説明

空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造

【課題】空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造において、空冷構造を有する空冷式バッテリユニットの内部への水の浸入を防止し、簡素な構造を用いてコンパクトに収めることにある。
【解決手段】冷却用ファン(15)のケース(17)を空冷式バッテリユニット(11)の上面から上方に突出させて設け、冷却用ファン(15)のケース(17)から延出するように冷却ダクト(13)を設け、冷却ダクト(13)の中間部を冷却用ファン(15)のケース(17)の上方を跨ぎ越すように配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造に係り、特に車両のフロアパネルの下方で車室外に搭載される空冷式バッテリユニットの内部を外気で冷却する空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や化石燃料の枯渇問題等の地球規模での資源、環境問題が発生していることを受け、電気自動車、ハイブリッド車等の電動車両の開発が行われている。
このような電動車両においては、バッテリを車室内に載置しており、荷室、車室の内部が共にバッテリの設置分だけ狭くなってしまう。特に、電気自動車においては、ガソリンエンジンとの併用ではなく、バッテリのみでの走行となるため、走行距離を確保するために、車両に搭載するバッテリ数がハイブリッド車の場合よりも遥かに多く、車室内に搭載することができないものである。
また、バッテリの冷却用ファンによる駆動音や通風孔等が車室内にある場合に、風音が車室内に響くことがある。
そこで、車室外、特に、フロアパネルの下方にバッテリを載置することで、車室内のスペースを確保することができ、冷却用ファンや冷却ダクト等も車室外に設けることで、風音の問題も克服している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1997−109692号公報
【0004】
特許文献1に係る電気自動車は、複数のバッテリを搭載したバッテリフレームに対するエアの吸入口及び排出口をフロアパネルよりも高位置に設けることにより、雨天の走行時や冠水した道路の走行時に、水等がバッテリフレーム内に入り込むのを防止するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来、バッテリを車室外に載置し、冷却ダクトを車室外に載置した場合に、冷却用ファン等の部品がフロアパネルの下方に載置されることなり、このため、降雨時や冠水状態の路面等を走行した場合に、冷却ダクトや冷却用ファンに水が浸入し、この水がバッテリに触れることで、漏電や感電等が発生するおそれがあった。
また、上記の特許文献1では、バッテリの上面に冷却用ファンを設けた場合に、フロアパネルで囲まれた空間にバッテリユニットを搭載したとしても、車両の後進の場合や前進時等での巻上げ水が、フロアパネルに当たって冷却ダクトの開口端から浸入するおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、空冷構造を有する空冷式バッテリユニットの内部への水の浸入を防止すること、簡素な構造を用いてコンパクトに収めることができる空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両のフロアパネルの下方に車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレームとこの左右一対のサイドフレーム間を連結する複数のクロスメンバとを設け、前記左右一対のサイドフレームと前記複数のクロスメンバとによって囲まれた上下方向で扁平な直方体状の空間を利用して空冷式バッテリユニットを搭載し、この空冷式バッテリユニットは外部の空気を取り込んで内部のバッテリを冷却するための冷却ダクトと冷却用ファンとを備えた空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造において、前記冷却用ファンのケースを前記空冷式バッテリユニットの上面から上方に突出させて設け、前記冷却用ファンのケースから延出するように前記冷却ダクトを設け、前記冷却ダクトの中間部を前記冷却用ファンのケースの上方を跨ぎ越すように配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造は、空冷構造を有する空冷式バッテリユニットの内部への水の浸入を防止し、また、簡素な構造を用いてコンパクトに収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両の平面図である。(実施例)
【図2】図2は車両の斜視図である。(実施例)
【図3】図3は車体と空冷式バッテリユニットとを切り離した分解図である。(実施例)
【図4】図4は冷却ダクトの取付部位の左側面図である。(実施例)
【図5】図5は冷却ダクトを取付部位の斜視図である。(実施例)
【図6】図6は冷却ダクトの取付部位で水の流れを示す側面図である。(実施例)
【図7】図7は冷却ダクトの取付部位で水の流れを示す平面図である。(実施例)
【図8】図8はフィルタを取り付けた冷却ダクトの取付部位の正面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、空冷構造を有する空冷式バッテリユニットの内部への水の浸入を防止し、簡素な構造を用いてコンパクトに収める目的を、冷却用ファンのケースを空冷式バッテリユニットの上面から上方に突出させて設け、冷却用ファンのケースから延出するように冷却ダクトを設け、冷却ダクトの中間部を冷却用ファンのケースの上方を跨ぎ越すように配設して実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図8は、この発明の実施例を示すものである。
図1〜図3において、1は電気自動車やハイブリッド車等の電動車両(以下「車両」という)、2は車体、3はフロアパネルである。
車体2には、フロアパネル3の下方に車両前後方向Xに延びる左右一対のサイドフレームとして、左サイドフレーム4L・右サイドフレーム4Rと、この左サイドフレーム4L・右サイドフレーム4R間を連結して車両幅方向Yに延びる複数のクロスメンバとして、前側クロスメンバ5・中間クロスメンバ6・後側クロスメンバ7とが設けられている。
左サイドフレーム4Lの外側面には、左フロントステップ8Lと、左リアステップ9Lとが設けられている。右サイドフレーム4Rの外側面には、右フロントステップ8Rと、右リアステップ9Rとが設けられている。
【0012】
図3に示すように、左サイドフレーム4L・右サイドフレーム4Rと前側クロスメンバ5・中間クロスメンバ6・後側クロスメンバ7とによって囲まれて車両前後方向Xに長く且つ上下方向で扁平な直方体状の空間10には、空冷式バッテリユニット11が搭載される。この場合、空冷式バッテリユニット11は、フロアパネル3の下方で、空間10の中心に一致するように配置されている。
空冷式バッテリユニット11は、複数のバッテリを組み合わせて車両中央寄りに配置されたユニット本体12と、外部の空気を取り込んで内部のバッテリを冷却するための冷却ダクト13としての、例えば、排気ダクト14と、冷却用ファン15とを備えている。排気ダクト14及び冷却用ファン15は、ユニット本体12の上部に配置される。
図4、図8に示すように、排気ダクト14は、開口端16を備えて、冷却用ファン15近傍に配設され、冷却用ファン15の載置部位の四方向の何れかの方向に設けられた吸排気口に接続し、そして、冷却用ファン15を覆うケース17の上部まで一度上げられ、このケース17の上部を通って下方へ延びている。
図5に示すように、排気ダクト14は、冷却用ファン15の部位で取付具によってユニット本体12に固定され、これにより、劣化や破損等の場合に、その交換を容易に実施させることができる。
また、図3に示すように、空冷式バッテリユニット11は、左側面で、車両前後方向Xに離間し且つ車両幅方向Yに突出させた左フロントマウント部18Lと左リアマウント部19Lとを有するとともに、右側面で、車両前後方向Xに離間し且つ車両幅方向Yに突出させた右フロントマウント部18Rと右リアマウント部19Rとを有して、左サイドフレーム4Lと右サイドフレーム4Rとの車両前後方向Xの中間部位の下面に夫々取り付けられ、車体2へ強固に固定される。
【0013】
また、空冷式バッテリユニット11においては、車両前後方向Xに離間して設けられた左フロントマウント部18Lと左リアマウント部19Lとの間で且つ中間部位に、高電圧ケーブル類を接続するケーブル接続部20が、奥に引込むように凹んで設けられている。
また、図3に示すように、左サイドフレーム4Lと右サイドフレーム4Rとには、前端部で、パワーユニットを搭載するサブフレーム21が固設されている。つまり、空間10において、中間クロスメンバ6が左サイドフレーム4Lと右サイドフレーム4Rとの間を連結するように設けられているとともに、電気装置等搭載用のサブフレーム21が左サイドフレーム4Lと右サイドフレーム4Rとの間を連結するように設けられている。
【0014】
冷却用ファン15は、ケース17が空冷式バッテリユニット11のユニット本体12の上面から上方に突出して設けられている。冷却用ファン15のケース17には、このケース17から延出するように排気ダクト14が設けられる。そして、排気ダクト14の中間部14Mは、冷却用ファン15のケース17の上方を跨ぎ越すように配設されている。つまり、空冷式バッテリユニット11の上面の後端付近他側に設けた冷却用の空気を排出する排気ダクト14及び冷却用ファン15は、排気ダクト14が部分的に冷却用ファン15の上方を跨ぎ越すように配策されている。
このように、空冷式バッテリユニット11のユニット本体12の上面から突出する冷却用ファン15のケース17の上方を跨ぎ越すように、排気ダクト14が配設されていることから、上下方向での所定の高さを確保し、図6に示すように、排気ダクト14の開口端16を横に向けた場合でも、水の流れと開口端16の面とが平行になって水の浸入を防止でき、冷却用ファン15に水を掛けることがない。
また、排気ダクト14は、排気を、冷却用ファン15の車両側方に面する外方側から導出し、一旦、上方に上げてから、車両中央よりとなる車両幅方向Yの内方側で車両幅方向Yに向けた開口端16から排出する。この上方に上げられる排気ダクト14の中間部14Mは、通路断面形状を上下方向に薄い扁平な形状であって、上下方向の高さを抑えている。
【0015】
即ち、図7に示すように、車両1の前進時に、前方より冷却式バッテリユニット11の上部に浸入した水は、一点鎖線の示す矢印のように流れ、排気ダクト14の開口端16の面と平行に流れる。また、排気ダクト14の側面に当たる水は、跳ね返るか車両幅方向Yの方向に流れて行き、排気ダクト14内には入らないようにする。
また、図8に示すように、冷却用ファン15の上部に排気ダクト14を通すことで、冷却用ファン15の開口面積確保のために下げられていたとしても、冷却用ファン15まで流れるには、冷却用ファン15の上部の排気ダクト16内を通る必要があり、冷却用ファン15まで水が流れ込むことがない。
また、冷却用ファン15が車両1の他部と接続されていないため、冷却式バッテリユニット11を降ろす等のメンテナンスを行うときにも、作業性を良くできる。
【0016】
また、冷却式バッテリユニット11の上面は、下面と同様に、全体的に略水平な平面状に形成されており、幾つかの機能部が上方に突出して設けるように、前端付近一側には、バッテリの冷却用の空気を取り入れる吸気ダクト22を備え、また、後端付近他側には、バッテリの冷却用の空気を排出する排気ダクト14及び冷却用ファン15を備え、更に、中間部位の他側では、高電圧バッテリの導通を遮断するサービスプラグ部23を備えている。吸気ダクト22は、冷却ダクト13の一部を構成するものである。
吸気ダクト22は、フロアパネル3を貫通するように上方へ延出し、比較的清浄な空気を取り込むことができる。これにより、冷却式バッテリユニット11の内部は、その下流側に設けられる冷却用ファン15の吸出し動作によって冷却風の流れを生じさせ、概ね一方通行であり、配列された個々のバッテリを均一的に冷却する。
また、排気ダクト14及び冷却用ファン15、吸気ダクト22、サービスプラグ部23は、いずれも、車両前後方向Xに長く且つ上下方向で扁平な略直方体状の空間10を利用して配設されている。
【0017】
排気ダクト14の開口端16付近の形状は、図8に示すように、上面が排気ダクト14の中間部14Mの上面高さを維持するとともに下面が空冷式バッテリユニット11の上面に近づけることにより、上下方向の高さの所定の空間としての気液分離空間24を形成する。
これにより、排気ダクト14の壁面を用いて、水波の奥までの流れ込みを防止するストッパとしての縦壁25を形成でき、気液分離可能な気液分離空間24を確保して、水の浸入を防止できる。
【0018】
排気ダクト14の開口端16は、クロスメンバとしての中間クロスメンバ6の背後となる車両幅方向Yの中央付近に配置しつつ車両幅方向Yに指向させて設けられている。
この排気ダクト14の開口端16は、車両幅方向Yに指向することで、車両進行方向に直交させ、慣性によって車両前後方向Xに流れやすい水液の直接的な浸入を防止している。
また、開口端16は、左サイドフレーム4L・右サイドフレーム4Rと前側クロスメンバ5・中間クロスメンバ6・後側クロスメンバ7とによって囲まれて車両前後方向Xに長く且つ上下方向で扁平な直方体状の空間10の高さを利用して設けられ、中間クロスメンバ6の後方近傍(背面)に位置している。
また、図4、図8に示すように、排気ダクト14の開口端16には、直排水が浸入しないように、上下方向の長さを確保したフィルタ26が設けられている。このフィルタ26は、塵や埃、砂の浸入防止と、水液の直接的な浸入を防止する。
図4に示すように、排気ダクト14の開口端16付近は、フィルタ26に対し排気ダクト14の内部背面に上下方向で高さのある気液分離空間24を形成し、縦壁25によるウォーク・ストップ機能や気液分離を行っている。
これにより、排気ダクト14の開口端16をより水液の浸入をし難い位置且つ向きとすることで、さらに防水効果を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明に係る空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造は、冷却用ファン近傍に冷却ダクトを設け、車両構造に依存しないため、セダン、ハッチバックタイプやトラック、ワゴンタイプ等の車両形状や、さらに、電動車両以外で、全ての車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 車両
2 車体
3 フロアパネル
4L 左サイドフレーム
4R 右サイドフレーム
5 前側クロスメンバ
6 中間クロスメンバ
7 後側クロスメンバ
10 空間
11 空冷式バッテリユニット
13 冷却ダクト
14 排気ダクト
15 冷却用ファン
16 排気ダクトの開口端
17 冷却用ファンのケース
21 サブフレーム
22 吸気ダクト
24 気液分離空間
25 縦壁
26 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルの下方に車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレームとこの左右一対のサイドフレーム間を連結する複数のクロスメンバとを設け、前記左右一対のサイドフレームと前記複数のクロスメンバとによって囲まれた上下方向で扁平な直方体状の空間を利用して空冷式バッテリユニットを搭載し、この空冷式バッテリユニットは外部の空気を取り込んで内部のバッテリを冷却するための冷却ダクトと冷却用ファンとを備えた空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造において、前記冷却用ファンのケースを前記空冷式バッテリユニットの上面から上方に突出させて設け、前記冷却用ファンのケースから延出するように前記冷却ダクトを設け、前記冷却ダクトの中間部を前記冷却用ファンのケースの上方を跨ぎ越すように配設したことを特徴とする空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造。
【請求項2】
前記冷却ダクトの開口端は、上面が前記冷却ダクトの中間部の上面高さを維持するとともに下面が前記空冷式バッテリユニットの上面に近づけることにより、上下方向の高さで所定の空間を形成することを特徴とする請求項1に記載の空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造。
【請求項3】
前記冷却ダクトの開口端を前記クロスメンバの背後となる車両幅方向の中央付近に配置しつつ車両幅方向に指向させて設け、前記冷却ダクトの開口端にフィルタを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空冷式バッテリユニットの冷却ダクト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106656(P2012−106656A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257649(P2010−257649)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】