説明

端末位置通報システム

【課題】 中央局への電波到達範囲外に存在する端末局も含め、無線通信ネットワーク内に存在する端末局の最新の位置情報を少ない遅れ時間で表示する端末位置通報システムを得る。
【解決手段】 中央局2及び複数の端末局3が無線通信ネットワーク内でマルチキャストの通信グループを構成し、各端末局3は中央局2に位置通報メッセージを送信する。このときに、各端末局3は、自領域内端末リスト35と中央局領域内端末リスト36とに登録されている端末局名の差異に基づいて中継可能な端末局3の存在を判定するとともに、中継用の位置通報メッセージを編集し、所定の時間間隔で定期的にマルチキャスト送信する。中央局3は、これら端末局からの位置通報メッセージに基づいて、各端末局3の位置及び電波状況をグラフィカルに表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央局及び複数の端末局が無線ネットワーク内でマルチキャストの通信グループを構成し、互いに移動しながら端末局の発する位置通報に基づいてこれら端末局の位置を中央局に表示する端末位置通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動体位置通報装置により自己位置を測位し、無線を利用してその結果を例えば中央局等に通報することによって、中央局側から各種のサービスを提供するように構成した、業務支援システムとしての端末位置通報システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のシステムでは、例えば、業務を遂行する各作業者が無線通信端末としての移動体位置通報装置を携行し、この装置が現在位置を測位してその結果を無線通信回線経由で中央局に通報する。中央局側は、これら位置通報を利用して、例えば各作業者の迅速な配備や派遣を実施するための支援情報など、状況に応じたサービスを様々な形態により提供する。また、通報する内容に例えば通信メッセージ等を加え、中央局側及び各作業者間で互いの最新の活動状況を把握し共有するのに利用するなど、情報交換の手段を含めて構成されることもある。
【0004】
このように、作業者の移動に伴って端末も移動する場合には、その通信手段として、従来より無線通信回線の利用を前提とすることが多く、安定した通信を確保できるように、通常は、既存の無線通信ネットワークインフラが利用される。しかし、諸活動においては、その活動地域や活動形態は限定されず、必ずしも既存の無線通信ネットワークインフラが利用できるとは限らない。特に、無線通信ネットワークインフラを利用できないような地域において活動する場合には、活動現場の状況に適応させて無線通信ネットワークを構成することが必要となる。
【0005】
近年提案されている無線アドホックネットワークは、このように無線通信ネットワークインフラを持たない、あるいはその利用が困難な場所における簡易なネットワークの構築手段として有効である。この無線アドホックネットワークは、互いに近接した距離範囲内に一時的に集合した無線通信端末間でデータの送受信を行なうための通信手段を提供するものである。そして、基地局やアクセスポイントを介在させることなく、無線通信端末相互間のデータ転送が可能なマルチホップ通信の形態をとっている。また、基地局等が存在せず、各無線通信端末も常に移動するので、ネットワークトポロジーが固定されない。このため、通信経路情報が管理されておらず、各無線通信端末は、通信開始に先立って通信相手方への通信経路を特定し、その後に通信を開始する。
【0006】
通信経路を特定するには、各無線通信端末が自ら通信経路の探索を行なう。探索の手法については種々のものが提案されているが、大別すると、プロアクティブ型とリアクティブ型の2つの方式に分類される。プロアクティブ型の方式としては、例えば、IETF(International Engineering Task Force)によるTBRPF(Topology Broadcast Based on Reverse−Path Forwarding)や、OLSR(Optimized Link State Routing)などがある。
【0007】
これらプロアクティブ型の方式では、非通信時にも常時周期的に近隣の無線通信端末同士が経路情報を交換することによって、それぞれが自身の持っている通信経路情報をあらかじめ決定し更新している。このため、無線通信端末は、常に最新の通信経路情報を有しており、データ送信要求の発生直後から送信を開始できるが、定期的に行なわれる通信経路情報の交換によって無線通信ネットワーク内の通信トラフィックが高くなる。
【0008】
一方、リアクティブ型の方式としては、同じくIETFによるAODV(Ad Hoc On Demand Distance Vector Routing)や、DSR(The Dynamic Source Routing)などがある。これらのリアクティブ型の方式では、データ通信の要求発生を契機にして通信経路の探索を開始するため、実際のデータ通信が開始されるまでに時間を要する。
【0009】
また、上記のような手法で通信経路探索を行なう際は、まず経路探索を要求した無線通信端末が経路要求パケットをブロードキャスト送信し、これを受信した無線通信端末がさらにブロードキャスト送信し、これらが連鎖的に繰り返されることによってネットワーク全体に経路要求パケットを到達させるフラッディングと呼ばれる方式による送信が行なわれる。このため、通信経路の探索が実行されると、そのたび毎にネットワーク内の通信トラフィックが増加する。
【0010】
このようなネットワーク内での通信経路探索において、より少ない通信トラフィックによって周辺の無線通信端末の情報を得るアドホックネットワークのルーティング方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に開示された手法では、各無線通信端末は、周辺の無線通信端末を検索する際に、自身が知っている周辺の無線通信端末の情報を送信するか否かの判断を行なってから、必要に応じてその情報を送信している。
【特許文献1】特開2004−48473号公報(第6ページ、図1)
【特許文献2】特開2004−32559号公報(第8ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
端末位置通報システムは、例えば災害の救援救助のための活動など、作業環境の厳しい諸活動において、無線端末を携行した作業者の状況や現場の状況等を中央局側で集約・把握するための情報交換手段として活用される。一方、より有効に活用するためには、既存の無線通信ネットワークインフラの利用と併せ、既存の通信インフラを利用できない地域でも円滑な活動を遂行できるように、独自の無線通信ネットワークを簡易に構築することも求められる。また、ネットワーク構築の際には、作業者の移動によって絶えず変化する電波環境の中で、中央局を含めたネットワーク内の各局の相互通信エリアを確保し、発信された通報を確実にあて先へ送達させる必要がある。
【0012】
しかしながら、例えば上述した無線アドホックネットワークを適用した場合には、各局間での通報の中継によって電波到達範囲外にある無線通信端末との通信を可能としたネットワークを構築できるものの、中継経路を探索する手法によっては、ネットワーク内のトラフィックが増大して高負荷状態が継続したり、あるいは通報が発生してから送信を開始するまでに時間を要するという課題があった。このため、対象領域内の作業者の最新の活動状況を少ない遅れ時間で中央局側に表示させることが困難であった。
【0013】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、中央局への電波到達範囲外に存在する端末局も含め、無線通信ネットワーク内に存在する端末局の最新の位置情報を少ない遅れ時間で表示する端末位置通報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の端末位置通報システムは、中央局及び複数の端末局が無線ネットワーク内でマルチキャストの通信グループを構成し、互いに移動しながら前記端末局の発する位置通報に基づいてこれら端末局の位置を前記中央局に表示する端末位置通報システムにおいて、前記中央局は、前記複数の端末局からの位置通報メッセージを受信する受信手段と、この受信手段で受信した前記位置通報メッセージに基づいて、前記複数の端末局の位置を表示する表示手段と、前記受信手段で受信した前記位置通報メッセージに基づいて、あらかじめ生成された自局と直接通信可能な領域に存在する前記端末局の局名一覧(中央局領域内端末リストと表す)を更新するリスト更新手段と、最新の前記中央局領域内端末リストを所定の時間間隔で定期的に前記通信グループ内にマルチキャスト送信する送信手段とを備え、前記複数の端末局のそれぞれは、自局の位置情報を取得する位置情報取得手段と、この位置情報取得手段からの自位置情報を含む位置通報メッセージを編集する編集手段と、この編集手段で編集した位置通報メッセージを所定の時間間隔で定期的に前記通信グループ内にマルチキャスト送信する送信手段と、他の端末局からの位置通報メッセージ、及び前記中央局からの中央局領域内端末リストを受信する受信手段と、この受信手段で受信した前記他の端末局からの位置通報メッセージに基づいて、自局と直接通信可能な領域に存在する他の前記端末局の局名一覧(自領域内端末リストと表す)を更新するリスト更新手段と、前記自領域内端末リストに含まれかつ前記受信手段で受信した前記中央局領域内端末リストに含まれない前記端末局の存在を判定して該当する端末局が存在する場合は、これら該当する端末局を中継の対象局として前記受信手段で受信したこれら中継の対象局からの位置情報を含めた前記位置通報メッセージの編集を前記編集手段に指示する中継判定手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中央局への電波到達範囲外に存在する端末局も含め、無線通信ネットワーク内に存在する端末局の最新の位置情報を少ない遅れ時間で表示する端末位置通報システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係る端末位置通報システムを実施するための最良の形態について、図1乃至図9を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明に係る端末位置通報システムの構成の一実施例を示す概念図である。この図1に示した端末位置通報システム1は、中央局2と、3台の端末局3、すなわち端末局A3a、端末局B3b、及び端末局C3cにより構成された事例を示している。また、これら各局は、無線ネットワーク内でマルチキャストの通信グループを構成し、互いに直接通信可能な電波到達範囲内に存在する。そして、端末局A3a、端末局B3b、及び端末局C3cから発せられる位置通報メッセージに基づいて、これら端末局の位置が中央局2に表示される。
【0018】
図2は、図1に例示した中央局2の一実施例を示すブロック図である。この中央局2は、送受信部21、位置情報表示部22、中央局領域内端末リスト管理部23、及び中央局領域内端末リスト24から構成されている。送受信部21は、端末局3からの位置通報メッセージを受信するとともに、中央局領域内端末リスト24を定期的に通信グループ内にマルチキャスト送信する。位置情報表示部22は、送受信部21で受信した端末局3からの位置通報メッセージに基づいて端末局3の位置を表示するとともに、これら端末局3との通信状況を、いずれもグラフィカルに表示する。
【0019】
中央局領域内端末リスト管理部23は、マルチキャストの通信グループを構成した端末局3の局名に基づいて、中央局領域内端末リスト24を生成するとともに、送受信部21で受信したこれら端末局3からの位置通報メッセージにより、この中央局領域内端末リスト24の内容を更新する。中央局領域内端末リスト24は、自局(中央局2)と直接通信可能な領域に存在する端末局3の局名一覧である。本実施例における中央局領域内端末リスト24の構成の一例を図3に示す。この事例では、中央局領域内端末リスト24は、マルチキャストの通信グループを構成した端末局名とあわせ、各局から受信した位置通報メッセージの受信時刻、位置情報、直接通信可/不可、及び電波の受信状況を含めて構成されている。
【0020】
図4は、図1に例示した端末局3の一実施例を示すブロック図である。この端末局3は、位置情報取得部31、メッセージ編集部32、送受信部33、端末局側リスト管理部34、自領域内端末リスト35、中央局領域内端末リスト36、及び中継判定部37から構成されている。
【0021】
位置情報取得部31は、自局の位置情報を継続的に取得し、メッセージ編集部32に送出する。本実施例においては、自局の位置情報は、GPSにより取得した緯度/経度としている。メッセージ編集部32は、位置情報取得部31からの位置情報を位置通報メッセージに編集して送受信部33に送出する。また、後述する中継判定部37の指示により、他の端末局3からの位置通報メッセージを中継する場合は、該当する端末局からの位置通報メッセージを含めた位置通報メッセージを編集して、同じく送受信部33に送出する。
【0022】
図5に、本実施例における位置通報メッセージの一例を示す。図5(a)は中継を行なわない場合の位置通報メッセージの一例であり、プリアンブル、自端末ID、送信時刻、自位置情報、及び誤り検出コードからなるデータパケットとしている。また、図5(b)は中継を行なう場合であり、図5(a)のパケット構成に、さらに、中継端末局ID及びその位置情報を加えた構成としている。送受信部33は、メッセージ編集部32からの位置通報メッセージを定期的に通信グループ内にマルチキャスト送信するとともに、中央局2からの中央局領域内端末リスト24、及び他の端末局3からの位置通報メッセージを受信する。
【0023】
端末局側リスト管理部34は、送受信部33で受信した他の端末局3からの位置通報メッセージにより、自局と直接通信可能な領域に存在する他の端末局の局名一覧である、自領域内端末リスト35を更新する。本実施例における自領域内端末リスト35の構成の一例を図6に示す。この事例では、自領域内端末リスト35は、位置通報メッセージを直接受信した端末局名に加え、メッセージ受信時刻及びその端末局の位置情報を含めて構成されている。あわせて、端末局側リスト管理部34は、送受信部33で受信した中央局からの中央局領域内端末リスト24を、自端末内の中央局領域内端末リスト36に格納する。
【0024】
中継判定部37は、自領域内端末リスト35、及び中央局領域内端末リスト36に基づいて、自局が中央局2に対して位置通報メッセージの中継を行なう端末局3の存在を判定し、該当する端末局が存在する場合は、メッセージ編集部32に対して、これら該当する端末局からの位置通報メッセージを含めたメッセージ編集を指示する。
【0025】
次に、前述の図1乃至図6、ならびに図7のフローチャート及び図8乃至図9の説明図を参照して、上述のように構成された本発明に係る端末位置通報システム1の動作を説明する。
【0026】
図7は、本発明に係る端末位置通報システム1の動作を説明するためのフローチャートである。はじめに、図1に例示したように、中央局2、端末局A3a、端末局B3b、及び端末局C3cの各局が互いに電波到達範囲内に存在し、無線通信ネットワーク内で相互に直接通信が可能な場合における、中央局2及び端末局3のそれぞれの動作について説明する。
【0027】
まず、中央局2側では、中央局領域内端末リスト管理部23において、マルチキャストの通信グループを構成した端末局3の局名に基づいて、初期設定としての中央局領域内端末リスト24が生成される。この場合には、図3に例示したように、3局の端末局、すなわち端末局A、端末局B、及び端末局Cが登録される(ST1)。次に、送受信部21において、各端末局からマルチキャスト送信された位置通報メッセージが受信されると、これら位置通報メッセージは送受信部21から位置情報表示部22、及び中央局領域内端末リスト管理部23に転送される(ST2)。
【0028】
位置情報表示部22は、受けとった位置情報メッセージに基づいて、各端末局の位置を表示・更新する。位置情報表示部22における各端末局の位置情報の表示例を図8(a)に示す。この事例では、各端末局との通信状況を表す記号を用いて、その位置をグラフィカルに表示している(ST3)。また、中央局領域内端末リスト管理部23は、受けとった位置通報メッセージの内容を参照し、中央局領域内端末リスト24の内容を更新する(ST4)。
【0029】
この後、更新された最新の中央局領域内端末リスト24は、送受信部21から所定の時間間隔で定期的に、通信グループ内にマルチキャスト送信される(ST5)。そして、動作の終了が指示されるまで、上記したST2〜ST5のステップが繰り返される(ST6)。
【0030】
次に、端末局3側の動作を説明する。なお、図1中の3局の端末局共、その動作は同様なので、図7のフローチャートでは、端末局A3a及び端末局B3bをこの図中に取り上げ、端末局A3aの動作を中心に説明する。
【0031】
端末局A3a側では、まず、位置情報取得部31において自局の位置情報が継続的に取得される。本実施例における位置情報は、GPSにより取得した自位置の緯度/経度としている。取得された位置情報は、メッセージ編集部32に送られる(ST11)。メッセージ編集部32は、この位置情報を受け取り、図5(a)に例示した位置通報メッセージを編集する(ST12)。編集された位置通報メッセージは、送受信部33から所定の時間間隔で定期的に、通信グループ内にマルチキャスト送信される(ST13A)。また、同様に端末局B3b、及び端末局C3cからもマルチキャスト送信される(ST13B、端末局Cは図示せず)。
【0032】
これら各端末局からの位置通報メッセージは、ST2のステップにおいて中央局2側で受信されるとともに、各端末局で相互に受信される。端末局A3aでは、送受信部33で受信された他端末局からの位置通報メッセージは、端末局側リスト管理部34に転送される(ST14A、及びST14B)。端末局側リスト管理部34は、受けとったこれら位置通報メッセージの内容を参照し、図6に例示した自領域内端末リスト35の内容を更新する(ST15)。
【0033】
これに続けて、送受信部33において、中央局からマルチキャスト送信された中央局領域内端末リストが受信されると、このリストは送受信部33から端末局側リスト管理部34に転送され、中央局領域内端末リスト36に格納される(ST16A、及びST16B)。
【0034】
この後、端末局A3aは、中継判定部37において、自局が中央局2に対して位置通報メッセージの中継が可能な他の端末局の存在を判定する。中継可能な端末局とは、自局とは直接通信可能な領域に存在し且つ中央局2と直接通信可能な領域には存在しない端末局である。すなわち、自領域内端末リスト35には含まれるが中央局領域内端末リスト36には含まれない(直接通信不可の)端末局である。中継判定部37は、自領域内端末リスト35と中央局領域内端末リスト36とに登録されている端末局名を比較する(ST17)。
【0035】
その結果、該当する局が存在する場合には(ST18のY)、メッセージ編集部32に対して、該当する端末局からの位置通報メッセージを含めた位置通報メッセージの編集を指示する。この指示がなされた場合には、次回の位置通報メッセージの編集時には、図5(b)に例示した位置通報メッセージが編集される(ST19)。なお、図1の事例では、各端末局はいずれも中央局と直接通信可能な領域に存在するため、中継の該当局はない(ST18のN)。そして、動作の終了が指示されるまで、上記したST11〜ST19のステップが繰り返される(ST20)。
【0036】
次に、図9に例示したように、端末局B3bが移動したことによって中央局2との直接通信が不可能になり、端末局A3aとは相互に直接通信が可能な場合における、中央局2及び端末局3の動作について説明する。なお、以下の説明では、前述した図1における場合との差異のみを説明する。
【0037】
この図9に例示した場合は、図7のフローチャートにおいて、端末局B3bのST13Bのステップでマルチキャスト送信された位置通報メッセージは、端末局A3aのST14Aのステップでは受信されるが、中央局2のST2のステップでは受信されない。このため、ST4のステップにおいて、中央局領域内端末リスト23中の端末局Bについては、直接通信不可として更新され、このリストがST5のステップでマルチキャスト送信される。
【0038】
端末局A3aは、ST16Aのステップで、この中央局領域内端末リスト23を受信すると、ST17のステップでの比較の結果、ST18のステップで中継可能な端末局として端末局B3bを抽出し、次回のメッセージ編集部32における位置通報メッセージの編集時に、ST14Aのステップで受信した端末局Bからの位置通報メッセージを含めて編集を行なう。このときに編集される位置通報メッセージは、図5(b)に例示したものとなる。
【0039】
この後、ST12のステップでメッセージ編集部32における新たな位置通報メッセージの編集が完了すると、この位置通報メッセージはST13Aのステップでマルチキャスト送信される。そして、中央局2はこの位置通報メッセージを受信後、ST3のステップで位置情報の表示を更新する。このときの位置情報示部22における各端末局の位置情報の表示例を図8(b)に示す。この事例では、中継により通信可能である端末局については、その旨を表す記号を用いて、その位置をグラフィカルに表示している。
【0040】
以上説明したように、本実施例においては、中央局及び複数の端末局が無線通信ネットワーク内でマルチキャストの通信グループを構成し、各端末局は中央局に位置通報メッセージを送信している。また、移動等によって中央局と直接通信可能でない端末局からの位置通報メッセージは、中央局と直接通信可能な他の端末局により中継されている。そして、中央局は、これら端末局からの位置通報メッセージに基づいて、各端末局の位置及び電波状況をグラフィカルに表示している。これにより、中央局への電波到達範囲外に存在する端末局も含めてその位置情報を表示することが可能な端末位置通報システムを得ることができる。
【0041】
また、各端末局は、自領域内端末リスト35と中央局領域内端末リスト36とに登録されている端末局名の差異に基づいて中継可能な端末局の存在を判定するとともに、中継用の位置通報メッセージを編集し、所定の時間間隔で定期的にマルチキャスト送信している。これにより、無線通信ネットワーク内のトラフィックを増大させることなく、中央局への電波到達範囲外に存在する端末局からの位置通報メッセージの中継経路を確保できるとともに、これら端末局の最新の位置情報を少ない遅れ時間で表示する端末位置通報システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る端末位置通報システムの構成の一実施例を示す概念図。
【図2】図1に例示した中央局2の一実施例を示すブロック図。
【図3】中央局領域内端末リスト24の構成の一例を示す説明図。
【図4】図1に例示した端末局3の一実施例を示すブロック図。
【図5】位置通報メッセージの一例を示す説明図。
【図6】自領域内端末リスト35の構成の一例を示す説明図。
【図7】本発明に係る端末位置通報システムの動作を説明するためのフローチャート。
【図8】位置情報表示部22における各端末局の位置情報の表示の一例を示す説明図。
【図9】端末局が移動した場合における本発明に係る端末位置通報システムの構成の一実施例を示す概念図。
【符号の説明】
【0043】
1 端末位置通報システム
2 中央局
3 端末局
21、33 送受信部
22 位置情報表示部
23 中央局領域内端末リスト管理部
24、36 中央局領域内端末リスト
31 位置情報取得部
32 メッセージ編集部
34 端末局側リスト管理部
35 自領域内端末リスト
37 中継判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央局及び複数の端末局が無線ネットワーク内でマルチキャストの通信グループを構成し、互いに移動しながら前記端末局の発する位置通報に基づいてこれら端末局の位置を前記中央局に表示する端末位置通報システムにおいて、
前記中央局は、
前記複数の端末局からの位置通報メッセージを受信する受信手段と、
この受信手段で受信した前記位置通報メッセージに基づいて、前記複数の端末局の位置を表示する表示手段と、
前記受信手段で受信した前記位置通報メッセージに基づいて、あらかじめ生成された自局と直接通信可能な領域に存在する前記端末局の局名一覧(以下、中央局領域内端末リストと表す)を更新するリスト更新手段と、
最新の前記中央局領域内端末リストを所定の時間間隔で定期的に前記通信グループ内にマルチキャスト送信する送信手段とを備え、
前記複数の端末局のそれぞれは、
自局の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
この位置情報取得手段からの自位置情報を含む位置通報メッセージを編集する編集手段と、
この編集手段で編集した位置通報メッセージを所定の時間間隔で定期的に前記通信グループ内にマルチキャスト送信する送信手段と、
他の端末局からの位置通報メッセージ、及び前記中央局からの中央局領域内端末リストを受信する受信手段と、
この受信手段で受信した前記他の端末局からの位置通報メッセージに基づいて、自局と直接通信可能な領域に存在する他の前記端末局の局名一覧(以下、自領域内端末リストと表す)を更新するリスト更新手段と、
前記自領域内端末リストに含まれかつ前記受信手段で受信した前記中央局領域内端末リストに含まれない前記端末局の存在を判定して該当する端末局が存在する場合は、これら該当する端末局を中継の対象局として前記受信手段で受信したこれら中継の対象局からの位置情報を含めた前記位置通報メッセージの編集を前記編集手段に指示する中継判定手段と
を備えたことを特徴とする端末位置通報システム。
【請求項2】
前記自局の位置情報をGPSにより取得することを特徴とする請求項1に記載の端末位置通報システム。
【請求項3】
前記表示手段は、前記複数の端末局の位置とともに、これら端末局との通信状況をいずれもグラフィカルに表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端末位置通報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−246068(P2006−246068A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59400(P2005−59400)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】