説明

硬化性組成物

【課題】 特定の構造単位を含むポリオルガノシロキサンを含有し、柔軟性、透明性及び基材への接着性に優れた硬化物とすることができる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】硬化性組成物は、ポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、カチオン重合触媒とを含有する硬化性組成物であって、上記ポリオルガノシロキサンは、下記式(1)で表される単位、下記式(2)で表される単位、及び、共役ジエン系重合体ブロックを含む単位を含む重合体である。


〔但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。〕
[R−Si−O3/2] (2)〔但し、Rは有機基である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関し、更に詳しくは、オキセタニル基を有し、特定の構造単位を含むポリオルガノシロキサンを含有し、柔軟性、透明性及び基材への接着性に優れた硬化物とすることができる硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾル−ゲル法で得られた、オキセタニル基及びシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンを含有する硬化性組成物(特許文献1〜4)は、硬化性及び接着性に優れ、更に、その硬化物の硬度、耐熱性、透明性及び耐薬品性に優れるため、ハードコート剤、各種プラスチック基材の保護膜、光路結合用接着剤、歯科用接着剤等として利用されている。しかし、その硬化物は、柔軟性に乏しく、脆い性質を有しているため、可とう性、高温における耐衝撃性が要求される用途には使用できなかった。
硬化物の柔軟性を向上させるためには、硬化性組成物に、ゴム成分を配合することは広く公知であるが、上記のオキセタニル基及びシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンは、ゴム成分との相溶性が十分でないために、硬化物が白濁し、透明性を低下させるといった問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平11−29640号公報
【特許文献2】特開平11−116682号公報
【特許文献3】特開平11−199673号公報
【特許文献4】特開2003−321545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、柔軟性、透明性及び基材への接着性に優れた硬化物とすることができる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のとおりである。
1.ポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、カチオン重合触媒とを含有する硬化性組成物であって、上記ポリオルガノシロキサンは、下記式(1)で表される単位、下記式(2)で表される単位、及び、共役ジエン系重合体ブロックを含む単位を含む重合体であることを特徴とする硬化性組成物。
【化1】

〔但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。〕
[R−Si−O3/2] (2)
〔但し、Rは有機基である。〕
2.上記ポリオルガノシロキサンは、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物(a)と、下記式(4)で表される有機ケイ素化合物(b)と、下記式(5)で表される有機ケイ素化合物(c1)又は該有機ケイ素化合物(c1)を反応系中に発生させる化合物(c2)とを、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有し且つ一部又は全てが水素化されたジエン系重合体(d)の存在下、酸性触媒を用いて加水分解共縮合して得られた重合体である請求項1に記載の硬化性組成物。
【化2】

〔但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。Xは加水分解性基であり、Xは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
(RSiX4−n−m (4)
〔但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Xはシロキサン結合生成基であり、nは0〜2の整数であり、mは0又は1であり、n及びmの和は0〜2の整数である。〕
(RSiOH (5)
〔但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、sは2又は3であり、tは0又は1であり、s及びtの和は3である。〕
3.上記有機ケイ素化合物(b)が、上記式(4)において、nが1であり、且つ、mが0又は1の化合物である上記2に記載の硬化性組成物。
4.上記エポキシ化合物が、2以上のエポキシ基を有する上記1乃至3のいずれかに記載の硬化性組成物。
5.上記カチオン重合触媒がアルミニウム化合物である上記1乃至4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化性組成物は、オキセタニル基を有し、特定の構造単位を含むポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、カチオン重合触媒とを含有することにより、その硬化物が熱によるものであっても、光によるものであっても、柔軟性、透明性及び基材への接着性に優れる。具体的には、ショアD硬度を45以下とすることができ、波長400nmの光の透過率を80%以上とすることができる。従って、レンズやレンズシート、プリズム、光導波路用材料、LED(発光ダイオード)、半導体素子等の封止材料等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の硬化性組成物は、ポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、カチオン重合触媒とを含有する硬化性組成物であって、上記ポリオルガノシロキサンは、下記式(1)で表される単位、下記式(2)で表される単位、及び、共役ジエン系重合体ブロックを含む単位を含む重合体であることを特徴とする。
【化3】

〔但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。〕
[R−Si−O3/2] (2)
〔但し、Rは有機基である。〕
【0008】
本発明の硬化性組成物に含有される各成分について説明する。
1.ポリオルガノシロキサン
本発明に係るポリオルガノシロキサンは、上記式(1)で表される単位(以下、「単位A」ともいう。)、上記式(2)で表される単位(以下、「単位B」ともいう。)、及び、共役ジエン系重合体ブロックを含む単位(以下、「単位C」ともいう。)を含む。
【0009】
上記式(1)で表される単位Aにおいて、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等)であるが、エチル基が好ましい。また、Rは炭素数2〜6のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等)であるが、プロピレン基が好ましい。また、上記式(1)におけるR又はRの炭素数がいずれも7以上であると、硬化物の強度が十分でない場合がある。
また、上記式(2)で表される単位Bにおいて、Rは、有機基であり、脂肪族炭化水素及びその置換体、脂環族炭化水素及びその置換体、並びに、芳香族炭化水素及びその置換体から選ばれる少なくとも1種を含む基である。
【0010】
上記単位Cにおける共役ジエン系重合体ブロックとしては、共役ジエン化合物を含む単量体を用いて得られた重合体からなるブロックであれば、単独重合体からなるブロックであってよいし、共重合体からなるブロックであってもよい。
共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
単独重合体からなるブロックとする場合、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン及びクロロプレンを用いることが好ましい。
【0011】
共重合体からなるブロックとする場合、共役ジエン化合物の共重合体であってよいし、共役ジエン化合物、及び、共役ジエン化合物と共重合可能な単量体(以下、「他の単量体」ともいう。)の共重合体であってもよい。
前者の場合、共役ジエン化合物は2種のみを用いてもよいし、3種以上を用いてもよい。
また、後者の場合、他の単量体としては、α−オレフィン(ブテン、ペンテン等)、ビニル芳香族化合物(スチレン、α−メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル等)、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル、塩化ビニル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、後者の場合、共役ジエン化合物の使用量は、単量体全量に対して、好ましくは50モル%以上である。
【0012】
尚、上記共役ジエン系重合体ブロックは、ブロックの鎖中及び/又は分子末端にヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物基等の官能基を有してもよい。これらのうち、ヒドロキシル基及びカルボキシル基が好ましい。これらの官能基は、それらを含む単量体を用いて形成されたものであってよいし、重合開始剤等によって形成されたものであってもよい。
【0013】
また、上記共役ジエン系重合体ブロックは、このブロックを構成する重合体中の不飽和二重結合の一部又は全てが水素化されたものであることが好ましい。より好ましくは水素化率が50%以上であるブロックである。このようなブロックを含むことにより、柔軟性及び透明性に優れた硬化物を容易に得ることができる。
【0014】
本発明に係るポリオルガノシロキサンを構成する、単位A、単位B及び単位Cの配列順は特に限定されないが、A−B−C、A−C−B、B−A−C、A−B−C−A、A−B−C−B、A−C−B−C、B−A−C−A、B−C−A−B、A−B−C−B−A、A−B−C−B−C、A−B−C−A−B、B−A−C−B−A、B−A−C−A−B、C−B−A−B−C、C−A−B−C−A、C−A−B−A−C等が挙げられる。上記共役ジエン系重合体ブロックが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸無水物基等の官能基を有する場合には、単位Aが端部に配置していることが好ましい。
また、単位A、単位B及び単位Cの含有量も特に限定されない。尚、上記ポリオルガノシロキサンは、単位A、B及びC以外の他の単位を含有してもよい。
【0015】
上記ポリオルガノシロキサンとしては、好ましくはオキセタニル基と、三次元の(Si−O−Si)結合と、共役ジエン化合物からなる単位を含み且つ水素化された重合体ブロックとを含む重合体であり、更に、シルセスキオキサン構造を含んでもよいし、鎖中及び/又は末端に、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有してもよいし、Si−H基を含んでもよい。
オキセタニル基の存在は、例えば、H−NMRスペクトルにおいて、4.3〜4.4ppm付近の、2つのピークによって確認でき、また、IRスペクトルにおいても990cm−1付近の、オキセタン環に由来する吸収ピークによって確認することができる。
また、水素化された部位の存在は、例えば、H−NMRのスペクトルにおいて、0.8〜1.5ppm付近の、ブロードなピークによって確認でき、また、IRスペクトルにおいても3,000cm−1付近や、1,400cm−1付近の吸収ピークによって確認することができる。
尚、本発明に係るポリオルガノシロキサンがSi−H基を含む場合、その存在は、IRスペクトルにおいて、2,100cm−1付近の吸収ピークにより確認することができる。
【0016】
本発明に係るポリオルガノシロキサンは、どのような方法により得られたものであってもよいが、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物(a)と、下記式(4)で表される有機ケイ素化合物(b)と、下記式(5)で表される有機ケイ素化合物(c1)又はこの有機ケイ素化合物(c1)を反応系中に発生させる化合物(c2)とを、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有し且つ一部又は全てが水素化されたジエン系重合体(d)の存在下、酸性触媒を用いて加水分解共縮合して得られた重合体であることが好ましい。
【0017】
以下に、上記ポリオルガノシロキサンを製造するために用いる原料成分(a)、(b)、(c1)、(c2)及び(d)について説明する。
1−1.有機ケイ素化合物(a)
本発明に係る有機ケイ素化合物(a)は、下記式(3)で表され、オキセタニル基及び加水分解性基を有する有機ケイ素化合物である。
【化4】

〔但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。Xは加水分解性基であり、Xは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
【0018】
上記式(3)において、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル機、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等)であるが、エチル基が好ましい。また、Rは炭素数2〜6のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等)であるが、プロピレン基が好ましい。また、式(3)におけるR又はRの炭素数がいずれも7以上であると、硬化物の強度が十分でない場合がある。
【0019】
上記式(3)において、Xは、加水分解性を有する基であれば特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基等が挙げられる。これらのうち、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基が特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−及びi−プロポキシ基、n−、i−及びt−ブトキシ基等が挙げられる。シクロアルコキシ基としては、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。また、アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基等が挙げられる。Xとしては、加水分解反応が制御しやすいことから、エトキシ基が特に好ましい。
尚、各Xは、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
また、Xがハロゲン原子である場合には、加水分解によりハロゲン化水素が発生するため、反応系が強酸性雰囲気となりやすく、オキセタニル基が開環する場合がある。
上記有機ケイ素化合物(a)として好ましい化合物は、3−(3−エチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン等である。
【0020】
1−2.有機ケイ素化合物(b)
本発明に係る有機ケイ素化合物(b)は、下記式(4)で表され、オキセタニル基を有さず且つ加水分解性基を有する有機ケイ素化合物である。
(RSiX4−n−m (4)
〔但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Xはシロキサン結合生成基であり、nは0〜2の整数であり、mは0又は1であり、n及びmの和は0〜2の整数である。〕
【0021】
上記式(4)において、Rがアルキル基である場合、炭素数は1〜20であり、好ましい炭素数は1〜12、より好ましくは1〜6である。
がシクロアルキル基である場合、炭素数は3〜10であり、好ましい炭素数は5〜8、より好ましくは5〜6である。
また、Rがアリール基である場合、炭素数は6〜10であり、好ましい炭素数は6〜8、より好ましくは6〜7である。
上記式(4)におけるRの炭素数が多すぎると、後述の加水分解反応が進行しにくく、得られるポリオルガノシロキサンが二層分離を起こしたり白濁したりするため、好ましくない。
尚、上記式(4)において、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
【0022】
上記式(4)において、Xはシロキサン結合生成基、即ち、加水分解により上記式(3)で表される化合物のケイ素原子との間にシロキサン結合を生成し得る基である。例えば、ヒドロキシル基(シラノール基)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシル基(シラノール基)、アルコキシ基、シクロアルコキシ基及びアリールオキシ基が好ましい。
尚、上記式(4)において、Xが複数ある場合、各Xは、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
また、Xがハロゲン原子である場合には、加水分解によりハロゲン化水素が発生するため、反応系が強酸性雰囲気となりやすく、オキセタニル基が開環する場合がある。
【0023】
上記式(2)で表される化合物を以下に例示する。
nが0であり且つmが0である場合、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
nが1であり且つmが0である場合、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
nが2であり且つmが0である場合、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン及びメチルフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
nが0であり且つmが1である場合、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリn−プロポキシシラン、トリイソプロポキシキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、トリフェノキシシラン、ジエトキシプロペノキシシラン、ジメトキシフェノキシシラン、ジフェノキシプロペノキシシラン等が挙げられる。
【0026】
nが1であり且つmが1である場合、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジn−プロポキシシラン、メチルジイソプロペノキシシラン、メチルジフェノキシシラン、メチルジ(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルメトキシフェネトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、n−プロピルジメトキシシラン、n−プロピルジエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルジエトキシシラン、ヘキシルジメトキシシラン、ヘキシルジエトキシシラン、オクチルジメトキシシラン、オクチルジエトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
上記式(4)で表される化合物のうち、nが1であり、且つ、mが0又は1である化合物が好ましく、nが1であり且つmが0である化合物が特に好ましい。
nが1であり且つmが0である好ましい有機ケイ素化合物(b)としては、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
有機ケイ素化合物(b)は、有機ケイ素化合物(a)、及び、後述のヒドロキシル基又はカルボキシル基を有し且つ一部又は全てが水素化されたジエン系重合体(d)の縮合を円滑にする目的で用いられる。また、この有機ケイ素化合物(b)を用いることで、得られるポリオルガノシロキサンがより均一であり、硬化物とした場合の透明性に優れる。
【0028】
1−3.有機ケイ素化合物(c1)
本発明に係る有機ケイ素化合物(c1)は、下記式(5)のように、シラノール基を1つ有する化合物である。
(RSiOH (5)
〔但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、sは2又は3であり、tは0又は1であり、s及びtの和は3である。〕
【0029】
上記式(5)において、Rがアルキル基である場合、炭素数は1〜20であり、好ましくい炭素数は1〜6、より好ましくは1〜4である。
がシクロアルキル基である場合、炭素数は3〜10であり、好ましく炭素数は5〜8、より好ましくは5〜6(シクロへキシル基等)である。
また、Rがアリール基である場合、炭素数は6〜10であり、好ましい炭素数は6〜8、より好ましくは6〜7(フェニル基等)である。
尚、上記式(5)において、各Rは、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
【0030】
上記有機ケイ素化合物(c1)としては、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリブチルシラノール、トリフェニルシラノール等が挙げられる。
これらの有機ケイ素化合物(c1)は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
1−4.有機ケイ素化合物(c2)
この化合物(c2)は、上記有機ケイ素化合物(c1)を反応系中に発生させるものである。尚、上記式(5)で表される有機ケイ素化合物(c1)が反応系中に発生していることは、ガスクロマトグラフィーや液相クロマトグラフィー等により確認することができる。
上記式(5)においてsが3であり且つtが0である有機ケイ素化合物(c1)を発生させる化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリメチルシリルアセテート、トリメチルシリルベンゾエート、トリエチルシリルアセテート、トリエチルシリルベンゾエート、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメトキシメチルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、アセチルトリフェニルシラン、エトキシトリフェニルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン等が挙げられる。
【0032】
上記式(5)においてsが2であり且つtが1である有機ケイ素化合物(c1)を発生させる化合物としては、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルn−プロポキシシラン、ジメチルイソプロペノキシシラン、ジメチルフェノキシシラン、ジエチルメトキシシラン、メチルエチルエトキシシラン、n−プロピル(メチル)メトキシシラン、n−プロピル(メチル)エトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピル(メチル)メトキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)エトキシシラン、n−ヘキシル(メチル)メトキシシラン、ジ(ヘキシル)エトキシシラン、n−オクチル(メチル)メトキシシラン、ジ(オクチル)エトキシシラン、ベンジル(メチル)メトキシシラン、フェネチル(メチル)メトキシシラン、メチルフェニルメトキシシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラプロピルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン等が挙げられる。
【0033】
有機ケイ素化合物(c2)として好ましい化合物は、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等である。
有機ケイ素化合物(c1)及び(c2)は、加水分解縮合反応で発生するシラノール基をキャッピングする目的で用いられる。また、この有機ケイ素化合物(c1)及び(c2)を用いることで、得られるポリオルガノシロキサンの粘度コントロールを容易なものとすることができ、更には保存安定性を付与することができる。
【0034】
1−5.ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有し且つ一部又は全てが水素化されたジエン系重合体(d)
本発明に係るヒドロキシル基又はカルボキシル基を有し且つ一部又は全てが水素化されたジエン系重合体(d)(以下、「水添ポリジエン」ともいう。)は、後述の加水分解縮合反応工程において、上記有機ケイ素化合物と縮合反応を行わせる必要があるため、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を少なくとも1つ、より好ましくは2つ以上有する。尚、この水添ポリジエンが有するヒドロキシル基又はカルボキシル基は、分子中のどの位置にあってもよく、分子鎖中及び/又は分子末端に有するものとすることができる。
【0035】
ヒドロキシル基を有する水添ポリジエンとしては、例えば、炭素数4〜22の共役ジエン化合物(ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン等)を含む単量体を、過酸化水素、ヒドロキシル基を有するアゾ化合物(2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕等)又はヒドロキシル基を有する過酸化物(シクロヘキサノンパーオキサイド等)を重合開始剤として、ラジカル重合することにより得られた共役ジエン系重合体等を水素化することにより得られたものを用いることができる。水素化率は特に限定されないが、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。市販品としては、日本曹達社製のヒドロキシル基含有水添ポリブタジエン(商品名「NISSO−PB−GIシリーズ」)、出光興産社製のヒドロキシル基含有水添ポリイソプレン(商品名「エポール」)等がある。
【0036】
同様に、カルボキシル基を有する水添ポリジエンとしては、カルボキシル基を有するポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブテン等を水素化することにより得られたものを用いることができる。水素化率は特に限定されないが、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。市販品としては、日本曹達社製のカルボキシル基含有水添ポリブタジエン(商品名「NISSO−PB−CIシリーズ」)等がある。
【0037】
上記水添ポリジエンの数平均分子量は、好ましくは500〜5,000、より好ましくは700〜2,000である。この範囲にあれば、加水分解縮合反応の際に用いる有機溶媒への溶解性が高く、反応により得るポリオルガノシロキサンに十分な柔軟性を付与することができる。尚、この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリスチレン換算値である。以下も同じである。
上記水添ポリジエンとしては、ヒドロキシル基を有する水添ポリジエン及びカルボキシル基を有する水添ポリジエンを組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る水添ポリジエンとしては、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有し且つ一部又は全てが水素添加されたポリブタジエンが好ましい。
【0038】
1−6.加水分解縮合反応
上記ポリオルガノシロキサンは、上記原料成分と、酸性触媒、水、有機溶媒等を用いて、(i)加水分解縮合工程、(ii)加水分解縮合反応工程で使用した水及び有機溶媒の除去工程の2工程により得ることができる。
【0039】
上記原料成分、即ち、有機ケイ素化合物(a)、(b)、(c1)及び(c2)、並びに、水添ポリジエン(d)の使用量を、これらの合計を100質量部として下記に説明する。
有機ケイ素化合物(a)は、好ましくは0.1〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。0.1質量部未満では、硬化後にも流動性があるようなゲル状物しか得られず、60質量部を超えると、硬化物の柔軟性が発現されない傾向にある。
有機ケイ素化合物(b)は、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは5〜50質量部である。1質量部未満では、有機ケイ素化合物(a)及び水添ポリジエン(d)の縮合が円滑に進行しないため、均一で透明なポリオルガノシロキサンが得られず、50質量部を超えると、硬化物の柔軟性が発現されない傾向にある。
有機ケイ素化合物(c1)又は(c2)は、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部である。1質量部未満では、保存安定性に劣るポリオルガノシロキサンしか得られず、30質量部を超えると、均一で透明なポリオルガノシロキサンが得られない。
水添ポリジエン(d)は、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜80質量部である。10質量部未満では、硬化物の柔軟性が発現されず、90質量部を超えると、硬化後にも流動性があるようなゲルしか得られない。
【0040】
上記の有機ケイ素化合物(a)、(b)、(c1)及び(c2)、並びに、水添ポリジエン(d)の反応は、通常、酸性の水中で行われる。
加水分解縮合工程(i)で使用する水は、有機ケイ素化合物(a)、(b)及び(c1)中のシロキサン結合生成基を完全に加水分解するのに必要な水の量を1当量とすると、0.5〜10当量を使用するのが好ましく、1.5〜5当量を使用するのが特に好ましい。
【0041】
加水分解縮合工程(i)において、上記原料成分の反応は、通常、酸性の水溶液中で行われる。反応時の系のpHは、好ましくは0.5〜4.5、より好ましくは0.9〜1.5である。pHが0.5以下であると、大部分のオキセタニル基が開環してしまい、得られる組成物の硬化性が著しく低下する。一方、pHが4.5〜6.9の弱酸性下では、加水分解及び縮合反応の速度が低下し、製造に長時間を要する。また、pHが7の中性下では、有機ケイ素化合物(A)の加水分解が完全に進行しないため、所望のポリシルセスキオキサンが得られない。
【0042】
上記好ましい酸性雰囲気とするための酸性触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、炭酸等が挙げられる。これらのうち、塩酸が好ましい。
【0043】
加水分解時に用いる有機溶媒は、水添ポリジエン(d)を溶解するための有機溶媒(p1)、及び、この有機溶媒(p1)と混和可能な水混和性有機溶媒(p2)、の混合溶媒を用いて反応系を均一にする必要がある。
水添ポリジエン(d)を溶解するための有機溶媒(p1)としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。後述の水混和性有機溶媒(p2)と良好に溶解し、更に水を反応系内に入れた際に、反応系を均一とするために、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を用いることが好ましく、メチルイソブチルケトンを用いることが特に好ましい。
また、水混和性有機溶媒(p2)としては、前述のケトン類との良好な混和性を有し、水添ポリジエン(d)を析出させる効果の小さい有機溶媒が好ましく、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0044】
加水分解時における好ましい反応温度は、Si−H基を有する有機ケイ素化合物を原料成分として使用するか否かで大きく異なる。
Si−H基を有する有機ケイ素化合物を使用しない場合の反応温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜80℃である。また、反応時間は、好ましくは2〜30時間、より好ましくは4〜24時間である。
一方、Si−H基を有する有機ケイ素化合物を使用する場合の反応温度は、好ましくは10〜60℃、より好ましくは20〜40℃である。また、反応時間は、好ましくは2〜30時間、より好ましくは4〜24時間である。
【0045】
加水分解縮合工程(i)の具体的な方法としては、全ての原料成分を一括で仕込み、所定の温度に保って加水分解縮合を行う方法、原料成分を分割して仕込み、特定の順序で追加して行う方法が挙げられる。前者の場合、有機ケイ素化合物どうしの加水分解縮合は良好に進行するものの、有機ケイ素化合物(a)、(b)及び(c1)又は(c2)と水添ポリジエン(d)の縮合反応が進行しにくいことがある。従って、後者の方法で行うことが好ましい。
【0046】
後者の方法について、具体的に説明する。
まず、水添ポリジエン(d)及びこれを良好に溶解する有機溶媒(p1)を反応容器に仕込み、攪拌等により水添ポリジエン(d)を溶解する。次いで、有機ケイ素化合物と、水添ポリジエン(d)を溶解する有機溶媒と混和可能な水混和性有機溶媒(p2)を反応容器に投入して攪拌し、系中を均一とする。その後、酸性触媒と、必要量の水の混合溶液とを反応系へ導入し、所定温度で所定時間攪拌しながら反応する。酸性触媒及び水の混合溶液を反応系へ導入する際には、一気に投入してもよいが、反応温度が著しく上昇し、製品の透明性が損なわれることがあるため、徐々に添加することが好ましい。その添加速度は、系内の反応温度が20℃以上上昇しないように調節することが好ましく、更には、系内の反応温度が5℃以上上昇しないように調節することが好ましい。
【0047】
また、他の方法として、まず、水添ポリジエン(d)及びこれを良好に溶解する有機溶媒(p1)を反応容器に仕込み、攪拌等により水添ポリジエン(d)を溶解する。次いで、水添ポリジエン(d)を溶解する有機溶媒と混和可能な水混和性有機溶媒(p2)と、酸性触媒、必要量の水の混合溶液を反応容器に投入して攪拌し、系中を均一とする。その後、有機ケイ素化合物を反応系へ導入し、所定温度で所定反応時間攪拌する。この方法によると、有機ケイ素化合物が反応系へ導入された時点で反応温度が上昇するため、有機ケイ素化合物の導入は、系内の反応温度が20℃以上上昇しないように徐々に行うことが好ましく、更には系内の反応温度が5℃以上上昇しないように導入することが好ましい。
【0048】
加水分解縮合工程(i)の後、加水分解縮合反応工程で使用した水及び有機溶媒を除去する工程(ii)を行う。
加水分解縮合工程(i)の後、加水分解で消費されなかった水が存在する場合には、その水と加水分解縮合工程(i)で使用した有機溶媒の除去を行うが、この工程は常圧ないし減圧下で、通常の蒸留操作を行えばよい。
【0049】
上記工程の後得られる反応生成物(ポリオルガノシロキサン)について説明する。
本発明に係るポリオルガノシロキサンは、上記のように、オキセタニル基を有し、特定の構造単位を含み、必要に応じてシルセスキオキサン構造を含む。
オキセタニル基の存在は、例えば、H−NMRスペクトルにおいて、4.3〜4.4ppm付近の、特徴的な2つのピークによって確認でき、また、IRスペクトルにおいても990cm−1付近の、オキセタン環に由来する吸収ピークによって確認することができる。
また、特定の構造単位である、水添ポリジエン(d)からなる部位の存在は、例えば、H−NMRのスペクトルにおいて、0.8〜1.5ppm付近の、ブロードなピークによって確認でき、また、IRスペクトルにおいても3,000cm−1付近や、1,400cm−1付近の吸収ピークによって確認することができる。
尚、本発明に係るポリオルガノシロキサンは、Si−H基を含んでいてもよいが、その場合、Si−H基の存在は、IRスペクトルにおいて、2,100cm−1付近の特徴的な吸収ピークにより確認することができる。
【0050】
本発明に係るポリオルガノシロキサンは、オキセタン環やSi−H基の他に、上記原料成分が加水分解して形成された三次元の(Si−O−Si)結合を含んでおり、原料成分の組み合わせによってはシルセスキオキサン構造を有し、好ましい。
また、本発明に係るポリオルガノシロキサンがシルセスキオキサン構造を含む場合には、ハシゴ状、カゴ状又はランダム状の構造が挙げられる。これらのシルセスキオキサン構造は、1種単独でもよいし、構造又は分子量の異なる2種以上を含んでもよい。
尚、本発明に係るポリオルガノシロキサンがシルセスキオキサン構造を含む場合は、上記原料成分が有する加水分解性基のうち、好ましくは90%以上が縮合されている。即ち、加水分解性基として、例えば、Si−OR基のような加水分解性基が10%を超えて残存すると、シルセスキオキサン構造が十分に形成されていない場合がある。このようなポリオルガノシロキサンを含む硬化性組成物の貯蔵安定性が低下する場合、更には、得られる硬化物の強度が十分でない場合がある。ここで「シルセスキオキサン構造が十分に形成されている」ことは、例えば、29Si−NMRのスペクトルにおいて−60〜−70ppmにRSiO1.5に基づくブロードなピークにより確認することができる。
【0051】
本発明に係るポリオルガノシロキサンの数平均分子量は、好ましくは1,500〜15,000、より好ましくは2,000〜5,000である。数平均分子量が小さすぎると、得られる組成物から形成される硬化物の機械的強度が十分でない場合がある。一方、数平均分子量が大きすぎると、得られる組成物の粘度が高くなり過ぎて、作業性が低下する場合があり、特に、この組成物を注型材として用いる場合において顕著となる。
【0052】
2.硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、上記製造方法により得られたポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、カチオン重合触媒とを必須成分として含有する。
【0053】
2−1.エポキシ化合物
本発明に係るエポキシ化合物は、分子構造、分子量等の性質に特に制限はなく、従来、公知のものを用いることができる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエルスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジルテトラヒドロピラニルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアセテート、特開平6−166752号公報、米国特許6706840号公報等に開示されたシリコーンエポキシ等が挙げられる。尚、上記エポキシ化合物としては、分子中の水素原子の一部又は全てがフッ素で置換されたものを使用することもできる。これらのエポキシ化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、上記エポキシ化合物としては、エポキシ基の数が2以上と多いものが好ましく、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等が好ましい。
【0054】
2−2.カチオン重合触媒
本発明に係るカチオン重合触媒は、大きく分けて熱カチオン重合触媒及び光カチオン重合触媒がある。
【0055】
2−2−1.熱カチオン重合触媒
上記熱カチオン重合触媒は、加熱により活性化され開環重合性基の開環を誘発する化合物であり、例えば、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等のオニウム塩類、有機金属錯体類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オニウム塩類としては、市販品を用いることができ、例えば、旭電化工業社製の「アデカオプトンCP−66」及び「アデカオプトンCP−77」(いずれも商品名)、三新化学工業社製の「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」及び「サンエイドSI−100L」(いずれも商品名)、日本曹達社製の「CIシリーズ」等が挙げられる。上記オニウム塩類は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記有機金属錯体類としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等のアルミニウム錯体を含むアルミニウム化合物、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウム錯体を含むジルコニウム化合物、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタネート等のチタニウム錯体を含むチタン化合物等が挙げられる。上記有機金属錯体類は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、上記のうち、アルミニウム化合物が好ましい。
【0056】
2−2−2.光カチオン重合触媒
本発明の光カチオン重合開始剤は、光を照射されて活性化され開環重合性基の開環を誘発する化合物であり、例えば、オニウム塩類、有機金属錯体類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オニウム塩類としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。上記オニウム塩類は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記有機金属錯体類としては、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。上記有機金属錯体類は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記有機金属錯体類としては、市販品を用いることができ、例えば、旭電化工業社製「オプトマーSP−150」、「オプトマーSP−170」(いずれも商品名)、ゼネラルエレクトロニクス社製「UVE−1014」(商品名)、サートマー社製「CD−1012」(商品名)等が挙げられる。
【0057】
2−3.その他の成分
本発明の硬化性組成物は、上記の必須成分以外に、オキセタン環を有しシルセスキオキサン構造を有さない化合物;有機溶剤;有機フィラー、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤;等を配合することができる。
【0058】
上記のオキセタン環を有しシルセスキオキサン構造を有さない化合物は、本組成物の粘度をコントロールして型枠に注入しやすくする等の作業性を向上させる、硬化物に接着性、耐薬品性を付与する等の目的で配合される。この化合物は、上述のカチオン重合触媒によって硬化できるものであれば、分子構造、分子量等の性質に特に制限はなく、従来、公知のものを用いることができる。
具体的な化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−アリロキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブタンジオールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ヘキサンジオールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カーボネートビスオキセタン、アジペートビスオキセタン、テレフタレートビスオキセタン、シクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタン、3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(3−エチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、特開平6−16804号公報に開示されたオキセタンシリコーン等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
上記有機溶剤は、用途等に応じて、本組成物の粘度調節等のために用いられる。塗工等を行う場合には、所定範囲の粘度とすることにより、作業性が向上する。
具体的には、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルコール類としては、エタノール、メタノール、イソブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール等が挙げられる。
上記ケトン類としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
上記エーテル類としては、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
上記エステル類としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0060】
上記シランカップリング剤は、本発明の組成物を、各種材料からなる基材に対する接着性を向上させるため等に有用である。基材の好ましい構成材料としては、金属、ガラス、セラミック、無機材料が分散して含まれるプラスチック等が挙げられる。
具体的な化合物としては、グリシジロキシトリメトキシシラン、ビス(グリシジロキシ)ジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
2−4.配合禁忌成分
本発明に係るポリオルガノシロキサンとして、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンを使用した場合には、Si−H基を分解する、水酸化ナトリウム、ピリジンのような塩基性の化合物を配合してはならない。本発明の硬化性組成物はカチオン重合触媒の存在下で硬化するため、塩基性物質を配合すると、Si−H基が分解されるだけでなく、硬化も起こらなくなってしまう。
また、本発明に係るポリオルガノシロキサンとして、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンを、硬化物の外観や光透過性が要求される用途に使用する場合、カチオン重合触媒として広く使用されている、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等の各種オニウム塩型カチオン重合触媒は配合してはならない。これらオニウム塩型カチオン重合開始剤を配合することで、熱硬化型あるいは光硬化型の硬化性組成物を調製することはできるし、優れた接着性、機械的強度を有する硬化物を得ることはできる。しかしながら、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、オニウム塩型カチオン重合触媒とからなる硬化物は、黒ずんだ異物が発生し、外観、光透過性等が十分でない場合がある。よって、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンを使用する場合のカチオン重合触媒は、金属錯体型カチオン重合触媒、特にアルミニウム化合物であることが好ましい。
【0062】
2−5.組成物の構成
本発明の硬化性組成物は、本発明の組成物を熱硬化性とするか光硬化性とするかで異なる。
2−5−1.熱硬化性組成物
本発明の熱硬化性組成物は、熱カチオン重合触媒として、オニウム塩類を使用するか、アルミニウム化合物等の有機金属錯体類を使用するかで組成が異なる。
(1)オニウム塩類を熱カチオン重合触媒として使用する場合
オニウム塩類を熱カチオン重合触媒として使用する場合、本発明の熱硬化性組成物は、上記ポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、オニウム塩類とを必須成分として含有する硬化性組成物であり、適宜、上記その他の成分を含有したものとすることができる。
以下に、各成分の含有量について記述するが、その他の成分、特に、有機溶剤を配合する場合は、「組成物全体」という表現は「不揮発分全体」と読み替えるものとする。
【0063】
ポリオルガノシロキサンの含有量は、組成物全体に対し、好ましくは5〜97質量%、より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは15〜70質量%である。このポリオルガノシロキサンの含有量が5質量%未満であっても、97質量%を超えても組成物の硬化速度が著しく低下する場合がある。
エポキシ化合物の含有量は、組成物全体に対し、好ましくは3〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%である。このエポキシ化合物の含有量が3質量%未満では、組成物の硬化速度が著しく遅くなり、硬化物が得られない場合がある。
オニウム塩類の含有量は、組成物全体に対し、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。このオニウム塩類の含有量が0.001質量%未満では、熱の作用により活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させられない場合があり、硬化物の耐熱性及び強度が不十分となる場合が有る。一方、5質量%を超えると、重合を進行する作用はそれ以上高まらず、硬化物の耐熱性及び強度が低下する場合がある。
【0064】
オニウム塩類を熱カチオン重合触媒として含む熱硬化性組成物は、上記各成分を混合することにより得ることができる。混合の際には、従来、公知の混合機を用いればよい。具体的には、チェンジ缶式ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、インクロール、押出機、3本ロールミル、サンドミル等が挙げられる。
尚、混合機によっては、混合中に発生する摩擦熱により熱カチオン重合触媒が活性化されるため、各成分を40℃以下、好ましくは25℃以下に保ちながら混合することが好ましい。
【0065】
(2)有機金属錯体類を熱カチオン重合触媒として使用する場合
有機金属錯体類を熱カチオン重合触媒として使用する場合、本発明の熱硬化性組成物は、上記ポリオルガノシロキサンを必須成分とするA液、及び、エポキシ化合物と、有機金属錯体類とを必須成分とするB液の2種の組成物を調製し、その後、混合して用いることが好ましい。即ち、A液及びB液の2液型とすることが好ましい。A液及びB液は、適宜、上記その他の成分を含有したものとすることができる。
【0066】
A液は、有機金属錯体類を含有しない組成物であり、ポリオルガノシロキサンを含み、必要に応じて、エポキシ化合物、上記のオキセタン環を有しシルセスキオキサン構造を有さない化合物、有機溶剤、有機フィラー、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等を含有したものとすることができる。
また、B液は、上記ポリオルガノシロキサンを含有しない組成物であり、エポキシ化合物及び有機金属錯体類を含み、上記のオキセタン環を有しシルセスキオキサン構造を有さない化合物、有機溶剤、有機フィラー、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等を含有したものとすることができる。尚、シラノール基を発生させることのできるシランカップリング剤は、棚ライフが損なわれるため配合しないことが好ましい。
【0067】
以下に、A液及びB液を混合した場合の各成分の含有量について記述するが、その他の成分、特に、有機溶剤を配合する場合は、「組成物全体」という表現は「A液とB液を混合した際の不揮発分全体」と読み替えるものとする。
ポリオルガノシロキサンの含有量は、組成物全体に対し、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは15〜70質量%である。このポリオルガノシロキサンの含有量が5質量%未満であっても、95質量%を超えても、組成物の熱硬化速度が著しく低下する場合がある。
エポキシ化合物の含有量は、組成物全体に対し、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは20〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%である。このエポキシ化合物の含有量が1%未満では、組成物の硬化速度が著しく遅くなり、80質量%を超えると、硬化物の強度が十分でない場合がある。
有機金属錯体類の含有量は、組成物全体に対し、好ましくは0.001〜2質量%、より好ましくは0.002〜1質量%、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。この有機金属錯体類の含有量が0.001質量%未満では、熱の作用により活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させることができない場合があり、硬化物の耐熱性及び強度が不十分となる場合がある。また、2質量%を超えると、触媒の作用が強すぎて急激に重合するため、強度及び外観の優れた硬化物が得られない場合がある。
【0068】
上記のA液及びB液は、各々、上記の成分を混合することにより得ることができる。混合の際には、従来、公知の混合機を用いればよい。具体的には、反応用フラスコ、チェンジ缶式ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、インクロール、押出機、3本ロールミル、サンドミル等が挙げられる。
尚、混合機によっては、混合中に発生する摩擦熱により重合が開始してしまうため、各成分を40℃以下、好ましくは25℃以下に保ちながら混合することが好ましい。
【0069】
2−5−2.光硬化性組成物
本発明の光硬化性組成物は、上記ポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、光カチオン重合触媒とを必須成分として含有し、適宜、上記その他の成分を含有したものとすることができる。
以下に、各成分の含有量について記述するが、その他の成分、特に、有機溶剤を配合する場合は、「組成物全体」という表現は「不揮発分全体」と読み替えるものとする。
【0070】
ポリオルガノシロキサンの含有量は、組成物全体に対し、好ましくは5〜97質量%、より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは15〜70質量%である。このポリオルガノシロキサンの含有量が5質量%未満であっても、97質量%を超えても、組成物の硬化速度が著しく低下する場合がある。
エポキシ化合物の含有量は、組成物全体に対し、好ましくは3〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%である。このエポキシ化合物の含有量が3質量%未満では、組成物の硬化速度が著しく遅くなり、硬化物が得られない場合がある。
光カチオン重合触媒の含有量は、組成物全体に対し、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.03〜3質量%、更に好ましくは0.5〜1質量%である。この光カチオン重合開始剤の含有量が0.01質量%未満では、光の作用により活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させることができない場合があり、硬化物の耐熱性及び強度が不十分となる場合がある。また、5質量%を超えると、重合を進行する作用はそれ以上高まらず、硬化物の耐熱性及び強度が低下することがある。
【0071】
本発明の光硬化性組成物は、上記の成分を混合することにより得ることができる。混合の際には、従来、公知の混合機を用いればよい。具体的には、反応用フラスコ、チェンジ缶式ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、インクロール、押出機、3本ロールミル、サンドミル等が挙げられる。
【0072】
3.硬化性組成物の硬化方法
本発明の硬化性組成物は、熱硬化性であるか、光硬化性であるかにより、その硬化方法が異なる。
3−1.熱硬化性組成物の硬化方法
本発明の熱硬化性組成物は、A液及びB液を、好ましくは、使用前に混合し、下記の温度で、一定時間加熱することにより硬化させることができる。
硬化温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは75〜180℃である。上記範囲内で、温度を一定としてもよいし、昇温させてもよい。更には、昇温と降温とを組み合わせてもよい。硬化時間は、カチオン重合触媒の種類、他の成分の含有割合等により適宜、選択されるが、通常、10分以上であり、好ましくは1〜24時間である。
好ましい硬化方法の例としては、組成物を100℃で3時間加熱した後に、120℃に昇温し、この温度で3時間加熱する方法であり、この方法によると、110℃で6時間加熱した場合に比べて、より機械的強度に優れた硬化物が得られる。従って、硬化温度を段階的に変化させる硬化方法が好ましい。
また、組成物を固化する本硬化の後に、得られた硬化物を本硬化より低い温度で加熱する(後硬化)方法も、機械的強度に優れた硬化物が得られるため好ましい。
【0073】
3−2.光硬化性組成物の硬化方法
本発明の光硬化性組成物の硬化方法としては、従来、公知の光照射装置等によって光照射を行えばよい。この光照射装置としては、例えば、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
組成物への光照射強度は、目的、用途等に応じて選択すればよく、光カチオン重合触媒の活性化に有効な光波長領域(光カチオン重合触媒の種類によって異なるが、通常、300〜420nmの波長の光が用いられる。)における光照射強度が0.1〜100mW/cmであることが好ましい。組成物への光照射強度が0.1mW/cm未満であると、反応時間が長くなり過ぎる場合がある。一方、100mW/cmを超えると、光照射装置から輻射される熱及び組成物の重合時の発熱により、得られる硬化物の凝集力の低下や黄変あるいは支持体の劣化が生じるおそれがある。
また、組成物への光照射時間も、目的、用途等に応じて選択すればよく、上記光波長領域における光照射強度及び光照射時間の積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cmとなるように設定されることが好ましい。従って、積算光量が上記範囲にあれば、組成物の硬化が円滑に進行し、均一な硬化物を容易に得ることができる。尚、上記積算光量が10mJ/cm未満では、光カチオン重合触媒の活性化が十分でなく、硬化物の強度が低下する場合がある。一方、5,000mJ/cmを超えると、照射時間が非常に長時間となってしまい、生産性向上のためには不利なものとなる。また、活性エネルギー線照射後0.1〜数分後には、ほとんどの組成物はカチオン重合により指触乾燥するが、カチオン重合反応を促進するために加熱を併用することも場合によっては好ましい。
【0074】
本発明の硬化性組成物を用いて得られる硬化物は、柔軟性、透明性及び基材への接着性に優れる。柔軟性に関しては、ショアD硬度を好ましくは45以下、より好ましくは20以下等とすることができる。透明性に関しては、波長400nmの光の透過率を好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上等とすることができる。更に、基材への接着性に関しては、JIS−K6861に準じて測定される硬化物の基材構成材料への引張剪断接着強さを好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上等とすることができる。尚、基材を構成する材料は、金属、ガラス、セラミック、無機材料が分散して含まれるプラスチック等が挙げられる。また、基材の表面は、平滑面であっても、凹凸を有する面であっても高い接着性を有する。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を、実施例により具体的に説明する。
1.ポリオルガノシロキサンの合成
合成例1
攪拌機及び温度計を備えた反応器に、水添ポリジエンとして、両末端ヒドロキシル基水添ポリブタジエン(商品名「NISSO−PB−GI−1000」、日本曹達社製。以下、「GI−1000」という。)60g、メチルイソブチルケトン160ml、イソプロピルアルコール100ml、下記式(6)で表される3−(3−エチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン(以下、「OX−TRIES」という。)18.37g(57.3mmol)、ヘキシルトリメトキシシラン30.07g(145.7mol)及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン8.0g(59.6mmol)を仕込み、原料混合物とした。反応(加水分解縮合)の前に、この時点におけるGPCを測定した。GPCクロマトグラムを図1に示す。
次いで、原料混合物を25℃で攪拌しながら、1%塩酸15gを徐々に加えて、反応を開始した。反応の進行をGPCにより追跡し、原料のアルコキシシラン化合物がほぼ消失した時点(混合物の添加開始から20時間後)で反応完結とした。その後、減圧下に溶媒を留去し、収量100gとほぼ定量的に、ポリオルガノシロキサン(以下、「樹脂X」という。)が得られた。この樹脂Xは、無色透明であり、25℃における粘度が5,400mPa・sであった。また、この樹脂XのGPCによるクロマトグラムは、図2に示すとおりであり、数平均分子量は3,100であった。
【化5】

【0076】
樹脂Xについて、H−NMR、29Si−NMR及びIRの各測定を行った。H−NMRスペクトルによると、4.4及び4.3ppmに出現した、複雑に分裂したピークによりオキセタニル基が存在することが分かり、0.0〜0.1ppmの間に1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン由来のSi−CH基のピークが出現しており、0.9〜1.7ppmの間にGI−1000及びヘキシル基の重なったブロードなピークが出現し、それらの積分比から仕込み通りに縮合していることが分かった。また、29Si−NMRスペクトルによると、10ppm付近に出現する1,1,3,3−テトラメチルジロキサン由来のトリメチルシリル基のピーク以外に、−60〜−70ppmにブロードなピークが出現しており、シルセスキオキサン構造が形成されていることが分かった。
また、IRスペクトルによると、2,100cm−1付近のSi−H基の比較的シャープな吸収、1000〜1100cm−1付近のSi−O−Si結合のブロードな吸収、860cm−1付近にSi−CH結合の吸収、Si−O−Si結合の吸収に重なってはいるが990cm−1付近にオキセタニル基の吸収が見られ、試料はオキセタニル基と、Si−H基、Si−CH基を有するポリオルガノシロキサンであることが分かった。
以上から、樹脂Xは、オキセタニル基と、シルセスキオキサン構造と、水素化されたジエン系重合体からなる部位とを含む重合体であることが分かった。
【0077】
合成例2
攪拌機及び温度計を備えた反応器に、メチルイソブチルケトン160ml、イソプロピルアルコール100ml、OX−TRIES18.37g(57.3mmol)、ヘキシルトリメトキシシラン30.07g(145.7mol)及びテトラメチルジシロキサン8.0g(59.6mmol)を仕込み、原料混合物とした。反応(加水分解縮合)の前に、この時点におけるGPCを測定した。GPCクロマトグラムを図3に示す。
次いで、原料混合物を25℃で攪拌しながら、1%塩酸15gを徐々に加えて、反応を開始した。反応の進行をGPCにより追跡し、原料のアルコキシシラン化合物がほぼ消失した時点(混合物の添加開始から20時間後)で反応完結とした。その後、減圧下に溶媒を留去し、収量40gとほぼ定量的に、ポリオルガノシロキサン(以下、「樹脂Y」という。)が得られた。この樹脂Yは、無色透明であり、25℃における粘度が1,900mPa・sであった。また、この樹脂XのGPCによるクロマトグラムは、図4に示すとおりであり、数平均分子量は1,100であった。
【0078】
2.熱硬化性組成物の調製及び硬化物の評価
実施例1
合成例1で得られた樹脂XをそのままA液とした。
一方、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、エポキシ化合物として、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名「デナコールEX−212」、ナガセケムテックス社製。以下、「HDDGE」ともいう。)30質量部と、カチオン重合触媒(I)として、トリスアセチルアセトナトアルミニウム(東京化成工業社製。以下、「Al(AcAc)」ともいう。)0.01質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、50℃で2時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、無色透明な均一溶液を得た。これをB液とした。
上記A液70質量部及びB液30.01質量部を容器に入れ、ディスパーで5分間攪拌した。容器ごとベルジャーへ入れ、減圧ポンプで1時間脱気し脱泡したところ、Al(AcAc)の含有量が100ppmである無色透明な液状の2液型熱硬化性組成物を得た。
【0079】
上記熱硬化性組成物を用いて硬化物を得て、以下の方法により各種評価を行った。柔軟性は、ショアD硬度測定及び折り曲げ試験により、光透過性は、光透過率により、そして、接着性は、引張剪断接着強さにより測定した。以上の結果を表1に示す。
(1)ショアD硬度
熱硬化性組成物を、長さ25mm×幅25mm×厚さ3mmの窪みを有するフッ素樹脂製型枠へ注入し、防爆型乾燥器内において120℃で1時間加熱、更に150℃で7時間加熱することにより硬化物を得た。この硬化物を、温度25℃、湿度65%の環境下で24時間放置し、評価用のサンプルとした。
ショアD硬度の測定は、JIS−K7215に準じ、デュロメータ「HD−104N型」(上島製作所社製)を用いて行った。
【0080】
(2)折り曲げ試験
熱硬化性組成物を、厚さ20μmの耐熱PETフィルム上にバーコートし、厚さ約20μmの塗膜を得た。その後、上記と同様にして塗膜を硬化させた。
折り曲げ試験の評価は、積層フィルムを、温度25℃、湿度60%RHの環境下、24時間静置した後、巻き上げてロールとし、硬化皮膜におけるひびの有無を観察することにより行った。表中において、「○」は、ロールにした際にひびが入らなかったことを、「×」は、ロールにした際にひびが入ったことを示す。
【0081】
(3)光透過率
折り曲げ試験用試験片を用い、分光蛍光光度計「V−550型」(日本分光社製)により、波長400nmにおける透過率を測定した。
【0082】
(4)引張剪断接着強さ
試験はJIS−K6861(1977)に準じて実施した。長さ100mm×幅25mm×厚さ2mmのガラス製テストピースと、それと同寸法のアルミニウム製テストピースを用い、各テストピースの接着面積が3.125cmになるように組成物を塗布して貼り合わせ、冶具で固定し、上記の条件で硬化させた。この硬化物を、温度25℃、湿度60%RHの環境下に24時間静置し、評価用のサンプルとした。
引張剪断接着強さは、引張圧縮試験機「ストログラフV20−C」(東洋精機製作所製)を用い、クロスヘッド速度10mm/分で引張試験を行うことにより得た。
【0083】
比較例1
合成例2で得られた樹脂YをそのままA液とした。
一方、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、HDDGE30質量部及びAl(AcAc)0.01質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、50℃で2時間攪拌した。次いで、GI−1000(水添ポリジエン)42質量部を加え、更に1時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、白濁した溶液を得た。これをB液とした。
上記A液28質量部及びB液72.01質量部を容器に入れ、ディスパーで5分間攪拌した。容器ごとベルジャーへ入れ、減圧ポンプで1時間脱気し脱泡したところ、Al(AcAc)の含有量が100ppmである白濁した液状の2液型熱硬化性組成物を得た。
上記熱硬化性組成物を用い、実施例1と同様にして硬化物を得て、上記の各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0084】
比較例2
合成例2で得られた樹脂YをそのままA液とした。
一方、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、HDDGE30質量部及びAl(AcAc)0.01質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、50℃で2時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、無色透明な均一溶液を得た。これをB液とした。
上記A液70質量部及びB液30.01質量部を容器に入れ、ディスパーで5分間攪拌した。容器ごとベルジャーへ入れ、減圧ポンプで1時間脱気し脱泡したところ、Al(AcAc)の含有量が100ppmである無色透明な液状の2液型熱硬化性組成物を得た。
上記熱硬化性組成物を用い、実施例1と同様にして硬化物を得て、上記の各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1より、比較例2は、本発明に係るポリオルガノシロキサンでない樹脂Yを含む組成物を用いた例であり、その硬化物の光透過性は十分であるが、柔軟性に劣っていた。また、比較例1は、本発明に係るポリオルガノシロキサンでない樹脂Yと、エポキシ化合物と、ヒドロキシル基を有し且つ水素化されたジエン系重合体とを含む組成物を用いた例であり、その硬化物の柔軟性は十分であるが、光透過性及び接着性に劣っていた。
一方、実施例1においては、柔軟性、光透過性及び接着性に優れた硬化物であることが分かる。
【0087】
3.光硬化性組成物の調製及び硬化物の評価
実施例2
合成例1で得られた樹脂X70質量部、HDDGE30質量部及びカチオン重合触媒(II)として、光カチオン重合開始剤(商品名「photoinitiator2074」(ローディアジャパン社製。以下、「PI−2074」という。)1質量部を、遮光しながらディスパーで15分間攪拌した。その後、脱泡を行うことにより、光硬化性組成物を得た。
【0088】
上記光硬化性組成物を用いて硬化物を得て、ショアD硬度、折り曲げ試験、光透過率及び引張剪断接着強さについて評価した。その結果を表2に示す。
(1)ショアD硬度
ショアD硬度測定用の硬化物は、光硬化性組成物を、長さ25mm×幅25mm×厚さ3mmの窪みを有するフッ素樹脂製型枠へ注入した後、60W/cm高圧水銀ランプを用い、高さ30cmから、大気中、5分間光照射を行うことにより得た。
【0089】
(2)折り曲げ試験
光硬化性組成物を、厚さ20μmのPETフィルム上にバーコートし、厚さ約20μmの塗膜を得た。その後、光源に60W/cm高圧水銀ランプを用い、ランプ高さ30cmから、大気中、1分間光照射を行うことにより、硬化物を得た。
折り曲げ試験の評価は、この硬化物を温度25℃、湿度60%RHの環境下、24時間静置した後、積層フィルムを巻き上げてロールとし、皮膜におけるひびの有無を観察することにより行った。表中において、「○」は、ロールにした際にひびが入らなかったことを、「×」は、ロールにした際にひびが入ったことを示す。
【0090】
(3)光透過率
光硬化性組成物を、長さ50mm×幅50mm×厚さ2mmの窪みを有するフッ素樹脂製型枠へ注入した。その後、60W/cm高圧水銀ランプを用い、高さ30cmから、大気中、5分間光照射を行うことにより得た。この硬化物を、温度25℃、湿度60%RHの環境下、24時間静置した後、測定試料とし、分光蛍光光度計「V−550型」(日本分光社製)により、波長400nmにおける透過率を測定した。
【0091】
(4)引張剪断接着強さ
試験はJIS−K6861(1977)に準じて実施した。長さ100mm×幅25mm×厚さ2mmのガラス製テストピースと、それと同寸法のアルミニウム製テストピースを用い、各テストピースの接着面積が3.125cmになるように組成物を塗布して貼り合わせ、冶具で固定し、ガラス製テストピースの方から光照射した。光源には60W/cm高圧水銀ランプを用い、ランプ高さ30cmから、大気中、1分間光照射を行い、硬化させた。この硬化物を、温度25℃、湿度60%RHの環境下に24時間静置し、評価用のサンプルとした。
引張剪断接着強さは、引張圧縮試験機「ストログラフV20−C」(東洋精機製作所製)を用い、クロスヘッド速度10mm/分で引張試験を行うことにより得た。
【0092】
比較例3
合成例2で得られた樹脂Y28質量部、GI−1000(水添ポリジエン)42質量部、HDDGE30質量部及びPI−2074の1質量部を、遮光しながらディスパーで15分間攪拌した。その後、脱泡を行うことにより、光硬化性組成物を得た。
上記光硬化性組成物を用い、実施例2と同様にして硬化物を得て、上記の各種評価を行った。その結果を表2に示す。
【0093】
比較例4
合成例2で得られた樹脂Y70質量部、HDDGE30質量部及びPI−2074の1質量部を、遮光しながらディスパーで15分間攪拌した。その後、脱泡を行うことにより、光硬化性組成物を得た。
上記光硬化性組成物を用い、実施例2と同様にして硬化物を得て、上記の各種評価を行った。その結果を表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
表2より、比較例4は、本発明に係るポリオルガノシロキサンでない樹脂Yを含む組成物を用いた例であり、その硬化物の光透過性は十分であるが、柔軟性に劣っていた。また、比較例3は、本発明に係るポリオルガノシロキサンでない樹脂Yと、エポキシ化合物と、ヒドロキシル基を有し且つ水素化されたジエン系重合体と、カチオン重合触媒とを含む組成物を用いた例であり、硬化物が得られず、各評価を実施することができなかった。
一方、実施例2においては、柔軟性、光透過性及び接着性に優れた硬化物であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の硬化性組成物は、レンズやレンズシート、プリズム、光導波路用材料、LED(発光ダイオード)、半導体素子等の封止材料等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】合成例1における反応前の原料混合物のGPCクロマトグラムである。
【図2】合成例1で得た樹脂XのGPCクロマトグラムである。
【図3】合成例2における反応前の原料混合物のGPCクロマトグラムである。
【図4】合成例2で得た樹脂YのGPCクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサンと、エポキシ化合物と、カチオン重合触媒とを含有する硬化性組成物であって、
上記ポリオルガノシロキサンは、下記式(1)で表される単位、下記式(2)で表される単位、及び、共役ジエン系重合体ブロックを含む単位を含む重合体であることを特徴とする硬化性組成物。
【化1】

〔但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。〕
[R−Si−O3/2] (2)
〔但し、Rは有機基である。〕
【請求項2】
上記ポリオルガノシロキサンは、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物(a)と、下記式(4)で表される有機ケイ素化合物(b)と、下記式(5)で表される有機ケイ素化合物(c1)又は該有機ケイ素化合物(c1)を反応系中に発生させる化合物(c2)とを、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有し且つ一部又は全てが水素化されたジエン系重合体(d)の存在下、酸性触媒を用いて加水分解共縮合して得られた重合体である請求項1に記載の硬化性組成物。
【化2】

〔但し、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。Xは加水分解性基であり、Xは互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
(RSiX4−n−m (4)
〔但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Xはシロキサン結合生成基であり、nは0〜2の整数であり、mは0又は1であり、n及びmの和は0〜2の整数である。〕
(RSiOH (5)
〔但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、sは2又は3であり、tは0又は1であり、s及びtの和は3である。〕
【請求項3】
上記有機ケイ素化合物(b)が、上記式(4)において、nが1であり、且つ、mが0又は1の化合物である請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記エポキシ化合物が、2以上のエポキシ基を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
上記カチオン重合触媒がアルミニウム化合物である請求項1乃至4のいずれかに記載の硬化性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−152083(P2006−152083A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342923(P2004−342923)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】