説明

空間計測システム及び計測方法、並びに昇降機制御システム

【課題】レーザセンサを用いて監視領域を計測して人や荷物(物体という)の存在状況を監視することで、監視領域へ物体が進入することができるかを判断する。
【解決手段】監視領域にレーザセンサにてレーザ光を照射して監視領域から測距データを得るレーザ監視装置と、特定する物体の三次元のサイズを大きさ毎に複数に区分して予め登録しておく物体認識データベースと、レーザ監視装置によって得られた監視領域の測距データについて、監視領域の背景データとの差分を取って、物体の三次元のデータを算出する検知部と、検知部で算出された物体データと、物体認識DBに登録された物体のサイズとを照合する判断部とを有し、判断部は、照合の結果、検知された物体の大きさが、物体認識DBに登録された特定物体サイズを超えていると判断した場合、その旨を示す情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間計測システム及び計測方法、並びに昇降機制御システムに係り、特に、レーザセンサを用いて昇降機の乗りかご等の空間領域を計測することにより、その領域内の物体の存在状況や密度から利用状況を監視して、快適な利用状態を確保することが可能な空間計測システム及び計測方法、昇降機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機の乗りかごの空間領域や各階の待ち人数を監視して、昇降機の運行制御をする技術がいろいろと提案されている。例えば、特許文献1には、昇降機の運行において利用者が昇降機に乗れずに待ち時間が過長になることを解消するために、中間階にいる利用者の待ち時間と優先ランクなどの個人情報に対応させて昇降機の運行制御をして、昇降機が到来したときに利用者が安全に乗れることを自動確保するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−330062号公報
【特許文献2】特開2009−85927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、中間階にいる昇降機乗り待ち時間が長い昇降機利用者が、自分呼び登録した優先ランクや待ち時間により、乗りかごの負荷センサの満員設定を下方向に自動調節し、途中の呼び階に応じるときに新満員設定により自動的に乗り制約でき、非通常の運転で昇降機が利用者のいる階に来たときに確実に乗れることを自動的に確保させて運行制御するものの、実際に昇降機の乗りかごにおける利用状況(乗りかごの占有率)を的確に把握できないと言う問題があった。
【0005】
本発明の目的は、レーザセンサを用いて監視領域を計測して人や荷物(物体という)の存在状況を監視することで、監視領域へ物体が進入することができるかを判断することを可能とする空間計測システム及び計測方法を提供することにある。
本発明の目的は、レーザセンサを用いて監視領域としての昇降機の乗りかご内を計測して物体が占める割合を検知し、この割合に基づいて乗りかごの通過又は停止を制御し、乗りかごの積載重量に余裕がある場合でも待ち利用者がいる呼び階を通過させるように乗りかごを制御することで、乗りかご内の利用者の快適な利用状態を確保することを可能とする昇降機制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空間計測システムは、好ましくは、レーザセンサを用いて監視領域における物体を検知して、該物体が監視領域の空間を占める状況を計測する空間計測システムであって、
該監視領域にレーザセンサにてレーザ光を照射して、該監視領域から測距データを得るレーザ監視装置と、特定する物体の三次元のサイズを複数に区分して予め登録しておく物体認識データベース(DB)と、該レーザ監視装置によって得られた監視領域の測距データについて、該監視領域の背景データとの差分を取って、物体の三次元のデータを算出する検知部と、該検知部で算出された物体データと、該物体認識DBに登録された物体のサイズとを照合する判断部とを有し、該判断部は、該照合の結果、検知された物体の大きさが、該物体認識DBに登録された特定物体サイズを超えていると判断した場合、その旨を示す情報を出力することを特徴とする空間計測システムとして構成される。
【0007】
本発明に係る空間計測方法は、好ましくは、レーザセンサを用いて監視領域における物体を検知して、該物体が監視領域の空間を占める状況を計測する空間計測方法であって、
レーザ監視装置を用いて、該監視領域にレーザセンサにてレーザ光を照射して該監視領域から測距データを得るステップと、該レーザ監視装置によって得られた監視領域の測距データについて、該監視領域の背景データとの差分を取って、物体の三次元のデータを算出する検知ステップと、該検知ステップで算出された物体データと、特定する物体の三次元のサイズを複数に区分して予め登録しておく物体認識データベース(DB)に登録された物体のサイズとを照合する判断ステップを有し、該判断ステップで該照合の結果、検知された物体の大きさが、該物体認識DBに登録された特定物体サイズを超えていると判断した場合、その旨を示す情報を出力することを特徴とする空間計測方法として構成される。
【0008】
本発明に係る昇降機制御システムは、好ましくは、ある階からの乗りかごの呼び要求に応じて、該呼び階に昇降機を停止又は通過するように制御する昇降機制御システムであって、
該乗りかご内の重量を監視する重量監視部と、呼び階からの要求に対して応答する呼び応答部と、該重量監視部による乗りかごの監視状況、及び該呼び階からの要求に対する該呼び応答部からの情報によって該呼び階に対する該昇降機の停止及び通過を制御する制御部と、
該乗りかご内を監視領域として、複数のレーザセンサよりレーザ光を照射して該監視領域から測距データを得るレーザ監視装置と、
特定する物体の三次元のサイズを複数に区分して予め登録しておく物体認識データベース(DB)と、
該レーザ監視装置によって得られた監視領域の測距データについて、該監視領域の背景データとの差分を取って、物体の三次元のデータを算出する検知部と、
該検知部で算出された物体データと、該物体認識DBに登録された物体のサイズとを照合する判断部とを有し、該判断部は、該照合の結果、検知された物体の大きさが、該物体認識DBに登録された特定物体サイズを超えていると判断した場合、その旨を示す情報を該制御部へ送り、
該制御部は、呼び階からの要求があってかつ該重量監視部による乗りかごの重量に余裕があっても、該昇降機を呼び階に停止させずに通過させるように制御することを特徴とする昇降機制御システムとして構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空間計測システム及び計測方法よれば、レーザセンサにより監視領域である空間計測をすることで、監視領域内の物体の存在状況を監視し、監視領域へ物体が進入することができるかを判断することができる。
また、本発明の昇降機制御システムによれば、乗りかごの積載重量と空き空間(利用密度)を統合して制御することにより、たとえ重量的には乗りかごに乗れる余地があっても、既に乗りかご内にいる利用者及び荷物等によって乗りかごの空き空間の余裕が無い又は少ないと判断したときは、利用者が呼び階で待っていてもその階を通過させることで、乗りかご内の利用者の快適な状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施例による空間計測システムの構成を示す図。
【図2】一実施例による昇降機制御システムの構成を示す図。
【図3】一実施例における乗りかご内を上から見た空間計測の様子を示す図。
【図4】一実施例における乗りかご内を側面から見た空間計測の様子を示す図。
【図5】一実施例による昇降機の制御動作を説明するためのフローチャート。
【図6】一実施例による人のサイズを判定する処理動作を説明するためのフローチャート。
【図7】一実施例における物体のサイズを認識する物体認識データDBの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施例による空間計測システムの構成を示す。
空間計測システムは、複数(図示では3つ)のレーザ監視装置10と、空間計測装置11を備えて構成される。複数のレーザ監視装置10は、昇降機の乗りかご内のそれぞれ異なる場所(例えば乗りかごの天井の3隅)に設置されたレーザセンサ102と、乗りかご内の所定の領域(レーザが照射される領域を監視領域という)にレーザを照射して、レーザセンサ102によって、人や荷物等(以下これらを含めて物体という)及び監視領域の背景の測距データを取得するレーザ制御部103を有する。レーザ制御部103は、レーザセンサ102から例えば分解能0.25°毎に測距データを得る。レーザ制御部103は、各レーザセンサ102の監視領域の前方270°の範囲を0.25°刻みのフレームにて角度を変えながら物体までの距離を経時的に測距して、その測距データを空間計測装置11へ順次送る。
【0012】
空間計測装置11は、検知部112、判断部113、データベース(DB)114、及び入出力インターフェース(IF)部115を有して構成される。空間計測装置11は、例えばサーバのようなコンピュータで構成され、ハードウェアとして、プログラムを実行するプロセッサ(CPU)や、測距データや物体の位置に関係する種々のデータを記憶するDB114を形成する記憶装置を有する。CPUでアプリケーションプログラムを実行することで、測距データを用いて物体を検知する検知部112や、検知された物体が予め定めた何れの物体サイズかを判断する判断部113の機能が実現される。(なお、検知部112及び判断部113の機能動作については後で詳述する。)DB114には、特定の物体名とそのサイズの関係を登録した物体認識データDB(図7参照)が形成される。入出力IF部115は、昇降機監視装置2の入出力IF部204に接続され、空間計測装置11での物体の判断結果を昇降機の制御に反映する。なお、図示していないが、入出力IF115には、入力器や表示器等の入出力機器が接続される。
【0013】
ここで、空間計測装置11の検知部112と判断部113の機能について、詳しく説明する。
検知部112は、各レーザセンサ102から得られた測距データについて、予め取得される背景のデータ(無人状態の監視領域の測距データ)と、その後逐次得られる物体の存在する可能性のある測距データの差分を取って、現に存在する物体のデータを算出する。また、検知部112は、監視領域内にある物体を認識するため、レーザ制御部103を介して3つのレーザレーザ102から得られた各測距データを1つのデータに統合処理をする。これは、各レーザセンサからの測距データを重ね合わせて各レーザセンサを原点とした1つ(x,yで示される)極座標系データに変換する処理である。例えば、フレーム毎に任意の座標を原点とし、その原点からの各レーザセンサの座標、及びセンサの傾き(ピッチ角、ロール角、ヨー角)を考慮した座標を計測ポイントデータに変換することで、複数のレーザセンサで計測している空間を1つの座標系に統合することができる。これにより、監視領域(乗りかご内部)においてレーザセンサでの測距データのズレや不一致をキャリブレーション(補正)した測距データを得ることができる。なお、背景データとの差分を取って物体のデータを得ること、及び複数のレーザセンサからの測距データを統合処理することについては、例えば特許文献2に記載されている。
【0014】
判断部113は、検知部112による物体の検知データを用いて、物体認識データDBのデータと照合することで、監視領域内における占有状態から空き空間の度合い(物体の利用密度)を判断する。空間に物体の存在位置が検知されても、新たな物体が進入できるだけの設定空間がある場合を空き空間への乗込み可能と判断され、設定空間以上の空きが検知されない場合、空き空間への乗込み不可能と判断される。判断部113による判断結果は、入出力IF部115を介して、昇降機監視装置2の入出力IF部203へ送られる。
【0015】
図7を参照して、物体認識データDBの構成について説明する。物体認識データDBは、コードに対応して、特定する物体名、特定する物体サイズ(縦×横×高)、物体の利用密度(割合)及び空間の目安のデータを記憶する。
ここで、監視領域内における占有状態から空き空間の割合(利用密度)の算出、及び利用密度に基づく乗りかごへの搭乗の判断について説明をする。
【0016】
[算出例1]
物体の利用密度の算出について、対象となる「乗りかごの容積X、物体の体積Y」から式(1)により空間値を算出し、式(2)により割合(%)を算出する。
【0017】
空間値=(乗りかごの容積X−物体の体積Y)÷(乗りかごの容積X) 式(1)
利用密度=(1−空間値)×100% 式(2)
人を検知する際に用いられ標準的なサイズ(縦×横/cmにて、例えば、60cm四方)を用いて、例えば、乗りかごの定員を16人乗りとすれば、乗りかごの四角一辺を4人として、乗りかごの縦×横のサイズを求める。
なお、式(1)の乗りかごの容積Xと物体の体積Yについて、利用者が乗りかご内に立って乗ることから高さ方向の空間サイズ(190cm)は一律条件とし、縦×横のサイズから空間値、及び利用密度[%]を算出する。これは、コード40(16人分空間)の特定サイズに相当し、縦(4人分×60cm)×横(4人分×60cm)=240×240cm(乗りかごの容積Xに相当(但し、高さ方向の空間サイズ(190cm)は一律条件)が求められる。
【0018】
ここから、空間値、及び割合[%]を算出すると、例えば、コード20(4人分空間)の特定サイズは、縦×横=130×130cm(物体の体積Y相当、但し、高さ方向の空間サイズ(190cm)は一律条件)、式(1)より空間値≒0.71((240×240cm)−(130×130cm))÷(240×240cm))となり、式(2)より割合≒29%((1−0.71)×100%)となる。
【0019】
同様にしてコード30(8人分空間)の特定サイズは、縦×横=180×180cm(物体の体積Y相当、同条件)、式(1)より空間値≒0.44((240×240cm)−(180×180cm))÷(240×240cm))となり、式(2)より利用密度≒56%((1−0.44)×100%)となる。
【0020】
そして、コード36(12人分空間)の特定サイズは、縦×横=240×180cm(物体の体積Y相当、同条件)、式(1)より空間値≒0.25((240×240cm)−(240×180cm))÷(240×240cm))となり、式(2)より割合≒75%((1−0.25)×100%)となる。
上記は、乗りかごを利用するための空間割合が、利用者4〜5人では29[%]、8人では56[%]、12人では75[%]必要であることを意味している。
【0021】
例えば、物体認識DB(図7)に示される割合%は、
コード10,11:利用空間目安2人分空間の場合は、利用密度を14[%]
コード20〜22:利用空間目安4〜5人分空間の場合は、利用密度を29[%]
コード30〜32:利用空間目安8人分空間の場合は、利用密度を56[%]
コード35:利用空間目安10人分空間の場合は、利用密度を72[%]
コード36,37:利用空間目安12人分空間の場合は、利用密度を75[%]
コード38,39:利用空間目安14人分空間の場合は、利用密度を83[%]
コード40〜42:利用空間目安16人分空間の場合は、利用密度を94[%]
として算出される。
物体認識データDBの利用密度を参照して、新たな物体の進入(人の搭乗)の可否の判断がされる。
【0022】
次に、物体認識データDBによる物体を特定するサイズの利用と、利用密度を参照して人の搭乗の可否を判断する例について説明をする。
空き空間の判断処理(図6のS603)において、物体データと物体認識データDBとのデータとを照合し、物体サイズ(縦×横×高)に基づいて物体が特定されるが、乗りかごに対する利用者の搭乗の可否判断は、乗りかご内に存在する個々の物体のサイズを判断するため、物体認識データDBの物体の利用密度を用いて加算し総和値を求める。
【0023】
[算出例2]
例えば、乗りかごに既搭乗者8人がいる場面で、搭乗への空き空間の割合を求めると、搭乗者8人が乗りかごにて占めるサイズの組み合わせは、(a)1+7人、(b)2+6人,(c)3+5人、(d)4+4人分であると推察される。
この時の利用密度は、各々(a)6.3+44.1%,(b)12.6+37.8%,(c)18.9+31.5%,(d)25.2+25.2%となり、何れも既搭乗者が50.4%の割合で空間を占めており、残りの空き空間の割合がおおよそ半分残りであることが分かる。
【0024】
この利用済空間の割合について利用密度を利用して加算し、総和値を求める作用によって、乗りかごに占める空き空間の割合が把握できるので、空き空間判断処理の当初の(利用密度が2人以下の比較的空き空間の割合が少ない)状態から、速やかに搭乗可否の判断をすることができる。
本処理は、通常的に乗りかごへの乗降後にドアが閉じられる毎(契機)に実行されるので、昇降機の移動動作中に、ある階から呼び階をされた場合においても、速やかに昇降機の停止を制御することができる。
搭乗の可否判断とは、具体的には人が搭乗できる空き空間の有無の監視である。
【0025】
本発明では少なくとも2人分以上が搭乗するサイズの空間が有ることを条件としており、2人分の空間有りと判断された場合は、さらに4人分の空間が検知される可能性有りの状態として、さらに大きい空き空間を検知するために特定サイズ(縦×横)(高さは前述の通り一定値扱い)を大きいサイズのコードを更新するように機能する。
【0026】
[算出例3]
乗りかごの定員を16人乗りとすれば、式(1)、式(2)より、各人数が占める空間の割合を1人分の利用密度(6.3%)から計算すると、2人分(12.6%)、4人分(25%)、8人分(50%)、12人分(75%)、14人分(87.5%)、16人分(100%)となる。
例えば、既に乗りかごに12人が搭乗しており、残りの空き空間に4人の搭乗を想定した場合、利用密度として空間に占める割合は、乗りかご内に点在する12人分の割合の総和値であり、利用密度2人の面(縦×横)12.6%が6面分存在するとして、(a)75.6%、同4人の面(縦×横)25%が3面分存在するとして、(b)75%が求められ、残りの空き空間がおおよそ25%(100―75%)であることが分かる。
【0027】
[算出例4]
一方、物体認識データDB(図7)に設定された12人分の利用密度の75%も、これに近似している。さらに、物体認識データDBを参考に各々の利用密度を計算して見ると、利用密度2人の面(縦×横)14%が6面分存在するとして、(a)’84%、同4人の面(縦×横)29%が3面分存在するとして、(b)’87%を求められる。実際の呼び階による搭乗への可否判定は、物体認識データDBの値が参照され、空間の割合を1人分の利用密度から求めた値よりも厳しい条件から判断される。
この場合の具体的な空き空間による搭乗可能な利用密度は13〜16%であり、物体認識データDBからは、2人分の空間が有り搭乗可能と判断されて昇降機の停止が制御される。
この物体認識データDBに設定された利用密度は、学習機能を設けて経時的に実施される昇降機の制御から値をダイナミックに更新することもできるであろうし、変形をして実施することが可能である。
【0028】
図2は、昇降機制御システムの構成を示す。
昇降機が設置された建物の各階には、利用者7が操作する呼びボタン208、及び満員・通過等を表示する表示器209が設置されている。昇降機制御装置2は、乗りかごの重量を監視する重量監視部201、乗りかごのドア開閉を監視するドア開閉監視部202、各階に設置された呼びボタン208からの呼び信号を受ける呼び応答部203、他の昇降機からの情報や空間計測装置11の入出力IF部115からの情報を受ける入出力IF部204、各部201〜204の信号を受け、表示器209や昇降機の停止及び昇降を制御する制御部205、を有して構成される。
【0029】
利用者7は、何れの階で昇降機に乗る際に呼びボタン208を押すと、呼びボタン208の押された階の情報は呼び応答部203に登録される。また、レーザ監視装置10は、レーザセンサ102によって監視領域である昇降機の乗りかご内の物体の存在を常時監視して監視領域の空間を測距している。空間計測装置11の検知部112は、複数の監視部からの測距データを得て、判断部113により乗りかご内の物体の空間密度を判断する。
【0030】
制御部205は、呼び応答部203からの信号に対して、乗りかごの重量監視部201からの信号(積載重量の検知結果)、及び空間計測装置11からの乗りかご内の空間の判断情報を用いて、乗りかごの階通過又は停止の指令を出す。制御部205は、利用者に昇降機の運行状況を伝えるために、各階の表示器209に満員/通過表示を表示する。
【0031】
監視領域(乗りかご)の空間計測を実施する主な条件は、(1)利用者により乗りかごを所在階に呼ぶため、呼び登録した場合、(2)所在階へ到来した乗りかごに利用者が乗込み、扉が閉じた場合、及び利用者が行き先階を指定するため、行き先登録した場合、(3)複数の昇降機の設置環境では、何れかの昇降機のリンクから呼び登録された場合、(4)指定階への運転、及び通過階指定済の昇降機へ呼び登録された場合などである。
本発明は、乗りかごの積載重量に拘わらず、乗りかご内の空間状態をレーザセンサで検知することで、昇降機の停止又は移動制御を行う。これについては、図5〜6を参照して後述する。
【0032】
図3及び図4は、昇降機の乗りかご内を上及び側面から見た空間計測の様子を示す。
乗りかご30は、出入口301及び操作盤303を備え、更に天井の3隅には3つのレーザセンサ102が設置されている。305は利用者、306は荷物を示す。
レーザセンサによる空間計測範囲は、レーザセンサAの測距範囲307、レーザセンサBの測距範囲308、レーザセンサCの測距範囲309である。これら3つのレーザセンサによって、乗りかご40内に利用者305や荷物306が占める利用密度を監視して、空間を計測する。
【0033】
本実施例では、乗りかご30内の空間における物体をレーザセンサ102によって計測するために、監視領域にトリックス状の検索グリッド304を設定して、検索グリッド304内に存在する物体を検知することで、空間の利用密度を検知することができる。
本実施例において、乗りかご内の空間計測の場合、限られた空間に乗り込め、昇降機として機能するため、想定される条件などがある。例えば、(a)空間(乗りかご)への乗込みには定員設定。(b)空間(乗りかご)には、積載重量制限があり、これを超える場合は、警告やメッセージが発せられる、若しくは、乗りかごの昇降動作が制限。(c)空き空間への乗込み可否判断においては、人を検知する際に用いられる標準的なサイズ(縦×横/cmにて、例えば、60cm四方)の空き空間が有ることで、人が1人、存在できる空間が有ることなどであり、これを基準とした判断をする。
【0034】
本実施例の場合、空間(乗りかご)へ、人1人が乗込んだことを考慮した空き空間スペースは、少なくとも50cm四方が必要であるが、実際は1人分の空き空間では、積載重量制限上の余裕は少ない状況が想定され、利用者の呼び階への要求に対応する際は、少なくとも2人が乗込みすることが可能な空き空間(例えば、縦×横×高/cmにて2人分(縦長)空間では60×120×190cm、2人分(横長)空間では120×60×190cm)が有ることが必要と考えから、空間計測における検索グリッド304の設定値としては、人を検知する際に用いられる標準サイズとして、物体識別データDB(図7)のコード10〜40に示す特定サイズ(縦×横×高/cm)を設定する。空き空間計測における検索グリッド304のサイズは、認識する物体に基づいて設定することが可能であり、その利用によって最適な設定をすることができる。
【0035】
次に、図5を参照して、昇降機制御システムにおける昇降機の制御動作について説明する。
まず、利用者が乗りかごに乗る時に呼びボタン208を押すと、呼び応答部203は、呼びボタンの押下により呼び階ありの信号を得て(S501)、呼びボタン208が押された階の登録をする(S502)。一方、呼び階ボタンが押されずに呼び階無しの場合は、乗りかごの出入口のドア開閉動作を監視する(S503)。
【0036】
S503にて物体の乗りかごへの乗込みを出入口のドア監視にて開閉有りの場合、又はステップS502にて呼び階登録が完了後の場合で、出入口のドア開閉動作検知から昇降機の乗りかご内への物体の乗込みのため経時的な空き空間計測をする(S504)。出入口のドア開閉無しの場合は、呼び階信号の有無の監視(S501)への遷移する(S503)。
【0037】
空き空間計測(S504)では、検知部112による動作処理として、乗りかご内への物体の乗込みのため経時的な空き空間計測から、空き空間の判断(S505)を行う。空き空間の判断(S505)では、空間計測装置11による乗りかご内の人と物の占める割合を判断する。この処理については、図6を参照して後で詳述する。
【0038】
空き空間の判断(S505)の結果、空き空間有りの場合は、重量監視部201による重量・定員の判断(S506)へ遷移し、空き空間が無しの場合は、表示器209に「満員/通過」を表示する(S508)。一方、空き空間の判断(S505)の結果、空き空間有りの場合で、乗りかご空間への物体の乗込みを想定した場合、重量監視部201による重量・定員の判断をして、乗りかご内の重量が規定内と判断した場合は、呼び階リクエストの有無の判断(S507)へ遷移する。
【0039】
先の重量・定員の判断(S506)で重量が規定内と判断した場合において、利用者による呼びボタンの信号により呼び応答部203が呼び登録有りと判断した場合、物体の乗込みのための停止を判断して、制御部205は乗りかごの停止を制御する(S510)。また、呼び応答部203が呼び登録無と判断した場合は、物体の乗込みが不要のため、制御部205は昇降機の通過を制御して、表示器209に「満員/通過」を表示する(S508)。
【0040】
先の空き空間判断(S505)において、空き空間有りから空き空間無と判断した場合、または先の重量・定員の判断(S506)において、重量が規定超と判断した場合、さらに、先の呼び階リクエスト有無の判断(S507)において呼び登録無しにより通過を判断した場合、各階の表示器209に「満員/通過」を表示する(S508)。
利用者のボタン押による呼び登録(S502)により、先の判断(S507)にて呼び登録有り、物体の乗込みのための停止を判断した場合は、制御部205は乗りかごの停止制御をする。なお、制御部205は、表示器209に「満員/通過」を表示する時には、併せて乗りかごの通過を制御する(S509)。
【0041】
次に、本発明に特徴的な、乗りかご内の監視による空き判断の処理(S505)について説明する。
ある階で待っている人を乗りかごに新たに乗せるかの判断は、空間計測装置11におけるレーザセンサによる測距データを用いた物体の検知及び判断に基づいて行われる。
乗りかご内の物体の存在状況をレーザセンサによる測距データを取得して、予め取得される背景データと物体が存在している空間の差分を取り、少なくとも人(利用者)が2人以上乗込める空間の有無を判定する。その空間の有無は、物体認識データDB(図7)に登録された、物体の特定サイズ(縦×横×高)[cm]を以て判定する。
【0042】
実際の乗りかごには、物体が点在するため乗りかご全体から見た場合の搭乗可能な空き空間の割合は、最初に点在する物体が利用する利用密度の総和値が求められることが必要である。そこで、点在する各物体のサイズから空間への割合を認識データDB(図7)に登録された利用密度[%]を用いて加算して総和値を求め、全体から減じることで搭乗可能な空き空間の割合を把握する。
この方法については、物体データと物体認識データDB(図7)のデータ照合による処理(図6)にて詳しく説明をする。
【0043】
図6を参照して、空き空間の判断処理(S505)の動作について詳しく説明する。
本判断処理に際して、空間計測装置11は予め乗りかご内の背景データ(無人の空間)を取得して、DB114内に保管しておく。
まず、空間計測装置11の検知部112は、レーザ監視装置10の各レーザセンサ102によって乗りかご内を計測した測距データを取得する(S601)。そして、取得した測距データと、予めDB内に取得しておいた背景データとの差分を計算して、乗りかご内の物体を検知する(S602)。
【0044】
検知された物体のデータは三次元データであり、人や荷物等の物体のデータを含んでいる。この物体データと、物体認識データDB(図7)に予め登録された物体の特定サイズ(縦×横×高)[cm]を照合する。
物体データの照合に関して、乗りかご内の空間が物体で満たされていない(条件成立して空間に余裕が有る)場合は、利用密度[%]について総和値を求めながら、そこに存在する空き空間の割合有りを認識するS604遷移して特定サイズの大きさから物体の特定サイズ(縦×横×高)を、最初は小さな空間(図7のコード10)から大きな空間へ(コード91へ向かって)更新するように順次遷移(S605)させながら制御される。
【0045】
一方、特定サイズにて物体の密度が満たされている場合(条件不成立で空間に余裕が無い)場合は、利用密度[%]について総和値を求めながら、そこに存在する空き空間の割合不足を認識するS606へ遷移する(S603)。
ステップS603の照合により、物体認識データDB(図7)の利用密度[%]の総和値から、乗りかごにおける空き空間の割合に対して余裕有り(搭乗可)、若しくは、乗りかごにおける空き空間の割合が不足した(搭乗不可)を認識する(S604)。
【0046】
ステップS604で利用密度[%]の総和値から、そこに存在する空き空間の割合に余裕有り(搭乗可)の認識後に物体の特定サイズ(縦×横×高)を大きいサイズ(コード11)へ順次更新して(S605)、処理ステップS603へ戻る。照合判断の処理(S603)において、例えば、2人分の空間有りの場合は、さらに4人分の空間が検知される可能性ありの状態で、さらに大きい空間を検知するために特定サイズ(縦×横×高)を大きいサイズ(コード20)へ更新する。
【0047】
一方、ステップS604で利用密度[%]の総和値から、乗りかごにおける空き空間の割合が不足した(搭乗不可)との認識後に判定する特定サイズにて物体の密度が満たされている場合(条件不成立で空間に余裕が無い)には、乗りかごが満員又は新たな人数分以上の人の乗込み空間が無いため乗込み不可(通過)と判定する(S606)。
乗りかごの通過の場合には、通過階に設置された表示器209に「満員/通過」の表示をする。
【0048】
ここで、搭乗可否の認識について、昇降機が移動動作や停止(ドアの改変を伴う)を繰り返すことで、変化する状況に対して利用済み空間の総和値から空き空間の割合を経時的に加減して認識することで、呼び階リクエスト有無の判断(S507)において、停止判断を容易にすることができる。
【0049】
このようにして、検知部112が検知した物体データの実際のサイズと、物体認識データDB(図7)内の特定サイズ(縦×横×高)とを順次照合し、実際の物体サイズが、物体認識データDB(図7)内の物体の特定サイズを上回るまで、上記の照合動作を続ける。照合判断の処理(S603)の結果、実際の物体サイズが、物体認識データDB内の物体の特定サイズを上回ったら、その時のコードが示す値が乗りかご内の利用密度に対応している。
【0050】
例えば、照合の結果、コード31とすると、乗りかご内はスペースがありまだ人が乗れると判断してステップS506に移る。一方、コード40の場合には、乗りかご内はスペースが無いと判断して、ステップS508へ移る。この場合、たとえ乗りかご内の重量・定員が制限以下でも、昇降機制御装置2の制御部205は、乗りかごが呼び階を通過するように制御する。
ステップS506に移ると、重量・定員を判定し、呼び階における乗りかごの通過/停止の制御を判定して(S507)、昇降機の通過又は停止を制御する(509)。
【符号の説明】
【0051】
10:レーザ監視装置 102:レーザセンサ 103:レーザ制御部
11:空間計測装置 112:検知部 113:判断部 114:DB 115:入出力IF部 2:昇降機制御装置 201:重量監視部 202:ドア開閉監視部 203:呼び応答部 204:入出力IF部 205:制御部
208:呼びボタン 209:表示器 30:乗りかご。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザセンサを用いて監視領域における物体を検知して、該物体が監視領域の空間を占める状況を計測する空間計測システムであって、
該監視領域にレーザセンサにてレーザ光を照射して、該監視領域から測距データを得るレーザ監視装置と、
特定する物体の三次元のサイズを大きさ毎に複数に区分して予め登録しておく物体認識データベース(DB)と、
該レーザ監視装置によって得られた監視領域の測距データについて、該監視領域の背景データとの差分を取って、物体の三次元のデータを算出する検知部と、
該検知部で算出された物体データと、該物体認識DBに登録された物体のサイズとを照合する判断部とを有し、
該判断部は、該照合の結果、検知された物体の大きさが、該物体認識DBに登録された特定物体サイズを超えていると判断した場合、その旨を示す情報を出力することを特徴とする空間計測システム。
【請求項2】
レーザセンサを用いて監視領域における物体を検知して、該物体が監視領域の空間を占める状況を計測する空間計測方法であって、
レーザ監視装置を用いて、該監視領域にレーザセンサにてレーザ光を照射して該監視領域から測距データを得るステップと、
該レーザ監視装置によって得られた監視領域の測距データについて、該監視領域の背景データとの差分を取って、物体の三次元のデータを算出する検知ステップと、
該検知ステップで算出された物体データと、特定する物体の三次元のサイズを大きさ毎に複数に区分して予め登録しておく物体認識データベース(DB)に登録された物体のサイズとを照合する判断ステップを有し、
該判断ステップで該照合の結果、検知された物体の大きさが、該物体認識DBに登録された特定物体サイズを超えていると判断した場合、その旨を示す情報を出力することを特徴とする空間計測方法。
【請求項3】
ある階からの乗りかごの呼び要求に応じて、該呼び階に昇降機を停止又は通過するように制御する昇降機制御システムであって、
該乗りかご内の重量を監視する重量監視部と、呼び階からの要求に対して応答する呼び応答部と、該重量監視部による乗りかごの監視状況、及び該呼び階からの要求に対する該呼び応答部からの情報によって該呼び階に対する該昇降機の停止及び通過を制御する制御部と、
該乗りかご内を監視領域として、複数のレーザセンサよりレーザ光を照射して該監視領域から測距データを得るレーザ監視装置と、
特定する物体の三次元のサイズを大きさ毎に複数に区分して予め登録しておく物体認識データベース(DB)と、
該レーザ監視装置によって得られた監視領域の測距データについて、該監視領域の背景データとの差分を取って、物体の三次元のデータを算出する検知部と、
該検知部で算出された物体データと、該物体認識DBに登録された物体のサイズとを照合する判断部とを有し、
該判断部は、該照合の結果、検知された物体の大きさが、該物体認識DBに登録された特定物体サイズを超えていると判断した場合、その旨を示す情報を該制御部へ送り、
該制御部は、呼び階からの要求があってかつ該重量監視部による乗りかごの重量に余裕があっても、該昇降機を呼び階に停止させずに通過させるように制御することを特徴とする昇降機制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−180190(P2012−180190A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44657(P2011−44657)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】