説明

穿孔装置

【課題】削岩作業により削られたくり粉が案内ロッド内に溜まりにくいようにした穿孔装置を提供する。
【解決手段】案内ロッド6と削岩機のドリル部とを互いに連結する連結部材8とを備え、案内ロッド6が、前後方向に延長する筒状案内路55と、筒状案内路を形成する筒部材(円筒部材28)の内外に貫通し筒部材の筒の軸線に沿って延長するように筒部材に形成された案内溝30とを備え、連結部材8が、案内ロッドの筒状案内路を筒の軸線に沿った方向にスライド可能なスライド体51と、スライド体とドリル部とを連結して案内溝30内をスライド可能な連結体(連結板27)とを備えたことによって、ドリル部が筒状案内路55に沿って前後方向にスライド可能に構成された穿孔装置において、ドリル部による削岩作業によって筒状案内路55内に溜まったくり粉を筒状案内路55内より外部に排出させる排出手段1B(水供給手段60)を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の孔を連続させた溝を形成可能な穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地山の岩盤に複数の孔を一定間隔隔てて連続させて形成でき、複数の孔を連続させた溝を形成可能な穿孔装置が知られている。この穿孔装置は、操縦機に連結される基台と、基台に前後移動可能に設けられた削岩機と、基台の前部に設けられた支持部と、支持部に連結されて前方に突出する案内ロッドと、案内ロッドと削岩機のドリル部とを互いに連結する連結部材とを備え、案内ロッドが、前後方向に延長する筒状案内路と、筒状案内路を形成する筒部材の内外に貫通し筒部材の筒の軸線に沿って延長するように筒部材に形成された案内溝とを備え、連結部材が、案内ロッドの筒状案内路を筒の軸線に沿った方向にスライド可能なスライド体と、スライド体とドリル部とを連結して案内溝内をスライド可能な連結体とを備えたことによって、ドリル部が筒状案内路に沿って前後方向にスライド可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−327589号公報
【特許文献2】特開2005−83007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記穿孔装置においては、1つの孔を穿孔する毎にドリル部を後方に戻して次の孔を穿孔するが、ドリル部による削岩作業によって岩石の削り屑(以下、くり粉という)が筒状案内路内に溜まってしまって、ドリル部を後方に戻しにくくなる。特に、案内ロッドの案内溝が上方又は横方に向けられた状態でドリル部を駆動して削岩作業を行うと、筒状案内路内に入り込んだくり粉が案内溝を介して排出され難くなって、くり粉が筒状案内路内に溜まりやすくなる。この場合、1つの孔を穿孔する毎に筒状案内路内に溜まったくり粉を除去しなくてはならず、作業効率を低下させてしまうという課題があった。
そこで、本発明では、削岩作業により削られたくり粉が案内ロッド内に溜まりにくいようにした穿孔装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る穿孔装置は、操縦機に連結される基台と、基台に前後移動可能に設けられた削岩機と、基台の前部に設けられた支持部と、支持部に連結されて前方に突出する案内ロッドと、案内ロッドと削岩機のドリル部とを互いに連結する連結部材とを備え、案内ロッドが、前後方向に延長する筒状案内路と、筒状案内路を形成する筒部材の内外に貫通し筒部材の筒の軸線に沿って延長するように筒部材に形成された案内溝とを備え、連結部材が、案内ロッドの筒状案内路を筒の軸線に沿った方向にスライド可能なスライド体と、スライド体とドリル部とを連結して案内溝内をスライド可能な連結体とを備えたことによって、ドリル部が筒状案内路に沿って前後方向にスライド可能に構成された穿孔装置において、ドリル部による削岩作業によって筒状案内路内に溜まったくり粉を筒状案内路内より外部に排出させる排出手段を備えたので、削岩作業により削られたくり粉が案内ロッド内に溜まりにくいようにでき、作業の効率化が図れるようになる。
排出手段が、筒部材の後端開口から筒状案内路内に水を供給する水供給手段により構成されたので、水供給手段により筒状案内路内に供給される水によって筒状案内路内のくり粉が筒状案内路の外に排出されて、くり粉が筒状案内路内に溜まりにくくなり、作業の効率化が図れる。
水供給手段が、筒状案内路内のスライド体に届くように水を噴射させる水噴射機構を備えたので、案内ロッドの筒状案内路内に溜まったくり粉を筒状案内路内より外部に効率的に排出させることができる。
ドリル部が、穿孔ロッドと、穿孔ロッドに回転力及び打撃力を伝達する回転軸とを備え、穿孔ロッドが、前端部に切削部を備え、回転軸及び穿孔ロッドが、切削部に水を送るための水路を備え、切削部が、水路を介して切削部に供給された水を穿孔対象部に放出するための水放出口を備え、連結部材が、穿孔ロッドの外周に位置して穿孔ロッドを回転可能に支持する筒体を備え、排出手段が、水路に水を供給する水供給手段と、水路に供給された水を案内ロッドの筒状案内路に導く導水路とにより構成され、導水路が、穿孔ロッドの内面と外面とを貫通して水路と連通する如く穿孔ロッドに形成された貫通孔と、連結部材の筒体の内面から連結体及びスライド体を経由して案内ロッドの筒状案内路内に連通する連通路と、貫通孔における穿孔ロッドの外面側開口と連結部材の筒体の内面に開口する連通路の入口とを連通させる連通溝部とを備え、連通溝部が、穿孔ロッドの外面の1周又は連結部材の筒体の内面を1周する環状溝により形成されたので、導水路経由で筒状案内路内に供給される水によって筒状案内路内のくり粉が筒状案内路の外に排出されて、くり粉が筒状案内路内に溜まりにくくなり、作業の効率化が図れる。
排出手段が、案内ロッドの筒部材の後端開口から筒状案内路内のくり粉を吸引する吸引手段により構成されたので、筒状案内路内のくり粉が吸引されることにより、くり粉が筒状案内路の外部に排出されるので、作業の効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の穿孔装置を示す斜視図(実施形態1)。
【図2】本発明の穿孔装置を示す分解斜視図(実施形態1)。
【図3】本発明の穿孔装置の動作説明図(実施形態1)。
【図4】本発明の穿孔装置の要部を示す断面図(実施形態2)。
【図5】(a)は本発明の穿孔装置の要部を示す斜視図、(b)は本発明の穿孔装置の要部を示す分解斜視図(実施形態2)。
【図6】本発明の穿孔装置を示す図(実施形態3)。
【図7】本発明の穿孔装置を示す図(実施形態4)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1;図2に示すように、穿孔装置1は、穿孔機1Aと排出手段1Bとを備える。尚、図1に穿孔装置1の前側、後側、左側、右側、上側、下側を明記して定義した。以下、この定義に従って説明する。
穿孔機1Aは、操縦機2のアーム2aに取付けられる。操縦機2は、例えばドリルジャンボウと呼ばれる機械である。
穿孔機1Aは、基台4と削岩機5と案内ロッド6と支持部7とリニアガイドと呼ばれる連結部材8と排出手段1Bの一例としての水供給手段12とを備える。
操縦機2のアーム2aの前端部に連結された基台4は、上面にガイドレール4aを備える。ガイドレール4aには、削岩機5の駆動装置9が前後方向に移動可能に搭載される。
削岩機5は、駆動装置9とドリル部3とを備える。ドリル部3は、穿孔ロッド11と穿孔ロッド11に回転力と打撃力とを伝達する回転軸10とを備える。駆動装置9は、図外のモーター等により構成された回転駆動源と油圧機構等により構成された前後駆動源を備える。駆動装置9の回転駆動源には、回転軸10が回転可能に連結される。穿孔ロッド11は、回転軸10の前端に連結されて回転軸10の回転力で回転する。穿孔ロッド11は前端部に穿孔ビットと呼ばれる切削部41を備える。切削部41の前面には切削刃42を備える。穿孔ロッド11及び回転軸10は筒部材により形成され、これら穿孔ロッド11及び回転軸10を形成する筒部材の筒内空間により水路10aが形成される。切削部41の前壁には、水路10aと穿孔ロッド11の外部とに連通する貫通孔により形成された水放出口43を備える。水供給手段12から水路10aを介して切削部41に供給された水が水放出口43を介して穿孔対象部に放出されることにより、削岩中の切削部41の近傍に溜まるくり粉を後方(削孔の開口部)に排出できるので、削岩作業効率の向上が図れるとともに、削岩作業において切削刃42を冷却でき、切削刃42の寿命向上も図れる。
【0008】
水供給手段12は、例えば、水貯留タンク12aと水圧調整機構12bと水供給管12cと備える。例えば、水供給手段12は、水供給管12cの一端12dと水貯留タンク12aとを連通可能に接続するとともに回転軸10の回転に伴って水供給管12cが回転しないように水供給管12cの他端12eが回転軸10の後端開口10bより水路10a内に挿入された状態に維持された構成において、水供給管12cの中途に水圧調整機構12bとしての加圧ポンプを設置して当該加圧ポンプにより加圧された高圧水を水路10a内に供給したり、あるいは、水供給管12cの中途に水圧調整機構12bとしての図外のコンプレッサーを接続して当該コンプレッサーからの圧縮空気を水供給管12c内に供給して圧縮空気と水とが混ざった圧縮空気水を水路10a内に供給する構成とされる。
【0009】
駆動装置9に連結された図外の前後移動機構を操縦機2で操縦して駆動装置9の筐体を前後に移動させることで削岩機5の前後位置を調整できる。
削岩機5による穿孔時には、水供給手段12により水路10a内に水を供給して切削部41の水放出口43より水を放出させながら、駆動装置9を駆動させて回転駆動源により回転軸10を回転させるとともに前後駆動源により駆動装置9の筐体を前後に振動させて穿孔ロッド11に回転力と打撃力とを加えることで穿孔ロッド11の切削部41が地山の岩盤などの穿孔対象物を切削するので穿孔対象物に孔を形成できる。
【0010】
連結部材8は、穿孔ロッド11と案内ロッド6とを互いに連結するとともに、穿孔ロッド11と案内ロッド6との間の距離を一定に保ちながら穿孔ロッド11を案内ロッド6の軸線Gに沿う方向にスライド可能とするものである。
基台4の前部に設けられた支持部7は、基台4の前端に連結固定された鋼板のような板よりなる基台側支持部13と基台側支持部13の上方に配置された鋼板のような板よりなる案内ロッド取付体14とがボルト20及びナット21のような連結手段により互いに連結されてなる。例えば図2のように、基台側支持部13の上端側左右と案内ロッド取付体14の下端側左右とにはそれぞれボルト通し孔22が形成され、基台側支持部13のボルト通し孔22と案内ロッド取付体14のボルト通し孔22とにボルト20を通してナット21を締結することにより、基台側支持部13と案内ロッド取付体14とが連結される。
削岩機5のドリル部3は、案内ロッド取付体14に形成された孔16を前後に貫通し前後に移動可能である。
案内ロッド6は、案内ロッド6の後部が案内ロッド取付体14に連結固定されて案内ロッド取付体14の前方に突出するように延長する。
基台側支持部13の前面には規制部材18が取付けられる。
穿孔機1Aの基台4と操縦機2のアーム2aとが互いに連結され、操縦機2のアーム2aは、図外の油圧機構により駆動する。よって、操縦者が操縦機2を操縦してアーム2aの動きを制御することで、穿孔機1Aの前端の案内ロッド6の位置や角度を調整し、案内ロッド6を先行孔内に挿入する際の案内ロッド6の位置決め作業を行う。
【0011】
図2に示すように、案内ロッド取付体14の中央には、上部開放で板の前後に貫通する案内ロッド6の位置決め設置用の孔25が形成される。孔25の下方には、削岩機5のドリル部3を前後に移動可能に貫通させる孔16が形成される。孔25と孔16とは、連絡孔26により上下に連続している。
案内ロッド6は、筒部材としての円筒部材28の前端に円錐形状の先鋭なキャップ部材29が着脱可能に取付けられたものである。案内ロッド6は、連結部材8のスライド体51がスライドする筒状案内路55と、連結部材8の連結板27がスライドする案内溝30とを備える。前後方向に延長する筒状案内路55は、円筒部材28の筒内空間により形成される。案内溝30は、円筒部材28の内外に貫通し円筒部材28の筒の軸線に沿って延長するように円筒部材28の筒壁に形成される。案内ロッド6が前端にキャップ部材29を備えたことで、案内ロッド6の前端の先行孔への挿入を容易にしている。
【0012】
案内ロッド6の後部が取付板31に取付けられる。取付板31の中央には、下部開放で板の前後に貫通する嵌合孔32が形成される。案内ロッド6の後部が、取付板31の嵌合孔32に嵌め込まれて、案内ロッド6の案内溝30と嵌合孔32の開口部33との位置が合わされた状態で、案内ロッド6の後端部の周囲と取付板31の後面とが溶接のような連結手段で連結されることで、案内ロッド6と取付板31とが互いに連結される。案内ロッド6が取付けられた取付板31は、案内ロッド取付体14に連結固定される。つまり、案内ロッド6の後部を設置用の孔25内に位置させ、案内ロッド取付体14の後面に取付板31の前面を当てて開口部33と連絡孔26との位置を前後で一致させて案内ロッド取付体14と取付板31とをボルト34,ナット35のような固定具36(図1参照)で連結することで、案内ロッド6が案内ロッド取付体14に着脱可能に取付けられる。設置用の孔25を上部開放としたため、案内ロッド6を孔25の上方から取付けることができ、案内ロッド取付体14に対する案内ロッド6の着脱作業を容易とできる。
【0013】
穿孔ロッド11は、連結部材保持体40と切削部41とを備える。連結部材保持体40は、回転軸10の前端に連結される。切削部41は、連結部材保持体40の前端に着脱可能に取付けられるので、交換が容易である。切削部41の前面には、クロムモリブデン鋼やタングステン鋼などの超硬物質で形成された切削刃42を備える。連結部材保持体40は、前軸45と後軸46とで形成される。前軸45は、切削部41の後部に着脱可能に連結される。後軸46は、前軸45の後部に着脱可能に連結される。後軸46は、後部に設けられた径の大きい大径軸部47と大径軸部47の前部に設けられた径の小さい小径軸部48とを備える。
【0014】
連結部材8は、ドリル部3に取付けられる取付体としての筒体50と、案内ロッド6にスライド可能に取付けられるスライド体51と、筒体50とスライド体51とを連結する連結体としての連結板27とを備える。連結部材8の筒体50は、穿孔ロッド11の連結部材保持体40に連結保持される。連結部材8のスライド体51は、案内ロッド6の筒孔により形成された筒状案内路55内に挿入され、連結部材8の連結板27は、案内ロッド6の案内溝30を経由して筒状案内路55の内外に貫通する。よって、連結部材8のスライド体51が案内ロッド6の筒状案内路55内を前後にスライド可能であり、連結部材8が連結されたドリル部3も案内ロッド6の軸線に沿って前後に移動可能である。連結板27の少なくとも前端にはチップと呼ばれる切削刃部53が設けられる。切削刃部53はクロムモリブデン鋼やタングステン鋼などの超硬物質で形成される。切削刃部53の先端部は先鋭に形成される。切削刃部53は、連結板27の前端に溶接などの接合手段で取付けられる。切削刃部53は、案内ロッド6と穿孔ロッド11の切削部41との間の岩盤を削岩できるように、少なくとも、案内ロッド6の下端6bと穿孔ロッド11の切削部41の上端に相当する位置41aとに跨るような長さに設けられる(図4参照)。
【0015】
排出手段1Bは、案内ロッド6の円筒部材28の後端開口28aから筒状案内路55内に水を供給する水供給手段60により構成される。水供給手段60は、水貯留タンク61と水圧調整機構62と水供給路63とノズル部64とを備える。
水供給路63は、例えば、ホースのような可撓性管により形成されたものを用いる。
ノズル部64は、案内ロッド6の円筒部材28の後端開口28aに取付けられるノズルキャップにより形成される。ノズルキャップは、水供給路63を介して送られてくる水を収容して後述するノズル口64aより放出するための水収容部64cを備えた箱状に形成され、水収容部64cの前壁には貫通孔により形成されたシャワーノズル口のような複数のノズル口64aを有し、水収容部64cの後面には水供給路63の他端63bを連結するための連結部64bを有する。
水供給手段60は、例えば、水供給路63の一端63aと水貯留タンク61とを連通可能に接続するとともに水供給路63の他端63bとノズル部64の連結部64bに連結して水貯留タンク61の水を水供給路63を介してノズル部64の水収容部64c内に供給可能とされた構成において、水供給路63の中途に水圧調整機構62としての加圧ポンプを設置して当該加圧ポンプにより加圧された高圧水をノズル部64を介して筒状案内路55内に供給したり、あるいは、水供給路63の中途に水圧調整機構62としての図外のコンプレッサーを接続して当該コンプレッサーからの圧縮空気を水供給路63内に供給して圧縮空気と水とが混ざった圧縮空気水をノズル部64を介して筒状案内路55内に供給する構成とすればよい。
水供給手段60を備えたので、ドリル部3の削岩作業中又はドリル部3の削岩作業後に筒状案内路55内に水を供給することによって、案内ロッド6の筒状案内路55内に溜まったくり粉を案内ロッド6の筒状案内路55内より外部に排出させることができる。
尚、水供給手段60の水圧調整機構62とノズル部64とによって筒状案内路55内のスライド体51に届くように水を噴射させる水噴射機構を構成すれば、案内ロッド6の筒状案内路55内に溜まったくり粉を案内ロッド6の筒状案内路55内より外部に効率的に排出させることができて好ましい。
【0016】
穿孔装置1による穿孔作業を説明する。最初の先行孔を形成する際には、案内ロッド6と連結部材8は取り外されている。つまり、穿孔ロッド11の後軸46の小径軸部48に連結部材8が取付けられていない状態で小径軸部48の前部と前軸45の後部とが連結される。この形態でドリル部3の穿孔ロッド11を案内ロッド取付体14の孔16を経由させて前方に進め、駆動装置9でドリル部3を駆動して切削部41で岩盤を切削して先行孔58(図3参照)を形成する。
【0017】
先行孔58を形成した後に、ドリル部3を案内ロッド取付体14より後方に移動してから、上述したように案内ロッド6を案内ロッド取付体14に取付ける。そして、穿孔ロッド11の後軸46から前軸45を取り外し、後軸46の小径軸部48を連結部材8の筒体50の孔52の一端から他端に挿入して、他端に突出した小径軸部48の前部と前軸45の後部とを連結する。これにより、連結部材8の筒体50が小径軸部48に保持され、かつ、前軸45の後端と大径軸部47の前端とで筒体50の前後移動が規制されて、連結部材8が小径軸部48により前軸45の後端と大径軸部47の前端との間に保持される。すなわち、連結部材8の筒体50は、穿孔ロッド11が回転しても回転しない状態に保持される。換言すれば、連結部材8が、穿孔ロッド11の外周に位置して穿孔ロッド11を回転可能に支持する筒体50を備える。
小径軸部48の前部と前軸45の後部との着脱可能な連結手段としては、小径軸部48の前部に形成された雄ねじ部49と前軸45の後部に形成されたねじ孔49aとのねじ結合や、前軸45の後部に形成された図外の嵌合孔に小径軸部48の前部を嵌め込んで嵌合孔の外周面に形成された図外のねじ孔にねじをねじ込んで小径軸部48の前部を締結することによるねじ結合などである。以上のように、小径軸部48を連結部材8の筒体50の孔52に通して前軸45の後部に連結するだけで穿孔ロッド11に連結部材8を取付けることができ、穿孔ロッド11に対する連結部材8の着脱作業を容易とできる。そして、ドリル部3を前進させ、穿孔ロッド11の連結部材保持体40に保持された連結部材8のスライド体51を、取付板31の後方から案内ロッド6の筒孔により形成された筒状案内路55内に挿入することで、案内ロッド6に連結部材8を取付けることができ、案内ロッド6に対する連結部材8の着脱作業を容易とできる。取付板31の開口部33と案内ロッド取付体14の連絡孔26と案内ロッド6の案内溝30の横幅は、連結部材8の連結板27の板幅より長く形成され、連結板27が通過できる。従って、ドリル部3を孔16を経由させて前方に進行させると、連結部材8のスライド体51が筒状案内路55内を前方に進みドリル部3が案内ロッド6に沿って前方に進む。これにより、ドリル部3は、案内ロッド6に対して一定の距離を保ちながら、案内ロッド6の軸線に沿った方向に移動可能となる。すなわち、連結部材8によりドリル部3が案内ロッド6と一定の距離を維持しながら案内ロッド6に沿って前後に移動可能となる。
【0018】
上述のように、連結部材8により案内ロッド6に対してドリル部3を前後にスライド可能に取付けた後に、操縦機2の運転者が操縦によってアーム2aの動きを制御して穿孔装置1の位置を調整し、案内ロッド6を先行孔58内に挿入する作業を行う(図3参照)。案内ロッド6を先行孔58内に挿入した後、規制部材18の前端18tを岩盤57に突付けてから、ドリル部3の前端の切削部41を岩盤57まで移動した後に削岩機5を駆動することにより、削岩機5の前端の切削部41が、先行孔58の下方の岩盤57を切削し、先行孔58と一定の間隔を隔てて連続する図外の後行孔を穿孔する。この際、先行孔58と後行孔との間は連結部材8の切削刃部53で削岩されることによって、先行孔58と後行孔との間を繋ぐ連結孔が形成される。以後、孔を穿孔する際に当該孔を穿孔する前に形成した孔を先行孔として利用していって複数の孔を形成していくことで、複数の孔を数珠繋ぎのように連続させた連続削孔と呼ばれる孔溝、すなわち、複数の孔の周囲が連結孔により互いに連結された溝を形成でき、この溝を岩盤57の破砕に利用することで、例えば、横坑を掘削する。
【0019】
尚、穿孔作業を行っている間中、水供給手段60により筒状案内路55内に水を供給し続けたり、穿孔作業後に、水供給手段60により筒状案内路55内に水を供給することによって、筒状案内路55内のくり粉が排出される。
【0020】
実施形態1の穿孔装置1によれば、排出手段1Bとしての水供給手段60を備えたので、筒状案内路55内に供給される水によって筒状案内路55内のくり粉が案内溝30を介して筒状案内路55の外に排出されるので、くり粉が筒状案内路55内に溜まりにくくなる。従って、1つの孔を穿孔する毎に筒状案内路55内に溜まったくり粉を除去する作業をなくせ、作業の効率化が図れるようになる。
【0021】
尚、実施形態1においては、水供給手段60のノズル部64が筒状案内路55内を前後に移動可能なように設けられた構成としてもよい。この場合、筒状案内路55内においてスライド体51の近くに水を供給でき、スライド体51の近くのくり粉を排出できるので、スライド体51をよりスムーズに後方に戻すことができるようになる。尚、この場合も、水供給手段60の水圧調整機構62とノズル部64とによって筒状案内路55内のスライド体51に届くように水を噴射させる水噴射機構を構成すれば、案内ロッド6の筒状案内路55内に溜まったくり粉を案内ロッド6の筒状案内路55内より外部に効率的に排出させることができて好ましい。
【0022】
また、実施形態1では、筒状案内路55内からくり粉を除去する際にのみ筒状案内路55内に水を供給するようにしてもよい。
また、水供給路63を構成する管やホース等の他端を案内ロッド6の筒部内に固定しておいてもよい。
【0023】
また、実施形態1では、基台側支持部13と案内ロッド取付体14とがボルト20及びナット21のような連結手段により連結された支持部7を備えた構成を説明したが、基台側支持部13と案内ロッド取付体14とが板ばねやコイルばねのような弾性連結手段により連結された支持部を備えた構成としてもよい。このような支持部を備えた構成の場合、弾性連結手段の弾性により案内ロッド6が基台側支持部13に対して可動な状態に維持されることになるので、案内ロッド6と先行孔との衝突によって案内ロッド6に加わる力により、案内ロッド6が案内ロッド6の進行方向を変えるように動くことが可能となる。従って、地山の岩盤57に形成された先行孔58の進行方向とアーム2aにより前進する案内ロッド6の進行方向とが一致していないような場合において、案内ロッド6の前端を先行孔58内に挿入した後に、アーム2aを操縦して穿孔装置1を前方に進めると、先行孔58と案内ロッド6との衝突によって案内ロッド6に加わる力により、案内ロッド6が先行孔58の進行方向と一致するように進行方向を変えながら先行孔58内を前進するので、案内ロッド6を先行孔58内に容易に挿入することができる。つまり、先行孔58の進行方向とアーム2aにより前進する案内ロッド6の進行方向とが一致していないような場合に、アーム2aによる困難な案内ロッド6の位置や角度の細かい制御を行わずとも、案内ロッド6の前端を先行孔58内に挿入した後にアーム2aを操縦して穿孔装置1を前方に進めることにより、弾性連結手段の作用で案内ロッド6が先行孔58の進行方向と同じ方向を向くように進行方向を変えるので、案内ロッド6を先行孔58内に容易に挿入することができるようになり、案内ロッド6を先行孔58内に挿入する作業を容易とできる。
【0024】
実施形態2
図4;図5に示すように、排出手段1Bを、水路10aに水を供給する水供給手段12(図1参照)と、水路10aに供給された水を筒状案内路55に導く導水路70(図4参照)とにより構成してもよい。
導水路70は、穿孔ロッド11の小径軸部48の筒の内面と外面とを貫通して水路10aと連通する如く形成された複数の貫通孔71と、連結部材8の筒体50の内面から連結板27及びスライド体51を経由してスライド体51の後方に位置される筒状案内路55内に連通する連通路72と、複数の貫通孔71における小径軸部48の筒の外面側開口と連結部材8の筒体50の筒の内面に開口する連通路72の入口とを連通させる連通溝部73とを備えた構成とした。
複数の貫通孔71は、小径軸部48の外周を1周する円周上に所定間隔を隔てて形成される。連通路72は、スライド体51の後方に位置する筒状案内路55内に連通する。
連通溝部73は、複数の貫通孔71が形成された小径軸部48の外周を1周する円周と対向するように筒体50の内面に形成された円環状の溝部(図4;5参照)により構成してもよいし、あるいは、複数の貫通孔71が形成された小径軸部48の外周を1周して複数の貫通孔71と連通するように小径軸部48の外面に形成された円環状の溝部により構成してもよい。
【0025】
実施形態2によれば、水路10aに供給された水が、貫通孔71、連通溝部73、連通路72を経由してスライド体51の後方に位置する筒状案内路55内に導かれ、筒状案内路55内のくり粉が水によって流されて案内溝30を介して排出されるので、実施形態1と同じ効果が得られる。
また、実施形態2では、切削部41に水を供給するための1つの水供給手段12を用いるだけでよいので、水供給手段のコストを削減でき、かつ、水供給手段の設置スペースを少なくできる。
【0026】
尚、実施形態2においては、連結部材8の筒体50の内面から連結板27及びスライド体51を経由してスライド体51の後方及び前方に位置される筒状案内路55内に連通する連通路を設けるようにしてもよい。この場合、連通路を経由してスライド体51の前方に位置される筒状案内路55内に供給される水によってスライド体51の前方の筒状案内路内のくり粉が筒状案内路55の外に排出されるので、スライド体51の前方への移動がスムーズになり、効率的な削岩作業を行える。
【0027】
実施形態3
図6に示すように、排出手段1Bを、案内ロッド6の円筒部材28の後端開口28aから筒状案内路55内のくり粉を吸引する吸引(バキューム)手段80により構成してもよい。吸引手段80は、案内ロッド6の円筒部材28の後端開口28aに嵌合状態に装着される吸引口81と、吸引装置82と、一端が吸引口81に連結され他端が吸引装置82に連結された吸引路を形成する吸引管83とを備えた構成である。
【0028】
実施形態3によれば、吸引手段80により、スライド体51の後方に位置する筒状案内路55内のくり粉が吸引されることにより、くり粉が筒状案内路55の外部に排出されるので、実施形態1と同じ効果が得られる。
【0029】
尚、実施形態3においては、吸引手段80の吸引口81が案内ロッド6の筒状案内路55内を前後に移動可能なように設けられた構成としてもよい。この場合、筒状案内路55内においてスライド体51の近くのくり粉を吸引でき、スライド体51の近くのくり粉を排出できるので、スライド体51をよりスムーズに後方に戻すことができるようになる。
【0030】
また、実施形態3においては、穿孔作業を行っている間中、吸引手段80により筒状案内路55内のくり粉を吸引し続けたり、穿孔作業後に、吸引手段80により筒状案内路55内のくり粉を吸引することによって、筒状案内路55内のくり粉が排出される。
【0031】
実施形態4
図7に示すように、排出手段1Bを、装填手段90により構成してもよい。装填手段90は、一端91がスライド体51の後部に連結されて他端92が巻取軸93に連結された装填材94を備えた構成である。この装填材94は、スライド体51の前後移動に追随して、巻取軸93から巻出されたり、巻取軸93に巻取られるような例えば可撓性を有した材料により構成され、案内ロッド6の円筒部材28の後端開口28aから筒状案内路55内に嵌合状態に挿入されて、スライド体51の後方に位置する筒状案内路55内の空間を埋めるものであり、これにより、筒状案内路55内にくり粉が溜まるのを防止できるようになる。
【0032】
尚、基台側支持部13と案内ロッド取付体14とが一体に構成された支持部を備えた、例えば特許文献1(特開2002−327589号公報)に開示された穿孔機に上述した排出手段1Bを設けてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 穿孔装置、1A 穿孔機、1B 排出手段、2 操縦機、3 ドリル部、
4 基台、5 削岩機、6 案内ロッド、7 支持部、8 連結部材、10 回転軸、
10a 水路、11 穿孔ロッド、12 水供給手段、27 連結板(連結体)、
28 円筒部材(筒部材)、28a 後端開口、30 案内溝、41 切削部、
43 水放出口、51 スライド体、55 筒状案内路、
60 水供給手段(排出手段)、
70 導水路、71 貫通孔、72 連通路、73 連通溝部、
80 吸引手段(排出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦機に連結される基台と、基台に前後移動可能に設けられた削岩機と、基台の前部に設けられた支持部と、支持部に連結されて前方に突出する案内ロッドと、案内ロッドと削岩機のドリル部とを互いに連結する連結部材とを備え、
案内ロッドが、前後方向に延長する筒状案内路と、筒状案内路を形成する筒部材の内外に貫通し筒部材の筒の軸線に沿って延長するように筒部材に形成された案内溝とを備え、
連結部材が、案内ロッドの筒状案内路を筒の軸線に沿った方向にスライド可能なスライド体と、スライド体とドリル部とを連結して案内溝内をスライド可能な連結体とを備えたことによって、ドリル部が筒状案内路に沿って前後方向にスライド可能に構成された穿孔装置において、
ドリル部による削岩作業によって筒状案内路内に溜まった岩石の削り屑を筒状案内路内より外部に排出させる排出手段を備えたことを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
排出手段が、筒部材の後端開口から筒状案内路内に水を供給する水供給手段により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項3】
水供給手段が、筒状案内路内のスライド体に届くように水を噴射させる水噴射機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載の穿孔装置。
【請求項4】
ドリル部が、穿孔ロッドと、穿孔ロッドに回転力及び打撃力を伝達する回転軸とを備え、穿孔ロッドが、前端部に切削部を備え、回転軸及び穿孔ロッドが、切削部に水を送るための水路を備え、切削部が、水路を介して切削部に供給された水を穿孔対象部に放出するための水放出口を備え、連結部材が、穿孔ロッドの外周に位置して穿孔ロッドを回転可能に支持する筒体を備え、
排出手段が、水路に水を供給する水供給手段と、水路に供給された水を案内ロッドの筒状案内路に導く導水路とにより構成され、
導水路が、穿孔ロッドの内面と外面とを貫通して水路と連通する如く穿孔ロッドに形成された貫通孔と、連結部材の筒体の内面から連結体及びスライド体を経由して案内ロッドの筒状案内路内に連通する連通路と、貫通孔における穿孔ロッドの外面側開口と連結部材の筒体の内面に開口する連通路の入口とを連通させる連通溝部とを備え、
連通溝部が、穿孔ロッドの外面の1周又は連結部材の筒体の内面を1周する環状溝により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項5】
排出手段が、案内ロッドの筒部材の後端開口から筒状案内路内に溜まった岩石の削り屑を吸引する吸引手段により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の穿孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−144860(P2012−144860A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2109(P2011−2109)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(502281127)株式会社ファテック (83)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】