説明

磁気マーカ検出装置

【課題】本発明は、効率的に故障認識を行うことができる磁気マーカ検出装置の提供を目的とする。
【解決手段】走行路11上に敷設された磁気マーカMの発する磁界を検出する磁気センサ3内に車両2の所定方向に並んで配列される複数の磁気検出部を備え、複数の磁気検出部のうち所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部を含む領域の中心位置を車両2に対する磁気マーカMの位置と認識する磁気マーカ検出装置であって、前記領域の中心位置と前記領域のうち前記所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部が途切れることなく連続する領域の中心位置とを比較し、両中心位置が異なる場合には故障した磁気検出部があると判定する、磁気マーカ検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気マーカ検出装置に関し、より詳細には、磁界を発する磁気マーカの位置を検出するために設けられた磁気検出部であって移動体の所定方向に並んで配列された複数の磁気検出部について故障を認識する磁気マーカ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁気抵抗素子等の磁気検出部を用いて、道路に所定間隔毎に埋設された磁界を発する磁気マーカの位置を検出する磁気センサの故障認識方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、磁気センサを搭載する車両の走行システムを説明するための構成図である。走行路11上に所定間隔毎に磁気マーカMが設置され、所定の磁気マーカMの間には車両2が走行路11上のどの位置を通過しても磁気センサ3が磁気検出を行うように設置された基準マーカMx(N極に帯磁されたN極基準マーカMxnとS極に帯磁されたS極基準マーカMxs)が設置されている。また、磁気センサ3は、車両の車幅方向に一列に複数個並べて配設された複数の磁気検出素子を有しており、磁気マーカMや基準マーカMxを検出すると、それらの磁気を検出した磁気検出素子だけオンする。
【0004】
したがって、車両2に対する磁気マーカMの車幅方向の位置(見方を変えれば、磁気マーカMに対する車両2の車幅方向の位置)を認識するためは、複数の磁気検出素子のうちオン状態になっている磁気検出素子を含む領域の中心位置を演算すればよい。
【0005】
また、車両2が基準マーカMxを通過するときには全ての磁気検出素子は正常であればオン状態になっていなければならないので、車両2が基準マーカMxを通過するときに磁気検出素子のそれぞれの検出状態を読み取ることで、オン状態になっていない磁気検出素子があればその磁気検出素子はオフ故障していると認識することが可能となる。
【特許文献1】発明協会公開技報2005−500058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、オン状態になっている磁気検出素子を含む領域の中心位置を演算する位置認識処理と車両が基準マーカを通過するときに磁気検出素子のそれぞれの検出状態を読み取って故障を検出する故障認識処理とが互いに独立して行われているので、メモリ容量や処理時間が大きくなる要因となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、効率的に故障認識を行うことができる磁気マーカ検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
移動体の所定方向に並んで配列され、路上に敷設された磁気マーカの発する磁界を検出する複数の磁気検出部を備え、
複数の磁気検出部のうち所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部を含む領域の中心位置を前記移動体に対する前記磁気マーカの位置と認識する磁気マーカ検出装置であって、
前記領域の中心位置と前記領域のうち前記所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部が途切れることなく連続する領域の中心位置とを比較し、両中心位置が異なる場合には故障した磁気検出部があると判定する、磁気マーカ検出装置が提供される。
【0009】
本局面によると、移動体に対する磁気マーカについての位置認識処理の結果から故障認識を行うので、位置認識処理と故障認識処理を同時に稼働させることなく、ROM容量や処理時間を節約することができる。
【0010】
ここで、本局面において、前記磁気マーカの少なくとも一つ以上は、前記移動体がどの位置を通過しても全ての磁気検出部が前記所定の磁界強度条件を満たすことができるように配置された基準磁気マーカであることが望ましい。並んで配列された複数の磁気検出部のうちその端部が故障している場合には、上記両中心位置の演算結果は等しくなり故障認識できない可能性があるからである。
【0011】
また、前記基準磁気マーカを通過したときのみの前記両中心位置について比較を行ってもよい。上記のような基準磁気マーカを移動体が通過するときには磁気検出部が全て正常であれば全ての磁気検出部は所定の磁界強度条件を満たしていなければならないので、基準磁気マーカを通過するときに故障判定をすれば、基準磁気マーカ以外の磁気マーカを通過するときに故障認識をしなくても、全ての磁気検出部について故障判定をすることになるからである。
【0012】
なお、前記所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部の個数が全数若しくは(数箇所の故障の場合も想定して)ほぼ全数であれば基準磁気マーカを通過していると判断でき、前記所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部の個数が基準磁気マーカを通過する場合に比して少なければ基準磁気マーカ以外の磁気マーカを通過していると判断できるので、前記所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部の個数に応じて前記基準磁気マーカを通過したか否かを判断すると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、効率的に故障認識を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1に示す如く、本実施例のシステムは、インフラ施設として走行路11を備えており、車両2は走行路11上を走行する。走行路11には、その中央に沿って所定間隔毎に磁気マーカMが敷設されている。本実施例の各磁気マーカMは、それぞれ、上部がN極に下部がS極に帯磁された磁気ネイルにより構成され、その周囲に磁界を発生させている。また、走行路11上の所定の磁気マーカMの間には、基準磁気マーカMx、すなわち、N極基準マーカMxn若しくはS極基準マーカMxsが敷設されている。N極基準マーカMxn及びS極基準マーカMxsは、車両2が走行路11上の図面上下方向の(車幅方向の)どの位置を走行しても磁気センサ3の磁気検出部が磁気検出を行うことができるように設置されている。
【0015】
磁気センサ3は、例えば車体底部に設置されている。図2は、車両2が磁気マーカMを通過した時点における磁気マーカMと磁気センサ3との位置関係を示す図である。図2(a)は、その位置関係を車両上方から見た際の図を示し、図2(b)は、その位置関係を車両後方から見た際の図を示す。磁気センサ3は、車幅方向に向けて一列に例えば59個並んで配設された磁気検出部により構成されている(アレイ式磁気センサともいう)。図2では一列のみしか図示していないが、もちろん、平行に複数列備えてよい。各磁気検出部は、垂直磁界強さを検出し、垂直磁界強さに応じた電圧を出力する。なお、本実施例において、各磁気検出部の符号を、車体左側から順に、#0,#1,・・・,#58とする。
【0016】
図3は、磁気マーカMの発する磁界の垂直磁界強さの分布と磁気センサ3の各磁気検出部の検出状態との関係を説明するための図である。磁気マーカMの発する磁界の垂直磁界強度は、同心円上において同程度であり、その中心位置から遠ざかるに従って小さくなる。図3(a)は、一つの磁気マーカMの発する磁界の垂直磁界強さの分布と磁気センサ3の各磁気検出部の検出状態との関係図である。例えば、磁気の検出/非検出を判定するための閾値を図3(a)に示される位置に設定すると、閾値以上の垂直磁界強度を検出している磁気検出部#2〜5が磁気を検出していると判定されることになる。一方、図3(b)は、N極基準マーカMxn若しくはS極基準マーカMxsの発する磁界の垂直磁界強さの分布と磁気センサ3の各磁気検出部の検出状態との関係図である。例えば、磁気の検出/非検出を判定するための閾値を図3(b)に示される位置に設定すると、閾値以上の垂直磁界強度を検出している全ての磁気検出部#0〜#58が磁気を検出していると判定されることになる。
【0017】
磁気センサ3の各磁気検出部は、自己を垂直方向に流通する磁界の強度に応じた電圧を出力する。本実施例において、各磁気検出部は、流通する垂直磁界の強度が大きくなるほど大きな電圧を出力する。すなわち、磁気検出部の出力電圧は、磁気検出部が磁気マーカMの通過する位置に近いほど大きくなり、また、磁気マーカMの通過する位置から遠いほど小さくなる。従って、車両2が走行路11のどの位置を走行しているのかを認識するためには、各磁気検出部の出力電圧の値を利用することになる。
【0018】
図4(a)は、第1の実施形態例の磁気マーカ検出装置10のブロック図を示す。第1の実施形態例の磁気マーカ検出装置10は、磁気センサ3、コンパレータ22、制御部7などを備えている。
【0019】
図5(a)は、第1の実施形態例の磁気マーカ検出装置10の磁気センサ3の各磁気検出部の垂直磁界強度に対する出力電圧特性の一例を示す図である。図5(a)に示される如く、垂直磁界強度が大きくなるほど出力電圧Vcは大きくなっている。
【0020】
磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧に基づいて、制御部7は所定の制御を実施するが、図4(a)に示されるように、コンパレータ22が磁気センサ3の磁気検出部と制御部7との間に設けられている。第1の実施形態例の磁気マーカ検出装置10は、磁気センサ3内の磁気検出部#0〜#58にそれぞれ対応したコンパレータ22を備えている。尚、磁気検出部#0〜#58にそれぞれ対応するコンパレータ22を、コンパレータ22〜2258と称す。
【0021】
各コンパレータ22の非反転入力端子には、各磁気検出部が接続されている。各磁気検出部の出力電圧は、各コンパレータ22に入力される。また、各コンパレータ22の反転入力端子には、可変の電圧を発する電源24が接続されている。コンパレータ22は、磁気検出部の出力電圧Vcと、電源24が発する電圧(以下、この値をVrefと称す)とを比較し、両者の大小関係に応じてHi信号又はLo信号を出力する。具体的には、コンパレータ22〜2258の出力端子S0〜S58は、Vc≧Vrefが成立する場合にはHi信号を制御部7に対し出力し、一方、Vc≧Vrefが成立しない場合にはLo信号を制御部7に対し出力する。電源24が発する電圧Vrefは、垂直磁界強度が所定値以上となっているか否かを判別するための磁気検出部の出力電圧Vcの閾値として機能する。このVrefが、上述の図3で示した閾値に相当する。
【0022】
図4(a)に示される制御部7には、コンパレータ22〜2258の出力端子S0〜S58から出力されたHi/Lo信号が入力される。制御部7は、また、本発明に係るプログラムを記憶するROM、プログラムの作業領域であるRAM、プログラムを演算するCPUなどを備え、上述のHi/Lo信号に基づいて本発明に係る所定の制御を実行する。
【0023】
制御部7は、Hi信号を出力したコンパレータ22に対応する磁気検出部が磁気検出している磁気検出部であると判定し、Lo信号を出力したコンパレータ22に対応する磁気検出部が磁気検出していない磁気検出部であると判定する。
【0024】
ここで、第1の実施形態例の磁気マーカ検出装置10の制御部7は、磁気検出部#0側(本実施例では車体左側)から磁気検出部#58側(本実施例では車体右側)に向けて各磁気検出部が磁気検出しているか否かを順番に判定し、最初に磁気検出していると判定した磁気検出部を「磁気検出している左端素子位置(LEDG)」と設定し、LEDGの磁気検出部#58側において最初に磁気検出していないと判定した磁気検出部の一つ手前の磁気検出部を「磁気検出している右端素子位置(REDG)」と設定し若しくは磁気検出部#58まで磁気検出していないと判定される磁気検出部が無い場合には磁気検出部#58を「磁気検出している右端素子位置(REDG)」と設定する。制御部7は、このように設定したLEDGとREDGを用いて、演算式『横位置=(LEDG+REDG)/2』に基づいて横位置を演算する。
【0025】
すなわち、「横位置」は、磁気検出している左端素子位置(LEDG)と磁気検出している右端素子位置(REDG)との中央位置に相当し、この横位置を演算することで、車両2が走行路11のどの位置を走行しているのかを認識することができる。
【0026】
例えば、車両2が磁気マーカMを通過する場合、図6(a)に示されるように、LEDG=#2、REDG=#5であるので、『横位置=3.5』となる。また、車両2が基準マーカMxを通過する場合、図6(c)に示されるように、LEDG=#0、REDG=#58であるので、『横位置=29.0』となる。したがって、制御部7は、基準マーカMxは車両2が走行路11上のどの位置を走行しても磁気検出を行うことができるように設置されているので、『横位置=3.5』のときには車両2が走行路11の中央位置から25.5(=29.0−3.5)ずれている位置を走行していると認識することができる。
【0027】
次に、磁気マーカ検出装置10の制御部7による磁気検出部位の故障判定について説明する。
【0028】
例えば、図6(d)に示されるように、磁気検出部#7が故障している状態で車両2が基準磁気マーカMxを通過する場合、LEDG=#0、REDG=#6であるので、『横位置=3.0』となる。したがって、制御部7は、基準マーカMxを通過する場合には必ず横位置が29.0と演算されるのに対し、3.0という値が横位置として演算された場合には、各磁気検出部や制御部7までの検出経路などの磁気検出に関わる部位が故障したと判定することができる。
【0029】
また、図6(e)に示されるように、並んで配列された複数の磁気検出部のうちその端部である磁気検出部#0が故障している状態で車両2が基準磁気マーカMxを通過する場合、LEDG=#1、REDG=#58であるので、『横位置=29.5』となる。したがって、制御部7は、基準マーカMxを通過する場合には必ず横位置が29.0と演算されるのに対し、29.5という値が横位置として演算された場合には、各磁気検出部や制御部7までの検出経路などの磁気検出に関わる部位が故障したと判定することができる。
【0030】
つまり、上述のように、横位置を演算する位置認識処理と磁気検出部位の故障を認識する故障認識処理が同じ演算手法で行っており、その演算値の変化を検出することで、磁気検出部位の故障を認識している。
【0031】
なお、制御部7は、基準マーカMxを通過するときに演算される横位置の値に応じて、磁気検出部の故障位置も特定することは可能である。例えば、磁気検出部#7が故障していれば横位置は3.0であり、磁気検出部#11が故障していれば横位置は5.0であるように、横位置の値と磁気検出部の故障位置は一対一に対応しているからである。
【0032】
また、車両2が基準マーカMxを通過したことを認識するために、制御部7は、ほぼ全ての磁気検出部が磁気を検出していると判定した場合に、車両2が基準マーカMxを通過したと認識する。基準マーカMxは、車両2が基準マーカMxを通過すれば車幅方向のどの位置を走行しても全ての磁気検出部が磁気検出を行うことができるように敷設されているからである。なお、「ほぼ全ての」としたのは、磁気検出部の一部や基準マーカMxの一部が故障している場合が考えられるため、数箇所の故障のために基準マーカMxの通過を認識することができなくなることを防ぐためである。
【0033】
また、車両2が基準マーカMxを通過したことを認識するために、N極基準マーカMxn若しくはS極基準マーカMxsが所定の番号の磁気マーカMの次に敷設されていることを予め定めておいてもよい。例えば、図7(a)に示されるように、524番目の磁気マーカMの次にN極基準マーカMxnが敷設されていると予め定めておき、制御部7は、磁気マーカMを検出する毎にカウントアップすることによって、524番目の磁気マーカMの次に検出された磁気がN極基準マーカMxnが発する磁気であると認識することができる。
【0034】
それでは、図8を参照しながら、磁気マーカ検出装置10の制御部7の制御動作を説明する。図8は、磁気マーカ検出装置10の制御部7の動作フローを示す。制御部7は、上述のように磁気検出部#0側から磁気検出部#58側に向けて各磁気検出部が磁気検出しているか否かを順番に判定し、「磁気検出している左端素子位置(LEDG)」を特定するとともに(ステップ2)、「磁気検出している右端素子位置(REDG)」を特定し(ステップ4)、横位置を演算する(ステップ6)。制御部7は、ステップ2から6で検出された磁気が基準マーカMxを通過したことによるものなのか否かを判断する(ステップ10)。制御部7は、検出された磁気が基準マーカMxの通過による磁気ではないと判断した場合、ステップ6で演算された横位置で車両2が走行路11を走行していると認識し、本フローは終了する。一方、制御部7は、検出された磁気が基準マーカMxの通過による磁気であると判断した場合、ステップ6で演算された横位置が29.0か否かを判断する(ステップ14)。横位置が29.0であれば、制御部7は磁気検出部位の故障はないと認識し、本フローは終了する。横位置が29.0でなければ、磁気検出部位がオフ故障していると認識する。このとき、故障と認識した磁気検出部の素子番号#*を記録してもよい。
【0035】
したがって、以上の第1の実施形態例についての説明によれば、車両を走行させる上で必要な情報である横位置の演算結果に基づいて故障認識を行うので、横位置を演算する位置認識処理と磁気検出部位の故障を認識する故障認識処理を同時に稼働させることなくシーケンスで処理でき、位置認識処理と故障認識処理を同じ演算式で兼ねているので、ROM容量や処理時間を節約することができる。また、特別な故障検出回路などの追加も必要ない。
【0036】
ところで、N極基準マーカMxnとS極基準マーカMxsを走行路11上に備えることによって、上述のような単に磁気検出部位のオフ故障認識ではなく、N極検出のオフ故障認識やS極検出のオフ故障認識といった磁極についての検出故障を判定することが可能になる。
【0037】
図4(b)は、第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10のブロック図を示す。第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10は、N極検出の故障やS極検出の故障を判定するために、磁気センサ3、コンパレータ104及び106、制御部7などを備えている。
【0038】
図5(b)は、第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10の磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧特性の一例を示す図である。N極側の垂直磁界強度の場合には出力電圧が正となり、S極側の垂直磁界強度の場合には出力電圧が負となり、垂直磁界強度が大きくなるほど出力電圧の絶対値は大きくなっている。
【0039】
磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧に基づいて、制御部7は所定の制御を実施するが、図4(b)に示されるように、コンパレータ104及び106が磁気センサ3の磁気検出部と制御部7との間に設けられている。第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10は、磁気センサ3内の磁気検出部#0〜#58にそれぞれ対応した第1コンパレータ104及び第2コンパレータ106を備えている。尚、磁気検出部#0〜#58にそれぞれ対応する第1コンパレータ104及び第2コンパレータ106を、第1コンパレータ104〜10458及び第2コンパレータ106〜10658とそれぞれ称す。
【0040】
各第1コンパレータ104の非反転入力端子及び各第2コンパレータ106の反転入力端子には、各磁気検出部が接続されている。各磁気検出部の出力電圧は、各第1及び第2コンパレータ104,106に入力される。また、各第1コンパレータ104の反転入力端子には、例えば3Vの電圧を発する第1電源108が接続されている。また、各第2コンパレータ106の非反転入力端子には、例えば2Vの電圧を発する第2電源110が接続されている。第1及び第2コンパレータ104,106は、磁気検出部の出力電圧Vbと、第1電源108が発する電圧(以下、この値をVthnと称す)又は第2電源110が発する電圧(以下、この値をVthsと称す)とを比較し、両者の大小関係に応じてHi信号又はLo信号を出力する。
【0041】
具体的には、第1コンパレータ104は、Vb≧Vthnが成立する場合にはHi信号を出力し、一方、Vb≧Vthnが成立しない場合にはLo信号を出力する。また、第2コンパレータ106は、Vths≧Vbが成立する場合にはHi信号を出力し、一方、Vths≧Vbが成立しない場合にはLo信号を出力する。第1電源108が発する電圧Vthnは、磁極がN極であるか否かを判別するための磁気検出部の出力電圧Vbの第1閾値として用いられ、第2電源110の発する電圧Vthsは、磁極がS極であるか否かを判別するための磁気検出部の出力電圧Vbの第2閾値として用いられる。尚、Vthn≧Vthsが成立するものとする。つまり、図5(c)に示されるような、磁気検出部の出力電圧Vbと閾値Vthn,Vthsとの関係を作り出している。
【0042】
図4(b)に示される制御部7には、第1及び第2コンパレータ104,106の出力端子から出力されたHi/Lo信号が入力される。制御部7は、また、本発明に係るプログラムを記憶するROM、プログラムの作業領域であるRAM、プログラムを演算するCPUなどを備え、上述のHi/Lo信号に基づいて本発明に係る所定の制御を実行する。
【0043】
制御部7は、Hi信号を出力した第1コンパレータ104に対応する磁気検出部はN極を検出している磁気検出部であると判定し、Hi信号を出力した第2コンパレータ106に対応する磁気検出部はS極を検出している磁気検出部であると判定し、Lo信号を出力した第1及び第2コンパレータ104,106に対応する磁気検出部は磁気を検出していない磁気検出部であると判定する。
【0044】
ここで、第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10の制御部7は、磁気検出部#0側から磁気検出部#58側に向けて各磁気検出部がN極検出しているか否かを順番に判定し、最初にN極検出していると判定した磁気検出部を「磁気検出している左端素子位置(LEDG)」と設定し、LEDGの磁気検出部#58側において最初にN極検出していないと判定した磁気検出部の一つ手前の磁気検出部を「磁気検出している右端素子位置(REDG)」と設定し若しくは磁気検出部#58までN極検出していないと判定される磁気検出部が無い場合には磁気検出部#58を「磁気検出している右端素子位置(REDG)」と設定する。または、第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10の制御部7は、磁気検出部#0側から磁気検出部#58側に向けて各磁気検出部がS極検出しているか否かを順番に判定し、最初にS極検出していると判定した磁気検出部を「磁気検出している左端素子位置(LEDG)」と設定し、LEDGの磁気検出部#58側において最初にS極検出していないと判定した磁気検出部の一つ手前の磁気検出部を「磁気検出している右端素子位置(REDG)」と設定し若しくは磁気検出部#58までS極検出していないと判定される磁気検出部が無い場合には磁気検出部#58を「磁気検出している右端素子位置(REDG)」と設定する。制御部7は、このように設定したLEDGとREDGを用いて、演算式『横位置=(LEDG+REDG)/2』に基づいて横位置を演算する。
【0045】
すなわち、「横位置」は、N極検出している左端素子位置(LEDG)とN極検出している右端素子位置(REDG)との中央位置に相当し、または、S極検出している左端素子位置(LEDG)とS極検出している右端素子位置(REDG)との中央位置に相当し、この横位置を演算することで、車両2が走行路11のどの位置を走行しているのかを認識することができる。
【0046】
したがって、第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10の制御部7は、N極とS極とそれぞれについて横位置の演算と磁気検出部位の故障判定を上述の第1の実施形態例の場合と同様に行えば、N極検出故障やS極検出故障といった磁極についての検出故障を判定するにあたり、第1の実施形態例と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、第2の実施形態例の場合では、N極とS極を区別することが可能となるので、車両2が基準マーカMxを通過したことを制御部7が認識するために、基準マーカMxの手前の磁気マーカMの極性が他の磁気マーカMの極性と異なると予め定めておいてもよい。例えば、図7(b)に示されるように、524番目の磁気マーカMの極性をN極からS極に変えておくことで、制御部7は、S極を検出した場合には、次に検出されたN極がN極基準マーカMxnのN極であると認識することができる。
【0048】
また、第2の実施形態例では、各磁気検出部はN極もS極も検出可能な構成になっていたが、N極検出専用の磁気検出部とS極検出専用の磁気検出部を備えてもよい。その場合、例えば、図2において、直列に59個並べられた磁気検出部のうち、#0と偶数番号の磁気検出部をN極専用磁気検出部とし、奇数番号の磁気検出部をS極専用磁気検出部とする。若しくは、直列に59個並べられたN極専用磁気検出部と直列に59個並べられたS極専用磁気検出部を平行に車両底部に設置してもよい。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0050】
例えば、第1の実施形態例の磁気マーカ検出装置10の制御部7の場合と異なり、磁気検出部#0〜#58のうち、最も磁気検出部#0側(すなわち、車体左側)に位置する磁気検出している磁気検出部の位置と最も磁気検出部#58側(すなわち、車体右側)に位置する磁気検出している磁気検出部の位置との中央位置を、車両2に対して磁気マーカMが通過した位置として検出する。例えば、図6(a)に示されるように、車両2が磁気マーカMを通過する場合、車両2に対して磁気マーカMが通過した位置は『(2+5)/2=3.5』と検出される。また、図6(b)に示されるように、磁気検出部#4が故障している状態で車両2が磁気マーカMを通過する場合も、車両2に対して磁気マーカMが通過した位置は『(2+5)/2=3.5』と検出される。しかしながら、図6(b)の場合では、上述の演算式『横位置=(LEDG+REDG)/2』に基づいて横位置を演算すると、LEDG=#2、REDG=#3であるので、『横位置=2.5』となる。したがって、制御部7は、車両2に対して磁気マーカMが通過した位置「3.5」と横位置「2.5」が異なるので、各磁気検出部や制御部7までの検出経路などの磁気検出に関わる部位が故障したと判定することができる。
【0051】
また、第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10の制御部7の場合についても、同様に、車両2に対して磁気マーカMが通過した位置と横位置とを比較することにより、各磁気検出部や制御部7までの検出経路などの磁気検出に関わる部位が故障したと判定することができる。以下説明すると、磁気検出部#0〜#58のうち、N極を検出している最も磁気検出部#0側に位置する磁気検出部の位置とN極を検出している最も磁気検出部#58側に位置する磁気検出部の位置との中央位置を、「車両2に対してN極帯磁の磁気マーカMが通過した位置」として検出する。または、磁気検出部#0〜#58のうち、S極を検出している最も磁気検出部#0側に位置する磁気検出部の位置とS極を検出している最も磁気検出部#58側に位置する磁気検出部の位置との中央位置を、「車両2に対してS極帯磁の磁気マーカMが通過した位置」として検出する。そして、制御部7は、上述の演算式『横位置=(LEDG+REDG)/2』に基づいて横位置を演算する。その結果、制御部7は、「車両2に対してN極帯磁の磁気マーカMが通過した位置」と「横位置」が異なる場合には、若しくは、「車両2に対してS極帯磁の磁気マーカMが通過した位置」と「横位置」が異なる場合には、各磁気検出部や制御部7までの検出経路などの磁気検出に関わる部位が故障したと判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】磁気センサを搭載する車両の走行システムを説明するための構成図である。
【図2】車両2が磁気マーカMを通過した時点における磁気マーカMと磁気センサ3との位置関係を示す図である。
【図3】磁気マーカMの発する磁界の垂直磁界強さの分布と磁気センサ3の各磁気検出部の検知状態との関係を説明するための図である。
【図4】第1及び第2の実施形態例の磁気マーカ検出装置10のブロック図を示す。
【図5】磁気センサ3の各磁気検出部の出力電圧と垂直磁界強度との関係を説明するための図である。
【図6】車両2が磁気マーカM若しくは基準マーカMxを通過した時の検出状態を表す図である。
【図7】基準マーカMxの通過認識を説明するための図である。
【図8】磁気マーカ検出装置10の制御部7の動作フローを示す。
【符号の説明】
【0053】
2 車両
3 磁気センサ
11 走行路
M 磁気マーカ
Mxn N極基準マーカ
Mxs S極基準マーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の所定方向に並んで配列され、路上に敷設された磁気マーカの発する磁界を検出する複数の磁気検出部を備え、
複数の磁気検出部のうち所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部を含む領域の中心位置を前記移動体に対する前記磁気マーカの位置と認識する磁気マーカ検出装置であって、
前記領域の中心位置と前記領域のうち前記所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部が途切れることなく連続する領域の中心位置とを比較し、両中心位置が異なる場合には故障した磁気検出部があると判定する、磁気マーカ検出装置。
【請求項2】
前記磁気マーカの少なくとも一つ以上は、前記移動体がどの位置を通過しても全ての磁気検出部が前記所定の磁界強度条件を満たすことができるように配置された基準磁気マーカである、請求項1記載の磁気マーカ検出装置。
【請求項3】
前記基準磁気マーカを通過したときのみの前記両中心位置について比較を行う、請求項2記載の磁気マーカ検出装置。
【請求項4】
前記所定の磁界強度条件を満たす磁気検出部の個数に応じて前記基準磁気マーカを通過したか否かを判断する、請求項3記載の磁気マーカ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−132689(P2007−132689A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323304(P2005−323304)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】