説明

硬化性組成物、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、及びグラフトポリマー

【課題】極めて高感度で硬化し、硬質基材表面におけるパターン形成に適用した際に、硬化領域では硬質材料表面との密着性が高く、未硬化領域ではその除去性に優れる硬化性組成物を提供すること。また、前記硬化性組成物を用いて形成されるカラーフィルタ、及び該カラーフィルタの製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)エチレン性不飽和二重結合がペンダントされた構造単位を少なくとも2以上含む枝ポリマー部を有するグラフトポリマーを含有することを特徴とする硬化性組成物。該硬化性組成物は、(B)光重合開始剤、(C)着色剤、(D)増感剤等を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元光造形、ホログラフィー、カラーフィルタ、フォトレジスト、平版印刷版原版、及びカラープルーフといった画像形成材料や、インク、塗料、接着剤、コーティング剤、歯科材料などの光硬化材料用途に利用できる硬化性組成物、及び該硬化性組成物に用いられる新規なグラフトポリマーに関する。また、本発明は、前記硬化性組成物により形成されたカラーフィルタ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフトポリマーは、ブロックポリマーと共に近年その重要性が一段と増し、複合材料を構成する上で、また、高分子材料の表面構造を制御するために、種々の膜素材として、更には、接着剤や分散剤として、極めて広範囲に亘って研究開発されてきている。グラフトポリマーの合成法は、幹部を先に作っておく、いわゆるGraft−from法(幹上の開始基からモノマーを生長させる高分子開始剤法)と、Graft−onto法(幹上の結合基に枝ポリマーの末端基をカップリングさせる方法)と、が知られている。
これに対し、Milkovichらによって枝となるポリマーの末端にエチレン性二重結合を導入した高分子量モノマー(マクロモノマー)を合成し、次いで、該マクロモノマーと共重合可能なモノマーとを重合させて幹部を形成する方法(Graft−through法)が開発され、近年活発に研究されている(米国特許第3842059号明細書、米国特許第3862101号明細書、米国特許第3928255号明細書、特開昭61−89208号公報、マクロモノマーの化学と工業(アイピーシー出版部発行))。この方法の特徴は、枝ポリマーの分子量(長さ)、含量を広範囲に制御できる点にあり、また、共重合成分を種々変えることで、多彩なグラフトポリマーを分子設計できる方法として極めて有用な方法である。この方法により得られたグラフトポリマーは、例えば、カラーフィルタに適用され、顔料の分散性、基板密着性、塗膜物性等を向上させる技術が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
一方、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、紫外線等の活性エネルギー線照射によりごく短時間での硬化が可能であり生産性に優れるため、3次元光造形やホログラフィー、カラーフィルタやフォトレジスト、平版印刷版材及びカラープルーフといった画像形成材料や、インク、塗料、接着剤、コーティング剤、歯科材料などとして幅広く用いられている。このようなエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後アクリレート化したもの、特開平5−170705号、特開平11−193325号、特開平2000−239332号、特開平2005−104842号各公報に記載されているようなウレタン基含有アクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものが挙げられる。
【0004】
近年では、上記の用途において、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物に対する要求が更に高まっており、より低いエネルギーで硬化するもの、より早く硬化するもの、より精細な画像を形成するものが求められている。更に、高感度の重合性に加え、用途に合わせた性能として現像性や分散性、製膜性、接着性、可塑性、耐久性、剛直性、高屈折率性、透明性、撥水性、親水性等の性能を併せ持つ化合物が求められている。
例えば、高感度で、かつ、現像性及び性膜性を併せ持つ化合物として、側鎖にエチレン性不飽和二重結合及びカルボキシ基を有する樹脂が開発されている(例えば、特許文献2参照。)
【0005】
前述のようなエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が用いられるカラーフィルタは、液晶ディスプレイや固体撮像素子に不可欠な構成部品である。
液晶ディスプレイは、表示装置として汎用されるCRTと比較すると、コンパクトであり、且つ、性能面では同等以上であることから、テレビ画面、パソコン画面、その他の表示装置としてCRTに置き換わりつつある。また、近年では、液晶ディスプレイの開発の動向としては、画面が比較的小面積であった従来のモニター用途から、画面が大型で高度な画質が求められるTV用途に向かいつつある。
【0006】
液晶ディスプレイ(LCD)用カラーフィルタに関しては、大型TV生産のため基板サイズが拡大している。このような大型基板を用いたカラーフィルタ製造用途の硬化性組成物には、生産性向上のため、低エネルギーでの硬化が望まれている。
また、TV用途の液晶ディスプレイでは、従来のモニター用途のものに比し、より高度な画質が求められている。すなわち、コントラスト及び色純度の向上である。
【0007】
カラーフィルタ製造用途の硬化性組成物に関しては、コントラスト向上のため、使用する着色剤(有機顔料等)の粒子サイズとして、より微小なものが求められている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、顔料を微細化するとその表面積が増加するため、微細化した顔料の使用は、硬化性組成物における顔料分散のための分散剤添加量を増加させる傾向にあった。また、カラーフィルタ製造用途の硬化性組成物には、色純度向上のため、固形分中に占める着色剤(有機顔料)の含有率として、より高いものが求められている。しかしながら、硬化性組成物において着色剤を高濃度に含有させると、硬化性組成物に占める光重合開始剤及び光重合性モノマーの含有率が減少してしまうことから、当該硬化性組成物には低エネルギーでの硬化性が望まれている一方で、露光部の硬化性が得にくいことが問題となっている。
【0008】
一方、固体撮像素子用カラーフィルタ製造用途の硬化性組成物においても、低エネルギーでの硬化が望まれている。また、固体撮像素子用途のカラーフィルタについては、着色パターンの薄膜化が進んでおり、これに伴い、組成物中の顔料濃度が向上している。
更に、顔料系カラーフィルタにおいては、顔料が比較的粗大な粒子であることに起因する色ムラ低減のための顔料微細化に伴って、硬化性組成物中における顔料分散剤の含有率が増加する傾向あり、硬化性が得にくいことが問題となっている。
【0009】
また、形成された着色パターンにおける色ムラ等の問題に対応するため、着色剤として顔料の代わりに有機溶剤可溶性の染料を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、染料系カラーフィルタにおいては染料濃度の増加に伴い、染料由来の重合禁止効果や、染料が析出するなどの経時安定性低下の問題も顕著になってきている。
【0010】
以上述べたように、カラーフィルタ製造用途の硬化性組成物については、液晶ディスプレイ用、固体撮像素子用いずれの場合においても、当該硬化性組成物を硬化させるために必要な成分である光重合開始剤及び光重合性モノマーの含有量が制限される上に、着色剤濃度が高くなっているため、感度が低く充分な硬化が得られない、基板との密着性が不充分であるなどの問題が生じていた。
【0011】
これらの課題に対し、従来、主に成膜性や現像性などを付与するために導入された樹脂に、重合性を付与し、感度を向上させる検討がなされている(例えば、特許文献5、6参照。)。この他にも、カラーフィルタ最新技術動向(情報機構出版)85項〜87項、最先端カラーフィルタのプロセス技術とケミカルズ(シーエムシー出版)129項〜150項などに記載の技術が挙げられる。しかし、これらの樹脂はいずれもエチレン性不飽和二重結合性基を主鎖の極近傍に有するものであるため、該エチレン性不飽和二重結合の運動性が小さく、重合反応が早期に飽和してしまう傾向にあり、未だ満足する露光感度が得られていない。更に、露光感度が不十分であるため、基板界面付近などの深部では硬化が不十分であり、したがって、基板密着性が悪いなどの問題もあった。
【特許文献1】特開平7−170654号公報
【特許文献2】特開2003−29018号公報
【特許文献3】特開2006−30541号公報
【特許文献4】特開平2−127602号公報
【特許文献5】特開2000−321763号公報
【特許文献6】特開2003−029018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、極めて高感度で硬化し、硬質基材表面におけるパターン形成に適用した際に、硬化領域では硬質材料表面との密着性が高く、未硬化領域ではその除去性に優れる硬化性組成物を提供することを目的とし、この目的を達成することを第1の課題とする。
また、基板との密着性に優れ、所望の断面形状の着色パターンを備えたカラーフィルタ、及び該カラーフィルタを高い生産性で製造しうる製造方法を提供することを目的とし、この目的を達成することを第2の課題とする。
加えて、本発明の硬化性組成物に好適な新規グラフトポリマーを提供することを目的とし、この目的を達成することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
本発明の硬化性組成物は、(A)エチレン性不飽和二重結合がペンダントされた構造単位を少なくとも2以上含む枝ポリマー部を有するグラフトポリマーを含有することを特徴とする。
また、本発明の硬化性組成物は、(B)光重合開始剤、(C)着色剤、及び(D)増感剤の少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0014】
本発明のカラーフィルタは、支持体上に、本発明の硬化性組成物により形成された着色パターンを有することを特徴とする。
また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、支持体上に、本発明の硬化性組成物を塗布して該硬化性組成物からなる着色層を形成する着色層形成工程と、前記着色層をマスクを介して露光する露光工程と、露光後の着色層を現像して着色パターンを形成する現像工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の新規グラフトポリマーは、エチレン性不飽和二重結合がペンダントされた構造単位を少なくとも2以上含む枝ポリマー部を有する。
このグラフトポリマーは、下記一般式(1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
〔上記一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、−COOH、−CN、−CF、−CHOH、−CHCOOH、−CHCOOR、又は−COORを表し、Xは2価の有機基を表し、Yは、一般式(2)で表される部分構造を少なくとも2つ以上含有するビニル系重合体を表す。上記一般式(2)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、−COOH、−CN、−CHCOOH、−CHCOOR、又は−COORを表し、Rは、水素、メチル基、又はエチル基を表し、Xは2価の有機基を表す。また、R〜Rは、各々独立に、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。〕
【0018】
本発明の硬化性組成物の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
即ち、本発明の硬化性組成物中に含まれるグラフトポリマーは、運動性の高いグラフト枝ポリマー部にエチレン性不飽和二重結合性基(以下、単に「重合性基」と称する場合がある。)を有するため、重合の進行に伴う未反応の重合性基の運動性低下の度合いが小さく、重合反応が十分に進行する。また、露光感度が高いため、本発明の硬化性組成物を硬質基材表面におけるパターン形成に適用した際に、深部まで(硬質基材の近くまで)重合が進行し、硬化領域では硬質材料表面との密着性が高くなる。
また、本発明の硬化性組成物中に含まれるグラフトポリマーは、枝ポリマー部を有するグラフト構造であるため、分子量のわりに占有体積が小さい。そのため、本発明の硬化性組成物を硬質基材表面におけるパターン形成に適用した際に、未硬化領域では、現像液等による溶媒和や現像液中への拡散が速やかに進行し、結果的に、未硬化領域の優れた除去性を得ることができる。一方、硬化領域では、十分な硬化性が得られるために現像液等の影響を抑制することができる。したがって、本発明の硬化性組成物を用いたパターン形成においては、硬化領域における優れた硬化性と、未硬化領域における優れた除去性と、が両立され、所望の断面形状を有する良好なパターンが形成できるものと考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、極めて高感度で硬化し、硬質基材表面におけるパターン形成に適用した際に、硬化領域では硬質材料表面との密着性が高く、未硬化領域ではその除去性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
また、基板との密着性に優れ、所望の断面形状の着色パターンを備えたカラーフィルタ、及び該カラーフィルタを高い生産性で製造しうる製造方法を提供することができる。
更に、本発明では、本発明の硬化性組成物に好適な新規グラフトポリマーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、まず、本発明のグラフトポリマー(以下、適宜、「特定グラフトポリマー」と称する。)、及び硬化性組成物について詳細に説明する。
【0021】
<特定グラフトポリマー>
本発明の新規グラフトポリマー(特定グラフトポリマー)は、エチレン性不飽和二重結合がペンダントされた構造単位を少なくとも2以上含む枝ポリマー部を有することを特徴とする。
特定グラフトポリマーは、運動性の高いグラフト枝ポリマー部にエチレン性不飽和二重結合性基を有するため、重合の進行に伴う未反応のエチレン性不飽和二重結合性基の運動性低下の度合いが小さく、また、ペンダントする構造を変えることで、合成上、容易に幹ポリマー部と枝ポリマー部との極性差を付与でき、分散剤としても使用することができるため、重合反応を用いた硬化性組成物や、有機、又は無機顔料、金属等の微粒子を溶液中に分散した分散物、及びこれを含む硬化性組成物に用いることが好適である。
【0022】
なお、特定グラフトポリマーにおいて、エチレン性不飽和二重結合がペンダントされた構造単位を少なくとも2以上含むポリマー鎖が「枝ポリマー部」であり、この枝ポリマー部が結合したポリマー鎖を「幹ポリマー部」とする。
なお、特定グラフトポリマーは一つの枝ポリマーあたり2つ以上のエチレン性不飽和二重結合がペンダントされてさえいればよく、幹ポリマーにエチレン性不飽和二重結合が直接ペンダントされた構造単位を含んでも含まなくてもよい。
【0023】
特定グラフトポリマーにおいて、枝ポリマー部及び幹ポリマー部を構成するポリマーの主鎖構造としては、炭素原子間の単結合、炭素原子間の二重結合、炭素原子間の三重結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合を、単独で、又は、複数組み合わせて含む高分子鎖が挙げられ、中でも、合成の容易性、感度、現像性、保存安定性の点から、炭素原子間の単結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合を、単独で、又は、複数組み合わせて高分子鎖が好ましく、炭素原子間の単結合を含む高分子鎖がより好ましい。
【0024】
また、特定グラフトポリマーは、感度及び保存安定性の還元から、該グラフトポリマー1gあたりのエチレン性不飽和結合当量(単位:mol/g)が0.00001mol/g以上であることが好ましく、0.0001mol/g以上0.01mol/g以下であることが更に好ましく、0.001mol/g以上0.008mol/g以下であることが最も好ましい。
【0025】
本発明の特定グラフトポリマーの重量平均分子量としては、感度、現像性、保存安定性の観点から、3000〜300000が好ましく、4000〜100000がより好ましく、5000〜50000が更に好ましく、6000〜25000が最も好ましい。
【0026】
(合成法)
本発明の特定グラフトポリマーは、以下の方法にて合成することができる。
即ち、例えば、(A)グラフト構造を有する前駆体ポリマーを合成し、該前駆体ポリマーの枝ポリマー部にエチレン性不飽和二重結合を導入する方法によって合成することができる。
グラフト構造を有する前駆体ポリマーの合成法としては、(1)幹ポリマー上の開始基からの枝モノマーの重合(graft−from法)、(2)幹ポリマーへの枝ポリマー(末端官能性又はリビングポリマー)の結合(カップリング)(graft−onto法)、(3)マクロモノマー法(枝としてのマクロモノマーと幹モノマーとの共重合)(graft−through法)等が挙げられる。
【0027】
(1)のgraft−from法では、例えば、リビングラジカル重合、開始剤法、連鎖移動法、Ce(IV)塩法(セルロース、ポバール法)、酸化法、放射線照射法などが利用される。なお、リビング重合法としては、アニオン重合、カチオン重合、イモータル重合、配位重合、グループ移動重合などが挙げられる。また、開始剤法は、プレポリマー中の官能基からラジカル重合やイオン重合を開始する方法である。
(2)のgraft−onto法では、末端官能性ポリマーの末端官能基として水酸基、アミノ基、ケトン基、ラクトン基、イソシアネート基、カルボキシル基等の導入が挙げられる。
(3)のマクロモノマーの合成法としては、イオン重合法、ラジカル(連鎖移動)重合法、ATRP法などのリビング重合法等が利用される。
上述の前駆体ポリマーの合成法の中でも、合成の簡便性、再現性等の観点から、(3)マクロモノマー法が好ましい。
【0028】
また、上記のようにして得られた前駆体ポリマーにエチレン性不飽和二重結合をペンダントする方法としては、例えば、以下の(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)枝ポリマー部中に、求核性基を有する前駆体ポリマーに対し、該求核性基との反応が可能な置換基と不飽和二重結合とを併せ持つ化合物を作用させる方法。
(b)求核性基とエチレン性不飽和二重結合とを併せ持つ化合物と、前記求核性基との反応が可能な置換基を枝ポリマー部に有する前駆体ポリマーとを作用させる方法。
(c)マクロモノマー中に熱及び/又は光の照射、酸、塩基などの作用によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を予め導入しておき、マクロモノマーと他のモノマーとの反応によって幹ポリマー部を形成して前駆体ポリマーとした後、熱及び/又は光を照射する、若しくは、酸、塩基などを作用させて、エチレン性不飽和二重結合を生成させる方法。
【0029】
また、本発明の特定グラフトポリマーの合成法の他の例として、(B)幹ポリマー上の開始基から枝モノマーを重合する反応(Graft−from法)において、枝モノマーとして、該重合反応によって枝ポリマー鎖を形成するための反応性基と該重合反応条件では重合しないエチレン性不飽和結合とを併せ持つモノマーを使用する方法や、(C)幹ポリマーに、枝ポリマーを連結させる(Graft−onto法)において、枝ポリマーとしてエチレン性不飽和結合がペンダントした枝ポリマーを用いる方法が挙げられる。
【0030】
本発明の特定グラフトポリマーとしては、下記一般式(1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0031】
【化2】

【0032】
上記一般式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、−COOH、−CN、−CF、−CHOH、−CHCOOH、−CHCOOR、又は−COORを表す。
前記R、R、又はRで表される炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、プロピル基、ヘキシル基が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
としては、中でも、水素原子、メチル基、−COOH、−CN、−CF、−CHOH、又は−CHCOOHが好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。
【0033】
また、Xで表される2価の有機基としては、鎖中に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、珪素原子、炭素数3〜10で成る炭化水素環構造、ヘテロ環、エーテル結合、アミノ結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、リン酸エステル結合、アミド結合、尿素結合、及びチオ尿素結合からなる群より選択される原子又は部分構造を、単独で、若しくは複数を組み合わせて含んでいてもよい炭素数1〜100炭化水素鎖が挙げられる。
中でも、炭素数5又は6で成る炭化水素環構造、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、エステル結合、及びアミド結合からなる群より選択される部分構造を、単独で、若しくは複数を組み合わせて含んでいてもよい炭素数1〜50の炭化水素鎖が好ましく、炭素数6で成る炭化水素環構造、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、エステル結合、及びアミド結合からなる群より選択される部分構造を2種以上含む炭素数1〜40の炭化水素鎖がより好ましい。
【0034】
で表される2価の有機基は更に置換基を有していてもよく、導入しうる置換基の好ましい例としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基、炭素数1〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のスルホンアミド基、炭素数1〜20のカルバモイル基、炭素数0〜20のスルファモイル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のイミノ基、炭素数3〜20のアンモニオ基、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数1〜20のウレイド基、炭素数2〜20のヘテロ環基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数0〜2のスルファモイルアミノ基、炭素数2〜20のシリル基、イソシアネート基、イソシアニド基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、原料入手の容易性からは炭素数1〜10の鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、また、感度及び現像性の観点からはカルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基が好ましい。また、原料入手の容易性、感度、及び現像性のバランスの観点から、メチル基、ヒドロキシ基、シアノ基が最も好ましい。
【0035】
Yは、前記一般式(2)で表される部分構造を少なくとも2つ以上含有するビニル系重合体を表す。
前記一般式(2)におけるR及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、−COOH、−CN、−CF、−CHOH、−CHCOOH、−CHCOOR、又は−COORを表す。
ここで、R、R、R、又はRで表される炭素数1〜6の炭化水素基としては、前記R、R、又はRで表される炭素数1〜6の炭化水素基と同様のものを指す。
及びRとしては、各々独立に、水素原子、メチル基、−COOH、−CN、−CF、−CHOH、又は−CHCOOHが好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。
また、Rは、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、水素原子、又はメチル基であることが好ましい。
【0036】
また、Xで表される2価の有機基としては、鎖中に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、珪素原子、炭素数3〜10で成る炭化水素環構造、ヘテロ環、エーテル結合、アミノ結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、リン酸エステル結合、アミド結合、尿素結合、及びチオ尿素結合からなる群より選択される原子又は部分構造を、単独で、若しくは複数を組み合わせて含んでいてもよい炭素数1〜100炭化水素鎖が挙げられる。
中でも、炭素数5又は6で成る炭化水素環構造、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、エステル結合、尿素結合、及びアミド結合からなる群より選択される部分構造を、単独で、若しくは複数を組み合わせて含んでいてもよい炭素数1〜50の炭化水素鎖が好ましく、炭素数6で成る炭化水素環構造、エーテル結合、ウレタン結合、エステル結合、及びアミド結合からなる群より選択される部分構造を、単独で、若しくは複数を組み合わせて有する炭素数1〜30の炭化水素鎖がより好ましい。
で表される2価の有機基が置換基を有する場合、その好ましい例は前記Xの場合と同様である。
【0037】
前記一般式(1)で表される化合物は、前記(A)グラフト構造を有する前駆体ポリマーを合成し、該前駆体ポリマーの枝ポリマー部にエチレン性不飽和二重結合を導入する方法によって合成することが好ましく、特に、前駆体ポリマーにエチレン性不飽和二重結合をペンダントする方法として、前記(a)又は(c)の方法を用いることで合成することがより好ましい。
以下、一般式(1)で表される化合物を合成する際に用いられる各種成分について説明する。
【0038】
まず、一般式(1)で表される化合物を前記(a)の方法で合成する場合について説明する。この(a)の方法では、枝ポリマー部中に、求核性基を有する前駆体ポリマーを用いる。
ここで、枝ポリマー部を形成するためのモノマーとしては、求核性基をもつモノマー、及び/又は、該求核性基を適当な保護基にて保護したモノマーを用いることが好ましい。ここで言う求核性基とは、求核反応を行える官能基であり、求核性を有する置換基であれば特に制限しないが、保存安定性、現像性、分散性等の観点から、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、メルカプト基が好ましく、中でも、カルボキシ基、又は水酸基が好ましい。また、これらの保護基としては、t−ブチル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が好ましく用いられ、脱保護反応は強酸性条件下で容易に実施できる。
【0039】
前記カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等が挙げられ、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体も用いることができる。この他、水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。また、前記水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類、及びこれらのエチレンオキシ変性体、ヒドロキシスチレンなどが有用である。
【0040】
枝ポリマー部は、上記求核性基をもつモノマーと他のモノマーを共重合したものであってもよい。求核性基をもつモノマーと共重合しうるモノマーとしては、以下の(1)〜(11)が好適に用いられる。
(1)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、ビニルアクリレート、2−フェニルビニルアクリレート、1−プロペニルアクリレート、アリルアクリレート、2−アリロキシエチルアクリレート、プロパルギルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(2)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ビニルメタクリレート、2−フェニルビニルメタクリレート、1−プロペニルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−アリロキシエチルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(3)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、ビニルアクリルアミド、ビニルメタクリルアミド、N,N−ジアリルアクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド、アリルアクリルアミド、アリルメタクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0041】
(4)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(5)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(6)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(7)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(8)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
【0042】
(9)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(10)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(11)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特開2002−309057号公報、特開2002−311569号公報等に記載されている化合物。
【0043】
更に、枝ポリマー部中に求核性基を導入するためには、エステル結合とエチレン性不飽和二重結合を併せ持つモノマーを重合した後に、ケン化して水酸基を生成させることも有用である。この方法に用いられるモノマーとしては酢酸ビニルが好ましい。
【0044】
また、枝ポリマー部中に求核性基を有する前駆体ポリマーの合成方法としては、前記(3)マクロモノマー法が好ましく用いられる。
該マクロモノマーの合成法としては、まず、前記求核性基を有するモノマー、及び/又は、該求核性基を適当な保護基にて保護したモノマーを単独で重合して、又は他の共重合成分と共重合してプレポリマーを形成するか、又は、ケン化により水酸基を生成するモノマーを単独で、又は他の共重合成分と共重合して、ケン化してプレポリマーを形成した後に、既知の方法でマクロモノマー化することが好ましい。
プレポリマーの(共)重合の際には、アゾビスシアノバレリン酸、アゾビスシアノペンタノール等のアゾ系開始剤が好ましく用いられ、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の連鎖移動剤を共存させることがより好ましい。
また、ケン化を施す際には、水酸化ナトリウムなどの強アルカリ、アンモニア、アミン類等が好ましく用いられる。
【0045】
既知のマクロモノマー法の中でも、合成の容易性と汎用性から、以下の方法が好ましく用いられる。
上記の方法にて合成したプレポリマーが末端にカルボキシ基を有する場合は、グリシジル基とエチレン性不飽和結合とを併せ持つ化合物を作用させることが好ましく、このような化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが用いられる。また、プレポリマーが末端にヒドロキシ基又はアミノ基を有する場合には、エチレン性不飽和結合を有する酸ハロゲン化物又はイソシアネート化合物を作用させることが好ましく、このような化合物としては、(メタ)アクリル酸クロリド、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。更に、プレポリマーが末端にメルカプト基を有する場合は、エチレン性不飽和結合を複数有する化合物を作用させてマイケル付加させることが好ましく、このような化合物としては、アクリロイルオキシブチルアクリレート等が挙げられる。
また、求核性基を有するマクロモノマーとしては、市販品を用いてもよい。このような市販品としては、東亞合成(株)製のUM−9001,XM−9053,WM−9054,UC−3000,UC−3900,UC−3910,UC−3920,UF−5022(以上、−COOH基含有),AA−714,AX−714,AY−707,AY−714,UH−2000,UH−2032,UH−2041,UH−2170,UHE−2012(以上、−OH基含有)等が挙げられる。
【0046】
上記の方法で合成したマクロモノマーと、他のモノマーとを共重合することで、特定グラフトポリマーの前駆体(前駆体ポリマー)を合成することができる。この際に用いられる他のモノマーの例としては、前記(1)〜(11)のモノマーが好適である。
【0047】
上記方法にて合成した前駆体ポリマーの枝ポリマー部にエチレン性不飽和結合を導入する方法としては、以下の方法が用いられる。
前駆体ポリマーの枝ポリマー部がカルボキシ基を有する場合は、グリシジル基とエチレン性不飽和結合とを併せ持つ化合物を作用させることが好ましく、このような化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレートが用いられる。また、前駆体ポリマーの枝ポリマー部がヒドロキシ基又はアミノ基を有する場合には、エチレン性不飽和結合を有する酸ハロゲン化物又はイソシアネート化合物を作用させることが好ましく、このような化合物としては、(メタ)アクリル酸クロリド、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。更に、前駆体ポリマーの枝ポリマー部がメルカプト基を有する場合は、エチレン性不飽和結合を複数有する化合物を作用させてマイケル付加させることが好ましく、このような化合物としては、アクリロイルオキシブチルアクリレートが好ましく用いられる。
【0048】
次に、一般式(1)で表される化合物を前記(c)の方法で合成する場合について説明する。この(c)の方法では、熱及び/又は光の照射、酸、塩基などの作用によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するマクロモノマーを用いる。エチレン性不飽和二重結合を生成させる手法としては、熱及び/又は光を照射する、若しくは、酸、塩基を作用させることが好ましく、塩基による脱離反応を用いる手法がより好ましい。
この(c)の方法で用いるマクロモノマーは、熱及び/又は光の照射、酸、塩基などの作用によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーを、単独で重合、又は、他の共重合モノマーと共重合してプレポリマーを合成した後、既知の方法でマクロモノマー化することが好ましい。中でも、塩基による脱離反応によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーを、単独で重合、又は、他の共重合モノマーと共重合してプレポリマーを合成した後、既知の方法でマクロモノマー化することが好ましい。
【0049】
ここで、脱離反応によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーとしては、「(メタ)アクリロイル基、又は、スチリル基のエチレン性不飽和結合部に酸が付加した構造」と同じ構造を有するモノマーが好ましく用いられ、中でも、下記一般式(3)〜一般式(6)の部分構造を有するモノマーが好ましい。
【0050】
【化3】

【0051】
上記一般式(3)、及び一般式(4)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
前記「1価の置換基」とは、一般式(3)、及び一般式(4)中のベンゼン環に置換可能な基であればよく、例えば、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、シアノ基、ニトロ基、(メタ)アクリレート基、カルボキシ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヘテロ環チオ基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族チオカルボニルアミノ基、芳香族チオカルボニルアミノ基、ヘテロ環チオカルボニルアミノ基、脂肪族アミノカルボニルアミノ基、芳香族アミノカルボニルアミノ基、ヘテロ環アミノカルボニルアミノ基、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、カルバモイルアミノ基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、ヘテロ環オキシアミノ基、シリル基、脂肪族オキシシリル基、シリルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、芳香族オキシカルボニルオキシ基、ヘテロ環オキシカルボニルオキシ基、スルファモイルオキシ基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、アニリノ基、脂肪族アゾ基、芳香族アゾ基、ヘテロ環アゾ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、ヘテロ環スルフィニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、スルホ基、ホスホニル基、ホスホン酸基、又はホスフィノイルアミノ基が挙げられる。
【0052】
中でも、好ましい1価の置換基としては、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、シアノ基、ニトロ基、(メタ)アクリロイル基、カルボキシ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、脂肪族チオカルボニルアミノ基、芳香族チオカルボニルアミノ基、脂肪族アミノカルボニルアミノ基、芳香族アミノカルボニルアミノ基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、シリル基、脂肪族オキシシリル基、シリルオキシ基、脂肪族カルボニルオキシ基、芳香族カルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、脂肪族スルホニルオキシ基、スルファモイル基、スルホ基、ホスホニル基、又はホスホン基が挙げられる。
【0053】
特に、感度及び溶解性の観点で、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、(メタ)アクリロイル基、カルボキシ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族チオ基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、シリル基、脂肪族オキシシリル基、脂肪族カルボニルオキシ基、脂肪族オキシカルボニルオキシ基、脂肪族スルホニルオキシ基、スルホ基、又はホスホン基が好ましい。
【0054】
前記「脂肪族基」は、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を意味する。脂肪族基は、分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。また、無置換でもよいし置換基を有していてもよい。脂肪族基が置換基を有する場合、上記「1価の置換基」の説明で挙げた各種の置換基を有することができ、2個以上の置換基を有する場合は、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。脂肪族基がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐を有していても、また、環を形成していてもよく、中でも炭素数炭素数1〜21であることが好ましく、炭素数1〜16であることがより好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。
【0055】
炭素数1〜21のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコサニル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、i−アミル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−アミル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、
【0056】
2−エチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基、直鎖又は分岐のヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、t−オクチル基、分岐したノニル基、分岐したデシル基、分岐したウンデシル基、分岐したドデシル基、分岐したトリデシル基、分岐したテトラデシル基、分岐したペンタデシル基、分岐したヘキサデシル基、分岐したヘプタデシル基、分岐したオクタデシル基、直鎖又は分岐のノナデシル基、直鎖又は分岐のエイコサニル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、シス−ミルタニル基、イソピノカンフェニル基、ノルアダマンチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、1−(1−アダマンチル)エチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、キヌクリジニル基、シクロペンチルエチル基、ビシクロオクチル基、等が好適に挙げられる。
【0057】
上記の中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、i−アミル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−アミル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基、直鎖又は分岐のヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、t−オクチル基、分岐したノニル基、分岐したデシル基、分岐したウンデシル基、分岐したドデシル基、分岐したトリデシル基、分岐したテトラデシル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、シス−ミルタニル基、イソピノカンフェニル基、ノルアダマンチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、1−(1−アダマンチル)エチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、キヌクリジニル基、シクロペンチルエチル基、又はビシクロオクチル基がより好ましく、
【0058】
更には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、i−アミル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−アミル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基、直鎖又は分岐のヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、t−オクチル基、分岐したノニル基、分岐したデシル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、ノルアダマンチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、1−(1−アダマンチル)エチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、シクロペンチルエチル基、又はビシクロオクチル基が特に好ましい。
【0059】
上記に例示されるアルキル基において、特に、フッ素で置換されたアルキル基も好適であり、該フッ素置換のアルキル基として、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロデシル基、又はパーフルオロデシル基が好適であり、この中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ペンタデカフルオロヘプチル基がより好ましく、更にトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、又はトリデカフルオロヘキシル基が特に好ましい。
【0060】
脂肪族基がアルケニル基である場合、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数2〜21のアルケニル基が好ましい。炭素数2〜16のアルケニル基がより好ましく、炭素数2〜10のアルケニル基が更に好ましい。炭素数2〜21のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−プロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、1,1−ジメチル−3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−エチル−1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2,6−ジメチル−5−ヘプテニル基、9−デセニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニルメチル基、シクロヘキセニル基、1−メチル−2−シクロヘキセニル基、1,4−ジヒドロ−2−メチルフェニル基、オクテニル基、シトロネリル基、オレイル基、ゲラニル基、ファーネシル基、2−(1−シクロヘキセニル)エチル基等が好適に挙げられる。
【0061】
上記の中でも、ビニル基、イソプロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−プロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、1,1−ジメチル−3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−エチル−1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニルメチル基、シクロヘキセニル基、1−メチル−2−シクロヘキセニル基、1,4−ジヒドロ−2−メチルフェニル基がより好ましく、更にはビニル基、イソプロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−プロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、1,1−ジメチル−3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−エチル−1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニルメチル基、シクロヘキセニル基、1−メチル−2−シクロヘキセニル基、1,4−ジヒドロ−2−メチルフェニル基が特に好ましい。
【0062】
前記「芳香族基」は、アリール基を意味する。アリール基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよく、炭素数6〜21であることが好ましい。中でも、炭素数6〜15のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましい。
炭素数6〜21のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、アンスラキノニル基、ピレニル基、等が好適に挙げられ、この中でも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、又はアントラセニル基がより好ましく、更にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、又はフルオレニル基が特に好ましい。
アリール基は、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0063】
前記「ヘテロ環」とは、その環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであり、飽和環であっても、不飽和環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよく、無置換であっても置換基を有していてもよい。ヘテロ環の炭素数は1〜32のであることが好ましく、2〜16がより好ましい。例えば、イソシアヌル環、エポキシ環、オキセタン環、フラン環、テトラヒドロフラン環、ピラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環、トリオキサン環、テトラヒドロチオフェン環、チオフェン環、ジチアン環、トリチアン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、トリアジン環、トリアザシクロノナン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾフラン環、ピリジン環、キノリン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、フェナントロリン環、キナゾリン環、アクリジン環、ウラシル環、ラクトン環等を挙げることができる。
【0064】
中でも、イソシアヌル環、エポキシ環、フラン環、テトラヒドロフラン環、ピラン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロチオフェン環、チオフェン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾフラン環、ピリジン環、キノリン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ウラシル環、ラクトン環好ましく、特に、イソシアヌル環、エポキシ環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ラクトン環が好ましい。
【0065】
また、一般式(3)、及び一般式(5)におけるZ、並びに、一般式(4)、及び一般式(6)におけるZは、アニオン性脱離基を表す。
上記一般式(5)、及び一般式(6)において、R〜Rは、それぞれ独立に、1価の有機基を表す。好ましい例は、下記一般式(7)、及び一般式(8)におけるR〜Rと同様である。
【0066】
また、本発明において、脱離反応によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーの中でも最も好ましいモノマーの例としては、下記一般式(7)、一般式(8)、又は一般式(9)で表されるラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0067】
【化4】

【0068】
上記一般式(7)、及び一般式(8)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rとしては、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基、メチルアルコキシ基、メチルエステル基が好ましい。また、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有しもよいアリール基が好ましい。
ここで、導入しうる置換基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピオキシカルボニル基、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0069】
上記一般式(7)において、Rは、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、−COOH、−CN、−CF、−CHOH、−CHCOOH、−CHCOOR’、又は−COOR”を表す。前記R’、又はR”で表される炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、プロピル基、ヘキシル基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基が好ましい。R’、又はR”としては、中でも、水素原子、メチル基、−COOH、−CN、−CF、−CHOH、又は−CHCOOHが好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。
また、Qは、酸素原子、−NH−、又は−NR01−を表す(ここで、R01は置換基を有していてもよいアルキル基を表す)。
Aは、2価の連結基を表す。特に制限しないが、好ましくは、その構造中に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、炭素数3〜20の炭化水素環構造、ヘテロ環、エステル結合、スルホン酸エステル結合、リン酸エステル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、アミド結合、尿素結合、及びチオ尿素結合からなる群より選択される原子又は部分構造を有してもよい炭素数2〜60のアルキル基、又はアリール基であることが好ましく、その構造中に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、炭素数3〜20の炭化水素環構造、エステル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、アミド結合、尿素結合、及びチオ尿素結合からなる群より選択される原子又は部分構造を有していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1〜40のアルキル基がより好ましく、その構造中に、酸素原子、窒素原子、炭素数3〜12の炭化水素環構造、エステル結合、ウレタン結合、及びアミド結合からなる群より選択される原子又は部分構造を有していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1〜40のアルキル基であることが更に好ましい。
【0070】
Aで表される2価の連結基は、導入可能な場合には更に置換基を有していてもよい。導入しうる置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20の鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基、炭素数1〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のスルホンアミド基、炭素数1〜20のカルバモイル基、炭素数0〜20のスルファモイル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のN−アシルスルファモイル基、炭素数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のイミノ基、炭素数3〜20のアンモニオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜20のアリールスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数1〜20のウレイド基、炭素数2〜20のヘテロ環基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数0〜2のスルファモイルアミノ基、炭素数2〜20のシリル基、イソシアネート基、イソシアニド基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、オニウム基、エチレン性不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。中でも、原料入手の容易性からは炭素数1〜10の鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、また、感度及び現像性の観点からはヒドロキシ基、メルカプト基、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。また、感度及び現像性のバランスの観点からヒドロキシ基が最も好ましい。
更に、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は、−NR02−を表し、ここで、R02としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられる。
加えて、Zは、アニオン性脱離基を表す。
【0071】
上記一般式(8)において、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。
ここで、R、及びRで表される1価の有機基としては、炭素数1〜6の炭化水素基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましい。
上記一般式(8)において、Rは、前記一般式(7)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。
また、Aは、−G−X−を表し、ここで、Gは、Gと連結する2価の有機基を表し、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−NR03−(ここで、R03は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、ここで導入してもよい置換基は、前記「1価の置換基」の説明の項で示した例と同様で、好ましい例も同様である)を表す。
更に、Aは、酸素原子、硫黄原子、又は−NR04−(ここで、R04は、水素原子、又は水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、ここで導入してもよい置換基は、前記「1価の置換基」の説明の項で示した例と同様で、好ましい例も同様である)を表す。
加えて、Gはn+1価の連結基を表す。特に制限しないが、好ましくは、その構造中に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、炭素数3〜20の炭化水素環構造、ヘテロ環、エステル結合、スルホン酸エステル結合、リン酸エステル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、アミド結合、尿素結合、及びチオ尿素結合からなる群より選択される原子又は部分構造を有してもよい炭素数2〜60のアルキル基又はアリール基であることが好ましく、その構造中に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、炭素数3〜20の炭化水素環構造、エステル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、アミド結合、尿素結合、及びチオ尿素結合からなる群より選択される原子又は部分構造を有していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1〜40のアルキル基がより好ましく、その構造中に、酸素原子、窒素原子、炭素数3〜12の炭化水素環構造、エステル結合、ウレタン結合、及びアミド結合からなる群より選択される原子又は部分構造を有していてもよい直鎖状又は分岐状の炭素数1〜40のアルキル基であることが更に好ましい。
【0072】
で表されるn+1価の連結基は、導入可能な場合には更に置換基を有していてもよい。導入しうる置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20の鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基、炭素数1〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のスルホンアミド基、炭素数1〜20のカルバモイル基、炭素数0〜20のスルファモイル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のN−アシルスルファモイル基、炭素数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のイミノ基、炭素数3〜20のアンモニオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜20のアリールスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数1〜20のウレイド基、炭素数2〜20のヘテロ環基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数0〜2のスルファモイルアミノ基、炭素数2〜20のシリル基、イソシアネート基、イソシアニド基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、オニウム基、エチレン性不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。中でも、原料入手の容易性からは炭素数1〜10の鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、また、感度及び現像性の観点からはヒドロキシ基、メルカプト基、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。また、感度及び現像性のバランスの観点からヒドロキシ基が最も好ましい。nは1〜10の整数を表す。
は、アニオン性脱離基を表す。
【0073】
上記一般式(9)において、R〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の置換基を表すが、少なくとも1つは、下記一般式(10)で表される基である。
ここで、R〜R12で表される1価の置換基としては、前記「1価の置換基」の説明の項で述べた置換基が挙げられ、好ましい例も同様である
また、R13〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。ここで、R13〜R15で表される1価の有機基としては、炭素数1〜6の炭化水素基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましい。
【0074】
【化5】

【0075】
上記一般式(10)において、Gはm+1価の連結基を表し、例としては、前記一般式(8)におけるGで述べた連結基の例が挙げられ、好ましい例もGと同様である。mは、1〜10の整数を表す。
また、一般式(10)におけるR〜R、Z、及びAは、前記一般式(8)におけるR〜R、Z、及びAと同義である。
【0076】
以下、前記一般式(7)で表されるラジカル重合性化合物の具体例(M−1)〜(M−12)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
【化6】

【0078】
一般式(8)で表されるラジカル重合性化合物、及び一般式(9)で表されるラジカル重合性化合物の具体例〔i−1〜i−60〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
【化7】

【0080】
【化8】

【0081】
【化9】

【0082】
【化10】

【0083】
【化11】

【0084】
【化12】

【0085】
上記のような、脱離反応によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーと共重合可能なモノマーの好ましい例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等が挙げられ、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体も用いることができる。この他、水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。また、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類、及びこれらのエチレンオキシ変性体、ヒドロキシスチレンなどが有用である。更に、前記の(1)〜(11)のモノマーが好適に用いられる。
【0086】
前記脱離反応によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーを単独で重合して、又は、前記共重合可能なモノマーと共重合してプレポリマーを形成した後に、既知の方法でマクロモノマー化することが好ましい。
プレポリマーの(共)重合の際には、アゾビスシアノバレリン酸、アゾビスシアノペンタノール等のアゾ系開始剤が好ましく用いられ、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の連鎖移動剤を共存させることがより好ましい。
既知のマクロモノマー法の中でも、合成の容易性と汎用性から、以下の方法が好ましく用いられる。
上記の方法にて合成したプレポリマーが末端にカルボキシ基を有する場合は、グリシジル基とエチレン性不飽和結合とを併せ持つ化合物を作用させることが好ましく、このような化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが用いられる。また、プレポリマーが末端にヒドロキシ基又はアミノ基を有する場合には、エチレン性不飽和結合を有する酸ハロゲン化物又はイソシアネート化合物を作用させることが好ましく、このような化合物としては、(メタ)アクリル酸クロリド、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。更に、プレポリマーが末端にメルカプト基を有する場合は、エチレン性不飽和結合を複数有する化合物を作用させてマイケル付加させることが好ましく、このような化合物としては、アクリロイルオキシブチルアクリレート等が挙げられる。
【0087】
上記の方法で合成したマクロモノマーと、他のモノマーとの反応(共重合)により幹ポリマー部を形成することで、特定グラフトポリマーの前駆体(前駆体ポリマー)を合成することができる。この際に用いられる他のモノマーの例としては、前記(1)〜(11)のモノマーが好適である。
【0088】
上記方法にて合成された前駆体ポリマーに対して脱離反応を施してエチレン性不飽和二重結合を生成させる方法としては、所望の量の塩基を、前駆体ポリマー溶液中に、冷却或いは加熱条件下で滴下、反応を行い、必要に応じて、酸による中和処理を行う方法が好ましい。塩基としては、無機化合物、有機化合物のどちらを使用してもよい。好ましい無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられ、有機塩基としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドのような金属アルコキシド、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)のような有機アミン化合物等が挙げられる。
【0089】
なお、一般式(1)で表される化合物を前記(b)の方法で合成する場合について説明する。この(b)の方法では、求核性基との反応が可能な置換基を枝ポリマー部に有する前駆体ポリマーを用いるが、この前駆体ポリマーは、前記(a)及び(c)の方法で用いられたものと同様のマクロモノマー法を用いて合成される。この際、求核性基との反応が可能な置換基としては、グリシジル基、イソシアネート基などが好ましく、グリシジル基がより好ましく用いられる。このマクロモノマー法に用いられる原料マクロモノマーとしては、例えば、東亞合成(株)製UG−4000,UG−4010,UG−4030,UG−4040,UG−4070,WM−9080,XM−9081(以上、グリシジル基含有)等の市販品を用いてもよい。
【0090】
(同定法)
本発明の特定グラフトポリマーは、以下の方法で、その構造を同定することができる。
本発明の特定グラフトポリマーを、前述の(a)の合成法にて合成した場合、まず、マクロモノマーの合成時に、残存モノマーの定量(HPLC法等)、分子量測定(ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法等))、必要に応じて、酸価測定(アルカリ溶液滴定法)によって、求核性基の含有量を定量する。ここで、分子量を求核性基で除した値が2以上であることを確認することで、マクロモノマー中に複数の求核性基を含有する置換基がペンダントされている状態かどうかを判断する。
【0091】
その後、このマクロモノマーと他の共重合モノマーとを共重合させて前駆体ポリマーを合成した後、合成生成物に対し、同様に、HPLC法等による残存モノマーの定量、GPC法等による分子量測定、アルカリ溶液滴定法等による酸価測定を実施して、マクロモノマーが消費されたこと、分子量が増加したこと、酸価が低減したことを確認する。これにより、前駆体ポリマー中にマクロモノマーが導入されたことを判断する。
【0092】
そして、前駆体ポリマーにエチレン性不飽和二重結合を導入する反応において、前駆体ポリマー中の求核性基と反応する置換基とエチレン性不飽和二重結合とを併せ持つ化合物が消費されたことをHPLC法等の残存モノマーピーク消失によって確認する。更に、GPC法等により分子量が増加したこと、酸価が低減したことを確認する。
また、特定グラフトポリマー中のエチレン性不飽和二重結合部位が(メタ)アクリル基である場合、特定グラフトポリマー中のエチレン性不飽和二重結合量の定量は、以下の加水分解法によって実施ことができる。即ち、特定グラフトポリマーを適当な溶媒に溶解させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液を加えて2時間以上攪拌した後、加水分解によって生成した(メタ)アクリル酸をHPLC法によって定量する方法である。
【0093】
また、本発明の特定グラフトポリマーを(c)の合成法にて合成した場合、まず、マクロモノマーの合成時に残存モノマーの定量(HPLC法等)、分子量測定(ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法等))、必要に応じて酸価測定(アルカリ溶液滴定法)を実施する。ここで、分子量を「塩基で処理することによってエチレン性不飽和二重結合を与える置換基(以降、エチレン性不飽和二重結合前駆体部位と記載する)の導入量」で除した値が2以上であることを確認することで、マクロモノマー中に複数のエチレン性不飽和二重結合前駆体部位がペンダントされている状態かどうかを判断する。
また、マクロモノマー中のエチレン性不飽和二重結合前駆体部位導入量は、上記加水分解法によって測定することもできる。
【0094】
その後、マクロモノマーと他の共重合モノマーを共重合させて前駆体ポリマーを合成し、同様に、HPLC等による残存モノマーの定量、GPC等による分子量測定、アルカリ滴定法等による酸価測定を実施してマクロモノマーが消費されたこと、分子量が増加したこと、酸価が低減したことを確認する。これにより、前駆体ポリマー中にマクロモノマーが導入されたことを判断する。
そして、前駆体ポリマーに塩基を作用させて脱離反応を実施した後に、上記加水分解法によってエチレン性不飽和二重結合が生成したことを確認する。
【0095】
本発明の特定グラフトポリマーは、合成の汎用性、容易性、及び、感度、経時安定性の観点から、前記合成法(a)又は(c)により合成されたものであることが好ましく、合成法(c)により合成されたものであることが最も好ましい。合成法(a)及び合成法(c)の中でも、好ましい合成法を次に示す。
【0096】
(合成法(a)を用いた合成)
まず、求核性基又は該求核性基を適当な保護基にて保護したモノマーを単独で重合、又は他のモノマーと共重合した後に、末端にエチレン不飽和結合を導入してマクロモノマー化する。次に、該マクロモノマーを単独で重合、又は他のモノマーと共重合して幹ポリマー部を形成する。求核性基が保護されている場合はマクロモノマー化した後、又は、幹ポリマー部を形成した後に脱保護反応を施す。最後に前記求核性基との反応が可能な置換基と不飽和二重結合とを併せ持つ化合物を作用させる。
【0097】
この合成法の各段階において用いられる化合物、構造及び手法等の好ましい例を次にまとめる。
即ち、求核性基としては、カルボキシ基、又は水酸基が好ましく、カルボキシ基が最も好ましい。また、求核性基又は該求核性基を適当な保護基にて保護したモノマーと他のモノマーを共重合することが好ましい。
枝ポリマー部を形成する際に使用するモノマーとしては、(メタ)アクリル系、スチレン系、又はビニル系モノマーが好ましく、(メタ)アクリル系又はスチレン系モノマーがより好ましく、(メタ)アクリル系モノマーが最も好ましい。
【0098】
更に、マクロモノマー化する際に末端に導入するエチレン性不飽和結合性基としては、(メタ)アクリル系、スチレン系、ビニル系が好ましく、(メタ)アクリル系、又はスチレン系がより好ましく、(メタ)アクリル系が最も好ましい。該マクロモノマーを用いて幹ポリマー部を形成する場合は他のモノマーと共重合することが好ましく、共重合モノマーとしては(メタ)アクリル系、スチレン系、又はビニル系モノマーが好ましく、(メタ)アクリル系又はスチレン系モノマーがより好ましく、(メタ)アクリル系モノマーが最も好ましい。
前記求核性基との反応が可能な置換基と不飽和二重結合とを併せ持つ化合物が有する、「前記求核性基との反応が可能な置換基」としては、グリシジル基、脂環式エポキシ基、イソシアネート基が好ましく、「不飽和二重結合」としては(メタ)アクリル系、スチレン系、ビニル系が好ましく、(メタ)アクリル系又はスチレン系がより好ましく、(メタ)アクリル系が最も好ましい。
【0099】
(合成法(c)を用いた合成)
まず、熱又は光の照射、酸、塩基などの作用によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーを、単独で重合、又は、他の共重合モノマーと共重合してプレポリマーを合成した後、末端にエチレン不飽和結合を導入してマクロモノマー化する。次に、該マクロモノマーを単独で重合、又は他のモノマーと共重合して幹ポリマー部を形成する。最後に、熱又は光の照射、酸、塩基などを作用させてエチレン性不飽和二重結合を生成させる。
【0100】
この合成法の各段階において用いられる化合物、構造及び手法等の好ましい例を次にまとめる。
即ち、エチレン性不飽和二重結合を生成させる手法としては塩基による脱離反応を用いる手法が好ましい。
脱離反応によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーとしては、「(メタ)アクリロイル基、又は、スチリル基のエチレン性不飽和結合部に酸が付加した構造」と同じ構造を有するモノマーが好ましく用いられ、中でも、前記一般式(12)、一般式(4)、又は一般式(5)で表されるラジカル重合性化合物がより好ましく用いられ、一般式(12)、又は一般式(4)で表されるラジカル重合性化合物が最も好ましく用いられる。
【0101】
また、マクロモノマーのプレポリマーを合成する際は、脱離反応によってエチレン性不飽和二重結合を生成する構造を有するモノマーと、他のモノマーとを共重合することが好ましい。この際に使用するモノマーは、(メタ)アクリル系、スチレン系、又はビニル系モノマーが好ましく、(メタ)アクリル系、又はスチレン系モノマーがより好ましく、(メタ)アクリル系モノマーが最も好ましい。更に、マクロモノマー化する際に末端に導入するエチレン性不飽和結合性基としては、(メタ)アクリル系、スチレン系、ビニル系が好ましく、(メタ)アクリル系又はスチレン系がより好ましく、(メタ)アクリル系が最も好ましい。
該マクロモノマーを用いて幹ポリマー部を形成する場合は他のモノマーと共重合することが好ましく、共重合モノマーとしては、(メタ)アクリル系、スチレン系、又はビニル系モノマーが好ましく、(メタ)アクリル系、又はスチレン系モノマーがより好ましく、(メタ)アクリル系モノマーが最も好ましい。
【0102】
脱離反応によってエチレン性不飽和二重結合を生成する手法としては、所望の量の塩基を、前駆体ポリマー溶液中に、冷却或いは加熱条件下で滴下、反応を行い、必要に応じて、酸による中和処理を行う方法が好ましい。
【0103】
以下、本発明の特定グラフトポリマーについて、その具体例(I)〜(IX)を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0104】
【化13】

【0105】
【化14】

【0106】
【化15】

【0107】
【化16】

【0108】
【化17】

【0109】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、(A)本発明のグラフトポリマー(特定グラフトポリマー)を含有することを必須とし、その他、(B)光重合開始剤、(C)着色剤、(D)増感剤等を含有することが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、極めて高感度で硬化し、硬質基材表面におけるパターン形成に適用した際に、硬化領域では硬質材料表面との密着性が高く、未硬化領域ではその除去性に優れる。このことから、本発明の硬化性組成物は、3次元光造形やホログラフィー、カラーフィルタやフォトレジスト、平版印刷版材及びカラープルーフといった画像形成材料や、インク、塗料、接着剤、コーティング剤、歯科材料等の分野において好ましく使用することができる。特に、固体撮像素子用又はLCD用カラーフィルタ用途において、基板との密着性に優れ、所望の断面形状の着色パターンを形成することができる。
以下、本発明の硬化性組成物に含有される各成分について順次説明する。
【0110】
〔(A)エチレン性不飽和二重結合がペンダントされた構造単位を少なくとも2以上含む枝ポリマー部を有するグラフトポリマー(特定グラフトポリマー)〕
本発明グラフトポリマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のグラフトポリマーの含有量としては、本発明の硬化性組成物に含有される全固形分に対して、0.01質量%〜99.5質量%が好ましく、1質量%〜90質量%がより好ましく、2質量%〜80質量%が更に好ましく、3質量%〜60質量%が最も好ましい。
特に、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合、(A)特定グラフトポリマーの含有量は、硬化性組成物に含有される全固形分に対して、0.01質量%〜90質量%が好ましく、2質量%〜60質量%がより好ましく、5質量%〜40質量%が更に好ましい。
【0111】
〔(B)光重合開始剤〕
本発明の硬化性組成物は、(B)光重合開始剤を含有することが好ましい。
本発明における光重合開始剤は、光により分解し、本発明における(A)成分及び後述する(E)成分の重合を開始、促進する化合物であり、波長300〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。また、光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0112】
光重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシム系化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物、アルキルアミノ化合物、等が挙げられる。
以下、これらの各化合物について詳細に述べる。
【0113】
有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、M.P.Hutt”Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」筆に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0114】
s−トリアジン化合物として、より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0115】
オキシジアゾール化合物としては、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(シアノスチリル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(ナフト−1−イル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−スチリル)スチリル−1,3,4−オキソジアゾール等が挙げられる。
【0116】
カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルホリノブチロフェノン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0117】
ケタール化合物としては、ベンジルメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルエチルアセタール等を挙げることができる。
【0118】
ベンゾイン化合物としては、m−ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート等を挙げることができる。
【0119】
アクリジン化合物としては、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンなどを挙げることができる。
【0120】
有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0121】
アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を挙げることができる。
【0122】
クマリン化合物としては、例えば、3−メチル−5−アミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−クロロ−5−ジエチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−ブチル−5−ジメチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン等を挙げることができる。
【0123】
アジド化合物としては、米国特許第2848328号明細書、米国特許第2852379号明細書並びに米国特許第2940853号明細書に記載の有機アジド化合物、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−エチルシクロヘキサノン(BAC−E)等が挙げられる。
【0124】
メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0125】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0126】
有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837、特開2002−107916、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0127】
ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特願2002−328465号公報等に記載される化合物等が挙げられる。
【0128】
オキシム系化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S. Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報記載の化合物等が挙げられる。
【0129】
オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩などが挙げられる。
【0130】
本発明に好適に用いることのできるヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩であり、安定性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基等の電子供与性基で2つ以上置換されていることが好ましい。また、その他の好ましいスルホニウム塩の形態として、トリアリールスルホニウム塩の1つの置換基がクマリン、アントアキノン構造を有し、300nm以上に吸収を有するヨードニウム塩などが好ましい。
【0131】
本発明に好適に用いることのできるスルホニウム塩としては、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩が挙げられ、安定性の感度点から好ましくは電子吸引性基で置換されていることが好ましい。電子吸引性基としては、ハメット値が0より大きいことが好ましい。好ましい電子吸引性基としては、ハロゲン原子、カルボン酸などが挙げられる。
また、その他の好ましいスルホニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩の1つの置換基がクマリン、アントアキノン構造を有し、300nm以上に吸収を有するスルホニウム塩が挙げられる。別の好ましいスルホニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩が、アリーロキシ基、アリールチオ基を置換基に有する300nm以上に吸収を有するスルホニウム塩が挙げられる。
【0132】
また、オニウム塩化合物としては、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩を用いることもできる。
【0133】
アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア819、ダロキュア4265、ダロキュアTPOなどが挙げられる。
【0134】
アルキルアミノ化合物としては、例えば、特開平9−281698号公報の段落番号[0047]、特開平6−19240号公報、特開平6−19249号公報等に記載のジアルキルアミノフェニル基を有する化合物やアルキルアミン化合物が挙げられる。具体的には、ジアルキルアミノフェニル基を有する化合物としてはp−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の化合物や、p−ジエチルアミノベンズカルバルデヒド、9−ジュロリジルカルバルデヒド等のジアルキルアミノフェニルカルバルデヒドが、アルキルアミン化合物としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0135】
本発明に用いられる(B)光重合開始剤としては、露光感度の観点から、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、メタロセン化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物、オニウム系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0136】
より好ましくは、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物、オニウム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物であり、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が更に好ましい。
【0137】
(B)光重合開始剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対し、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%〜30質量%、特に好ましくは1質量%〜20質量%である。
特に、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合、(B)光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物に含有される全固形分に対して、0.5質量%〜50質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が更に好ましい。
【0138】
〔(C)着色剤〕
本発明の硬化性組成物は、(C)着色剤を含有してもよい。
本発明の硬化性組成物に含有される着色剤には特に制限はなく、従来公知の種々の染料や顔料を1種又は2種以上混合して用いることができる。着色剤としては、耐熱性、耐光性等の耐久性の観点から、顔料であることが好ましい。
【0139】
本発明の硬化性組成物に含有しうる顔料としては、従来公知の種々の無機顔料又は有機顔料を用いることができ、高透過率であることが好ましい。
【0140】
無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、及び前記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0141】
有機顔料としては、例えば、
C.I.ピグメントイエロー11,24,31,53,83,93,99,108,109,110,138,139,147,150,151,154,155,167,180,185,199,;
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71;
C.I.ピグメントレッド81,105,122,149,150,155,171,175,176,177,209,220,224,242,254,255,264,270;
C.I.ピグメントバイオレット19,23,32,39;
C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:3,15:6,16,22,60,66;
C.I.ピグメントグリーン7,36,37;
C.I.ピグメントブラウン25,28;
C.I.ピグメントブラック1,7;
カーボンブラック等を挙げることができる。
【0142】
本発明では、特に顔料の構造式中に塩基性のN原子をもつものを好ましく用いることができる。これら塩基性のN原子をもつ顔料は、本発明の硬化性組成物中で良好な分散性を示す。その原因については十分解明されていないが、重合成分と顔料との親和性の良さが影響しているものと推定される。
【0143】
本発明において好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
【0144】
C.I.ピグメントイエロー11,24,108,109,110,138,139,150,151,154,167,180,185,
C.I.ピグメントオレンジ36,71,
C.I.ピグメントレッド122,150,171,175,177,209,224,242,254,255,264,
C.I.ピグメントバイオレット19,23,32,
C.I.ピグメントブルー15:1,15:3,15:6,16,22,60,66,
C.I.ピグメントブラック1
【0145】
これら有機顔料は、単独で、若しくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。例えば、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合には、着色パターンの色純度を上げるために組合せで用いることが好ましい。
顔料の組合せの具体例を以下に示す。例えば、赤の顔料として、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料単独又はそれらの少なくとも一種と、ジスアゾ系黄色顔料、イソインドリン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料又はペリレン系赤色顔料と、の混合などを用いることができる。例えば、アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド177が挙げられ、ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド155、C.I.ピグメントレッド224が挙げられ、ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメントレッド254が挙げられ、色再現性の点でC.I.ピグメントイエロー139との混合が好ましい。また、赤色顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:50が好ましい。100:4以下では400nmから500nmの光透過率を抑えることが困難で色純度を上げることができない場合がある。また100:51以上では主波長が短波長よりになり、NTSC目標色相からのずれが大きくなる場合がある。特に、上記質量比としては、100:10〜100:30の範囲が最適である。なお、赤色顔料同士の組み合わせの場合は、色度に併せて調整することができる。
【0146】
また、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料を単独で、又は、これとジスアゾ系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、アゾメチン系黄色顔料若しくはイソインドリン系黄色顔料との混合を用いることができる。例えば、このような例としては、C.I.ピグメントグリーン7、36、37とC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180又はC.I.ピグメントイエロー185との混合が好ましい。緑顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:150が好ましい。上記質量比としては100:30〜100:120の範囲が特に好ましい。
【0147】
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料を単独で、若しくはこれとジオキサジン系紫色顔料との混合を用いることができる。例えばC.I.ピグメントブルー15:6とC.I.ピグメントバイオレット23との混合が好ましい。青色顔料と紫色顔料との質量比は、100:0〜100:30が好ましく、より好ましくは100:10以下である。
【0148】
また、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタのブラックマトリックス形成に使用する場合に用いられる顔料としては、カーボン、チタンカーボン、酸化鉄、酸化チタン単独又は混合が用いられ、カーボンとチタンカーボンとの組合せが好ましい。また、カーボンとチタンカーボンとの質量比は、100:0〜100:60の範囲が好ましい。
【0149】
顔料の一次粒子径は、カラーフィルタ用として用いる場合には、色ムラやコントラストの観点から、100nm以下であることが好ましく、また、分散安定性の観点から5nm以上であることが好ましい。顔料の一次粒子径としてより好ましくは、5〜75nmであり、更に好ましくは5〜55nmであり、特に好ましくは5〜35nmである。
顔料の一次粒子径は、電子顕微鏡等の公知の方法で測定することができる。
【0150】
中でも、顔料としては、アントラキノン系、アゾメチン系、ベンジリデン系、シアニン系、ジケトピロロピロール系、フタロシアニン系から選ばれる顔料であることが好ましい。
【0151】
また、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に用いる場合には、色むらやコントラストの観点では、硬化性組成物中に均一に溶解する染料を用いることが好ましい。
本発明の硬化性組成物に含有される着色剤として使用できる染料は、特に制限はなく、従来カラーフィルタ用として公知の染料が使用できる。例えば、特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特登2592207号、米国特許第4,808,501号明細書、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、特開平6−194828号公報、特開平8−211599号公報、特開平4−249549号公報、特開平10−123316号公報、特開平11−302283号公報、特開平7−286107号公報、特開2001−4823号公報、特開平8−15522号公報、特開平8−29771号公報、特開平8−146215号公報、特開平11−343437号公報、特開平8−62416号公報、特開2002−14220号公報、特開2002−14221号公報、特開2002−14222号公報、特開2002−14223号公報、特開平8−302224号公報、特開平8−73758号公報、特開平8−179120号公報、特開平8−151531号公報等に開示されている色素が使用できる。
【0152】
化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系等の染料が使用できる。
【0153】
また、硬化性組成物のパターン露光及び露光部の硬化後に、未露光部を水又はアルカリ現像により除去してパターンを形成するという、例えば、レジストやカラーフィルタの着色パターンを形成するといった場合、現像による光未照射部のバインダーポリマー、染料などを完全に除去するという観点から、酸性染料及び/又はその誘導体が好適に使用できる場合がある。
その他、直接染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、アゾイック染料、分散染料、油溶染料、食品染料、及び/又は、これらの誘導体等も有用に使用することができる。
【0154】
酸性染料は、スルホン酸やカルボン酸等の酸性基を有するものであれば特に限定されないが、有機溶剤や現像液に対する溶解性、塩基性化合物との塩形成性、吸光度、組成物中の他の成分との相互作用、耐光性、耐熱性等の必要とされる性能の全てを考慮して選択される。
【0155】
以下、酸性染料の具体例を挙げるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。例えば、
acid alizarin violet N;
acid black 1,2,24,48;
acid blue 1,7,9,15,18,23,25,27,29,40,42,45,51,62,70,74,80,83,86,87,90,92,96,103,112,113,120,129,138,147,150,158,171,182,192,210,242,243,256,259,267,278,280,285,290,296,315,324:1,335,340;
acid chrome violet K;
acid Fuchsin;
acid green 1,3,5,9,16,25,27,50,58,63,65,80,104,105,106,109;
acid orange 6,7,8,10,12,26,50,51,52,56,62,63,64,74,75,94,95107,108,169,173;
【0156】
acid red 1,4,8,14,17,18,26,27,29,31,34,35,37,42,44,50,51,52,57,66,73,80,87,88,91,92,94,97,103,111,114,129,133,134,138,143,145,150,151,158,176,182,183,198,206,211,215,216,217,227,228,249,252,257,258,260,261,266,268,270,274,277,280,281,195,308,312,315,316,339,341,345,346,349,382,383,394,401,412,417,418,422,426;
acid violet 6B,7,9,17,19;
acid yellow 1,3,7,9,11,17,23,25,29,34,36,38,40,42,54,65,72,73,76,79,98,99,111,112,113,114,116,119,123,128,134,135,138,139,140,144,150,155,157,160,161,163,168,169,172,177,178,179,184,190,193,196,197,199,202,203,204,205,207,212,214,220,221,228,230,232,235,238,240,242,243,251;
【0157】
Direct Yellow 2,33,34,35,38,39,43,47,50,54,58,68,69,70,71,86,93,94,95,98,102,108,109,129,136,138,141;
Direct Orange 34,39,41,46,50,52,56,57,61,64,65,68,70,96,97,106,107;
Direct Red 79,82,83,84,91,92,96,97,98,99,105,106,107,172,173,176,177,179,181,182,184,204,207,211,213,218,220,221,222,232,233,234,241,243,246,250;
Direct Violet 47,52,54,59,60,65,66,79,80,81,82,84,89,90,93,95,96,103,104;
【0158】
Direct Blue 57,77,80,81,84,85,86,90,93,94,95,97,98,99,100,101,106,107,108,109,113,114,115,117,119,137,149,150,153,155,156,158,159,160,161,162,163,164,166,167,170,171,172,173,188,189,190,192,193,194,196,198,199,200,207,209,210,212,213,214,222,228,229,237,238,242,243,244,245,247,248,250,251,252,256,257,259,260,268,274,275,293;
Direct Green 25,27,31,32,34,37,63,65,66,67,68,69,72,77,79,82;
Mordant Yellow 5,8,10,16,20,26,30,31,33,42,43,45,56,50,61,62,65;
Mordant Orange 3,4,5,8,12,13,14,20,21,23,24,28,29,32,34,35,36,37,42,43,47,48;
【0159】
Mordant Red 1,2,3,4,9,11,12,14,17,18,19,22,23,24,25,26,30,32,33,36,37,38,39,41,43,45,46,48,53,56,63,71,74,85,86,88,90,94,95;
Mordant Violet 2,4,5,7,14,22,24,30,31,32,37,40,41,44,45,47,48,53,58;
Mordant Blue 2,3,7,8,9,12,13,15,16,19,20,21,22,23,24,26,30,31,32,39,40,41,43,44,48,49,53,61,74,77,83,84;
Mordant Green 1,3,4,5,10,15,19,26,29,33,34,35,41,43,53;
Food Yellow 3;
及びこれらの染料の誘導体が挙げられる。
【0160】
上記の酸性染料の中でも、acid black 24;
acid blue 23,25,29,62,80,86,87,92,138,158,182,243,324:1;
acid orange 8,51,56,74,63;
acid red 1,4,8,34,37,42,52,57,80,97,114,143,145,151,183,217,249;
acid violet 7;
acid yellow 17,25,29,34,42,72,76,99,111,112,114,116,134,155,169,172,184,220,228,230,232,243;
Acid Green 25等の染料及びこれらの染料の誘導体が好ましい。
また、上記以外の、アゾ系、キサンテン系、フタロシアニン系の酸性染料も好ましく、C.I.Solvent Blue 44、38;C.I.Solvent orange 45;Rhodamine B、Rhodamine 110等の酸性染料及びこれらの染料の誘導体も好ましく用いられる。
【0161】
中でも、(C)着色剤としては、トリアリルメタン系、アントラキノン系、アゾメチン系、ベンジリデン系、オキソノール系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、アンスラピリドン系から選ばれる着色剤であることが好ましい。
【0162】
本発明の硬化性組成物における(C)着色剤の含有量は、カラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合を含めて、硬化性組成物に含有される全固形分に対して、30質量%〜95質量%であることが好ましく、40質量%〜85質量%であることがより好ましく、50質量%〜75質量%であることが最も好ましい。
【0163】
〔(D)増感剤〕
本発明の硬化性組成物は、(B)光重合開始剤によるラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、(D)増感剤を含有していてもよい。本発明に用いることができる増感剤としては、前記した(B)光重合開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
【0164】
本発明に用いることができる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ、300nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、且つ、330nm〜450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10−ジアルコキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリジンオレンジ、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーズケトンなどの芳香族ケトン化合物、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物などが挙げられる。
更に、欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、同5,227,227号明細書、特開2001−125255号公報、特開平11−271969号公報等に記載の化合物等なども用いられる。
【0165】
より好ましい増感剤の例としては、下記一般式(i)〜(iv)で表される化合物が挙げられる。
【0166】
【化18】

【0167】
一般式(i)中、Aは硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は1価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0168】
【化19】

【0169】
一般式(ii)中、Ar及びArはそれぞれ独立にアリール基を表し、−L−による結合を介して連結している。ここでLは−O−又は−S−を表す。また、Wは一般式(i)に示したものと同義である。
【0170】
【化20】

【0171】
一般式(iii)中、Aは硫黄原子又はNR59を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に1価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0172】
【化21】

【0173】
一般式(iv)中、A、Aはそれぞれ独立に−S−又は−NR62−を表し、R62は置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L、Lはそれぞれ独立に、隣接するA、A及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に1価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0174】
また、本発明の硬化性組成物に含有しうる好ましい増感剤としては、上記のもの他、下記一般式(v)〜一般式(vii)で表される化合物から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0175】
【化22】

【0176】
一般式(v)又は一般式(vi)中、R及びRは、各々独立に1価の置換基を表し、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、又は1価の置換基を表す。nは0〜5の整数を表し、n’は0〜5の整数を表し、n及びn’が両方とも0となることはない。nが2以上である場合、複数存在するRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。n’が2以上である場合、複数存在するRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0177】
一般式(v)で表される化合物としては、感度及び顔料を含有する場合における着色性の観点から、下記一般式(v−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0178】
【化23】

【0179】
一般式(v−1)中、R及びRは、各々独立に1価の置換基を表す。nは0〜5の整数を表し、n’は1〜5の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、n’が2以上である場合、複数存在するRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0180】
一般式(v−1)において、R及びRで表される1価の置換基は、前記一般式(v)においてR及びRで表される1価の置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0181】
一般式(v)又は一般式(vi)で表される化合物としては、波長365nmにおけるモル吸光係数εが500mol−1・L・cm−1以上であることが好ましく、波長365nmにおけるεが3000mol−1・L・cm−1以上であることがより好ましく、波長365nmにおけるεが20000mol−1・L・cm−1以上であることが最も好ましい。各波長でのモル吸光係数εの値が上記範囲であると、光吸収効率の観点から感度向上効果が高く好ましい。
ここで、モル吸光係数εは、1−metoxy−2−propanol溶液に0.01g/lの濃度で調整した色素溶液を試料とし、365nmにおける試料の透過スペクトルを測定し、試料のUV−visible吸収スペクトルから吸光度を求めることにより得られる。測定装置は、Varian社製UV−Vis−MR Spectrophotometer Cary5G型分光高度計を用いた。
【0182】
一般式(v)又は一般式(vi)で表される化合物の好ましい具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書においては、化学式は簡略構造式により記載することもあり、特に元素や置換基の明示がない実線等は、炭化水素基を表す。また、下記具体例において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはブチル基を、n−Buはn−ブチル基を、Phはフェニル基を表す。
【0183】
【化24】

【0184】
【化25】

【0185】
【化26】

【0186】
【化27】

【0187】
【化28】

【0188】
【化29】

【0189】
【化30】

【0190】
【化31】

【0191】
【化32】

【0192】
【化33】

【0193】
【化34】

【0194】
【化35】

【0195】
一般式(vii)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R)−を表し、Yは酸素原子、硫黄原子、又は=N(R)を表す。R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の非金属原子団を表し、A、R、R、及びRは、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0196】
一般式(vii)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の非金属原子団を表す。R、R及びRが1価の非金属原子を表す場合、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換の芳香族複素環残基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であることが好ましい。
【0197】
一般式(vii)で表される化合物は、光重合開始剤の分解効率向上の観点から、Yは酸素原子、又は=N(R)が好ましい。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の非金属原子団を表す。更に、Yは=N(R)であることが最も好ましい。
【0198】
以下、一般式(vii)で表される化合物の好ましい具体例(1)〜(124)を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、酸性核と塩基性核を結ぶ2重結合による異性体については明らかでなく、本発明はどちらかの異性体に限定されるものでもない。
【0199】
【化36】

【0200】
【化37】

【0201】
【化38】

【0202】
【化39】

【0203】
【化40】

【0204】
【化41】

【0205】
【化42】

【0206】
【化43】

【0207】
【化44】

【0208】
【化45】

【0209】
【化46】

【0210】
【化47】

【0211】
【化48】

【0212】
【化49】

【0213】
【化50】

【0214】
【化51】

【0215】
【化52】

【0216】
【化53】

【0217】
本発明における増感色素に関しては、更に、硬化性組成物の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。
例えば、増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを、共有結合、イオン結合、水素結合等の方法により結合させることで、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの増感色素の不要な析出抑制を行うことができる。
また、当該増感色素と前述する光重合開始剤におけるラジカル発生能を有する部分構造(例えば、ハロゲン化アルキル、オニウム、過酸化物、ビイミダゾール等の還元分解性部位や、ボレート、アミン、トリメチルシリルメチル、カルボキシメチル、カルボニル、イミン等の酸化解裂性部位)との結合により、特に開始系の濃度の低い状態での感光性を著しく高めることができる。
【0218】
上述の一般式(v)〜(vii)で表される化合物は、硬化性組成物における顔料の濃度が非常に高く、形成される着色パターンの光の透過率が極端に低くなる場合、例えば、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に用いた際に、より具体的には、増感色素を添加せずに形成した場合の感光層の365nmの光の透過率が10%以下となるような場合に添加することで、その効果が顕著に発揮される。特に上述の一般式(v)〜(vii)の中で、一般式(vii)で表される化合物が最も好ましく、具体的には(56)〜(122)の化合物が最も好ましい。
【0219】
増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性組成物中における(D)増感剤の含有量は、カラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合を含めて、深部への光吸収効率と開始分解効率の観点から、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましい。
【0220】
〔(E)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物〕
本発明の硬化性組成物は、前記(A)特定グラフトポリマー以外のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有することが好ましい。
【0221】
本発明に用いることができるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、(A)特定グラフトポリマー以外のものであって、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0222】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0223】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0224】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0225】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0226】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0227】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(a)で表される化合物における水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0228】
CH=C(R10)COOCHCH(R11)OH 一般式(a)
(ただし、R10及びR11は、それぞれH又はCHを示す。)
【0229】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0230】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0231】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、硬化性組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
【0232】
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。硬化感度の観点から、(メタ)アクリル酸エステル構造を2個以上含有する化合物を用いることが好ましく、3個以上含有する化合物を用いることがより好ましく、4個以上含有する化合物を用いることが最も好ましい。また、硬化感度、及び、未硬化領域の現像性の観点では、EO変性体を含有することが好ましい。また、硬化感度、及び、露光部強度の観点ではウレタン結合を含有することが好ましい。
また、硬化性組成物中の他の成分(例えば、樹脂、光重合開始剤、顔料)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0233】
以上の観点より、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレートEO変性体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体などが好ましいものとして挙げられ、また、市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社化学製)、UA−7200(新中村化学社製)が好ましい。
【0234】
中でも、ビスフェノールAジアクリレートEO変性体、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体などが、市販品としては、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社化学製)がより好ましい。
【0235】
(E)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、1質量%〜90質量%であることが好ましく、5質量%〜80質量%であることがより好ましく、10質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
特に、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合、(E)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、5質量%〜50質量%であることが好ましく、7質量%〜40質量%であることがより好ましく、10質量%〜35質量%であることが更に好ましい。
【0236】
また、前記(A)特定グラフトポリマーと、該(A)特定グラフトポリマー以外の(E)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、を併用する場合、その含有比(質量比)としては、感度と保存安定性の観点から、(A)/(E)が0.001〜100が好ましく、0.01〜10がより好ましく、0.1〜1が更に好ましい。
【0237】
〔(F)バインダーポリマー〕
本発明の硬化性組成物は、皮膜特性向上などの目的で、前記(A)特定グラフトポリマー以外の(F)バインダーポリマーを含有してもよい。
バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、公知のものを任意に使用できる。なお、例えば、本発明の硬化性組成物を、パターン露光及び露光部の硬化後に、未露光部を水又はアルカリ現像により除去してパターンを形成する用途に適用する場合、好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とするために、水或いは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水、或いは有機溶剤現像剤の種類に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているが挙げられる。すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを単独或いは共重合させた樹脂、酸無水物を有するモノマーを単独或いは共重合させ、酸無水物ユニットを加水分解、ハーフエステル化、若しくはハーフアミド化させた樹脂、エポキシ樹脂を不飽和モノカルボン酸及び酸無水物で変性させたエポキシアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等が挙げられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
また、同様に、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体も用いることができる。この他、水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0238】
上記のように、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体が共重合体である場合、共重合させる化合物として、先に挙げたモノマー以外の他のモノマーを用いることもできる。他のモノマーの例としては、下記(1)〜(12)の化合物が挙げられる。
【0239】
(1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、ビニルアクリレート、2−フェニルビニルアクリレート、1−プロペニルアクリレート、アリルアクリレート、2−アリロキシエチルアクリレート、プロパルギルアクリレート等のアルキルアクリレート。
【0240】
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ビニルメタクリレート、2−フェニルビニルメタクリレート、1−プロペニルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−アリロキシエチルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、ビニルアクリルアミド、ビニルメタクリルアミド、N,N−ジアリルアクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド、アリルアクリルアミド、アリルメタクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0241】
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
【0242】
(10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(12)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特願2001−115595号明細書、特願2001−115598号明細書等に記載されている化合物を挙げる事ができる。
【0243】
これらの中で、側鎖にアリル基やビニルエステル基とカルボキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂、及び特開2000−187322号公報、特開2002−62698号公報に記載されている側鎖に二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂や、特開2001−242612号公報に記載されている側鎖にアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0244】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーや、特開2002−107918に記載される酸基と二重結合を側鎖に有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に強度に優れるので、低露光適性の点で有利である。
また、欧州特許993966、欧州特許1204000、特開2001−318463等に記載の酸基を有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダーポリマーは、膜強度、現像性のバランスに優れており、好適である。
更に、この他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0245】
(F)バインダーポリマーの重量平均分子量としては、好ましくは5、000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1、000以上であり、更に好ましくは2、000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらの樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい。
【0246】
(F)バインダーポリマーは、従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
本発明において用いうるバインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が挙げられる。
【0247】
(F)バインダーポリマーの含有量は、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合には、経時での顔料分散安定性と現像性のバランスの観点から、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、1質量%〜60質量%であることが好ましく、5質量%〜50質量%であることがより好ましく、10質量%〜40質量%であることが最も好ましい。
【0248】
また、前記(A)特定グラフトポリマーと、該(A)特定グラフトポリマー以外の(F)バインダーポリマーと、を併用する場合、その含有比(質量比)としては、感度と保存安定性の観点から、(A)/(F)が0.001〜1000が好ましく、0.01〜100がより好ましく、0.1〜10が更に好ましい。
【0249】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、以下に詳述する任意成分を更に含有してもよい。
【0250】
〔(G)分散剤〕
本発明の硬化性組成物における(C)着色剤として、顔料を含有する場合には、該顔料の分散性を向上させる観点から、(G)分散剤を添加することが好ましい。
【0251】
本発明に用いうる分散剤(顔料分散剤)としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0252】
高分子分散剤は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0253】
本発明に用いうる顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(ブロック共重合体)、4400、4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。
【0254】
これらの分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、特に、顔料誘導体と高分子分散剤とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0255】
本発明における(G)分散剤の含有量としては、顔料に対して、1質量%〜100質量%であることが好ましく、3質量%〜100質量%がより好ましく、5質量%〜80質量%が更に好ましい。
具体的には、高分子分散剤を用いる場合であれば、その使用量としては、顔料に対して、5質量%〜100質量%の範囲が好ましく、10質量%〜80質量%の範囲がより好ましい。また、顔料誘導体を使用する場合であれば、その使用量としては、顔料に対し1質量%〜30質量%の範囲にあることが好ましく、3質量%〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、5質量%〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0256】
本発明において、顔料と分散剤とを用いる場合、硬化感度、色濃度の観点から、顔料及び分散剤の含有量の総和が、硬化性組成物を構成する全固形分に対して、35質量%〜90質量%であることが好ましく、45質量%〜85質量%であることがより好ましく、50質量%〜80質量%であることが更に好ましい。
【0257】
〔(H)共増感剤〕
本発明の硬化性組成物は、(H)共増感剤共増感剤を含有することも好ましい。本発明において共増感剤は、(D)増感剤(増感色素)や(B)光重合開始剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0258】
共増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0259】
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)等が挙げられる。
【0260】
(H)共増感剤の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、硬化性組成物の全固形分の質量に対し、0.1質量%〜30質量%の範囲が好ましく、0.5質量%〜25質量%の範囲がより好ましく、1.0質量%〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0261】
〔(I)重合禁止剤〕
本発明においては、硬化性組成物の製造中或いは保存中において、(A)成分や(E)成分のように、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために、(I)重合禁止剤として、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0262】
(I)重合禁止剤の添加量は、硬化性組成物の質量に対して、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、本発明の硬化性組成物を乾燥させるまで過程で表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、硬化性組成物の質量に対して、約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0263】
〔(J)溶剤〕
本発明の硬化性組成物の調製の際には、一般に溶剤を用いることができる。使用される溶剤は、該組成物の各成分の溶解性や、硬化性組成物の塗布性を満足すれば基本的に特には限定されないが、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
溶剤の具体例としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等の3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;
【0264】
エーテル類、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;
ケトン類、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;
芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン等;が好ましい。
【0265】
これらの中でも、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメテルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等がより好ましい。
【0266】
〔その他の成分〕
更に、本発明の硬化性組成物には、硬化皮膜の物性を改良するための充填剤、可塑剤、前記した以外の高分子化合物、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することかできる。
より具体的には、ガラス、アルミナ等の充填剤;ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等の可塑剤;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフロロアルキルアクリレート等の高分子化合物;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の界面活性剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤:2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;及びポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤を挙げることができる。
【0267】
また、本発明の硬化性組成物を基板等の硬質材料表面に適用する場合には、該硬質材料表面との密着性を向上させるための添加剤(以下、「基板密着剤」と称する。)を加えてもよい。
基板密着剤としては、公知の材料を用いることができるが、特に、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤を用いることが好ましい。
シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビスアリルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、フェニルトリメトキシシラン、N−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、(アクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、等が挙げられる。
中でもγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0268】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、トリイソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0269】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0270】
基板密着剤の含有量は、硬化性組成物の未硬化領域に残渣が残らないようにする観点から、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%〜30質量%であることが好ましく、0.5質量%〜20質量%であることがより好ましく、1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0271】
また、本発明の硬化性組成物を、パターン露光及び露光部の硬化後に、未露光部を水又はアルカリ現像により除去してパターンを形成する用途に適用する場合、アルカリ溶解性を促進し、現像性の更なる向上を図るために、硬化性組成物には、有機カルボン酸、好ましくは、分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸を添加することができる。
具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0272】
本発明の硬化性組成物が(C)着色剤として顔料を含有する場合、該硬化性組成物は、(A)特定グラフトポリマー、(C)顔料、(G)分散剤等の成分を溶剤と混合し、各種の混合機、分散機を使用して、混合分散する混合分散工程を経て調製されることが好ましい。つまり、予め、混合分散工程を行うことで顔料分散液を調製しておき、この顔料分散液と残りの成分とを混合することで、本発明の硬化性組成物を調製することが好ましい。
なお、混合分散工程は、混練分散とそれに続けて行う微分散処理からなるのが好ましいが、混練分散を省略することも可能である。
【0273】
<カラーフィルタ及びその製造方法>
次に、本発明のカラーフィルタ及びその製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタは、支持体上に、本発明の硬化性組成物を用いてなる着色パターンを有することを特徴とする。
以下、本発明のカラーフィルタについて、その製造方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)を通じて詳述する。
【0274】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、支持体上に、本発明の硬化性組成物を塗布して該硬化性組成物からなる着色層を形成する着色層形成工程と、前記着色層をマスクを介して露光する露光工程と、露光後の着色層を現像して着色パターンを形成する現像工程と、を含むことを特徴とする。
以下、本発明の製造方法における各工程について説明する。
【0275】
〔着色層形成工程〕
着色層形成工程では、支持体上に、本発明の硬化性組成物を塗布して該硬化性組成物からなる着色層を形成する。
【0276】
本工程に用いうる支持体としては、例えば、液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えば、シリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
また、これらの支持体上には、必要により、着色層との密着改良、物質の拡散防止、或いは表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0277】
支持体上への本発明の硬化性組成物の塗布方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
硬化性組成物の塗布直後の膜厚としては、塗布膜の膜厚均一性、塗布溶剤の乾燥のしやすさの観点から、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5μmがより好ましく、0.2〜3μmが更に好ましい。
【0278】
支持体上に塗布された着色層(硬化性組成物層)の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等で50℃〜140℃の温度で10〜300秒で行うことができる。
【0279】
硬化性組成物の乾燥後の塗布膜厚(以下、適宜、「乾燥膜厚」と称する)としては、LCD用カラーフィルタとして用いるためには、LCD薄型化に対応でき、色濃度確保の観点から、0.1μm以上2.0μm未満が好ましく、0.2μm以上1.8μm以下がより好ましく、0.3μm以上1.75μm以下が特に好ましい。
また、IS用カラーフィルタとして用いるためには、色濃度確保の観点、斜め方向の光が受光部に到達せず、また、デバイスの端と中央とで集光率の差が顕著になる等の不具合を低減する観点から、0.05μm以上1.0μm未満が好ましく、0.1μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.2μm以上0.7μm以下が特に好ましい。
【0280】
〔露光工程〕
露光工程では、前記着色層形成工程において形成された着色層(硬化性組成物層)を、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光する。
露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。照射量は5〜1500mJ/cmが好ましく、10〜1000mJ/cmがより好ましく、10〜500mJ/cmが最も好ましい。
本発明のカラーフィルタが液晶表示素子用である場合は、上記範囲の中で5〜200mJ/cmが好ましく10〜150mJ/cmがより好ましく、10〜100mJ/cmが最も好ましい。また、本発明のカラーフィルタが固体撮像素子用である場合は、上記範囲の中で30〜1500mJ/cmが好ましく50〜1000mJ/cmがより好ましく、80〜500mJ/cmが最も好ましい。
【0281】
<現像工程>
次いで、アルカリ現像処理(現像工程)を行うことにより、前記露光工程における未露光部分が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。
現像温度としては通常20℃〜30℃であり、現像時間は20〜90秒である。
【0282】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機化合物等が挙げられ、これらのアルカリ剤を濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が現像液として好ましく使用される。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
次いで、余剰の現像液を洗浄除去し、乾燥を施す。
【0283】
なお、本発明の製造方法においては、上述した、着色層形成工程、露光工程、及び現像工程を行った後に、必要により、形成された着色パターンを加熱(ポストベーク)及び/又は露光により硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。
【0284】
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、通常100℃〜240℃の熱硬化処理を行う。基板がガラス基板又はシリコン基板の場合は上記温度範囲の中でも200℃〜240℃が好ましい。
このポストベーク処理は、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式或いはバッチ式で行うことができる。
【0285】
以上説明した、着色層形成工程、露光工程、及び現像工程(更に、必要により硬化工程)を所望の色相数(3色又は4色)だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタが作製される。
【0286】
上述のように、本発明の硬化性組成物の用途として、主にカラーフィルタの画素への用途を主体に述べてきたが、カラーフィルタの画素間に設けられるブラックマトリックスにも適用できることは言うまでもない。ブラックマトリックスは、本発明の硬化性組成物に着色剤として、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色の顔料を添加したものを用いる他は、上記画素の作製方法と同様に、パターン露光、アルカリ現像し、更にその後、ポストベークして膜の硬化を促進させて形成させることができる。
【0287】
本発明のカラーフィルタは、本発明の硬化性組成物を用いているため、形成された着色パターンが支持体に対して高い密着性を示し、また、未硬化領域が現像液により容易に除去されるため、支持体との密着性が良好であり、かつ、所望の断面形状を有する高解像度の着色パターンを有する。従って、液晶表示素子やCCD等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に、100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS等に好適である。
本発明のカラーフィルタは、例えば、CCDを構成する各画素の受光部と集光するためのマイクロレンズとの間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【実施例】
【0288】
[合成例1:(A)特定グラフトポリマー(I)の合成]
(A)特定グラフトポリマー(I)の具体的な合成方法(ステップ1〜3)を、以下に示す反応スキームを用いて説明する。
【0289】
【化54】

【0290】
(ステップ1:化合物(I−a)の合成)
1L三つ口フラスコに1−メチル−2−ピロリジノン54.2gを入れ窒素置換し、80℃に加熱した後、メタクリル酸メチル30g(300mmol)、2−(2−ブロモ−2−メチルプロパノイルオキシ)エチルメタクリレート83.7g(300mmol)、メルカプトエタノール2.34g(30mmol)、及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名:V−601)691mg(3mmol)の1−メチル−2−ピロリジノン54.2g溶液を、2時間かけて滴下した。滴下後、80℃で2.5時間攪拌した。
この反応液について、HPLC法にて、原料であるメタクリル酸メチル、及び2−(2−ブロモ−2−メチルプロパノイルオキシ)エチルメタクリレートのピークが消失したことを確認し、室温まで放冷した。
その後、反応液を水1.9L中に滴下することで再沈精製した。析出物をろ取、乾燥し、化合物(I−a)を得た。
ポリスチレン換算GPC測定により、得られた化合物(I−a)の数平均分子量(Mn)が2340、重量平均分子量(Mw)が3980であることが判明した。また、2−(2−ブロモ−2−メチルプロパノイルオキシ)エチルメタクリレートの導入量は、以下の加水分解法にて調べ、定量的に導入されたことを確認した。
【0291】
(加水分解法)
得られた化合物(I−a)0.1g(固体)を、50mLメスフラスコに精秤し、1−メトキシ−2−プロパノール25mLを、ホールピペットを用いて加え超音波にて溶解し、2NのNaOH溶液を加えて全量を50mLとした後、この溶液を25℃で2時間攪拌した。HPLCにおいて、生じたメタクリル酸由来のピーク面積から外挿法により、メタクリル酸が0.022g生じたことが算出された。
【0292】
(ステップ2:マクロモノマー(I−b)の合成)
化合物(I−a)50gをテトラヒドロフラン100gに溶解させ、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(商品名:ネオスタンU−600(日東化成株式会社製))200mg(0.317ミリモル)を加えて均一溶液とした。60℃まで加熱して、メタクリル酸2−イソシアネートエチル(商品名:カレンズMOI(昭和電工株式会社製))20g(0.129モル)を滴下した。滴下終了後、60℃で6時間攪拌した。
この反応液について、NMR測定を行った結果、メタクリル酸2−イソシアネートエチルの−NCO基が結合した炭素のプロトンに由来する化学シフトが変化したことより、定量的にウレタン化反応が進行したことを確認した。
その後、反応液に、メタノール5gを加えて室温まで放冷した。反応液を水290mLとメタノール1.1Lの混合溶液中に滴下することで再沈精製した。析出物をろ取、乾燥し、マクロモノマー(I−b)を得た。
ポリスチレン換算GPC測定により得られたマクロモノマー(I−b)の数平均分子量(Mn)が2400であり、重量平均分子量(Mw)は4080であることが判明した。
【0293】
(ステップ3:(A)特定グラフトポリマー(I)の合成)
メタクリル酸1.65g(19mmol)、及びマクロモノマー(I−b)8.8gの1−メチル−2−ピロリジノン17.4g溶液を、80℃まで加熱し、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名:V−601)25mg(0.11mmol)の1−メチル−2−ピロリジノン7.0g溶液を15分かけて滴下した。滴下後、80℃で3時間攪拌した。ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名:V−601)50mg(0.22mmol)を添加し、80℃で2時間攪拌した。反応液を90℃まで加熱した後、更に30分攪拌した。
この反応液について、HPLC法にて、原料であるメタクリル酸由来のピークが消失したことを確認し、室温まで放冷した。
その後、反応液を水300mL中に滴下することで高分子化合物を析出させた。析出した高分子化合物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、高分子化合物10.3gを得た。
得られた高分子化合物を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定したところ、数平均分子量(Mn)が6820であり、重量平均分子量(Mw)が11200であった。また、滴定によりこの高分子化合物の酸価を求めたところ、102.5mgKOH/g(計算値103.0mgKOH/g)であり、正常に重合が行なわれたことが確認された。
【0294】
上記のようにして得られた高分子化合物10.3gを100ml三口フラスコに入れ、p−メトキシフェノール0.01gを入れ、更に、1−メチル−2−ピロリドン50gを加えて溶解し、氷水を入れた氷浴にて冷却した。この混合液の温度が5℃以下になった後に、更に、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)5gを滴下ロート用いて10分かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外して更に8時間撹拌した。得られた反応液を、濃塩酸を加えてpH7とした後、水300mLに投入し、高分子化合物(特定グラフトポリマー(I))を析出させた。析出した高分子化合物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、8.62gの目的とする特定グラフトポリマー(I)を得た。
【0295】
得られた高分子化合物のH−NMRを測定したところ、2−ブロモ−2−メチルプロパノイルオキシ基由来の側鎖基の100%がメタクリロイル基に変換されたことが確認された。更に、滴定によりこの高分子化合物の酸価を求めたところ、123.0mgKOH/g(計算値123.3mgKOH/g)であった。ポリスチレン換算GPC測定により得られた特定グラフトポリマー(I)の数平均分子量(Mn)は5800、重量平均分子量(Mw)は8900であった。また、側鎖のメタクリロイル基含有量は以下の加水分解法にて調べ、枝ポリマー1本に対し平均10ユニット導入されたことを確認した。
【0296】
(加水分解法)
得られた高分子化合物0.1g(固体)を50mLメスフラスコに精秤し、1−メトキシ−2−プロパノール25mLをホールピペットを用いて加え超音波にて溶解し、2NのNaOH溶液を加えて全量を50mLとした後、この溶液を25℃で2時間攪拌した。HPLCにおいて生じたメタクリル酸由来のピーク面積から外挿法により、メタクリル酸が0.021g生じたことが算出された。これにより、得られた高分子化合物のエチレン性不飽和結合導入量は0.0024mol/gであると算出された。
【0297】
[合成例2:特定グラフトポリマー(II)の合成]
特定グラフトポリマー(II)の具体的な合成方法(ステップ1〜4)を、以下に示す反応スキームを用いて説明する。
【0298】
【化55】

【0299】
(ステップ1:化合物(II−a)の合成)
1L三つ口フラスコに1−メチル−2−ピロリジノン210gを入れ窒素置換し、80℃に加熱した後、メタクリル酸メチル25g(250mmol)、メタクリル酸151g(1.75mol)、メルカプトエタノール3.9g(50mmol)、及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名:V−601)230mg(1mmol)の1−メチル−2−ピロリジノン210g溶液を、2時間かけて滴下した。滴下後、80℃で4.5時間攪拌した。
この反応液について、HPLC法にて原料であるメタクリル酸メチル及びメタクリル酸のピークが消失したことを確認し、室温まで放冷した。
その後、反応液を水5L中に滴下することで再沈精製した。析出物をろ取、乾燥し、化合物(II−a)を179g得た。
ポリスチレン換算GPC測定により得られた化合物(II−a)の数平均分子量(Mn)が2800であり、重量平均分子量(Mw)は4320であることが判明した。また、滴定によりこの高分子化合物の酸価を求めたところ、102.5mgKOH/g(計算値103.0mgKOH/g)であり、正常に重合が行なわれたことが確認された。また、滴定によりこの高分子化合物の酸価を求めたところ、546mgKOH/g(計算値546.2mgKOH/g)であり、正常に重合が行なわれたことが確認された。
【0300】
(ステップ2:マクロモノマー(II−b)の合成)
化合物(II−a)179gを1−メチル−2−ピロリジノン550gに溶解させ、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(商品名:ネオスタンU−600(日東化成株式会社製))600mg(0.951mmol)を加えて均一溶液とした。60℃まで加熱して、メタクリル酸2−イソシアネートエチル(商品名:カレンズMOI(昭和電工株式会社製))7.8g(50mmol)を滴下した。滴下終了後、60℃で6時間攪拌した。
その反応液について、NMRを測定した結果、メタクリル酸2−イソシアネートエチルの−NCO基が結合した炭素のプロトンに由来する化学シフトが変化したことより、定量的にウレタン化反応が進行したことを確認した。
その後、反応液に、メタノール5gを加えて室温まで放冷した。反応液を水290mLとメタノール1.1Lの混合溶液中に滴下することで再沈精製した。析出物をろ取、乾燥し、マクロモノマー(II−b)を187g得た。ポリスチレン換算GPC測定により得られたマクロモノマー(II−b)の数平均分子量(Mn)が2420であり、重量平均分子量(Mw)が4450であることが判明した。
【0301】
(ステップ3:グラフトポリマー前駆体(II−c)の合成)
メタクリル酸ベンジル15g(85mmol)、スチレン15g(144mmol)、及びマクロモノマー(II−b)40gの1−メチル−2−ピロリジノン105g溶液を、80℃まで加熱し、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名:V−601)552mg(24mmol)の1−メチル−2−ピロリジノン10g溶液を15分かけて滴下した。滴下後、80℃で3時間攪拌した。ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(商品名:V−601)552mg(24mmol)を添加し、80℃で2時間攪拌した。反応液を90℃まで加熱した後、更に30分攪拌した。
その反応液について、HPLC法にて、原料であるメタクリル酸ベンジル及びスチレン由来のピークが消失したことを確認し、室温まで放冷した。
その後、反応液を水5L中に滴下することで高分子化合物を析出させた。析出した高分子化合物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、高分子化合物70gを得た。
【0302】
得られた高分子化合物を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定したところ、数平均分子量(Mn)は21300、重量平均分子量(Mw)は37100であった。また、滴定によりこの高分子化合物の酸価を求めたところ、297mgKOH/g(計算値297.9mgKOH/g)であり、正常に重合が行なわれたことが確認された。
【0303】
(ステップ4:特定グラフトポリマー(II)の合成)
上記のように得られた高分子化合物70gを500mL三口フラスコに入れ、1−メチル−2−ピロリドン200gを加えて溶解した。更にメタクリル酸グリシジル30g(212mmol)及びp−メトキシフェノール0.2gを入れ、この混合液を85℃に加熱した後、更にテトラブチルアンモニウムブロミド1.7g(0.7mmol)を添加した。添加後、85℃で5時間攪拌した。
その反応液について、HPLC法にて、原料であるメタクリル酸グリシジル由来のピークが消失したことを確認し、室温まで放冷した。得られた反応液を1−メチル−2−ピロリドン100gで希釈した後、水5Lに投入し、高分子化合物(特定グラフトポリマー(II))を析出させた。析出した高分子化合物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、98gの目的とする特定グラフトポリマー(II)を得た。ポリスチレン換算GPC測定により得られたグラフトポリマー(II)の数平均分子量(Mn)が29500であり、重量平均分子量(Mw)が53100であることが判明した。また、滴定によりこの高分子化合物の酸価を求めたところ、88.9mgKOH/g(計算値89.3mgKOH/g)であり、メタクリル酸グリシジルの付加反応が正常に行なわれたことが確認された。また、側鎖のメタクリロイル基含有量は以下の加水分解法にて調べ、枝ポリマー1本に対し平均20ユニット導入されたことを確認した。
【0304】
(加水分解法)
得られた高分子化合物0.1g(固体)を50mLメスフラスコに精秤し、1−メトキシ−2−プロパノール25mLをホールピペットを用いて加え超音波にて溶解し、2NのNaOH溶液を加えて全量を50mLとした後、この溶液を25℃で2時間攪拌した。HPLCにおいて生じたメタクリル酸由来のピーク面積から外挿法により、メタクリル酸が0.018g生じたことが算出された。これにより、得られた高分子化合物のエチレン性不飽和結合導入量は0.0021mol/gであると算出された。
【0305】
[合成例3:比較用ポリマー(X)の合成]
1000ml三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル120gを入れ、窒素気流下、90℃まで加熱した。これに、メタクリル酸ベンジル74g、メタクリル酸84g、及びV−601(和光純薬社製)9.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液120gを、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に2時間撹拌した。その後、室温まで反応溶液を冷却した後、水8L(リットル;以下同様)に投入し、高分子化合物を析出させた。析出した高分子化合物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、高分子化合物150gを得た。
得られた高分子化合物を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均分子量を測定した結果、12000であった。また、滴定によりこの高分子化合物の酸価を求めたところ、202mgKOH/g(計算値204mgKOH/g)であり、正常に重合が行なわれたことが確認された。
【0306】
その後、1000ml三口フラスコに得られた高分子化合物40gを加え、そこへp−メトキシフェノール110mgを入れ、更にプロピレングリコールモノメチルエーテル60gを加えて溶解させた。これに更に、テトラブチルアンモニウムブロミド820mgを加え、80℃まで加熱した後、メタクリル酸グリシジル10gを添加して6時間攪拌した。そして、ガスクロマトグラフィーにより、メタクリル酸グリシジル由来のピークが消失したことを確認した。この反応液を水7Lに投入し、高分子化合物(比較用ポリマー(X))を析出させた。析出した高分子化合物を濾取し、水で洗浄、乾燥し、54gの比較用ポリマー(X)を得た。
得られた高分子化合物(比較用ポリマー(X))について、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均分子量を測定した結果、17800であった。更に、滴定によりこの高分子化合物の酸価を求めたところ、120mgKOH/gであった。
なお、比較用ポリマー(X)の構造について以下に示す。
【0307】
【化56】

【0308】
また、合成例1、又は合成例2と同様の方法を用いて、前記構造の(A)特定グラフトポリマーの具体例(III)〜(IX)を合成した。
得られた(A)特定グラフトポリマー(I)〜(IX)、及び比較用ポリマー(X)の各物性を下記表1に示す。
【0309】
【表1】

【0310】
[実施例1]
ここでは、液晶表示素子用途のカラーフィルタ形成用として顔料を含有する硬化性組成物を調製した例を挙げて説明する。
【0311】
〔A1.硬化性組成物の調製〕
A1−1.顔料分散液の調製
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36とC.I.ピグメントイエロー219との30/70(質量比)混合物40質量部(一次粒経32nm)、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)50質量部(固形分換算約22.6質量部)、(A)特定グラフトポリマー(I)5質量部、及び溶媒として3−エトキシプロピオン酸エチル110質量部からなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、顔料分散液P1を調製した。
顔料分散液P1について、顔料の平均粒径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製)を用いて、P1を更に希釈することなく測定した)により測定したところ、61nmであった。
【0312】
A1−2.硬化性組成物(塗布液)の調製
前記分散処理した顔料分散液P1を用いて下記組成比となるように各種成分を撹拌混合して、硬化性組成物(塗布液)を調製した。
・(C)着色剤(前記顔料分散液P1) 600質量部
・(B)光重合開始剤(2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール) 30質量部
・(E)エチレン製不飽和二重結合を有する化合物(ペンタエリスリトールテトラアクリレート) 50質量部
・(F)バインダーポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、モル比:80/10/10、Mw:10000) 5質量部
・(J)溶媒(PGMEA) 900質量部
・基板密着剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 1質量部
・(D)増感剤(下記化合物α) 15質量部
・(H)共増感剤(2−メルカプトベンゾイミダゾール) 15質量部
【0313】
【化57】

【0314】
〔A2.カラーフィルタの作製〕
A2−1.着色層(硬化性組成物層)の形成
上記顔料を含有する硬化性組成物(塗布液)をレジスト溶液として、550mm×650mmのガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、10分間そのままの状態で待機させ、真空乾燥とプレベーク(prebake)(100℃80秒)を施して、着色層(硬化性組成物層)を形成した。
【0315】
(スリット塗布条件)
・塗布ヘッド先端の開口部の間隙: 50μm
・塗布速度: 100mm/秒
・基板と塗布ヘッドとのクリヤランス: 150μm
・乾燥膜厚 1.75μm
・塗布温度: 23℃
【0316】
A2−2.露光、現像
その後、2.5kWの超高圧水銀灯を用いて着色層(硬化性組成物層)を、線幅20μmのテスト用フォトマスクを用いてパターン状に露光し、その後、層の全面を有機系現像液(商品名:CD、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の10%水溶液で被い、60秒間静止した。
【0317】
A2−3.加熱処理
静止後、純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、露光及び現像処理を施した層を220℃のオーブンにて1時間加熱した(ポストベーク)。これにより、ガラス基板上に着色パターンを形成してなるカラーフィルタを得た。
【0318】
〔A3.性能評価〕
上記で調製された硬化性組成物からなる塗布液の保存安定性、及び硬化性組成物を用いてガラス基板上に塗布されてなる着色層(硬化性組成物層)の露光感度、未露光部の現像性、形成された着色パターンの基板密着性、及びそのパターン断面形状を、下記のようにして評価した。結果を表2に示す。
【0319】
A3−1.硬化性組成物の保存(経時)安定性
前記にて調製された硬化性組成物(塗布液)を室温で1ケ月保存した後、液の粘度を測定し下記の基準に従って評価した。
−評価基準−
○:粘度上昇は認められなかった。
△:5%以上10%未満の粘度上昇が認められた。
×:10%以上の粘度上昇が認められた。
【0320】
A3−2.着色層(硬化性組成物層)の露光感度
着色層(硬化性組成物層)を、露光量を10〜100mJ/cmの範囲で種々に変更して露光し、ポストベイク後のパターン線幅が20μmとなる露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
【0321】
A3−3.未露光部の現像性、着色パターンの基板密着性、及びそのパターン断面形状
ポストベーク後の基板表面及び断面形状を、光学顕微鏡及びSEM写真観察により確認することにより、未露光部の現像性、着色パターンの基板密着性、及びそのパターン断面形状を評価した。評価方法・評価基準の詳細は以下の通りである。
【0322】
<現像性>
露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった。
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった。
×:未露光部に、残渣が著しく確認された。
【0323】
<基板密着性>
基板密着性の評価は、形成された着色パターンに、パターン欠損が発生しているか否かを観察することにより行った。評価基準は以下の通りである。
−評価基準−
○:パターン欠損がまったく観察されなかった。
△:パターン欠損がほとんど観察されなかったが、一部分欠損が観察された。
×:パターン欠損が著しく観察された。
【0324】
<パターン断面形状>
形成された着色パターンの断面形状を観察した。パターン断面形状は、順テーパーが最も好ましく、矩形が次に好ましい。逆テーパーは好ましくない。
【0325】
[実施例2〜9]
実施例1で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマー(I)を下記表2に記載の特定グラフトポリマーにそれぞれ変更した以外は、全て実施例1と同様してカラーフィルタを作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0326】
[比較例1]
実施例1で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマーであるグラフトポリマー(I)を用いなかった以外は、全て実施例1と同様してカラーフィルタを作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0327】
[比較例2]
実施例1で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマー(I)を前記構造の比較用ポリマー(X)に変更した以外は、全て実施例1と同様してカラーフィルタを作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0328】
【表2】

【0329】
表2の結果から、(A)特定グラフトポリマー(I)〜(IX)を含有する実施例1〜9の硬化性組成物は、その溶液状態において保存安定性に優れたものであることが判る。また、この硬化性組成物を用いて、支持体(基板)上に着色パターンを形成した場合には、(A)特定グラフトポリマーとは異なる比較用ポリマー(X)を用いた比較例2と比較して、露光感度が高く、現像性に優れると共に、基板密着性、パターン断面形状の何れにも優れたカラーフィルタが得られていることが判る。
なお、(A)特定グラフトポリマーを用いなかった比較例1の硬化性組成物は、露光量100mJ/cmを照射しても露光部の硬化性及び基板密着性が不十分であり、現像工程で着色層が全て現像液に溶出した。
【0330】
[実施例10]
以下、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として着色剤(顔料)を含有する硬化性組成物を調製した例を挙げて説明する。
【0331】
〔B1.レジスト液の調製〕
下記組成の成分を混合して溶解し、レジスト液を調製した。
<レジスト液の組成>
・(J)溶剤(PGMEA) 19.20質量部
・(J)溶剤(乳酸エチル) 36.67質量部
・(F)バインダーポリマー(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体(モル比=60/22/18)の40%PGMEA溶液)
30.51質量部
・(E)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 12.20質量部
・(I)重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.0061質量部
・フッ素系界面活性剤(F−475、大日本インキ化学工業(株)製) 0.83質量部
・(B)光重合開始剤(トリハロメチルトリアジン系光重合開始剤:TAZ−107、みどり化学社製) 0.586質量部
【0332】
〔B2.下塗り層付シリコン基板の作製〕
6inchシリコンウエハーをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハー上に前記レジスト液を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハー基板を得た。
【0333】
〔B3.顔料分散液の調製〕
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36とC.I.ピグメントイエロー219との30/70(質量比)混合物40質量部(一次粒経32nm)、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)50質量部(固形分換算約22.6質量部)、(A)特定グラフトポリマー(I)5質量部、及び溶媒として3−エトキシプロピオン酸エチル110質量部からなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、顔料分散液P2を調製した。
顔料分散液P2について、顔料の平均粒径を動的光散乱法により測定したところ、200nmであった。
【0334】
〔B4.硬化性組成物(塗布液)の調製〕
前記分散処理した顔料分散液P2を用いて下記組成比となるよう各種成分を撹拌混合して硬化性組成物(塗布液)を調製した。
・(C)着色剤(前記顔料分散液P2) 600質量部
・(B)光重合開始剤(オキシム系光重合開始剤:CGI−124、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 30質量部
・(E)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(TO−1382(東亞合成(株)製) 25質量部
・(E)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 30質量部
・(J)溶媒(PGMEA) 900質量部
・基板密着剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 1質量部
【0335】
〔B5.硬化性組成物によるカラーフィルタの作製及び評価〕
<パターンの形成と感度の評価>
上記のように調製した硬化性組成物を、前記B2.で得られた下塗り層付シリコンウエハーの下塗り層上に塗布し、着色層(硬化性組成物層)を形成した。そして、この層の乾燥膜厚が0.7μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長でパターンが2μm四方のIslandパターンマスクを通して50〜1200mJ/cmの種々の露光量で露光した。
その後、着色層が形成されているシリコンウエハー基板を、スピン・シャワー現像機(DW−30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハー基板に着色パターンを形成した。
【0336】
着色パターンが形成されたシリコンウエハーを真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハー基板を回転数50r.p.m.で回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後、スプレー乾燥した。
その後、測長SEM「S−9260A」(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、着色パターンのサイズを測定した。パターン線幅が2μmとなる露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。測定結果を下記表3に示す。
【0337】
<現像性>
露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった。
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった。
×:未露光部に、残渣が著しく確認された。
【0338】
<パターン断面形状>
形成されたパターンの断面形状を観察した。パターン断面形状は矩形が好ましく、逆テーパーは好ましくない。
【0339】
<基板密着性>
基板密着性の評価として、形成された着色パターンに、パターン欠損が発生しているか否かを観察した。これらの評価項目については、下記基準に基づいて評価を行った
−評価基準−
○:パターン欠損がまったく観察されなかった。
△:パターン欠損がほとんど観察されなかったが、一部分欠損が観察された。
×:パターン欠損が著しく観察された。
【0340】
<硬化性組成物の保存(経時)安定性>
前記B4.にて調製された硬化性組成物(塗布液)を室温で1ケ月保存した後、液の粘度を測定し下記判定基準に従って評価した。
−評価基準−
○:粘度上昇は認められなかった。
△:5%以上10%未満の粘度上昇が認められた。
×:10%以上の粘度上昇が認められた。
【0341】
<色ムラ>
色ムラの評価は、輝度分布を下記方法で解析し、平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数に占める割合をもとに行った。評価基準は以下の通りである。
輝度分布の測定方法について説明する。まず、硬化性組成物を、前記B2.と同様の方法で得られた下塗り層付ガラス板の下塗り層上に塗布し、着色層(硬化性組成物層)を形成した。この塗布膜の乾燥膜厚が0.7μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。この塗布済みガラス板の輝度分布を顕微鏡MX−50(オリンパス社製)にて撮影した画像を解析した。
−評価基準−
○:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の99%以上
△:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の95%以上99%未満
×:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の95%未満
【0342】
[実施例11〜18]
実施例10で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマー(I)を下記表3に記載の特定グラフトポリマーにそれぞれ変更した以外は、全て実施例10と同様してカラーフィルタを作製し、実施例10と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0343】
[比較例3]
実施例10で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマー(I)を用いなかった以外は、全て実施例10と同様にして着色パターンを形成したカラーフィルタを得て、実施例10と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0344】
[比較例4]
実施例10で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマー(I)を前記構造の比較用ポリマー(X)に変更した以外は、全て実施例10と同様してカラーフィルタを作製し、実施例10と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0345】
【表3】

【0346】
表3の結果から、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として用いた、(A)特定グラフトポリマー(I)〜(IX)を含有する実施例10〜18の硬化性組成物は、その溶液状態において保存安定性に優れたものであることが判る。また、この硬化性組成物を用いて、支持体(基板)上に着色パターンを形成した場合には、(A)特定グラフトポリマーを用いなかった比較例3や(A)特定グラフトポリマーとは異なる比較用ポリマー(X)を用いた比較例4と比較して、露光感度が高く、現像性に優れると共に、基板密着性、パターン断面形状の何れにも優れたカラーフィルタが得られていることが判る。
これらの結果より、実施例10〜18の硬化性組成物は、固体撮像素子用途のカラーフィルタを作製する場合においても、液晶表示素子用途のカラーフィルタを作製する場合と同様に、優れたパターン形成性が実現されることがわかった。
【0347】
[実施例19]
以下、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として(染料)を含有する硬化性組成物を調製した例を挙げて説明する。
【0348】
〔C1.レジスト液の調製及び下塗り層付シリコン基板の作製〕
実施例10における〔B1.レジスト液の調製〕及び〔B2.下塗り層付シリコン基板の作製〕と同様の方法で、下塗り層付きシリコン基板を作製した。
【0349】
〔C2.硬化性組成物(塗布液)の調製〕
下記組成の化合物を混合して溶解し、着色感光性樹脂組成物を調製した。
・(J)溶剤(シクロヘキサノン) 80質量部
・(C)着色剤(Valifast Yellow 1101(染料)) 6.0質量部
・(C)着色剤(Acid Red 57(染料)) 6.0質量部
・(E)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 4.0質量部
・(B)光重合開始剤(オキシム系光重合開始剤:CGI−124、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 2.0質量部
・(A)特定グラフトポリマー(I) 1.5質量%
【0350】
〔C3.硬化性組成物によるカラーフィルタの作製及び評価〕
上記〔B5.着色感光性樹脂組成物によるカラーフィルタの作製及び評価〕と同様の方法でカラーフィルタの作製及び評価を実施した。結果を表4に示す。
【0351】
[実施例20〜27]
実施例19で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマー(I)を下記表4に記載の特定グラフトポリマーにそれぞれ変更した以外は、全て実施例19と同様してカラーフィルタを作製し、実施例19と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0352】
[比較例5]
実施例19で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマー(I)を用いなかった以外は、全て実施例19と同様にして着色パターンを形成したカラーフィルタを得て、実施例19と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0353】
[比較例6]
実施例19で調製した硬化性組成物において、(A)特定グラフトポリマー(I)を前記構造の比較用ポリマー(X)に変更した以外は、全て実施例19と同様してカラーフィルタを作製し、実施例19と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0354】
【表4】

【0355】
表4の結果から、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として用いた、(A)特定グラフトポリマー(I)〜(IX)を含有する実施例19〜27の硬化性組成物(染料系)は、その溶液状態において保存安定性に優れたものであることが判る。また、この硬化性組成物を用いて、支持体(基板)上に着色パターンを形成した場合には、(A)特定グラフトポリマーとは異なる比較用ポリマー(X)を用いた比較例6と比較して、露光感度が高く、現像性に優れると共に、基板密着性、パターン断面形状の何れにも優れたカラーフィルタが得られていることが判る。
なお、(A)特定グラフトポリマーを用いなかった比較例5の硬化性組成物は、露光量1200mJ/cmを照射しても露光部の硬化性及び基板密着性が不十分であり、現像工程で着色層が全て現像液に溶出した。
これらの結果より、実施例19〜27の硬化性組成物は、固体撮像素子用途のカラーフィルタを作製する場合においても、液晶表示素子用途のカラーフィルタを作製する場合と同様に、優れたパターン形成性が実現されることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和二重結合がペンダントされた構造単位を少なくとも2以上含む枝ポリマー部を有するグラフトポリマーを含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
更に、(B)光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
更に、(C)着色剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
更に、(D)増感剤を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
支持体上に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の硬化性組成物により形成された着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項6】
支持体上に、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の硬化性組成物を塗布して該硬化性組成物からなる着色層を形成する着色層形成工程と、前記着色層をマスクを介して露光する露光工程と、露光後の着色層を現像して着色パターンを形成する現像工程と、を含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項7】
エチレン性不飽和二重結合がペンダントされた構造単位を少なくとも2以上含む枝ポリマー部を有するグラフトポリマー。
【請求項8】
下記一般式(1)で表される部分構造を有することを特徴とする請求項7に記載のグラフトポリマー。
【化1】

〔上記一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、−COOH、−CN、−CF、−CHOH、−CHCOOH、−CHCOOR、又は−COORを表し、Xは2価の有機基を表し、Yは、一般式(2)で表される部分構造を少なくとも2つ以上含有するビニル系重合体を表す。上記一般式(2)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、−COOH、−CN、−CHCOOH、−CHCOOR、又は−COORを表し、Rは、水素、メチル基、又はエチル基を表し、Xは2価の有機基を表す。また、R〜Rは、各々独立に、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。〕

【公開番号】特開2008−189747(P2008−189747A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24029(P2007−24029)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】