説明

積層成型用ポリエステルフィルム

【課題】成型性に優れ、かつ、耐擦り傷性に優れるハードコート層を設けた積層成型用フィルムを提供する。
【解決手段】共重合ポリエステルを含む二軸配向ポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面にハードコート層を設けた積層成型用ポリエステルフィルムであって、(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、いずれも25℃において40〜300MPa及び100℃において1〜100MPa、(2)前記ハードコート層が、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート単量体化合物と、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体化合物とを含むコーティング剤で形成されたものであり、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体化合物の割合が固形分総量に対して30〜90質量%である、積層成型用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型性に優れ、かつ、耐擦り傷性に優れるハードコート層を設けた積層成型用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成型用シートとしては、ポリ塩化ビニルフィルムが代表的であり、加工性などの点で好ましく使用されてきた。一方、該フィルムは火災などによりフィルムが燃焼した際の有毒ガス発生の問題、可塑剤のブリードアウトなどの問題があり、近年の耐環境性のニーズにより、環境負荷が小さい新しい素材が求められてきている。
【0003】
上記要求を満足させるために、非塩素系素材としてポリエステル、ポリカーボネート及びアクリル系樹脂よるなる未延伸シートが広い分野において使用されてきている。特に、ポリエステル樹脂よりなる未延伸シートは、機械的特性、透明性が良く、かつ経済性に優れており注目されている。例えば、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の約30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した、実質的に非結晶のポリエステル系樹脂を構成成分とする未延伸ポリエステル系シートが開示されている(例えば、特許文献1〜5を参照)。
【0004】
上記の未延伸ポリエステルシートは、成型性やラミネート適性に関しては市場要求を満足するものではあるが、未延伸シートであるため、耐熱性や耐溶剤性が充分ではなく市場の高度な要求を満足させるまでには至っていない。
【0005】
上記の課題を解決する方法として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献6〜9を参照)。
【0006】
しかしながら、上記方法は、耐熱性や耐溶剤性は改善されるものの、成型性が不十分となり、総合的な品質のバランスの点で、市場要求を満足させるものではなかった。
【0007】
上記課題を解決する方法として、フィルムの100%伸張時応力を特定化する方法が開示されている(例えば、特許文献10、11を参照)
【0008】
該方法は前記の方法に比べ、成型性は改善されているものの、成型性に関する市場の高度な要求に十分に答えられるレベルには達していない。特に、成型温度の低温化に適合できる成型性や得られた成型品の仕上がり性に課題が残されていた。
【0009】
本発明者らは、上記の課題解決について検討をし、すでに、特定した組成の共重合ポリエステル樹脂を原料とし、かつフィルムの100%伸張時応力を特定化することにより上記課題を改善する方法を提案している(例えば、特許文献11を参照)。
【0010】
この方法により、成型時の成型圧力の高い金型成型法においては、市場要求を満たす、成型温度の低温化に適合可能な成型性や得られた成型品の仕上がり性を大幅に改善することができる。しかしながら、市場要求が近年強くなっている圧空成型法や真空成型法等の成型時の成型圧力が低い成型方法の場合、成型品の仕上がり性をさらに改善することが要望されている。
【0011】
また、成型時の成型圧力が低い成型方法である圧空成型法や真空成型法に適用できる成型用ポリエステルフィルムとして、共重合ポリエステルを含む二軸延伸ポリエステルフィルムからなり、フィルムの25℃と100℃における100%伸張時応力、100℃と180℃における貯蔵弾性率(E’)、175℃における熱変形率を特定範囲とする成型用ポリエステルフィルムを本発明者らは提案した(例えば、特許文献13を参照)。しかしながら、このフィルムを連続的に製造し、ロール状に巻取った後、フィルムを巻き出して後加工する場合に、ブロッキングや破れが発生しやすいことがわかった。そのため、フィルムに金属や金属酸化物を蒸着またはスパッタリングする場合や印刷を行うなどの後加工時に、生産性や品質の安定性をさらに高めることが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−156267号公報
【特許文献2】特開2001−71669号公報
【特許文献3】特開2001−80251号公報
【特許文献4】特開2001−129951号公報
【特許文献5】特開2002−249652号公報
【特許文献6】特開平9−187903号公報
【特許文献7】特開平10−296937号公報
【特許文献8】特開平11−10816号公報
【特許文献9】特開平11−268215号公報
【特許文献10】特開平2−204020号公報
【特許文献11】特開2001−347565号公報
【特許文献12】特開平2004−075713号公報
【特許文献13】特開2005−290354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、成型性に優れ、かつ、耐擦り傷性に優れたハードコート層を設けた積層成型用フィルムを提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、前記の従来の問題点を解決するものであり、低い温度及び低い圧力下での成型性、透明性、耐溶剤性、耐熱性に優れ、かつロール状に巻取った長尺のフィルムを巻き出す際にブロッキングやフィルムの破れが発生せず、さらに環境負荷が小さい、各種携帯機器の筺体ないしその部材、家電や自動車の銘板用部材または建材用部材として好適な成型用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決することができる本発明の成型用ポリエステルフィルムは、以下の構成からなる。
【0016】
本発明における第1の発明は、共重合ポリエステルを含む二軸配向ポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面にハードコート層を設けた積層成型用ポリエステルフィルムであって、
(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、いずれも25℃において40〜300MPa及び100℃において1〜100MPa、
(2)前記ハードコート層が、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート単量体化合物と、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体化合物とを含むコーティング剤で形成されたものであり、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体化合物の割合が固形分総量に対して30〜90質量%である、積層成型用ポリエステルフィルムである。
本発明における第2の発明は、共重合ポリエステルが、(a)芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステル、あるいは(b)テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルであることを特徴とする前記積層成型用ポリエステルフィルムである。
本発明における第3の発明は、前記基材フィルムの面配向度が0.001以上0.095以下であることを特徴とする前記積層成型用ポリエステルフィルムである。
本発明における第4の発明は、二軸配向ポリエステルフィルムの融点が200〜245℃であることを特徴とする前記積層成型用ポリエステルフィルムである。
本発明における第5の発明は、前記積層成型用ポリエステルフィルムを真空成型、圧空成型及び金型成型いずれかの方法で成型したポリエステル成型品である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層成型用ポリエステルフィルムは、硬度ならびに硬化性はもちろん、耐擦り傷性と可撓性に優れる。
【0018】
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、低い温度や低い圧力下での加熱成型時の成型性に優れているので幅広い成型方法に適用でき、かつ成型品として常温雰囲気下で使用する際に、弾性及び形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性、耐熱性、さらに環境負荷が小さい。また、後加工時にロール状に巻き取った長尺のフィルムを巻き出す際に、ブロッキングや破れが起こりにくいため、生産性に優れている。さらに、平滑性と透明性が高度に優れているので、後加工時に蒸着層、スパッタリング層、または印刷層を設けた際の意匠性に優れる。そのため、各種携帯機器の筐体ないしその部材、家電や自動車の銘板用部材または建材用部材として好適である。
【0019】
また、フィルム中に紫外線吸収剤を含有させ、紫外領域の透過率を低減させることにより、耐光性を付与することができ、特に屋外で使用される用途(自動車の外装用または建材用部材)の成型材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の成型性ポリエステルフィルムで規定した物性の技術的意義について説明する。次いで、本発明の成型性ポリエステルフィルムを製造するための方法について説明する。
【0021】
(本発明に記載の物性の技術的意味と意義)
本発明において、100%伸長時の応力(F100)とは、フィルムの成型性と密接な関連がある尺度である。F100がフィルムの成型性と密接な関連を持つ理由として、例えば、真空成形法を用いて二軸配向ポリエステルフィルムを成型する際、金型のコーナー付近では、フィルムは局部的に100%以上に伸長する場合がある。F100が高いフィルムでは、このような局所的に伸長された部分において、部分的に極めて高い応力が発生し、この応力集中によりフィルムが破断し、成形性が低下すると考えられる。一方、F100が小さすぎるフィルムでは、成形性は良好となるものの、金型の平面部のような均一に伸長される部分において、極めて弱い張力しか発生せず、その結果、該部分におけるフィルムの均一な伸長が得られないのではないかと考えられる。
【0022】
本発明では、成型時の温度に対応する成型性と関連のある物性として、100℃における100%伸長時応力(F100100)を用いている。また、凹凸や窪みのある金型を用いて成型する際に、成型前のフィルムを事前にそれらの型に軽く追随させて成型する際の成型性と関連のある物性として、25℃における100%伸長時応力(F10025)を用いている。
【0023】
本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における25℃での100%伸張時応力(F10025)がいずれも30〜300MPaである。
【0024】
フィルムの長手方向及び幅方向におけるF10025は40〜300MPaであり、下限値は、好ましくは50MPa、より好ましくは60MPaである。また上限値は、好ましくは250MPa、より好ましくは200MPa、さらに好ましくは180MPaである。F10025が40MPa未満の場合、ロール状のフィルムを引っ張って巻きだすときに、フィルムが伸びたり破れたりするため作業性が不良となる。一方、F10025が300MPaを超える場合、成型性が不良になる。特に、凹凸や窪みのある金型を用いて成型する場合に、成型前のフィルムを事前にそれらの型に軽く追随させて成型することがある。そのような場合に、フィルムの型がつきにくくなり、完成品の意匠性が不良となることがある。
【0025】
また、本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における100℃での100%伸張時応力(F100100)が、いずれも1〜100MPaであることが重要である。
【0026】
フィルムの長手方向及び幅方向におけるF100100の上限は、成型性の点から、90MPaが好ましく、80MPaがより好ましく、70MPaが特に好ましい。一方、F100100の下限は、成型品を使用する際の弾性や形態安定性の点から、5MPaが好ましく、10MPaがより好ましく、20MPaが特に好ましい。
【0027】
本発明のフィルムにおいて、150℃における長手方向及び幅方向の熱収縮率は0.01〜5.0%であることが好ましい。150℃における熱収縮率の下限値は、0.1%が好ましく、より好ましくは0.5%である。一方、150℃における熱収縮率の上限値は、4.5%が好ましくは、より好ましくは4.1%、さらに好ましくは3.2%である。150℃における長手方向及び幅方向のフィルムの熱収縮率が0.01%未満の成型用二軸延伸ポリエステルフィルムを製造しても、実用上の効果に顕著な差が見られず、生産性が非常に低下するため、150℃での熱収縮率を0.01%未満とする必然性はない。一方、150℃における長手方向及び幅方向のフィルムの熱収縮率が5.0%を超えると、蒸着、スパッタリングまたは印刷などの熱のかかる後処理工程において、フィルムが変形しやすくなり、後加工後のフィルムの外観や意匠性が不良となる。
【0028】
また、本発明において、フィルムのヘーズは0.1〜3.0%であることが好ましい。ヘーズの下限値は0.3%が好ましく、より好ましくは0.5%である。一方、ヘーズの上限値は2.5%が好ましく、より好ましくは2.0%である。ヘーズが0.1%未満のフィルムはすべり性が悪いため通常の生産性で工業規模で生産することは困難である。一方、フィルムのヘーズが3.0%を超える場合、金属などの蒸着やスパッタリング面、または印刷面をフィルムの裏面から見た場合、金属や印刷面がくすんで見えるため、意匠性が乏しくなる。なお、フィルム中のハンドリング性の改良のために一般的に行われる、粒子をフィルム中に含有させてフィルム表面に凹凸を形成する方法では、ヘーズが2.0%以下のフィルムを得ることは難しい。
【0029】
本発明において、少なくとも片面のフィルムの表面粗さ(Ra)は、0.005〜0.030μmであることが好ましい。Raの下限値は0.006μmが好ましく、より好ましくは0.007μmである。一方、Raの上限値は0.025μmが好ましく、より好ましくは0.015μmである。少なくとも片面のフィルムのRaが小さくなるにつれ、フィルムを巻取ることが困難となり、また、一旦ロール状に巻き取ったフィルムを巻き出す際に、ブロッキングやフィルムの破れが発生する頻度が増加する。また、Raが0.03μmを超えると、蒸着、スパッタリングまたは印刷などの後加工工程で突起が欠点となり、意匠性が低下する。
【0030】
本発明において、フィルムの面配向度(ΔP)も成型性と関連のある物性であり、面配向度が高いほど分子鎖が面方向に配列し、成型性が低下する。本発明では、フィルムの面配向度は0.095以下であることが好ましい。面配向度の上限は0.090が好ましい。また、面配向度が小さいほど成型性は良くなるが、フィルムの強度が低下し、厚み斑などの平面性が悪化しやすくなる。したがって、面配向度の下限は0.001とすることが好ましく、0.01がより好ましく、0.04が特に好ましい。
【0031】
(本発明の着想点)
本願は、従来技術に記載した特許文献12の改良発明である。
本発明のように共重合成分を5〜50モル%含む共重合ポリエステルを原料として用いて得たポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどに比較して結晶化速度が遅く、また結晶性が低い。また、面配向度と150℃の熱収縮率を小さくするために、特許文献12に記載した、通常よりも高温で熱処理するという方法を用いた場合、延伸終了後に急激に高温で熱処理をするため、熱処理ゾーンにおいて結晶性の低い材料を構成する分子の運動性が高くなる。よって、延伸工程において粒子(二軸配向フィルム中の粒子あるいはコーティング層中の粒子)が隆起することにより形成された表面突起が、熱処理ゾーンにおいて再び埋没してしまうために、十分な表面粗さを得ることができない。それゆえ、フィルムをきれいに巻き取り、かつロール状に巻き取ったフィルムを巻き出す際のブロッキングや破れを抑制するために、粒子の添加量を必要以上に増やすと、ヘーズが悪化するという問題がある。
【0032】
本発明において、熱処理ゾーンを2段(以上)にし、一段目の熱処理温度TS1と2段目の熱処理温度TS2を特定範囲に制御するという好適な方法を用いることで、上記の問題点を解決したのである。このメカニズムは以下のように考えている。
【0033】
第1段目の熱処理ゾーンにおいて、粒子がフィルム内部に埋没する前に、ある程度フィルムの結晶化を促進させておいて、さらに2段目の熱処理ゾーンにおいて十分に温度を上げても、分子の運動性は十分に低下しており、表面の突起を形成したまま、さらに結晶性を促進させ、熱収縮率の低いフィルムが得られる。また、透明性の点から、必要以上に粒子を含有させる必要がなくなる。
【0034】
(フィルムの好適な製造方法)
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、原料として共重合ポリエステルを用いる。共重合ポリエステルとしては、(a)芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステル、あるいは(b)テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルが好適である。また、二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、さらにグリコール成分として1,3−プロパンジオール単位または1,4−ブタンジオール単位を含むことが成型性をさらに向上させる点から好ましい。
【0035】
本発明において、フィルム原料としては、共重合ポリエステル単独、1種類以上のホモポリエステルまたは共重合ポリエステルのブレンド、またはホモポリエステルと共重合ポリエステルの組合せのいずれの方法も可能である。これらの中でも、ブレンド法が融点の低下を抑制する点から好適である。
【0036】
前記の共重合ポリエステルとして、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルを用いる場合、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体が好適であり、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
【0037】
また、分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
【0038】
これらのなかでも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。さらに、本発明においては、上記のグリコール成分に加えて1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールを共重合成分とすることが、より好ましい実施態様である。これらのグリコールを共重合成分として使用することは、前記の特性を付与するために好適であり、さらに、透明性や耐熱性にも優れ、密着性改質層との密着性を向上させる点からも好ましい。
【0039】
また、前記の共重合ポリエステルとして、テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルを用いる場合、エチレングリコールの量は全グリコール成分に対し70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。エチレングリコール以外のグリコール成分としては、前記の分岐状脂肪族グリコールや脂環族グリコール、またはジエチレングリコールが好適である。
【0040】
前記共重合ポリエステルを製造する際に用いる触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
【0041】
前記共重合ポリエステルを製造する際に、熱安定剤としてリン化合物を添加することが好ましい。前記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸などが好ましい。
【0042】
前記共重合ポリエステルは、成型性、密着性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が0.50dl/g未満では、成型性が低下する傾向がある。また、メルトラインに異物除去のためのフィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性の点から、固有粘度の上限を1.0dl/gとすることが好ましい。
【0043】
本発明では、フィルム原料として、1種類以上のホモポリエステルまたは共重合ポリエステルを用い、これらをブレンドしてフィルムを製膜することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の柔軟性を維持しながら透明性と高い融点(耐熱性)を実現することができる。また、高融点のホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)のみを用いた場合に対し、高い透明性を維持しながら柔軟性と実用上問題のない融点(耐熱性)を実現することができる。
【0044】
また、前記共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート)を少なくとも1種以上ブレンドして、本発明の成型用ポリエステルフィルムの原料として使用することは、成型性の点からもさらに好ましい。
【0045】
前記のポリエステルフィルムの融点は、耐熱性及び成型性の点から、200〜245℃であることが好ましい。使用するポリマーの種類や組成、さらに製膜条件を前記融点の範囲内に制御することにより、成型性と仕上がり性とのバランスが取れ、高品位の成型品を経済的に生産することができる。ここで、融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。該融点は、示差走査熱量分析装置(マックサイエンス社製、DSC3100S)を用いて、昇温速度20℃/分で測定して求めた。融点の下限値は、210℃がさらに好ましく、特に好ましくは230℃である。融点が200℃未満であると、耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、成型時や成型品の使用時に高温にさらされた際に、問題となる場合がある。
【0046】
また、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、波長370nmにおける光線透過率が50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。成型用ポリエステルフィルムの波長370nmにおける光線透過率を50%以下に制御することにより、特に、該フィルムに印刷を施した場合に印刷層の耐光性が向上する。
【0047】
上記の波長370nmにおける光線透過率を50%以下に制御する方法として、成型用ポリエステルフィルムの構成層のいずれかに紫外線吸収剤を配合する方法を用いる。紫外線吸収剤としては、前記の特性を付与できるものであれば、無機系、有機系のどちらでも構わない。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられる。耐熱性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
【0048】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0049】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、 2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、及び2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、 2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、及び6,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
【0050】
上記の有機系紫外線吸収剤をフィルムに配合する場合は、押し出し工程で高温に晒されるので、紫外線吸収剤は分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤を用いるのが製膜時の工程汚染を少なくする上で好ましい。分解開始温度が290℃以下の紫外線吸収剤を用いると製膜中に紫外線吸収剤の分解物が製造装置のロール群等に付着し、強いてはフィルムに再付着したり、キズを付けたりして光学的な欠点となるため好ましくない。
【0051】
無機系紫外線吸収剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の超微粒子類が挙げられる。
【0052】
前記融点の上限値は、耐熱性の点からは高いほうが良いが、ポリエチレンテレフタレート単位を主体とした場合、融点が250℃を超えるフィルムでは、成型性が悪化する傾向がある。また、透明性も悪化する傾向がある。さらに、高度な成型性や透明性を得るためには、融点の上限を245℃に制御することが好ましい。
【0053】
また、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性を改善するために、フィルム表面に凹凸を形成させることが好ましい。フィルム表面に凹凸を形成させる方法としては、一般にフィルム中に粒子を含有させる方法が用いられる。
【0054】
前記粒子としては、平均粒子径が0.01〜10μmの内部析出粒子、無機粒子及び/又は有機粒子などの外部粒子が挙げられる。平均粒子径が10μmを越える粒子を使用すると、フィルムの欠陥が生じ易くなり、意匠性や透明性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。前記粒子の平均粒子径は、滑り性や巻き取り性などのハンドリング性の点から、下限は0.10μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは0.50μmである。一方、前記粒子の平均粒子径は、透明性や粗大突起によるフィルム欠点の低減の点から、上限は5μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは2μmである。
【0055】
なお、粒子の平均粒子径は、少なくとも200個以上の粒子を電子顕微鏡法により複数枚写真撮影し、OHPフィルムに粒子の輪郭をトレースし、該トレース像を画像解析装置にて円相当径に換算して算出する。
【0056】
前記外部粒子としては、例えば、湿式及び乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を使用することができる。なかでも、乾式、湿式及び乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等が、好ましく使用される。これらの内部粒子、無機粒子及び/又は有機粒子は二種以上を、本願発明で規定した特性を損ねない範囲内で併用してもよい。
【0057】
さらに、前記粒子のフィルム中での含有量は0.001〜10質量%の範囲であることが好ましい。0.001質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、10質量%を越えると、粗大突起の形成、製膜性や透明性の悪化などの原因となりやすい。
【0058】
また、フィルム中に含有させる粒子は、一般的には屈折率がポリエステルと異なるため、フィルムの透明性を低下させる要因となる。
成型品は意匠性を高めるために、フィルムを成型する前にフィルム表面に印刷が施される場合が多い。このような印刷層は、成型用フィルムの裏側に施されることが多いため、印刷鮮明性の点から、フィルムの透明性が高いことが要望されている。
【0059】
そのため、フィルムのハンドリング性を維持しながら、高度な透明性を得るために、主層の基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず、厚みが0.01〜5μmの表面層にのみ粒子を含有させた積層構造を有する積層フィルムを用いることが有効である。表面層の厚みの上限は3μmが好ましく、特に好ましくは1μmである。この場合、粒子は上記で例示したものを用いることができる。
【0060】
本発明において、フィルムのヘーズを0.1〜3.0%とするためには、上記の基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず、厚みが0.01〜5μmの表面層を形成して表面層にのみ粒子を含有させた積層構造とすることが好ましい。なお、ハンドリング性を維持しながら、フィルム中に粒子を含有させることのみで、ヘーズが2.0%以下となるフィルムを得ることは難しい。
【0061】
なお、上記でいう「基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に検出限界以下となる含有量を意味する。これは意識的に粒子を基材フィルムに添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
ヘーズが低く意匠性の高いフィルムを得るには、基材フィルム中に実質的に粒子を含有させないことが好ましいが、30ppm以下であれば基材フィルム中に粒子を添加しても構わない。
【0062】
厚みの薄い表面層の形成は、コーティング法または共押出し法によって行うことができる。なかでも、コーティング法の場合、粒子を含有する密着性改質樹脂からなる組成物を塗布層として用いることで、印刷層との密着性も改良することができるので好ましい方法である。前記の密着性改質樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系重合体及び/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂が好ましい。
【0063】
前記表面層に含有させる粒子としては、前記で記載した粒子と同様のものを使用することができる。粒子のなかでも、シリカ粒子、ガラスフィラー、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子は屈折率がポリエステルに比較的近いため、透明性の点から特に好適である。
【0064】
さらに、前記表面層における粒子含有量は、0.01〜25質量%の範囲であることが好ましい。0.01質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、25質量%を越えると、透明性や塗布性が悪化しやすくなる。
【0065】
本発明のポリエステルフィルムは、他の機能を付与するために、種類の異なるポリエステルを用い、公知の方法で積層構造とすることができる。かかる積層フィルムの形態は、特に限定されないが、例えば、A/Bの2種2層構成、B/A/B構成の2種3層構成、C/A/Bの3種3層構成の積層形態が挙げられる
【0066】
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、二軸延伸フィルムであることが重要である。本発明においては、二軸延伸による分子配向により、前記のフィルムの微小張力(初期荷重49mN)下での熱変形率を本発明の範囲内に制御することができ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や寸法安定性が改善される。すなわち、未延伸シートの成型性の良さを維持しつつ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や耐熱性を改善したことが本発明の特徴の一つである。
【0067】
前記二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えばポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シート(原反)を得た後、かかる未延伸シートを二軸延伸する方法が例示される。
【0068】
二軸延伸方法としては、未延伸シートをフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸、熱処理し、目的とする面内配向度を有する二軸延伸フィルムを得る方法が採用される。これらの方式の中でも、フィルム品質の点で、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸するMD/TD法、又は幅方向に延伸した後、長手方向に延伸するTD/MD法などの逐次二軸延伸方式、長手方向及び幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。また、同時二軸延伸法の場合、リニアモーターで駆動するテンターを用いてもよい。さらに、必要に応じて、同一方向の延伸を多段階に分けて行う多段延伸法を用いても構わない。
【0069】
二軸延伸する際のフィルム延伸倍率としては、長手方向と幅方向に1.6〜4.2倍とすることが好ましく、特に好ましくは1.7〜4.0倍である。この場合、長手方向と幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよいし、同一倍率としてもよい。長手方向の延伸倍率は2.8〜4.0倍、幅方向の延伸倍率は3.0〜4.5倍で行うことがより好ましい。
【0070】
本発明の成型用ポリエステルフィルムを製造する際の延伸条件としては、例えば、下記の条件を採用することが好ましい。
【0071】
縦延伸においては、後の横延伸がスムースにできるように、延伸温度は50〜110℃、延伸倍率は1.6〜4.0倍とすることがさらに好ましい。
【0072】
通常、ポリエチレンテレフタレートを延伸する際に、適切な条件に比べ延伸温度が低い場合は、横延伸の開始初期で急激に降伏応力が高くなるため、延伸ができない。また、たとえ延伸ができても厚みや延伸倍率が不均一になりやすいため好ましくない。
【0073】
また、適切な条件に比べ延伸温度が高い場合は初期の応力は低くなるが、延伸倍率が高くなっても応力は高くならない。そのため、25℃における100%伸張時応力が小さいフィルムとなる。よって、最適な延伸温度をとることにより、延伸性を確保しながら配向の高いフィルムを得ることができる。
【0074】
しかしながら、前記共重合ポリエステルが共重合成分を1〜40モル%含む場合、降伏応力をなくすように延伸温度を高くしていくと、延伸応力は急激に低下する。特に、延伸の後半でも応力が高くならないため、配向が高くならず、25℃における100%伸張時応力が低下する。
【0075】
このような現象は、フィルムの厚さが60〜500μmで発生しやすく、特に厚みが100〜300μmのフィルムで顕著に見られる。そのため、本発明の共重合したポリエステルを用いたフィルムの場合、横方向の延伸温度は、以下の条件とすることが好ましい。
【0076】
まず、予熱温度はフィルム材料を押出機で押出した後の混合物(原反)をDSCにおいて測定した場合のガラス転移温度の+10℃〜+50℃の範囲で行う。次いで、横延伸の前半部では延伸温度は予熱温度に対して−20℃〜+15℃とすることが好ましい。横延伸の後半部では、延伸温度は前半部の延伸温度に対して0℃〜−30℃とすることが好ましく、特に好ましくは前半部の延伸温度に対して−10℃〜−20℃の範囲である。このような条件を採用することにより、横延伸の前半では降伏応力が小さいため延伸しやすく、また後半では配向しやすくなる。なお、横方向の延伸倍率は、2.5〜5.0倍とすることが好ましい。その結果、本発明で規定したF10025やF100100を満足するフィルムを得ることが可能である。
【0077】
さらに、二軸延伸後にフィルムの熱処理(熱固定処理)を行う。この熱処理条件は、ヘーズと表面粗さ、つまりフィルムのすべり性を両立させるために重要な条件である。延伸終了後のフィルムを引き続きテンター内で熱処理するが、この場合、熱処理は2段階以上に分けて行うことが重要である。一段目の熱処理温度(TS1)は、二段目の熱処理温度(TS2)の−5℃〜−30℃の範囲、下限値は好ましくはTS2−10℃、上限値は好ましくはTS2−25℃である。二段目の熱処理温度(TS2)は、フィルム材料を押出機で押出した後の混合物(原反)を後述のDSCにおいて測定した場合の融点の−5℃〜−35℃の範囲で行う。TS2の下限値は好ましくは融点−10℃、TS2の上限値は好ましくは融点−30℃である。なお、TS1とTS2の間に中間の熱処理ゾーンを設けることも、またTS2の後に熱処理ゾーンを設けることも可能である。これらの場合、TS2は最高の熱処理温度を示す。このような条件を取ることにより、ヘーズが低く、すべり性が良好なフィルムが得られる。
熱処理は緊張熱処理、弛緩熱処理のいずれでも構わない。熱収縮率を低くするためには、3〜10%の弛緩熱処理が好ましい。
【0078】
その理由は、以下のようなものと考える。本発明のような共重合成分が5〜50モル%程度含まれるポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどに比較して結晶化速度が遅く、また結晶性が低い。そのため、延伸終了後に急激に高温で熱処理をすると、熱処理ゾーンにおいて結晶性の低い材料を構成する分子の運動性が高くなる。よって、延伸工程において粒子(フィルム中の粒子及び/またはコーティング層の粒子)が隆起することにより形成された表面突起が、熱処理ゾーンにおいて再び埋没してしまうために、十分な表面粗さを得ることができない。それゆえ、フィルムをきれいに巻き取るためには、粒子の含有量をポリエチレンテレフタレートフィルムの必要量以上に増加させることになり、ヘーズが悪化する原因になる。一方、TS2の温度を所定の温度より低くすると、150℃における熱収縮率が十分低いフィルムが得られなくなる。
【0079】
よって、熱処理ゾーンを2段(以上)にする本願発明の方法をとることは、TS1において粒子がフィルム内部に埋没する前に、ある程度フィルムの結晶化を促進させておいて、さらにTS2ゾーンにおいて十分に温度を上げても、前項の状態に比べれば十分分子の運動性は低下しており表面の突起を形成したまま、さらに結晶性を促進させ、熱収縮率の低いフィルムが得られる。また、必要以上の粒子の添加を防ぐことができる。
【0080】
一般に、面配向度を下げる手段としては延伸倍率を下げる方法と共重合成分の配合量を増加させる方法が知られているが、前者の方法はフィルムの厚み斑が悪化し、後者の方法ではフィルムの融点が低下し、耐熱性が悪化するため好ましくない。本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムの面配向度と150℃の熱収縮率を小さくするために、通常よりも高温で熱固定を行う。熱固定は、前述の熱処理、特に二段目の熱処理において行うことが好ましい。
【0081】
また、本発明においては二軸配向ポリエステルフィルムとして共重合ポリエステルを用いる必要があり、融点が均一重合体に比して低いため、熱固定温度を高くすると、横延伸工程でフィルムを保持するクリップにフィルムが融着して剥離しにくくなる。したがって、テンター出口でクリップがフィルムを開放するときにクリップ近傍を充分に冷却することが重要である。具体的には、フィルムとクリップとを剥離しやすくするために、(1)クリップが加熱されにくいように、クリップ部分に熱遮蔽壁を設ける方法、(2)クリップ冷却機構をテンターに付加する方法、(3)冷却能力の強化を行うために熱固定後の冷却区間を長く設定し、フィルム全体の冷却を十分行う方法、(4)冷却区間の長さ、区画数を増やすことで、冷却効率を増加させる方法、(5)クリップの戻り部分が炉の外側を走行するタイプを用いてクリップの冷却を強化する方法、などを採用することが好ましい。
【0082】
以上説明したように、本発明の成型用ポリエステルフィルムを用いることで、従来の二軸配向ポリエステルフィルムでは成型することが困難であった、成型時の成型圧力が10気圧以下の低圧下での真空成型や圧空成型などの成型方法においても、仕上がり性の良好な成型品を得ることができる。また、これらの成型法は成型コストが安いので、成型品の製造における経済性において優位である。したがって、これらの成型法に適用することが本発明の成型用ポリエステルフィルムの効果を最も有効に発揮することができる。
【0083】
一方、金型成型は金型や成型装置が高価であり、経済性の点では不利であるが、前記の成型法よりも複雑な形状の成型品が高精度に成型されるという特徴がある。そのため、本発明の成型用ポリエステルフィルムを用いて金型成型した場合は、従来の二軸配向ポリエステルフィルムに比べて、より低い成型温度で成型が可能で、かつ成型品の仕上がり性が改善されるという顕著な効果が発現される。
【0084】
さらに、このように成型された成型品は、常温雰囲気下で使用する際に、弾性及び形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性や耐熱性に優れ、さらに環境負荷も小さいので、家電用銘板、自動車用銘板、ダミー缶、建材、化粧板、化粧鋼鈑、転写シートなどの成型部材として好適に使用することができる。
【0085】
なお、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、前記の成型方法以外にも、プレス成型、ラミネート成型、インモールド成型、絞り成型、折り曲げ成型などの成型方法を用いて成型する成型用材料としても好適である。
【0086】
(ハードコート層を設けた成型用ポリエステルフィルム)
本発明の別の形態としては、成型用ポリエステルフィルムの少なくとも片面に直接あるいは密着性改良樹脂からなる表面層を介してハードコート層を設けた成型用ポリエステルフィルムである。本発明においてハードコート層とは、成型用ポリエステルフィルムからなる基材の表面硬度を補い、耐擦り傷性を向上せしめるべく、基材よりも高硬度な被膜を有する層を示す。
【0087】
本発明で使用可能なハードコート性を有する層は、特に限定するものではなく、メラミン系、アクリル系、シリコン系のハードコートなどが使用できるが、硬いハードコート皮膜が得られる点で、アクリル系のハードコート層が好ましい。
【0088】
本発明におけるアクリル系ハードコート層の好ましい様態として、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物含むコーティング剤を塗布後、重合、及び/または反応せしめることにより樹脂とした被膜が好ましく用いられる。多官能(メタ)アクリレート化合物は、1種で2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
本発明における1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基(但し、本発明における「(メタ)アクリロイル基」の記載は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基とを略して表示したものである)を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が2個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを用いることができる。
【0090】
特に、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート単量体化合物と1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体化合物とを含むコーティング剤でハードコート層を形成することが、硬度ならびに硬化性はもちろん、耐擦り傷性と可撓性に優れるので好ましい。
【0091】
具体的に1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物としては、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
【0092】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体化合物の具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレート化合物や1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有するエポキシアクリレート化合物が挙げられる。
【0093】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の使用割合は、固形分総量に対して30〜90質量%が望ましい。上記単量体の使用割合が30質量%未満の場合には、十分な耐擦り傷性を有する硬化被膜が得られ難く、またその量が90質量%を超える場合は、被膜の可撓性が低下するだけでなく、成型時にハードコート層に割れが発生するので好ましくない。
【0094】
上記ハードコート層の化合物組成を重合、及び/または反応させる方法として、電子線、放射線、紫外線を照射する方法が挙げられるが、紫外線照射する場合には前記組成物に光重合開始剤を加えることが望ましい。
【0095】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。これらの光重合開始t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせてもよい。光重合開始剤の添加量は、固形分中、0.01〜10質量%が適当であり、使用量が少ない場合は反応が遅く生産性が不良になるだけでなく、残存する未反応物により十分なハードコート性が得られない。逆に添加量が多い場合には、光開始剤によりハードコート層が黄変する問題が発生する。
【0096】
本発明に用いられるハードコート層を形成する化合物組成には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−t−ブチルハイドロキノンなど、公知の熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、固形分中、0.005〜0.05質量%が好ましい。
【0097】
本発明に用いられるハードコート層を形成する化合物組成には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の目的を損なわない範囲において、有機溶剤を配合することができる。
【0098】
有機溶剤としては、基材となる成型用ポリエステルフィルムの耐熱性の問題から塗布後の乾燥温度を150℃以下に調整する必要があることから、沸点が50〜150℃のものが好ましい。具体的な例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエンなどの芳香族系溶剤、ジオキサンなどの環状エーテル系溶剤などを挙げることができる。これらの溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0099】
本発明のハードコート層には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。例えば、表面凹凸付与や内部応力の緩和の為のフィラー、撥水性を付与する為のフッ素やシリコン系の化合物、塗工性や外観向上の為のレベリング剤や消泡剤、更には、着色用の染料や顔料が挙げられる。
【0100】
ハードコート層は、成型加工後に塗布しても良いが、ロール形態で連続加工できる成型加工前のフィルムに積層することが好ましい。積層する方法としては、公知の方法が挙げられるが、具体的には、スプレー法、浸漬(ディップ)法、ロールコーティング法、ダイスコーティング法、グラビアコーティング法などが挙げられる。
【0101】
ハードコート層の厚みは、0.5μm以上10μm以下が好ましい。厚みが薄い場合にはハードコート性が得られ難く、逆に厚い場合には、硬化収縮によるカールが悪い傾向を示す。特に好ましい厚みは、1μm以上6μm以下である。
【0102】
本発明のハードコート層を設けた成型用フィルムは、成型性が良好で仕上がり性の良好な成型品が得られ、かつ、表面の耐擦り傷性に優れる成型品が容易に得られ、家電用銘板、自動車用銘板、ダミー缶、建材、化粧板、化粧鋼鈑などの成型部材として好適に使用することができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
【0104】
(1)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
【0105】
(2)厚みムラ
横延伸方向に長さ3m、縦延伸方向に幅5cmのフィルムの連続したテープ状サンプルを巻き取り、フィルム厚み連続測定機(アンリツ株式会社製)にてフィルムの厚みを測定し、レコーダーに記録する。チャートより、厚みの最大値(Tmax)、最小値(Tmin)、平均値(Tav)を求め、下記式にて厚みムラ(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。また、横延伸方向の長さが3mに満たない場合は、つなぎ合せて行う。なお、つなぎの部分における測定データは削除した。
厚みムラ(%)=((Tmax−Tmin)/Tav)×100
【0106】
(3)ヘーズ
JIS−K7136−2000に準拠し、ヘーズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いてフィルムのへーズを測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0107】
(4)フィルムの厚み
ミリトロンを用い、1枚当たり5点、計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
【0108】
(5)100%伸張時応力、破断伸度
二軸延伸フィルムの長手方向及び幅方向に対して、それぞれ長さ180mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出した。次いで、引っ張り試験機(東洋精機株式会社製)を用いて短冊状試料を引っ張り、得られた荷重−歪曲線から各方向の100%伸張時応力(MPa)及び破断伸度(%)を求めた。
【0109】
なお、測定は25℃の雰囲気下で、初期長(標線間距離)40mm、チャック間距離100mm、クロスヘッドスピード100mm/min、記録計のチャートスピード200mm/min、ロードセル25kgfの条件にて行った。なお、この測定は10回行い平均値を用いた。
【0110】
また、100℃の雰囲気下でも、上記と同様の条件で引っ張り試験を行った。この際、試料は100℃の雰囲気下で30秒保持した後、測定を行った。なお、測定は10回行い平均値を用いた。
【0111】
(6)表面粗さ(Ra)
JIS−B601−2001に基づいて、サーフコム304B(株式会社 東京精密製)にてフィルムのRaを測定した。なお測定条件は、カットオフ 0.08μm、触針半径2μm、測定長 0.8mm、測定速度 0.03mm/秒で行った。
【0112】
(7)150℃での熱収縮率
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ150mm及び幅20mmの短冊状試料を切り出す。各試料の長さ方向に100mm間隔で2つの印を付け、無荷重下で2つの印の間隔Aを測定する。続いて、短冊状の各試料の片側をカゴに無荷重下でクリップにてつるし、150℃の雰囲気下のギアオーブンに入れると同時に時間を計る。30分後、ギアオーブンからカゴを取り出し、30分間室温で放置する。次いで、各試料について、無荷重下で、間隔Bを読み取る。読み取った間隔A及びBより、各試料の150℃での熱収縮率を下記式により算出する
熱収縮率(%)=((A−B)/A)×100
【0113】
(8)面配向度(ΔP)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向の屈折率(Nz)、幅方向の屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)を測定し下記式から面配向度(ΔP)を算出した。
ΔP=((Nx+Ny)/2)−Nz
【0114】
(9)波長370nmにおける光線透過率
分光光度計(島津製作所(株)製、UV−1200)を用いて、波長370nmの紫外領域におけるフィルムの光線透過率を測定した。
【0115】
(10)ロール状のフィルムの巻き出し性
製膜したフィルムを、300mm幅×200m長で3インチ紙管に巻きつけ、23℃65RH%雰囲気下で72時間放置する。その後、真空蒸着機内にフィルムを設置し、1×10−4torrの雰囲気下にて、50m/分の速度で巻き出したときに、巻き終わるまでに以下のような評価をした。判定基準は、すべての観点から問題のないものを○、少なくとも1つの問題がある場合を×とした。
a.フィルムの破れ
b.ばたつきの発生
c.フィルム同士またはフィルム/ロール間での摩擦による大きい音の発生
【0116】
(11)原料(対象物)のガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)
示差走査熱量分析装置(マックサイエンス社製、DSC3100S)を用いて、各実施例の条件で押出した原料約7mgをサンプルパンに入れ、パンのふたをし、窒素ガス雰囲気下で室温から300℃に20℃/分の昇温速度で昇温して測定した。Tg(℃)はJIS−K7121−1987、9・3項に基づいて、融点は、9・1項に定義される融解ピーク温度(Tpm)、にて求めた。
二軸配向ポリエステルフィルムの融点も同様に測定し、融解ピーク温度(Tpm)求める。
【0117】
(12)耐光性
暗箱中で蛍光灯ランプ(松下電器(株)社製、U型蛍光灯FUL9EX)の直下3cmの位置に、オフセット印刷した印刷サンプルを、印刷サンプルの印刷面が裏側になるように置いた。次いで、連続2000時間の光照射を行い、印刷面側の光照射前後におけるカラー(a*、b*、L*)をもとに、JIS Z 8730に準拠し、色差(ΔE値)を測定した。色差(ΔE値)が小さいほど、光照射前後における色の変化が小さい、すなわち耐光性に優れていることを意味する。耐光性の合格レベルは、色差(ΔE値)で0.5以下である。なお、色差(ΔE値)は下記の式で算出される。
ΔE=√(Δa+Δb+ΔL
【0118】
(13)成型性
(a)真空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で真空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
【0119】
最適条件下で真空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けを行った。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに×に該当する外観不良がないもの
○:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)の
いずれかに該当するもの
(i)角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii)大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv)印刷のずれが0.2mmを超えるもの
【0120】
(b)圧空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で、4気圧の加圧下で圧空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が60mmであり、底面部は直径が55mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
【0121】
最適条件下で圧空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)更に×に該当する外観不良がないもの
○:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)の
いずれかに該当するもの
(i)角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii)大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv)印刷のずれが0.2mmを超えるもの
【0122】
(c)金型成型性
フィルムに印刷を施した後、100〜140℃に加熱した熱板で4秒間接触加熱後、金型温度30〜70℃、保圧時間5秒にてプレス成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが30mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
【0123】
最適条件下で金型成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに×に該当する外観不良がないもの
○:(i)成型品に破れがなく、
(ii)角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)の
いずれかに該当するもの
(i)角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii)大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv)印刷のずれが0.2mmを超えるもの
【0124】
(14)耐溶剤性
25℃に調温したトルエンに試料を30分間浸漬し、浸漬前後の外観変化について下記の基準で判定し、○を合格とした。なお、ヘーズ値は前記の方法で測定した。
○:外観変化がほとんど無く、ヘーズ値の変化が1%未満
×:外観変化が認められる、あるいはヘーズ値の変化が1%以上
【0125】
(15)印刷品位
印刷前のフィルムを90℃で30分熱処理し、次いで4色のスクリーン印刷を行った。
さらに、印刷層を設けたフィルムを80℃で30分乾燥した。印刷品位の評価は、下記のクリアー感、印刷適性、印刷ずれなどの印刷外観を、印刷面からではなく、裏側からフィルムを通して目視で判定した。判定基準は、全ての観点から問題無いものを○、少なくとも1つの点で問題あるものを△、2つ以上の点で問題があるものを×とした。
a.クリアー感:印刷した図柄が、基材フィルムや塗布層に遮られることなく、鮮明
に見えること。
b.印刷適性 :印刷インキの転移不良による、色むらやヌケが生じないこと
c.印刷のズレ:印刷のズレが目視で判別できないこと。
【0126】
(16)耐擦り傷性
JIS−K5600に準拠し、荷重1kgfで#0000のスチールウールで表面を20往復し、24時間放置後に目視で評価を行った。
【0127】
参考例1
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度が0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A)と、固有粘度が0.69dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(N)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)を0.67質量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップ(B)をそれぞれ乾燥させた。さらに、チップ(A)とチップ(B)を25:75の質量比となるように混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
【0128】
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、120℃で10秒間予熱し、横延伸の前半部を110℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、一段目の熱処理(TS1)を205℃、二段目の熱処理(TS2)を横方向に7%の弛緩処理を行いながら235℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0129】
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
【0130】
比較例1
参考例1において、熱固定温度をTS1及びTS2ともに235℃に変更すること以外は、参考例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0131】
比較例2
参考例1において、熱固定温度をTS1及びTS2ともに205℃に変更すること以外は、参考例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0132】
参考例2
参考例1において、チップ(B)を、紫外線吸収剤を含有しないポリエチレンテレフタレートチップ(C)に変更したこと以外は、参考例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0133】
参考例3
(塗布液の調整)
イソプロパノール40質量%水溶液に共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロナールMD−1250)を固形分で3.15質量%,末端イソシアネート基を親水性基でブロックした水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製、エラストロンH−3)を固形分で5.85質量%、平均粒径1.0μmのシリカ粒子を全樹脂に対し0.8質量%及び平均粒径0.05μmのシリカ粒子を全樹脂に対し10質量%含有するように、塗布液を調整した。得られた塗布液を、5質量%の重曹水溶液を用いてpH6.5に調整した。次いで、バッグ式フィルター(住友スリーエム(株)製、リキッドフィルターバッグ)で濾過し、塗布液循環系ストックタンク内で、15℃で2時間撹拌した。
【0134】
参考例3のフィルム原料として、下記のチップ(D)、(J)、(F)を準備した。
チップ(D)は、樹脂成分が芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びネオペンチルグリコール単位30モル%を構成成分とし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(N)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)を0.5質量%含有する、固有粘度が0.77dl/gの共重合ポリエステルのチップである。
【0135】
チップ(J)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(N)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)を0.67質量%含有する、固有粘度が0.77dl/gのポリエチレンテレフタレートのチップである。
チップ(F)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(N)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)を0.67質量%含有する、固有粘度が0.75dl/gのポリプロピレンテレフタレート(PPT)のチップである。
【0136】
前記のチップをそれぞれ乾燥させた後、チップ(D)、チップ(J)、及びチップ(F)を50:10:40の質量比となるように混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
【0137】
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に83℃で3.5倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムのチルロール面側(F面)に、上記塗布液をリバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分の厚みが0.9μmとなるように塗布した。塗布層を有する積層フィルムを乾燥しつつテンターに導き、95℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を80℃、後半部を75℃で3.9倍延伸した。さらに、一段目の熱処理(TS1)を190℃、二段目の熱処理(TS2)を横方向に7%の弛緩処理を行いながら210℃で熱固定処理を行い、厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0138】
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
【0139】
比較例3
参考例3において、熱固定温度をTS1及びTS2ともに205℃に変更すること以外は、参考例3と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0140】
比較例4
参考例3において、熱固定温度を180℃(TS1)及び220℃(TS2)に変更すること以外は、参考例2と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0141】
参考例4
参考例3の原料構成をコア層とし、スキン層用原料として別の押出機にチップ(D)とチップ(J)を50:50の質量比で混合したチップを投入し、280℃で溶融し、コア層の原料と、スキン層/コア層/スキン層=10/80/10となるようにフィードブロックで接合後に270℃でT−ダイから押出した以外は、参考例2と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0142】
参考例5
参考例5の原料として、前記のチップ(J)以外に、下記のチップ(O)とチップ(P)を準備した。
【0143】
チップ(O)は、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位60モル%とイソフタル酸単位が40モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位100モル%を構成成分とする、固有粘度が0.71dl/gの共重合ポリエステルのチップである。
【0144】
チップ(P)は、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位60モル%とナフタレンジカルボン酸成分が40モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位100モル%を構成成分とする、固有粘度が0.71dl/gの共重合ポリエステルのチップである。
【0145】
チップ(J)及び前記の共重合ポリエステルのチップ(O)と、ポリエチレンテレフタレートのチップ(P)を50:25:25の質量比となるように混合し、乾燥させた。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
【0146】
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.5倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、120℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を110℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、一段目の熱処理(TS1)を205℃、二段目の熱処理(TS2)を横方向に7%の弛緩処理を行いながら238℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0147】
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
【0148】
参考例6
芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位40モル%及びネオペンチルグリコール単位60モル%を構成成分とする、固有粘度0.69dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A)と、固有粘度が1.00dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリブチレンテレフタレートのチップ(I)を乾燥させた。
次いで、チップ(A)、チップ(I)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(N)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン326)を、25.0:74.5:0.5の質量比となるように混合した。次いで、これらの混合物を押出し機によりTダイのスリットから265℃で溶融押出し、表面温度20℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
【0149】
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に80℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を85℃、後半部を80℃で3.8倍延伸した。さらに、一段目の熱処理(TS1)を185℃、二段目の熱処理(TS2)を横方向に7%の弛緩処理を行いながら200℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0150】
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
【0151】
参考例1〜6及び比較例1〜4に関し、使用したポリマーの原料組成とポリマー特性を表1に、フィルムの製造条件と特性を表2〜5に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
【表4】

【0156】
【表5】

【0157】
実施例7
参考例3で得られた成型用ポリエステルフィルム上に下記のハードコート塗布液をマイクログラビア方式で乾燥後の厚みが3μmになるように塗布し、80℃の熱風で乾燥し、出力160W/cmの高圧水銀灯下20cmの位置を30m/minのスピードで通過させてハードコート層を設けた成型用ポリエステルフィルムを得た。得られたハードコート層を設けたフィルムの成型性(真空成型性、圧空成型性、金型成型性)は、ハードコート層を積層していない参考例3のフィルムと同様であった。また、得られた成型品のコート層には、割れは発生していなかった。また、耐擦り傷性を評価した結果、表面に傷は発生せず良好であった。一方、参考例3で得られたハードコート層を形成していない成型用フィルムの成型性(真空成型性、圧空成型性、金型成型性)評価で得られた成型品の耐擦り傷性を評価すると多数の傷が発生しており不良であった。
【0158】
(ハードコート塗布液)
下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌し、次いで、公称ろ過精度が1μmのフィルターを用いて未溶解物や異物を除去して、塗布液Aを作製した。
・メチルエチルケトン 48.50質量%
・6官能ポリウレタン系アクリルモノマー 35.00質量%
(荒川化学工業製、ビームセット575)
・2官能ポリウレタン系アクリルモノマー 15.00質量%
(荒川化学工業製、ビームセット505−A6)
・光開始剤 1.50質量%
(チバ・スペシャリティー製イルガキュア184)
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明のハードコート層を設けた積層成型用フィルムは、成型性が良好で仕上がり性の良好な成型品が得られ、かつ、表面の耐擦り傷性に優れる成型品が容易に得られ、家電用銘板、自動車用銘板、ダミー缶、建材、化粧板、化粧鋼鈑などの成型部材として好適に使用することができる。
【0160】
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、低い温度及び低い圧力での加熱成型時の成型性に優れているので幅広い成型方法に適用ができ、かつ成型品として常温雰囲気下で使用する際に、弾性及び形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性、耐熱性に優れ、さらに環境負荷が小さいという利点がある。また、後加工時にロール状に巻き取った長尺のフィルムを巻き出す際に、ブロッキングや破れが起こりにくいため、生産性に優れている。さらに、平滑性と透明性に高度に優れているため、前記フィルムの印刷性改良層に、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷など各種の印刷加飾法、及び捺染、転写、塗装、ペインティング、蒸着、スパッタリング、CVD、ラミネートなどの加飾方法により印刷層、図柄層などの意匠を施し、次いで金型成型、圧空成型、真空成形などの各種成型法により成型する3次元加飾方法に適し、かつインモールド成型性やエンボス成型性に優れている。そのため、携帯電話、オーディオ、ポータブルプレーヤー/レコーダー、ICレコーダー、カーナビ、PDAなどの携帯機器やノートPCなどの筐体ないしその部材、家電や自動車の銘板用部材又は建材用部材として好適であり、産業界への寄与は大きい。
【0161】
また、フィルム中に紫外線吸収剤を含有させ、紫外領域の透過率を低減させることにより、耐光性を付与することができ、特に屋外で使用される用途(自動車の外装用または建材用部材)の成型材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合ポリエステルを含む二軸配向ポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面にハードコート層を設けた積層成型用ポリエステルフィルムであって、
(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、いずれも25℃において40〜300MPa及び100℃において1〜100MPa、
(2)前記ハードコート層が、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート単量体化合物と、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体化合物とを含むコーティング剤で形成されたものであり、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体化合物の割合が固形分総量に対して30〜90質量%である、積層成型用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
共重合ポリエステルが、(a)芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステル、あるいは(b)テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の積層成型用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムの面配向度が0.001以上0.095以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層成型用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
二軸配向ポリエステルフィルムの融点が200〜245℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層成型用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の積層成型用ポリエステルフィルムを真空成型、圧空成型及び金型成型いずれかの方法で成型したポリエステル成型品。

【公開番号】特開2010−248519(P2010−248519A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118704(P2010−118704)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【分割の表示】特願2008−533105(P2008−533105)の分割
【原出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】