説明

積層体ユニット

本発明に係る積層体ユニットは、導電性を有し、かつ、その上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる材料によって、形成され、少なくとも表面が[001]方位に配向された支持基板と、支持基板上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて形成され、[001]方位に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層を備えている。このように構成された積層体ユニットは、c軸方向に配向されたビスマス層状化合物をを含む誘電体層を有しているから、誘電体層に含まれているビスマス層状化合物の強誘電体としての性質を抑制して、常誘電体としての性質を十分に発揮させることが可能になるから、小型で、かつ、大容量の誘電特性に優れた薄膜コンデンサを作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電極層および誘電体層を含む積層体ユニットに関するものであり、とくに、小型で、かつ、大容量の誘電特性に優れた薄膜コンデンサを作製するのに好適であるとともに、高輝度の無機EL(inorganic electro−luminescence)デバイスを作製するのに適した積層体ユニットに関するものである。
【背景技術】
近年、CPU(Central Processing Unit)に代表されるLSI(Large Scale Integrated circuit)の動作周波数はますます向上している。動作周波数の高いLSIは、非常に電源ノイズが発生しやすく、電源ノイズが発生すると、電源配線の寄生抵抗および寄生インダクタンスの影響によって、電圧降下が生じるため、LSIを誤動作させる原因となる。
電源ノイズに起因するこのような電圧降下を防止するため、一般に、LSIの電源端子間には、デカップリングコンデンサが接続される。LSIの電源端子間に、デカップリングコンデンサを接続すれば、電源配線のインピーダンスが低下するため、電源ノイズに起因する電圧降下を効果的に抑制することができる。
電源配線に要求されるインピーダンスは、LSIの動作電圧に比例するとともに、LSIの集積度、スイッチング電流および動作周波数に反比例する。したがって、集積度が高く、動作電圧が低く、動作周波数が高い近年のLSIにおいては、電源配線に要求されるインピーダンスは非常に小さい。
このようなインピーダンスを達成するためには、デカップリングコンデンサを大容量化するとともに、LSIの電源端子とデカップリングコンデンサとを接続する配線のインダクタンスを十分に小さくする必要がある。
大容量のデカップリングコンデンサとしては、電解コンデンサや積層セラミックコンデンサが一般に用いられる。しかしながら、電解コンデンサや積層セラミックコンデンサは比較的サイズが大きいため、LSIとの一体化が困難である。したがって、LSIとは別個に、回路基板に実装する必要が生じ、LSIの電源端子とデカップリングコンデンサとを接続する配線が必然的に長くなってしまう。その結果、デカップリングコンデンサとして、電解コンデンサや積層セラミックコンデンサを用いた場合には、LSIの電源端子とデカップリングコンデンサとを接続する配線のインダクタンスを小さくすることが困難であるという問題があった。
LSIの電源端子とデカップリングコンデンサとを接続する配線をより短くするためには、電解コンデンサや積層セラミックコンデンサよりも小型な薄膜コンデンサを用いることが好適である。
日本国公開特許公報第2001−15382号は、誘電体の材料として、PZT、PLZT、(Ba,Sr)TiO(BST)、Taなどを用いた小型で、容量の大きい薄膜コンデンサを開示している。
しかしながら、これらの材料によって、形成された薄膜コンデンサは、温度特性が劣るという欠点を有している。たとえば、BSTの誘電率は、−1000〜−4000ppm/℃の温度依存性を有しているため、誘電体の材料として、BSTを用いた場合には、80℃での静電容量が、20℃での静電容量と比べて、−6〜−24%も変化する。したがって、BSTを用いて、形成された薄膜コンデンサは、電力消費に伴う発熱によって、周囲の温度がしばしば80℃以上に達することがある動作周波数の高いLSI用のデカップリングコンデンサとしては、適当ではない。
さらに、これらの材料によって、形成された誘電体薄膜は、その厚みが薄くなると、誘電率が低下するだけでなく、たとえば、100kV/cmの電界を加えた場合に、静電容量が大きく低下するという問題があり、これらの材料を、薄膜コンデンサの誘電体材料として、用いた場合には、小型で、かつ、大容量の薄膜コンデンサを得ることは困難である。
加えて、これらの材料によって、形成された誘電体薄膜は、表面平滑性が低いため、その厚みを薄くすると、絶縁不良などが生じやすくなるという問題もある。
このような問題を解決するためには、薄膜コンデンサの誘電体として、ビスマス層状化合物を用いることが考えられる。ビスマス層状化合物については、竹中正著「ビスマス層状構造強誘電体セラミックスの粒子配向とその圧電・焦電材料への応用」、京都大学工学博士論文(1984)の第3章の第23〜36頁に記載されている。
ビスマス層状化合物は結晶構造に異方性を有しており、基本的に、強誘電体としての性質を示すが、ある配向軸方向については、強誘電体としての性質が小さく、常誘電体としての性質を示すことが知られている。
ビスマス層状化合物が持つ強誘電体としての性質は、ビスマス層状化合物を、薄膜コンデンサの誘電体として利用する場合には、誘電率の変動をもたらすため、好ましくなく、ビスマス層状化合物の常誘電体としての性質が十分に発揮されることが好ましい。
よって、ビスマス層状化合物の強誘電体としての性質が小さく、常誘電体としての性質を示す配向軸方向に、ビスマス層状化合物が配向された誘電体層を備え、小型で、かつ、大容量の誘電特性に優れた薄膜コンデンサの開発が望まれている。
他方、高輝度の無機EL(inorganic electro−luminescence)デバイスを作製するには、電極と、無機EL素子との間に、絶縁性の高い絶縁層を設けることが要求されており、ビスマス層状化合物の強誘電体としての性質が小さく、常誘電体としての性質を示す配向軸方向に、ビスマス層状化合物が配向された誘電体層を備えた高輝度の無機ELデバイスの開発が望まれている。
【発明の開示】
したがって、本発明は、小型で、かつ、大容量の誘電特性に優れた薄膜コンデンサを作製するのに好適であるとともに、高輝度の無機EL(inorganic electro−luminescence)デバイスを作製するのに適した積層体ユニットを提供することを目的とするものである。
本発明のかかる目的およびその他の目的は、導電性を有し、かつ、その上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる材料により、形成され、少なくとも表面が[001]方位に配向された支持基板と、前記支持基板上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、形成され、[001]方位に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層が積層された積層体ユニットによって達成される。
ここに、[001]方位とは、立方晶、正方晶、単斜晶および斜方晶における[001]方位のことをいう。
本発明によれば、支持基板は、導電性を有し、かつ、その上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる材料により、形成され、少なくとも表面が[001]方位に配向されているから、電極層およびバッファ層としても機能し、したがって、支持基板上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、確実に、[001]方位に配向したビスマス層状化合物を含む誘電体層を形成することが可能になる。
したがって、本発明によれば、誘電体層に含まれるビスマス層状化合物のc軸を、支持基板に対して、垂直に配向させることが可能になるから、たとえば、誘電体層上に、上部電極を設け、支持基板と上部電極との間に電圧を印加した場合に、電界の方向が、誘電体層に含まれるビスマス層状化合物のc軸とほぼ一致し、したがって、誘電体層に含まれるビスマス層状化合物の強誘電体としての性質を抑制して、常誘電体としての性質を十分に発揮させることが可能になるから、小型で、かつ、大容量の薄膜コンデンサを作製することが可能になる。
さらに、本発明によれば、c軸配向性が向上されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層は高い絶縁性を有しているから、誘電体層を薄膜化することができ、したがって、薄膜コンデンサを、より一層小型化することが可能になる。
また、c軸配向性が向上されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層は高い絶縁性を有しているから、本発明にかかる積層体ユニットの誘電体層上に、無機EL素子を配置するとともに、無機EL素子上に、別の電極を配置し、支持基板と別の電極との間に電圧を加えることによって、無機EL素子を、所望のように、発光させることが可能になり、高輝度の無機ELデバイスを作製することができる。
本発明において、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料は、不可避的な不純物を含んでいてもよい。
本発明において、支持基板を形成するための材料は、導電性を有し、かつ、その上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる材料であれば、とくに限定されるものではないが、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの金属およびこれらを主成分とする合金や、NdO、NbO、RhO、OsO、IrO、RuO、SrMoO、SrRuO、CaRuO、SrVO、SrCrO、SrCoO、LaNiO、NbドープSrTiOなどの導電性酸化物およびこれらの混合物ならびに酸化物超伝導体などが、支持基板を形成するために、好ましく使用される。
本発明において、支持基板を形成するために用いられる酸化物超伝導体としては、CuO面を有する銅酸化物超伝導体が好ましい。
本発明において、支持基板を形成するために、とくに好ましく使用されるCuO面を有する銅酸化物超伝導体の例としては、化学量論的組成式:BiSrCan−1Cu2n+4で示されるBSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・カッパー・オキサイド)、化学量論的組成式:YBaCu−δで示されるYBCO(イットリウム・ビスマス・カッパー・オキサイド)が挙げられる。なお、銅酸化物超伝導体の前記組成式の構成元素比はとくに限定されるものではなく、銅酸化物超伝導体の結晶構造を保持できる範囲で、構成元素比が異なっていてもよい。
本発明において、支持基板に含まれている導電性を有する材料の[001]方位の配向度、すなわち、c軸配向度Fが100%であることは必ずしも必要でなく、c軸配向度Fが80%以上であればよい。c軸配向度Fが90%であることが好ましく、c軸配向度Fが95%以上であると、より好ましい。
ここに、導電性を有する材料のc軸配向度Fは、次式(1)によって定義される。
F(%)=(P−P)/(1−P)×100 …(1)
式(1)において、Pは、完全にランダムな配向をしている多結晶体のc軸配向比、すなわち、完全にランダムな配向をしている多結晶体の(001)面からの反射強度I(001)の合計ΣI(001)と、その多結晶体の各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)との比({ΣI(001)/ΣI(hkl)})であり、Pは、X線回折強度を用いて算出された導電性を有する材料のc軸配向比、すなわち、導電性を有する材料の(001)面からの反射強度I(001)の合計ΣI(001)と、その材料の各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)との比({ΣI(001)/ΣI(hkl)})である。ここに、h、k、lは、それぞれ、0以上の任意の整数値を取ることができる。
ここに、Pは既知の定数であるから、(001)面からの反射強度I(001)の合計ΣI(001)と、各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)が等しいとき、すなわち、P=1のときに、導電性を有する材料のc軸配向度Fは100%となる。
溶融石英などによって形成された支持基板に、白金などよりなる電極層を直接形成する場合には、電極層が、[111]方位に配向しやすいため、電極層上に、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層を形成し、ビスマス層状化合物を[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向させることがきわめて困難になる。しかしながら、本発明においては、導電性を有し、かつ、その上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる材料により、形成され、少なくとも表面が[001]方位に配向され、電極層としても機能する支持基板を用い、少なくとも表面が[001]方位に配向された支持基板上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、誘電体層が形成されるから、確実に、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向された誘電体層を形成することが可能になる。
本発明において、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの金属およびこれらを主成分とする合金によって、支持基板を形成する場合には、まず、溶融石英などのアモルファス性基板、セラミックスなどの多結晶基板、耐熱ガラス基板、樹脂基板などの別の支持基板上に、異方性があり、かつ、その上で、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)などの金属あるいはこれらの金属を主成分とする合金の結晶をエピタキシャル成長させて、電極層の機能を有する支持基板を形成することができる材料によって、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向されたバッファ層を形成し、バッファ層上で、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)などの金属あるいはこれらの金属を主成分とする合金の結晶をエピタキシャル成長させて、電極層の機能を有する支持基板を形成した後、支持基板から、バッファ層を剥離することによって、[001]方位に配向された支持基板を形成することができる。
一方、本発明において、単結晶の導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体によって、少なくともその表面が[001]方位に配向された支持基板を形成する場合には、導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の単結晶が[001]方位に配向されている面を選択して、導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の単結晶を切り出すことによって、[001]方位に配向された支持基板を形成することができる。
さらに、本発明において、多結晶の導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体によって、少なくともその表面が[001]方位に配向された支持基板を形成する場合には、導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の多結晶の粒子を、ホットフォージング法やホットプレス法などのホットワーキング法によって、[001]方位に配向させ、[001]方位に配向されている面を選択して、導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の多結晶を切り出すことによって、[001]方位に配向された支持基板を形成することができる。導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の多結晶の粒子を、ホットフォージング法やホットプレス法などのホットワーキング法によって、配向させた場合に、[001]方位への配向度F、すなわち、c軸配向度Fが90%以上であるときは、そのまま、支持基板として利用することができる。
本発明において、積層体ユニットは、支持基板上に、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層を備えている。
本発明において、誘電体層は、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料を、支持基板上で、エピタキシャル成長させることによって形成される。
誘電体層は、[001]方位に配向されている支持基板上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、形成されるから、誘電体層に含まれているビスマス層状化合物を、確実に、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向させることができ、したがって、本発明にかかる積層体ユニットを用いて、薄膜コンデンサを構成したときに、誘電体層に含まれるビスマス層状化合物は、強誘電体としてではなく、常誘電体として機能するから、小型で、かつ、大容量の誘電特性に優れた薄膜コンデンサを形成することが可能になる。
誘電体層を形成するビスマス層状化合物としては、コンデンサ材料としての特性に優れたビスマス層状化合物が選ばれる。
ビスマス層状化合物は、化学量論的組成式:(Bi2+(Am−3m+12−、あるいは、Bim−13m+3で表わされる組成を有している。ここに、化学量論的組成式中の記号mは正の整数であり、記号Aは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびビスマス(Bi)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、記号Bは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。記号Aおよび/またはBを2つ以上の元素で構成する場合、それらの比率は任意である。なお、ビスマス層状化合物は、上記組成式によって表わされるものに限定されるものではなく、ビスマス層状化合物の結晶構造を保持していれば、とくに限定されるものではない。
第1図に示されるように、ビスマス層状化合物は、それぞれがABO1aで構成される(m−1)個のペロブスカイト格子が連なった層状ペロブスカイト層1と、(Bi2+層2とが、交互に積層された層状構造を有している。
層状ペロブスカイト層1と(Bi2+層2の積層数は、とくに限定されるものではなく、少なくとも一対の(Bi2+層2と、これらに挟まれた一つの層状ペロブスカイト層1を備えていれば十分である。
ビスマス層状化合物のc軸とは、一対の(Bi2+層2同士を結ぶ方向、すなわち、[001]方位を意味する。
これらのビスマス層状化合物のうち、コンデンサ材料としての特性に優れたビスマス層状化合物が、誘電体層を形成するために用いられる。
本発明において、誘電体層を形成するために用いられるビスマス層状化合物は、コンデンサ材料としての特性に優れたビスマス層状化合物であれば、とくに限定されるものではないが、化学量論組成式において、m=4の化学量論的組成式:(Bi2+(A13、あるいは、Bi15で表わされるビスマス層状化合物がコンデンサ材料としての特性に優れ、好ましく使用される。
本発明において、誘電体層に含まれているビスマス層状化合物の[001]方位の配向度、すなわち、c軸配向度Fが100%であることは必ずしも必要でなく、c軸配向度Fが80%以上であればよい。c軸配向度Fが90%であることが好ましく、c軸配向度Fが95%以上であると、より好ましい。
ビスマス層状化合物のc軸配向度Fは、式(1)によって定義される。
このように、ビスマス層状化合物を、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向させることによって、誘電体層の誘電特性を大幅に向上させることが可能になる。
すなわち、本発明にかかる積層体ユニットの誘電体層上に、たとえば、上部電極を形成して、薄膜コンデンサを作製した場合、誘電体層の膜厚をたとえば100nm以下にしても、比較的高い誘電率と低い損失(tanδ)を有する薄膜コンデンサを得ることができ、リーク特性に優れ、耐圧が向上し、誘電率の温度特性に優れ、表面平滑性にも優れた薄膜コンデンサを得ることが可能になる。
本発明において、とくに好ましくは、誘電体層に含まれるビスマス層状化合物が、化学量論的組成式:CaSr(1−x)BiTi15で表わされる組成を有している。ここに、0≦x≦1である。このような組成を有するビスマス層状化合物を用いると、比較的大きな誘電率を有する誘電体層が得られるとともに、その温度特性がさらに向上する。
本発明において、誘電体層に含まれるビスマス層状化合物の化学量論的組成式中の記号AまたはBで表わされる元素の一部が、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素Re(イットリウム(Y)または希土類元素)によって置換されていることが好ましい。
元素Reによって、置換する場合には、好ましい置換量は、mの値により異なるが、たとえば、m=3のときは、化学量論的組成式:Bi2−xRe12において、好ましくは、0.4≦x≦1.8であり、より好ましくは、1.0≦x≦1.4である。元素Reによる置換量をこの範囲に設定すれば、誘電体層のキュリー温度(強誘電体から常誘電体への相転移温度)を、好ましくは、−100℃以上、100℃以下、より好ましくは、−50℃以上、50℃以下に収めることが可能となる。キュリー点が−100℃ないし+100℃であると、誘電体層の誘電率が向上する。キュリー温度は、DSC(示差走査熱量測定)などによって測定することができる。なお、キュリー点が室温(25℃)未満になると、tanδがさらに減少し、その結果、損失Q値がさらに上昇する。
また、m=4の場合には、化学量論的組成式:Bi3−xRe15において、好ましくは、0.01≦x≦2.0であり、より好ましくは、0.1≦x≦1.0である。
本発明にかかる積層体ユニットの誘電体層は、優れたリーク特性を有しているが、ビスマス層状化合物の化学量論的組成式中の記号AまたはBで表わされる元素の一部が、元素Reによって、置換されている場合には、誘電体層のリーク特性を一層向上させることができ、好ましい。
たとえば、ビスマス層状化合物の化学量論的組成式中の記号AまたはBで表わされる元素の一部が、元素Reによって、置換されていない場合においても、本発明にかかる積層体ユニットの誘電体層は、電界強度50kV/cmで測定したときのリーク電流を、好ましくは、1×10−7A/cm以下、より好ましくは、5×10−8A/cm以下に抑制することができ、しかも、ショート率を、好ましくは、10%以下、より好ましくは、5%以下にすることができるが、ビスマス層状化合物の化学量論的組成式中の記号AまたはBで表わされる元素の一部が、元素Reによって、置換されている場合には、同条件で測定したときのリーク電流を、好ましくは、5×10−8A/cm以下、より好ましくは、1×10−8A/cm以下にすることができ、ショート率を、好ましくは、5%以下、より好ましくは、3%以下にすることができる。
本発明において、誘電体層は、真空蒸着法、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD)、有機金属化学気相成長法(metal−organic chemical vapor deposition:MOCVD)、有機金属分解法(metal−organic decomposition:MOD)やゾル・ゲル法などの液相法(CSD法)などの各種薄膜形成法を用いて、形成することができる。とくに低温で、誘電体層を形成する必要がある場合には、プラズマCVD、光CVD、レーザーCVD、光CSD、レーザーCSD法を用いることが好ましい。
本発明にかかる支持基板および誘電体層を含む積層体ユニットは、薄膜コンデンサの構成部品としてだけでなく、無機EL素子を発光させるための積層体ユニットとして用いることもできる。すなわち、無機EL素子を発光させるためには、支持基板と、無機EL素子との間に、絶縁層が必要であるが、c軸配向性が向上されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層は高い絶縁性を有しており、したがって、誘電体層上に、無機EL素子を配置するとともに、無機EL素子上に、別の電極を配置し、支持基板と別の電極との間に電圧を加えることによって、無機EL素子を、所望のように、発光させることが可能になる。
本発明の前記およびその他の目的や特徴は、添付図面に基づいた以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
第1図は、ビスマス層状化合物の構造を模式的に示す図である。
第2図は、本発明の好ましい実施態様にかかる積層体ユニットの略一部断面図である。
第3図は、本発明の好ましい実施態様にかかる積層体ユニットを用いて、作製された薄膜コンデンサの略一部断面図である。
発明の好ましい実施態様の説明
第2図は、本発明の好ましい実施態様にかかる積層体ユニットの略一部断面図である。
第2図に示されるように、本実施態様にかかる積層体ユニット1は、支持基板2上に、誘電体層3を備えている。
本実施態様においては、積層体ユニット1の支持基板2は、白金(Pt)によって形成され、[001]方位に配向されている。
したがって、支持基板2は、積層体ユニット1を機械的に支持するために機能するとともに、積層体ユニット1の電極層としても機能する。
また、支持基板2は、白金(Pt)によって形成され、[001]方位に配向されているから、電極としての機能と、その上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体層3を確実に形成できるように保証するバッファ層としての機能を有している。
支持基板2の厚さは、積層体ユニット1を機械的に支持するために十分な機械的強度が得られるように決定される。
[001]方位に配向された支持基板2を形成するには、まず、溶融石英などのアモルファス性基板、セラミックスなどの多結晶基板、耐熱ガラス基板、樹脂基板などの別の支持基板上に、異方性があり、かつ、その上で、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)などの金属あるいはこれらの金属を主成分とする合金の結晶をエピタキシャル成長させて、電極層の機能を有する支持基板を形成することができる材料によって、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向されたバッファ層が形成され、次いで、バッファ層上で、白金(Pt)の結晶をエピタキシャル成長させて、バッファ層上に、白金(Pt)の支持基板が形成され、その後、支持基板から、バッファ層を剥離することによって、[001]方位に配向された支持基板が形成される。
第2図に示されるように、本実施態様にかかる積層体ユニット1は、支持基板2上に形成された誘電体層3を備えている。
本実施態様において、誘電体層3は、ビスマス層状化合物の化学量論的組成式において、m=4、A=Bi+Srとした化学量論的組成式:SrBiTi15で表わされ、コンデンサ材料としての特性に優れたビスマス層状化合物を含む誘電体材料によって形成されている。
本実施態様においては、誘電体層3は、有機金属分解法(metal−organic decomposition:MOD)によって、支持基板2上に形成される。
具体的には、2−エチルヘキサン酸Srのトルエン溶液と、2−エチルヘキサン酸Biの2−エチルヘキサン酸溶液と、2−エチルヘキサン酸Tiのトルエン溶液を、2−エチルヘキサン酸Srが1モル、2−エチルヘキサン酸Biが4モル、2−エチルヘキサン酸Tiが4モルとなるように、化学量論比で混合し、トルエンで希釈して、得た原料溶液を、スピンコーティング法によって、支持基板2上に塗布し、乾燥後、得られた誘電体層3を結晶化させない温度条件で、仮焼成する。
次いで、仮焼成した誘電体層3上に、スピンコーティング法によって、同じ原料溶液を塗布して、乾燥し、仮焼成し、この操作を繰り返す。
仮焼成が完了すると、誘電体層3が本焼成され、必要な厚さの誘電体層3、たとえば、100nmの厚さの誘電体層3が得られるまで、塗布、乾燥、仮焼成、塗布、乾燥、仮焼成および本焼成よりなる一連の操作が繰り返される。
この過程で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料はエピタキシャル成長し、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向された誘電体層3が形成される。
本実施態様によれば、積層体ユニット1は、支持基板2と、支持基板2の上に形成された誘電体層3を備えており、支持基板2は、導電性を有し、かつ、その上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる性質を有し、その表面が[001]方位に配向しているから、支持基板2は、バッファ層としても機能し、したがって、支持基板2上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層3を、確実に形成することが可能になる。
したがって、本実施態様によれば、積層体ユニット1は、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料によって形成された誘電体層3を有しているから、たとえば、本実施態様にかかる積層体ユニット1の誘電体層3上に、上部電極を設けて、薄膜コンデンサを作製し、支持基板2と上部電極との間に電圧を印加したときに、電界の方向が誘電体層3に含まれているビスマス層状化合物のc軸とほぼ一致し、したがって、誘電体層3に含まれているビスマス層状化合物の強誘電体としての性質を抑制して、常誘電体としての性質を十分に発揮させることが可能になるから、小型で、かつ、大容量の薄膜コンデンサを作製することが可能になる。
さらに、本実施態様によれば、積層体ユニット1は、[001]方位に、すなわち、c軸方向に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料によって形成された誘電体層3を有し、c軸配向性が向上されたビスマス層状化合物を含む誘電体層3は高い絶縁性を有しているから、誘電体層3を薄膜化することができ、したがって、薄膜コンデンサを、より一層小型化することが可能になる。
第3図は、本発明の好ましい実施態様にかかる積層体ユニット1を用いて、作製された薄膜コンデンサの略一部断面図である。
第3図に示されるように、薄膜コンデンサ10は、第2図に示された積層体ユニット1と、積層体ユニット1の誘電体層3上に形成された上部電極層11を備えている。
本実施態様において、積層体ユニット1の支持基板2は、薄膜コンデンサ10全体の機械的強度を確保する機能を有している。
さらに、積層体ユニット1の支持基板2は、薄膜コンデンサ10の一方の電極としての機能を有するとともに、誘電体層3に含まれたビスマス層状化合物のc軸を、電界に対して、実質的に平行に配向させるためのバッファ層としての機能を有している。
本実施態様において、積層体ユニット1の誘電体層3は、薄膜コンデンサ10の誘電体層としての機能を有している。
本実施態様においては、積層体ユニット1の誘電体層3上に、薄膜コンデンサ10の他方の電極として、機能する上部電極層11が形成されている。
上部電極層11を形成するための材料は、導電性を有していれば、とくに限定されるものではなく、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの金属およびこれらを主成分とする合金や、NdO、NbO、RhO、OsO、IrO、RuO、SrMoO、SrRuO、CaRuO、SrVO、SrCrO、SrCoO、LaNiO、NbドープSrTiOなどの導電性酸化物およびこれらの混合物、ITOなどの導電性ガラスなどを用いて、上部電極層11を形成することができる。さらに、積層体ユニット1の支持基板2とは異なり、上部電極層11を形成するための材料としては、誘電体層3を形成する材料との格子整合性を考慮する必要がなく、室温における成膜も可能であるから、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの卑金属や、WSi、MoSiなどの合金を用いて、上部電極層11を形成することもできる。上部電極層11の厚さとしては、薄膜コンデンサ10の他方の電極としての機能を確保可能であれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、10ないし10000nm程度に設定することができる。
上部電極層11の形成方法は、とくに限定されるものではなく、真空蒸着法、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD)、有機金属化学気相成長法(metal−organic chemical vapor deposition:MOCVD)、有機金属分解法(metal−organic decomposition:MOD)やゾル・ゲル法などの液相法(CSD法)などの各種薄膜形成法を用いて、形成することができる。これらのうちでは、成膜速度の面から、スパッタリング法が好ましい。
以上のように構成された薄膜コンデンサ10においては、誘電体層3に含まれたビスマス層状化合物は、そのc軸が、支持基板2および上部電極層11に対して、実質的に垂直方向に配向されている。したがって、支持基板2と上部電極層11との間に電界が印加されたとき、電界の方向が、誘電体層3に含まれたビスマス層状化合物のc軸とほぼ一致するから、誘電体層3に含まれたビスマス層状化合物の強誘電体としての性質を抑制して、常誘電体としての性質を十分に発揮させることが可能になり、小型で、かつ、大容量の薄膜コンデンサ10を得ることが可能になる。
このような特性を有する薄膜コンデンサ10は、デカップリングコンデンサ、とくに、動作周波数の高いLSI用のデカップリングコンデンサとして、好ましく利用することができる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
たとえば、前記実施態様においては、積層体ユニット1の支持基板2は、白金(Pt)によって形成されているが、支持基板2を白金(Pt)によって形成することは必ずしも必要でなく、導電性を有し、かつ、その上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる材料により、形成され、少なくとも表面が[001]方位に配向され、支持基板としての機械的強度を有する材料であれば、とくに限定されるものではない。たとえば、白金(Pt)に代えて、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの金属およびこれらを主成分とする合金や、NdO、NbO、RhO、OsO、IrO、RuO、SrMoO、SrRuO、CaRuO、SrVO、SrCrO、SrCoO、LaNiO、NbドープSrTiOなどの導電性酸化物およびこれらの混合物、化学量論的組成式:BiSrCan−1Cu2n+4で示されるBSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・カッパー・オキサイド)、化学量論的組成式:YBaCu−δで示されるYBCO(イットリウム・ビスマス・カッパー・オキサイド)などの酸化物超伝導体によって、支持基板2を形成してもよい。本発明において、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの金属およびこれらを主成分とする合金によって、支持基板を形成する場合には、支持基板2は、白金(Pt)によって、支持基板を形成する場合と同様に、作製することができる。一方、単結晶の導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体によって、支持基板2を形成する場合には、導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の単結晶が[001]方位に配向されている面を選択して、導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の単結晶を切り出すことによって、[001]方位に配向された支持基板2を形成することができる。さらに、多結晶の導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体によって、支持基板2を形成する場合には、導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の多結晶の粒子を、ホットフォージング法やホットプレス法などのホットワーキング法によって、[001]方位に配向させ、[001]方位に配向されている面を選択して、導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の多結晶を切り出すことによって、[001]方位に配向された支持基板2を形成することができる。導電性酸化物、導電性酸化物の混合物あるいは酸化物超伝導体の多結晶の粒子を、ホットフォージング法やホットプレス法などのホットワーキング法によって、配向させた場合に、[001]方位への配向度F、すなわち、c軸配向度Fが90%以上であるときは、そのまま、支持基板2として利用することができる。
また、前記実施態様においては、積層体ユニット1は、支持基板2上に、ビスマス層状化合物の化学量論的組成式において、m=4、A=Bi+Srとした化学量論的組成式:SrBiTi15で表わされる組成を有するビスマス層状化合物を含む誘電体材料によって形成された誘電体層3を備えているが、支持基板2上に、ビスマス層状化合物の化学量論的組成式において、m=4、A=Bi+Srとした化学量論的組成式:SrBiTi15で表わされる組成を有するビスマス層状化合物を含む誘電体材料によって、誘電体層3を形成することは必ずしも必要でなく、mが4以外のビスマス層状化合物を含む誘電体材料によって、誘電体層3を形成することもでき、さらに、構成元素を異にする他のビスマス層状化合物を含む誘電体材料によって、誘電体層3を形成することもできる。
さらに、前記実施態様においては、積層体ユニット1の誘電体層3は、有機金属分解法(metal−organic decomposition:MOD)によって形成されているが、誘電体層3を、有機金属分解法によって形成することは必ずしも必要でなく、真空蒸着法、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD)、有機金属化学気相成長法(metal−organic chemical vapor deposition:MOCVD)、ゾル・ゲル法などの他の液相法(CSD法)などの他の薄膜形成法によって、誘電体層3を形成することもできる。
また、前記実施態様においては、積層体ユニット1は、薄膜コンデンサの構成部品として、用いられているが、積層体ユニット1は、薄膜コンデンサの構成部品としてだけでなく、無機EL(inorganic electro−luminescence)素子を発光させるための積層体ユニットとして用いることもできる。すなわち、無機EL素子を発光させるためには、支持基板2と、無機EL素子との間に、絶縁層が必要であるが、c軸配向性が向上されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層3は高い絶縁性を有しており、したがって、誘電体層3上に、無機EL素子を配置するとともに、無機EL素子上に、別の電極を配置し、無機EL素子に電圧を加えることによって、無機EL素子を、所望のように、発光させることが可能になる。
本発明によれば、小型で、かつ、大容量の誘電特性に優れた薄膜コンデンサを作製するのに好適であるとともに、高輝度の無機EL(inorganic electro−luminescence)デバイスを作製するのに適した積層体ユニットを提供することが可能になる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、かつ、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる材料によって、形成され、少なくとも表面が[001]方位に配向された支持基板と、前記支持基板上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、形成され、[001]方位に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層が積層された積層体ユニット。
【請求項2】
前記支持基板が、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)およびこれらを主成分とする合金よりなる群から選ばれた少なくとも一種の材料によって形成されている請求の範囲第1項に記載の積層体ユニット。
【請求項3】
前記支持基板が、SrRuO、CaRuO、SrVO、SrCrO、SrCoO、LaNiO、NbドープSrTiOを含むペロブスカイト構造を有する導電性酸化物およびこれらの混合物ならびに組成式:BiSrCan−1Cu2n+4で表わされるBSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・カッパー・オキサイド)および組成式:YBaCu−δで表わされるYBCO(イットリウム・ビスマス・カッパー・オキサイド)を含むCuO面を有する銅酸化物超伝導体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の単結晶材料によって形成されている請求の範囲第1項に記載の積層体ユニット。
【請求項4】
前記支持基板が、前記単結晶材料を、[001]方位に配向された面で、切断することによって、形成されている請求の範囲第3項に記載の積層体ユニット。
【請求項5】
前記支持基板が、SrRuO、CaRuO、SrVO、SrCrO、SrCoO、LaNiO、NbドープSrTiOを含むペロブスカイト構造を有する導電性酸化物およびこれらの混合物ならびに組成式:BiSrCan−1Cu2n+4で表わされるBSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・カッパー・オキサイド)および組成式:YBaCu−δで表わされるYBCO(イットリウム・ビスマス・カッパー・オキサイド)を含むCuO面を有する銅酸化物超伝導体よりなる群から選ばれた少なくとも一種の多結晶材料を、[001]方位に配向して、形成されている請求の範囲第1項に記載の積層体ユニット。
【請求項6】
前記支持基板が、前記多結晶材料を、[001]方位に配向された面で、切断することによって、形成されている請求の範囲第5項に記載の積層体ユニット。
【請求項7】
前記支持基板が、前記多結晶材料を、配向度が90%以上になるように、[001]方位に配向させて、形成されている請求の範囲第5項に記載の積層体ユニット。
【請求項8】
前記誘電体層が、組成式:(Bi2+(Am−13m+12−、あるいは、Bim−13m+3で表わされる組成を有するビスマス層状化合物(記号mは正の整数であり、記号Aは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびビスマス(Bi)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、記号Bは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。記号Aおよび/またはBを2つ以上の元素で構成する場合、それらの比率は任意である。)を含んでいる請求の範囲第1項に記載の積層体ユニット。
【請求項9】
導電性を有し、かつ、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させることができる材料によって、形成され、少なくとも表面が[001]方位に配向された支持基板と、前記支持基板上で、ビスマス層状化合物を含む誘電体材料をエピタキシャル成長させて、形成され、[001]方位に配向されたビスマス層状化合物を含む誘電体材料よりなる誘電体層が積層された積層体ユニットと、上部電極層とを備えた薄膜コンデンサ。

【国際公開番号】WO2004/112056
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507013(P2005−507013)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008664
【国際出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】