説明

竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法

【課題】竪型溶解炉を用いた鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を原料とする溶銑の製造方法において、溶銑を高い生産性で且つ低コストに製造する。
【解決手段】炉頂部から鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物とコークスを装入し、炉下部の複数の羽口から熱風を吹き込み、コークスの燃焼熱で鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を溶解する方法であって、Vh≦220、L≦0.7、35.7×D≦Vh+50×L≦85.7×D(ただし、Vh(Nm/sec):羽口先端部での熱風流速、L(m):炉内壁から炉内に突き出た羽口管部分の長さ、D(m):羽口高さ位置での炉内径)を満足する条件で羽口から熱風を吹き込む。炉中心部を含めた炉径方向全般でのガス流れが適正化され、コークスの燃焼と鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物の溶解が炉全体で適切に生じる。このため溶銑を高い生産性で且つ低コストに製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製造プロセスなどで発生する鉄含有ダストや鉄含有スラッジを製鉄用原料としてリサイクルするために、鉄含有ダストや鉄含有スラッジの塊成化物或いはこの塊成化物を含む鉄源を竪型溶解炉を用いて溶解し、溶銑を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造プロセスでは、種々の工程で鉄含有ダストが発生するが、このような鉄含有ダストを塊成化し、これをキュポラなどの竪型溶解炉に鉄源としてリサイクル装入する方法が知られている(例えば、特許文献1)。この方法では、竪型溶解炉の炉頂部から鉄含有ダスト塊成化物とコークスを装入し、炉下部に設けられた複数の羽口(送風羽口)から熱風を吹き込み、コークスの燃焼熱で鉄含有ダスト塊成化物を溶解することにより溶銑が得られる。
【特許文献1】特開昭55−125211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなプロセスにおいて鉄含有ダスト塊成化物を溶解し、溶銑を製造する場合、以下のような問題がある。
(1)生産量を高めるには炉径を大きくする必要があるが、炉径を大きくすると羽口から吹き込まれる熱風が炉中心部まで十分に届かないため、炉中心部側の領域でのガス流れが少なくなり、このため同領域でのコークスの燃焼や鉄含有ダスト塊成化物の溶解が不十分となり、場合によっては操業自体に支障を来すおそれもある。
(2)使用するコークスの粒径が小さいと、コークスが早く燃焼してしまうため、燃焼により生じたCOが炉内を上昇する過程でコークスと反応する、所謂ソリューションロス反応(吸熱反応)が生じやすくなり、このため発熱量が下がり、出銑量が低下するという問題がある。これを防止するためには、高価な鋳物用コークスの使用比率を高める必要があり、製造コストの上昇を招いてしまう。
(3)生産量を高めるには送風酸素富化が有効であるが、この酸素富化を行うと炉頂温度が低下し、腐食性ガスが結露して排ガス管の腐食を引き起こしたり、ダストが排出されずに炉内に蓄積し、ガス通気性が低下するなどの問題を生じる。
【0004】
したがって本発明の目的は、以上のような課題を解決し、竪型溶解炉を用いて鉄含有ダストや鉄含有スラッジの塊成化物(或いはこの塊成化物を含む鉄源)を溶解し、溶銑を製造する方法において、安定した操業を行いつつ、溶銑を高い生産性で且つ低コストに製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、羽口送風条件を最適化すること、さらにはこの羽口送風条件の最適化と送風酸素富化とを組み合わせることにより、また、炉装入原料(鉄含有ダストや鉄含有スラッジの塊成化物、コークスなど)を乾燥・予熱し、好ましくはその条件を最適化することにより、上記課題を適切に解決できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
【0006】
[1]竪型溶解炉において、炉頂部から鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物とコークスを装入し、炉下部に設けられた複数の羽口から熱風を吹き込み、コークスの燃焼熱で前記塊成化物を溶解することにより溶銑を製造する方法であって、
下記(1)〜(3)式を満足する条件で羽口から熱風を吹き込むことを特徴とする竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
Vh≦220 …(1)
L≦0.7 …(2)
35.7×D≦Vh+50×L≦85.7×D …(3)
ただし、
Vh(Nm/sec):羽口先端部での熱風流速
L(m):炉内壁から炉内に突き出た羽口管部分の長さ
D(m):羽口高さ位置での炉内径
【0007】
[2]上記[1]の製造方法において、炉頂部からさらに鉄系スクラップを装入し、これを鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物とともに溶解して溶銑を製造することを特徴とする竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
[3]上記[1]又は[2]の製造方法において、算術平均粒径が120mm以下のコークスを用いるとともに、熱風に酸素を富化することを特徴とする竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
[4]上記[3]の製造方法において、炉内に装入する鉄源(ここで、鉄源とは、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの1種以上を指す。)及び/又はコークスを事前に乾燥処理及び/又は予熱することを特徴とする竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
[5]上記[1]又は[2]の製造方法において、熱風に酸素を富化するとともに、炉内に装入する鉄源(ここで、鉄源とは、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの1種以上を指す。)及び/又はコークスを事前に乾燥処理及び/又は予熱することを特徴とする竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
【0008】
[6]上記[4]又は[5]の製造方法において、鉄源及び/又はコークスを、下記(4)式を満足するように乾燥処理及び/又は予熱することを特徴とする竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
ΔTs+(2×ΔTc×Co)/1000+50×ΔWs+(50×Co×ΔWc)/1000
≧GTt−GTm …(4)
但し、
ΔTs(℃):予熱による鉄源温度の上昇幅(但し、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの両方を予熱する場合には、両者の配合割合に応じた加重平均値)
ΔTc(℃):予熱によるコークス温度の上昇幅
ΔWs(mass%):乾燥処理及び/又は予熱による鉄源水分含有率の低下幅(但し、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの両方を乾燥処理及び/又は予熱する場合には、両者の配合割合に応じた加重平均値)
ΔWc(mass%):乾燥処理及び/又は予熱によるコークス水分含有率の低下幅
Co(kg/溶銑ton):コークス比
GTt(℃):炉頂部における目標排ガス温度
GTm(℃):炉頂部における実績排ガス温度
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶銑の生産量確保のために炉径を十分に大きくしても、羽口送風条件を最適化することにより、炉中心部を含めた炉径方向全般でのガス流れが適正化され、これによりコークスの燃焼と鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物(或いはこの塊成化物を含む鉄源)の溶解が炉全体で適切に生じる。このため溶銑を高い生産性で且つ低コストに製造することができる。また、算術平均粒径が120mm以下の小粒径のコークスを使用しても同様の効果が得られる。
さらに、炉装入原料を事前に乾燥・予熱することにより、炉頂温度の低下が抑えられ、このため排ガス管内での腐食性ガスの結露やダストの炉内蓄積が抑えられ、排ガス管の腐食や操業上のトラブルを生じることなく、安定した操業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明で用いる竪型溶解炉(以下、単に「溶解炉」という)とその基本的な操業形態を模式的に示している。図において、1は炉頂に設けられる原料装入部、2は炉下部の周方向において適当な間隔で設けられる複数の羽口(送風羽口)、3はこの羽口2に熱風を供給する熱風管、4は排ガス出口、5は出銑口である。この溶解炉の大きさ等に本質的な制限はないが、実質的に操業可能若しくは操業上有利なサイズとして、通常は、羽口位置での炉内径が2〜4m程度、炉高が6〜10m程度である。
図2は、羽口2の拡大図であり、この例では、羽口2を構成する羽口管20の先端部が炉内壁6から炉内に所定長さLだけ突き出ている。この羽口数に制限はないが、通常、4〜10本程度である。
【0011】
このような溶解炉では、炉頂の原料装入部1から鉄源である鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物(以下、説明の便宜上「鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物」という。)とコークスを装入するとともに、複数の羽口2から熱風を吹き込み、コークスの燃焼ガスの熱で鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を溶解し、溶銑とする。生成した溶銑は炉底部の出銑口5から炉外に取り出される。また、炉頂の原料装入部1からは、さらに鉄源として鉄系スクラップを装入し、これを鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物とともに溶解して溶銑を製造してもよい。鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物と鉄系スクラップとを併せて装入する際の炉内への装入方法は任意であるが、なるべく均一に装入する方が操業の安定性には良い。
鉄源として鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を使用すると、鉄源として鉄系スクラップを使用する場合に比べてコークス原単位が増加するため、排ガス量が増加するが、送風酸素富化を実施することにより排ガス量を低減できるので、例えば、後述するような形態で送風酸素富化を行うのが好ましい。
【0012】
鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物は、鉄含有ダスト、鉄含有スラッジの1種以上又はこれを主体とする原料を塊状に固めたものであればよく、したがって塊成化物の種類や製法を問わないが、一般には、鉄含有ダスト、鉄含有スラッジの1種以上に水硬性バインダーを配合し、さらに必要に応じて還元用の炭材粉などを配合した原料に水を加えて混合した後、成形し、この成形物を水和硬化させて塊成化物としたものが用いられる。なお、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物の構成成分や製法については、後に詳述する。
鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物(又は鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を
含む鉄源)とコークスは、炉内に同時に装入してもよいし、交互に装入してもよい。また、炉装入原料としては、上記以外に、例えば、銑鉄、還元鉄、鉄鉱石等の鉄源、木炭や無煙炭等の炭材などを装入してもよい。
【0013】
溶銑の生産量を十分に確保すること(さらに、鉄系スクラップを装入する場合に、大サイズの鉄系スクラップを切断することなく装入すること)により経済的な操業を行うためには、溶解炉の炉径はなるべく大きいことが好ましく、具体的には羽口高さ位置での炉内径が3m以上であることが望ましい。しかし、炉径を大きくすると羽口から吹き込まれる熱風が炉中心部まで十分に届かないため、炉中心部側の領域でのガス流れが少なくなり、このため同領域でのコークスの燃焼が不十分となって鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物(又は鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を含む鉄源)が十分に溶解できなくなり、出銑量が低下するだけでなく、最終的に操業自体に支障を来すおそれもある。図3は、炉径が小さい溶解炉と炉径が大きい溶解炉のガス流れの違いを示したものであり、図4は、炉径(羽口高さ位置での炉内径)が異なる溶解炉について、半径方向位置におけるガス流速比を示したものであり、これらによれば、炉径が大きくなると羽口から吹き込まれる熱風が炉中心部まで到達できなくなるため、炉中心部側でのガス流れが小さくなることが判る。
【0014】
このような問題に対して本発明では、下記(1)〜(3)式を満足する条件で羽口から熱風を吹き込む。このように羽口送風条件を最適化することにより、炉中心部を含めた炉径方向全般でのガス流れが適正化され、これによりコークスの燃焼と鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物(又は鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を含む鉄源)の溶解が炉全体で適切に生じることになる。
Vh≦220 …(1)
L≦0.7 …(2)
35.7×D≦Vh+50×L≦85.7×D …(3)
ただし、
Vh(Nm/sec):羽口先端部での熱風流速
L(m):炉内壁から炉内に突き出た羽口管部分の長さ
D(m):羽口高さ位置での炉内径
【0015】
羽口先端部での熱風流速Vh(以下、便宜上「羽口風速Vh」という)が上記(1)式の条件を外れてVh>220(Nm/sec)となると、コークス間の擦れが激しくなるためコークスが粉化しやすくなり、通気変動が大きくなるため好ましくない。図5及び図6は、それぞれ羽口高さ位置での炉内径D(以下、単に「炉内径D」という)が2.3mの溶解炉を用いた操業(コークス比:130kg/t)において、羽口風速Vhと送風圧力及び出銑量との関係を調べたものである。この操業では、鉄源として鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物50mass%+鉄スクラップ50mass%を用いた。使用した溶解炉は羽口本数が4本であり、また、図5で使用した溶解炉は羽口径が130mm、図6で使用した溶解炉は羽口径が108mmである。図5、図6によれば、羽口風速Vhが220Nm/secを超えた付近から送風圧力の変動(通気変動)が大きくなっていることが判る。
【0016】
また、熱風を炉中心部まで送り込むには、図2に示すような炉内壁7から炉内に突き出た羽口管部分の長さL(以下、便宜上「羽口突き出し長さL」という)を長くすることが有効であるが、この羽口突き出し長さLが長過ぎると羽口溶損を生じやすく、操業に支障を来す。本発明者らが羽口突き出し長さL及び羽口冷却水量を種々変えて操業した結果では、羽口突き出し長さLが上記(2)式の条件を満足すれば、羽口溶損頻度を十分に小さくできることが判った。
【0017】
図7は、羽口高さ位置での炉内径Dが2.8mであって、羽口突き出し長さLがそれぞれ0.1m、0.4m、0.5m、0.6mの溶解炉を用いた操業において、羽口風速Vhとガス利用率η[=CO/(CO+CO)×100(%)]との関係を調べたものである。使用した各溶解炉は羽口本数が8本であり、使用コークスの算術平均粒径:132mm、送風酸素富化無し、出銑量:45t/hの条件で操業を行った。この操業では、鉄源として鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物50mass%+鉄スクラップ50mass%を用いた。図7によれば、羽口突き出し長さLに応じた特定の範囲の羽口風速Vhにおいて高いガス利用率ηが得られている。なお、羽口突き出し長さLが0.1mの溶解炉を用いた操業では、通気変動による操業の不安定化により、高いガス利用率ηが得られる羽口風速Vhの上限は220Nm/secとなった。図7の結果に基づき、高いガス利用率ηが得られ且つ上記(1)式及び(2)式の条件を満足する羽口突き出し長さLと羽口風速Vhの範囲を図8(斜線部)に示すが、高いガス利用率ηを得るには上記(3)式を満足する必要があることが判る。
【0018】
図9及び図11は、異なる炉内径Dを有する溶解炉を用いて上記と同様の操業を行った結果を示している。
図9は、羽口高さ位置での炉内径Dが2.1mであって、羽口突き出し長さLがそれぞれ0.1m、0.4m、0.6mの溶解炉を用いた操業において、羽口風速Vhとガス利用率ηとの関係を調べたものである。使用した各溶解炉は羽口本数が8本であり、操業条件は図7の場合と同様である。この操業では、鉄源として鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物50mass%+鉄スクラップ50mass%を用いた。図9によれば、羽口突き出し長さLに応じた特定の範囲の羽口風速Vhにおいて高いガス利用率ηが得られている。図9の結果に基づき、高いガス利用率ηが得られ且つ上記(1)式及び(2)式の条件を満足する羽口突き出し長さLと羽口風速Vhの範囲を図10(斜線部)に示すが、この炉内径でも、高いガス利用率ηを得るには上記(3)式を満足する必要があることが判る。
【0019】
図11は、羽口高さ位置での炉内径Dが3.5mであって、羽口突き出し長さLがそれぞれ0.1m、0.4m、0.6mの溶解炉を用いた操業において、羽口風速Vhとガス利用率ηとの関係を調べたものである。使用した各溶解炉は羽口本数が8本であり、操業条件は図7の場合と同様である。この操業では、鉄源として鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物50mass%+鉄スクラップ50mass%を用いた。図11によれば、羽口突き出し長さLに応じた特定の範囲の羽口風速Vhにおいて高いガス利用率ηが得られている。図11の結果に基づき、高いガス利用率ηが得られ且つ上記(1)式及び(2)式の条件を満足する羽口突き出し長さLと羽口風速Vhの範囲を図12(斜線部)に示すが、この炉内径でも、高いガス利用率ηを得るには上記(3)式の左辺を満足する必要があることが判る。なお、この操業では、通気変動による操業の不安定化により、高いガス利用率ηが得られる羽口風速Vhの上限はすべて220Nm/secとなった。
以上の結果から、上記(3)式を満足することにより高いガス利用率ηが得られることが判る。このように高いガス利用率ηが得られるということは、炉中心部側の領域を含めた炉径方向全般でのガス流れが適正化し、これによりコークスの燃焼と鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物(又は鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を含む鉄源)の溶解が炉全体で適切に生じていることを意味する。
【0020】
鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物(又は鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を含む鉄源)の溶解を低コストに行うためには、製鉄用コークスのような粒径の小さい安価なコークスの使用比率を高める必要がある。このような観点からは、本発明でも算術平均粒径が120mm以下のコークスを用いるのが好ましい。しかし、使用するコークスの径が小さいとコークスが早く燃焼してしまうために、コークスの燃焼で生じたCOが炉内を上昇する過程でコークス(C)と反応する、所謂ソリューションロス反応(CO+C→2CO:吸熱反応)が生じやすくなり、このソリューションロス反応により発熱量が下がり、出銑量が低下するという問題がある。図13は、算術平均粒径がそれぞれ160mmと65mmのコークスを用いて操業を行った場合の炉高方向でのガス組成分布の一例を示したものであり、これによれば、大粒径のコークスを用いると、コークスの燃焼速度が遅いため、羽口から炉中段にかけて徐々にO濃度が低下し、一方、CO濃度は上昇する。O濃度が相当分低下した炉上段より上方ではソリューションロス反応が起こり得るが、コークス粒径が大きいため反応速度が遅く、このため炉中段より上方ではCO濃度がピークを維持し、CO濃度は低レベルを維持する。これに対して小径のコークスを用いると、CO濃度は炉下部でピークとなり、そこから炉中段にかけてソリューションロス反応によって急激に低下(したがって、CO濃度が急増)している。
【0021】
このようなコークスの小径化に伴う問題に対しては、本発明法に従い、上述した(1)〜(3)式を満足する条件で羽口から酸素富化熱風を吹き込むことが有効である。コークスの小径化によりソリューションロス(吸熱反応)の増加は避けられず、このような吸熱の増加による出銑量の低下への対応としては、吸熱を補うべく燃焼を増加させる必要がある。この時、単に送風量を増加させると排ガス量が増加し、排ガス処理系の許容量を超えてしまう。これに対して、送風量自体は増加させずに送風酸素富化を行えば、排ガス量を抑えつつ燃焼を増加させることができる。そして、これに加えて、羽口送風条件が最適化されることにより、さきに述べたように炉内でのガスの流れと酸素の供給が適正化され、これによりコークスの燃焼と鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物(又は鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を含む鉄源)の溶解が炉全体で適切に生じることになる。
【0022】
本発明において算術平均粒径が120mm以下の安価なコークスを用いる場合、コークスの粒径があまりに小さいと、送風酸素富化を行って出銑量の低下が避けられないため、使用するコークスの算術平均粒径は40mm以上であることが好ましい。算術平均粒径が120mm以下のコークスとしては、通常、製鉄用コークス(通常、算術平均粒径:25〜80mm程度)と鋳物用コークス(通常、算術平均粒径:150〜250mm程度)を適宜混合して用いる。
なお、算術平均粒径とは、平均粒径=(Σai×Xi)/(Σai)(但し、Xi:代表粒径、ai:割合)で求められる粒径である。
【0023】
酸素富化の形態としては、例えば、(a)予め熱風に酸素を添加し、これを羽口に供給する方法、(b)羽口内に酸素を供給し、羽口内で熱風と混合する方法、(c)羽口内に酸素噴射ノズルを配置し、この酸素噴射ノズルから炉内に向けて酸素を噴射し、その外側から熱風を噴射する方法、など任意の方法を採ることができる。
酸素富化率(=送風中の酸素濃度の増加分)に特に制限はないが、送風酸素富化の効果を得るためには、一般には2vol%以上の酸素富化率とすることが好ましい。一方、酸素富化率が過剰であると、羽口前温度の上昇によって羽口抜熱量が徒に増大するとともに、羽口耐火物の溶損頻度が増大するおそれがある。また、炉径方向での温度分布が大きくなってガス流れの制御が困難になる等の問題を生じやすい。このため酸素富化率は50vol%程度を上限とするのが好ましい。
【0024】
図14は、羽口高さ位置での炉内径Dが2.8m、羽口突き出し長さLが0.4mの溶解炉を用い、算術平均粒径が120mm以下のコークスを使用し且つ送風酸素富化を行った操業において、羽口風速Vhとガス利用率ηとの関係を調べたものである。使用した溶解炉は羽口本数が8本であり、使用コークスの平均粒径:85mm、送風酸素富化率:8vol%、出銑量:45t/hの条件で操業を行った。この操業では、鉄源として鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物50mass%+鉄スクラップ50mass%を用いた。図14によれば、やはり(3)式を満足する羽口風速Vhの範囲において高いガス利用率ηが得られている。この結果から、算術平均粒径が120mm以下のコークスを用い且つ送風酸素富化する場合であっても、上記(3)式を満足することにより高いガス利用率ηが得られることが確認できる。
【0025】
また、送風酸素富化は生産量を高めるために有効な手段であり、したがって、本発明では、使用するコークスの粒径に関わりなく、上述した送風酸素富化を行ってもよい。
送風酸素富化を行うと熱風中のNの割合が少なくなるため着熱効率が上昇し、炉頂温度が低下する。炉頂温度が低下すると、腐食性ガスが結露して排ガス管の腐食が引き起こされたり、ダストが排出されずに炉内に蓄積し、ガス通気性が低下するなどの問題を生じる。ここで、炉頂温度が130℃を下回ると腐食性ガス(NOx,SOx)の結露などが生じやすくなるため、炉頂温度は130℃以上に維持されることが好ましい。ここで、炉頂温度とは炉頂出口における排ガス温度のことである。
【0026】
本発明では、送風酸素富化によって炉頂温度の低下が問題となる場合には、炉頂温度を確保するために、炉内に装入する鉄源(ここで、鉄源とは、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物、鉄系スクラップの1種以上を指す。以下同様)及び/又はコークスを事前に乾燥処理及び/又は予熱することが好ましく、その場合、例えば、炉頂温度が130℃以上に維持されるよう、鉄源及び/又はコークスを乾燥処理及び/又は予熱する。炉装入時における原料(鉄源及び/又はコークス)の水分含有率が低いほど、また原料温度が高いほど炉頂温度を高くすることができる。
【0027】
また、鉄源及び/又はコークスを事前に乾燥処理及び/又は予熱する際、下記(4)式を満足するように乾燥処理及び/又は予熱することが好ましい。
ΔTs+(2×ΔTc×Co)/1000+50×ΔWs+(50×Co×ΔWc)/1000
≧GTt−GTm …(4)
但し、
ΔTs(℃):予熱による鉄源温度の上昇幅(但し、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの両方を予熱する場合には、両者の配合割合に応じた加重平均値)
ΔTc(℃):予熱によるコークス温度の上昇幅
ΔWs(mass%):乾燥処理及び/又は予熱による鉄源水分含有率の低下幅(但し、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの両方を乾燥処理及び/又は予熱する場合には、両者の配合割合に応じた加重平均値)
ΔWc(mass%):乾燥処理及び/又は予熱によるコークス水分含有率の低下幅
Co(kg/溶銑ton):コークス比
GTt(℃):炉頂部における目標排ガス温度
GTm(℃):炉頂部における実績排ガス温度
【0028】
鉄源及び/又はコークスを事前に乾燥処理及び/又は予熱するに当たり、炉頂温度を測定し、この実績炉頂温度に基づいて上記(4)式にしたがい乾燥処理及び/又は予熱することにより、炉頂温度を目標温度、すなわち腐食性ガスが結露しない温度或いはダストの排出が円滑になされる温度とすることができる。
なお、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物、鉄系スクラップの両方を予熱する場合、両者の予熱による温度上昇幅が異なることがあるので、ΔTsは両者の配合割合に応じた加重平均値とする。同じく、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物、鉄系スクラップの両方を乾燥処理及び/又は予熱する場合、両者の乾燥処理及び/又は予熱による鉄源水分含有率の低下幅が異なることがあるので、ΔWsは両者の配合割合に応じた加重平均値とする。
【0029】
ここで、上記(4)式は、炉装入物の潜顕熱の差(炉装入物温度、水分蒸発熱)が排ガス温度の差になって現れることを関連づけたものである。上記(4)式において、左辺第一項は予熱による鉄源顕熱上昇分であり、1℃の上昇で排ガス温度は1℃の上昇が見込まれる。左辺第二項は予熱によるコークス顕熱上昇分であり、これも1℃の上昇で排ガス温度は1℃の上昇が見込まれる。但し、このコークス顕熱上昇分はコークス比により変化するため、コークス比を考慮するとともに、排ガス温度への影響も考慮して係数を掛けている。左辺第三項は乾燥処理又は予熱による鉄源の水分蒸発熱分であり、排ガス温度への影響を考慮して係数を掛けている。左辺第四項は乾燥処理又は予熱によるコークスの水分蒸発熱分であり、コークス比により変化するためコークス比を考慮するとともに、排ガス温度への影響も考慮して係数を掛けている。
鉄源やコークスを事前に乾燥処理又は予熱する方法に特別な制限はなく、例えば、乾燥処理は、適当な熱源を用いて乾燥してもよいし、屋根付きヤードで長期間保管して自然乾燥を行ってもよい。また、予熱はロータリーキルン等の加熱設備を用いて行ってもよい。
【0030】
以下、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物の構成成分や製法などについて、それらの好ましい実施形態を説明する。
前記鉄含有ダストは、酸化鉄及び/又は金属鉄を含むダストであり、その種類に特に制限はないが、代表的なものとしては、鉄鋼製造プロセスで生じる製鋼ダストを挙げることができる。この製鋼ダストには、溶銑予備処理工程で生じる溶銑予備処理ダスト、転炉脱炭工程で生じる転炉ダスト、電気炉で生じる電気炉ダストなどが含まれる。これらの製鋼ダストは、製鋼工程で発生した排ガスから集塵することにより回収されたものである。また、これらの中でも、転炉脱炭工程で生じる転炉ダスト、いわゆるOGダストが、不純物の含有量が少なく、したがって鉄含有量が高いため特に好ましい。また、製鋼ダスト以外の鉄含有ダストとしては、例えば、高炉ダスト、圧延ダストなどがある。
また、前記鉄含有スラッジは、酸化鉄及び/又は金属鉄を含むスラッジであり、その種類に特に制限はないが、上述したような各種ダストが湿式集塵機で捕集されることでスラッジ化したものが、代表例として挙げられる。
【0031】
さきに述べたように、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物は、一般には、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジに水硬性バインダーを配合し、さらに必要に応じて還元用の炭材粉などを配合した原料に水を加えて混合した後、成形し、この成形物を水和硬化させることにより得られる。
前記水硬性バインダーとしては、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメント、フライアッシュセメントなどの各種セメント、高炉水砕スラグ微粉末、生石灰などの1種以上を用いることができる。原料中の水硬性バインダーの配合量は、強度の発現及びスラグ生成量の抑制の観点から、一般に2〜25mass%程度とすることが好ましい。
【0032】
前記炭材粉とは炭素を主成分とする粉体のことであり、竪型溶解炉中で酸化鉄の還元材となる。一般に、製鉄用の竪型溶解炉では還元材として塊コークスが用いられるが、塊コークスよりもコークス粉などの炭材粉の方が価格が安く、コスト的に有利なことに加え、酸化鉄と炭素の接触面積が増大するため、酸化鉄の還元反応も速やかに進行する利点がある。炭材粉としては、コークス粉、石炭粉(好ましくは無煙炭粉)、プラスチック粉などの1種以上を用いることができるが、特に、コークス粉などのように揮発分が少ないものが好ましい。また、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物中に大きな炭材が存在すると、その部分から亀裂が生じ、強度を低下させる原因となるため、炭材粉は粒径3mm以下が好ましい。原料中の炭材粉の配合量は、一般に2〜25mass%程度が好ましい。
【0033】
また、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物の原料中には、上述した鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジ、水硬性バインダーおよび炭材粉以外の材料を必要に応じて適宜配合してもよい。例えば、硬化速度調整剤、界面活性剤、ベントナイト、さらには、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物の圧縮強度を高めるための塩化物、原料に適度な粒度分布を与えて成型性を高めるための材料として焼結篩下粉、ミルスケールなどの鉄含有粉粒物、スラグの塩基度を調整するための石灰石、硅石などの粉粒物などの1種以上を配合してもよい。
また、生成するスラグ量をなるべく少なくするという観点から、原料中でのSiO、Al、CaO、MgOの合計量を25mass%以下とすることが好ましい。当然、これら成分は水硬性バインダーなどに含有されるものも含まれる。
【0034】
水硬性バインダーを用いて鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物を得るには、上述した原料に水を加えて混合した後、成形し、この成形物を水和硬化させる。
水の量は原料の配合によっても異なるが、成形時に圧縮しても水がしみ出てこない最大水量が望ましい。定量的には、JIS−A−1101(コンクリートのスランプ測定方法)に準じた測定においてスランプが0である最大水量となるように調整することが好ましい。水の量が少なすぎると適切に成形できず、また水硬性バインダーの硬化も進行しない。一方、水の量が多すぎて成形時に水がしみ出てくると、その水の処理などに特別な対応が必要になるからである。
【0035】
成形工程は、型枠を用いた成形、押し出し成形、ロールプレス成形など任意の方式で行うことができるが、成形物を高密度にすると鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物は高強度化する傾向があるため、できるだけ高密度化に成形することが好ましい。このため原料と水の混合物を圧縮成形し、または加振しつつ圧縮成形することが好ましい。具体的には、ブリケット成形機、プレス成形機、押出成形機などのような圧縮成形機や、これに加振機能を持たせたものなどを用いて成形することが好ましい。
成形物の形状は任意であるが、炉に装入した際の粉化をなるべく抑えるために角部が少ない方が好ましい。また、成形物の大きさも任意であるが、あまり小さいと竪型溶解炉に装入した際に炉の圧力損失を増大させ、一方、あまり大きいと竪型溶解炉に装入した際に塊成化物の中心部の昇温遅れによる還元・溶解遅れを生じるので、一般には容積で20〜2000cc程度のサイズが好ましい。
【0036】
原料と水の混合物を成形して得られた成形物は、水硬性バインダーにより水和硬化させるため、一定期間養生させる。この養生の方法や期間は任意であり、例えば、蒸気による一次養生を行った後、大気下での二次養生を行ってもよい。養生期間は、養生スペースや生産性などの面からはなるべく短い方が好ましいが、養生後の必要強度に応じて適宜選択すればよい。一般には1〜7日間程度が好ましい。
また、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物としては、上述したような水硬性バインダーを用いて成形体を水和硬化させる製法以外の方法で製造されたものでもよい。例えば、水硬性バインダー以外のバインダー(例えば、糖蜜や有機バインダー)を用いて成形体を固化させることにより得られたものでもよい。
【実施例】
【0037】
羽口高さ位置での炉内径Dが2.1mの竪型溶解炉を用い、羽口突き出し長さLが0.1〜0.6m、羽口風速Vhが40〜180m/sの範囲で操業した。本実施例では、鉄源として鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物のみを用いる場合と、鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物と鉄系スクラップとを併用する場合のそれぞれについて操業を行った。
鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物としては、次のようなものを用いた。転炉OGダスト70mass%、高炉ダスト30mass%の割合で配合した鉄含有ダストに、水硬性バインダーであるポルトランドセメント(配合量8mass%)を配合した粉状原料に水を加えてミキサーでよく混練した後、圧縮成形して直径100mm、高さ110mmの円柱状の成形体とし、この成形体を放置(養生)して鉄含有ダスト/スラッジ塊成化物とした。また、鉄系スクラップとしては、H2をシュレッダーにかけ、異物を除去したものを用いた。
各操業での製造条件と結果(ガス利用率)を表1に示す。この実施例では、使用するコークス粒径(算術平均粒径)や酸素富化率を変えた条件でも操業を行ったが、本発明条件で操業することにより、本発明条件外で操業を行う場合(比較例)に較べて10%程度も高いガス利用率が得られている。
【0038】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明で使用する竪型溶解炉とその基本的な操業形態を模式的に示す説明図
【図2】図1の竪型溶解炉の羽口の拡大図
【図3】炉径が小さい竪型溶解炉と炉径が大きい竪型溶解炉のガス流れの違いを示す説明図
【図4】炉内径が異なる竪型溶解炉の半径方向位置におけるガス流速比を示す説明図
【図5】竪型溶解炉(羽口径:130mm)を用いた操業において、羽口風速Vhと送風圧力及び出銑量との関係を示すグラフ
【図6】竪型溶解炉(羽口径:108mm)を用いた操業において、羽口風速Vhと送風圧力及び出銑量との関係を示すグラフ
【図7】炉内径Dが2.8mであって、羽口突き出し長さLが各々0.1m、0.4m、0.5m、0.6mである竪型溶解炉を用いた操業において、羽口風速Vhとガス利用率ηとの関係を示すグラフ
【図8】図7において高いガス利用率ηが得られ、且つ(1)式及び(2)式の条件を満足する羽口突き出し長さLと羽口風速Vhの範囲を示すグラフ
【図9】炉内径Dが2.1mであって、羽口突き出し長さLが各々0.1m、0.4m、0.6mである竪型溶解炉を用いた操業において、羽口風速Vhとガス利用率ηとの関係を示すグラフ
【図10】図9において高いガス利用率ηが得られ、且つ(1)式及び(2)式の条件を満足する羽口突き出し長さLと羽口風速Vhの範囲を示すグラフ
【図11】炉内径Dが3.5mであって、羽口突き出し長さLが各々0.1m、0.4m、0.6mである竪型溶解炉を用いた操業において、羽口風速Vhとガス利用率ηとの関係を示すグラフ
【図12】図11において高いガス利用率ηが得られ、且つ(1)式及び(2)式の条件を満足する羽口突き出し長さLと羽口風速Vhの範囲を示すグラフ
【図13】算術平均粒径がそれぞれ160mmと65mmのコークスを用いて操業を行った場合の炉高方向でのガス組成分布の一例を示す説明図
【図14】炉内径Dが2.8m、羽口突き出し長さLが0.4mである竪型溶解炉を用い、算術平均粒径が120mm以下のコークスを使用し且つ送風酸素富化を行った操業において、羽口風速Vhとガス利用率ηとの関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0040】
1 原料装入部
2 羽口
3 熱風管
4 排ガス出口
5 出銑口
6 炉内壁
20 羽口管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型溶解炉において、炉頂部から鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物とコークスを装入し、炉下部に設けられた複数の羽口から熱風を吹き込み、コークスの燃焼熱で前記塊成化物を溶解することにより溶銑を製造する方法であって、
下記(1)〜(3)式を満足する条件で羽口から熱風を吹き込むことを特徴とする竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
Vh≦220 …(1)
L≦0.7 …(2)
35.7×D≦Vh+50×L≦85.7×D …(3)
ただし、
Vh(Nm/sec):羽口先端部での熱風流速
L(m):炉内壁から炉内に突き出た羽口管部分の長さ
D(m):羽口高さ位置での炉内径
【請求項2】
炉頂部からさらに鉄系スクラップを装入し、これを鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物とともに溶解して溶銑を製造することを特徴とする請求項1に記載の竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
【請求項3】
算術平均粒径が120mm以下のコークスを用いるとともに、熱風に酸素を富化することを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
【請求項4】
炉内に装入する鉄源(ここで、鉄源とは、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの1種以上を指す。)及び/又はコークスを事前に乾燥処理及び/又は予熱することを特徴とする請求項3に記載の竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
【請求項5】
熱風に酸素を富化するとともに、炉内に装入する鉄源(ここで、鉄源とは、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの1種以上を指す。)及び/又はコークスを事前に乾燥処理及び/又は予熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
【請求項6】
鉄源及び/又はコークスを、下記(4)式を満足するように乾燥処理及び/又は予熱することを特徴とする請求項4又は5に記載の竪型溶解炉を用いた溶銑製造方法。
ΔTs+(2×ΔTc×Co)/1000+50×ΔWs+(50×Co×ΔWc)/1000
≧GTt−GTm …(4)
但し、
ΔTs(℃):予熱による鉄源温度の上昇幅(但し、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの両方を予熱する場合には、両者の配合割合に応じた加重平均値)
ΔTc(℃):予熱によるコークス温度の上昇幅
ΔWs(mass%):乾燥処理及び/又は予熱による鉄源水分含有率の低下幅(但し、鉄含有ダスト及び/又は鉄含有スラッジの塊成化物、鉄系スクラップの両方を乾燥処理及び/又は予熱する場合には、両者の配合割合に応じた加重平均値)
ΔWc(mass%):乾燥処理及び/又は予熱によるコークス水分含有率の低下幅
Co(kg/溶銑ton):コークス比
GTt(℃):炉頂部における目標排ガス温度
GTm(℃):炉頂部における実績排ガス温度

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−13682(P2010−13682A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172874(P2008−172874)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】