説明

紙葉類繰出装置及び紙葉類繰出方法

【課題】ダブルフィードを防止し、エラーや装置の休止などの発生を低減できる紙葉類繰出装置及び紙葉類繰出方法を提供する。
【解決手段】繰り出し対象の紙幣3aに接して収納されている紙幣3bに、分離ローラ5の所定領域が接するようにした状態で、ピックアップローラ7により紙幣3aに搬送力を与える。繰り出された紙幣を厚み検知センサ12で検知し、ダブルフィードが生じていれば、紙幣3aを収納部9に取り込み、分離ローラを回転させて、紙幣3bに接する領域を変更した後に再度紙幣3aを繰り出す。ダブルフィードせずに紙幣3aが繰り出されると、摩擦検知センサ27で、紙幣3aの表面の摩擦状況を検知する。検知された摩擦状況に応じて、分離ローラ5の紙幣との接触領域を設定し、設定後に次の紙幣を繰り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類繰出装置及び紙葉類繰出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣の入出金装置等において、紙幣を収納部から繰り出す際には、入出金する金額の誤りを防止するため、確実に1枚ずつ繰り出すことが不可欠である。このため、フィードローラ軸に、フィードローラとフィードローラより両外側に円周の一部が他の円周部分より高摩擦部であるストッパローラと、ストッパローラより内側の位置に柔軟性を有する放射状の部材を配置した例がある。このとき、ストッパローラの高摩擦部はフィードローラの高摩擦部と回転方向で同位相となる位置とする。ピックローラ軸には、紙葉類繰り出し部分へ紙葉類を送り込む高摩擦部とその反対側の位置に柔軟性を有する放射状の部材を有するピックローラを、フィードローラ軸に配置した両外側のストッパローラに対して軸方向で同一または内側となる位置に配置する。このような構成により、紙幣を座屈させることなく送り出すことを目指している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、紙葉類を繰り出す繰出ローラと、この繰出ローラにより繰り出される紙葉類を、送りローラとこの送りローラに所定のギャップを存して対向される分離ローラとにより一枚ずつ分離する分離部とを有する紙葉類分離装置の例もある。この装置は、分離部による紙葉類の分離状態の良否を判別する判別手段と、分離部の送りローラと分離ローラとを接離させる接離手段と、判別手段により紙葉類の分離状態が不良であると判別されたことに基づき、接離手段により送りローラと分離ローラとを接触させたのち、この送りローラと分離ローラとを速度差を持たせて回転摺動させるコントローラとを具備している。このような構成により、ローラ及び分離ローラの摩擦力の低下を防止し、紙葉類を確実に分離することを目的としている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−263139号公報
【特許文献2】特開2002−240975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、同じ種類の紙幣でも、未使用の官封券であるか、すでに使用されている流通券であるか、あるいはどのくらいの期間流通しているか、などにより、さまざまな状態のものがある。例えば、長く使用された場合、剛性が低下して紙幣のコシが弱くなったり、表面性状が変化したりして、摩擦係数が上昇する傾向にある。このように、摩擦係数が上昇した紙幣が重なったまま繰出されると、紙幣収納部の出口でジャムを引き起こしたり、ダブルフィードの発生原因となったりする場合があり、装置の停止や、エラーを引き起すことがある。
【0006】
そこで本発明は、紙幣繰り出し時のダブルフィードを低減することにより、紙幣繰り出し時の障害による休止・エラーを低減させることの可能な紙葉類繰出装置及び紙葉類繰出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る紙葉類繰出装置は、紙葉類を収納し、前記紙葉類を繰り出す収納部と、前記収納部内の繰り出し対象の第1の紙葉類を繰り出す繰り出し部と、前記収納部内に設けられ、前記第1の紙葉類と積層された状態で収納されている第2の紙葉類との間に生じさせる摩擦力により、前記第1の紙葉類から前記第2の紙葉類を分離させる分離部と、前記収納部から前記繰り出し部により繰り出された紙葉類の状況を検知する状況検知部と、を有し、前記分離部は、前記状況検知部が検知した紙葉類の状況に応じて前記摩擦力を変化させることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る紙葉類繰出方法は、第1の紙葉類に、紙葉類を収納する収納部から繰り出す繰出工程と、前記収納部内に設けられ、前記収納部内からの繰り出し対象の第1の紙葉類と積層された状態で収納されている第2の紙葉類との間に摩擦力を発生させることにより、前記第1の紙葉類から前記第2の紙葉類を分離させる分離工程と、前記収納部から繰り出された紙葉類の状況を検知する状況検知工程と、前記状況検知工程において検知された紙葉類の状況に応じて前記分離工程において前記第2の紙葉類との間に発生させる摩擦力を変化させる摩擦変化工程と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、紙幣繰り出し時のダブルフィードを防止することにより、紙幣繰り出し時の装置の休止やエラーを低減することの可能な紙葉類繰出装置及び紙葉類繰出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態による紙葉類繰出装置の全体図である。
【図2】第1の実施の形態による紙葉類繰出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態による紙葉類繰出装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態による摩擦検知センサの動作を説明するフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態による押圧式パッドの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態による紙葉類繰出装置及び紙葉類繰出方法について説明する。まず、図1、図2を参照しながら、第1の実施の形態による紙葉類繰出装置の構成について説明する。なお、本実施の形態では、紙葉類として紙幣を使った例で記載するがこれに限るものではなく、小切手や金券などであっても良い。
【0012】
図1は、第1の実施の形態による紙葉類繰出装置1の全体図、図2は、第1の実施の形態による紙葉類繰出装置1の構成を示すブロック図である。図1、図2に示すように、紙葉類繰出装置1は、紙幣を収納する収納部9から紙幣3a、3b(まとめて紙幣3ともいう)を1枚ずつ確実に繰り出すための装置である。紙葉類繰出装置1は、ピックアップローラ7、分離ローラ5、厚みセンサ12、摩擦検知センサ27、紙幣搬送路40を有し、制御部50とシステムバス2を介して接続され、制御されている。なお、制御部50は、図示せぬ記憶領域を有しており、処理を行うためのプログラムや処理結果を、随時読み出し及び格納しながら処理を行う。
【0013】
収納部9の内部には紙幣3が積み重ねて収納されており、収納部9の筐体9aには、紙幣3を繰り出すための開口部4が設けられている。説明の都合上、図1では、2枚の紙幣3a、3bを示している。紙幣3aの下部に接して、ピックローラ7a、7b(まとめてピックローラ7ともいう)が、それぞれ軸8a、8b(まとめて軸8ともいう)に固定され、軸8とともに回転可能に設けられている。ピックアップローラ7は、図示せぬ駆動部によって軸8を回転させることにより正逆回転可能なローラであり、紙幣3aに接して摩擦力を印加することにより、紙幣3aを収納部9から繰り出す、または収納部9内に取り込む搬送力を与える。
【0014】
分離ローラ5は、紙幣3bに接して摩擦力を発生させることにより、紙幣3aが開口部4から繰り出される時に、紙幣3aと紙幣3bとを分離させる円柱形状部材である。分離ローラ5は、紙幣3bに接する円柱の側面部において複数の領域、例えば領域5a〜5cを有しており、それぞれ表面性状が異なり、紙幣3bとの間で異なる摩擦力を発生させるように構成されている。
【0015】
第1の実施の形態においては、説明の都合上、分離ローラ5は、3種類の摩擦係数を有する領域を有していることにする。例えば、領域5aを摩擦係数μ=μ1の表面を有する領域とすると、領域5bは、領域5aよりも大きな摩擦係数μ=μ2(>μ1)の表面を有する領域、領域5cは、領域5bよりも大きな摩擦係数μ=μ3(>μ2)の表面を有する領域とする。このとき、領域5aは、表面の摩擦係数が大きい紙幣3に対して適した摩擦係数「大」用の領域、領域5bは、表面の摩擦係数が中程度の紙幣3に対して適した摩擦係数「中」用の領域、領域5cは、表面の摩擦係数が小さい紙幣3に対して適した摩擦係数「小」用の領域ということになる。
【0016】
また、分離ローラ5は、分離ローラ5と紙幣3bとの接触部を切り換える図示せぬ切換手段に接続されており、制御部5からの信号に応じて、分離ローラ5を回転させて、紙幣3bに接する領域5a〜5cを変更することにより、紙幣3bとの間に発生する摩擦力を変更可能である。設定手段としては、回転角を制御部50により制御されたモータなどを用いることができる。
【0017】
厚みセンサ12は、固定ローラ11と可動ローラ10とを有し、収納部9から繰り出される紙幣を介して互いに対向するように配置される。固定ローラ11は、軸11aに対し回転可能に設けられ、収納部9から繰り出された紙幣が搬送されることにより回転するローラである。軸11aは、紙葉類繰出装置1を収納している図示せぬ筐体などに対し固定されている。
【0018】
可動ローラ10は、軸10aの一端に回転可能に設けられ、収納部9から繰り出された紙幣が搬送されることにより回転するローラである。また、可動ローラ10は、収納部9から繰り出された紙幣が固定ローラ11との間に搬送されると、紙幣の厚みに応じて、図1の上方に移動する。軸10aは、図示せぬ支点で支持されており、可動ローラ10が上方に移動すると、軸10aの他端は下方に移動する。ここで、軸10aの一端と支点との距離と、他端と支点との距離との比を調整し、他端の移動距離を図示せぬ計測装置で計測することにより、制御部50は、可動ローラ10の移動距離を検出する。さらに制御部50は、検出された移動距離から、繰り出された紙幣が複数であるか否かを判別する。なお、可動ローラ10の厚み検出方法は上述の方法に限らず、例えば、軸10a全体が略水平に上方へ移動する移動量を、光学センサ等で検出させるようにしても良い。
【0019】
摩擦検知センサ27は、回転検知ローラ15、エンコーダ17、圧力ローラ23、圧力印加部25を有している。回転検知ローラ15は、軸16に対し軟固定されている。すなわち、回転検知ローラ15は、軸16の周りに正逆回転可能であるとともに、軸16との間に、回転に対し逆向きの力を印加する回転制御部材(図示せず)を備えている。回転制御部材としては、例えばトーションスプリング、板バネなどを利用することができる。回転検知ローラ15は、圧力ローラ23との間に搬送される紙幣3が通過する際、紙幣3の表面の摩擦状況に応じた微小角度回転する。紙幣3表面の摩擦状況とは、紙幣3が他の物質との間に摩擦力を発生させる要因となる、表面の凹凸や紙質などの状況をいう。
【0020】
エンコーダ17は、回転検知ローラ15の回転に応じた信号を出力する装置である。エンコーダ17は、回転検知ローラ15とともに回転する円盤形状の部材を有している。円盤形状の部材の外周部には、所定角度ごとにスリット19が設けられている。エンコーダ17は、図示せぬ検出部によりスリット19の移動により生じる光量変化を検出し、制御部50は、検出された光量変化に応じて回転検知ローラ15の回転角を算出する。
【0021】
圧力ローラ23は、図示せぬ駆動手段により軸23とともに回転可能なローラである。圧力ローラ23は、制御部50により制御されて矢印31の方向に回転し、紙幣3aを搬送する。圧力印加部25は、例えばコイルバネの復元力などを用いて、圧力ローラ23に回転検知ローラ15に向かう所定の圧力を印加する。よって、圧力ローラ23は、図1の矢印29のように、紙幣3に垂直な方向に所定の圧力を印加する。
【0022】
摩擦検知センサ27においては、紙幣3は所定の圧力を印加された状態で回転検知ローラ15との間に摩擦力を発生するようになっている。回転検知ローラ15は、圧力ローラ23との間に搬送される紙幣3a表面の摩擦状況に応じて微小回転し、エンコーダ17が回転検知ローラ15の回転角に応じた信号を出力する。制御部50は、エンコーダ17の出力に応じて回転検知ローラ15の回転角を検知することにより、紙幣3表面の摩擦状況を検出する。
【0023】
紙幣搬送路40は、収納部9の開口部4から厚みセンサ12及び摩擦検知センサ27を経て紙幣3を搬送する経路である。紙幣搬送路40は、図示せぬ複数のベルト及びプーリを有し、制御部50の制御によりプーリを駆動してベルトを動かすことにより紙幣3を搬送する。
【0024】
以下、図3、図4を参照しながら、第1の実施の形態による紙葉類繰出装置1の動作について説明する。図3は、第1の実施の形態による紙葉類繰出装置1の動作を説明するフローチャート、図4は、第1の実施の形態による摩擦検知センサ27の動作を説明するフローチャートである。
【0025】
図3に示すように、まず、制御部50は、ピックアップローラ7を駆動する不図示の駆動部を制御して、紙幣3aを開口部4側に搬送するように回転させ、紙幣を繰り出す(S101)。このとき、分離ローラ5は、紙幣3bに例えば領域5bを接触させる位置に設定され、紙幣3bとの間に所定の摩擦力を発生させる。厚みセンサ12は、紙幣が開口部4から繰り出され、可動ローラ10と固定ローラ11との間に紙幣が繰り出されてくると、可動ローラ10の移動量を検出することにより、紙幣の厚みを検知する。制御部50は、検出した厚みから、紙幣が2枚以上重なって繰り出されるダブルフィードとなっていないか判別する(S102)。なお、このとき、紙幣3aの搬送方向を前とした後端は、ピックアップローラ7aより後ろ側(収納部9側)にあるように搬送速度、ピックアップローラ7及び厚み検知センサ12の位置等を設定しておくようにする。
【0026】
ダブルフィードが検出されると(S102:YES)、制御部50は、ピックアップローラ7を逆回転し、紙幣を収納部9内部へ取り込む(S103)。制御部50は、分離ローラ5の摩擦係数が最大の領域5aが紙幣3bに接触する位置になっているか否かを判別し、摩擦係数が最大となっていれば(S104:YES)、エラーを出力し休止状態とする(S106)。分離ローラ5の摩擦係数が最大でなければ、制御部50は、分離ローラ50を所定角度回転させ、摩擦係数の一つ高い領域(5cであれば5b、5bであれば5a)が紙幣3bに接触するように設定しなおし(S105)、S101に戻る。
【0027】
S102で、ダブルフィードが検出されない場合には(S102:No)、紙幣3aは、紙幣搬送路40により矢印14の方向に搬送され、摩擦検知センサ27は、紙幣3aの摩擦状況を判断する(S107)。摩擦状況の判断については、図4を参照しながら説明する。
【0028】
図4に示すように、紙幣3が摩擦検知センサ27を通ると(S151)、制御部50は、エンコーダ17から出力される信号により回転角を算出する。(S152)。ところで、制御部50は、紙幣3の摩擦状況に応じて摩擦検知センサ27において検出される回転角について、予め例えば閾値θ1、θ2を決めておく。すなわち、回転角がθ1以下の場合には(S153:YES)、紙幣3表面の摩擦係数を「小」の範囲に分類し(S154)、回転角がθ1より大きく、θ2以下の場合には(S155:YES)、摩擦係数を「中」の範囲に分類する(S156)。また、回転角がθ2より大きい場合には(S155:NO)、摩擦係数を「大」の範囲に分類する。
【0029】
図3の処理に戻って、制御部50は、摩擦検知センサ27により検出された、紙幣3表面の摩擦係数が「大」であるか否か判別する(S108)。紙幣3b表面の摩擦係数が「大」である場合には(S108:YES)、分離ローラ5を回転させて、対応する領域、すなわち第1の実施の形態においては領域5aが紙幣3bに接触するように設定する(S109)。紙幣3表面の摩擦係数が「大」でない場合には(S108:NO)、摩擦係数が「中」であるか否かを判別する(S110)。
【0030】
紙幣3表面の摩擦係数が「中」である場合には(S110:YES)、分離ローラ5を回転させて、対応する領域、すなわち第1の実施の形態においては領域5bが紙幣3bに接触するように設定する(S111)。紙幣3表面の摩擦係数が「中」でない場合には(S110:NO)、分離ローラ5を回転させて、摩擦係数が「小」用の領域5cが紙幣3bに接触するように設定する。以上のように紙幣3aの表面の摩擦状況にあった分離ローラ5の設定とした後、S101に戻ってピックアップローラ7を駆動して次の繰り出し対象の紙幣3aを繰り出す処理を繰り返す。
【0031】
以上詳細に説明したように、本実施の形態による紙葉類繰出装置1によれば、まず、ピックアップローラ7により繰り出された紙幣について、収納部9の開口部4付近で厚みセンサ12が、ダブルフィードでないか検出する。ダブルフィードが検出されると、制御部50は、ピックアップローラ7を逆回転させて、紙幣を再び収納部9に取り込み、分離ローラ5の摩擦係数を一段階高いほうに変更し、再び紙幣3aを繰り出す。紙幣の繰り出しを、ダブルフィードが検出されないか、分離ローラ5の摩擦係数がそれ以上大きくできない状態になるまで繰り返す。
【0032】
厚みセンサ12でダブルフィードが検出されず、紙幣3aが、摩擦検知センサ27まで搬送されると、制御部50は、エンコーダ17の出力に基づき、摩擦検知センサ27を通過する紙幣3によって回転する回転検知ローラ15の回転角を算出する。制御部50は、算出された回転角に応じて、分離ローラ5の紙幣3bに接触させる領域の設定を更新する。制御部は、分離ローラ5の設定更新後、ピックアップローラ7を駆動して次の紙幣を繰り出す。
【0033】
なお、収納部9は本発明の収納部の一例であり、ピックアップローラ7は本発明の搬送部の一例である。分離ローラ5は分離部の一例であり、摩擦検知センサ27は摩擦検知部の一例であり、厚み検知センサ12は厚み検知部の一例である。軸16は、第1の軸の一例であり、回転検知ローラ15は、第1のローラの一例であり、エンコーダ17は回転検知部の一例である。軸23は、第2の軸の一例であり、圧力ローラ23は、第2のローラの一例であり、圧力印加部25は、第1の押圧部の一例である。また、軸11aは、第3の軸の一例であり、固定ローラ11は第3のローラの一例であり、可動ローラ10は第4のローラの一例である。
【0034】
以上のように、第1の実施の形態による紙葉類繰出装置1においては、分離ローラ5の紙幣に接する部分として、摩擦係数の異なる複数の領域を設けた。よって、固定式の樹脂部材などを用いて紙幣を分離する装置等では、ある特定範囲の表面性状の紙幣の分離にしか適していなかったが、その表面性状の相違の範囲を超えるような紙幣等の紙葉類を分離して、一枚ずつ繰出すことができる。
【0035】
また、厚み検知センサ12によるダブルフィード検知、及びダブルフィード時の紙幣3の収納部9への取り込み、並びに、分離ローラ5の摩擦係数の変更により、2枚目の紙幣へのブレーキを調整できる。これにより、紙幣3を適切な接触圧で繰り出すことができ、ダブルフィードを防止することができる。また、紙幣の表面状況に合わせて、紙葉類繰出装置を調整することができる。よって、紙幣等の紙葉類起因のエラー率、休止率を、今まで以上に低減することが可能となる。顧客要求によっては、分離ローラ5の調整により出金する紙幣表面の摩擦状況を調整することもできる。例えば、消耗して剛性が低下し、クタクタとなった紙幣等の紙葉類を放出しないように設定するなど、顧客の要望に合わせた設定が可能となる。
【0036】
摩擦検知センサ27により、接触式で紙幣3表面の摩擦状況を検知することができる。また、検知した摩擦状況に応じて、分離ローラの摩擦係数を変更することができるので、その後に繰出す紙幣等の紙葉類の状態を推測し、調整を行うことが可能である。よって、さらにダブルフィードを防止することが可能となる。
【0037】
(第2の実施の形態)
次に、図5を参照しながら、第2の実施の形態による紙葉類繰出装置について説明する。第2の実施の形態による紙葉類繰出装置は、分離ローラ5に代えて、押圧式パッド60を備えている。図5は、第2の実施の形態による押圧式パッド60の構成を示す図である。図5に示すように、押圧式パッド60は、支持部材62、パッド64及びスプリング66を有している。支持部材62は、収納部9の例えば筐体9aに一端が固定されている。パッド64は、支持部材62に一端部が固定されているとともに、他端部には、弾性力をパッド64に印加するスプリング66が接続されている。支持部材62及びパッド64は、例えば樹脂製である。
【0038】
スプリング66は、制御部50の制御によって矢印68のように、例えば不図示の可動部を介して図5における上端を例えば多段階に移動することにより、パッド64に印加する押圧力を段階的に変化させることが可能である。パッド64に印加する押圧力を変化させることにより、パッド64と紙幣3bとの間に発生する摩擦力を変化させる。押圧式パッド60は、紙幣3bとの間に摩擦力を発生させるパッド64を紙幣3bに接触させるとともにスプリング66により押圧力を与えることにより、紙幣3aと紙幣3bとを分離する。
【0039】
このとき、第1の実施の形態による紙葉類繰出装置1と同様、厚み検知センサ12でダブルフィードを検知すると、例えば、スプリング66の図5における上端を下方に移動させることにより弾性力をより多くし、摩擦力を増加させるように設定する。そして、紙幣3aを一度収納部9に取り込んでから繰り出しをやり直す。また、摩擦検知センサ27の検出結果に応じてスプリング66の上端の位置を変更することにより、パッド64に印加する弾性力を変化させる。
【0040】
なお、パッド64は、本発明の摩擦力発生部の一例であり、スプリング66は、本発明の第2の押圧部の一例である。
以上のように、第2の実施の形態による押圧式パッド60を、第1の実施の形態による分離ローラ5に代えて備えることにより、第1の実施の形態による紙葉類繰出装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を採ることができる。例えば、分離ローラ、押圧式パッドの構成は上記に限定されない。例えば、分離ローラの領域の数などは、上記に限定されない。また、上記実施の形態においては、3つの領域が所定の摩擦係数の表面を有する部分としたが、摩擦力は段階的でなく、連続して変更するようにしてもよい。
【0042】
厚み検知センサ、摩擦検知センサの構成は上記に限定されず、公知の異なる構成または方式のものでも適用が可能である。紙幣搬送の方向についても、上記に限定されない。また、摩擦検知センサを設ける位置も、上記に限定されない。例えば、収納部9に収納する前に複数の紙幣について摩擦検知を行い、その結果の平均値に基づいて分離ローラを設定するような方法を採用することも、本発明の範囲である。
【符号の説明】
【0043】
1 紙葉類繰出装置
3a、3b 紙幣
5 分離ローラ
7a、7b ピックアップローラ
9 収納部
9a 筐体
10 可動ローラ
10a、11a、16、23 軸
11 固定ローラ
12 厚み検出センサ
15 回転検知ローラ
17 エンコーダ
19 スリット
21 押圧ローラ
25 圧力印加部
27 摩擦検知センサ
40 紙幣搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を収納し、前記紙葉類を繰り出す収納部と、
前記収納部内の繰り出し対象の第1の紙葉類を繰り出す繰り出し部と、
前記収納部内に設けられ、前記第1の紙葉類と積層された状態で収納されている第2の紙葉類との間に生じさせる摩擦力により、前記第1の紙葉類から前記第2の紙葉類を分離させる分離部と、
前記収納部から前記繰り出し部により繰り出された紙葉類の状況を検知する状況検知部と、
を有し、
前記分離部は、前記状況検知部が検知した紙葉類の状況に応じて前記摩擦力を変化させることを特徴とする紙葉類繰出装置。
【請求項2】
前記状況検知部は、前記収納部から繰り出された前記第1の紙葉類の表面の摩擦状況を検知する摩擦検知部を有し、
前記分離部は、前記摩擦検知部が検知した摩擦状況に応じて前記摩擦力を変化させることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項3】
前記状況検知部は、前記収納部の外部に配置され、前記収納部から繰り出された紙葉類の厚みを検出することにより、前記収納部が同時に複数枚の紙葉類を繰り出したか否かを判別する厚み検知部、
を有し、
前記厚み検知部が、前記繰り出された紙葉類が複数であると検出すると、
前記繰り出し部は、前記繰り出された紙葉類に繰り出しと逆向きの搬送力を与えることにより、前記紙葉類を前記収納部内に取り込み、
前記分離部は、発生させる摩擦力の強さを変化させ、
前記分離部により摩擦力の強さを変化させた後、前記第1の紙葉類の繰り出しを行う、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項4】
前記摩擦検知部は、
第1の軸と、
第1の軸に回転可能に設けられた第1のローラと、
前記第1の軸と前記第1のローラとの間に設けられ、前記第1のローラの回転を制限する回転制限部と、
前記第1のローラの回転角を検知する回転検知部と、
第2の軸と、
第2の軸に設けられた第2のローラと、
前記第2のローラを前記第2の軸を軸として回転させる駆動部と、
前記第2のローラに、前記第1の紙葉類に対し前記第1のローラに向かう方向に一定の圧力を印加する第1の押圧部と、
を有し、
前記摩擦検知部は、前記第2のローラにより前記第1のローラと前記第2のローラとの間に前記紙葉類が搬送されることにより生ずる前記第1のローラの回転角に応じて前記摩擦状況を検知する
ことを特徴とする請求項2に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項5】
前記分離部は、円柱形状であり、側面に、互いに異なる摩擦係数を有する複数の領域を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項6】
前記分離部は、
前記第2の紙葉類との間に摩擦力を発生させる摩擦力発生部と、
前記摩擦力発生部に、複数種類の強さの押圧力を切り換え可能に印加する第2の押圧部と、
を有し、
前記分離部は、前記状況検知部の出力に応じて前記押圧力を切り換えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項7】
前記厚み検知部は、
第3の軸と、
前記第3の軸に回転可能に設けられた第3のローラと、
前記第3のローラとの間に前記紙葉類が挿入されると、前記紙葉類の厚みに応じて前記第3のローラから離れる方向に可動する第4のローラと、
前記第4のローラが移動した距離を検出する移動検出部と、
を有し、
前記移動検出部が検出する前記距離に基づき前記収納部から同時に複数枚の紙葉類が繰り出されたか否かを検出することを特徴とする請求項3に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項8】
第1の紙葉類に、紙葉類を収納する収納部から繰り出す繰出工程と、
前記収納部内に設けられ、前記収納部内からの繰り出し対象の第1の紙葉類と積層された状態で収納されている第2の紙葉類との間に摩擦力を発生させることにより、前記第1の紙葉類から前記第2の紙葉類を分離させる分離工程と、
前記収納部から繰り出された紙葉類の状況を検知する状況検知工程と、
前記状況検知工程において検知された紙葉類の状況に応じて前記分離工程において前記第2の紙葉類との間に発生させる摩擦力を変化させる摩擦変化工程と、
を有することを特徴とする紙葉類繰出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−140191(P2012−140191A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292267(P2010−292267)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】