糖尿病および他の慢性疾患の治療に有用な組成物
本発明は、代謝異常、特に糖尿病の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子タンパク質アセンブリを提供する。本発明に開示された超分子タンパク質アセンブリは、タンパク質の不溶性かつ凝集オリゴマーからなる。本発明は、また、超分子タンパク質アセンブリを含む医薬組成物を提供する。本発明に開示された組成物は、特に、超分子インスリンアセンブリを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病および他の慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質治療(protein medications)は、治療の最も迅速に拡大しているクラスであり、多くの疾患の中でも糖尿病、癌、循環器疾患、腎臓疾患、消化器疾患、リウマチ性疾患および神経疾患の患者に役立っている。インスリン、エリスロポエチン、G-CSF、プラスミノーゲン活性化因子およびインターフェロンを含む、治療としてのタンパク質の治療的および商業的価値は疑う余地も無い。改良したタンパク質またはその調合物は、効能、作用時間および他の特性を増すことによって、これらの現在の製品の治療効果を増大する。
【0003】
糖尿病は、身体がインスリンを産生できないか(I型)、インスリンに応答できないか(II型)のいずれかによって特徴付けられる慢性疾患である(http://www.who.int/diabetes/en, King, H., Aubert, R.E. & Herman, W. H. Global burden of diabetes, 1995-2025: Prevalence, numerical estimates, and projections. Diabetes Care 21, 1414-1431 (1998))。I型およびII型の両方の糖尿病が新たに世界的に蔓延している。2005年には、110万人の糖尿病患者が死亡している(Dunstan, D. W., Zimmet, P. Z., Welborn, T. A., De Courten, M. P., Cameron ,A. J., et al. The rising prevalence of diabetes and impaired glucose tolerance: The Australian Diabetes, Obesity and Lifestyle Study. Diabetes Care 25, 829-834 (2002))。糖尿病のヒトは数年間生きられるかもしれず、死亡の原因は、糖尿病がもたらした合併症である心臓疾患および腎不全としてしばしば報告されるので、その経済的な影響は更により大きい。
【0004】
外部からインスリンを投与し、正常なメタボリック環境を回復することによって、合併症のリスクを最小化することが、糖尿病の治療の必須の特徴となった。現在の治療では、インスリンの1日に複数回の皮下(SC)/筋肉内(IM)注射を含むが、これは、患者の順守にとって大きな重荷となる。次に、代替的な、侵襲性の少ない送達経路がもたらされた。経鼻、経口、胃腸経由および経皮での投与の試みは、現在のところ、大部分は失敗に終わっている。1日に2回のインスリン注射を行うI型糖尿病についての一般的なインスリン治療は、食後の血中グルコース濃度を調節するのには有効であるが、この治療は、空腹時の高血糖を制御することができないので、限られた価値しか有さない(Cardona, K., Korbutt, G. S., Milas, Z., Lyon, J., Cano, J., Jiang, W., Bello-Laborn, H., Hacquoil B, Strobert E, Gangappa S, Weber CJ, Pearson TC, Rajotte RV, Larsen CP. Long-term survival of neonatal porcine islets in nonhuman primates by targeting costimulation pathways. Nat Med. Mar; 12(3), 304-6 (2006))。糖尿病の患者は、内因性インスリンの供給を1日に1回か2回上げるために、インスリン治療を必要とする。また、食後のグルコースの恒常性を、各食事の前の定期的なインスリン注射を介して維持している。集中的なインスリン治療は発病を遅らせるか、または、合併症の発症を遅らせるが、患者は空腹時の低血糖の高いリスクを有することとなる。長期間にわたってインスリンの放出を制御するインスリン調合物は、患者を、1日に何回もインスリンを投与する必要性から開放した。本発明は、I型およびII型両方の糖尿病の治療用の、インスリンを長時間放出するための組成物を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】King, H., Aubert, R.E. & Herman, W. H. Global burden of diabetes, 1995-2025
【非特許文献2】Prevalence, numerical estimates, and projections. Diabetes Care 21, 1414-1431 (1998)
【非特許文献3】Dunstan, D. W., Zimmet, P. Z., Welborn, T. A., De Courten, M. P., Cameron ,A. J., et al. The rising prevalence of diabetes and impaired glucose tolerance: The Australian Diabetes, Obesity and Lifestyle Study. Diabetes Care 25, 829-834 (2002)
【非特許文献4】Cardona, K., Korbutt, G. S., Milas, Z., Lyon, J., Cano, J., Jiang, W., Bello-Laborn, H., Hacquoil B, Strobert E, Gangappa S, Weber CJ, Pearson TC, Rajotte RV, Larsen CP. Long-term survival of neonatal porcine islets in nonhuman primates by targeting costimulation pathways. Nat Med. Mar; 12(3), 304-6 (2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、糖尿病および他の慢性疾患の処置のためのタンパク質治療を開示する。本発明は、特に、タンパク質(例えば、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、ペプチドGNNQQNY、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、エキセンディン4(extendin-4)およびエリスロポエチン)の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子タンパク質アセンブリ(supramolecular protein assembly)を開示する。本発明は、また、超分子タンパク質アセンブリを含む医薬組成物を開示する。
【0007】
本発明の開示の超分子タンパク質アセンブリおよび組成物は、代謝異常、特に糖尿病、ならびに他の慢性炎症疾患、例えば、関節リウマチ、骨粗鬆症、慢性的な炎症性および末梢性疼痛、敗血症、およびペプチド、タンパク質または低分子薬剤を使用した連続的かつ長期間の治療が必要なアレルギーの治療に有用である。
【0008】
本発明の1つの態様により、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常;または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子タンパク質またはペプチドアセンブリ(SPA)であって、タンパク質またはペプチドの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0009】
本発明の他の態様により、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0010】
本発明の他の態様により、骨粗鬆症の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)であって、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0011】
本発明の他の態様により、関節炎の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)であって、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集形態を含むアセンブリが提供される。
【0012】
本発明の更なる他の態様により、糖尿病の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)であって、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0013】
更に、本発明は、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な医薬組成物であって、治療上有効量の本発明に記載の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリを含む組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む組成物を提供する。
【0015】
本発明は、また、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む組成物を提供する。
【0016】
他の態様においては、本発明は、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリを含む組成物を提供する。
【0017】
本発明の他の態様においては、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明に記載された超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む組成物が提供される。
【0018】
また、骨粗鬆症の処置のための医薬組成物であって、本発明の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む組成物が提供される。
【0019】
更なる他の発明においては、関節炎および関節痛の処置のための医薬組成物であって、本発明に記載の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む組成物が提供される。
【0020】
本発明の更なる態様は、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)の製造方法であって、インスリンを約25〜60℃で1.5〜7.8の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子インスリンアセンブリ(SIA)を得る工程を含む方法を提供することである。
【0021】
更なる他の発明は、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の製造方法であって、カルシトニンを約25〜60℃で約4.0〜8.0の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を得る工程を含む方法を提供することである。
【0022】
イブプロフェン-タグ化ペプチドアセンブリ(SIbA)の製造方法も本発明においては開示し、当該方法は、イブプロフェン-ペプチドを約25〜60℃で約3.5〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を得る工程を含む。
【0023】
本発明は、また、本発明に記載の超分子エキセンディンアセンブリの製造方法であって、エキセンディン4を約25〜60℃で約2.0〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜192時間一定に攪拌しながらインキュベートし、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子エキセンディンアセンブリ(SEA)を得る工程を含む方法も提供する。
【0024】
更に、本発明は、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の前記疾患または病気の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0025】
本発明は、また、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0026】
本発明の1つの態様は、骨粗鬆症の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の骨粗鬆症治療用の超分子カルシトニンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供することである。
【0027】
本発明の他の態様により、関節痛の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の前記病気の緩和に有効な超分子イブプロフェンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0028】
本発明の更なる他の態様により、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、癌および内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療のための、超分子タンパク質アセンブリの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、組換えヒト(rH)およびウシインスリンの、50μM Th-T蛍光を用い手モニターした、pH2.0および7.0でのフィブリル形成のカイネティクスを示す。
【図2a】図2aは、ウシおよびrHインスリンの超分子インスリンアセンブリII(プレ-アミロイドインスリンII中間体とも称する)からのインスリンのin vitro放出を、280nm吸光度および内因性チロシン蛍光によってモニターすることによって示す。0時間および15日での透析膜内部の溶液のTh-Tの蛍光強度も示す。
【図2b】図2bは、ウシインスリンの様々な超分子インスリンアセンブリ中間体からのin vitroモノマー放出カイネティクスを示す。
【図2c】図2cは、rH-インスリンの様々な超分子インスリンアセンブリ中間体からのin vitroモノマー放出カイネティクスを示す。
【図2d】図2dは、一定の1ml PBS溶液中でモニターした、pH7.0で形成させたSIA II(或いはプレアミロイド)のin vitro放出カイネティクスを示す。
【図3】図3は、天然のインスリン、超分子インスリンアセンブリII(或いはプレ-アミロイドインスリンII),超分子インスリンアセンブリIII(或いはプレ-アミロイドインスリンIII)およびインスリンアミロイド(ウシおよびヒト)を用いた、コンゴ-レッド結合試験を示す。
【図4】図4は、r-ヒトおよびウシインスリンのフーリエ変換赤外分光(FTIR)の特徴を示す。
【図5】図5は、原子間力顕微鏡(AFM)によって試験した、超分子インスリンアセンブリ(或いはプレ-アミロイドインスリン)中間体およびインスリンフィブリルの形態を示す:(a)インスリンモノマー(b)ウシインスリンの超分子インスリンアセンブリI(或いはプレ-アミロイドインスリンI)中間体、pH7.0(c)ウシインスリンの超分子インスリンアセンブリII(或いはプレ-アミロイドインスリンII)、pH7.0(d)ウシインスリンの超分子インスリンアセンブリ中間体III(或いはプレ-アミロイドインスリンIII)、pH7.0(e)rH-インスリンの超分子インスリンアセンブリ-I、pH7.0(f)rH-インスリンの超分子インスリンアセンブリ-II、pH7.0(g)rH-インスリンの超分子インスリンアセンブリ-III、pH7.0(h)pH7.0で完全に形成されたフィブリル(i)は、6時間、pH2.0、37℃で形成された超分子インスリンアセンブリ(或いはプレ-アミロイドインスリン)中間体を示す(j)pH2.0で形成されたアミロイドフィブリル。
【図6】図6は、インスリンフィブリルおよび超分子インスリンアセンブリの形成の間の中間体のネガティブ染色TEM顕微鏡結果を示す:(a)超分子インスリンアセンブリI(或いはプレ-アミロイドインスリンI)、pH7.0(b)超分子インスリンアセンブリII(或いはプレ-アミロイドインスリンII)、pH7.0(c)超分子インスリンアセンブリIII(或いはプレ-アミロイドインスリンIII)、pH7.0(d)pH7.0での成熟ファイバー(e)pH2.0、37℃で形成されたファイバー。
【図7】図7は、グルコース恒常性における超分子インスリンアセンブリ(或いはプレ-アミロイドインスリン)のin vivo効果を示す:(a)皮下および筋肉内の両方で投与した様々な量の超分子インスリンアセンブル-II(ウシ)に応答する血中グルコース濃度(b)皮下および筋肉内の両方で投与した様々な量の超分子インスリンアセンブル-II(r-ヒト)に応答する血中グルコース濃度。
【図8】図8は、ウシSIA-IIの投与後135日間にわたってモニターした食後の血中グルコース濃度を示す:(a)ウシインスリン(b)rHインスリン。
【図9】図9は、ヒトSIA-IIの投与後160日間にわたってモニターした食前の血中グルコース濃度を示す:(a)ウシインスリン(b)rHインスリン。
【図10】図10は、pH2.0および7.0で形成したインスリンアミロイドの投与後にモニターした血中グルコース濃度を示す。
【図11】図11は、SIA-IIで処置したラット、糖尿病のコントロールおよび非-糖尿病のコントロールラット体重プロファイルを示す。
【図12】図12は、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)中の血中グルコースプロファイルを示す。
【図13】図13は、以下を示す:(a)SCまたはIM注射した超分子インスリンアセンブリ(或いはプレ-アミロイドインスリン)に応答する、STZ処置ラット中の、固相ELISAを使用した、対応するSIA-IIから放出される血清rHおよびウシインスリンの定量(b)IPGTT実験の間の血清ウシインスリンの定量(c)注入したグルコースに応答する内因性インスリン濃度を求めるための、IPGTTについて実施した血清ラットインスリンELISA。
【図14】図14は、STZ糖尿病ラットの125I標識インスリンSIA II処置を示す:(a)100μgの標識した超分子インスリンアセンブリで25日間まで処置した動物の血清中のCPM/mlプロファイル(b)血中グルコース(mg/dL)および放出されたウシインスリン(ng/ml)の、36日間のin vivoプロファイル。24時間のプロファイルを挿入図として示す。
【図15】図15は、標識したSIA IIで処置した動物に由来する血清のTricine-SDS-PAGEを示す。皮下(上パネル)または筋肉内(真中パネル)のいずれかで処置して1〜28日後の血清のクマシー染色(左端)および蛍光イメージ(左端以外)。下パネルは、SIA IIに由来するin vitro放出モノマーを示す。
【図16】図16は、超分子インスリンアセンブルIIでの処置後の高血糖クランプ法の結果を示す。GIR-グルコース注入速度(mg/kg/min)
【図17】図17は、培養した脂肪細胞の、インスリンシグナル伝達カスケードについてのウェスタンブロッティング(WB)の結果を示す。(a)PBS、インスリン、SIA-II、SIA-IIから放出されたインスリン、(b)記載された血清で処置した脂肪細胞を使用し、インスリンシグナル伝達について分析。
【図18】図18は、STZで糖尿病にし、超分子インスリンアセンブリII(或いはプレ-アミロイドインスリンII)で皮下注射し、コンゴレッドを使用して残存の超分子インスリンアセンブリの存在および炎症の発生のそれぞれについてチェックした雄のWistarラットを示す:(a)1〜12週の、皮下の、コンゴレッド染色切片(i-v)、コンゴレッド染色複屈折観察(vi-x)、H&E染色切片(xi-xv)および免疫染色切片(xvi-xx)(b) 1〜12週の、コンゴレッドで染色した筋肉内切片(i-v)、コンゴレッド染色複屈折観察(vi-x)、H&E染色切片(vi-xv)および免疫染色切片(xvi-xx)。
【図19】図19は、以下を示す:(a)E.coli由来のLPSを、炎症性細胞の浸潤についてのポジティブコントロールとして、皮下および筋肉組織に注射した。免疫染色したSC(i)およびIM(ii)切片、およびH&E染色SC(iii)およびIM(iv)切片。(b)SC注射されたpH2.0で形成したインスリンアミロイドファイバーを、1、4、8および12週間、コンゴレッド染色切片(i-iv)およびコンゴレッド染色複屈折観察(v-viii)を使用してモニターした。
【図20a】図20は、アロキサンを使用して糖尿病としたラットのrH-インスリンSIA-II処置の血中グルコースプロファイルを示す:(a)空腹時
【図20b】(b)非-空腹時の血液
【図20c】(c)製造者のプロトコールに従った固相ELISAを使用した血清中のヒトインスリン定量。
【図21】図21は、以下における白内障形成をモニターした結果を示す:(a)STZ処置ラット(b)コントロールラット(c)インスリン処置ラット(d)超分子インスリンアセンブリ処置ラット。
【図22】図22は、心臓、腎臓および肝臓組織を切片化し、CRで染色することによってアミロイド沈着について調べたものである。細胞の形態も、H&E染色を使用して評価した。心臓、腎臓および肝臓のコンゴレッド染色複屈折観察(i-iii)、コンゴレッド染色切片(iv-vi)、心臓、腎臓および肝臓のH&E染色(vii-ix)。
【図23】図23は、SIA-IIで処置した後のラットのインスリン分解酵素(IDE)の検出を示す。
【図24】図24は、SIA-IIで処置したラットの血清中の抗-インスリン抗体についてのスクリーニングを示す。
【図25】図25は、細胞増殖についてのMTTアッセイを示す:MCF 7細胞を、PBS, pH7.0、ヒト/ウシインスリン(20nM)、SIA II(ヒト/ウシインスリン)、SIA IIから放出したインスリンモノマー(20nM)、インスリン様成長因子I(IGF-I)(6ng/ml)の投与によって、増殖カイネティクスについてアッセイした。
【図26】図26は、STZを使用して糖尿病としたマウス中の、皮下および筋肉内の両方で投与した様々な量の超分子インスリンアセンブリに応答する血中グルコース濃度を示す。指示された量で、(a)皮下、(b)筋肉内投与したヒトSIA-IIおよび(c)皮下投与したウシSIA-II。
【図27】図27は、STZを使用して糖尿病としたウサギにおける、皮下投与した超分子インスリンアセンブリに応答する血中グルコース濃度を示す。
【図28】図28は、35日間にわたる、図で示した様々な処置を行ったII型糖尿病ラットの血中グルコースプロファイルを示す。
【図29】図29は、停滞状態における、PBS中37℃でのカルシトニンフィブリル形成のカイネティクスを示す。フィブリル形成は、400nmでの濁度測定によってモニターした。
【図30】図30は、一定体積1mlの元で、および、2%マンニトール中(5ml)中で膜に対して透析した、SCA-IIから放出させたカルシトニンのin vitro放出プロファイを示す。放出は、275nmの吸光度をモニターすることによって観察した。
【図31】図31は、異なる処置グループの卵巣切除したラットの血清中のSCA-IIから放出したカルシトニンのプロファイルを示す。血清中のカルシトニンは、免疫アッセイキットによって測定した。
【図32】図32は、以下を示す:(a)関節痛についてのホットプレート試験。関節炎を、雄のWistarラット中に、カオリン/カラゲニンを使用して誘導した。1時間30分後に、ラットに、図に示した各投与量の薬剤を与えた。ラットを、処置後1時間、55℃で鎮痛測定器に置いた。足を舐めるまでにかかる時間を、ストップウォッチを使用して求めた。結果を、同じ日に実施した3つの独立した実験の平均値±S.E.M(n=5)として表す。(b)関節痛を評価するためのホットプレート試験。関節炎を、雄のWistarラット中に、カオリン/カラゲニンを使用して誘導した。30分後に、ラットに、図に示した各投与量の薬剤を与えた。イブプロフェンを毎日経口投与し、1時間後に、55℃の鎮痛測定器に置いた。結果を、同じ日に実施した3つの独立した実験の平均値±S.E.M(n=5)として表す。
【図33】図33は、超分子イブプロフェン-TTRアセンブリを用いた処置による、カラゲニンで誘導したラットの足の浮腫の阻害を示す。浮腫を、注射した足の体積(ml)の、ベース体積に対する増加として表す。結果を、同じ日に実施した3つの独立した実験の平均値±S.E.M(m=5)として表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、糖尿病および他の慢性疾患/病気の処置のためのタンパク質治療を提供する。本発明は、特に、タンパク質(インスリン、グルカゴン、カルシトニン、GNNQQNY、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、エキセンディン4およびエリスロポエチンからなる群から選択される)の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子タンパク質またはペプチド(PSA)アセンブリを提供する。本発明は、また、超分子タンパク質アセンブリを含む医薬組成物を提供する。
【0031】
本発明に開示の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリおよび医薬組成物は、代謝異常、特に糖尿病、ならびに他の慢性炎症疾患、例えば、関節リウマチ、骨粗鬆症、慢性的な炎症性および末梢性疼痛、敗血症、およびペプチド、タンパク質または低分子薬剤を使用した連続的かつ長期間の治療が必要なアレルギーの治療に有用である。
【0032】
本発明は、また、II型糖尿病および多くの慢性疾患、例えば関節痛、および急性症状、例えば外傷によって誘発された痛みの治療可能性を提供する。関節痛の場合、安定なオリゴマーを形成するペプチド(例えば、GNNQQNY)にタグ化した薬剤分子により、患者の痛みを緩和するための抗関節炎薬の除放および持続放出がもたらされる。本発明の方法は、また、治療のためのペプチドホルモンであるカルシトニンを使用した、骨粗鬆症の治療に拡張することができる。
【0033】
用語「超分子タンパク質アセンブリ」は、フィブリル化工程の間に形成されるタンパク質の中間形態も指し、ペプチド/タンパク質モノマーのオリゴマー性会合によって特徴付けられる。
【0034】
本願で使用される用語「超分子インスリンアセンブリ」または「SIA」は、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態である超分子インスリンアセンブリI、IIおよびIIIを指す。
【0035】
本願で使用される用語「SIA I」は、ステージIでの「超分子インスリンアセンブリ」を指し、「SIA I」は、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含み、オリゴマーは、インスリンモノマーの真珠様配置(pearl like arrangement)を有する伸長クラスター(elongated cluster)からなる。
【0036】
本願で使用される用語「SIA II」は、ステージIIでの「超分子インスリンアセンブリ」を指し、「SIA II」は、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含み、インスリンのオリゴマーは、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合(linear association)に配置される。
【0037】
本願で使用される用語「SIA III」は、ステージIIIでの「超分子インスリンアセンブリ」を指し、「SIA III」は、インスリンのオリゴマー形態の密度の高い線形会合からなる。
【0038】
ステージIIIでのSIA、すなわちSIA IIは、約90%のSIA-IIからなる。
【0039】
本願で使用される用語「超分子イブプロフェンアセンブリ」または「SIbA」は、痛み除去剤イブプロフェンと共有結合的に結合した(タグ化した)ペプチドGNNQQNY、NFLVH、DFNKF、NFGAILおよびKFFEの不溶性かつ凝集形態である超分子イブプロフェンアセンブリを指す。
【0040】
本願で使用される用語「超分子カルシトニンアセンブリ」または「SCA」は、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態である超分子カルシトニンアセンブリを指す。
【0041】
本発明によれば、1つの実施態様によって、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常;または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子タンパク質またはペプチドアセンブリ(SPA)であって、前記タンパク質またはペプチドの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0042】
本発明の他の実施態様によって、本発明に開示の超分子タンパク質アセンブリの製造のためのタンパク質またはペプチドであって、前記タンパク質が、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、エキセンディン4およびエリスロポエチンからなる群から選択されるか、またはペプチドGNNQQNYを使用する、タンパク質またはペプチドが提供される。
【0043】
他の実施態様においては、本発明は、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリを提供する。
【0044】
更なる他の実施態様においては、本発明は、SIA I、SIA II、SIA IIIステージとしてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態またはこれらの組み合わせを含む超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA Iが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターからなり、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなり、SIA IIIが、約90%のSIA-IIからなり、インスリンオリゴマーの密度の高い線形会合である、超分子インスリンアセンブリを提供する。
【0045】
更なる実施態様においては、SIA IIステージのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA IIステージが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなる、超分子インスリンアセンブリが提供される。
【0046】
更なる実施態様においては、フーリエ変換赤外分光(FTIR)で1647-1645cm-1のシャープなピークを示す、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)が供給される。
【0047】
1つの実施態様においては、本発明は、インスリンが組換えヒトインスリンである、超分子インスリンアセンブリ(SIA)を供給する。
【0048】
他の実施態様においては、本発明は、インスリンがヒト、ウシまたはブタインスリンである、超分子インスリンアセンブリ(SIA)を提供する。
【0049】
本発明の1つの実施態様によって、1時間当り約0.2〜0.6IUの範囲の速度でインスリンモノマーをin vitroで放出する超分子インスリンアセンブリ(SIA)が提供される。
【0050】
本発明の他の実施態様によって、インスリンの放出速度が約7〜180日間で0.1〜5.4ng/mlの範囲である、超分子インスリンアセンブリ(SIA)が供給される。
【0051】
本発明の更なる他の実施態様によって、インスリンの放出速度が180日間まで0.5〜1.5ng/mlの範囲である、超分子インスリンアセンブリ(SIA)が供給される。
【0052】
本発明の追加の実施態様によって、投与によって必要とする患者において180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、超分子インスリンアセンブリ(SIA)が提供される。
【0053】
本発明の1つの実施態様においては、単回投与によって必要とする患者において4-180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、投与する際の濃度が25〜750μgの範囲である、アセンブリが提供される。
【0054】
本発明の他の実施態様においては、単回投与によって必要とする患者において少なくとも180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、投与する際の濃度が150〜250μgの範囲である、アセンブリが提供される。
【0055】
本発明の更なる他の実施態様においては、投与によってインスリンモノマーを放出する超分子インスリンアセンブリ(SIA)が提供される。
【0056】
本発明は、また、骨粗鬆症の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)であって、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリを提供する。
【0057】
投与した本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)は、必要とする対象において約55-60日間カルシトニンを放出する。
【0058】
更に、本発明は、アセンブリ内のペプチドが小分子薬剤と結合している超分子タンパク質アセンブリを提供する。
【0059】
本発明は、また、関節炎の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)であって、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集形態を含むアセンブリが提供される。
【0060】
本発明の1つの実施態様は、ペプチドとタグ化した超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)であって、ペプチドがGNNQQNY、NFGAIL、NFLVH、DFNKFおよびKFFEからなる群から選択される、アセンブリに関する。
【0061】
本発明は、また、糖尿病の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)であって、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0062】
本発明の1つの実施態様によって、プロドラッグとして作用する、本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリが提供される。
【0063】
本発明の1つの実施態様によって、プロドラッグとして作用する、本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリであって、超分子インスリンアセンブリ(SIA)、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)、超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)からなる群から選択されるアセンブリが提供される。
【0064】
本発明の1つの実施態様においては、細胞毒性を有さない超分子タンパク質アセンブリが提供される。
【0065】
本発明の他の実施態様においては、細胞毒性を有さない超分子タンパク質アセンブリであって、超分子インスリンアセンブリ(SIA)、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)、超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)からなる群から選択されるアセンブリが提供される。
【0066】
本発明によれば、1つの実施態様によって、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な医薬組成物であって、治療上有効量の本発明に記載の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリを含む組成物が提供される。
【0067】
1つの実施態様は、本発明の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリを含む医薬組成物であって、前記タンパク質またはペプチドが、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、IL-1RA、エキセンディン4、エリスロポエチン、GNNQQNYおよび他のペプチドからなる群から選択される、医薬組成物に関する。
【0068】
本発明は、更に、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む組成物を提供する。
【0069】
加えて、1つの実施態様においては、本発明は、治療上有効量の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、前記アセンブリが、SIA I、SIA II、SIA III段階としてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態またはこれらの組み合わせを含み、SIA Iが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターからなり、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなり、SIA IIIが、約90%のSIA-IIからなり、インスリンオリゴマーの密度の高い線形会合である、組成物を提供する。
【0070】
他の実施態様においては、本発明は、SIA IIのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなる、アセンブリを提供する。
【0071】
本発明の他の実施態様においては、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および/または超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む組成物が提供される。
【0072】
更なる実施態様においては、治療上有効量の本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、前記超分子インスリンアセンブリが、SIA I、SIA II、SIA III段階としてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態またはこれらの組み合わせを含み、SIA Iが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターからなり、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなり、SIA IIIが、約90%のSIA-IIからなり、インスリンオリゴマーの密度の高い線形会合である、組成物が提供される。
【0073】
更なる実施態様においては、治療上有効量の本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、前記超分子インスリンアセンブリが、SIA IIのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含み、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなる、組成物が提供される。
【0074】
本発明の1つの実施態様によって、投与によって約7〜180日間インスリンを放出する、本発明の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物が提供される。
【0075】
他の実施態様においては、本発明は、特許請求の範囲に記載の請求項のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物であって、投与によって必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、医薬組成物を提供する。
【0076】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明に記載の超分子インスリンを含む医薬組成物であって、単回投与によって必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、前記組成物中の前記アセンブリの濃度が25〜750μgの範囲である、医薬組成物が提供される。
【0077】
更なる実施態様によって、本発明の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物であって、単回投与によって必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、前記組成物中の前記アセンブリの濃度が150〜250μgの範囲である、医薬組成物が提供される。
【0078】
この実施態様においては、本発明の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物であって、インスリンの放出速度が少なくとも180日間まで0.5〜1.5ng/mlの範囲である、組成物である。
【0079】
他の実施態様においては、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む、骨粗鬆症の処置のための医薬組成物が提供される。
【0080】
他の実施態様においては、本発明は、カルシトニンを放出する、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む医薬組成物を提供する。
【0081】
他の実施態様においては、本発明は、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む医薬組成物であって、投与によって約55〜60日間カルシトニンを放出する、組成物を提供する。
【0082】
更なる他の実施態様においては、本発明は、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む医薬組成物であって、単回投与によって約55〜60日間カルシトニンを放出し、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)から放出されたカルシトニンの濃度が15〜20pg/mlの範囲である、組成物を提供する。
【0083】
本発明は、また、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む関節炎の処置のための医薬組成物を提供する。
【0084】
本発明の1つの実施態様においては、イブプロフェンを放出する、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む医薬組成物が提供される。
【0085】
他の実施態様においては、本発明は、投与によって約3〜6日間イブプロフェンを放出する、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む医薬組成物を提供する。
【0086】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む医薬組成物であって、単回投与によって約3〜6日間イブプロフェンを放出し、超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の濃度が10〜20mgの範囲である、組成物が提供される。
【0087】
本発明に記載の医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体、添加剤または希釈剤を含む。
【0088】
本発明に記載の医薬組成物は、静脈内、筋肉内、経口または皮下に投与される。
【0089】
本発明に記載の医薬組成物は、ポンプ、カテーテルおよびインプラントからなる群から選択される、組成物を放出することができるデバイスを介して投与される。
【0090】
本発明に記載の医薬組成物は、単回投与によって長時間前記タンパク質を放出する。
【0091】
本発明によれば、1つの実施態様によって、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)の製造方法であって、インスリンを約25〜60℃で1.5〜7.8の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子インスリンアセンブリ(SIA)を得る工程を含む方法が提供される。
【0092】
本発明の1つの実施態様においては、更に、PBSでSIAを洗浄する工程;およびSIAをPBSに再懸濁する工程を含む、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)の製造方法が提供される。
【0093】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の製造方法であって、カルシトニンを約25〜60℃で4.0〜8.0の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を得る工程を含む方法が提供される。
【0094】
更なる実施態様においては、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の製造方法は、更に、PBSでSCAを洗浄する工程;およびSCAを水または2%マンニトールに再懸濁する工程を含む。
【0095】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の製造方法であって、ペプチドタグ化-イブプロフェンを約25〜60℃で約3.5〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜192時間インキュベートし、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を得る工程を含む方法が提供される。
【0096】
追加の更なる他の実施態様においては、本発明は、更に、PBSでSIbAを洗浄する工程;およびSIbAをPBSに再懸濁する工程を含む、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の製造方法を提供する。
【0097】
本発明は、また、本発明の超分子エキセンディンアセンブリの製造方法であって、エキセンディン4を約25〜60℃で約2.0〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜192時間一定に攪拌しながらインキュベートし、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子エキセンディンアセンブリ(SEA)を得る工程を含む方法を提供する。
【0098】
本発明の超分子エキセンディンアセンブリの製造方法は、更に、PBSでSEAを洗浄する工程;およびSEAをPBSに再懸濁する工程を含む。
【0099】
1つの実施態様によって、1.5〜2.5の範囲のpHを有する水中の塩酸または酢酸;3.5〜5.5の範囲のpHを有する酢酸ナトリウムバッファー;pH6を有するリン酸バッファー(PBS)および4〜6の範囲のpHを有するクエン酸バッファーからなる群から選択される、タンパク質を溶解する溶液が提供される。
【0100】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリの製造方法は、37℃でタンパク質を溶解する工程を含む。
【0101】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリの製造方法は、pH7.2の溶液中でタンパク質を溶解する工程を含む。
【0102】
本発明に記載の超分子インスリンアセンブリの製造方法は、10時間溶液中でインスリンをインキュベーションする工程を含む。
【0103】
本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリの製造方法は、8時間溶液中でカルシトニンをインキュベーションする工程を含む。
【0104】
本発明に記載の超分子イブプロフェンアセンブリの製造方法は、32時間溶液中でペプチドとタグ化したイブプロフェンをインキュベーションする工程を含む。
【0105】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリの製造方法は、6〜192時間溶液中でタンパク質をインキュベーションする工程を含む。
【0106】
本発明は、更に、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、前記疾患または病気の緩和に有効な、本発明に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0107】
1つの実施態様においては、本発明は、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、前記疾患または病気の緩和に有効な、本発明の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0108】
本発明の他の実施態様においては、骨粗鬆症の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、骨粗鬆症の緩和に有効な、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0109】
更なる他の実施態様においては、関節炎および関節痛の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、関節炎および関節痛の緩和に有効な、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0110】
本発明に記載の医薬組成物を使用した治療方法においては、組成物は、筋肉内、腹腔内または皮下に投与される。
【0111】
本発明によれば、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、関節痛、癌および内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療のための、本発明の超分子インスリンアセンブリの使用が提供される。
【0112】
更に、本発明の1つの実施態様においては、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常の治療のための、本発明の超分子インスリンアセンブリの使用が提供される。
【0113】
本発明は、また、骨粗鬆症の治療のための、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリの使用を提供する。
【0114】
本発明は、関節炎および関節痛の治療のための、本発明に記載の超分子イブプロフェンアセンブリの使用を提供する。
【0115】
更なる他の実施態様においては、本発明は、安定で、プロテアーゼ耐性を有し、より長い保存期間を有する超分子タンパク質アセンブリを含む組成物を提供する。
【0116】
更なる他の実施態様においては、本発明は、安定で、プロテアーゼ耐性を有し、より長い保存期間を有する超分子タグ化ペプチドアセンブリを含む組成物を提供する。
【0117】
更なる他の実施態様においては、本発明は、安定で、プロテアーゼ耐性を有し、約10日〜150日以上の範囲のより長い保存期間を有する超分子タンパク質アセンブリを含む組成物を提供する。
【0118】
また、本発明の範囲には、治療タンパク質として有用なタンパク質またはペプチドの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、様々な超分子タンパク質またはペプチドアセンブリ(SPA)が含まれる。
【0119】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリ(SPA)を形成し得る任意のタンパク質またはペプチドは、本発明の範囲内に含まれる。
【0120】
更に、本発明に記載された方法によって超分子タンパク質アセンブリ(SPA)を形成し得る任意のタンパク質またはペプチドは、本発明の範囲内に含まれる。
【0121】
当業者には理解されるように、様々な溶液、例えばバッファーを、本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリの再懸濁および洗浄のために使用し得る。
【0122】
本願で使用される用語「治療上有効な量」は、望む病気もしくは疾患を治療、緩和もしくは予防する、または検出可能な治療もしくは予防効果を示す治療薬の量を指す。患者の正確な有効量は、患者の大きさおよび健康状態、症状の性質および程度、ならびに投与のために選択された治療または併用療法に依存する。特定の状況での有効な量は、一般的な実験によって求まり、臨床医の判断の範囲である。
【0123】
本発明の目的のためには、SIAの有効な投与量は、一般的に、投与される対象において、約0.1mg/kg〜約1.0mg/kgまたは約0.2mg/kg〜約2.0mg/kgまたは約0.5mg/kg〜約3.0mg/kgの本発明の組成物である。
【0124】
本発明の目的のためには、SCAの有効な投与量は、一般的に、投与される対象において、約0.1mg/kg〜約0.3mg/kgまたは約0.3mg/kg〜約0.8mg/kgまたは約0.5mg/kg〜約1.0mg/kgの本発明の組成物である。
【0125】
本発明の目的のためには、SIbAの有効な投与量は、一般的に、投与される対象において、約2.0mg/kg〜約10.0mg/kgまたは約10.0mg/kg〜約15.0mg/kgまたは約15.0mg/kg〜約30.0mg/kgの本発明の組成物である。
【0126】
本発明の目的のためには、SEAの有効な投与量は、一般的に、投与される対象において、約0.1mg/kg〜約0.5mg/kgまたは約0.5mg/kg〜約1.0mg/kgまたは約1.0mg/kg〜約3.0mg/kgの本発明の組成物である。
【0127】
医薬組成物は、また、医薬的に許容可能な担体を含み得る。用語「医薬的に許容可能な担体」は、治療薬(例えば、抗体またはポリペプチド、遺伝子および他の治療薬)の投与のための担体を指す。当該用語は、それ自身が組成物を投与した個体に有害な抗体の産生を誘導せず、過度の毒性をもたらさず投与することができる任意の医薬用担体を指す。適した担体は、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子とし得る。このような担体は、当業者に良く知られている。治療用組成物中の医薬的に許容可能な担体は、液体、例えば水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールを含み得る。補助物質、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝物質等も、このようなベヒクル内に存在し得る。典型的には、治療用組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかの注射物質として調製される;注射前の液体ベヒクル内の溶液または懸濁物に適した固体形態も調製し得る。リポソームおよびネオゾーム(neosome)は、医薬的に許容可能な担体の定義に含まれる。医薬的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸の塩も、医薬組成物に存在し得る。
【0128】
医薬組成物は、様々な形態、例えば、顆粒、タブレット、錠剤、座薬、カプセル、懸濁物、軟膏、ローション等で調製し得る。経口および局所使用に適した医薬のグレードの有機または無機担体および/または希釈剤は、治療上活性な化合物を含む組成物を調製するために使用し得る。当該業界で知られた希釈剤は、水性媒体、植物性および動物性油および脂肪を含む。安定化剤、湿潤および乳化剤、浸透圧を変更する塩または適切なpH値をもたらすバッファー、ならびに皮膚浸透促進剤を、補助剤として使用し得る。
【0129】
本発明に記載の医薬組成物は、代謝障害、特に糖尿病、ならびに他の慢性炎症疾患、例えば、関節リウマチ、骨粗鬆症、慢性的な炎症性および末梢性疼痛、敗血症、およびペプチド、タンパク質または低分子薬剤を使用した連続的かつ長期間の治療が必要なアレルギーの治療に有用である。
【0130】
本発明に記載の組成物は、関連性のある/適用可能な治療用タンパク質の超分子タンパク質アセンブリを含み、多くの慢性疾患および急性症状の処置に適用可能である。
【0131】
本発明に記載の組成物は、治療用タンパク質のオリゴマー、特に、タンパク質の持続的放出のためのタンパク質の超分子アセンブリを含む。
【0132】
幾つかの広く使用されているバイオ医薬、例えば、インスリン、グルカゴンおよびカルシトニンは、アミロイドの形成を誘導し得る。可溶性前駆体タンパク質と比較して、アモルファス凝集体は、アミロイド形成の前触れとして形成され、新規な特性、例えば増大した安定性、プロテアーゼ耐性、自己増殖、より長い保存期間、高度に組織化された構造を獲得し、そして、純粋な分子の濃縮されたコンパクトな供給源として利用し得る。
【0133】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリは、α-ヘリックスおよびβ-シートコンポーネントの両方を有する規定の構造で存在する。前記した特徴的な構造を取ることによって、溶液中で、天然のインスリン分子からの可溶性の変化や構造の変化をもたらす。重要なことには、この超分子構造からのインスリンモノマーの放出は、生物学的に活性であり、それ故、天然のインスリン構造と類似している。新規の分解特性が、形成された超分子構造に付与されており、これにより、それ自身がプロドラッグとして作用する。このプロドラッグ形態においては、インスリン感受性脂肪細胞のシグナル伝達事象またはグルコース恒常性に何ら作用も影響も及ぼさないことが見出されている。プロドラッグは、in vivo注射の場所または部位からのインスリンモノマーの放出によって、薬物へと転換する。in vitroおよびin vivoの両方の結果によって、グルコース恒常性ならびにI型およびII型糖尿病について通常評価される他の臨床パラメーターに影響を及ぼす生物学的に活性なインスリン分子を放出する、前記調合物の独自性が立証された。
【0134】
本発明は、糖尿病の処置に有用な超分子インスリンアセンブリを含む組成物を提供する。超分子インスリンは、インスリンのアモルファスおよび発生期(nascent)の線維状オリゴマーのハイブリッドであり、生物活性インスリンの放出のための除放性調合物として機能する。グルコース制御ホルモンであるインスリンは、環境に依存して、ヘキサマー、ダイマーおよびモノマーを含む異なるオリゴマー状態の混合物として平衡状態で存在する。膵分泌ベヒクルにおいては、インスリンは、生理学的pHでヘキサマーとして保存されるが、受容体とはモノマーとして相互作用する。変性条件下、例えば低いpH下では、または、強変性剤の存在下では、インスリンは凝集し、アミロイドフィブリルを形成する(Paul Bevan Insulin signalling. J. Cell Sci., 114, 1429-1430 (2001))。
【0135】
本発明の1つの実施態様によって、代謝異常(特に糖尿病)のような様々な疾患の処置のためのタンパク質の超分子オリゴマーの製造方法を提供する。本発明者は、また、他の急性慢性疾患、例えば、骨粗鬆症、炎症性および慢性的な疼痛、関節リウマチ、関節痛、癌、内毒素性ショック等についても、特許請求の範囲に記載し、これらにおいては、ペプチドを変換する類似のアプローチまたはこのような変換した「超分子オリゴマー化タンパク質またはペプチド」に結合した薬剤分子を提示する類似のアプローチ、およびこれらの天然の薬剤のデポ剤(depot)としての使用は、良好な結果をもたらした
【0136】
本発明に記載のインスリンの超分子オリゴマーは、6.8〜7.8の範囲の、好ましくは7.2のpHで調製する。
【0137】
本発明は、インスリンモノマーの持続放出が可能な超分子インスリンアセンブリを含む組成物を提供する。特定の超分子インスリンアセンブリ(SIA I、II、IIIまたはこれらの組み合わせ)を含む組成物は、より良い血糖コントロールを達成するのに有用である。
【0138】
本発明は、インスリンの持続放出を達成することによって、より厳密な血糖コントロールを達成するのに有用であるインスリンオリゴマー、超分子インスリンアセンブリIIを提供する。超分子インスリンアセンブリIIを、皮下または筋肉内に投与した場合、STZ誘導糖尿病ラットにおいて、基礎的な濃度のインスリンを、約10日〜180日以上の範囲にわたる長期間維持し続け、同時に、厳密な血糖コントロールを保ち続けるので、それ故、糖尿病に対する長期間続く治療を提供できる。
【0139】
本発明によれば、1つの実施態様によって、筋肉内または皮下投与した場合に0.1-1.5ng/mlの範囲のインスリンモノマーの持続放出をもたらし、少なくとも約180日日間存続する、超分子インスリンアセンブリIIを含む組成物が提供される。
【0140】
本発明の他の実施態様によって、超分子インスリンアセンブリIIを含む組成物であって、超分子インスリンアセンブリIIから放出されるインスリンモノマーの量が血清中0.5-1.5ng/mlである、組成物が供給される。
【0141】
本発明の実施態様においては、インスリンの超分子オリゴマーを含む組成物の血中グルコース濃度に対するin vivo効果は、STZ誘導糖尿病ラットを用いて証明された。
【0142】
本発明の他の実施態様によって、約50μg〜約400μgのインスリンの範囲の投薬量を試験期間モニターする、超分子インスリンアセンブリを含む組成物の投薬量が提供される。
【0143】
本発明の他の実施態様によって、投薬量が200μgのインスリンである、超分子インスリンアセンブリを含む組成物の投薬量が提供される。
【0144】
本発明の他の実施態様によって、投薬量が100μgのインスリンである、超分子インスリンアセンブリを含む組成物の投薬量を提供する。
【0145】
本発明の更なる他の実施態様においては、インスリン分解酵素活性(IDE)を注射部位内および周辺部で約10日〜180日以上の範囲の期間惹起しない、超分子インスリンアセンブリを含む組成物が提供される。
【0146】
本発明の更なる他の実施態様においては、患者の血清においては、約10日〜150日以上の範囲の期間、抗-インスリン抗体が存在しない。
【0147】
更なる他の実施態様においては、本発明は、安定で、プロテアーゼ耐性であり、約10日〜150日以上の範囲の保存期間を有する、超分子インスリンアセンブリを含む組成物を提供する。
【0148】
本発明の更なる他の実施態様においては、制御された方法で長時間一気に迅速な放出が生じることなく、インスリンモノマーを放出することができる、超分子インスリンアセンブリを含む組成物が提供される。転換のカイネティクスは、in vivoおよびin vitroの両方で制御し得る。
【0149】
更に、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリを含む組成物は、患者が毎日のインスリンの複数回投与の必要性から開放され、長期間の持続効果を有する単回投与剤として使用し得る。
【0150】
本発明に記載の超分子インスリンアセンブリを含む組成物は、不意のインスリンの大量の放出を示すことはなく、糖尿病患者において低血糖状態を防ぐ。
【0151】
本発明に記載の超分子インスリンアセンブリを含む組成物は、一定の速度で、in vitroおよびin vivoの両方でインスリンモノマーを放出することができる。
【0152】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリのより高いオリゴマー段階によって、糖尿病患者において低血糖が続くことなく、厳密に制御された血糖コントロールを達成する。
【0153】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリのより高いオリゴマー段階によって、I型糖尿病の患者において低血糖が続くことなく、厳密に制御された血糖コントロールを達成する。
【0154】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリのより高いオリゴマー段階によって、II型糖尿病の患者において低血糖が続くことなく、厳密に制御された血糖コントロールを達成する。
【0155】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明の超分子インスリンアセンブリまたは超分子インスリンアセンブリを含む組成物で治療した場合に、患者の体重の突然の増加はもたらされない。
【0156】
本発明の更なる他の実施態様においては、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)の患者の血中グルコースプロファイル中に、超分子インスリンアセンブリIIからの生物活性インスリンモノマーの放出中に遅滞期は見られず、フリーのインスリンの投与と類似している。
【0157】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリIIからのインスリンモノマーのin vivo放出について、ゼロオーダーのカイネティクス(zero order kinetics)または持続放出が観察される。
【0158】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリIIから放出されたインスリンは、可溶性インスリンの生物学的機能と同等である。
【0159】
更に、本発明の他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリの毒性は、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)、総ビリルビン、ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、血清総タンパク質、血清アルブミン、血清グロブリン、血清A/G比、腎臓機能試験(KFT)、白内障形成、脂肪組織重量、体重および外観についての生物学的アッセイを実施することによって、除外される。
【0160】
更なる他の実施態様においては、グルコース注入速度は、処置動物で同じに保つ。このことにより、注入部位でデポ剤から放出されたモノマーは生物学的に活性となり、グルコースを取り込むように筋肉および肝臓を刺激することが結論づけられる。
【0161】
更なる他の実施態様においては、MTTアッセイを、MCF7細胞を用いて、SIA IIから放出されたインスリンモノマーの不変構造および結合動力学を確認するために、実施した。
【0162】
更に、本発明の他の実施態様においては、雄のWistarラットを、他の化学的化合物アロキサンを使用して糖尿病とした。これらの糖尿病ラットを、更にSIA IIで処置したところ、STZ誘導糖尿病ラットの結果と類似の結果を示した。厳密な血糖コントロールが観察された。
【0163】
本発明の更なる他の実施態様においては、C57BL/6マウスを、ストレプトゾトシンを使用して糖尿病とし、その後、SIA IIで処置したところ、正常の血糖濃度を示した。
【0164】
本発明の他の実施態様では、超分子インスリンアセンブリは、超分子インスリンアセンブリ末端からの活性ペプチド薬剤の制御された放出に有用で安定なデポ剤である。
【0165】
本発明の1つの実施態様によれば、超分子インスリンアセンブリIIは、糖尿に対して長時間持続する治療を付与することができる。
【0166】
他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリの調製に使用されるインスリンは、好ましくは、組換えヒトインスリン、ウシおよびブタインスリンである。
【0167】
更なる他の実施態様においては、本発明に記載の、超分子インスリンアセンブリIおよびII(SIA IおよびII)またはこれらの組合せを含む組成物は、II型糖尿病を誘導すためにストレプトゾトシンで処置した動物対象において血中グルコース濃度を下げることができる。
【0168】
本発明の他の実施態様では、超分子インスリンアセンブリ(SIA IおよびII)とのII型糖尿病の治療のための補助療法として、ペプチド配列G-N-N-Q-Q-N-YとC末端でタグ化したエキセンディン4(エキセンディン4aと称する)によるオリゴマーアセンブリの形成を利用する。
【0169】
更に、本発明の他の実施態様においては、超分子オリゴマー複合体は、エキセンディン4を用いて形成された。
【0170】
更なる他の実施態様においては、より速い速度でインスリンモノマーを放出するSIA Iを、II型糖尿病(DM II)のラットに投与した。
【0171】
本発明の1つの実施態様によれば、SIA IIも、治療のためにDM IIラットに投与した。
【0172】
更なる他の実施態様においては、SIA IおよびIIの両方で処置した糖尿病ラットは、食前および食後の両方の段階で、より高い側に近いほぼ正常の血糖値濃度を示した(180±15mg/dl)。
【0173】
本発明の更なる他の実施態様においては、注射したSIA IIの投薬量は、皮下および筋肉内の両方の2つの場所で150μgであった。
【0174】
本発明の他の実施態様により、SIA IおよびIIの、30日間までの正常血糖値に近い濃度に維持する能力を実証する。
【0175】
更なる他の実施態様においては、インスリン治療とともに行うエキセンディン4aの投与によって、45日間まで正常血糖値に近い濃度(135±10mg/dl)を維持することができ、DM IIを治療するためのより良い調合物であった。
【0176】
更に、他の実施態様においては、インスリンモノマーを放出するが、非常に遅い速度で放出する(0.05-0.3ng/ml)SIA IIIは、境界型糖尿病患者、すなわち前糖尿病患者または(グルコース負荷試験において)治療として非常に少量のインスリンを必要とする予後不良の患者の治療に有用であり得る。
【0177】
本発明の更なる他の実施態様においては、糖尿病ラットの血清中で検出されるヒトインスリンの濃度は、約0.7-0.85ng/mlである。
【0178】
本発明の更なる他の実施態様においては、様々な血清パラメーター、例えばトリグリセリド(TAG)、遊離脂肪酸(FFA)を、治療の有効性を実証するために測定した。
【0179】
更なる他の実施態様においては、血清中のTAGの濃度は、インスリンSIA+エキセンディン4aで処置したラットについては0.45-0.6mmol/lの範囲であり、ほとんどコントロールと同等であった。
【0180】
更に、他の実施態様においては、血清中のFFA濃度を測定したところ、インスリンSIA+エキセンディン4aで処置したラットについて約0.85-0.9mmol/lであり、ほとんどコントロールと同等であった。
【0181】
本発明の更なる他の実施態様においては、処置した動物の体重の増加は、ほとんどコントロールラットと同等であった。
【0182】
更なる他の実施態様においては、現状の方法を、ペプチド、タンパク質または低分子を使用した持続的かつ連続的な治療が必要である慢性的炎症性疾患に拡張することができる。
【0183】
本発明の他の実施態様は、カルシトニン、エキセンディン4、ペプチドGNNQQNYタグ化イブプロフェンの超分子アセンブリの形成および様々な疾患を処置するためのアセンブリの治療的使用に関する。
【0184】
本発明の更なる他の実施態様においては、サケカルシトニンの超分子オリゴマーを、望む対象における骨粗鬆症の治療のために使用した。
【0185】
本発明の1つの実施態様によれば、サケカルシトニンによるアミロイドフィブリルの形成は、濃度依存的であり、44時間までには完全に形成される。
【0186】
更なる他の実施態様においては、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)I、IIおよびIIIは、それぞれ、6、8および12時間までに形成される。
【0187】
更に、本発明の他の実施態様においては、SCAからの遊離のカルシトニンの放出は、インスリンの場合のように、(小さい体積で)釣鐘曲線に従い、(大きい体積の水性溶媒で)透析膜を介して連続的に放出される。
【0188】
本発明の更なる他の実施態様においては、完全に成長したフィブリルからのカルシトニンモノマーの放出は無視してよいレベルであった。
【0189】
更なる他の実施態様においては、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を、2.5μl/hの速度でカルシトニンモノマーの制御された除放放出が達成されるAlzetポンプに導入した。
【0190】
本発明の1つの実施態様によれば、卵巣切除したラットに、2%マンニトール中に200μgのカルシトニン(CT)か超分子カルシトニンアセンブリ(SCA、2mg/ml)を含む皮下注射によって断続的に、または、Alzet浸透圧ミニポンプによって連続的に、ベヒクルまたはヒト/サケカルシトニンを投与した。
【0191】
更なる他の実施態様においては、一日おきに、8U/kg b wtの投薬量を、卵巣切除したラットに、ポンプを介して与え、16U/kg g wtを皮下に与えた。
【0192】
更なる他の実施態様においては、デメクロサイクリンおよびカルセインを、それぞれ、屠殺の10および3日前に、15mg/kg b wtの投薬量で投与した。
【0193】
本発明の1つの実施態様によれば、カルシトニンの血清濃度は、SCAで処置したラットで、他のグループのラットと比較して、より高い濃度(19pg/ml)で維持された。
【0194】
本発明の更なる他の実施態様においては、カルシトニンの血清濃度を、SCAを含む単一のポンプを用いて、60日間までより高い濃度で維持した。
【0195】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子カルシトニンで処置したラットは、ベヒクルを投与した卵巣切除したラット(体重が実験の間に約11%増加し血清中のカルシウムおよびリン濃度が増加した)と比較して、体重、カルシウムおよびリン濃度の僅かな増加が示された。
【0196】
更に、本発明の他の実施態様においては、処置した動物の血清中には、無視できるレベルの濃度のサケカルシトニンに対する抗体が存在していた。
【0197】
本願の実施例1は、超分子インスリンアセンブリIIの製造方法を提供する。図により、Thioflavin T(Th-T)蛍光を使用することによってモニターしたインスリンフィブリル形成(ヒトおよびウシの両方)の詳細が提供される(Le Vine, H. Quantification of β-Sheet Amyloid Fibril Structures with Thioflavin T. Methods Enzymol 309, 274-284 (1999))。ウシインスリンによるフィブリル形成は、インスリンを180rpm、37℃で、pH7.0(50mM PBS)およびpH2.0(水中の塩酸)で攪拌した場合に、Th-T蛍光の取得によって示された(図1)。Th-T蛍光の増加が、インスリンフィブリルへの結合が原因でもたらされ、pH7.0でインスリンをインキュベートした場合、48時間で最大値に達したのに対して、pH2.0ではフィブリル形成は迅速であり、それ故、Th-T蛍光は20時間で最大値になった。図1は、ウシおよびヒトインスリンの両方によるフィブリル形成を比較する。
【0198】
本願の実施例2は、超分子インスリンアセンブリ-IIからのインスリンモノマーの放出のカイネティクスを提供する。インスリンの超分子インスリンアセンブリ形態は、長時間にわたるインスリンモノマーの持続放出のためのリザーバーとして働く(図2a)。インスリンアミロイドおよび様々なインスリンの超分子アセンブリからのインスリンモノマーの放出を求め、図2bおよびcに示す。完全に形成したアミロイドファイバーは、pHに関係なく、無視できるレベルのインスリンを放出した。pH2.0では、超分子インスリンアセンブリ中間体、特に、超分子インスリンアセンブリIIは、非常に遅い速度でインスリンを放出し、このことは、これらのオリゴマーが頑丈であり、しっかりと会合していることをしている。しかしながら、pH7.0では、中間体(超分子インスリンアセンブリIIと称される)は、600nmで0.9-1.3の濁度を示し、かなりの速度でインスリンを放出する。吸光度280nmでの15±5日間にわたるインスリンモノマーの放出のリニアな増加が観察される。SIAからのインスリンの放出が1mlの一定の体積下で観察した場合に、釣鐘曲線が観察された(図2d)。このことは、オリゴマー形成進行の可逆性および遊離のインスリンとSIAとの間の平衡の存在を実証する。放出されたサンプルのチロシン蛍光によって、図2aで示されたこれらの観察が裏付けられた。インスリンアミロイド中間体、超分子インスリンアセンブリII(或いは、所謂インスリンプレ-アミロイドII)は、一時間当り2-4μM(0.4-0.6IU)のインスリンモノマーのin vitro持続放出の要件を満たし、これによって、身体の内部で基礎的なインスリン濃度を保つための、一定で遅いin vivo放出が達成される。
【0199】
実施例3は、コンゴ-レッド(CR)結合を使用した、超分子インスリンアセンブリの特徴を提供する(Klunk, W.E., Jacob, R.F. & Mason, R.P. Quantifying amyloid by Congo red spectral shift assay. Methods Enzymol 309, 285-305 (1999))。Th-Tのように、CRも、アミロイドのβ-シートがリッチな構造に特異的に結合し、その検出に一般的に使用されてきた。PBS中の50μM CRと1時間37℃でインキュベートしたサンプルに結合するCRを、400-600nm領域をスキャンすることによって、その最大吸光度のレッドシフトによりモニターした。図3は、超分子インスリンアセンブル(rHおよびウシ)がCRへの弱い結合を示したのに対して、pH2.0および7.0で完全に成長したファイバーは、顕著な結合を示したことを示す。
【0200】
実施例4においては、超分子インスリンアセンブリI、IIおよびIIIが、ATR-FTIRを使用することによっても特徴付けられている。各段階に対応する異なったスペクトルが観察された(図4)。IRバンドの低い周波数へのシフトが観察される。超分子インスリンアセンブリIIは、1647-1645cm-1でシャープなピークを有するのに対して、完全に形成されたインスリンフィブリル(アミロイド)は、ウシおよびrHインスリンそれぞれについて、1630-1628cm-1でピークを有する。超分子インスリンアセンブリIIのFTIRスペクトルは、CRデータと良く一致しており、このことは、ランダムコイル構造の含量が増加したが、タンパク質がいまだらせん構造を多く有していることを示す。
【0201】
pH2.0および7.0で形成したファイバーの形態を、実施例5および6において示す原子間力顕微鏡(AFM)および透過電子顕微鏡(TEM)によって評価した。pH7.0およびpH2.0での天然のインスリン分子(ウシおよびrHの両方)は、1.3±0.21nmの高さを有するランダムな分布を示し、これは、インスリンモノマーの寸法(1.11nm)およびインスリンダイマーの寸法(1.49nm)と相関していた(図5a)。pH7.0でのフィブリル化工程の中間体を、ウシインスリンについて図5(b-d)に、rHインスリンについて図5(e-g)に示す。SIA-Iは、真珠様配置を有する伸長クラスターを表す。これらの間に、12±2nmの高さを有する幾つかの伸長した線形の粒子が存在し、このことは、より高度なオリゴマー状態への更なる会合を示唆している。SIA-II中間体は、ウシおよびrHインスリンの両方において、超-オリゴマー構造組織を備えた特徴的な構成要素を有する前記した伸長クラスターの線形会合として観察される(図5(cおよびe))。SIA-III(SIA-IIに続くフィブリル段階)は、より高度なオリゴマー高度の密度が増加したことが示された。pH7.0で完全に成長したファイバーは、インスリンアミロイドの典型的なクロスβ構造を示す(図5h)。pH2.0で6-7時間のフィブリル化工程の中間体によって、高さ7.2-8.3nmの2つのフィブリルの側面会合が明らかになり、20時間後に、10-12nm幅の大きなねじれたファイバーが観察された(図5(iおよびj))。
【0202】
実施例6は、インスリンの可能性あるアセンブリの存在を評価するための透過電子顕微鏡(TEM)を示す。TEM顕微鏡写真図は、超分子インスリンアセンブリII段階における幾つかのアモルファスでより高度なオリゴマー構造の存在を示す(図6a)。超分子インスリンアセンブリII後の段階では(図6b)、図6cおよびdで示されるような、より線維状の構造を有する。対照的に、インスリンをpH2.0でインキュベートした場合は、大量の線維状形態が存在する(図6e)。
【0203】
実施例7は、インスリンアミロイドおよび超分子インスリンアセンブリ形態の有効性を試験するために使用した動物モデルの詳細を示す。著者らは、SIAの糖尿病の治療における仮定および治療の有効性を試験するための4つの異なる糖尿病モデル(すなわち、(a)STZ処置ラット、(b)アロキサン処置ラット、(c)STZ処置マウス、(d)STZ処置ウサギ)を使用した。
【0204】
投与量を標準化するために、50μg、100μg、200μgおよび400μgの超分子インスリンアセンブリ-IIを、糖尿病ラットに、皮下に注射し、或いは代替的に筋肉内に注射した。図7aおよびbに要約されるように、200μgの超分子インスリンアセンブリを使用した場合に135および160日(それぞれ、ウシインスリンおよびヒトインスリン)であったことと比較して、50および100μgの超分子インスリンアセンブリの単回投与によって、それぞれ、10日および30日間のみで正常血糖値に近い濃度を維持していた。400μgの投与の場合は、投与した経路に関わらず、突然の非空腹時正常血糖や空腹時低血糖が観察され、このことは、ウシインスリンのSIAデポ剤からの、インスリンモノマーの基礎濃度の初期ボーラス投与の放出を示唆している。200μgの超分子インスリンアセンブリの治療薬としての使用は、詳細な長期のプロスペクティブ研究のために選択された。
【0205】
実施例8は、インスリンの超分子インスリンアセンブリ形態を用いた糖尿病動物の処置を示す。複数のグループに分けたSTZ-誘導性糖尿病ラットを、インスリンで(4IU/kg、IP)、超分子インスリンアセンブリで(200μg、SCおよびIMの両方)でそれぞれ処置し、超分子インスリンアセンブリ治療の血中グルコース濃度に対するin vivo効果を試験した。加えて、PBSで処置した糖尿病ラットのグループおよび正常なラットのグループを、糖尿病コントロールおよび非-糖尿病コントロールとした。ラットの食事前および食事後の血中グルコース濃度を、インスリンの生理学的な効果が観察されるまでの期間、モニターした。図8aおよびbにおいて示したように、200μgの超分子インスリンアセンブリを用いた処置によって、STZ-誘導性糖尿病ラットにおいて、超分子インスリンアセンブリデポ剤からのインスリンモノマーの持続的かつ遅い放出によって、インスリンの基礎濃度を保っていた。これによって、空腹時低血糖をもたらすことなく、非-空腹時の血中グルコース濃度を顕著に減少させた(図9aおよびb)。超分子インスリンアセンブリを皮下または筋肉内経路を介して注射するかによっては、如何なる顕著な差異も見出せなかった。遊離のインスリン(すなわち、その正常な同等物;非-超分子組織化形態)処置(4IU/kgの単回投与)の場合、毎日の血中グルコースは、非空腹時の値である350-450md/dlにまで減少し、空腹時には300-400mg/dlのみになった。糖尿病ラットに、インスリンを毎日腹腔内に与えたところ、高血糖血中グルコース濃度(300±100mg/dl)を維持した。血中グルコースが非常に高い濃度とならないように毎日の投与が必要である遊離のグルコース処置とは対照的に、超分子インスリンアセンブリの単回注射は、糖尿病ラットにおいて3ヶ月、空腹時低血糖(90±50mg/dl)をもたらすことなく、正常血糖値に近い濃度(150±60mg/dl)に達するのに十分であった。類似の結果が、図8bおよび9bに示すように、ヒトインスリンから形成された超分子インスリンアセンブリを用いて観察された。pH7.0および2.0で形成されたインスリンアミロイドの投与によっては、図10から明らかであるように、糖尿病ラットの血糖状態に何らの有効な効果ももたらさなかった。再度、正常な健康の指標である体重を、処置の全期間にわたって、全ての場合に、BGLとともにモニターした。図11に示すように、STZ処置直後に体重の最初の減少が見られたが、超分子インスリンアセンブリIIでの処置後の糖尿病ラットにおいては、体重増加が続き、超分子インスリンアセンブリで処置した動物の曲線は、非-糖尿病のコントロールの曲線とパラレルであった。それ故、超分子インスリンアセンブリIIの、糖尿病の長期間の治療における使用についての驚くべき効果は、通常の方法を凌駕する改善であっと考えられる。
【0206】
実施例11は、超分子インスリンアセンブリの連続的な方法でのインスリン放出の効果を評価するための、腹腔内グルコース負荷試験を示す。インスリンのin vivo放出をモニターした。放出されたモノマーの生物学的活性を、血液から血中グルコース処置によって評価した。実施した独立した実験の詳細を図12に示す。グルコース濃度を、絶食した正常およびSTZ処置ラットへのグルコースの投与に続く、PBS、超分子インスリンアセンブリIIおよびインスリンでの処置前(T0)、処置後30、90、150、270および330分に求めた。図12に示すように、インスリン注射、超分子インスリンアセンブリII処置またはin vitroで放出されたモノマー単独では、処置した動物におけるグルコース負荷を顕著に改善し、グルコース注入後の上昇した血中グルコース濃度を、1.5時間以内に、チャレンジ前の濃度へと戻した。
【0207】
実施例12は、超分子インスリンアセンブリ投与に対するウシおよびrHインスリンの血清インスリンの定量を示す(図13a)。血清インスリンは、ウシおよびrHインスリンSLA-IIについて、それぞれ、150および180日の期間まで検出可能であり、BGLの減少と対応していた。血中グルコース濃度の減少は、ウシおよびrHインスリンSIA-IIについて、それぞれ、150および180日間まで維持され、超分子インスリンアセンブリIIの単回投与を用いて20-25週より長く正常血糖値に近い値が維持された。固相ELISAを、インスリンSIA IIから放出された(正常血中グルコース値の維持を担う)インスリンの血漿濃度を定量するために実施した。予期されたように、PBSで処置した糖尿病ラットにおける検出できないレベルのインスリン(0.08ng/ml)と比較して、基礎的な、または僅かに基礎的な濃度を超えるインスリン放出が、超分子インスリンアセンブリで処置した糖尿病ラットにおいて達成された(0.5-1.2ng/ml)(図13aおよびc)。インスリンの持続放出(0.8-1.1ng/ml)が、投与経路に関わらず、注射した日から150-180日まで観察され、この放出は、超分子インスリンアセンブリで処置した動物における正常血糖値に近い値に貢献している。動物間でバラつきが見られたが、インスリン放出の顕著な値が,0.5-1.2ng/mlの範囲で達成された。この基礎的な濃度は、超分子インスリンアセンブリを使い切るまで、正常血糖値の値を維持するのに十分であった。しかしながら、インスリンで処置した糖尿病動物においては、比較的により高い血清平均濃度が検出されたが、動物間でバラつきの程度は大きかった。このことは、インスリン単独処置によるBGLの対象間バラつきが原因であった。血清インスリン濃度を、グルコースデータを既に示した、実施したグルコース負荷試験についても定量した。図13bは、IPGTT実験における、270分までのラットの血清中のウシインスリン値を示す。PBSのみを与えたSTZ処置ラットおよびコントロールの場合は、ウシインスリン値は、ほとんど無視して良いレベルであった(図13b)。一方、インスリン投与の場合、インスリン値は、30分間で〜0.9ng/mlに増加し、その後の期間減少した。類似のプロファイルが、遊離のインスリンに相当する末期に放出されたインスリンを使用した場合に観察された。これは、血中グルコース濃度の低下に続く、インスリンの取り込みおよび分解を原因とする血中グルコース濃度の増加に対応する。一方、超分子インスリンアセンブリ処置においては、ウシインスリン定量によって示されるように、血清中のインスリン濃度は0.8-0.9ng/mlに達し、30分間で基礎的な濃度に相当することとなり、その後の期間、一定濃度を維持していた。この維持された基礎的濃度によって、グルコース濃度を劇的に減少させ、動物を低血糖とする代わりに、正常血糖濃度がもたらされる。更に、ラットインスリンELISAを、コントロールラットおよびおSTZ処置ラットの両方についての血清インスリン濃度を評価するために実施した。図13cに示すように、ラットの基礎的インスリン濃度は0.501ng/mlであり、注入したグルコースに応答して、何倍にも増加する。STZ処置ラットの場合、基礎的なインスリン濃度は、STZによる膵臓B細胞の破壊によって、ほとんど無視できるレベルである。このことによって、超分子インスリンアセンブリ処置の場合に見られた血中グルコース濃度の低下がSIA IIから放出されたウシ/rHインスリンを原因とすることが、確認される。インスリンSIA IIの製造工程においては、ウシおよびrHインスリン以外の、これに限定されないがブタインスリンからなる群から選択されるインスリンが使用される。
【0208】
実施例13は、SIA IIの末端からのin vitro放出を証明および定量するためのインスリンのI125標識を提供する。標識したインスリンから形成される超分子インスリンアセンブリIIは、比放射能49912CPM/ml/μgを有する。50μlの超分子インスリンアセンブリ(4991200CPM)を、皮下と筋肉内に注入し、血中グルコース濃度をモニターし、血清サンプルを、0、30分、1時間、4時間、10時間、24時間、そして1日後、その後1日おきにまたは一週間に1回の頻度で回収した。血清1ml辺りのカウントを測定した(図14a)。示すように、血中グルコースプロファイルは、非標識SIA IIを用いた観察と同じであった。計算したCPM/mlは、処置日数に対してプロットした場合、ほとんど一定を保っていた(図14a)。しかしながら、30分-4時間で最初の高いカウントが存在しており、その後、徐々に、10時間で2000-3000の一定レベルに減少した。血中に放出されたインスリンの量を計算したところ、0.5-1.2ng/mlであり、EILSAで観察された血清のインスリンの基礎的濃度に対応するか、または基礎的濃度より若干高い程度であった(図14b)。更に、超分子インスリンアセンブリからの放出インスリンがモノマーであることを証明するために、異なる時点での血清を、トリシン-SDS-PAGEで分離し、蛍光体イメージャーを用いてX線像を得た。図15に示すように、血清中のバンドは、遊離のインスリンモノマーに対応し、バンドの濃さは、等量の血清をロードした場合に、長期間一定であった。バンドの濃さの低減が20日後に見られ、このことは、放射性標識自体の崩壊の効果が幾らかあるとともに、経過時間に伴う超分子インスリンアセンブリデポ剤の使用と枯渇を示す。
【0209】
実施例14は、注射したSIA IIからのインスリンモノマーの遅くかつ連続的な放出を評価するために実施した、高血糖クランプ法を記載する。1週間、1ヶ月および3ヶ月間隔で、高血糖状態を維持するための注入したグルコースの速度は、実験期間中、変わらなかった。このことは、注入部位で、デポ剤からのインスリン放出が一定であったことを示す。遊離のインスリンを投与したグループの場合、注入したグルコースの量は時間とともに減少し、これは、遊離のインスリンの連続的な供給の不存在下で筋肉および肝臓による血中グルコースの取り込みが減少したことが原因である(図16a-c)。
【0210】
実施例15は、細胞表面のインスリン受容体にインスリンが結合した後に始まる細胞内シグナル伝達カスケードによって媒介される脂肪組織における、インスリンのグルコース輸送および他の代謝事象に対する効果を提供する(Paul Bevan Insulin signalling. J. Cell Sci., 114, 1429-1430 (2001))。細胞内のインスリンの効果は、PI3K、AKTおよびERKのような細胞内メディエーターの活性化によって媒介される。PI3キナーゼおよびAktの活性によって、インスリン誘導性のグルコースの取り込みおよび細胞膜へのGLUT-4小胞輸送を媒介し、リポリーシスの阻害ならびに脂肪酸、グリコーゲン、タンパク質およびDNA合成の活性を含む様々な他のインスリン効果に関与する。一方、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)経路の活性化は、前駆脂肪細胞の成長因子に対する分裂促進応答に関連している。インスリンシグナル伝達の下流の最初のキナーゼであるPI3Kの濃度を調べた。図17aに示すように、PI3Kの濃度は、超分子インスリンアセンブリおよびアセンブリからin vitroで放出されたインスリンを使用した場合、コントロールと比較して、顕著に増加した。インスリンと比較して、顕著な差異は存在しなかった。総タンパク質およびAktの活性化のレベル、インスリンの作用の制御に重要なスレオニン/セリンキナーゼ、ならびに脂肪細胞の様々な代謝応答も評価した。p-Aktレベルの顕著な増加が観察され、これは、再度、遊離のインスリンで観察された応答と類似していた。総Aktタンパク質濃度に差異は無く、インスリンまたはその超分子インスリンアセンブリIIの存在下での発現に差異は見出せなかった。観察された一時的なプロファイルおよび脂肪細胞におけるAktリン酸化のレベルが、Akt活性の差異とパラレルであるかを評価するために、内因性Aktの基質であるGSK3βのリン酸化を、GSK3βおよびp-GSK3βに対する抗体を使用したイムノブロッティングによってモニターした。GSK3βは、Aktによってser-21で直接リン酸化され、リン酸化後に不活性化する。GSK3βのリン酸化は、遊離のインスリンまたは超分子インスリンアセンブリIIのいずれかで処置した脂肪細胞において、コントロールと比較して、数倍増加し、処置した細胞間で顕著な差異は存在しなかった。総GSK3βタンパク質レベルでは差異は見出せなかったので、このことは、処置後の発現では違いはなかったことを示唆している。それ故、AktおよびGSK3βの両方は、超分子インスリンアセンブリおよび超分子インスリンアセンブリからの放出インスリンに対して迅速かつ明確な応答を示し、コントロールとして使用した遊離のインスリンを用いた刺激で見出された応答に類似していた。ERKは、インスリン媒介性の脂肪細胞転写因子の制御および脂肪組織発達に関与しているので、超分子インスリンアセンブリおよびアセンブリから放出されたインスリンを用いた処置によって、脂肪細胞においてERKの活性化が見られた。インスリン、超分子インスリンアセンブリおよび超分子インスリンアセンブリから放出されたインスリンを用いた脂肪細胞の処置により、ERK 1/2の顕著な活性が、コントロールと比較して観察された。ERK 2のリン酸化は、ERK 1よりも2倍高く、このことは、処置によりERK 2がより発現していたことを示唆する。SIA、インスリンまたは血清処置細胞においては、ERK 1/2のリン酸化パターンに如何なる顕著な差異も存在しなかった。それ故、超分子インスリンアセンブリIIおよびインスリン処置細胞におけるERKリン酸化は、PI3K、AktおよびGSK3β媒介性シグナル伝達との関連で類似していた。インスリンまたはそのSIA-IIで処置した動物に由来する血清を培養した脂肪細胞に加えた場合に、シグナル伝達媒介因子の類似の活性が観察された(図17b)。これらのデータは、ともに、超分子インスリンアセンブリIIから放出されたインスリンは、インスリン自身のように、脂肪細胞においてインスリンシグナル伝達経路を活性化することができることを実証する。モノマー形態のインスリンは超分子インスリンアセンブリから多く放出されるので、観察された効果は、非常により好ましいものであった。
【0211】
実施例17は、インスリンの超分子インスリンアセンブリの組織および免疫組織化学の詳細を記す。超分子インスリンアセンブリで処置した糖尿病ラットを、注入日後1週間〜12週間での残存した超分子インスリンアセンブリの量の存在についてモニターした。皮下および筋肉組織における超分子インスリンアセンブリのデポ剤を、コンゴレッドを使用して検出した。皮下および筋肉組織切片を調製し、染色し、材料および方法で記したように分析した。超分子インスリンアセンブリ注入の24時間後に得られた組織は、コンゴレッドと効率的に結合することが見出され、より高い量の超分子インスリンアセンブリフィブリルの存在が確認された(図18)。コンゴレッド結合は、時間依存的に減少し、12週間後には無視できるレベルになり(図18a(i-x)およびb(i-x))、超分子インスリンアセンブリのデポ剤の末端からのインスリンの放出が確認された。同じ組織を、超分子インスリンアセンブリに起因する炎症についても、H&Eおよび免疫染色によってチェックした。代表的なスライドを、炎症細胞の存在について、H&E染色方法および免疫組織化学に供した(図18a(xi-xx)および18b(xi-xv))。
【0212】
LPS注入ラット(炎症性細胞の浸潤が、H&Eで染色した皮下および筋肉組織の両方で可視化された)と比較して(図19a(i-ii))、超分子インスリンアセンブリを注入した切片は、12週間後でさえ、如何なる炎症の徴候も示さなかった(図18a(xi-xv))。類似の結果が大腸菌に由来するLPSが注入部位で72時間後に多くの炎症性細胞を攻撃するのに十分であった、免疫染色スライドの場合も観察された(図19a(iii-iv))。一方で、そのような反応は、超分子インスリンアセンブリを用いて処置した動物では見られなかった(図18a(xv-xx)およびb(xi-xv))。これらの観察は、使用した超分子インスリンアセンブリの非毒性特性を裏付けるものである。pH2.0で形成したアミロイドは、皮下に注射した場合、図19bに示されるように、非常に効率的にコンゴレッド色素に結合する。更にその上、デポ剤は減少せず、完全に形成されたアミロイドからのインスリンモノマーの放出が生じていないというデータを裏付ける(図19b i-viii)。
【0213】
実施例18は、糖尿病のアロキサンモデルを記す。雄のWistarラットを、アロキサンを使用して糖尿病とし、血中グルコース濃度をモニターした。糖尿病ラットへの超分子インスリンアセンブリIIの投与によって、食事前および食事後の状態の両方において、血中グルコース濃度を、正常濃度近くに低減させ、120日間まで厳密な血糖コントロールを維持した(図20aおよびb)。血清インスリンの定量を、ELISAを使用して行った。注射の日から、ヒトインスリンの持続的かつ一定の放出が、処置したラットの血清で観察される(0.5-0.9ng/ml)(図20c)。それ故、糖尿病ラットにおけるグルコース濃度の低下によって見られた生理学的効果は、注射部位で形成されたSIA-IIデポ剤からのインスリンモノマーの連続放出が原因である。
【0214】
実施例19は、I型糖尿病における高血糖に関連した二次性合併症の低減を記す。I型糖尿病においては、インスリンの不十分な供給は、骨格筋におけるタンパク質分解の増加および脂肪細胞におけるリポリーシスを導く。糖尿病ラットは、骨格筋(〜20-40%)および腹部脂肪(>60%)の顕著な減少を示した(Nathan, D. M., Cleary, P. A., Backlund, J. Y., et al. Intensive diabetes treatment and cardiovascular disease in patients with type 1 diabetes. N. Engl. J. Med. 353, 2643-53 (2005))。対照的に、超分子インスリンアセンブリで処置した糖尿病動物は、これらの組織について標準的な体重を有しており、健康であった。糖尿病ラットおよびインスリン処置ラットにおける白内障の発症が観察された(図21)。SIA IIで処置した動物においては、白内障の発症は観察されなかったのに対して、非処置ラットの大部分が、図21で示すように、白内障を示した。更にその上、肝臓および腎臓(糖尿病で一般的に非常に悩まされる2つの主な身体の組織)の機能は、非処置または遊離のインスリン注入ラットと比較して、超分子インスリンアセンブリII処置ラットにおいては正常であった。この結果を表1にまとめる。
【0215】
心臓、腎臓および肝臓の切片を、糖尿病ラットに注入して12週後のSIA-IIのより高いオリゴマーの沈着について、コンゴレッド色素を使用して可視化して試験した(図22)。オリゴマーの沈着は、いかなる組織切片においても観察されなかった。
【0216】
実施例20は、インスリン分解酵素(IDE)の検出およびインスリンに対する抗体のスクリーニングの詳細を示す。I型糖尿病のインスリン皮下抵抗は、稀な症状であり(Paulsen, E.P., Courtney, J.W. & Duckworth, W.C. Insulin resistance caused by massive degradation of subcutaneous insulin. Diabetes 28, 640-645 (1979) and Freidenberg, G.R., White, N., Cataland, S., O’Dorisio, T.M., Sotos, J.F. & Santiago, J.V. Diabetes responsive to intravenous but not subcutaneous insulin: effectiveness of aprotinin, N. Engl. J. Med. 305, 363-368 (1981))、皮下に注射されたインスリンの生物学的活性の欠如として定義される;それにもかかわらず、静脈内に注入されたインスリンの効率は維持される。この症状は、主に皮下組織におけるIDEによるインスリン分解の増加が原因である。IDEは、特異的にインスリンを分解し(Duckworth, W.C., Bennett, R.G. & Hamel, F.G. Insulin degradation: progress and potential, Endocr. Rev. 19, 608-624 (1998))、部分的に分解されたインスリンを、循環液に再吸収させ、免疫原性を増大させるが、生物学的活性を消失させる。IDEは、インスリン応答性の組織およびインスリン非感受性細胞、例えば、単球およびリンパ球に存在する。超分子インスリンアセンブリで処置した動物におけるこのような抵抗性の発症をチェックするために、IDEの生物学的活性および抗-インスリン抗体の存在を、方法のセクションで記載したように求めた。IDE活性は、超分子インスリンアセンブリで処置した動物に由来する全ての血清サンプル(1-12週)において無視できるレベルであった(図23)。同じように、処置の12週間後でさえ、抗-インスリン抗体は存在しておらず、このことは、IDE活性が存在していないことを裏付けていた(図24)。
【0217】
超分子インスリンアセンブリIIから放出されたインスリンモノマーが、その構造またはその結合動力学において何らかの変化をもたらしたかを調べるために、MCF 7細胞ラインを使用してMTTアッセイを実施した。MCF 7細胞の増殖は、SIAを培養液に加えたときに、天然のインスリンを加えた細胞の増殖と同じようであった。更にその上、形成したSIA IIに由来する放出したモノマーは、また、細胞増殖の同じカイネティクスを示した。インスリン様増殖因子Iを、MCF 7細胞の増殖について、ポジティブコントロールとして使用した(図25)。インスリンおよびIGF 1は、類似の構造を有し、他方の非存在時に、それぞれが他方の受容体に結合し得る。しかし、IGF 1が分裂促進性であるのに対して、インスリンのインスリン受容体またはIGF受容体への結合は、細胞の増殖を引き起こさない。それ故、SIA IIから放出されたモノマーは、天然のインスリンと同じ結合カイネティクスを有し、如何なる構造的変化も生じない。
【0218】
実施例21は、マウスにおける糖尿病の誘導についてのストレプトゾトシンモデルを記す。マウスにおけるヒトおよびウシSIAについての用量応答性を、STZを使用して糖尿病としたマウスにおいて調べた。20、50、100および200μgという様々な量の応答性SIAの糖尿病マウスへの投与によって、それぞれ、5、15、30、120日間、正常血糖値/ほぼ正常血糖値を維持した(図26a-c)。
【0219】
実施例22は、ウサギにおける糖尿病の誘導についてのストレプトゾトシンモデルを記す。rH-インスリンSIA-IIの糖尿病ウサギへの1mg/体重kgの投与によって、少なくとも80日間、正常血糖値/ほぼ正常血糖値を維持した(図27)。
【0220】
実施例23は、エキセンディン4とともに超分子インスリンアセンブリを用いて実施した実験の詳細を示す。II型糖尿病の治療のために、エキセンディン4とともに超分子インスリンアセンブリを、補助療法として投与した。この組み合わせ療法の実施により、糖尿病ラットにおいて、30日間まで、血中グルコース濃度を低減し、正常血糖値近くに維持することができた(図28)。表2で示すように、TAGおよびFFAの濃度も、これらの濃度が血清中では1.5倍増加したインスリンのみまたはPBSのみで処置したラットと比較して、ほぼ正常近くに維持された。
【0221】
本発明の超分子インスリンアセンブリ調合物は、長期間にわたるインスリンモノマーの放出という驚くべき結果を示す。更に、本発明の超分子インスリンアセンブリIIは、インスリンの急激な多量の放出をもたらすことはなく;STZ処置糖尿病ラットにおいて低血糖段階を阻止する。上記の予期できなかった結果を証明するために、pH7.0でのインスリンのフィブリル化工程の間に得られたインスリン超分子アセンブリIIの中間体を評価した。中間体超分子インスリンアセンブリIIは、長期間にわたって、一定の速度でインスリンモノマーを放出することが示される。選択された中間体(超分子インスリンアセンブリII)は、顕著なコンゴレッド結合は示さず、このことは、アミロイド段階へは進展しないことを示し、AFM分析によって、優勢な種として、伸長オリゴマーの線形会合の存在が確かめられた。この特徴的な構造の高さは、18±5nmであり、これと比較して、より大きくねじれた完全に成長したファイバーの高さは、12±5nmであり、このことは、超分子インスリンアセンブリを形成する伸長オリゴマーは膨張し、天然様構造を保持していたことを示唆する。類似の非-線維状構造が、TEM試験でも観察される。インスリンの生物学的有効性は、一般的に、血液中の糖濃度を制御する能力によって評価される。血中グルコース濃度の減少は、最も顕著であり、治療上、最も重要なインスリンの効果である。超分子インスリンアセンブリの単回投与で処置したSTZ-誘導性糖尿病ラットにおける血糖コントロールの有効性を、毎日一回のインスリン注入と比較して、評価した。超分子インスリンアセンブリ処置およびインスリン注射の両方によって、高血糖の重篤性を低減した。インスリン処置と比較して、本発明の超分子インスリンアセンブリの単回投与は、約150-180日の期間、糖尿病動物において、ほぼ正常血糖値を維持する(120mg/dL)。
【0222】
本発明は、更に、血中グルコース濃度の制御における、超分子インスリンアセンブリII治療の効果を評価する。超分子インスリンアセンブリで処置した糖尿病の動物を、一晩絶食させた。これらの絶食した動物は、正常の範囲内(60-100mg/dl)の空腹時血中グルコース濃度を維持することができ、食前の低血糖は観察されなかった。同時に、これらのデータは、超分子インスリンアセンブリIIのより高度なオリゴマー状態が、一般的なインシュリン治療と比較して、糖尿病動物において、空腹時に低血糖をもたらさず、厳密に制御された血糖コントロールを達成することを示す。
【0223】
本発明は、更に、超分子インスリンアセンブリII治療の、体重に対する効果を評価する。腹腔内グルコース負荷試験を、重篤な高血糖症の場合における、超分子インスリンアセンブリの作用の発現を求めるために行った。IPGTT血中グルコースプロファイルにより、インスリンおよび超分子インスリンアセンブリ治療の両方が、30分以内に効果をもたらすことが示され、このことは、超分子インスリンアセンブリIIデポ剤からの生物活性なインスリンモノマーの放出においては如何なる遅滞期も存在しないことを示唆している。
【0224】
本発明は、超分子インスリンアセンブリからのインスリンのin vivo放出プロファイルを、ELISAを使用した血清中のウシ/ヒトインスリン定量によって、提供する。in vitroで観察されるシグモイド型の放出カイネティクスと対照的に、超分子インスリンアセンブリからのインスリンモノマーのin vivo放出は、持続放出のために予期されたように、ゼロ次カイネティクス(zero order kinetics)に従った。正常血糖値を維持するためのインスリンの基礎および基礎レベルを超える(0.5-1.2ng/ml)持続放出が見られ、これは、治療の期間と良く関連していた。上記放出カイネティクスを証明するために、インスリンを125Iで放射線標識し、125I標識した超分子インスリンアセンブリを、STZ処置動物に、皮下または筋肉内のいずれかで注入した。インスリン放出の量を、CPM/mlをモニターすることによって、測定した。CPM/ml/μg(49912)を、特定の時点における血清中に放出されたインスリンの定量のために使用し、これは、ELISAを使用して定量したウシインスリンの量とパラレルであった。カウントを測定後、血清サンプルを、トリシン-SDS-PAGE上で分離した。得られた蛍光イメージは、インスリンモノマーに対応するバンドを示した。超分子インスリンアセンブリのデポ剤から放出されたインスリンモノマーは、インスリン応答性脂肪細胞においてインスリンシグナル伝達カスケードを有効に誘導した。超分子インスリンアセンブリから、in vitroおよびin vivo(血清)で放出されたインスリンは、単離された脂肪細胞に加えた場合、細胞内メディエーター(すなわち、PI3K、AKt、ERK1/2およびGSK3β)のシグナル伝達経路を活性化することができた。それ故、超分子インスリンアセンブリのデポ剤から放出されたインスリンモノマーは、生物学的に活性であり、インスリンと同じメカニズムに従い、身体のグルコース恒常性を調整する。組織染色は、また、動物に注入された超分子インスリンアセンブリIIが、生物活性なインスリンの徐放および持続放出をもたらすデポ剤を形成することを示す。更にその上、皮下または筋肉内に注入されたLPSへの応答の際の白血球の浸潤とは異なり、如何なる炎症も示さない。
【0225】
本発明は、超分子インスリンアセンブリ治療が、糖尿病動物において広範囲の生理学的有効性を与えることを示す。これは、部分的には、表1において示すように、糖尿病ラットにおける、顕著に改善された血糖コントロール、ならびに、改善された肝臓および腎臓機能を原因とする非常に減少した尿素およびクレアチン濃度において反映される。
【0226】
本発明は、超分子インスリンアセンブリの投与による、血清中の抗-インスリン抗体およびインスリン分解酵素(IDE)の詳細を提供する。12週の最後まで抗-インスリン抗体が存在しないことは、糖尿病の治療としての超分子インスリンアセンブリの価値を増す。注入部位で、または周辺部でIDEを誘導しないことは、超分子インスリンアセンブリからのインスリンの放出を長引かせることについての重要な因子であり、付随する有益な抗-糖尿病効果である。
【0227】
本発明は、超分子インスリンアセンブリIIから放出されたインスリンモノマーが、可溶性インスリンと同等な生物学的機能を有することを示す。顕著な差異は、作用の持続期間にあり、標準的なインスリン注射については6-10時間だけであるのに対して、驚くべきことに、超分子インスリンアセンブリIIの投与量に依存して、約10日〜約180日以上である。これは、超分子インスリンアセンブリにおけるインスリンの高い安定性に起因し、超分子インスリンアセンブリは、インスリンの最も生理学的に関連のある形態、すなわち、インスリンモノマーの、長期間にわたる供給のための、注入部位でのデポ剤を形成する。
【0228】
ヒトインスリンの超分子インスリンアセンブリIIの投与によって、より良好な血糖コントロールがもたらされ、それは、135-180日間にわたって観察された。インスリンオリゴマーの皮下および筋肉内注入の両方によって、図から明らかなように、ほぼ正常血糖値をもたらした。
【0229】
血清中で放出されたインスリンをELISAで定量し、観察したところ、デポ剤からの持続的かつ徐放性放出により、ほぼ一定の濃度が維持されていた。
【0230】
雄のWistarラットを、アロキサンを用いて糖尿病とし、ストレプトゾトシンで処置した糖尿病C57b1/6マウス(糖尿病の他のモデルとして使用)の両方について、超分子インスリンアセンブリIIで処置することにより、ほぼ正常血糖濃度を示した。
【0231】
ヒトの超分子アセンブリIIインスリンについて得られたウェスタンブロットデータは、本質的に同じであり、放出されたインスリンモノマーによるシグナル伝達経路の活性化が示された。
【0232】
超分子インスリンアセンブリIは、18±2nmの高さを有する、膨張し、より球状な種によって特徴づけられる。アミロイド形成の工程中のペプチド構造の非フォールディング化によって、表面に個別にランダムに分布した球状のモノマー種がもたらされる。更に進んで、ヒトインスリン超分子アセンブリIIの段階IIでは、その膨張した形態を維持するにもかかわらず、これらのモノマーの線形会合が存在する。形成したオリゴマーは、18±4nmの高さを有するウシインスリンと同じような、伸長したクラスターを示す。超分子インスリンアセンブリIIIの場合(SIA IIの後のフィブリル化段階により近い)、より高度なオリゴマー構造の密度の増加が見られる。この構造は、5±1nmの高さでよりコンパクトである。全体の構造形態は、ウシのSIA段階と類似しており、完全に形成されたファイバーが、更に進んで見られる。
【0233】
本発明は、STZで誘導した糖尿病動物モデルにおいて空腹時低血糖を誘導することなく、血中グルコース濃度の顕著な改善についての、超分子インスリンアセンブリ治療の有効性および実現可能性を示す。低血糖の危険が伴う、血中グルコース濃度をインスリン注射の頻度を増やして制御する、集中的なインスリン治療とは異なり、超分子インスリンアセンブリ治療を使用した顕著に改善された血糖コントロールは、複数回のインスリン注射を必要とせずに、かつ、著しい体重増加ももたらさずに、達成される。
【0234】
本発明の更なる価値は、これらの研究を、II型糖尿病(DM II)の場合のように、治療としてインスリンの持続的かつ連続的な注入を必要とする病気へと進展させることによって、もたらされる。エキセンディン4およびインスリンの両方は、組合せて、DM IIの有効な治療として使用されている。エキセンディン4は、胃からの食物の吸収を低減することを介して、血中グルコース濃度を低減する事が知られている。また、胃内容排出も遅らせ、HbAcのレベルを低減し、インスリン治療が原因で見られる体重の大幅な増加を防ぐ。アミロイド生成性タグであるGNNQQNYを、エキセンディン4のC末端に付け、オリゴマー複合体への凝集を促進し、その複合体から、前記したセクションで報告したインスリンを用いた場合のように、エキセンディン4の天然モノマーが放出される。エキセンディン4aは、対象とする動物におけるDM IIの治療のために、SIA IおよびIIとの補助療法として使用される。
【0235】
本発明は、また、卵巣切除したラットにおける骨粗鬆症の治療のための有効な治療候補としての、カルシトニンの超分子アセンブリの使用も提供する。詳細は、実施例24に示す。超分子カルシトニンアセンブリすなわちSCAを、Alzetポンプへと導入し、そこから、カルシトニンの血液への徐放的かつ連続的放出がもたらされる。このカルシトニンの徐放放出によって、骨粗鬆症の症状が和らぎ、正常な体重ならびに血清カルシウムおよびリンレベルを維持する。
【0236】
サケカルシトニンの1および2mg/ml溶液を、PBS中に調製し、37℃で80時間インキュベートした。カルシトニンアミロイドフィブリル形成のカイネティクスを、異なる時間間隔で400nm濁度を測定することによってモニターした。図29に示すように、フィブリル形成の速度は、濃度依存的であり、44時間後にはほぼ終了した。SCA-I、SCA-IIおよびSCA-IIIは、それぞれ、6、8および12時間後に形成した。
【0237】
SCAからの遊離のカルシトニンの放出を、一定の体積1ml中の2%マンニトール中で、および、透析膜を介して透析することによって、モニターした。放出を、275nmの吸光度によってモニターした。図30に示すように、一定の体積1ml中のSCAからのカルシトニンの放出は、超分子インスリンアセンブリのように、釣鐘曲線に従う。しかしながら、連続的放出が、膜を介した透析下で観察され、SIAからのインスリン放出と類似していた。完全に成長したカルシトニンファイバーからのカルシトニンの放出は、非常に遅く、更なる実験においては無視できるレベルであると考えられた。カルシトニンSCAを、更に、卵巣切除したラットにおける骨粗鬆症の治療についてのin vivo実験のために使用した。
【0238】
実験セクションで記したように、ラットの5つのグループ(各グループ内に10匹のラット)に、異なる処置を施した。体重ならびにカルシウム、リンおよびカルシトニンの血清プロファイルをモニターした。Alzet中のSCAで処置した卵巣切除したラットにおけるSCAからのサケカルシトニン、およびコントロールラットにおける内因性ラットカルシトニンの放出カイネティクスを求め、図31に示す。カルシトニンレベルは、SCAで処置したラットにおいて、他のグループと比較して、相対的に高いレベルで維持された。このことは、Alzetポンプ中のカルシトニンSCA溶液は、一定かつ遅い速度で、生物学的に活性な形態のカルシトニンを放出することを示し、OVXラットにおいて60日間まで、可溶性カルシトニンを用いた毎日の処置と比較して、骨粗鬆症の症状を治療した。
【0239】
ラットの4つのグループについて最終的な体重をモニターした。4つ全てのグループに由来するラットは、実験期間中、体重が増えた。ベヒクルで処置したOVXラットは、ベヒクルで処置したコントロールラットよりも、8週間の実験の最後に、約11%体重が増加していた(328±19g対296±09g、p<0.05)。SCAを用いてCTで断続的にまたは連続的に処置したOVXラットの平均体重は、ベヒクルで処置したOVXラットと比較して、顕著に減少した。
【0240】
表3に、血清の生化学データを示す。血清のCT濃度を、SCAで処置したOVXラットにおいて、全てのグループで、8週間の最後に測定したところ、ベヒクルで処置したOVXよりも顕著に高かったが、コントロールラットほど高くなかった。SCAで処置したOVXラットの平均血清カルシウムレベルは、全ての他のグループよりも顕著に低かった。平均血清リンレベルも、ベヒクルで処置したOVXラットにおいては、ベヒクルで処置したコントロールラットと比較して顕著に増加した。対照的に、SCAの場合、OVXラットの断続的または連続的CTのいずれかの処置は、OVXラットへのベヒクル処置と比較して、血清リン濃度が顕著に減少した。更にその上、SCAで処置したOVXラットのこの変動性は、CTで断続的に処置したOVXラットよりも顕著に少なかった。
【0241】
全てのグループにおいて、サケカルシトニンに対する抗体をスクリーニングしたところ、コントロール、ベヒクル処置およびカルシトニンSCA処置ラットの場合において、無視できるレベルの抗体が示された。しかしながら、カルシトニン処置グループ(断続的または連続的)においては、より少ないレベルの抗体が、サケカルシトニンに対して産生した。
【0242】
本発明は、また、関節炎および関節痛の治療のための有効な治療候補としての、超分子イブプロフェンタグ化ペプチドアセンブリの使用も提供する。詳細を、実施例25に示す。
【0243】
関節炎は、特に中年および高齢者の重要な病態および一般的な機能障害を引き起こす病気である。非-ステロイド系抗-炎症薬(NSAID)は、痛み、熱および変形性関節症を含む炎症性疾患を治療するために広く使用されている。この疾患の現在の治療は、満足のいくものではなく、使用されている一般的な薬剤は、多くの毒性の副作用を有し、主に一時的に和らげるものである。カラギーナン誘導関節炎によって、急性の炎症が生じ、この炎症は、コルチコステロイドおよび血管収縮剤によって抑制される。膝の関節炎は、関節炎のKCモデルを使用して、カオリンおよびカラギーナンを膝の滑液腔へと注入することによって、得られた。雄のWistarラットを、5つのグループに分け、関節炎を、カオリン/カラギーナン(KC)を使用して、4つのグループにおいて誘導した。PBSをコントロールグループへと注入した。30分後、様々な量のイブプロフェン(10および50mg/kg b wt)およびイブプロフェン-TTRを、それぞれ、経口および腹腔内に投与した。ラットを、1時間後にホットプレート鎮痛測定器上に置き、足を舐めるまでの待ち時間をモニターした。PBSを注入したコントロールラットは、約6-7秒で、足を舐めることによって、熱に応答した(図32a)。KC注入ラットは、非常に感受性であり、3-5秒より長くは熱に耐えることができなかった。対照的に、イブプロフェンを経口で与えたラットは、10mg/kg b.wtのイブプロフェンについては12秒まで、50mg/kg b.wtのイブプロフェンについては17秒まで耐えることができた。超分子イブプロフェン-TTRアセンブリをi.p.投与したラットについては、待ち時間は、約15秒であった。超分子アセンブリからのイブプロフェンの徐放的かつ連続的放出は、より明らかであり、連日、薬物の二回目の投与無しに、ラットが足を舐める待ち時間が約12-16秒となるのに対して(図32b)、イブプロフェンは、ラットに効果をもたらすためには毎日注入しなければならなった。超分子イブプロフェン-TTRアセンブリの効果は、待ち時間の急な減少によって示されるように(図32b)、3-4日間続く。
【0244】
カラギーナンのラットの足への注入によって引き起こされる炎症は、浮腫を発症させる。それ故、ラットの足の体積の増加の測定は、関節炎の間に誘発された炎症をモニターするための効果的な方法である。コントロールおよび処置したラットの足の体積を、hydroplethysmometerを使用して、KCの注入前の足の基礎体積を引くことによって測定した。PBSで処置したカラギーナンコントロールの場合は急激な増加が見られ、ラットの足の体積は、ほぼ、8.0-0.92mlまで増加した(図33)。この足の体積の増加は、超分子イブプロフェン-TTRアセンブリで処置したラットについて、比較的少なく(0.4ml)、第4日目のみが増加し始めた。このことは、薬物イブプロフェンの放出を伴うデポ剤の消費を指摘する。一方、イブプロフェンは、ラットの足の体積の急激な増加を防ぐためには、毎日注入されなければならず、50mg/kg b.wtがより効果的であった。データは、超分子イブプロフェン-TTRアセンブリの、複合体のたった一回の注入により、3-4日間の関節炎の症状を和らげる効果を実証する。
【0245】
それ故、本発明は、I型およびII型糖尿病などの代謝障害を包含するだけでなく、更に、慢性の痛み、敗血症、関節炎、骨粗鬆症、炎症などの、治療薬(ペプチド、タンパク質または小分子薬剤)の連続的な注射が必要である全ての疾患に拡張することができる。この発明は、また、DM I、DM IIおよび境界型糖尿病の治療のためのインスリンオリゴマー(SIA I、SIA IIおよびSIA III)の使用の実現可能性について論ずる。治療のためのデポ剤としての薬物のオリゴマーを使用する方法は、より多くの病気に拡張することができ、全体的に幅広い応用性を有する。
【0246】
以下の実施例は、本発明に含まれる発明の例示によって与えられるものであり、それ故、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0247】
本願明細書に記載の以下の実施例は、例示の目的のみであり、本願明細書に照らし合わせた様々な修正や変化が、当業者によって連想され、本願出願の精神および範囲ならびに請求項の範囲内に含まれることを理解すべきである。
【0248】
[実施例1]
(インスリンのフィブリル化)
ウシおよびrHインスリン、2mg/mlを、リン酸緩衝生理食塩水(50mM、pH7.0)またはpH2.0(水中の塩酸)に溶かし、37℃で72時間-7日間、180rpmの一定の攪拌でインキュベーションした。フィブリル形成のカイネティクスを、チオフラビンT(ThT)による蛍光の取得をモニターすることによって求めた。
【0249】
[実施例2]
(チオフラビンT蛍光)
Th-T蛍光を、Jobin Yvon Fluoromax蛍光分光光度計で、3nmおよび5nmのスリット幅を用いて、それぞれ、励起および蛍光について測定した。50μMのTh-Tを用いて15分間インキュベートしたサンプルを、450nmで励起させ、その蛍光を、460-560nmの範囲でモニターした。データを、ブランクおよび内部フィルター効果について、以下の式を使用して校正した:Fc=F antilog[(Aex+Aem)/2)]。
(式中、Fcは、校正した蛍光であり、Fは測定した蛍光であり、AexおよびAemは、それぞれ、反応溶液の、励起波長および蛍光波長での吸収である)
【0250】
ウシおよびrHインスリンによる37℃でのフィブリル形成のカイネティクスを、図1に示す。図1(a)は、50μMのTh-T蛍光を用いてモニターした、pH7.0でのフィブリル形成のカイネティクスを求めたものである。
【0251】
[実施例3]
(pH2.0および7.0で形成された中間体および完全に形成したフィブリルのin vitroでのモノマー放出カイネティクス)
200μl(400μgのインスリンに相当)アリコートを、異なる時点で、pH2.0および7.0、37℃におけるインスリンフィブリル化反応から、取り出した。産生した超分子インスリンアセンブリ中間体を、遠心によって単離した。得られたペレットをPBSで洗浄し、エッペンドルフチューブ中で1mlのPBSで再懸濁した。中間体を含むエッペンドルフチューブの蓋を外し、エッペンドルスチューブを、12kDaのカットオフ値を有する透析膜でシールした。その後、エッペンドルフチューブを、膜側を介して、0.02%のアジ化ナトリウムを有する20mlのPBSを含む50mlファルコンチューブに挿入し、インスリン放出のカイネティクスを、15日間、一定の攪拌下でモニターした。放出のカイネティクスを、分光光度計を使用して280nmで、および内因性(チロシン)蛍光によってモニターした。1時間当りに放出したインスリンの量を計算した。図2aは、吸光度280nmで、および内因性チロシン蛍光によってモニターした、超分子インスリンアセンブリII中間体からのin vitroインスリン放出を示す。0時間および15日時点での透析膜内部の溶液のTh-T蛍光強度も付与する。
【0252】
異なる中間体の放出プロファイルを試験するために、37℃、pH2.0および7.0の両方での中間体および完全に形成させたアミロイドフィブリルの少量のアリコートを、一定の間隔でフィブリル化工程から取り出し、10,000rpmで10分間遠心した。上清を取り除き、ペレットを2回PBSで洗浄後に、新しいPBSで再懸濁した。モノマーインスリンの放出を、分光光度計を使用して、280nm、37℃でモニターした。放出カイネティクスは、2つの異なる条件で試験した。1つ目は、ペレットをPBSで懸濁し、12kDaのカットオフ値を有する膜を介して20mlのPBS中で、一定の攪拌の下、透析した(図2a-c)。2つ目は、得られたペレットを、1mlのPBSで懸濁し、上清の吸光度を280nmで測定した(図2d)。
【0253】
[実施例4]
(コンゴレッド結合)
インスリンオリゴマー/アミロイドに結合したコンゴレッドの量を、以前に報告されたように(Klunk, W.E., Jacob, R.F. & Mason, R.P. Quantifying amyloid by Congo red spectral shift assay. Methods Enzymol 309, 285-305 (1999))、以下の式を使用して見積もった:「アミロイド懸濁液の結合したコンゴレッドのモル/L」=A544nm/25295 - A477nm/46306。
【0254】
図3は、天然のインスリン、超分子インスリンアセンブリII、超分子インスリンアセンブリIIIおよびアミロイドインスリンを用いた、コンゴレッド結合試験を示す。
【0255】
[実施例5]
(チロシン蛍光)
異なる時間間隔で、0.2mlの石英キュベット中に取り出した超分子インスリンアセンブリの透析物を、270nmで励起して、320〜370nmの間で蛍光を測定した。5nm幅のスリットを、励起および蛍光の両方について使用した。図2(a)は、280nmの吸光度および内因性チロシン蛍光によってモニターした、超分子インスリンアセンブリII中間体からのインスリンのin vitro放出を示す。0時間および15日での透析膜内の溶液のTh-T蛍光強度も示す。
【0256】
[実施例6]
(フーリエ変換赤外分光(FTIR))
IRスペクトルを、液体N2で冷却した水銀カドミウムテルル検出器を備えた、Bruker Tensor 27ベンチトップ型FTIR分光光度計を用いて求めた。インスリンサンプルを、Bio-ATRで分析し、256インターフェロンガンマを、室温で2cm-1の分解能で測定した。各スペクトルについて、水蒸気を引き、ベースライン校正をした。
【0257】
SIA I、IIおよびIIIについても、ATR-FTIRを使用して特徴づけを行った。各段階に対応する異なるスペクトルが観察された(図1d)。
【0258】
ウシおよびrHインスリンの超分子インスリンアセンブリI、IIおよびIIIについても、ATR-FTIRを使用して特徴づけを行った。各段階に対応する異なるスペクトルが観察された(図4)。IRバンドのより低い周波数へのシフトが、フィブリル化の間に観察される。超分子インスリンアセンブリII(SIA-II)は、ウシおよびrHインスリンそれぞれについて、1647cm-1および1645cm-1でシャープなピークを有するのに対して、同じ場合に、完全に形成されたアミロイドは、1630cm-1および1628cm-1のピークを有する。FTIRスペクトルは、ランダムコイル構造の含量の増加にも関わらず、SIA-IIの構造が主としてらせん形であることを示すCR結合データと良く一致している。
【0259】
[実施例7]
(原子間力顕微鏡(AFM))
ピコプラス原子間力顕微鏡(Agilent Technologies)を、画像化用にマグネチックアコースティック(magnetic acoustic)MAC(コンタクト)モードで用いた。露出した雲母の表面、またはMACカンチレバータイプIIを用いたサンプルと雲母のいずれかで(カンチレバーの弾力計数:2.8N/m、周波数:59.722kHz)、画像をエア中に記録した。様々な時点でサンプルをフィブリル化反応混合液から回収し、水で20倍希釈し、新たに切断した雲母上に2分間固定した。サンプルをナノピュア(nanopure)水で洗浄し、N2下で乾燥し、AFM分析にかけた。
【0260】
図5は、原子間力顕微鏡によって試験した超分子インスリンアセンブリ中間体およびインスリンフィブリルの形態を示す。図5(a)インスリンモノマー、(b)超分子インスリンアセンブリI中間体、pH7.0、(c)超分子インスリンアセンブリII、pH7.0、(d)超分子インスリンアセンブリIII中間体、pH7.0、(e)ヒトSIA I、(f)ヒトSIA II、(g)ヒトSIA III、および(h)pH7.0で完全に形成されたフィブリル、(i)37℃、pH2.0で、6時間で形成した超分子インスリンアセンブリ中間体を示し、(j)はpH2.0で形成した完全に形成したアミロイドフィブリルを示す。
【0261】
[実施例8]
(透過型電子顕微鏡(TEM))
TEM試験用に、サンプルをボルテックスにかけ、そのままフォルムバールコーティングした300メッシュの銅格子に吸収させ、またはミリ-Q水で1:2〜20倍に希釈し、脱イオン水で洗浄した。格子を3%酢酸ウラニルで2〜5分間インキュベートし、ネガティブ染色によってサンプルを試験するために赤外線下で乾燥した。格子を80kVでPhillips CM-10で可視化した。像をMegaViewIIIカメラを用いて捕え、Imaging System PhillipsのImaging Softwareを用いて分析した。図6は、インスリンフィブリルおよび超分子インスリンアセンブリ中間体のネガティブ染色TEM顕微鏡写真を示し、図6(a)は超分子インスリンアセンブリI中間体、pH7.0を示し、図6(b)は超分子インスリンアセンブリII、pH7.0を示し、図6(c)は超分子インスリンアセンブリ中間体III、pH7.0を示し、図6(d)はpH7.0の成熟ファイバーを示し、図6(e)は37℃、pH2.0で形成したファイバーを示す。
【0262】
[実施例9]
(糖尿病のラットモデル)
体重210±10gの9週齢の雄のWistarラット(哺乳類、げっ歯目、Rattus norvegicus albinus)を用いた。ラットを市販のポリプロピレンケージで飼育し、12時間の明-暗サイクルで、温度制御の条件下に維持し、適宜食餌および水を摂取させた。
【0263】
(ラットに糖尿病を誘発するためのストレプトゾトシンモデル)
体重250〜300gの雄のWistarラットを4グループに分け、Roche Accu Checkグルコースストリップを用いて血中グルコースの推定を行った。ラットを48時間絶食させた。クエン酸バッファー(pH4.5)中に新たに調製したストレプトゾトシン50mg/kg b.wtを、10〜20匹のラットに腹腔内投与した。直ちに食餌を供給し、3日後に血中グルコース濃度を調べた。その血中グルコース濃度に従って、動物をグループ分けした(グループI:250〜350mg/dl、グループII: 350〜450mg/dl、およびグループIII:>450mg/dL)。ウシインスリン2〜6U/kg体重(b.wt)で、1週間、高濃度の血中グルコースが維持された。STZ処置ラットは全て、STZ注射5日後に高血糖を発症し(血中グルコース濃度>250mg/dl)、これらの血清インスリン濃度を、ラットインスリン固相酵素結合免疫測定法(ELISA)(Mercodia)を用いて定量した。グルコース>250mg/dL、および無視できるレベル(〜0.08ng/ml)の血清インスリン濃度のラットを糖尿病とみなし、実験に用いた。
【0264】
[実施例10]
(超分子インスリンアセンブリ処置)
インスリンで高濃度の血中グルコースを1週間維持した後、ラットを、各々がラット5匹を含む3グループに分けた。グループIのラットには、1日あたりウシインスリン4U/kg b.wtを腹腔内に単回投与した。グループIIのラットには、インスリン4U/kg b.wtを、1日2回注射した。グループIIIはPBS100μl中の200μgの超分子インスリンアセンブリIIで処置し(皮下および筋肉内)、グループIVのラットにはPBS100μlを投与し、糖尿病コントロールとした。PBS100μlを注射した正常ラット5匹のグループを、非糖尿病のコントロールとした。8〜10時間絶食後の食前および食後両方の、体重および血中グルコース濃度を、最初に毎日チェックし、次いで頻度を低減した。図7は、超分子インスリンアセンブリ(あるいはプレアミロイドのインスリン)の、グルコース恒常性におけるin vivoの有効性を示す。(a)皮下および筋肉内両方で投与した、様々な投与量の超分子インスリンアセンブリII(ウシ)に反応した血中グルコース濃度。(b)皮下および筋肉内両方で投与した、様々な投与量の超分子インスリンアセンブリII(r-ヒト)に反応した血中グルコース濃度。
【0265】
図8は、ウシSIA II(a)ウシインスリン、(b)rHインスリン投与後135日の期間にわたってモニターした食後血中グルコース濃度を示す。図9は、ヒトSIA II(a)ウシインスリン、(b)rHインスリン投与後160日の期間にわたってモニターした食前の血中グルコース濃度を示す。図10は、pH2.0および7.0で形成したインスリンアミロイドの投与後モニターした、血中グルコース濃度を示す。図11は、SIA-II処置糖尿病ラット、糖尿病コントロール、および非糖尿病コントロールラットの体重プロファイルを示す。
【0266】
[実施例11]
(腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT))
STZ処置(n=12)および正常ラット(n=4)を12時間絶食させた。上記に記載したように血中グルコース濃度をモニターした。グルコース負荷試験を行った。簡潔に述べると、動物に3g/kg体重のグルコースを腹腔内注入し、その後、グループIにはウシインスリン4U/kg b.wtを、グループIIにはアミロイドインスリン100μlを、グループIIIのラットにはPBS(ビヒクル)100μlを注射した。血中グルコース濃度を、処置後0、30、90、150、270、および330分後にモニターした。様々な時間点について血清を単離し、血中グルコース濃度と時間との間でグラフをプロットした。図12は、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)の血中グルコースプロファイルを示す。
【0267】
[実施例12]
(血清インスリンの定量)
採取した血液サンプルから血清を単離し、さらなる分析まで-20℃で貯蔵した。ウシおよびラットのインスリンレベルを、Mercodia(スウェーデン)の固相two site酵素免疫アッセイ(ELISA)を用いて、製造元のプロトコールにしたがって定量した。図13aは、SCまたはIM注射した超分子インスリンアセンブリに反応したSTZ処置マウスにおける、ELISAを用いた血清ヒトおよびウシインスリンの定量を示し、図13(b)は、IPGTTの血清ウシインスリンの定量を示し、図13(c)は、IPGTT用に行った血清ラットインスリンELISAを示す。
【0268】
[実施例13]
(インスリンのI125標識化)
インスリンSIA IIの末端からのin vitroの放出をさらに確証し定量するために、I125でのインスリンの標識化を行った(Pause, E.、Boi mer, O. & Nustad, K, Radioiodination of proteins with the iodogen method, in RIA and related procedures in medicine, international atomic agency, Vienna, 161-171(1982))。標識したインスリンから形成した超分子インスリンアセンブリは、49912CPM/ml/μgの比放射能を有していた。超分子インスリンアセンブリ50μl(4991200CPM)を、皮下または筋肉内のいずれかで注射し、血中グルコース濃度をモニターし、0、30分、1時間、4時間、10時間、24時間、それ以降は1日1回、次いで隔日または週1回、血清サンプルを採取した。血清1mlあたりのカウントを計測した(図14a)。図14bに示すように、血中グルコースプロファイルは非標識のSIA IIで観察されたものと同じであった。計算したCPM/mlは、処置の日数に対してプロットした場合、ほぼ一定のままであった(図14a)。しかし、30分〜4時間に最初の高いカウントが現れ、次いでこれは徐々に低減して10時間で2000〜3000の一定レベルになった。血液に放出されたインスリンの量を計算したところ、0.5〜1.2ng/mlの範囲であり、これは、ELISAで観察された、血清におけるインスリンの基礎レベルに相当し、または基礎レベルをわずかに上回っていた(図14b)。超分子インスリンアセンブリから放出されたインスリンがモノマーであることをさらに証明するために、様々な時点の血清を、トリシン-SDS-PAGE上で分離し(Schaogger, H. & Von Jagow, G., Tricine-sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis for the separation of proteins in the range from 1 to 100 kDa., Anal Biochem, 166, 368-379 (1987))、蛍光イメージャーを用いてX線像を得た。図15に示すように、血清中のバンドは遊離インスリンのモノマーに相当し、その強度は、等量の血清をロードした場合、長期間一定のままであった。20日後に強度の低減が観察され、このことは、時間がたつにつれ、放射標識それ自体の崩壊のいくつかの効果とともに、超分子インスリンアセンブリのデポ剤の利用および枯渇がもたらされたことを示す。
【0269】
[実施例14]
(超分子インスリンアセンブリIIを用いた処置後の高血糖クランプ)
雄のWistarラットを麻酔し(2%イソフルラン)、頚動脈(carotid)および頚動脈(jugular)のカテーテルを設置して血液の回収、および血中グルコース濃度を600mg/dLに固定するためのグルコースの注射(20%グルコース溶液)を可能にした。12時間の絶食期間の後、全グループにグルコースを注入して高血糖にした。この後、既定の時間間隔で、血中グルコース測定用に血液を回収し、これらを高血糖に維持するためのグルコース注入の速度を計算した。この手順を、SIA II投与の1および3ヵ月後に繰り返した(図16a〜c)。
【0270】
[実施例15]
(ラット脂肪細胞の単離および1次培養)
Bjorntorpらによって記載された方法にしたがって、ラット脂肪細胞を単離し、培養した(Bjorntorp, P., Karlsson, M., Pettersson, P. & Sypniewska,G., Differentiation and function of rat adipocyte precursor cells in primary culture., J Lipid Res., 21, 714-723 (1987))。自由に摂食させた雄のWistarラットを屠殺し、精巣上体の脂肪組織を解剖し、試薬A(HBSS、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/ml、およびゲンタマイシン50μg/L)中に採取した。組織をHBSS中、適切に洗浄した。次いで、この組織を切開し、細かく刻み、ファルコンチューブに移し、200gで2分間遠心分離した。透明な油層を除去し、脂肪細胞の細胞層(濃く、濃密度)を、フラスコ中の3倍体積の試薬B(0.1%BSAおよび1mg/mlコラゲナーゼを含む試薬A)に加えた。フラスコを、絶えずゆっくりと振盪しながら、37℃で60分インキュベートした。3倍体積のDMEM完全培地(HEPES 15mM、グルコース、0.1%BSA、アデノシン50nM、および1%ウシ胎児血清を含む)を加えることによって反応を停止し、室温で5分間インキュベートした。反応物をファルコンチューブに移し、200gで10分間遠心分離した。油の上層を廃棄することによって脂肪細胞を採取し、試薬Aで200gで10分間遠心分離することによって2回洗浄した。細胞を、好適な体積のDMEM完全培地を含むフラスコ中に分注し、37℃で24時間インキュベートした。インスリンシグナル伝達用に、脂肪細胞を遠心分離し、無血清培地中に12時間維持し、その後、6ウェル培養プレート中に約2mlプレーティングし、さらに2時間インキュベートした。
【0271】
[実施例16]
(全細胞可溶化物のウェスタンブロット分析)
プレーティングした細胞を、20nMのインスリン、超分子インスリンアセンブリ50μl、およびin vitroで放出されたインスリン(モノマー)、またはインスリン、超分子インスリンアセンブリ、およびPBS処置したラットに由来する血清50μlのいずれかと、10分間インキュベートした。インキュベート後、細胞をファルコンチューブに採取し、200gで10分間遠心分離した。脂肪細胞の上層をエッペンドルフチューブに採取し、氷中に維持した。溶解バッファー500μl(20mM Tris pH8.0、1% NP40、137mM NaCl、1mM MgCl2、1mM CaCl2、1mM DTT、10%グリセロール、1mM PMSF、オルトバナジン酸ナトリウム0.4mM、およびプロテアーゼ阻害薬のカクテル)を加え、サンプルを-80℃で2時間凍結した。この後、解凍し、一定に回転させながら4℃で4時間、インキュベートした。上清を13000rpmで30分間遠心分離後採取し、細胞溶解物におけるタンパク質濃度をBradford試薬を用いて推定した。全細胞タンパク質のうち50マイクログラムを各レーンにアプライし、10%SDS-PAGE上で分離し、Bio-rad製ウエット式トランスファー装置を用いて、4℃で一夜、ニトロセルロース膜に転写した。転写後、ブロットを除去し、転写したバンドを可視化するためにPonceau-Sで染色し、水でさらに脱染した。膜を、PBS、pH7.4中の5%スキムミルクで、37℃で1時間ブロックし、洗浄し、次いで、4℃で、PI3K、p-Akt、total Akt、p-Gsk3β、Gsk3β、ERK1/2、GAPDH、およびβアクチンの1次抗体(細胞シグナル伝達に由来する抗体)(PBS中の1%スキムミルクを用いて1:1000希釈)中で、一夜インキュベートした。PBSTで洗浄後、ブロットを、それぞれの2次抗体(HRPコンジュゲートした)中で、1時間インキュベートし、ECLウエスタンブロッティングプロトコール(Amersham)を用いて、免疫反応性のバンドを可視化した。図17は、インスリンシグナル伝達カスケードのための培養脂肪細胞のウエスタンブロット(WB)分析を示す。脂肪細胞を、(a)PBS、インスリン、SIA-II、SIA IIから放出されたインスリン、(b)前記した血清と処置し、インスリンシグナル伝達に対して分析した。
【0272】
[実施例17]
(組織学および免疫組織学)
ラットにインスリンSIA II 200μg、または大腸菌に由来するリポ多糖(LPS)150μg(Sigma-Aldrich、MO、米国)を、筋肉内または皮下注射のいずれかによって、それぞれ大腿筋および背側皮膚中に注射した。LPS注射したラットを注射48時間後に屠殺したのに対して、インスリンSIA IIを注射したラットを1から12週間モニターし、7日毎の間隔で組織切片を切除した。ラットをケタミンによって麻酔し、4%パラホルムアルデヒドで潅流した。皮膚および大腿筋を除去し、注射部位を切り出した。次いで、組織をパラフィン包埋用に処理加工し、10μmの厚さに矢状に切断し、一般的なヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色用にさらに処理加工して、炎症細胞の組織像および浸潤を調べ、残渣のSIAの存在のためのコンゴーレッド染色(Lee, G. & Luna, H. T., Manual of Histologic staining methods of armed forces institute of pathology., 3rd Ed. McRaw-Hill book company (1960))、およびCDllb、RT-IA、およびCD6に対する抗体 (BD Pharmigen、CA、USA)を用いて、免疫組織化学 (Sanz MJ, Marinova-Mutafchiev L, Green P, Lobb RR & Feldmann M, Nourshargh S., IL-4-induced eosinophil accumulation in rat skin is dependent on endogenous TNF-alpha and alpha 4 integrin/VCAM-1 adhesion pathways., J Immunol., 160, 5637-5645 (1998))を行った。免疫蛍光のスライドを全て、褪色防止試薬+封入剤(Molecular probes、Eugene、Oregon、米国)で永久的にマウントし、蛍光下でFITCコンジュゲートした抗体について観察した。CRおよびH&E染色したスライドをシトラマウント(citramount)媒体(Polysciences、PA、米国)でマウントした。H&E切片を明所下で観察し、CR染色したスライドを明所および偏光光線下(Nikon Eclipse 80i、Nikon、日本)で観察した。画像を、DS SMcCCDカメラ(Nikon、日本)を用いて捕え、NIS-Elementソフトウエア(Nikon、日本)によって分析した。
【0273】
[実施例18]
(ラットにおいて糖尿病を誘発するためのアロキサンモデル)
体重250〜300gの雄のWistarラットを4グループにわけ、Roche Accu Checkグルコースストリップを用いて血中グルコースの推定を行った。ラットを24時間絶食させた。クエン酸バッファー(pH4.5)中に新たに調製したアロキサン150mg/kg b.wtを、10〜20匹のラットに腹腔内投与した。直ちに食餌を供給し、3日後に血中グルコース濃度を調べた。血中グルコース濃度にしたがって動物をグループ分けした(グループI:250〜350mg/dl、グループII:350〜450mg/dl、およびグループIII:>450mg/dL)。2〜6U/kg体重(b.wt)のウシインスリンで、1週間、高濃度の血中グルコースを維持した。アロキサン処置ラットの60%が、注射5日後に高血糖を発症し(血中グルコース濃度>250mg/dl)、これらの血清インスリン濃度をラットインスリン固相酵素結合免疫測定法(ELISA)(Mercodia)を用いて定量した。>250mg/dLのグルコースおよび無視できるレベルの血清インスリン濃度(〜0.18ng/ml)を有するラットを糖尿病とみなし、実験に用いた。
【0274】
[実施例19]
(試験した臨床パラメーターの例)
超分子インスリンアセンブリ処置の毒性を評価するために、生化学アッセイを行った。血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)、総ビリルビン、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、血清総タンパク、血清アルブミン、血清グロブリン、血清A/G比、腎機能試験(KFT)、白内障形成、脂肪組織重量、体重、および外観を、Merck India Ltdから入手できるアッセイキットを用いて推定した。表1は、インスリンSIA IIの毒性を評価するための臨床パラメータの分析を示す。血清を、3カ月の試験の終わりに採取した血液サンプルから単離し、表に示した様々な試験に供した。結果は、各グループn=4の動物を有する3つの異なる実験の、平均値±標準偏差である。
【0275】
[実施例20]
(血清中の抗-インスリン抗体およびインスリン分解酵素(IDE)の検出)
標準のELISAのプロトコールにしたがうことによって、ラット血清における抗インスリン抗体を検出するために、間接ELISAを行った。簡潔に述べると、50mM炭酸塩バッファー、pH9.6、中の2mg/mlウシインスリンの200μlを、96ウェルELISAプレート上にコーティングし、4℃で一夜保った。PBS中の5% BSAを用いて、37℃で1時間ブロックした。次いで、プレートをPBST(0.02%Tween20)で洗浄し、1:100希釈した血清の200μlを加えて、37℃で1時間保った。さらなるラウンドのPBSTでの洗浄の後、1:10000希釈した抗ラットIgG-HRPコンジュゲートした2°抗体を加え、37℃で2時間インキュベートした。基質としてTMBを用いて発色させ、濃H2SO4を加えることによって反応を停止した。プレートを450nmで分光光度計を用いて読み取った。抗インスリン抗体を、反応に対するポジティブコントロールとして用いた。IDEを、Insulysin/IDE InnoZyme Immunocapture Activity Assay Kit (Calbiochem)を用いて、製造元のプロトコールにしたがって血清から定量した。キットで提供されたラットIDEを、ポジティブコントロールとして用いた。
【0276】
(細胞増殖アッセイ)
細胞を、24ウェルプレート中に、10% FBSを含む通常のDMEM培地に10000細胞/ウェルでプレーティングした。細胞を12時間、無血清培地に切り替え、次いで図の凡例に示すように処置した。処置は全て3回ずつ行った。処置3日後に増殖を測定した。増殖をMTTアッセイによってアッセイした。PBS中の5mg/ml MTT溶液の全50μlを各ウェルに加えた。37℃で4時間インキュベート後、ホルマザンの結晶を可溶化溶液(20%SDS、50%DMSO)500μlで溶解した。670nmのディファレンシャルフィルター(differential filter)を用いて、プレートリーダーで570nmの吸光度を測定した。
【0277】
[実施例21]
(マウスにおいて糖尿病を誘発するためのストレプトゾトシンモデル)
12〜16週齢の雄の近交系C57BL/6マウスを用いた。5日間毎日、マウスに50mg/kg b.wtのストレプトゾトシンを腹腔内注射した。2週間後、血中グルコース濃度を推定した。血中グルコース>300mg/dlのマウスを糖尿病とみなし、さらなる実験用に選択した。各グループ各マウス6匹からなる全6グループを作成した。10μl、25μl、50μl、および100μlのウシ/ヒトインスリンSIA IIなどの様々な投与量を、ストレプトゾトシンを用いて糖尿病にしたマウスに皮下または筋肉内のいずれかで投与し、他の2グループは糖尿病および非糖尿病グループとした。Roche Accu Checkグルコースストリップを用いて、空腹時および満腹時血中グルコース濃度の両方をモニターした。
【0278】
[実施例22]
(ウサギにおいて糖尿病を誘発するためのストレプトゾトシンモデル)
体重1000gと1200gとの間の雄のNew Zealandウサギを用いた。動物を、湿度、温度(22±2℃)および12時間の明暗サイクルの制御された条件下に維持した。実験プロトコールおよび動物の取扱いは、インド、ニューデリー、Institutional animal ethics committee of the National Institute of Immunologyにしたがった。実験的糖尿病を誘発するために、用いるウサギを12時間絶食させ、その後、クエン酸バッファー、pH4.5中に調製したストレプトゾトシン80mg/kg b.wtを投与した。血中グルコース濃度を3日後に調べた。BGL>450mg/dLを示したウサギを糖尿病とし、ウサギ各3匹の3グループにさらに分けた。グループI-正常の健康なウサギ、グループII-インスリン処置した糖尿病、グループIII-SIA II(SC)処置した糖尿病、およびグループIV-PBS処置した糖尿病。
【0279】
[実施例23]
(WistarラットにおいてII型糖尿病を誘発するためのモデルおよびSIAを用いたその処置)
7週齢の、体重約200gの雄のWistarラットを全ての試験に用いた。動物には、脂肪12%、炭水化物60%、およびタンパク質28%(全kcalのパーセント値として)からなる普通固形飼料食、または脂肪40%、炭水化物41%、およびタンパク質18%からなる高脂肪食のいずれかを摂食させた。いずれかの食餌で2週間後、動物(非注射のコントロールを除いて)を一夜絶食させた後に、尾静脈に、一時的に留置した24ゲージカテーテルによって、STZ(50mg/kg)を注射した。STZ注射後、動物に食餌および水を自由に摂取させ、STZ注射および非注射の動物の両方とも、試験期間中はそのもともとの食餌(固形飼料または脂肪)を継続させた。血中グルコース濃度が高い動物に、ビヒクルとしてのPBSを、インスリンSIAを、またはインスリンSIAとエキセンディン-4aとを一緒に、皮下投与した。血液を採取し、血清を遠心分離によって分離し、グルコース(グルコースストリップ、Accucheck、Roche)、インスリン(Insulin Elisa Kit、Mercodia)、中性脂肪(TG)(グリセロールリン酸オキシダーゼ[GPO]-Trinder法、Sigma)、および遊離脂肪酸(アシルコエンザイムA合成酵素[ACS-ACOD]法、Wako Diagnosis、Richmond、VA)の濃度について分析した。
【0280】
[実施例24]
(カルシトニンフィブリル形成)
1および2mg/mlのサケカルシトニンを、PBS中で調製し、37℃で80時間インキュベートした。カルシトニンアミロイドフィブリル形成のカイネティクスを、異なる時間間隔で400nmの濁度を測定することによって、モニターした。図29に示すように、フィブリル形成の速度は濃度依存的であり、44時間後にはほぼ終了する。SCA-I、SCA-IIおよびSCA-IIIは、それぞれ、12、22および28時間で形成した。
【0281】
(超分子カルシトニンアセンブリからのカルシトニンのin vitro放出)
SCAから遊離のカルシトニンの放出を、一定の体積1mlの2%マンニトール中で、および、透析膜を介して透析することによって、モニターした。放出を、275nmの吸光度によってモニターした。図30に示すように、一定の体積1ml中のSCAからのカルシトニンの放出は、インスリンのように、釣鐘曲線に従う。しかしながら、連続的放出が、膜を介した透析下で観察され、SIAからのインスリン放出と類似していた。完全に成長したカルシトニンファイバーからのカルシトニンの放出は、非常に遅く、更なる実験についての無視できるレベルであると考えられた。カルシトニンSCAを、更に、卵巣切除したラットにおける骨粗鬆症の治療についてのin vivo実験のために使用した。
【0282】
(骨粗鬆症のためのモデルおよびカルシトニンを使用した治療)
44匹の雌のSprague-Dawleyラット(Charles River Laboratory, Wilmington, MA)、約90日齢で平均体重230g、を、試験の最初に4つのグループに分けた。全てのラットを、塩酸ケタミンおよびキシラジンの腹腔内注射(それぞれ、50および10mg/kg体重(BW))で麻酔をかけた。両側卵巣切除を、dorsal approachで、3つのグループに実施した。全てのラットを、個々に25℃、12時間の明-暗サイクルで飼育した。卵巣切除(OVX)ラットの食事摂取は、コントロールラットの食事摂取に制限し、卵巣切除に関連する体重の増加を最小にした。全てのラットを、8週間、ベヒクルまたはヒト/サケCT(Sigma)で、皮下注射によって断続的に、または、2%マンニトール中の200μlのCT(4μg/kg)またはSCA(超分子カルシトニンアセンブリ)(2mg/ml)のいずれかを含む、溶液を2.5μl/hの一定速度で28日間伝達するようにデザインされたAlzet浸透圧ミニポンプ(モデル2ML4;Alza Corp., Palo Alto, CA)によって連続的に、処置した。断続的な処置は、手術後一日で開始した。連続的なCTまたはカルシトニンSCAまたはベヒクル処置のためのミニポンプを、手術の時点で(0日)埋め込み、連続的なCTおよびベヒクル処置の場合には、3週間後に置き換えた。しかしながら、この期間中に注射したSCAは、約6-8週間カルシトニンを放出し続けるデポ剤を形成した。CTの皮下注射については、このホルモンを2%マンニトールのベヒクル中に溶解した。16IU/kg(4μg/kg)体重の投与量を、OVXラットの以前の試験から得られた肯定的な結果に基づいて、選択した。
【0283】
このグループのOVXラットの半分に、一日おきに、ベヒクルとして2%マンニトールを皮下注射した。このグループの残りのOVXラットに、ベヒクルの連続的注入のためのAlzet浸透圧ミニポンプを皮下に埋め込んだ。骨の変化の統計学的に顕著な差異は、ベヒクルで断続的にまたは連続的に処置したOVXラット間では見られなかったので、これらのサブグループに由来するデータを組み合わせた。
【0284】
1つのグループの各OVXラットに、一日おきに、サケCTを、16U/kg BW(4μg/kg b wt)の投与量で皮下注射し、他のラットに、ヒトCTの連続的注入のためのAlzet浸透圧ミニポンプを皮下に埋め込んだ。ミニポンプによって各ラットに送達された毎日の投与量は、8U/kg BW(2μg/kg BW)であり、これは、一日おきの皮下注射を介した先行グループに投与した量に相当するものであった(16U/kg)。
【0285】
血清サンプルを、市販のキット(Bio-Merica)を使用した免疫アッセイ方法によってCT濃度を分析するまで、-80℃で保存した。このキットを使用して、以前の試験の1つにおいて、ラットの血清サケCTを成功裏に測定した。15の血清サンプルは、また、クレゾールフタレインコンプレキソンおよびモリブデン酸アンモニウム比色方法によって、それぞれ、カルシウムおよびリン含量について光学的測定で分析した(表3)。図31は、異なる処置グループの卵巣切除したラットの血清中のSCA-IIから放出したカルシトニンのプロファイルを示す。血清中のカルシトニンは、免疫アッセイキットによって測定した。
【0286】
全ての処置したグループにおけるサケカルシトニンに対して産生した抗体を、カルシトニンについてのモノクローナル抗体を使用した間接ELISAによってモニターした。データを、各グループについて、平均±標準偏差(SD)として表す。統計学的差異を、分散分析によって評価した。<0.05のP値が、有意であるとした。
【0287】
[実施例25]
(EDCを使用したイブプロフェンとのペプチドの共有結合性コンジュゲート化)
修飾するTTR/GNNQQNYを、NaCl(0.15M)を含む0.1 MES、pH 4.7-6.0中で10mg/mlの濃度で、溶解した。カップリングするイブプロフェンを同じバッファー中で溶解し、適切な程度で過度に、タンパク質溶液へ直接添加した。その後、前記溶液にEDCを添加し、少なくとも10モル倍を超えるEDCを得た。2-3時間室温で反応させた。コンジュゲートを、選択したバッファーを使用して(0.01Mリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.4)、ゲルろ過または透析によって精製した。
【0288】
(関節炎についての超分子イブプロフェンアセンブリの効果)
体重180-22gの雄のWistarラットを選択し、自由に餌を与えた。順化の4日後に、ラットを5つのグループに分けた。グループI、グループII:イブプロフェン(10mg/kg b.wt)、グループIII:イブプロフェン(50mg/kg b.wt)、グループIV:腹腔内に注射したトランスサイレチン(TTR)またはGNNQQNYに結合したイブプロフェン、およびグループV:カラゲニンコントロール。グループII-Vを、ハロタンを使用して麻酔をかけ、KC関節炎を、3%カオリンおよび3%カラギーナンの混合物(滅菌生理食塩水中に0.1ml)の右膝関節の滑液腔への関節内注射によって誘導した。その後、関節を、1分間、迅速な曲伸運動によって動かした。カオリン/カラギーナンの注射後30分してから、動物を前記したとおりに処置し、グループIIには、イブプロフェンを経口で毎日注入した。ホットプレートテスト方法においては、各グループに由来するラットを、55℃の鎮痛測定器に置き、足を舐めるまでの待ち時間を、一日目の処置後1時間(図32a)、その後、4日間毎日(図32b)、ストップウォッチで測定した。90秒のカットオフ時間を、組織の損傷を避けるために、課した。
【0289】
(足の浮腫の測定)
足の体積を、カオリン/カラゲニンの注射直前およびその後1時間間隔で4日間、hydroplethysmometer(モデル7150, Ugo Basile, Italy)を使用して、測定した。結果を、基礎体積を引くことによって計算した足体積(ml)の増加として表した(図33)。
【0290】
【表1】
【0291】
【表2】
【0292】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病および他の慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質治療(protein medications)は、治療の最も迅速に拡大しているクラスであり、多くの疾患の中でも糖尿病、癌、循環器疾患、腎臓疾患、消化器疾患、リウマチ性疾患および神経疾患の患者に役立っている。インスリン、エリスロポエチン、G-CSF、プラスミノーゲン活性化因子およびインターフェロンを含む、治療としてのタンパク質の治療的および商業的価値は疑う余地も無い。改良したタンパク質またはその調合物は、効能、作用時間および他の特性を増すことによって、これらの現在の製品の治療効果を増大する。
【0003】
糖尿病は、身体がインスリンを産生できないか(I型)、インスリンに応答できないか(II型)のいずれかによって特徴付けられる慢性疾患である(http://www.who.int/diabetes/en, King, H., Aubert, R.E. & Herman, W. H. Global burden of diabetes, 1995-2025: Prevalence, numerical estimates, and projections. Diabetes Care 21, 1414-1431 (1998))。I型およびII型の両方の糖尿病が新たに世界的に蔓延している。2005年には、110万人の糖尿病患者が死亡している(Dunstan, D. W., Zimmet, P. Z., Welborn, T. A., De Courten, M. P., Cameron ,A. J., et al. The rising prevalence of diabetes and impaired glucose tolerance: The Australian Diabetes, Obesity and Lifestyle Study. Diabetes Care 25, 829-834 (2002))。糖尿病のヒトは数年間生きられるかもしれず、死亡の原因は、糖尿病がもたらした合併症である心臓疾患および腎不全としてしばしば報告されるので、その経済的な影響は更により大きい。
【0004】
外部からインスリンを投与し、正常なメタボリック環境を回復することによって、合併症のリスクを最小化することが、糖尿病の治療の必須の特徴となった。現在の治療では、インスリンの1日に複数回の皮下(SC)/筋肉内(IM)注射を含むが、これは、患者の順守にとって大きな重荷となる。次に、代替的な、侵襲性の少ない送達経路がもたらされた。経鼻、経口、胃腸経由および経皮での投与の試みは、現在のところ、大部分は失敗に終わっている。1日に2回のインスリン注射を行うI型糖尿病についての一般的なインスリン治療は、食後の血中グルコース濃度を調節するのには有効であるが、この治療は、空腹時の高血糖を制御することができないので、限られた価値しか有さない(Cardona, K., Korbutt, G. S., Milas, Z., Lyon, J., Cano, J., Jiang, W., Bello-Laborn, H., Hacquoil B, Strobert E, Gangappa S, Weber CJ, Pearson TC, Rajotte RV, Larsen CP. Long-term survival of neonatal porcine islets in nonhuman primates by targeting costimulation pathways. Nat Med. Mar; 12(3), 304-6 (2006))。糖尿病の患者は、内因性インスリンの供給を1日に1回か2回上げるために、インスリン治療を必要とする。また、食後のグルコースの恒常性を、各食事の前の定期的なインスリン注射を介して維持している。集中的なインスリン治療は発病を遅らせるか、または、合併症の発症を遅らせるが、患者は空腹時の低血糖の高いリスクを有することとなる。長期間にわたってインスリンの放出を制御するインスリン調合物は、患者を、1日に何回もインスリンを投与する必要性から開放した。本発明は、I型およびII型両方の糖尿病の治療用の、インスリンを長時間放出するための組成物を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】King, H., Aubert, R.E. & Herman, W. H. Global burden of diabetes, 1995-2025
【非特許文献2】Prevalence, numerical estimates, and projections. Diabetes Care 21, 1414-1431 (1998)
【非特許文献3】Dunstan, D. W., Zimmet, P. Z., Welborn, T. A., De Courten, M. P., Cameron ,A. J., et al. The rising prevalence of diabetes and impaired glucose tolerance: The Australian Diabetes, Obesity and Lifestyle Study. Diabetes Care 25, 829-834 (2002)
【非特許文献4】Cardona, K., Korbutt, G. S., Milas, Z., Lyon, J., Cano, J., Jiang, W., Bello-Laborn, H., Hacquoil B, Strobert E, Gangappa S, Weber CJ, Pearson TC, Rajotte RV, Larsen CP. Long-term survival of neonatal porcine islets in nonhuman primates by targeting costimulation pathways. Nat Med. Mar; 12(3), 304-6 (2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、糖尿病および他の慢性疾患の処置のためのタンパク質治療を開示する。本発明は、特に、タンパク質(例えば、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、ペプチドGNNQQNY、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、エキセンディン4(extendin-4)およびエリスロポエチン)の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子タンパク質アセンブリ(supramolecular protein assembly)を開示する。本発明は、また、超分子タンパク質アセンブリを含む医薬組成物を開示する。
【0007】
本発明の開示の超分子タンパク質アセンブリおよび組成物は、代謝異常、特に糖尿病、ならびに他の慢性炎症疾患、例えば、関節リウマチ、骨粗鬆症、慢性的な炎症性および末梢性疼痛、敗血症、およびペプチド、タンパク質または低分子薬剤を使用した連続的かつ長期間の治療が必要なアレルギーの治療に有用である。
【0008】
本発明の1つの態様により、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常;または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子タンパク質またはペプチドアセンブリ(SPA)であって、タンパク質またはペプチドの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0009】
本発明の他の態様により、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0010】
本発明の他の態様により、骨粗鬆症の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)であって、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0011】
本発明の他の態様により、関節炎の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)であって、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集形態を含むアセンブリが提供される。
【0012】
本発明の更なる他の態様により、糖尿病の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)であって、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0013】
更に、本発明は、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な医薬組成物であって、治療上有効量の本発明に記載の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリを含む組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む組成物を提供する。
【0015】
本発明は、また、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む組成物を提供する。
【0016】
他の態様においては、本発明は、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリを含む組成物を提供する。
【0017】
本発明の他の態様においては、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明に記載された超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む組成物が提供される。
【0018】
また、骨粗鬆症の処置のための医薬組成物であって、本発明の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む組成物が提供される。
【0019】
更なる他の発明においては、関節炎および関節痛の処置のための医薬組成物であって、本発明に記載の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む組成物が提供される。
【0020】
本発明の更なる態様は、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)の製造方法であって、インスリンを約25〜60℃で1.5〜7.8の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子インスリンアセンブリ(SIA)を得る工程を含む方法を提供することである。
【0021】
更なる他の発明は、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の製造方法であって、カルシトニンを約25〜60℃で約4.0〜8.0の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を得る工程を含む方法を提供することである。
【0022】
イブプロフェン-タグ化ペプチドアセンブリ(SIbA)の製造方法も本発明においては開示し、当該方法は、イブプロフェン-ペプチドを約25〜60℃で約3.5〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を得る工程を含む。
【0023】
本発明は、また、本発明に記載の超分子エキセンディンアセンブリの製造方法であって、エキセンディン4を約25〜60℃で約2.0〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜192時間一定に攪拌しながらインキュベートし、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子エキセンディンアセンブリ(SEA)を得る工程を含む方法も提供する。
【0024】
更に、本発明は、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の前記疾患または病気の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0025】
本発明は、また、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0026】
本発明の1つの態様は、骨粗鬆症の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の骨粗鬆症治療用の超分子カルシトニンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供することである。
【0027】
本発明の他の態様により、関節痛の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の前記病気の緩和に有効な超分子イブプロフェンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0028】
本発明の更なる他の態様により、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、癌および内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療のための、超分子タンパク質アセンブリの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、組換えヒト(rH)およびウシインスリンの、50μM Th-T蛍光を用い手モニターした、pH2.0および7.0でのフィブリル形成のカイネティクスを示す。
【図2a】図2aは、ウシおよびrHインスリンの超分子インスリンアセンブリII(プレ-アミロイドインスリンII中間体とも称する)からのインスリンのin vitro放出を、280nm吸光度および内因性チロシン蛍光によってモニターすることによって示す。0時間および15日での透析膜内部の溶液のTh-Tの蛍光強度も示す。
【図2b】図2bは、ウシインスリンの様々な超分子インスリンアセンブリ中間体からのin vitroモノマー放出カイネティクスを示す。
【図2c】図2cは、rH-インスリンの様々な超分子インスリンアセンブリ中間体からのin vitroモノマー放出カイネティクスを示す。
【図2d】図2dは、一定の1ml PBS溶液中でモニターした、pH7.0で形成させたSIA II(或いはプレアミロイド)のin vitro放出カイネティクスを示す。
【図3】図3は、天然のインスリン、超分子インスリンアセンブリII(或いはプレ-アミロイドインスリンII),超分子インスリンアセンブリIII(或いはプレ-アミロイドインスリンIII)およびインスリンアミロイド(ウシおよびヒト)を用いた、コンゴ-レッド結合試験を示す。
【図4】図4は、r-ヒトおよびウシインスリンのフーリエ変換赤外分光(FTIR)の特徴を示す。
【図5】図5は、原子間力顕微鏡(AFM)によって試験した、超分子インスリンアセンブリ(或いはプレ-アミロイドインスリン)中間体およびインスリンフィブリルの形態を示す:(a)インスリンモノマー(b)ウシインスリンの超分子インスリンアセンブリI(或いはプレ-アミロイドインスリンI)中間体、pH7.0(c)ウシインスリンの超分子インスリンアセンブリII(或いはプレ-アミロイドインスリンII)、pH7.0(d)ウシインスリンの超分子インスリンアセンブリ中間体III(或いはプレ-アミロイドインスリンIII)、pH7.0(e)rH-インスリンの超分子インスリンアセンブリ-I、pH7.0(f)rH-インスリンの超分子インスリンアセンブリ-II、pH7.0(g)rH-インスリンの超分子インスリンアセンブリ-III、pH7.0(h)pH7.0で完全に形成されたフィブリル(i)は、6時間、pH2.0、37℃で形成された超分子インスリンアセンブリ(或いはプレ-アミロイドインスリン)中間体を示す(j)pH2.0で形成されたアミロイドフィブリル。
【図6】図6は、インスリンフィブリルおよび超分子インスリンアセンブリの形成の間の中間体のネガティブ染色TEM顕微鏡結果を示す:(a)超分子インスリンアセンブリI(或いはプレ-アミロイドインスリンI)、pH7.0(b)超分子インスリンアセンブリII(或いはプレ-アミロイドインスリンII)、pH7.0(c)超分子インスリンアセンブリIII(或いはプレ-アミロイドインスリンIII)、pH7.0(d)pH7.0での成熟ファイバー(e)pH2.0、37℃で形成されたファイバー。
【図7】図7は、グルコース恒常性における超分子インスリンアセンブリ(或いはプレ-アミロイドインスリン)のin vivo効果を示す:(a)皮下および筋肉内の両方で投与した様々な量の超分子インスリンアセンブル-II(ウシ)に応答する血中グルコース濃度(b)皮下および筋肉内の両方で投与した様々な量の超分子インスリンアセンブル-II(r-ヒト)に応答する血中グルコース濃度。
【図8】図8は、ウシSIA-IIの投与後135日間にわたってモニターした食後の血中グルコース濃度を示す:(a)ウシインスリン(b)rHインスリン。
【図9】図9は、ヒトSIA-IIの投与後160日間にわたってモニターした食前の血中グルコース濃度を示す:(a)ウシインスリン(b)rHインスリン。
【図10】図10は、pH2.0および7.0で形成したインスリンアミロイドの投与後にモニターした血中グルコース濃度を示す。
【図11】図11は、SIA-IIで処置したラット、糖尿病のコントロールおよび非-糖尿病のコントロールラット体重プロファイルを示す。
【図12】図12は、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)中の血中グルコースプロファイルを示す。
【図13】図13は、以下を示す:(a)SCまたはIM注射した超分子インスリンアセンブリ(或いはプレ-アミロイドインスリン)に応答する、STZ処置ラット中の、固相ELISAを使用した、対応するSIA-IIから放出される血清rHおよびウシインスリンの定量(b)IPGTT実験の間の血清ウシインスリンの定量(c)注入したグルコースに応答する内因性インスリン濃度を求めるための、IPGTTについて実施した血清ラットインスリンELISA。
【図14】図14は、STZ糖尿病ラットの125I標識インスリンSIA II処置を示す:(a)100μgの標識した超分子インスリンアセンブリで25日間まで処置した動物の血清中のCPM/mlプロファイル(b)血中グルコース(mg/dL)および放出されたウシインスリン(ng/ml)の、36日間のin vivoプロファイル。24時間のプロファイルを挿入図として示す。
【図15】図15は、標識したSIA IIで処置した動物に由来する血清のTricine-SDS-PAGEを示す。皮下(上パネル)または筋肉内(真中パネル)のいずれかで処置して1〜28日後の血清のクマシー染色(左端)および蛍光イメージ(左端以外)。下パネルは、SIA IIに由来するin vitro放出モノマーを示す。
【図16】図16は、超分子インスリンアセンブルIIでの処置後の高血糖クランプ法の結果を示す。GIR-グルコース注入速度(mg/kg/min)
【図17】図17は、培養した脂肪細胞の、インスリンシグナル伝達カスケードについてのウェスタンブロッティング(WB)の結果を示す。(a)PBS、インスリン、SIA-II、SIA-IIから放出されたインスリン、(b)記載された血清で処置した脂肪細胞を使用し、インスリンシグナル伝達について分析。
【図18】図18は、STZで糖尿病にし、超分子インスリンアセンブリII(或いはプレ-アミロイドインスリンII)で皮下注射し、コンゴレッドを使用して残存の超分子インスリンアセンブリの存在および炎症の発生のそれぞれについてチェックした雄のWistarラットを示す:(a)1〜12週の、皮下の、コンゴレッド染色切片(i-v)、コンゴレッド染色複屈折観察(vi-x)、H&E染色切片(xi-xv)および免疫染色切片(xvi-xx)(b) 1〜12週の、コンゴレッドで染色した筋肉内切片(i-v)、コンゴレッド染色複屈折観察(vi-x)、H&E染色切片(vi-xv)および免疫染色切片(xvi-xx)。
【図19】図19は、以下を示す:(a)E.coli由来のLPSを、炎症性細胞の浸潤についてのポジティブコントロールとして、皮下および筋肉組織に注射した。免疫染色したSC(i)およびIM(ii)切片、およびH&E染色SC(iii)およびIM(iv)切片。(b)SC注射されたpH2.0で形成したインスリンアミロイドファイバーを、1、4、8および12週間、コンゴレッド染色切片(i-iv)およびコンゴレッド染色複屈折観察(v-viii)を使用してモニターした。
【図20a】図20は、アロキサンを使用して糖尿病としたラットのrH-インスリンSIA-II処置の血中グルコースプロファイルを示す:(a)空腹時
【図20b】(b)非-空腹時の血液
【図20c】(c)製造者のプロトコールに従った固相ELISAを使用した血清中のヒトインスリン定量。
【図21】図21は、以下における白内障形成をモニターした結果を示す:(a)STZ処置ラット(b)コントロールラット(c)インスリン処置ラット(d)超分子インスリンアセンブリ処置ラット。
【図22】図22は、心臓、腎臓および肝臓組織を切片化し、CRで染色することによってアミロイド沈着について調べたものである。細胞の形態も、H&E染色を使用して評価した。心臓、腎臓および肝臓のコンゴレッド染色複屈折観察(i-iii)、コンゴレッド染色切片(iv-vi)、心臓、腎臓および肝臓のH&E染色(vii-ix)。
【図23】図23は、SIA-IIで処置した後のラットのインスリン分解酵素(IDE)の検出を示す。
【図24】図24は、SIA-IIで処置したラットの血清中の抗-インスリン抗体についてのスクリーニングを示す。
【図25】図25は、細胞増殖についてのMTTアッセイを示す:MCF 7細胞を、PBS, pH7.0、ヒト/ウシインスリン(20nM)、SIA II(ヒト/ウシインスリン)、SIA IIから放出したインスリンモノマー(20nM)、インスリン様成長因子I(IGF-I)(6ng/ml)の投与によって、増殖カイネティクスについてアッセイした。
【図26】図26は、STZを使用して糖尿病としたマウス中の、皮下および筋肉内の両方で投与した様々な量の超分子インスリンアセンブリに応答する血中グルコース濃度を示す。指示された量で、(a)皮下、(b)筋肉内投与したヒトSIA-IIおよび(c)皮下投与したウシSIA-II。
【図27】図27は、STZを使用して糖尿病としたウサギにおける、皮下投与した超分子インスリンアセンブリに応答する血中グルコース濃度を示す。
【図28】図28は、35日間にわたる、図で示した様々な処置を行ったII型糖尿病ラットの血中グルコースプロファイルを示す。
【図29】図29は、停滞状態における、PBS中37℃でのカルシトニンフィブリル形成のカイネティクスを示す。フィブリル形成は、400nmでの濁度測定によってモニターした。
【図30】図30は、一定体積1mlの元で、および、2%マンニトール中(5ml)中で膜に対して透析した、SCA-IIから放出させたカルシトニンのin vitro放出プロファイを示す。放出は、275nmの吸光度をモニターすることによって観察した。
【図31】図31は、異なる処置グループの卵巣切除したラットの血清中のSCA-IIから放出したカルシトニンのプロファイルを示す。血清中のカルシトニンは、免疫アッセイキットによって測定した。
【図32】図32は、以下を示す:(a)関節痛についてのホットプレート試験。関節炎を、雄のWistarラット中に、カオリン/カラゲニンを使用して誘導した。1時間30分後に、ラットに、図に示した各投与量の薬剤を与えた。ラットを、処置後1時間、55℃で鎮痛測定器に置いた。足を舐めるまでにかかる時間を、ストップウォッチを使用して求めた。結果を、同じ日に実施した3つの独立した実験の平均値±S.E.M(n=5)として表す。(b)関節痛を評価するためのホットプレート試験。関節炎を、雄のWistarラット中に、カオリン/カラゲニンを使用して誘導した。30分後に、ラットに、図に示した各投与量の薬剤を与えた。イブプロフェンを毎日経口投与し、1時間後に、55℃の鎮痛測定器に置いた。結果を、同じ日に実施した3つの独立した実験の平均値±S.E.M(n=5)として表す。
【図33】図33は、超分子イブプロフェン-TTRアセンブリを用いた処置による、カラゲニンで誘導したラットの足の浮腫の阻害を示す。浮腫を、注射した足の体積(ml)の、ベース体積に対する増加として表す。結果を、同じ日に実施した3つの独立した実験の平均値±S.E.M(m=5)として表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、糖尿病および他の慢性疾患/病気の処置のためのタンパク質治療を提供する。本発明は、特に、タンパク質(インスリン、グルカゴン、カルシトニン、GNNQQNY、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、エキセンディン4およびエリスロポエチンからなる群から選択される)の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子タンパク質またはペプチド(PSA)アセンブリを提供する。本発明は、また、超分子タンパク質アセンブリを含む医薬組成物を提供する。
【0031】
本発明に開示の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリおよび医薬組成物は、代謝異常、特に糖尿病、ならびに他の慢性炎症疾患、例えば、関節リウマチ、骨粗鬆症、慢性的な炎症性および末梢性疼痛、敗血症、およびペプチド、タンパク質または低分子薬剤を使用した連続的かつ長期間の治療が必要なアレルギーの治療に有用である。
【0032】
本発明は、また、II型糖尿病および多くの慢性疾患、例えば関節痛、および急性症状、例えば外傷によって誘発された痛みの治療可能性を提供する。関節痛の場合、安定なオリゴマーを形成するペプチド(例えば、GNNQQNY)にタグ化した薬剤分子により、患者の痛みを緩和するための抗関節炎薬の除放および持続放出がもたらされる。本発明の方法は、また、治療のためのペプチドホルモンであるカルシトニンを使用した、骨粗鬆症の治療に拡張することができる。
【0033】
用語「超分子タンパク質アセンブリ」は、フィブリル化工程の間に形成されるタンパク質の中間形態も指し、ペプチド/タンパク質モノマーのオリゴマー性会合によって特徴付けられる。
【0034】
本願で使用される用語「超分子インスリンアセンブリ」または「SIA」は、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態である超分子インスリンアセンブリI、IIおよびIIIを指す。
【0035】
本願で使用される用語「SIA I」は、ステージIでの「超分子インスリンアセンブリ」を指し、「SIA I」は、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含み、オリゴマーは、インスリンモノマーの真珠様配置(pearl like arrangement)を有する伸長クラスター(elongated cluster)からなる。
【0036】
本願で使用される用語「SIA II」は、ステージIIでの「超分子インスリンアセンブリ」を指し、「SIA II」は、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含み、インスリンのオリゴマーは、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合(linear association)に配置される。
【0037】
本願で使用される用語「SIA III」は、ステージIIIでの「超分子インスリンアセンブリ」を指し、「SIA III」は、インスリンのオリゴマー形態の密度の高い線形会合からなる。
【0038】
ステージIIIでのSIA、すなわちSIA IIは、約90%のSIA-IIからなる。
【0039】
本願で使用される用語「超分子イブプロフェンアセンブリ」または「SIbA」は、痛み除去剤イブプロフェンと共有結合的に結合した(タグ化した)ペプチドGNNQQNY、NFLVH、DFNKF、NFGAILおよびKFFEの不溶性かつ凝集形態である超分子イブプロフェンアセンブリを指す。
【0040】
本願で使用される用語「超分子カルシトニンアセンブリ」または「SCA」は、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態である超分子カルシトニンアセンブリを指す。
【0041】
本発明によれば、1つの実施態様によって、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常;または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子タンパク質またはペプチドアセンブリ(SPA)であって、前記タンパク質またはペプチドの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0042】
本発明の他の実施態様によって、本発明に開示の超分子タンパク質アセンブリの製造のためのタンパク質またはペプチドであって、前記タンパク質が、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、エキセンディン4およびエリスロポエチンからなる群から選択されるか、またはペプチドGNNQQNYを使用する、タンパク質またはペプチドが提供される。
【0043】
他の実施態様においては、本発明は、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリを提供する。
【0044】
更なる他の実施態様においては、本発明は、SIA I、SIA II、SIA IIIステージとしてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態またはこれらの組み合わせを含む超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA Iが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターからなり、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなり、SIA IIIが、約90%のSIA-IIからなり、インスリンオリゴマーの密度の高い線形会合である、超分子インスリンアセンブリを提供する。
【0045】
更なる実施態様においては、SIA IIステージのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA IIステージが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなる、超分子インスリンアセンブリが提供される。
【0046】
更なる実施態様においては、フーリエ変換赤外分光(FTIR)で1647-1645cm-1のシャープなピークを示す、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)が供給される。
【0047】
1つの実施態様においては、本発明は、インスリンが組換えヒトインスリンである、超分子インスリンアセンブリ(SIA)を供給する。
【0048】
他の実施態様においては、本発明は、インスリンがヒト、ウシまたはブタインスリンである、超分子インスリンアセンブリ(SIA)を提供する。
【0049】
本発明の1つの実施態様によって、1時間当り約0.2〜0.6IUの範囲の速度でインスリンモノマーをin vitroで放出する超分子インスリンアセンブリ(SIA)が提供される。
【0050】
本発明の他の実施態様によって、インスリンの放出速度が約7〜180日間で0.1〜5.4ng/mlの範囲である、超分子インスリンアセンブリ(SIA)が供給される。
【0051】
本発明の更なる他の実施態様によって、インスリンの放出速度が180日間まで0.5〜1.5ng/mlの範囲である、超分子インスリンアセンブリ(SIA)が供給される。
【0052】
本発明の追加の実施態様によって、投与によって必要とする患者において180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、超分子インスリンアセンブリ(SIA)が提供される。
【0053】
本発明の1つの実施態様においては、単回投与によって必要とする患者において4-180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、投与する際の濃度が25〜750μgの範囲である、アセンブリが提供される。
【0054】
本発明の他の実施態様においては、単回投与によって必要とする患者において少なくとも180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、投与する際の濃度が150〜250μgの範囲である、アセンブリが提供される。
【0055】
本発明の更なる他の実施態様においては、投与によってインスリンモノマーを放出する超分子インスリンアセンブリ(SIA)が提供される。
【0056】
本発明は、また、骨粗鬆症の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)であって、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリを提供する。
【0057】
投与した本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)は、必要とする対象において約55-60日間カルシトニンを放出する。
【0058】
更に、本発明は、アセンブリ内のペプチドが小分子薬剤と結合している超分子タンパク質アセンブリを提供する。
【0059】
本発明は、また、関節炎の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)であって、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集形態を含むアセンブリが提供される。
【0060】
本発明の1つの実施態様は、ペプチドとタグ化した超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)であって、ペプチドがGNNQQNY、NFGAIL、NFLVH、DFNKFおよびKFFEからなる群から選択される、アセンブリに関する。
【0061】
本発明は、また、糖尿病の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)であって、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含むアセンブリが提供される。
【0062】
本発明の1つの実施態様によって、プロドラッグとして作用する、本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリが提供される。
【0063】
本発明の1つの実施態様によって、プロドラッグとして作用する、本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリであって、超分子インスリンアセンブリ(SIA)、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)、超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)からなる群から選択されるアセンブリが提供される。
【0064】
本発明の1つの実施態様においては、細胞毒性を有さない超分子タンパク質アセンブリが提供される。
【0065】
本発明の他の実施態様においては、細胞毒性を有さない超分子タンパク質アセンブリであって、超分子インスリンアセンブリ(SIA)、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)、超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)からなる群から選択されるアセンブリが提供される。
【0066】
本発明によれば、1つの実施態様によって、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な医薬組成物であって、治療上有効量の本発明に記載の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリを含む組成物が提供される。
【0067】
1つの実施態様は、本発明の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリを含む医薬組成物であって、前記タンパク質またはペプチドが、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、IL-1RA、エキセンディン4、エリスロポエチン、GNNQQNYおよび他のペプチドからなる群から選択される、医薬組成物に関する。
【0068】
本発明は、更に、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の本発明の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む組成物を提供する。
【0069】
加えて、1つの実施態様においては、本発明は、治療上有効量の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、前記アセンブリが、SIA I、SIA II、SIA III段階としてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態またはこれらの組み合わせを含み、SIA Iが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターからなり、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなり、SIA IIIが、約90%のSIA-IIからなり、インスリンオリゴマーの密度の高い線形会合である、組成物を提供する。
【0070】
他の実施態様においては、本発明は、SIA IIのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなる、アセンブリを提供する。
【0071】
本発明の他の実施態様においては、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、治療上有効量の、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および/または超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む組成物が提供される。
【0072】
更なる実施態様においては、治療上有効量の本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、前記超分子インスリンアセンブリが、SIA I、SIA II、SIA III段階としてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態またはこれらの組み合わせを含み、SIA Iが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターからなり、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなり、SIA IIIが、約90%のSIA-IIからなり、インスリンオリゴマーの密度の高い線形会合である、組成物が提供される。
【0073】
更なる実施態様においては、治療上有効量の本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および超分子エキセンディン4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物であって、前記超分子インスリンアセンブリが、SIA IIのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含み、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなる、組成物が提供される。
【0074】
本発明の1つの実施態様によって、投与によって約7〜180日間インスリンを放出する、本発明の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物が提供される。
【0075】
他の実施態様においては、本発明は、特許請求の範囲に記載の請求項のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物であって、投与によって必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、医薬組成物を提供する。
【0076】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明に記載の超分子インスリンを含む医薬組成物であって、単回投与によって必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、前記組成物中の前記アセンブリの濃度が25〜750μgの範囲である、医薬組成物が提供される。
【0077】
更なる実施態様によって、本発明の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物であって、単回投与によって必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、前記組成物中の前記アセンブリの濃度が150〜250μgの範囲である、医薬組成物が提供される。
【0078】
この実施態様においては、本発明の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物であって、インスリンの放出速度が少なくとも180日間まで0.5〜1.5ng/mlの範囲である、組成物である。
【0079】
他の実施態様においては、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む、骨粗鬆症の処置のための医薬組成物が提供される。
【0080】
他の実施態様においては、本発明は、カルシトニンを放出する、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む医薬組成物を提供する。
【0081】
他の実施態様においては、本発明は、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む医薬組成物であって、投与によって約55〜60日間カルシトニンを放出する、組成物を提供する。
【0082】
更なる他の実施態様においては、本発明は、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む医薬組成物であって、単回投与によって約55〜60日間カルシトニンを放出し、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)から放出されたカルシトニンの濃度が15〜20pg/mlの範囲である、組成物を提供する。
【0083】
本発明は、また、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む関節炎の処置のための医薬組成物を提供する。
【0084】
本発明の1つの実施態様においては、イブプロフェンを放出する、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む医薬組成物が提供される。
【0085】
他の実施態様においては、本発明は、投与によって約3〜6日間イブプロフェンを放出する、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む医薬組成物を提供する。
【0086】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む医薬組成物であって、単回投与によって約3〜6日間イブプロフェンを放出し、超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の濃度が10〜20mgの範囲である、組成物が提供される。
【0087】
本発明に記載の医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体、添加剤または希釈剤を含む。
【0088】
本発明に記載の医薬組成物は、静脈内、筋肉内、経口または皮下に投与される。
【0089】
本発明に記載の医薬組成物は、ポンプ、カテーテルおよびインプラントからなる群から選択される、組成物を放出することができるデバイスを介して投与される。
【0090】
本発明に記載の医薬組成物は、単回投与によって長時間前記タンパク質を放出する。
【0091】
本発明によれば、1つの実施態様によって、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)の製造方法であって、インスリンを約25〜60℃で1.5〜7.8の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子インスリンアセンブリ(SIA)を得る工程を含む方法が提供される。
【0092】
本発明の1つの実施態様においては、更に、PBSでSIAを洗浄する工程;およびSIAをPBSに再懸濁する工程を含む、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)の製造方法が提供される。
【0093】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の製造方法であって、カルシトニンを約25〜60℃で4.0〜8.0の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を得る工程を含む方法が提供される。
【0094】
更なる実施態様においては、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の製造方法は、更に、PBSでSCAを洗浄する工程;およびSCAを水または2%マンニトールに再懸濁する工程を含む。
【0095】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の製造方法であって、ペプチドタグ化-イブプロフェンを約25〜60℃で約3.5〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜192時間インキュベートし、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を得る工程を含む方法が提供される。
【0096】
追加の更なる他の実施態様においては、本発明は、更に、PBSでSIbAを洗浄する工程;およびSIbAをPBSに再懸濁する工程を含む、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の製造方法を提供する。
【0097】
本発明は、また、本発明の超分子エキセンディンアセンブリの製造方法であって、エキセンディン4を約25〜60℃で約2.0〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および前記溶液を6〜192時間一定に攪拌しながらインキュベートし、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子エキセンディンアセンブリ(SEA)を得る工程を含む方法を提供する。
【0098】
本発明の超分子エキセンディンアセンブリの製造方法は、更に、PBSでSEAを洗浄する工程;およびSEAをPBSに再懸濁する工程を含む。
【0099】
1つの実施態様によって、1.5〜2.5の範囲のpHを有する水中の塩酸または酢酸;3.5〜5.5の範囲のpHを有する酢酸ナトリウムバッファー;pH6を有するリン酸バッファー(PBS)および4〜6の範囲のpHを有するクエン酸バッファーからなる群から選択される、タンパク質を溶解する溶液が提供される。
【0100】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリの製造方法は、37℃でタンパク質を溶解する工程を含む。
【0101】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリの製造方法は、pH7.2の溶液中でタンパク質を溶解する工程を含む。
【0102】
本発明に記載の超分子インスリンアセンブリの製造方法は、10時間溶液中でインスリンをインキュベーションする工程を含む。
【0103】
本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリの製造方法は、8時間溶液中でカルシトニンをインキュベーションする工程を含む。
【0104】
本発明に記載の超分子イブプロフェンアセンブリの製造方法は、32時間溶液中でペプチドとタグ化したイブプロフェンをインキュベーションする工程を含む。
【0105】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリの製造方法は、6〜192時間溶液中でタンパク質をインキュベーションする工程を含む。
【0106】
本発明は、更に、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、前記疾患または病気の緩和に有効な、本発明に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0107】
1つの実施態様においては、本発明は、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、前記疾患または病気の緩和に有効な、本発明の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0108】
本発明の他の実施態様においては、骨粗鬆症の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、骨粗鬆症の緩和に有効な、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0109】
更なる他の実施態様においては、関節炎および関節痛の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、関節炎および関節痛の緩和に有効な、本発明の超分子イブプロフェンアセンブリを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0110】
本発明に記載の医薬組成物を使用した治療方法においては、組成物は、筋肉内、腹腔内または皮下に投与される。
【0111】
本発明によれば、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、関節痛、癌および内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療のための、本発明の超分子インスリンアセンブリの使用が提供される。
【0112】
更に、本発明の1つの実施態様においては、I型およびII型糖尿病からなる群から選択される代謝異常の治療のための、本発明の超分子インスリンアセンブリの使用が提供される。
【0113】
本発明は、また、骨粗鬆症の治療のための、本発明に記載の超分子カルシトニンアセンブリの使用を提供する。
【0114】
本発明は、関節炎および関節痛の治療のための、本発明に記載の超分子イブプロフェンアセンブリの使用を提供する。
【0115】
更なる他の実施態様においては、本発明は、安定で、プロテアーゼ耐性を有し、より長い保存期間を有する超分子タンパク質アセンブリを含む組成物を提供する。
【0116】
更なる他の実施態様においては、本発明は、安定で、プロテアーゼ耐性を有し、より長い保存期間を有する超分子タグ化ペプチドアセンブリを含む組成物を提供する。
【0117】
更なる他の実施態様においては、本発明は、安定で、プロテアーゼ耐性を有し、約10日〜150日以上の範囲のより長い保存期間を有する超分子タンパク質アセンブリを含む組成物を提供する。
【0118】
また、本発明の範囲には、治療タンパク質として有用なタンパク質またはペプチドの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、様々な超分子タンパク質またはペプチドアセンブリ(SPA)が含まれる。
【0119】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリ(SPA)を形成し得る任意のタンパク質またはペプチドは、本発明の範囲内に含まれる。
【0120】
更に、本発明に記載された方法によって超分子タンパク質アセンブリ(SPA)を形成し得る任意のタンパク質またはペプチドは、本発明の範囲内に含まれる。
【0121】
当業者には理解されるように、様々な溶液、例えばバッファーを、本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリの再懸濁および洗浄のために使用し得る。
【0122】
本願で使用される用語「治療上有効な量」は、望む病気もしくは疾患を治療、緩和もしくは予防する、または検出可能な治療もしくは予防効果を示す治療薬の量を指す。患者の正確な有効量は、患者の大きさおよび健康状態、症状の性質および程度、ならびに投与のために選択された治療または併用療法に依存する。特定の状況での有効な量は、一般的な実験によって求まり、臨床医の判断の範囲である。
【0123】
本発明の目的のためには、SIAの有効な投与量は、一般的に、投与される対象において、約0.1mg/kg〜約1.0mg/kgまたは約0.2mg/kg〜約2.0mg/kgまたは約0.5mg/kg〜約3.0mg/kgの本発明の組成物である。
【0124】
本発明の目的のためには、SCAの有効な投与量は、一般的に、投与される対象において、約0.1mg/kg〜約0.3mg/kgまたは約0.3mg/kg〜約0.8mg/kgまたは約0.5mg/kg〜約1.0mg/kgの本発明の組成物である。
【0125】
本発明の目的のためには、SIbAの有効な投与量は、一般的に、投与される対象において、約2.0mg/kg〜約10.0mg/kgまたは約10.0mg/kg〜約15.0mg/kgまたは約15.0mg/kg〜約30.0mg/kgの本発明の組成物である。
【0126】
本発明の目的のためには、SEAの有効な投与量は、一般的に、投与される対象において、約0.1mg/kg〜約0.5mg/kgまたは約0.5mg/kg〜約1.0mg/kgまたは約1.0mg/kg〜約3.0mg/kgの本発明の組成物である。
【0127】
医薬組成物は、また、医薬的に許容可能な担体を含み得る。用語「医薬的に許容可能な担体」は、治療薬(例えば、抗体またはポリペプチド、遺伝子および他の治療薬)の投与のための担体を指す。当該用語は、それ自身が組成物を投与した個体に有害な抗体の産生を誘導せず、過度の毒性をもたらさず投与することができる任意の医薬用担体を指す。適した担体は、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子とし得る。このような担体は、当業者に良く知られている。治療用組成物中の医薬的に許容可能な担体は、液体、例えば水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールを含み得る。補助物質、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝物質等も、このようなベヒクル内に存在し得る。典型的には、治療用組成物は、液体溶液または懸濁物のいずれかの注射物質として調製される;注射前の液体ベヒクル内の溶液または懸濁物に適した固体形態も調製し得る。リポソームおよびネオゾーム(neosome)は、医薬的に許容可能な担体の定義に含まれる。医薬的に許容可能な塩、例えば、塩酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸の塩も、医薬組成物に存在し得る。
【0128】
医薬組成物は、様々な形態、例えば、顆粒、タブレット、錠剤、座薬、カプセル、懸濁物、軟膏、ローション等で調製し得る。経口および局所使用に適した医薬のグレードの有機または無機担体および/または希釈剤は、治療上活性な化合物を含む組成物を調製するために使用し得る。当該業界で知られた希釈剤は、水性媒体、植物性および動物性油および脂肪を含む。安定化剤、湿潤および乳化剤、浸透圧を変更する塩または適切なpH値をもたらすバッファー、ならびに皮膚浸透促進剤を、補助剤として使用し得る。
【0129】
本発明に記載の医薬組成物は、代謝障害、特に糖尿病、ならびに他の慢性炎症疾患、例えば、関節リウマチ、骨粗鬆症、慢性的な炎症性および末梢性疼痛、敗血症、およびペプチド、タンパク質または低分子薬剤を使用した連続的かつ長期間の治療が必要なアレルギーの治療に有用である。
【0130】
本発明に記載の組成物は、関連性のある/適用可能な治療用タンパク質の超分子タンパク質アセンブリを含み、多くの慢性疾患および急性症状の処置に適用可能である。
【0131】
本発明に記載の組成物は、治療用タンパク質のオリゴマー、特に、タンパク質の持続的放出のためのタンパク質の超分子アセンブリを含む。
【0132】
幾つかの広く使用されているバイオ医薬、例えば、インスリン、グルカゴンおよびカルシトニンは、アミロイドの形成を誘導し得る。可溶性前駆体タンパク質と比較して、アモルファス凝集体は、アミロイド形成の前触れとして形成され、新規な特性、例えば増大した安定性、プロテアーゼ耐性、自己増殖、より長い保存期間、高度に組織化された構造を獲得し、そして、純粋な分子の濃縮されたコンパクトな供給源として利用し得る。
【0133】
本発明に記載の超分子タンパク質アセンブリは、α-ヘリックスおよびβ-シートコンポーネントの両方を有する規定の構造で存在する。前記した特徴的な構造を取ることによって、溶液中で、天然のインスリン分子からの可溶性の変化や構造の変化をもたらす。重要なことには、この超分子構造からのインスリンモノマーの放出は、生物学的に活性であり、それ故、天然のインスリン構造と類似している。新規の分解特性が、形成された超分子構造に付与されており、これにより、それ自身がプロドラッグとして作用する。このプロドラッグ形態においては、インスリン感受性脂肪細胞のシグナル伝達事象またはグルコース恒常性に何ら作用も影響も及ぼさないことが見出されている。プロドラッグは、in vivo注射の場所または部位からのインスリンモノマーの放出によって、薬物へと転換する。in vitroおよびin vivoの両方の結果によって、グルコース恒常性ならびにI型およびII型糖尿病について通常評価される他の臨床パラメーターに影響を及ぼす生物学的に活性なインスリン分子を放出する、前記調合物の独自性が立証された。
【0134】
本発明は、糖尿病の処置に有用な超分子インスリンアセンブリを含む組成物を提供する。超分子インスリンは、インスリンのアモルファスおよび発生期(nascent)の線維状オリゴマーのハイブリッドであり、生物活性インスリンの放出のための除放性調合物として機能する。グルコース制御ホルモンであるインスリンは、環境に依存して、ヘキサマー、ダイマーおよびモノマーを含む異なるオリゴマー状態の混合物として平衡状態で存在する。膵分泌ベヒクルにおいては、インスリンは、生理学的pHでヘキサマーとして保存されるが、受容体とはモノマーとして相互作用する。変性条件下、例えば低いpH下では、または、強変性剤の存在下では、インスリンは凝集し、アミロイドフィブリルを形成する(Paul Bevan Insulin signalling. J. Cell Sci., 114, 1429-1430 (2001))。
【0135】
本発明の1つの実施態様によって、代謝異常(特に糖尿病)のような様々な疾患の処置のためのタンパク質の超分子オリゴマーの製造方法を提供する。本発明者は、また、他の急性慢性疾患、例えば、骨粗鬆症、炎症性および慢性的な疼痛、関節リウマチ、関節痛、癌、内毒素性ショック等についても、特許請求の範囲に記載し、これらにおいては、ペプチドを変換する類似のアプローチまたはこのような変換した「超分子オリゴマー化タンパク質またはペプチド」に結合した薬剤分子を提示する類似のアプローチ、およびこれらの天然の薬剤のデポ剤(depot)としての使用は、良好な結果をもたらした
【0136】
本発明に記載のインスリンの超分子オリゴマーは、6.8〜7.8の範囲の、好ましくは7.2のpHで調製する。
【0137】
本発明は、インスリンモノマーの持続放出が可能な超分子インスリンアセンブリを含む組成物を提供する。特定の超分子インスリンアセンブリ(SIA I、II、IIIまたはこれらの組み合わせ)を含む組成物は、より良い血糖コントロールを達成するのに有用である。
【0138】
本発明は、インスリンの持続放出を達成することによって、より厳密な血糖コントロールを達成するのに有用であるインスリンオリゴマー、超分子インスリンアセンブリIIを提供する。超分子インスリンアセンブリIIを、皮下または筋肉内に投与した場合、STZ誘導糖尿病ラットにおいて、基礎的な濃度のインスリンを、約10日〜180日以上の範囲にわたる長期間維持し続け、同時に、厳密な血糖コントロールを保ち続けるので、それ故、糖尿病に対する長期間続く治療を提供できる。
【0139】
本発明によれば、1つの実施態様によって、筋肉内または皮下投与した場合に0.1-1.5ng/mlの範囲のインスリンモノマーの持続放出をもたらし、少なくとも約180日日間存続する、超分子インスリンアセンブリIIを含む組成物が提供される。
【0140】
本発明の他の実施態様によって、超分子インスリンアセンブリIIを含む組成物であって、超分子インスリンアセンブリIIから放出されるインスリンモノマーの量が血清中0.5-1.5ng/mlである、組成物が供給される。
【0141】
本発明の実施態様においては、インスリンの超分子オリゴマーを含む組成物の血中グルコース濃度に対するin vivo効果は、STZ誘導糖尿病ラットを用いて証明された。
【0142】
本発明の他の実施態様によって、約50μg〜約400μgのインスリンの範囲の投薬量を試験期間モニターする、超分子インスリンアセンブリを含む組成物の投薬量が提供される。
【0143】
本発明の他の実施態様によって、投薬量が200μgのインスリンである、超分子インスリンアセンブリを含む組成物の投薬量が提供される。
【0144】
本発明の他の実施態様によって、投薬量が100μgのインスリンである、超分子インスリンアセンブリを含む組成物の投薬量を提供する。
【0145】
本発明の更なる他の実施態様においては、インスリン分解酵素活性(IDE)を注射部位内および周辺部で約10日〜180日以上の範囲の期間惹起しない、超分子インスリンアセンブリを含む組成物が提供される。
【0146】
本発明の更なる他の実施態様においては、患者の血清においては、約10日〜150日以上の範囲の期間、抗-インスリン抗体が存在しない。
【0147】
更なる他の実施態様においては、本発明は、安定で、プロテアーゼ耐性であり、約10日〜150日以上の範囲の保存期間を有する、超分子インスリンアセンブリを含む組成物を提供する。
【0148】
本発明の更なる他の実施態様においては、制御された方法で長時間一気に迅速な放出が生じることなく、インスリンモノマーを放出することができる、超分子インスリンアセンブリを含む組成物が提供される。転換のカイネティクスは、in vivoおよびin vitroの両方で制御し得る。
【0149】
更に、本発明に記載の超分子インスリンアセンブリを含む組成物は、患者が毎日のインスリンの複数回投与の必要性から開放され、長期間の持続効果を有する単回投与剤として使用し得る。
【0150】
本発明に記載の超分子インスリンアセンブリを含む組成物は、不意のインスリンの大量の放出を示すことはなく、糖尿病患者において低血糖状態を防ぐ。
【0151】
本発明に記載の超分子インスリンアセンブリを含む組成物は、一定の速度で、in vitroおよびin vivoの両方でインスリンモノマーを放出することができる。
【0152】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリのより高いオリゴマー段階によって、糖尿病患者において低血糖が続くことなく、厳密に制御された血糖コントロールを達成する。
【0153】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリのより高いオリゴマー段階によって、I型糖尿病の患者において低血糖が続くことなく、厳密に制御された血糖コントロールを達成する。
【0154】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリのより高いオリゴマー段階によって、II型糖尿病の患者において低血糖が続くことなく、厳密に制御された血糖コントロールを達成する。
【0155】
本発明の更なる他の実施態様においては、本発明の超分子インスリンアセンブリまたは超分子インスリンアセンブリを含む組成物で治療した場合に、患者の体重の突然の増加はもたらされない。
【0156】
本発明の更なる他の実施態様においては、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)の患者の血中グルコースプロファイル中に、超分子インスリンアセンブリIIからの生物活性インスリンモノマーの放出中に遅滞期は見られず、フリーのインスリンの投与と類似している。
【0157】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリIIからのインスリンモノマーのin vivo放出について、ゼロオーダーのカイネティクス(zero order kinetics)または持続放出が観察される。
【0158】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリIIから放出されたインスリンは、可溶性インスリンの生物学的機能と同等である。
【0159】
更に、本発明の他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリの毒性は、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)、総ビリルビン、ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、血清総タンパク質、血清アルブミン、血清グロブリン、血清A/G比、腎臓機能試験(KFT)、白内障形成、脂肪組織重量、体重および外観についての生物学的アッセイを実施することによって、除外される。
【0160】
更なる他の実施態様においては、グルコース注入速度は、処置動物で同じに保つ。このことにより、注入部位でデポ剤から放出されたモノマーは生物学的に活性となり、グルコースを取り込むように筋肉および肝臓を刺激することが結論づけられる。
【0161】
更なる他の実施態様においては、MTTアッセイを、MCF7細胞を用いて、SIA IIから放出されたインスリンモノマーの不変構造および結合動力学を確認するために、実施した。
【0162】
更に、本発明の他の実施態様においては、雄のWistarラットを、他の化学的化合物アロキサンを使用して糖尿病とした。これらの糖尿病ラットを、更にSIA IIで処置したところ、STZ誘導糖尿病ラットの結果と類似の結果を示した。厳密な血糖コントロールが観察された。
【0163】
本発明の更なる他の実施態様においては、C57BL/6マウスを、ストレプトゾトシンを使用して糖尿病とし、その後、SIA IIで処置したところ、正常の血糖濃度を示した。
【0164】
本発明の他の実施態様では、超分子インスリンアセンブリは、超分子インスリンアセンブリ末端からの活性ペプチド薬剤の制御された放出に有用で安定なデポ剤である。
【0165】
本発明の1つの実施態様によれば、超分子インスリンアセンブリIIは、糖尿に対して長時間持続する治療を付与することができる。
【0166】
他の実施態様においては、超分子インスリンアセンブリの調製に使用されるインスリンは、好ましくは、組換えヒトインスリン、ウシおよびブタインスリンである。
【0167】
更なる他の実施態様においては、本発明に記載の、超分子インスリンアセンブリIおよびII(SIA IおよびII)またはこれらの組合せを含む組成物は、II型糖尿病を誘導すためにストレプトゾトシンで処置した動物対象において血中グルコース濃度を下げることができる。
【0168】
本発明の他の実施態様では、超分子インスリンアセンブリ(SIA IおよびII)とのII型糖尿病の治療のための補助療法として、ペプチド配列G-N-N-Q-Q-N-YとC末端でタグ化したエキセンディン4(エキセンディン4aと称する)によるオリゴマーアセンブリの形成を利用する。
【0169】
更に、本発明の他の実施態様においては、超分子オリゴマー複合体は、エキセンディン4を用いて形成された。
【0170】
更なる他の実施態様においては、より速い速度でインスリンモノマーを放出するSIA Iを、II型糖尿病(DM II)のラットに投与した。
【0171】
本発明の1つの実施態様によれば、SIA IIも、治療のためにDM IIラットに投与した。
【0172】
更なる他の実施態様においては、SIA IおよびIIの両方で処置した糖尿病ラットは、食前および食後の両方の段階で、より高い側に近いほぼ正常の血糖値濃度を示した(180±15mg/dl)。
【0173】
本発明の更なる他の実施態様においては、注射したSIA IIの投薬量は、皮下および筋肉内の両方の2つの場所で150μgであった。
【0174】
本発明の他の実施態様により、SIA IおよびIIの、30日間までの正常血糖値に近い濃度に維持する能力を実証する。
【0175】
更なる他の実施態様においては、インスリン治療とともに行うエキセンディン4aの投与によって、45日間まで正常血糖値に近い濃度(135±10mg/dl)を維持することができ、DM IIを治療するためのより良い調合物であった。
【0176】
更に、他の実施態様においては、インスリンモノマーを放出するが、非常に遅い速度で放出する(0.05-0.3ng/ml)SIA IIIは、境界型糖尿病患者、すなわち前糖尿病患者または(グルコース負荷試験において)治療として非常に少量のインスリンを必要とする予後不良の患者の治療に有用であり得る。
【0177】
本発明の更なる他の実施態様においては、糖尿病ラットの血清中で検出されるヒトインスリンの濃度は、約0.7-0.85ng/mlである。
【0178】
本発明の更なる他の実施態様においては、様々な血清パラメーター、例えばトリグリセリド(TAG)、遊離脂肪酸(FFA)を、治療の有効性を実証するために測定した。
【0179】
更なる他の実施態様においては、血清中のTAGの濃度は、インスリンSIA+エキセンディン4aで処置したラットについては0.45-0.6mmol/lの範囲であり、ほとんどコントロールと同等であった。
【0180】
更に、他の実施態様においては、血清中のFFA濃度を測定したところ、インスリンSIA+エキセンディン4aで処置したラットについて約0.85-0.9mmol/lであり、ほとんどコントロールと同等であった。
【0181】
本発明の更なる他の実施態様においては、処置した動物の体重の増加は、ほとんどコントロールラットと同等であった。
【0182】
更なる他の実施態様においては、現状の方法を、ペプチド、タンパク質または低分子を使用した持続的かつ連続的な治療が必要である慢性的炎症性疾患に拡張することができる。
【0183】
本発明の他の実施態様は、カルシトニン、エキセンディン4、ペプチドGNNQQNYタグ化イブプロフェンの超分子アセンブリの形成および様々な疾患を処置するためのアセンブリの治療的使用に関する。
【0184】
本発明の更なる他の実施態様においては、サケカルシトニンの超分子オリゴマーを、望む対象における骨粗鬆症の治療のために使用した。
【0185】
本発明の1つの実施態様によれば、サケカルシトニンによるアミロイドフィブリルの形成は、濃度依存的であり、44時間までには完全に形成される。
【0186】
更なる他の実施態様においては、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)I、IIおよびIIIは、それぞれ、6、8および12時間までに形成される。
【0187】
更に、本発明の他の実施態様においては、SCAからの遊離のカルシトニンの放出は、インスリンの場合のように、(小さい体積で)釣鐘曲線に従い、(大きい体積の水性溶媒で)透析膜を介して連続的に放出される。
【0188】
本発明の更なる他の実施態様においては、完全に成長したフィブリルからのカルシトニンモノマーの放出は無視してよいレベルであった。
【0189】
更なる他の実施態様においては、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を、2.5μl/hの速度でカルシトニンモノマーの制御された除放放出が達成されるAlzetポンプに導入した。
【0190】
本発明の1つの実施態様によれば、卵巣切除したラットに、2%マンニトール中に200μgのカルシトニン(CT)か超分子カルシトニンアセンブリ(SCA、2mg/ml)を含む皮下注射によって断続的に、または、Alzet浸透圧ミニポンプによって連続的に、ベヒクルまたはヒト/サケカルシトニンを投与した。
【0191】
更なる他の実施態様においては、一日おきに、8U/kg b wtの投薬量を、卵巣切除したラットに、ポンプを介して与え、16U/kg g wtを皮下に与えた。
【0192】
更なる他の実施態様においては、デメクロサイクリンおよびカルセインを、それぞれ、屠殺の10および3日前に、15mg/kg b wtの投薬量で投与した。
【0193】
本発明の1つの実施態様によれば、カルシトニンの血清濃度は、SCAで処置したラットで、他のグループのラットと比較して、より高い濃度(19pg/ml)で維持された。
【0194】
本発明の更なる他の実施態様においては、カルシトニンの血清濃度を、SCAを含む単一のポンプを用いて、60日間までより高い濃度で維持した。
【0195】
本発明の更なる他の実施態様においては、超分子カルシトニンで処置したラットは、ベヒクルを投与した卵巣切除したラット(体重が実験の間に約11%増加し血清中のカルシウムおよびリン濃度が増加した)と比較して、体重、カルシウムおよびリン濃度の僅かな増加が示された。
【0196】
更に、本発明の他の実施態様においては、処置した動物の血清中には、無視できるレベルの濃度のサケカルシトニンに対する抗体が存在していた。
【0197】
本願の実施例1は、超分子インスリンアセンブリIIの製造方法を提供する。図により、Thioflavin T(Th-T)蛍光を使用することによってモニターしたインスリンフィブリル形成(ヒトおよびウシの両方)の詳細が提供される(Le Vine, H. Quantification of β-Sheet Amyloid Fibril Structures with Thioflavin T. Methods Enzymol 309, 274-284 (1999))。ウシインスリンによるフィブリル形成は、インスリンを180rpm、37℃で、pH7.0(50mM PBS)およびpH2.0(水中の塩酸)で攪拌した場合に、Th-T蛍光の取得によって示された(図1)。Th-T蛍光の増加が、インスリンフィブリルへの結合が原因でもたらされ、pH7.0でインスリンをインキュベートした場合、48時間で最大値に達したのに対して、pH2.0ではフィブリル形成は迅速であり、それ故、Th-T蛍光は20時間で最大値になった。図1は、ウシおよびヒトインスリンの両方によるフィブリル形成を比較する。
【0198】
本願の実施例2は、超分子インスリンアセンブリ-IIからのインスリンモノマーの放出のカイネティクスを提供する。インスリンの超分子インスリンアセンブリ形態は、長時間にわたるインスリンモノマーの持続放出のためのリザーバーとして働く(図2a)。インスリンアミロイドおよび様々なインスリンの超分子アセンブリからのインスリンモノマーの放出を求め、図2bおよびcに示す。完全に形成したアミロイドファイバーは、pHに関係なく、無視できるレベルのインスリンを放出した。pH2.0では、超分子インスリンアセンブリ中間体、特に、超分子インスリンアセンブリIIは、非常に遅い速度でインスリンを放出し、このことは、これらのオリゴマーが頑丈であり、しっかりと会合していることをしている。しかしながら、pH7.0では、中間体(超分子インスリンアセンブリIIと称される)は、600nmで0.9-1.3の濁度を示し、かなりの速度でインスリンを放出する。吸光度280nmでの15±5日間にわたるインスリンモノマーの放出のリニアな増加が観察される。SIAからのインスリンの放出が1mlの一定の体積下で観察した場合に、釣鐘曲線が観察された(図2d)。このことは、オリゴマー形成進行の可逆性および遊離のインスリンとSIAとの間の平衡の存在を実証する。放出されたサンプルのチロシン蛍光によって、図2aで示されたこれらの観察が裏付けられた。インスリンアミロイド中間体、超分子インスリンアセンブリII(或いは、所謂インスリンプレ-アミロイドII)は、一時間当り2-4μM(0.4-0.6IU)のインスリンモノマーのin vitro持続放出の要件を満たし、これによって、身体の内部で基礎的なインスリン濃度を保つための、一定で遅いin vivo放出が達成される。
【0199】
実施例3は、コンゴ-レッド(CR)結合を使用した、超分子インスリンアセンブリの特徴を提供する(Klunk, W.E., Jacob, R.F. & Mason, R.P. Quantifying amyloid by Congo red spectral shift assay. Methods Enzymol 309, 285-305 (1999))。Th-Tのように、CRも、アミロイドのβ-シートがリッチな構造に特異的に結合し、その検出に一般的に使用されてきた。PBS中の50μM CRと1時間37℃でインキュベートしたサンプルに結合するCRを、400-600nm領域をスキャンすることによって、その最大吸光度のレッドシフトによりモニターした。図3は、超分子インスリンアセンブル(rHおよびウシ)がCRへの弱い結合を示したのに対して、pH2.0および7.0で完全に成長したファイバーは、顕著な結合を示したことを示す。
【0200】
実施例4においては、超分子インスリンアセンブリI、IIおよびIIIが、ATR-FTIRを使用することによっても特徴付けられている。各段階に対応する異なったスペクトルが観察された(図4)。IRバンドの低い周波数へのシフトが観察される。超分子インスリンアセンブリIIは、1647-1645cm-1でシャープなピークを有するのに対して、完全に形成されたインスリンフィブリル(アミロイド)は、ウシおよびrHインスリンそれぞれについて、1630-1628cm-1でピークを有する。超分子インスリンアセンブリIIのFTIRスペクトルは、CRデータと良く一致しており、このことは、ランダムコイル構造の含量が増加したが、タンパク質がいまだらせん構造を多く有していることを示す。
【0201】
pH2.0および7.0で形成したファイバーの形態を、実施例5および6において示す原子間力顕微鏡(AFM)および透過電子顕微鏡(TEM)によって評価した。pH7.0およびpH2.0での天然のインスリン分子(ウシおよびrHの両方)は、1.3±0.21nmの高さを有するランダムな分布を示し、これは、インスリンモノマーの寸法(1.11nm)およびインスリンダイマーの寸法(1.49nm)と相関していた(図5a)。pH7.0でのフィブリル化工程の中間体を、ウシインスリンについて図5(b-d)に、rHインスリンについて図5(e-g)に示す。SIA-Iは、真珠様配置を有する伸長クラスターを表す。これらの間に、12±2nmの高さを有する幾つかの伸長した線形の粒子が存在し、このことは、より高度なオリゴマー状態への更なる会合を示唆している。SIA-II中間体は、ウシおよびrHインスリンの両方において、超-オリゴマー構造組織を備えた特徴的な構成要素を有する前記した伸長クラスターの線形会合として観察される(図5(cおよびe))。SIA-III(SIA-IIに続くフィブリル段階)は、より高度なオリゴマー高度の密度が増加したことが示された。pH7.0で完全に成長したファイバーは、インスリンアミロイドの典型的なクロスβ構造を示す(図5h)。pH2.0で6-7時間のフィブリル化工程の中間体によって、高さ7.2-8.3nmの2つのフィブリルの側面会合が明らかになり、20時間後に、10-12nm幅の大きなねじれたファイバーが観察された(図5(iおよびj))。
【0202】
実施例6は、インスリンの可能性あるアセンブリの存在を評価するための透過電子顕微鏡(TEM)を示す。TEM顕微鏡写真図は、超分子インスリンアセンブリII段階における幾つかのアモルファスでより高度なオリゴマー構造の存在を示す(図6a)。超分子インスリンアセンブリII後の段階では(図6b)、図6cおよびdで示されるような、より線維状の構造を有する。対照的に、インスリンをpH2.0でインキュベートした場合は、大量の線維状形態が存在する(図6e)。
【0203】
実施例7は、インスリンアミロイドおよび超分子インスリンアセンブリ形態の有効性を試験するために使用した動物モデルの詳細を示す。著者らは、SIAの糖尿病の治療における仮定および治療の有効性を試験するための4つの異なる糖尿病モデル(すなわち、(a)STZ処置ラット、(b)アロキサン処置ラット、(c)STZ処置マウス、(d)STZ処置ウサギ)を使用した。
【0204】
投与量を標準化するために、50μg、100μg、200μgおよび400μgの超分子インスリンアセンブリ-IIを、糖尿病ラットに、皮下に注射し、或いは代替的に筋肉内に注射した。図7aおよびbに要約されるように、200μgの超分子インスリンアセンブリを使用した場合に135および160日(それぞれ、ウシインスリンおよびヒトインスリン)であったことと比較して、50および100μgの超分子インスリンアセンブリの単回投与によって、それぞれ、10日および30日間のみで正常血糖値に近い濃度を維持していた。400μgの投与の場合は、投与した経路に関わらず、突然の非空腹時正常血糖や空腹時低血糖が観察され、このことは、ウシインスリンのSIAデポ剤からの、インスリンモノマーの基礎濃度の初期ボーラス投与の放出を示唆している。200μgの超分子インスリンアセンブリの治療薬としての使用は、詳細な長期のプロスペクティブ研究のために選択された。
【0205】
実施例8は、インスリンの超分子インスリンアセンブリ形態を用いた糖尿病動物の処置を示す。複数のグループに分けたSTZ-誘導性糖尿病ラットを、インスリンで(4IU/kg、IP)、超分子インスリンアセンブリで(200μg、SCおよびIMの両方)でそれぞれ処置し、超分子インスリンアセンブリ治療の血中グルコース濃度に対するin vivo効果を試験した。加えて、PBSで処置した糖尿病ラットのグループおよび正常なラットのグループを、糖尿病コントロールおよび非-糖尿病コントロールとした。ラットの食事前および食事後の血中グルコース濃度を、インスリンの生理学的な効果が観察されるまでの期間、モニターした。図8aおよびbにおいて示したように、200μgの超分子インスリンアセンブリを用いた処置によって、STZ-誘導性糖尿病ラットにおいて、超分子インスリンアセンブリデポ剤からのインスリンモノマーの持続的かつ遅い放出によって、インスリンの基礎濃度を保っていた。これによって、空腹時低血糖をもたらすことなく、非-空腹時の血中グルコース濃度を顕著に減少させた(図9aおよびb)。超分子インスリンアセンブリを皮下または筋肉内経路を介して注射するかによっては、如何なる顕著な差異も見出せなかった。遊離のインスリン(すなわち、その正常な同等物;非-超分子組織化形態)処置(4IU/kgの単回投与)の場合、毎日の血中グルコースは、非空腹時の値である350-450md/dlにまで減少し、空腹時には300-400mg/dlのみになった。糖尿病ラットに、インスリンを毎日腹腔内に与えたところ、高血糖血中グルコース濃度(300±100mg/dl)を維持した。血中グルコースが非常に高い濃度とならないように毎日の投与が必要である遊離のグルコース処置とは対照的に、超分子インスリンアセンブリの単回注射は、糖尿病ラットにおいて3ヶ月、空腹時低血糖(90±50mg/dl)をもたらすことなく、正常血糖値に近い濃度(150±60mg/dl)に達するのに十分であった。類似の結果が、図8bおよび9bに示すように、ヒトインスリンから形成された超分子インスリンアセンブリを用いて観察された。pH7.0および2.0で形成されたインスリンアミロイドの投与によっては、図10から明らかであるように、糖尿病ラットの血糖状態に何らの有効な効果ももたらさなかった。再度、正常な健康の指標である体重を、処置の全期間にわたって、全ての場合に、BGLとともにモニターした。図11に示すように、STZ処置直後に体重の最初の減少が見られたが、超分子インスリンアセンブリIIでの処置後の糖尿病ラットにおいては、体重増加が続き、超分子インスリンアセンブリで処置した動物の曲線は、非-糖尿病のコントロールの曲線とパラレルであった。それ故、超分子インスリンアセンブリIIの、糖尿病の長期間の治療における使用についての驚くべき効果は、通常の方法を凌駕する改善であっと考えられる。
【0206】
実施例11は、超分子インスリンアセンブリの連続的な方法でのインスリン放出の効果を評価するための、腹腔内グルコース負荷試験を示す。インスリンのin vivo放出をモニターした。放出されたモノマーの生物学的活性を、血液から血中グルコース処置によって評価した。実施した独立した実験の詳細を図12に示す。グルコース濃度を、絶食した正常およびSTZ処置ラットへのグルコースの投与に続く、PBS、超分子インスリンアセンブリIIおよびインスリンでの処置前(T0)、処置後30、90、150、270および330分に求めた。図12に示すように、インスリン注射、超分子インスリンアセンブリII処置またはin vitroで放出されたモノマー単独では、処置した動物におけるグルコース負荷を顕著に改善し、グルコース注入後の上昇した血中グルコース濃度を、1.5時間以内に、チャレンジ前の濃度へと戻した。
【0207】
実施例12は、超分子インスリンアセンブリ投与に対するウシおよびrHインスリンの血清インスリンの定量を示す(図13a)。血清インスリンは、ウシおよびrHインスリンSLA-IIについて、それぞれ、150および180日の期間まで検出可能であり、BGLの減少と対応していた。血中グルコース濃度の減少は、ウシおよびrHインスリンSIA-IIについて、それぞれ、150および180日間まで維持され、超分子インスリンアセンブリIIの単回投与を用いて20-25週より長く正常血糖値に近い値が維持された。固相ELISAを、インスリンSIA IIから放出された(正常血中グルコース値の維持を担う)インスリンの血漿濃度を定量するために実施した。予期されたように、PBSで処置した糖尿病ラットにおける検出できないレベルのインスリン(0.08ng/ml)と比較して、基礎的な、または僅かに基礎的な濃度を超えるインスリン放出が、超分子インスリンアセンブリで処置した糖尿病ラットにおいて達成された(0.5-1.2ng/ml)(図13aおよびc)。インスリンの持続放出(0.8-1.1ng/ml)が、投与経路に関わらず、注射した日から150-180日まで観察され、この放出は、超分子インスリンアセンブリで処置した動物における正常血糖値に近い値に貢献している。動物間でバラつきが見られたが、インスリン放出の顕著な値が,0.5-1.2ng/mlの範囲で達成された。この基礎的な濃度は、超分子インスリンアセンブリを使い切るまで、正常血糖値の値を維持するのに十分であった。しかしながら、インスリンで処置した糖尿病動物においては、比較的により高い血清平均濃度が検出されたが、動物間でバラつきの程度は大きかった。このことは、インスリン単独処置によるBGLの対象間バラつきが原因であった。血清インスリン濃度を、グルコースデータを既に示した、実施したグルコース負荷試験についても定量した。図13bは、IPGTT実験における、270分までのラットの血清中のウシインスリン値を示す。PBSのみを与えたSTZ処置ラットおよびコントロールの場合は、ウシインスリン値は、ほとんど無視して良いレベルであった(図13b)。一方、インスリン投与の場合、インスリン値は、30分間で〜0.9ng/mlに増加し、その後の期間減少した。類似のプロファイルが、遊離のインスリンに相当する末期に放出されたインスリンを使用した場合に観察された。これは、血中グルコース濃度の低下に続く、インスリンの取り込みおよび分解を原因とする血中グルコース濃度の増加に対応する。一方、超分子インスリンアセンブリ処置においては、ウシインスリン定量によって示されるように、血清中のインスリン濃度は0.8-0.9ng/mlに達し、30分間で基礎的な濃度に相当することとなり、その後の期間、一定濃度を維持していた。この維持された基礎的濃度によって、グルコース濃度を劇的に減少させ、動物を低血糖とする代わりに、正常血糖濃度がもたらされる。更に、ラットインスリンELISAを、コントロールラットおよびおSTZ処置ラットの両方についての血清インスリン濃度を評価するために実施した。図13cに示すように、ラットの基礎的インスリン濃度は0.501ng/mlであり、注入したグルコースに応答して、何倍にも増加する。STZ処置ラットの場合、基礎的なインスリン濃度は、STZによる膵臓B細胞の破壊によって、ほとんど無視できるレベルである。このことによって、超分子インスリンアセンブリ処置の場合に見られた血中グルコース濃度の低下がSIA IIから放出されたウシ/rHインスリンを原因とすることが、確認される。インスリンSIA IIの製造工程においては、ウシおよびrHインスリン以外の、これに限定されないがブタインスリンからなる群から選択されるインスリンが使用される。
【0208】
実施例13は、SIA IIの末端からのin vitro放出を証明および定量するためのインスリンのI125標識を提供する。標識したインスリンから形成される超分子インスリンアセンブリIIは、比放射能49912CPM/ml/μgを有する。50μlの超分子インスリンアセンブリ(4991200CPM)を、皮下と筋肉内に注入し、血中グルコース濃度をモニターし、血清サンプルを、0、30分、1時間、4時間、10時間、24時間、そして1日後、その後1日おきにまたは一週間に1回の頻度で回収した。血清1ml辺りのカウントを測定した(図14a)。示すように、血中グルコースプロファイルは、非標識SIA IIを用いた観察と同じであった。計算したCPM/mlは、処置日数に対してプロットした場合、ほとんど一定を保っていた(図14a)。しかしながら、30分-4時間で最初の高いカウントが存在しており、その後、徐々に、10時間で2000-3000の一定レベルに減少した。血中に放出されたインスリンの量を計算したところ、0.5-1.2ng/mlであり、EILSAで観察された血清のインスリンの基礎的濃度に対応するか、または基礎的濃度より若干高い程度であった(図14b)。更に、超分子インスリンアセンブリからの放出インスリンがモノマーであることを証明するために、異なる時点での血清を、トリシン-SDS-PAGEで分離し、蛍光体イメージャーを用いてX線像を得た。図15に示すように、血清中のバンドは、遊離のインスリンモノマーに対応し、バンドの濃さは、等量の血清をロードした場合に、長期間一定であった。バンドの濃さの低減が20日後に見られ、このことは、放射性標識自体の崩壊の効果が幾らかあるとともに、経過時間に伴う超分子インスリンアセンブリデポ剤の使用と枯渇を示す。
【0209】
実施例14は、注射したSIA IIからのインスリンモノマーの遅くかつ連続的な放出を評価するために実施した、高血糖クランプ法を記載する。1週間、1ヶ月および3ヶ月間隔で、高血糖状態を維持するための注入したグルコースの速度は、実験期間中、変わらなかった。このことは、注入部位で、デポ剤からのインスリン放出が一定であったことを示す。遊離のインスリンを投与したグループの場合、注入したグルコースの量は時間とともに減少し、これは、遊離のインスリンの連続的な供給の不存在下で筋肉および肝臓による血中グルコースの取り込みが減少したことが原因である(図16a-c)。
【0210】
実施例15は、細胞表面のインスリン受容体にインスリンが結合した後に始まる細胞内シグナル伝達カスケードによって媒介される脂肪組織における、インスリンのグルコース輸送および他の代謝事象に対する効果を提供する(Paul Bevan Insulin signalling. J. Cell Sci., 114, 1429-1430 (2001))。細胞内のインスリンの効果は、PI3K、AKTおよびERKのような細胞内メディエーターの活性化によって媒介される。PI3キナーゼおよびAktの活性によって、インスリン誘導性のグルコースの取り込みおよび細胞膜へのGLUT-4小胞輸送を媒介し、リポリーシスの阻害ならびに脂肪酸、グリコーゲン、タンパク質およびDNA合成の活性を含む様々な他のインスリン効果に関与する。一方、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)経路の活性化は、前駆脂肪細胞の成長因子に対する分裂促進応答に関連している。インスリンシグナル伝達の下流の最初のキナーゼであるPI3Kの濃度を調べた。図17aに示すように、PI3Kの濃度は、超分子インスリンアセンブリおよびアセンブリからin vitroで放出されたインスリンを使用した場合、コントロールと比較して、顕著に増加した。インスリンと比較して、顕著な差異は存在しなかった。総タンパク質およびAktの活性化のレベル、インスリンの作用の制御に重要なスレオニン/セリンキナーゼ、ならびに脂肪細胞の様々な代謝応答も評価した。p-Aktレベルの顕著な増加が観察され、これは、再度、遊離のインスリンで観察された応答と類似していた。総Aktタンパク質濃度に差異は無く、インスリンまたはその超分子インスリンアセンブリIIの存在下での発現に差異は見出せなかった。観察された一時的なプロファイルおよび脂肪細胞におけるAktリン酸化のレベルが、Akt活性の差異とパラレルであるかを評価するために、内因性Aktの基質であるGSK3βのリン酸化を、GSK3βおよびp-GSK3βに対する抗体を使用したイムノブロッティングによってモニターした。GSK3βは、Aktによってser-21で直接リン酸化され、リン酸化後に不活性化する。GSK3βのリン酸化は、遊離のインスリンまたは超分子インスリンアセンブリIIのいずれかで処置した脂肪細胞において、コントロールと比較して、数倍増加し、処置した細胞間で顕著な差異は存在しなかった。総GSK3βタンパク質レベルでは差異は見出せなかったので、このことは、処置後の発現では違いはなかったことを示唆している。それ故、AktおよびGSK3βの両方は、超分子インスリンアセンブリおよび超分子インスリンアセンブリからの放出インスリンに対して迅速かつ明確な応答を示し、コントロールとして使用した遊離のインスリンを用いた刺激で見出された応答に類似していた。ERKは、インスリン媒介性の脂肪細胞転写因子の制御および脂肪組織発達に関与しているので、超分子インスリンアセンブリおよびアセンブリから放出されたインスリンを用いた処置によって、脂肪細胞においてERKの活性化が見られた。インスリン、超分子インスリンアセンブリおよび超分子インスリンアセンブリから放出されたインスリンを用いた脂肪細胞の処置により、ERK 1/2の顕著な活性が、コントロールと比較して観察された。ERK 2のリン酸化は、ERK 1よりも2倍高く、このことは、処置によりERK 2がより発現していたことを示唆する。SIA、インスリンまたは血清処置細胞においては、ERK 1/2のリン酸化パターンに如何なる顕著な差異も存在しなかった。それ故、超分子インスリンアセンブリIIおよびインスリン処置細胞におけるERKリン酸化は、PI3K、AktおよびGSK3β媒介性シグナル伝達との関連で類似していた。インスリンまたはそのSIA-IIで処置した動物に由来する血清を培養した脂肪細胞に加えた場合に、シグナル伝達媒介因子の類似の活性が観察された(図17b)。これらのデータは、ともに、超分子インスリンアセンブリIIから放出されたインスリンは、インスリン自身のように、脂肪細胞においてインスリンシグナル伝達経路を活性化することができることを実証する。モノマー形態のインスリンは超分子インスリンアセンブリから多く放出されるので、観察された効果は、非常により好ましいものであった。
【0211】
実施例17は、インスリンの超分子インスリンアセンブリの組織および免疫組織化学の詳細を記す。超分子インスリンアセンブリで処置した糖尿病ラットを、注入日後1週間〜12週間での残存した超分子インスリンアセンブリの量の存在についてモニターした。皮下および筋肉組織における超分子インスリンアセンブリのデポ剤を、コンゴレッドを使用して検出した。皮下および筋肉組織切片を調製し、染色し、材料および方法で記したように分析した。超分子インスリンアセンブリ注入の24時間後に得られた組織は、コンゴレッドと効率的に結合することが見出され、より高い量の超分子インスリンアセンブリフィブリルの存在が確認された(図18)。コンゴレッド結合は、時間依存的に減少し、12週間後には無視できるレベルになり(図18a(i-x)およびb(i-x))、超分子インスリンアセンブリのデポ剤の末端からのインスリンの放出が確認された。同じ組織を、超分子インスリンアセンブリに起因する炎症についても、H&Eおよび免疫染色によってチェックした。代表的なスライドを、炎症細胞の存在について、H&E染色方法および免疫組織化学に供した(図18a(xi-xx)および18b(xi-xv))。
【0212】
LPS注入ラット(炎症性細胞の浸潤が、H&Eで染色した皮下および筋肉組織の両方で可視化された)と比較して(図19a(i-ii))、超分子インスリンアセンブリを注入した切片は、12週間後でさえ、如何なる炎症の徴候も示さなかった(図18a(xi-xv))。類似の結果が大腸菌に由来するLPSが注入部位で72時間後に多くの炎症性細胞を攻撃するのに十分であった、免疫染色スライドの場合も観察された(図19a(iii-iv))。一方で、そのような反応は、超分子インスリンアセンブリを用いて処置した動物では見られなかった(図18a(xv-xx)およびb(xi-xv))。これらの観察は、使用した超分子インスリンアセンブリの非毒性特性を裏付けるものである。pH2.0で形成したアミロイドは、皮下に注射した場合、図19bに示されるように、非常に効率的にコンゴレッド色素に結合する。更にその上、デポ剤は減少せず、完全に形成されたアミロイドからのインスリンモノマーの放出が生じていないというデータを裏付ける(図19b i-viii)。
【0213】
実施例18は、糖尿病のアロキサンモデルを記す。雄のWistarラットを、アロキサンを使用して糖尿病とし、血中グルコース濃度をモニターした。糖尿病ラットへの超分子インスリンアセンブリIIの投与によって、食事前および食事後の状態の両方において、血中グルコース濃度を、正常濃度近くに低減させ、120日間まで厳密な血糖コントロールを維持した(図20aおよびb)。血清インスリンの定量を、ELISAを使用して行った。注射の日から、ヒトインスリンの持続的かつ一定の放出が、処置したラットの血清で観察される(0.5-0.9ng/ml)(図20c)。それ故、糖尿病ラットにおけるグルコース濃度の低下によって見られた生理学的効果は、注射部位で形成されたSIA-IIデポ剤からのインスリンモノマーの連続放出が原因である。
【0214】
実施例19は、I型糖尿病における高血糖に関連した二次性合併症の低減を記す。I型糖尿病においては、インスリンの不十分な供給は、骨格筋におけるタンパク質分解の増加および脂肪細胞におけるリポリーシスを導く。糖尿病ラットは、骨格筋(〜20-40%)および腹部脂肪(>60%)の顕著な減少を示した(Nathan, D. M., Cleary, P. A., Backlund, J. Y., et al. Intensive diabetes treatment and cardiovascular disease in patients with type 1 diabetes. N. Engl. J. Med. 353, 2643-53 (2005))。対照的に、超分子インスリンアセンブリで処置した糖尿病動物は、これらの組織について標準的な体重を有しており、健康であった。糖尿病ラットおよびインスリン処置ラットにおける白内障の発症が観察された(図21)。SIA IIで処置した動物においては、白内障の発症は観察されなかったのに対して、非処置ラットの大部分が、図21で示すように、白内障を示した。更にその上、肝臓および腎臓(糖尿病で一般的に非常に悩まされる2つの主な身体の組織)の機能は、非処置または遊離のインスリン注入ラットと比較して、超分子インスリンアセンブリII処置ラットにおいては正常であった。この結果を表1にまとめる。
【0215】
心臓、腎臓および肝臓の切片を、糖尿病ラットに注入して12週後のSIA-IIのより高いオリゴマーの沈着について、コンゴレッド色素を使用して可視化して試験した(図22)。オリゴマーの沈着は、いかなる組織切片においても観察されなかった。
【0216】
実施例20は、インスリン分解酵素(IDE)の検出およびインスリンに対する抗体のスクリーニングの詳細を示す。I型糖尿病のインスリン皮下抵抗は、稀な症状であり(Paulsen, E.P., Courtney, J.W. & Duckworth, W.C. Insulin resistance caused by massive degradation of subcutaneous insulin. Diabetes 28, 640-645 (1979) and Freidenberg, G.R., White, N., Cataland, S., O’Dorisio, T.M., Sotos, J.F. & Santiago, J.V. Diabetes responsive to intravenous but not subcutaneous insulin: effectiveness of aprotinin, N. Engl. J. Med. 305, 363-368 (1981))、皮下に注射されたインスリンの生物学的活性の欠如として定義される;それにもかかわらず、静脈内に注入されたインスリンの効率は維持される。この症状は、主に皮下組織におけるIDEによるインスリン分解の増加が原因である。IDEは、特異的にインスリンを分解し(Duckworth, W.C., Bennett, R.G. & Hamel, F.G. Insulin degradation: progress and potential, Endocr. Rev. 19, 608-624 (1998))、部分的に分解されたインスリンを、循環液に再吸収させ、免疫原性を増大させるが、生物学的活性を消失させる。IDEは、インスリン応答性の組織およびインスリン非感受性細胞、例えば、単球およびリンパ球に存在する。超分子インスリンアセンブリで処置した動物におけるこのような抵抗性の発症をチェックするために、IDEの生物学的活性および抗-インスリン抗体の存在を、方法のセクションで記載したように求めた。IDE活性は、超分子インスリンアセンブリで処置した動物に由来する全ての血清サンプル(1-12週)において無視できるレベルであった(図23)。同じように、処置の12週間後でさえ、抗-インスリン抗体は存在しておらず、このことは、IDE活性が存在していないことを裏付けていた(図24)。
【0217】
超分子インスリンアセンブリIIから放出されたインスリンモノマーが、その構造またはその結合動力学において何らかの変化をもたらしたかを調べるために、MCF 7細胞ラインを使用してMTTアッセイを実施した。MCF 7細胞の増殖は、SIAを培養液に加えたときに、天然のインスリンを加えた細胞の増殖と同じようであった。更にその上、形成したSIA IIに由来する放出したモノマーは、また、細胞増殖の同じカイネティクスを示した。インスリン様増殖因子Iを、MCF 7細胞の増殖について、ポジティブコントロールとして使用した(図25)。インスリンおよびIGF 1は、類似の構造を有し、他方の非存在時に、それぞれが他方の受容体に結合し得る。しかし、IGF 1が分裂促進性であるのに対して、インスリンのインスリン受容体またはIGF受容体への結合は、細胞の増殖を引き起こさない。それ故、SIA IIから放出されたモノマーは、天然のインスリンと同じ結合カイネティクスを有し、如何なる構造的変化も生じない。
【0218】
実施例21は、マウスにおける糖尿病の誘導についてのストレプトゾトシンモデルを記す。マウスにおけるヒトおよびウシSIAについての用量応答性を、STZを使用して糖尿病としたマウスにおいて調べた。20、50、100および200μgという様々な量の応答性SIAの糖尿病マウスへの投与によって、それぞれ、5、15、30、120日間、正常血糖値/ほぼ正常血糖値を維持した(図26a-c)。
【0219】
実施例22は、ウサギにおける糖尿病の誘導についてのストレプトゾトシンモデルを記す。rH-インスリンSIA-IIの糖尿病ウサギへの1mg/体重kgの投与によって、少なくとも80日間、正常血糖値/ほぼ正常血糖値を維持した(図27)。
【0220】
実施例23は、エキセンディン4とともに超分子インスリンアセンブリを用いて実施した実験の詳細を示す。II型糖尿病の治療のために、エキセンディン4とともに超分子インスリンアセンブリを、補助療法として投与した。この組み合わせ療法の実施により、糖尿病ラットにおいて、30日間まで、血中グルコース濃度を低減し、正常血糖値近くに維持することができた(図28)。表2で示すように、TAGおよびFFAの濃度も、これらの濃度が血清中では1.5倍増加したインスリンのみまたはPBSのみで処置したラットと比較して、ほぼ正常近くに維持された。
【0221】
本発明の超分子インスリンアセンブリ調合物は、長期間にわたるインスリンモノマーの放出という驚くべき結果を示す。更に、本発明の超分子インスリンアセンブリIIは、インスリンの急激な多量の放出をもたらすことはなく;STZ処置糖尿病ラットにおいて低血糖段階を阻止する。上記の予期できなかった結果を証明するために、pH7.0でのインスリンのフィブリル化工程の間に得られたインスリン超分子アセンブリIIの中間体を評価した。中間体超分子インスリンアセンブリIIは、長期間にわたって、一定の速度でインスリンモノマーを放出することが示される。選択された中間体(超分子インスリンアセンブリII)は、顕著なコンゴレッド結合は示さず、このことは、アミロイド段階へは進展しないことを示し、AFM分析によって、優勢な種として、伸長オリゴマーの線形会合の存在が確かめられた。この特徴的な構造の高さは、18±5nmであり、これと比較して、より大きくねじれた完全に成長したファイバーの高さは、12±5nmであり、このことは、超分子インスリンアセンブリを形成する伸長オリゴマーは膨張し、天然様構造を保持していたことを示唆する。類似の非-線維状構造が、TEM試験でも観察される。インスリンの生物学的有効性は、一般的に、血液中の糖濃度を制御する能力によって評価される。血中グルコース濃度の減少は、最も顕著であり、治療上、最も重要なインスリンの効果である。超分子インスリンアセンブリの単回投与で処置したSTZ-誘導性糖尿病ラットにおける血糖コントロールの有効性を、毎日一回のインスリン注入と比較して、評価した。超分子インスリンアセンブリ処置およびインスリン注射の両方によって、高血糖の重篤性を低減した。インスリン処置と比較して、本発明の超分子インスリンアセンブリの単回投与は、約150-180日の期間、糖尿病動物において、ほぼ正常血糖値を維持する(120mg/dL)。
【0222】
本発明は、更に、血中グルコース濃度の制御における、超分子インスリンアセンブリII治療の効果を評価する。超分子インスリンアセンブリで処置した糖尿病の動物を、一晩絶食させた。これらの絶食した動物は、正常の範囲内(60-100mg/dl)の空腹時血中グルコース濃度を維持することができ、食前の低血糖は観察されなかった。同時に、これらのデータは、超分子インスリンアセンブリIIのより高度なオリゴマー状態が、一般的なインシュリン治療と比較して、糖尿病動物において、空腹時に低血糖をもたらさず、厳密に制御された血糖コントロールを達成することを示す。
【0223】
本発明は、更に、超分子インスリンアセンブリII治療の、体重に対する効果を評価する。腹腔内グルコース負荷試験を、重篤な高血糖症の場合における、超分子インスリンアセンブリの作用の発現を求めるために行った。IPGTT血中グルコースプロファイルにより、インスリンおよび超分子インスリンアセンブリ治療の両方が、30分以内に効果をもたらすことが示され、このことは、超分子インスリンアセンブリIIデポ剤からの生物活性なインスリンモノマーの放出においては如何なる遅滞期も存在しないことを示唆している。
【0224】
本発明は、超分子インスリンアセンブリからのインスリンのin vivo放出プロファイルを、ELISAを使用した血清中のウシ/ヒトインスリン定量によって、提供する。in vitroで観察されるシグモイド型の放出カイネティクスと対照的に、超分子インスリンアセンブリからのインスリンモノマーのin vivo放出は、持続放出のために予期されたように、ゼロ次カイネティクス(zero order kinetics)に従った。正常血糖値を維持するためのインスリンの基礎および基礎レベルを超える(0.5-1.2ng/ml)持続放出が見られ、これは、治療の期間と良く関連していた。上記放出カイネティクスを証明するために、インスリンを125Iで放射線標識し、125I標識した超分子インスリンアセンブリを、STZ処置動物に、皮下または筋肉内のいずれかで注入した。インスリン放出の量を、CPM/mlをモニターすることによって、測定した。CPM/ml/μg(49912)を、特定の時点における血清中に放出されたインスリンの定量のために使用し、これは、ELISAを使用して定量したウシインスリンの量とパラレルであった。カウントを測定後、血清サンプルを、トリシン-SDS-PAGE上で分離した。得られた蛍光イメージは、インスリンモノマーに対応するバンドを示した。超分子インスリンアセンブリのデポ剤から放出されたインスリンモノマーは、インスリン応答性脂肪細胞においてインスリンシグナル伝達カスケードを有効に誘導した。超分子インスリンアセンブリから、in vitroおよびin vivo(血清)で放出されたインスリンは、単離された脂肪細胞に加えた場合、細胞内メディエーター(すなわち、PI3K、AKt、ERK1/2およびGSK3β)のシグナル伝達経路を活性化することができた。それ故、超分子インスリンアセンブリのデポ剤から放出されたインスリンモノマーは、生物学的に活性であり、インスリンと同じメカニズムに従い、身体のグルコース恒常性を調整する。組織染色は、また、動物に注入された超分子インスリンアセンブリIIが、生物活性なインスリンの徐放および持続放出をもたらすデポ剤を形成することを示す。更にその上、皮下または筋肉内に注入されたLPSへの応答の際の白血球の浸潤とは異なり、如何なる炎症も示さない。
【0225】
本発明は、超分子インスリンアセンブリ治療が、糖尿病動物において広範囲の生理学的有効性を与えることを示す。これは、部分的には、表1において示すように、糖尿病ラットにおける、顕著に改善された血糖コントロール、ならびに、改善された肝臓および腎臓機能を原因とする非常に減少した尿素およびクレアチン濃度において反映される。
【0226】
本発明は、超分子インスリンアセンブリの投与による、血清中の抗-インスリン抗体およびインスリン分解酵素(IDE)の詳細を提供する。12週の最後まで抗-インスリン抗体が存在しないことは、糖尿病の治療としての超分子インスリンアセンブリの価値を増す。注入部位で、または周辺部でIDEを誘導しないことは、超分子インスリンアセンブリからのインスリンの放出を長引かせることについての重要な因子であり、付随する有益な抗-糖尿病効果である。
【0227】
本発明は、超分子インスリンアセンブリIIから放出されたインスリンモノマーが、可溶性インスリンと同等な生物学的機能を有することを示す。顕著な差異は、作用の持続期間にあり、標準的なインスリン注射については6-10時間だけであるのに対して、驚くべきことに、超分子インスリンアセンブリIIの投与量に依存して、約10日〜約180日以上である。これは、超分子インスリンアセンブリにおけるインスリンの高い安定性に起因し、超分子インスリンアセンブリは、インスリンの最も生理学的に関連のある形態、すなわち、インスリンモノマーの、長期間にわたる供給のための、注入部位でのデポ剤を形成する。
【0228】
ヒトインスリンの超分子インスリンアセンブリIIの投与によって、より良好な血糖コントロールがもたらされ、それは、135-180日間にわたって観察された。インスリンオリゴマーの皮下および筋肉内注入の両方によって、図から明らかなように、ほぼ正常血糖値をもたらした。
【0229】
血清中で放出されたインスリンをELISAで定量し、観察したところ、デポ剤からの持続的かつ徐放性放出により、ほぼ一定の濃度が維持されていた。
【0230】
雄のWistarラットを、アロキサンを用いて糖尿病とし、ストレプトゾトシンで処置した糖尿病C57b1/6マウス(糖尿病の他のモデルとして使用)の両方について、超分子インスリンアセンブリIIで処置することにより、ほぼ正常血糖濃度を示した。
【0231】
ヒトの超分子アセンブリIIインスリンについて得られたウェスタンブロットデータは、本質的に同じであり、放出されたインスリンモノマーによるシグナル伝達経路の活性化が示された。
【0232】
超分子インスリンアセンブリIは、18±2nmの高さを有する、膨張し、より球状な種によって特徴づけられる。アミロイド形成の工程中のペプチド構造の非フォールディング化によって、表面に個別にランダムに分布した球状のモノマー種がもたらされる。更に進んで、ヒトインスリン超分子アセンブリIIの段階IIでは、その膨張した形態を維持するにもかかわらず、これらのモノマーの線形会合が存在する。形成したオリゴマーは、18±4nmの高さを有するウシインスリンと同じような、伸長したクラスターを示す。超分子インスリンアセンブリIIIの場合(SIA IIの後のフィブリル化段階により近い)、より高度なオリゴマー構造の密度の増加が見られる。この構造は、5±1nmの高さでよりコンパクトである。全体の構造形態は、ウシのSIA段階と類似しており、完全に形成されたファイバーが、更に進んで見られる。
【0233】
本発明は、STZで誘導した糖尿病動物モデルにおいて空腹時低血糖を誘導することなく、血中グルコース濃度の顕著な改善についての、超分子インスリンアセンブリ治療の有効性および実現可能性を示す。低血糖の危険が伴う、血中グルコース濃度をインスリン注射の頻度を増やして制御する、集中的なインスリン治療とは異なり、超分子インスリンアセンブリ治療を使用した顕著に改善された血糖コントロールは、複数回のインスリン注射を必要とせずに、かつ、著しい体重増加ももたらさずに、達成される。
【0234】
本発明の更なる価値は、これらの研究を、II型糖尿病(DM II)の場合のように、治療としてインスリンの持続的かつ連続的な注入を必要とする病気へと進展させることによって、もたらされる。エキセンディン4およびインスリンの両方は、組合せて、DM IIの有効な治療として使用されている。エキセンディン4は、胃からの食物の吸収を低減することを介して、血中グルコース濃度を低減する事が知られている。また、胃内容排出も遅らせ、HbAcのレベルを低減し、インスリン治療が原因で見られる体重の大幅な増加を防ぐ。アミロイド生成性タグであるGNNQQNYを、エキセンディン4のC末端に付け、オリゴマー複合体への凝集を促進し、その複合体から、前記したセクションで報告したインスリンを用いた場合のように、エキセンディン4の天然モノマーが放出される。エキセンディン4aは、対象とする動物におけるDM IIの治療のために、SIA IおよびIIとの補助療法として使用される。
【0235】
本発明は、また、卵巣切除したラットにおける骨粗鬆症の治療のための有効な治療候補としての、カルシトニンの超分子アセンブリの使用も提供する。詳細は、実施例24に示す。超分子カルシトニンアセンブリすなわちSCAを、Alzetポンプへと導入し、そこから、カルシトニンの血液への徐放的かつ連続的放出がもたらされる。このカルシトニンの徐放放出によって、骨粗鬆症の症状が和らぎ、正常な体重ならびに血清カルシウムおよびリンレベルを維持する。
【0236】
サケカルシトニンの1および2mg/ml溶液を、PBS中に調製し、37℃で80時間インキュベートした。カルシトニンアミロイドフィブリル形成のカイネティクスを、異なる時間間隔で400nm濁度を測定することによってモニターした。図29に示すように、フィブリル形成の速度は、濃度依存的であり、44時間後にはほぼ終了した。SCA-I、SCA-IIおよびSCA-IIIは、それぞれ、6、8および12時間後に形成した。
【0237】
SCAからの遊離のカルシトニンの放出を、一定の体積1ml中の2%マンニトール中で、および、透析膜を介して透析することによって、モニターした。放出を、275nmの吸光度によってモニターした。図30に示すように、一定の体積1ml中のSCAからのカルシトニンの放出は、超分子インスリンアセンブリのように、釣鐘曲線に従う。しかしながら、連続的放出が、膜を介した透析下で観察され、SIAからのインスリン放出と類似していた。完全に成長したカルシトニンファイバーからのカルシトニンの放出は、非常に遅く、更なる実験においては無視できるレベルであると考えられた。カルシトニンSCAを、更に、卵巣切除したラットにおける骨粗鬆症の治療についてのin vivo実験のために使用した。
【0238】
実験セクションで記したように、ラットの5つのグループ(各グループ内に10匹のラット)に、異なる処置を施した。体重ならびにカルシウム、リンおよびカルシトニンの血清プロファイルをモニターした。Alzet中のSCAで処置した卵巣切除したラットにおけるSCAからのサケカルシトニン、およびコントロールラットにおける内因性ラットカルシトニンの放出カイネティクスを求め、図31に示す。カルシトニンレベルは、SCAで処置したラットにおいて、他のグループと比較して、相対的に高いレベルで維持された。このことは、Alzetポンプ中のカルシトニンSCA溶液は、一定かつ遅い速度で、生物学的に活性な形態のカルシトニンを放出することを示し、OVXラットにおいて60日間まで、可溶性カルシトニンを用いた毎日の処置と比較して、骨粗鬆症の症状を治療した。
【0239】
ラットの4つのグループについて最終的な体重をモニターした。4つ全てのグループに由来するラットは、実験期間中、体重が増えた。ベヒクルで処置したOVXラットは、ベヒクルで処置したコントロールラットよりも、8週間の実験の最後に、約11%体重が増加していた(328±19g対296±09g、p<0.05)。SCAを用いてCTで断続的にまたは連続的に処置したOVXラットの平均体重は、ベヒクルで処置したOVXラットと比較して、顕著に減少した。
【0240】
表3に、血清の生化学データを示す。血清のCT濃度を、SCAで処置したOVXラットにおいて、全てのグループで、8週間の最後に測定したところ、ベヒクルで処置したOVXよりも顕著に高かったが、コントロールラットほど高くなかった。SCAで処置したOVXラットの平均血清カルシウムレベルは、全ての他のグループよりも顕著に低かった。平均血清リンレベルも、ベヒクルで処置したOVXラットにおいては、ベヒクルで処置したコントロールラットと比較して顕著に増加した。対照的に、SCAの場合、OVXラットの断続的または連続的CTのいずれかの処置は、OVXラットへのベヒクル処置と比較して、血清リン濃度が顕著に減少した。更にその上、SCAで処置したOVXラットのこの変動性は、CTで断続的に処置したOVXラットよりも顕著に少なかった。
【0241】
全てのグループにおいて、サケカルシトニンに対する抗体をスクリーニングしたところ、コントロール、ベヒクル処置およびカルシトニンSCA処置ラットの場合において、無視できるレベルの抗体が示された。しかしながら、カルシトニン処置グループ(断続的または連続的)においては、より少ないレベルの抗体が、サケカルシトニンに対して産生した。
【0242】
本発明は、また、関節炎および関節痛の治療のための有効な治療候補としての、超分子イブプロフェンタグ化ペプチドアセンブリの使用も提供する。詳細を、実施例25に示す。
【0243】
関節炎は、特に中年および高齢者の重要な病態および一般的な機能障害を引き起こす病気である。非-ステロイド系抗-炎症薬(NSAID)は、痛み、熱および変形性関節症を含む炎症性疾患を治療するために広く使用されている。この疾患の現在の治療は、満足のいくものではなく、使用されている一般的な薬剤は、多くの毒性の副作用を有し、主に一時的に和らげるものである。カラギーナン誘導関節炎によって、急性の炎症が生じ、この炎症は、コルチコステロイドおよび血管収縮剤によって抑制される。膝の関節炎は、関節炎のKCモデルを使用して、カオリンおよびカラギーナンを膝の滑液腔へと注入することによって、得られた。雄のWistarラットを、5つのグループに分け、関節炎を、カオリン/カラギーナン(KC)を使用して、4つのグループにおいて誘導した。PBSをコントロールグループへと注入した。30分後、様々な量のイブプロフェン(10および50mg/kg b wt)およびイブプロフェン-TTRを、それぞれ、経口および腹腔内に投与した。ラットを、1時間後にホットプレート鎮痛測定器上に置き、足を舐めるまでの待ち時間をモニターした。PBSを注入したコントロールラットは、約6-7秒で、足を舐めることによって、熱に応答した(図32a)。KC注入ラットは、非常に感受性であり、3-5秒より長くは熱に耐えることができなかった。対照的に、イブプロフェンを経口で与えたラットは、10mg/kg b.wtのイブプロフェンについては12秒まで、50mg/kg b.wtのイブプロフェンについては17秒まで耐えることができた。超分子イブプロフェン-TTRアセンブリをi.p.投与したラットについては、待ち時間は、約15秒であった。超分子アセンブリからのイブプロフェンの徐放的かつ連続的放出は、より明らかであり、連日、薬物の二回目の投与無しに、ラットが足を舐める待ち時間が約12-16秒となるのに対して(図32b)、イブプロフェンは、ラットに効果をもたらすためには毎日注入しなければならなった。超分子イブプロフェン-TTRアセンブリの効果は、待ち時間の急な減少によって示されるように(図32b)、3-4日間続く。
【0244】
カラギーナンのラットの足への注入によって引き起こされる炎症は、浮腫を発症させる。それ故、ラットの足の体積の増加の測定は、関節炎の間に誘発された炎症をモニターするための効果的な方法である。コントロールおよび処置したラットの足の体積を、hydroplethysmometerを使用して、KCの注入前の足の基礎体積を引くことによって測定した。PBSで処置したカラギーナンコントロールの場合は急激な増加が見られ、ラットの足の体積は、ほぼ、8.0-0.92mlまで増加した(図33)。この足の体積の増加は、超分子イブプロフェン-TTRアセンブリで処置したラットについて、比較的少なく(0.4ml)、第4日目のみが増加し始めた。このことは、薬物イブプロフェンの放出を伴うデポ剤の消費を指摘する。一方、イブプロフェンは、ラットの足の体積の急激な増加を防ぐためには、毎日注入されなければならず、50mg/kg b.wtがより効果的であった。データは、超分子イブプロフェン-TTRアセンブリの、複合体のたった一回の注入により、3-4日間の関節炎の症状を和らげる効果を実証する。
【0245】
それ故、本発明は、I型およびII型糖尿病などの代謝障害を包含するだけでなく、更に、慢性の痛み、敗血症、関節炎、骨粗鬆症、炎症などの、治療薬(ペプチド、タンパク質または小分子薬剤)の連続的な注射が必要である全ての疾患に拡張することができる。この発明は、また、DM I、DM IIおよび境界型糖尿病の治療のためのインスリンオリゴマー(SIA I、SIA IIおよびSIA III)の使用の実現可能性について論ずる。治療のためのデポ剤としての薬物のオリゴマーを使用する方法は、より多くの病気に拡張することができ、全体的に幅広い応用性を有する。
【0246】
以下の実施例は、本発明に含まれる発明の例示によって与えられるものであり、それ故、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0247】
本願明細書に記載の以下の実施例は、例示の目的のみであり、本願明細書に照らし合わせた様々な修正や変化が、当業者によって連想され、本願出願の精神および範囲ならびに請求項の範囲内に含まれることを理解すべきである。
【0248】
[実施例1]
(インスリンのフィブリル化)
ウシおよびrHインスリン、2mg/mlを、リン酸緩衝生理食塩水(50mM、pH7.0)またはpH2.0(水中の塩酸)に溶かし、37℃で72時間-7日間、180rpmの一定の攪拌でインキュベーションした。フィブリル形成のカイネティクスを、チオフラビンT(ThT)による蛍光の取得をモニターすることによって求めた。
【0249】
[実施例2]
(チオフラビンT蛍光)
Th-T蛍光を、Jobin Yvon Fluoromax蛍光分光光度計で、3nmおよび5nmのスリット幅を用いて、それぞれ、励起および蛍光について測定した。50μMのTh-Tを用いて15分間インキュベートしたサンプルを、450nmで励起させ、その蛍光を、460-560nmの範囲でモニターした。データを、ブランクおよび内部フィルター効果について、以下の式を使用して校正した:Fc=F antilog[(Aex+Aem)/2)]。
(式中、Fcは、校正した蛍光であり、Fは測定した蛍光であり、AexおよびAemは、それぞれ、反応溶液の、励起波長および蛍光波長での吸収である)
【0250】
ウシおよびrHインスリンによる37℃でのフィブリル形成のカイネティクスを、図1に示す。図1(a)は、50μMのTh-T蛍光を用いてモニターした、pH7.0でのフィブリル形成のカイネティクスを求めたものである。
【0251】
[実施例3]
(pH2.0および7.0で形成された中間体および完全に形成したフィブリルのin vitroでのモノマー放出カイネティクス)
200μl(400μgのインスリンに相当)アリコートを、異なる時点で、pH2.0および7.0、37℃におけるインスリンフィブリル化反応から、取り出した。産生した超分子インスリンアセンブリ中間体を、遠心によって単離した。得られたペレットをPBSで洗浄し、エッペンドルフチューブ中で1mlのPBSで再懸濁した。中間体を含むエッペンドルフチューブの蓋を外し、エッペンドルスチューブを、12kDaのカットオフ値を有する透析膜でシールした。その後、エッペンドルフチューブを、膜側を介して、0.02%のアジ化ナトリウムを有する20mlのPBSを含む50mlファルコンチューブに挿入し、インスリン放出のカイネティクスを、15日間、一定の攪拌下でモニターした。放出のカイネティクスを、分光光度計を使用して280nmで、および内因性(チロシン)蛍光によってモニターした。1時間当りに放出したインスリンの量を計算した。図2aは、吸光度280nmで、および内因性チロシン蛍光によってモニターした、超分子インスリンアセンブリII中間体からのin vitroインスリン放出を示す。0時間および15日時点での透析膜内部の溶液のTh-T蛍光強度も付与する。
【0252】
異なる中間体の放出プロファイルを試験するために、37℃、pH2.0および7.0の両方での中間体および完全に形成させたアミロイドフィブリルの少量のアリコートを、一定の間隔でフィブリル化工程から取り出し、10,000rpmで10分間遠心した。上清を取り除き、ペレットを2回PBSで洗浄後に、新しいPBSで再懸濁した。モノマーインスリンの放出を、分光光度計を使用して、280nm、37℃でモニターした。放出カイネティクスは、2つの異なる条件で試験した。1つ目は、ペレットをPBSで懸濁し、12kDaのカットオフ値を有する膜を介して20mlのPBS中で、一定の攪拌の下、透析した(図2a-c)。2つ目は、得られたペレットを、1mlのPBSで懸濁し、上清の吸光度を280nmで測定した(図2d)。
【0253】
[実施例4]
(コンゴレッド結合)
インスリンオリゴマー/アミロイドに結合したコンゴレッドの量を、以前に報告されたように(Klunk, W.E., Jacob, R.F. & Mason, R.P. Quantifying amyloid by Congo red spectral shift assay. Methods Enzymol 309, 285-305 (1999))、以下の式を使用して見積もった:「アミロイド懸濁液の結合したコンゴレッドのモル/L」=A544nm/25295 - A477nm/46306。
【0254】
図3は、天然のインスリン、超分子インスリンアセンブリII、超分子インスリンアセンブリIIIおよびアミロイドインスリンを用いた、コンゴレッド結合試験を示す。
【0255】
[実施例5]
(チロシン蛍光)
異なる時間間隔で、0.2mlの石英キュベット中に取り出した超分子インスリンアセンブリの透析物を、270nmで励起して、320〜370nmの間で蛍光を測定した。5nm幅のスリットを、励起および蛍光の両方について使用した。図2(a)は、280nmの吸光度および内因性チロシン蛍光によってモニターした、超分子インスリンアセンブリII中間体からのインスリンのin vitro放出を示す。0時間および15日での透析膜内の溶液のTh-T蛍光強度も示す。
【0256】
[実施例6]
(フーリエ変換赤外分光(FTIR))
IRスペクトルを、液体N2で冷却した水銀カドミウムテルル検出器を備えた、Bruker Tensor 27ベンチトップ型FTIR分光光度計を用いて求めた。インスリンサンプルを、Bio-ATRで分析し、256インターフェロンガンマを、室温で2cm-1の分解能で測定した。各スペクトルについて、水蒸気を引き、ベースライン校正をした。
【0257】
SIA I、IIおよびIIIについても、ATR-FTIRを使用して特徴づけを行った。各段階に対応する異なるスペクトルが観察された(図1d)。
【0258】
ウシおよびrHインスリンの超分子インスリンアセンブリI、IIおよびIIIについても、ATR-FTIRを使用して特徴づけを行った。各段階に対応する異なるスペクトルが観察された(図4)。IRバンドのより低い周波数へのシフトが、フィブリル化の間に観察される。超分子インスリンアセンブリII(SIA-II)は、ウシおよびrHインスリンそれぞれについて、1647cm-1および1645cm-1でシャープなピークを有するのに対して、同じ場合に、完全に形成されたアミロイドは、1630cm-1および1628cm-1のピークを有する。FTIRスペクトルは、ランダムコイル構造の含量の増加にも関わらず、SIA-IIの構造が主としてらせん形であることを示すCR結合データと良く一致している。
【0259】
[実施例7]
(原子間力顕微鏡(AFM))
ピコプラス原子間力顕微鏡(Agilent Technologies)を、画像化用にマグネチックアコースティック(magnetic acoustic)MAC(コンタクト)モードで用いた。露出した雲母の表面、またはMACカンチレバータイプIIを用いたサンプルと雲母のいずれかで(カンチレバーの弾力計数:2.8N/m、周波数:59.722kHz)、画像をエア中に記録した。様々な時点でサンプルをフィブリル化反応混合液から回収し、水で20倍希釈し、新たに切断した雲母上に2分間固定した。サンプルをナノピュア(nanopure)水で洗浄し、N2下で乾燥し、AFM分析にかけた。
【0260】
図5は、原子間力顕微鏡によって試験した超分子インスリンアセンブリ中間体およびインスリンフィブリルの形態を示す。図5(a)インスリンモノマー、(b)超分子インスリンアセンブリI中間体、pH7.0、(c)超分子インスリンアセンブリII、pH7.0、(d)超分子インスリンアセンブリIII中間体、pH7.0、(e)ヒトSIA I、(f)ヒトSIA II、(g)ヒトSIA III、および(h)pH7.0で完全に形成されたフィブリル、(i)37℃、pH2.0で、6時間で形成した超分子インスリンアセンブリ中間体を示し、(j)はpH2.0で形成した完全に形成したアミロイドフィブリルを示す。
【0261】
[実施例8]
(透過型電子顕微鏡(TEM))
TEM試験用に、サンプルをボルテックスにかけ、そのままフォルムバールコーティングした300メッシュの銅格子に吸収させ、またはミリ-Q水で1:2〜20倍に希釈し、脱イオン水で洗浄した。格子を3%酢酸ウラニルで2〜5分間インキュベートし、ネガティブ染色によってサンプルを試験するために赤外線下で乾燥した。格子を80kVでPhillips CM-10で可視化した。像をMegaViewIIIカメラを用いて捕え、Imaging System PhillipsのImaging Softwareを用いて分析した。図6は、インスリンフィブリルおよび超分子インスリンアセンブリ中間体のネガティブ染色TEM顕微鏡写真を示し、図6(a)は超分子インスリンアセンブリI中間体、pH7.0を示し、図6(b)は超分子インスリンアセンブリII、pH7.0を示し、図6(c)は超分子インスリンアセンブリ中間体III、pH7.0を示し、図6(d)はpH7.0の成熟ファイバーを示し、図6(e)は37℃、pH2.0で形成したファイバーを示す。
【0262】
[実施例9]
(糖尿病のラットモデル)
体重210±10gの9週齢の雄のWistarラット(哺乳類、げっ歯目、Rattus norvegicus albinus)を用いた。ラットを市販のポリプロピレンケージで飼育し、12時間の明-暗サイクルで、温度制御の条件下に維持し、適宜食餌および水を摂取させた。
【0263】
(ラットに糖尿病を誘発するためのストレプトゾトシンモデル)
体重250〜300gの雄のWistarラットを4グループに分け、Roche Accu Checkグルコースストリップを用いて血中グルコースの推定を行った。ラットを48時間絶食させた。クエン酸バッファー(pH4.5)中に新たに調製したストレプトゾトシン50mg/kg b.wtを、10〜20匹のラットに腹腔内投与した。直ちに食餌を供給し、3日後に血中グルコース濃度を調べた。その血中グルコース濃度に従って、動物をグループ分けした(グループI:250〜350mg/dl、グループII: 350〜450mg/dl、およびグループIII:>450mg/dL)。ウシインスリン2〜6U/kg体重(b.wt)で、1週間、高濃度の血中グルコースが維持された。STZ処置ラットは全て、STZ注射5日後に高血糖を発症し(血中グルコース濃度>250mg/dl)、これらの血清インスリン濃度を、ラットインスリン固相酵素結合免疫測定法(ELISA)(Mercodia)を用いて定量した。グルコース>250mg/dL、および無視できるレベル(〜0.08ng/ml)の血清インスリン濃度のラットを糖尿病とみなし、実験に用いた。
【0264】
[実施例10]
(超分子インスリンアセンブリ処置)
インスリンで高濃度の血中グルコースを1週間維持した後、ラットを、各々がラット5匹を含む3グループに分けた。グループIのラットには、1日あたりウシインスリン4U/kg b.wtを腹腔内に単回投与した。グループIIのラットには、インスリン4U/kg b.wtを、1日2回注射した。グループIIIはPBS100μl中の200μgの超分子インスリンアセンブリIIで処置し(皮下および筋肉内)、グループIVのラットにはPBS100μlを投与し、糖尿病コントロールとした。PBS100μlを注射した正常ラット5匹のグループを、非糖尿病のコントロールとした。8〜10時間絶食後の食前および食後両方の、体重および血中グルコース濃度を、最初に毎日チェックし、次いで頻度を低減した。図7は、超分子インスリンアセンブリ(あるいはプレアミロイドのインスリン)の、グルコース恒常性におけるin vivoの有効性を示す。(a)皮下および筋肉内両方で投与した、様々な投与量の超分子インスリンアセンブリII(ウシ)に反応した血中グルコース濃度。(b)皮下および筋肉内両方で投与した、様々な投与量の超分子インスリンアセンブリII(r-ヒト)に反応した血中グルコース濃度。
【0265】
図8は、ウシSIA II(a)ウシインスリン、(b)rHインスリン投与後135日の期間にわたってモニターした食後血中グルコース濃度を示す。図9は、ヒトSIA II(a)ウシインスリン、(b)rHインスリン投与後160日の期間にわたってモニターした食前の血中グルコース濃度を示す。図10は、pH2.0および7.0で形成したインスリンアミロイドの投与後モニターした、血中グルコース濃度を示す。図11は、SIA-II処置糖尿病ラット、糖尿病コントロール、および非糖尿病コントロールラットの体重プロファイルを示す。
【0266】
[実施例11]
(腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT))
STZ処置(n=12)および正常ラット(n=4)を12時間絶食させた。上記に記載したように血中グルコース濃度をモニターした。グルコース負荷試験を行った。簡潔に述べると、動物に3g/kg体重のグルコースを腹腔内注入し、その後、グループIにはウシインスリン4U/kg b.wtを、グループIIにはアミロイドインスリン100μlを、グループIIIのラットにはPBS(ビヒクル)100μlを注射した。血中グルコース濃度を、処置後0、30、90、150、270、および330分後にモニターした。様々な時間点について血清を単離し、血中グルコース濃度と時間との間でグラフをプロットした。図12は、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)の血中グルコースプロファイルを示す。
【0267】
[実施例12]
(血清インスリンの定量)
採取した血液サンプルから血清を単離し、さらなる分析まで-20℃で貯蔵した。ウシおよびラットのインスリンレベルを、Mercodia(スウェーデン)の固相two site酵素免疫アッセイ(ELISA)を用いて、製造元のプロトコールにしたがって定量した。図13aは、SCまたはIM注射した超分子インスリンアセンブリに反応したSTZ処置マウスにおける、ELISAを用いた血清ヒトおよびウシインスリンの定量を示し、図13(b)は、IPGTTの血清ウシインスリンの定量を示し、図13(c)は、IPGTT用に行った血清ラットインスリンELISAを示す。
【0268】
[実施例13]
(インスリンのI125標識化)
インスリンSIA IIの末端からのin vitroの放出をさらに確証し定量するために、I125でのインスリンの標識化を行った(Pause, E.、Boi mer, O. & Nustad, K, Radioiodination of proteins with the iodogen method, in RIA and related procedures in medicine, international atomic agency, Vienna, 161-171(1982))。標識したインスリンから形成した超分子インスリンアセンブリは、49912CPM/ml/μgの比放射能を有していた。超分子インスリンアセンブリ50μl(4991200CPM)を、皮下または筋肉内のいずれかで注射し、血中グルコース濃度をモニターし、0、30分、1時間、4時間、10時間、24時間、それ以降は1日1回、次いで隔日または週1回、血清サンプルを採取した。血清1mlあたりのカウントを計測した(図14a)。図14bに示すように、血中グルコースプロファイルは非標識のSIA IIで観察されたものと同じであった。計算したCPM/mlは、処置の日数に対してプロットした場合、ほぼ一定のままであった(図14a)。しかし、30分〜4時間に最初の高いカウントが現れ、次いでこれは徐々に低減して10時間で2000〜3000の一定レベルになった。血液に放出されたインスリンの量を計算したところ、0.5〜1.2ng/mlの範囲であり、これは、ELISAで観察された、血清におけるインスリンの基礎レベルに相当し、または基礎レベルをわずかに上回っていた(図14b)。超分子インスリンアセンブリから放出されたインスリンがモノマーであることをさらに証明するために、様々な時点の血清を、トリシン-SDS-PAGE上で分離し(Schaogger, H. & Von Jagow, G., Tricine-sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis for the separation of proteins in the range from 1 to 100 kDa., Anal Biochem, 166, 368-379 (1987))、蛍光イメージャーを用いてX線像を得た。図15に示すように、血清中のバンドは遊離インスリンのモノマーに相当し、その強度は、等量の血清をロードした場合、長期間一定のままであった。20日後に強度の低減が観察され、このことは、時間がたつにつれ、放射標識それ自体の崩壊のいくつかの効果とともに、超分子インスリンアセンブリのデポ剤の利用および枯渇がもたらされたことを示す。
【0269】
[実施例14]
(超分子インスリンアセンブリIIを用いた処置後の高血糖クランプ)
雄のWistarラットを麻酔し(2%イソフルラン)、頚動脈(carotid)および頚動脈(jugular)のカテーテルを設置して血液の回収、および血中グルコース濃度を600mg/dLに固定するためのグルコースの注射(20%グルコース溶液)を可能にした。12時間の絶食期間の後、全グループにグルコースを注入して高血糖にした。この後、既定の時間間隔で、血中グルコース測定用に血液を回収し、これらを高血糖に維持するためのグルコース注入の速度を計算した。この手順を、SIA II投与の1および3ヵ月後に繰り返した(図16a〜c)。
【0270】
[実施例15]
(ラット脂肪細胞の単離および1次培養)
Bjorntorpらによって記載された方法にしたがって、ラット脂肪細胞を単離し、培養した(Bjorntorp, P., Karlsson, M., Pettersson, P. & Sypniewska,G., Differentiation and function of rat adipocyte precursor cells in primary culture., J Lipid Res., 21, 714-723 (1987))。自由に摂食させた雄のWistarラットを屠殺し、精巣上体の脂肪組織を解剖し、試薬A(HBSS、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン100μg/ml、およびゲンタマイシン50μg/L)中に採取した。組織をHBSS中、適切に洗浄した。次いで、この組織を切開し、細かく刻み、ファルコンチューブに移し、200gで2分間遠心分離した。透明な油層を除去し、脂肪細胞の細胞層(濃く、濃密度)を、フラスコ中の3倍体積の試薬B(0.1%BSAおよび1mg/mlコラゲナーゼを含む試薬A)に加えた。フラスコを、絶えずゆっくりと振盪しながら、37℃で60分インキュベートした。3倍体積のDMEM完全培地(HEPES 15mM、グルコース、0.1%BSA、アデノシン50nM、および1%ウシ胎児血清を含む)を加えることによって反応を停止し、室温で5分間インキュベートした。反応物をファルコンチューブに移し、200gで10分間遠心分離した。油の上層を廃棄することによって脂肪細胞を採取し、試薬Aで200gで10分間遠心分離することによって2回洗浄した。細胞を、好適な体積のDMEM完全培地を含むフラスコ中に分注し、37℃で24時間インキュベートした。インスリンシグナル伝達用に、脂肪細胞を遠心分離し、無血清培地中に12時間維持し、その後、6ウェル培養プレート中に約2mlプレーティングし、さらに2時間インキュベートした。
【0271】
[実施例16]
(全細胞可溶化物のウェスタンブロット分析)
プレーティングした細胞を、20nMのインスリン、超分子インスリンアセンブリ50μl、およびin vitroで放出されたインスリン(モノマー)、またはインスリン、超分子インスリンアセンブリ、およびPBS処置したラットに由来する血清50μlのいずれかと、10分間インキュベートした。インキュベート後、細胞をファルコンチューブに採取し、200gで10分間遠心分離した。脂肪細胞の上層をエッペンドルフチューブに採取し、氷中に維持した。溶解バッファー500μl(20mM Tris pH8.0、1% NP40、137mM NaCl、1mM MgCl2、1mM CaCl2、1mM DTT、10%グリセロール、1mM PMSF、オルトバナジン酸ナトリウム0.4mM、およびプロテアーゼ阻害薬のカクテル)を加え、サンプルを-80℃で2時間凍結した。この後、解凍し、一定に回転させながら4℃で4時間、インキュベートした。上清を13000rpmで30分間遠心分離後採取し、細胞溶解物におけるタンパク質濃度をBradford試薬を用いて推定した。全細胞タンパク質のうち50マイクログラムを各レーンにアプライし、10%SDS-PAGE上で分離し、Bio-rad製ウエット式トランスファー装置を用いて、4℃で一夜、ニトロセルロース膜に転写した。転写後、ブロットを除去し、転写したバンドを可視化するためにPonceau-Sで染色し、水でさらに脱染した。膜を、PBS、pH7.4中の5%スキムミルクで、37℃で1時間ブロックし、洗浄し、次いで、4℃で、PI3K、p-Akt、total Akt、p-Gsk3β、Gsk3β、ERK1/2、GAPDH、およびβアクチンの1次抗体(細胞シグナル伝達に由来する抗体)(PBS中の1%スキムミルクを用いて1:1000希釈)中で、一夜インキュベートした。PBSTで洗浄後、ブロットを、それぞれの2次抗体(HRPコンジュゲートした)中で、1時間インキュベートし、ECLウエスタンブロッティングプロトコール(Amersham)を用いて、免疫反応性のバンドを可視化した。図17は、インスリンシグナル伝達カスケードのための培養脂肪細胞のウエスタンブロット(WB)分析を示す。脂肪細胞を、(a)PBS、インスリン、SIA-II、SIA IIから放出されたインスリン、(b)前記した血清と処置し、インスリンシグナル伝達に対して分析した。
【0272】
[実施例17]
(組織学および免疫組織学)
ラットにインスリンSIA II 200μg、または大腸菌に由来するリポ多糖(LPS)150μg(Sigma-Aldrich、MO、米国)を、筋肉内または皮下注射のいずれかによって、それぞれ大腿筋および背側皮膚中に注射した。LPS注射したラットを注射48時間後に屠殺したのに対して、インスリンSIA IIを注射したラットを1から12週間モニターし、7日毎の間隔で組織切片を切除した。ラットをケタミンによって麻酔し、4%パラホルムアルデヒドで潅流した。皮膚および大腿筋を除去し、注射部位を切り出した。次いで、組織をパラフィン包埋用に処理加工し、10μmの厚さに矢状に切断し、一般的なヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色用にさらに処理加工して、炎症細胞の組織像および浸潤を調べ、残渣のSIAの存在のためのコンゴーレッド染色(Lee, G. & Luna, H. T., Manual of Histologic staining methods of armed forces institute of pathology., 3rd Ed. McRaw-Hill book company (1960))、およびCDllb、RT-IA、およびCD6に対する抗体 (BD Pharmigen、CA、USA)を用いて、免疫組織化学 (Sanz MJ, Marinova-Mutafchiev L, Green P, Lobb RR & Feldmann M, Nourshargh S., IL-4-induced eosinophil accumulation in rat skin is dependent on endogenous TNF-alpha and alpha 4 integrin/VCAM-1 adhesion pathways., J Immunol., 160, 5637-5645 (1998))を行った。免疫蛍光のスライドを全て、褪色防止試薬+封入剤(Molecular probes、Eugene、Oregon、米国)で永久的にマウントし、蛍光下でFITCコンジュゲートした抗体について観察した。CRおよびH&E染色したスライドをシトラマウント(citramount)媒体(Polysciences、PA、米国)でマウントした。H&E切片を明所下で観察し、CR染色したスライドを明所および偏光光線下(Nikon Eclipse 80i、Nikon、日本)で観察した。画像を、DS SMcCCDカメラ(Nikon、日本)を用いて捕え、NIS-Elementソフトウエア(Nikon、日本)によって分析した。
【0273】
[実施例18]
(ラットにおいて糖尿病を誘発するためのアロキサンモデル)
体重250〜300gの雄のWistarラットを4グループにわけ、Roche Accu Checkグルコースストリップを用いて血中グルコースの推定を行った。ラットを24時間絶食させた。クエン酸バッファー(pH4.5)中に新たに調製したアロキサン150mg/kg b.wtを、10〜20匹のラットに腹腔内投与した。直ちに食餌を供給し、3日後に血中グルコース濃度を調べた。血中グルコース濃度にしたがって動物をグループ分けした(グループI:250〜350mg/dl、グループII:350〜450mg/dl、およびグループIII:>450mg/dL)。2〜6U/kg体重(b.wt)のウシインスリンで、1週間、高濃度の血中グルコースを維持した。アロキサン処置ラットの60%が、注射5日後に高血糖を発症し(血中グルコース濃度>250mg/dl)、これらの血清インスリン濃度をラットインスリン固相酵素結合免疫測定法(ELISA)(Mercodia)を用いて定量した。>250mg/dLのグルコースおよび無視できるレベルの血清インスリン濃度(〜0.18ng/ml)を有するラットを糖尿病とみなし、実験に用いた。
【0274】
[実施例19]
(試験した臨床パラメーターの例)
超分子インスリンアセンブリ処置の毒性を評価するために、生化学アッセイを行った。血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)、総ビリルビン、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、血清総タンパク、血清アルブミン、血清グロブリン、血清A/G比、腎機能試験(KFT)、白内障形成、脂肪組織重量、体重、および外観を、Merck India Ltdから入手できるアッセイキットを用いて推定した。表1は、インスリンSIA IIの毒性を評価するための臨床パラメータの分析を示す。血清を、3カ月の試験の終わりに採取した血液サンプルから単離し、表に示した様々な試験に供した。結果は、各グループn=4の動物を有する3つの異なる実験の、平均値±標準偏差である。
【0275】
[実施例20]
(血清中の抗-インスリン抗体およびインスリン分解酵素(IDE)の検出)
標準のELISAのプロトコールにしたがうことによって、ラット血清における抗インスリン抗体を検出するために、間接ELISAを行った。簡潔に述べると、50mM炭酸塩バッファー、pH9.6、中の2mg/mlウシインスリンの200μlを、96ウェルELISAプレート上にコーティングし、4℃で一夜保った。PBS中の5% BSAを用いて、37℃で1時間ブロックした。次いで、プレートをPBST(0.02%Tween20)で洗浄し、1:100希釈した血清の200μlを加えて、37℃で1時間保った。さらなるラウンドのPBSTでの洗浄の後、1:10000希釈した抗ラットIgG-HRPコンジュゲートした2°抗体を加え、37℃で2時間インキュベートした。基質としてTMBを用いて発色させ、濃H2SO4を加えることによって反応を停止した。プレートを450nmで分光光度計を用いて読み取った。抗インスリン抗体を、反応に対するポジティブコントロールとして用いた。IDEを、Insulysin/IDE InnoZyme Immunocapture Activity Assay Kit (Calbiochem)を用いて、製造元のプロトコールにしたがって血清から定量した。キットで提供されたラットIDEを、ポジティブコントロールとして用いた。
【0276】
(細胞増殖アッセイ)
細胞を、24ウェルプレート中に、10% FBSを含む通常のDMEM培地に10000細胞/ウェルでプレーティングした。細胞を12時間、無血清培地に切り替え、次いで図の凡例に示すように処置した。処置は全て3回ずつ行った。処置3日後に増殖を測定した。増殖をMTTアッセイによってアッセイした。PBS中の5mg/ml MTT溶液の全50μlを各ウェルに加えた。37℃で4時間インキュベート後、ホルマザンの結晶を可溶化溶液(20%SDS、50%DMSO)500μlで溶解した。670nmのディファレンシャルフィルター(differential filter)を用いて、プレートリーダーで570nmの吸光度を測定した。
【0277】
[実施例21]
(マウスにおいて糖尿病を誘発するためのストレプトゾトシンモデル)
12〜16週齢の雄の近交系C57BL/6マウスを用いた。5日間毎日、マウスに50mg/kg b.wtのストレプトゾトシンを腹腔内注射した。2週間後、血中グルコース濃度を推定した。血中グルコース>300mg/dlのマウスを糖尿病とみなし、さらなる実験用に選択した。各グループ各マウス6匹からなる全6グループを作成した。10μl、25μl、50μl、および100μlのウシ/ヒトインスリンSIA IIなどの様々な投与量を、ストレプトゾトシンを用いて糖尿病にしたマウスに皮下または筋肉内のいずれかで投与し、他の2グループは糖尿病および非糖尿病グループとした。Roche Accu Checkグルコースストリップを用いて、空腹時および満腹時血中グルコース濃度の両方をモニターした。
【0278】
[実施例22]
(ウサギにおいて糖尿病を誘発するためのストレプトゾトシンモデル)
体重1000gと1200gとの間の雄のNew Zealandウサギを用いた。動物を、湿度、温度(22±2℃)および12時間の明暗サイクルの制御された条件下に維持した。実験プロトコールおよび動物の取扱いは、インド、ニューデリー、Institutional animal ethics committee of the National Institute of Immunologyにしたがった。実験的糖尿病を誘発するために、用いるウサギを12時間絶食させ、その後、クエン酸バッファー、pH4.5中に調製したストレプトゾトシン80mg/kg b.wtを投与した。血中グルコース濃度を3日後に調べた。BGL>450mg/dLを示したウサギを糖尿病とし、ウサギ各3匹の3グループにさらに分けた。グループI-正常の健康なウサギ、グループII-インスリン処置した糖尿病、グループIII-SIA II(SC)処置した糖尿病、およびグループIV-PBS処置した糖尿病。
【0279】
[実施例23]
(WistarラットにおいてII型糖尿病を誘発するためのモデルおよびSIAを用いたその処置)
7週齢の、体重約200gの雄のWistarラットを全ての試験に用いた。動物には、脂肪12%、炭水化物60%、およびタンパク質28%(全kcalのパーセント値として)からなる普通固形飼料食、または脂肪40%、炭水化物41%、およびタンパク質18%からなる高脂肪食のいずれかを摂食させた。いずれかの食餌で2週間後、動物(非注射のコントロールを除いて)を一夜絶食させた後に、尾静脈に、一時的に留置した24ゲージカテーテルによって、STZ(50mg/kg)を注射した。STZ注射後、動物に食餌および水を自由に摂取させ、STZ注射および非注射の動物の両方とも、試験期間中はそのもともとの食餌(固形飼料または脂肪)を継続させた。血中グルコース濃度が高い動物に、ビヒクルとしてのPBSを、インスリンSIAを、またはインスリンSIAとエキセンディン-4aとを一緒に、皮下投与した。血液を採取し、血清を遠心分離によって分離し、グルコース(グルコースストリップ、Accucheck、Roche)、インスリン(Insulin Elisa Kit、Mercodia)、中性脂肪(TG)(グリセロールリン酸オキシダーゼ[GPO]-Trinder法、Sigma)、および遊離脂肪酸(アシルコエンザイムA合成酵素[ACS-ACOD]法、Wako Diagnosis、Richmond、VA)の濃度について分析した。
【0280】
[実施例24]
(カルシトニンフィブリル形成)
1および2mg/mlのサケカルシトニンを、PBS中で調製し、37℃で80時間インキュベートした。カルシトニンアミロイドフィブリル形成のカイネティクスを、異なる時間間隔で400nmの濁度を測定することによって、モニターした。図29に示すように、フィブリル形成の速度は濃度依存的であり、44時間後にはほぼ終了する。SCA-I、SCA-IIおよびSCA-IIIは、それぞれ、12、22および28時間で形成した。
【0281】
(超分子カルシトニンアセンブリからのカルシトニンのin vitro放出)
SCAから遊離のカルシトニンの放出を、一定の体積1mlの2%マンニトール中で、および、透析膜を介して透析することによって、モニターした。放出を、275nmの吸光度によってモニターした。図30に示すように、一定の体積1ml中のSCAからのカルシトニンの放出は、インスリンのように、釣鐘曲線に従う。しかしながら、連続的放出が、膜を介した透析下で観察され、SIAからのインスリン放出と類似していた。完全に成長したカルシトニンファイバーからのカルシトニンの放出は、非常に遅く、更なる実験についての無視できるレベルであると考えられた。カルシトニンSCAを、更に、卵巣切除したラットにおける骨粗鬆症の治療についてのin vivo実験のために使用した。
【0282】
(骨粗鬆症のためのモデルおよびカルシトニンを使用した治療)
44匹の雌のSprague-Dawleyラット(Charles River Laboratory, Wilmington, MA)、約90日齢で平均体重230g、を、試験の最初に4つのグループに分けた。全てのラットを、塩酸ケタミンおよびキシラジンの腹腔内注射(それぞれ、50および10mg/kg体重(BW))で麻酔をかけた。両側卵巣切除を、dorsal approachで、3つのグループに実施した。全てのラットを、個々に25℃、12時間の明-暗サイクルで飼育した。卵巣切除(OVX)ラットの食事摂取は、コントロールラットの食事摂取に制限し、卵巣切除に関連する体重の増加を最小にした。全てのラットを、8週間、ベヒクルまたはヒト/サケCT(Sigma)で、皮下注射によって断続的に、または、2%マンニトール中の200μlのCT(4μg/kg)またはSCA(超分子カルシトニンアセンブリ)(2mg/ml)のいずれかを含む、溶液を2.5μl/hの一定速度で28日間伝達するようにデザインされたAlzet浸透圧ミニポンプ(モデル2ML4;Alza Corp., Palo Alto, CA)によって連続的に、処置した。断続的な処置は、手術後一日で開始した。連続的なCTまたはカルシトニンSCAまたはベヒクル処置のためのミニポンプを、手術の時点で(0日)埋め込み、連続的なCTおよびベヒクル処置の場合には、3週間後に置き換えた。しかしながら、この期間中に注射したSCAは、約6-8週間カルシトニンを放出し続けるデポ剤を形成した。CTの皮下注射については、このホルモンを2%マンニトールのベヒクル中に溶解した。16IU/kg(4μg/kg)体重の投与量を、OVXラットの以前の試験から得られた肯定的な結果に基づいて、選択した。
【0283】
このグループのOVXラットの半分に、一日おきに、ベヒクルとして2%マンニトールを皮下注射した。このグループの残りのOVXラットに、ベヒクルの連続的注入のためのAlzet浸透圧ミニポンプを皮下に埋め込んだ。骨の変化の統計学的に顕著な差異は、ベヒクルで断続的にまたは連続的に処置したOVXラット間では見られなかったので、これらのサブグループに由来するデータを組み合わせた。
【0284】
1つのグループの各OVXラットに、一日おきに、サケCTを、16U/kg BW(4μg/kg b wt)の投与量で皮下注射し、他のラットに、ヒトCTの連続的注入のためのAlzet浸透圧ミニポンプを皮下に埋め込んだ。ミニポンプによって各ラットに送達された毎日の投与量は、8U/kg BW(2μg/kg BW)であり、これは、一日おきの皮下注射を介した先行グループに投与した量に相当するものであった(16U/kg)。
【0285】
血清サンプルを、市販のキット(Bio-Merica)を使用した免疫アッセイ方法によってCT濃度を分析するまで、-80℃で保存した。このキットを使用して、以前の試験の1つにおいて、ラットの血清サケCTを成功裏に測定した。15の血清サンプルは、また、クレゾールフタレインコンプレキソンおよびモリブデン酸アンモニウム比色方法によって、それぞれ、カルシウムおよびリン含量について光学的測定で分析した(表3)。図31は、異なる処置グループの卵巣切除したラットの血清中のSCA-IIから放出したカルシトニンのプロファイルを示す。血清中のカルシトニンは、免疫アッセイキットによって測定した。
【0286】
全ての処置したグループにおけるサケカルシトニンに対して産生した抗体を、カルシトニンについてのモノクローナル抗体を使用した間接ELISAによってモニターした。データを、各グループについて、平均±標準偏差(SD)として表す。統計学的差異を、分散分析によって評価した。<0.05のP値が、有意であるとした。
【0287】
[実施例25]
(EDCを使用したイブプロフェンとのペプチドの共有結合性コンジュゲート化)
修飾するTTR/GNNQQNYを、NaCl(0.15M)を含む0.1 MES、pH 4.7-6.0中で10mg/mlの濃度で、溶解した。カップリングするイブプロフェンを同じバッファー中で溶解し、適切な程度で過度に、タンパク質溶液へ直接添加した。その後、前記溶液にEDCを添加し、少なくとも10モル倍を超えるEDCを得た。2-3時間室温で反応させた。コンジュゲートを、選択したバッファーを使用して(0.01Mリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.4)、ゲルろ過または透析によって精製した。
【0288】
(関節炎についての超分子イブプロフェンアセンブリの効果)
体重180-22gの雄のWistarラットを選択し、自由に餌を与えた。順化の4日後に、ラットを5つのグループに分けた。グループI、グループII:イブプロフェン(10mg/kg b.wt)、グループIII:イブプロフェン(50mg/kg b.wt)、グループIV:腹腔内に注射したトランスサイレチン(TTR)またはGNNQQNYに結合したイブプロフェン、およびグループV:カラゲニンコントロール。グループII-Vを、ハロタンを使用して麻酔をかけ、KC関節炎を、3%カオリンおよび3%カラギーナンの混合物(滅菌生理食塩水中に0.1ml)の右膝関節の滑液腔への関節内注射によって誘導した。その後、関節を、1分間、迅速な曲伸運動によって動かした。カオリン/カラギーナンの注射後30分してから、動物を前記したとおりに処置し、グループIIには、イブプロフェンを経口で毎日注入した。ホットプレートテスト方法においては、各グループに由来するラットを、55℃の鎮痛測定器に置き、足を舐めるまでの待ち時間を、一日目の処置後1時間(図32a)、その後、4日間毎日(図32b)、ストップウォッチで測定した。90秒のカットオフ時間を、組織の損傷を避けるために、課した。
【0289】
(足の浮腫の測定)
足の体積を、カオリン/カラゲニンの注射直前およびその後1時間間隔で4日間、hydroplethysmometer(モデル7150, Ugo Basile, Italy)を使用して、測定した。結果を、基礎体積を引くことによって計算した足体積(ml)の増加として表した(図33)。
【0290】
【表1】
【0291】
【表2】
【0292】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常;または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子タンパク質またはペプチドアセンブリ(SPA)であって、前記タンパク質またはペプチドの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、アセンブリ。
【請求項2】
前記タンパク質またはペプチドが、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、エキセンディン4およびエリスロポエチン、ならびに、ペプチドGNNQQNY、NFGAIL、NFLVH、DFNKFおよびKFFEからなる群から選択されるペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載の超分子タンパク質アセンブリ。
【請求項3】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、アセンブリ。
【請求項4】
SIA I、SIA II、SIA IIIとしてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態またはこれらの組み合わせを含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA Iが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターからなり、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなり、SIA IIIが、約90%のSIA-IIからなり、インスリンオリゴマーの密度の高い線形会合である、アセンブリ。
【請求項5】
SIA IIとしてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなる、アセンブリ。
【請求項6】
フーリエ変換赤外分光(FTIR)で1647-1645cm-1のシャープなピークを示す、請求項3から5のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項7】
前記インスリンが、組換えヒトインスリンである、請求項3から6のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項8】
前記インスリンが、ヒト、ウシまたはブタインスリンである、請求項3から7のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項9】
1時間当り約0.2〜0.6IUの範囲の速度でインスリンモノマーをin vitroで放出する、請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項10】
インスリンの放出速度が、約7〜180日間で0.1〜5.4ng/mlの範囲である、請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項11】
インスリンの放出速度が、180日間まで0.5〜1.5ng/mlの範囲である、請求項5に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項12】
投与によって、必要とする患者において180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項13】
単回投与によって、必要とする患者において180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、投与する際の濃度が25〜750μgの範囲である、請求項3から12のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項14】
単回投与によって、必要とする患者において少なくとも180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、投与する際の濃度が150〜250μgの範囲である、請求項3から13のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項15】
投与によって、インスリンモノマーを放出する、請求項3から14のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項16】
カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、骨粗鬆症の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)。
【請求項17】
投与によって、必要とする対象において約55-60日間カルシトニンを放出する、請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)。
【請求項18】
小分子薬剤と結合している、請求項1から17のいずれか一項に記載の超分子タンパク質アセンブリ。
【請求項19】
ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集形態を含む、関節炎および関節痛の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)。
【請求項20】
前記ペプチドが、GNNQQNY、NFGAIL、NFLVH、DFNKFおよびKFFEからなる群から選択される、請求項15に記載の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)。
【請求項21】
エキセンディン-4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、糖尿病の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子エキセンディン-4アセンブリ(SEA)。
【請求項22】
プロドラッグである、請求項1から21のいずれか一項に記載の超分子タンパク質アセンブリ。
【請求項23】
非毒性である、請求項1から22のいずれか一項に記載の超分子タンパク質アセンブリ。
【請求項24】
治療上有効量の請求項1に記載の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリを含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な医薬組成物。
【請求項25】
前記タンパク質またはペプチドが、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、GNNQQNY、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、IL-1RA、エキセンディン4、エリスロポエチンおよび他のペプチドからなる群から選択させる、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
治療上有効量の請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項27】
治療上有効量の請求項4に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項28】
治療上有効量の請求項5に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項29】
治療上有効量の請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および請求項21に記載の超分子エキセンディン-4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項30】
治療上有効量の請求項4に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および請求項21に記載の超分子エキセンディン-4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項31】
治療上有効量の請求項5に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および請求項21に記載の超分子エキセンディン-4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項32】
投与によって、約7〜180日間インスリンを放出する、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項33】
投与によって、必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項34】
単回投与によって、必要とする患者において約180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、前記アセンブリの濃度が25〜750μgの範囲である、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項35】
単回投与によって、必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、前記アセンブリの濃度が150〜250μgの範囲である、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項36】
インスリンの放出速度が、少なくとも180日間まで0.5〜1.5ng/mlの範囲である、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項37】
請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む、骨粗鬆症の処置のための医薬組成物。
【請求項38】
カルシトニンを放出する、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
投与によって、約55〜60日間カルシトニンを放出する、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
単回投与によって、約55〜60日間カルシトニンを放出し、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の濃度が15〜20pg/mlの範囲である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項41】
請求項19に記載の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む、関節炎の処置のための医薬組成物。
【請求項42】
ペプチドタグ化イブプロフェンを放出する、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
投与によって、約3〜6日間ペプチドタグ化イブプロフェンを放出する、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項44】
単回投与によって、約3〜6日間ペプチドタグ化イブプロフェンを放出し、超分子ペプチドタグ化イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の濃度が5〜20mgの範囲である、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項45】
医薬的に許容可能な担体、付加物または希釈剤を含んでもよい、請求項24から44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
筋肉内、経口または皮下に投与される、請求項24から45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
ポンプ、カテーテルおよびインプラントからなる群から選択される、組成物を放出することができるデバイスを介して投与される、請求項24から46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
単回投与によって、長時間タンパク質を放出する、請求項24から47のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)の製造方法であって、
a.インスリンを約25〜60℃で約1.5〜7.8の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および
b.前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子インスリンアセンブリ(SIA)を得る工程
を含む、方法。
【請求項50】
更に、
c.PBSでSIAを洗浄する工程;および
d.請求項49に定義の工程(b)のSIAをPBSに再懸濁する工程を含む、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記時間が10時間である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の製造方法であって、
a.カルシトニンを約25〜60℃で約4.0〜8.0の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および
b.前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を得る工程
を含む、方法。
【請求項53】
更に、
c.PBSでSCAを洗浄する工程;および
d.請求項51に定義の工程(b)のSCAを水または2%マンニトールに再懸濁する工程
を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記時間が8時間である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
請求項19に記載の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の製造方法であって、
a.イブプロフェンを、EDCおよびNHSを使用して、ペプチドGNNQQNYと共有結合的にコンジュゲートする工程;
b.ペプチドタグ化イブプロフェンを約25〜60℃で約3.5〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および
c.前記溶液を8〜96時間一定に攪拌しながらインキュベートし、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を得る工程
を含む、方法。
【請求項56】
更に、
c.PBSでSIbAを洗浄する工程;および
d.請求項53に定義の工程(b)のSIbAをPBSに再懸濁する工程
を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記時間が32時間である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
請求項21に記載の超分子エキセンディンアセンブルの製造方法であって、
a.エキセンディン4を約25〜60℃で約2.0〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および
b.前記溶液を6〜192時間一定に攪拌しながらインキュベートし、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子エキセンディンアセンブリ(SEA)を得る工程
を含む、方法。
【請求項59】
更に、
c.PBSでSEAを洗浄する工程;および
d.請求項55に定義の工程(b)のSEAをPBSに再懸濁する工程
を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記時間が148時間である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
工程(a)の溶液が、約1.5〜2.5の範囲のpHを有する水中の塩酸または酢酸;約3.5〜5.5の範囲のpHを有する酢酸ナトリウムバッファー;pH6を有するリン酸バッファー(PBS)および約4〜6の範囲のpHを有するクエン酸バッファーからなる群から選択される、請求項49から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記温度が37℃である、請求項49から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記溶液のpHが7.2である、請求項49から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記時間が6-192時間である、請求項49から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常;または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、請求項24から48のいずれか一項に記載の、前記疾患または病気の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項66】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む、前記疾患または病気の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項67】
骨粗鬆症の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリを含む、骨粗鬆症の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項68】
関節炎の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、請求項19に記載の超分子イブプロフェンアセンブリを含む、関節炎および関節痛の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項69】
前記組成物が、筋肉内、腹腔内または皮下に投与される、請求項65から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、関節痛、癌および内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療のための、請求項1に記載の超分子タンパク質アセンブリの使用。
【請求項71】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の治療のための、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリの使用。
【請求項72】
骨粗鬆症の治療のための、請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリの使用。
【請求項73】
関節炎の治療のための、請求項19に記載の超分子イブプロフェンアセンブリの使用。
【請求項1】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常;または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子タンパク質またはペプチドアセンブリ(SPA)であって、前記タンパク質またはペプチドの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、アセンブリ。
【請求項2】
前記タンパク質またはペプチドが、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、エキセンディン4およびエリスロポエチン、ならびに、ペプチドGNNQQNY、NFGAIL、NFLVH、DFNKFおよびKFFEからなる群から選択されるペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載の超分子タンパク質アセンブリ。
【請求項3】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、アセンブリ。
【請求項4】
SIA I、SIA II、SIA IIIとしてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態またはこれらの組み合わせを含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA Iが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターからなり、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなり、SIA IIIが、約90%のSIA-IIからなり、インスリンオリゴマーの密度の高い線形会合である、アセンブリ。
【請求項5】
SIA IIとしてのインスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子インスリンアセンブリ(SIA)であって、SIA IIが、インスリンモノマーの真珠様配置を有する伸長クラスターの線形会合からなる、アセンブリ。
【請求項6】
フーリエ変換赤外分光(FTIR)で1647-1645cm-1のシャープなピークを示す、請求項3から5のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項7】
前記インスリンが、組換えヒトインスリンである、請求項3から6のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項8】
前記インスリンが、ヒト、ウシまたはブタインスリンである、請求項3から7のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項9】
1時間当り約0.2〜0.6IUの範囲の速度でインスリンモノマーをin vitroで放出する、請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項10】
インスリンの放出速度が、約7〜180日間で0.1〜5.4ng/mlの範囲である、請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項11】
インスリンの放出速度が、180日間まで0.5〜1.5ng/mlの範囲である、請求項5に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項12】
投与によって、必要とする患者において180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項13】
単回投与によって、必要とする患者において180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、投与する際の濃度が25〜750μgの範囲である、請求項3から12のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項14】
単回投与によって、必要とする患者において少なくとも180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、投与する際の濃度が150〜250μgの範囲である、請求項3から13のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項15】
投与によって、インスリンモノマーを放出する、請求項3から14のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)。
【請求項16】
カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、骨粗鬆症の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)。
【請求項17】
投与によって、必要とする対象において約55-60日間カルシトニンを放出する、請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)。
【請求項18】
小分子薬剤と結合している、請求項1から17のいずれか一項に記載の超分子タンパク質アセンブリ。
【請求項19】
ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集形態を含む、関節炎および関節痛の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)。
【請求項20】
前記ペプチドが、GNNQQNY、NFGAIL、NFLVH、DFNKFおよびKFFEからなる群から選択される、請求項15に記載の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)。
【請求項21】
エキセンディン-4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む、糖尿病の処置のためのタンパク質治療に有用な超分子エキセンディン-4アセンブリ(SEA)。
【請求項22】
プロドラッグである、請求項1から21のいずれか一項に記載の超分子タンパク質アセンブリ。
【請求項23】
非毒性である、請求項1から22のいずれか一項に記載の超分子タンパク質アセンブリ。
【請求項24】
治療上有効量の請求項1に記載の超分子タンパク質またはペプチド(SPA)アセンブリを含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の処置のためのタンパク質治療に有用な医薬組成物。
【請求項25】
前記タンパク質またはペプチドが、インスリン、グルカゴン、カルシトニン、GNNQQNY、トランスサイレチン(TTR)、ヒト成長ホルモン、血液凝固因子、アルブミン、ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、IL-1RA、エキセンディン4、エリスロポエチンおよび他のペプチドからなる群から選択させる、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
治療上有効量の請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項27】
治療上有効量の請求項4に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項28】
治療上有効量の請求項5に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項29】
治療上有効量の請求項3に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および請求項21に記載の超分子エキセンディン-4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項30】
治療上有効量の請求項4に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および請求項21に記載の超分子エキセンディン-4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項31】
治療上有効量の請求項5に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)および請求項21に記載の超分子エキセンディン-4アセンブリ(SEA)を含む、I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の処置のための医薬組成物。
【請求項32】
投与によって、約7〜180日間インスリンを放出する、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項33】
投与によって、必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持する、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項34】
単回投与によって、必要とする患者において約180日間まで正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、前記アセンブリの濃度が25〜750μgの範囲である、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項35】
単回投与によって、必要とする患者において約180日間正常血糖値に近い濃度(120±30mg/dl)を維持し、前記アセンブリの濃度が150〜250μgの範囲である、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項36】
インスリンの放出速度が、少なくとも180日間まで0.5〜1.5ng/mlの範囲である、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む医薬組成物。
【請求項37】
請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を含む、骨粗鬆症の処置のための医薬組成物。
【請求項38】
カルシトニンを放出する、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
投与によって、約55〜60日間カルシトニンを放出する、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
単回投与によって、約55〜60日間カルシトニンを放出し、超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の濃度が15〜20pg/mlの範囲である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項41】
請求項19に記載の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を含む、関節炎の処置のための医薬組成物。
【請求項42】
ペプチドタグ化イブプロフェンを放出する、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
投与によって、約3〜6日間ペプチドタグ化イブプロフェンを放出する、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項44】
単回投与によって、約3〜6日間ペプチドタグ化イブプロフェンを放出し、超分子ペプチドタグ化イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の濃度が5〜20mgの範囲である、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項45】
医薬的に許容可能な担体、付加物または希釈剤を含んでもよい、請求項24から44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
筋肉内、経口または皮下に投与される、請求項24から45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
ポンプ、カテーテルおよびインプラントからなる群から選択される、組成物を放出することができるデバイスを介して投与される、請求項24から46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
単回投与によって、長時間タンパク質を放出する、請求項24から47のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリ(SIA)の製造方法であって、
a.インスリンを約25〜60℃で約1.5〜7.8の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および
b.前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、インスリンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子インスリンアセンブリ(SIA)を得る工程
を含む、方法。
【請求項50】
更に、
c.PBSでSIAを洗浄する工程;および
d.請求項49に定義の工程(b)のSIAをPBSに再懸濁する工程を含む、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記時間が10時間である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)の製造方法であって、
a.カルシトニンを約25〜60℃で約4.0〜8.0の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および
b.前記溶液を6〜48時間一定に攪拌しながらインキュベートし、カルシトニンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子カルシトニンアセンブリ(SCA)を得る工程
を含む、方法。
【請求項53】
更に、
c.PBSでSCAを洗浄する工程;および
d.請求項51に定義の工程(b)のSCAを水または2%マンニトールに再懸濁する工程
を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記時間が8時間である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
請求項19に記載の超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)の製造方法であって、
a.イブプロフェンを、EDCおよびNHSを使用して、ペプチドGNNQQNYと共有結合的にコンジュゲートする工程;
b.ペプチドタグ化イブプロフェンを約25〜60℃で約3.5〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および
c.前記溶液を8〜96時間一定に攪拌しながらインキュベートし、ペプチドタグ化イブプロフェンの不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子イブプロフェンアセンブリ(SIbA)を得る工程
を含む、方法。
【請求項56】
更に、
c.PBSでSIbAを洗浄する工程;および
d.請求項53に定義の工程(b)のSIbAをPBSに再懸濁する工程
を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記時間が32時間である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
請求項21に記載の超分子エキセンディンアセンブルの製造方法であって、
a.エキセンディン4を約25〜60℃で約2.0〜7.6の範囲のpHを有する溶液中で溶解する工程;および
b.前記溶液を6〜192時間一定に攪拌しながらインキュベートし、エキセンディン4の不溶性かつ凝集オリゴマー形態を含む超分子エキセンディンアセンブリ(SEA)を得る工程
を含む、方法。
【請求項59】
更に、
c.PBSでSEAを洗浄する工程;および
d.請求項55に定義の工程(b)のSEAをPBSに再懸濁する工程
を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記時間が148時間である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
工程(a)の溶液が、約1.5〜2.5の範囲のpHを有する水中の塩酸または酢酸;約3.5〜5.5の範囲のpHを有する酢酸ナトリウムバッファー;pH6を有するリン酸バッファー(PBS)および約4〜6の範囲のpHを有するクエン酸バッファーからなる群から選択される、請求項49から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記温度が37℃である、請求項49から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記溶液のpHが7.2である、請求項49から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記時間が6-192時間である、請求項49から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常;または骨粗鬆症、関節炎、癌、内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、請求項24から48のいずれか一項に記載の、前記疾患または病気の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項66】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリを含む、前記疾患または病気の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項67】
骨粗鬆症の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリを含む、骨粗鬆症の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項68】
関節炎の治療方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、請求項19に記載の超分子イブプロフェンアセンブリを含む、関節炎および関節痛の緩和に有効な医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項69】
前記組成物が、筋肉内、腹腔内または皮下に投与される、請求項65から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常、または骨粗鬆症、関節炎、関節痛、癌および内毒素性ショックからなる群から選択される慢性疾患の治療のための、請求項1に記載の超分子タンパク質アセンブリの使用。
【請求項71】
I型およびII型糖尿病およびその合併症からなる群から選択される代謝異常の治療のための、請求項3から15のいずれか一項に記載の超分子インスリンアセンブリの使用。
【請求項72】
骨粗鬆症の治療のための、請求項16に記載の超分子カルシトニンアセンブリの使用。
【請求項73】
関節炎の治療のための、請求項19に記載の超分子イブプロフェンアセンブリの使用。
【図15】
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20a】
【図20b】
【図20c】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20a】
【図20b】
【図20c】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2011−516541(P2011−516541A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503551(P2011−503551)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000664
【国際公開番号】WO2009/125423
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(596184340)ナショナル インスティテュート オブ イミュノロジー (3)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL INSTITUTE OF IMMUNOLOGY
【出願人】(505292720)インディアン インスティテュート オブ サイエンス (9)
【氏名又は名称原語表記】INDIAN INSTITUTE OF SCIENCE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000664
【国際公開番号】WO2009/125423
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(596184340)ナショナル インスティテュート オブ イミュノロジー (3)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL INSTITUTE OF IMMUNOLOGY
【出願人】(505292720)インディアン インスティテュート オブ サイエンス (9)
【氏名又は名称原語表記】INDIAN INSTITUTE OF SCIENCE
【Fターム(参考)】
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