説明

粘着材形成用感光性樹脂組成物

【課題】 ポリエステルに対して特異的に粘着性を有する粘着材形成用感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】 数平均分子量が1000以上50万以下の樹脂(a)、数平均分子量が100以上1000未満の重合性不飽和基を有する有機化合物(b)を含有する感光性樹脂組成物であって、前記樹脂(a)が分子主鎖中にカーボネート結合およびウレタン結合を有する化合物を、樹脂(a)全体量の20wt%以上100wt%以下含有し、光硬化されることを特徴とする粘着材形成用感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムに対し、特異的に粘着性を有する粘着材形成用感光性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルのフィルム材料がフレキシブルな支持体として広く用いられている。例えば印刷分野、特にフレキソ印刷分野においては、寸法安定性を有するPETフィルムが印刷版を形成する際のフレキシブル支持体として大量に用いられている。
シート状印刷版を用いて印刷する場合に、印刷機の版胴上にシート状印刷版を固定する際には、先ず版胴上、あるいは版胴上に貼り付けたクッション層上に両面接着テープを貼り付け、その上に印刷版を正確に位置合わせしながら取り付ける作業が行われている。しかしながら、用いられている両面接着テープは、常に粘着性を有し、表面タックの高いものである。したがって、大気中のごみや塵が表面に付着した場合、簡単に除去することができず、場合によっては、ごみや塵が付着したまま印刷版が取り付けられ、版厚精度を低下させる要因となる。版厚精度の低下は、印刷物の品質の低下にもつながる。
【0003】
また、基材表面の微細な凹凸に追従できるように液状の硬化型粘着剤が一般的に用いられている。更に、成形に要する時間が極めて短くすむ成形性の容易さから、感光性を有する粘着剤が検討され、光硬化型粘着剤として知られている。例えば、特許文献1(特開2001−279218号公報)には、光硬化型粘着剤組成物と光硬化型粘着シートに関する記載がある。この特許文献1では、光カチオン重合性化合物が使用されており、常に高い粘着性を有する記載がある。しかしながら、特にポリエステルに対して特異的に粘着性を有する記載は一切ない。
光硬化性を有し、光硬化後、硬化物表面のタックが小さく(手で触ってもべたつきを感じない)、ごみや塵が付着しても払い落とせるが、ポリエステルフィルムに対しては強い粘着性を有するような、接着させる基材に対する選択性を有する粘着材は知られていなかった。
【特許文献1】特開2001−279218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリエステルに対して特異的に粘着性を有する粘着材形成用感光性樹脂組成物の提供。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討し、数平均分子量が1000以上50万以下の樹脂(a)、数平均分子量が100以上1000未満の重合性不飽和基を有する有機化合物(b)を含有する感光性樹脂組成物であって、前記樹脂(a)がカーボネート結合およびウレタン結合を有する感光性樹脂組成物の光硬化物表面が、PET等のポリエステルに対し、特異的に強い粘着性を有するという驚くべき現象を発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は下記の通りである。
1. 数平均分子量が1000以上50万以下の樹脂(a)、数平均分子量が100以上1000未満の重合性不飽和基を有する有機化合物(b)を含有する感光性樹脂組成物であって、前記樹脂(a)が分子主鎖中にカーボネート結合およびウレタン結合を有する化合物を、樹脂(a)全体量の20wt%以上100wt%以下含有し、光硬化されることを特徴とする粘着材形成用感光性樹脂組成物。
2. 樹脂(a)が、数平均分子量100以上10万以下のポリカーボネートジオールと、ジイソシアネート化合物とを縮合反応させて得られるポリウレタン骨格を有し、かつ分子内に重合性不飽和基を有する化合物を含有することを特徴とする1.に記載の粘着材形成用感光性樹脂組成物。
3. 有機化合物(b)が、分子内に芳香族官能基あるいは/および脂環族官能基を有する化合物を、有機化合物(b)の全体量の10wt%以上100wt%以下含有することを特徴とする1.または2.に記載の粘着材形成用感光性樹脂組成物。
【0007】
4. 感光性樹脂組成物が、20℃において液状であることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の粘着材形成用感光性樹脂組成物。
5. 1.から4.のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる粘着材であって、該粘着材表面がポリエステルフィルムに対し粘着性を示し、粘着強度が150N/m以上10kN/m以下であることを特徴とする粘着材。
6. 1.から4.のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を、シート状支持体あるいは円筒状支持体の表面の片面あるいは両面上に塗布し、感光性樹脂組成物層を形成したのち、光を照射することにより光硬化せしめて得られることを特徴とする粘着材を有する積層体。
【0008】
7. シート状支持体あるいは円筒状支持体と粘着材との間に、クッション層を有する6.に記載の積層体。
8. 粘着材上に、さらにポリエステルフィルムを支持体とするシート状印刷原版あるいはシート状印刷版を、ポリエステルフィルムを内側にして前記粘着材とポリエステルフィルムが接するように貼り付けられていることを特徴とする6.または7.に記載の積層体を有する印刷基材。
9. 1.から4.のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を、シート状支持体あるいは円筒状支持体上に膜厚0.5μm以上5mm以下で塗布し、感光性樹脂組成物層を形成する工程、形成された感光性樹脂組成物層に光を照射することにより光硬化せしめる工程を含むことを特徴とする粘着材の製造方法。
10. 光を照射することにより光硬化させる工程において、大気中で光を照射することを特徴とする9.に記載の粘着材の製造方法。
11. 光硬化させる工程の後、さらに粘着材の膜厚を、切削あるいは/および研削あるいは/および研磨により調整する工程を含むことを特徴とする9.または10.に記載の粘着材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ポリエステルに対し特異的に粘着性を有する粘着材形成用感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、さらに詳細に本発明の好ましい実施態様を中心に説明する。
本発明の粘着材形成用感光性樹脂組成物は、ポリマー成分として樹脂(a)、モノマー成分として分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(b)を含有する感光性樹脂組成物からなり、前記樹脂(a)が分子主鎖中にカーボネート結合およびウレタン結合を有する化合物を、樹脂(a)全体量の20wt%以上100wt%以下含有する。好ましくは40wt%以上100wt%以下、より好ましくは50wt%以上100wt%以下である。20wt%以上100wt%以下含有していれば、該感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる粘着材は、ポリエステルに対し特異的に粘着性を有する効果を維持できる。
【0011】
本発明の樹脂(a)は、数平均分子量が1000以上50万以下の化合物である。また、感光性樹脂組成物を構成する上で、分子内に重合性不飽和基を有することが好ましい。樹脂(a)の数平均分子量の好ましい範囲は、2000以上30万以下、より好ましい範囲は5000以上10万以下である。樹脂(a)の数平均分子量は1000以上であれば、後に光硬化して作製する粘着材が強度を保ち、繰り返しの使用にも耐えられる。また、樹脂(a)の数平均分子量が50万以下であれば、感光性樹脂組成物の成形加工時の粘度が過度に上昇することもなく、シート状、あるいは円筒状の粘着材を有する積層体を作製することができる。ここで言う数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
【0012】
本発明における「重合性不飽和基」の定義は、ラジカルまたは付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。特に好ましい樹脂(a)として1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するポリマーを挙げることができる。1分子あたり平均で0.7以上であれば、本発明の感光性樹脂組成物より得られる粘着材の機械強度に優れる。さらにその耐久性も良好で、繰り返しの使用にも耐えらるのものとなり好ましい。粘着材の機械強度を考慮すると、樹脂(a)の重合性不飽和基は1分子あたり1を越える量が更に好ましい。樹脂(a)において、重合性不飽和基の位置は、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接結合していることが好ましい。樹脂(a)1分子に含まれる重合性不飽和基の数の平均は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)による分子構造解析法で求めることができる。
【0013】
樹脂(a)を製造する方法としては、例えば直接、重合性の不飽和基をその分子末端に導入したものを用いても良いが、別法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の上記成分の反応性基と結合しうる官能基を有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)とを反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合性基と反応する官能基および重合性不飽和基を有する有機化合物とを反応させて分子末端に重合性不飽和基を導入する方法などが好適にあげられる。
【0014】
樹脂(a)中に含有される、分子主鎖中にカーボネート結合とウレタン結合を有する化合物は、ポリカーボネートジオールとジイソシアネート化合物とを縮合反応させて容易に得られる。また、ポリカーボネートジオールとジイソシアネートとの縮合物が、ブロックとして化合物中に存在していても構わない。用いるポリカーボネートジオールの数平均分子量は、100以上10万以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、500以上2万以下、更に好ましくは1000以上1万以下である。100以上10万以下の範囲であれば、ジイソシアネート化合物との縮合反応が容易に実施できる。
ポリカーボネートジオールとしては、脂肪族ポリカーボネートジオール、芳香族ポリカーボネートジオール、脂環族ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。粘着材の柔軟性が求められる場合には、特に脂肪族ポリカーボネートジオールが好ましい。具体的には、4,6−ポリカーボネートジオール、5,6−ポリカーボネートジオール、8,9−ポリカーボネートジオール等を挙げることができ、旭化成ケミカルズ社、クラレ社、ダイセル社等から数平均分子量の異なる化合物を入手することができる。
【0015】
ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレルキシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート等をあげることができる。
【0016】
樹脂(a)に混合して用いることができる樹脂の例として、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン類等の分子主鎖あるいは側鎖に重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。また、重合性不飽和基を有しない高分子化合物を出発原料として、置換反応、脱離反応、縮合反応、付加反応等の化学反応により重合性不飽和基を分子内に導入した高分子化合物を挙げることもできる。重合性不飽和基を有しない高分子化合物の例としてポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテル等のC−C連鎖高分子の他、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル類、ポリフェニレンチオエーテル等のポリチオエーテル類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリジアルキルシロキサン等の高分子化合物、或いはこれらの高分子化合物の主鎖にヘテロ原子を有する高分子化合物、複数種のモノマー成分から合成されたランダム共重合体、ブロック共重合体等を挙げることができる。更に、分子内に重合性不飽和基を導入した高分子化合物を複数種混合して用いることもできる。
【0017】
特にフレキシブル支持体上に塗布して用いる場合には、柔軟性を得るために、樹脂(a)として、一部、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂を用いていることが好ましく、さらに好ましくはガラス転移温度0℃以下の液状樹脂を用いることができる。このような液状樹脂として、例えばポリカーボネートポリウレタン、ポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポイソプレン等の炭化水素類、アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類、(メタ)アクリル酸及び/またはその誘導体の重合体及びこれらの混合物やコポリマー類を用いて合成され、分子内に重合性不飽和基を有する化合物等を用いることができる。特に耐候性の観点からポリカーボネート骨格を有する不飽和ポリウレタン類が好ましい。ここで言う液状樹脂とは、容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するエラストマーに対応する言葉である。樹脂(a)が20℃において液状樹脂である場合は、感光性樹脂組成物も20℃において液状である。
【0018】
シート状もしくは円筒状に成形する際、良好な版厚精度や寸法精度を得ることができる本発明の感光性樹脂組成物は、20℃における粘度が10Pa・s以上10kPa・s以下であることが好ましい。さらに好ましくは50Pa・s以上5kPa・s以下である。粘度が10Pa・s以上であれば、作製される粘着材の機械的強度が十分であり、円筒状に成形する際であっても形状を保持し易く、加工し易い。粘度が10kPa・s以下であれば、常温でも変形し易く、加工が容易である。シート状あるいは円筒状に成形し易く、プロセスも簡便である。特に版厚精度の高い円筒状粘着層を得るためには、円筒状支持体上に液状感光性樹脂層を形成する際に、該感光性樹脂組成物が重力により液ダレ等の現象を起こさないように粘度が100Pa・s以上が好ましく、より好ましくは200Pa・s以上、更に好ましくは500Pa・s以上である。また、本発明で用いる感光性樹脂組成物が特に20℃において液状である場合、チキソトロピー性を有することが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物は、揮発性の溶剤成分を含有していても構わないが、作業環境性、取り扱いの容易さ等の観点から溶剤を含まないことがより好ましい。
【0019】
有機化合物(b)は、数平均分子量が100以上1000未満の重合性不飽和基を有した化合物である。100以上1000以下未満であると、樹脂(a)と希釈がし易く、成形工程において蒸発、気化し難い。重合性不飽和基は、樹脂(a)の箇所でも記載したように、ラジカルまたは付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。
有機化合物(b)の具体例としては、ラジカル反応性化合物として、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリールアルコール、アリールイソシアネート等のアリール化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等があげられるが、その種類の豊富さ、価格、レーザー光照射時の分解性等の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。前記化合物の誘導体の例としては、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ビシクロアルケン−などの脂環族、ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−、フルオレン−などの芳香族、アルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、アルキレングリコール−、ポリオキシアルキレングリコール−、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコール−やトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステル、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物などがあげられる。また、窒素、硫黄等の元素を含有した複素芳香族化合物であっても構わない。
【0020】
また、開環付加反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、エポキシ変性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商標名「HF−105」)等を挙げることができる。
【0021】
本発明において、これら重合性不飽和基を有する有機化合物(b)はその目的に応じて1種若しくは2種以上のものを選択できる。例えば印刷版を装着する粘着材として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を押さえるために、用いる有機化合物として長鎖脂肪族、脂環族または芳香族の誘導体等を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物より得られる粘着材の機械強度を高めるためには、有機化合物(b)としては脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましく、この場合、有機化合物(b)の全体量の20wt%以上であることが好ましく、更に好ましくは50wt%以上である。また、前記芳香族の誘導体として、窒素、硫黄等の元素を有する芳香族化合物であっても構わない。
【0022】
粘着材の反撥弾性を高めるため例えば特開平7−239548号に記載されているようなメタクリルモノマーを使用するとか、公知の印刷用感光性樹脂の技術知見等を利用して選択することができる。
本発明の感光性樹脂組成物を光もしくは電子線の照射により架橋して印刷原版などとしての物性を発現させるが、その際に重合開始剤を添加することができる。重合開始剤は一般に使用されているものから選択でき、例えば高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」1986年培風館発行に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の開始剤等が使用できる。また、光重合開始剤を用いて光重合により架橋を行うことは、本発明の感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を保ちながら、生産性良く印刷原版を生産出来る方法として有用であり、その際に用いる開始剤も公知のものが使用できる。ラジカル重合反応を誘起させる光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤(d)と崩壊型光重合開始剤(e)が、特に効果的な光重合開始剤として用いられる。
【0023】
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として、特に限定するものではないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤(d)として励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば何でも構わない。芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノンあるいはその誘導体を指し、具体的には3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等である。ミヒラーケトン類とはミヒラーケトンおよびその誘導体をいう。キサンテン類とはキサンテンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をいう。チオキサントン類とは、チオキサントンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をさし、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等を挙げることができる。アントラキノン類とはアントラキノンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換された誘導体をいう。水素引き抜き型光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.5wt%以上5wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、粘着材表面の硬化性は充分に確保でき、また、耐候性を確保することができる。
【0024】
崩壊型光重合開始剤(e)とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を指し、特に限定するものではない。具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アシルホスフィンオキシド類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、ジケトン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等の化合物を挙げることができる。2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。アセトフェノン類としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。アシルホスフィンオキシド類としては、2,4,6−トリメチル−ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−2,4−ジイソブトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−2,4−ジイソプロポキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−2,4−ジイソペンチルオキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−2,4−ジオクチルオキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシ−ベンゾイル)−2−プロポキシ−4−メチルフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等を挙げることができる。有機イオウ化合物類としては、芳香族チオール、モノおよびジスルフィド、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、S−アシルジチオカルバメート、チオスルホネート、スルホキシド、スルフェネート、ジチオカルボネート等を挙げることができる。ジケトン類としては、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。崩壊型光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、粘着材内部の硬化性は充分に確保できる。
【0025】
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物を、光重合開始剤として用いることもできる。α−アミノアセトフェノン類を挙げることができる。例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン等の下記一般式(1)で示される化合物を挙げることができる。
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、Rは各々独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、Xは炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物の添加量としては、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、粘着材の機械的物性は充分に確保できる。
【0028】
また、光を吸収して酸を発生することにより、付加重合反応を誘起させる光重合開始剤を用いることもできる。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の光カチオン重合開始剤、あるいは光を吸収して塩基を発生する重合開始剤などが挙げられる。これらの光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下の範囲が好ましい。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物における樹脂(a)、有機化合物(b)の割合は、通常、樹脂(a)100質量部に対して、有機化合物(b)は5〜200質量部が好ましく、20〜100質量部の範囲がより好ましい。
粘着材は感光性樹脂組成物を光架橋硬化させて形成したものである。したがって、有機化合物(b)の重合性不飽和基同士、あるいは樹脂(a)の重合性不飽和基と有機化合物(b)の重合性不飽和基が反応することにより3次元架橋構造が形成され、通常用いるエステル系、ケトン系、芳香族系、エーテル系、アルコール系、ハロゲン系溶剤等に不溶化する。この反応は、有機化合物(b)同士、樹脂(a)同士、あるいは樹脂(a)と有機化合物(b)との間で起こり、重合性不飽和基が消費される。また、光重合開始剤を用いて架橋硬化させる場合、光重合開始剤が光により分解されるため、前記粘着材を溶剤で抽出し、GC−MS法(ガスクロマトグラフィーで分離したものを質量分析する方法)、LC−MS法(液体クロマトグラフィーで分離したものを質量分析する方法)、GPC−MS法(ゲル浸透クロマトグラフィーで分離し質量分析する方法)、LC−NMR法(液体クロマトグラフィーで分離したものを核磁気共鳴スペクトルで分析する方法)を用いて解析することにより、未反応の光重合開始剤および分解生成物を同定することができる。更に、GPC−MS法、LC−MS法、GPC−NMR法を用いることにより、溶剤抽出物中の未反応のポリマー、未反応の有機化合物(b)、および重合性不飽和基が反応して得られる比較的低分子量の生成物についても溶剤抽出物の分析から同定することができる。3次元架橋構造を形成した溶剤に不溶の高分子量成分については、熱分解GC−MS法を用いることにより、高分子量体を構成する成分として、重合性不飽和基が反応して生成した部位が存在するかを検証することが可能である。例えば、メタクリレート基、アクリレート基、ビニル基等の重合性不飽和基が反応した部位が存在することを質量分析スペクトルパターンから推定することができる。熱分解GC−MS法とは、試料を加熱分解させ、生成するガス成分をガスクロマトグラフィーで分離した後、質量分析を行う方法である。架橋硬化物中に、未反応の重合性不飽和基又は重合性不飽和基が反応して得られた部位と共に、光重合開始剤に由来する分解生成物や未反応の光重合開始剤が検出されると、感光性樹脂組成物を光架橋硬化させて得られたものであると結論付けることができる。
【0030】
粘着材の粘着強度測定には、タックテスター(東洋精機製作所社製)を用いることができる。例えば、20℃において前記粘着材の平滑な表面に半径50mm、幅13mmのアルミニウム輪の表面に幅13mmで厚み125μmのPETフィルムを貼り付けた輪を接触させ、該輪に0.5kgの荷重を加え4秒間放置した後、毎分30mmの一定速度で前記輪を引き上げ、輪が粘着材表面から離れる際の抵抗力をプッシュプルゲージで読み取った場合には、150N/m以上10kN/m以下が好ましく、前記アルミニウム輪を接触させ測定した場合には150N/m未満が好ましい。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物をシート状、もしくは円筒状に成形する方法は、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。例えば、注型法、ポンプや押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法、スプレー法等が例示できる。その際、樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などをほどこしても良い。通常はPETやニッケルなどの素材からなるシート状支持体の上に成形される場合が多いが、直接印刷機のシリンダー上に成形する場合などもありうる。また、繊維強化プラスチック(FRP)製、プラスチック製あるいはニッケル等の金属製の円筒状支持体を用いることもできる。円筒状支持体は軽量化のために一定厚みで中空のものを使用することができる。シート状支持体あるいは円筒状支持体の役割は、粘着材の寸法安定性を確保することである。
【0032】
したがって、寸法安定性の高いものを選択することが好ましい。線熱膨張係数を用いて評価すると、好ましい線熱膨張係数の範囲は−10ppm/℃以上100ppm/℃以下、更に好ましくは−10ppm/℃以上70ppm/℃以下である。材料の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンチオエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂からなる液晶樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。また、これらの樹脂を積層して用いることもできる。また、多孔質性のシート、例えば繊維を編んで形成したクロスや、不織布、フィルムに細孔を形成したもの等をシート状支持体として用いることができる。シート状支持体として多孔質性シートを用いる場合、感光性樹脂組成物を孔に含浸させた後に光硬化させることで、粘着材層とシート状支持体とが一体化するために高い接着性を得ることができる。クロスあるいは不織布を形成する繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、アルミナ・シリカ繊維、ホウ素繊維、高珪素繊維、チタン酸カリウム繊維、サファイア繊維などの無機系繊維、木綿、麻などの天然繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリイミド、アラミド等の合成繊維等を挙げることができる。また、バクテリアの生成するセルロースは、高結晶性ナノファイバーであり、薄くて寸法安定性の高い不織布を作製することのできる材料である。
【0033】
また、シート状あるいは円筒状支持体の線熱膨張係数を小さくする方法として、充填剤を添加する方法、全芳香族ポリアミド等のメッシュ状クロス、ガラスクロスなどに樹脂を含浸あるいは被覆する方法などを挙げることができる。充填剤としては、通常用いられる有機系微粒子、金属酸化物あるいは金属等の無機系微粒子、有機・無機複合微粒子など用いることができる。また、多孔質微粒子、内部に空洞を有する微粒子、マイクロカプセル粒子、低分子化合物が内部にインターカレーションする層状化合物粒子を用いることもできる。特に、アルミナ、シリカ、酸化チタン、ゼオライト等の金属酸化物微粒子、ポリスチレン・ポリブタジエン共重合体からなるラテックス微粒子、高結晶性セルロース等の天然物系の有機系微粒子等が有用である。
【0034】
本発明で用いるシート状支持体あるいは円筒状支持体の表面に物理的、化学的処理を行うことにより、粘着材との接着性を向上させることができる。物理的処理方法としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線あるいは真空紫外線照射法などを挙げることができる。また、化学的処理方法としては、強酸・強アルカリ処理法、酸化剤処理法、カップリング剤処理法などが挙げられる。
【0035】
成形された感光性樹脂組成物層は光照射により架橋せしめ、粘着材を形成する。また、成型しながら光照射により架橋させることもできる。硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。感光性樹脂組成物層に照射される光は、200nmから300nmの波長の光を有することが好ましい。特に水素引き抜き型光重合開始剤は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから300nmの波長の光を有する場合、粘着材層表面の硬化性を充分に確保することができる。硬化に用いる光源は、1種類でも構わないが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも差し支えない。
【0036】
粘着材の厚みは、その使用目的に応じて任意に設定して構わないが、0.1μm〜5mmの範囲が好ましい。場合によっては、組成の異なる材料を複数積層していても構わない。また、シート状に積層する場合にはシート状支持体の片側だけでなく、両側に積層することもできる。また、シート状支持体の片面に本発明の粘着材層を積層し、反対側の面に両面接着層を積層した積層体であっても構わない。
本発明では、粘着材の下部にエラストマーからなるクッション層を形成することもできる。クッション層としては、ショアA硬度が10から70度のエラストマー層であることが好ましい。ショアA硬度が10度以上である場合、適度に変形するため、印刷品質を確保することができる。また、70度以下であれば、クッション層としての役割を果たすことができる。より好ましいショアA硬度の範囲は、10〜50度である。
【0037】
前記クッション層は、特に限定せず、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、熱硬化型エラストマー等ゴム弾性を有するものであれば何でも構わない。ナノメーターレベルの微細孔を有する多孔質エラストマー層、あるいは、独立気泡や連続気泡を層内に有するエラストマー層であってもよい。特にシート状あるいは円筒状印刷版への加工性の観点から、光で硬化する液状感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり好ましい。
クッション層に用いる熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0038】
光硬化型エラストマーとしては、前記熱可塑性エラストマーに光重合性モノマー、可塑剤および光重合開始剤等を混合したもの、プラストマー樹脂に光重合性モノマー、光重合開始剤等を混合した液状組成物などを挙げることができる。本発明では、微細パターンの形成機能が重要な要素である感光性樹脂組成物の設計思想とは異なり、光を用いて微細なパターンの形成を行う必要がなく、全面露光により硬化させることにより、ある程度の機械的強度を確保できれば良いため、材料の選定において自由度が極めて高い。
また、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、チオ尿素等の非硫黄架橋型ゴムを用いることもできる。
更に、テレケリック液状ゴムを反応する硬化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものを使用することもできる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
(1)粘度
感光性樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(B8H型;日本国、東京計器社製)を用い、20℃で測定した。
(2)数平均分子量の測定
樹脂(a)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置(日本国、東ソー社製のHLC−8020)とポリスチレン充填カラム(商標:TSKgel GMHXL;日本国、東ソー社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1wt%のTHF溶液を調製し、注入量10μlとした。また、検出器としては、樹脂(a)に関しては紫外吸収検出器を使用し、モニター光として254nmの光を用いた。本発明の実施例あるいは比較例で用いる樹脂(a)は、GPC法で用いて求めた多分散度(Mw/Mn)が1.1より大きいものであったため、GPC法で求めた数平均分子量Mnを採用した。用いた有機化合物(b)の分子量は、多分散度が1.1より小さいものであったので、観測核をHとする核磁気共鳴スペクトル法により同定された分子構造から求めた。
【0040】
(3)重合性不飽和基の数の測定
合成した樹脂(a)の分子内に存在する重合性不飽和基の平均数は、未反応の低分子成分を液体クロマトグラフ法を用いて除去した後、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)を用いて分子構造解析し求めた。
(4)光硬化物の表面タック測定
光硬化物のPETフィルムに対する表面タックは、タックテスター(東洋精機製作所社製)を用いて、20℃において前記光硬化物の平滑な表面に半径50mm、幅13mmのアルミニウム輪の表面に幅13mmで厚み125μmのPETフィルムを貼り付けた輪を接触させ、該輪に0.5kgの荷重を加え4秒間放置した後、毎分30mmの一定速度で前記輪を引き上げ、輪が光硬化物表面から離れる際の抵抗力をプッシュプルゲージで読み取った。また、アルミニウムに対する表面タック測定は、上記PETフィルムを取り外して実施した。
【0041】
(製造例1)
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDLL4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約10000の樹脂(ア)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0042】
(製造例2)
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDLL4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート7.42gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1個)である数平均分子量約10000の樹脂(イ)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0043】
(実施例1〜3)
樹脂(a)として、製造例1または2で作製した樹脂(ア)、(イ)を用い、表1に示すように重合性モノマー、光重合開始剤、その他添加剤を加えて感光性樹脂組成物を作成した。
調製した感光性樹脂組成物を厚さ125μmのPETフィルム上に厚さ0.5mmのシート状に成形し、更に表面に厚さ15μmの離型処理されたPETフィルムを被覆し、ケミカルランプの光を照射した。照射したエネルギー量は、2000mJ/cm(UV−35−APRフィルターで測定した照度を時間積分した値)であった。照射面でのランプ照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、2mW/cmであった。
【0044】
表2に粘着材の表面タック値を示した。実施例1から3のいずれも、粘着材の表面を手で触った感覚では、べとつきは感じられなかった。
用いた光重合開始剤は、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPAP)が崩壊型光重合開始剤であった。
実施例1〜3の感光性樹脂組成物は、いずれも20℃において液状であった。また、B型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、いずれの系も100Pa・s以上5kPa・s以下であった。
【0045】
(比較例1)
数平均分子量が約3000で分子両末端に水酸基を有するポリブタジエンとトリレンジイソシアネートとを反応させ両末端がイソシアネート基であるポリウレタン化合物を合成した。更に、得られたポリウレタン化合物に2−ヒドロキシエチルメタクリレートを反応させ、末端にメタクリレート基を有する数平均分子量が12000の不飽和ポリウレタン化合物を得た。この化合物は、分子内にウレタン結合は有するが、カーボネート結合は有しない。得られた不飽和ポリウレタン化合物100質量部対して、ラウリルメタクリレート(分子量245)16質量部、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(数平均分子量660)4質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(分子量226)4質量部、ベンゾインイソブチルエーテル1.5質量部、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.01質量部を混合し、感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を、厚さ0.5mmのシート状に成形する以外は、実施例1と同じ方法により光硬化させた。
アルミニウムに対する表面タックは、360N/m、PETに対する表面タックは、900N/mであった。粘着材の表面を手で触った感覚では、べたつきがあり粘着性を示した。
【0046】
(実施例4)
内径300mm、厚さ2mmの繊維強化プラスチック製スリーブ上に実施例1で用いた感光性樹脂組成物を、ドクターブレードを用いて厚さ1.0mmで塗布し、大気中において、メタルハライドランプの光を2000mJ/cm(フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)で測定した照度を時間積分した値)照射し、感光性樹脂組成物層を硬化させた。その後、厚さが0.5mmになるまで砥石を用いて研削した。
アルミニウムに対する表面タックは、80N/m、PETに対する表面タックは、220N/mであった。粘着材の表面を手で触った感覚では、べたつきはなかった。
得られた粘着材上に、厚さ125μmのPETを支持体とするフレキソ印刷版(厚さ1.27mm)を、PETを内側にして貼り付けたところ、フレキソ印刷版が外れることなく仮留めすることができた。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ポリエステルに対して特異的に粘着性を有する粘着材形成用感光性樹脂組成物として好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が1000以上50万以下の樹脂(a)、数平均分子量が100以上1000未満の重合性不飽和基を有する有機化合物(b)を含有する感光性樹脂組成物であって、前記樹脂(a)が分子主鎖中にカーボネート結合およびウレタン結合を有する化合物を、樹脂(a)全体量の20wt%以上100wt%以下含有し、光硬化されることを特徴とする粘着材形成用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂(a)が、数平均分子量100以上10万以下のポリカーボネートジオールと、ジイソシアネート化合物とを縮合反応させて得られるポリウレタン骨格を有し、かつ分子内に重合性不飽和基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着材形成用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
有機化合物(b)が、分子内に芳香族官能基あるいは/および脂環族官能基を有する化合物を、有機化合物(b)の全体量の10wt%以上100wt%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の粘着材形成用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
感光性樹脂組成物が、20℃において液状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の粘着材形成用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる粘着材であって、該粘着材表面がポリエステルフィルムに対し粘着性を示し、粘着強度が150N/m以上10kN/m以下であることを特徴とする粘着材。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を、シート状支持体あるいは円筒状支持体の表面の片面あるいは両面上に塗布し、感光性樹脂組成物層を形成したのち、光を照射することにより光硬化せしめて得られることを特徴とする粘着材を有する積層体。
【請求項7】
シート状支持体あるいは円筒状支持体と粘着材との間に、クッション層を有する請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
粘着材上に、さらにポリエステルフィルムを支持体とするシート状印刷原版あるいはシート状印刷版を、ポリエステルフィルムを内側にして前記粘着材とポリエステルフィルムが接するように貼り付けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の積層体を有する印刷基材。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を、シート状支持体あるいは円筒状支持体上に膜厚0.5μm以上5mm以下で塗布し、感光性樹脂組成物層を形成する工程、形成された感光性樹脂組成物層に光を照射することにより光硬化せしめる工程を含むことを特徴とする粘着材の製造方法。
【請求項10】
光を照射することにより光硬化させる工程において、大気中で光を照射することを特徴とする請求項9に記載の粘着材の製造方法。
【請求項11】
光硬化させる工程の後、さらに粘着材の膜厚を、切削あるいは/および研削あるいは/および研磨により調整する工程を含むことを特徴とする請求項9または10に記載の粘着材の製造方法。

【公開番号】特開2006−117858(P2006−117858A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309156(P2004−309156)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】