説明

硬化性樹脂組成物及び室温硬化性接着剤組成物

【課題】 硬化性樹脂組成物の硬化速度を制御可能でありながら、最終硬化物物性には影響を及ぼさない湿気硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、フルオロシラン化合物(B)と、ホウ酸エステル化合物(C)とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物を用いる。硬化性シリコーン系樹脂(A)は、分子内に活性水素が置換されていてもよいウレタン結合及び/又は活性水素が置換されていてもよい尿素結合を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びそれを主体的成分とする室温硬化性接着剤組成物に関し、具体的には硬化性樹脂組成物の硬化速度を制御可能でありながら、最終硬化物物性には影響を及ぼさない湿気硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖が有機重合体でありその分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂は、反応性珪素基であるアルコキシシリル基が大気中の水分で加水分解し架橋する、いわゆる湿気硬化型ポリマーであり、シーリング材、接着剤、塗料等のベースポリマーとして幅広く利用されている(特許文献1〜3)。このような湿気硬化型ポリマーは、シーリング材、接着剤、塗料等に使用する場合、アミン触媒や有機金属触媒あるいはその他のルイス酸触媒などの硬化触媒を配合する(特許文献4〜6)。また、有機金属化合物を使用せず、アミン触媒とフルオロシラン化合物を配合した硬化性樹脂組成物も提案されている(特許文献7及び8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特許第3030020号公報
【特許文献3】特許第3343604号公報
【特許文献4】特開平8−283366号公報
【特許文献5】特許第3062625号公報
【特許文献6】特開2005−054174号公報
【特許文献7】WO2006/051799号公報
【特許文献8】WO2007/123167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのようなアミン触媒とフルオロシラン化合物を配合した硬化性樹脂組成物は、混合すると即座に速い硬化性が得られるため、混合時乃至容器充填時にゲル化してしまったり、これらの工程で混入した微量の湿気で貯蔵乃至流通中に硬化反応が進んでゲル化してしまうため、工業的に量産するためには制限が大きかった。また、保存安定性を向上させるためフルオロシラン化合物を別に添加する多液型(たとえば、2液型、3液型など)とした場合にも、手作業で塗布を行う場合には適切な可使時間(ゲル化までの塗布が可能な時間)が必要であるが、フルオロシラン化合物配合直後から速硬化性が発現することから、十分な可使時間が取れないという問題があった。さらには、工場ラインで混合直後に機械塗布を行う際でも、塗布機先端へのゲル化物の付着などの危険性があり、工業的に利用するには制約が多かった。また、接着剤として使用する場合など、使用時に硬化性を調整したいという要望もあり、硬化速度調整剤の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、硬化性樹脂組成物において硬化速度を制御する手法としては、(1)触媒機能を果たす成分自体の配合量を調整する、(2)硬化調整機能を果たす成分(いわゆる硬化促進剤や硬化遅延剤)を配合する、などがある。
しかし、上述のアミン触媒とフルオロシラン化合物を配合した硬化性樹脂組成物においては、触媒機能を果たすと考えられるフルオロシラン化合物の配合量は極微量であっても速硬化性が発現する。したがって、上記(1)の手法による硬化速度の制御はこの系では難しかった。
一方で、一般的に硬化遅延剤を用いて硬化速度を制御すると、触媒機能が阻害されるために最終の硬化物物性が低下するという弊害が見られることがあった。また、フルオロシラン化合物配合系においては硬化調整機能を果たすような成分はこれまで知られていなかったため、上記(2)の手法も用いることができなかった。
【0006】
このような問題を解決するために、本発明者らは鋭意研究の結果、硬化性シリコーン系樹脂とフルオロシラン化合物にくわえ、さらにホウ酸エステル化合物を配合すると硬化調整機能を果たすことを見出した。さらに、硬化性樹脂組成物の硬化速度を制御可能でありながら、最終硬化物物性には影響を及ぼさないことを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は次の第1〜7の発明から構成される。
【0007】
すなわち、第1の発明は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、フルオロシラン化合物(B)と、ホウ酸エステル化合物(C)とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0008】
また、第2の発明は、さらに、アミン化合物(D)を含有することを特徴とする、第1の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0009】
また、第3の発明は、硬化性シリコーン系樹脂(A)が、分子内に活性水素が置換されていてもよいウレタン結合及び/又は活性水素が置換されていてもよい尿素結合を有することを特徴とする、第1又は第2の発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0010】
また、第4の発明は、フルオロシラン化合物(B)が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする、第1〜第3のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
FSiR ・・・(1)
(但し、R、R、Rは有機基又はフッ素原子を示し、それぞれが同じであっても異なっていてもよい)
【0011】
また、第5の発明は、ホウ酸エステル化合物(C)が、下記一般式(2)で示されることを特徴とする、第1〜第4のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
B(OR)(OR)(OR) ・・・(2)
(但し、R、R、Rは、それぞれが分子量200以下の炭化水素基(但し、他原子が結合していてもよい)又は加水分解性基を有する有機基を示し、それぞれが同じであっても異なっていてもよい)
【0012】
また、第6の発明は、さらに、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(E)を含有することを特徴とする、第1〜第5のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0013】
また、第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明に係る硬化性樹脂組成物を主体とする室温硬化性接着剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、硬化性シリコーン系樹脂とフルオロシラン化合物とを含有する硬化性樹脂組成物に、ホウ酸エステル化合物を配合することにより、硬化性樹脂組成物の硬化速度を制御可能でありながら、最終硬化物物性には影響を及ぼさないという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0016】
[分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)について]
本発明における硬化性シリコーン系樹脂(A)は、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂である。上記反応性珪素基とは、珪素原子における主鎖との結合手以外に加水分解性基が1〜3個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基が2〜0個結合しているものである。珪素原子に結合している加水分解性基としては、ヒドロキシル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が一般的に用いられる。その他、ハロゲン基やメルカプト基等の従来公知の加水分解性基も用いることができる。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基としては、メチル基やエチル基等のアルキル基が一般的に用いられる。反応性珪素基としては、取り扱いが比較的容易であることからトリアルコキシシリル基又はアルキルジアルコキシシリル基が好ましく、所望の速硬化性が得られやすいことからトリアルコキシシリル基が特に好ましい。主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられているものが採用される。
【0017】
硬化性シリコーン系樹脂(A)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、株式会社カネカ製のサイリルシリーズ、MSポリマーシリーズ、MAシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、エピオンシリーズ;旭硝子株式会社製のESシリーズ;デグサジャパン株式会社製のベストプラスト206;信越化学工業株式会社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ;東亞合成株式会社製のXPRシリーズ;綜研化学株式会社製のアクトフローシリーズ等が挙げられる。
【0018】
また、本発明では、硬化性シリコーン系樹脂(A)として、分子内にウレタン結合、尿素結合等の極性基(これらのうちウレタン結合、尿素結合については、ウレタン結合又は尿素結合が有する活性水素が有機基で置換されているものも含む)を含有する硬化性シリコーン系樹脂を好適に用いることができる。このような極性基を架橋可能な反応性珪素基の近傍に導入すると、硬化性シリコーン系樹脂の硬化がさらに促進されるため好ましい。硬化が促進する理由としては、硬化性シリコーン系樹脂の分子内に存在する極性基同士が水素結合等の相互作用によってドメインを形成し、それによって架橋可能な反応性珪素基同士の分子的な距離が近くなり、架橋可能な反応性珪素基同士のカップリング反応(縮合反応)が起こりやすくなるためであると考えられる。
【0019】
分子内に極性基を含有する硬化性シリコーン系樹脂は、従来公知の方法で合成すればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物(あるいはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物)を反応させる方法や、水酸基末端ポリオールにイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。より具体的には、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特開2005−54174公報、特表2004−518801号公報、特表2004−536957号公報、特表2005−501146号公報等に記載の方法で容易に合成することができる。
【0020】
[フルオロシラン化合物(B)について]
本発明におけるフルオロシラン化合物(B)は、分子内に少なくとも1個以上のフルオロ基を有する下記一般式(1)で示されるシラン化合物である。
FSiR ・・・(1)
式中、R、R、Rは有機基又はフッ素原子を示し、それぞれが同じであっても異なっていてもよい。フルオロシラン化合物(B)の分子量は特に限定されないが、触媒効果をより発現させやすいことから、1,000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、250以下であることが特に好ましい。
具体例としては、トリメトキシフルオロシラン、トリエトキシフルオロシラン、ジエトキシジフルオロシラン、エトキシトリフルオロシラン等のアルコキシフルオロシラン類;トリメチルフルオロシラン、トリエチルフルオロシラン、ジエチルジフルオロシラン、メチルトリフルオロシラン等のアルキルフルオロシラン類;アミノプロピルトリフルオロシラン、メルカプトプロピルトリフルオロシラン等のフルオロシランカップリング剤等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、フルオロシラン化合物(B)は合成することもできる。例えば、アルコキシシラン化合物と三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体とを公知の方法で反応させることで、対応するフルオロシラン化合物が得られる。
フルオロシラン化合物(B)の配合量は、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.1〜5.0質量部が特に好ましい。0.001質量部を下回ると硬化性が十分でなく、20質量部を上回ると硬化性シリコーン系樹脂(A)の特性を阻害してしまい、例えば接着剤として使用した際には接着性が低下することがある。
【0021】
[ホウ酸エステル化合物(C)について]
本発明におけるホウ酸エステル化合物(C)は、式:B(OH)で示されるホウ酸のエステル化合物である。具体例としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリブトキシエチル、ホウ酸トリオレイル、ジエトキシメトキシボロン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ホウ酸エステル化合物(C)の分子量は特に限定されないが、硬化速度を制御する効果をより発現させやすいことから、900以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましい。
また、本発明におけるホウ酸エステル化合物(C)は、下記一般式(2)で示されるホウ素化合物も好適に用いることができる。
B(OR)(OR)(OR) ・・・(2)
式中、R、R、Rは、それぞれが分子量200以下の炭化水素基(但し、他原子が結合していてもよい)又は加水分解性基を有する有機基を示し、それぞれが同じであっても異なっていてもよい。
ホウ酸エステル化合物(C)の配合量は、フルオロシラン化合物(B)1.0モルに対して、0.01〜20モルが好ましく、0.1〜10モルがより好ましく、0.5〜5.0モルが特に好ましい。0.01モルを下回ると硬化速度を制御する効果が十分ではなく、20モルを上回るとフルオロシラン化合物(B)の特性を阻害してしまい、硬化性が十分発現しない場合がある。
【0022】
ホウ酸エステル化合物(C)は、硬化調整の機能を果たすため、硬化性樹脂組成物の硬化速度を制御可能でありながら、最終硬化物物性には影響を及ぼさない。その理由は定かではないが、ホウ酸エステル化合物とフルオロシラン化合物との何らかの相互作用によるものであると考えられる。
【0023】
[アミン化合物(D)について]
本発明におけるアミン化合物(D)は、分子内に少なくとも第一級アミノ基、第二級アミノ基、又は第三級アミノ基を有する化合物であり、本発明においては、フルオロシラン化合物(B)の触媒効果を適切に発現させる。アミン化合物(D)の具体例としては、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等の第一級アミン化合物、ジn−ブチルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ピペリジン等の第二級アミン化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等の第三級アミン化合物、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、N,N′−ジフェニルグアニジン、1−フェニルグアニジン、フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等のグアニジン化合物、ピリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等の環状アミン化合物、HN(CNH)H(n≧1)で表わされる化合物、ハンツマン社製商品名ジェファーミンシリーズ等の分子末端に第1級アミノ基を有するポリオキシアルキレン、日本触媒株式会社製商品名エポミンシリーズ等のポリエチレンイミン、日本触媒株式会社製商品名ポリメントシリーズ等のアミノエチル化アクリルポリマー、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン等の分子内にアミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有する化合物等が挙げられる。また、上記のアミン化合物における第一級アミノ基含有化合物とケトン類との反応生成物であるケチミン化合物、第一級アミノ基含有化合物とアルデヒド類との反応生成物であるアルジミン化合物、β−アミノアルコール化合物とケトン類との反応生成物であるオキサゾリジン化合物も使用することができる。
これらの化合物の中では、助触媒的な効果が高い1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等の環状アミン化合物が好ましく、さらに液状であることから1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンがより好ましい。
【0024】
上記アミン化合物(D)の配合量は、求められる硬化速度に応じて便宜選択すれば良いが、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましく、0.05〜20質量部がより好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。0.001質量部を下回ると、フルオロシラン化合物(B)の触媒効果を適切に発現させる機能が十分でない場合があり、30質量部を上回ると機能は大きく向上しなくなることがある。
【0025】
[分子内に架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(E)について]
本発明における、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(E)(以下、単に「アミノシラン化合物(E)」と表記することがある)は、分子内にアミノ基並びに架橋可能な反応性珪素基を有する化合物であり、接着性付与効果を有する。また、分子内に加水分解性のC=N結合並びに架橋可能な反応性珪素基を有する化合物も湿気との反応によりアミノ基を生成するため、本発明ではアミノシラン化合物(E)に含まれる。なお、アミノシラン化合物(E)には分子内にアミノ基が存在するため、本発明においてはアミン化合物(D)としての効果も有する。
アミノシラン化合物(E)としては、下記一般式(3)で示される化合物(e1)、化合物(e1)の縮合生成物、又は、化合物(e1)と下記一般式(4)で示される化合物(e2)との縮合反応生成物が挙げられる。これらの中では、下記一般式(3)で示される化合物(e1)が、接着性付与効果と貯蔵安定性が高いため好ましい。
【0026】
N−R−SiR3−n ・・・(3)
(但し、式中、Rは第2級アミノ基を含んでいてもよい二価の有機基を、Rはフェニル基及び炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる一種以上の官能基を、Wはフェノキシ基及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる一種以上の基を、nは0、1又は2を、それぞれ表す)
【0027】
OSiR101112 ・・・(4)
(ただし、式中、Rは、フェニル基、及び、炭素数1〜6のアルキル基から選ばれる一種以上の基を、R10、R11、R12は、フェニル基、分子量500以下のアルキル基、フェノキシ基、及び、炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる一種以上の基を、それぞれ表す)
【0028】
[化合物(e1)について]
化合物(e1)の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノメチルトリエトキシシラン、3−アミノメチルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノメチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン、[2−アミノエチル−(2′−アミノエチル)]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級アミノ基含有アミノシラン化合物等が例示される。また、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等のケチミンシラン化合物も、湿気により第1級アミノ基が生成するため実質的に含まれる。なかでも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、又は、N−(2−アミノエチル)−3−プロピルトリメトキシシランを用いることが、入手が容易であるという観点から好ましい。
【0029】
[化合物(e2)について]
化合物(e2)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が例示される。なかでも、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランを用いることが、化合物(e1)との縮合反応の容易性の観点から好ましい。
【0030】
化合物(e1)単独、あるいは、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合生成物は、従来公知の定法により合成すればよい。具体的には、化合物(e1)を水と反応させる方法、あるいは、化合物(e1)及び化合物(e2)を水と反応させる方法が挙げられる。化合物(e1)単独、あるいは、化合物(e1)と化合物(e2)との縮合生成物は市販されており、本発明ではそれらを用いることができる。市販品としては、MS3301(チッソ株式会社製商品名)、MS3302(チッソ株式会社製商品名)、X−40−2651(信越化学工業株式会社製商品名)等のアミノシランのシリル基を単独あるいはその他のアルコキシシラン化合物と一部縮合させた化合物が挙げられる。
【0031】
アミノシラン化合物(E)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよい。また、アミノシラン化合物(E)は1種単独又は2種以上併用してもよい。アミノシラン化合物(E)の配合量は特に限定されないが、硬化性シリコーン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1.0〜10質量部が特に好ましい。
【0032】
[その他の成分について]
本発明に係る硬化性樹脂組成物中には、従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。例えば、有機金属系化合物、三フッ化ホウ素系化合物等の硬化促進剤、親水性又は疎水性シリカ系粉体、炭酸カルシウム粉体、クレイ粉体、アクリル系等の有機系粉体、有機系・無機系のバルーン等の充填材、フェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、機能性オリゴマー、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、3−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジ−4−イルオキシ)プロピルトリエトキシシラン等の老化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ブロックドポリイソシアネート等の耐水性向上剤、乾性油等を配合することができる。
【0033】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、たとえば、接着剤、粘着剤、シーリング材、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。これらのなかでも特に室温硬化性接着剤組成物の主体的成分として有用である。また、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、一液型として(場合によっては二液型として)使用することもできる。一液型として使用される場合は、互いに密封状態では不活性な化合物を選択し、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すればよい。
本発明においては、ホウ酸エステル化合物(C)を配合することによって、硬化性樹脂組成物の硬化速度を制御可能であることから、例えば特に一液型の硬化性樹脂組成物として工業的に量産する際に従来よりも製造や容器充填がしやすくなる。さらに、ホウ酸エステル化合物(C)は最終硬化物物性には影響を及ぼさないので、最終的な性能(例えば接着性能)を発現する硬化物物性については高い信頼性を得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0035】
[硬化性シリコーン系樹脂(A)の調製]
(硬化性シリコーン樹脂A−1の合成)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(222.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にトリメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−1を得た。
別の反応容器内で、PMLS4012(旭硝子ウレタン株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(4.71質量部)及びジオクチルスズジバーサテート(PMLS4012に対して50ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−1を得た。
さらに上記シラン化合物SE−1(8.89質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン結合、活性水素が置換されたウレア結合、トリメトキシシリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂A−1を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0036】
(硬化性シリコーン樹脂A−2の合成)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(206.4質量部)を窒素雰囲気下室温で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2質量部、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランに対して2モル当量)を1時間かけて滴下し、さらに50℃で7日間反応させることで、分子内にメチルジメトキシシリル基及び第二級アミノ基を有するシラン化合物SE−2を得た。
別の反応容器内で、アクトコールP−21(三井化学ポリウレタン株式会社製商品名、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量2,000、100質量部)、イソホロンジイソシアネート(22.1質量部)及びジオクチルスズジバーサテート(P−21に対して50ppm)を仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂U−2を得た。
さらに上記シラン化合物SE−2(37.2質量部)を添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で1時間反応させることで、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン結合、活性水素が置換されたウレア結合、メチルジメトキシシリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂A−2を得た。反応終了後、IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される特性吸収(2265cm−1)は観測されなかった。
【0037】
(硬化性シリコーン樹脂A−3の合成)
反応容器に、硬化性シリコーン樹脂A−2(100質量部)を入れ、窒素雰囲気下、80℃まで昇温した。そこに、メタクリル酸メチル(35質量部)、メタクリル酸ラウリル(25質量部)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(7.0質量部)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(7.0質量部)及び2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(0.49質量部)を混合したモノマー混合液を30分かけて滴下し、重合反応を行った。さらに、80℃で30分反応させた後、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(0.16質量部)とメチルエチルケトン(1.0質量部)の混合溶液を滴下し、重合反応を行った。次いで、80℃で30分反応させた後、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(0.08質量部)とメチルエチルケトン(1.0質量部)の混合溶液を滴下し、重合反応を行った。さらに、80℃で30分反応させた後、メチルエチルケトンを減圧留去し、主鎖がオキシアルキレン重合体でありその分子内にウレタン結合、活性水素が置換されたウレア結合、メチルジメトキシシリル基を有する硬化性シリコーン系樹脂と、分子内にトリメトキシシリル基を有するアクリル系樹脂の混合物である硬化性シリコーン樹脂A−3を得た。
【0038】
[硬化速度測定]
表1に示す配合割合(質量部)で1分間混合することで、各硬化性樹脂組成物を調製し、各硬化性樹脂組成物の硬化速度を比較した。硬化速度の比較は各硬化性樹脂組成物の皮張り時間を用いて行った。皮張り時間は、1分間混合した直後を開始時間とし、表面に硬化皮膜が形成されるまでの時間とした。硬化皮膜が形成された時間は、金属製のスパーチュラで暴露された各硬化性樹脂組成物の表面を触ってスパーチュラに各硬化性樹脂組成物がつかなくなる時間とした。以下、硬化速度の比較は同様の方法で行った。混合及び皮張り時間の測定は、23±2℃相対湿度30±2%の雰囲気において行った。
【0039】
【表1】

【0040】
表1の結果より、実施例1に示されるように、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、ホウ酸エステル化合物を配合することによって、可使時間が延長されていることが分かる。
【0041】
[硬化速度測定]
表2に示す配合割合(質量部)で1分間混合することで、各硬化性樹脂組成物を調製し、各硬化性樹脂組成物の硬化速度を比較した。なお、1分間混合している間にゲル化してしまったものついては皮張り時間を測定せず、ゲル化した時間を測定した。以下、混合中のゲル化は同様に評価した。混合及び皮張り時間の測定は、23±2℃相対湿度30±2%の雰囲気において行った。
【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果より、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、種々のホウ酸エステル化合物を配合することによって、可使時間が延長されていることが分かる。また、比較例4〜7に示されるように、一般的に使用される脱水剤であるビニルトリメトキシシランやテトラエトキシシランでは可使時間延長の効果がないことから、ホウ酸エステル化合物の脱水作用ではなく、フルオロシラン化合物とホウ酸エステル化合物のなんらかの相互作用によって可使時間が延長できると推察される。
【0044】
[硬化速度測定]
表3に示す配合割合(質量部)で1分間混合することで、各硬化性樹脂組成物を調製し、各硬化性樹脂組成物の硬化速度を比較した。混合及び皮張り時間の測定は、23±2℃相対湿度30±2%の雰囲気において行った。
【0045】
【表3】

【0046】
表3の結果より、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、ホウ酸エステル化合物を配合することによって、可使時間が延長されているうえ、ホウ酸エステル化合物の添加量によって、可使時間を調節できることが分かる。このことから、フルオロシラン化合物とホウ酸エステル化合物のなんらかの相互作用によって可使時間が延長されていると推察される。
【0047】
[硬化速度測定]
表4に示す配合割合(質量部)で1分間混合することで、各硬化性樹脂組成物を調製し、各硬化性樹脂組成物の硬化速度を比較した。混合及び皮張り時間の測定は、23±2℃相対湿度20±2%の雰囲気において行った。
【0048】
【表4】

【0049】
表4の結果より、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、アミン化合物の種類によらず、ホウ酸エステル化合物を配合することによって、可使時間が延長されていることが分かる。
雰囲気
【0050】
[硬化速度測定]
表5に示す配合割合(質量部)で1分間混合することで、各硬化性樹脂組成物を調製し、各硬化性樹脂組成物の硬化速度を比較した。混合及び皮張り時間の測定は、23±2℃相対湿度22±2%の雰囲気において行った。
【0051】
【表5】

【0052】
表5の結果より、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、種々の硬化性シリコーン樹脂に関しても、可使時間が延長されることが分かる。表1〜5の結果を総合すると、特に、トリアルコキシシリル基を有する硬化性シリコーン樹脂A−1、ES−G3440−STでの効果が顕著であることが分かる。一般的にトリアルコキシシリル基を含有する硬化性シリコーン系樹脂は速硬化性を発現させやすいのであるが、逆に反応の制御が難しい。特に、フルオロシランを添加して硬化させる場合、取り扱いに困難なほど速硬化となりやすかった。そのため、本発明にかかる硬化速度調整の手法は非常に有用であるといえる。
【0053】
(実施例22、比較例18及び19)
[硬化性樹脂組成物の調製と容器充填時の状態観察]
表6に示す配合割合(質量比)で、撹拌容器内(窒素雰囲気)に各成分を投入した。反応容器内を650〜700mmHgまで減圧し、室温で10分間混ぜ合わせることで、各硬化性樹脂組成物を調製した。撹拌容器内を窒素置換した後、大気に対してオープンの状態(23℃相対湿度50%)で各硬化性樹脂組成物を容器(紙管カートリッジ)に充填し、その後密閉した。その際の各硬化性樹脂組成物の状態を観察した。
[硬化速度測定]
上記で得られた、容器に密閉充填した状態の各硬化性樹脂組成物を50℃で3日間静置したのち、さらに23℃で1日間静置した。その後、23℃相対湿度50%の雰囲気における各硬化性樹脂組成物の硬化速度を比較した。硬化速度の比較は、各硬化性樹脂組成物の皮張り時間で行った。各硬化性樹脂組成物を大気中に暴露してから、表面に硬化皮膜が形成されるまでの時間を皮張り時間とした。硬化皮膜が形成された時間は、金属製のスパーチュラで暴露された各硬化性樹脂組成物の表面を触ってもスパーチュラに各硬化性樹脂組成物がつかなくなる時間とした。
[接着強さ測定]
上記で得られた各硬化性樹脂組成物の接着強さを測定した。被着材として木材(アサダ材、厚さ3mm、幅25mm、長さ100mm)を準備した。一方の木材に各硬化性樹脂生成物(約0.1g)を25mm×25mmの面積に均一に塗布し、12.5mm×25mmの面積でもう一方の木材とはり合わせた。各はり合わせ試験体を23℃相対湿度50%で1.5時間養生した。その後、引張りせん断接着強さをJIS K 6850に準じて測定した。
【0054】
表6
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例22 比較例18 比較例19
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
樹脂A−1 100 100 100
KBM−903*1 5.0 5.0 5.0
トリエトキシフルオロシラン 0.5 0.5 0.5
ホウ酸トリメチル 0.5 − −
ビニルトリメトキシシラン − − 0.7*2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
容器充填時の状態 変化なし 撹拌容器出口付近 撹拌容器出口付近
でゲル化物発生 でゲル化物発生
────────────────────────────────────────
皮張り時間(秒) 40 20 15
────────────────────────────────────────
接着強さ(N/mm) 1.60 1.25 1.18
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*1:信越化学工業株式会社製商品名、3−アミノプロピルトリメトキシシラン
*2:ホウ酸トリメチル0.5gと等モルとなる配合量

【0055】
表6の結果より、実施例22に示されるように、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、ホウ酸エステル化合物を配合することによって元来の硬化速度(比較例18)が抑制されており、撹拌容器から密閉容器(紙管カートリッジ)に充填する際に高い安定性を示すことが分かる。一方で、接着強さの試験結果を見ると、元来の接着強さ(比較例18)と同等以上の値を示しており硬化物物性にほとんど影響を与えていないことが分かる。
一方、比較例19に示されるように、一般的に脱水剤として使用されるビニルトリメトキシシランをホウ酸エステル化合物と等モル添加した硬化性樹脂組成物では、硬化速度を制御することはできない。
つまり、本発明におけるホウ酸エステル化合物による硬化速度の制御は、単純に脱水剤として機能していることによるものではないと結論付けられる。また、硬化後十分な接着強さが発現していることから、ホウ酸エステル化合物が硬化阻害を起こすわけではなく、適切に硬化速度を制御し、最終硬化物を与えられることが分かる。すなわち、ホウ酸エステル化合物がフルオロシラン化合物と相互作用することによって硬化性樹脂組成物の硬化速度を制御可能であるが、最終硬化物物性には影響を及ぼさないため、接着剤、粘着剤、シーリング材等への応用が十分可能であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、特に従来一液型又は二液型の硬化性樹脂組成物が用いられてきた全ての用途に使用できる。たとえば、接着剤、シーリング材、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に架橋可能な反応性珪素基を有する硬化性シリコーン系樹脂(A)と、フルオロシラン化合物(B)と、ホウ酸エステル化合物(C)とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、アミン化合物(D)を含有することを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
硬化性シリコーン系樹脂(A)が、分子内に活性水素が置換されていてもよいウレタン結合及び/又は活性水素が置換されていてもよい尿素結合を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
フルオロシラン化合物(B)が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
FSiR ・・・(1)
(但し、R、R、Rは有機基又はフッ素原子を示し、それぞれが同じであっても異なっていてもよい)
【請求項5】
ホウ酸エステル化合物(C)が、下記一般式(2)で示されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
B(OR)(OR)(OR) ・・・(2)
(但し、R、R、Rは、それぞれが分子量200以下の炭化水素基(但し、他原子が結合していてもよい)又は加水分解性基を有する有機基を示し、それぞれが同じであっても異なっていてもよい)
【請求項6】
さらに、分子内に架橋可能な反応性珪素基を有するアミノシラン化合物(E)を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を主体とする室温硬化性接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−203470(P2009−203470A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17649(P2009−17649)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】