説明

穴かがりミシン

【課題】容易に能率よく糸通し作業を行うことができる穴かがりミシンを提供する。
【解決手段】操作者が操作パネル4の選択キー113を用いて糸通しモードを設定すると、制御装置5が制御するカッター進退用ステッピングモータ91の駆動力によって、カッター51が待機している初期位置より、縫針32から遠ざかる退避位置へと移動する。これにより、糸通し作業時にカッター51が妨げになるのを回避し、容易に能率よく糸通し作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工布に穴かがり縫目を形成する穴かがりミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に穴かがりミシンは、加工布を布送りする布送り手段と、加工布に穴かがり縫目を形成する縫製手段と、カッターにより加工布を切断してボタン穴を形成するボタン穴形成手段とを有しており、布送り手段が加工布を布送りしつつ、縫製手段が縫針を上下動させることにより、布送り方向を長軸方向とする穴かがり縫目を形成する。
【0003】
この種の穴かがりミシンにおいては、縫針とカッターとが布送り方向に対して同一線上に配置してある。縫針は、操作者に対してカッターよりも数mm手前側に位置している。縫針とカッターとが比較的近接した位置にある。縫製開始前に、操作者が縫針の針孔に針糸を通す糸通し作業を行う際に、カッターが作業の妨げとなる。
【0004】
従来より、ミシン停止時における縫針の状態を、操作者から見て右方向に針振りした状態とする穴かがりミシンが提唱されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の穴かがりミシンでは、操作者が右側に停止した縫針に対し糸通しすることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4026886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術の穴かがりミシンでは、縫針を右方向に針振りさせた状態で糸通し作業を行うことを可能としている。一般に穴かがりミシンにおいて針振りできる距離はせいぜい数mmに過ぎない。前記距離は、操作者が容易に糸通し作業を行うには、不十分である。
【0007】
本発明の目的は、容易に能率よく糸通し作業を行うことができる穴かがりミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1発明の穴かがりミシンは、加工布を布送りする送り台と、針糸を担持し、上下動して加工布に穴かがり縫目を形成する縫針と、加工布を切断してボタン穴を形成するとともに、ミシンの機枠に対し前記送り台の送り方向に沿って進退可能に設けたカッターと、前記カッターを作動連結し、前記カッターを進退駆動させる駆動力を発生する第1アクチュエータと、操作者が前記カッターの退避指示を操作入力可能な退避操作手段と、前記退避操作手段によって操作入力した前記退避指示に応じて、初期位置にある前記カッターを、前記縫針から遠ざかる退避位置へ移動するように前記第1アクチュエータを制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本願第1発明の穴かがりミシンは、送り台と、縫針と、カッターとを有する。送り台が加工布を布送りし、縫針が上下動することにより、針糸により加工布に穴かがり縫目を形成する。また、カッターが下降して加工布を切断することにより、ボタン穴を形成する。
【0010】
カッターは下降していない状態では加工布から少し離れた上方にて待機しており、通常、縫針と比較的近接した位置にある。このため、縫製開始前に、操作者が縫針の針穴に針糸を通す糸通し作業を行う際に、そのままではカッターが妨げとなる。
【0011】
本願第1発明では、操作者が退避操作手段に対し退避指示を操作入力すると、制御手段が制御する第1アクチュエータの駆動力によって、カッターが、上記待機している初期位置より、縫針から遠ざかる退避位置へと移動する。これにより、上記のような糸通し作業時にカッターが妨げとなるのを回避し、容易に能率よく糸通し作業を行うことができる。
【0012】
第2発明の穴かがりミシンは、上記第1発明において、操作者が前記カッターの復帰指示を操作入力可能な復帰操作手段をさらに備え、前記制御手段は、前記復帰操作手段によって操作入力した前記復帰指示に応じて、前記退避位置にある前記カッターを、前記縫針に近づく前記初期位置へ戻るように前記第1アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0013】
本願第2発明の穴かがりミシンは、復帰操作手段を有している。カッターを退避位置に移動させ上糸通し作業を行った後、操作者は、復帰操作手段で復帰指示を操作入力する。これにより、制御手段が制御する第1アクチュエータの駆動力によって、カッターが、上記退避位置から初期位置へ復帰する。この結果、糸通し作業の完了後、円滑に縫製作業を開始することができる。
【0014】
第3発明の穴かがりミシンは、上記第1又は第2発明において、前記制御手段の制御により、前記カッターが前記初期位置から前記退避位置へ移動するときに、若しくは、前記カッターが前記退避位置から前記初期位置へ戻るときに、所定の報知を行う報知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
本願第3発明の穴かがりミシンでは報知手段を設けており、カッターの初期位置から退避位置への移動時、若しくは、カッターの退避位置から初期位置への移動時、所定の報知を行う。これにより、操作者の退避指示や復帰指示に応じカッターが移動中であることを、操作者に確実に認識させることができる。
【0016】
第4発明の穴かがりミシンは、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記縫針を備えた針棒に作動連結し、前記針棒を左右揺動させる駆動力を発生する第2アクチュエータをさらに備え、前記制御手段は、前記操作者が操作入力した前記退避指示に応じて、前記針棒を左右いずれかに移動するように前記第2アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0017】
本願第4発明の穴かがりミシンは、第2アクチュエータの駆動力で針棒が左右揺動可能である。操作者が退避操作手段に対し退避指示を操作入力すると、制御手段が制御する第2アクチュエータの駆動力によって、針棒が左右いずれかに移動する。これにより、上記のようにしてカッターを退避位置へと移動させるのに加えて、縫針を、糸通し作業が行いやすい左右いずれかの位置へ移動させることが可能となる。この結果、さらに容易に糸通し作業を行うことができる。
【0018】
第5発明の穴かがりミシンは、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記送り台に載置した加工布を押圧する布押さえと、前記布押さえに作動連結し、前記布押さえを上下動させる駆動力を発生する第3アクチュエータとをさらに備え、前記制御手段は、前記退避操作手段によって操作入力した前記退避指示に応じて、前記布押さえを加工布の押圧位置へ下降させるように前記第3アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0019】
本願第5発明の穴かがりミシンでは、送り台上の加工布を押圧する布押さえが、第3アクチュエータの駆動力で上下動する。操作者が退避操作手段に対し退避指示を操作入力すると、制御手段が制御する第3アクチュエータの駆動力によって、布押さえが、加工布を押圧する押圧位置へ下降する。これにより、上記のようにしてカッターを退避位置へと移動させるのに加えて、布押さえを、糸通し作業が行いやすい、妨げとならない下方の位置へ退避させることができる。この結果、さらに容易に糸通し作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、糸通し作業時にカッターが妨げとなるのを回避できるので、容易に能率よく糸通し作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の穴かがりミシンの全体構造を表す斜視図である。
【図2】ミシンの縫針及びカッター部分の構造を表す側面図である。
【図3】布送り機構の全体構造を表す斜視図である。
【図4】縫製機構の全体構造を表す斜視図である。
【図5】ボタン穴形成機構の全体構造を斜め上方向から見た斜視図である。
【図6】ボタン穴形成機構の全体構造を斜め下方向から見た斜視図である。
【図7】カッター上下動駆動機構によるカッターの上下動動作を表す図である。
【図8】カッター進退駆動機構によるカッターの進退動作を表す図である。
【図9】穴かがりミシンの制御系を表す機能ブロック図である。
【図10】操作パネルのパネル面の一例を表す正面図である。
【図11】穴かがりミシンによって形成される穴かがり縫目の平面図である。
【図12】制御装置が糸通しモードの際に行う制御内容を表すフローチャートである。
【図13】押え足による加工布の開放位置を表す穴かがりミシンの部分側面図である。
【図14】押え足による加工布の押圧位置及びカッターの初期位置を表す穴かがりミシンの部分側面図である。
【図15】カッターの退避位置を表す穴かがりミシンの部分側面図である。
【図16】縫針の移動前の状態を表す穴かがりミシンの部分正面図である。
【図17】縫針の移動後の状態を表す穴かがりミシンの部分正面図である。
【図18】ボタン穴形成機構の変形例の全体構造を斜め右上方向から見た斜視図である。
【図19】ボタン穴形成機構の変形例の全体構造を斜め左上方向から見た斜視図である。
【図20】ボタン穴形成機構の変形例におけるカッター上下動駆動機構によるカッターの上下動動作を表す図である。
【図21】ボタン穴形成機構の変形例におけるカッター進退駆動機構によるカッターの進退動作を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本実施形態は、加工布に、例えば図10に示す穴かがり縫目60を形成するとともに、その穴かがり縫目60の内側にボタン穴65を形成するいわゆるボタン穴用の穴かがりミシンに本発明を適用した場合の例である。なお、以下の説明において穴かがりミシンの前後及び左右の方向は、図1及び図3等の矢印に示す方向とする。
【0024】
図1に示すように、穴かがりミシンMは、ミシンテーブル1と、このミシンテーブル1に設けられたミシンモータ2と、そのミシンモータ2を含む各駆動部(後述)を起動又は停止させるための足踏ペダル3と、穴かがり縫目60の形状とサイズ等を規定する複数のパラメータ等を入力設定するための操作パネル4と、各駆動部を駆動制御する制御装置5と、ミシン本体100等を有している。
【0025】
ミシン本体100は、ベッド部6、脚柱部7、及びアーム部8を有する。図2乃至図6に示すように、このミシン本体100は、加工布を前後に布送りする布送り機構10と、上糸33(針糸に相当)を支持し、上下動して加工布に穴かがり縫目を形成する縫針32を備えた縫製機構30と、加工布を切断してボタン穴65を形成するとともに、ミシン本体100の機枠に対し送り台11の送り方向に沿って進退可能に設けた、カッター51を有するボタン穴形成機構50を有している。上記の制御装置5(制御手段に相当)は、カッター51の長さ及びボタン穴65の長さに基づき、1回又は複数回のカッター51の下降動作によってボタン穴65を形成するように、布送り機構10、縫製機構30、及びボタン穴形成機構50を制御する。
【0026】
図3に示すように、布送り機構10は、加工布を布送りする送り台11と、この送り台11に載置した加工布を押圧する押え足12(布押さえに相当)と、ステッピングモータ13等を有している。布送り機構10は、加工布を押え足12で送り台11に押さえた状態で、ステッピングモータ13により送り台11と押え足12を一体的に前後に駆動することで、加工布についても一体的に前後に布送りする。ベッド部6の上面部分にはめ込まれた左右一対の案内板14は、前後に長い板状に形成した送り台11を前後に移動可能にガイドする。送り台11は、その前端部に、穴かがり縫目60及びボタン穴65を形成するための針穴11aを有している。
【0027】
送り台11の後端部下面側には可動部材15が連結している。可動部材15の後側に前後に長い連結ロッド16を介して可動部材17が連結している。この可動部材17に、押え足12を前端部に取り付けた押え腕18の後端部が左右軸心回りに支持している。布送り機構10は、付勢部材(図示略)により押え腕18を介して押え足12を下方へ付勢し、足踏ペダル3の操作で駆動する押え昇降機構(図示略)により、押え腕18と一体的に押え足12が昇降する。この押え昇降機構は、押え足12に作動連結し、押え足12を上下動させる駆動力を発生する布押え用ステッピングモータ22(第3アクチュエータに相当。図9参照)により作動する。
【0028】
連結ロッド16は、可動部材15,17の左端部を挿通して前後に延びている。1対の軸受19は、可動部材15の前側、可動部材17の後側において、連結ロッド16を前後移動自在に支持している。前後に長いロッド20は、連結ロッド16の右側においてミシン機枠に固定している。可動部材17の右端部は、軸受17aを介してロッド20を前後移動自在に支持している。駆動プーリ13aは、ステッピングモータ13の出力軸に固着している。従動プーリ(図示略)は、駆動プーリ13aの後方においてミシン機枠に支持しており、これら両プーリが無端状のベルト21を掛け渡している。このベルト21の一部に可動部材17が連結しており、ステッピングモータ13が駆動すると、ベルト21を介して可動部材15,17と送り台11と押え足12が前後に一体的に駆動する。
【0029】
図2、図4に示すように、縫製機構30は、針棒31、縫針32、糸調子機構34、天秤35等を有する。縫針32は、針棒31の下端に装着している。糸調子機構34は、上糸供給源(図示略)から縫針32に至る上糸供給経路において上糸33に張力を付与する。天秤35は、糸調子機構34と縫針32との間に設け、上糸33を引き締める。ミシンモータ2は、針棒上下動機構(図示略)を駆動する。前記針棒上下動機構は、針棒31及び縫針32を上下に往復駆動する。糸捕捉器(図示略)は、ベッド部6内に設けている。前記糸捕捉器(図示略)は、送り台11の下側にて上下動する縫針32付近における上糸33を捕捉しボビン(図示略)から伸びる下糸と交絡させて縫目を形成する。
【0030】
針棒左右揺動用ステッピングモータ36(第2アクチュエータに相当。図9参照)は、針棒31を左右揺動させる駆動力を発生する。穴かがりミシンMは、針棒31が左右に揺動駆動し、且つ布送り機構10が前後に加工布を布送りすることで、加工布に左右幅のある穴かがり縫目60を縫製する。天秤35はミシンモータ2により駆動する針棒上下動機構と大部分が共通の天秤駆動機構(図示略)により上下に往復駆動し、上昇する天秤35が上糸33を引っ張り、糸調子機構34により上糸33に摩擦抵抗を作用させて張力を付与し、加工布に形成する縫目を引締める。
【0031】
図4に示すように、糸調子機構34は、第1糸調子皿40、第2糸調子皿41と補助糸調子皿42とを有する。糸案内部材33a,33bは、上糸供給源の上糸33を第1糸調子皿40に案内する。第1糸調子皿40を経由した上糸33は、補助糸調子皿42、第2糸調子皿41、糸案内部材33c、天秤35、案内部材33d,33eの順に経由して縫針32に至る。第1糸調子皿40と補助糸調子42は、常時上糸33に張力を付与する張力付与状態にある。第1糸調子皿40は、張力付与状態と張力開放状態に切換え可能である。該切換えは、糸ゆるめ用ソレノイド45(図9参照)を有する張力切換え機構(図示略)で行う。
【0032】
図5はボタン穴形成機構50の全体構造を斜め上方向から見た斜視図であり、図6は斜め下方向から見た斜視図である。なお、図6には変換機構95の部分拡大図を併せて示している。図5及び図6に示すように、ボタン穴形成機構50は、カッター51を上下動させるためのカッター駆動用ソレノイド81を備えたカッター上下動駆動機構80と、カッター51を進退させるためのカッター進退用ステッピングモータ91(第1アクチュエータに相当)を備えたカッター進退駆動機構90とを有している。
【0033】
カッター上下動駆動機構80は、カッター駆動用ソレノイド81の他に、筒部材82と、カッターガイド部材98と、第1カッター取付軸53と、第1軸保持部材83と、第1上下動リンク機構84とを有している。第1カッター取付軸53は、筒部材82内に挿通し、且つ筒部材82内で周方向に回動可能である。第1軸保持部材83は、筒部材82の略中間部において該筒部材82を支持する。筒部材82は、下端にカッターガイド部材98を固定している。カッターガイド部材98は、板状の部材で形成し下面に後述するレール部98aを有している。
【0034】
第1上下動リンク機構84は、カッター駆動用ソレノイド81の駆動により第1軸保持部材83を上下動させる。第1上下動リンク機構84は、略L字形状のカッター作動腕85と、このカッター作動腕85の前端部分を上方へ付勢するバネ部材86とを有している。支持軸85aは、カッター作動腕85をミシン機枠に対し軸心回りに揺動可能に支持する。カッター作動腕85は、その前端部が第1軸保持部材83に回動可能に連結している。カッター作動腕85の後上端部は、カッター駆動用ソレノイド81から前方へ突出したプランジャ81aに回動可能に連結している。
【0035】
カッター上下動駆動機構80は、カッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが突出/退避することで、カッター作動腕85、第1軸保持部材83、筒部材82、第1カッター取付軸53、及びカッターガイド部材98を介して後述するカッター51を上下動させることができる。
【0036】
カッター進退駆動機構90は、カッター進退用ステッピングモータ91の他に回転リンク機構92と、変換機構95とを有している。回転リンク機構92は、第1回動軸93と、第2回動軸94とを有している。第1回動軸93は、その左端側をカッター進退用ステッピングモータ91から上方へ突出した出力軸91aに連結している。回転リンク機構92は、カッター進退用ステッピングモータ91の駆動力により第1カッター取付軸53を回転させる。
【0037】
変換機構95は、回動部材96と進退部材97とを有している。回動部材96は、第1カッター取付軸53の下端部に連結し、第1カッター取付軸53の回動動作と共に回動する。回動部材96は、その進退部材97側の端部に、後述する進退部材97の溝97aに嵌合するスライダ部材96aを有している。進退部材97は、その左端側において回動部材96のスライダ部材96aが嵌合可能な溝97aを有している(図6の部分拡大図参照)。スライダ部材96aは、溝97aによって前後方向に規制され且つ左右方向に移動可能となっている。それ故、進退部材97は、回動部材96の回動に伴って、前後に移動する。進退部材97は、下方にカッターホルダ52を介してカッター51を固着している。進退部材97は、カッターガイド部材98と対向する側に溝部97bを有している。溝部97bは、カッターガイド部材98のレール部98aに摺動可能に嵌合している。それ故、進退部材97及びカッター51は、カッターガイド部材98に対して前後方向(言い換えれば穴かがり縫目60の長軸方向)に沿って進退駆動可能となっている。
【0038】
カッター進退駆動機構90は、カッター進退用ステッピングモータ91の出力軸91aが回動することで、第1回動軸93、第2回動軸94、第1カッター取付軸53、回動部材96、進退部材97、及びカッターホルダ52を介してカッター51を進退駆動させる。
【0039】
図7(a)及び図7(b)は、カッター上下動駆動機構80によるカッター51の上下動動作を表す図である。図7(a)は前述した図5と同じ状態を表している。図7(a)に示すように、カッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが後方に退避すると(矢印X1参照)、カッター作動腕85が支持軸85a回りに回動する(矢印X2参照)。この回動に基づいて、第1軸保持部材83及び筒部材82が上昇する(矢印X3参照)。それ故、カッター51がカッターガイド部材98等と共に上昇する(矢印X4参照)。図7(b)に示すようにカッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが前方に突出すると(矢印X5参照)、カッター作動腕85が支持軸85a回りに回動する(矢印X6参照)。この回動に基づいて、第1軸保持部材83及び筒部材82が下降する(矢印X7参照)。それ故、カッター51がカッターガイド部材98等と共に下降し(矢印X8参照)、送り台11上の加工布を切断する。
【0040】
図8(a)及び図8(b)は、カッター進退駆動機構90によるカッター51の進退動作を表す図である。図8(a)は前述した図5と同じ状態を表している。図8(a)に示すように、カッター進退用ステッピングモータ91の出力軸91aに連結した第1回動軸93が後方側に回動すると(矢印Y1参照)、スライダ93aを介して第2回動軸94も後方側に回動する(矢印Y2参照)。この回動に伴い、第2回動軸94の回動中心となる右端側に連結した第1カッター取付軸53が、上面視時計回り方向に回動する(矢印Y3参照)。第1カッター取付軸53の回動に基づいて、第1カッター取付軸53の下端部に連結した回動部材96が上面視時計回り方向に回動する(図示せず)。回動部材96のスライダ部材96aと進退部材97の溝97aは、前記回転動作を進退部材97の前後方向の進退動作に変換する。その結果、カッター51は前方に進む(矢印Y4参照)。
【0041】
図8(b)に示すようにカッター進退用ステッピングモータ91の出力軸91aに連結した第1回動軸93が前方側に回動すると(矢印Y5参照)、スライダ93aを介して第2回動軸94も前方側に回動する(矢印Y6参照)。第2回動軸94の回動は、第1カッター取付軸53を上面視反時計回り方向に回動させる(矢印Y7参照)。第1カッター取付軸53の回動に基づいて、第1カッター取付軸53の下端部に連結した回動部材96が上面視反時計回り方向に回動する(矢印Y8参照)。回動部材96のスライダ部材96aと進退部材97の溝97aは、前記回転動作を進退部材97の前後方向の進退動作に変換する。その結果、カッター51は後方に退く(矢印Y9参照)。
【0042】
なお図示はしないが、この状態でカッター駆動用ソレノイド81のプランジャ81aが前方に突出すると、図8(b)に示す後方に退いた位置においてカッター51が下降する。
【0043】
次に、穴かがりミシンMの制御系について説明する。図9に示すように、制御装置5は、CPU5a、ROM5b、RAM5c、不揮発性メモリ5gを主要部とするマイクロコンピュータと、入力インターフェイス5dと、出力インターフェイス5eとを備え、バス5fにて夫々接続している。入力インターフェイス5dは、ペダル位置検出センサ3aと、操作パネル4と各種原点センサ101〜104と接続している。ペダル位置検出センサ3aは、足踏みペダル3の操作状態に応じた信号を出力する。出力インターフェイス5eは、ミシンモータ2、ステッピングモータ13,22,36,91、ソレノイドアクチュエータ45,81を駆動する為の駆動回路70〜76及び操作パネル4と接続している。
【0044】
上記各種原点センサ101〜104は、送り用原点センサ101、布押え用原点センサ102、針棒左右揺動用原点センサ103、カッター進退用原点センサ104である。送り用原点センサ101は、送り用ステッピングモータ13の原点を検出する。布押え用原点センサ102は、布押え用ステッピングモータ22の原点を検出する。針棒左右揺動用原点センサ103は、針棒左右揺動用ステッピングモータ36の原点を検出する。カッター進退用原点センサ104は、カッター進退用ステッピングモータ91の原点を検出する。これらの原点センサとしては、例えば各ステッピングモータに設けたロータリーエンコーダ又は光学センサ等の公知のセンサを用いる。不揮発性メモリ5gは、これらの原点センサ101〜104が検出した原点位置を不揮発的に記憶する。
【0045】
制御装置5のROM5bには、操作パネル4を用いて穴かがり縫目60の形状やサイズやボタン穴65を形成する為のカッター落としパターン等を規定する複数のパラメータの設定を行う為の設定処理プログラムと、複数のパラメータに基づいて縫製データ(針落ちデータ)とボタン穴データ(カッター落とし位置(タイミング)データ)等を演算処理する演算処理プログラムと、演算されたボタン穴データに基づき、穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退可能に設けたカッター51の作動位置を演算処理する演算処理プログラムと、演算されたデータに基づいて布送り機構10、縫製機構30、ボタン穴形成機構50等を駆動制御する制御プログラムが格納されている。
【0046】
図10は、操作パネル4のパネル面の一例を表す正面図である。この図10に示すように、操作パネル4は糸通しキー111と、この糸通しキー111が操作されて糸通しモードであることを点灯により表示するLED表示部112と、制御モードを選択するための選択キー113と、この選択キー113が操作されるたびに順次点灯して自動縫製、テスト送り、手動縫製プログラムの各制御モードであることを表示するLED表示部114,115,116,117とを備えている。
【0047】
また操作パネル4は、各種パラメータの数値やメッセージ等を表示する表示部119と、この表示部119が表示する数値の増減を行うマイナスキー120及びプラスキー121と、これらキー120,121で増減させた数値の確定を行うエンターキー122と、糸通しモードにおいて糸通し作業が終了した際に操作するリセットキー123と、警告ブザー124とを備えている。
【0048】
操作者が操作パネル4の上記糸通しキー111(退避操作手段に相当)を操作して糸通しモードを設定すると、操作パネル4は操作入力した制御信号(退避指示に相当)を制御装置5に出力する。これにより、制御装置5は上記操作入力した制御信号に応じて、初期位置(後述の図14参照)にあるカッター51を縫針から遠ざかる退避位置(後述の図15参照)へ移動するようにカッター進退用ステッピングモータ91を制御する。また制御装置5は、上記操作入力した制御信号に応じて、押え足12を加工布の押圧位置(後述の図14参照)へ下降させるように布押え用ステッピングモータ22を制御する。さらに制御装置5は、上記操作入力した制御信号に応じて、針棒31を右側に移動するように針棒左右揺動用ステッピングモータ36を制御する(後述の図17参照)。
【0049】
一方、操作者が糸通し作業を終了して上記リセットキー123(復帰操作手段に相当)を操作すると、操作パネル4は操作入力した制御信号(復帰指示に相当)を制御装置5に出力する。これにより、制御装置5は上記操作入力した制御信号に応じて、上記退避位置にあるカッター51を、縫針32に近づく上記初期位置へ戻るようにカッター進退用ステッピングモータ91を制御する。また制御装置5は、上記操作入力した制御信号に応じて、押え足12を加工布の開放位置(後述の図13参照)へ上昇させるように布押え用ステッピングモータ22を制御する。さらに制御装置5は、上記操作入力した制御信号に応じて、針棒31を左側に戻すように針棒左右揺動用ステッピングモータ36を制御する(後述の図16参照)。
【0050】
なお、警告ブザー124(報知手段)は、上記糸通しモードにおいて、カッター51が初期位置から退避位置へ移動するとき、及びカッター51が退避位置から初期位置へ戻るときに、カッター51が移動中であることを操作者に報知するために鳴動する。なお、警告ブザー124のみでなく、上記表示部119やLED等による表示による報知を行うようにしてもよい。
【0051】
図11は、穴かがりミシンMによって形成される穴かがり縫目60の平面図である。なお、図11において丸部分は縫針32の1ピッチごとの落下位置を表し、直線部分は上糸33による縫目を表している。この図11に示すように、穴かがり縫目60は、往千鳥部61、復千鳥部62、前閂止め部63、及び奥閂止め部64を有している。図中符号66は縫製開始位置、符号67は縫製終了位置を表しており、縫製開始位置66から開始して、前閂止め部63の一部、往千鳥部61、奥閂止め部64、復千鳥部62、前閂止め部63の残りの部分の順で縫製し、縫製終了位置67で縫製が終了する。その後カッター51がこの穴かがり縫目60の内側にボタン穴65を形成する。制御装置5は、縫製機構30が復千鳥部62の縫製後の前閂止め部63の縫製を行っているときにカッター51を下降させボタン穴65を形成するように、布送り機構10、縫製機構30、及びボタン穴形成機構50を制御する。なお、図中に示す縫製終了位置67の後の破線は、縫製終了後、加工布を布送りした際の縫針32の経路を示すものである。
【0052】
次に、制御装置5が糸通しモードの際に行う制御内容及びそのときの穴かがりミシンMの動作を、図12乃至図17を用いて説明する。なお、制御装置5は、操作者が操作パネル4の上記糸通しキー111を操作して糸通しモードを設定した際に、図12に示すフローチャートを開始する。
【0053】
図12において、ステップS5では、操作パネル4のブザー駆動回路(図示せず)へ制御信号を出力し、警告ブザー124を鳴動させる。
【0054】
ステップS10では、駆動回路72に制御信号を出力し、布押え用ステッピングモータ22を駆動させて押え足12を下降させる。これにより、押え足12は、図13に示す加工布の開放位置から図14に示す加工布の押圧位置へ下降する。
【0055】
ステップS15では、駆動回路76に制御信号を出力し、カッター進退用ステッピングモータ91を駆動させてカッター51を後退させる。これにより、カッター51は図14に示す初期位置から図15に示す退避位置へ後退する。なお、図14に示す初期位置における縫針32とカッター51との間隔L1は例えば2.2mm程度であり、図15に示す退避位置における間隔L2は例えば22.2mm程度である。すなわち、本実施形態ではカッター51を20mm程度後退させている。なお、これらの数値は一例であり装置仕様等に応じ適宜変更してもよい。
【0056】
ステップS20では、駆動回路73に制御信号を出力し、針棒左右揺動用ステッピングモータ36を駆動させて針棒31を右方へ針振りさせる。これにより、針棒31及び縫針32は、図16に示す初期位置(縫針32とカッター51とが布送り方向に対して同一線上に配置されている状態)から右側へ揺動して図17に示す退避位置に移動する。なお、本実施形態では針棒31を右側へ移動させるようにしたが、反対に左側に移動させてもよい。また例えば、操作者の利き腕等に応じて移動方向を切替可能としてもよい。
【0057】
ステップS25では、操作パネル4の表示制御回路(図示せず)へ制御信号を出力し、表示部119に「糸通し中」の表示を行うと共に、LED表示部112を点灯させる。
【0058】
ステップS30では、操作者が糸通し作業を終了してリセットキー123を操作したか否かを判定する。リセットキー123を操作するまで本判定を繰り返し(ステップS30でNO)、リセットキー123を操作した場合(ステップS30でYES)、次のステップS35に移る。
【0059】
ステップS35では、上記ステップS5と同様に、操作パネル4のブザー駆動回路(図示せず)へ制御信号を出力し、警告ブザー124を鳴動させる。
【0060】
ステップS40では、駆動回路73に制御信号を出力し、針棒左右揺動用ステッピングモータ36を駆動させて針棒31を元の位置へ戻す。これにより、針棒31及び縫針32は、図17に示す退避位置から左側へ揺動して図16に示す初期位置に移動する。
【0061】
ステップS45では、駆動回路76に制御信号を出力し、カッター進退用ステッピングモータ91を駆動させてカッター51を前進させる。これにより、カッター51は図15に示す退避位置から図14に示す初期位置へ前進する。
【0062】
ステップS50では、駆動回路72に制御信号を出力し、布押え用ステッピングモータ22を駆動させて押え足12を上昇させる。これにより、押え足12は、図14に示す加工布の押圧位置から図13に示す加工布の開放位置へ上昇する。
【0063】
ステップS55では、操作パネル4の表示制御回路(図示せず)へ制御信号を出力し、表示部119の「糸通し中」の表示を停止させると共に、LED表示部112を消灯させる。以上により、本フローを終了する。
【0064】
以上説明した実施形態の穴かがりミシンMによれば、以下の作用効果を奏する。すなわち、穴かがりミシンMは、送り台11と、縫針32と、カッター51とを有する。送り台11が加工布を布送りし、縫針32が上下動することにより、上糸33により加工布に穴かがり縫目60を形成する。また、カッター51が下降して加工布を切断することにより、ボタン穴65を形成する。ここで、カッター51は下降していない状態では加工布から少し離れた上方にて待機しており、通常、縫針32と比較的近接した位置にある。このため、縫製開始前に、操作者が縫針32の針穴に上糸33を通す糸通し作業を行う際に、そのままではカッター51が作業の妨げとなる。
【0065】
そこで本実施形態では、操作者が操作パネル4の糸通しキー111を用いて糸通しモードを設定すると、制御装置5が制御するカッター進退用ステッピングモータ91の駆動力によって、カッター51が、上記待機している初期位置より、縫針32から遠ざかる退避位置へと移動する。これにより、上記のような糸通し作業時にカッター51が妨げとなるのを回避し、容易に能率よく糸通し作業を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態では特に、操作パネル4にリセットキー123を設けている。カッター51を退避位置に移動させ糸通し作業を行った後、操作者は、リセットキー123を操作する。これにより、制御装置5が制御するカッター進退用ステッピングモータ91の駆動力によって、カッター51が、上記退避位置から初期位置へ復帰する。この結果、糸通し作業の完了後、円滑に縫製作業を開始することができる。
【0067】
また、本実施形態では特に、操作パネル4に警告ブザー124を設けており、カッター51の初期位置から退避位置への移動時、若しくは、カッター51の退避位置から初期位置への移動時、所定の報知を行う。これにより、操作者の操作入力に応じカッター51が移動中であることを、操作者に確実に認識させることができる。
【0068】
また、本実施形態では特に、操作者が操作パネル4の糸通しキー111を用いて糸通しモードを設定すると、制御装置5が制御する針棒左右揺動用ステッピングモータ36の駆動力によって、針棒31が左右いずれかに移動する。これにより、上記のようにしてカッター51を退避位置へと移動させるのに加えて、縫針32を、糸通し作業が行いやすい左右いずれかの位置(上記実施形態では右側位置)へ移動させることができる。この結果、さらに容易に糸通し作業を行うことができる。
【0069】
また、本実施形態では特に、操作者が操作パネル4の糸通しキー111を用いて糸通しモードを設定すると、制御装置5が制御する布押え用ステッピングモータ22の駆動力によって、押え足12が、加工布を押圧する押圧位置へ下降する。これにより、上記のようにしてカッター51を退避位置へと移動させるのに加えて、押え足12を、糸通し作業が行いやすい、妨げとならない下方の位置へ退避させることができる。この結果、さらに容易に糸通し作業を行うことができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0071】
(1)ボタン穴形成機構の変形例
図18は本変形例のボタン穴形成機構150の全体構造を斜め右上方向から見た斜視図であり、図19は斜め左上方向から見た斜視図である。図18及び図19に示すように、ボタン穴形成機構150は、カッター上下動駆動機構180とカッター進退駆動機構190とを有している。カッター上下動駆動機構180は、カッター51を上下動させるためのカッター駆動用ソレノイド181を備えている。カッター進退駆動機構190は、カッター51を進退させるためのカッター進退用ステッピングモータ191(第1アクチュエータに相当)を備えている。
【0072】
カッター上下動駆動機構180は、第2上下動リンク機構184と第2カッター取付板153(第2取付部材に相当)とを有している。第2上下動リンク機構184は、後述する第2カッター取付板153を進退可能に作動連結し、カッター駆動用ソレノイド181の駆動力により第2カッター取付板153を上下動させる。第2カッター取付板153は、長手方向中央部に開口部153aを有する。第2カッター取付板153は、その下端部にカッターホルダ52を固着している。カッターホルダ52は、その下部にカッター51を着脱可能に固着している。第2上下動リンク機構184は、略L字形状のカッター作動腕185と、このカッター作動腕185の前方部分を上方へ付勢するバネ部材186と、スライダ187とを有している。スライダ187は、カッター作動腕185の前端部分に連結し、第2カッター取付板153の開口部153a内を前後方向に摺動可能である。カッター作動腕185は、支持軸185aがカッター作動腕185の前後方向中央部を支持する。カッター作動腕185は、支持軸185aを支点として、ミシン機枠に対し揺動可能となっている。カッター作動腕185は、その後上端部が、カッター駆動用ソレノイド181から前方へ突出したプランジャ181aに回動可能に連結している。カッター作動腕185が反時計回り(図18において)に往動すると、スライダ187は第2カッター取付板153を下方に移動させる。この場合、スライダ187は開口部153a内を前方(図18において)に移動する。カッター作動腕185が時計回り(図18において)に往動すると、スライダ187は第2カッター取付板153を上方に移動させる。この場合、スライダ187は開口部153a内を後方(図18において)に移動する。
【0073】
前述したカッター上下動駆動機構180は、カッター駆動用ソレノイド181のプランジャ181aが突出/退避することで、カッター作動腕185、スライダ187、第2カッター取付板153、及びカッターホルダ52を介してカッター51を上下動させる。
【0074】
カッター進退駆動機構190は、第2軸保持部材192と、進退リンク機構193とを有している。第2軸保持部材192は、第2カッター取付板153を上下動可能に保持する。進退リンク機構193は、カッター進退用ステッピングモータ191の駆動力により第2軸保持部材192を進退動作させる。進退リンク機構193は、第1クランク板194と、第2クランク板195とを有している。進退リンク機構193は、カッター進退用ステッピングモータ191から右方へ突出した出力軸191a(図示せず)に連結し、出力軸191aを中心に回動する。第2クランク板195は、その後端側を第1クランク板194に回動可能に連結している。第2クランク板195は、その前端側を第2軸保持部材192に回動可能に連結している。第2軸保持部材192は、ミシン機枠に固定したスライド支持部材196と、スライド軸197と、軸受け198と、係合部材199とで構成している。スライド支持部材196は、上下2本のスライド軸197を支持している。各スライド軸197は、軸受け198を摺動可能に支持している。各軸受け198は、第2カッター取付板153と係合し、第2カッター取付板153を上下に摺動可能に且つ前後の移動を規制する係合部材199を備えている。
【0075】
前述したカッター進退駆動機構190は、カッター進退用ステッピングモータ191の出力軸191aが回動することによって、第1及び第2クランク板194,195、第2軸保持部材192、第2カッター取付板153、及びカッターホルダ52を介してカッター51を進退駆動させることができる。
【0076】
図20(a)及び図20(b)は、カッター上下動駆動機構180によるカッター51の上下動動作を表す図である。図20(a)は前述した図18と同じ状態を表している。図20(a)に示すように、カッター駆動用ソレノイド181のプランジャ181aが後方に退避すると(矢印X1参照)、カッター作動腕185が支持軸185a回りに回動する(矢印X2参照)。カッター作動腕185の回動は、スライダ187を上昇させる。それ故、第2カッター取付板153は、開口部153a内においてスライダ187を前方に摺動させつつスライダ187と共に上昇する(矢印X3参照)。その結果、カッターホルダ52と共にカッター51が上昇する(矢印X4参照)。図20(b)に示すようにカッター駆動用ソレノイド181のプランジャ181aが前方に突出すると(矢印X5参照)、カッター作動腕185が支持軸185a回りに回動し(矢印X6参照)、この回動によりスライダ187が下降する。それ故、第2カッター取付板153は、開口部153a内においてスライダ187を後方に摺動させつつスライダ187と共に下降する(矢印X7参照)。その結果、カッターホルダ52と共にカッター51が下降する(矢印X8参照)。これにより送り台11上の加工布を切断することができる。
【0077】
図21(a)及び図21(b)は、カッター進退駆動機構190によるカッター51の進退動作を表す図である。図21(a)は前述した図19と同じ状態を表している。図21(a)に示すように、カッター進退用ステッピングモータ191の出力軸91aに連結した第1クランク板194が前方側に回動すると(矢印Y1参照)、第1クランク板194及び第2クランク板195が回動動作を前後方向の進退動作に変換する(矢印Y2参照)。これにより第2軸保持部材192が第2カッター取付板153と共に前方側に摺動する(矢印Y3参照)。その結果、第2カッター取付板153の下端部にカッターホルダ52を介して連結したカッター51が、前方に進む(矢印Y4参照)。
【0078】
図21(b)に示すように、カッター進退用ステッピングモータ191の出力軸91aに連結した第1クランク板194が後方側に回動すると(矢印Y5参照)、第1クランク板194及び第2クランク板195が回動動作を前後方向の進退動作に変換する(矢印Y6参照)。これにより第2軸保持部材192が第2カッター取付板153と共に後方側に摺動する(矢印Y7参照)。その結果、第2カッター取付板153の下端部にカッターホルダ52を介して連結したカッター51が、後方に退く(矢印Y8参照)。
【0079】
本変形例の穴かがりミシンMの上記以外の構成及び制御装置5の制御内容については、前述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0080】
以上説明した変形例においては、カッター51を取り付けるための第2カッター取付板153に対しカッター上下動駆動機構180の第2上下動リンク機構184を作動連結しており、カッター駆動用ソレノイド181の駆動力を伝達して、第2カッター取付板153を上下動させる。これにより、カッター51を加工布に対して下降させることができる。また、第2軸保持部材192は第2カッター取付板153を上下動可能に保持しており、この第2軸保持部材192に対しカッター進退駆動機構190の進退リンク機構193がカッター進退用ステッピングモータ191の駆動力を伝達し、第2軸保持部材192を進退させる。これにより、カッター52を穴かがり縫目60の長軸方向に沿って進退させることができる。
【符号の説明】
【0081】
5 制御装置(制御手段)
11 送り台
12 押え足(布押さえ)
22 布押え用ステッピングモータ(第3アクチュエータ)
32 縫針
33 上糸(針糸)
36 針棒左右揺動用ステッピングモータ(第2アクチュエータ)
51 カッター
60 穴かがり縫目
65 ボタン穴
91 カッター進退用ステッピングモータ(第1アクチュエータ)
111 糸通しキー(退避操作手段)
113 選択キー
123 リセットキー(復帰操作手段)
124 警告ブザー(報知手段)
191 カッター進退用ステッピングモータ(第1アクチュエータ)
M 穴かがりミシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工布を布送りする送り台と、
針糸を担持し、上下動して加工布に穴かがり縫目を形成する縫針と、
加工布を切断してボタン穴を形成するとともに、ミシンの機枠に対し前記送り台の送り方向に沿って進退可能に設けたカッターと、
前記カッターを作動連結し、前記カッターを進退駆動させる駆動力を発生する第1アクチュエータと、
操作者が前記カッターの退避指示を操作入力可能な退避操作手段と、
前記退避操作手段によって操作入力した前記退避指示に応じて、初期位置にある前記カッターを、前記縫針から遠ざかる退避位置へ移動するように前記第1アクチュエータを制御する制御手段と
を有することを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項2】
請求項1記載の穴かがりミシンにおいて、
操作者が前記カッターの復帰指示を操作入力可能な復帰操作手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記復帰操作手段によって操作入力した前記復帰指示に応じて、前記退避位置にある前記カッターを、前記縫針に近づく前記初期位置へ戻るように前記第1アクチュエータを制御する
ことを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の穴かがりミシンにおいて、
前記制御手段の制御により、前記カッターが前記初期位置から前記退避位置へ移動するときに、若しくは、前記カッターが前記退避位置から前記初期位置へ戻るときに、所定の報知を行う報知手段をさらに備えることを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の穴かがりミシンにおいて、
前記縫針を備えた針棒に作動連結し、前記針棒を左右揺動させる駆動力を発生する第2アクチュエータをさらに備え、
前記制御手段は、
前記操作者が操作入力した前記退避指示に応じて、前記針棒を左右いずれかに移動するように前記第2アクチュエータを制御する
ことを特徴とする穴かがりミシン。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の穴かがりミシンにおいて、
前記送り台に載置した加工布を押圧する布押さえと、
前記布押さえに作動連結し、前記布押さえを上下動させる駆動力を発生する第3アクチュエータと
をさらに備え、
前記制御手段は、
前記退避操作手段によって操作入力した前記退避指示に応じて、前記布押さえを加工布の押圧位置へ下降させるように前記第3アクチュエータを制御する
ことを特徴とする穴かがりミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−220930(P2010−220930A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73625(P2009−73625)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】