移載装置及びワーク載置装置
【課題】 ワーク載置装置からワークを取り出して保持する際、及び、保持しているワークをワーク載置装置に載置する際に、ワークの横ずれを防止するガイド部材がワークの周縁部と接触することを防止することが可能な移載装置を提供する。
【解決手段】 パラレルメカニズムロボット100に取り付けられた非接触保持装置1は、正方形の板状のベース部材10と、ベース部材10の裏面中央部に取り付けられたベルヌーイチャック20と、ベルヌーイチャック20を挟んで対向して配置されて、ベース部材10の裏面に突設された8本のピン状のガイド部材30とを備えている。対向するガイド部材30は、互いに離れる方向に移動可能に構成されており、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面75にベルヌーイチャック20が近づくに従って、該ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72の内面に沿って、互いに離れる方向に移動する。
【解決手段】 パラレルメカニズムロボット100に取り付けられた非接触保持装置1は、正方形の板状のベース部材10と、ベース部材10の裏面中央部に取り付けられたベルヌーイチャック20と、ベルヌーイチャック20を挟んで対向して配置されて、ベース部材10の裏面に突設された8本のピン状のガイド部材30とを備えている。対向するガイド部材30は、互いに離れる方向に移動可能に構成されており、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面75にベルヌーイチャック20が近づくに従って、該ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72の内面に沿って、互いに離れる方向に移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを移載する移載装置、及び該移載装置と共に用いられるワーク載置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば太陽電池ウェハー、リチウムイオン電池の電極などの比較的薄いワークを移載(ピックアンドプレース)する際に、ワークに直接触れることなくワークを保持することができる非接触保持装置を利用した移載装置が用いられている。このような非接触保持装置を利用した移載装置として高圧エアを噴出して吸引力を発生させるベルヌーイチャックを利用した搬送装置(移載装置)が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている移載装置は、シート状の基板(ワーク)を平板状ステージから取り出して移載するものであり、吸引手段としてのベルヌーイチャックと、平板状ステージに配置されるワークの端部と当接する位置に設けられ、ワークの位置を制御する制御ガイドとを有している。この制御ガイドは、傾斜面が形成された制御部を含み、ワークの端部を制御部に形成された傾斜面に当接させることによって、ベルヌーイチャックによってシート状のワークが吸引されたときに、両者が接触することを防止している。さらに、制御ガイドは、ワークが吸引された状態で搬送される際に、制御部の傾斜面によってワークの平面方向の移動を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−83180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に、ワークとしての太陽電池ウェハー、リチウムイオン電池の電極などは、厚さが薄く、強度的にも脆弱である。しかしながら、特許文献1に開示されている移載装置では、上述したように、シート状のワークの端部を制御部に形成された傾斜面に当接させることによって、ベルヌーイチャックによってシート状基板が吸引されたときに、両者が接触することを防止している。そのため、平板状ステージからシート状のワークを取り出す際に、ワークの割れ等の破損を生ずるおそれがある。
【0006】
また、特許文献1に開示されている移載装置では、平板状ステージからシート状のワークを取り出す際に、ベルヌーイチャック及び制御ガイドの位置がワークに対してずれると、制御部に形成された傾斜面がワークの周縁部に擦り付けられるおそれがある。このように、ワークを取り出して保持する際(ピックアップ時)、又はワークを載置する際(プレース時)に、ワークの周縁部が擦られることによってエッジにダメージが与えられると、例えば太陽電池ウェハーなどの性能を劣化させる要因となる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、ワークが載置されているワーク載置装置からワークを取り出して保持する際、及び、保持しているワークをワーク載置装置に載置する際に、搬送時にワークの横ずれを防止するガイド部材がワークの周縁部と接触することを防止することが可能な移載装置、及び該移載装置と共に用いられるワーク載置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る移載装置は、ワークを非接触状態で保持する非接触保持ユニットと、非接触保持ユニットが取り付けられたベース部材と、非接触保持ユニットの周囲に、ワークが搬送される際に該ワークを包囲するように互いに間隔を空けて配置されて、ベース部材に突設された複数のガイド部材と、ベース部材を空間内で移動させる移動機構とを備え、複数のガイド部材は、少なくとも一部分が互いに離れる方向に移動可能に構成されており、ワークが載置されているワーク載置装置からワークが取出される際、又は、保持されているワークがワーク載置装置に載置される際に、ワーク載置装置のワーク載置面に非接触保持ユニットが近づくに従って、複数のガイド部材の少なくとも一部分が、ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、互いに離れる方向に移動することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る移載装置によれば、ワークが載置されている、又は、ワークを載置するワーク載置装置のワーク載置面に非接触保持ユニットが近づくに従って、非接触保持ユニットの周囲に配置されている複数のガイド部材が、ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、互いに離れる方向に移動する。よって、ワークを取り出す際、又はワークを載置する際に、複数のガイド部材それぞれはワークの周縁部よりも外側に拡げられる。その結果、ワークが載置されているワーク載置装置からワークが取出される際、又は、保持されているワークがワーク載置装置に載置される際に、ガイド部材がワークの周縁部と接触することを防止することが可能となる。
【0010】
本発明に係る移載装置では、複数のガイド部材が、非接触保持ユニットを挟んで、対向して配置されていることが好ましい。このように配置すれば、ワーク搬送時に、非接触保持ユニットに保持されているワークの横ずれを効果的に防止することが可能となる。
【0011】
本発明に係る移載装置は、複数のガイド部材が互いに離れる程、複数のガイド部材が互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材に付与する付勢部材を備え、複数のガイド部材が、ワーク載置装置のワーク載置面から非接触保持ユニットが離れるに従って、ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、付勢部材の付勢力により、互いに近づく方向に移動することが好ましい。
【0012】
この場合、ワークを取り出す際に拡げられていた複数のガイド部材が、ワーク載置装置のワーク載置面から非接触保持ユニットが離れるに従って、付勢部材の付勢力により、互いに近づく方向に移動し、例えば、ワークの周縁部と略当接する位置に移動する。よって、保持されたワークが搬送される際に、ワークの横方向の移動を適切に規制することが可能となる。
【0013】
本発明に係る移載装置では、ガイド部材が、円筒状の基端部と、該基端部から連続する円錐状の先端部とを含むことが好ましい。このようにすれば、ワークを搬送する際に、ワークの周縁部とガイド部材との接触面積をより小さくすることができる。また、ガイド部材がワーク載置装置に形成されているガイド案内部に導かれる際に、よりスムーズに移動させることが可能となる。
【0014】
本発明に係る移載装置では、上記付勢部材が、トーションバネであることが好ましい。この場合、トーションバネのバネ力を利用して、複数のガイド部材が互いに離れる程、ガイド部材それぞれが互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材に付与することができる。また、トーションバネを用いることにより、可動機構をより小型・軽量化することができる。
【0015】
本発明に係る移載装置では、ガイド部材が、弾性体から形成されていることが好ましい。このようにすれば、ワークを取り出す際、又はワークを載置する際に、弾性体の弾性を利用して、複数のガイド部材それぞれをワークの周縁部よりも外側に拡げることができる。また、弾性体の復元力を利用して、複数のガイド部材が互いに離れるように変形する程、複数のガイド部材が互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材40に付与ことができる。
【0016】
ここで、当該ガイド部材は、保持されるワークの外縁に沿った方向に一定の幅を有する板状部材であることが好ましい。このようにすれば、ガイド部材を容易に変形させて拡げることができる。また、ワーク搬送時に、ワークの横方向の移動を安定して規制することができる。
【0017】
本発明に係る移載装置では、上記非接触保持ユニットとして、ベルヌーイチャックを用いることが好ましい。この場合、ベルヌーイチャックから噴出された高圧エアがワークとの間から排出されることによってベルヌーイ効果が生じ、吸引力が発生する。よって、ワークを非接触で保持することができる。
【0018】
本発明に係る移載装置では、移動機構として、複数のリンクを介して、上記ベース部材を水平に保ったまま移動させるパラレルメカニズムロボットを用いることが好ましい。パラレルメカニズムロボットは、可動部にアクチュエータがなく、軽量化が可能で、高速、高精度に駆動できるという特徴を有するため、非接触保持ユニット及びガイド部材が取り付けられたベース部材を非常に高速で動かすことができる。そのため、移動機構としてパラレルメカニズムロボットを用いることにより、ワークの横ずれを防止しつつ、ワークを高速に移載することが可能となる。
【0019】
本発明に係るワーク載置装置は、上記いずれかの移載装置と共に用いられるワーク載置装置であって、移載装置を構成する非接触保持ユニットがワーク載置面に近づくに従って、複数のガイド部材が互いに離れる方向に各ガイド部材を案内するガイド案内部を有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係るワーク載置装置によれば、非接触保持ユニットの周囲に配置されている複数のガイド部材を、ガイド案内部に沿って案内することにより、ワーク載置面に非接触保持ユニットが近づくに従って、複数のガイド部材を互いに離れる方向に移動させることができる。よって、ワークを取り出す際、又はワークを載置する際に、複数のガイド部材をワークの周縁部よりも外側に拡げることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ワークが載置されているワーク載置装置からワークを取り出して保持する際、及び、保持しているワークをワーク載置装置に載置する際に、搬送時にワークの横ずれを防止するガイド部材がワークの周縁部と接触することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る、非接触保持装置が取り付けられたパラレルメカニズムロボットの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1中の矢印A1方向から見たパラレルメカニズムロボットを示す図である。
【図3】非接触保持装置を底面側から見た斜視図である。
【図4】非接触保持装置のガイド部材の可動機構を拡大して示す模式図である。
【図5】取出側のワーク載置トレイの平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った取出側のワーク載置トレイの断面図である。
【図7】載置側のワーク載置トレイの平面図である。
【図8】非接触保持装置のガイド部材の動作を説明するための図である。
【図9】太陽電池ウェハーのパレタイジング工程の概要を説明するための鳥瞰図である。
【図10】第2実施形態に係る非接触保持装置の構成を示す側面図である。
【図11】第2実施形態に係る非接触保持装置を底面側から見た斜視図である。
【図12】第2実施形態に係る非接触保持装置のガイド部材の動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を併せて用いて、第1実施形態に係る、非接触保持装置1が取り付けられたパラレルメカニズムロボット100(特許請求の範囲に記載の移載装置に相当)の全体構成について説明する。図1は、非接触保持装置1が取り付けられたパラレルメカニズムロボット100の全体構成を示す斜視図である。また、図2は、図1中の矢印A1方向から見たパラレルメカニズムロボット100を示す図である。
【0025】
パラレルメカニズムロボット100は、上部にベース部102を有している。パラレルメカニズムロボット100は、ベース部102の下面側に形成された平らな取付面102a(図2参照)が例えば水平な天井等に固定されることによって支持される。一方、ベース部102の下面側には、3つの支持部材103が設けられている。各支持部材103には、それぞれ電動モータ104が支持されている。電動モータ104は、モータ軸の軸線C2がベース部102の取付面102aに対して平行(すなわち水平)となるように支持されている。それぞれの支持部材103は、ベース部102の鉛直方向軸線C1を中心として等しい角度(120度)を開けて配置されており、各電動モータ104もまた、ベース部102の鉛直方向軸線C1を中心として等しい角度(120度)を開けて配置される(図2参照)。
【0026】
各電動モータ104の出力軸には、軸線C2に対して同軸に略六角柱形状のアーム支持部材105が固定されている。アーム支持部材105は、電動モータ104が駆動されることにより軸線C2を中心として回転する。なお、各電動モータ104は、モータドライバを含む電子制御装置130に接続されており、電動モータ104の出力軸の回転がこの電子制御装置130によって制御される。
【0027】
パラレルメカニズムロボット100は、3本のアーム本体106を有しており、各アーム本体106は、第1アーム107及び第2アーム108を含んで構成される。第1アーム107は、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等で形成された長尺の中空円筒部材である。第1アーム107の基端部は、アーム支持部材105の側面に取り付けられている。第1アーム107は、その軸線が上述した軸線C2と直交するように固定される。
【0028】
第1アーム107の遊端部には、第2アーム108の基端部が連結され、第2アーム108が、第1アーム107の遊端部を中心として揺動できるように構成されている。第2アーム108は、一対の長尺のロッド109,109を含んで構成されており、一対のロッド109,109は、その長手方向において互いに平行となるように配置されている。ロッド109も、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等で形成された長尺の中空円筒部材である。各ロッド109の基端部は、第1アーム107の遊端部に、一対のボールジョイント110,110によって連結されている。なお、各ロッド109の基端部における各ボールジョイント110,110間を結ぶ軸線C3は、電動モータ104の軸線C2に対して平行となるよう配置されている。
【0029】
また、第2アーム108の基端部付近において一方のロッド109と他方のロッド109とが連結部材111で互いに連結されており、第2アーム108の遊端部付近において一方のロッド109と他方のロッド109とが連結部材112で互いに連結されている。連結部材111、及び連結部材112は、例えば、付勢部材としての引張コイルバネを有しており、一対のロッド109,109を互いに引き合う方向に付勢する。なお、連結部材111と連結部材112とは、異なる構造であっても構わないが同一構造であることが低コストの観点から好ましい。いずれの連結部材111,112も、各ロッド109が自身の長手方向に平行な軸線まわりに回転することを防止する機能を有する。
【0030】
また、パラレルメカニズムロボット100は、非接触保持装置1(詳細は後述する)を回動可能に取り付けるためのブラケット114を有している。ブラケット114は、略正三角形状をした板状部材である。このブラケット114は、3本のアーム本体106によって、ブラケット114の非接触保持装置1の取付面114a(図1におけるブラケット114の下面)がベース部102の取付面102aと平行(すなわち水平)になるように保持される。
【0031】
すなわち、ブラケット114の各辺には取付片115が形成されており、各取付片115がそれぞれのアーム本体106の遊端部(第2アーム108を構成する一対のロッド109,109の遊端部)に連結されることで、ブラケット114は、各アーム本体106に対して、各アーム本体106の遊端部を中心として揺動する。詳しくは、ブラケット114の各取付片115の各端部が、対応する各ロッド109,109の遊端部に各ボールジョイント116,116によって連結される。一対のボールジョイント116,116を結ぶ軸線C4(図2参照)は、各ロッド109のボールジョイント部110と116との間の距離が全て等しいことにより各アーム本体106に対応する軸線C3と平行になるため、電動モータ104の軸線C2に対しても平行となる。このため、各アーム本体106が駆動される際に、ブラケット114は、水平面に対して平行に移動することにより各アーム本体106に対して揺動する。そして、略正三角形状のブラケット114のすべての辺において、水平面に対して平行に移動できるように、ブラケット114が3本のアーム本体106によって支持されている。
【0032】
上述したように、第1アーム107と第2アーム108との連結部における一対のボールジョイント110,110間の距離と、第2アーム108の各ロッド109とブラケット114との連結部における一対のボールジョイント116,116間の距離とは等しく設定されている。そのため、第2アームを構成する一対のロッド109,109は、必ずその長手方向の全長において互いに平行に配置される。ここで、軸線C2,C3,C4のいずれもが、ベース部102の取付面102aに平行であるから、3つの第1アーム107それぞれが軸線C2を中心にどのように回動したとしても、ブラケット114の非接触保持装置1の取付面114aとベース部102の取付面102aとの平行関係が維持される。
【0033】
そして、電子制御装置130からの指令に応じて、各電動モータ104の出力軸に固定されたアーム支持部材105の回転位置が制御されることで、各第1アーム107の遊端部の位置が制御される。この制御された各第1アーム107の遊端部の位置に、各第2アーム108の遊端部の位置が追従し、その結果、ブラケット114の非接触保持装置1の取付面114aの位置が一意に決まる。このとき、上述したように、ブラケット114は、水平姿勢を維持したまま移動する。
【0034】
また、パラレルメカニズムロボット100は、その中央にベース部102から下方に延びる旋回軸ロッド120と、この旋回軸ロッド120を回転するための電動モータ121とを有する。電動モータ121は、その軸出力を鉛直下方に向けた状態でベース部102に固定されている。旋回軸ロッド120の一端部は、自在継手(以下「ユニバーサルジョイント」という)122、及び、複数のギヤの組み合わせにより構成された減速機124を介して電動モータ121の出力軸に連結されている。なお、本実施形態では減速機124の減速比を5とした。一方、旋回軸ロッド120の他端部は、ユニバーサルジョイント123を介して非接触保持装置1に接続されている。さらに、非接触保持装置1及びユニバーサルジョイント123の下方接続部は、その中心軸が鉛直方向となるようにベアリング等を介してブラケット114に回転自在に固定されている。
【0035】
旋回軸ロッド120は、ロッド120aとシリンダ120bとにより実現され、伸縮自在に構成されている。ここで、旋回軸ロッド120はボールスプラインであり、ロッド120aの回転をシリンダ120bに伝達することが可能である。また、旋回軸ロッド120の両端部にユニバーサルジョイント122,123が採用されているため、ブラケット114が3つの電動モータ104の駆動により上下、前後左右の所定の位置に移動したとしても、旋回軸ロッド120は、その所定位置に追従して移動することができる。なお、以下、旋回軸ロッド120、及びユニバーサルジョイント122,123を含む構成を旋回軸125という。
【0036】
すなわち、電動モータ121と非接触保持装置1との間では、減速機124、ユニバーサルジョイント122、旋回軸ロッド120(ロッド120a,シリンダ120b)、ユニバーサルジョイント123の機械要素が直列に接続されており、電動モータ121の回転駆動力は、直列に接続されたこれらの機械要素を介して、非接触保持装置1に伝達される。電動モータ121は、電子制御装置130に接続されており、電動モータ121の回転がこの電子制御装置130により制御されることにより、非接触保持装置1の回転角度位置が制御される。
【0037】
上述したように、電子制御装置130は、3つの電動モータ104を制御することによってアーム本体106を駆動し、非接触保持装置1を目標位置まで動かす。また、電子制御装置130は、電動モータ121を制御することによって旋回軸ロッド120を駆動し、非接触保持装置1を目標回転角度位置まで回転させる。電子制御装置130としては、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、又は専用の制御用コンピュータ等が好適に用いられる。電子制御装置130は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。
【0038】
また、電子制御装置130には、オペレータによる操作入力を受け付ける設定手段およびパラレルメカニズムロボット100の状態や設定内容を表示する表示手段としての入出力装置131が接続されている。なお、入出力装置131としては、例えば、タッチパネルディスプレイ、又は、液晶ディスプレイとキーボード等が好適に用いられる。オペレータは、入出力装置131を用いて、電動モータ104,121の制御データを設定することができる。電子制御装置130は、設定された制御データを用いてROMに記憶されているプログラムを実行することにより、電動モータ104及び電動モータ121を駆動して、非接触保持装置1の3次元空間における位置(x,y,z)及び回転角度(θ)を制御する。
【0039】
続いて、図3を用いて、ブラケット114を介して旋回軸ロッド120の他端に取り付けられている非接触保持装置1の構造について説明する。ここで、図3は、非接触保持装置1を底面側から見た斜視図である。
【0040】
非接触保持装置1は、高圧エアを噴出して吸引力を発生させ、ワーク80(図8等参照)を非接触状態で保持するベルヌーイチャック20と、ベルヌーイチャック20の周囲に所定の間隔を空けて配置され、ワーク80の搬送時に該ワーク80の横ずれを防止する複数(本実施形態では8本)のガイド部材30と、ベルヌーイチャック20及びガイド部材30が取り付けられるチャックベース(特許請求の範囲に記載のベース部材に相当)10とを備えている。
【0041】
チャックベース10は、外形寸法が、保持されるワーク80よりも一回り大きく形成された、正方形の板状の部材である。チャックベース10は、軽量で強度に優れる工業用プラスチック等から形成されている。なお、チャックベース10の形状、寸法などは、保持されるワークの形状、寸法などに応じて設定されることが好ましい。チャックベース10の上面中央部にはアタッチメント12が取り付けられている。このアタッチメント12により、チャックベース10は、ブラケット114を介して旋回軸ロッド120と接続されており、旋回軸ロッド120によって回動可能に構成されている。
【0042】
ベルヌーイチャック20は、チャックベース10の下面側に取り付けられる円柱状の本体21を有している。円柱状の本体21の端面には凹部22が形成されている。そして、ベルヌーイチャック20は、本体21に形成された凹部22の開口面が、保持されるワーク80と対向するように、すなわち、凹部22の開口面が下側を向くようにして取り付けられる。ベルヌーイチャック20の本体21の開口面は、ワーク80を非接触で保持するワーク保持面を形成する。
【0043】
本体21の凹部22に臨む面には、凹部22内に高圧エアを噴出するための噴出孔23が複数(本実施形態では90度間隔で4つ)形成されている。噴出孔23は、本体21の側面から凹部22の底面にかけて、凹部22の内周面と接する方向に、本体21を斜め下方向に貫通するように形成されている。各噴出孔23にはエア配管(図示省略)が取り付けられている。このエア配管は、高圧エアを供給するエアポンプ(図示省略)に接続されている。
【0044】
エアポンプからエア配管を通して噴出孔23に高圧エアが供給されると、噴出孔23を通して凹部22内に高圧エアが噴出される。噴射された高圧エアは、凹部22の内周面に沿って斜め下方向に進み、開口端面とワーク80との隙間から排出される。これによって、高圧エアが凹部22の内周面から開口端面に突入する際に流速が上がり、凹部22の内部圧力が下降する。この負圧によって、ワーク80に対して吸引力が発生する。その結果、ワーク80が非接触保持される。ベルヌーイチャック20は、特許請求の範囲に記載の非接触保持ユニットとして機能する。
【0045】
チャックベース10の下面側には、複数(本実施形態では8本)のピン状のガイド部材30が、チャックベース10に対して垂直方向に突設されている。8本のガイド部材30は、ベルヌーイチャック20の周囲に、ワーク80が搬送される際に該ワーク80を包囲するように互いに間隔を空けて配置されている。より詳細には、ガイド部材30は、チャックベース10の各辺の端部に間隔を空けて2本ずつ組となって(合計4組)配置され、各組のガイド部材30がベルヌーイチャック20を挟んで、対向するように配置されている。また、ガイド部材30は、定常状態で、保持されたワーク80と略当接するように、より詳細には、ガイド部材30とワーク80の各辺とが、0.1〜0.2mm程度のクリアランスを有するように配置されている。なお、ガイド部材30の配置は、ワーク80の形状等に応じて設定することが好ましい。
【0046】
各ガイド部材30は、その一端がチャックベース10に取り付けられる円柱状の基端部30aと、該基端部30aから連続する略円錐状の先端部30bとを含んで構成されている。各ガイド部材30の全長は、ベルヌーイチャック20の高さ方向の寸法よりも長く設定されており、各ガイド部材30の先端は、ベルヌーイチャック20のワーク保持面よりも下側に突出している。各ガイド部材30は、例えば、UHPE(Ultra High Molecular Weight Polyethylene:超高分子量ポリエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、あるいは、これらにPTFE(四フッ化エチレン)等を充填して摩擦を低減した高分子材料などから形成されている。
【0047】
対向するガイド部材30は、互いに離れる方向に移動可能に構成されており、ワーク80が載せて置かれている取出側のワーク載置トレイ70(図5,6参照)からワーク80が取出される際、又は、保持されているワーク80が載置側のワーク載置トレイ71(図7参照)に載置される際に、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面75に非接触保持装置1(ベルヌーイチャック20)が近づくに従って、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、互いに離れる方向に移動する。なお、ワーク載置トレイ70,71は、特許請求の範囲に記載のワーク載置装置に相当する。また、ガイド案内孔72は、特許請求の範囲に記載のガイド案内部に相当する。
【0048】
ここで、図4を参照しつつ、ガイド部材30の可動機構について説明する。図4は、一つのガイド部材30の可動機構を拡大して示す模式図である。なお、他のガイド部材30の可動機構も同一の構成とされている。チャックベース10の各辺の端部には、当該辺と直交する方向に長孔11が形成されている。ガイド部材30は、その上端が、長孔11、及び、チャックベース10を上下から挟むように配設された2枚のワッシャ31,32を貫くように設けられる。そして、ガイド部材30とワッシャ31,32とは、ガイド部材30の上端側から螺子33により締結されている。これにより、ピン状のガイド部材30が長孔11から抜けることなく、且つ長孔11に沿って摺動可能に、長孔11に取り付けられる。
【0049】
また、チャックベース10の上面には、トーションバネ34が取り付けられている。トーションバネ34は、長孔11の軸線方向に沿って内部方向に付勢力(引張り力)が発生するように、長孔11の軸線に沿って該長孔11よりも内側に配置される。トーションバネ34の一端は、チャックベース10の上面にピン36を介して係止されており、他端はチャックベース10の上面側に取り付けられたワッシャ31にピン37を介して係止されている。なお、トーションバネ34の他端は、螺子33の頭部に同軸に係止されていてもよい。これにより、トーションバネ34は、ガイド部材30が長孔11の一端(内部側)に当接する方向に作用する付勢力をガイド部材30に付与する。
【0050】
このようにトーションバネ34によって付勢されることにより、ガイド部材30は、定常状態において、長孔の一端側(内部側)に当接される。すなわち、ガイド部材30は、定常状態で、保持されたワーク80と略当接するように、より詳細には、ガイド部材30とワーク80の各辺とが、0.1〜0.2mm程度のクリアランスを有するように配置される。一方、後述するワーク載置トレイ70からワーク80を取り出す際、又は、ワーク載置トレイ71にワーク80を載置する際には、ワーク載置トレイ70,71に形成されたガイド案内孔72により、対向するガイド部材30が互いに離れる方向(外部側)に長孔11に沿って移動する。このとき、トーションバネ34は、対向するガイド部材30が長孔11に沿って互いに離れる方向に移動する程、ガイド部材30が互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材30に付与する。そのため、ワーク載置トレイ70からワーク80を取り出した後、又は、ワーク載置トレイ71にワーク80を載置した後に、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面からベルヌーイチャック20が離れるに従って、対向するガイド部材30は、トーションバネ34の付勢力により、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。
【0051】
ここで、図5〜7を併せて参照しつつ、ワーク80を移載する際に、非接触保持装置1が取り付けられたパラレルメカニズムロボット100と共に用いられるワーク載置トレイ70,71について説明する。図5は、取出側のワーク載置トレイ70の平面図であり、図6は、図5のVI−VI線に沿った、ワーク載置トレイ70の縦断面図である。図7は、載置側のワーク載置トレイ71の平面図である。なお、保持するワーク80が載せて置かれている取出側のワーク載置トレイ70と、保持しているワーク80を載置する載置側のワーク載置トレイ71とは、載せて置くことができるワーク80の数のみが異なり、その他の構成は同一である。ちなみに、取出側のワーク載置トレイ70は、2枚のワーク80を載置できるように、2つのワーク載置面75を有している。一方、載置側のワーク載置トレイ71は、6枚のワーク80を載置できるように、6つ(2×3)のワーク載置面75を有している。なお、図5では、図面左側のワーク載置面75にのみワーク80が載置された状態を示している。また、図6では、4つのワーク載置面75にワーク80が載置された状態を示している。
【0052】
ワーク載置トレイ70,71の上面には、ワーク80を載置する正方形のワーク載置面75が形成されている。ワーク載置面75は、ワーク80の寸法と略同一の寸法に形成されている。ワーク載置面75の各辺の略中央部の外側には、各辺に沿って、ガイド部材30を案内する略矩形のガイド案内孔72が形成されている。ガイド案内孔72の内側面は、開口部から孔の中心方向に向かって傾斜している傾斜部(傾斜領域)72aと、該傾斜部72aから下側に滑らかに連続する垂直部(垂直領域)72bとを含んでいる。ガイド案内孔72は、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に近づくに従って、傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに離れる方向に各ガイド部材30を案内する。また、ガイド案内孔72は、ベルヌーイチャック20が上昇してワーク載置面75から離れるに従って、傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに近づく方向に各ガイド部材30を案内する。なお、1つのガイド案内孔72には、2本のガイド部材30が進入できるように構成されている。
【0053】
また、ワーク載置トレイ70,71のガイド案内孔72の両側には、ワーク載置面75の各辺に沿って、断面が台形状をしたワーク案内突起74が設けられている。ワーク案内突起74は、ワーク80が載置される際に、該ワーク80を所定の位置に誘導するものである。すなわち、ベルヌーイチャック20に保持されたワーク80は、載置される際に、ワーク案内突起74の傾斜面に沿って誘い込まれ、ワーク載置面75の所定位置に載置される。
【0054】
さらに、ワーク載置面75の中心部分には、円形の貫通孔73が形成されている。この貫通孔73は、ベルヌーイチャック20でワーク80を取り出すときに、下側からエアが供給されることにより、ワーク載置トレイ70,71が負圧で引っ張られないようにするために設けられた、エア抜き用の孔である。
【0055】
ここで、図8を参照しつつ、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出しに行くときのガイド部材30の動きを説明する。なお、図8は、非接触保持装置1のガイド部材30の動作を説明するための図であり、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出しに行くときのガイド部材30の動きを上から順に時系列に示したものである。まず、図8の上段に示されるように、ベルヌーイチャック20が鉛直方向(矢印A2)に下降し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75に接近する。
【0056】
その後、図8の中段に示されるように、ガイド部材30がガイド案内孔72の内側面と接し、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に接近するに従って、ガイド案内孔72の傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに離れる方向(矢印A3)に徐々に拡張される。そのため、各ガイド部材30は、ワーク80の周縁部と接触しない。
【0057】
そして、図8の下段に示されるように、対向するガイド部材30がガイド案内孔72により拡張された状態で、ベルヌーイチャック20がワーク80を非接触保持する。よって、ガイド部材30がワーク80の周縁部と接触することなく、ワーク80を保持して取り出すことができる。なお、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出した後、ベルヌーイチャック20が鉛直方向に上昇し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75から離れるに従って、対向するガイド部材30は、トーションバネ34の付勢力により、ワーク載置トレイ70に形成されているガイド案内孔72の内側面に沿って互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。その間、ワーク80は、ベルヌーイチャック20により吸着保持されており、ワーク80とガイド部材30との相対位置は、高さ方向には変わることなく、徐々にクリアランスが小さくなっていく。そのため、ワーク80は、ガイド部材30の軸方向に擦られることなく横方向の移動が規制される。これにより、搬送中のワーク80の横ずれが防止される。
【0058】
次に、図9を用いて、パラレルメカニズムロボット100の動作について説明する。ここでは、太陽電池用ウェハー(ワーク)のパレタイジング工程において、非接触保持装置1(ベルヌーイチャック20)が、取出側のワーク載置トレイ70から太陽電池ウェハー230を取り出した後に、該太陽電池ウェハー230の回転角度位置を合わせつつ、載置側のワーク載置トレイ71まで搬送する場合を例にして説明する。なお、太陽電池ウェハー230の搬送後から、次の太陽電池ウェハー230の取り出しまでの移動の動作は、以下に説明する動作と動作方向が逆になること以外は同一又は同様であるので、ここでは説明を省略する。なお、図9は、太陽電池のパレタイジング工程の概要を説明するための鳥瞰図である。
【0059】
まず、図9を参照しつつ、太陽電池ウェハー230のパレタイジング工程の概要について説明する。この工程では、第1コンベア200、及び第2コンベア201が互いに並行に配置されるとともに、これら2本のコンベアの上方にパラレルメカニズムロボット100が設置されている。第1コンベア200及び第2コンベア201それぞれは、図面右側から左側へ所定の速度もしくは一時停止を繰り返しながらピッチ送りで移動している。第1コンベア200上には取出側のワーク載置トレイ70に載置された太陽電池ウェハー230が流れている。ここで、太陽電池ウェハー230は、例えば、縦156×横156×厚さ0.1〜0.2mmの正方形の薄板である。一方、第2コンベア201には太陽電池ウェハー230が揃えて収納される載置側のワーク載置トレイ71が乗って流れている。ここで、載置側のワーク載置トレイ71は、升目状に仕切られた6つ(2×3)のワーク載置面75を有し、パラレルメカニズムロボット100により、ワーク載置トレイ70に載置されている太陽電池ウェハー230がワーク載置トレイ71の各ワーク載置面75に移載される。
【0060】
パラレルメカニズムロボット100は、アーム本体106を駆動して非接触保持装置1(ベルヌーイチャック20)を移動させ、ワーク載置トレイ70に載置されている太陽電池ウェハー230に近づいた後、該太陽電池ウェハー230を非接触保持装置1で取り出してはワーク載置トレイ71まで搬送するといった動作を繰り返し実行する。また、パラレルメカニズムロボット100は、正方形の太陽電池ウェハー230の向きを、該太陽電池ウェハー230を保持して搬送するときに非接触保持装置1を回転させてワーク載置トレイ71のワーク載置面75の向きに合わせ、太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ71のワーク載置面75に収納する。
【0061】
より詳細に説明すると、第1コンベア200には、第1コンベア200の移動量を検出する第1エンコーダ210が取り付けられている。第1エンコーダ210は、検出された第1コンベア200の移動量を電子制御装置130に出力する。一方、第2コンベア201には、第2コンベア201の移動量を検出する第2エンコーダ211が取り付けられている。第2エンコーダ211は、検出された第2コンベア201の移動量を電子制御装置130に出力する。また、第1コンベア200の上方には、例えばCCDカメラ等の撮像装置220が取り付けられている。撮像装置220は、流れてくるワーク載置トレイ70に載置されている太陽電池ウェハー230を撮像して、太陽電池ウェハー230の重心位置と向き(角度)を求め、電子制御装置130に出力する。さらに、第2コンベア201には、ワーク載置トレイ71の先端部を検出する光学センサ221が取り付けられている。光学センサ221は、検出信号を電子制御装置130に出力する。上記のごとく、非接触保持装置1の回転と撮像装置220の位置検出とにより、ワーク載置トレイ70が第1コンベア200上を不等ピッチあるいは任意の向き(角度)で流れてきた場合であっても、電子制御装置130が非接触保持装置1の位置を適切に制御し、太陽電池ウェハー230を取り出すことが可能となる。
【0062】
電子制御装置130は、太陽電池ウェハー230の重心位置と第1コンベア200の移動量とに基づいて太陽電池ウェハー230の位置を演算する。また、電子制御装置130は、ワーク載置トレイ71の先端部の検出信号と第2コンベア201の移動量とに基づいてワーク載置トレイ71の位置を演算する。電子制御装置130は、求められた太陽電池ウェハー230の位置とワーク載置トレイ71の位置とに基づいて、各電動モータ104を回転してアーム本体106を駆動し、ワーク載置トレイ70に水平に置かれた太陽電池ウェハー230に上方からアクセスして太陽電池ウェハー230を取り出した後に空間内を搬送し、ワーク載置トレイ71に上方からアクセスして保持している太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ71に水平に載置する。
【0063】
より詳細には、太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ70から取り出す際には、ベルヌーイチャック20が鉛直方向に下降し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75に接近する。その後、ガイド部材30がガイド案内孔72の内側面と接し、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に接近するに従って、ガイド案内孔72の傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに離れる方向に徐々に拡張される。そして、ガイド部材30がガイド案内孔72により拡張された状態で、ベルヌーイチャック20が太陽電池ウェハー230を非接触保持する。よって、ガイド部材30が太陽電池ウェハー230の周縁部と接触することなく、太陽電池ウェハー230を保持して取り出すことができる。ベルヌーイチャック20が太陽電池ウェハー230を取り出した後、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75からベルヌーイチャック20が上昇して離れるに従って、対向するガイド部材30は、トーションバネ34の付勢力により、ワーク載置トレイ70に形成されているガイド案内孔72の内側面に沿って互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。これにより、搬送中の太陽電池ウェハー230の横ずれが防止される。
【0064】
同様に、太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ71に載置する際には、太陽電池ウェハー230を保持したベルヌーイチャック20が鉛直方向に下降し、ワーク載置トレイ71のワーク載置面75に接近する。その後、ガイド部材30がガイド案内孔72の内側面と接し、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に接近するに従って、ガイド案内孔72の傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに離れる方向に徐々に拡張される。そして、ガイド部材30がガイド案内孔72により拡張された状態で、ベルヌーイチャック20が太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ71のワーク載置面75に載置する。よって、ガイド部材30が太陽電池ウェハー230の周縁部と接触することなく、太陽電池ウェハー230を載置することができる。なお、ベルヌーイチャック20が太陽電池ウェハー230を載置した後、ワーク載置トレイ71のワーク載置面75からベルヌーイチャック20が離れるに従って、対向するガイド部材30は、トーションバネ34の付勢力により、ワーク載置トレイ71に形成されているガイド案内孔72の内側面に沿って互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。
【0065】
また、電子制御装置130は、太陽電池ウェハー230を搬送しているときに、求められた太陽電池ウェハー230の向きに基づいて、電動モータ121を駆動して旋回軸(すなわち非接触保持装置1)を回転し、太陽電池ウェハー230の向きをワーク載置トレイ71のワーク載置面75に合わせる。以上の動作が実時間で繰り返して実行されることにより、第1コンベア200の上を流れるワーク載置トレイ70に載置されている太陽電池ウェハー230が、第2コンベア201の上を流れるワーク載置トレイ71に揃えて収納される。太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ70から取り出す際、又は、ワーク載置トレイ71に載置する際、パラレルメカニズムロボット100の手先位置精度、第1コンベア200及び第2コンベア201の位置精度、撮像装置220の検出位置精度の他、装置各所の振動等により、非接触保持装置1とワーク載置トレイ70,71との相対位置は若干のズレを生じる。本実施形態によれば、ガイド部材30の拡張により、そのズレを吸収して、太陽電池ウェハー230の周縁部と接触することなく、取り出し、又は載置することが可能となる。
【0066】
本実施形態によれば、ベルヌーイチャック20の周囲に配置されている8本のガイド部材30が、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面75にベルヌーイチャック20が近づくに従って、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、互いに離れる方向に移動する。よって、ワーク80を取り出す際、又はワーク80を載置する際に、8本のガイド部材30それぞれはワーク80の周縁部よりも外側に拡げられる。その結果、ワーク80が載置されているワーク載置トレイ70からワーク80が取出される際、又は、保持されているワーク80がワーク載置トレイ71に載置される際に、ガイド部材30がワーク80の周縁部と接触することを防止することが可能となる。その結果、例えば太陽電池ウェハーなどのワークの取り出し時又は載置時に、ワークのエッジにダメージが与えられることによる性能の劣化を防止することができる。
【0067】
本実施形態によれば、8本のガイド部材30が、ベルヌーイチャック20を挟んで、対向して配置されているため、ワーク80搬送時に、ベルヌーイチャック20に保持されているワーク80の横ずれを効果的に防止することが可能となる。
【0068】
本実施形態によれば、ワーク80を取り出す際に拡げられていた8本のガイド部材30が、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75からベルヌーイチャック20が離れるに従って、トーションバネ34の付勢力により、互いに近づく方向に移動し、例えば、ワーク80の周縁部と略当接する位置に移動する。よって、保持されたワーク80が搬送される際に、ワーク80の横方向の移動を適切に規制することが可能となる。
【0069】
本実施形態によれば、ガイド部材30が、円筒状の基端部30a、及び該基端部30aから連続する円錐状の先端部30bから構成されているため、ワーク80を搬送する際に、ワーク80の周縁部とガイド部材30との接触面積をより小さくすることができる。また、ガイド部材80がワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に導かれる際に、よりスムーズに移動させることが可能となる。
【0070】
本実施形態によれば、トーションバネ34のバネ力を利用して8本のガイド部材30が互いに離れる程、ガイド部材30それぞれが互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材30に付与することができる。また、トーションバネ34を用いることにより、可動機構を小型・軽量化することができる。
【0071】
本実施形態によれば、ベルヌーイチャック20から噴出された高圧エアがワーク80との間から排出されることによってベルヌーイ効果が生じ、吸引力が発生する。よって、ワーク80を非接触で保持することができる。
【0072】
パラレルメカニズムロボット100は、可動部にアクチュエータがなく、軽量化が可能で、高速、高精度に駆動できるという特徴を有するため、ベルヌーイチャック20及びガイド部材30が取り付けられたベース部材10を非常に高速で動かすことができる。そのため、移動機構としてパラレルメカニズムロボット100を用いることにより、ワーク80の横ずれを防止しつつ、ワーク80を高速に移載することが可能となる。
【0073】
本実施形態に係るワーク載置トレイ70,71によれば、ベルヌーイチャック20の周囲に配置されている8本のガイド部材30を、ガイド案内孔72に沿って案内することにより、ワーク載置面75にベルヌーイチャック20が近づくに従って、8本のガイド部材30を互いに離れる方向に移動させることができる。よって、ワーク80を取り出す際、又はワーク80を載置する際に、8本のガイド部材30をワーク80の周縁部よりも外側に拡げることが可能となる。
【0074】
(第2実施形態)
上述した非接触保持装置1ではピン状のガイド部材30を用いたが、ピン状のガイド部材30に代えて、板状のガイド部材を用いることもできる。次に、図10及び図11を用いて、第2実施形態に係る非接触保持装置2の構成について説明する。図10は、非接触保持装置2の構成を示す側面図である。また、図11は、ワーク80を保持した非接触保持装置2を底面側から見た斜視図である。なお、図10,11において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0075】
非接触保持装置2は、ピン状のガイド部材30に代えて、弾性体から形成された板状のガイド部材40を備えている点で非接触保持装置1と異なっている。また、非接触保持装置2は、図4で示した可動機構を有していない点で非接触保持装置1と異なっている。その他の構成は、上述した非接触保持装置1と同一であるので、ここでは説明を省略する。また、非接触保持装置2以外のパラレルメカニズムロボットの構成についても、上述した第1実施形態に係るパラレルメカニズムロボット100と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0076】
チャックベース10Aの下面側には、複数(本実施形態では4つ)の板状のガイド部材40が、チャックベース10Aの下面に対して垂直方向に突設されている。4つのガイド部材40は、ベルヌーイチャック20の周囲に、ワーク80を搬送する際に該ワーク80を包囲するように互いに間隔を空けて配置されている。より詳細には、各ガイド部材40は、チャックベース10Aの各辺の端部に配置され、ガイド部材40がベルヌーイチャック20を挟んで、対向するように配置されている。また、ガイド部材40は、定常状態で、保持されたワーク80と略当接するように、より詳細には、ガイド部材40とワーク80の各辺とが、0.1〜0.2mm程度のクリアランスを有するように配置されている。なお、ガイド部材40の配置は、ワーク80の形状等に応じて設定することが好ましい。
【0077】
各ガイド部材40の高さは、ベルヌーイチャック20の高さ方向の寸法よりも長く設定されており、各ガイド部材40の先端は、ベルヌーイチャック20のワーク保持面よりも下側に突出している。ガイド部材40の先端部は、内側が斜めにカットされている。これにより、ガイド案内孔72の内側面とスムーズに接することができる。また、ガイド部材40は、保持されるワーク80の外縁に沿った方向に一定の幅(例えば35mm程度)を有している。各ガイド部材40は、例えば、フッ素ゴム、ウレタンゴム又はシリコンゴムなどの弾性体から形成されている。また、その表面には、滑りを良くし、耐磨耗性を向上させるために、例えば、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングなどを施してもよい。
【0078】
対向するガイド部材40は、その弾性を利用して、その下端部が互いに離れる方向に変形(移動)可能に構成されている。そのため、ワーク80が載せて置かれている取出側のワーク載置トレイ70からワーク80が取出される際、又は、保持されているワーク80が載置側のワーク載置トレイ71に載置される際に、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面75に非接触保持装置2(ベルヌーイチャック20)が近づくに従って、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、対向するガイド部材40が互いに離れる方向に下端部が反り返るように変形する。
【0079】
このとき、対向するガイド部材40が互いに離れる方向に変形する程、各ガイド部材40には、対向するガイド部材40が互いに近づく方向に復元力(付勢力)が発生する。そのため、ワーク載置トレイ70からワーク80を取り出した後、又は、ワーク載置トレイ71にワーク80を載置した後に、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面からベルヌーイチャック20が離れるに従って、対向するガイド部材40は、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、自身の復元力(付勢力)により、互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。すなわち、ガイド部材40は、特許請求の範囲に記載の付勢部材としても機能する。
【0080】
ここで、図12を参照しつつ、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出しに行くときのガイド部材40の動きを説明する。なお、図12は、非接触保持装置2のガイド部材40の動きを説明するための図である。まず、ベルヌーイチャック20が鉛直方向に下降し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75に接近する。その後、ガイド部材40がガイド案内孔72の内側面と接し、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に接近するに従って、ガイド案内孔72の傾斜部72aに沿って、ガイド部材40の下端部が互いに離れる方向に徐々に変形する。
【0081】
そして、図12に示されるように、ガイド部材40の下端部がガイド案内孔72により反り返るように変形された状態で、ベルヌーイチャック20がワーク80を非接触保持する。よって、ガイド部材40がワーク80の周縁部と接触することなく、ワーク80を保持して取り出すことができる。なお、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出した後、ベルヌーイチャック20が鉛直方向に上昇し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75から離れるに従って、対向するガイド部材40は、自身の復元力(付勢力)により、ワーク載置トレイ70に形成されているガイド案内孔72の内側面に沿って互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。これにより、搬送中のワーク80の横ずれが防止される。
【0082】
本実施形態によれば、ガイド部材40が、板状の弾性体から形成されている。そのため、ワーク80を取り出す際、又はワーク80を載置する際に、弾性体の弾性を利用して、4つのガイド部材40それぞれをワーク80の周縁部よりも外側に拡げることができる。また、弾性体の復元力を利用して、4つのガイド部材40が互いに離れるように変形する程、ガイド部材40それぞれが互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材40に付与することができる。
【0083】
本実施形態によれば、ガイド部材40が、保持されるワーク80の外縁に沿った方向に一定の幅を有する板状に形成されているため、ガイド部材40を容易に変形させて拡げることができる。また、ワーク80搬送時に、ワーク80の横方向の移動を安定して規制することができる。
【0084】
さらに、本実施形態によれば、図4で示した可動機構を廃止することができるため、構造を簡略化でき、よって、より小型・軽量化・低コスト化することができる。
【0085】
また、第1実施形態及び第2実施形態いずれの場合であっても、ガイド部材30,40とガイド案内孔72との接触はすべてワーク80より下側で起こる。したがって、万一、摩擦による磨耗粉が発生した場合であっても、磨耗粉がそのまま下方に落下すれば、ワーク80が磨耗粉により汚染されることはない。さらに、ガイド部材30,40の摺動部は、ワーク80と直接接触しないため、磨耗粉の付着からより安全に守られる。クリーンルーム内で使用される場合は、ダウンフローにより清浄な空気が下向きに流れているため、万一、磨耗粉が発生・浮遊しても、摺動位置より上方のワーク80はさらに汚染されにくくなる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、ガイド部材30及びガイド部材40の形状・大きさ・数・配置、ベース部材10,10Aの形状・大きさ・材質、及び、ベルヌーイチャック20の大きさ、数、配置などは上記実施形態に限定されるものではなく、保持するワーク80の形状・大きさ・重量などに応じて任意に設定することができる。例えば、正方形のワークに代えて、円形のワークを移載する場合には、ガイド部材は必ずしも対向して配置する必要はなく、例えば、円形のワークの周囲に120°間隔で3つのガイド部材を配置してもよい。その場合、ワーク載置トレイのガイド案内孔は、ガイド部材の配置に合わせて形成される。
【0087】
上記第1実施形態では、1つの矩形のガイド案内孔72に2本のピン状のガイド部材30が進入する構成としたが、該ガイド案内孔72を2つの円形又は楕円形のガイド案内孔に分け、それぞれのガイド案内孔に1本のピン状のガイド部材が進入する構成としてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、ワーク80を載せて置くワーク載置装置として一枚のワーク80を平置きして収容するトレイ(ワーク載置トレイ70,71)を用いたが、トレイに代えて、多数枚のワーク80を積み重ねて収容するカセットを用いてもよい。
【0089】
上記実施形態では、パラレルメカニズムロボット100を太陽電池ウェハー230のパレタイジング工程に適用した場合を例として説明したが、パラレルメカニズムロボット100の適用範囲は、太陽電池ウェハー230のパレタイジング工程には限られない。
【符号の説明】
【0090】
1,2 非接触保持装置
10,10A チャックベース
20 ベルヌーイチャック
21 本体
22 凹部
23 噴出孔
30,40 ガイド部材
70,71 ワーク載置トレイ
72 ガイド案内孔
80 ワーク
100 パラレルメカニズムロボット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを移載する移載装置、及び該移載装置と共に用いられるワーク載置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば太陽電池ウェハー、リチウムイオン電池の電極などの比較的薄いワークを移載(ピックアンドプレース)する際に、ワークに直接触れることなくワークを保持することができる非接触保持装置を利用した移載装置が用いられている。このような非接触保持装置を利用した移載装置として高圧エアを噴出して吸引力を発生させるベルヌーイチャックを利用した搬送装置(移載装置)が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている移載装置は、シート状の基板(ワーク)を平板状ステージから取り出して移載するものであり、吸引手段としてのベルヌーイチャックと、平板状ステージに配置されるワークの端部と当接する位置に設けられ、ワークの位置を制御する制御ガイドとを有している。この制御ガイドは、傾斜面が形成された制御部を含み、ワークの端部を制御部に形成された傾斜面に当接させることによって、ベルヌーイチャックによってシート状のワークが吸引されたときに、両者が接触することを防止している。さらに、制御ガイドは、ワークが吸引された状態で搬送される際に、制御部の傾斜面によってワークの平面方向の移動を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−83180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に、ワークとしての太陽電池ウェハー、リチウムイオン電池の電極などは、厚さが薄く、強度的にも脆弱である。しかしながら、特許文献1に開示されている移載装置では、上述したように、シート状のワークの端部を制御部に形成された傾斜面に当接させることによって、ベルヌーイチャックによってシート状基板が吸引されたときに、両者が接触することを防止している。そのため、平板状ステージからシート状のワークを取り出す際に、ワークの割れ等の破損を生ずるおそれがある。
【0006】
また、特許文献1に開示されている移載装置では、平板状ステージからシート状のワークを取り出す際に、ベルヌーイチャック及び制御ガイドの位置がワークに対してずれると、制御部に形成された傾斜面がワークの周縁部に擦り付けられるおそれがある。このように、ワークを取り出して保持する際(ピックアップ時)、又はワークを載置する際(プレース時)に、ワークの周縁部が擦られることによってエッジにダメージが与えられると、例えば太陽電池ウェハーなどの性能を劣化させる要因となる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、ワークが載置されているワーク載置装置からワークを取り出して保持する際、及び、保持しているワークをワーク載置装置に載置する際に、搬送時にワークの横ずれを防止するガイド部材がワークの周縁部と接触することを防止することが可能な移載装置、及び該移載装置と共に用いられるワーク載置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る移載装置は、ワークを非接触状態で保持する非接触保持ユニットと、非接触保持ユニットが取り付けられたベース部材と、非接触保持ユニットの周囲に、ワークが搬送される際に該ワークを包囲するように互いに間隔を空けて配置されて、ベース部材に突設された複数のガイド部材と、ベース部材を空間内で移動させる移動機構とを備え、複数のガイド部材は、少なくとも一部分が互いに離れる方向に移動可能に構成されており、ワークが載置されているワーク載置装置からワークが取出される際、又は、保持されているワークがワーク載置装置に載置される際に、ワーク載置装置のワーク載置面に非接触保持ユニットが近づくに従って、複数のガイド部材の少なくとも一部分が、ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、互いに離れる方向に移動することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る移載装置によれば、ワークが載置されている、又は、ワークを載置するワーク載置装置のワーク載置面に非接触保持ユニットが近づくに従って、非接触保持ユニットの周囲に配置されている複数のガイド部材が、ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、互いに離れる方向に移動する。よって、ワークを取り出す際、又はワークを載置する際に、複数のガイド部材それぞれはワークの周縁部よりも外側に拡げられる。その結果、ワークが載置されているワーク載置装置からワークが取出される際、又は、保持されているワークがワーク載置装置に載置される際に、ガイド部材がワークの周縁部と接触することを防止することが可能となる。
【0010】
本発明に係る移載装置では、複数のガイド部材が、非接触保持ユニットを挟んで、対向して配置されていることが好ましい。このように配置すれば、ワーク搬送時に、非接触保持ユニットに保持されているワークの横ずれを効果的に防止することが可能となる。
【0011】
本発明に係る移載装置は、複数のガイド部材が互いに離れる程、複数のガイド部材が互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材に付与する付勢部材を備え、複数のガイド部材が、ワーク載置装置のワーク載置面から非接触保持ユニットが離れるに従って、ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、付勢部材の付勢力により、互いに近づく方向に移動することが好ましい。
【0012】
この場合、ワークを取り出す際に拡げられていた複数のガイド部材が、ワーク載置装置のワーク載置面から非接触保持ユニットが離れるに従って、付勢部材の付勢力により、互いに近づく方向に移動し、例えば、ワークの周縁部と略当接する位置に移動する。よって、保持されたワークが搬送される際に、ワークの横方向の移動を適切に規制することが可能となる。
【0013】
本発明に係る移載装置では、ガイド部材が、円筒状の基端部と、該基端部から連続する円錐状の先端部とを含むことが好ましい。このようにすれば、ワークを搬送する際に、ワークの周縁部とガイド部材との接触面積をより小さくすることができる。また、ガイド部材がワーク載置装置に形成されているガイド案内部に導かれる際に、よりスムーズに移動させることが可能となる。
【0014】
本発明に係る移載装置では、上記付勢部材が、トーションバネであることが好ましい。この場合、トーションバネのバネ力を利用して、複数のガイド部材が互いに離れる程、ガイド部材それぞれが互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材に付与することができる。また、トーションバネを用いることにより、可動機構をより小型・軽量化することができる。
【0015】
本発明に係る移載装置では、ガイド部材が、弾性体から形成されていることが好ましい。このようにすれば、ワークを取り出す際、又はワークを載置する際に、弾性体の弾性を利用して、複数のガイド部材それぞれをワークの周縁部よりも外側に拡げることができる。また、弾性体の復元力を利用して、複数のガイド部材が互いに離れるように変形する程、複数のガイド部材が互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材40に付与ことができる。
【0016】
ここで、当該ガイド部材は、保持されるワークの外縁に沿った方向に一定の幅を有する板状部材であることが好ましい。このようにすれば、ガイド部材を容易に変形させて拡げることができる。また、ワーク搬送時に、ワークの横方向の移動を安定して規制することができる。
【0017】
本発明に係る移載装置では、上記非接触保持ユニットとして、ベルヌーイチャックを用いることが好ましい。この場合、ベルヌーイチャックから噴出された高圧エアがワークとの間から排出されることによってベルヌーイ効果が生じ、吸引力が発生する。よって、ワークを非接触で保持することができる。
【0018】
本発明に係る移載装置では、移動機構として、複数のリンクを介して、上記ベース部材を水平に保ったまま移動させるパラレルメカニズムロボットを用いることが好ましい。パラレルメカニズムロボットは、可動部にアクチュエータがなく、軽量化が可能で、高速、高精度に駆動できるという特徴を有するため、非接触保持ユニット及びガイド部材が取り付けられたベース部材を非常に高速で動かすことができる。そのため、移動機構としてパラレルメカニズムロボットを用いることにより、ワークの横ずれを防止しつつ、ワークを高速に移載することが可能となる。
【0019】
本発明に係るワーク載置装置は、上記いずれかの移載装置と共に用いられるワーク載置装置であって、移載装置を構成する非接触保持ユニットがワーク載置面に近づくに従って、複数のガイド部材が互いに離れる方向に各ガイド部材を案内するガイド案内部を有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係るワーク載置装置によれば、非接触保持ユニットの周囲に配置されている複数のガイド部材を、ガイド案内部に沿って案内することにより、ワーク載置面に非接触保持ユニットが近づくに従って、複数のガイド部材を互いに離れる方向に移動させることができる。よって、ワークを取り出す際、又はワークを載置する際に、複数のガイド部材をワークの周縁部よりも外側に拡げることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ワークが載置されているワーク載置装置からワークを取り出して保持する際、及び、保持しているワークをワーク載置装置に載置する際に、搬送時にワークの横ずれを防止するガイド部材がワークの周縁部と接触することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る、非接触保持装置が取り付けられたパラレルメカニズムロボットの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1中の矢印A1方向から見たパラレルメカニズムロボットを示す図である。
【図3】非接触保持装置を底面側から見た斜視図である。
【図4】非接触保持装置のガイド部材の可動機構を拡大して示す模式図である。
【図5】取出側のワーク載置トレイの平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った取出側のワーク載置トレイの断面図である。
【図7】載置側のワーク載置トレイの平面図である。
【図8】非接触保持装置のガイド部材の動作を説明するための図である。
【図9】太陽電池ウェハーのパレタイジング工程の概要を説明するための鳥瞰図である。
【図10】第2実施形態に係る非接触保持装置の構成を示す側面図である。
【図11】第2実施形態に係る非接触保持装置を底面側から見た斜視図である。
【図12】第2実施形態に係る非接触保持装置のガイド部材の動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を併せて用いて、第1実施形態に係る、非接触保持装置1が取り付けられたパラレルメカニズムロボット100(特許請求の範囲に記載の移載装置に相当)の全体構成について説明する。図1は、非接触保持装置1が取り付けられたパラレルメカニズムロボット100の全体構成を示す斜視図である。また、図2は、図1中の矢印A1方向から見たパラレルメカニズムロボット100を示す図である。
【0025】
パラレルメカニズムロボット100は、上部にベース部102を有している。パラレルメカニズムロボット100は、ベース部102の下面側に形成された平らな取付面102a(図2参照)が例えば水平な天井等に固定されることによって支持される。一方、ベース部102の下面側には、3つの支持部材103が設けられている。各支持部材103には、それぞれ電動モータ104が支持されている。電動モータ104は、モータ軸の軸線C2がベース部102の取付面102aに対して平行(すなわち水平)となるように支持されている。それぞれの支持部材103は、ベース部102の鉛直方向軸線C1を中心として等しい角度(120度)を開けて配置されており、各電動モータ104もまた、ベース部102の鉛直方向軸線C1を中心として等しい角度(120度)を開けて配置される(図2参照)。
【0026】
各電動モータ104の出力軸には、軸線C2に対して同軸に略六角柱形状のアーム支持部材105が固定されている。アーム支持部材105は、電動モータ104が駆動されることにより軸線C2を中心として回転する。なお、各電動モータ104は、モータドライバを含む電子制御装置130に接続されており、電動モータ104の出力軸の回転がこの電子制御装置130によって制御される。
【0027】
パラレルメカニズムロボット100は、3本のアーム本体106を有しており、各アーム本体106は、第1アーム107及び第2アーム108を含んで構成される。第1アーム107は、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等で形成された長尺の中空円筒部材である。第1アーム107の基端部は、アーム支持部材105の側面に取り付けられている。第1アーム107は、その軸線が上述した軸線C2と直交するように固定される。
【0028】
第1アーム107の遊端部には、第2アーム108の基端部が連結され、第2アーム108が、第1アーム107の遊端部を中心として揺動できるように構成されている。第2アーム108は、一対の長尺のロッド109,109を含んで構成されており、一対のロッド109,109は、その長手方向において互いに平行となるように配置されている。ロッド109も、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等で形成された長尺の中空円筒部材である。各ロッド109の基端部は、第1アーム107の遊端部に、一対のボールジョイント110,110によって連結されている。なお、各ロッド109の基端部における各ボールジョイント110,110間を結ぶ軸線C3は、電動モータ104の軸線C2に対して平行となるよう配置されている。
【0029】
また、第2アーム108の基端部付近において一方のロッド109と他方のロッド109とが連結部材111で互いに連結されており、第2アーム108の遊端部付近において一方のロッド109と他方のロッド109とが連結部材112で互いに連結されている。連結部材111、及び連結部材112は、例えば、付勢部材としての引張コイルバネを有しており、一対のロッド109,109を互いに引き合う方向に付勢する。なお、連結部材111と連結部材112とは、異なる構造であっても構わないが同一構造であることが低コストの観点から好ましい。いずれの連結部材111,112も、各ロッド109が自身の長手方向に平行な軸線まわりに回転することを防止する機能を有する。
【0030】
また、パラレルメカニズムロボット100は、非接触保持装置1(詳細は後述する)を回動可能に取り付けるためのブラケット114を有している。ブラケット114は、略正三角形状をした板状部材である。このブラケット114は、3本のアーム本体106によって、ブラケット114の非接触保持装置1の取付面114a(図1におけるブラケット114の下面)がベース部102の取付面102aと平行(すなわち水平)になるように保持される。
【0031】
すなわち、ブラケット114の各辺には取付片115が形成されており、各取付片115がそれぞれのアーム本体106の遊端部(第2アーム108を構成する一対のロッド109,109の遊端部)に連結されることで、ブラケット114は、各アーム本体106に対して、各アーム本体106の遊端部を中心として揺動する。詳しくは、ブラケット114の各取付片115の各端部が、対応する各ロッド109,109の遊端部に各ボールジョイント116,116によって連結される。一対のボールジョイント116,116を結ぶ軸線C4(図2参照)は、各ロッド109のボールジョイント部110と116との間の距離が全て等しいことにより各アーム本体106に対応する軸線C3と平行になるため、電動モータ104の軸線C2に対しても平行となる。このため、各アーム本体106が駆動される際に、ブラケット114は、水平面に対して平行に移動することにより各アーム本体106に対して揺動する。そして、略正三角形状のブラケット114のすべての辺において、水平面に対して平行に移動できるように、ブラケット114が3本のアーム本体106によって支持されている。
【0032】
上述したように、第1アーム107と第2アーム108との連結部における一対のボールジョイント110,110間の距離と、第2アーム108の各ロッド109とブラケット114との連結部における一対のボールジョイント116,116間の距離とは等しく設定されている。そのため、第2アームを構成する一対のロッド109,109は、必ずその長手方向の全長において互いに平行に配置される。ここで、軸線C2,C3,C4のいずれもが、ベース部102の取付面102aに平行であるから、3つの第1アーム107それぞれが軸線C2を中心にどのように回動したとしても、ブラケット114の非接触保持装置1の取付面114aとベース部102の取付面102aとの平行関係が維持される。
【0033】
そして、電子制御装置130からの指令に応じて、各電動モータ104の出力軸に固定されたアーム支持部材105の回転位置が制御されることで、各第1アーム107の遊端部の位置が制御される。この制御された各第1アーム107の遊端部の位置に、各第2アーム108の遊端部の位置が追従し、その結果、ブラケット114の非接触保持装置1の取付面114aの位置が一意に決まる。このとき、上述したように、ブラケット114は、水平姿勢を維持したまま移動する。
【0034】
また、パラレルメカニズムロボット100は、その中央にベース部102から下方に延びる旋回軸ロッド120と、この旋回軸ロッド120を回転するための電動モータ121とを有する。電動モータ121は、その軸出力を鉛直下方に向けた状態でベース部102に固定されている。旋回軸ロッド120の一端部は、自在継手(以下「ユニバーサルジョイント」という)122、及び、複数のギヤの組み合わせにより構成された減速機124を介して電動モータ121の出力軸に連結されている。なお、本実施形態では減速機124の減速比を5とした。一方、旋回軸ロッド120の他端部は、ユニバーサルジョイント123を介して非接触保持装置1に接続されている。さらに、非接触保持装置1及びユニバーサルジョイント123の下方接続部は、その中心軸が鉛直方向となるようにベアリング等を介してブラケット114に回転自在に固定されている。
【0035】
旋回軸ロッド120は、ロッド120aとシリンダ120bとにより実現され、伸縮自在に構成されている。ここで、旋回軸ロッド120はボールスプラインであり、ロッド120aの回転をシリンダ120bに伝達することが可能である。また、旋回軸ロッド120の両端部にユニバーサルジョイント122,123が採用されているため、ブラケット114が3つの電動モータ104の駆動により上下、前後左右の所定の位置に移動したとしても、旋回軸ロッド120は、その所定位置に追従して移動することができる。なお、以下、旋回軸ロッド120、及びユニバーサルジョイント122,123を含む構成を旋回軸125という。
【0036】
すなわち、電動モータ121と非接触保持装置1との間では、減速機124、ユニバーサルジョイント122、旋回軸ロッド120(ロッド120a,シリンダ120b)、ユニバーサルジョイント123の機械要素が直列に接続されており、電動モータ121の回転駆動力は、直列に接続されたこれらの機械要素を介して、非接触保持装置1に伝達される。電動モータ121は、電子制御装置130に接続されており、電動モータ121の回転がこの電子制御装置130により制御されることにより、非接触保持装置1の回転角度位置が制御される。
【0037】
上述したように、電子制御装置130は、3つの電動モータ104を制御することによってアーム本体106を駆動し、非接触保持装置1を目標位置まで動かす。また、電子制御装置130は、電動モータ121を制御することによって旋回軸ロッド120を駆動し、非接触保持装置1を目標回転角度位置まで回転させる。電子制御装置130としては、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、又は専用の制御用コンピュータ等が好適に用いられる。電子制御装置130は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。
【0038】
また、電子制御装置130には、オペレータによる操作入力を受け付ける設定手段およびパラレルメカニズムロボット100の状態や設定内容を表示する表示手段としての入出力装置131が接続されている。なお、入出力装置131としては、例えば、タッチパネルディスプレイ、又は、液晶ディスプレイとキーボード等が好適に用いられる。オペレータは、入出力装置131を用いて、電動モータ104,121の制御データを設定することができる。電子制御装置130は、設定された制御データを用いてROMに記憶されているプログラムを実行することにより、電動モータ104及び電動モータ121を駆動して、非接触保持装置1の3次元空間における位置(x,y,z)及び回転角度(θ)を制御する。
【0039】
続いて、図3を用いて、ブラケット114を介して旋回軸ロッド120の他端に取り付けられている非接触保持装置1の構造について説明する。ここで、図3は、非接触保持装置1を底面側から見た斜視図である。
【0040】
非接触保持装置1は、高圧エアを噴出して吸引力を発生させ、ワーク80(図8等参照)を非接触状態で保持するベルヌーイチャック20と、ベルヌーイチャック20の周囲に所定の間隔を空けて配置され、ワーク80の搬送時に該ワーク80の横ずれを防止する複数(本実施形態では8本)のガイド部材30と、ベルヌーイチャック20及びガイド部材30が取り付けられるチャックベース(特許請求の範囲に記載のベース部材に相当)10とを備えている。
【0041】
チャックベース10は、外形寸法が、保持されるワーク80よりも一回り大きく形成された、正方形の板状の部材である。チャックベース10は、軽量で強度に優れる工業用プラスチック等から形成されている。なお、チャックベース10の形状、寸法などは、保持されるワークの形状、寸法などに応じて設定されることが好ましい。チャックベース10の上面中央部にはアタッチメント12が取り付けられている。このアタッチメント12により、チャックベース10は、ブラケット114を介して旋回軸ロッド120と接続されており、旋回軸ロッド120によって回動可能に構成されている。
【0042】
ベルヌーイチャック20は、チャックベース10の下面側に取り付けられる円柱状の本体21を有している。円柱状の本体21の端面には凹部22が形成されている。そして、ベルヌーイチャック20は、本体21に形成された凹部22の開口面が、保持されるワーク80と対向するように、すなわち、凹部22の開口面が下側を向くようにして取り付けられる。ベルヌーイチャック20の本体21の開口面は、ワーク80を非接触で保持するワーク保持面を形成する。
【0043】
本体21の凹部22に臨む面には、凹部22内に高圧エアを噴出するための噴出孔23が複数(本実施形態では90度間隔で4つ)形成されている。噴出孔23は、本体21の側面から凹部22の底面にかけて、凹部22の内周面と接する方向に、本体21を斜め下方向に貫通するように形成されている。各噴出孔23にはエア配管(図示省略)が取り付けられている。このエア配管は、高圧エアを供給するエアポンプ(図示省略)に接続されている。
【0044】
エアポンプからエア配管を通して噴出孔23に高圧エアが供給されると、噴出孔23を通して凹部22内に高圧エアが噴出される。噴射された高圧エアは、凹部22の内周面に沿って斜め下方向に進み、開口端面とワーク80との隙間から排出される。これによって、高圧エアが凹部22の内周面から開口端面に突入する際に流速が上がり、凹部22の内部圧力が下降する。この負圧によって、ワーク80に対して吸引力が発生する。その結果、ワーク80が非接触保持される。ベルヌーイチャック20は、特許請求の範囲に記載の非接触保持ユニットとして機能する。
【0045】
チャックベース10の下面側には、複数(本実施形態では8本)のピン状のガイド部材30が、チャックベース10に対して垂直方向に突設されている。8本のガイド部材30は、ベルヌーイチャック20の周囲に、ワーク80が搬送される際に該ワーク80を包囲するように互いに間隔を空けて配置されている。より詳細には、ガイド部材30は、チャックベース10の各辺の端部に間隔を空けて2本ずつ組となって(合計4組)配置され、各組のガイド部材30がベルヌーイチャック20を挟んで、対向するように配置されている。また、ガイド部材30は、定常状態で、保持されたワーク80と略当接するように、より詳細には、ガイド部材30とワーク80の各辺とが、0.1〜0.2mm程度のクリアランスを有するように配置されている。なお、ガイド部材30の配置は、ワーク80の形状等に応じて設定することが好ましい。
【0046】
各ガイド部材30は、その一端がチャックベース10に取り付けられる円柱状の基端部30aと、該基端部30aから連続する略円錐状の先端部30bとを含んで構成されている。各ガイド部材30の全長は、ベルヌーイチャック20の高さ方向の寸法よりも長く設定されており、各ガイド部材30の先端は、ベルヌーイチャック20のワーク保持面よりも下側に突出している。各ガイド部材30は、例えば、UHPE(Ultra High Molecular Weight Polyethylene:超高分子量ポリエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、あるいは、これらにPTFE(四フッ化エチレン)等を充填して摩擦を低減した高分子材料などから形成されている。
【0047】
対向するガイド部材30は、互いに離れる方向に移動可能に構成されており、ワーク80が載せて置かれている取出側のワーク載置トレイ70(図5,6参照)からワーク80が取出される際、又は、保持されているワーク80が載置側のワーク載置トレイ71(図7参照)に載置される際に、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面75に非接触保持装置1(ベルヌーイチャック20)が近づくに従って、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、互いに離れる方向に移動する。なお、ワーク載置トレイ70,71は、特許請求の範囲に記載のワーク載置装置に相当する。また、ガイド案内孔72は、特許請求の範囲に記載のガイド案内部に相当する。
【0048】
ここで、図4を参照しつつ、ガイド部材30の可動機構について説明する。図4は、一つのガイド部材30の可動機構を拡大して示す模式図である。なお、他のガイド部材30の可動機構も同一の構成とされている。チャックベース10の各辺の端部には、当該辺と直交する方向に長孔11が形成されている。ガイド部材30は、その上端が、長孔11、及び、チャックベース10を上下から挟むように配設された2枚のワッシャ31,32を貫くように設けられる。そして、ガイド部材30とワッシャ31,32とは、ガイド部材30の上端側から螺子33により締結されている。これにより、ピン状のガイド部材30が長孔11から抜けることなく、且つ長孔11に沿って摺動可能に、長孔11に取り付けられる。
【0049】
また、チャックベース10の上面には、トーションバネ34が取り付けられている。トーションバネ34は、長孔11の軸線方向に沿って内部方向に付勢力(引張り力)が発生するように、長孔11の軸線に沿って該長孔11よりも内側に配置される。トーションバネ34の一端は、チャックベース10の上面にピン36を介して係止されており、他端はチャックベース10の上面側に取り付けられたワッシャ31にピン37を介して係止されている。なお、トーションバネ34の他端は、螺子33の頭部に同軸に係止されていてもよい。これにより、トーションバネ34は、ガイド部材30が長孔11の一端(内部側)に当接する方向に作用する付勢力をガイド部材30に付与する。
【0050】
このようにトーションバネ34によって付勢されることにより、ガイド部材30は、定常状態において、長孔の一端側(内部側)に当接される。すなわち、ガイド部材30は、定常状態で、保持されたワーク80と略当接するように、より詳細には、ガイド部材30とワーク80の各辺とが、0.1〜0.2mm程度のクリアランスを有するように配置される。一方、後述するワーク載置トレイ70からワーク80を取り出す際、又は、ワーク載置トレイ71にワーク80を載置する際には、ワーク載置トレイ70,71に形成されたガイド案内孔72により、対向するガイド部材30が互いに離れる方向(外部側)に長孔11に沿って移動する。このとき、トーションバネ34は、対向するガイド部材30が長孔11に沿って互いに離れる方向に移動する程、ガイド部材30が互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材30に付与する。そのため、ワーク載置トレイ70からワーク80を取り出した後、又は、ワーク載置トレイ71にワーク80を載置した後に、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面からベルヌーイチャック20が離れるに従って、対向するガイド部材30は、トーションバネ34の付勢力により、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。
【0051】
ここで、図5〜7を併せて参照しつつ、ワーク80を移載する際に、非接触保持装置1が取り付けられたパラレルメカニズムロボット100と共に用いられるワーク載置トレイ70,71について説明する。図5は、取出側のワーク載置トレイ70の平面図であり、図6は、図5のVI−VI線に沿った、ワーク載置トレイ70の縦断面図である。図7は、載置側のワーク載置トレイ71の平面図である。なお、保持するワーク80が載せて置かれている取出側のワーク載置トレイ70と、保持しているワーク80を載置する載置側のワーク載置トレイ71とは、載せて置くことができるワーク80の数のみが異なり、その他の構成は同一である。ちなみに、取出側のワーク載置トレイ70は、2枚のワーク80を載置できるように、2つのワーク載置面75を有している。一方、載置側のワーク載置トレイ71は、6枚のワーク80を載置できるように、6つ(2×3)のワーク載置面75を有している。なお、図5では、図面左側のワーク載置面75にのみワーク80が載置された状態を示している。また、図6では、4つのワーク載置面75にワーク80が載置された状態を示している。
【0052】
ワーク載置トレイ70,71の上面には、ワーク80を載置する正方形のワーク載置面75が形成されている。ワーク載置面75は、ワーク80の寸法と略同一の寸法に形成されている。ワーク載置面75の各辺の略中央部の外側には、各辺に沿って、ガイド部材30を案内する略矩形のガイド案内孔72が形成されている。ガイド案内孔72の内側面は、開口部から孔の中心方向に向かって傾斜している傾斜部(傾斜領域)72aと、該傾斜部72aから下側に滑らかに連続する垂直部(垂直領域)72bとを含んでいる。ガイド案内孔72は、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に近づくに従って、傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに離れる方向に各ガイド部材30を案内する。また、ガイド案内孔72は、ベルヌーイチャック20が上昇してワーク載置面75から離れるに従って、傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに近づく方向に各ガイド部材30を案内する。なお、1つのガイド案内孔72には、2本のガイド部材30が進入できるように構成されている。
【0053】
また、ワーク載置トレイ70,71のガイド案内孔72の両側には、ワーク載置面75の各辺に沿って、断面が台形状をしたワーク案内突起74が設けられている。ワーク案内突起74は、ワーク80が載置される際に、該ワーク80を所定の位置に誘導するものである。すなわち、ベルヌーイチャック20に保持されたワーク80は、載置される際に、ワーク案内突起74の傾斜面に沿って誘い込まれ、ワーク載置面75の所定位置に載置される。
【0054】
さらに、ワーク載置面75の中心部分には、円形の貫通孔73が形成されている。この貫通孔73は、ベルヌーイチャック20でワーク80を取り出すときに、下側からエアが供給されることにより、ワーク載置トレイ70,71が負圧で引っ張られないようにするために設けられた、エア抜き用の孔である。
【0055】
ここで、図8を参照しつつ、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出しに行くときのガイド部材30の動きを説明する。なお、図8は、非接触保持装置1のガイド部材30の動作を説明するための図であり、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出しに行くときのガイド部材30の動きを上から順に時系列に示したものである。まず、図8の上段に示されるように、ベルヌーイチャック20が鉛直方向(矢印A2)に下降し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75に接近する。
【0056】
その後、図8の中段に示されるように、ガイド部材30がガイド案内孔72の内側面と接し、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に接近するに従って、ガイド案内孔72の傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに離れる方向(矢印A3)に徐々に拡張される。そのため、各ガイド部材30は、ワーク80の周縁部と接触しない。
【0057】
そして、図8の下段に示されるように、対向するガイド部材30がガイド案内孔72により拡張された状態で、ベルヌーイチャック20がワーク80を非接触保持する。よって、ガイド部材30がワーク80の周縁部と接触することなく、ワーク80を保持して取り出すことができる。なお、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出した後、ベルヌーイチャック20が鉛直方向に上昇し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75から離れるに従って、対向するガイド部材30は、トーションバネ34の付勢力により、ワーク載置トレイ70に形成されているガイド案内孔72の内側面に沿って互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。その間、ワーク80は、ベルヌーイチャック20により吸着保持されており、ワーク80とガイド部材30との相対位置は、高さ方向には変わることなく、徐々にクリアランスが小さくなっていく。そのため、ワーク80は、ガイド部材30の軸方向に擦られることなく横方向の移動が規制される。これにより、搬送中のワーク80の横ずれが防止される。
【0058】
次に、図9を用いて、パラレルメカニズムロボット100の動作について説明する。ここでは、太陽電池用ウェハー(ワーク)のパレタイジング工程において、非接触保持装置1(ベルヌーイチャック20)が、取出側のワーク載置トレイ70から太陽電池ウェハー230を取り出した後に、該太陽電池ウェハー230の回転角度位置を合わせつつ、載置側のワーク載置トレイ71まで搬送する場合を例にして説明する。なお、太陽電池ウェハー230の搬送後から、次の太陽電池ウェハー230の取り出しまでの移動の動作は、以下に説明する動作と動作方向が逆になること以外は同一又は同様であるので、ここでは説明を省略する。なお、図9は、太陽電池のパレタイジング工程の概要を説明するための鳥瞰図である。
【0059】
まず、図9を参照しつつ、太陽電池ウェハー230のパレタイジング工程の概要について説明する。この工程では、第1コンベア200、及び第2コンベア201が互いに並行に配置されるとともに、これら2本のコンベアの上方にパラレルメカニズムロボット100が設置されている。第1コンベア200及び第2コンベア201それぞれは、図面右側から左側へ所定の速度もしくは一時停止を繰り返しながらピッチ送りで移動している。第1コンベア200上には取出側のワーク載置トレイ70に載置された太陽電池ウェハー230が流れている。ここで、太陽電池ウェハー230は、例えば、縦156×横156×厚さ0.1〜0.2mmの正方形の薄板である。一方、第2コンベア201には太陽電池ウェハー230が揃えて収納される載置側のワーク載置トレイ71が乗って流れている。ここで、載置側のワーク載置トレイ71は、升目状に仕切られた6つ(2×3)のワーク載置面75を有し、パラレルメカニズムロボット100により、ワーク載置トレイ70に載置されている太陽電池ウェハー230がワーク載置トレイ71の各ワーク載置面75に移載される。
【0060】
パラレルメカニズムロボット100は、アーム本体106を駆動して非接触保持装置1(ベルヌーイチャック20)を移動させ、ワーク載置トレイ70に載置されている太陽電池ウェハー230に近づいた後、該太陽電池ウェハー230を非接触保持装置1で取り出してはワーク載置トレイ71まで搬送するといった動作を繰り返し実行する。また、パラレルメカニズムロボット100は、正方形の太陽電池ウェハー230の向きを、該太陽電池ウェハー230を保持して搬送するときに非接触保持装置1を回転させてワーク載置トレイ71のワーク載置面75の向きに合わせ、太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ71のワーク載置面75に収納する。
【0061】
より詳細に説明すると、第1コンベア200には、第1コンベア200の移動量を検出する第1エンコーダ210が取り付けられている。第1エンコーダ210は、検出された第1コンベア200の移動量を電子制御装置130に出力する。一方、第2コンベア201には、第2コンベア201の移動量を検出する第2エンコーダ211が取り付けられている。第2エンコーダ211は、検出された第2コンベア201の移動量を電子制御装置130に出力する。また、第1コンベア200の上方には、例えばCCDカメラ等の撮像装置220が取り付けられている。撮像装置220は、流れてくるワーク載置トレイ70に載置されている太陽電池ウェハー230を撮像して、太陽電池ウェハー230の重心位置と向き(角度)を求め、電子制御装置130に出力する。さらに、第2コンベア201には、ワーク載置トレイ71の先端部を検出する光学センサ221が取り付けられている。光学センサ221は、検出信号を電子制御装置130に出力する。上記のごとく、非接触保持装置1の回転と撮像装置220の位置検出とにより、ワーク載置トレイ70が第1コンベア200上を不等ピッチあるいは任意の向き(角度)で流れてきた場合であっても、電子制御装置130が非接触保持装置1の位置を適切に制御し、太陽電池ウェハー230を取り出すことが可能となる。
【0062】
電子制御装置130は、太陽電池ウェハー230の重心位置と第1コンベア200の移動量とに基づいて太陽電池ウェハー230の位置を演算する。また、電子制御装置130は、ワーク載置トレイ71の先端部の検出信号と第2コンベア201の移動量とに基づいてワーク載置トレイ71の位置を演算する。電子制御装置130は、求められた太陽電池ウェハー230の位置とワーク載置トレイ71の位置とに基づいて、各電動モータ104を回転してアーム本体106を駆動し、ワーク載置トレイ70に水平に置かれた太陽電池ウェハー230に上方からアクセスして太陽電池ウェハー230を取り出した後に空間内を搬送し、ワーク載置トレイ71に上方からアクセスして保持している太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ71に水平に載置する。
【0063】
より詳細には、太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ70から取り出す際には、ベルヌーイチャック20が鉛直方向に下降し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75に接近する。その後、ガイド部材30がガイド案内孔72の内側面と接し、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に接近するに従って、ガイド案内孔72の傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに離れる方向に徐々に拡張される。そして、ガイド部材30がガイド案内孔72により拡張された状態で、ベルヌーイチャック20が太陽電池ウェハー230を非接触保持する。よって、ガイド部材30が太陽電池ウェハー230の周縁部と接触することなく、太陽電池ウェハー230を保持して取り出すことができる。ベルヌーイチャック20が太陽電池ウェハー230を取り出した後、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75からベルヌーイチャック20が上昇して離れるに従って、対向するガイド部材30は、トーションバネ34の付勢力により、ワーク載置トレイ70に形成されているガイド案内孔72の内側面に沿って互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。これにより、搬送中の太陽電池ウェハー230の横ずれが防止される。
【0064】
同様に、太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ71に載置する際には、太陽電池ウェハー230を保持したベルヌーイチャック20が鉛直方向に下降し、ワーク載置トレイ71のワーク載置面75に接近する。その後、ガイド部材30がガイド案内孔72の内側面と接し、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に接近するに従って、ガイド案内孔72の傾斜部72aに沿って、対向するガイド部材30が互いに離れる方向に徐々に拡張される。そして、ガイド部材30がガイド案内孔72により拡張された状態で、ベルヌーイチャック20が太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ71のワーク載置面75に載置する。よって、ガイド部材30が太陽電池ウェハー230の周縁部と接触することなく、太陽電池ウェハー230を載置することができる。なお、ベルヌーイチャック20が太陽電池ウェハー230を載置した後、ワーク載置トレイ71のワーク載置面75からベルヌーイチャック20が離れるに従って、対向するガイド部材30は、トーションバネ34の付勢力により、ワーク載置トレイ71に形成されているガイド案内孔72の内側面に沿って互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。
【0065】
また、電子制御装置130は、太陽電池ウェハー230を搬送しているときに、求められた太陽電池ウェハー230の向きに基づいて、電動モータ121を駆動して旋回軸(すなわち非接触保持装置1)を回転し、太陽電池ウェハー230の向きをワーク載置トレイ71のワーク載置面75に合わせる。以上の動作が実時間で繰り返して実行されることにより、第1コンベア200の上を流れるワーク載置トレイ70に載置されている太陽電池ウェハー230が、第2コンベア201の上を流れるワーク載置トレイ71に揃えて収納される。太陽電池ウェハー230をワーク載置トレイ70から取り出す際、又は、ワーク載置トレイ71に載置する際、パラレルメカニズムロボット100の手先位置精度、第1コンベア200及び第2コンベア201の位置精度、撮像装置220の検出位置精度の他、装置各所の振動等により、非接触保持装置1とワーク載置トレイ70,71との相対位置は若干のズレを生じる。本実施形態によれば、ガイド部材30の拡張により、そのズレを吸収して、太陽電池ウェハー230の周縁部と接触することなく、取り出し、又は載置することが可能となる。
【0066】
本実施形態によれば、ベルヌーイチャック20の周囲に配置されている8本のガイド部材30が、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面75にベルヌーイチャック20が近づくに従って、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、互いに離れる方向に移動する。よって、ワーク80を取り出す際、又はワーク80を載置する際に、8本のガイド部材30それぞれはワーク80の周縁部よりも外側に拡げられる。その結果、ワーク80が載置されているワーク載置トレイ70からワーク80が取出される際、又は、保持されているワーク80がワーク載置トレイ71に載置される際に、ガイド部材30がワーク80の周縁部と接触することを防止することが可能となる。その結果、例えば太陽電池ウェハーなどのワークの取り出し時又は載置時に、ワークのエッジにダメージが与えられることによる性能の劣化を防止することができる。
【0067】
本実施形態によれば、8本のガイド部材30が、ベルヌーイチャック20を挟んで、対向して配置されているため、ワーク80搬送時に、ベルヌーイチャック20に保持されているワーク80の横ずれを効果的に防止することが可能となる。
【0068】
本実施形態によれば、ワーク80を取り出す際に拡げられていた8本のガイド部材30が、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75からベルヌーイチャック20が離れるに従って、トーションバネ34の付勢力により、互いに近づく方向に移動し、例えば、ワーク80の周縁部と略当接する位置に移動する。よって、保持されたワーク80が搬送される際に、ワーク80の横方向の移動を適切に規制することが可能となる。
【0069】
本実施形態によれば、ガイド部材30が、円筒状の基端部30a、及び該基端部30aから連続する円錐状の先端部30bから構成されているため、ワーク80を搬送する際に、ワーク80の周縁部とガイド部材30との接触面積をより小さくすることができる。また、ガイド部材80がワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に導かれる際に、よりスムーズに移動させることが可能となる。
【0070】
本実施形態によれば、トーションバネ34のバネ力を利用して8本のガイド部材30が互いに離れる程、ガイド部材30それぞれが互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材30に付与することができる。また、トーションバネ34を用いることにより、可動機構を小型・軽量化することができる。
【0071】
本実施形態によれば、ベルヌーイチャック20から噴出された高圧エアがワーク80との間から排出されることによってベルヌーイ効果が生じ、吸引力が発生する。よって、ワーク80を非接触で保持することができる。
【0072】
パラレルメカニズムロボット100は、可動部にアクチュエータがなく、軽量化が可能で、高速、高精度に駆動できるという特徴を有するため、ベルヌーイチャック20及びガイド部材30が取り付けられたベース部材10を非常に高速で動かすことができる。そのため、移動機構としてパラレルメカニズムロボット100を用いることにより、ワーク80の横ずれを防止しつつ、ワーク80を高速に移載することが可能となる。
【0073】
本実施形態に係るワーク載置トレイ70,71によれば、ベルヌーイチャック20の周囲に配置されている8本のガイド部材30を、ガイド案内孔72に沿って案内することにより、ワーク載置面75にベルヌーイチャック20が近づくに従って、8本のガイド部材30を互いに離れる方向に移動させることができる。よって、ワーク80を取り出す際、又はワーク80を載置する際に、8本のガイド部材30をワーク80の周縁部よりも外側に拡げることが可能となる。
【0074】
(第2実施形態)
上述した非接触保持装置1ではピン状のガイド部材30を用いたが、ピン状のガイド部材30に代えて、板状のガイド部材を用いることもできる。次に、図10及び図11を用いて、第2実施形態に係る非接触保持装置2の構成について説明する。図10は、非接触保持装置2の構成を示す側面図である。また、図11は、ワーク80を保持した非接触保持装置2を底面側から見た斜視図である。なお、図10,11において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0075】
非接触保持装置2は、ピン状のガイド部材30に代えて、弾性体から形成された板状のガイド部材40を備えている点で非接触保持装置1と異なっている。また、非接触保持装置2は、図4で示した可動機構を有していない点で非接触保持装置1と異なっている。その他の構成は、上述した非接触保持装置1と同一であるので、ここでは説明を省略する。また、非接触保持装置2以外のパラレルメカニズムロボットの構成についても、上述した第1実施形態に係るパラレルメカニズムロボット100と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0076】
チャックベース10Aの下面側には、複数(本実施形態では4つ)の板状のガイド部材40が、チャックベース10Aの下面に対して垂直方向に突設されている。4つのガイド部材40は、ベルヌーイチャック20の周囲に、ワーク80を搬送する際に該ワーク80を包囲するように互いに間隔を空けて配置されている。より詳細には、各ガイド部材40は、チャックベース10Aの各辺の端部に配置され、ガイド部材40がベルヌーイチャック20を挟んで、対向するように配置されている。また、ガイド部材40は、定常状態で、保持されたワーク80と略当接するように、より詳細には、ガイド部材40とワーク80の各辺とが、0.1〜0.2mm程度のクリアランスを有するように配置されている。なお、ガイド部材40の配置は、ワーク80の形状等に応じて設定することが好ましい。
【0077】
各ガイド部材40の高さは、ベルヌーイチャック20の高さ方向の寸法よりも長く設定されており、各ガイド部材40の先端は、ベルヌーイチャック20のワーク保持面よりも下側に突出している。ガイド部材40の先端部は、内側が斜めにカットされている。これにより、ガイド案内孔72の内側面とスムーズに接することができる。また、ガイド部材40は、保持されるワーク80の外縁に沿った方向に一定の幅(例えば35mm程度)を有している。各ガイド部材40は、例えば、フッ素ゴム、ウレタンゴム又はシリコンゴムなどの弾性体から形成されている。また、その表面には、滑りを良くし、耐磨耗性を向上させるために、例えば、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングなどを施してもよい。
【0078】
対向するガイド部材40は、その弾性を利用して、その下端部が互いに離れる方向に変形(移動)可能に構成されている。そのため、ワーク80が載せて置かれている取出側のワーク載置トレイ70からワーク80が取出される際、又は、保持されているワーク80が載置側のワーク載置トレイ71に載置される際に、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面75に非接触保持装置2(ベルヌーイチャック20)が近づくに従って、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、対向するガイド部材40が互いに離れる方向に下端部が反り返るように変形する。
【0079】
このとき、対向するガイド部材40が互いに離れる方向に変形する程、各ガイド部材40には、対向するガイド部材40が互いに近づく方向に復元力(付勢力)が発生する。そのため、ワーク載置トレイ70からワーク80を取り出した後、又は、ワーク載置トレイ71にワーク80を載置した後に、ワーク載置トレイ70,71のワーク載置面からベルヌーイチャック20が離れるに従って、対向するガイド部材40は、ワーク載置トレイ70,71に形成されているガイド案内孔72に沿って、自身の復元力(付勢力)により、互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。すなわち、ガイド部材40は、特許請求の範囲に記載の付勢部材としても機能する。
【0080】
ここで、図12を参照しつつ、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出しに行くときのガイド部材40の動きを説明する。なお、図12は、非接触保持装置2のガイド部材40の動きを説明するための図である。まず、ベルヌーイチャック20が鉛直方向に下降し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75に接近する。その後、ガイド部材40がガイド案内孔72の内側面と接し、ベルヌーイチャック20が下降してワーク載置面75に接近するに従って、ガイド案内孔72の傾斜部72aに沿って、ガイド部材40の下端部が互いに離れる方向に徐々に変形する。
【0081】
そして、図12に示されるように、ガイド部材40の下端部がガイド案内孔72により反り返るように変形された状態で、ベルヌーイチャック20がワーク80を非接触保持する。よって、ガイド部材40がワーク80の周縁部と接触することなく、ワーク80を保持して取り出すことができる。なお、ベルヌーイチャック20がワーク80を取り出した後、ベルヌーイチャック20が鉛直方向に上昇し、ワーク載置トレイ70のワーク載置面75から離れるに従って、対向するガイド部材40は、自身の復元力(付勢力)により、ワーク載置トレイ70に形成されているガイド案内孔72の内側面に沿って互いに近づく方向に移動し、定常位置に戻る。これにより、搬送中のワーク80の横ずれが防止される。
【0082】
本実施形態によれば、ガイド部材40が、板状の弾性体から形成されている。そのため、ワーク80を取り出す際、又はワーク80を載置する際に、弾性体の弾性を利用して、4つのガイド部材40それぞれをワーク80の周縁部よりも外側に拡げることができる。また、弾性体の復元力を利用して、4つのガイド部材40が互いに離れるように変形する程、ガイド部材40それぞれが互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材40に付与することができる。
【0083】
本実施形態によれば、ガイド部材40が、保持されるワーク80の外縁に沿った方向に一定の幅を有する板状に形成されているため、ガイド部材40を容易に変形させて拡げることができる。また、ワーク80搬送時に、ワーク80の横方向の移動を安定して規制することができる。
【0084】
さらに、本実施形態によれば、図4で示した可動機構を廃止することができるため、構造を簡略化でき、よって、より小型・軽量化・低コスト化することができる。
【0085】
また、第1実施形態及び第2実施形態いずれの場合であっても、ガイド部材30,40とガイド案内孔72との接触はすべてワーク80より下側で起こる。したがって、万一、摩擦による磨耗粉が発生した場合であっても、磨耗粉がそのまま下方に落下すれば、ワーク80が磨耗粉により汚染されることはない。さらに、ガイド部材30,40の摺動部は、ワーク80と直接接触しないため、磨耗粉の付着からより安全に守られる。クリーンルーム内で使用される場合は、ダウンフローにより清浄な空気が下向きに流れているため、万一、磨耗粉が発生・浮遊しても、摺動位置より上方のワーク80はさらに汚染されにくくなる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、ガイド部材30及びガイド部材40の形状・大きさ・数・配置、ベース部材10,10Aの形状・大きさ・材質、及び、ベルヌーイチャック20の大きさ、数、配置などは上記実施形態に限定されるものではなく、保持するワーク80の形状・大きさ・重量などに応じて任意に設定することができる。例えば、正方形のワークに代えて、円形のワークを移載する場合には、ガイド部材は必ずしも対向して配置する必要はなく、例えば、円形のワークの周囲に120°間隔で3つのガイド部材を配置してもよい。その場合、ワーク載置トレイのガイド案内孔は、ガイド部材の配置に合わせて形成される。
【0087】
上記第1実施形態では、1つの矩形のガイド案内孔72に2本のピン状のガイド部材30が進入する構成としたが、該ガイド案内孔72を2つの円形又は楕円形のガイド案内孔に分け、それぞれのガイド案内孔に1本のピン状のガイド部材が進入する構成としてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、ワーク80を載せて置くワーク載置装置として一枚のワーク80を平置きして収容するトレイ(ワーク載置トレイ70,71)を用いたが、トレイに代えて、多数枚のワーク80を積み重ねて収容するカセットを用いてもよい。
【0089】
上記実施形態では、パラレルメカニズムロボット100を太陽電池ウェハー230のパレタイジング工程に適用した場合を例として説明したが、パラレルメカニズムロボット100の適用範囲は、太陽電池ウェハー230のパレタイジング工程には限られない。
【符号の説明】
【0090】
1,2 非接触保持装置
10,10A チャックベース
20 ベルヌーイチャック
21 本体
22 凹部
23 噴出孔
30,40 ガイド部材
70,71 ワーク載置トレイ
72 ガイド案内孔
80 ワーク
100 パラレルメカニズムロボット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを非接触状態で保持する非接触保持ユニットと、
前記非接触保持ユニットが取り付けられたベース部材と、
前記非接触保持ユニットの周囲に、ワークが搬送される際に該ワークを包囲するように互いに間隔を空けて配置されて、前記ベース部材に突設された複数のガイド部材と、
前記ベース部材を空間内で移動させる移動機構と、を備え、
前記複数のガイド部材は、少なくとも一部分が互いに離れる方向に移動可能に構成されており、
ワークが載置されているワーク載置装置からワークが取出される際、又は、保持されているワークがワーク載置装置に載置される際に、ワーク載置装置のワーク載置面に前記非接触保持ユニットが近づくに従って、前記複数のガイド部材の少なくとも一部分が、ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、互いに離れる方向に移動することを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記複数のガイド部材は、前記非接触保持ユニットを挟んで、対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
前記複数のガイド部材が互いに離れる程、前記複数のガイド部材が互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材に付与する付勢部材を備え、
前記複数のガイド部材は、前記ワーク載置装置のワーク載置面から前記非接触保持ユニットが離れるに従って、前記ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、前記付勢部材の付勢力により、互いに近づく方向に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の移載装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、円筒状の基端部と、該基端部から連続する円錐状の先端部とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の移載装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、トーションバネであることを特徴とする請求項3又は4に記載の移載装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、弾性体から形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の移載装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、保持される前記ワークの外縁に沿った方向に一定の幅を有する板状部材であることを特徴とする請求項6に記載の移載装置。
【請求項8】
前記非接触保持ユニットは、ベルヌーイチャックであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の移載装置。
【請求項9】
前記移動機構は、複数のリンクを介して、前記ベース部材を水平に保ったまま移動させるパラレルメカニズムロボットであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の移載装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の移載装置と共に用いられるワーク載置装置であって、
前記移載装置を構成する前記非接触保持ユニットがワーク載置面に近づくに従って、前記複数のガイド部材が互いに離れる方向に各ガイド部材を案内するガイド案内部を有することを特徴とするワーク載置装置。
【請求項1】
ワークを非接触状態で保持する非接触保持ユニットと、
前記非接触保持ユニットが取り付けられたベース部材と、
前記非接触保持ユニットの周囲に、ワークが搬送される際に該ワークを包囲するように互いに間隔を空けて配置されて、前記ベース部材に突設された複数のガイド部材と、
前記ベース部材を空間内で移動させる移動機構と、を備え、
前記複数のガイド部材は、少なくとも一部分が互いに離れる方向に移動可能に構成されており、
ワークが載置されているワーク載置装置からワークが取出される際、又は、保持されているワークがワーク載置装置に載置される際に、ワーク載置装置のワーク載置面に前記非接触保持ユニットが近づくに従って、前記複数のガイド部材の少なくとも一部分が、ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、互いに離れる方向に移動することを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記複数のガイド部材は、前記非接触保持ユニットを挟んで、対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
前記複数のガイド部材が互いに離れる程、前記複数のガイド部材が互いに近づく方向に作用する付勢力を各ガイド部材に付与する付勢部材を備え、
前記複数のガイド部材は、前記ワーク載置装置のワーク載置面から前記非接触保持ユニットが離れるに従って、前記ワーク載置装置に形成されているガイド案内部に沿って、前記付勢部材の付勢力により、互いに近づく方向に移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の移載装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、円筒状の基端部と、該基端部から連続する円錐状の先端部とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の移載装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、トーションバネであることを特徴とする請求項3又は4に記載の移載装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、弾性体から形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の移載装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、保持される前記ワークの外縁に沿った方向に一定の幅を有する板状部材であることを特徴とする請求項6に記載の移載装置。
【請求項8】
前記非接触保持ユニットは、ベルヌーイチャックであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の移載装置。
【請求項9】
前記移動機構は、複数のリンクを介して、前記ベース部材を水平に保ったまま移動させるパラレルメカニズムロボットであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の移載装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の移載装置と共に用いられるワーク載置装置であって、
前記移載装置を構成する前記非接触保持ユニットがワーク載置面に近づくに従って、前記複数のガイド部材が互いに離れる方向に各ガイド部材を案内するガイド案内部を有することを特徴とするワーク載置装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−176053(P2011−176053A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37904(P2010−37904)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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