説明

空気入りタイヤの製造方法

【課題】短時間で、最適な加硫成形を行うことができ、さらに、タイヤの耐久性の向上及び転がり抵抗の低減を可能とする空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【解決手段】加硫用金型10内に、未加硫タイヤ20を挿入し、該未加硫タイヤ20の内部に挿入したブラダー30を膨張させることにより、前記未加硫タイヤ20を金型内面10aに押し付けた状態で本加硫を行う工程を具え、前記未加硫タイヤ20の本加硫に先立って、インナーライナー21を、前記未加硫タイヤ20との張り合わせ面21´aの温度が、その裏面21´bの温度よりも、20℃以上40℃未満低くなるように予備加硫し、該予備加硫したインナーライナー21´を前記未加硫タイヤ20の内面20aに張り合わせた後、加硫を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫用金型内に、未加硫タイヤを挿入し、該未加硫タイヤの内部に挿入したブラダーを膨張させることにより、前記未加硫タイヤを金型内面に押し付けた状態で本加硫を行う空気入りタイヤの製造方法であって、特に、短時間で、最適な加硫成形を行うことができ、さらに、タイヤの耐久性の向上及び転がり抵抗の低減を可能とする空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤの加硫方法としては、加硫前の生ゴムの状態である各部材を、あらかじめタイヤの形に成形し、それを加硫装置によって加硫・成形する方法が一般的である。ただし、この加硫方法では、タイヤの厚みや加硫装置からの入熱量の差異に起因して加硫の進行度に差が生じる結果、加硫が十分に行われない恐れや、過度な加硫によってタイヤ性能の低下を引き起こすという問題があった。
【0003】
上記問題点を解決するため、加硫後の空気入りタイヤの各部材の加硫進行度が最適になるように、未加硫部材の加硫速度を調整するという方法が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、未加硫タイヤ内面に接触するブラダーの厚みを、トレッド部及び/又はショルダー部に対応する部分では薄肉とし、ビード部接触部分の厚みの95〜50%となるように調整を図ることで、未加硫タイヤに対して均一に加硫を行う方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、キャップトレッドを貼付ける前工程で、未加硫タイヤのベルト補強層を電磁誘導加熱装置により誘導加熱を行い、しかる後、前記未加硫タイヤのキャップトレッドの貼付け部に加熱状態のキャップトレッドを貼付ける空気入りタイヤの製造方法が開示されている。この方法によれば、電磁誘導加熱装置とベルト補強層との距離が短くなるため、加熱効率を高めることが可能となり、さらに、電磁誘導加熱装置とベルト補強層との間にゴム層がないため、均一な加熱及び加硫時間の短縮化が図れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−71810号公報
【特許文献2】特開2005−138462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の空気入りタイヤの製造方法では、いずれも、未加硫タイヤのサイズが変更された場合、それに伴って加硫の際の入熱量が変化する結果、均一な加硫が行えないという問題があった。また、特許文献1のブラダーの厚みを変更したり、特許文献2の電磁誘導加熱装置の再調整を図ることは可能であるものの、未加硫タイヤの大きさが変化する度に、これらの調整を図ることは作業の煩雑さを増すことから、現実に用いられる製造方法としては不十分なものであった。
【0008】
本発明の目的は、短時間で、最適な加硫成形を行うことができ、さらに、タイヤの耐久性の向上及び転がり抵抗の低減を可能とする空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、加硫用金型内に、未加硫タイヤを挿入し、該未加硫タイヤの内部に挿入したブラダーを膨張させることにより、前記未加硫タイヤを金型内面に押し付けた状態で本加硫を行う空気入りタイヤの製造方法について、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、前記未加硫タイヤの本加硫に先立って、インナーライナーの予備加硫を行い、該予備加硫したインナーライナーを前記未加硫タイヤの内面に張り合わせた後、加硫を行うことで、短時間で、最適な加硫成形を行うことができることに加えて、前記インナーライナーの予備加硫を、前記未加硫タイヤとの張り合わせ面の温度が、その裏面の温度よりも20℃以上40℃未満低くなるようにすることで、耐久性が高く、転がり抵抗が低い空気入りタイヤが得られることを見出した。
【0010】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)加硫用金型内に、未加硫タイヤを挿入し、該未加硫タイヤの内部に挿入したブラダーを膨張させることにより、前記未加硫タイヤを金型内面に押し付けた状態で本加硫を行う空気入りタイヤの製造方法であって、前記未加硫タイヤの本加硫に先立って、インナーライナーを、その前記未加硫タイヤとの張り合わせ面の温度が、その裏面の温度よりも20℃以上40℃未満低くなるように予備加硫し、該予備加硫したインナーライナーを前記未加硫タイヤの内面に張り合わせた後、本加硫を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【0011】
(2)前記インナーライナーの予備加硫を行った後、クッションゴムと張り合わせ、その後、前記未加硫タイヤの内面に張り合わせることを特徴とする上記(1)に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【0012】
(3)前記クッションゴムは、前記インナーライナーと前記未加硫タイヤとの張り合わせ面の全面に位置することを特徴とする上記(2)に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【0013】
(4)前記クッションゴムは、ゴム成分100質量部に対して、
(1)成分:下式(I)で表わされるチウラム系化合物0.1〜4.0質量部と、
【化1】

(式中、R〜Rは、ベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基で、X=2〜18である。)
(2)成分:ベンゾチオジスチルフィド類、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾール類のアミン塩及び亜鉛塩、並びに、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類からなる群から選択された少なくとも1種の化合物0.1〜2.0質量部と、(3)成分:アミン類、グアニジン類、アルデヒドアミン類及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選択された少なくとも1種の化合物0.1〜2.0質量部とを配合してなるゴム組成物であることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【0014】
(5)前記式(I)のR〜Rが、ベンジル基又は2−エチルヘキシル基であり、X=6〜12であることを特徴とする上記(4)に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、短時間で、最適な加硫成形を行うことができ、さらに、タイヤの耐久性の向上及び転がり抵抗の低減を可能とする空気入りタイヤの製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の空気入りタイヤの製造工程の一部を示したフロー図である。
【図2】本発明によるタイヤの加硫時の状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図1及び図2を用いて説明する。
図1(a)〜(d)は本発明の空気入りタイヤの製造方法の一部について示したフロー図である。また、図2は、本発明によるタイヤの加硫状態を模式的に示した断面図である。なお、各図面は模式的なものであり、各部材の厚みやその比率などは現実のものとは異なり、具体的な厚みや寸法については以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
本発明による製造方法は、図2に示すように、加硫用金型10内に、未加硫タイヤ20を挿入し、該未加硫タイヤ20の内部に挿入したブラダー30を膨張させることにより、前記未加硫タイヤ20を金型内面10aに押し付けた状態で本加硫を行う工程を具える。そして、図1(a)〜(d)に示すように、前記未加硫タイヤ20の本加硫(図1(d))に先立って、インナーライナー21(図1(a))の予備加硫を行い(図1(b))、該予備加硫したインナーライナー21´を前記未加硫タイヤ20の内面20aに張り合わせた後、加硫を行う(図1(d))ことを特徴とする。
【0019】
従来の製造方法では、主にブラダー30からの熱伝導が不均一であることが原因で、特にインナーライナー21が他の部材に比べて加硫速度が遅くなる結果、未加硫タイヤの均一な加硫が行えないという問題があった。
そのため、本発明による製造方法では、上記構成を備えることによって、予備加硫によって均一に加硫が施されたインナーライナーを、未加硫タイヤと張り合わせ、本加硫を行える結果、短時間で、最適な加硫成形が可能となる。そして、本発明の製造方法によって得られた空気入りタイヤは、適切な加硫が行われているため、従来の製造方法によって得られた空気入りタイヤに比べて、耐久性が高く、転がり抵抗を低減することができる。
【0020】
なお、前記未加硫タイヤ20とは、加硫成形を行う前のいわゆるグリーンタイヤのことをいい、本発明では、予備加硫が施されるインナーライナー21を除いた未加硫タイヤ部材のことである。
【0021】
また、前記加硫用金型10とは、図2に示すように、前記未加硫タイヤ20の加硫成形時に未加硫タイヤ20の外側を覆う金型のことである。本発明では、所望の加硫成形を行うことができれば、その形状や材料については特に限定せず、通常用いられる金型を使用することができる。
【0022】
なお、前記ブラダー30とは、図2に示すように、前記未加硫タイヤ20の内部に挿入し、膨張させることによって、前記未加硫タイヤ20を前記金型10の内面10aに押し付け、加硫成形が行えるようにするための部材である。また、前記ブラダー30は、前記未加硫タイヤ20の加硫成形のため、発熱手段を有する。本発明では、有効に前記未加硫タイヤ20の加硫成形を行えるものであれば、特に限定はせず、通常用いられるものを使用できる。
【0023】
ここで、前記予備加硫(図1(b))を行うインナーライナー21とは、チューブレスタイヤの内側に貼り付けられたチューブに相当する部材であり、空気透過性の少ない厚さ数mm程度の特殊ゴムシートからなる。加硫前の前記インナーライナー21(図1(a))については、特に限定はなく、通常の製造方法で用いられるインナーライナーを使用すればよい。
【0024】
前記インナーライナー21の予備加硫(図1(b))とは、前記未加硫タイヤ20の本加硫(図1(e))に先立って、インナーライナー21のみの加硫を行うことをいい、本発明による製造方法では、前記インナーライナー21の予備加硫(図1(b))は、前記未加硫タイヤ20との張り合わせ面21´aの温度が、その裏面21´bの温度よりも、20℃以上40℃未満低いことを特徴とする。前記張り合わせ面21´aと裏面21´bとの温度差が20℃未満の場合、インナーライナー21の加硫反応を進行させるための時間が長くなりすぎる結果、タイヤの耐久性や転がり抵抗が悪化するからであり、一方、温度差が40℃以上の場合、加硫後のインナーライナー21´の張り合わせ面21´aでの前記未加硫タイヤ20との接着性が低下し、タイヤの耐久性が悪化するからである。
【0025】
さらに、本発明による製造方法では、前記インナーライナー21の予備加硫を行った後、クッションゴム22と張り合わせ(図1(c))、その後、前記未加硫タイヤの内面20aに張り合わせる(図1(d))ことが好ましい。前記未加硫タイヤ20と前記インナーライナー21´との間にクッションゴム22を介することで、接着性及び空気密封性が向上する結果、タイヤの耐久性を高めることができるからである。
【0026】
なお、前記クッションゴムとは、前記未加硫タイヤ20と前記インナーライナー21´との密着性向上や、空気入りタイヤを構成する各部材にかかる応力歪みを低減することを目的として設けられるゴム部材のことであり、その構成については、上記効果を有効に発揮できるものであれば特に限定はしない。
【0027】
また、前記クッションゴム22は、図1(b)及び(c)に示すように、前記インナーライナー21´の張り合わせ面21´aの全面に位置することが好ましい。前記インナーライナー21´と前記未加硫タイヤ20との張り合わせ面21´aの接着が十分でない場合、そこが破壊核となる恐れがあるからである。
【0028】
さらに、前記クッションゴム22は、ゴム成分100質量部に対して、(1)成分:下式(I)で表わされるチウラム系化合物0.1〜4.0質量部と、
【化2】

(式中、R〜Rは、ベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基で、X=2〜18である。)
(2)成分:ベンゾチオジスチルフィド類、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾール類のアミン塩及び亜鉛塩、並びに、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類からなる群から選択された少なくとも1種の化合物0.1〜2.0質量部と、(3)成分:アミン類、グアニジン類、アルデヒドアミン類及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選択された少なくとも1種の化合物0.1〜2.0質量部とを配合してなるゴム組成物であることが好ましい。加硫速度の向上を図れるとともに、タイヤの耐久性をさらに向上できるからである。
【0029】
上述の(1)成分としては、例えば、1,6−ビス−(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン(LANXESS社製、商標「VULCURENKA9188」)、1,6−ビス−(N,N’−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ)−ヘキサン、1,6−ビス−(N,N’−ジエチルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン、1,6−ビス−(N,N’−ジメチルチオカルバモイルジチオ)−ヘキサン等が挙げられる。
また、(1)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜4.0質量部配合されることが好ましいが、その理由としては、0.1質量部未満では加硫速度が低下する恐れがあり、4.0質量部を超えると加硫ゴム特性が低下する恐れがあるからである。さらに、(1)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.2〜2.5質量部配合されることがより好適である。
【0030】
上述の(2)成分の、ベンゾチアジルジスルフィド類としては、ジベンゾチアジルジスルフィド等が挙げられる。ベンゾチアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、N,N’−ジエチルチオカルバモイル−2−ベンゾチアゾリルスルフィド、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロ−フェニル)−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。ベンゾチアゾール類のアミン塩又は亜鉛塩としては、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩等が挙げられ、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられる。
また、(2)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜2.0質量部配合されることが好ましいが、その理由としては、0.1質量部未満では十分な加硫速度が得られない恐れがあり、2.0質量部を超えると加硫ゴム特性が低下する恐れがあるからである。さらに、(2)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.2〜1.2質量部配合されることがより好適である。
【0031】
上述の(3)成分としては、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG),ジオルトトリルグアジニン(DOTG),オルトトリルビグアニド(OTBG),n−ブチルアルデヒド・アニリン反応生成物(BAA),ヘキサメチレンテトラミン(H),アセトアルデヒド・アンモニア(AA)等が挙げられる。
また、(3)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜2.0質量部配合されることが好ましいが、その理由としては、0.1質量部未満では十分な加硫速度が得られない恐れがあり、2.0質量部を超えると加硫ゴム特性が低下する恐れがあるからである。さらに、(3)成分は、ゴム成分100質量部に対して、0.2〜2.0質量部配合されることがより好適である。
【0032】
さらにまた、前記式(I)のR〜Rが、ベンジル基又は2−エチルヘキシル基であり、X=6〜12であることが好ましい。これらの範囲のときに、破壊特性が良好となるからである。
【0033】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明に従う空気入りタイヤを試作し、性能を評価したので、以下で説明する。
(実施例1)
実施例1として、図1に示すように、未加硫タイヤ20の本加硫(図1(d))に先立って、インナーライナー21(図1(a))の予備加硫を、前記未加硫タイヤ20との張り合わせ面21´aの温度が、その裏面21´bの温度よりも、20℃低くなるように行い(図1(b))、該予備加硫したインナーライナー21´を前記未加硫タイヤ20の内面20aに張り合わせた後、図2に示すように、加硫用金型10内に、未加硫タイヤ20を挿入し、該未加硫タイヤ20の内部に挿入したブラダー30を膨張させることにより、前記未加硫タイヤ20を金型内面10aに押し付けた状態で本加硫を行う(図1(d))ことで、空気入りタイヤ(タイヤサイズ:155/65 R13)を試作した。
【0035】
(実施例2)
実施例2は、図1(c)に示すように、前記インナーライナー21の予備加硫(図1(b))後、加硫したインナーライナー21´と未加硫タイヤ20との間にクッションゴム22を設けたこと以外は、実施例1と同様の条件によって空気入りタイヤ(タイヤサイズ:155/65 R13)を試作した。
【0036】
(比較例1)
比較例1として、前記インナーライナー21の予備加硫を行わずに、未加硫タイヤ20の加硫を行ったこと以外は、実施例1と同様の条件によって空気入りタイヤ(タイヤサイズ:155/65 R13)を試作した。
【0037】
(評価)
(1)タイヤの耐久性
実施例及び比較例で試作した各空気入りタイヤについて、耐久ドラム試験によって試験を行い、空気入りタイヤが故障するまでの時間を測定することにより、タイヤの耐久性の評価を行った。評価は、比較例1の空気入りタイヤについて測定した耐久性(走行時間)を100としたときの指数比で表示し、表1に示す。なお、表1中の数値は、大きいほどタイヤの耐久性が高く、結果が良好であることを意味する。
【0038】
(2)タイヤの転がり抵抗
実施例及び比較例で試作した各空気入りタイヤについて、車両に装着後、3.1kgの負荷をかけた状態で、試験速度80km/hで回転させて、室内ドラム試験を行い、走行中のタイヤ軸の前後幅をロードセルで測定することにより、タイヤの転がり抵抗の評価を行った。評価は、比較例1の空気入りタイヤについて測定した転がり抵抗(タイヤ軸の前後幅)を100としたときの指数比で表示し、表1に示す。なお、表1中の数値は、大きいほどタイヤの転がり抵抗が低く、結果が良好であることを意味する。
【0039】
(3)加硫時間
実施例及び比較例で試作した各空気入りタイヤについて、本加硫に要した時間を測定することにより、加硫時間の評価を行った。評価は、比較例1の空気入りタイヤの加硫に要した時間を100としたときの指数比で表示し、表1に示す。なお、表1中の数値は、小さいほど加硫時間が短く、結果が良好であることを意味する。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果より、インナーライナー21の予備加硫を行った実施例1及び2の空気入りタイヤは、従来の予備加硫を行わない比較例1の空気入りタイヤに比べて、大幅に加硫時間が削減されており、さらに、加硫が適正に行われていることから、実施例1及び2の空気入りタイヤの転がり抵抗及び耐久性がより良好な結果であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、短時間で、最適な加硫成形を行うことができ、さらに、タイヤの耐久性の向上及び転がり抵抗の低減を可能とする空気入りタイヤの製造方法を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 加硫用金型
20 未加硫タイヤ
21 インナーライナー
21´ 加硫されたインナーライナー
22 クッションゴム
30 ブラダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫用金型内に、未加硫タイヤを挿入し、該未加硫タイヤの内部に挿入したブラダーを膨張させることにより、前記未加硫タイヤを金型内面に押し付けた状態で本加硫を行う空気入りタイヤの製造方法であって、
前記未加硫タイヤの本加硫に先立って、インナーライナーを、その前記未加硫タイヤとの張り合わせ面の温度が、その裏面の温度よりも20℃以上40℃未満低くなるように予備加硫し、該予備加硫したインナーライナーを前記未加硫タイヤの内面に張り合わせた後、本加硫を行うことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記インナーライナーの予備加硫を行った後、クッションゴムと張り合わせ、その後、前記未加硫タイヤの内面に張り合わせることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記クッションゴムは、前記インナーライナーと前記未加硫タイヤとの張り合わせ面の全面に位置することを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記クッションゴムは、ゴム成分100質量部に対して、
(1)成分:下式(I)で表わされるチウラム系化合物0.1〜4.0質量部と、
【化1】

(式中、R〜Rは、ベンジル基又は炭素数1〜18のアルキル基で、X=2〜18である。)
(2)成分:ベンゾチオジスチルフィド類、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾール類のアミン塩及び亜鉛塩、並びに、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類からなる群から選択された少なくとも1種の化合物0.1〜2.0質量部と、
(3)成分:アミン類、グアニジン類、アルデヒドアミン類及びアルデヒドアンモニア類からなる群から選択された少なくとも1種の化合物0.1〜2.0質量部とを配合してなるゴム組成物であることを特徴とする請求項2又は3に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記式(I)のR〜Rが、ベンジル基又は2−エチルヘキシル基であり、X=6〜12であることを特徴とする請求項4に記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−156784(P2011−156784A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21158(P2010−21158)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】