説明

空気浄化装置

【課題】透過膜によるガス交換を効果的に行うことが可能な空気浄化装置を提供する。
【解決手段】外気側空間23の外気と接触する第1の面21aと、その反対側の面であって内気側空間24の内気と接触する第2の面21bとを有し、外気側空間23と内気側空間24の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように酸素および二酸化炭素を選択的に透過させる透過膜21と、外気側空間23に配置され、外気中の水蒸気を分解して酸素を発生させる光触媒27とを備える。これにより、外気側空間23の外気中の水蒸気を水素と酸素に分解することができるので、外気側空間23の酸素濃度を上昇させて、外気側空間23と内気側空間24との酸素濃度差を大きく確保でき、ガス交換を効果的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気を直接導入することなく内気の酸素濃度および二酸化炭素濃度を快適濃度に維持する空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、特許文献1にてこの種の空気浄化装置を提案している。この従来技術では、酸素および二酸化炭素を選択的に透過させ、酸素および二酸化炭素以外の物質を透過させない性質を持つ透過膜の片面側に内気を接触させるとともに、透過膜の他面側に外気を接触させている。
【0003】
そして、人の呼吸によって、内気の酸素濃度が外気の酸素濃度よりも低下するとともに内気の二酸化炭素濃度が外気の二酸化炭素濃度よりも上昇すると、内気と外気の濃度差によって他面側の外気の酸素のみが透過膜を透過して室内に導入されるとともに片面側の内気の二酸化炭素のみが透過膜を透過して室外に放出される。
【0004】
換言すれば、室外と室内とで酸素と二酸化炭素のみがガス交換される。これにより、外気を直接導入することなく室内の酸素濃度および二酸化炭素濃度を快適濃度に維持できるので、大気中の汚染物質が室内に侵入することを防止できる。
【特許文献1】特開2004−203367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この従来技術では、透過膜の他面側の酸素濃度が片面側の酸素濃度よりも高いほど、他面側から片面側への酸素透過量が増加して、透過膜によるガス交換を効果的に行うことができるのであるが、上記特許文献1には、透過膜の片面側と他面側との酸素濃度差を大きく確保する具体的手段については何ら記載されていない。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、透過膜によるガス交換を効果的に行うことが可能な空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、外気側空間(23)の外気と接触する第1の面(21a)と、その反対側の面であって内気側空間(24)の内気と接触する第2の面(21b)とを有し、外気側空間(23)と内気側空間(24)の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように酸素および二酸化炭素を選択的に透過させる透過膜(21)と、
外気側空間(23)に配置され、外気中の水蒸気を分解して酸素を発生させる光触媒(27)とを備えることを特徴とする。
【0008】
これによると、外気側空間(23)に光触媒(27)が配置されるので、外気側空間(23)の外気中の水蒸気を分解して酸素を発生することができる。このため、外気側空間(23)の酸素濃度を上昇させて、外気側空間(23)と内気側空間(24)との酸素濃度差を大きく確保できる。
【0009】
この結果、外気側空間(23)の酸素を内気側空間(24)へとより透過させ、ガス交換を効果的に行うことができる。
【0010】
このため、特に、内気側空間(24)の内気の酸素濃度が急激に低下した時(例えば、人による喫煙など)に、その濃度を短時間で最適濃度に回復することが可能になるという有効な効果を得ることができる。
【0011】
本発明は、具体的には、第1の面(21a)に貼り合わされて透過膜(21)の形状を保持する、多数個の細孔が形成された保持部材(25)を有し、
光触媒(27)が保持部材(25)に担持されている。
【0012】
これによると、光触媒(27)が透過膜(21)の形状を保持する保持部材(25)に担持されるので、光触媒(27)を担持するための専用の部材を保持部材(25)と別個に設ける必要がなく、省スペース化を図ることができる。
【0013】
さらに、透過膜(21)の直近に光触媒(27)を配置できるので、光触媒(27)によってガス交換をより効果的に行うことができる。
【0014】
また、本発明は、具体的には、透過膜(21)は有機系材料により形成されており、
透過膜(21)を加熱する加熱手段(62)を有している。
【0015】
これによると、有機系材料により形成される透過膜(21)は温度が高くなると酸素および二酸化炭素の透過が促進されるという特性があるので、加熱手段(62)が透過膜(21)を加熱することによって、酸素および二酸化炭素の透過量を増加できる。このため、透過膜(21)によるガス交換をより効果的に行うことができる。
【0016】
また、本発明は、具体的には、透過膜(21)は無機系材料により形成されており、
透過膜(21)を加熱する加熱手段(62)を有している。
【0017】
これによると、無機系材料により形成される透過膜(21)は温度が高くなると材料の結晶振動が大きくなり、透過膜(21)内の酸素および二酸化炭素が透過するスペースが広くなるという特性があるので、透過膜(21)を加熱することによって、酸素および二酸化炭素の透過量を増加できる。このため、透過膜(21)によるガス交換をより効果的に行うことができる。
【0018】
本発明は、より具体的には、光触媒(27)が第1の面(21a)と離間して配置されており、
光触媒(27)と第1の面(21a)との間に配置され、外気中の水蒸気を吸収する吸湿剤(63)と、
内気の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段(65)と、
酸素濃度検出手段(65)の検出信号が入力されるとともに、加熱手段(62)の作動を制御する制御手段(45)とを備え、
加熱手段(62)が、透過膜(21)のみならず、吸湿剤(63)も加熱するようになっており、
制御手段(45)は、酸素濃度が所定値よりも低下したときには加熱手段(62)を作動させ、酸素濃度が所定値よりも上昇したときには加熱手段(62)を停止させる。
【0019】
これによると、酸素濃度が所定値よりも低下したときには加熱手段(62)を作動させるので、吸湿剤(63)が加熱されて吸湿剤(63)が吸収している水分が蒸発して水蒸気が発生する。
【0020】
すると、発生した水蒸気が光触媒(27)によって分解されて酸素が発生するので、外気側空間(23)の酸素濃度が上昇する。この結果、外気側空間(23)から内気側空間(24)へと透過する酸素量が増加するので、内気の酸素濃度を上昇させることができ、内気の酸素濃度を適切な濃度に維持できる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図4に基づいて説明する。図1は本発明による空気浄化装置を搭載した車両の概要を示す模式図である。本実施形態による空気浄化装置は車両用空調装置10と一体化された構成になっている。
【0023】
車両用空調装置10の空調ケース11は車室内12の最前部に配置される計器盤(図示せず)の内側部に配置され、車室内12へ向かって流れる空気の通路を形成する。車室内12と車両エンジンルーム13は隔壁(ダッシュボード)14により仕切られている。
【0024】
空調ケース11は、ポリプロピレンのようなある程度の弾性を有し、機械的強度に優れた樹脂にて成形されている。空調ケース11の上流端には空調用送風機15が配置され、空調用送風機15のケース16に遠心式送風ファン17が収納され、駆動用モータ18にて送風ファン17を回転駆動する。なお、空調用送風機15は本発明における内気送風機に該当するものである。
【0025】
空調用送風機15のケース16には内気吸入口16aが設けられ、この内気吸入口16aから車室内12の空気(内気)を導入する。空調用送風機15の送風ファン17が回転すると、図1の矢印Aのように内気吸入口16aから導入された内気が空調ケース11側へ向かって送風される。
【0026】
空調用送風機15のケース16の上面には開口部16bが開口しており、この開口部16bには車室外の空気(外気)を導入する外気導入ダクト19の一端部19aが接続されている。外気導入ダクト19の他端部19bは隔壁(ダッシュボード)14の上部に接続され、車両の外気吸入口20と連通している。この外気導入ダクト19はポリプロピレン等の樹脂にて成形される断面矩形状の管状部材であり、外気吸入口20を通じて外気を導入する。
【0027】
外気導入ダクト19の一端部19a側部位には、車室内12の二酸化炭素と車室外の酸素とをガス交換する透過膜21が配置されている。透過膜21は空気中の酸素および二酸化炭素を選択的に透過させ、空気中の汚染物質(排気ガス、粉塵等)を透過させない膜である。
【0028】
透過膜21として、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)等の高分子を含む有機系材料や、セラミック等の無機系材料から構成される0.1μm程度の厚さの膜を用いることができる。本例では、透過膜21の製造方法として、水面に分散させた膜材料を紙すきの要領で引きあげる、いわゆる水面展開法を用いている。
【0029】
透過膜21は支持部材22(詳細後述)によって、外気導入ダクト19を閉塞するように支持されている。このため、外気は空調用送風機15のケース16内に直接流入しないが、透過膜21よりも車室外側(図1の上方側)の外気側空間23と透過膜21よりも車室内12側(図1の下方側)側の内気側空間24の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように、外気側空間23から内気側空間24へと、あるいは内気側空間24から外気側空間23へと酸素および二酸化炭素を透過させる。
【0030】
図2は、本実施形態による空気浄化装置の要部の模式的な断面図であり、図3は、透過膜21の支持構造を説明する斜視図である。
【0031】
図2に示すように、透過膜21の第1の面21aは外気側空間23側を向き、第2の面21bは内気側空間24側を向いて配置されている。透過膜21の第1の面21aが多数個の細孔を有する保持部材25に貼り合わされることによって、ごく薄い透過膜21が補強されて、形状が保持されている。
【0032】
保持部材25としては、細孔を粉塵が通過しないものが望ましい。本例では、保持部材25として、50μm程度の厚さの紙状の繊維部材を用いているが、細孔径が5nm以下の多孔質体を用いてもよい。保持部材25の具体的材質としては、有機系高分子、無機化合物、炭素を含む材料を用いることができる。
【0033】
図3に示すように、互いに貼り合わされた透過膜21および保持部材25を矩形状に成形し、さらに一定の間隔Pで三角波状に折っている。図示の都合上、図3では透過膜21および保持部材25の折り目が7本(山折りの折り目が4本、谷折りの折り目が3本)になっているが、実際には3mm程度の間隔Pで無数の折り目が設けられている。このように透過膜21を三角波状に無数に折ることによって透過膜21の表面積を大きくして酸素および二酸化炭素の透過量を増やすことができる。
【0034】
透過膜21を支持する支持部材22は、その中央部に空気流通用の矩形状開口部22aが形成された全体として矩形枠状の部材であり、図示しない固定手段、例えば、ねじ止め等の手段を用いて外気導入ダクト19内に固定されている。支持部材22のうち矩形状開口部22aの周縁部22bには三角波状に折られた透過膜21の形状に合わせて突出する突出部22cが形成されている。
【0035】
この突出部22cの突出側の端面22dに、保持部材25に貼り合わされた透過膜21の周縁部が溶着、接着等されて固着している。
【0036】
透過膜21の第1の面21a側の外気側空間23には、多孔質体26が透過膜21と離間配置されている。図4は多孔質体26の要部拡大断面図である。図4に示すように、多孔質体26には光触媒27が担持されている。
【0037】
この光触媒27は、周知のように、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、アルミニウム、銀、チタン、白金、タンタル、アルカリ金属、アルカリ土類金属を1種類あるいは2種類以上組み合わせた酸化物、あるいは、無機半導体に酸化物をドープさせた化合物からなるものであるが、原理的には、用いる光触媒の伝導帯の酸化還元電位が、0[V vs NHE(pH0)]よりも負側であり、またその価電子帯の酸化還元電位が1.2[V vs NHE(pH0)]よりも正側にあれば、いずれの光触媒でも良い。このような光触媒としては、例えば、Zro2、kTaO3、SrTiO3、Tio2、ZnS、SiCなどがある。
【0038】
透過膜21と多孔質体26との間には、350nm以下の波長の紫外光を照射する光源28が配置されている。本例では、光源28として、管状の紫外光ランプを用いているが、紫外光が照射できればいずれのものでもよい。例えば、光源28として可視光を照射する可視光ランプや半導体発光素子を用いてもよい。
【0039】
次に、空調用送風機15の下流側には冷却用熱交換器として蒸発器29が配置されている。この蒸発器29は車両エンジン(図示せず)により駆動される圧縮機30を持つ冷凍サイクルに設けられるものであって、蒸発器29に流入した低圧冷媒が空調用送風機15の送風空気から吸熱して蒸発することにより送風空気を冷却する。
【0040】
本例では、圧縮機30として、電磁クラッチ30aの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機を使用しており、車両エンジンの動力が電磁クラッチ30aを介して伝達される。なお、圧縮機30として、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機を使用してもよい。
【0041】
空調ケース11のうち、蒸発器29の下方部分は、蒸発器29で発生する凝縮水(ドレン水)を受ける凝縮水受け部11aを構成している。そして、この凝縮水受け部11aの最低部位から車両下方へ突き出すパイプ状の排水部11bを空調ケース11に配置している。
【0042】
空調ケース11内で、蒸発器29の下流側に車両エンジンの温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア(加熱用熱交換器)31が配置されている。そして、このヒータコア31の側方にはバイパス通路32が形成されて、ヒータコア31をバイパスして空気が流れるようになっている。
【0043】
蒸発器29とヒータコア31の間に板状ドアからなるエアミックスドア33が回動可能に配置されている。このエアミックスドア33は温度調節手段であり、ヒータコア31を通過する温風とバイパス通路32を通過する冷風との風量割合を調節することにより車室内12への吹出空気温度を調節する。ヒータコア31からの温風とバイパス通路32からの冷風がヒータコア31下流側で混合して所望温度の空気を作り出すことができる。
【0044】
さらに、空調ケース11の下流端部には、吹出モード切替部を構成するデフロスタ開口部34とフェイス開口部35とフット開口部36が開口している。デフロスタ開口部34は図示しないデフロスタダクトを介して車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すもので、回動自在な板状のデフロスタドア37により開閉される。
【0045】
また、フェイス開口部35は図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すもので、回動自在な板状のフェイスドア38により開閉される。また、フット開口部36は図示しないフットダクトを介して車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出すもので、回動自在な板状のフットドア39により開閉される。
【0046】
上記した吹出モードドア37、38、39は共通のリンク機構40に連結され、このリンク機構を介してサーボモータからなる電気駆動装置41により駆動される。なお、エアミックスドア33も、サーボモータからなる電気駆動装置42により駆動される。
【0047】
なお、本実施形態においては、吹出モードドア37、38、39の開閉により、フェイス開口部35を全開してフェイス開口部35から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモードと、フェイス開口部35とフット開口部36の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモードと、フット開口部36を全開するとともにデフロスタ開口部34を小開度だけ開口して、フット開口部36から主に空気を吹き出し、デフロスタ開口部34から少量の空気を吹き出すフットモードと、デフロスタ開口部34およびフット開口部36を同程度開口することにより、フットモードに比較してフット開口部36からの吹出風量を減少させ、デフロスタ開口部34からの吹出風量を増加させるフットデフロスタモードと、デフロスタ開口部34を全開してデフロスタ開口部34から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとを設定できるようになっている。
【0048】
次に、本実施形態における電気制御部の概要を図1に基づいて説明すると、空調用電子制御装置45はCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。空調用電子制御装置45には、空調制御のために、温水温度Tw、車室内温度(内気温)Tr、車室外温度(外気温)Tam、日射量Ts、蒸発器冷却度合としての蒸発器吹出温度Te等を検出する各センサ群46〜50から検出信号が入力される。
【0049】
さらに、車室内12の計器盤周辺に配置される空調操作パネル51には、乗員により手動操作される下記の操作部材が備えられ、この操作部材の操作信号も空調用電子制御装置45に入力される。
【0050】
空調操作パネル51の操作部材としては、温度設定信号Tsetを発生する温度設定スイッチ52、空調用送風機15の風量切替信号を発生する風量スイッチ53、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ54、冷凍サイクルの圧縮機30用の電磁クラッチ30aのオンオフ信号を発生するエアコンスイッチ55、空調の自動制御モードを設定するオートスイッチ56等が設けられている。
【0051】
なお、吹出モードスイッチ54は、本例では、フェイス、バイレベル、フット、フットデフロスタの各モードをマニュアル設定するためのスイッチと、デフロスタモード専用のデフロスタスイッチとに分けて設けてある。
【0052】
空調用送風機15のファン駆動用モータ18は駆動回路57により印加電圧が制御され、このモータ印加電圧の制御により空調用送風機15の回転速度を調整する。外気送風機24のファン駆動用モータ27は駆動回路58により印加電圧が断続され、このモータ印加電圧の断続により外気送風機24の回転が断続される。
【0053】
また、圧縮機30の電磁クラッチ30aへの電源供給は駆動回路59により断続される。空調用電子制御装置45には、車両エンジンのイグニッションスイッチ60を介して車載バッテリ61から電源が供給される。図示を省略しているが、光源28にも車両エンジンのイグニッションスイッチ60を介してバッテリ61から電源が供給される。
【0054】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。車両エンジンのイグニッションスイッチ60がオンされて空調用電子制御装置45に電源が供給された状態において、空調操作パネル51のオートスイッチ56が投入されると、空調用電子制御装置45がROMに記憶している空調装置制御プログラムを実行する。
【0055】
空調装置制御プログラムが実行されると、空調操作パネル51の操作信号やセンサ群46〜50により検出された検出信号が読込まれる。そして、これらの信号に基づいて、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。
【0056】
この目標吹出温度TAOは温度設定スイッチ52により設定した設定温度Tsetに内気温Trを維持するために必要な車室内吹出空気温度であり、以下の数式(1)により算出される。
【0057】
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(1)
ここで、Trは内気温センサ47により検出される内気温、Tamは外気温センサ48により検出される外気温、Tsは日射量センサ49により検出される日射量、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインおよびCは補正用の定数である。
【0058】
そして、空調用電子制御装置45は目標吹出温度TAOに基づいて、吹出風量に相当する空調用送風機15の送風ファン駆動用モータ18への印加電圧(ブロワ電圧)を決定する。すなわち、目標吹出温度TAOが低温側(冷房側)および高温側(暖房側)で風量大(ブロワ電圧:Hi)、両者の中間的な温度域(中間領域)では風量小(ブロワ電圧:Lo)となるよう、ブロワ電圧が制御される。
【0059】
また、空調用電子制御装置45は目標吹出温度TAOに基づいて、吹出モードを決定する。すなわち、TAOが低温側ではフット吹出口36を全閉しフェイス吹出口35のみから空調風を吹き出すFACEモード、TAOが高温側では、フェイス吹出口35を全閉しフット吹出口36のみから空調風を吹き出すFOOTモードが選択される。また、両者の間の領域のTAOではフェイス吹出口35およびフット吹出口36を同時に開口して、両吹出口19a、19bより空調風を吹き出すバイレベルモードが選択される。
【0060】
これら選択される吹出モードに応じて、電気駆動装置41が制御されて、吹出モードドア37、38、39の開度が設定される。
【0061】
さらに、空調用電子制御装置45はエアミックスドア33の開度θを以下の数式(2)に基づき算出する。
【0062】
θ=(TAO−Te)/(Tw−Te)×100(%)…(2)
なお、Teは蒸発器温度センサ50により検出された蒸発器吹出温度信号であり、Twは水温センサ46により検出された水温信号である。
【0063】
このエアミックスドア開度θ=0(%)は最大冷房位置(図1のエアミックスドア33の破線位置)であり、蒸発器29通過後の冷風の全量がヒータコア31を通過せず、すなわちヒータコア31をバイパスして冷風のまま下流側へ流れる。
【0064】
θ=100(%)は最大暖房位置(図1のエアミックスドア33の実線位置)であり、蒸発器29通過後の冷風の全量がヒータコア31に流入して、ヒータコア31により加熱される。
【0065】
このエアミックスドア開度θに応じて、エアミックスドア33の電気駆動装置42が駆動されエアミックスドア33の実際の開度が設定される。
【0066】
以上のような車室内空調制御により、目標吹出温度TAOに応じて、吹出口35、36から乗員に向けて空調風が吹き出されるときの吹出風量、吹出口および吹き出し空気温度等の作動条件が設定される。この結果、車室内12の温度は設定された温度Tsetとなるよう空調制御される。
【0067】
ところで、本実施形態による車両用空調装置10では、外気が空調用送風機15のケース16内に直接流入しないようになっているので、車室内乗員の呼吸によって内気の酸素濃度が外気の酸素濃度よりも低下し、内気の二酸化炭素濃度が外気の二酸化炭素濃度よりも上昇する。
【0068】
すると、内気側空間24の酸素濃度が外気側空間23の酸素濃度よりも低下し、内気側空間24の二酸化炭素濃度が外気側空間23の二酸化炭素濃度よりも上昇するので、透過膜21が外気側空間23の酸素を内気側空間24へと透過させるとともに、内気側空間24の二酸化炭素を外気側空間23へと透過させる。
【0069】
これにより、内気の二酸化炭素と外気の酸素とがガス交換されて、内気の酸素濃度および二酸化炭素濃度を外気の酸素濃度および二酸化炭素濃度に近づけることができるので、内気の酸素濃度および二酸化炭素濃度を快適濃度に維持できる。
【0070】
また、透過膜21は空気中の汚染物質(排気ガス、粉塵等)を透過させないので、外気中の汚染物質(排気ガス、粉塵等)が車室内12に侵入することを防止できる。
【0071】
さらに、本実施形態では、外気側空間23に光触媒27を配置することによって、外気側空間23の酸素濃度を高くして、外気側空間23の酸素を内気側空間24へとより透過させ、ガス交換が効果的に行われるようにしている。
【0072】
すなわち、本実施形態では、光源28が多孔質体26に担持された光触媒27に紫外光を照射すると、光触媒27が外気側空間23の外気中の水蒸気を水素と酸素に分解する。これにより、外気側空間23の酸素濃度を上昇させて、外気側空間23と内気側空間24との酸素濃度差を大きく確保できるので、外気側空間23の酸素を内気側空間24へとより透過させ、ガス交換を効果的に行うことができる。
【0073】
このため、特に、内気側空間24の内気の酸素濃度が急激に低下した時(例えば、乗員による喫煙など)に、その濃度を短時間で最適濃度に回復することが可能になるという有効な効果を得ることができる。
【0074】
ここで、光触媒27は多孔質体26に担持されているので、光触媒27と外気との接触面積を増加させることができ、光触媒27の水蒸気の分解効率を向上できる。また、多孔質体26が外気中の粉塵等を除去できるので、透過膜21に粉塵が付着して透過膜21の透過性能が低下することを抑制できる。
【0075】
ところで、有機系材料からなる透過膜21として、上述のPDMS(ポリジメチルシロキサン)の他に、ポリシロキサン系、ポリアセチレン系、ポリブタジエン系、ブチルゴム、ポリクロロプレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン及びポリプロピレンなどを用いてもよい。特に、耐熱性が必要な場合には、ポリシロキサン系やポリアセチレン系の高分子材を用いるとよい。
【0076】
透過膜21としてこれらの高分子を含む有機系材料を用いている場合には、酸素および二酸化炭素のみならず水蒸気も透過膜21を透過する特性を有するのであるが、光触媒27が外気側空間23の外気中の水蒸気を水素と酸素に分解することによって、外気中の水蒸気が透過膜21を透過して車室内12に侵入することを抑制できる。このため、車室内12の湿度が上昇して窓ガラスの曇りが発生してしまうことを抑制できる。
【0077】
一方、透過膜21として、セラミック等の無機系材料を用いている場合には、透過膜21と水との親和性が高い特性を有するのであるが、光触媒27が外気側空間23の外気中の水蒸気を水素と酸素に分解することによって、外気中の水蒸気が透過膜21に吸着することを抑制できる。このため、外気中の水蒸気が透過膜21に吸着することに伴う透過膜21の透過性能の低下を抑制することができる。
【0078】
また、光触媒27が外気側空間23の外気中の水蒸気を分解すると、水素と酸素のみならず、酸素ラジカル、ヒドロキシラジカルも発生する。この酸素ラジカル、ヒドロキシラジカルが外気側空間23の外気中の悪臭を分解することができるので、外気中の悪臭が車室内12に侵入することを遮断できる。
【0079】
ここで、光触媒27は、外気側空間23の外気中の水蒸気を水素と酸素に分解するのみならず、外気側空間23の外気中の有機化合物を酸化させて二酸化炭素を発生させる。これにより、外気側空間23の酸素濃度が低下するとともに二酸化炭素濃度が上昇する現象も起こりうる。
【0080】
しかし、通常、有機物の濃度はPPMオーダーであり、その酸化による二酸化炭素の発生は、車室内12のその濃度よりも小さなものであるので、車室内12からの二酸化炭素排出速度の大きな低下はない。
【0081】
また、本実施形態では、透過膜21の第1の面21aが多数個の細孔を有する保持部材25に貼り合わされているので、第1の面21aが外気側空間23に露出することを回避できる。このため、第1の面21aをきれいな状態に保つことができるので、透過膜21の透過性能を維持できる。
【0082】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、透過膜21と離間配置された多孔質体26に光触媒27を担持しているが、本第2実施形態では、図5に示すように、透過膜21の第1の面21aと貼り合わされた保持部材25に光触媒27を担持している。
【0083】
図5は本実施形態による空気浄化装置の要部の模式的な断面図である。本実施形態では、保持部材25として細孔径が5nm以下の多孔質体を用いており、この多孔質体からなる保持部材25に光触媒27を担持している。
【0084】
これにより、上記第1実施形態における多孔質体26を廃止できるので、省スペース化を図ることができる。さらに、透過膜21の直近に光触媒27を配置できるので、光触媒27によってガス交換をより効果的に行うことができる。
【0085】
なお、本実施形態では、上記第1実施形態における多孔質体26を廃止しているので、光源28が外気側空間23に露出するように配置されていると、外気吸入口20および外気導入ダクト19を通じて侵入する雨滴や粉塵等が光源28に付着して光源28が損傷したり、照度が低下する等の不具合が発生するおそれがある。
【0086】
この点に鑑みて、本実施形態では、光源28を外気導入ダクト19の内壁面に埋め込むように配置して、光源28の照射光の反射光によって光触媒27を間接的に照射するようにすれば、光源28に雨滴や粉塵等が付着して光源28が損傷したり、照度が低下する等の不具合が発生することを抑制できる。
【0087】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、光触媒27が担持された多孔質体26が光源28に対して透過膜21と反対側にのみ配置されているが、本第3実施形態では、図6に示すように、光触媒27が担持された多孔質体26が光源28に対して透過膜21と反対側のみならず、透過膜21側にも配置されている。
【0088】
これにより、上記第1実施形態と比較して、光触媒27による水蒸気の分解能力を向上できるので、ガス交換をより効果的に行うことができる。
【0089】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、図7に示すように、上記第1実施形態に対して、透過膜21を加熱する加熱手段62を追加することにより、透過膜21によるガス交換をより効果的に行うようになっている。
【0090】
図7は本実施形態による空気浄化装置の要部の模式的な断面図である。加熱手段62は保持部材25に接触して配置され、保持部材25を介して透過膜21を加熱するものである。
【0091】
具体的には、加熱手段62は、車両エンジンの温水(冷却水)が循環する温水配管で構成されており、車両エンジンの温水(冷却水)を熱源として透過膜21を加熱する。
【0092】
透過膜21として、PDMS(ポリジメチルシロキサン)等の高分子を含む有機系材料を用いている場合には、透過膜21を加熱することによって、空気中の酸素および二酸化炭素の透過が促進されるので、透過膜21によるガス交換をより効果的に行うことができる。
【0093】
一方、透過膜21として、セラミック等の無機系材料を用いている場合には、透過膜21を加熱することによって、材料の結晶振動が大きくなり、空気中の酸素および二酸化炭素が透過するスペースが広くなるので、透過膜21によるガス交換をより効果的に行うことができる。
【0094】
なお、加熱手段62として、温水配管とともに蓄熱体を併用することにより、車両エンジンの温水(冷却水)の水温、流量が変動しても、透過膜21を安定して加熱することができる。
【0095】
また、加熱手段62を、バッテリ61からの電源供給によって発熱する電気ヒータで構成してもよい。また、加熱手段62を、車外からの太陽光を蓄える蓄熱体で構成することもでき、この場合には、動力を使用せずに透過膜21を加熱することができるので、省動力化を図ることができる。
【0096】
(第5実施形態)
本第5実施形態では、図8に示すように、上記第4実施形態に対して吸湿剤63を追加することにより、内気の酸素濃度を適切な濃度に維持するようになっている。
【0097】
図8は本実施形態による空気浄化装置の要部の模式的な断面図である。吸湿剤63は加熱手段62の保持部材25と反対側部位に接触して配置されており、吸湿剤63が外気側空間23の外気中の水蒸気の一部を吸収する。本例では、吸湿剤63としてシリカゲルを用いている。
【0098】
加熱手段62には、空調用電子制御装置45によって制御される温水弁64が配置されており、この温水弁64によって加熱手段62に流入する温水流量や温水温度を調整するようになっている。
【0099】
また、空調用電子制御装置45には、内気の酸素濃度を検出するO2センサ65から検出信号が入力されるようになっている。なお、O2センサ65は本発明における酸素濃度検出手段に該当するものである。
【0100】
本実施形態では、内気の酸素濃度が上述の所定量よりも上昇しているときには、空調用電子制御装置45が温水弁64を閉じて加熱手段62を停止させる。一方、内気の酸素濃度が上述の所定量よりも低下ときには、空調用電子制御装置45が温水弁64を開いて加熱手段62を作動させる。これにより、吸湿剤63が加熱されて吸湿剤63が吸収している水分が蒸発して水蒸気が発生する。
【0101】
すると、発生した水蒸気が光触媒27によって水素と酸素に分解されるので、外気側空間23の酸素濃度が上昇する。さらに、加熱手段62を作動させると、透過膜21も加熱されるので、上記第4実施形態と同様に、透過膜21によるガス交換をより効果的に行うことができる。
【0102】
これらの結果、外気側空間23から内気側空間24へと透過する酸素量が増加するので、内気の酸素濃度を上昇させることができ、内気の酸素濃度を適切な濃度に維持できる。
【0103】
なお、加熱手段62をバッテリ61からの電源供給によって発熱する電気ヒータで構成する場合には、空調用電子制御装置45が内気の酸素濃度に応じて電気ヒータへの電源の供給と遮断とを行うようにすれば、同様の作用効果を得ることができる。
【0104】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、空気浄化装置を車両用空調装置10と一体化しているが、必ずしも空気浄化装置を車両用空調装置10と一体化する必要はなく、車両用空調装置10と別体にて車両に搭載してもよい。
【0105】
さらに、本発明は車両に搭載される空気浄化装置に限定されるものではなく、住宅やビル等の建造物の室内の空気を浄化する空気浄化装置(空調装置と一体化されたものを含む)に本発明を広く適用することができる。
【0106】
(2)上記各実施形態では、透過膜21の第1の面21aのみに保持部材25を貼り合わせているが、透過膜21の第1の面21aのみならず、第2の面21bにも保持部材25を貼り合わせてもよい。
【0107】
これにより、透過膜21をより補強でき、形状をより保持できるとともに、透過膜21の第1の面21aおよび第2の面21bの両面をきれいな状態に保つことができるので、透過膜21の透過性能をより維持できる。
【0108】
(3)上記各実施形態では、透過膜21を三角波状に折っているが、これに限定されるものではなく、例えば矩形波状に折っても同様の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1実施形態による空気浄化装置を一体化した車両用空調装置を搭載した車両の概要を示す模式図である。
【図2】図1における空気浄化装置の要部の模式的な断面図である。
【図3】図1における透過膜の支持構造を説明する斜視図である。
【図4】図1における多孔質体の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による空気浄化装置の要部の模式的な断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態による空気浄化装置の要部の模式的な断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態による空気浄化装置の要部の模式的な断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態による空気浄化装置の要部の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0110】
21…透過膜、21a…第1の面、21b…第2の面、23…外気側空間、
24…内気側空間、27…光触媒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気側空間(23)の外気と接触する第1の面(21a)と、その反対側の面であって内気側空間(24)の内気と接触する第2の面(21b)とを有し、前記外気側空間(23)と前記内気側空間(24)の酸素濃度および二酸化炭素濃度を均一にするように酸素および二酸化炭素を選択的に透過させる透過膜(21)と、
前記外気側空間(23)に配置され、前記外気中の水蒸気を分解して酸素を発生させる光触媒(27)とを備えることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
前記第1の面(21a)に貼り合わされて前記透過膜(21)の形状を保持する、多数個の細孔が形成された保持部材(25)を有し、
前記光触媒(27)が前記保持部材(25)に担持されていることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記透過膜(21)は有機系材料により形成されており、
前記透過膜(21)を加熱する加熱手段(62)を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記透過膜(21)は無機系材料により形成されており、
前記透過膜(21)を加熱する加熱手段(62)を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記光触媒(27)が前記第1の面(21a)と離間して配置されており、
前記光触媒(27)と前記第1の面(21a)との間に配置され、前記外気中の水蒸気を吸収する吸湿剤(63)と、
前記内気の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段(65)と、
前記酸素濃度検出手段(65)の検出信号が入力されるとともに、前記加熱手段(62)の作動を制御する制御手段(45)とを備え、
前記加熱手段(62)が、前記透過膜(21)のみならず、前記吸湿剤(63)も加熱するようになっており、
前記制御手段(45)は、前記酸素濃度が所定値よりも低下したときには前記加熱手段(62)を作動させ、前記酸素濃度が所定値よりも上昇したときには前記加熱手段(62)を停止させることを特徴とする請求項3または4に記載の空気浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−39349(P2008−39349A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217843(P2006−217843)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】