説明

積層セラミックキャパシタ

【課題】本発明は積層セラミックキャパシタに関する。
【解決手段】本発明による積層セラミックキャパシタは、複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、上記複数の誘電体層に形成される複数の内部電極と、上記内部電極が形成されない誘電体層のマージン部に形成され、気孔率が10%以下であるマージン部誘電体層と、上記セラミック素体の外表面に形成される外部電極とを含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層セラミックキャパシタに関し、より具体的には信頼性に優れた積層セラミックキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にキャパシタ、インダクター、圧電素子、バリスタ又はサーミスターなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなるセラミック素体と、素体内部に形成された内部電極と、上記内部電極と接続されるようにセラミック素体の表面に設置された外部電極とを備える。
【0003】
セラミック電子部品のうち積層セラミックキャパシタは、積層された複数の誘電体層と、一誘電体層を介して対向配置される内部電極と、上記内部電極に電気的に接続された外部電極とを含む。
【0004】
積層セラミックキャパシタは小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、コンピューター、PDA、携帯電話などの移動通信装置の部品として広く用いられている。
【0005】
最近では、電気、電子機器産業の高性能化及び軽薄短小化につれ、電子部品においても小型、高性能及び低価額化が求められている。特に、CPUの高速化、機器の小型軽量化、デジタル化及び高機能化が進むにつれ、積層セラミックキャパシタ(Multi Layer Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という。)も小型化、薄層化、高容量化、高周波領域での低インピーダンス化などの特性を具現するための研究開発が活発に行われている。
【0006】
高積層、高容量積層セラミックコンデンサーに用いられる誘電体層及び内部電極は、薄膜シートで、薄膜の誘電体層及び薄膜の内部電極を高積層することによって積層及び圧着過程で変形不良が増加し、超薄膜、超高容量積層セラミックキャパシタが具現しにくい。
【0007】
最近では、薄膜シートの積層性を高めるために、高温、高圧で薄膜シートを転写させる熱転写積層法が用いられているが、薄膜電極が伸びることによってグリーンチップでの不良が増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、信頼性に優れた積層セラミックキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、上記複数の誘電体層に形成される複数の内部電極と、上記内部電極が形成されない誘電体層のマージン部に形成され、気孔率が10%以下であるマージン部誘電体層と、上記セラミック素体の外表面に形成される外部電極とを含む積層セラミックキャパシタを提供する。
【0010】
上記マージン部誘電体層は、積層セラミックキャパシタの長さ方向マージン部及び幅方向マージン部のうち少なくとも一つの領域に形成されてよい。
【0011】
上記マージン部誘電体層の気孔率は3から10%であってよい。
【0012】
上記一誘電体層の厚さは2μm以上であってよい。
【0013】
上記内部電極の厚さは2μm以上であってよい。
【0014】
上記マージン部誘電体層は、セラミック粉末、バインダー及び分散剤を含むセラミックペースト組成物により形成されてよい。
【0015】
上記マージン部誘電体層の気孔率は、マージン部誘電体層を形成するセラミックペースト組成物に含まれる成分の種類及び含量により決まる。
【0016】
上記マージン部誘電体層は、平均粒径が200nm以下のセラミック粉末を含むセラミックペースト組成物により形成されてよい。
【0017】
上記マージン部誘電体層は、セラミック粉末と、リン酸エステル系の第1分散剤と、脂肪酸とアルキルアミンが塩結合(salt bonding)された形態の第2分散剤と、ポリビニルブチラール及びエチルセルロースを含むバインダーと、溶剤とを含むセラミックペースト組成物で形成されてよい。
【0018】
上記マージン部誘電体層は、上記溶剤より粘度の低い予備溶剤をさらに含んでよい。
【0019】
上記第1又は第2分散剤の含量は、上記セラミック粉末100重量部に対し、1から7重量部であってよい。
【0020】
上記バインダーの含量は、上記セラミック粉末100重量部に対し、10から20重量部であってよい。
【0021】
上記セラミックペーストの粘度は、5,000から20,000cpsであってよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、積層セラミックキャパシタに形成されたマージン部誘電体層の気孔率が10%以下に形成されることができる。これにより積層セラミックキャパシタにおけるマージン部側の密度が低下せず、耐湿特性が向上することができ、これにより、IR劣化の発生比率が低く、積層セラミックキャパシタの信頼性が向上することができる。
【0023】
本発明によると、マージン部用セラミックペースト組成物は、セラミック粉末の分散条件に適する溶剤を適用した後、印刷に適する溶剤に置換して製造されてよい。これにより、平均粒径の小さいセラミック粉末を使用することができ、ペースト内のセラミック粉末の分散性に優れるという特徴を有することができる。
【0024】
本発明によるセラミックペーストを利用して積層セラミックキャパシタにマージン部誘電体層を形成すると、焼結性が向上し、内部電極の変形を防ぐことができる。
【0025】
本発明により製造されたセラミックペーストでマージン部に誘電体層を印刷することで、積層、圧着工程で電極が伸びることを防ぎ、切断収率が増加することができる。
【0026】
これにより、超小型及び超薄層の積層セラミックキャパシタの機種開発にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
【図2】図1のA−A’に沿って切断した積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【図3】図1のB−B’に沿って切断した積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【図4】図1に示された積層セラミックキャパシタの一部を示す概略的な分解斜視図である。
【図5】図2の一部を拡大して示した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0029】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図であり、図2は図1のA−A’に沿って切断した積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図であり、図3は図1のB−B’に沿って切断した積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図であり、図4は図1に示された積層セラミックキャパシタの一部を示す概略的な分解斜視図であり、図5は図2の一部を拡大して示した部分拡大図である。
【0030】
図1から図5を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは複数の誘電体層が積層されたセラミック素体110と、上記一誘電体層に形成される内部電極121、122と、マージン部誘電体層113と、上記セラミック素体110の外表面に形成される第1及び第2外部電極131、132とを含んでよい。
【0031】
本発明の一実施形態では、積層セラミックキャパシタの「長さ方向」は図1の「X」方向、「幅方向」は「Y」方向、「厚さ方向」は「Z」方向と定義する。上記「厚さ方向」は誘電体層を積層する方向、即ち、「積層方向」と同じ概念で使用することができる。
【0032】
上記セラミック素体110の形状は特に制限されないが、一般的に直方体であることができる。また、その寸法も特に制限されないが、例えば、0.6mm×0.3mmのサイズであってよく、1.0μF以上の高積層及び高容量の積層セラミックキャパシタであってよい。
【0033】
上記セラミック素体110は複数の誘電体層が厚さ方向に積層されて形成されてよい。より具体的には、図2に示されているように、内部電極と交互に積層されてキャパシタの容量形成に寄与する容量部誘電体層111と、セラミック素体の最外郭に所定の厚さで形成されるカバー部誘電体層112とからなってよい。
【0034】
本発明の一実施形態によると、上記容量部誘電体層111の1層の厚さは、積層セラミックキャパシタの容量設計に合わせて任意に変更してもよく、本発明の一実施形態において、焼成後の一誘電体層の厚さは2.0μm以下であることができる。
【0035】
上記セラミック素体の内部には複数の内部電極121、122が形成されてよい。上記内部電極121、122は誘電体層111を形成するセラミックグリーンシート上に形成されて積層され、焼結により一誘電体層を介して上記セラミック素体110の内部に形成されることができる。
【0036】
上記内部電極は、異なる極性を有する第1内部電極121及び第2内部電極122を一対にし、容量部誘電体層111を介して積層方向に沿って対向配置されてよい。
【0037】
第1及び第2内部電極121、122の末端は、セラミック素体110の一面に露出してよい。これに制限されないが、図2に示されているように、第1及び第2内部電極の長さ方向(X方向)の末端はセラミック素体の対向する両端部の表面に交互に露出してもよい。
【0038】
本発明では、内部電極が形成されない誘電体層の領域をマージン部とし、上記領域に形成された誘電体層をマージン部誘電体層とする。図3に示されているようにセラミックキャパシタの幅方向(Y方向)に形成されたマージン部を幅方向マージン部M1とし、セラミックキャパシタの長さ方向(X方向)に形成されたマージン部を長さ方向マージン部M2とする。
【0039】
図2から図4を参照すると、一誘電体層111の長さ方向(X方向)に第1内部電極121又は第2内部電極122が形成されない長さ方向マージン部M2が形成されてよく、一誘電体層111の幅方向(Y方向)に第1内部電極121又は第2内部電極122が形成されない幅方向マージン部M1が形成されてもよい。
【0040】
また、図示しなかったが、第1内部電極又は第2内部電極の各末端はセラミック素体の同一面に露出してよく、又は第1内部電極又は第2内部電極はセラミック素体の2以上の面に露出してもよい。
【0041】
上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは用途などによって適切に決まるが、例えば、2.0μm以下、又は0.3から1.5μmの範囲内で選択されてよい。
【0042】
上記第1及び第2外部電極131、132はセラミック素体110の両端部の外表面に形成され、セラミック素体の一面に露出した第1及び第2内部電極121、122の末端と連結されてよい。
【0043】
上記第1及び第2外部電極131、132に含まれる導電材は特に限定されないが、Ni、Cu又はこれら合金を利用することができる。第1及び第2外部電極131、132の厚さは用途などによって適切に決まるが、例えば、10から50μm程度であってよい。
【0044】
本発明の一実施形態おける第1及び第2は、異なる極性を意味する。
【0045】
本発明の一実施形態によると、上記セラミック素体110を構成する誘電体層は当業界で一般的に用いられるセラミック粉末を含んでよい。これに制限されないが、例えば、BaTiO系セラミック粉末を含んでよい。BaTiO系セラミック粉末はこれに制限されず、例えば、BaTiOにCa、Zrなどが一部固溶された(Ba1−xCa)TiO、Ba(Ti1−yCa)O、(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O又はBa(Ti1−yZr)Oなどがある。上記セラミック粉末の平均粒径はこれに制限されないが、例えば、0.8μm以下であってもよく、好ましくは0.05から0.5μmである。
【0046】
また、誘電体層は、上記セラミック粉末とともに転移金属酸化物又は炭化物、希土類元素及びMg、Alなどを含んでよい。
【0047】
本実施形態によると、容量部誘電体層111上にはマージン部誘電体層113が形成されてよい。
【0048】
図3から図5を参照すると、本発明の一実施形態によると、容量部誘電体層111上に内部電極121、122が形成されてよく、上記内部電極121、122が形成されない容量部誘電体層111のマージン部M1、M2にはマージン部誘電体層113が形成されてよい。
【0049】
図4から図5は、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの一部を図示したもので、外部電極は省略されている。
【0050】
図3から図5は幅方向マージン部M1及び長さ方向マージン部M2の両方にマージン部誘電体層113が形成されている。しかし、これに制限されず、マージン部誘電体層は幅方向マージン部M1又は長さ方向マージン部M2のみに形成されてもよい。また、マージン部誘電体層は幅方向マージン部M1又は長さ方向マージン部M2の全体領域に形成されたり、一部領域のみに形成されてもよい。
【0051】
また、本発明の一実施形態によると、容量部誘電体層上に形成される内部電極の高さと同一又は類似する水準でマージン部誘電体層が形成されてよい。
【0052】
本発明の一実施形態によると、マージン部誘電体層113を形成して内部電極により発生する段差を解消し、内部電極の拡散を防ぐことができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、マージン部誘電体層の気孔率は10%以下、又は3から10%であることができる。
【0054】
上記マージン部誘電体層の気孔率が10%を超えると、積層セラミックキャパシタにおけるマージン部側の密度が低下し耐湿特性が低下することがある。これによりIR劣化が発生し、積層セラミックキャパシタの信頼性が低下することがある。また、上記マージン部誘電体層の気孔率を低くするために、過度に分散性を高めると、仮焼工程で脱バインダーの通路を塞ぎ、仮焼及び焼成中にクラックが発生することがある。
【0055】
特に、誘電体ペーストの印刷部分がマージン部であるため、上記クラック発生率がさらに増加することがある。
【0056】
本発明の一実施形態によると、マージン部誘電体層は微粒のセラミック粉末を含むペースト組成物で形成されてよい。本発明では、上記マージン部誘電体層を形成するためのペースト組成物をマージン部用セラミックペースト組成物という。
【0057】
本発明の一実施形態によると、上記マージン部誘電体層の気孔率は、ペースト組成物に含まれるセラミック粉末の分散度合いによってその範囲が決まる。また、マージン部用セラミックペースト組成物の成分及び含量などによりマージン部誘電体層の気孔率が調節される。
【0058】
以下では、本発明の一実施形態によるマージン部用セラミックペースト組成物について具体的に説明する。
【0059】
マージン部用セラミックペースト組成物の製造方法を中心に説明する。これによってマージン部用セラミックペースト組成物の成分が明確になるだろう。
【0060】
マージン部用セラミックペースト組成物を製造するために、先ず、予備溶剤、第1分散剤及びセラミック粉末を含むスラリー状態の1次混合物を形成することができる。上記スラリー状態の1次混合物の粘度は10から300cpsであってよく、好ましくは50から100cpsである。
【0061】
上記予備溶剤はスラリー状態の混合物を製造するためのもので、粘度が比較的低いものを用いることができる。これに制限されないが、例えば、トルエン、エタノール及びこれらの混合溶剤を使用してよい。上記予備溶剤の含量はスラリーの粘度、他の成分の含量及び特性を考慮して適切に選択してよく、例えば、上記セラミック粉末100重量に対し、100から500重量部であってよい。
【0062】
上記第1分散剤はリン酸エステル系の分散剤であることができる。上記リン酸エステル系の分散剤はセラミック粉末の表面に結合されて平均粒径の小さいセラミック粉末の分散性を向上させる。また、スラリー状態の1次混合物の粘度が低下することを防ぐことができる。
【0063】
上記リン酸エステル系の分散剤の具体的な種類は特に制限されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート又はオクチルジフェニルホスフェートなどがあり、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0064】
上記リン酸エステル系の分散剤の含量は、上記セラミック粉末100重量部に対し、5から20重量部であることができる。
【0065】
上記セラミック粉末の種類は特に制限されず、容量部誘電体層111に用いられるセラミック粉末と同一又は類似するものを使用してよい。
【0066】
上記セラミック粉末の平均粒径は200nm以上であることができる。1次混合物はスラリー状態で、比較的粘度が低くてより小さい粒径を有するセラミック粉末が均一に分散されることができる。上記セラミック粉末の平均粒径は200nm以下であってよく、50から100nmであってもよい。
【0067】
上記1次混合物は低粘度のスラリー状態で、解砕によりセラミック粉末の分散性が向上することができる。
【0068】
上記1次混合物の解砕は、ビーズミル又は高圧噴霧器を用いて強い衝撃と応力を加えながら行ってよい。上記解砕条件はこれに制限されないが、例えば、周速5から10m/s、流量30から80hg/hrで(High shear micro Mill適用)、固形粉は約20から50wt/%であることができる。解砕後のセラミック粉末の分散性は、セラミック粉末の粒度、比表面積(BET)、電子走査顕微鏡(SEM)を用いて測定した微細形状で確認することができる。
【0069】
次に、上記1次混合物に溶剤、第2分散剤及びバインダーを添加してペースト状態の2次混合物を形成する。上記ペースト状態である2次混合物は印刷に適合するように高粘度特性を有する。上記2次混合物の粘度は5,000から20,000cpsであることができる。2次混合物の粘度は印刷方法により適正範囲に調節されることができ、スクリーン印刷工程に適用される場合には7,000から20,000cpsであることができる。
【0070】
上記2次混合物は、高粘度のペースト状態で、3−ロールミルなどの方法により分散工程を行ってよい。
【0071】
上記溶剤は、上記1次混合物に用いられた予備溶剤より高い沸点及び高い粘度を有するもので、一般的にペーストの製造に用いられるものを使用することができる。上記溶剤の具体的な種類はこれに制限されないが、例えば、テルピネオール系溶剤を使用することができる。より具体的には、ジヒドロテルピネオール(dihydro terpineol、DHTA)を使用することができる。
【0072】
テルピネオール系溶剤は粘度が高くてペーストの製造に有利で、沸点が高くて乾燥速度が遅いため、印刷した後レベリング(leveling)特性に有利である。
【0073】
上記2次混合物に用いられる第2分散剤は、アミノエーテルエステル系の分散剤であることができる。
【0074】
上記アミノエーテルエステル系の分散剤は、高粘度のペースト状態でセラミック粉末の分散性を向上させる。
【0075】
上記第2分散剤の含量は、上記セラミック粉末100重量部に対して3から20重量部、又は3から10重量部であることができる。上記第2分散剤の含量が3重量部未満では、セラミック粉末の分散性が低下し、焼成後のマージン部誘電体層の気孔率が増加する虞がある。
【0076】
上記2次混合物に用いられるバインダーは、ポリビニルブチラル及びエチルセルロースであってよい。上記バインダーは2次混合物の分散過程でセラミック粉末の表面にコートされる。これによりセラミック粉末の凝集を最小化し、分散安全性を保持することができる。
【0077】
また、上記バインダーは2次混合物がスクリーン印刷、グラビア印刷などの印刷法に適用できるように適正範囲の粘性及び揺変性(thixotrophy)を与える役割をする。また、バインダーは接着性、相安定性又は3−ロールミリングが可能な物性を具現する役割をする。
【0078】
上記ポリビニルブチラル樹脂はセラミック粉末との結合力に優れる。上記エチルセルロースは構造の復元力に優れてセラミックペーストの分散安定性を高めることができ、これを添加することで接着強度の調節が可能である。
【0079】
上記バインダーの含量はセラミック粉末の分散性、積層性、脱バインダーまで考慮して設定することが好ましい。上記バインダーの含量は、容量部誘電体層を形成するセラミックペーストに含まれるバインダーの含量と類似する範囲で設定されてよい。これに制限されないが、上記バインダーの含量は、上記セラミック粉末100重量部に対し、10から30重量部又は10から20重量部であってよい。
【0080】
上記バインダーの含量が10重量部未満では、セラミックペーストの分散性が低下したり、印刷特性が低下してマージン部誘電体層の気孔率が増加する虞がある。また。上記バインダーの含量が30重量部を超えると、脱バインダーが困難で、セラミックキャパシタの特性が低下する虞がある。
【0081】
また、上記2次混合物には可塑剤をさらに添加してもよい。上記可塑剤はトリエチレングリコール系の可塑剤であることができる。
【0082】
上記可塑剤の含量はこれに制限されないが、上記セラミック粉末100重量部に対して10から30重量部であることができる。
【0083】
また、上記2次混合物を形成する前に、予備溶剤を除去する段階を行ってもよい。上記予備溶剤は沸点が低いという特性を有し、蒸留器により揮発させて除去することができる。上記予備溶剤を除去すると、スラリー状態の1次混合物は湿潤ケーキ状態となる。上記湿潤ケーキ状態の1次混合物に2次混合物に用いられる溶剤を投入し、ペースト状態である2次混合物を形成してよい。
【0084】
上記予備溶剤は完全に除去されることが好ましいが、一部が除去されずに2次混合物に残っていることがある。
【0085】
上記予備溶剤が残留すると、容量部誘電体層を損傷させる虞があり、上記予備溶剤の除去率が高いことが好ましい。
【0086】
第2分散剤、バインダー又は溶剤が添加されると、予備溶剤が除去しにくくなる。従って、上記予備溶剤の除去率を高めるために、2次混合物を形成するための溶剤、第2分散剤及びバインダーを添加する前に予備溶剤を除去する段階を行うことが好ましい。
【0087】
上記のような製造方法によるセラミックペースト組成物には、セラミック粉末と、リン酸エステル系の第1分散剤と、アミノエーテルエステル系の第2分散剤と、ポリビニルブチラル及びエチルセルロースを含むバインダーと、溶剤とが含まれてよい。また、場合によっては、上記溶剤より粘度の低い予備溶剤が含まれてもよい。
【0088】
一般的に、内部電極を形成する金属粉末や平均粒径の大きいセラミック粉末は高粘度で、3−ロールミル(3−roll mill)を用いて分散することができる。
【0089】
しかし、平均粒径の小さいセラミック粉末は比表面積が大きく、硬度が大きいため、高粘度で分散性を確保することが困難である。また、超小型、超薄膜積層セラミックキャパシタに適用するためには、さらに小さい粒径を有するセラミック粉末を用いなければならず、その場合は分散性の確保がさらに困難である。セラミック粉末の分散性が充分に確保されないと、焼結後のマージン部誘電体層に気孔率が増加し、耐湿特性及び信頼性低下が発生することがある。
【0090】
本実施形態によると、微粒のセラミック粉末に合う低粘度を有する予備溶剤を用い、解砕及び分散してセラミック粉末の凝集を最小化して分散性を確保した。その後、高粘度を有する溶剤を用いて印刷のための高粘度のペーストを製造した。これにより微粒のセラミック粉末を含むことができる。
【0091】
また、既存より分散性に優れたセラミックペーストを製造し、これを用いたマージン部誘電体層の気孔率の範囲が10%以下に形成されることができる。
【0092】
以下、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法を説明する。
【0093】
先ず、複数のセラミックグリーンシートを用意する。上記セラミックグリーンシートはセラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することができる。上記スラリーはセラミック素体を形成する容量部誘電体層、カバー部誘電体層を形成するセラミックグリーンシート用スラリーである。
【0094】
次に、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを塗布し第1及び第2内部電極パターンを形成する。上記第1及び第2内部電極パターンはスクリーン印刷法又はグラビア印刷法により形成してよい。
【0095】
また、第1及び第2内部電極パターンが形成されないセラミックグリーンシートのマージン部にマージン部誘電体層を形成する。
【0096】
上述した本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ用セラミックペーストを第1及び第2内部電極パターンが形成されないセラミックグリーンシートのマージン部に印刷して焼成すると、図4及び図5に示されているようなマージン部誘電体層が形成される。上記積層セラミックキャパシタ用セラミックペーストは上述した方法により製造されてよい。上記セラミックグリーンシートは焼成により図4及び図5に示されているような誘電体層を形成するようになる。
【0097】
その後、上記複数のセラミックグリーンシートを積層し、積層方向から加圧して積層されたセラミックグリーンシートと内部電極ペーストを圧着させる。このようにしてセラミックグリーンシートと内部電極ペーストが交互に積層されたセラミック積層体を製造する。このとき、上記圧着過程で内部電極が伸びたり、セラミックグリーンシートの外に導出されることがある。しかし、本実施形態によると、第1及び第2内部電極パターンが形成されないセラミックグリーンシートのマージン部に印刷されたセラミックペースト(マージン部誘電体層)により内部電極パターンの拡散が防止される。また、積層体において、内部電極による段差の発生率が減少する。
【0098】
次に、セラミック積層体を1個のキャパシタに対応する領域ごとに切断してチップ化する。このとき、第1及び第2内部電極パターンの一端が側面を通じて交互に露出するように切断する。
【0099】
その後、チップ化した積層体を、例えば、約1200℃で焼成してセラミック素体を製造する。
【0100】
次いで、セラミック素体の側面を覆い、セラミック素体の側面に露出した第1及び第2内部電極と電気的に連結されるように第1及び第2外部電極を形成する。その後、外部電極の表面にニッケル、スズなどのメッキ処理を施すことができる。
【0101】
下記表1から表3に記載されているように、マージン部用セラミックペースト組成物を製造し、これを利用して積層セラミックキャパシタを製造した。下記表1に記載されているサンプル1から4は、マージン部用セラミックペースト組成物のバインダーの含量に差があり、その他の条件を同一にした。下記表2に記載されているサンプル5から8は、マージン部用セラミックペースト組成物の第2分散剤の含量に差があり、その他の条件を同一にした。
【0102】
また、下記表1から表3に記載されている焼成前のセラミック充填率は、全体添加剤の体積においてセラミックパウダーが占めるvol%を意味する。即ち、焼成前の全体体積のうちセラミックの体積を最大限に増加させなければ、焼成後の気孔が最小化しないため、これを管理する。但し、セラミック充填率を計算する際、測定密度と理論密度の誤差が存在するため、セラミックvol%を相対密度で分ける。密度測定方法は、誘電体ペーストを乾燥させた後、アルキメデス法で測定し、式は下記の通りである。
【0103】
充填率(vol%)=BT(vol%)/相対密度
相対密度=測定密度(g/cc)/理論密度(g/cc)
【0104】
焼成後の気孔率は、焼成後の誘電体内部の気孔面積を%で示したもので、分散性の低下及び内部欠陥(defect)があり、焼成後にも気孔が存在し焼成後の密度を減少させる。測定方法は、実際焼成後、マージン誘電体の微細構造を撮影して誘電体面積当たりの気孔率(%)で計算する。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
上記表1を参照すると、サンプル2から4はマージン部用セラミックペースト組成物に含まれるバインダーの含量が制御され、焼成後のマージン部誘電体層の気孔率が10%以下に形成された。これに対し、サンプル1はバインダーの含量が少なくて焼成後のマージン部誘電体層の気孔率が10%を超えた。
【0109】
また、上記表2を参照すると、サンプル6から8はマージン部用セラミックペースト組成物に含まれる第2分散剤の含量が制御され、焼成後のマージン部誘電体層の気孔率が10%以下に形成された。これに対し、サンプル5は第2分散剤の含量が少なくて焼成後のマージン部誘電体層の気孔率が10%を超えた。
【0110】
また、上記表3を参照すると、サンプル9から11は100nm以下のセラミック粉末を用いたが、焼成後のマージン部誘電体層の気孔率が10%以下に形成された。
【0111】
即ち、本発明の一実施形態によると、セラミック粉末の分散性が向上して粒子の凝集が減少し、マージン部誘電体層の気孔率が減少したと判断される。
【0112】
また、上記サンプル1からサンプル4による積層セラミックキャパシタ(0603サイズ)に対し、信頼性検査(8585Test、条件−85℃、85% RH、6.5V/9.45V、12Hr、400pcs)を行い、その結果を下記表4に示した。
【0113】
【表4】

【0114】
上記表4を参照すると、サンプル2から4は焼成後のマージン部誘電体層の気孔率が10%以下で、IR劣化の発生比率が減少した。これに対し、サンプル1は焼成後のマージン部誘電体層の気孔率が10%を超え、IR劣化の発生比率がサンプル2から4より増加した。
【0115】
本発明の一実施形態により製造されたセラミックペーストでマージン部に誘電体層を印刷することで、積層、圧着工程で電極が伸びることを防ぎ、切断収率が増加することができる。
【0116】
また、上記マージン部誘電体層の気孔率が10%以下に形成されるため、積層セラミックキャパシタにおけるマージン部側の密度が低下せず、耐湿特性が向上することができる。これにより、IR劣化の発生比率が低くて積層セラミックキャパシタの信頼性が向上することができる。
【0117】
本発明は上述した実施形態及び添付の図面により限定されるものではなく、添付の請求の範囲により限定される。従って、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者により多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するとする。
【符号の説明】
【0118】
110 セラミック素体
111 容量部誘電体層
113 マージン部誘電体層
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、
前記複数の誘電体層に形成される複数の内部電極と、
前記内部電極が形成されない誘電体層のマージン部に形成され、気孔率が10%以下であるマージン部誘電体層と、
前記セラミック素体の外表面に形成される外部電極と、
を含む積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記マージン部誘電体層は、積層セラミックキャパシタの長さ方向マージン部及び幅方向マージン部のうち少なくとも一つの領域に形成される請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記マージン部誘電体層の気孔率は、3から10%である請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記一誘電体層の厚さは、2μm以下である請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記内部電極の厚さは、2μm以下である請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記マージン部誘電体層はセラミック粉末、バインダー及び分散剤を含むセラミックペースト組成物により形成される請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記マージン部誘電体層の気孔率は、マージン部誘電体層を形成するセラミックペースト組成物に含まれる成分の種類及び含量により決まる請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記マージン部誘電体層は、平均粒径が200nm以下のセラミック粉末を含むセラミックペースト組成物により形成される請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記マージン部誘電体層は、セラミック粉末と、リン酸エステル系の第1分散剤と、脂肪酸とアルキルアミンが塩結合(salt bonding)された形態の第2分散剤と、ポリビニルブチラル及びエチルセルロースを含むバインダーと、溶剤とを含むセラミックペースト組成物で形成される請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記マージン部誘電体層は、前記溶剤より粘度の低い予備溶剤をさらに含む請求項9に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記第2分散剤の含量は、前記セラミック粉末100重量部に対し、3から10重量部である請求項9に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
前記バインダーの含量は、前記セラミック粉末100重量部に対し、10から20重量部である請求項9に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
前記セラミックペーストの粘度は、5,000から20,000cpsである請求項9に記載の積層セラミックキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98528(P2013−98528A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−41103(P2012−41103)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】