説明

立体映像表示装置

【課題】1台の液晶プロジェクタで立体映像を表示する場合のクロストークを低減させることができるような立体映像表示装置を提供する。
【解決手段】信号処理部101は、入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する。液晶表示素子の駆動装置102は、ステップビットパルスにより全サブフレームを構成し、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部26を有する。液晶表示素子6は、駆動装置で駆動される。照明光学系1は液晶表示素子に照明光を入射させる。投射レンズ11は、液晶表示素子から射出された変調光を投射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差による立体映像を結像させることが可能な立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、視差を有する2以上の映像をスクリーン等に提示し、観察者に対してあたかも対象が立体的に存在するように知覚させる立体映像表示装置が脚光を浴びている。従来、立体映像を投影する場合には2台の液晶プロジェクタ等を用いる手法が一般的であった。近年では、1台の液晶プロジェクタ等で立体映像を投影することが盛んになりつつある。その際には通常、観察者は液晶シャッタめがねを装着し、液晶シャッタの切換により左目には左目用の映像の光が右目には右目用の映像の光が入射されることで、立体映像を観察することができる。
特許文献1には、液晶シャッタめがねの切換タイミングを制御することにより、フレーム周波数を高めたときに発生するクロストークを抑制することができる立体映像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−31523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、立体投影時のクロストークの発生原因は液晶シャッタのみならず立体表示装置側にも存在する。具体的には、液晶表示装置を立体映像表示装置に用いる場合における液晶表示素子の応答特性に起因するクロストークを有効に低減することが求められている。
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、1台の液晶プロジェクタで立体映像を表示する場合のクロストークを低減させることができるような立体映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する信号処理部(101)と、前記左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に基づいて、ステップビットパルスにより全サブフレームを構成し、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部(26)を有する駆動装置(102)と、前記駆動装置で駆動される液晶表示素子(6)と、前記液晶表示素子に照明光を入射させる照明光学系(1)と、前記液晶表示素子から射出された変調光を投射する投射レンズ(11)と、を備えることを特徴とする立体映像表示装置を提供する。
【0006】
また、入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する信号処理部(101)と、N、M、F、Dを整数としたときに、前記左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられたビット数Nの信号データを逆ガンマ補正および直線補間を行ってNより大きい(M+F+D)ビットのデータに変換するルックアップテーブル部(21)と、前記ルックアップテーブル部で処理された(M+F+D)ビットのデータを誤差拡散処理により(M+F)ビットのデータに変換する誤差拡散部(23)と、前記誤差拡散部で処理された(M+F)ビットのデータをフレームレートコントロールによりMビットのデータに変換するフレームレートコントロール部(24)と、前記フレームレートコントロール部で処理されたMビットのデータを用いるとともに、ステップビットパルスにより全サブフレームを構成し、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部(26)と、を備えることを特徴とする駆動装置(102)と、前記液晶表示素子の駆動装置で駆動される液晶表示素子(6)と、前記液晶表示素子に照明光を入射させる照明光学系(1)と、前記液晶表示素子から射出された変調光を投射する投射レンズ(11)と、を備えることを特徴とする立体映像表示装置を提供する。
【0007】
また、入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する信号処理部(101)と、前記左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に基づいて、異なる駆動期間を少なくとも一部に有するサブフレームを構成し、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部(26)を有する駆動装置(102)と、前記駆動装置で駆動される液晶表示素子(6)と、前記液晶表示素子に照明光を入射させる照明光学系(1)と、前記液晶表示素子から射出された変調光を投射する投射レンズ(11)と、を備えることを特徴とする立体映像表示装置を提供する。
【0008】
さらに、入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する信号処理部(101)と、N、M、F、Dを整数としたときに、前記左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられたビット数Nの信号を直線補間してNより大きい(M+F+D)ビットのデータに変換する信号変換部(22)と、前記信号変換部で処理された(M+F+D)ビットのデータを誤差拡散処理により(M+F)ビットのデータに変換する誤差拡散部(23)と、前記誤差拡散部で処理された(M+F)ビットのデータをフレームレートコントロールによりMビットのデータに変換するフレームレートコントロール部(24)と、前記誤差拡散部で処理されたMビットのデータを用い、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していくとともに、入力映像信号データに対する液晶の光出力が逆ガンマ特性となるようにサブフレーム毎の駆動期間を異ならせた駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部(26)と、を備えることを特徴とする駆動装置(1020)と、前記液晶表示素子の駆動装置で駆動される液晶表示素子(6)と、前記液晶表示素子に照明光を入射させる照明光学系(1)と、前記液晶表示素子から射出された変調光を投射する投射レンズ(11)と、を備えることを特徴とする立体映像表示装置を提供する。
【0009】
上記の構成において、前記信号処理部と前記駆動装置の間において、係数を乗算して、左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号を減衰させる映像信号減衰部(105)を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1台の液晶プロジェクタで立体映像を表示する場合のクロストークを低減させることができるような立体映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】液晶表示装置100を用いた立体映像表示装置による立体表示を説明するための図である。
【図2】反射型液晶表示素子を用いた液晶表示装置を示す概略構成図である。
【図3】デジタル駆動の反射型液晶表示素子における各画素の駆動回路構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態における反射型液晶表示素子の入力電圧と出力光の強度との関係を示す図である。
【図5】3D映像信号に関する信号処理を説明するための図である。
【図6】デコードされた3D信号と液晶シャッタめがね103の時間的関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る駆動回路(駆動装置)を示すブロック図である。
【図8】第1の実施形態における階調表現を説明するための図である。
【図9】第1の実施形態における駆動パターンを示す図である。
【図10】第1の実施形態における駆動階調テーブルを示す図である。
【図11】第1の実施形態における誤差拡散図を示す図である。
【図12】第1の実施形態における誤差拡散フローを示す図である。
【図13】第1の実施形態におけるフレームレートコントロールフローを示す図である。
【図14】は第1の実施形態におけるフレームレートコントロールテーブルを示す図である。
【図15】クロストークの発生を説明するための画面を示す図である。
【図16】図15の画像を立体映像表示装置にて3D(立体)表示をしたときに液晶表示装置100からスクリーン上の投影される像を示す図である。
【図17】図16に示す領域1、領域2、領域3、領域3’のそれぞれについて、画面の階調の時間変化を示す図である。
【図18】図15の画像を立体表映像示装置にて立体(3D)表示をしたときに液晶シャッタめがね103を装着した際の見え方を示す図である。
【図19】領域2と領域3における液晶表示素子の応答特性を比較した図である。
【図20】駆動階調テーブルの比較例を示す図である。
【図21】F2フィールドが階調L、F1フィールドが階調Hおよび階調Lの場合において、駆動階調テーブルが比較例である図20の場合(A、B)と第1の実施形態である図10の場合(C、D)との駆動状態を模式的に比較した図である。
【図22】図21において注目する階調をHとした場合の比較を示す図である。
【図23】信号処理回路101と駆動回路103の間に挿入する映像信号減衰部105を示す図である。
【図24】第1の実施形態における信号処理を示す図である。
【図25】第1の実施形態における反射型液晶表示素子の極性反転駆動を示す図である。
【図26】反射型液晶素子における横方向電界の発生メカニズムを説明する図である。
【図27】フレームレートコントロールにより、横方向電界が均等に分散されることを説明する図である。
【図28】第2の実施形態に係る駆動回路(駆動装置)を示すブロック図である。
【図29】第2の実施形態における駆動パターンの1例を示す図である。
【図30】第2の実施形態における各サブフレーム毎の期間が変更されていることを説明した図である。
【図31】第2の実施の形態において、各サブフレーム期間を調節して、駆動階調毎の輝度がガンマ2.2の線上にあることを表している図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
以下、本発明に係る立体映像表示装置について、添付図面を参照して説明する。以下では表示パネルとしてアクティブマトリクス型の反射型液晶表示素子6を備えた液晶表示装置100を用いた立体映像表示装置を例にして説明する。
【0013】
図1は、液晶表示装置100を用いた立体映像表示装置による立体表示を説明するための図である。立体映像信号源104から3D映像信号が液晶表示装置100に送られる。液晶表示装置100では、3D映像信号を所定の回路により時間順次の左目用信号と右目用信号に変換し交互にスクリーン上に投影する。液晶表示装置100に内蔵または接続されている液晶シャッタ駆動信号送信機103からの駆動信号によりシャッタ動作を行う液晶シャッタめがね105を観察者は装着してスクリーン13に投影された立体映像を観察する。
【0014】
次に、液晶表示装置100および反射型液晶表示素子6の概略構成について説明する。図2は、反射型液晶表示素子6を用いた液晶表示装置100を示す概略構成図である。液晶表示装置100は、概略、反射型液晶表示素子6、偏光ビームスプリッタ5(以下、PBSという)、投射レンズ13を含んで構成される。反射型液晶表示素子6は、対向電極(透明電極ともいう)10と、画素電極8との間に液晶9が封止された構造を有する。
【0015】
照明光学系1から射出したS偏光3とP偏光4を含む光2はPBS5に入射する。PBS5にて偏光分離される。S偏光3はPBS5の偏光分離面で反射され、反射型液晶表示素子6側に進行する。P偏光はPBSの偏光分離面を透過する。反射型液晶表示素子6の液晶9は、画素回路7によって画素電極8と対向電極10の間に印加される電圧に応じて入射したS偏光を変調する。対向電極10に入射したS偏光は、画素電極8で反射して対向電極10から射出するまでの過程で変調を受け、P偏光とS偏光からなる光として対向電極10から射出される。対向電極10から射出された光は変調された光であるP偏光成分のみがPBS5を通過し、S偏光成分はPBS5で反射される。PBS5を通過したP偏光は投射レンズ11によって射出され、射出光12はスクリーン13上に投射されて画像が表示される。なお、後述する出力光の強度とは、スクリーン13上で測定した出力光の照度をいう。
【0016】
図3はデジタル駆動の反射型液晶表示素子6における各画素の駆動回路構成を示す図である。反射型液晶表示素子6の個々の画素は画素電極8と対向電極10の間に液晶9がはさまれた構造になっている。破線で示した画素回路7は、サンプルホールド部16と電圧選択回路17からなる。サンプルホールド部16はSRAM構造のフリップフロップよりなる。サンプルホールド部16は列データ線Dと行選択線Wとに接続されている。サンプルホールド部16の出力は電圧選択回路17へと接続されている。電圧選択回路17はブランキング電圧線V0、駆動電圧線V1に接続されている。電圧選択回路17は画素電極8へと接続され、画素電極8に所定の電圧を与える。対向電極10の電圧の値は共通電圧Vcomと呼ばれている。
【0017】
図4は以下の各の実施形態における反射型液晶表示素子6の入力電圧と出力光の強度との関係を示す図である。図4において、横軸は入力電圧であり、画素電極8と対向電極10との間の電位差、すなわち液晶9の駆動電圧を示す。縦軸は、液晶9から射出される出力光の強度を示す。液晶9から射出される出力光の強度が大きくなり始める電圧が闇値電圧Vthである。電圧が0(たとえば、画素電極8と対向電極がともにGND)のときは、出力光の強度が少なく、黒状態(ブランキング電圧)であり、出力光が飽和し始める電圧が飽和電圧Vw(白レベルである。)である。
【0018】
図5は3D映像信号に関する信号処理を説明するための図である。立体映像信号源104から送出される3D映像信号は信号処理部としての信号処理回路101へ入力される。図5では例として、3D映像信号が60Hzのサイドバイサイド方式の場合を示している。信号処理部としての信号処理回路101では、入力された信号は左目用信号と右目用信号に分離され、それぞれ表示画面サイズと等しくなるよう左右に伸長される。伸長された左目用信号、右目用信号は時間的に交互に並べ替えられ、表示速度が2倍に変換される。このようにデコードされた映像信号は駆動回路102に入力する。駆動回路102はデコードされた映像信号に基づいて反射型液晶表示素子6を駆動する。デコードされた映像信号と同期する同期信号は信号処理回路101から液晶シャッタ駆動信号送信機103に送られる。
【0019】
液晶シャッタ駆動信号送信機103は同期信号に基づいて液晶シャッタの駆動タイミングを決定し、液晶シャッタ駆動信号を液晶シャッタめがね105に出力する。液晶シャッタめがね105の液晶シャッタは液晶シャッタ駆動信号に基づいて駆動される。図5では3D映像信号が60Hzサイドバイサイド方式で入力される様子を示したが、この方式に限定されず他の周波数(例えば50Hzや24Hzなど)や他の立体映像フォーマット(例えばフレームパッキングやトップアンドボトム、ラインバイラインなど)でもよい。また信号処理回路101は3D映像信号を2倍の周波数の信号に変換するが、周波数の変換は2倍に限定されず、これ以上でもよい。画面解像度も、画素数1920×1080以外であってもよい。
【0020】
図7は本発明の第1の実施形態に係る駆動回路(駆動装置)102を示すブロック図である。図8は第1の実施形態における階調表現を説明するための図である。図8は入力された映像信号データのビット数を8ビットとした場合における各プロセス部における階調表現の例を示している。図9は第1の実施形態における駆動パターンを示す図である。図10は第1の実施形態における駆動階調テーブルを示す図である。図11は第1の実施形態における誤差拡散図を示す図である。図12は第1の実施形態における誤差拡散フローを示す図である。図13は第1の実施形態におけるフレームレートコントロールフローを示す図である。図14は第1の実施形態におけるフレームレートコントロールテーブルを示す図である。
【0021】
図7において、Nビットの入力された映像信号データは、ルックアップテーブル部21にて、Nより大きい(M+F+D)ビットのデータに変換される。ここで、Mはサブフレーム数を2進数で表したときのビット数、Dは誤差拡散処理部23により補間されるビット数、Fはフレームレートコントロール部24により補間されるビット数を表している。なおN、M、F、Dは整数である。
【0022】
図8の例では、入力された映像信号データのビット数は8ビット(N=8)、誤差拡散処理部23にて補間されるビット数は4ビット(D=4)、フレームレートコントロール部24にて補間されるビット数は2ビット(F=2)としている。サブフレーム数を2進数で表した場合のビット数は4ビット(M=4)、駆動階調は12個(黒を含まない)としている。
【0023】
ここでルックアップテーブル部21の動作を説明する。一般的に映像信号はガンマ補正がかけられている。画像表示装置側ではガンマ補正がかけられた映像信号に対し逆ガンマ補正処理を施してリニアな階調に戻すことが必要である。逆ガンマ補正とは入力Xに対して出力がXの2.2乗となるような補正である。この場合、出力特性は「ガンマ2.2」であると以下表現する。ルックアップテーブル部21は反射型液晶表示素子6の入出力特性を変換してガンマ2.2の出力特性を有する液晶表示装置を実現する機能を担っている。ルックアップテーブルは、10ビットの出力が、任意の出力特性(例えばガンマ2.2)となるようにあらかじめ調整されている。例えば、第1の実施形態では図7に示す12個の駆動階調(黒を含まない)のそれぞれの駆動による画像を図1に示す液晶表示装置で投影し、スクリーン13上の照度を照度計等でそれぞれ測定しておく。それぞれの駆動階調間の照度を6ビット(M+D=6)(64階調)で直線補間することによって、0〜768の階調毎の照度データが予測される。それらの照度データから任意の出力特性(例えばガンマ2.2)となるような256個のデータを選び、あらかじめルックアップテーブルとして保持されているものとする。
【0024】
ルックアップテーブル部21は、256x10ビット(すなわち、「2の8乗」階調x(4+2+4)ビット)のルックアップテーブルを有している。ここで、「2の8乗」階調x(4+2+4)ビットとは、「2のN乗」階調x(M+F+D)ビットに対してN=8、M=4、F=2、D=4の値を代入したものに相当する。ルックアップテーブル部21は、入力された8ビットの画像データを、10ビットのデータに変換して出力する。
【0025】
図7に戻り、ルックアップテーブル部21にて(M+F+D)ビットに変換された映像信号データは、誤差拡散部23により下位Dビットの情報を周辺画素に拡散することによって、(M+F)ビットのデータに変換される。図8の例では、変換された10ビットのデータは、誤差拡散部23にて、下位4ビットの情報を周辺画素に拡散し上位6ビットのデータに量子化して出力される。
【0026】
誤差拡散法とは、表示すべき映像信号と実表示値との誤差(表示誤差)を周辺の画素に拡散することで階調不足を補う方法である。第1の実施形態においては、表示すべき映像信号の下位4ビットを表示誤差とし、図11のように右隣の画素に表示誤差の7/16を、左下の画素に表示誤差の3/16を、直下の画素に表示誤差の5/16を、右下の画素に表示誤差の1/16を加える。
【0027】
誤差拡散部23の動作を図12でより詳しく説明する。ある座標の映像信号は上述のように誤差を拡散するとともに、以前の映像が拡散した誤差が加算される。入力された10ビットのデータは、まず、以前の映像が拡散した誤差が誤差バッファにより加算される。入力映像信号データは誤差バッファの値が加算された後、上位の6ビットと下位の4ビットに分割される。
【0028】
分割された下位の4ビットの値を以下に示す。右側の値は表示誤差である。
下位4ビット 表示誤差
0000 0
0001 +1
0010 +2
0011 +3
0100 +4
0101 +5
0110 +6
0111 +7
1000 −7
1001 −6
1010 −5
1011 −4
1100 −3
1101 −2
1110 −1
1111 0
【0029】
分割された下位の4ビットの値に対応する表示誤差は、図12のように誤差バッファへと加算され保持される。また、分割された下位の4ビットの値に対してスレッショルド比較を行ない、値が1000より大きい場合(上記の左部の値が1000である行以降の行)、上位6ビットの値に1が加算される。そして、上位の6ビットのデータが誤差拡散部から出力される。
【0030】
図7に戻り、誤差拡散部23にて(M+F)ビットに変換された映像信号データは、フレームレートコントロール部24に入力される。フレームレートコントロール部24はフレームレートコントロールテーブルを備えている。フレームレートコントロール部24では、下位Fビットの値と、画素の位置情報及びフレームのカウント情報から、フレームレートコントロールテーブル内の位置を特定し、その値(1または0の値、以下0/1と記載する。)が上位Mビットに加えられ、Mビットのデータに変換される。ここで、フレームレートコントロール方式とは、表示素子の1画素の表示に対してm(m:m≧2、自然数)フレームを1周期として、その周期のn(n:n>0、m>n、自然数)フレームではオン表示を行ない、残りの(m−n)フレームではオフ表示を行うことにより疑似的に階調を表示させる方式である。
【0031】
図8の例では、誤差拡散部23により出力された6ビットのデータは、フレームレートコントロール部24に入力される。フレームレートコントロール部24は、下位2ビットの情報と、表示エリアでの位置情報およびフレームカウンタ情報より、フレームレートコントロールテーブルから0/1の値を導き、入力された6ビットから分離された上位4ビットの値に加算する。
【0032】
フレームレートコントロール部24の動作を図13で具体的に説明する。入力された6ビットのデータは、上位の4ビットと下位の2ビットに分割される。入力された6ビットデータの下位2ビットと、画素の表示エリアでの位置情報(すなわち、座標データであるX座標の下位ビットおよびY座標の下位2ビット)と、フレームカウンタの下位2ビットとの合計8ビットの値を用いて、図14のフレームレートコントロールテーブルで示される“0”か“1”の値を特定する。特定された“0”か“1”の値は上位4ビットのデータに加算して、4ビットデータとして出力される。
【0033】
図8に戻り、フレームレートコントロール部24から出力された4ビットデータは図7で示されているリミッタ部25にて駆動階調の最大値である12に制限された後、サブフレームデータ作成部26にて、反射型液晶表示素子6へ転送されるべき12ビットのデータに変換される。12ビットのデータへの変換は駆動階調テーブル27を使用する。
【0034】
図7に戻り、サブフレームデータ作成部26から出力された12ビットのデータは、メモリ制御部28にて、サブフレーム毎に分割されたフレームバッファ29に格納される。フレームバッファ29はダブルバッファの構造になっており、フレームバッファ0にデータを格納中は、フレームバッファ1のデータがデータ転送部を経由して反射型液晶表示素子6に転送されることになり、次のフレームでは、前フレーム期間中に格納されたフレームバッファ0のデータがデータ転送部30を経由して液晶表示素子6に転送され、フレームバッファ1には入力された映像信号データのサブフレームデータ作成部26からの出力データが格納される。
【0035】
駆動制御部31は、サブフレーム毎の処理のタイミング等を制御しており、データ転送部30への転送指示およびゲートドライバ34の制御を行う。データ転送部30は、駆動制御部31からの指示に従い、メモリ制御部28に指示を行ない、指定したサブフレームのデータをメモリ制御部28から受け取りソースドライバ33へと転送する。ソースドライバ33は、1ライン分のデータをデータ転送部30より受け取る毎に、反射型液晶表示素子6の対応する画素回路7へ列データ線D0−Dnを用いて同時に転送する。この時、ゲートドライバ34では、駆動制御部31からの垂直スタート信号(VST)/垂直シフトクロック信号(VCK)により指定された行の行選択線Wyをアクティブにし、指定された行yの全ての列の画素へとデータが転送される。
【0036】
図9を用いて第1の実施形態における駆動パターンについて説明する。図9は、映像信号が1秒あたり120フレーム、サブフレーム数が12個の場合について示している。WCは液晶表示素子内の全ての画素にサブフレーム毎のデータを転送するデータ転送期間(WC期間)を表している。DCは、液晶を駆動する際の駆動期間(DC期間)を表している。WC期間は347[μs]、DC期間を347[μs]としている。1フレームにおいて、WC期間とDC期間が交互に12回連続する。時間的に先頭からSF1、SF2、…、SF11、SF12の順番でそれぞれのサブフレームに割り当てられた0または1のデータがWC期間にて転送され、DC期間全ての画素の液晶が駆動される。画素内にサンプルホールドされたデータが0の場合は、その画素はブランキング状態となり、1の場合は駆動状態となる。
【0037】
次に、図10に示す第1の実施形態における駆動階調テーブルについて説明する。図9と同様、映像信号は1秒あたり60フレーム、サブフレーム数が12個、データ転送期間(WC期間)は347[μs]、駆動期間(DC期間)を347[μs]としている。図10は駆動階調に対するサブフレーム毎のDC期間の状態を示している。図10の縦の欄の階調とは、フレームレートコントロール部24で得た4ビットのデータであってリミッタ部25にて駆動階調の最大値である12で制限されたものである。SF1−SF12は1フレーム内のサブフレームの順番を表している。DC期間の欄が1の場合は駆動状態であることを示す。DC期間の欄が0の場合はブランク状態であることを示す。
【0038】
図10の縦の欄に示す階調が1の場合、最後のサブフレームであるSF12のみが駆動状態となる。階調が2の場合、SF11とSF12だけが駆動状態となる。以下、階調の数が増える毎に駆動状態となるサブフレームが増えていき、最も高い階調である12の場合、全てのサブフレームが駆動状態となる。言い換えると、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが時間的に前方に増えていく。
【0039】
第1の実施形態においては、クロストークの発生が抑制されるという効果が得られる。以下説明する。図15は、クロストークの発生を説明するための画面を示す図である。図15は、低い階調(L)の中に高い階調(H)の円形の領域が存在する画面を2D表示している。
【0040】
図16は図15の画像を立体映像表示装置にて3D(立体)表示をしたときに液晶表示装置100からスクリーン上の投影される像を示す図である。スクリーンには図16のように右目の画像と左目の画像が時間的に重ねて表示される。図17は、図16に示す領域1、領域2、領域3、領域3‘のそれぞれについて、画面の階調の時間変化を示す図である。図17のように、領域1では階調Hが、領域2では階調Lが連続して表示されるのに対して、階調3および階調3’では階調Hと階調Lが時間的に交互に表示される。
【0041】
図18は図15の画像を立体映像表示装置にて立体(3D)表示をしたときに液晶シャッタめがね105を装着した際の見え方を示す図である。観察者には、図18のように、領域1では階調Hに、領域2では階調Lに見える。領域3は階調Lに見えなければならない。しかし、前のフィールド(右目用フィールド)の階調がHであることが原因で階調Lよりも高い階調に表示されてしまう場合がある。そのような場合、領域3の階調は右目の信号の階調(階調H)に近づくため、観察者には、クロストーク現象として認識される。
【0042】
反射型液晶表示素子6の駆動がアナログ駆動である場合、信号レベルに応じた駆動電圧を印加して階調を再現する。液晶の応答速度は、液晶の駆動電圧が高いときよりも、中間階調に対応した駆動電圧のときに遅くなるという傾向を有する。そのため、後のフレームに及ぼす影響が大きい。したがって、階調Lを再現しなければならないのに、前のフレーム(右目用フレーム)の階調がHであることが原因で階調Lよりも高い階調に表示されてしまい、クロストーク現象が発生してしまう。デジタル駆動において、後述する図20に示す階調駆動テーブルを用いる方法ではクロストーク現象が発生してしまうが、アナログ駆動の場合クロストークの程度が顕著に発生する。
【0043】
図19は領域2と領域3における液晶の応答特性を比較した図である。反射型液晶表示素子6には、フレームF2では左目用信号(階調L)が入力されている。フレームF1では、領域3では右目用信号(階調H)が、領域2では右目用信号(階調L)が入力されている。液晶表示素子は、フレームF2では、領域2、3ともに同じ階調Lを表示すべきであるが、前のフレーム(フレームF1)の階調のレベルに影響され、表示される輝度が異なってしまう。
【0044】
本実施形態における図10の駆動階調テーブルによるデジタル駆動では、上記の様なクロストーク現象を抑制することができる。図20に示す階調駆動テーブルを比較例として以下、クロストーク現象の抑制効果を説明する。
【0045】
図20は図10同様に、駆動階調に対するサブフレーム毎のDC期間の状態を示す図である。図10と同様、1秒あたり120フレームの映像信号で、サブフレーム数が12個の場合について説明する。データ転送期間(WC期間)は347[μs]、駆動期間(DC期間)を347[μs]とする。すなわち、図20の縦の欄の階調とは、フレームレートコントロール部24で得た4ビットのデータであってリミッタ部25にて駆動階調の最大値である12で制限されたものである。SF1−SF12は1フレーム内のサブフレームの順番を表している。DC期間の欄が1の場合は駆動状態であることを示す。DC期間の欄が0の場合はブランク状態であることを示す。
【0046】
図21は、F2フィールドが階調L、F1フィールドが階調Hおよび階調Lの場合において、駆動階調テーブルが比較例である図20の場合(A、B)と第1の実施形態である図10の場合(C、D)との駆動状態を模式的に比較した図である。比較例の階調駆動テーブルの場合(A、B)をまず説明する。Aでは、高い階調であって長い駆動状態の期間(H)の後のブランキング状態の期間(P1)が短い。Bでは低い階調であって短い駆動状態の期間(L)の後のブランキング状態の期間(P2)が長い。ブランキング状態の期間が異なるとAとBにおけるF2フレームでの表示のレベルが異なってしまう。具体的には、前のフレームの影響具合が異なることにより、次フレームの低い階調の駆動状態の期間(L)で表示される輝度を表示されるべき輝度よりも押し上げてしまう。一方、第1の実施形態におけるCおよびDでは、高い階調であっても低い階調であってもF2フレームのブランキング状態の期間の長さが同じであるので、同じ明るさが表示される。
【0047】
図21では階調Lについて注目したが、階調Hに注目しても同様の結果となる。図22は、図21において注目する階調をHとした場合の比較を示す図である。A’およびB’は駆動階調テーブルが比較例である図20の場合、C’およびD’は駆動階調テーブルが第1の実施形態である図10の場合である。A2’およびB2’においてF2はどちらも階調Hのため同じ明るさが表示されなければならないが、前フレームにおけるブランキング状態の期間の長さが異なる(P1’≠P2’)ため、異なった明るさが表示されてしまう。これがクロストークの原因となる。次に、C2’とD2’に注目する。F2での階調はどちらも階調Hである。前フレームの階調が異なっているがブランキング状態の期間の長さが等しい(P3’=P4’)ため、同じ明るさを表示することができる。すなわち、クロストークを抑制することが出来る。
【0048】
以上の説明のように、前フレームの階調の高低のいかんによらず、前フレームの立ち下がりから現在のフレームが立ち上がるまでのブランキング状態の期間を等しくすることによってクロストーク現象を抑制するという効果が得られる。
【0049】
液晶シャッタめがね105の応答速度が遅くシャッタの開閉に時間を要する場合や反射型液晶表示素子6の応答速度が遅く表示する映像の切り換えに時間を要する場合には、映像信号のレベルを変更してもよい。図23Aは、信号処理回路101と駆動回路103の間に挿入する映像信号減衰部105を示す図である。映像信号のレベルの変更は、信号処理回路101と駆動回路103の間に挿入する映像信号減衰部105で行う。映像信号減衰部105は制御部106で行う。映像信号減衰部105の設定を観察者がたとえばリモコン等から設定できても良い。ここで映像信号減衰部105を用いて、下記の演算式により、新たな映像レベルを算出する。
新たな映像レベル= 係数X × 入力信号の映像レベル
ただし、0 < X < 1
ここで例えばXを0.88とすると、入力信号レベルが255の場合には新たな映像レベルは204と算出され、入力信号として最大映像レベルの255が入力された場合でも新たな映像レベルとして204が出力され、駆動回路以降204として扱われる。つまり、Xが1未満であった場合入力信号のレベルによらず駆動回路以降では最大表示階調まで満たされることが無くなり、フレーム毎に必ずブランキング期間が挿入されることになる。
【0050】
ブランキング期間が挿入されることで、液晶シャッタのON/OFF切り換え時や、映像切り換え時に左右の目の映像が混合するのを防ぐことができる。液晶シャッタの応答速度が遅いシャッタの開閉に時間を要する場合にはブランキング期間は液晶シャッタが立ち下がり又は立ち上がり始めるタイミングから開始し液晶シャッタが立ち下がりきる又は立ち上がりきるタイミングに終了するのがよい。
【0051】
一般的に液晶の応答速度は温度によって変化し、温度が高いほど応答速度が増加する傾向にある。そのため、信号減衰部の係数Xの値は固定値でもよいし、温度検出手段を設けて反射型液晶表示素子または液晶シャッタめがねの液晶シャッタの温度をフィードバックしその温度にしたがって係数Xの値を変化させてもよい。またそれらの温度検出が難しい場合には、外気温など別のパラメータに基づいて係数Xの値を変化させてもよい。
【0052】
図24は第1の実施形態における信号処理を示す図である。図25は第1の実施形態における反射型液晶表示素子6の極性反転駆動を示す図である。以下図3、図7、図9を参照しつつ、図24において信号処理を説明する。
【0053】
図24において、時刻T0にて垂直同期信号Vsyncがアクティブになり、最初に、時刻T0−T1の期間にてサブフレーム1(SF1)のデータを反射型液晶表示素子6に転送する。この期間(T0−T1)が転送期間WCとなる。転送期間WCの間、反射型液晶表示素子6は画素内のサンプルホールドされた値に関わらず、ブランキング状態とする必要があり、V0/V1/Vcomは同じ電圧(ここではGND)を設定する。ここで、V0はブランキング電圧、V1は駆動電圧、Vcom(共通電圧)は液晶の対向電極10の電圧である。時刻T1にて転送が終わり、次の期間(T1−T3)は駆動期間DCとなる。時刻T2は期間(T1−T3)のちょうど中間となり、期間(T1−T2)と期間(T2−T3)は同じ時間となる。期間(T1−T2)ではV1がVw、V0/VcomがGNDとなるように、また、期間(T2−T3)では期間(T1−T2)とは反対に、V1がGND、V0/VcomがVwとなるように電圧制御部32にて制御される。
【0054】
画素回路7内のサンプルホールドの値が“0”の場合、画素回路7内の電圧選択回路17にてV0が画素電極8に印加される。期間T1−T2では、画素電極電圧Vpeと対向電極電圧VcomはともにGNDとなる。液晶9にかかる電圧は0[v]となり、液晶の駆動状態はブランキング状態となる。
【0055】
画素内のサンプルホールドの値が“1”の場合、画素回路7内の電圧選択回路17にてV1が画素電極8に印加される。期間T1−T2では、画素電極電圧VpeはVw、対向電極電圧VcomはGNDとなる。液晶9にかかる電圧は+Vw(対向電極基準)となり、液晶は駆動状態となる。期間T2−T3では、画素電極電圧VpeはGND、対向電極電圧VcomはVwとなり、液晶9にかかる電圧は−Vw(対向電極基準)となり、駆動状態となる。
【0056】
液晶に同じ電圧で方向の異なる電圧(+Vw/−Vw)を同じ期間印加することにより、長時間平均して液晶に印加する電圧を+Vw+(−Vw)=0[v]とすることにより、焼き付きを防止している。SF2−SF12もSF1の期間T0−T3と同様な電圧制御を行う。図25において、期間(T1−T2)に相当する状態、すなわち、V1がVw、V0/VcomがGNDとなるような状態をDCバランス+と表している。また、期間(T2−T3)に相当する状態、すなわち、V1がGND、V0/VcomがVwとなるような状態をDCバランス−と表している。
【0057】
ところで第1の実施形態においては、表示素子としてアクティブマトリクス型の反射型液晶表示素子6を備えた投射型表示装置を例にして説明している。ここで、図10の階調駆動テーブルで液晶を駆動する場合の特徴を説明する。図10において、階調がK(K≧1)であるとする。するとSF(13−K)からSF12までが1(駆動状態)となる。SF(13−K)からSF12までの1は、ほぼ連続したオン状態とみなされる結果、K(階調数)と出力光の関係はほぼ図3に示す反射型液晶表示素子6の入力電圧と出力光の強度との関係に近いカーブを描く。これは、ルックアップテーブル部21の動作に有利に作用する。すなわち、反射型液晶表示素子6の入力電圧と出力光の強度との関係はルックアップテーブル部21が目標としているガンマ2.2のカーブに比較的近いため、ルックアップテーブル部21にてガンマ2.2のカーブに変換する負担が少なくなる。以上の特徴は、透過型液晶素子においても同様である。
【0058】
また、第1の実施の形態では、図9、図10に示す通り、動画擬似輪郭の原因となるバイナリビットパルスを用いず、すべて同じ幅のステップビットパルスを用いている点も特徴である。バイナリビットパルスとは各サブフィールドに対して重みが2n (n=0、1、2、3…)で表されるいわゆる“バイナリの重み付け”を行うものである。一方、ステップビットパルスとは、1、2、4、8、16のバイナリビットパルスがある場合、32、32、32、32、32、32、32のような同じ重み付けのパルスのことをいう。すべてバイナリビットパルスにする場合と比較して、ステップビットパルスを併用することで動画擬似輪郭を相対的に軽減する効果がある。
【0059】
動画擬似輪郭とは、隣り合った画素の似たような階調において、片方の画素でのバイナリビットパルスの多くが駆動状態であり、もう片方の画素でのバイナリビットパルスの多くがブランキング状態である場合、視線を動かした時や、顔のアップ等が動いたときに、意図しない輝度が眼で知覚されることをいう。本実施形態では、動画擬似輪郭の原因となるバイナリビットパルスを用いず、すべて同じ幅のステップビットパルスを用いている。そのため視線方向を動かした場合でも、輝度が著しく変化しないため、動画擬似輪郭はほとんど知覚されない。
【0060】
次に、反射型液晶表示素子を用いた液晶表示装置の駆動回路にフレームレートコントロール部をもうけたことによる効果を説明する。図26は、反射型液晶素子における横方向電界の発生メカニズムを説明する図である。図26に示されるように反射型液晶素子の画素電極8A、8Bはシリコン基板43の上に形成されている。
【0061】
デジタル駆動の場合、隣り合った画素間で駆動状態(駆動/ブランキング)が異なることが頻繁に起こる。例えば、あるフレームにおいて隣り合った画素の階調がそれぞれ“5”(画素PA)と“6”(画素PB)の場合を仮定する。またDCバランス+で、対向電極10がV0の場合を考える。すなわち、図25においてDCバランス+であるから、V0=Vcom=0(V)、V1=Vwである。サブフレーム6の時刻では、隣り合った画素の駆動状態が異なる。図10からわかるように、画素PAはブランキング状態なので、画素電極8AにはV0の電圧がかかり、画素PBは駆動状態なので、画素電極8BにはV1の電圧がかかっている。
【0062】
画素電極8AにはV0の電圧がかかり、画素電極8BにはV1の電圧がかかっているときの液晶層の電界41の状態を図25は示している。画素PBの画素電極8B(電位:Vw)と対向電極10(電位:0(V))間には電位差が生じ、液晶は所定量の回転をさせられる。このとき、画素PAの画素電極8A(電位:0(V))と画素PBの画素電極8B(電位:Vw)間にも電位差が生じ、横方向に電界が生じてしまう。このような、横方向電界42は、画素間の液晶の動きに意図しない混乱を発生させる。上記の現象は、画質劣化の一因であった。
【0063】
フレームレートコントロールを用いることで上記の不具合を解消することができる。図27はフレームレートコントロールにより、横方向電界が均等に分散されることを説明する図である。
【0064】
図27では、フレームレートコントロール部への入力データ((M+F)ビット)の下位Fビットの値が“01”である場合が例示されている。フレーム毎に4個のテーブル(フレーム0〜3)が用いられる。それぞれのフレームにおいて、隣り合った画素間で駆動状態(駆動またはブランキング)が異なる場合、駆動状態が「1」(駆動状態)である画素から駆動状態が「0」(ブランキング状態)である画素の方向に横方向の電界が生じる。画素間の横方向電界の方向は図17において矢印で表されている。4個のフレームでの横方向電界の状態を重ね合わせたのが、一番右の状態である。すなわち、4フレームの平均では、すべての画素間での横方向電界は打ち消しあっている。以上のように、フレームレートコントロールを用いることにより、画質劣化の一因である横方向電界を打ち消すことが可能となった。
【0065】
<第2の実施形態>
図28は本発明の第2の実施形態に係る駆動回路を示すブロック図である。本実施形態に係る駆動回路では、図7に示す第1の実施形態の駆動回路と比較すると、ルックアップテーブル部21が、信号変換部22に変更されている点が異なっている。誤差拡散部23以降の構成は第1の実施形態の駆動回路と同じである。
【0066】
図29は、第2の実施の形態における駆動パターンの1例を示す図である。本実施形態の駆動パターンは、第1の実施形態の駆動パターンと同様、映像信号が1秒あたり120フレーム、サブフレーム数が12個、データ転送期間(WC期間)が347[μs]である。一方、第1の実施形態の場合、全サブフレームの駆動期間が同じ時間であったのに対し、図29での各サブフレーム毎の駆動期間(DC期間)の時間は異なっている。
【0067】
図30は第2の実施の形態における各サブフレーム毎の駆動期間(DC期間)が第1の実施の形態に対して変更されていることを説明した図である。図29、図30では、駆動階調の設定は第1の実施形態に従っている。すなわち、第1の実施形態における図10の縦の欄に示す階調が1の場合、最後のサブフレームであるSF12のみが駆動状態となる。階調が2の場合、SF12とSF11だけが駆動状態となる。以下、階調の数が増える高くなる毎に駆動状態となるサブフレームが増えていき、最も高い階調である12の場合、全てのサブフレームが駆動状態となる。言い換えると、階調の数が増えるにしたがい、駆動状態となるサブフレームが時間的に前方に増えていく。
【0068】
図30において各サブフレーム毎の期間が第1の実施の形態に対して変更されている点について以下に説明する。図4のルックアップテーブル部21は反射型液晶表示素子6の入出力特性を変換してガンマ2.2の入出力特性を有する液晶表示装置を実現する機能を担っている。第2の実施形態においては、入出力特性の変換機能を「各サブフレーム毎の駆動期間(DC期間)の時間を異ならせる」ことで果たしている。以下、具体的に説明する。図31は第2の実施の形態において、各サブフレーム期間を調節して、駆動階調毎の輝度がガンマ2.2の線上にあることを表している図である。第2の実施形態では、例えば駆動階調毎の輝度特性が図31のようなガンマ2.2の線上になるように、あらかじめ、各サブフレーム毎のDC期間を図30のように設定してある。
【0069】
上記の結果、ルックアップテーブル部に対して逆ガンマ補正の機能を省くことができる。その結果、ルックアップテーブルを用いるルックアップテーブル部21からルックアップテーブルを使用しない信号変換部22に変更することができる。ルックアップテーブル部21を信号変換部22に変更することは、コスト削減の効果を有する。
【0070】
以下、信号変換部22を説明する。第2の実施形態においては、補間駆動階調自体にガンマ2.2の輝度特性があるため、

入力階調X:補間駆動階調Y=255(最大入力階調):768(最大補間駆動階調)

の関係式から、下記に示す演算式を用いることが可能となっている。信号変換部22は下記演算式を用いて入力される映像信号データを演算する。

出力データY:(M+F+D)ビット=入力データX × 768 / 255
ここで、768:最大補間駆動階調(すなわち、1100000000)
255:最大駆動階調

ここで、駆動階調とは、図9、10、20に表される、素子単体での階調を表している。また、補間駆動階調とは、誤差拡散部およびフレームレートコントロール部にて補間される擬似階調を含む階調を表している。
【0071】
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態での効果は同等に有している。
【0072】
第1、第2の実施形態において、入力された映像信号データのビット数をN、表示素子の駆動可能な階調数を2進数で表したときのビット数をM、誤差拡散処理により誤差として拡散されるビット数をD、フレームレートコントロールにより擬似的な階調として表現されるビット数をFとしたとき、N=8、M=4、 D=4、F=2である場合について説明した。しかし、N、M、D、Fの値は上記の値に限定されず、種々の値を用いて実施することができる。そのなかでも、N=8〜12、M=4〜6、D=4〜8、F=2〜3であることがより好ましい。
【符号の説明】
【0073】
1 照明光学系、2 光、3 S偏光、4 P偏光、
5 偏光ビームスプリッタ(PBS)、6 反射型液晶表示素子
7 画素回路、8 画素電極、9 液晶、10 対向電極(透明電極)、
11 投射レンズ、12 射出光、13 スクリーン、
15 サンプルホールド部、17 電圧選択回路、
21 ルックアップテーブル部、22信号変換部、
23 誤差拡散部、24 フレームレートコントロール部、
25 リミッタ部、26 サブフレームデータ作成部、
27 駆動階調テーブル、28 メモリ制御部、29 フレームバッファ、
30 データ転送部、31 駆動制御部、32 電圧制御部、
33 ソースドライバ、34 ゲートドライバ
41電界、42 横方向電界、43 シリコン基板
100 投射型液晶表示装置、101 信号処理回路(信号処理部)、
102、1020 駆動回路(駆動装置)、
103 液晶シャッタ駆動信号送信機、
104 立体映像信号源、105 液晶シャッタめがね、
105 映像信号減衰部、106 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する信号処理部と、
前記左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に基づいて、ステップビットパルスにより全サブフレームを構成し、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部を有する駆動装置と、
前記駆動装置で駆動される液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に照明光を入射させる照明光学系と、
前記液晶表示素子から射出された変調光を投射する投射レンズと、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項2】
入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する信号処理部と、
N、M、F、Dを整数としたときに、前記左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられたビット数Nの信号データを逆ガンマ補正および直線補間を行ってNより大きい(M+F+D)ビットのデータに変換するルックアップテーブル部と、前記ルックアップテーブル部で処理された(M+F+D)ビットのデータを誤差拡散処理により(M+F)ビットのデータに変換する誤差拡散部と、前記誤差拡散部で処理された(M+F)ビットのデータをフレームレートコントロールによりMビットのデータに変換するフレームレートコントロール部と、前記フレームレートコントロール部で処理されたMビットのデータを用いるとともに、ステップビットパルスにより全サブフレームを構成し、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部と、を備えることを特徴とする駆動装置と、
前記液晶表示素子の駆動装置で駆動される液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に照明光を入射させる照明光学系と、
前記液晶表示素子から射出された変調光を投射する投射レンズと、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項3】
入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する信号処理部と、
前記左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に基づいて、異なる駆動期間を少なくとも一部に有するサブフレームを構成し、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していく駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部を有する駆動装置と、
前記駆動装置で駆動される液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に照明光を入射させる照明光学系と、
前記液晶表示素子から射出された変調光を投射する投射レンズと、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項4】
入力される3D映像信号から左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号に変換する信号処理部と、
N、M、F、Dを整数としたときに、前記左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられたビット数Nの信号を直線補間してNより大きい(M+F+D)ビットのデータに変換する信号変換部と、前記信号変換部で処理された(M+F+D)ビットのデータを誤差拡散処理により(M+F)ビットのデータに変換する誤差拡散部と、前記誤差拡散部で処理された(M+F)ビットのデータをフレームレートコントロールによりMビットのデータに変換するフレームレートコントロール部と、前記誤差拡散部で処理されたMビットのデータを用い、駆動階調が1のとき最後のサブフレームが駆動状態となり、駆動階調が1増加する毎に駆動状態となるサブフレームが1個ずつ既に駆動状態となっているサブフレームの前に向かって増加していくとともに、入力映像信号データに対する液晶の光出力が逆ガンマ特性となるようにサブフレーム毎の駆動期間を異ならせた駆動階調テーブルによりサブフレームデータを作成するサブフレームデータ作成部と、を備えることを特徴とする駆動装置と、
前記液晶表示素子の駆動装置で駆動される液晶表示素子と、
前記液晶表示素子に照明光を入射させる照明光学系と、
前記液晶表示素子から射出された変調光を投射する投射レンズと、
を備えることを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項5】
前記信号処理部と前記駆動装置の間において、係数を乗算して、左目用信号、右目用信号が時間的に交互に並べ替えられた信号を減衰させる映像信号減衰部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体映像表示装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公開番号】特開2012−103357(P2012−103357A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250045(P2010−250045)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】