説明

空気入りタイヤの製造方法

【課題】タイヤの成形精度を確保しつつ、成形時間を短縮して生産能率を向上することができる空気入りタイヤの製造方法を提供すること。
【解決手段】環状のアペックスゴム15を射出成形し、それを未加硫状態に保持しながら成形型を型開きしてアペックスゴム15の側面15aを環状に露出させる。また、環状のゴムパッド18を射出成形し、それを未加硫状態に保持しながら成形型を型開きしてゴムパッド18の側面18aを環状に露出させる。その後、アペックスゴム15を保持する下型37とゴムパッド18を保持する下型47とを重ねて、アペックスゴム15の側面15aをゴムパッド18の側面18aに貼り合わせて一体化した複合ゴム部材19を形成し、その複合ゴム部材19をカーカスプライに貼り合わせて未加硫タイヤの成形に供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状に形成したカーカスプライに複数のゴム部材を貼り合わせて未加硫タイヤを成形する工程を備える空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、カーカスプライを骨格として、その内外に種々のゴム部材を貼り合わせることで構成されるゴム複合体であり、その製造工程では、筒状に形成したカーカスプライに製造ラインで複数のゴム部材が貼り合わされて未加硫タイヤが成形される。これらのゴム部材の中には、オンラインで成形ドラムやカーカスプライに巻き付けて環状に又は円筒状に形成されるものと、オフライン製作により予め環状に形成されていて、必要なタイミングで製造ラインに供給されるものとがある。
【0003】
このようなオフライン製作が可能なゴム部材は、従来、押出機により成形された押出品をターンテーブルで回転させて環状に形成し、それを所定長でカットして端部同士をジョイントすることで製作している。しかし、この方法では、端部同士の重ね合わせ或いは密着によってジョイント部分が局所的に厚肉となるため、ゴム部材の形状が周方向で不均一になり、タイヤのユニフォミティを低下させるという問題がある。
【0004】
これに対して、下記特許文献1に開示されているような、幅狭のゴムリボンをらせん状に巻き付けて環状のゴム部材を製作する、いわゆるリボン巻き工法も知られている。しかし、この方法では、ゴム部材の形状均一性が向上するものの、巻き付け工数が増えるために成形時間が長くなるうえ、ゴムリボンの界面に沿って亀裂が発生し易くなるという問題がある。
【0005】
また、下記特許文献2に開示されているように、射出成形法を利用することが考えられる。該特許文献には、成形型のキャビティに未加硫ゴム組成物を射出注入することで環状のビードフィラーやサイドウォールゴムを成形し、それを被覆部材(トレイ)を用いて脱型する手法が記載されている。かかる方法によれば、上述した押出成形法やリボン巻き工法に比べて成形時間を大幅に短縮でき、しかもゴム部材の形状均一性を比較的良好に確保することができる。
【0006】
ところで、オフライン製作が可能なゴム部材としては、ビードフィラー以外にも種々のものがある。例えば、図1に示したダブルビードタイプのタイヤでは、その環状膨出部10が複数の環状のゴム部材で構成されており、これらはオフライン製作が可能である。但し、これらのゴム部材をオフライン製作した場合であっても、ゴム部材をオンラインで位置決めして貼り合わせるという工程が部材点数に応じて必要になるため、タイヤの成形精度や生産能率の点において未だ改善の余地があることが判明した。
【特許文献1】特開2004−338626号公報
【特許文献2】特開2006−248037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤの成形精度を確保しつつ、成形時間を短縮して生産能率を向上することができる空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、筒状に形成したカーカスプライに複数のゴム部材を貼り合わせて未加硫タイヤを成形する工程を備える空気入りタイヤの製造方法において、第1の成形型のキャビティに未加硫ゴム組成物を射出注入して環状の第1のゴム部材を成形し、前記第1のゴム部材を未加硫状態に保持しながら前記第1の成形型を型開きして前記第1のゴム部材の側面を環状に露出させる第1の工程と、第2の成形型のキャビティに未加硫ゴム組成物を射出注入して環状の第2のゴム部材を成形し、前記第2のゴム部材を未加硫状態に保持しながら前記第2の成形型を型開きして前記第2のゴム部材の側面を環状に露出させる第2の工程と、前記第1の工程と前記第2の工程の後、前記第1のゴム部材を保持する前記第1の成形型の型部と、前記第2のゴム部材を保持する前記第2の成形型の型部とを重ねて、前記第1のゴム部材の露出した側面を前記第2のゴム部材の露出した側面に貼り合わせて一体化した複合ゴム部材を形成する第3の工程と、前記カーカスプライに前記複合ゴム部材を貼り合わせる第4の工程と、を備えるものである。
【0009】
本発明は、上記の如き第1〜第3の工程により環状の複合ゴム部材を成形し、それを上記の如き第4の工程にてカーカスプライに貼り合わせるものである。この複合ゴム部材はオフライン製作が可能であり、本発明は、以下に詳しく述べるように、オフライン製作が可能なゴム部材を精度良く成形することでタイヤの成形精度を確保し、カーカスプライに対するゴム部材の貼り合わせを効率的に行うことでタイヤの生産能率を向上できるものである。
【0010】
即ち、従来の製法であれば、射出成形したゴム部材を単品で脱型し、それを製造ラインに単品で供給して貼り合わせるのに対し、本発明では、第1のゴム部材と第2のゴム部材とを一体化した複合ゴム部材として供給するため、製造ラインでの貼り合わせ作業を簡略化でき、タイヤの成形時間を短縮して生産能率を向上することができる。しかも、第1のゴム部材と第2のゴム部材との貼り合わせを、第1及び第2のゴム部材を保持する成形型の型部同士を重ねることで行うため、ゴム部材を脱型後に貼り合わせる場合に比べて位置決め精度が向上し、タイヤの成形精度を確保することができる。
【0011】
なお、本発明では、第1及び第2ゴム部材がそれぞれ射出成形されるために形状均一性に優れたものとなり、タイヤのユニフォミティが良好に確保される。また、第1及び第2のゴム部材が未加硫状態に保持されているため、カーカスプライに対する複合ゴム部材の接着性が良好となり、タイヤ加硫時に過加硫を生じることもない。ここで、「未加硫状態」とは、加硫が行われていない状態を指すが、加硫反応が全く進行していないものに限られず、半加硫状態やJISK6200で定義される加硫不足(最適加硫に到達していない加硫状態)に相当するものも含むものとする。
【0012】
上記において、前記第4の工程における前記カーカスプライが、中央部を径方向外側に膨出させるとともに端部を巻き上げた状態にあることが好ましく、これにより複合ゴム部材の形状変化を抑えて、タイヤの成形精度をより好適に確保することができる。
【0013】
本発明は、前記第1のゴム部材及び前記第2のゴム部材が、ビード部のタイヤ幅方向外側に膨出形成された環状膨出部を構成するものである場合に特に有用である。その理由は、かかる環状膨出部は部品点数が多くなりがちで、従来の製法では工数が増加してタイヤ成形作業が煩雑化する傾向にあるところ、上記した本発明によれば、成形時間を短縮して生産能率を向上することができるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明により製造される空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。この空気入りタイヤは、一対のビード部1と、ビード部1から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2間に設けられたトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等のビードワイヤの収束体よりなる環状のビード1aと、ビード1aのタイヤ径方向外側にて断面三角形状をなすビードフィラー12とが配されており、それらを挟み込むようにカーカスプライ14の端部が外側に巻き上げられている。
【0016】
カーカスプライ14の内周側には、空気圧保持のためのインナーライナーゴム5が配されている。また、カーカスプライ14のビード部1外側には、リムストリップゴム17が配され、カーカスプライ14のサイドウォール部2外側には、サイドウォールゴム11が配されている。更に、カーカスプライ14のトレッド部3外周側には、たが効果による補強を行うためのベルト6及びベルト補強材7が配され、更にその外周側にトレッドゴム4が配されている。カーカスプライ14は、タイヤ赤道Cに対して略90°の角度で延びるプライコードからなり、該プライコードとしては、スチールやポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機系繊維等を使用できる。
【0017】
この空気入りタイヤは、パンク等によって内圧が低下した場合でも走行可能なランフラットタイヤであり、そのサイドウォール部2の内側に断面三日月状をなす補強ゴムパッド9が配されている。補強ゴムパッド9は、内圧が低下したタイヤを支持して完全に偏平化することを防止する機能を有し、例えばJISK6253のタイプAデュロメータ硬さ試験に準じて測定したゴム硬度が65〜90゜のゴム部材により構成される。なお、本発明により製造される空気入りタイヤはランフラットタイヤに限られない。
【0018】
また、この空気入りタイヤは、ビード部1のタイヤ幅方向外側に膨出形成された環状膨出部10を有し、ビード1bが環状膨出部10に配されたダブルビードタイプのランフラットタイヤである。かかるタイヤでは、ランフラット走行時において、ビード1bにより補強された環状膨出部10がリムフランジ8aに押圧されるため、ビード部1のリム8からの脱落が防止される。ビード1bは、ビード1aと同じビードワイヤの収束体からなるものに限られず、例えば有機繊維の収束体からなるものや繊維強化ゴムを素材としたゴムビード等であってもよい。
【0019】
環状膨出部10は、リムフランジ8aよりもタイヤ幅方向外側に膨出するとともに、リムフランジ8aの外周側湾曲面に沿った内周面を有する。この内周面は、耐摩耗性に優れたリムストリップゴム17により構成されており、本実施形態ではチェーファ等からなる補強層16が内周面に沿って配されている。また、環状膨出部10には、ビード1bのタイヤ径方向外側に断面三角形状をなして配されたアペックスゴム15と、カーカスプライ14の巻き上げられた端部に隣接配置されたゴムパッド18とが配されている。環状膨出部10は、少なくとも一方のビード部1に形成されていればよく、例えば装着時に車両外側となる側にのみ形成するものでも構わない。
【0020】
以下、この空気入りタイヤを製造する方法について説明する。図2は、この空気入りタイヤを製造する様子を概略的に示す断面図である。
【0021】
まず、図2(a)に示すように、成形ドラム20の外周面にインナーライナーゴム5及び補強ゴムパッド9を巻き付け、インナーライナーゴム5の上に補強ゴムパッド9が巻き付けられた状態でそれぞれ円筒状に形成する。続いて、それらの外周側にカーカスプライ14を配設して筒状に形成し、オフラインにて予め環状に形成しておいたビード1a及びビードフィラー12を所定位置に外挿する。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、カーカスプライ14の端部をビード1aを介して巻き上げ、ビード1a及びビードフィラー12を挟み込む。かかる巻き上げ動作は、手作業により行ってもよいが、ブラダー(不図示)により行うこともできる。また、端部の巻き上げと前後して又は同時に、カーカスプライ14の中央部(図2では左側部)を径方向外側に膨出変形させる。かかる膨出変形は、公知のビードロック機構(不図示)によりビード1aを固定し、それらを近接変位させながら、カーカスプライ14の中央部内周側に配設された拡縮自在の剛性コアやブラダー等の拡径機構(不図示)により行うことができる。
【0023】
次に、図2(c)に示すように、カーカスプライ14の側方部に、環状膨出部10を構成するためのビード1b、アペックスゴム15及びゴムパッド18を貼り合わせ、それらの外側に補強層16、リムストリップゴム17及びサイドウォールゴム11を貼り合わせる。リムストリップゴム17及びサイドウォールゴム11の貼り合わせは、ブラダー(不図示)により巻き上げることで行うことができる。その後、カーカスプライ14を更に膨出変形させ、その外周側に配置しておいたトレッド部材(不図示)の内周面に貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。トレッド部材は、トレッドゴム4、ベルト6及びベルト補強材7を別工程にて一体化して製作された円筒状部材である。
【0024】
上記のような未加硫タイヤを成形する工程は、成形ドラム20上で行われ、オンライン作業となるが、アペックスゴム15及びゴムパッド18は、オフライン製作により予め環状に形成しておき、必要なタイミングで製造ラインに供給してカーカスプライ14に貼り合わせることができる。以下、アペックスゴム15及びゴムパッド18を成形してから貼り合わせに至るまでの工程について説明する。なお、本実施形態では、アペックスゴム15が前記第1のゴム部材に相当し、ゴムパッド18が前記第2のゴム部材に相当する。
【0025】
図3は、アペックスゴム15を成形する様子を概略的に示す断面図である。成形型36(前記第1の成形型に相当する。)は、上面に環状凹溝39が形成された下型37と、下型37の上方に配された上型38とを備え、下型37を上型38に対して相対的に昇降させることで開閉可能に構成されている。環状凹溝39の底部には、図3(b)に示すようにビード1bが配設され、型締めすることでアペックスゴム15に対応した形状のキャビティ31が両型37、38の界面に形成される。
【0026】
上型38には、その上面の中心から下方に向かって延びるスプルー、該スプルーから幅方向両側に分岐して延びるランナー、及び、該ランナーの端部から断面積を小さくしながら延びるゲートからなる供給経路32が形成されており、不図示の射出機構より未加硫ゴム組成物をキャビティ31に射出注入可能に構成されている。また、成形型36には、不図示の温調機構が設けられており、その温度や温調タイミングなどを制御可能に構成されている。
【0027】
本実施形態では、次のようにしてアペックスゴム15を成形する。即ち、下型37の環状凹溝39にビード1bを配設した後、図3(b)に示すように成形型36を型締めし、内部に形成したキャビティ31に未加硫ゴム組成物を射出注入することで、環状のアペックスゴム15をビード1bと一体的に成形し、続いて、成形したアペックスゴム15を未加硫状態に保持しながら成形型36を型開きし、図3(c)に示すようにアペックスゴム15の側面15aを環状に露出させる(前記第1の工程に相当する。)。
【0028】
上記において、未加硫ゴム組成物を射出注入するときの成形型36は、未加硫ゴム組成物の流動性が確保される程度の温度に加熱保持されている。この温度は、加硫温度より低温であってもよく、または従来の射出成形と同様に加硫温度であっても構わない。成形型36の型開きは、アペックスゴム15が未加硫状態にある間に行われ、できる限り加硫を進行させないよう必要に応じて成形型36を冷却しても構わない。
【0029】
ゴムパッド18は、アペックスゴム15と同様の工程にて成形することができる。即ち、ゴムパッド18に対応した形状のキャビティが形成される不図示の成形型(前記第2の成形型に相当する。)を用いて、該キャビティに未加硫ゴム組成物を射出注入してゴムパッド18を成形し、それを未加硫状態に保持しながら前記成形型を型開きして、図4に示すようにゴムパッド18の側面18aを環状に露出させる(前記第2の工程に相当する。)。上記したアペックスゴム15の成形とゴムパッド18の成形とは、どちらを先に行っても構わない。
【0030】
アペックスゴム15とゴムパッド18とを成形した後、図5に示すように、アペックスゴム15を保持する下型37(前記第1ゴム部材を保持する第1の成形型の型部に相当する。)と、ゴムパッド18を保持する下型47(前記第2ゴム部材を保持する第2の成形型の型部に相当する。)とを重ねて、アペックスゴム15の露出した側面15aをゴムパッド18の露出した側面18aに貼り合わせて一体化し、環状の複合ゴム部材19を形成する(前記第3の工程に相当する。)。
【0031】
本実施形態では、アペックスゴム15及びゴムパッド18の側面同士を貼り合わせる際に、ゴムパッド18を保持する下型47を上下反転させて重ねている。未加硫状態にあるゴムパッド18は、粘着性が高く下型47に密着していることから、このように反転させても下型47から脱落することがない。なお、ゴムパッド18の脱落をより確実に防止するべく、下型47の環状凹溝の表面粗さを小さくして吸盤効果を高めたり、その環状凹溝の底面に連通させた吸引孔を通じてゴムパッド18を吸引保持したりしてもよい。また、下型37と下型47とを90度回転させた立ち姿勢にして互いに重ねても構わない。
【0032】
このようにして形成した複合ゴム部材19は、図2(b)の状態にある製造ラインに必要なタイミングで供給され、図2(c)に示すようにカーカスプライ14に貼り合わされる(前記第4の工程に相当する。)。複合ゴム部材19は、射出成形されたアペックスゴム15とゴムパッド18とを下型37、47で保持した状態で貼り合わせてなることから、形状均一性に優れているとともに、脱型後に貼り合わせる場合に比べて位置決め精度を向上でき、タイヤのユニフォミティを良好に確保することができる。また、複合ゴム部材19は、未加硫状態に保持されているためカーカスプライ14に対する接着性が良好であり、タイヤ加硫時に過加硫を生じることもない。
【0033】
カーカスプライ14には、下型37及び下型47から取り出した複合ゴム部材19を貼り合わせても構わないが、図5の状態から下型47だけを取り除き、複合ゴム部材19を下型37で保持したまま、製造ラインに供給してカーカスプライ14に貼り合わせることが好ましい。これにより、カーカスプライ14に対する複合ゴム部材19の位置決めを精度良く且つ容易に行うことができる。複合ゴム部材19は、例えばイジェクトピンを利用してビード1bを突き上げることで、下型37から円滑に取り出すことができる。
【0034】
アペックスゴム15及びゴムパッド18をそれぞれ単品で用意し、それらを順次に製造ラインに供給する場合、成形ドラム20上の作業で、即ちオンライン作業でゴムパッド18を位置決めして貼り合わせ、続いてアペックスゴム15を位置決めして貼り合わせる必要があるが、本実施形態によれば、成形ドラム20上で複合ゴム部材19を位置決めして貼り合わせるだけでよいため、製造ラインでの貼り合わせ作業を簡略化でき、タイヤの成形時間を短縮して生産能率を向上することができる。
【0035】
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、未加硫タイヤを成形するに際して、上記の如き複合ゴム部材をカーカスプライに貼り合わせること以外は従来と同等であり、図2で示した工程に限られることなく公知のタイヤ成形工程を適宜に採用することができる。但し、前述の実施形態のように、複合ゴム部材が貼り合わせられるときのカーカスプライが、中央部を径方向外側に膨出させるとともに端部を巻き上げた状態にあることが好ましく、それによって複合ゴム部材の形状変化を抑えて、タイヤの成形精度をより好適に確保することができる。なお、本発明により製造される空気入りタイヤの構造は図1で示したものに限られず、その材料や形状も特に制限されない。
【0036】
本発明では、前述の実施形態のように、複合ゴム部材となるゴム部材が、環状膨出部を構成するゴム部材である場合に特に有用である。その理由は、かかる環状膨出部は部品点数が多くなりがちで、従来の製法では工数が増加してタイヤ成形作業が煩雑化する傾向にあるところ、本発明によれば成形時間を短縮して生産能率を向上することができるためである。但し、本発明はこれに限られず、例えばトラックなどに装着されるタイヤであれば、バットレス部やビード周りが複数のゴム部材により構成されているため、これらを上記の如き複合ゴム部材として貼り合わせることも可能である。また、成形型のキャビティに異種の未加硫ゴム組成物を射出注入して環状の多層ゴム部材を成形し、それを用いて複合ゴム部材を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明により製造される空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図
【図2】空気入りタイヤを製造する様子を概略的に示す断面図
【図3】アペックスゴムを成形する様子を概略的に示す断面図
【図4】ゴムパッドを成形した後の状態を概略的に示す断面図
【図5】複合ゴム部材を成形する様子を概略的に示す断面図
【符号の説明】
【0038】
10 環状膨出部
14 カーカスプライ
15 アペックスゴム(第1のゴム部材)
15a アペックスゴムの側面
18 ゴムパッド(第2のゴム部材)
18a ゴムパッドの側面
19 複合ゴム部材
20 成形ドラム
31 キャビティ
32 供給経路
36 成形型(第1の成形型)
37 下型(第1のゴム部材を保持する第1の成形型の型部)
38 上型
47 下型(第2のゴム部材を保持する第2の成形型の型部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成したカーカスプライに複数のゴム部材を貼り合わせて未加硫タイヤを成形する工程を備える空気入りタイヤの製造方法において、
第1の成形型のキャビティに未加硫ゴム組成物を射出注入して環状の第1のゴム部材を成形し、前記第1のゴム部材を未加硫状態に保持しながら前記第1の成形型を型開きして前記第1のゴム部材の側面を環状に露出させる第1の工程と、
第2の成形型のキャビティに未加硫ゴム組成物を射出注入して環状の第2のゴム部材を成形し、前記第2のゴム部材を未加硫状態に保持しながら前記第2の成形型を型開きして前記第2のゴム部材の側面を環状に露出させる第2の工程と、
前記第1の工程と前記第2の工程の後、前記第1のゴム部材を保持する前記第1の成形型の型部と、前記第2のゴム部材を保持する前記第2の成形型の型部とを重ねて、前記第1のゴム部材の露出した側面を前記第2のゴム部材の露出した側面に貼り合わせて一体化した複合ゴム部材を形成する第3の工程と、
前記カーカスプライに前記複合ゴム部材を貼り合わせる第4の工程と、を備えることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記第4の工程における前記カーカスプライが、中央部を径方向外側に膨出させるとともに端部を巻き上げた状態にある請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記第1のゴム部材及び前記第2のゴム部材が、ビード部のタイヤ幅方向外側に膨出形成された環状膨出部を構成するものである請求項1又は2記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−28992(P2009−28992A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194671(P2007−194671)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】