし、硬化させた。その後、上記と同様な方法で離型性及び密着性を評価したところ、いずれも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のフラットパネルディスプレイ用シール剤をフラットパネルディスプレイ素子に用いる態様を例示する図である。
【符号の説明】
【0055】
2 ガラス基板
4 電極
8 フィルム回路
20 シール領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(I)成分100質量部と(II)成分1〜200質量部との縮合反応生成物であるオルガノポリシロキサン100質量部、但し、
(I)成分は、RSiO1/2単位(式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表わす)及びSiO4/2単位を繰り返し単位とし、Si04/2単位1モルに対するRSiO1/2単位の割合が0.5〜1.2モルであり、更に、Si04/2単位1モルに対し、RSiO2/2単位及びRSiO3/2単位(各式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表わす)のうち少なくとも1つを各単位がそれぞれ1.0モル以下で各単位の合計が1.0モル以下となるように有していてもよく、かつケイ素原子に結合したヒドロキシ基を6.0質量%未満有するオルガノポリシロキサンであり、
(II)成分は、官能基含有シリル基で分子鎖末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサンであり、
(B)下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは二価の有機基、R及びRはそれぞれ同一又は異なる非置換又は置換の一価炭化水素基、aは0〜2の整数である)で示される(メタ)アクリル官能性アルコキシシラン1〜50質量部、
(C)縮合反応用触媒0.01〜10質量部、及び
(D)光開始剤 0.01〜10質量部
を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(II)成分が下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rはそれぞれ独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、Xはそれぞれ独立の官能基、aは1〜3の整数、nは10以上の整数である)で表わされるジオルガノポリシロキサンである請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含むフラットパネルディスプレイ用シール剤。
【請求項4】
請求項3に記載のフラットパネルディスプレイ用シール剤を、該ディスプレイのガラス基板上の電極と該電極上に接続されるフィルム回路とを含む領域のシールに用いたフラットパネルディスプレイ素子。

【図1】
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【公開番号】特開2008−13719(P2008−13719A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188847(P2006−188847)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】