説明

積層体

【課題】本発明は、ポリアミド樹脂とポリウレタン樹脂を積層して得られる積層体の接着性を始めとする各種特性を改良することを目的とする。
【解決手段】ポリアミド樹脂とポリエーテルアミドエラストマー(X)とを含むX層と、ポリウレタン樹脂を含むY層とが積層された構造を備え;ポリエーテルアミドエラストマー(X)が、式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)を含むジアミン化合物(A)と、ポリアミド形成性モノマー(B)と、ジカルボン酸化合物(C)とを含む成分を重合して得られる重合体であることを特徴とする積層体。


(ただし、xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、およびzは1〜20の整数をそれぞれ表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂と熱可塑性ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂を含む層とが積層された構造を備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、ポリアミド樹脂とポリウレタン樹脂とを積層して得られる積層体がこれまで提案されてきたが、接着性が不十分で容易に剥離してしまい、実用に耐えない場合があった。
【0003】
一方、特許文献2に記載されるように、ポリアミド系エラストマーと、ポリウレタン樹脂とを積層して得られる積層体がこれまで提案されてきた。
【0004】
また、特許文献3にはポリアミド系エラストマーが、特許文献4には熱可塑性樹脂およびポリアミド系エラストマーを含む樹脂組成物が記載されている。
【特許文献1】特開昭56−8257号公報
【特許文献2】特開2005−119207号公報
【特許文献3】特開2004−161964号公報
【特許文献4】特開2004−352789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、ポリアミド樹脂を主体とする層とポリウレタン樹脂の層が高い剥離強度で積層された積層体は知られていなかった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、ポリアミド樹脂を含む層とポリウレタン樹脂を含む層とを積層して得られる積層体であって、剥離強度等の特性が改良された積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリアミド樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂と、ポリエーテルアミドエラストマー(X)とを含むX層と、
ポリウレタン樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂を含むY層とが積層された構造を備え;
前記ポリエーテルアミドエラストマー(X)が、
下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)を含むジアミン化合物(A)と、
ポリアミド形成性モノマー(B)と、
ジカルボン酸化合物(C)と
を含む成分を重合して得られる重合体であることを特徴とする積層体に関する。
【0008】
【化1】


ただし、xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、およびzは1〜20の整数をそれぞれ表わす。
【0009】
また、前記ジアミン化合物(A)は、炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミン、炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミンおよびノルボルナンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のジアミン化合物(A2)をさらに含むことが好ましい。
【0010】
本発明の好ましい態様を次に挙げる。
【0011】
1:ポリアミド樹脂が、脂肪族ポリアミドである。
【0012】
2:ポリアミド樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12およびナイロン612からなる群より選ばれる少なくとも1種類の脂肪族ポリアミドである。
【0013】
3:X層が、第1の熱可塑性樹脂を95〜50質量%と、ポリエーテルアミドエラストマー(X)を5〜50質量%とを含む。
【0014】
4:ジカルボン酸化合物(C)が、下記式(2)で表される。
【0015】
【化2】

(ただし、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0または1を表す。)
【0016】
5:ポリアミド形成性モノマー(B)が、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、ジアミンとジカルボン酸とから合成されるものおよびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の脂肪族、脂環族および/または芳香族を含む。
【0017】
6:ポリアミド形成性モノマー(B)が、下記式(3)で表されるアミノカルボン酸化合物(B1)と、下記式(4)で表されるラクタム化合物(B2)との少なくともいずれか一方を含む。
【0018】
【化3】

(ただし、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表わす。)
【0019】
【化4】

(ただし、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表わす。)
【0020】
7:ジカルボン酸化合物(C)が、脂肪族ジカルボン酸化合物および/または脂環族ジカルボン酸化合物である。
【0021】
8:ジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)およびジカルボン酸化合物(C)の総量に対して、ポリアミド形成性モノマー(B)の割合が10〜95質量%である。
【0022】
9:ジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)およびジカルボン酸化合物(C)の総量に対して、ポリアミド形成性モノマー(B)の割合が15〜80質量%であり、ジアミン化合物(A)およびジカルボン酸化合物(C)の合計の割合が20〜85質量%である。
【0023】
10:式(3)のRが、炭素原子数が2〜20のアルキレン基を含む。
【0024】
11:式(4)のRの炭素原子数が2〜20のアルキレン基を含む。
【0025】
12:式(1)のxが2〜6の整数を、yは6〜12の整数を、およびzは1〜5の整数をそれぞれ表わす。
【0026】
13:式(1)のxが2〜10の整数を、yは13〜28の整数を、およびzは1〜9の整数をそれぞれ表わす。
【0027】
14:ジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)およびジカルボン酸化合物(C)の総量に対して、ジアミン化合物(A2)の割合が0.5〜10質量%である。
【0028】
15:炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミンが2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタンまたはこれらの混合物から選ばれるジアミンである。
【0029】
16:炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミンが5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミンまたはこれらの混合物から選ばれるジアミンである。
【0030】
17:ノルボルナンジアミンが2,5−ノルボルナンジメチルアミン、2,6−ノルボルナンジメチルアミンまたはこれらの混合物から選ばれるジアミンである。
【0031】
18:式(2)のmが1で、Rが炭素原子数1〜20のアルキレン基を表わす。
【0032】
19:ポリウレタン樹脂が、熱可塑性ポリウレタンである。
【0033】
20:熱可塑性ポリウレタンが、ソフトセグメントとしてポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールおよびポリカプロラクトンジオールからなる群より選ばれる1種類以上の単位を有する。
【0034】
21:前記X層が、可塑剤を含む。
【発明の効果】
【0035】
本発明の積層体において、X層およびY層は強固に接着し、そりの少ない積層体を実現する。したがって、この積層体は、スポーツシューズソール、スキーブーツなどに用いることができ、曲げ強さ、曲げ弾性率などの強靭性と耐屈曲疲労性、低温耐衝撃性、低温柔軟性などのゴム弾性とのバランスに優れ、低そり性に好適な材料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
<<X層>>
本発明のX層は、ポリアミド樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂と、ポリエーテルアミドエラストマー(X)とを含有する樹脂組成物層である。
【0037】
X層は、第1の熱可塑性樹脂とポリエーテルアミドエラストマー(X)との合計を基準として、第1の熱可塑性樹脂を95〜50質量%およびポリエーテルアミドエラストマー(X)を5〜50質量%含むことが好ましく、さらに第1の熱可塑性樹脂を90〜60質量%およびポリエーテルアミドエラストマー(X)を10〜40質量%含むことが好ましく、特に第1の熱可塑性樹脂を85〜70質量%およびポリエーテルアミドエラストマー(X)を15〜30質量%含むことが好ましい。
【0038】
<第1の熱可塑性樹脂>
第1の熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂を主成分とするものであり、質量基準で、通常ポリアミド樹脂を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%、最も好ましくは95%以上であり、実質的にポリアミド樹脂のみからなるものでもよい。ここで、ポリアミド樹脂以外の成分としては、例えばポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン、ABS樹脂などの相溶性のよい熱可塑性樹脂が挙げられる。また、第1の熱可塑性樹脂は、成形温度が好ましくは300℃以下、さらに好ましくは290℃以下、特に好ましくは280℃以下である。
【0039】
尚、X層は特性を損なわない範囲で、他の樹脂等を含有していてもよいが、これらが、ポリアミド樹脂と共に第1の熱可塑性樹脂の条件を満たすときは、第1の熱可塑性樹脂を構成する成分とみなすことができる。第1の熱可塑性樹脂を構成する成分とみなされない場合には、その他の成分として、X層中に好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下(0%でもよい)で含まれることができる。
【0040】
ポリアミド樹脂は、主鎖中に酸アミド結合(−CONH−)を有するものであり、脂肪族ポリアミド、脂環族ポリアミド、芳香族ポリアミド、およびそれらの組み合わせまたは組み合わせに相当する(共)重合体から選ばれる樹脂を少なくとも1種類含むポリアミド樹脂が挙げられる。ポリアミド樹脂を構成するモノマー単位は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0041】
ポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミドが好ましい。
【0042】
ポリアミド樹脂は、脂肪族、脂環族および/または芳香族としては、ラクタム、アミノカルボン酸、またはジアミンとジカルボン酸の組合せから誘導されるポリアミドが挙げられる。
【0043】
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ラウロラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどを、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンドデカン酸、12−アミノドデカン酸などを挙げることができる。
【0044】
ジアミンとジカルボン酸から誘導されるポリアミドの原料となるジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキシルジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3/1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミンなどの脂環式ジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0045】
ジアミンとジカルボン酸から誘導されるポリアミドの原料となるジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4/1,8/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0046】
ポリアミド樹脂として、これらのポリアミドを、それぞれ単独で用いることもできるし、また、2種類以上を混合して用いることもできる。さらに、2種類以上の組合せからなる共重合ポリアミドを用いることができる。
【0047】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリアミノウンデカン酸(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンジアミノアジピン酸(ナイロン−66)、ポリヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ナイロン−610)、ポリヘキサメチレンジアミノドデカン二酸(ナイロン−612)の如き重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ナイロン−6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/アミノドデカン二酸(ナイロン−6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン−6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ナイロン−6/66/610)、およびカプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカン二酸(ナイロン−6/66/612)などの(共)重合体などを挙げることができる。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0048】
ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12およびナイロン612から選ばれる少なくとも1種類の脂肪族ポリアミドが好ましく、特に好ましくはナイロン11およびナイロン12であり、最も好ましくはナイロン12である。
【0049】
<ポリエーテルアミドエラストマー(X)>
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)を少なくとも含むジアミン化合物(A)と、ポリアミド形成性モノマー(B)と、ジカルボン酸化合物(C)とを重合して得られる重合体である。
【0050】
【化5】

【0051】
ただし、xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、およびzは1〜20の整数をそれぞれ表わす。
【0052】
ジアミン化合物(A)は、好ましくはさらに炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミン、炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミンおよびノルボルナンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のジアミン化合物(A2)を含有する。
【0053】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の特に好ましい態様の1つは、式(1)で表されるXYX型トリブロックポリエーテルジアミン(A1)(Yはポリオキシブチレンである)、好ましくはジアミン(A1)に加えて炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミン、炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミン、ノルボルナンジアミンから選ばれる少なくとも1種類のジアミン化合物(A2)を含むジアミン化合物(A)、
式(3)で表されるアミノカルボン酸化合物(B1)および式(4)で表されるラクタム化合物(B2)から選ばれるポリアミド形成性モノマー(B)、および
式(2)で表されるジカルボン酸化合物(C)
を重合して得られるポリエーテルアミドエラストマー(X)である。
【0054】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、ジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)、およびジカルボン酸化合物(C)に含まれる末端のカルボン酸またはカルボキシル基と、末端のアミノ基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
【0055】
特に、ポリアミド形成性モノマー(B)の一方の末端がアミノ基で、他方の末端がカルボン酸またはカルボキシル基の場合、ジアミン化合物(A)のアミノ基とジカルボン酸化合物(C)のカルボキシル基がほぼ等モルになるような割合とするのが好ましい。
【0056】
式(1)で表されるXYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)としては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどの両末端にプロピレンオキシドを付加することによりポリプロピレングリコールとした後、このポリプロピレングリコールの末端にアンモニアなどを反応させることによって製造されるポリエーテルジアミンなどを用いることができる。
【0057】
XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)において、xおよびzは1〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、特に好ましいのは1〜12であり、yは4〜50、好ましくは5〜45、さらに好ましくは6〜40、より好ましくは7〜35、特に好ましいのは8〜30である。
【0058】
xおよびzが小さ過ぎる場合には、得られるエラストマーの特性のうち特に透明性が低下し、yが小さ過ぎる場合には、ゴム弾性が低下する。また、xおよびzが大き過ぎる場合または、yが大きすぎる場合、ポリアミド成分との相容性が低くなり強靭なエラストマーが得られにくい。従って上記の範囲から選ばれることが好ましい。
【0059】
XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)の具体例としては、米国HUNTSMBN社製XTJ−533(式(1)において、xがおよそ12、yがおよそ11、zがおよそ11)、XTJ−536(式(1)において、xがおよそ8.5、yがおよそ17、zがおよそ7.5)、XTJ−542(式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ9、zがおよそ2)、そしてXTJ−559(式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ14、zがおよそ2)などを用いることができる。
【0060】
また、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)として、XYX−1(式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ14、zがおよそ2)、XYX−2(式(1)において、xがおよそ5、yがおよそ14、zがおよそ2)、そしてXYX−3(式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ19、zがおよそ2)なども用いることができる。
【0061】
XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)の割合は、ジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)およびジカルボン酸化合物(C)の総量に対して、好ましくは2〜87質量%、特に好ましくは7〜78質量%である。XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)の割合が、上記範囲より少ない場合、屈曲疲労性などのエラストマーとしての特性が十分に発現されず、好ましくない場合がある。XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)の割合が、上記範囲より大きい場合、ポリアミド成分が少ないためにポリアミドに特徴的な優れた力学的な強度が発現されず、好ましくない場合がある。
【0062】
また、好ましい態様で使用されるジアミン化合物(A2)の炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミンとしては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンおよび2−メチル−1,8−ジアミノオクタンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、または2種類以上を適当な割合に混合して使用しても良い。
【0063】
好ましい態様で使用されるジアミン化合物(A2)の炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミンとしては、例えば、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(「イソホロンジアミン」ともいう)などが挙げられる。また、これらのジアミンはシス体およびトランス体のいずれであっても良く、あるいはこれら異性体の混合物であっても良い。さらにこれらのジアミンは単独で使用しても良く、または2種類以上を適当な割合に混合して使用しても良い。
【0064】
好ましい態様で使用されるジアミン化合物(A2)のノルボルナンジアミンとしては、例えば、2,5−ノルボナンジメチルアミン、2,6−ノルボナンジメチルアミンあるいはこれらの混合物などが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、または2種類を適当な割合に混合して使用しても良い
好ましい態様において、ジアミン化合物(A2)の割合は、ジアミン化合物(A)、ポリアミド形成性モノマー(B)およびジカルボン酸化合物(C)の総量に対して、好ましくは0.5〜10質量%さらに好ましくは1〜5質量%である。ジアミン化合物(A2)の割合が、上記範囲より少ない場合、透明性が十分に発現されず、好ましくない場合がある。ジアミン化合物(A2)の割合が、上記範囲より大きい場合、ポリアミド形成性モノマー由来の結晶性が低下して、十分な力学的強度が発現されず、好ましくない場合がある。
【0065】
また、ジアミン化合物(A)としては、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)およびジアミン化合物(A2)以外の他のジアミン化合物(A3)を含んでもよい。
【0066】
他のジアミン化合物(A3)としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタンメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどの脂環式ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられ、これらのジアミンは単独で使用しても良く、または2種類以上を適宜組合せて使用しても良い。
【0067】
次に、ポリアミド形成性モノマー(B)におけるアミノカルボン酸化合物(B1)およびラクタム化合物(B2)について説明する。
【0068】
アミノカルボン酸化合物(B1)において、Rは炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子2〜20を有するアルキレン基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子10〜15を有するアルキレン基を示す。
【0069】
ラクタム化合物(B2)において、Rは炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子3〜20を有するアルキレン基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖または炭素原子10〜15を有するアルキレン基を示す。
【0070】
アミノカルボン酸化合物(B1)としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などの炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸などを挙げることができる。
【0071】
ラクタム化合物(B2)としては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタム、2−ピロリドンなどの炭素数5〜20の脂肪族ラクタムなどを挙げることができる。
【0072】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)全成分に対するポリアミド形成性モノマー(B)の割合は、好ましくは10〜95質量%、さらに好ましくは15〜95質量%、より好ましくは15〜85質量%、特に好ましくは15〜80質量%が好ましい。ポリエーテルアミドエラストマー(X)の全成分に対するポリアミド形成性モノマー(B)の割合が、少なすぎる場合、ポリアミド成分の結晶性が低くなり、強度、弾性率などの機械的物性が低下する。ポリエーテルアミドエラストマー(X)の全成分に対するポリアミド形成性モノマー(B)の割合が、大きすぎる場合、ゴム弾性や柔軟性などのエラストマーとしての機能、性能が発現しにくくなる。
【0073】
特に、X層とY層とを積層した本発明の積層体を形成する場合において、ポリアミド形成性モノマー(B)の割合が、前記範囲内では特に、X層とY層との接着性に優れ、強度、弾性率、柔軟性などのエラストマーとしての機械的特性に優れるために好ましい。ポリアミド形成性モノマー(B)の割合が、前記範囲より少ない場合、X層とY層との接着強度が不十分となる場合があり、強度、弾性率などの機械的物性が低下し好ましくない場合がある。ポリアミド形成性モノマー(B)の割合が、前記範囲より多い場合、ゴム弾性や柔軟性などのエラストマーとしての機能、性能が発現しにくくなるために好ましくない場合がある。X層とY層との接着強度には、ポリエーテルアミドエラストマー(X)のアミド結合とポリウレタンのウレタン結合との間の分子間水素結合が影響していると推察できる。
【0074】
ジカルボン酸化合物(C)において、Rは炭素数1〜20の分子鎖、特に炭素原子1〜20を有するアルキレン基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜15の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子を1〜15有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜12の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子2〜12を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数4〜10の炭化水素の分子鎖、特に炭素原子4〜10を有するアルキレン基を示すものである。mは0または1を示す。
【0075】
ジカルボン酸化合物(C)としては、脂肪族、脂環式および芳香族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸またはこれらの誘導体を用いることができる。
【0076】
ジカルボン酸化合物(C)の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、または、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14〜48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)およびこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。ダイマー酸および水添ダイマー酸としては、「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」などを用いることができる。
【0077】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造方法として、一例を挙げると、ポリアミド形成性モノマー(B)、ジアミン化合物(A){XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)と必要によりジアミン化合物(A2)を含む。}、およびジカルボン酸化合物(C)の4成分を、加圧および/または常圧下で溶融重合し、必要に応じてさらに減圧下で溶融重合する工程からなる方法を用いることができる。なお、ポリアミド形成性モノマー(B)とジカルボン酸化合物(C)の2成分を先に重合させ、ついで、ジアミン化合物(A)を重合させる方法も利用できる。
【0078】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造に当たり、原料の仕込む方法に特に制限はないが、ポリアミド形成性モノマー(B)、ジアミン化合物(A)、およびジカルボン酸化合物(C)の仕込み割合は、全成分に対してポリアミド形成性モノマー(B)が好ましくは10〜95質量%、特に好ましくは15〜80質量%の範囲、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)は、好ましくは2〜87質量%、特に好ましくは7〜78質量%、好ましい形態で含有されるジアミン化合物(A2)は、好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。ジアミン化合物(A)とジカルボン酸化合物(C)は、ジアミン化合物(A)のアミノ基(その他のジアミン化合物を含有するときはそのアミノ基も含む)とジカルボン酸化合物(C)のカルボキシル基がほぼ等モルになるように仕込むことが好ましい。
【0079】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造は、重合温度が好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは160〜280℃、特に好ましくは170〜250℃で行うことができる。重合温度が上記温度より低い場合重合反応が遅く、上記温度より高い場合熱分解が起きやすく良好な物性のポリマーが得られない場合がある。
【0080】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、ポリアミド形成性モノマー(B)としてω−アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合または常圧溶融重合とそれに続く減圧溶融重合での工程からなる方法で製造することができる。
【0081】
一方、ポリアミド形成性モノマー(B)としてラクタムを用いる場合には、適量の水を共存させ、0.1〜5MPBの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合および/または減圧溶融重合からなる方法で製造することができる。
【0082】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、重合時間が通常0.5〜30時間で製造することができる。重合時間が上記範囲より短いと、分子量の上昇が十分でなく、長いと熱分解による着色などが起こり、いずれの場合も所望の物性を有するポリエーテルアミドエラストマー(X)が得られない場合がある。
【0083】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造は、回分式でも、連続式でも実施することができ、またバッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置などを単独であるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0084】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、相対粘度(ηr)1.2〜3.5(0.5質量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)の範囲にあることが好ましい。
【0085】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造において、必要に応じて分子量調節や成形加工時の溶融粘度安定のために、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどのモノアミン、或いはジアミン、酢酸、安息香酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのモノカルボン酸、或いはジカルボン酸などを添加することができる。これらの使用量は、最終的に得られるエラストマーの相対粘度(ηr)が1.2〜3.5(0.5質量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)の範囲になるように適宜添加することが好ましい。
【0086】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造において、上記モノアミンおよびジアミン、モノカルボン酸およびジカルボン酸などの添加量は、得られるポリエーテルアミドエラストマー(X)の特性が阻害されない範囲とするのが好ましい。
【0087】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造において、必要に応じて触媒として、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などを、また触媒と耐熱剤の両方の効果をねらって亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物を添加することができる。添加量は、通常、仕込み量に対して50〜3000ppmである。
【0088】
X層には、その特性が阻害されない範囲で、添加剤、例えば耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、香料、難燃剤、補強材などを添加することができる。
【0089】
さらに、X層中に、ポリエーテルアミドエラストマー(X)に加えて、公知のその他のポリアミド系エラストマーを含有させてもよい。その他のポリアミド系エラストマーとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12から選ばれる少なくとも1種類の脂肪族ナイロンからなるポリアミドブロックと、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンから選ばれる少なくとも1種類のポリエーテルブロックとから構成されるエラストマーなどが挙げられる。これらその他のポリアミド系エラストマーは、ポリエーテルアミドエラストマー(X)との合計量に対して、一般に30重量%以下、好ましくは10重量%以下(0重量%でもよい)の量である。
【0090】
<可塑剤>
X層に可塑剤を添加しても良い。可塑剤は、エステル類及びアルキルアミド類から選ばれた1種類以上の化合物である。本発明で言うエステル類とは、フタル酸エステル類、脂肪酸エステル類、多価アルコールエステル類、燐酸エステル類、トリメリット酸エステル類及びヒドロキシ安息香酸エステル類である。フタル酸エステル類の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジn−オクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソノニル、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、フタル酸ジウンデシル及びテトラヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0091】
脂肪酸エステル類の具体例としては、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジブチルジグリコール、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジn−オクチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジn−混合アルキルエステル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジ−2−エチルヘキシル混合酸エステル、ドデカ二酸ビス−2−エチルヘキシルなどの二塩基性飽和カルボン酸エステル、フマル酸ジブチル、フマル酸ビス−2−メチルプロピル、フマル酸ビス−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ビス−2−エチルヘキシルなどの二塩基性不飽和カルボン酸エステル、オレイン酸ブチル、オレイン酸イゾブチル、リシノール酸アセチルブチル、アセチルクエン酸トリブチル及び酢酸−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0092】
多価アルコールエステル類の具体例としては、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ2−エチルブチラート、ペンタエリスリトールモノオレエート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールトリアルキルエステル、ベヘニン酸モノグリセライド、2−エチルヘキシルトリグリセライド、グリセリントリアセテート及びグリセリントリブチラートなどが挙げられる。
【0093】
燐酸エステル類の具体例としては、燐酸トリメチル、燐酸トリエチル、燐酸トリブチル、燐酸トリ−2−エチルヘキシル、燐酸トリブトキシエチル、燐酸トリフェニル、燐酸n−オクチルジフェニル、燐酸クレジルジフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸トリキシレニル及び燐酸−2−エチルヘキシルジフェニルなどが挙げられる。
【0094】
トリメリット酸エステル類の具体例としては、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリn−オクチル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル及びトリメリット酸トリ混合アルコールエステルなどが挙げられる。
【0095】
ヒドロキシ安息香酸エステル類の具体例としては、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸−2−ヘキシルデシル(HDPB)、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸オクチルオクチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸デシルドデシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸メチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ブチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、o−又はp−ヒドロキシ安息香酸デシル及びo−又はp−ヒドロキシ安息香酸ドデシルなどが挙げられる。
【0096】
又、アルキルアミド類は、トルエンスルホン酸アルキルアミド類やベンゼンスルホン酸アルキルアミド類である。トルエンスルホン酸アルキルアミド類の具体例としては、N−エチル−o−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−o−トルエンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミドなどが挙げられる。ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類の具体例としては、ベンゼンスルホン酸プロピルアミド、N−ブチルベンゼンスルホン酸アミド(BBSA)、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミドなどが挙げられる。以上に挙げた可塑剤は単独で使用しても良く、2種類以上を適宜組合せて使用しても良い。
【0097】
これらの可塑剤の中で、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸エステル類、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシルなどのヒドロキシ安息香酸エステル類、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミドなどのアルキルアミド類が好ましく使用される。
【0098】
<<X層用樹脂組成物>>
X層を構成する樹脂組成物を得る方法は特に制限されるものではなく、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、第1の熱可塑性樹脂とポリエーテルアミドエラストマー(X)を、必要に応じて各種の添加剤の所定量と共に、V型ブレンダー、タンブラーなどの低速回転混合機やヘンシェルミキサーなどの高速回転混合機を用いてあらかじめ混合した後、一軸押出機、二軸押出機などで溶融混練後ペレット化する方法が挙げられる。このペレットは、積層体中のX層形成のための成形工程で使用される。また、第1の熱可塑性樹脂とポリエーテルアミドエラストマー(X)を、必要に応じて各種の添加剤の所定量と共に、低速回転混合機やヘンシェルミキサーなどの高速回転混合機を用いてあらかじめ混合した後、X層形成のための成形工程おいて直接X層を形成する方法が適用できる。
【0099】
X層用樹脂組成物は、溶融成形性に優れ、成形加工性に優れ、強靭性に優れ、耐衝撃性に優れ、耐加水分解性などに優れている。
【0100】
<<Y層および第2の熱可塑性樹脂>>
Y層は、ポリウレタン樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂により構成される。第2の熱可塑性樹脂は、質量基準で、通常ポリウレタン樹脂を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%、最も好ましくは95%以上含有する。実質的にポリウレタン樹脂のみからなるものでもよい。ここで、ポリウレタン樹脂以外の成分としては、熱可塑性ポリマー、エラストマー、ゴムなどが挙げられ、ポリウレタン樹脂とブレンドして用いることができる。
【0101】
尚、Y層は、特性を損なわない範囲で、ポリウレタンを除く他の樹脂等を含有してもよいが、これらポリウレタン樹脂と共に第2の熱可塑性樹脂を構成するときは、第2の熱可塑性樹脂を構成する成分とみなし、第2の熱可塑性樹脂を構成しない場合には、その他の成分として、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下(0%でもよい)で含まれる。
【0102】
ポリウレタン樹脂は、好ましくは熱可塑性ポリウレタンである。前述のX層用の樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタンとの積層体の形成に有利に用いることができ、スポーツシューズソール、スキーブーツなどで特に好適に使用される。特に、本発明は、熱可塑性ポリウレタンと直接積層する積層体の提供に有利である。
【0103】
ポリウレタン樹脂としては、ポリオールおよびジイソシアネートを反応させて得られたポリウレタン、鎖延長剤およびジイソシアネートを反応させて得られたポリウレタン、ポリオール、ジイソシアネートおよび鎖延長剤を反応させて得られたポリウレタンなどを用いることができる。特にポリウレタンとしては、熱可塑性のポリウレタンを用いることが好ましい。
【0104】
Y層において、ポリウレタンは、ポリエステルジオールおよび/またはポリエーテルジオールをソフトセグメントとする熱可塑性ポリウレタンを好ましく用いることができる。
【0105】
ポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどおよびポリエーテルポリオールなどが用いられる。縮合系ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸とジオールの1種または2種以上用いることにより得られるポリエステルジオールが好ましく用いられる。
【0106】
ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、またはこれらの低級アルキルエステルを挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらの中でもアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらの低級アルキルエステルが好ましい。
【0107】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオールを挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらの中でも、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの脂肪族ジオールを用いるのが好ましい。
【0108】
ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物を、短鎖のポリオール等のヒドロキシ化合物と共に反応させたものなどが挙げられる。
【0109】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、低分子ジオールとアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られる。ポリカーボネートジオールの製造原料である低分子ジオールとしては、ポリエステルジオールの製造原料として先に例示した低分子ジオールを用いることが出来る。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0110】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリンベースポリアルキレンエーテルグリコールなどが挙げられる。上記のほか、公知の各種のポリウレタン用ポリオールを使用することもできる。
【0111】
ポリウレタン用に使用するポリイソシアネートの種類は特に制限されず、従来よりポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリウレタンの製造に用いられているポリイソシアネートのいずれもが使用できる。
【0112】
ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂肪族または脂環式ジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−またはp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどを用いることができ、これらのうちポリイソシアネートの1種または2種以上を用いることができる。それらのうちでも4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0113】
ポリウレタンの製造に用いられる鎖延長剤の種類は特に制限されず、通常のポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖延長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子量化合物を用いるのが好ましい。
【0114】
鎖延長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアルコール類などが挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる、これらの中でも炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、1,4−ブタンジオールを用いるのが好ましい。
【0115】
鎖延長剤としては、多価アルコール、多価アミンなどを用いることができる。市販されている具体的な商品名としては、「パンデックス」(大日本インキ化学工業社製)、「クラミロン」(クラレ社製)、「ミラクトラン」(日本ミラクトラン社製)などが挙げられる。
【0116】
熱可塑性ポリウレタン(TPUなど)としては、BASFジャパン社製の商品名「エラストランET195」、「エラストランET690」、「エラストランET890」、大日本インキ化学工業社製商品名「パンデックスT−8190U」、日本ポリウレタン工業社製「ミラクトランE190」、「ミラクトランE390」、「ミラクトランE490」、「ミラクトランE590」、「ミラクトランE990」などを用いることができる。
【0117】
<<積層体>>
X層および/またはY層は、上述の樹脂を使用して射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー成形などの成形方法により得ることができる。
【0118】
積層体は(1)X層およびY層を含む各層を同時に成形する方法、(2)各層を成形して貼り合わせる方法、(3)層の上にさらに層を成形しながら積層する方法(タンデム法)などにより、またはこれらを組み合わせて得ることができる。
【0119】
積層体は、X層とY層を、1層または2層以上有する。各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層体における全体の層数、用途などに応じて調節し得る。また、積層体の層数は2層以上であるが、積層体における全体の層数は特に制限されず、いずれでもよい。積層体製造装置の機構から判断して7層以下、好ましくは2層〜5層である。
【0120】
さらに、層間の接着性を向上させる目的で、接着層を設けてもよい。また、熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、無延伸、一軸または二軸延伸プラスチックフィルムまたはシート、織布、不織布、金属綿状、木質等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルトなどの金属や金属化合物およびこれら2種類以上からなるステンレス鋼などの合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅などの剛合金、ニッケル合金等の合金類などが挙げられる。
【0121】
本発明の積層体の積層構成の例としては、X層/Y層、X層/Y層/X層、Y層/X層/Y層、X層/Y層/基材層、基材層/X層/Y層、X層/Y層/X層/基材層、Y層/X層/Y層/基材層、Y層/X層/接着層/基材層、X層/Y層/接着層/基材層、基材層/接着層/X層/Y層/X層/接着層/基材層、基材層/接着層/Y層/X層/Y層/接着層/基材層などを挙げることができる。基材層は、X層およびY層のポリマーを除く、他のポリマー材料から得られるフィルム、シート、膜および成形物など;天然・合成繊維、ガラス・セラミックスなどを原料とする無機繊維から得られる織物、編物、組み物および不織布など;ガラス、金属、セラミックス、塗膜、紙など;皮革などを用いることができる。
【0122】
接着層は、用いる場合には公知の各接着成分、接着性を有するシートやフィルムなどを用いることができ、本発明の特性を損なわないものを用いることが好ましい。
【0123】
本発明の積層体は、自動車部品、工業材料、産業資材、電気電子部品、機械部品、事務機器用部品、家庭用品、スポーツ用品、靴部品、容器、シート、フイルム、繊維、その他の任意の用途および形状の各種成形品として利用される。より具体的には、産業用チューブまたはホース、空圧チューブまたはホース、油圧チューブまたはホース、ペイントスプレーホースまたはチューブ、自動車配管用のチューブまたはホース等が挙げられる。中でも産業用ホースまたはチューブとして有用である。
【実施例】
【0124】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例、比較例および製造例において、ポリエーテルアミドエラストマー(X)およびその他のポリアミド系エラストマーを、まとめてポリアミド系エラストマーと言うこともある。
【0125】
物性値は次のようにして測定した。
【0126】
(1)相対粘度(ηr)(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃):
試薬特級品のm−クレゾールを溶媒として、5g/dmの濃度で、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
【0127】
<接着強度の測定方法>
剥離強度は、T剥離試験装置は、オリエンテック株式会社製、テンシロン2500を用い、引張速度50mm/分で行った。
【0128】
<製造例1:PAE1の製造>
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸11.231kg、アジピン酸1.089kg、XYX型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製XTJ−542、アミン価:1.94meq/g)7.680kg、次亜リン酸ナトリウム1水和物6g及び耐熱剤(吉富製薬製トミノックス917)60gを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを186リットル/時間で供給しながら、容器内の圧力を0.05MPaに調整しながら3.5時間かけて室温から230℃まで昇温し、さらに容器内の圧力を0.05MPaに調整しながら230℃で4時間重合を行い、重合体を得た。重合終了後、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明の重合体を紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約15kgのペレットを得た。得られたペレットは無色半透明強靭でゴム弾性に富む重合体であり、ηr=1.98であった。
【0129】
<製造例2:PAE2の製造>
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸10.725kg、アジピン酸1.390kg、XYX型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製XTJ−542、アミン価:1.94meq/g)7.505kg、イソホロンジアミン(Degussa社製 商品名:VESTAMIN IPD)0.380kg、次亜リン酸ナトリウム1水和物6g及び耐熱剤(吉富製薬製トミノックス917)60gを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを186リットル/時間で供給しながら、容器内の圧力を0.05MPaに調整しながら3.5時間かけて室温から230℃まで昇温し、さらに容器内の圧力を0.05MPaに調整しながら230℃で4時間重合を行い、重合体を得た。重合終了後、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明の重合体を紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約15kgのペレットを得た。得られたペレットは無色半透明強靭でゴム弾性に富む重合体であり、ηr=1.99であった。
【0130】
<製造例3:PAE3の製造>
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸7.985kg、アジピン酸1.115kg、XYX型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製XTJ−559、アミン価:1.40meq/g)10.900kg、次亜リン酸ナトリウム1水和物6g及び耐熱剤(吉富製薬製トミノックス917)60gを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを186リットル/時間で供給しながら、容器内の圧力を0.05MPaに調整しながら3.5時間かけて室温から230℃まで昇温し、さらに容器内の圧力を0.05MPaに調整しながら230℃で4時間重合を行い、重合体を得た。重合終了後、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明の重合体を紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約15kgのペレットを得た。得られたペレットは無色半透明強靭でゴム弾性に富む重合体であり、ηr=1.98であった。
【0131】
<製造例4:PAE4の製造>
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)12.897kg及びアジピン酸0.906kg(試薬特級)を仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
【0132】
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1000)6.197kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
【0133】
得られたポリマーはポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、ηr=2.01であった。
【0134】
<実施例1>
宇部興産(株)製 ナイロン12(商品名:3020U)100質量部及びポリアミド系エラストマー(製造例1:PAE1)11.1質量部を溶融混練してポリアミド樹脂成形用材料を調製した。
【0135】
一方、エーテル系TPU(熱可塑性ポリウレタン)として、BASFジャパン(株)製、商品名:エラストランET890、エステル系TPUとして、BASFジャパン(株)製、商品名:エラストランET690を用いた。
【0136】
上記ポリアミドおよびTPUを用い、下記の方法に従ってポリアミド成形体とTPU成形体とが熱溶着してなる、幅25mm、長さ120mm、厚み3.5mmの試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0137】
<積層体の作製>
(1)ポリアミドシートの作製
上記で重合したPAのペレット約25gをスペーサー(120mm×120mm、厚み1.5mm)にセットした。次に、上記スペーサー、金属プレート及びテフロンシートを、金属プレート/テフロン(登録商標、以下同じ)シート/スペーサー/テフロンシート/金属プレートの層構成となるようにセットし、これをプレス成形機にセットし、加圧なしで2分間、190℃で予熱した後、10kg/cmで2分間、190℃で加圧プレスした後に取り出し、2分間冷却し成形した。
【0138】
(2)TPU(熱可塑性ポリウレタン)シートの作製
TPUのペレット約45gをスペーサー(120mm×120mm、厚み2mm)にセットした。次に、上記スペーサー、金属プレート及びテフロンシートを、金属プレート/テフロンシート/スペーサー/テフロンシート/金属プレートの層構成となるようにセットし、これをプレス成形機にセットし、加圧なしで2分間、190℃で予熱した後、10kg/cmで2分間、190℃で加圧プレスした後に取り出し、2分間冷却し成形した。
【0139】
(3)積層体シートの作製
上記(1)、(2)で作製したポリアミドシート及びTPUシートを2層に重ねて、120mm×120mm及び厚み3.5mmのスペーサーにセットした。
【0140】
次に、上記スペーサー、金属プレート層及びテフロンシートを、層構成が金属プレート/テフロンシート/スペーサー/テフロンシート/金属プレートとなるようにセットし、これをプレス成形機にセットした。次に加圧なしで1分間、210℃で予熱した後、10kg/cmで1分間、210℃で加圧プレスした後に取り出し、2分間冷却して成形した。上記サンプルを25mm幅で切り出し、試験用サンプルとしてT剥離試験に使用した。
【0141】
<比較例1>
PAE1を添加しない以外は、実施例1と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0142】
<実施例2>
実施例1におけるポリアミド樹脂成形用材料の調製において、PAE1の代わりに、PAE2を用いた以外は、実施例1と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0143】
<実施例3>
実施例1におけるポリアミド樹脂成形用材料の調製において、PAE1の代わりに、PAE3を用いた以外は、実施例1と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0144】
<比較例2>
実施例1におけるポリアミド樹脂成形用材料の調製において、PAE1の代わりに、PAE4を用いた以外は、実施例1と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0145】
<実施例4>
宇部興産(株)製 ナイロン12(商品名:3020U)100質量部、p−ヒドロキシ安息香酸2−ヘキシルデシル(以下「HDPB」という)20.0質量部及び、ポリアミド系エラストマー(製造例1:PAE1)13.3質量部を溶融混練してポリアミド樹脂成形用材料を調製した以外は、実施例1と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0146】
<実施例5>
実施例3におけるポリアミド樹脂成形用材料の調製において、HDPBの代わりに、N−ブチルベンゼンスルホン酸アミド(以下「BBSA」という)を用いた以外は、実施例3と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0147】
<比較例3>
PAE1を添加しない以外は、実施例4と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0148】
<比較例4>
PAE1を添加しない以外は、実施例5と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0149】
<実施例6>
実施例1におけるポリアミド樹脂成形用材料の調製において、3030Uの代わりに、宇部興産(株)製 ナイロン6(商品名:1024B)を用いた以外は、実施例1と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0150】
<比較例5>
PAE1を添加しない以外は、実施例6と同様にして試験用積層体を作製し、接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0151】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂を主成分とする第1の熱可塑性樹脂と、ポリエーテルアミドエラストマー(X)とを含むX層と、
ポリウレタン樹脂を主成分とする第2の熱可塑性樹脂を含むY層とが積層された構造を備え、
前記ポリエーテルアミドエラストマー(X)が、
下記式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)を含むジアミン化合物(A)と、
ポリアミド形成性モノマー(B)と、
ジカルボン酸化合物(C)と
を含む成分を重合して得られる重合体であることを特徴とする積層体。
【化1】


(ただし、xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、およびzは1〜20の整数をそれぞれ表わす。)
【請求項2】
前記ジアミン化合物(A)が、炭素数6〜22の分岐型飽和ジアミン、炭素数6〜16の分岐脂環式ジアミンおよびノルボルナンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のジアミン化合物(A2)をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記X層が、第1の熱可塑性樹脂を95〜50質量%、前記ポリエーテルアミドエラストマー(X)を5〜50質量%の割合で含むことを特徴とする請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
前記ジカルボン酸化合物(C)が、下記式(2)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【化2】

(ただし、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0または1を表す。)
【請求項5】
前記ポリアミド形成性モノマー(B)が、下記式(3)で表されるアミノカルボン酸化合物(B1)および下記式(4)で表されるラクタム化合物(B2)の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【化3】


(ただし、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表わす。)
【化4】

(ただし、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表わす。)
【請求項6】
前記ジカルボン酸化合物(C)が、脂肪族ジカルボン酸化合物および脂環族ジカルボン酸化合物の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記X層が、可塑剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記ポリウレタン樹脂が、熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする請求項7記載の積層体。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリウレタンが、ソフトセグメントとしてポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールおよびポリカプロラクトンジオールからなる群より選ばれる1種類以上の単位を有する請求項8記載の積層体。

【公開番号】特開2009−234196(P2009−234196A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86380(P2008−86380)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所 株式会社 工業調査会 刊行物名 プラスチックス 第59巻 第1号 発行年月日 平成20年1月1日発行
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】