説明

積層紙コップの製造方法

【課題】紙製の外側コップの内側に延伸ブロー成形品である樹脂製の内側コップが一体化された構造の積層紙コップを、外側および内側のコップの密着強度を高めた状態で効率良く製造できるようにすること。
【解決手段】樹脂製のプリフォーム40を延伸ブロー成形に適した温度に加熱した後に、紙製の外側コップ20Aを重ねた状態で、延伸ブロー成形型アセンブリ52にセットして、延伸ブロー成形を行う。延伸ブロー成形時に、延伸ブローされるプリフォーム40が外側コップ20Aを介して延伸ブロー成形型53、54の成形面53a、54aに押し付けられ、双方が密着した状態で、成形面によって所定の形状に成形される。紙製の外側コップ20の内周面に樹脂製の内側コップ30が密着した状態で附形されるので、強固に一体化された座屈強度、剛性の高い積層紙コップ1を効率良く製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙コップの内側にPET製などの樹脂製コップが積層された構成の飲料容器などとして用いられる積層紙コップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料容器として、底か上端開口に向けて広がっている逆円錐台状、樽状あるいは鼓状の胴部を備えたコップ状容器が知られており、コップ状容器には、紙コップ、および射出成形によって製造された樹脂製コップがある。特許文献1、2には、樹脂製コップの表面に紙ラベルなどをインモールド成形により貼り付ける方法が開示されている。
【0003】
ここで、近年においては、紙コップの内側に、延伸ブロー成形によって製造した薄肉の樹脂製コップを装着して保水性を高めた積層紙コップが利用されている。積層紙コップは、紙コップと樹脂製コップを別個に製造し、紙コップに樹脂製コップを挿入し、樹脂製コップの開口縁に形成したフランジを加熱溶融して紙コップの開口縁を巻き込む状態に成形することにより、紙コップに樹脂製コップを一体化した構造となっている。
【特許文献1】特開2002−255188号公報
【特許文献2】特開2003−72731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、紙製の外側コップの内側に延伸ブロー成形品である樹脂製の内側コップが一体化された構造の積層紙コップを、外側および内側のコップの密着強度を高めた状態で効率良く製造できるようにした、積層紙コップの製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、紙製の外側コップ、および、この外側コップの内周面に密着させた樹脂製の内側コップから構成される積層紙コップの製造方法であって、
前記内側コップを延伸ブロー成形するために用いる熱可塑性樹脂からなるプリフォームを、延伸ブロー成形に適した温度となるように加熱する加熱工程と、
前記内側コップを延伸ブロー成形するための延伸ブロー成形型に、前記プリフォームに前記外側コップを重ねた状態でセットするセット工程と、
前記プリフォームを延伸ブローして、当該プリフォームの延伸ブロー部分を前記外側コップを介して前記延伸ブロー成形型の成形面に押し付ける延伸ブロー工程とを有し、
前記外側コップの内周面に密着した状態となるように前記内側コップが延伸ブロー成形されると共に、前記成形面によって、前記内側コップの延伸ブロー部分および当該延伸ブロー部分が密着した前記外側コップの対応部分に附形することを特徴としている。
【0006】
ここで、前記セット工程に先立って、型開き状態の前記延伸ブロー成形型に、前記外側コップをインサートする外側コップインサート工程を有している場合には、前記セット工程では、前記延伸ブロー成形型にインサートされた前記外側コップの内側に前記内側コップがセットされるように、当該延伸ブロー成形型の型閉めを行えば良い。
【0007】
本発明では、延伸ブロー成形型内にインサートした紙製の外側コップの内側において、プリフォームが高圧エアーで延伸ブロー成形される。プリフォームの延伸ブロー部分は高圧エアーによって紙製の外側コップの内周面に押し付けられて密着し、この密着した状態で、延伸ブロー成形型の成形面に押し付けられて、成形面形状が外側コップおよび内側コップに付与される。このように、内側コップは、外側コップを介して成形面に押し付けられて延伸ブロー成形されるので、成形された内側コップは外側コップの内周面に対する密着度が高い。したがって、内側コップの開口縁部分によって外側コップの開口縁を巻き込むことにより双方のコップを一体化させる工程が不要になる。また、外側コップの内周面に内側コップが密着しているので、開口縁部分のみを一体化した場合に比べて、積層紙コップの座屈強度、剛性なども高くすることができる。また、延伸ブロー成形時に付与される形状を適切に設定しておくことにより、外側コップと内側コップをより強固に一体化させることができる。
【0008】
ここで、外側コップと内側コップの密着度、一体化強度を高めるためには次のようにすればよい。前記延伸ブロー工程において、前記延伸ブロー成形型の前記成形面によって、前記外側コップの筒状胴部、および、当該筒状胴部に対峙する内側コップの筒状胴部を、外側あるいは内側に突出した抜け止め形状部分が附形された状態とし、当該抜け止め形状部分によって、前記外側コップ内から前記内側コップがコップ軸線方向に抜け出ることを防止すればよい。
【0009】
または、前記延伸ブロー工程において、前記延伸ブロー成形型の前記成形面によって、前記外側コップの筒状胴部、および、当該筒状胴部に対峙する前記内側コップの筒状胴部を、外側あるいは内側に突出した回り止め形状部分が附形された状態とし、当該回り止め形状部分によって、前記外側コップおよび前記内側コップがコップ軸線回りに相対回転することを防止してもよい。
【0010】
ここで、前記外周前記抜け止め形状部分あるいは前記回り止め形状部分を、例えば、積層紙コップの筒状胴部の外周面部分に、円周方向あるいはコップ軸線方向に沿って凹凸が交互に繰り返されるような輪郭形状となるようにしておけば、これら部分を、前記積層紙コップの筒状胴部を持った際の滑り止めとして機能させることができる。
【0011】
一方、前記延伸ブロー工程に先立って、前記外側コップの筒状胴部の一部にくり抜き部を形成しておき、前記積層紙コップの筒状胴部の一部を、前記くり抜き部から露出している前記内側コップの透明な筒状胴部の一部によって規定した窓部とすれば、この窓部を介して前記積層紙コップの内部を視認可能にすることができる。
【0012】
また、前記延伸ブロー工程に先立って、前記外側コップの底の一部に開口を形成しておき、前記延伸ブロー工程において、延伸ブロー成形される前記内側コップの前記開口に対峙する底部分を当該開口から外側に膨出させて膨出部を形成する膨出部形成工程を行うと、当該膨出部によって、前記内側コップの前記外側コップからの抜けを防止することができる。
【0013】
この場合、前記延伸ブロー工程において、前記膨出部を、外側から前記外側コップの底に向けて押し込む膨出部押し込み工程を有していれば、更に、外側コップと内側コップの一体化強度を高めることができる。
【0014】
次に、前記外側コップの代わりに、底の無い筒状体を使用し、前記積層紙コップの底を前記内側コップの底によって規定してもよい。このようにすれば、紙製の外側コップの底が不要となる分、紙素材を節約でき、積層紙コップのコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層紙コップの製造方法では、延伸ブロー成形型にインサートされた紙製の外側コップの内側にプリフォームをセットし、プリフォームを延伸ブロー成形して内側コップを製造している。延伸ブロー成形時に、内側コップが外側コップを介して延伸ブロー成形型の成形面に押し付けられて、外側コップの内周面に密着した状態で成形されるので、外側コップと内側コップの一体化強度(密着強度)の高い積層紙コップを効率良く製造できる。
【0016】
また、延伸ブロー成形時に、延伸ブロー成形型の成形面によって、紙製の外側コップおよび延伸ブロー成形される内側コップに付与される形状を適切に設定しておくことにより、内側コップの抜け防止状態あるいは回り止め状態を同時に形成できる。
【0017】
さらに、紙製の外側コップにくり抜き部などを形成しておくことにより、充填された内容物を外側から視認可能な窓部を備えた積層紙コップを簡単に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した積層紙コップの製造方法の実施の形態を説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1(a)〜(c)は、積層紙コップの一例を示す斜視図、縦断面図および半横断面図である。積層紙コップ1は、全体として上方に向かって徐々に広がった逆円錐台形状の筒状胴部2と、この筒状胴部2の下端2aから所定距離だけ上側の部位において下端開口を封鎖している底板部分3と、筒状胴部2の上端開口4を規定している厚肉の口部フランジ5とを備えている。筒状胴部2は、口部フランジ5に連続している一定幅の円形外周面部分6と、この下から底板部分3の形成位置までの間に形成されている凹凸状外周面部分7と、この下側に形成されている円形外周面部分8とを備えている。凹凸状外周面部分7は、その円周方向に沿って一定のピッチで山および谷が交互に繰り替えされている断面形状をしている。
【0020】
この形状の積層紙コップ1は、紙製の外側コップ20と、この外側コップ20の内側に密着している熱可塑性樹脂からなる内側コップ30とからなる積層構造のものである。外側コップ20および内側コップ30は、それぞれ、積層紙コップ1の筒状胴部2を形成している筒状胴部22、32と、底板部分3を形成している底板部分23、33と、口部フランジ5を形成している口部フランジ25、35とを備えている。また、筒状胴部22、32は、積層紙コップ1の円形外周面部分6を形成している円形外周面部分26、36と、凹凸状外周面部分7を規定している凹凸状外周面部分27、37と、円形外周面部分8を形成している円形外周面部分28、38とを備えている。
【0021】
次に、図2および図3は、積層紙コップ1の製造に用いる外側コップおよびプリフォームを示す説明図である。まず、図2に示す形状の紙製の外側コップ20Aを従来と同様な方法で製造する。この外側コップ20Aは、全体としては、図1に示す外側コップ20と同様な形状のものであるが、その筒状胴部22Aは全体として円形外周面を備えた逆円錐台形状をしており、凹凸状外周面部分は備わっていない。これ以外は、図1の外側コップ20と同様であり、図2において、対応する部位には同一の符号を付してある。
【0022】
また、外側コップ20Aとは別個に、図3に示す形状の浅いコップ状のプリフォーム40を熱可塑性樹脂、例えばPET樹脂から射出成形により製造する。このプリフォーム40を延伸ブロー成形することにより、想像線で示す形状の内側コップ30が形成される。プリフォーム40は、凸円弧状をしたコップ部分41と、この開口端に形成されている口部フランジ45とを備えている。コップ部分41は延伸ブロー成形が施されて、内側コップ30の筒状胴部32および底板部分33となる部分であり、筒状胴部32、底板部分33よりも厚肉である。これに対して、口部フランジ45は延伸ブロー成形されずにそのまま内側コップ30の口部フランジ35になる部分であり、口部フランジ35と同一形状および厚さとなっている。
【0023】
図4は、外側コップ20Aおよびプリフォーム40を用いて積層紙コップ1を製造する工程を示す説明図である。まず、プリフォーム40を円盤状のプリフォームキャリア51に下向きに取り付け、この状態でプリフォームキャリア51を中心軸線51a回りに回転させながら不図示のヒーターによってプリフォーム40を外側から加熱して延伸ブロー成形に適した温度状態にする(工程ST1)。
【0024】
次に、加熱後のプリフォーム40に上側から紙製の外側コップ20Aを被せた状態となるように、プリフォームキャリア51に外側コップ20Aをセットする(工程ST2)。この後に、型開き状態の延伸ブロー成形型アセンブリ52の真下に、重ねた状態のプリフォームキャリア40および外側コップ20Aを位置決めする(工程ST3)。そして、型開き状態の延伸ブロー成形型アセンブリ52を降下させ、あるいは、プリフォームキャリア51の側を上昇させることにより、左右の延伸ブロー成形型53、54の間に、外側コップ20Aおよびプリフォーム40を位置決めする(工程ST4)。
【0025】
この後は、左右の延伸ブロー成形型53、54の型閉めを行い、プリフォームキャリア51の中心穴51bを介して、圧縮空気(高圧エアー)を吹き込むと共に延伸ロッド55を上昇させて、プリフォーム40を延伸ブロー成形する(工程ST5)。
【0026】
ここで、左右の延伸ブロー成形型53、54の成形面53a、54aには、積層紙コップ1の筒状胴部2の円形外周面部分6、凹凸状外周面部分7および円形外周面部分8に対応した成形面部分が形成されている。圧縮空気の吹き込みによって、内側のプリフォーム40が外側コップ20Aの筒状胴部22Aを介して成形面53a、54aに押し付けられる。この結果、プリフォーム40の延伸ブロー部分(41)は、外側コップ20Aの筒状胴部22Aに密着し、当該延伸ブロー部分(41)および外側コップ20Aの筒状胴部22Aは左右の延伸ブロー成形型53、54の成形面53a、54aに対応する形状に成形される。これにより、紙製の外側コップ20に内側に、延伸ブロー成形により得られた樹脂製の内側コップ30が一体化された積層紙コップ1が得られる。
【0027】
この後は、延伸ブロー成形型アセンブリ52の型開きを行い、当該延伸ブロー成形型アセンブリ52を上昇させた後に、積層紙コップ1をプリフォームキャリア51から取り外す(工程ST6)。
【0028】
このようにして製造した積層紙コップ1では、紙製の外側コップ20の内側に配置したプリフォーム40を延伸ブロー成形して、外側コップ20の内周面に密着した状態で樹脂製の薄肉の内側コップ30を形成している。したがって、紙層の内周面に樹脂層が確実に密着固定された積層紙コップ1を得ることができる。
【0029】
また、本例では、積層紙コップ1における筒状胴部2には凹凸状外周面部分7が形成されている。この凹凸状外周面部分7は、延伸ブロー成形時に外側コップ20および内側コップ30に付与されたものであり、当該部分は、外側コップ20および内側コップ30の回り止め形状部分として機能し、両者(20、30)の一体化強度を高めることができる。また、このような凹凸状外周面部分7は、積層紙コップ1を手で持った場合などにおける滑り止め効果も得られる。
【0030】
さらに、凹凸状外周面部分7の上下には円形外周面部分6、8が形成されており、これらの間の境界部分6a、8a(図1参照)は、内側コップ30が外側コップ20からコップ軸線1aの方向に抜け出ることを防止するための抜け止め形状部分として機能し、これによっても、両者(20、30)の一体化強度を高めることができる。
【0031】
さらには、このように紙製の外側コップ20の内周面に樹脂製の内側コップの樹脂層が密着し、密着強度も高いので、樹脂層によって積層紙コップ1の保水性を高めることができると共に、その座屈強度、剛性も高めることができる。
【0032】
これに加えて、凹凸状外周面部分7などを形成することにより、単なる円筒状胴部を備えた積層紙コップに比べて、外観デザインに優れた積層紙コップを製造することができるという利点もある。
【0033】
(実施の形態2)
図5(a)および(b)は、本発明の実施の形態2に係る積層紙コップを示す斜視図および縦断面図であり、図5(c)および(d)は、その底板部分を示す部分断面図である。積層紙コップ100は、全体として上方に向かって徐々に広がった逆円錐台形状の筒状胴部102と、この筒状胴部102の下端102aから所定距離だけ上側の部位において下端開口を封鎖している底板部分103と、筒状胴部102の上端開口104を規定している厚肉の口部フランジ105とを備えている。
【0034】
積層紙コップ100は、紙製の外側コップ120と、この外側コップ120の内側に密着している熱可塑性樹脂からなる内側コップ130とからなる積層構造のものである。外側コップ120および内側コップ130は、それぞれ、積層紙コップ100の筒状胴部102を形成している筒状胴部122、132と、底板部分103を形成している底板部分123、133と、口部フランジ105を形成している口部フランジ125、135とを備えている。
【0035】
ここで、紙製の外側コップ120の底板部分123の中心には円形穴124が形成されている。樹脂製の内側コップ130の底板部分133は、円形穴124の内周縁部分124aを上下および内側から包み込んだ状態で、当該円形穴124を封鎖している。
【0036】
この構成の積層紙コップ100は、図2に示す紙製の外側コップ20Aと図3に示すプリフォーム40を用いて製造される。
【0037】
図6は積層紙コップ100の製造工程を示す説明図である。まず、プリフォーム40を円盤状のプリフォームキャリア151に下向きに取り付け、この状態でプリフォームキャリア151を中心軸線151a回りに回転させながら不図示のヒーターによってプリフォーム40を外側から加熱して延伸ブロー成形に適した温度状態にする(工程ST11)。
【0038】
一方、延伸ブロー成形型アセンブリ152として、キャビティ内周面が成形面154aとなっている昇降型154を備えたものを用いる。型開き状態の延伸ブロー成形型アセンブリ152における昇降型154のキャビティ内に予め紙製の外側コップ20Aをインサートしてセットしておく(工程ST12)。この代わりに、加熱後のプリフォーム40に上側から紙製の外側コップ20Aを被せた状態となるように、プリフォームキャリア151に外側コップ20Aをセットしてもよい。
【0039】
この後に、型開き状態の延伸ブロー成形型アセンブリ152の昇降型154の真下に、プリフォームキャリア151に取り付けてあるプリフォーム40を位置決めする(工程ST13)。そして、型開き状態の昇降型154を降下させ、あるいは、プリフォームキャリア151を上昇させることにより型閉めを行う(工程ST14)。
【0040】
次に、プリフォームキャリア151の中心穴151bを介して、圧縮空気を吹き込むと共に延伸ロッド155を上昇させてプリフォーム40を延伸ブロー成形する(工程ST15)。圧縮空気の吹き込みによって、内側のプリフォーム40が外側コップ20Aの筒状胴部22Aを介して成形面154aに押し付けられる。この結果、プリフォーム40の延伸ブロー部分(41)は、外側コップ20Aの筒状胴部22Aに密着し、当該延伸ブロー部分(41)および外側コップ20Aの筒状胴部22Aは昇降型の成形面154aに対応する形状に成形される。これにより、紙製の外側コップ120に内側に、延伸ブロー成形により得られた樹脂製の内側コップ130が一体化された積層紙コップ100が得られる。
【0041】
ここで、延伸ブロー成形によって、図5(c)に示すように、紙製の外側コップ120の底板部分123の中心穴124から、樹脂製の内側コップ130の底板部分133の対応する部分が下方に膨出した円形の膨出部分136が形成される。延伸ブロー成形の後に、図5(d)に示すように、昇降型154を全体として僅かに上昇させ、しかる後に、その底型155を押出して、膨出部分136を底板部分123に向けて押し込む(工程ST16)。この結果、膨出部分136は、底板部分124の中心穴124の内周縁部分124aを包み込んだ状態に押しつぶされて、底板部分124とほぼ同一平面を形成した状態になる。
【0042】
この後は、延伸ブロー成形型アセンブリ152の型開きが行なわれて、積層紙コップ100が取り出される(図6の工程ST17)。
【0043】
このようにして製造した積層紙コップ100では、紙製の外側コップ20Aの内側に配置したプリフォーム40を延伸ブロー成形して、外側コップ120の内周面に密着した状態で樹脂製の薄肉の内側コップ130を形成している。したがって、紙層の内周面に樹脂層が確実に密着固定された積層紙コップ100を得ることができる。
【0044】
また、底板部分103は、紙製の外側コップ120の底板部分123の中心穴124の内周縁部分を包み込む状態で、樹脂製の内側コップ130の底板部分133が中心穴124を封鎖している。したがって、底板部分103は、内側コップ130が外側コップ120から抜け出ることを防止するための抜け止め形状部分として機能すると共に内側コップ30の回り止め形状部分として機能するので、両者(120、130)の一体化強度を高めることができる。
【0045】
(積層紙コップの別の例)
図7は積層紙コップの各種の形状を示す説明図である。図7(a)に示す積層紙コップ1Aは、その筒状胴部2Aの途中の部位が最小径部分Dminとなっている鼓形状のものである。図7(b)に示す積層紙コップ1Bは、その筒状胴部2Bの途中の部位が最大径部分Dmaxとなっている樽形状のものである。図7(c)に示す積層紙コップ1Cは筒状胴部2Cの途中の部位に一定幅で湾曲した湾曲部分Cが全周に亘って形成されたものである。図7(d)に示す積層紙コップ1Dは筒状胴部の途中の部位に一定幅で突出した突円弧部分Dが全周に亘って形成されたものである。
【0046】
これらの形状の積層紙コップは、いずれも、図2に示す紙製の外側コップ20Aを用いて製造することができる。延伸ブロー成形の工程において、延伸ブロー成形型の成形面によって、このような筒状胴部となるように附形することができる。また、このような附形を行うことにより、紙製の外側コップの内周面に積層されている樹脂製の内側コップの引き抜き防止部分が形成され、両者を強固に一体化することができる。また、各種の外観デザインの積層紙コップを簡単に製造することができる。
【0047】
(その他の実施の形態)
図8は積層紙コップの別の例を示す外観斜視図および縦断面図である。この積層紙コップ200は、全体として上方に向かって徐々に広がった逆円錐台形状の筒状胴部202と、この筒状胴部202の下端202aから所定距離だけ上側の部位において下端開口を封鎖している底板部分203と、筒状胴部202の上端開口204を規定している厚肉の口部フランジ205とを備えている。筒状胴部202には一定幅で上下方向に延びる細長い長方形の透明な窓206が形成されている。
【0048】
積層紙コップ200は、紙製の外側コップ220と、この外側コップ220の内側に密着している熱可塑性樹脂からなる内側コップ230とからなる積層構造のものである。外側コップ220および内側コップ230は、それぞれ、積層紙コップ200の筒状胴部202を形成している筒状胴部222、232と、底板部分203を形成している底板部分223、233と、口部フランジ205を形成している口部フランジ225、235とを備えている。
【0049】
ここで、窓206に対応する紙製の外側コップ220の筒状胴部222の部位には、一定幅で上下に延びる長方形の開口部226(くり抜き部)が形成されている。この開口部226が、内側コップ230の筒状胴部232における対応する部分236によって封鎖されている。また、本例では、窓206の一方の辺に沿って、紙製の外側コップ220の筒状胴部222の表面には目盛207が印刷されている。
【0050】
このような窓206を形成しておけば、積層紙コップ1に入れた液体の量を外側から視認することができる。また、目盛207によって残量を正確に知ることができ、便利である。
【0051】
次に、図9は更に別の積層紙コップを示す縦断面図である。積層紙コップ300は、全体として上方に向かって徐々に広がった逆円錐台形状の筒状胴部302と、この筒状胴部302の下端から所定距離だけ上側の部位において下端開口を封鎖している底板部分303と、筒状胴部302の上端開口304を規定している厚肉の口部フランジ305とを備えている。
【0052】
積層紙コップ300は、紙製の外側筒状体320と、この外側筒状体320の内側に密着している熱可塑性樹脂からなる内側コップ330とからなる積層構造のものである。外側筒状体320は、積層紙コップ300の筒状胴部302を形成している胴部本体322および口部フランジ305を形成している口部フランジ325のみを備えている。これに対して、内側コップ330は、積層紙コップ300の筒状胴部302を形成している筒状胴部332と、底板部分303を形成している底板部分333と、口部フランジ305を形成している口部フランジ335とを備えている。
【0053】
したがって、積層紙コップ300の底板部分303は、樹脂製の内側コップ330の底板部分333のみによって形成されている。充填物の量が少ない場合などのように底板部分の要求強度が小さくて良い場合などにおいては、紙製の外側コップの底板部分を省略でき、その分、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明を適用した積層紙コップの一例を示す斜視図、縦断面図および半横断面図である。
【図2】紙製の外側コップの一例を示す斜視図および縦断面図である。
【図3】樹脂製のプリフォームの一例を示す斜視図および縦断面図である。
【図4】積層紙コップの製造工程を示す説明図である。
【図5】積層紙コップの一例を示す斜視図、縦断面図、底板部分に膨出部分が形成された状態を示す部分断面図、および、膨出部分を押しつぶした状態を示す部分断面図である。
【図6】図5の積層紙コップの製造工程を示す説明図である。
【図7】積層紙コップの各種の形状を示す説明図である。
【図8】積層紙コップの別の例を示す斜視図および縦断面図である。
【図9】積層紙コップの別の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1、1A、1B、1C、1D、100、200、300 積層紙コップ
1a コップ軸線
2、2A、2B、2C、2D、102、202、302 筒状胴部
3、103、203、303 底板部分
4、104、204、304 上端開口
5、105、205、305 口部フランジ
6 円形外周面部分
6a、8a 境界部分
7 凹凸状外周面部分
8 円形外周面部分
20、20A、120、220、320 外側コップ
22、22A、122、222、322 筒状胴部
23、123、223 底板部分
25、125、225 口部フランジ
26 円形外周面部分
27 凹凸状外周面部分
28 円形外周面部分
30、130、230、330 内側コップ
32、132、232、332 筒状胴部
33、133、233、333 底板部分
35、135、235、335 口部フランジ
36 円形外周面部分
37 凹凸状外周面部分
38 円形外周面部分
40 プリフォーム
41 コップ部分(延伸ブロー部分)
45 口部フランジ
51、151 プリフォームキャリア
52、152 延伸ブロー成形型アセンブリ
53、54 延伸ブロー成形型
53a、54a 成形面
55 延伸ロッド
136 膨出部分
154 昇降型
154a 成形面
206 窓
207 目盛
226 開口部
C 湾曲部分
D 突円弧部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の外側コップ、および、この外側コップの内周面に密着させた樹脂製の内側コップから構成される積層紙コップの製造方法であって、
前記内側コップを延伸ブロー成形するために用いる熱可塑性樹脂からなるプリフォームを、延伸ブロー成形に適した温度となるように加熱する加熱工程と、
前記内側コップを延伸ブロー成形するための延伸ブロー成形型に、前記プリフォームに前記外側コップを重ねた状態でセットするセット工程と、
前記プリフォームを延伸ブローして、当該プリフォームの延伸ブロー部分を前記外側コップを介して前記延伸ブロー成形型の成形面に押し付ける延伸ブロー工程とを有し、
前記外側コップの内周面に密着した状態となるように前記内側コップが延伸ブロー成形されると共に、前記成形面によって、前記内側コップの延伸ブロー部分および当該延伸ブロー部分が密着した前記外側コップの対応部分に附形することを特徴とする積層紙コップの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層紙コップの製造方法において、
前記セット工程に先立って、型開き状態の前記延伸ブロー成形型に、前記外側コップをインサートする外側コップインサート工程を有し、
前記セット工程では、前記延伸ブロー成形型にインサートされた前記外側コップの内側に前記内側コップがセットされるように、当該延伸ブロー成形型の型閉めを行うことを特徴とする積層紙コップの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層紙コップの製造方法において、
前記延伸ブロー工程において、前記延伸ブロー成形型の前記成形面によって、前記外側コップの筒状胴部、および、当該筒状胴部に対峙する内側コップの筒状胴部には、外側あるいは内側に突出した抜け止め形状部分が附形され、
当該抜け止め形状部分によって、前記外側コップ内から前記内側コップがコップ軸線方向に抜け出ることが防止されることを特徴とする積層紙コップの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の積層紙コップの製造方法において、
前記延伸ブロー工程において、前記延伸ブロー成形型の前記成形面によって、前記外側コップの筒状胴部、および、当該筒状胴部に対峙する前記内側コップの筒状胴部には、外側あるいは内側に突出した回り止め形状部分が附形され、
当該回り止め形状部分によって、前記外側コップおよび前記内側コップがコップ軸線回りに相対回転することが防止されることを特徴とする積層紙コップの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の積層紙コップの製造方法において、
前記抜け止め形状部分あるいは前記回り止め形状部分は、前記積層紙コップの筒状胴部を持った際の滑り止めとして機能する形状のものであることを特徴とする積層紙コップの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の積層紙コップの製造方法において、
前記延伸ブロー工程に先立って、前記外側コップの筒状胴部の一部にくり抜き部を形成しておき、
前記積層紙コップの筒状胴部の一部を、前記くり抜き部から露出している前記内側コップの透明な筒状胴部の一部によって規定した窓部とし、
この窓部を介して前記積層紙コップの内部を視認可能にすることを特徴とする積層紙コップの製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項に記載の積層紙コップの製造方法において、
前記延伸ブロー工程に先立って、前記外側コップの底の一部に開口を形成しておき、
前記延伸ブロー工程は、延伸ブロー成形される前記内側コップの前記開口に対峙する底部分を当該開口から外側に膨出させて膨出部を形成する膨出部形成工程を備えており、
前記膨出部によって、前記内側コップの前記外側コップからの抜けを防止することを特徴とする積層紙コップの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の積層紙コップの製造方法において、
前記延伸ブロー工程は、形成された前記膨出部を、外側から前記外側コップの底に向けて押し込む膨出部押し込み工程を備えていることを特徴とする積層紙コップの製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項に記載の積層紙コップの製造方法において、
前記外側コップの代わりに、底の無い筒状体を使用し、
前記積層紙コップの底を前記内側コップの底によって規定することを特徴とする積層紙コップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−208402(P2009−208402A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55378(P2008−55378)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【Fターム(参考)】