説明

移動支援システム、移動支援端末及び移動支援プログラム

【課題】 移動者の近傍に配置された無線タグから情報を読込んでから、移動者の経路からずれる方向の移動を教える情報を、移動者に提供するまでの時間を短縮することができる移動支援システムを提供する。
【解決手段】 本発明は、複数の無線タグと移動支援端末とを備える移動支援システムに関する。そして、複数の無線タグは、移動者が移動可能な経路の片サイド又は両サイドに沿って配置され、同じサイドで共通する特徴を有する情報が登録されている。移動支援端末は、近傍の無線タグから、無線タグ情報を読込む手段と、移動者の進行方向が登録されている手段と、移動者の進行方向と無線タグ情報の特徴との対応関係の情報を保持する手段と、無線タグ情報と登録されている移動者の進行方向の情報と対応関係情報とに基づいて、移動者の経路からずれる方向の移動を教える情報を生成する手段と、生成した情報を移動者に提供する手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動支援システム、移動支援端末及び移動支援プログラムに関し、例えば、移動者が目的地に到達するための誘導案内をするシステムに適用し得る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、視覚障害者向けの歩行支援システムであり、視覚障害者誘導用ブロックにICタグ(以下、「無線タグ」ともいう)を埋め込み、電子白杖で無線タグのメモリに内蔵されたID番号を読出し、対応する案内文をセンタ装置に問合せ、視覚障害者が持つ情報端末に表示・表音するものである。これは無線タグを埋め込んだ視覚障害者誘導用ブロック(以下、「タグ付き誘導ブロック」という)を道路や公共の施設内に設置することにより視覚障害者の案内を効果的に行うことを目的としている。
【0003】
そのうえで、特許文献2は、タグ付き誘導ブロックと同一の読取り特性を持つ無線タグを内蔵するタグ付き誘導ブロックを、視覚障害者誘導用ブロックの側方に設置して、歩行すべきコースを多少ずれて歩いたとしても視覚障害者が確実に案内情報を獲得出来るようにしたものであり、タグ付き誘導ブロックの機能を補完するものである。
【0004】
また、特許文献2で示す方法を応用し、タグ付き誘導ブロックをカーペットの下に敷いて視覚障害者の歩行案内を行うことも考えられる。屋内において、床がカーペット等の材質からなり、表面に凹凸のある視覚障害者用誘導ブロックやタグ付き誘導ブロックを床にあらたに設置するのが難しい場合を想定するものである。
【0005】
より具体的には、図6に示すように、例えば1辺50cmの正方形型タイルカーペット600の裏側に無線タグ601を貼付し、それを歩行経路に沿って目的地まで配置するものである。以下、無線タグを貼付したタイルカーペットを、「タグ付きカーペット」という。
【特許文献1】特開2002−165825号公報
【特許文献2】特開2005−97972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、タイルカーペットは表面の凹凸が少ないため、視覚障害者は足裏や杖によって突起の確認をしながら歩くことは困難となり、歩行時に現在位置を失ってしまう場合が多い。
【0007】
特に、設置されたタグ付きカーペットに沿って歩行している場合、何らかの理由により左右にずれた場合、歩行経路からずれたことがわからず、軌道の修正ができずに、迷うことになってしまう。
【0008】
また、従来技術では、電子白杖で読み出したID情報に対応する案内文は、全てセンタ装置側に設定されており、センタ装置と通信して読込む時間、及び、検索時間を要する場合があると考えられる。また、案内文は設置された無線タグ全てに対して定義されており、無線タグの数が増えると、検索対象となる無線タグ数が増える検索時間が長くなる場合がある。従って、歩行経路からずれた場合に、修正の告知に時間を要してしまい、歩行経路から外れていることに気づかずに歩行を続け、軌道の修正が困難になってしまう場合も考えられる。
【0009】
そこで、移動者の近傍に配置された無線タグから情報を読込んでから、移動者の経路からずれる方向の移動を移動者に教える情報を、移動者に提供するまでの時間を短縮することができる移動支援システム、移動支援端末及び移動支援プログラムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明の移動支援システムは、(1)移動者が移動可能な経路に沿って配置されている複数の無線タグと、上記移動者が所持し、上記複数の無線タグのいずれかから読込んだ情報に応じて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を、上記移動者に提供する移動支援端末とを備える移動支援システムにおいて、(2)上記複数の無線タグは、上記経路中心の片サイド又は両サイドに配置され、同じサイドに配置されている無線タグに、共通する特徴を有する情報が登録されており、(3)上記移動支援端末は、(3−1)上記複数の無線タグのうち、当該移動支援端末の近傍の無線タグから、無線タグ情報を読込む無線タグ情報取得手段と、(3−2)上記移動者の移動方向が登録されている移動方向登録手段と、(3−3)上記移動者の移動方向と、上記複数の無線タグの無線タグ情報の特徴との対応関係の情報を保持する対応関係情報保持手段と、(3−4)上記無線タグ情報取得手段が取得した無線タグ情報と、上記移動方向登録手段に登録されている移動方向の情報と、上記対応関係情報保持手段が保持している対応関係情報とに基づいて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を生成する情報生成手段と、(3−5)上記情報生成手段が生成した情報を、上記移動者に提供する情報提供手段とを有することを特徴とする。
【0011】
第2の本発明の移動支援端末は、(1)移動者が所持し、移動者が移動可能な経路に沿って配置されている複数の無線タグのいずれかから読込んだ情報に応じて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を、上記移動者に提供する移動支援端末において、(2)上記経路中心の片サイド又は両サイドに配置され、同じサイドに配置されている無線タグに、共通する特徴を有する情報が登録されている上記複数の無線タグのうち、当該移動支援端末の近傍の無線タグから、無線タグ情報を読込む無線タグ情報取得手段と、(3)上記移動者の移動方向が登録されている移動方向登録手段と、(4)上記移動者の移動方向と、上記複数の無線タグの無線タグ情報の特徴との対応関係の情報を保持する対応関係情報保持手段と、(5)上記無線タグ情報取得手段が取得した無線タグ情報と、上記移動方向登録手段に登録されている移動方向の情報と、上記対応関係情報保持手段が保持している対応関係情報とに基づいて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を生成する情報生成手段と、(6)上記情報生成手段が生成した情報を、上記移動者に提供する情報提供手段とを有することを特徴とする。
【0012】
第3の本発明の移動支援プログラムは、(1)移動者が所持し、移動者が移動可能な経路に沿って配置されている複数の無線タグのいずれかから読込んだ情報に応じて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を、上記移動者に提供する移動支援端末に搭載されたコンピュータを、(2)上記経路中心の片サイド又は両サイドに配置され、同じサイドに配置されている無線タグに、共通する特徴を有する情報が登録されている上記複数の無線タグのうち、当該移動支援端末の近傍の無線タグから、無線タグ情報を読込む無線タグ情報取得手段と、(3)上記移動者の移動方向が登録されている移動方向登録手段と、(4)上記移動者の移動方向と、上記複数の無線タグの無線タグ情報の特徴との対応関係の情報を保持する対応関係情報保持手段と、(5)上記無線タグ情報取得手段が取得した無線タグ情報と、上記移動方向登録手段に登録されている移動方向の情報と、上記対応関係情報保持手段が保持している対応関係情報とに基づいて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を生成する情報生成手段と、(6)上記情報生成手段が生成した情報を、上記移動者に提供する情報提供手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動者の近傍に配置された無線タグから情報を読込んでから、移動者の経路からずれる方向の移動を移動者に教える情報を、移動者に提供するまでの時間を短縮することができる移動支援システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(A)主たるの実施形態
以下、本発明による移動支援システム、移動支援端末及び移動支援プログラムの一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0015】
(A−1)実施形態の構成
図1は、この実施形態の移動支援システム1の全体構成を示したブロック図である。
【0016】
移動支援システム1では、図1に示すように、例えば歩行者などの移動者が移動をする通路及び通路の両サイドには、それぞれ複数のタグ付きカーペット10(10−101〜10−110、10−201〜10−210、10−301〜10−310)が配置されているものとする。また、図1において図示は省略しているが、タグ付きカーペット10(10−101〜10−110、10−201〜10−210、10−301〜10−310)には、それぞれ無線タグ11(11−101〜11−110、11−201〜11−210、11−301〜11−310)が付けられている。なお、無線タグ11は、タグ付きカーペット10設置後に、記憶する情報を自由に編集することができる無線タグを使用しても良い。
【0017】
図1では、正規の通路、すなわち通路の中心にはタグ付きカーペット10−301〜10−310(図1において、「あ列」に配置されているタグ付きカーペット)、通路の各サイドにはタグ付きカーペット10−101〜10−110(図1において、「い列」に配置されているタグ付きカーペット)、タグ付きカーペット10−201〜10−210(図1において、「う列」に配置されているタグ付きカーペット)がそれぞれ配置されているものとする。タグ付きカーペット10は、ハードウェア的には上述の図6に示す従来のものと同様であるが、付けられている無線タグ11に登録される情報に後述する特徴がある。
【0018】
図1では、説明を簡易にするため通路の各サイドには、それぞれ10個のタグ付きカーペットを配置しているが、その数は限定されないものである。また、通路は、直線であることには限定されず、途中で曲がった形状であっても良い。さらに、図1では、説明を簡易にするために、タグ付きカーペット10は全て同じ大きさ、すなわち、無線タグ11は等間隔に配置するように記載しているが、配置する間隔はそれぞれ異なっていても良いし、列と列の間の間隔もそれぞれ異なっていても良い。また、タグ付きカーペット10は、例えば、一部又は全部が壁、階段、斜面などに付けられていても良く、全て同じ平面上に配置されていることに限定はされない。
【0019】
タグ付きカーペット10に付けられている無線タグ11には、それぞれ「あ列」、「い列」、「う列」のどの列に配置されているかを示す特徴を有する情報が登録されている。例えば、それぞれの無線タグ11のID情報などの識別情報に、どの列に配置されているのかを示す情報を含めるようにしても良いし、列ごとに同じ識別情報を付与するようにしても良い。
【0020】
図1においては、各列のタグ付きカーペット10に付けられている無線タグのID番号の先頭の番号で区別する例について示している。なお、図1では、無線タグのID番号の先頭の番号で区別する例について示しているが、先頭の番号だけでなく、先頭の複数桁の記号により区別するようにしても良い。
【0021】
図1においては、「い列」に配置されている無線タグ11−101〜11−110のID番号の先頭は「1」、「う列」に配置されている無線タグ11−201〜11−210のID番号の先頭は「2」、「あ列」には「い列」や「う列」とは異なる番号として、ここでは「3」が設定されているものとする。なお、以降説明を簡易にするために、例えば、先頭が「1」であるID番号は「1xx」、先頭が「2」である場合には「2xx」のように表記するものとする。図1において、各タグ付きカーペット10の枠内に記載されている記号は、そのタグ付きカーペット10に付けられている無線タグ11のID番号を示している。また、無線タグ11のID番号は、例えば、同じ列で通路に沿って「101、102、103、…」など、昇順又は降順に並べられている必要はなく、任意の順番で配置しても良い。また、無線タグ11のID番号は、全て同じ桁数である必要はなく、任意の桁数としても良い。また、無線タグ11のID番号は、例えば「A、B、C、D、…」などの数字以外の記号を用いて標記したものであっても良い。
【0022】
図2は、この実施形態の移動支援端末20の機能的構成を示すブロック図である。
【0023】
移動支援端末20は、例えば歩行者などの移動者が所持している端末であり、移動者の移動にともなって、移動先の近傍のタグ付きカーペット10に付けられている無線タグ11のID情報を読込み、読込んだID情報に応じて、移動者が正規の通路(あ列)からずれる方向に移動していることを教える情報を、移動者に提供するものである。また、移動支援端末20は、歩行者に限らず、例えば、車椅子や自転車などの乗り物に乗った人間などが所持するようにしても良い。
【0024】
移動支援端末20は、パソコンなどの情報処理装置(1台に限定されず、複数台を分散処理し得るようにしたものであっても良い。)及び、無線タグ11と通信をするためのインタフェースを有する装置に、実施形態の移動支援プログラム(固定データを含む)をインストールすることにより構築されるものであるが、機能的には図2のように表すことができる。
【0025】
移動支援システム1では、上述の通り、通路の各サイドに配置されたタグ付きカーペット10の無線タグ11では、ID番号の先頭が共通している。そして、移動者の移動している方向と各サイドの無線タグ11に書き込まれたID番号との対応関係を、移動者が所持している移動支援端末20に事前に登録しておき、移動者がその通路上を移動した際に、通路からずれて、各サイドのいずれかに到達したときには、移動する方向が左右のいずれにずれたかを移動支援端末20が判定し、移動者に、正規の通路(あ列)からずれる方向に移動していることを教える情報を提供する。
【0026】
移動支援端末20は、無線タグ通信部21、案内情報生成部22、移動方向登録部23、警告案内テーブル24、案内情報出力部25を有している。
【0027】
無線タグ通信部21は、無線タグ11と通信し、無線タグ11からID番号などの情報を読込むためのインタフェースである。無線タグ通信部21は、例えば、当該移動支援端末20を所持している移動者が所持している白杖に搭載するようにしても良いし、移動者の靴や衣服、移動者が乗っている車椅子などの乗り物に付けるようにしても良く、その所持の仕方は限定されないものである。
【0028】
案内情報生成部22は、無線タグ通信部21が読込んだ無線タグ11のID番号と、後述する移動方向登録部23、警告案内テーブル24の内容に応じて、移動者に正規の通路(あ列)からずれる方向に移動していることを教える情報を生成するものである。
【0029】
移動方向登録部23は、移動者が移動している進行方向を登録するものである。例えば、「北向き」、「南向き」などの方位を示す情報を記憶するようにしても良いし、数値により方位を示すようにしても良い。「北」、「南」などの絶対的な方向ではなく、基準となる所定方向に対して相対的な方向を表示するようにしても良い。移動方向登録部23に登録する方向の情報は、例えば、図2において図示は省略しているが、移動支援端末20が方向センサを別途備え、移動者がどの方向を向いているかを取得する手段を有し、その方向センサにより識別された方向を、移動方向登録部23に登録するようにしても良いし、手動で登録するようにしても良く、その登録方法は限定されないものである。
【0030】
警告案内テーブル24は、案内情報生成部22が、移動者へ提供する情報を生成する際に用いるテーブルを保持している。警告案内テーブル24には、例えば、移動者の移動方向と、無線タグ通信部21により読込まれる無線タグ11のID番号との対応関係に基づいた警告案内の情報を記憶するようにしても良い。
【0031】
図3は、警告案内テーブル24に記憶される情報の例について示した説明図である。
【0032】
例えば、図1において移動者の移動方向が北向きの場合、読みこんだ無線タグ11のID番号の先頭が「2」であれば、利用者の移動方向が右方向にずれていること、「1」であれば、左方向にずれていることを示しており、警告案内テーブル24では、移動方向と読込んだID番号に対応する移動時の警告案内をそれぞれ定義したものである。警告案内テーブル24の情報は、外部のセンタ装置などに記憶させておき、案内情報生成部22に読込ませるようにしても良い。
【0033】
警告案内テーブル24は、移動方向241、ID番号242、警告案内情報243の情報を有している。
【0034】
移動方向241は、移動者が移動する方向を示す情報である。移動方向241に記憶される情報は、上述の移動方向登録部23に記憶される情報と同様の形式のものである。
【0035】
ID番号242は、無線タグ11のID番号を示す情報である。ID番号242の情報の表記方法としては、例えば、上述の図3と同様に、ID番号の先頭が「1」であるID番号全体を示す場合には、「1xx」のように表記しても良いし、「101、102、…」のようにID番号を列挙するようにしても良いし、「101〜111」のようにID番号の範囲を指定するようにしても良く、その表記の形式は限定されないものである。
【0036】
警告案内情報243は、移動方向241と、ID番号242との対応関係に基づいて案内情報生成部22が移動者に提供する情報の内容を示している。警告案内情報243は、例えば図3に示すように、「左にそれました。少し、右に方向を変えてください」のように、移動者に正規の通路からずれる方向に移動していることを教えるメッセージとしても良い。また、警告案内情報243は、例えば、単に「左にそれました」や「右に方向を変えて下さい」など、移動者が、正規の通路からずれる方向に移動していることを教えることができる情報であれば、その内容は限定されないものである。
【0037】
案内情報出力部25は、案内情報生成部22において、生成された情報を、当該移動支援端末20を所持している移動者に出力するものである。案内情報出力部25は、例えば、ヘッドフォンやスピーカを備え、音声により、移動者に情報を出力するようにしても良いし、ディスプレイ表示により出力するようにしても良く、移動者に情報を提供する方法は限定されないものである。また、案内情報出力部25は、例えば、警告案内テーブル24の警告案内情報243の情報に応じた音声データを予め登録しておいて、案内情報生成部22から与えられた情報に応じて音声データを選択し、出力するようにしても良いし、出力する都度に音声を合成して出力するようにしても良い。
【0038】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態の移動支援システムの動作を説明する。
【0039】
ここでは、上述の図1に示すように、正規の通路である「あ列」の無線タグ11−301〜11−310のID番号は先頭番号が「3」(3xx)に設定されており、「い列」に配置されている無線タグ11−101〜11−110のID番号は先頭番号が「1」(1xx)、「う列」に配置されている無線タグ11−201〜11−210のID番号は先頭番号が「2」(2xx)に設定されているものとする。
【0040】
また、ここでは、移動支援端末20を所持した移動者は、図1において北向きに移動しており、移動支援端末20において、移動方向登録部23には、移動方向として、「北向き」と登録されているものとする。さらに、警告案内テーブル24には、図3に示すように、移動方向241が「北向き」の場合のID番号242、警告案内情報243として、(ID番号:「1xx」、警告案内メッセージ:「左にそれました。少し、右に方向を変えて下さい」)、(ID番号:「2xx」、警告案内メッセージ:「右にそれました。少し、左に方向を変えて下さい」)という2つの情報が記憶されているものとする。
【0041】
まず、移動者が通路上(図1における「あ列」)を北向きに移動していたが、何らかに理由により左側にそれた場合、「い列」のタグ付きカーペット10−101〜10−110のいずれかに到達し、近傍のタグ付きカーペット10の無線タグ11から、移動支援端末20によりID番号が読込まれる。
【0042】
ここでは、無線タグ11−107のID番号が、移動支援端末20により読込まれた場合を想定する。また、無線タグ11−107のID番号は例えば、「107」であったものとする。
【0043】
その場合、移動支援端末20の案内情報生成部22では、無線タグ通信部21により読込まれたID番号「107」及び、移動方向登録部23に登録されている「北向き」という情報に基づいて、警告案内テーブル24から該当する警告案内情報243が検索される。
【0044】
警告案内テーブル24では、移動方向241が「北向き」で、ID番号242が「1xx」の警告案内情報243「左にそれました。少し、右に方向を変えて下さい」が検索され、検索された情報が、音声等により移動者に出力される。
【0045】
移動者の移動方向が南向きの場合には、移動方向登録部23に登録される内容及び、案内情報生成部22により検出される警告案内テーブル24の情報が異なるだけであるので、説明を省略する。
【0046】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0047】
図1に示すように、通路の各サイドの「い列」、「う列」の無線タグ11が複数であっても、各無線タグ11のID番号を、例えば先頭番号を共通にするなどして、共通する特徴を有する番号体系にしているので、案内情報生成部22が、警告案内テーブル24の情報を検索する際にかかる処理を単純化することができ、無線タグ11のID番号を読込んでから、警告案内情報を移動者に出力するまでの時間を短縮化できる。
【0048】
さらに、通路の各サイドの「い列」、「う列」に配置した無線タグ11には、列ごとに異なる番号体系を定義したので、移動者が正規の通路からずれて移動し始めたとしても、移動支援端末20に、警告案内テーブル24及び移動方向登録部23の情報が登録されていれば、センタ装置に問い合わせることなく、短時間でずれた方向を判断し、対応する警告案内情報を移動者に提供することができる。
【0049】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0050】
(B−1)上記の実施形態では、上述の図3に示す警告案内テーブル20の情報を移動支援端末20に登録する構成となっているが、それぞれの無線タグ11に登録しておき、移動支援端末20に、ID番号と共に読込ませるようにしても良い。
【0051】
この場合、無線タグ11には、警告案内テーブル20の内容のうち、当該無線タグ11に関係する情報だけを登録するようにしても良い。例えば、ID番号は先頭番号が「1」の無線タグ11であれば、上述の図3に示す警告案内テーブル20の内容のうちID番号242が「1xx」となっている情報のみを登録するようにしても良い。
【0052】
(B−2)上記の実施形態では、正規の通路である「あ列」にもタグ付きカーペット10を配置しているが、正規の通路にはタグ付きカーペットではなく、通常のカーペット(以下「タグ無しカーペット」という)を配置するようにしても良い。
【0053】
図4は、正規の通路にだけタグ無しカーペットを配置した場合の移動支援システムの構成の例について示した説明図である。
【0054】
図4では正規の経路に相当する部分にはタグ付きカーペットではなく、タグ無しカーペットを配置し、正規の通路から一定の距離をもって、両サイドにタグ付きカーペットを一面に設置している。この場合、設置する無線タグが多いため、従来の歩行支援システム(特許文献1参照)において、個々の無線タグについて移動者への案内情報を定義したのでは検索すべき無線タグの増加を招き、検索時間が長くなる場合があり、限られた時間内に移動を誘導する案内情報を移動者に出力できない。しかし、移動支援システム1では、図4に示すように進行方向に対して右方向と左方向で単純に無線タグのID番号の先頭番号を異なる番号にしているだけなので、検索時間を短くすることができ、限られた時間内に案内情報を移動者に出力することができる。
【0055】
(B−3)また、上記の実施形態においては、上述の図1に示すように、正規の通路(あ列)の両サイド(い列、う列)にそれぞれタグ付きカーペットを配置しているが、「い列」のみ又は「う列」のみなど、片サイドにのみ配置し、他方のサイドにはタグ無しカーペットを配置するようにしても良い。この場合でも、少なくとも、タグ付きカーペットが配置されているサイドに移動者が到達した場合には、移動者に正規の通路からずれる方向の移動を通知することができる。
【0056】
(B−4)上記の実施形態では、無線タグ11はタイルカーペットに付けられている場合について説明したが、タグ付き誘導ブロックに適用しても良い。
【0057】
(B−5)上記の実施形態では、移動者が移動する通路の各サイドには、それぞれ、「い列」、「う列」と1列のタグ付きカーペット10が配置されているが、複数列のタグ付きカーペット10を配置するようにしても良い。その場合、列ごとの無線タグ11に、独自のID番号の先頭番号を付与し、その列の配置位置に応じた情報を警告案内テーブル24に更に登録するようにしても良い。
【0058】
例えば、図5に示すように、正規の通路(あ列)から見て「う列」のさらに外側に「え列」のタグ付きカーペット10を配置しても良い。この場合、「え列」のタグ付きカーペット10に付けられている無線タグ11のID番号は、「う列」と同じく先頭番号を「2」とするID番号を付与しても良いし、例えば、「4」など独自の先頭番号を付与するようにしても良い。「え列」のID番号に独自の先頭番号を付与した場合には、警告案内テーブル24において、ID番号242を「xx4」とする新たな情報を追加しても良い。「え列」について追加した情報において、移動方向241及び警告案内情報243の情報は、「う列」(図3においてID番号が2xxの情報)と同じ内容としても良いし、警告案内情報243の内容を「え列」のタグ付きカーペット10の配置位置に応じた内容に変更して登録しても良い。例えば、移動方向241が「南向き」でID番号242が「4xx」の警告案内情報243については、「大きく左にそれました」などとして登録しても良い。これにより、移動者は正規の通路からどの程度それて移動しているのかを把握することができる。
【0059】
(B−6)上記の実施形態においては、図3に示すように、移動方向が南向きの場合も、北向きの場合も移動者が移動する通路は、全て「あ列」であるものとしているが、移動方向に応じて、通路が異なる列になるように、警告案内テーブル24の内容を定義しても良い。
【0060】
例えば、図5において、移動方向が北向きの場合は、正規の通路を「あ列」とし、移動方向が南向きの場合には正規の通路は「う列」となるように、警告案内テーブル24の内容を定義しても良い。この場合、例えば、移動者が「う列」を南向きに移動している場合に、右にそれて「あ列」の無線タグ11−301〜11−310のID番号(3xx)を読込んだ場合には、左方向に方向を修正すべき旨の情報を移動者に提供し、左にそれて「え列」の無線タグ11−401〜11−410のID番号(4xx)を読込んだ場合には、右方向に方向を修正すべき旨の情報を移動者に提供するようにしても良い。
【0061】
(B−7)上記の実施形態においては、警告案内テーブル24には、例として、上述の図3に示すように、移動方向241と、ID番号242に対応する警告案内情報243を記憶しているが、警告案内情報243には、移動方向241と、ID番号242との対応関係のみを定義するようにしても良い。例えば、図3において、移動方向241が「北向き」で、ID番号242が「1xx」の場合には、移動者が移動する方向が左にそれていることを示しているので、警告案内情報243には単に「左」など、移動方向241と、ID番号242との対応関係を示す情報を記憶するようにしても良い。この場合、案内情報生成部22では、警告案内テーブル24に定義された対応関係の情報に応じて、移動者に提供する情報を生成する。案内情報生成部22では、例えば、この対応関係が「左」であった場合には、「左にそれました。少し、右に方向を変えてください」などの情報を出力するように予め登録しておいても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態の移動支援システムの全体構成を示したブロック図である。
【図2】実施形態の移動支援端末の機能的構成を示したブロック図である。
【図3】実施形態の警告案内テーブルに記憶される情報の例について示した説明図である。
【図4】実施形態の移動支援システムにおいて、正規の通路にだけタグ無しカーペットを配置した場合の構成の例について示した説明図である。
【図5】実施形態の移動支援システムにおいて、サイドに複数列のタグ付きカーペットを配置した場合の構成の例を示したブロック図である。
【図6】従来のタグ付きカーペットの構成について示した説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1…移動支援システム、20…移動支援端末、21…無線タグ通信部、22…案内情報生成部、23…移動方向登録部、24…警告案内テーブル、25…案内情報出力部、10、10−101〜10−110、10−201〜10−210、10−301〜10−310…タグ付きカーペット、11、11−101〜11−110、11−201〜11−210、11−301〜11−310…無線タグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動者が移動可能な経路に沿って配置されている複数の無線タグと、上記移動者が所持し、上記複数の無線タグのいずれかから読込んだ情報に応じて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を、上記移動者に提供する移動支援端末とを備える移動支援システムにおいて、
上記複数の無線タグは、上記経路中心の片サイド又は両サイドに配置され、同じサイドに配置されている無線タグに、共通する特徴を有する情報が登録されており、
上記移動支援端末は、
上記複数の無線タグのうち、当該移動支援端末の近傍の無線タグから、無線タグ情報を読込む無線タグ情報取得手段と、
上記移動者の移動方向が登録されている移動方向登録手段と、
上記移動者の移動方向と、上記複数の無線タグの無線タグ情報の特徴との対応関係の情報を保持する対応関係情報保持手段と、
上記無線タグ情報取得手段が取得した無線タグ情報と、上記移動方向登録手段に登録されている移動方向の情報と、上記対応関係情報保持手段が保持している対応関係情報とに基づいて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を生成する情報生成手段と、
上記情報生成手段が生成した情報を、上記移動者に提供する情報提供手段と
を有することを特徴とする移動支援システム。
【請求項2】
上記移動支援端末は、
上記対関係情報が登録されている対応関係情報登録手段をさらに有し、
上記対応関係情報保持手段は、上記対応関係情報登録手段に登録されている対応関係情報を読込んで保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動支援システム。
【請求項3】
上記複数の無線タグのそれぞれには、上記対応関係情報のうち、少なくとも当該無線タグに係る情報が登録されており、
上記無線タグ情報取得手段は、当該移動支援端末の近傍の無線タグに登録されている対応関係情報を読込み、
上記対応関係情報保持手段は、上記無線タグ情報取得手段が読込んだ、対応関係情報を保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動支援システム。
【請求項4】
移動者が所持し、移動者が移動可能な経路に沿って配置されている複数の無線タグのいずれかから読込んだ情報に応じて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を、上記移動者に提供する移動支援端末において、
上記経路中心の片サイド又は両サイドに配置され、同じサイドに配置されている無線タグに、共通する特徴を有する情報が登録されている上記複数の無線タグのうち、当該移動支援端末の近傍の無線タグから、無線タグ情報を読込む無線タグ情報取得手段と、
上記移動者の移動方向が登録されている移動方向登録手段と、
上記移動者の移動方向と、上記複数の無線タグの無線タグ情報の特徴との対応関係の情報を保持する対応関係情報保持手段と、
上記無線タグ情報取得手段が取得した無線タグ情報と、上記移動方向登録手段に登録されている移動方向の情報と、上記対応関係情報保持手段が保持している対応関係情報とに基づいて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を生成する情報生成手段と、
上記情報生成手段が生成した情報を、上記移動者に提供する情報提供手段と
を有することを特徴とする移動支援端末。
【請求項5】
移動者が所持し、移動者が移動可能な経路に沿って配置されている複数の無線タグのいずれかから読込んだ情報に応じて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を、上記移動者に提供する移動支援端末に搭載されたコンピュータを、
上記経路中心の片サイド又は両サイドに配置され、同じサイドに配置されている無線タグに、共通する特徴を有する情報が登録されている上記複数の無線タグのうち、当該移動支援端末の近傍の無線タグから、無線タグ情報を読込む無線タグ情報取得手段と、
上記移動者の移動方向が登録されている移動方向登録手段と、
上記移動者の移動方向と、上記複数の無線タグの無線タグ情報の特徴との対応関係の情報を保持する対応関係情報保持手段と、
上記無線タグ情報取得手段が取得した無線タグ情報と、上記移動方向登録手段に登録されている移動方向の情報と、上記対応関係情報保持手段が保持している対応関係情報とに基づいて、上記移動者の上記経路からずれる方向の移動を上記移動者に教える情報を生成する情報生成手段と、
上記情報生成手段が生成した情報を、上記移動者に提供する情報提供手段と
して機能させることを特徴とする移動支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−145150(P2009−145150A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321668(P2007−321668)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】