説明

端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法

【課題】端末止水、防水及び防食処理にあたり、形状が大きくなり過ぎてしまうことを防止することが可能な端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法を提供する。
【解決手段】電線被覆11を取り除いて露出した導体部分12を端子20で圧着した端子付き電線1の端末止水、防水及び防食方法であって、熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、エラストマー、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性の部材31を、導体部分11を端子20で圧着した圧着部に設置する設置工程と、設置工程により部材31が設置された圧着部を包むように且つ端子本体部20aを包まないように、熱収縮チューブ32を被せる被覆工程と、被覆工程により被せられた熱収縮チューブ32を加熱して収縮させる加熱工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線被覆を取り除いて露出した導体部分を端子で圧着した端子付き電線が知られている。このような端子付き電線には、端子圧着部分をホットメルトモールディングすることにより防水を図ったものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、端子圧着部分を取り囲むように金型を取り付け、金型内に発泡ウレタンを注入することにより防水を図った端子付き電線についても提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、端子付き電線の端子圧着部の周囲にシール剤を塗布し、シール剤ごと熱収縮チューブで覆って熱収縮させることにより、防水を図った端子付き電線についても提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−286385号公報
【特許文献2】特開2007−52999号公報
【特許文献3】特開2002−25647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2の端子付き電線では、ホットメルトや発泡ウレタンを用いるため、その形状が大きくなってしまう。また、特許文献3に記載の端子付き電線についても熱収縮チューブが被さることにより、その形状が大きくなってしまう。このため、端子付き電線をコネクタに差し込む場合、端子収容室に端子付き電線が入らなくなってしまう。そこで、コネクタの端子収容室を大きくすることが考えられるが、規格などの問題から端子収容室を大きくすることは困難である。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、端末止水、防水及び防食処理にあたり、形状が大きくなり過ぎてしまうことを防止することが可能な端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法は、電線被覆を取り除いて露出した導体部分を端子で圧着した端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法であって、熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、エラストマー、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性の部材を、導体部分を端子で圧着した圧着部に設置する設置工程と、設置工程により部材が設置された圧着部を包むように且つ端子本体部を包まないように、熱収縮チューブを被せる被覆工程と、被覆工程により被せられた熱収縮チューブを加熱して収縮させる加熱工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
この端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法によれば、導体部分を端子で圧着した圧着部に絶縁性の部材を設置し、当該圧着部を包むように熱収縮チューブを被せ、熱収縮チューブを加熱して収縮させるため、絶縁性の部材により端末止水処理が施されると共に、熱収縮チューブにより防水及び防食処理が施されることとなる。さらに、熱収縮チューブが端子本体部を包まないようにされているため、端子本体部に熱収縮チューブが被さって全体形状が大きくなって、端子収容室に入らなくなってしまう事態についても防止できる。従って、端末止水、防水及び防食処理にあたり、形状が大きくなり過ぎてしまうことを防止することができる。
【0010】
また、端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法において、設置工程は、熱可塑性樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された熱溶融性の接着剤シートを圧着部に載置する載置工程であることが好ましい。
【0011】
この端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法によれば、熱溶解性の接着剤シートを圧着部に載置するため、熱収縮チューブを熱収縮させる工程において接着剤シートについても溶融させることができ、製造工数の低減を図ることができる。
【0012】
また、端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法において、設置工程は、熱可塑性樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された熱溶融性の接着剤を圧着部に塗布する塗布工程であることが好ましい。
【0013】
この端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法によれば、熱溶融性接着剤を圧着部に塗布するため、熱収縮チューブを熱収縮させる工程において熱溶融性接着剤についても溶融させて芯線に浸透させることができ、製造工数の低減を図ることができる。
【0014】
また、端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法において、設置工程は、シリコーンゴム、エラストマー、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された部材を射出成形により圧着部に接着させる射出成型工程であることが好ましい。
【0015】
この端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法によれば、保護部材を射出成形により圧着部に接着させるため、熱収縮チューブを被せる工程において保護部材がずれることを防止でき、一層確実に端末止水処理を施すことができる。
【0016】
また、端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法において、設置工程は、シリコーンゴム、エラストマー、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性のチューブを、端子圧着前に圧着部に被せる圧着前工程であることが好ましい。
【0017】
この端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法によれば、絶縁性のチューブを端子圧着前に圧着部に被せるため、チューブが端子加締めにより強固に端末に固定されることとなり、一層確実に端末止水処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、端末止水、防水及び防食処理にあたり、形状が大きくなり過ぎてしまうことを防止することが可能な端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法により作成された端子付き電線を示す構成図であって、(a)は完成品を示しており、(b)は分解状態を示している。
【図2】第2実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法により作成された端子付き電線を示す構成図であって、分解状態を示している。
【図3】第3実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法により作成された端子付き電線を示す構成図であって、分解状態を示している。
【図4】第4実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法を示す工程図であって、(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示し、(c)は第3工程を示している。
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法により作成された端子付き電線を示す構成図であって、(a)は完成品を示しており、(b)は分解状態を示している。
【0021】
図1(a)及び(b)に示すように、端子付き電線1は、電線10と端子20とを備え、電線10の被覆11を取り除いて露出した導体部分12を端子20のバレル部21を加締めることにより圧着したものである。なお、端子20は、電線10の被覆11を加締める被覆バレル部22についても有している。
【0022】
また、本実施形態において端子付き電線1は、熱溶融性接着剤シート(絶縁性の部材)31と熱収縮性チューブ32とを備え、熱収縮チューブ32が圧着部に被せられることによって防食及び防水を図っている。また、熱溶融性接着剤シート31により端末止水処理が施されている。
【0023】
熱溶融性接着剤シート31は、熱可塑性樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性の部材である。
【0024】
ここで、ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、及び、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。さらに、エチレン系共重合体としては、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレンブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び、エチレン−エチルアクリレート共重合体などが挙げられる。
【0025】
なお、Al電線端部の金属端子(064端子)を用いた場合、熱溶融性接着剤シート31としては、例えばタイコ製S−1048テープ(幅1mm、長さ15mm、肉厚0.06mm)を用いることができる。また、熱収縮チューブ32としては、平河ヒューテック製HIT−TUBE EG3(サイズ1.5mm(内径1.9))や、エイシンインターナショナル製H−2(CB)(収縮前内径1.6mm)などを用いることができる。
【0026】
次に、本実施形態に係る端子付き電線1の端末止水、防水及び防食方法について説明する。まず、電線10の被覆11を皮剥ぎして露出した導体部分12をバレル部21によって加締め、且つ、被覆11を被覆バレル部22によって加締めておく。
【0027】
次いで、導体部分12を加締めたバレル部21上に熱溶融性接着剤シート31を載置(設置)する。その後、熱溶融性接着剤シート31が載置された圧着部を包むように且つ端子本体部20aを包まないように、熱収縮チューブ32を被せる。その後、160℃のヒートガンにて10秒程度行うことにより、熱収縮チューブ32を加熱して収縮させる。
【0028】
これにより、熱溶融性接着剤シート31によって端末止水処理が施されると共に、熱収縮チューブ32により防水及び防食処理が施されることとなる。特に、熱収縮チューブ32が端子本体部20aを包まないようにされているため、端子本体部20aに熱収縮チューブ32が被さって全体形状が大きくなって、端子収容室に入らなくなってしまう事態についても防止できる。
【0029】
より説明すると、特許文献3に記載の端子付き電線では圧着部よりも端子の先端側に円形状の突起部が形成されており、熱収縮チューブが突起部に被さる構成となっている。このため、突起部という形状の大きなものが端子に存在するうえに、この突起部に熱収縮チューブが被さってしまい、一層形状が大きくなってしまう。ところが、本実施形態に係る端子付き電線1では突起部等がなく端子20の形状変更の必要もなく、形状が大きくなり過ぎないようになっている。
【0030】
次に、本実施形態に係る端末止水、防水及び防食方法と、従来技術と差異を説明する。まず、本実施形態においては端末止水、防食・防水処理が施された後、大きさは約0.2mm程度とすることができる。これに対し、特許文献1に記載の技術の場合、大きさは約2.0〜10mmとなってしまう。また、特許文献2に記載の技術の場合、大きさは0.1〜10mmとなってしまう。このため、本実施形態に係る端末止水、防水及び防食方法では、形状が大きくなり過ぎることもない。これにより、コネクタの端子収容室の形状を変更する必要もない。
【0031】
さらに、本実施形態において端末止水、防食・防水処理が施された後、加工時間は約5〜15秒とすることができる。これに対し、特許文献1に記載の技術の場合、加工時間は約15〜60秒であり、特許文献2に記載の技術の場合、加工時間は10〜30秒となってしまう。
【0032】
また、本実施形態では形状・膜圧保証は容易であるのに対し、特許文献2に記載の技術によるものにおいて形状・膜圧保証はできない、専用の設備によりできる、又は、確認保証時間が長い。このため、本実施形態に係る端末止水、防水及び防食方法では、形状・膜厚保証が容易とすることができる。さらに、本実施形態に係る端子付き電線10は摩耗性にも優れている。
【0033】
このようにして、本実施形態に係る端子付き電線1の端末止水、防水及び防食方法によれば、導体部分12を端子20で圧着した圧着部に絶縁性の部材31を設置し、当該圧着部を包むように熱収縮チューブ32を被せ、熱収縮チューブ32を加熱して収縮させるため、絶縁性の部材31により端末止水処理が施されると共に、熱収縮チューブ32により防水及び防食処理が施されることとなる。さらに、熱収縮チューブ32が端子本体部20aを包まないようにされているため、端子本体部20aに熱収縮チューブ32が被さって端子本体部自体20aの形状が大きくなって、端子収容室に入らなくなってしまう事態についても防止できる。従って、端末止水、防水及び防食処理にあたり、形状が大きくなり過ぎてしまうことを防止することができる。
【0034】
また、熱溶解性の接着剤シート31を圧着部に載置するため、熱収縮チューブ32を熱収縮させる工程において接着剤シート31についても溶融させることができ、製造工数の低減を図ることができる。
【0035】
さらには、本実施形態において熱溶融性接着剤シート31として熱可塑性樹脂の1つであるホットメルトを用いた場合、その量が少量で済むため、冷却時間がほぼ不要である。
【0036】
さらに、従来の設備を流用又は改良をするだけでよく、専用の設備を要しない。また、接着剤をシート化しているため、接着剤が流れ落ちることがない。また、熱溶融性接着剤シート31を部品化することで、取り扱いが容易であり、管理等も容易である。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法は第1実施形態のものと同様であるが、一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0038】
図2は、第2実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法により作成された端子付き電線を示す構成図であって、分解状態を示している。なお、完成状態は外観において図1(a)にものと同様であるため、図示を省略する。
【0039】
図2に示すように、端子付き電線2は、熱溶融性接着剤シート31に代えて、熱溶融性接着剤(絶縁性の部材)33を備えている。熱溶融性接着剤33は、熱溶融性接着剤シート31と同様に、熱可塑性樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性の部材である。
【0040】
次に、本実施形態に係る端子付き電線2の端末止水、防水及び防食方法について説明する。まず、電線10の被覆11を皮剥ぎして露出した導体部分12をバレル部21によって加締め、且つ、被覆11を被覆バレル部22によって加締めておく。
【0041】
次いで、導体部分12を加締めたバレル部21上に熱溶融性接着剤33を塗布(設置)する。このとき、端子20の内側に熱溶融性接着剤33を塗布する。その後、熱溶融性接着剤33が塗布された圧着部を包むように且つ端子本体部20aを包まないように、熱収縮チューブ32を被せる。その後、140℃のヒートガンにて5秒程度行うことにより、熱収縮チューブ32を加熱して収縮させる。
【0042】
これにより、熱溶融性接着剤33によって端末止水処理が施されると共に、熱収縮チューブ32により防水及び防食処理が施されることとなる。特に、熱収縮チューブ32が端子本体部20aを包まないようにされているため、端子本体部20aに熱収縮チューブ32が被さって全体形状が大きくなって、端子収容室に入らなくなってしまう事態についても防止できる。
【0043】
なお、第2実施形態に係る端末止水、防水及び防食方法と、従来技術と差異は、第1実施形態に示したものと同様である。
【0044】
このようにして、第2実施形態に係る端子付き電線2の端末止水、防水及び防食方法によれば、第1実施形態と同様に、端末止水、防水及び防食処理にあたり、形状が大きくなり過ぎてしまうことを防止することができる。
【0045】
さらに、第2実施形態によれば、熱溶融性接着剤33を圧着部に塗布するため、熱収縮チューブ32を熱収縮させる工程において熱溶融性接着剤33についても溶融させて芯線に浸透させることができ、製造工数の低減を図ることができる。
【0046】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法は第1実施形態のものと同様であるが、一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0047】
図3は、第3実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法により作成された端子付き電線を示す構成図であって、分解状態を示している。なお、完成状態は外観において図1(a)にものと同様であるため、図示を省略する。
【0048】
図3に示すように、端子付き電線3は、熱溶融性接着剤シート31に代えて、絶縁性の保護部材(絶縁性の部材)34を備えている。保護部材34は、エラストマー、シリコーンゴム、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性の部材である。
【0049】
ここで、エラストマーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系エラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、及び、熱可塑性ポリアミドエラストマーなどが挙げられる。
【0050】
次に、本実施形態に係る端子付き電線3の端末止水、防水及び防食方法について説明する。まず、電線10の被覆11を皮剥ぎして露出した導体部分12をバレル部21によって加締め、且つ、被覆11を被覆バレル部22によって加締めておく。
【0051】
次いで、導体部分12を加締めたバレル部21上に保護部材34を射出成型(設置)する。このとき、端子20の凹部20bに保護部材34が入り込むように射出成型する。なお、図3において保護部材34は断面略L字状であり、L字形状を利用して、端末20の凹部20bに保護部材34が入り込むようにすると共にバレル部21を上方から包むようにすることができるが、形状はこれに限られるものではない。その後、保護部材34が射出成型された圧着部を包むように且つ端子本体部20aを包まないように、熱収縮チューブ32を被せる。その後、熱収縮チューブ32を加熱して収縮させる。
【0052】
これにより、保護部材34によって端末止水処理が施されると共に、熱収縮チューブ32により防水及び防食処理が施されることとなる。特に、熱収縮チューブ32が端子本体部20aを包まないようにされているため、端子本体部20aに熱収縮チューブ32が被さって全体形状が大きくなって、端子収容室に入らなくなってしまう事態についても防止できる。
【0053】
なお、第3実施形態に係る端末止水、防水及び防食方法と、従来技術と差異は、第1実施形態に示したものと同様である。
【0054】
このようにして、第3実施形態に係る端子付き電線3の端末止水、防水及び防食方法によれば、第1実施形態と同様に、端末止水、防水及び防食処理にあたり、形状が大きくなり過ぎてしまうことを防止することができる。
【0055】
さらに、第3実施形態によれば、保護部材34を射出成形により圧着部に接着させるため、熱収縮チューブ32を被せる工程において保護部材34がずれることを防止でき、一層確実に端末止水処理を施すことができる。
【0056】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法は第1実施形態のものと同様であるが、一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0057】
図4は、第4実施形態に係る端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法を示す工程図であって、(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示し、(c)は第3工程を示している。なお、完成状態は外観において図1(a)にものと同様であるため、図示を省略する。
【0058】
図4(c)に示すように、端子付き電線1は、熱溶融性接着剤シート31に代えて、絶縁性のチューブ(絶縁性の部材)35を備えている。チューブ35は、シリコーンゴム、エラストマー、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性の部材である。
【0059】
次に、本実施形態に係る端子付き電線4の端末止水、防水及び防食方法について説明する。まず、図4(a)に示すように、電線10の被覆11を皮剥ぎして露出した導体部分12にチューブ35を被せる。ここで、チューブ35は、端末止水のため有底筒状であることが望ましい。
【0060】
次いで、端子20のバレル部21をチューブ35上から加締め、且つ、被覆11を被覆バレル部22によって加締める。その後、チューブ35が被せられた圧着部を包むように且つ端子本体部20aを包まないように、熱収縮チューブ32を被せる。そして、熱収縮チューブ32を加熱して収縮させる。
【0061】
これにより、チューブ35によって端末止水処理が施されると共に、熱収縮チューブ32により防水及び防食処理が施されることとなる。特に、熱収縮チューブ32が端子本体部20aを包まないようにされているため、端子本体部20aに熱収縮チューブ32が被さって全体形状が大きくなって、端子収容室に入らなくなってしまう事態についても防止できる。
【0062】
なお、第4実施形態に係る端末止水、防水及び防食方法と、従来技術と差異は、第1実施形態に示したものと同様である。
【0063】
このようにして、第4実施形態に係る端子付き電線4の端末止水、防水及び防食方法によれば、第1実施形態と同様に、端末止水、防水及び防食処理にあたり、形状が大きくなり過ぎてしまうことを防止することができる。
【0064】
さらに、第4実施形態によれば、絶縁性のチューブ35を端子圧着前に圧着部に被せるため、チューブ35が端子加締めにより強固に端末に固定されることとなり、一層確実に端末止水処理を施すことができる。
【0065】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施形態を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1〜4…端子付き電線
10…電線
11…被覆
12…導体部分
20…端子
21…バレル部
22…被覆バレル部
31…熱溶融性接着剤シート
32…熱収縮性チューブ
33…熱溶融性接着剤
34…保護部材
35…チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線被覆を取り除いて露出した導体部分を端子で圧着した端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法であって、
熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、エラストマー、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性の部材を、導体部分を端子で圧着した圧着部に設置する設置工程と、
前記設置工程により前記部材が設置された圧着部を包むように且つ端子本体部を包まないように、熱収縮チューブを被せる被覆工程と、
前記被覆工程により被せられた熱収縮チューブを加熱して収縮させる加熱工程と、
を有することを特徴とする端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法。
【請求項2】
前記設置工程は、熱可塑性樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された熱溶融性の接着剤シートを前記圧着部に載置する載置工程である
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法。
【請求項3】
前記設置工程は、熱可塑性樹脂、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された熱溶融性の接着剤を前記圧着部に塗布する塗布工程である
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法。
【請求項4】
前記設置工程は、シリコーンゴム、エラストマー、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された部材を射出成形により前記圧着部に接着させる射出成型工程である
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法。
【請求項5】
前記設置工程は、シリコーンゴム、エラストマー、並びに、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体の少なくとも1つを主成分とする樹脂成分のうち、いずれか1つにより構成された絶縁性のチューブを、前記端子圧着前に前記圧着部に被せる圧着前工程である
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線の端末止水、防水及び防食方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−94340(P2012−94340A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240063(P2010−240063)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】