説明

竪型押し込み方式絞り加工機列

【課題】絞り加工を行う加工機それ自体が場所をとらず、かつレイアウト変更および絞り加工工程数の変更が容易にできる絞り加工機列を提供する。
【解決手段】竪型プレスを複数基並べてなる竪型押し込み方式絞り加工機列であって、前記竪型プレスが全て、ベッドプレート及びアッパープレートに固定したガイドロッドで案内されつつ前記アッパープレートの上に搭載した一つの油圧シリンダでプレス空間内を上下動するスライダと、前記ベッドプレートに固定され、ノックアウトプレートが上下動可能な内部空間を有する架台と、前記内部空間に配置したノックアウトプレートとを具備し、該ノックアウトプレートが前記スライダの動きに伴って上下動するスライダ連動方式とされてなる竪型押し込み方式絞り加工機列。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材や棒材を素材とし自動車ステアリング用シャフトなどの部品の絞り加工に好適に用いる絞り加工機列に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ステアリング用シャフトなどの部品の絞り加工は、ロータリースエージングマシンや絞り加工専用機を複数基並べた横型絞り加工機列で行うのが一般的である。これらの絞り加工専用機は、広い設置スペースを必要とすると共に、絞り加工部品の仕様変更に伴う絞り加工工程数の変更が極めて困難である。
例えば、図5(a)、(b)に示すように、自動車ステアリング用シャフトの部品の絞り加工を行う際、シャフトの部品長Lが短い場合には、5工程で座屈が生じることなく、絞り加工することができるが、絞り加工部品の仕様変更によってシャフトの部品長Lが長くなると、5工程では座屈が発生するので、加工工程数を6工程とする必要がある。
【0003】
しかし、横型の絞り加工専用機はそれ自体場所をとるため、加工工程数を5工程から6工程に変更するのが難しい場合がある。
なお、横型の絞り加工専用機16は、図6に示すように、押圧用油圧シリンダ11、ダイセット12、ノックアウト用油圧シリンダ14を具備し、押圧用油圧シリンダ11で被加工材Wの長手方向に圧縮力を付与しつつ、ダイセット12により、絞り加工を被加工材Wに施すようになっている。図6中、13は、ダイセット12から加工後の被加工材Wを排出するためのノックアウトピンを示す。架台16A上には、2つの油圧シリンダ11、14と、ダイセット12などが搭載されている。15は、2つの油圧シリンダ11、14に圧油を供給する油圧ユニットを示す。このような横型の絞り加工専用機16では、押圧用油圧シリンダ11の押圧方向が横方向とされ、かつノックアウト用油圧シリンダ14によって、押圧方向と対向する方向からノックアウト力を作用させる必要があり、横型の絞り加工専用機それ自体場所をとる欠点がある。
【0004】
ところで、複数の加工工程を一基で行う加工機としては、竪型プレスに搬送装置を組み込んだトランスファープレスや、効率的に成形作業を進めることができる多段式圧造成形機なども知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の多段式圧造成形機は、複数のダイと、ラム(スライダともいう)に取り付けた複数のパンチと、ダイとパンチとにより圧造された素材を前方に押し出すノックアウト手段と、素材を上段側のダイから下段側のダイに移送する素材移送手段とを備える。
【特許文献1】特開2002−210536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記絞り加工専用機16は、押圧用油圧シリンダ11の押圧方向が横方向とされ、かつノックアウト用油圧シリンダ14で押圧方向と対向する方向からノックアウト力を作用させる必要があり、図6、図7で示す奥行きD寸法が大きく、絞り加工専用機16を複数基並べ、横型絞り加工機列とした場合、広い設置スペースが必要になるという欠点がある。また、横型の絞り加工専用機16がそれ自体場所をとるため、レイアウト変更および絞り加工工程数の変更が行い難いという問題もあった。
【0006】
また、特許文献1に記載の多段式圧造成形機やトランスファープレスなどは、効率的に成形作業を進めるのに、それ自体に搬送装置を組み込んであるため、絞り加工工程数の変更が容易にできないという問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、絞り加工を行う加工機それ自体が場所をとらず、かつレイアウト変更および絞り加工工程数の変更が容易にできる絞り加工機列を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、竪型プレスを複数基並べてなる竪型押し込み方式絞り加工機列であって、前記竪型プレスが全て、ベッドプレート及びアッパープレートに固定したガイドロッドで案内されつつ前記アッパープレートの上に搭載した一つの油圧シリンダでプレス空間内を上下動するスライダと、前記ベッドプレートに固定され、ノックアウトプレートが上下動可能な内部空間を有する架台と、前記内部空間に配置したノックアウトプレートとを具備し、該ノックアウトプレートが前記スライダの動きに伴って上下動するスライダ連動方式とされてなることを特徴とする竪型押し込み方式絞り加工機列である。
【0008】
その場合、前記竪型プレスのスライダ連動方式を全て、前記スライダに上端部が接続され、かつ前記ベッドプレートを貫通して上下動可能に配置されたコネクティングロッドの下端部を、前記内部空間に配置したノックアウトプレートと連結してなるノックアウト機構とした竪型押し込み方式絞り加工機列とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絞り加工を行う加工機それ自体には搬送装置を組み込んでなく、場所をとらない簡単な構造の竪型プレスとし、この場所をとらない簡単な構造の竪型プレスを複数基並べてなる竪型押し込み方式絞り加工機列としたから、設置スペースが少なくて済み、かつレイアウト変更および絞り加工工程数の変更が容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、自動車ステアリング用シャフト部品の絞り加工に適用した場合について、図を用いて説明する。図1(a)は本発明の実施の形態にかかる絞り加工機列に用いて好適な竪型プレスの構成を示す縦断面図であり、図1(b)はその側面図である。
図1(a)中、Bは、絞り加工を行う竪型プレス1の幅を示し、図1(b)中、Dは油圧ユニット2Aを含む竪型プレス1の奥行きを示す。この竪型プレス1で絞り加工を行うに際しては、スライダ3に上ダイ4を装着し、ベッドプレート5に下ダイ6を装着した後、下ダイ6に被加工材W(図示せず)の下部をセットし、一つの油圧シリンダ2でスライダ3を下降させ、下ダイ6で被加工材Wの上部を押圧するようになっている。
【0011】
すなわち、上記した竪型プレス1は、ベッドプレート5及びアッパープレートに固定したガイドロッド10と、このガイドロッド10で案内されつつ、アッパープレートの上に搭載した一つの油圧シリンダ2でプレス空間内を上下動するスライダ3と、ベッドプレート5に固定され、ノックアウトプレート8が上下動可能な内部空間Sを有する架台7と、内部空間Sに配置したノックアウトプレート8とを具備している。このノックアウトプレート8がスライダ3の動きに伴って上下動するスライダ連動方式とされ、ノックアウトプレート8に装着される適宜な長さのノックアウトピン(図示せず)によって、絞り加工後の被加工材Wを排出する竪型の絞り加工機としてなる。このような構造を有する竪型プレス1は簡単な構造の絞り加工機である。
【0012】
図1(a)、(b)中、1Aは絞り加工時の力を受けるテンションバーを示し、この実施の形態では2本とされ、ベッドプレート5及びアッパープレートに固定されている。また、上下動されるスライダ3を案内するガイドロッド10は4本、ノックアウトプレート8に連結され、スライダ3の動きに伴って上下動するコネクティングロッド9は2本とした。ノックアウトピンが装着されるノックアウトプレート8のスライダ連動方式については後述する。
【0013】
また、竪型プレス1の幅Bは、図7に示した横型の絞り加工専用機16の幅Bと同程度となるが、竪型プレス1の奥行きDは、横型の絞り加工専用機16に比べて、はるかに小さくできる。したがって、図1に示した竪型プレス1は、横型の絞り加工専用機16と比較して、場所をとらない簡単な構造を有する絞り加工機である。
このため、本発明の実施の形態にかかる竪型押し込み方式絞り加工機列は、設置スペースが少なくて済み、絞り加工部品の仕様変更が生じた場合でも、レイアウトの変更および絞り加工工程数の変更が容易にできる。例えば、図2には、自動車ステアリング用シャフト部品の絞り加工を5工程で行う場合の直線状配列のレイアウトを示し、図3には、別のL字状配列のレイアウトを示した。このように、直線状配列のレイアウトからL字状配列のレイアウトへ、もしくは逆にレイアウトを容易に変えることができる。
【0014】
また、図4には、自動車ステアリング用シャフト部品の絞り加工を6工程で行う場合のL字状配列のレイアウトを示した。絞り加工工程数を5工程から6工程で行う変更は、例えば、シャフトの部品長Lが長くなり、絞り加工を5工程で行うと被加工材Wに座屈が生じる場合に行う。本発明の実施の形態にかかる竪型押し込み方式絞り加工機列によれば、加工機を5基並べた配列から、場所をとらない簡単な構造の竪型プレス1を1基加えて、加工機を6基並べた配列とすることで、絞り加工工程数の変更が容易に行える。
【0015】
その場合、竪型プレス1のスライダ連動方式を全て、スライダ3に上端部が接続され、かつベッドプレート5を貫通して上下動可能に配置されたコネクティングロッド9の下端部を、内部空間Sに配置したノックアウトプレート8と連結してなるノックアウト機構とした竪型押し込み方式絞り加工機列とするのが好ましい(図1(a)、(b)参照)。例えば、コネクティングロッド9の下端部の雄ねじ部にダブルナットを係合させて、ノックアウトプレート8とコネクティングロッド9とを連結する。
【0016】
この理由は、スライダ3に装着した上ダイ4と、ベッドプレート5に装着した下ダイ6との間で絞り加工を行うに際し、まず、下ダイ6に被加工材Wの下部をセットし、次いで、一つの油圧シリンダ2でスライダ3を下降させ、上ダイ4で被加工材Wの上部を押圧し、下ダイ6の内側の形状に倣うよう被加工材Wの下部を絞り加工することができる。スライダ3の下降過程が終了した後、一つの油圧シリンダ2でスライダ3を上昇させ、架台7の内部空間Sに配置したスライダ連動方式のノックアウトプレート8に装着される適宜な長さのノックアウトピンで下ダイ6から絞り加工後の被加工材Wを確実に排出することができる。このようにして第1工程を行う竪型プレス1での絞り加工が終わったら、以降の工程を行う竪型プレス1で順次、同様にして絞り加工を行う。このように、竪型プレス1を複数基並べてなる竪型押し込み方式絞り加工機列によって、絞り加工工程数が複数の絞り加工を効率的に行うことができるようになるからである。
【0017】
その際、竪型プレス1のベッドプレート5には、2本のコネクティングロッド9に対応して、ロッドの直径に応じた貫通孔を2つ形成し、コネクティングロッド9が円滑に上下動するように適宜なブッシュなどを介してベッドプレート5に設けた貫通孔にそれぞれ通すのが、コネクティングロッド9を安定して上下動できるので好ましい。
なお、上ダイ4と下ダイ6を除いた竪型プレス1に用いる全ての部材(油圧シリンダ2と油圧ユニットも含む)は、その寸法、材料を同じとするのが、部材の共通化によって、1基当たりの絞り加工機の製作コストを下げることができるので好ましい。竪型プレス1の部材は、スライダ3を、鋼材を加工した鋼製プレートとすることをはじめとし、ベッドプレート5、アッパープレート、内部空間Sに配置するノックアウトプレート8も鋼製プレートとし、さらに絞り加工時の力を受ける2本のテンションバー1A、スライダ3と連動して上下動する2本のコネクティングロッド9、スライダ3を案内する4本のガイドロッド10は棒鋼を加工した鋼製、内部空間Sを有する架台7は形鋼を組み合わせた鋼製、ノックアウトピンも鋼製とするのがコストと強度のバランス上好ましい。
【実施例】
【0018】
鋼管の外径が30mm、肉厚が3mmの素材を用い、自動車ステアリング用シャフト部品の絞り加工工程に本発明を適用した。シャフトの部品長Lが200mm の場合、絞り加工工程を5工程とすることで、図5(a)に示した形状に座屈を生じることなく、絞り加工することができる。そのときのレイアウトは、図2に示した直線状配列であり、シャフトの部品長Lを長くするような仕様変更があったときのレイアウトは、図4に示したL字状配列である。すなわち、シャフトの部品長Lが350mmと長い場合に絞り加工を5工程で行うと、第1工程の絞り加工で座屈が発生して不良品となってしまうので、絞り加工工程を6工程とし、場所をとらない簡単な構造の竪型プレス1を1基加えて、加工機を6基並べ、直線状配列からL字状配列のレイアウトにすることで、レイアウト変更及び絞り加工工程数の変更が容易に行えた。
【0019】
なお、絞り加工工程数を6工程とした場合、その第1、第2工程の絞り加工では、絞り加工工程数が5工程である場合の第1工程における加工量を2分した量の絞り加工をそれぞれ行った。すなわち、絞り加工工程数を6工程とした場合、その第1工程では、絞り加工工程数が5工程である場合の第1工程での加工量を2分した最初の絞り加工を予備成形として行っている(図5(a)、(b)参照)。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明に用いて好適な竪型プレスの構成を示すA−A縦断面図であり、(b)はその側面図である。
【図2】本発明にかかる絞り加工機列の一例を示す平面図である。
【図3】本発明にかかる絞り加工機列の他の例を示す平面図である。
【図4】本発明にかかる絞り加工機列の他の例を示す平面図である。
【図5】部品長Lが異なる場合のステアリング用シャフト部品の絞り加工工程を例示する部分断面図である。
【図6】横型のシャフト部品絞り加工専用機を示す側面図である。
【図7】横型のシャフト部品絞り加工専用機を複数基並べた場合の設置スペースを示す平面図である。
【符号の説明】
【0021】
W 被加工材
B 幅
D 奥行き
S 内部空間
1 竪型プレス
1A テンションバー
2 油圧シリンダ
2A 油圧ユニット
3 スライダ
4 上ダイ
5 ベッドプレート
6 下ダイ
7 架台
8 ノックアウトプレート
9 コネクティングロッド
10 ガイドロッド
11 押圧用油圧シリンダ
12 ダイセット
13 ノックアウトピン
14 ノックアウト用油圧シリンダ
15 油圧ユニット
16A 架台
16 絞り加工専用機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型プレスを複数基並べてなる竪型押し込み方式絞り加工機列であって、前記竪型プレスが全て、ベッドプレート及びアッパープレートに固定したガイドロッドで案内されつつ前記アッパープレートの上に搭載した一つの油圧シリンダでプレス空間内を上下動するスライダと、前記ベッドプレートに固定され、ノックアウトプレートが上下動可能な内部空間を有する架台と、前記内部空間に配置したノックアウトプレートとを具備し、該ノックアウトプレートが前記スライダの動きに伴って上下動するスライダ連動方式とされてなることを特徴とする竪型押し込み方式絞り加工機列。
【請求項2】
前記竪型プレスのスライダ連動方式を全て、前記スライダに上端部が接続され、かつ前記ベッドプレートを貫通して上下動可能に配置されたコネクティングロッドの下端部を、前記内部空間に配置したノックアウトプレートと連結してなるノックアウト機構としたことを特徴とする請求項1に記載の絞り加工機列。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−290019(P2007−290019A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122762(P2006−122762)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506109753)株式会社正田製作所 (8)
【Fターム(参考)】