説明

素子切換装置、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法

【課題】 複数の反射光学素子のうちの1つを光路中に位置決めする装置であって、各反射光学素子を容易に交換することのできる素子切換装置。
【解決手段】 複数の反射光学素子(31a,31b,31c,31d)のうちの1つを光路中に位置決めする素子切換装置(30)は、光路側とは反対の側から複数の反射光学素子を着脱自在に取り付け可能な本体部(30a)と、本体部に取り付けられた複数の反射光学素子から選択された1つの反射光学素子を光路中に位置決めするために本体部を駆動する駆動部(30c)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子切換装置、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のデバイスをリソグラフィー工程で製造するための露光装置の照明光学系において光路に対して反射光学素子を切り換える装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な露光装置においては、光源から射出された光束が、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズを介して、多数の光源からなる実質的な面光源としての二次光源(一般には照明瞳における所定の光強度分布)を形成する。以下、照明瞳での光強度分布を、「瞳強度分布」という。また、照明瞳とは、照明瞳と被照射面(露光装置の場合にはマスクまたはウェハ)との間の光学系の作用によって、被照射面が照明瞳のフーリエ変換面となるような位置として定義される。
【0003】
二次光源からの光束は、コンデンサーレンズにより集光された後、所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明する。マスクを透過した光は投影光学系を介してウェハ上に結像し、ウェハ上にはマスクパターンが投影露光(転写)される。マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンをウェハ上に正確に転写するにはウェハ上において均一な照度分布を得ることが不可欠である。
【0004】
従来、瞳強度分布の形状および大きさについて多様性に富んだ照明条件を実現するために、照明瞳に光強度分布を固定的に形成する回折光学素子と、照明瞳に光強度分布を可変的に形成する空間光変調器とを照明光路に対して切り換え可能に設けた照明光学系が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この照明光学系では、複数の透過型の回折光学素子から選択された回折光学素子を光路中に設定することにより瞳強度分布を離散的に変更するとともに、空間光変調器の作用により瞳強度分布を自在に且つ迅速に変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−93175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された照明光学系では、照明光路に対する回折光学素子と空間光変調器との切り換えに際して、ケーブルなどを含んで比較的複雑な機構を有する空間光変調器を移動させる必要がある。このため、回折光学素子と空間光変調器との切り換えに伴う操作および制御が複雑であり、ひいては照明光学系の構成が複雑化する。一方、空間光変調器を光路中に固定的に配置する構成を採用すると、回折光学素子または空間光変調器へ選択的に照明光を導くための導光光学系が複雑化(または大型化)し、ひいては照明光学系の構成が複雑化する。
【0007】
そこで、反射型の回折光学素子と反射型の空間光変調器とを光路中に並列的に配置する構成、さらに具体的には複数の反射型回折光学素子から光路中に選択的に位置決めされた回折光学素子および光路中に固定的に位置決めされた空間光変調器のうちの少なくとも一方へ照明光を導く構成が考えられる。この構成では、複数の反射型回折光学素子(一般には複数の反射光学素子)を光路に対して切り換える素子切換装置において、各反射光学素子が容易に交換可能であることが求められる。
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、複数の反射光学素子のうちの1つを光路中に位置決めする装置であって、各反射光学素子を容易に交換することのできる素子切換装置を提供することを目的とする。本発明は、例えば複数の反射型回折光学素子のうちの1つを光路中に位置決めし且つ各反射型回折光学素子が容易に交換可能な素子切換装置を用いて、反射型回折光学素子と空間光変調器との切り換えにより瞳強度分布の形状および大きさについて多様性に富んだ照明条件を実現することのできる照明光学系を提供することを目的とする。また、本発明は、多様性に富んだ照明条件を実現する照明光学系を用いて、転写すべきパターンの特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことのできる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、複数の反射光学素子のうちの少なくとも1つを光路中に位置決めする素子切換装置であって、
光路側とは反対の側から前記複数の反射光学素子を着脱自在に取り付け可能な本体部と、
前記本体部に取り付けられた前記複数の反射光学素子から選択された少なくとも1つの反射光学素子を光路中に位置決めするために前記本体部を駆動する駆動部とを備えていることを特徴とする素子切換装置を提供する。
【0010】
本発明の第2形態では、光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学系において、
第1形態の素子切換装置を備えていることを特徴とする照明光学系を提供する。
【0011】
本発明の第3形態では、所定のパターンを照明するための第2形態の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0012】
本発明の第4形態では、第3形態の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様にしたがう素子切換装置では、例えば所定の軸線廻りに回転可能な回転板のような本体部に、光路側とは反対の側から複数の反射光学素子を着脱自在に取り付ける。その結果、例えば照明光学系に適用した場合、光路の雰囲気を乱すことなく、必要に応じて各反射光学素子を別の反射光学素子と容易に交換することができる。換言すれば、本発明では、複数の反射光学素子のうちの1つを光路中に位置決めする装置であって、各反射光学素子を容易に交換することのできる素子切換装置を実現することができる。
【0014】
したがって、本発明の照明光学系では、例えば複数の反射型回折光学素子のうちの1つを光路中に位置決めし且つ各反射型回折光学素子が容易に交換可能な素子切換装置を用いて、反射型回折光学素子と空間光変調器との切り換えにより瞳強度分布の形状および大きさについて多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、本発明の露光装置では、多様性に富んだ照明条件を実現する照明光学系を用いて、転写すべきパターンの特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態の素子切換装置を含む空間光変調ユニットの内部構成を概略的に示す図である。
【図3】4つの反射型回折光学素子が素子切換装置の回転板に取り付けられている様子を示す図である。
【図4】空間光変調ユニットにおける空間光変調器の作用を説明する図である。
【図5】空間光変調器の要部の部分斜視図である。
【図6】マイクロフライアイレンズの入射面および後側焦点面に形成される4極状の光強度分布を模式的に示す図である。
【図7】傾斜可能な平行平面板が第2姿勢に設定されたときの空間光変調ユニット内の光路を示す図である。
【図8】傾斜可能な平行平面板が第3姿勢に設定されたときの空間光変調ユニット内の光路を示す図である。
【図9】本実施形態の素子切換装置の構成を概略的に示す図である。
【図10】変形例にかかる素子切換装置の構成を概略的に示す図である。
【図11】露光装置の筐体に開閉自在な扉部を設けた例を概略的に示す図である。
【図12】半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図13】液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図2は、本実施形態の素子切換装置を含む空間光変調ユニットの内部構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの転写面(露光面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの転写面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの転写面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0017】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源1から露光光(照明光)が供給される。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や、248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光は、ビーム送光部2を介して、空間光変調ユニット3に入射する。ビーム送光部2は、光源1からの入射光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ空間光変調ユニット3へ導くとともに、空間光変調ユニット3に入射する光束の位置変動および角度変動をアクティブに補正する機能を有する。
【0018】
空間光変調ユニット3は、図2に示すように、照明光路に対して切り換え可能な複数(図2では例示的に4つ)の反射型回折光学素子(以下、単に「回折光学素子」ともいう)31a,31b,31c,31dと、二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素を有する空間光変調器32とを備えている。図2では、4つの回折光学素子31a〜31dから選択された1つの回折光学素子31aが光路中に位置決めされている。照明光路中に並列的に配置された回折光学素子31aおよび空間光変調器32よりも光源側(図2中左側)の光路中には、光の入射側から順に、光軸AXに対して傾斜可能な平行平面板33、および第1偏向部材34が配置されている。回折光学素子31aおよび空間光変調器32よりもマスク側(図2中右側)の光路中には、第2偏向部材35が配置されている。
【0019】
平行平面板33および第1偏向部材34は、光源1からビーム送光部2を経て空間光変調ユニット3へ入射した光を回折光学素子31aおよび空間光変調器32のうちの少なくとも一方へ選択的に導く。以下、説明の理解を容易にするために、光源1からの光束が第1偏向部材34により2分割され、一方の光束が回折光学素子31aへ導かれ、他方の光束が空間光変調器32へ導かれるものとする。第2偏向部材35は、回折光学素子31aを経た光および空間光変調器32を経た光をリレー光学系4へ導く。空間光変調ユニット3の具体的な構成および作用については後述する。
【0020】
空間光変調ユニット3から射出された光は、リレー光学系4を介して、所定面5に入射する。リレー光学系4は、その前側焦点位置が回折光学素子31aの回折光学面(段差を有する反射面)の位置および空間光変調器32の複数のミラー要素の配列面の位置とほぼ一致し且つその後側焦点位置が所定面5の位置とほぼ一致するように設定されている。後述するように、回折光学素子31aを経た光は、その回折特性に応じた光強度分布を所定面5に固定的に形成する。空間光変調器32を経た光は、複数のミラー要素の姿勢に応じた光強度分布を所定面5に可変的に形成する。
【0021】
所定面5に光強度分布を形成した光は、リレー光学系6を介して、マイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)7に入射する。リレー光学系6は、所定面5とマイクロフライアイレンズ7の入射面とを光学的に共役に設定している。したがって、空間光変調ユニット3を経た光は、所定面5と光学的に共役な位置に配置されたマイクロフライアイレンズ7の入射面に、所定面5に形成された光強度分布と同じ外形形状の光強度分布を形成する。
【0022】
マイクロフライアイレンズ7は、たとえば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であり、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。マイクロフライアイレンズでは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、レンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
【0023】
マイクロフライアイレンズ7における単位波面分割面としての矩形状の微小屈折面は、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。なお、マイクロフライアイレンズ7として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号公報に開示されている。
【0024】
マイクロフライアイレンズ7に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、入射面に形成される光強度分布とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源(瞳強度分布)が形成される。マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に形成された二次光源からの光束は、照明開口絞り(不図示)に入射する。照明開口絞りは、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍に配置され、二次光源に対応した形状の開口部(光透過部)を有する。
【0025】
照明開口絞りは、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。照明開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。照明開口絞りは、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。なお、照明開口絞りの設置を省略することもできる。
【0026】
照明開口絞りにより制限された二次光源からの光は、コンデンサー光学系8を介して、マスクブラインド9を重畳的に照明する。こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド9には、マイクロフライアイレンズ7の矩形状の微小屈折面の形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインド9の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系10の集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系10は、マスクブラインド9の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0027】
マスクステージMS上に保持されたマスクMを透過した光束は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハステージWSを二次元的に駆動制御しながら、ひいてはウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが順次露光される。
【0028】
本実施形態の露光装置は、投影光学系PLを介した光に基づいて投影光学系PLの瞳面における瞳強度分布を計測する瞳強度分布計測部DTと、瞳強度分布計測部DTの計測結果に基づいて空間光変調ユニット3中の空間光変調器32を制御する制御部CRとを備えている。瞳強度分布計測部DTは、例えば投影光学系PLの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された撮像面を有するCCD撮像部を備え、投影光学系PLの像面の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が投影光学系PLの瞳位置に形成する瞳強度分布)をモニターする。瞳強度分布計測部DTの詳細な構成および作用については、例えば米国特許公開第2008/0030707号公報を参照することができる。
【0029】
本実施形態では、マイクロフライアイレンズ7により形成される二次光源を光源として、照明光学系の被照射面に配置されるマスクM(ひいてはウェハW)をケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系の照明瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。なお、瞳強度分布とは、照明光学系の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。
【0030】
マイクロフライアイレンズ7による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ7の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ7の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。図1の構成において、リレー光学系4,6、およびマイクロフライアイレンズ7は、空間光変調ユニット3中の回折光学素子31aを経た光束および空間光変調器32を経た光束のうちの少なくとも一方の光束に基づいてマイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。
【0031】
次に、空間光変調ユニット3の内部構成および作用を具体的に説明する。図2を参照すると、互いに異なる特性を有する4つの回折光学素子31a〜31dから選択された1つの回折光学素子31aが光路中に位置決めされ、回折光学素子31aと並列的に空間光変調器32が光路中に固定的に配置されている。4つの回折光学素子31a〜31dは、本実施形態にかかる素子切換装置30に着脱自在に取り付けられている。
【0032】
4つの回折光学素子31a〜31dは、図2および図3に示すように、光軸AXと平行なXY平面の法線方向(Z方向)に延びる軸線30b廻りに回転可能で且つXY平面に沿って延びるプレートの形態を有する回転板(ターレット)30aに、軸線30bを中心とする円の周方向に沿って取り付けられている。回転板30aは、制御部CRからの指令にしたがって作動する駆動部30cの作用により軸線30b廻りに回転駆動され、4つの回折光学素子31a〜31dから選択された所要の回折光学素子を光路中に位置決めする。素子切換装置30のさらに詳細な構成および作用については後述する。
【0033】
光路中に位置決めされた回折光学素子は、その回折光学面がXY平面と平行になるように(ひいては光軸AXと平行になるように)配置される。平行平面板33は、光軸AXを通ってX方向に延びる軸線(不図示)廻りに回転可能に構成されている。ハービングとしての平行平面板33は、制御部CRからの指令にしたがって、図2において実線33aで示す第1姿勢、破線33bで示す第2姿勢、または破線33cで示す第3姿勢をとる。
【0034】
実線33aで示す第1姿勢に設定された平行平面板33では、その入射面および射出面が光軸AXと直交し、ひいてはXZ平面と平行になる。破線33bで示す第2姿勢は、平行平面板33を第1姿勢から図2中反時計廻りに所定角度だけ回転させることにより得られる。破線33cで示す第3姿勢は、第1姿勢を中心として第2姿勢とは対称的な姿勢であって、平行平面板33を第1姿勢から図2中時計廻りに所定角度だけ回転させることにより得られる。なお、必要に応じて、平行平面板33が第2姿勢と第3姿勢との間の任意の姿勢をとるように制御することもできる。
【0035】
第1偏向部材34および第2偏向部材35は、例えばX方向に延びる三角柱状のプリズムミラーの形態を有する。第1偏向部材34は、光源側に向けた一対の反射面34aおよび34bを有し、反射面34aと34bとの稜線は光軸AXを通ってX方向に延びている。第2偏向部材35は、マスク側に向けた一対の反射面35aおよび35bを有し、反射面35aと35bとの稜線は光軸AXを通ってX方向に延びている。なお、例えば金属のような非光学材料や石英のような光学材料により形成された三角柱状の部材の側面に、アルミニウムや銀などからなる反射膜を設けることにより、偏向部材34および35を形成することもできる。あるいは、偏向部材34および35を、それぞれミラーとして形成することもできる。
【0036】
平行平面板33が実線33aで示す第1姿勢に設定されている場合、光軸AXに沿って空間光変調ユニット3に入射した平行光束は、平行平面板33の入射面および射出面で屈折作用を受けることなくそのまま通過した後、第1偏向部材34に入射する。第1偏向部材34の第1反射面34aによって反射された光は回折光学素子31aに入射し、第2反射面34bによって反射された光は空間光変調器32に入射する。回折光学素子31aの回折光学面により回折(変調)された光は、第2偏向部材35の第1反射面35aにより反射され、リレー光学系4へ導かれる。空間光変調器32により変調された光は、第2偏向部材35の第2反射面35bにより反射され、リレー光学系4へ導かれる。
【0037】
以下、説明を単純化するために、照明光路中に選択的に位置決めされた回折光学素子31aの回折光学面と照明光路中に固定的に配置された空間光変調器32の複数のミラー要素の配列面とは、光軸AXを含んでXY平面に平行な面に関して対称に配置されているものとする。同様に、第1偏向部材34の第1反射面34aと第2反射面34b、および第2偏向部材35の第1反射面35aと第2反射面35bとは、光軸AXを含んでXY平面に平行な面に関して対称に配置されているものとする。
【0038】
空間光変調器32は、図4に示すように、XY平面に沿って二次元的に配列された複数のミラー要素32aと、複数のミラー要素32aを保持する基盤32bと、基盤32bに接続されたケーブル(不図示)を介して複数のミラー要素32aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部32cとを備えている。空間光変調器32は、図5に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素32aを備え、入射した光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を可変的に付与して射出する。説明および図示を簡単にするために、図4および図5では空間光変調器32が4×4=16個のミラー要素32aを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素32aを備えている。
【0039】
図4を参照すると、光軸AXと平行な方向に沿って第1偏向部材34(図4では不図示)の第2反射面34bに入射して空間光変調器32に向かって反射された光線群のうち、光線L1は複数のミラー要素32aのうちのミラー要素SEaに、光線L2はミラー要素SEaとは異なるミラー要素SEbにそれぞれ入射する。同様に、光線L3はミラー要素SEa,SEbとは異なるミラー要素SEcに、光線L4はミラー要素SEa〜SEcとは異なるミラー要素SEdにそれぞれ入射する。ミラー要素SEa〜SEdは、その位置に応じて設定された空間的な変調を光L1〜L4に与える。
【0040】
空間光変調器32では、すべてのミラー要素32aの反射面が1つの平面(XY平面)に沿って設定された基準状態において、光軸AXと平行な方向に沿って第2反射面34bに入射した光線が、空間光変調器32で反射された後に、第2偏向部材35(図4では不図示)の第2反射面35bにより光軸AXとほぼ平行な方向に向かって反射されるように構成されている。また、空間光変調器32の複数のミラー要素32aの配列面は、上述したように、リレー光学系4の前側焦点位置またはその近傍に位置決めされている。
【0041】
したがって、空間光変調器32の複数のミラー要素SEa〜SEdによって反射されて所定の角度分布が与えられた光は、所定面5に所定の光強度分布SP1〜SP4を形成し、ひいてはマイクロフライアイレンズ7の入射面に光強度分布SP1〜SP4に対応した光強度分布を形成する。すなわち、リレー光学系4は、空間光変調器32の複数のミラー要素SEa〜SEdが射出光に与える角度を、空間光変調器32の遠視野領域(フラウンホーファー回折領域)である所定面5上での位置に変換する。
【0042】
一方、回折光学素子31aの回折光学面によって反射された光は、その回折特性に応じた光強度分布を、所定面5に、ひいてはマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する。こうして、マイクロフライアイレンズ7が形成する二次光源の光強度分布(瞳強度分布)は、回折光学素子31aおよびリレー光学系4,6がマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する第1の光強度分布と、空間光変調器32およびリレー光学系4,6がマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する第2の光強度分布との合成分布に対応した分布となる。ここで、第1の光強度分布と第2の光強度分布とは、互いに全く異なるものであっても良いし、互いに一部または全部が重複するものであっても良い。
【0043】
空間光変調器32は、図5に示すように、平面形状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素32aを含む可動マルチミラーである。各ミラー要素32aは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御部CRからの指令にしたがって作動する駆動部32cの作用により独立に制御される。各ミラー要素32aは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向(例えばX方向およびY方向)を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的或いは離散的に回転することができる。すなわち、各ミラー要素32aの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
【0044】
なお、各ミラー要素32aの反射面を離散的に回転させる場合、回転角を複数の状態(例えば、・・・、−2.5度、−2.0度、・・・0度、+0.5度・・・+2.5度、・・・)で切り換え制御するのが良い。図5には外形が正方形状のミラー要素32aを示しているが、ミラー要素32aの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素32aの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)とすることができる。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素32aの間隔を必要最小限に抑えることができる。
【0045】
本実施形態では、空間光変調器32として、たとえば二次元的に配列された複数のミラー要素32aの向きを連続的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いている。このような空間光変調器として、たとえば特表平10−503300号公報およびこれに対応する欧州特許公開第779530号公報、特開2004−78136号公報およびこれに対応する米国特許第6,900,915号公報、特表2006−524349号公報およびこれに対応する米国特許第7,095,546号公報、並びに特開2006−113437号公報に開示される空間光変調器を用いることができる。なお、二次元的に配列された複数のミラー要素32aの向きを離散的に複数の段階を持つように制御してもよい。
【0046】
空間光変調器32では、制御部CRからの制御信号に応じて作動する駆動部32cの作用により、複数のミラー要素32aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素32aがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器32の複数のミラー要素32aによりそれぞれ所定の角度で反射された光は、図6に示すように、マイクロフライアイレンズ7の入射面に、例えば光軸AXを中心としてX方向に間隔を隔てた2つの円弧形状の光強度分布20aおよび20bを形成する。
【0047】
一方、制御部CRからの制御信号に応じて作動する素子切換装置30(ひいては回転板30a)により照明光路中に選択的に位置決めされた回折光学素子31aの回折光学面で反射された光は、図6に示すように、マイクロフライアイレンズ7の入射面に、例えば光軸AXを中心としてZ方向に間隔を隔てた2つの円弧形状の光強度分布20cおよび20dを形成する。
【0048】
こうして、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、4極状の光強度分布20a〜20dに対応する4極状の光強度分布21a〜21dが形成される。さらに、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍の照明瞳と光学的に共役な別の照明瞳の位置、すなわち結像光学系10の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置(開口絞りASが配置されている位置)にも、4極状の光強度分布20a〜20dに対応する4極状の光強度分布が形成される。
【0049】
図7に示すように、平行平面板33を第1姿勢から第2姿勢(図2において破線33bで示す姿勢に対応)へ切り換えると、光軸AXに沿って空間光変調ユニット3に入射した平行光束は、平行平面板33の入射面および射出面でそれぞれ屈折作用を受けて、第1偏向部材34の第2反射面34bへ導かれる。第2反射面34bによって反射された光は、空間光変調器32により変調され、第2偏向部材35の第2反射面35bにより反射された後、リレー光学系4へ導かれる。
【0050】
すなわち、傾斜可能な平行平面板33が第2姿勢に設定されると、平行平面板33と第1偏向部材34との協働作用により、光源1からの光は空間光変調器32へ導かれ、回折光学素子31aへは導かれない。こうして、空間光変調器32を経た光は、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に、例えば4極状の光強度分布20a〜20dに対応する4極状の光強度分布21a〜21dを形成する。
【0051】
図8に示すように、平行平面板33を第1姿勢から第3姿勢(図2において破線33cで示す姿勢に対応)へ切り換えると、光軸AXに沿って空間光変調ユニット3に入射した平行光束は、平行平面板33の入射面および射出面でそれぞれ屈折作用を受けて、第1偏向部材34の第1反射面34aへ導かれる。第1反射面34aによって反射された光は、回折光学素子31aにより回折され、第2偏向部材35の第1反射面35aにより反射された後、リレー光学系4へ導かれる。
【0052】
すなわち、傾斜可能な平行平面板33が第3姿勢に設定されると、平行平面板33と第1偏向部材34との協働作用により、光源1からの光は回折光学素子31aへ導かれ、空間光変調器32へは導かれない。こうして、回折光学素子31aを経た光は、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍の照明瞳に、例えば4極状の光強度分布20a〜20dに対応する4極状の光強度分布21a〜21dを形成する。
【0053】
本実施形態では、光源1としてArFエキシマレーザ光源またはKrFエキシマレーザ光源を用いているので、照明光学系(2〜10)の光路は、図9に示すように、例えば金属製の筐体(ケーシング)11で密封され、露光光の吸収率が低い気体であるヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。図示を省略したが、投影光学系PLの内部も気密状態を保つように構成され、投影光学系PLの内部の気体はヘリウムガスや窒素などの不活性ガスで置換されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。さらに、マスクMおよびマスクステージMSなどを密封包囲するケーシング(不図示)の内部に窒素やヘリウムガスなどの不活性ガスが充填されているか、あるいはほぼ真空状態に保持されている。
【0054】
露光装置(2〜WS)の筐体11には、素子切換装置30により光路中に位置決めされた回折光学素子31aの反射面を保護するカバー部材12が設けられている。換言すれば、筐体11において、第1偏向部材34の第1反射面34aにより反射されて回折光学素子31aに向かう光、および回折光学素子31aにより反射されて第2偏向部材35の第1反射面35aに向かう光が通過する領域にカバー部材12が設けられている。カバー部材12は、例えば蛍石(CaF2)または石英(SiO2)により形成されて平行平面板状の形態を有する。ただし、石英によりカバー部材12を形成するとホログラム化の恐れがあるため、光路のケミカルクリーンを保つために蛍石を用いることが好ましい。
【0055】
本実施形態にかかる素子切換装置30は、4つの回折光学素子31a〜31dを着脱自在に取り付け可能な回転板30aと、回転板30aを軸線30b廻りに回転駆動する駆動部30cとを備えている。一例として、駆動部30cは、例えば制御部CRからの指令にしたがって作動するモーター(不図示)を含み、このモーターの出力軸が回転軸線30bを構成している。駆動部30cは、回転板30aの光路側とは反対の側に配置されている。素子切換装置30では、光路側とは反対の側から各回折光学素子31a〜31dを回転板30aに着脱自在に取り付けることができるように、所要の断面形態を有する4つの開口部30aaが回転板30aに形成されている。
【0056】
各回折光学素子31a〜31dは、光路側とは反対の側から回転板30aの開口部30aaに挿入され、開口部30aaの最も光路側に設けられた当接部30abに各回折光学素子31a〜31dの周縁部が当接した状態で回転板30aに取り付けられる。また、素子切換装置30は、光路側とは反対の側から回転板30aの各開口部30aaに着脱自在に取り付けられた各回折光学素子31a〜31dを光路側とは反対の側から押さえて固定する蓋部材30dを備えている。
【0057】
蓋部材30dの作用により、各回折光学素子31a〜31dを所要の姿勢で確実に保持することができる。ただし、各回折光学素子31a〜31dの各開口部30aaに対する取付け態様によっては、蓋部材30dの設置を省略することもできる。このように、本実施形態では、回転板30aは、光路側とは反対の側から4つの回折光学素子31a〜31dを着脱自在に取り付け可能な本体部を構成している。駆動部30cは、回転板30aに取り付けられた4つの回折光学素子31a〜31dから選択された1つの回折光学素子を光路中に位置決めするために回転板30aを回転駆動する。
【0058】
本実施形態の素子切換装置30では、反射光学素子である回折光学素子31a〜31dを光路側とは反対の側から回転板30aに着脱自在に取り付けることができるので、照明光学系(2〜10)の光路の雰囲気を乱すことなく、必要に応じて回折光学素子31a〜31dを別の回折光学素子と容易に交換することができる。換言すれば、本実施形態では、複数の反射型回折光学素子31a〜31dのうちの1つを光路中に位置決めする装置であって、各回折光学素子31a〜31dを容易に交換することのできる素子切換装置30を実現することができる。
【0059】
したがって、本実施形態の照明光学系(2〜10)では、複数の反射型回折光学素子31a〜31dのうちの1つを光路中に位置決めし且つ各反射型回折光学素子31a〜31dが容易に交換可能な素子切換装置30を用いて、反射型回折光学素子31a(31b〜31d)と空間光変調器32との切り換えにより瞳強度分布の形状および大きさについて多様性に富んだ照明条件を実現することができる。また、本実施形態の露光装置(2〜WS)では、多様性に富んだ照明条件を実現する照明光学系(2〜10)を用いて、転写すべきマスクMのパターンの特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができる。
【0060】
特に、本実施形態の照明光学系(2〜10)では、反射型の回折光学素子31a(31b〜31d)と反射型の空間光変調器32とが照明光路中に並列的に配置される。したがって、光学系を複雑化または大型化しなくても、光軸AXに対して傾斜可能な平行平面板33の姿勢を変化させるという単純な操作および制御により、回折光学素子31aおよび空間光変調器32のうちの少なくとも一方へ選択的に照明光を導くことができる。そして、交換可能な複数の回折光学素子31a〜31dにより瞳強度分布を離散的に変更するとともに、空間光変調器32により瞳強度分布を自在に且つ迅速に変化させることができる。
【0061】
また、本実施形態の照明光学系(2〜10)では、回折光学素子31a(31b〜31d)と空間光変調器32とを同時に使用する場合、空間光変調器を単体で使用する場合に比して、ミラー要素SEの反射面に入射する光の単位面積当たりのエネルギーが小さく(例えば1/2に)抑えられる。その結果、空間光変調器32では、同時使用の期間に応じてミラー要素SEの反射率が低下しにくく、所要の機能を所要期間に亘って安定的に発揮することができる。
【0062】
なお、上述の実施形態では、素子切換装置30により光路中に位置決めされた回折光学素子31aの反射面を保護するカバー部材12が、露光装置の筐体11に設けられている。しかしながら、これに限定されることなく、図10に示すように、筐体11へのカバー部材12の設置を省略し、回転板(本体部)30aに取り付けられた各回折光学素子31a〜31dの反射面を保護するカバー部材30eを素子切換装置30に設ける変形例も可能である。カバー部材30eは、カバー部材12と同様に、例えば蛍石により形成されて平行平面板状の形態を有する。ただし、図10の変形例では、筐体11に対して回転板30aを回転自在に且つ気密状態を保持可能に取り付ける機構が必要になる。
【0063】
図示を省略したが、筐体11に設けられたカバー部材12と素子切換装置30に設けられたカバー部材30eとを併用することも可能である。また、図11に示すように、素子切換装置30の回転板30aの光路側とは反対の側に配置されて開閉自在な扉部11aを露光装置の筐体11に設ける構成も可能である。なお、図11の構成では、筐体11に設けられたカバー部材12に代えて、あるいはカバー部材12に加えて、図10に示すカバー部材30eを素子切換装置30に設けることができる。
【0064】
また、上述の実施形態では、4つの回折光学素子31a〜31dから選択された1つの回折光学素子を光路中に位置決めしている。しかしながら、段差を有する反射面を備える反射型回折光学素子に限定されることなく、複数の反射光学素子から選択された1つの反射光学素子を光路中に位置決めすることもできる。また、光路中に位置決めされる反射光学素子の数は1つに限定されることなく、複数の反射光学素子から選択された少なくとも1つの反射光学素子を光路中に位置決めすることもできる。また、素子切換装置が保持する反射光学素子の数は4つに限定されることなく、所要数の反射光学素子から少なくとも1つの反射光学素子を選択することもできる。
【0065】
また、上述の実施形態では、軸線30b廻りに回転可能な回転板30aを用いるターレット方式にしたがって、複数の回折光学素子31a〜31dから選択した1つの回折光学素子を光路中に位置決めしている。しかしながら、ターレット方式に限定されることなく、他の適当な方式、例えば複数の反射光学素子を着脱自在に取り付け可能な本体部をスライド駆動する方式にしたがって複数の反射光学素子から選択された少なくとも1つの反射光学素子を光路中に位置決めすることもできる。
【0066】
また、上述の実施形態では、光軸AXに対して傾斜可能な平行平面板33により、光源1から入射した光束を平行移動させて射出する光束移動部を構成している。しかしながら、これに限定されることなく、光束移動部の構成については様々な形態が可能である。例えば、一対のミラーを用いて光束移動部を構成することもできる。
【0067】
また、上述の実施形態では、光軸AXに対して傾斜可能な平行平面板33と、一対の反射面34aおよび34bを有する偏向部材34とにより、光源1から入射した光を回折光学素子31aおよび空間光変調器のうちの少なくとも一方へ選択的に導いている。しかしながら、これに限定されることなく、光束移動部を経て入射した光束を回折光学素子へ向けて偏向する第1前側偏向面(反射面34aに対応)と、光束移動部を経て入射した光束を空間光変調器へ向けて偏向する第2前側偏向面(反射面34bに対応)とを、別々の光学部材に設けることもできる。
【0068】
また、上述の実施形態では、光路中に位置決めされた1つの回折光学素子31aの回折光学面と、光路中に固定的に配置された1つの空間光変調器32の複数のミラー要素32aの配列面とが、光軸AXを挟んで互いに平行に配置されている。しかしながら、これに限定されることなく、光路中に位置決めされる回折光学素子の数、光路中に固定的に配置される空間光変調器の数、回折光学素子の回折光学面と空間光変調器の配列面との位置関係などについて、様々な形態が可能である。
【0069】
上述の説明では、二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素を有する空間光変調器として、二次元的に配列された複数の反射面の向き(角度:傾き)を個別に制御可能な空間光変調器を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば二次元的に配列された複数の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。このような空間光変調器としては、たとえば特開平6−281869号公報及びこれに対応する米国特許第5,312,513号公報、並びに特表2004−520618号公報およびこれに対応する米国特許第6,885,493号公報の図1dに開示される空間光変調器を用いることができる。これらの空間光変調器では、二次元的な高さ分布を形成することで回折面と同様の作用を入射光に与えることができる。なお、上述した二次元的に配列された複数の反射面を持つ空間光変調器を、たとえば特表2006−513442号公報およびこれに対応する米国特許第6,891,655号公報や、特表2005−524112号公報およびこれに対応する米国特許公開第2005/0095749号公報の開示に従って変形しても良い。
【0070】
なお、上述の実施形態では、オプティカルインテグレータとして、マイクロフライアイレンズ7を用いているが、その代わりに、内面反射型のオプティカルインテグレータ(典型的にはロッド型インテグレータ)を用いても良い。この場合、リレー光学系6の代わりに、所定面5からの光を集光する集光光学系を配置する。そして、マイクロフライアイレンズ7とコンデンサー光学系8との代わりに、所定面5からの光を集光する集光光学系の後側焦点位置またはその近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置する。このとき、ロッド型インテグレータの射出端がマスクブラインド9の位置になる。ロッド型インテグレータを用いる場合、このロッド型インテグレータの下流の結像光学系10内の、投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役な位置を照明瞳面と呼ぶことができる。また、ロッド型インテグレータの入射面の位置には、照明瞳面の二次光源の虚像が形成されることになるため、この位置およびこの位置と光学的に共役な位置も照明瞳面と呼ぶことができる。ここで、上記の集光光学系、上記の結像光学系、およびロッド型インテグレータを分布形成光学系とみなすことができる。
【0071】
上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置を用いれば、パターン面が縦置きでも同期精度に及ぼす影響を最低限にできる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレットおよびこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。なお、パターン面が横置きの場合であっても可変パターン形成装置を用いても良い。ここでは、米国特許公開第2007/0296936号公報の教示を参照として援用する。なお、可変パターン形成装置として、複数のDMDを用いる場合において、本実施形態にかかる光束分割素子を用いて複数のDMDへ光を導く構成としても良い。
【0072】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
【0073】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図12は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図12に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の投影露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。
【0074】
その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0075】
図13は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図13に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0076】
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0077】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0078】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
【0079】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンプレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
【0080】
また、上述の実施形態において、米国公開公報第2006/0170901号及び第2007/0146676号に開示されるいわゆる偏光照明方法を適用することも可能である。ここでは、米国特許公開第2006/0170901号公報及び米国特許公開第2007/0146676号公報の教示を参照として援用する。
【0081】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0082】
1 光源
3 空間光変調ユニット
30 素子切換装置
30a 回転板
30c 駆動部
30d 蓋部材
30e カバー部材
31 反射型の回折光学素子
32 反射型の空間光変調器
4,6 リレー光学系
7 マイクロフライアイレンズ
8 コンデンサー光学系
9 マスクブラインド
10 結像光学系
11 筐体
12 カバー部材
DT 瞳強度分布計測部
CR 制御部
M マスク
PL 投影光学系
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反射光学素子のうちの少なくとも1つを光路中に位置決めする素子切換装置であって、
光路側とは反対の側から前記複数の反射光学素子を着脱自在に取り付け可能な本体部と、
前記本体部に取り付けられた前記複数の反射光学素子から選択された少なくとも1つの反射光学素子を光路中に位置決めするために前記本体部を駆動する駆動部とを備えていることを特徴とする素子切換装置。
【請求項2】
前記本体部は、所定の軸線廻りに回転可能な回転板を有することを特徴とする請求項1に記載の素子切換装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記回転板の光路側とは反対の側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の素子切換装置。
【請求項4】
前記本体部に取り付けられた反射光学素子を前記光路側とは反対の側から押さえて固定する蓋部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の素子切換装置。
【請求項5】
前記本体部に取り付けられた反射光学素子の反射面を保護するカバー部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の素子切換装置。
【請求項6】
前記反射光学素子は、段差を有する反射面を備える反射型回折光学素子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の素子切換装置。
【請求項7】
光源からの光に基づいて被照射面を照明する照明光学系において、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の素子切換装置を備えていることを特徴とする照明光学系。
【請求項8】
前記光源からの光を前記素子切換装置により前記光路中に位置決めされた反射光学素子に向けて偏向する前側偏向面を備えていることを特徴とする請求項7に記載の照明光学系。
【請求項9】
前記反射光学素子により反射された光を後続の光学系に向けて偏向する後側偏向面を備えていることを特徴とする請求項8に記載の照明光学系。
【請求項10】
前記素子切換装置により前記光路中に位置決めされた反射光学素子の反射面を保護するカバー部材を備えていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項11】
前記素子切換装置は、前記反射光学素子の反射面が前記照明光学系の光軸と平行になるように前記反射光学素子を光路中に位置決めすることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項12】
前記素子切換装置により光路中に位置決めされた前記反射光学素子を経た光に基づいて、前記照明光学系の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を備えていることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項13】
前記被照射面と光学的に共役な面を形成する投影光学系と組み合わせて用いられ、前記照明瞳は前記投影光学系の開口絞りと光学的に共役な位置であることを特徴とする請求項12に記載の照明光学系。
【請求項14】
所定のパターンを照明するための請求項7乃至13のいずれか1項に記載の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置。
【請求項15】
前記露光装置の筐体は、開閉自在な扉部を備え、
前記扉部は、前記素子切換装置の前記本体部の前記光路側とは反対の側に配置されていることを特徴とする請求項14に記載の露光装置。
【請求項16】
前記所定のパターンの像を前記感光性基板上に形成する投影光学系を備えていることを特徴とする請求項14または15に記載の露光装置。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれか1項に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−60869(P2011−60869A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206512(P2009−206512)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】