説明

細胞、核酸、酵素及びその使用並びにソホロリピッドの製造方法

本発明の主題は、細胞、核酸及び酵素並びにソホロリピッドの製造のためのその使用とソホロリピッドの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明の主題は、核酸、酵素及び細胞並びにソホロリピッドの製造のためのその使用とソホロリピッドの製造方法である。
【0002】
背景技術
界面活性剤は、今日では石油化学原料を実質的に基礎として製造される。再生原料を基礎とする界面活性剤の利用は、石油化学原料の予想可能な不足、及び、再生原料を基礎とするか或いは生分解可能である生成物の増加する需要のために、重要な代替物である。
【0003】
ソホロリピッドは、界面活性剤としての使用に必要とされる表面活性特性を有する。
【0004】
この脂質は、今日では種々の酵母の野生型−単離物を用いて、特にカンジダ・ボンビコラ(Candida bombicola)を用いて製造される。
【0005】
この生成物形成の性能パラメーター、例えば炭素収率、空時収率、生成物濃度、生成物−均質性(アセチル化度、脂肪酸種、ラクトン形vs.開鎖形)の改善は、従来はプロセス実施(pH値、酸素供給、培地組成、フィード戦略、窒素供給、温度、基質選択等)の最適化を介してのみ行われている。唯一の例外は、β−酸化を停止させるようにした、カンジダ・ボンビコラの遺伝子改変であり、このため、基質として供給されるトリグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール等はもはや炭素源として利用されず、すなわち、分解されることができない(Van Bogaert et al FEMS Yeast Res. 2009 Jun;9(4) : 610-7)。そして、基質の選択によって、生成物特性に影響を及ぼすために、ソホロリピッドの脂肪酸割合を狙いを定めて制御することが可能になることが望ましい。
【0006】
ソホロリピッドのバイオテクノロジーによる製造の性能パラメーターの改善は、プロセス実施の最適化によっては制限されてしか可能でないので、細胞の遺伝子改変も行わなくてはならない。
【0007】
これは、一方ではソホロリピッド合成に関与する酵素の強化を包含する:シトクロムP450モノオキシゲナーゼ、グリコシルトランスフェラーゼI、グリコシルトランスフェラーゼII、アセチルトランスフェラーゼ、ソホロリピッド−エキスポーター、生成物形成の性能パラメーター、例えば炭素収率、空時収率、生成物濃度、生成物均質性(アセチル化度、脂肪酸種)その他の改善の目的をもって。これは、他方ではソホロリピッド合成に関与するいくつか酵素の減弱を包含する:グリコシルトランスフェラーゼII、アセチルトランスフェラーゼ、生産されるソホロリピッドの構造及び特性の改変の目的をもって:グリコシルトランスフェラーゼII:モノグリコシル−ソホロリピッドの製造;アセチルトランスフェラーゼ:非アセチル化ソホロリピッドの生産。
【0008】
ソホロリピッドは、大量に界面活性剤として清浄化適用、化粧品適用及び他の適用において使用されることが望ましい場合には、今日使用される界面活性剤との競争を開始しなくてはならない。これらは、バルク化学薬品であり、極めて低コストで製造できる。従って、ソホロリピッドは可能な限り低コストで製造されなくてはならない。このことは、プロセス最適化単独による性能パラメーターの最適化によっては可能でない。
【0009】
従って、高い生成物収率を有するソホロリピッドの効率的生産に関して増加した需要が存在する。
【0010】
従って、本発明の基礎となる課題は、特異的なソホロリピッドを簡易かつ大量に作成できる手段及び/又は方法を提供することである。
【0011】
発明の詳細な説明
意外なことに、以下に記載の細胞、核酸、ポリペプチド及び方法は、前述の課題を解決できることが見出された。
【0012】
本発明の主題は、従って、ソホロリピッド合成のために変更した酵素的構成(enzymatischen Ausstattung)を有する遺伝子工学により改変した細胞である。
【0013】
本発明の更なる主題は、請求項11及び12に記載の新規核酸及びベクターである。
【0014】
さらに、本発明の主題は、ソホロリピッド生合成において有用な新規酵素である。
【0015】
本発明は、ソホロリピッド形成の性能パラメーター、例えば炭素収率及び空時収率が改善されているのみならず、例えばアセチル化度及び脂肪酸種に関する生成物−均質性もが改善されることができる、という利点を有する。
【0016】
本発明の主題は、以下からなる群から選択された酵素少なくとも1のそれぞれ以下に特定するような活性をその野生型に比較して変更して有するように遺伝子工学により改変された、ソホロリピッドを形成できる細胞である:
配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63、特に配列番号7のポリペプチド配列を有するか、又は、そのつどの参照配列 配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63、特に配列番号7に対しアミノ酸残基25%まで、好ましくは20%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの前記参照配列 配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する酵素E1、その際、酵素E1のための酵素活性とは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号8又は配列番号11のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号8又は配列番号11に対しアミノ酸残基60%まで、好ましくは25%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの参照配列 配列番号8又は配列番号11を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E2、その際、酵素E2のための酵素活性とは、UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号11のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号11に対しアミノ酸残基60%まで、好ましくは25%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、参照配列 配列番号11を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E3、その際、酵素E3のための酵素活性とは、17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDP−グルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号9のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号9に対しアミノ酸残基50%まで、好ましくは25%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、配列番号9を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E4、その際、酵素E4のための酵素活性とは、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換する能力が理解される(その際、第1のものが好ましい)、
配列番号10のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号10に対しアミノ酸残基45%まで、好ましくは25%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、配列番号10を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E5、その際、酵素E5のための酵素活性とは、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移す能力が理解される。
【0017】
本発明と関連して「ソホロリピッド」との概念には、一般式(Ia)及び(Ib)の化合物が理解される;
【化1】

[式中、
1=H又はCO−CH3
2=H又はCO−CH3
3=非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する二価有機基であって、6〜32個の炭素原子を含むもの、
4=H、CH3又は非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する一価有機基であって、2〜10個の炭素原子を含むもの、及び
n=1又は0]。
【0018】
細胞の「野生型」とは、本発明と関連して、好ましくは、前述の配列番号の酵素の活性を担う遺伝要素に対する遺伝子工学操作により本発明の細胞が生じる出発株が理解される。
【0019】
「酵素の変更した活性」との概念は、好ましくは変更した細胞内活性を理解することができる。
【0020】
所定のポリペプチドの特性及び機能の本質的変更を生じない、所定のポリペプチド配列のアミノ酸残基の変更は、当業者に知られている。そして、例えばいわゆる保存されたアミノ酸が相互に交換されることができる;このように適したアミノ酸置換の例は次のとおりである:Serに対しAla、Lysに対しArg、Gln又はHisに対しAsn、Gluに対しAsp、Serに対しCys、Asnに対しGln、Aspに対しGlu、Proに対しGly、Asn又はGlnに対しHis、Leu又はValに対しIle、Met又はValに対しLeu、Arg又はGln又はGluに対しLys、Leu又はIleに対しMet、Met又はLeu又はTyrに対しPhe、Thrに対しSer、Serに対しThr、Tyrに対しTrp、Trp又はPheに対しTyr、Ile又はLeuに対しVal。同様に、例えばアミノ酸挿入又はアミノ酸欠失の形の、特にポリペプチドのN末端又はC末端での変更がしばしばポリペプチドの機能に対して本質的な影響を発揮しないことが知られている。
【0021】
酵素E1の活性は、この活性を含む細胞を当業者に知られている様式で分解し、例えばボールミル、フレンチプレス又は超音波破砕機を用いて分解し、引き続き完全細胞、細胞破片及び分解助材、例えばガラス球を13000rpmかつ4℃での10分間の遠心分離により分離することで決定されることができる。次に、生じる細胞不含の粗抽出物を用いて、生成物の引き続くLC−ESI−MS検出を用いた酵素アッセイを実施できる。代替的に、酵素を当業者に知られている様式でクロマトグラフィ法(例えば、ニッケル−ニトリロ三酢酸−アフィニティクロマトグラフィ、ストレプトアビジン−アフィニティクロマトグラフィ、ゲル濾過−クロマトグラフィ又はイオン交換クロマトグラフィ)により濃縮するか、又は均質性を達するまで精製することもできる。標準アッセイを全容積200μlの、200mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)、0.5mM NADPH、0.5mM ジチオトレイトール、3mM グルコース6−ホスファート及び0.5U グルコース6−ホスファート−デヒドロゲナーゼ及び50μlタンパク質粗抽出物(約1mgの全タンパク質)又は精製したタンパク質であって溶液中のもの(10μgの精製タンパク質)中で実施できる。この反応を、a)5μlの10mMエタノール性基質溶液(Z−9−オクタデセン酸)又はb)0.1%のTriton X-100中の5μlの10mM基質溶液(Z−9−オクタデセン酸)(これは前もってそれぞれ30秒間の2回の超音波処理によって前処理されている)の添加で開始させ、30分間30℃でインキュベーションする。引き続き、この反応を200μlの酢酸エチルで抽出する。溶解していない成分を沈殿させ、ここで短期の遠心分離(16100g、5分間)によって相分離させ、LC−ESI−MSを用いて酢酸エチル相を分析する。生成物の同定を相応する材料痕跡量(Massenspure)及びMS2スペクトルの分析によって行う。
【0022】
酵素E2の活性は、この活性を含む細胞を当業者に知られている様式で分解し、例えばボールミル、フレンチプレス又は超音波破砕機を用いて分解し、引き続き完全細胞、細胞破片及び分解助材、例えばガラス球を13000rpmかつ4℃で10分間の遠心分離により分離することで決定されることができる。次に、生じる細胞不含の粗抽出物を用いて、生成物の引き続くLC−ESI−MS検出を用いた酵素アッセイを実施できる。代替的に、酵素を当業者に知られている様式でクロマトグラフィ法(例えば、ニッケル−ニトリロ三酢酸−アフィニティクロマトグラフィ、ストレプトアビジン−アフィニティクロマトグラフィ、ゲル濾過−クロマトグラフィ又はイオン交換クロマトグラフィ)により濃縮するか、又は均質性を達するまで精製することができる。標準アッセイは、185μlの10mM Tris−HCl(pH7.5)、10μlの125mM UDPグルコース及び50μlのタンパク質粗抽出物(約1mgの全タンパク質)又は精製したタンパク質であって溶液中のもの(10μgの精製したタンパク質)からなってよい。この反応を、a)5μlの10mMエタノール性基質溶液(例えば18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸)又はb)0.1%のTriton X-100中の5μlの10mM基質溶液(例えば18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸)(これは前もってそれぞれ30秒間の2回の超音波処理によって前処理されている)の添加で開始させ、30分間30℃でインキュベーションする。引き続き、この反応を200μlの酢酸エチルで抽出する。溶解していない成分を沈殿させ、ここで短期の遠心分離(16100g、5分間)によって相分離させ、LC−ESI−MSを用いて酢酸エチル相を分析する。生成物の同定を相応する材料痕跡量及びMS2スペクトルの分析によって行う。このアッセイにおいて好ましくは18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を基質として使用し、というのも、これは市販されており、かつ、既に様々な箇所で、ソホロリピッド生合成の酵素が18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸、17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸も他の鎖長のヒドロキシ脂肪酸(飽和又は不飽和)及びω−又はω−1−炭素でヒドロキシル化したもの、例えばソホロリピッド生合成の経過においてここから発生するモノグルコシド及びジグルコシドも、基質として許容することが示されているからである。(Asmer, H.J., Lang, S., Wagner, F., Wray, V. (1988).Microbial production, structure elucidation and bioconversion of sophorose lipids. J. Am. Oil Chem. Soc. 65:1460-1466; Nunez, A., Ashby, R., Foglia, T.A. et al. (2001). Analysis and characterization of sophorolipids by liquid chromatography with atmospheric pressure chemical ionization. Chromatographia 53:673-677; Ashby, R.D., Solaiman, D.K., Foglia, T.A. (2008). Property control of sophorolipids: influence of fatty acid Substrate and blending. Biotechnology Letters 30 : 1093-1100)。
【0023】
酵素E3の活性は、この活性を含む細胞を当業者に知られている様式で分解し、例えばボールミル、フレンチプレス又は超音波破砕機を用いて分解し、引き続き完全細胞、細胞破片及び分解助材、例えばガラス球を13000rpmかつ4℃で10分間の遠心分離により分離することで決定されることができる。次に、生じる細胞不含の粗抽出物を用いて、生成物の引き続くLC−ESI−MS検出を用いた酵素アッセイを実施できる。代替的に、酵素を当業者に知られている様式でクロマトグラフィ法(例えば、ニッケル−ニトリロ三酢酸−アフィニティクロマトグラフィ、ストレプトアビジン−アフィニティクロマトグラフィ、ゲル濾過−クロマトグラフィ又はイオン交換クロマトグラフィ)により濃縮するか、又は均質性を達するまで精製することができる。標準アッセイは、185μlの10mM Tris−HCl(pH7.5)、10μlの125mM UDPグルコース及び50μlのタンパク質粗抽出物(約1mgの全タンパク質)又は精製したタンパク質であって溶液中のもの(10μgの精製したタンパク質)からなってよい。この反応を、a)5μlの10mMエタノール性基質溶液(例えば18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸)又はb)0.1%のTriton X-100中の5μlの10mM基質溶液(18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸)(これは前もってそれぞれ30秒間の2回の超音波処理によって前処理されている)の添加で、又はc)酵素E2の活性測定のために記載の反応バッチの添加で開始させ、30分間30℃でインキュベーションする。引き続き、この反応を200μl(基質添加、例えばa)及びb)に記載のとおり)又は400μl(基質添加、例えばc)に記載のとおり)の酢酸エチルで抽出する。溶解していない成分を沈殿させ、ここで短期の遠心分離(16100g、5分間)によって相分離させ、LC−ESI−MSを用いて酢酸エチル相を分析する。生成物の同定を相応する材料痕跡量及びMS2スペクトルの分析によって行う。このアッセイにおいて好ましくは18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸を基質として使用し、というのも、その前駆体分子18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸は市販されており、かつ、既に様々な箇所で、ソホロリピッド生合成の酵素が18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸、17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸も他の鎖長のヒドロキシ脂肪酸(飽和又は不飽和)及びω−又はω−1−炭素でヒドロキシル化したもの、例えばソホロリピッド生合成の経過においてここから発生するモノグルコシド及びジグルコシド、も基質として許容することが示されているからである。
【0024】
酵素E4の活性は、この活性を含む細胞を当業者に知られている様式で分解し、例えばボールミル、フレンチプレス又は超音波破砕機を用いて分解し、引き続き完全細胞、細胞破片及び分解助材、例えばガラス球を13000rpmかつ4℃で10分間の遠心分離により分離することで決定されることができる。次に、生じる細胞不含の粗抽出物を用いて、生成物の引き続くLC−ESI−MS検出を用いた酵素アッセイを実施できる。代替的に、酵素を当業者に知られている様式でクロマトグラフィ法(例えば、ニッケル−ニトリロ三酢酸−アフィニティクロマトグラフィ、ストレプトアビジン−アフィニティクロマトグラフィ、ゲル濾過−クロマトグラフィ又はイオン交換クロマトグラフィ)により濃縮するか、又は均質性を達するまで精製することができる。標準アッセイは、185μlの10mM Tris−HCl(pH7.5)、2.5μlの100mM アセチル補酵素A及び50μlのタンパク質粗抽出物(約1mgの全タンパク質)又は精製したタンパク質であって溶液中のもの(10μgの精製したタンパク質)からなってよい。この反応を、a)5μlの10mMエタノール性基質溶液(化学的に脱アセチル化したソホロリピッド)又はb)0.1%のTriton X-100中の5μlの10mM基質溶液(化学的に脱アセチル化したソホロリピッド)(これは前もってそれぞれ30秒間の2回の超音波処理によって前処理されている)の添加で、又はc)酵素E3の活性測定のために記載の反応バッチの添加(以下ではc)で記載の基質添加の種類、この後に30分間30℃でのインキュベーションが続く)で開始させ、30分間30℃でインキュベーションする。引き続き、この反応を200μl(基質添加、例えばa)及びb)に記載のとおり)又は600μl(基質添加、例えばc)に記載のとおり)の酢酸エチルで抽出する。溶解していない成分を沈殿させ、ここで短期の遠心分離(16100g、5分間)によって相分離させ、LC−ESI−MSを用いて酢酸エチル相を分析する。生成物の同定を相応する材料痕跡量及びMS2スペクトルの分析によって行う。本発明により好ましいのは、酵素E4をソホロリピッドのラクトン形(ここでは参照活性のために選択)のみが基質として許容されるのでなく、同様に、一般に式(Ia)中R1及びR2=Hを有するソホロリピッドの酸型も、相応した箇所で少なくとも1回アセチル化できることである。
【0025】
その野生型に比較した酵素E5の変更した活性は最も単純には、代わりに、細胞1個あたりの酵素E5の絶対量により決定されることができ、というのも、増強した存在が活性向上を、そして、減少した存在が活性低下を細胞に対して引き起こし、かつ、この関係は直接的に相互に依存していることを前提にできるからである。野生型に比較した酵素E5の変化した存在は、従来法を用いて決定できる。従って、タンパク質濃度は、検出すべきタンパク質に特異的な抗体を用いたウェスタンブロットハイブリダイゼーション(Sambrook et al., Molecular Cloning: a laboratory manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. USA, 1989)及び濃度決定のための相応するソフトウェアを用いた引き続く光学的評価(Lohaus及びMeyer (1989) Biospektrum, 5: 32-39; Lottspeich (1999), Angewandte Chemie 111: 2630-2647)によって分析できる。
【0026】
本発明により好ましい細胞は、微生物、好ましくは細菌細胞、酵母細胞又は菌類細胞であり、その際、特に、カンジダ(Candida)及びウイッカーハミーラ(Wickerhamiella)属の子嚢菌類、特にカンジダ・ボンビコラ(Candida bombicola)、カンジダ・ボゴリエンシス(Candida bogoriensis)、カンジダ・バチステ(Candida batistae)、カンジダ・アピコラ(Candida apicola)及びウイッカーハミーラ・ドメルキー(Wickerhamiella domericqiae)が特に好ましい。
【0027】
特に株カンジダ・ボンビコラATCC 22214、カンジダ・ボゴリエンシスNRRL Y-5980、カンジダ・バチステCBS 8550、カンジダ・アピコラIMET 42747及びウイッカーハミーラ・ドメルキーは特に適した細胞である。
【0028】
ソホロリピッドは本発明の細胞によりグルコース及び脂肪酸から形成されるので、本発明の細胞がそのβ−酸化において少なくとも部分的にブロックされている場合にこれが好ましく、というのも、基質の流出が妨げられ、従って、より高い生成物濃度及び炭素収率が可能になるからである。β−酸化においてブロックされたカンジダ細胞は例えばWO03/100013に記載され、β−酸化ブロックされたカンジダ・ボンビコラ細胞はVan Bogaert et al FEMS Yeast Res. 2009 Jun; 9 (4) : 610-7に記載されている。
【0029】
本発明により好ましい細胞において変更した酵素活性は好ましくは増加している。
【0030】
以下の酵素組み合わせの増加した活性を有する細胞が本発明により好ましい:
12、E13、E14、E15、E23、E24、E25、E34、E35、E45、E123、E124、E125、E134、E135、E145、E234、E245、E345、E1234、E2345、E1345、E1245、E1235、E1234及びE12345
このうち次の組み合わせ
12、E13、E14、E15、E23、E24、E25、E34、E35、E45、E123、E124、E125、E134、E135、E145、E234、E245、E345及びE12345
特に
12、E13、E14、E15、E23、E24、E25、E34、E35、E45及びE12345が好ましい。
【0031】
n=0を有する一般式(Ia)のソホロリピッドの製造には可能な限り少ない酵素活性の酵素E3が細胞中に存在することが望ましい。従って、本発明の細胞の一定の実施態様においては酵素E3の変更した活性は減少した活性である。
【0032】
この関連において本発明により、酵素E3の減少した活性を有し、かつ場合によって同時に少なくとも1の酵素E1、E2、E4及びE5の増加した活性を有する細胞が好ましく、特に、酵素E3の減少した活性の他に次の酵素組み合わせの増加した活性を有する:
12、E14、E15、E24、E25、E45、E124、E125、E145及びE1245、特に好ましくは
12、E14、E15、E24、E25、E45及びE1245
【0033】
この関連において、本発明の細胞は好ましくはカンジダ・ボンビコラ細胞、カンジダ・ボゴリエンシス細胞、カンジダ・バチステ細胞、カンジダ・アピコラ細胞又はウイッカーハミーラ・ドメルキー細胞である。
【0034】
更に好ましくは、ここでは、配列番号6及び参照配列 配列番号6に対して少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列からなる群から選択される核酸配列を含む遺伝子の改変により酵素活性の減少を達成する本発明の細胞であり、その際、前記改変は次のものを含むか、好ましくは次のものからなる群から選択されている:遺伝子中への外来DNAの挿入、遺伝子の少なくとも一部の欠失、遺伝子配列中の点突然変異、RNA干渉(siRNa)、アンチセンスRNA又は前記遺伝子に隣接する制御配列の改変(挿入、欠失又は点突然変異)。
【0035】
このような細胞の製造に適した核酸は例えば配列番号16を有するものであり、これは同様に本発明の主題である。
【0036】
1及びR2が同時にHを有する一般式(Ia)又は(Ib)のソホロリピッドの製造には可能な限り少ない酵素活性の酵素E4が細胞中に存在することが望ましい。従って、本発明の細胞の一定の実施態様においては酵素E4の変更した活性は減少した活性である。
【0037】
この関連において本発明により、少なくとも1の酵素E4の減少した活性を有し、かつ場合によって同時に少なくとも1の酵素E1、E2、E3及びE5の増加した活性を有する細胞が好ましく、特に、酵素E4の減少した活性の他に次の酵素組み合わせの増加した活性を有する:
12、E13、E15、E23、E25、E35、E123、E125、E135及びE1235、特に好ましくは
12、E13、E15、E23、E35、及びE1235
【0038】
この関連において、本発明の細胞は好ましくはカンジダ・ボンビコラ細胞、カンジダ・ボゴリエンシス細胞、カンジダ・バチステ細胞、カンジダ・アピコラ細胞又はウイッカーハミーラ・ドメルキー細胞である。
【0039】
更に好ましくは、ここでは、配列番号4及び配列番号4に対して少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列からなる群から選択される核酸配列を含む遺伝子の改変により酵素活性の減少を達成する本発明の細胞であり、その際、前記改変は次のものを含むか、好ましくは次のものからなる群から選択されている:遺伝子中への外来DNAの挿入、遺伝子の少なくとも一部の欠失、遺伝子配列中の点突然変異、RNA干渉(siRNa)、アンチセンスRNA又は前記遺伝子に隣接する制御配列の改変(挿入、欠失又は点突然変異)。
【0040】
このような細胞の製造に適した核酸は例えば配列番号14を有するものであり、これは同様に本発明の主題である。
【0041】
n=0及びR1=Hを有する一般式(Ia)のソホロリピッドの製造には可能な限り少ない酵素活性の酵素E3及びE4が細胞中に存在することが望ましい。従って、本発明の細胞の一定の実施態様においては酵素E3及びE4の変更した活性は減少した活性である。この関連において本発明により、そのつど少なくとも1の酵素E3及びE4の減少した活性を有し、かつ同時に少なくとも1の酵素E1、E2及びE5の増加した活性を有する細胞が好ましく、特に、そのつど少なくとも1の酵素E3及びE4の減少した活性の他に次の酵素組み合わせの増加した活性である:
12、E15、E25、E125
特に好ましくは
12、E15及びE25
【0042】
この関連において、本発明の細胞は好ましくはカンジダ・ボンビコラ細胞、カンジダ・ボゴリエンシス細胞、カンジダ・バチステ細胞、カンジダ・アピコラ細胞又はウイッカーハミーラ・ドメルキー細胞である。
【0043】
更に好ましくは、ここでは、配列番号4及び配列番号4に対して少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列からなる群から選択される核酸配列を含む遺伝子
及び
配列番号6及び参照配列 配列番号6に対して少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列からなる群から選択される核酸配列を含む遺伝子
の改変により酵素活性の減少を達成する本発明の細胞であり、
その際、前記改変は次のものを含む、好ましくは次のものからなる群から選択されている:
遺伝子中への外来DNAの挿入、遺伝子の少なくとも一部の欠失、遺伝子配列中の点突然変異、RNA干渉(siRNa)、アンチセンスRNA又は前記遺伝子に隣接する制御配列の改変(挿入、欠失又は点突然変異)。
【0044】
このような細胞の製造に適した核酸は例えば配列番号14及び16を有するものである。
【0045】
細胞中の酵素活性の増加のための次の実施態様は、酵素E1〜E5の活性の増加についても、同様に、その活性が場合によって高められていてよい以下挙げる酵素全てについても当てはまる。
【0046】
原則的に、酵素活性の増加は、酵素をコードする1又は複数の遺伝子配列のコピー数を高めること、強力プロモーターを使用すること、遺伝子のコドン利用を変更すること、mRNA又は酵素の半値時間を様々な手法で高めること、遺伝子の発現の制御を改変すること、又は増加した活性を有する相応する酵素をコードする遺伝子若しくはアレルを利用すること、そして場合によってこれら処置を組み合わせること、により達成される。本発明により遺伝子工学により変更された細胞は、例えば形質転換、形質導入、コンジュゲーション、又はこの方法と、所望の遺伝子、この遺伝子のアレル又はその部分及びこの遺伝子の発現を可能にするプロモーターを含むベクターの組み合わせによる。非相同性発現は特に、細胞の染色体中への又は染色体外複製ベクター中への遺伝子又はアレルの組込によって達成される。
【0047】
細胞中の酵素活性を高めるための手段に関する概要を、イソシトラートリアーゼ(Isocitratlyase)を例にとってEP0839211は挙げており、当該文献はここで参照として導入され、そして、細胞中の酵素活性の向上のための手段に関するその開示内容は本発明の開示の一部を構成する。
【0048】
前述の及び以下に挙げる全ての酵素又は遺伝子の発現は、1次元及び2次元のタンパク質泳動分離及び相応する評価ソフトウェアを用いたタンパク質濃度の引き続く光学的同定を用いてゲル中で検出可能である。酵素活性の向上が相応する遺伝子の発現の向上のみを基礎とする場合には、酵素活性の向上の定量化は野生型と遺伝子工学により変更した細胞の間の1次元又は2次元のタンパク質分離の比較によって簡易に決定されることができる。コリネホルム細菌でのタンパク質ゲルの調製のための及びこのタンパク質の同定のための慣用法は、Hermann et al. (Electrophoresis , 22: 1712.23 (2001)が記載したやり方である。タンパク質濃度は、同様に、検出すべきタンパク質に特異的な抗体を用いたウェスタンブロットハイブリダイゼーション(Sambrook et al., Molecular Cloning: a laboratory manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. USA, 1989)及び濃度決定のための相応するソフトウェアを用いた引き続く光学的評価(Lohaus及びMeyer (1989) Biospektrum, 5: 32-39; Lottspeich (1999), Angewandte Chemie 111: 2630-2647)によって分析できる。DNA結合性タンパク質の活性はDNAバンドシフトアッセイ(ゲル遅延とも呼ばせる)を用いて測定されることができる(Wilson et al. (2001) Journal of Bacteriology, 183: 2151-2155)。他の遺伝子の発現に対するDNA結合性タンパク質の作用は、十分に記載される様々なリポーター遺伝子アッセイ方法により検出されることができる(Sambrook et al., Molecular Cloning: a laboratory manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. USA, 1989)。細胞内(特異的)酵素活性は、様々な記載の方法(Donahue et al. (2000) Journal of Bacteriology 182 (19): 5624-5627; Ray et al. (2000) Journal of Bacteriology 182 (8): 2277-2284; Freedberg et al. (1973) Journal of Bacteriology 115 (3) : 816-823)により決定されることができる。以下の実施態様において所定の酵素の活性の具体的な決定方法が挙げられていない場合には、酵素活性の増加の決定も酵素活性の減少の決定も好ましくはHermann et al., Electrophoresis , 22: 1712-23 (2001), Lohaus et al., Biospektrum 5 32-39 (1998), Lottspeich, Angewandte Chemie 111: 2630-2647 (1999)及びWilson et al., Journal of Bacteriology 183: 2151-2155 (2001)に記載の方法を用いて行われる。
【0049】
酵素活性の向上が内在性遺伝子の突然変異によって実行される場合には、この種の突然変異は典型的な方法に応じて、指向しないで、例えばUV照射によって又は突然変異作動性化学薬品によって、又は、遺伝子工学的方法を用いて指向させて、例えば1又は複数の欠失、1又は複数の挿入及び/又は1又は複数のヌクレオチド交換によって、生じさせられることができである。この突然変異によって改変した細胞が得られる。
【0050】
酵素の特に好ましい突然変異は特に、もはやフィードバック阻害可能でないか又は野生型酵素に比較してフィードバック阻害性が少なくとも減少している酵素でもある。
【0051】
酵素活性の向上が酵素の合成の向上により実行される場合には、例えば、相応する遺伝子のコピー数を高めるか、又はプロモーター領域及び制御領域又はリボソーム結合部位(構造遺伝子の上流にある)を突然変異する。同様に、前記構造遺伝子の上流に導入される発現カセットが作用する。更に、誘導可能なプロモーターによって、発現を任意の時間点で増加させることが可能である。更に、酵素遺伝子には制御配列もいわゆる「エンハンサー」も配置されていることができ、これはRNAポリメラーゼ及びDNAの間の改善された相互作用を介して同様に向上した遺伝子発現を引き起こす。mRNAの寿命の延長のための処置により、同様に前記発現が改善される。更に、この酵素の分解の防止により、同様に前記酵素活性は増強される。遺伝子又は遺伝子コンストラクトは、この場合に、種々異なるコピー数を有するプラスミド中に存在するか又は染色体に組み込まれそして増幅される。又は、更に、この遺伝子の過剰発現は、この培地組成及び培養操作の変更により達成されてよい。当業者はこれに関するマニュアルを、特にMartin et al. (Bio/Technology 5, 137-146 (1987)), Guerrero et al.(Gene 138, 35-41 (1994)), Tsuchiya及びMorinaga (Bio/Technology 6, 428-430 (1988)), Eikmanns et al. (Gene 102, 93-98 (1991))、EP-A-0 472 869において、US 4,601,893において、Schwarzer及びPuehler (Bio/Technology 9, 84-87 (1991)で、Reinscheid et al.(Applied and Environmental Microbiology 60, 126-132 (1994))で、LaBarre et al.(Journal of Bacteriology 175, 1001-1007 (1993))で、WO-A-96/15246において、Malumbres et al.(Gene 134, 15-24 (1993)で、JP-A-10-229891において、Jensen及びHammer (Biotechnology and Bioengineering 58, 191-195 (1998))で、そして遺伝子学及び分子生物学の既知の教科書において見出す。前記した処置は突然変異と同様に遺伝子工学的に改変した細胞に導く。
【0052】
それぞれの遺伝子の発現の向上には、例えばエピソームプラスミドが使用される。プラスミド又はベクターとして、原則的に当業者にこの目的のために使用される全ての実施態様が考慮される。この種のプラスミド及びベクターは、例えばNovagen, Promega, New England Biolabs, Clontech又はGibco BRL社のパンフレットから把握することができる。更なる好ましいプラスミド及びベクターは以下に見出されることができる:Glover, D. M. (1985), DNA cloning: a practical approach, Vol. I-III, IRL Press Ltd., Oxford; Rodriguez, R.L.及びDenhardt, D. T (eds) (1988), Vectors : a survey of molecular cloning vectors and their uses, 179-204, Butterworth, Stoneham; Goeddel, D. V. (1990), Systems for heterologous gene expression, Methods Enzymol. 185, 3-7; Sambrook, J.; Fritsch, E. F.及びManiatis, T. (1989), Molecular cloning: a laboratory manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York。
【0053】
ベクター、例えば発現ベクター、遺伝子欠失カセット、遺伝子挿入カセット又は遺伝子過剰発現カセットは、増幅すべき遺伝子又は不活性化すべき遺伝子の部分を含み、引き続き、形質転換によって所望の株中へと移される。形質転換、特にエレクトロポレーション、酢酸リチウム媒介形質転換、凍結融解形質転換の方法は例えばGietz, R.D., Schiestl, R.H. (2007). Frozen competent yeast cells that can be transformed with high efficiency using the LiAc/SS carrier DNA/PEG method. Nat Protoc. 2:1-4; Suga, M., Hatakeyama, T. (2003). High-efficiency electroporation by freezing intact yeast cells with addition of calcium. Curr Genet. 43:206-211; Hubberstey, A.V., Wildeman, A.G. (1991).Transformation of Saccharomyces cerevisiae by use of frozen spheroplasts . Trends Genet. 7:41; Broeker, M. (1993). Rapid transformation of cryopreserved competent Schizosaccharomyces pombe cells. Biotechniques . 15:598 600; Gietz, R.D., Schiestl, R.H. (1989). High efficiency transformation of intact yeast cells using Single stranded nucleic acids as a carrier. Curr Genet. 16:339-346及び"Nonconventional yeast in biotechnology" (Hrsg. Klaus Wolf, Springer-Verlag Berlin, 1996)に記載されている。形質転換により、ベクター、特に遺伝子欠失カセット、遺伝子挿入カセット又は遺伝子発現カセットを、相同性又は非相同性の、好ましくは相同性の組み換えによって、「cross-over」結果を用いて所望の株の染色体中に組み込む。代替的に、ベクター、特に発現ベクターは、エピソーム的にも、すなわち、独立した複製単位として、所望の株の細胞中で複製する。全ての場合において、ベクター、例えば発現ベクター、遺伝子欠失カセット、遺伝子挿入カセット又は遺伝子過剰発現カセットが細胞分裂の際に娘細胞にも受け渡されることが保証されている。
【0054】
前述し、かつ後述する説明で使用される書き方「その野生型に比較して増加した酵素Exの活性」は、好ましくは常に少なくとも1.5倍、特に好ましくは少なくとも10倍、更に好ましくは少なくとも100倍、更により好ましくは少なくとも1000倍、最も好ましくは少なくとも10000倍だけ増加したそのつどの酵素Exの活性を理解すべきである。更に、「その野生型に比較して増加した酵素Exの活性」を有する本発明の細胞は特に、その野生型が酵素Exの活性を有しないか又は少なくとも酵素Exの検出可能な活性を有さず、この酵素Exの検出可能な活性を酵素活性の向上(例えば過剰発現による)後に初めて示す細胞も含む。この関連において、「過剰発現」又は以下の説明で使用される書き方「発現の向上」との概念は、出発細胞、例えば野生型細胞が、発現を示さないか又は少なくとも検出可能な発現を示さず、かつ組み換え方法により初めて酵素Exの検出可能な合成が誘発される場合をも含む。
【0055】
使用される書き方「酵素Exの減少した活性」は、相応して好ましくは、少なくとも0.5倍、特に好ましくは少なくとも0.1倍、さらに好ましくは少なくとも0.01倍、さらにいっそう好ましくは少なくとも0.001倍、最も好ましくは少なくとも0.0001倍だけ減少した活性が理解される。「減少した活性」との書き方は、検出可能でない活性(「ゼロの活性」)も包含する。所定の酵素の活性の減少は、例えば、狙いを定めた突然変異によって又は所定の酵素の活性の減少のための当業者に知られている他の処置によって、行われることができる。
【0056】
微生物中で酵素活性を減少させる方法は当業者に知られている。
【0057】
特に分子生物学による技術はここで適当である。特別にカンジダのための、特に特殊な遺伝子の遮断のためのタンパク質発現の改変及び減少及びこれに不随する酵素活性減少のためのマニュアルを、当業者はWO91/006660及びWO03/100013に見出す。
【0058】
本発明により好ましい細胞は、酵素活性の減少が、前述の核酸配列の1を含む遺伝子の改変により達成されることにより特徴付けられており、その際、前記改変は、遺伝子中への外来DNAの挿入、遺伝子の少なくとも一部の欠失、遺伝子配列中の点突然変異、RNA干渉(siRNa)、アンチセンスRNA又は前記遺伝子に隣接する制御配列の改変(挿入、欠失又は点突然変異)を含む群か、好ましくはこれらからなる群から選択されている。
【0059】
外来DNAとは、この関連において、この遺伝子(この生物に対してでない)に対して「外来」性である全てのDNA配列を理解でき、すなわち、カンジダ・ボンビコラ内在性DNA配列もこの関連において「外来DNA」として機能する。
【0060】
この関連において、遺伝子が選択マーカー遺伝子の挿入によって中断され、従って、外来DNAが選択マーカー遺伝子であることが特に好ましく、その際、好ましくは、この挿入は遺伝子座中への相同性組み換えによって行われている。
【0061】
本発明により好ましい細胞は、少なくとも1の、以下に記載の本発明の核酸又は以下に記載の本発明のベクターが形質転換されていることによって特徴付けられている。
【0062】
本発明の細胞は好ましくはソホロリピッドの製造に使用される。
【0063】
従って、本発明の更なる主題は、一般式(Ia)及び(Ib)の化合物:
[式中、
1=H又はCO−CH3
2=H又はCO−CH3
3=非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する二価有機基であって、6〜32個、好ましくは7〜19個の炭素原子を含むもの
4=H、CH3又は非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する一価有機基であって、2〜10個の炭素原子を含むもの、及び
n=0又は1である]、
特に一般式(Ia)及び(Ib)の次の化合物:
[式中、
1=H又はCO−CH3
2=H又はCO−CH3
3=非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する二価有機基であって、6〜32個、好ましくは7〜19個の炭素原子を含むもの
4=H、CH3又はC919
n=0又は1である]、
特にとりわけ好ましくは一般式(Ia)及び(Ib)の化合物:
[式中、
1=H又はCO−CH3
2=H又はCO−CH3
3=非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する二価有機基であって、6〜32個、好ましくは7〜19個の炭素原子を含むもの、とりわけC815=C714
4=H、CH3又はC919、特にH又はCH3、及び
n=1である]
の製造のための、本発明の細胞の使用である。
【0064】
本発明の更なる一主題は、ソホロリピッド、好ましくは一般式(Ia)及び(Ib)の化合物の製造方法
[式中、
1=H又はCO−CH3
2=H又はCO−CH3
3=非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する二価有機基であって、6〜32個、好ましくは7〜19個の炭素原子を含むもの
4=H、CH3又は非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する一価有機基であって2〜10個の炭素原子を含むもの、及び
n=0又は1である]、
特に一般式(Ia)及び(Ib)の次の化合物の製造方法:
[式中、
1=H又はCO−CH3
2=H又はCO−CH3
3=非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する二価有機基であって、6〜32個、好ましくは7〜19個の炭素原子を含むもの
4=H、CH3又はC919、及び
n=0又は1である]、
特にとりわけ好ましくは一般式(Ia)及び(Ib)の化合物の製造方法:
[式中、
1=H又はCO−CH3
2=H又はCO−CH3
3=非置換の又はヒドロキシ官能性で置換した、非分枝の、場合によって1〜3個の二重結合又は三重結合を含有する二価有機基であって、6〜32個、好ましくは7〜19個の炭素原子を含むもの、とりわけC815=C714
4=H、CH3又はC919、特にH又はCH3、及び
n=1である]
であって、次の方法工程
I)本発明の細胞を炭素源を含む培地と接触させる工程、
II)細胞に前記炭素源からソホロリピッドを形成することを可能にさせる条件下で、細胞を培養する工程、及び
III)場合によって、この形成されたソホロリピッドを単離する工程
を含むものである。
【0065】
本発明の、遺伝子工学により改変した細胞は、連続的に又は不連続的に、バッチ法(バッチ培養)で又はフェドバッチ法(流加培養法)で又は反復フェドバッチ法(繰り返し流加回分法)で、前述した生成物の製造の目的で栄養培地と接触させられ、従って培養されることができる。GB-A-1009370に記載されている半連続方法も考えることができる。既知の培養方法に関する要約は、Chmielによる教科書(Bioprozesstechnik 1. Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))又はStorhasによる教科書(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))に記載されている。
【0066】
使用すべき培養培地は適したように、それぞれの株の要求を満足しなくてはならない。様々な酵母株の培養培地の説明は例えば"Nonconventional yeast in biotechnology" (Hrsg. Klaus Wolf, Springer-Verlag Berlin, 1996)に含まれている。
【0067】
炭素源として、炭水化物、例えばグルコース、サッカロース、アラビノース、キシロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、デンプン、セルロース及び半セルロース、植物性及び動物性油脂、例えばダイズ油、アザミ油、ピーナッツ油、麻油、ジャトロファ油、ココナッツ脂、カボチャシード油、あまに油、トウモロコシ油、けし油、月見草油、オリーブ油、パームシード油、パーム油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマワリ油、グレープシード油、クルミ油、コムギ胚芽油(Weizenkeimoel)及びヤシ脂、脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ガンマ−リノレン酸及びそのメチル−又はエチルエステル並びに脂肪酸混合物、モノ−、ジ−及びトリグリセリドであって前述の脂肪酸を有するもの、アルコール、例えばグリセリン、エタノール及びメタノール、炭化水素、例えばメタン、炭素含有ガス及びガス混合物、例えばCO、CO2、合成ガス又は排ガス、アミノ酸、例えばL−グルタミン酸又はL−バリン又は有機酸、例えば酢酸が使用されることができる。これらの物質は単独で又は混合物として使用されてよい。
【0068】
特に好ましくは炭水化物の使用であり、特に単糖、オリゴ糖又は多糖の使用であり、これは炭素源として例えばUS 6,01,494及びUS 6,136,576に記載され、並びに、炭化水素、特にアルカン、アルケン及びアルキン並びにここから誘導されるモノカルボン酸及びこのモノカルボン酸から誘導されるモノ−、ジ−及びトリグリセリド、並びにグリセリン及びアセタートの使用である。特にとりわけ好ましくは、グリセリンとカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及び/又はγ−リノレン酸とのエステル化生成物を含むモノ−、ジ−及びトリグリセリドである。
【0069】
窒素源として、有機窒素含有化合物、例えばペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、大豆粉及び尿素、又は無機化合物、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム、アンモニア、水酸化アンモニウム又はアンモニア水が使用できる。前記窒素源は、単独で又は混合物として使用できる。
【0070】
リン源として、リン酸、リン酸二水素カリウム又はリン酸水素二カリウム又はこの相応するナトリウム含有塩が使用できる。前記培養培地は更に、金属塩、例えば硫酸マグネシウム又は硫酸鉄を含有することが必要であり、これらは成長に必要である。
【0071】
最後に、必須栄養成長物質、例えばアミノ酸及びビタミンを上述の物質に加えて使用できる。培養培地にはその上適した前駆物質が添加されることができる。上述の使用物質は、1回のバッチの形で培養物に添加するか、適した方法で、この培養の間に供給できる。前記培養物のpH調節のために、塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア又はアンモニア水、又は酸性化合物、例えばリン酸又は硫酸を適した方法で使用する。泡発生の調節のために、消泡剤、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルが使用できる。プラスミドの安定性の維持のために、前記培地に、選択的に作用する適した物質、例えば抗生物質を添加できる。好気的条件を維持するために、酸素又は酸素含有混合物、例えば空気を前記培養物に導入する。
【0072】
培養物の温度は通常は20℃超、好ましくは25℃超であり、そして40℃超であってもよく、その際、好ましくは95℃、特に好ましくは90℃、最も好ましくは80℃の培養温度を超えない。
【0073】
本発明の方法の工程III)において、細胞により形成されるソホロリピッドは場合によって細胞及び/又は栄養培地から単離されることができ、その際、単離には複雑な組成物から低分子量物質を単離するための当業者に知られている全ての方法が考慮され、例えば濾過、抽出、吸着(クロマトグラフィ)又は結晶化である。ソホロリピッドの後処理は、通常は生成物流に依存して行われる。水不溶性のラクトン形で存在するソホロリピッドの場合には、以下のやり方が適している:水相からのラクトン形の生成物の分離を遠心分離によって行う。
【0074】
さらに、この生成物相は、バイオマス及び様々な不純物、例えば油、脂肪酸及び他の栄養培地成分の残分を含む。油残分は、例えば適した溶媒を用いた、好ましくは有機溶媒を用いた抽出により分離されることができる。好ましくは溶媒としてアルカン、例えばn−ヘキサンである。水相からの生成物の分離は、例えば適したエステルを用いて、例えば酢酸エチルを用いて行うことができる。前述の抽出工程は任意の順序で実施できる。
【0075】
代替的に、栄養培地からのソホロリピッドの精製は、水溶性の開放酸型へのラクトン形の移行によって行うことができる。例えば、開放酸型への移行は、加水分解、好ましくはアルカリ性加水分解を用いて行われる。引き続き、この開放鎖状ソホロリピッドは、場合によって形成される酸を溶液中で分離するために、水性酸、好ましくは水性硫酸中で溶解される。生成物の更なる精製を抽出を用いて行う。ここで、好ましくは溶媒、特に有機溶媒が使用される。好ましくは溶媒としてn−ペンタノールである。溶媒の除去のために例えば蒸留を行う。
【0076】
引き続き、凍結乾燥した生成物を、例えばクロマトグラフィ法を用いて更に精製できる。例示的に、この箇所では、適した溶媒を用いた沈殿、適した溶媒を用いた抽出、複合体化、例えばシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体を用いた複合体化、結晶化、クロマトグラフィ法を用いた精製又は単離、又はソホロリピッドを容易に分離可能な誘導体に移行することが挙げられる。
【0077】
本発明の方法で製造したソホロリピッドは、好ましくは清浄化剤において、化粧品又は医薬品調製物において、並びに植物保護調製物において使用される。
【0078】
従って、本発明の更なる主題は、化粧用、皮膚用又は医薬用調製物の、植物保護調製物の並びにケア剤及び清浄化剤及び界面活性剤濃縮物の製造のための本発明の方法で得られるソホロリピッドの使用である。
【0079】
「ケア剤」との概念には、ここでは、その本来の形で対象物を得るか、外部影響の作用(例えば時間、光、温度、圧力、汚染、当該対象物と接触する他の反応性化合物との化学反応)、例えば老化、汚染、材料疲労、退色を減少するか又は回避するか、又はそれどころか対象物の所望の好ましい特性を改善さえもする、という目的を満たす調製物が理解される。後者の観点については、例えば改善された髪光沢又は観察される対象物のより大きな弾性が挙げられる。
【0080】
「植物保護調製物」とは、その手入れの仕方に応じて歴然と植物保護に使用される調製物が理解される;このことは特に、除草剤、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、鳥被害に対する保護物質、植物栄養物質及び土壌構造改善剤の類からの少なくとも1の化合物が調製物中に含まれている場合である。
【0081】
本発明により好ましくは本発明の方法で製造したソホロリピッドを、家庭、工業のために、特に硬質表面、皮革又はテキスタイルのために、ケア剤及び清浄化剤において使用する。
【0082】
前記課題の解決には、次の配列から選択されている単離DNAが寄与する:
A1a) 配列番号2、配列番号52又は配列番号54、特に配列番号2に応じた配列、その際、この配列は、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質をコードする、
B1a) A1a)に応じた配列の1から誘導され、かつ、配列番号2、配列番号52又は配列番号54、特に配列番号2に応じた配列と同じタンパク質又はペプチドをコードするイントロン不含配列、
C1a) 配列番号7、配列番号53又は配列番号55、特に配列番号7に応じたアミノ酸配列を含み、かつ、好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする配列、
D1a) 群A1a)〜C1a)の1に応じた配列、特に好ましくは群A1a)に応じた配列と、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列、その際、この配列は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、
E1a) 群A1a)〜D1a)の1に応じた配列、特に好ましくは群A1a)に応じた配列の対ストランドと、ハイブリダイゼーションするか又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列、その際、この配列は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、
F1a) 少なくとも1の塩基、好ましくは少なくとも2の塩基、更に好ましくは少なくとも5の塩基、最も好ましくは少なくとも10の塩基の、しかし、好ましくは100を超えない塩基、特に好ましくは50を超えない塩基、最も好ましくは25を超えない塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失により得られる、群A1a)〜E1a)の1に応じた、特に好ましくは群A1a)に応じた配列の誘導体、その際、この誘導体は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、及び
G1a) 群A1a)〜F1a)の1、特に好ましくは群A1a)に応じた配列に対する相補配列。
【0083】
前記課題の解決には、次の配列から選択されている単離DNAが更に寄与する:
A1b) 配列番号56、配列番号58又は配列番号60に応じた配列、その際、この配列は、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質をコードする、
B1b) A1b)に応じた配列から誘導され、かつ、配列番号56、配列番号58又は配列番号60に応じた配列と同じタンパク質又はペプチドをコードするイントロン不含配列、
C1b) 配列番号57、配列番号59又は配列番号61に応じたアミノ酸配列を含み、かつ好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする配列、
D1b) 群A1b)〜C1b)の1に応じた配列、特に好ましくは群A1b)に応じた配列と、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも86%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列、その際、この配列は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、
E1b) 群A1b)〜D1b)の1に応じた配列、特に好ましくは群A1b)に応じた配列の対ストランドと、ハイブリダイゼーションするか又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列、その際、この配列は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、
F1b) 少なくとも1の塩基、好ましくは少なくとも2の塩基、更に好ましくは少なくとも5の塩基、最も好ましくは少なくとも10の塩基の、しかし、好ましくは100を超えない塩基、特に好ましくは50を超えない塩基、最も好ましくは25を超えない塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失により得られる、群A1b)〜E1b)の1に応じた、特に好ましくは群A1b)に応じた配列の誘導体、その際、この誘導体は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、及び
G1b) 群A1b)〜F1b)の1、特に好ましくは群A1b)に応じた配列に対する相補配列。
【0084】
前記課題の解決には、次の配列から選択されている単離DNAが更に寄与する:
A1c) 配列番号62に応じた配列、その際、この配列は、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質をコードする、
B1c) A1c)に応じた配列から誘導され、かつ、配列番号62に応じた配列と同じタンパク質又はペプチドをコードするイントロン不含配列、
C1c) 配列番号63に応じたアミノ酸配列を含み、かつ好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする配列、
D1c) 群A1c)〜C1c)の1に応じた配列、特に好ましくは群A1c)に応じた配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも85%、更に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列、その際、この配列は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、
E1c) 群A1c)〜D1c)の1に応じた配列、特に好ましくは群A1c)に応じた配列の対ストランドと、ハイブリダイゼーションするか又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列、その際、この配列は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、
F1c) 少なくとも1の塩基、好ましくは少なくとも2の塩基、更に好ましくは少なくとも5の塩基、最も好ましくは少なくとも10の塩基の、しかし、好ましくは100を超えない塩基、特に好ましくは50を超えない塩基、最も好ましくは25を超えない塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失により得られる、群A1c)〜E1c)の1に応じた、特に好ましくは群A1c)に応じた配列の誘導体、その際、この誘導体は好ましくは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、及び
G1c) 群A1c)〜F1c)の1、特に好ましくは群A1c)に応じた配列に対する相補配列。
【0085】
本発明の更なる主題は、次の配列から選択されている単離DNAである:
A2) 配列番号3に応じた配列、その際、この配列は、UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質をコードする、
B2) A2)に応じた配列から誘導され、かつ、配列番号3に応じた配列と同じタンパク質又はペプチドをコードするイントロン不含配列、
C2) 配列番号8に応じたアミノ酸配列を含み、かつ好ましくは、UDPグルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする配列、
D2) 群A2)〜C2)の1に応じた配列、特に好ましくは群A2)に応じた配列と、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列、その際、この配列は好ましくは、UDPグルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、
E2) 群A2)〜D2)の1に応じた配列、特に好ましくは群A2)に応じた配列の対ストランドと、ハイブリダイゼーションするか又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列、その際、この配列は好ましくは、UDPグルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、
F2) 少なくとも1の塩基、好ましくは少なくとも2の塩基、更に好ましくは少なくとも5の塩基、最も好ましくは少なくとも10の塩基の、しかし、好ましくは100を超えない塩基、特に好ましくは50を超えない塩基、最も好ましくは25を超えない塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失により得られる、群A2)〜E2)の1に応じた、特に好ましくは群A2)に応じた配列の誘導体、その際、この誘導体は好ましくは、UDPグルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、及び
G2) 群A2)〜F2)の1、特に好ましくは群A2)に応じた配列に対する相補配列。
【0086】
本発明の更なる一主題は、次の配列から選択されている単離DNAである:
A3) 配列番号4に応じた配列、その際、この配列は、
17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、
又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、
又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換できるタンパク質をコードし、その際、第1のものが好ましい、
B3) A3)に応じた配列の1から誘導され、かつ、配列番号4に応じた配列と同じタンパク質又はペプチドをコードするイントロン不含配列、
C3) 配列番号9に応じたアミノ酸配列を含み、好ましくは、
17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、
又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、
又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする配列、その際、第1のものが好ましい、
D3) 群A3)〜D3)の1に応じた、特に好ましくは群A3)に応じた配列と少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列、その際、この配列は、好ましくは
17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、
又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、
又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換できるタンパク質又はペプチドをコードし、その際、第1のものが好ましい、
E3) 群A3)〜D3)の1に応じた、特に好ましくは群A3)に応じた配列の対ストランドと、ハイブリダイゼーションするか又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列、その際、この配列は、好ましくは、
17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、
又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、
又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換できるタンパク質又はペプチドをコードし、その際、第1のものが好ましい、
F3) 少なくとも1の塩基、好ましくは少なくとも2の塩基、更に好ましくは少なくとも5の塩基、最も好ましくは少なくとも10の塩基の、しかし、好ましくは100を超えない塩基、特に好ましくは50を超えない塩基、最も好ましくは25を超えない塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失により得られる、群A3)〜E3)の1に応じた、特に好ましくは群A3)に応じた配列の誘導体、その際、この誘導体は好ましくは、
17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、
又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、
又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換できるタンパク質又はペプチドをコードし、その際、第1のものが好ましい、
及び
G3) 群A3)〜F3)の1、特に好ましくは群A3)に応じた配列に対する相補配列。
【0087】
本発明の更なる一主題は、次の配列から選択されている単離DNAである:
A4) 配列番号5に応じた配列、その際、この配列は、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移すことができるタンパク質をコードする、
B4) A4)に応じた配列から誘導され、かつ、配列番号5に応じた配列と同じタンパク質又はペプチドをコードするイントロン不含配列、
C4) 配列番号10に応じたアミノ酸配列を含み、かつ好ましくは、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移行できるタンパク質又はペプチドをコードする配列、
D4) 群A4)〜C4)の1に応じた配列、特に好ましくは群A4)に応じた配列と、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列、その際、この配列は好ましくは、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移行できるタンパク質又はペプチドをコードする、
E4) 群A4)〜D4)の1に応じた配列、特に好ましくは群A1a)に応じた配列の対ストランドと、ハイブリダイゼーションするか又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列、その際、この配列は好ましくは、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移行できるタンパク質又はペプチドをコードする、
F4) 少なくとも1の塩基、好ましくは少なくとも2の塩基、更に好ましくは少なくとも5の塩基、最も好ましくは少なくとも10の塩基の、しかし、好ましくは100を超えない塩基、特に好ましくは50を超えない塩基、最も好ましくは25を超えない塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失により得られる、群A4)〜E4)の1に応じた、特に好ましくは群A4)に応じた配列の誘導体、その際、この誘導体は好ましくは、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移行できるタンパク質又はペプチドをコードする、及び
G4) 群A4)〜F4)の1、特に好ましくは群A4)に応じた配列に対する相補配列。
【0088】
本発明の更なる一主題は、次の配列から選択されている単離DNAである:
A5) 配列番号6に応じた配列、その際、この配列は、
UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、又は
17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDP−グルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質をコードし、その際後者のものが好ましい、
B5) A5)に応じた配列から誘導され、かつ、配列番号6に応じた配列と同じタンパク質又はペプチドをコードするイントロン不含配列、
C5) 配列番号11に応じたアミノ酸配列を含み、かつ、好ましくは、
UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、又は
17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDP−グルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする配列、その際、後者のものが好ましい、
D5) 群A5)〜C5)の1に応じた配列、特に好ましくは群A5)に応じた配列と、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一である配列、その際、この配列は好ましくは、UDPグルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDPグルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、その際後者のものが好ましい、
E5) 群A5)〜D5)の1に応じた配列、特に好ましくは群A5)に応じた配列の対ストランドと、ハイブリダイゼーションするか又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列、その際、この配列は好ましくは、UDPグルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、又は17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDPグルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、その際後者のものが好ましい、
F5) 少なくとも1の塩基、好ましくは少なくとも2の塩基、更に好ましくは少なくとも5の塩基、最も好ましくは少なくとも10の塩基の、しかし、好ましくは100を超えない塩基、特に好ましくは50を超えない塩基、最も好ましくは25を超えない塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失により得られる、群A5)〜E5)の1に応じた、特に好ましくは群A5)に応じた配列の誘導体、その際、この誘導体は好ましくは、
UDPグルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、又は
17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDPグルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質又はペプチドをコードする、その際後者のものが好ましい、及び
G5) 群A5)〜F5)の1、特に好ましくは群A5)に応じた配列に対する相補配列。
【0089】
「ヌクレオチド同一性」又は「アミノ酸同一性」はここでは既知の方法で決定される。一般に、特殊な要求を考慮した、アルゴリズムを用いた特殊なコンピュータープログラムが使用される。
【0090】
同一性の決定のための好ましい方法はまず、比較すべき配列の間の最大の一致度を明らかにする。この同一性の決定のためのコンピュータープログラムは、GAPを含めたGCGプログラムパケットを含むが、これに限定されない(Deveroy, J. et al., Nucleic Acid Research 12 (1984), 387頁, Genetics Computer Group University of Wisconsin, Medicine (Wi), 及びBLASTP, BLASTN及びFASTA (Altschul, S. et al., Journal of Molecular Biology 215 (1990), 403-410頁.BLASTプログラムはNational Center For Biotechnology Information (NCBI)及び他の供給源から得られる(BLAST Handbuch, Altschul S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda ND 22894; Altschul S. et al.、前記の通り)。
【0091】
既知のSmith-Watermanアルゴリズムは同様にヌクレオチド同一性の決定のために使用できる。
【0092】
「ヌクレオチド同一性」の決定のための好ましいパラメーターは、BLASTN-Programms (Altschul, S. et al., Journal of Molecular Biology 215 (1990), 403-410頁の使用下で得られる:
Expect Threshold: 10
Word size: 28
Match Score: 1
Mismatch Score: -2
Gap costs: Linear。
前述のパラメーターは、ヌクレオチド配列比較におけるデフォルトパラメーターである。
このGAPプログラムは同様に、前述のパラメーターと一緒の使用に適している。
【0093】
「アミノ酸同一性」の決定のための好ましいパラメーターは、BLASTP-Programms (Altschul, S. et al., Journal of Molecular Biology 215 (1990), 403-410頁の使用下で得られる:
Expect Threshold: 10
Word size: 3
Matrix: BLOSUM62
Gap costs: Existence: 11; Extension: 1
Compositional adjustments: Conditional compositional score matrix adjustment。
前述のパラメーターはアミノ酸配列比較におけるデフォルトパラメーターである。
このGAPプログラムは同様に、前述のパラメーターと一緒の使用に適している。
【0094】
前記アルゴリズムに応じた80%の同一性は本発明との関連において80%の同一性を意味する。このことはより高い同一性にも当てはまる。
【0095】
「配列の対ストランドと、ハイブリダイゼーションするか又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列」との特徴は、好ましくはストリンジェントな条件下で、参照配列の対ストランドとハイブリダイゼーションするか、又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列を示す。例えばハイブリダイゼーションは68℃で2×SSC中で又はBoehringer社(Mannheim)のDigoxigenin-Labelling-Kitsのプロトコルに応じて実施できる。好ましいハイブリダイゼーション条件は、例えば65℃で一晩7%SDS、1%BSA、1mMEDTA、250mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中でのインキュベーション及び65℃で2×SSC;0.1%SDSでの後続の洗浄である。
【0096】
選択肢F1a)、F1b)、F1b)、F1c)、F2、F3)、F4)又はF5)に応じた、群A1a)〜E1a)、A1b)〜E1b)、A1c)〜E1c)、A2)〜E2)、A3)〜E3)、A4)〜E4)及びA5)〜E5)の1の配列の1又は複数の塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失によって得られることができる本発明による単離されたDNAの誘導体には、特に、これらがコードするタンパク質中で保存アミノ酸交換、例えばアラニンに対するグリシン又はグルタミン酸に対するアスパラギン酸の交換を生じる配列が属する。このような機能中性(funktionsneutral)突然変異は、センス突然変異(sense mutations)と呼ばれ、このポリペプチドの活性の根本的な変更を生じない。さらに、ポリペプチドのN末端及び/又はC末端での変更はその機能を本質的に損なわないか又は安定化すらできることが知られており、その結果、これに応じて、この配列の3′末端又は5′末端で本発明の核酸塩基と結合しているDNA配列も本発明に包含されている。当業者は、それらの説明を、とりわけBen−Bassat他(Journal of Bacteriology 169:751-757 (1987))で、O’Regan他(Gene 77:237-251 (1989)で、Sahin−Toth他(Protein Sciences 3:240-247 (1994))で、Hochuli他(Bio/Technology 6:1321-1325 (1988))で、かつ遺伝学と分子生物学の公知の教科書において見出す。
【0097】
冒頭部で挙げた課題の解決には、更に、ベクター、好ましくは発現ベクター、遺伝子欠失カセット、遺伝子挿入カセット又は遺伝子過剰発現カセットであって、DNAと、前記で定義したような群A1a)〜G1a)、A1b)〜G1b)、A1c)〜G1c)、A2)〜G2)、A3)〜G3)、A4)〜G4)及びA5)〜G5)の1に応じた配列とを含むものが寄与する。ベクターとしては、当業者に知られている全てのベクターが考慮され、これは通常は宿主細胞中へのDNAの送入に使用される。このベクターは自立複製してもよく、というのも、ベクターは複製起点、例えば2μプラスミドのもの又はARS(自立複製配列)を有するか、又は染色体へと組み込むからである(非複製性プラスミド)。ベクターとは、鎖状DNA断片も理解され、これは複製起点を全く有さず、例えば遺伝子欠失カセット、遺伝子挿入カセット又は遺伝子過剰発現カセットである。遺伝子欠失カセットは、通常は選択マーカー及びDNA断片からなり、これは欠失すべき領域に隣接している。
【0098】
遺伝子挿入カセットは、通常はマーカー及び不活性化すべき遺伝子の断片からなり、遺伝子過剰発現カセットは、通常はマーカー、過剰発現すべき遺伝子並びに遺伝子の発現に関連する制御領域、例えばプロモーター及びターミネーターからなる。好ましいベクターは、プラスミド及びカセット、例えば大腸菌(E. coli)−酵母−シャトル−プラスミドを含む群から選択されており、特に好ましくは発現ベクター、遺伝子欠失カセット、遺伝子挿入カセット又は遺伝子過剰発現カセット、特に以下記載の遺伝子欠失カセットであって配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15並びに配列番号16を有するもの並びに発現カセットであって配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73及び配列番号74を有するものである。
【0099】
本発明のベクターの好ましい一実施態様によれば、群A1)〜F5)の1に応じた配列を有するDNAは、構成的又は制御可能なプロモーターの制御下にあり、これは微生物の細胞、好ましくは細菌細胞、酵母細胞又は菌類細胞、特に好ましくは酵母細胞、最も好ましくはカンジダ・ボンビコラ細胞、カンジダ・ボゴリエンシス細胞、カンジダ・バチステ細胞、カンジダ・アピコラ細胞又はウイッカーハミーラ・ドメルキー細胞中のこのDNA配列によりコードされるポリペプチドの発現に適している。このような構成的プロモーターのための例は、例えばTSC3プロモーター、ENO1プロモーター、FBA1プロモーター、GPDプロモーター、GPMプロモーター、FBA1プロモーター、ICL1プロモーター又はACT1プロモーターである。このような制御可能なプロモーターの例は、例えばGAL1プロモーター、GAL2プロモーター、GAL7プロモーター、MEL1プロモーター、GAL10プロモーター、SBG1プロモーター、SBG2プロモーター、SBG3プロモーター、SBG4プロモーター、SBG5プロモーター又はMAL2プロモーターである。
【0100】
本発明のベクターは、プロモーターの他に好ましくはリボソーム結合部位並びにターミネーターを含むことが望ましい。この場合に、本発明のDNAが、プロモーター、リボソーム結合部位及びターミネーターを含むベクターの発現カセット中へと組み込まれていることが特に好ましい。前述の構造的要素の他に、ベクターは更に当業者に知られている選択マーカー遺伝子を含んでよい。
【0101】
本発明により好ましいベクターは、実施例に記載の核酸、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、IntEx-CbSBG1(配列番号70)、IntEx-CbSBG2(配列番号71)、IntEx-CbSBG3(配列番号72)、IntEx-CbSBG4(配列番号73)及びIntEx-CbSBG5(配列番号74)である。
【0102】
新規酵素E1〜E5が前記課題の解決に寄与する。
【0103】
したがって、本発明の更なる主題は、次のものからなる群から選択されている単離ポリペプチドである:
配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63、特に配列番号7のポリペプチド配列を有するか、又は、そのつどの参照配列 配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63、特に配列番号7に対しアミノ酸残基25%までが、好ましくは20%までが、特に好ましくは15%までが、特に10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの前記参照配列を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する酵素E1、その際、酵素E1の酵素活性とは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号8又は配列番号11のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号8又は配列番号11に対しアミノ酸残基60%まで、好ましくは25%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの参照配列 配列番号8又は配列番号11を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する酵素E2、その際、酵素E2の酵素活性とは、UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号11のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号11に対しアミノ酸残基60%まで、好ましくは25%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの参照配列 配列番号11を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する酵素E3、その際、酵素E3の酵素活性とは、17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDP−グルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号9のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号9に対しアミノ酸残基50%まで、好ましくは25%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、配列番号9を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する酵素E4、その際、酵素E4の酵素活性とは、
17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、
又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、
又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換する能力が理解される、その際、第1のものが好ましい、
及び
配列番号10のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号10に対しアミノ酸残基45%まで、好ましくは25%まで、特に好ましくは15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、配列番号10を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%、好ましくは65%、特に好ましくは80%、とりわけ90%超を有するポリペプチド配列を有する酵素E5、その際、酵素E5の酵素活性とは、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移す能力が理解される。
【0104】
以下に記載の実施例においては、本発明は例示的に記載され、この場合に、その適用範囲が全体的な発明の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである本発明は実施例に挙げられた実施形態が限定されることはない。
【0105】
以下の図面は実施例の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、17−L−[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−6″−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−4″−O−ラクトンのための正確な材料痕跡量(Massenpur)を示す図である。
【図2】図2は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−4″−O−ラクトンのための正確な材料痕跡量を示す図である。
【0107】
実施例:
実施例1:カンジダ・ボンビコラATCC 22214のウラシル栄養要求性突然変異体の作成
カンジダ・ボンビコラATCC 22214のウラシル栄養要求性突然変異体を以前に記載の通り作成した(van Bogaert et al. Yeast. 2007. 24 (3):201-8)。この株をC.ボンビコラATCC 22214 ura-と称呼した。
【0108】
実施例2:カンジダ・ボンビコラATCC 22214中のソホロリピッド生合成に関与する酵素の構造遺伝子の不活性化
ソホロリピッド生合成に関与する酵素を同定できるようにするために、まずカンジダ・ボンビコラATCC 22214のゲノムをGLS Flexチタン技術を用いて配列決定した。カンジダ・ボンビコラATCC 22214の遺伝子情報の調査では、5つの遺伝子(配列番号01)のクラスターが同定され、そのコード領域(配列番号02、配列番号03、配列番号04、配列番号05、配列番号06)は遺伝子産物(配列番号07、配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11)をコードする。
【0109】
この5つの遺伝子をSBG1(配列番号02)、SBG2(配列番号03)、SBG3(配列番号04)、SBG4(配列番号05)及びSBG5(配列番号06)(SBGはソホロリピッド生合成遺伝子)と称呼した。
【0110】
これらは以下タンパク質をコードする:Sbg1p(配列番号07)、Sbg2p(配列番号08)、Sbg3p(配列番号09)、Sbg4p(配列番号10)及びSbg5p(配列番号11)。
【0111】
表1:Sbg1p、Sbg2p、Sbg3p、Sbg4p及びSbg5p並びにソホロリピッド生合成及び輸送におけるその機能
【表1】

【0112】
遺伝子SBG1、SBG2、SBG3、SBG4及びSBG5を個々に不活性化し、この相応する突然変異体のフェノタイプをソホロリピッド生合成に関して特性決定する。C.ボンビコラATCC 22214中の相応する突然変異体の構築には、まず欠失カセットをGeneArt AG(Regensburg)により合成する。この欠失カセット(配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16)は以前記載された、C.ボンビコラATCC 22214のオロチジン−5−ホスファート−デカルボキシラーゼをコードする遺伝子CbURA3からなり(van Bogaert et al. Yeast. 2007. 24 (3) : 201-8)、これはそのつど約1000bpの不活性化すべき遺伝子に隣接する領域により上流及び下流で隣接される。この隣接領域及び遺伝子CbURA3の間にはそのつどloxP遺伝子座が導入され、これは場合によってCbURA3の欠失を、リコンビナーゼCreをコードする遺伝子の一過的導入及びその機能的発現により可能にする(概要に関しては、Kuehn & Torres. Methods Mol Biol. 2002. 180:175-204を参照)。この場合に、表2中の記載に応じて個々の欠失カセットが構築されている:
【0113】
表2:C.ボンビコラATCC 22214の、Sbg1p、Sbg2p、Sbg3p、Sbg4P及びSbg5Pをコードする構造遺伝子のための欠失カセットの構造
【表2】

【0114】
C.ボンビコラATCC 22214 ura-の引き続く形質転換のための欠失カセットを十分な量で提供するために、これをPCRで増幅する。この場合に次のオリゴヌクレオチドを使用する:

【0115】
以下パラメーターをPCRのために使用する:1×:初期変性、98℃、3分;25×:変性、98℃、0:10分、アニーリング、60℃、0:30分;エロンゲーション、72℃、2:00分;1×:末端エロンゲーション、72℃、10分。増幅には、New England Biolabs (Frankfurt)のPhusionTM High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨に相応して使用する。PCR産物をQIAquick PCR-Purification Kit (Qiagen, Hilden)を用いて製造者の指示に応じて精製する。PCRの実施、アガロース電気泳動を用いたPCRの成功した増幅の検証、DNAのエチジウムブロミド染色、PCR断片サイズの測定、PCR産物の精製及びDNA濃度測定を当業者に知られている様式で行う。
【0116】
C.ボンビコラATCC 22214 ura-の形質転換を、以前に記載されたように行う (van Bogaert et al. Yeast. 2008. 25:273-278); van Bogaert et al. FEMS Yeast Res. 2009. 9:610-617)。
【0117】
CbSBGl(配列番号12)、CbSBG2(配列番号13)、CbSBG3(配列番号14)、CbSBG4(配列番号15)及びCbSBG5(配列番号16)のための欠失カセットを用いた形質転換後の、C.ボンビコラATCC 22214 ura-形質転換体中の遺伝子SBG1、SBG2、SBG3、SBG4及びSBG5の欠失を検証するために、そのつど5つの形質転換体及びC.ボンビコラATCC 22214 ura-によってそのつどの遺伝子座をコロニーPCRにより増幅する。この場合に次のオリゴヌクレオチドを使用する:

【0118】
以下パラメーターをPCRのために使用する:1×:初期変性、94℃、3分;25×:変性、94℃、1:00分、アニーリング、60℃、1:00分;エロンゲーション、72℃、5:00分;1×:末端エロンゲーション、72℃、10分。増幅には、QIAGEN (Hilden)のTaq PCR Master Mix Kitを製造者の推奨に相応して使用する。そのつど10μlのPCR反応を引き続き0.8%のアガロースゲルで分離する。PCRの実施、アガロースゲル電気泳動、DNAのエチジウムブロミド染色及びPCR断片サイズの測定を当業者に知られている様式で行う。
【0119】
相応する遺伝子座の増幅の場合に表3に挙げられるPCR断片サイズが発生するものである:
表3:成功した欠失又は野生型シチュエーションの場合に染色体性SBG1−、SBG2−、SBG3−、SBG4−及びSBG5−遺伝子座の増幅の際に予期されるPCR断片サイズ
【表3】

【0120】
C.ボンビコラATCC 22214 ura-からのCbSBGl-、CbSBG2−、CbSBG3−、CbSBG4−又はCbSBG5−遺伝子座の増幅の際に野生型シチュエーションの存在で予期すべき断片サイズ約3.7kbp、3.5kbp、2.8kbp、5.9kbp又は3.4kbpのみが達成される。
【0121】
CbSBG1のための欠失カセットの形質転換後の形質転換体からのSBGl遺伝子座の増幅では、CbSBG1の成功した染色体性欠失後に予期すべき断片サイズ約4.2kbpのみが達成される。CbSBG2のための欠失カセットの形質転換後の形質転換体からのSBG2遺伝子座の増幅では、CbSBG2の成功した染色体性欠失後に予期すべき断片サイズ約4.2kbpのみが達成される。CbSBG3のための欠失カセットの形質転換後の形質転換体からのSBG3遺伝子座の増幅では、CbSBG3の成功した染色体性欠失後に予期すべき断片サイズ約4.2kbpのみが達成される。CbSBG4のための欠失カセットの形質転換後の形質転換体からのSBG4遺伝子座の増幅では、CbSBG4の成功した染色性欠失後に予期すべき断片サイズ約4.2kbpのみが達成される。CbSBG5のための欠失カセットの形質転換後の形質転換体からのSBG5遺伝子座の増幅では、CbSBG5の成功した染色体性欠失後に予期すべき断片サイズ約4.2kbpのみが達成される。従って、全ての5つの場合に、遺伝子CbSBGl、CbSBG2、CbSBG3、CbSBG4又はCbSBG5が染色体欠失されたクローンが同定できる。相応する株は、以下、C.ボンビコラATCC 22214 sbg1、C.ボンビコラATCC 22214 sbg2、C.ボンビコラATCC 22214 sbg3、C.ボンビコラATCC 22214 sbg4又はC.ボンビコラATCC 22214 sbg5と呼ばれる。
【0122】
実施例3:C.ボンビコラATCC 22214、C.ボンビコラATCC 22214 sbg1、C.ボンビコラATCC 22214 sbg2、C.ボンビコラATCC 22214 sbg3、C.ボンビコラATCC 22214 sbg4及びC.ボンビコラATCC 22214 sbg5によるソホロリピッド形成の特性決定
株C.ボンビコラATCC 22214、C.ボンビコラATCC 22214 sbg1、C.ボンビコラATCC 22214 sbg2、C.ボンビコラATCC 22214 sbg3、C.ボンビコラATCC 22214 sbg4及びC.ボンビコラATCC 22214 sbg5の繁殖(Propagierung)をYPD寒天プレート上で行う。ソホロリピッドの生産には、以下でSL生産培地と呼ばれる培地が使用される。これは、0.1% KH2PO4、0.5% MgSO4×7H2O、0.01% FeCl3、0.01% NaCl、0.01% ウラシル、0.4% 酵母エキス、0.1% 尿素、10.5% ナタネ油及び10% グルコースからなる。このpH値を4.5に調節し、この培地を続いてオートクレーブ(121℃、20分)を用いて滅菌する。培養の間のpH値の調節は必要でない。
【0123】
振盪フラスコ中のソホロリピッド生産の検査のために、まず予備培養物を適用する。このために、新規にYPD寒天プレート上に塗布する株のイノキュレート用エーゼを使用し、かつ10mlのYPD培地を100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で接種する。この培養を30℃及び200rpmで一晩行う。この予備培養物を、100mlのSL培地を1000mlのエルレンマイヤーフラスコ中に接種するために以下使用する(開始OD600 0.2)。この培養物を200rpm及び30℃で7日間培養し、毎日2mlのブイヨンの試料を取り出し、その際、試料採取前にこの培養培地の十分な混合について厳密に注意した。
【0124】
後続のクロマトグラフィ分析のための試料前処理を以下のように行う:容積式ピペット(Combitip)を用いて2mlの反応容器中に800μlのアセトンを装入し、この反応容器を蒸発を最小限にするためにすぐに閉鎖する。この後に200μlのブイヨンを添加する。ブイヨン/アセトン混合物のボルテックス処理後に、これらを1分間13000rpmで遠心分離し、この上清800μlをHPLC容器中に移す。
【0125】
ソホロリピッド又はオレイン酸の検出及び定量化のために、Evaporative Light Scattering Detektor (ELSD)を利用する。当初の測定をAgilent Technologies 1200系列(Santa Clara, california)及びZorbax SB-C8 Rapid Resolutionカラム(4.6×150mm、3.5μm、Agilent)を用いて実施する。この注入容積は5μlであり、この方法の通液時間は20分である。移動相としてH2O及び0.1%TFA(三フッ化酢酸、溶液A)及びメタノール(溶液B)を使用する。このカラム温度は40℃である。検出器としてELSD(検出温度60℃)及びDAD(ダイオードアレー、210nm)を使用した。この方法で使用される勾配は表4に挙げてある。
【0126】
表4:移動相の使用される勾配プロファイルについてのソホロリピッドのHPLCベースの定量化の説明
【表4】

【0127】
C.ボンビコラATCC 22214がソホロリピッドを生産する一方で、株C.ボンビコラATCC 22214 sbg1、C.ボンビコラATCC 22214 sbg2及びC.ボンビコラATCC 22214 sbg4ではソホロリピッド形成を検出可能でない。このことは、この遺伝子がソホロリピッド形成に関与しており、かつ、この場合に上述の機能を満たすことを一義的に示す。この株C.ボンビコラATCC 22214 sbg3及びC.ボンビコラATCC 22214 sbg5は、ソホロリピッドを形成でき、しかし、これらはHPLC分析において変更した維持時間を示す。
【0128】
LC−MC2によって、C.ボンビコラATCC 22214 sbg3によって形成されるソホロリピッドが、C.ボンビコラATCC 22214によって形成されるソホロリピッドとは対照的に、R1=H及びR2=Hである一般式(Ia)及び(Ib)の化合物のみに相応することが検出できる。
【0129】
このことは、Sbg3pの機能をソホロリピッド生合成においてアセチルトランスフェラーゼ(E4)として裏付ける。
【0130】
LC−MCによって、同様に、C.ボンビコラATCC 22214 sbg5によって形成されるソホロリピッドが、C.ボンビコラATCC 22214によって形成されるソホロリピッドとは対照的に、n=0である一般式(Ia)の化合物のみに相応することが検出できる。
【0131】
このことは、Sbg5pの機能をソホロリピッド生合成においてグリコシルトランスフェラーゼII(E3)として裏付ける。
【0132】
実施例4:ソホロリピッド生合成に関与する酵素を過剰生産するカンジダ・ボンビコラATCC 22214株の構築
ソホロリピッド生合成に関与する酵素を過剰発現するカンジダ・ボンビコラATCC 22214株の構築を可能にするには、まず、GeneArt AGによって組込/過剰発現カセットが合成される(配列番号75)。
【0133】
この組込/過剰発現カセットは表5に挙げられる成分を含む:
表5:カンジダ・ボンビコラATCC 22214のために開発すべき組込/過剰発現カセット中に存在するモジュール及び重要な制限切断部位に関する概要
【表5】

【0134】
この組込/過剰発現カセットは、C.ボンビコラATCC 22214 TSC3遺伝子のプロモーター領域とターミネーター領域の間のNdel及びFselを介して開始コドンから停止コドンまでの任意の構造遺伝子の挿入を可能にし、前記遺伝子はグリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼをコードする(van Bogaert et al. ; 2008)。グリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼは、種々の酵母中で高アバンダントタンパク質であり、このため、このようにして挿入される遺伝子の強力発現が達成できることを前提とすることができる。選択マーカーとして、C.ボンビコラATCC 22214 URA3遺伝子を選択し、このため、この組込/過剰発現カセットはC.ボンビコラATCC 22214のウラシル栄養要求株の形質転換のためにだけ利用できる。その作製並びにC.ボンビコラATCC 22214 URA3遺伝子は既に以前に記載されている(van Bogaert et al., 2007; van Bogaert et al., 2008)。この5′−及び3′末端のDNA断片は、C.ボンビコラATCC 22214 LEU2遺伝子座(配列番号37)にこのカセットの挿入を可能にし、その際、LEU2遺伝子が不活性化される。LEU2は、C.ボンビコラATCC 22214中の唯一のイソプロピルマラート−デヒドロゲナーゼをコードする。このイソプロピルマラート−デヒドロゲナーゼはロイシン生合成の本質的成分であるので、組込/過剰発現カセットの正確な組込を用いた形質転換体がそのロイシン栄養要求性を介して同定されることができる。多様な唯一かつ余分な認識配列(NotI, PciI, AseSI, MluI, SbfI)が、組込/過剰発現カセットの個々のモジュールの交換を可能にする。このカセットはGeneArt AGにより専売ベクターpMA中にクローニングされ、これは前記した切断部位を含まず、このため、この切断部位は全ての範囲で利用できる。
【0135】
遺伝子CbSBG1、CbSBG3及びCbSBG5を記載の組込/過剰発現カセット中に挿入するためには、これがC.ボンビコラATCC 22214の染色体性DNAからPCRによって増幅され、かつ同時に、使用されるオリゴヌクレオチドを介して開始コドンの上流にNdeI切断部位が、そして、停止コドンの下流にFsel切断部位が導入される。記載の組込/過剰発現カセット中への遺伝子CbSBG2及びCbSBG4の挿入には、これはまず、コードタンパク質のアミノ酸配列を変更することなく、この配列を内部Fsel及びNotl切断部位(CbSBG2)又はNdel切断部位(CbSBG4)を除去するように増幅すべく、GeneArt AG (Regensburg)によりde novo合成される。引き続き、GeneArt AG (Regensburg)によって既に作成された改変された遺伝子CbSBG2mod及びCbSBG4modをPCRにより増幅し、かつ同時に、使用されるオリゴヌクレオチドを介して開始コドンの上流にNdeI切断部位が、そして、停止コドンの下流にFsel切断部位が導入される。この場合に次のオリゴヌクレオチドを使用する:

【0136】
以下パラメーターをPCRのために使用する:1×:初期変性、98℃、3分;25×:変性、98℃、0:10分、アニーリング、60℃、0:30分;エロンゲーション、72℃、2:00分;1×:末端エロンゲーション、72℃、10分。増幅には、New England Biolabs (Frankfurt)のPhusionTM High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨に相応して使用する。そのつど10μlのPCR反応を引き続き0.8%のアガロースゲルで分離する。PRCの実施、アガロースゲル電気泳動、DNAのエチジウムブロミド染色及びPCR断片サイズの測定を当業者に知られている様式で行う。全ての場合に、予期されるサイズのPCR断片を増幅できる。これはCbSBG1については1646bp、CbSBG2については1421bp、CbSBG3については809bp、CbSBG4については3929bp、そしてCbSBG5については1328bpである。PCR産物をNdel及びFselを用いて制限エンドヌクレアーゼの製造者(New England Biolabs; Frankfurt/Main)の推奨に応じて消化させ、Ndel及びFselで切断させたベクターpMA-ExCat(配列番号64)中にライゲーションさせる。ライゲーション並びに化学的にコンピテントな大腸菌(E. coli)DH5a細胞(New England Biolabs; Frankfurt/Main)の形質転換は当業者に知られているように行われる。pMA-ExCat中へのCbSBG1−、CbSBG2−、CbSBG3−、CbSBG4−又はCbSBG5−断片の正確な挿入をNdel及びFselを用いた制限により検証し、かつ確認する。得られるベクターをpMA_ExCat-CbSBG1(配列番号65)、pMA_ExCat-CbSBG2(配列番号66)、pMA_ExCat-CbSBG3(配列番号67)、pMA_ExCat-CbSBG4(配列番号68)及びpMA_ExCat-CbSBG5(配列番号69)と称呼する。
【0137】
C.ボンビコラATCC 22214 ura-の引き続く形質転換のために個々の組込/過剰発現カセット並びに制御カセットExCatを十分な量で提供するために、これをPCRで増幅する。この場合に次のオリゴヌクレオチドを使用する:

【0138】
このPCR産物をQIAquick PCR-Purification Kit (Qiagen, Hilden)を用いて製造者の指示に応じて精製する。PCRの実施、アガロース電気泳動を用いたPCRの成功した増幅の検証、DNAのエチジウムブロミド染色、PCR断片サイズの測定、PCR産物の精製及びDNA濃度測定を当業者に知られている様式で行う。
【0139】
得られる組込/過剰発現カセットは名称IntEx-CbSBG1(配列番号70)、IntExCbSBG2(配列番号71)、IntExCbSBG3(配列番号72)、IntExCbSBG4(配列番号73)及びIntExCbSBG5(配列番号74)を得る。同様に、制御カセットExCat(配列番号75)が得られる。
【0140】
C.ボンビコラATCC 22214 ura-の形質転換を、以前に記載されたように行う (van Bogaert et al. Yeast. 2008. 25:273-278); van Bogaert et al. FEMS Yeast Res. 2009. 9:610-617)。
【0141】
C.ボンビコラATCC 22214 ura-のLEU2遺伝子座中への過剰発現CbSBG1、CbSBG2、CbSBG3、CbSBG4及びCbSBG5のための組込/過剰発現カセット並びに制御カセットExCatの挿入を検証するために、そのつど5つの形質転換体(CbSBG1、CbSBG2、CbSBG3、CbSBG4及びCbSBG5のための組込/過剰発現カセット並びに制御カセットExCatの形質転換後)及びC.ボンビコラATCC 22214 ura-のうちLEU2遺伝子座をコロニーPCRにより増幅する。この場合に次のオリゴヌクレオチドを使用する:

【0142】
以下パラメーターをPCRのために使用する:1×:初期変性、94℃、3分;25×:変性、94℃、1:00分、アニーリング、60℃、1:00分;エロンゲーション、72℃、5:00分;1×:末端エロンゲーション、72℃、10分。増幅には、QIAGEN (Hilden)のTaq PCR Master Mix Kitを製造者の推奨に相応して使用する。そのつど10μlのPCR反応を引き続き0.8%のアガロースゲルで分離する。PRCの実施、アガロースゲル電気泳動、DNAのエチジウムブロミド染色及びPCR断片サイズの測定を当業者に知られている様式で行う。
【0143】
相応する遺伝子座の増幅の場合に表6に挙げられるPCR断片サイズが発生するものである:
表6:染色体性C.ボンビコラLEU2遺伝子座中へのSBG1-、SBG2-、SBG3-、SBG4-及びSBG5発現カセット並びに制御カセットExCatの相同性組み換え後の染色体性LEU2遺伝子座の増幅の際に又は非相同性組込の際に予期すべきPCR断片サイズ
【表6】

【0144】
C.ボンビコラATCC 22214 ura-からのLEU2遺伝子座の増幅の際に野生型シチュエーションの存在の場合に予期すべきサイズ2.2kbpを有する断片のみが達成される。
【0145】
CbSBG1、CbSBG2 mod、CbSBG3、CbSBG4 mod及びCbSBG5の過剰発現のための組込/過剰発現カセットを用いた形質転換後のC.ボンビコラATCC 22214形質転換体からのLEU2遺伝子座の増幅の際には、組込/過剰発現カセットIntExCbSBG1(配列番号70)、IntExCbSBG2(配列番号71)、IntExCbSBG3(配列番号72)、IntEx-CbSBG4(配列番号73)及びIntExCbSBG5(配列番号74)の成功した染色体性組込の際に予期すべき断片サイズ約5.5kbp、5.2kbp、4.6kbp、7.7kbp又は5.1kbpのみが達成される。
【0146】
従って、全ての5つの場合に、遺伝子CbSBG1、CbSBG2、CbSBG3、CbSBG4又はCbSBG5がC.ボンビコラATCC 22214 TSC3プロモーターの制御下にもたらされるクローンが同定でき、この結果、その過剰発現が推測できる。
【0147】
相応する株は、以下、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG1-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG2-TTSC3、C.ボンビコラ 22214 PTsc3-SBG3-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG4-TTSC3及びC.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG5-TTSC3と呼ばれる。
【0148】
例5:C.ボンビコラATCC 22214 ExCat、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG1-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG2-TTSC3、C.ボンビコラ ATCC 22214 PTsc3-SBG3-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG4-TTSC3及びC.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG5-TTSC3によるソホロリピッド形成の特性決定
YPD寒天プレート上で株C.ボンビコラATCC 22214 ExCat、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG1-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG2-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG3-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG4-TTSC3及びC.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG5-TTSC3の増殖を行う。ソホロリピッドの生産には、以下でSL生産培地と呼ばれる培地が使用される。これは、0.1% KH2PO4、0.5% MgSO4×7H2O、0.01% FeCl3、0.01% NaCl、0.01% ウラシル、0.4% 酵母エキス、0.1% 尿素、10.5% ナタネ油及び10% グルコースからなる。このpH値を4.5に調節し、この培地を続いてオートクレーブ(121℃、20分)を用いて滅菌する。培養の間のpH値の調節は必要でない。
【0149】
振盪フラスコ中のソホロリピッド生産の検査のためにまず予備培養物を適用する。このために、新規にYPD寒天プレート上に塗布する株のイノキュレート用エーゼを使用し、かつ10mlのYPD培地を100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で接種する。この培養を30℃及び200rpmで一晩行う。この予備培養物を、100mlのSL培地を1000mlのエルレンマイヤーフラスコ中に接種するために以下使用する(開始OD600 0.2)。この培養物を200rpm及び30℃で7日間培養し、毎日2mlのブイヨンの試料を取り出し、その際、試料採取前にこの培養培地の十分な混合について厳密に注意した。
【0150】
後続のクロマトグラフィ分析のための試料前処理を以下のように行う:容積式ピペット(Combitip)を用いて2mlの反応容器中に800μlのアセトンを装入し、この反応容器を蒸発を最小限にするためにすぐに閉鎖する。この後に200μlのブイヨンを添加する。ブイヨン/アセトン混合物のボルテックス処理後に、これらを1分間13000rpmで遠心分離し、この上清800μlをHPLC容器中に移す。
【0151】
ソホロリピッド又はオレイン酸の検出及び定量化のために、Evaporative Light Scattering Detektor (ELSD)を利用する。当初の測定をAgilent Technologies 1200系列(Santa Clara, california)及びZorbax SB-C8 Rapid Resolutionカラム(4.6×150mm、3.5μm、Agilent)を用いて実施する。この注入容積は5μlであり、この方法の通液時間は20分である。移動相としてH2O及び0.1%TFA(三フッ化酢酸、溶液A)及びメタノール(溶液B)を使用する。このカラム温度は40℃である。検出器としてELSD(検出温度60℃)及びDAD(ダイオードアレー、210nm)を使用した。この方法で使用される勾配は表3に挙げてある。
【0152】
コントロール株C.ボンビコラATCC 22214 ExCatと同様に全ての株はソホロリピッドを生産する。しかし、株C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG1-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG2-TTSC3、C.ボンビコラ ATCC 22214 PTsc3-SBG3-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG4-TTSC3及びC.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG5-TTSC3は、C.ボンビコラATCC 22214 ExCatに対してソホロリピッド形成の高められた空時収率を有する。C.ボンビコラATCC 22214 ExCatが選択された条件下で約2mgのソホロリピッドを1リットル、時間及びOD600あたりで生産する一方で、このパラメーターは株C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG1-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG2-TTSC3、C.ボンビコラ PTsc3-SBG3-TTSC3、C.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG4-TTSC3及びC.ボンビコラATCC 22214 PTsc3-SBG5-TTSC3では2.5mg〜6mgである。従って、酵素CbSBG1、CbSBG2、CbSBG3、CbSBG4及びCbSBG5の増強がC.ボンビコラATCC 22214中でソホロリピッド形成の増加を生じることが示されることができる。
【0153】
実施例6:N末端Hisタグを有するカンジダ・ボンビコラ遺伝子SBG2の過剰発現のためのベクターpTZ_E02_His-GlcTrI
大腸菌中のカンジダ・ボンビコラ ATCC22214遺伝子SBG2(配列番号03)の過剰発現のために、プラスミドpTZ_E02_His-GlcTrIを構築した。カンジダ・ボンビコラ ATCC22214からの染色体性DNAを、製造者の指示に応じたRoche Diagnostics (Mannheim)の"ExpandTM High Fidelity"-PCR-Kitを用いたPCRのための鋳型として使用した。SBG2遺伝子をオリゴヌクレオチド1373_GlcTrI_BsmBI_His_fp(配列番号76)及び1373_GlcTrI_AscI_rp(配列番号77)を用いて染色体性DNAから増幅し("PCR protocols. A guide to methods and applications" , 1990, Academic Press)、この過程で5′−末端に6倍のN末端ヒスチジンタグを取り付けた。更に、切断部位BsmBI及びAscIを導入した。このために以下オリゴヌクレオチドを使用した:

【0154】
このPCR産物(1435bp)をQIAquick PCR-Purification Kits (Qiagen, Hilden)を用いて製造者の指示に応じて精製し、BsmBI及びAsclで切断し、引き続き同様にして切断した、Trenzyme GmbH, Konstanz社の発現ベクターpTZ_E02 (pET24dベースベクター;Merck Chemicals, Darmstadt)中にライゲーションした。生じるプラスミドpTZ_E02_His-GlcTrI(配列番号78)は6700塩基対のサイズである。このライゲーション並びに化学的にコンピテントな大腸菌(E. coli)DH5a細胞(Gibco-BRL, Karlsruhe)の形質転換は当業者に知られているように行われた。このインサートの信頼性をDNA配列分析により検証した。
【0155】
プラスミドpTZ_E02_His-GlcTrIを形質転換を用いて大腸菌BL21(DE3)及び大腸菌Rosetta(DE3)の株(両者Merck Chemicals, Darmstadt)中に導入した。生じる株を大腸菌BL21(DE3) /pTZ_E02_His-GlcTrl及び大腸菌Rosetta (DE3) /pTZ_E02_His-GlcTrIと呼んだ。
【0156】
実施例7:N末端Hisタグを有するカンジダ・ボンビコラ遺伝子SBG5の過剰発現のためのベクターpTZ_E02_His-GlcTrII
大腸菌中のカンジダ・ボンビコラ ATCC22214遺伝子SBG5(配列番号06)の過剰発現のために、プラスミドpTZ_E02_His-GlcTrIIを構築した。カンジダ・ボンビコラATCC22214からの染色体性DNAを、製造者の指示に応じてRoche Diagnostics (Mannheim)の"ExpandTM High Fidelity"-PCR-Kitを用いたPCRのための鋳型として使用した。SBG5遺伝子をオリゴヌクレオチド1373_GlcTrII_BsmBI_His_fp(配列番号79)及び1373_GlcTrII_AscI_rp(配列番号80)を用いて染色体性DNAから増幅し("PCR protocols. A guide to methods and applications" , 1990, Academic Press)、この過程で5′−末端に6倍のN末端ヒスチジンタグを取り付けた。更に、切断部位BsmBI及びAscIを導入した。このために以下オリゴヌクレオチドを使用した:

【0157】
このPCR産物(1342bp)をQIAquick PCR-Purification Kits (Qiagen, Hilden)を用いて製造者の指示に応じて精製し、BsmBI及びAsclで切断し、引き続き同様にして切断した、Trenzyme GmbH, Konstanz社の発現ベクターpTZ_E02 (pET24dベースベクター;Merck Chemicals, Darmstadt) にライゲーションした。生じるプラスミドpTZ_E02_His-GlcTrII(配列番号81)は6607塩基対のサイズである。ライゲーション並びに化学的にコンピテントな大腸菌(E. coli)DH5a細胞(Gibco-BRL, Karlsruhe)の形質転換は当業者に知られているように行われた。このインサートの信頼性をDNA配列分析により検証した。
【0158】
プラスミドpTZ_E02_His-GlcTrIIを形質転換を用いて株大腸菌BL21(DE3)及び大腸菌Rosetta(DE3)(両者Merck Chemicals, Darmstadt)中に導入した。生じる株を大腸菌BL21(DE3) /pTZ_E02_His-GlcTrlI及び大腸菌Rosetta (DE3) /pTZ_E02_His-GlcTrIIと呼んだ。
【0159】
実施例8:N末端Hisタグを有するカンジダ・ボンビコラ遺伝子SBG3の過剰発現のためのベクターpTZ_E02_His-AcTr
大腸菌中のカンジダ・ボンビコラ ATCC22214遺伝子SBG3(配列番号04)の過剰発現のために、プラスミドpTZ_E02_His-AcTrを構築した。カンジダ・ボンビコラ ATCC22214からの染色体性DNAを、製造者の記載に応じてRoche Diagnostics (Mannheim)の"ExpandTM High Fidelity"-PCR-Kitを用いたPCRのための鋳型として使用した。SBG3遺伝子をオリゴヌクレオチド1373_AcTr_BsmBI_His_fp(配列番号82)及び1373_AcTr_AscI_rp(配列番号83)を用いて染色体性DNAから増幅し("PCR protocols. A guide to methods and applications" , 1990, Academic Press)、この過程で5′−末端に6倍のN末端ヒスチジンタグを取り付けた。更に、切断部位BsmBI及びAscIを導入した。このために以下オリゴヌクレオチドを使用した:

【0160】
このPCR産物(823bp)をQIAquick PCR-Purification Kits (Qiagen, Hilden)を用いて製造者の指示に応じて精製し、BsmBI及びAsclで切断し、引き続き同様にして切断した、Trenzyme GmbH, Konstanz社の発現ベクターpTZ_E02 (pET24dベースベクター;Merck Chemicals, Darmstadt) にライゲーションした。生じるプラスミドpTZ_E02_His-AcTr(配列番号84)は6088塩基対のサイズである。ライゲーション並びに化学的にコンピテントな大腸菌(E. coli)DH5a細胞(Gibco-BRL, Karlsruhe)の形質転換は当業者に知られているように行われた。このインサートの信頼性をDNA配列分析により検証した。
【0161】
プラスミドpTZ_E02_His-AcTrを形質転換を用いて株大腸菌BL21(DE3)及び大腸菌Rosetta(DE3)(両者Merck Chemicals, Darmstadt)中に導入した。生じる株を大腸菌BL21(DE3) /pTZ_E02_His-AcTr及び大腸菌Rosetta (DE3) /pTZ_E02_His-AcTrと呼んだ。
【0162】
実施例9:ソホロリピッド生合成に関与する酵素SBG2、SBG3及びSBG5の非相同性発現
項目1−3で構築した大腸菌株の個々のコロニーごとに、まず8時間5mlのLB培地(10g/l トリプトン、5g/l 酵母エキス、10g/l NaCl)中で50μg/mgのカナマイシンを用いて37℃及び175rpmで培養した。引き続き、100mlのLB培地を500mlの振盪フラスコ中で第1の予備培養物を用いて接種し、一晩37℃で175rpmで培養した。翌朝に、この第2の予備培養物を、0.1の開始OD600を有する1lのLB培地を接種するために利用した(5l 振盪フラスコ)。全ての培養物を37℃及び175rpmでインキュベーションした。培養物の成長をみかけ光学密度(OD600)をもとに追跡した。約0.3のOD600の達成時に培養温度37℃を20℃に低下させた。0D6000.6ではそのつどの目的遺伝子の発現を0.5mM IPTG(終濃度)の添加により誘導した。全培養工程の間に相応する抗生物質を添加した(カナマイシン50μg/ml)。
【0163】
IPTG添加前にも誘導24時間後にも試料を分析のために取り出した。この細胞をBugbuster (Merck Chemicals, Darmstadt)を用いて製造者の指示に応じて分解し、溶解性及び非溶解性タンパク質を相互に分離する。比較可能な量の細胞エキスをSDS−PAGEを用いて分離し、このゲルを引き続きコロイド状クーマシーを用いて染色する。全3つの、組み換えにより製造したヒスタグ化タンパク質Sbg2p、Sbg3p及びSbg5pについては、細胞エキスの溶解性分画中で過剰生産が検出できた。
【0164】
実施例10:ソホロリピッド生合成に関与する酵素Sbg2p、Sbg3p及びSbg5pの精製
遺伝子発現の誘導24時間後に細胞を遠心分離(8000g、20分、4℃)を用いて回収した。1lの培養物は約5gの湿潤バイオマスを生じた。この細胞ペレットを100mlの緩衝液A(100mM Tris、pH7.8、50mM NaCl、20mM イミダゾール)中で再懸濁し、これは付加的にプロテアーゼ阻害剤(Roche, 注文Nr. 11 873 580 001)を含有する。この再懸濁した細胞を6回の継代を通過させてMicrofluidizerによって分解した。更なる遠心分離工程(10000g、20分、4℃)後に、溶解性タンパク質分画を得るために、この上清を濾過した(孔径:0.45μm)。この目的タンパク質をHisタグアフィニティクロマトグラフィカラム(GE, HisTrap FF 1 ml カラム、注文Nr. 17-5319-01)により精製した。この流速は1m/分であった。リニア溶出0〜100%を緩衝液B(100mM Tris、pH7.8,50mM NaCl、500mM イミダゾール)を用いて行った。この場合に、カラム容積20倍の緩衝液Bを使用し、2mlの分画を集めた。タンパク質を有する溶出分画をプールし、濾過ユニットを用いて濃縮した(Amicon Ultra-15, NMWL 10 kDa Centricons, Millipore、注文Nr. UFC901024)。引き続き、そのつどのタンパク質分画をSephadex25(PD-10カラム、GE、注文Nr. 17-0851-01)を用いたゲル濾過を用いて最終的な緩衝液(100mM Tris、pH7.8、50mM NaCl)へと緩衝液交換した(umpuffern)。タンパク質精製をSDS-PAGEを用いて検証した。1lの培養物から3.3mgのSbg2p(タンパク質濃度1.0μg/μl)、7.3mgのSbg5p(タンパク質濃度2.2μg/μl)及び6.9mgのSbg3p(タンパク質濃度2.1μg/μl)に精製した。
【0165】
実施例11:ソホロリピッド生合成に関与する酵素Sbg2p、Sbg3p及びSbg5pの特性決定
ソホロリピッド生合成に関与する酵素Sbg2p、Sbg3p及びSbg5pの機能を検出するために、3つの精製した酵素Sbg2p、Sbg3p及びSbg5pをそのつど個々に並びに全ての可能性のある組み合わせにおいて酵素アッセイを実施した。この実施を全容積350μlにおいて以下のスキームに応じて行った:
【0166】
表7:酵素アッセイバッチの組成(μl)
【表7】

【0167】
この反応を14μlの13.4mMのエタノール性基質溶液(18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸)の添加により開始させ、6時間30℃で振盪下(600rpm)でインキュベーションした。引き続きこの反応を1.4mlのアセトンの添加により停止させた。未溶解成分を遠心分離(16100g、5分、RT)で沈殿させた。この上清を引き続き新規容器中に移し、真空蒸発器(25℃)を用いて当初の反応容積(350μl)に濃縮した。この試料をLC−ESI−MSを用いて分析し、この生成物の同定を相応する材料痕跡及びMSスペクトルの分析により行った。
【0168】
発生した生成物の同定のために5μlのUPLC設備Accela (Thermo Scientific, Dreieich)中に注入した。検査すべき物質を半UPLCカラム"Pursuit XRs ULTRA (C8, 2.8μm, 2.1 x 100 mm) (Varian, Darmstadt)を用いて分析した。この分離を25分以内のうちに移動相A1(H2O、0.1%(v/v)TFA)及び移動相B1(メタノール、0.1%(v/v)TFA)からなる勾配を用いて、流速0.3ml/分で40℃で行った。この勾配の時間経過は表8中に示されている。
【0169】
表8:HPLC勾配経過
【表8】

【0170】
この検出をDAD検出器を用いて波長範囲200〜600nmにおいて並びに質量選択的に高解像度FT−ICR質量分析機LTQ−FT(Thermo Scientific, Dreieich)を用いてスキャン範囲m/z100〜1000において行った。このイオン化をESI(electrospray ionization)を用いて行った。正確な質量及び化学的実験式をFT−ICR質量分析機を用いて、解像度R=100000及び質量正確度≦2ppmで算出した。
【0171】
コントロール反応として、基質UDPグルコース、アセチルCoA及び18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸のみを含むが、酵素を含まないバッチを使用した(表7参照)。この試料において、MSを用いて基質18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸(C18343、298,2502g/mol)のみを検出できた。
【0172】
バッチ2(表7参照)は基質の他に105μgのSbg3pを含有した。この試料において、バッチ1におけるのと同様に18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸のみを検出できた。
【0173】
バッチ3(表7参照)は基質の他に100μgのSbg2pを含有した。基質18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸の他に18(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸(実験式、C24448;分子量、460,3031g/mol)を検出した。このことは、Sbg2pがUDPグルコース及び18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を18(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換可能であることを裏付ける。
【0174】
バッチ4(表7参照)は基質の他に更に110μgのSbg5pを含有した。基質18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸の他に18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及び18−L[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸(実験式、C305413;分子量622,3559g/mol)を検出した。このことは、Sbg5pがUDPグルコース及び18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、更に18−L[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換可能であることを裏付ける。
【0175】
バッチ5(表7参照)は基質の他に更に100μgのSbg2p及び105μgのSbg3pを含有した。基質18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸の他に18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及び18−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸(実験式、C26469;分子量502.3136g/mol)を検出した。このことは、既にバッチ3中で示したように、Sbg2pがUDPグルコース及び18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換可能であることを確認し、さらに、Sbg3pが18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸をアセチルCoAの存在下で18(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へアセチル化できることを裏付ける。
【0176】
バッチ6(表7参照)は基質の他に更に110μgのSbg5p及び105μgのSbg3pを含有した。基質18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸の他に18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸、18−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸、18−L[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸、18−L[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸(実験式C325614;分子量664,3665g/mol)及び18−L[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−6″O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸(実験式C345815;分子量706,3770g/mol)を検出した。このことは、既にバッチ4で示したように、Sbg5pがUDPグルコース及び18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を18(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、更に18−L[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換できることを確認し、さらに、形成された生成物がアセチルCoAの存在下でSbg3pにより18−L[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸及び/又は18−L[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−6″−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸並びに18−L[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−6″−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へとアセチル化できることを裏付ける。
【0177】
バッチ7(表7参照)は基質の他に更に100μgのSbg2p及び110μgのSbg5pを含有した。基質18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸の他に18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及び18−L[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸が検出された。このことは、Sbg2p及びSbg5pがバッチ中でUDPグルコース及び18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、そして更に18−L[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換可能であることを裏付ける。
【0178】
バッチ8(表7参照)は基質の他に更に100μgのSbg2p、105μgのSbg3p及び110μgのSbg5pを含有した。基質18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸の他に18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸、18−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸、18−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸、18−L−[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸及び18−L−[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−6″−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸を検出した。このことは、既にバッチ7において示したように、Sbg2p及びSbg5pが一緒にUDPグルコース及び18−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を18−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、更に18−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換できることを確認し、かつ同様に既にバッチ5及び6において示したように、形成された生成物がアセチルCoAの存在下でSbg3pにより18−L−[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸及び/又は18−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−6″−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸並びに18−L−[(6′−O−アセチル−2′−O−β−D−グルコピラノシル−6″−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へとアセチル化できることを裏付ける。
【0179】
実施例12:カンジダ・ボンビコラATCC 22214中のアセチルトランスフェラーゼ(SBG3)の不活性化のための代わりの経路
遺伝子SBG3を代わりの経路で個々に不活性化し、この相応する突然変異体のフェノタイプをソホロリピッド生合成に関して特性決定した。C.ボンビコラATCC 22214中の相応する突然変異体の構築のために、まずCbSBG3のための欠失カセットをGeneArt AG (Regensburg)により合成した(配列番号14;実施例2参照のこと)。引き続き、Trenzyme GmbH (Konstanz)でC.ボンビコラATCC 22214のオロチジン−5−ホスファート−デカルボキシラーゼをコードする遺伝子CbURA3 (van Bogaert et al. Yeast. 2007. 24(3):201-8)をヒグロマイシン耐性カセットにより交換した。このために、ベクターp-Col-5(配列番号85)のDNAのヒグロマイシンカセットを以下のオリゴヌクレオチドを用いて増幅した:

【0180】
以下パラメーターをPCRのために使用した:1×:初期変性、98℃、3分;25×:変性、98℃、0:10分、アニーリング、60℃、0:30分;エロンゲーション、72℃、2:00分;1×:末端エロンゲーション、72℃、10分。増幅には、New England Biolabs (Frankfurt)のPhusionTM High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨に相応して使用した。PCR産物をQIAquick PCR-Purification Kit (Qiagen, Hilden)を用いて製造者の指示に応じて精製した。得られるPCR産物は1831bpのサイズを有した。PCRの実施、アガロース電気泳動を用いたPCRの成功した増幅の検証、DNAのエチジウムブロミド染色、PCR断片サイズの測定、PCR産物の精製及びDNA濃度測定を当業者に知られている様式で行った。ヒグロマイシンカセットをベクターpCR4_AcTr_URA(配列番号88)中にクローニングし、この中でベクターを制限エンドヌクレアーゼBglII及びPmllで線形化した。このインサートを制限エンドヌクレアーゼEcoRV及びBglIIで引き続くライゲーションのために前処理した。ライゲーション及び大腸菌DH5α細胞中の引き続く形質転換を、当業者に知られている様式で行った。このインサートの信頼性をDNA配列分析により検証した。
【0181】
生じたプラスミドはpCR4_AcTr_HygR(配列番号89)と呼ばれ、8578bpのサイズである。
【0182】
欠失カセットCbSbg3-hyg(配列番号90)は、クレブシエラ・ニューモニエ ヒグロマイシン耐性遺伝子(hph)からなり、これはヒグロマイシンBホスファターゼをコードする(Gritz L及びDavies J 1983 Plasmid-encoded hygromycin B resistance: the sequence of hygromycin B phosphotransferase gene and its expression in Escherichia coli and Saccharomyces cerevisiae . Gene 25 (2-3) : 179-188)。この耐性遺伝子のためのプロモーターとは、構成的ハイブリッドプロモーターhp4dである(Madzak et al. 2000, Strong hybrid promotors and integrative expression/secretion vectors for quasi-constitutive expression of heterologous proteins in the yeast Yarrowia lipolytica. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 2, 207 216)。この耐性遺伝子は、XPR2遺伝子のターミネーターによって隣接され、これはY,リポリティカからの細胞外プロテアーゼをコードする(Nicaud et al. 1989a. Cloning, sequencing and amplification of the alkaline extracellular protease (XPR2) gene of the yeast Yarrowia lipolytica . J. Biotechnol. 12, 285 298)。上流及び下流には、不活性化すべき遺伝子の隣合う領域の約1000bpの耐性遺伝子が隣接する。
【0183】
この隣接領域及びhph遺伝子の間にはそのつどloxP遺伝子座が導入され、これは場合によってhph遺伝子の欠失を、リコンビナーゼCreをコードする遺伝子の一時的な導入及びその機能的発現により可能にする(概要に関しては、Kuehn & Torres. Methods Mol Biol. 2002. 180:175-204を参照)。この欠失カセットは以下の表9中の記載に相応して構築されている:
【0184】
表9:C.ボンビコラATCC 22214のSbg3pをコードする構造遺伝子のための欠失カセットの構造
【表9】

【0185】
C.ボンビコラATCC 22214の引き続く形質転換のための欠失カセットを十分な量で提供するために、これをPCRで増幅した。この場合に次のオリゴヌクレオチドを使用した:

【0186】
以下パラメーターをPCRのために使用した:1×:初期変性、98℃、3分;25×:変性、98℃、0:10分、アニーリング、60℃、0:30分;エロンゲーション、72℃、2:00分;1×:末端エロンゲーション、72℃、10分。増幅には、New England Biolabs (Frankfurt)のPhusionTM High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨に相応して使用した。PCR産物をQIAquick PCR-Purification Kit (Qiagen, Hilden)を用いて製造者の指示に応じて精製した。PCRの実施、アガロース電気泳動を用いたPCRの成功した増幅の検証、DNAのエチジウムブロミド染色、PCR断片サイズの測定、PCR産物の精製及びDNA濃度測定を当業者に知られている様式で行った。
【0187】
C.ボンビコラATCC 22214の形質転換を、以前記載したように行った(van Bogaert et al. Yeast. 2008. 25:273-278); van Bogaert et al. FEMS Yeast Res. 2009. 9:610-617)。
【0188】
C.ボンビコラATCC 22214形質転換体中の遺伝子SBG3の欠失をCbSBG3のための欠失カセット(配列番号90)を用いた形質転換後に検証するために、そのつど5つの形質転換体及びC.ボンビコラATCC 22214のうちそのつどの遺伝子座をコロニーPCRで増幅した。この場合に次のオリゴヌクレオチドを使用した:

【0189】
以下パラメーターをPCRのために使用した:1×:初期変性、94℃、3分;25×:変性、94℃、1:00分、アニーリング、60℃、1:00分;エロンゲーション、72℃、5:00分;1×:末端エロンゲーション、72℃、10分。増幅には、QIAGEN (Hilden)のTaq PCR Master Mix Kitを製造者の推奨に相応して使用する。そのつど10μlのPCR反応を引き続き0.8%のアガロースゲルで分離した。PRCの実施、アガロースゲル電気泳動、DNAのエチジウムブロミド染色及びPCR断片サイズの測定を当業者に知られている様式で行った。
【0190】
C.ボンビコラATCC 22214からのCbSBG3遺伝子座の増幅の際に野生型シチュエーション存在の場合に予期すべき断片サイズ2839bpのみが算出された。
【0191】
SBG3遺伝子座の増幅では欠失カセットCbSBG3-hygの形質転換後の形質転換体から、CbSBG3の成功した染色体性欠失後に予期すべき断片サイズ4693bpのみが達成された。
【0192】
従って、遺伝子CbSBG3が染色体欠失されたクローンが同定できた。相応する株は更にC.ボンビコラATCC 22214 sbg3-hygと称呼した。
【0193】
実施例13:C.ボンビコラATCC 22214 sbg3-hygによるソホロリピッド形成の特性決定
株C.ボンビコラATCC 22214及びC.ボンビコラATCC 22214 sbg3-hygの増殖をYPD寒天プレート上で行った。ソホロリピッドの生産には、以下でSL生産培地と呼ばれる培地が使用された。これは、0.1% KH2PO4、0.5% MgSO4×7H2O、0.01% FeCl3、0.01% NaCl、0.4% 酵母エキス、0.1% 尿素、10.5% ナタネ油及び10% グルコースからなる。このpH値を4.5に調節し、この培地を続いてオートクレーブ(121℃、20分)を用いて滅菌した。培養の間のpH値の調節は必要でない。
【0194】
振盪フラスコ中のソホロリピッド生産の検査のためにまず予備培養物を適用した。このために、新規にYPD寒天プレート上に塗布する株のイノキュレート用エーゼを使用し、かつ10mlのYPD培地を100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で接種した。この培養を30℃及び200rpmで一晩行った。この予備培養物を、100mlのSL培地を1000mlのエルレンマイヤーフラスコ中に接種するために以下使用した(開始OD600 0.2)。この培養物を200rpm及び30℃で7日間培養し、毎日2mlのブイヨンの試料を取り出し、その際、試料採取前にこの培養培地の十分な混合について厳密に注意した。
【0195】
後続のクロマトグラフィ分析のための試料前処理を以下のように行った:容積式ピペット(Combitip)を用いて2mlの反応容器中に800μlのアセトンを装入し、この反応容器を蒸発を最小限にするためにすぐに閉鎖した。この後に200μlのブイヨンを添加した。ブイヨン/アセトン混合物のボルテックス処理後に、これらを1分間13000rpmで遠心分離し、この上清800μlをHPLC容器中に移した。
【0196】
ソホロリピッド又はオレイン酸の検出及び定量化のために、Evaporative Light Scattering Detektor (ELSD)を利用した。当初の測定をAgilent Technologies 1200系列(Santa Clara, california)及びZorbax SB-C8 Rapid Resolutionカラム(4.6×150mm、3.5μm、Agilent)を用いて実施した。この注入容積は5μlであり、この方法の通液時間は20分であった。移動相としてH2O及び0.1%TFA(三フッ化酢酸、溶液A)及びメタノール(溶液B)を使用した。このカラム温度は40℃であった。検出器としてELSD(検出温度60℃)及びDAD(ダイオードアレー、210nm)を使用した。この方法で使用される勾配は以下の表10に挙げてある。
【0197】
表10:ソホロリピッドのHPLCベースの定量化のために使用すべき、移動相の勾配プロファイルの説明
【表10】

【0198】
この分析は、C.ボンビコラATCC 22214及びC.ボンビコラATCC 22214 sbg3-hygがソホロリピッドを生産することを示した。
【0199】
LC−MS2を用いて、C.ボンビコラATCC 22214 sbg3-hygにより形成したソホロリピッドが、C.ボンビコラATCC 22214により形成したソホロリピッドとは対照的に、一般式(Ia)及び(Ib)の化合物[式中、R1=H及びR2=H(図1及び2参照)]のみに相応すること、そして、この化合物の濃度がC.ボンビコラATCC 22214と比較して10倍高められて存在すること、を検出した。このことはSbg3pの機能をソホロリピッド生合成においてアセチルトランスフェラーゼ(E4)として裏付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選択された酵素少なくとも1の、それぞれ以下に特定するような、その野生型に比較して変更した活性を有するように遺伝子工学により改変される、ソホロリピッドを形成する細胞:
配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63に対しアミノ酸残基25%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの参照配列 配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E1、その際、酵素E1のための酵素活性とは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号8又は配列番号11のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号8又は配列番号11に対しアミノ酸残基60%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの参照配列 配列番号8又は配列番号11を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E2、その際、酵素E2のための酵素活性とは、UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号11のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号11に対しアミノ酸残基60%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、参照配列 配列番号11を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E3、その際、酵素E3のための酵素活性とは、17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDP−グルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号9のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号9に対しアミノ酸残基50%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、配列番号9を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E4、その際、酵素E4のための酵素活性とは、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換する能力が理解される、
配列番号10のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号10に対しアミノ酸残基45%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、配列番号10を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する少なくとも1の酵素E5、その際、酵素E5のための酵素活性とは、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移す能力が理解される。
【請求項2】
少なくとも部分的にそのβ−酸化においてブロックされていることを特徴とする請求項1記載の細胞。
【請求項3】
変更した活性が増加した活性であることを特徴とする請求項1又は2記載の細胞。
【請求項4】
以下の酵素組み合わせ:
12、E13、E14、E15、E23、E24、E25、E34、E35、E45、E123、E124、E125、E134、E135、E145、E234、E245、E345、E1234、E2345、E1345、E1245、E1235、E1234及びE12345
の増加した活性を有することを特徴とする請求項3記載の細胞。
【請求項5】
酵素E3の減少した活性及び場合により以下の酵素組み合わせ:
12、E14、E15、E24、E25、E45、E124、E125、E145及びE1245
の増加した活性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の細胞。
【請求項6】
酵素E4の減少した活性及び場合により以下の酵素組み合わせ:
12、E13、E15、E23、E25、E35、E123、E125、E135及びE1235
の増加した活性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の細胞。
【請求項7】
酵素E3及びE4の減少した活性及び場合により以下の酵素組み合わせ:
12、E15、E25、E125
の増加した活性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の細胞。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の細胞であって、請求項10又は11記載の核酸少なくとも1で形質転換されることを特徴とする細胞。
【請求項9】
次の方法工程
I)請求項1から8の少なくともいずれか1項記載の細胞を炭素源を含む培地と接触させる工程、
II)細胞に前記炭素源からソホロリピッドを形成することを可能にさせる条件下で細胞を培養する工程、及び
III)場合によって、この形成されたソホロリピッドを単離する工程
を含むソホロリピッドを製造する方法。
【請求項10】
化粧用、皮膚用又は医薬用調製物、植物保護調製物並びにケア剤及び清浄化剤並びに界面活性剤濃縮物の製造のための請求項9記載の方法で得られるソホロリピッドの使用。
【請求項11】
以下の配列:
A)配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60又は配列番号62に応じた配列、
その際、配列番号2、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60又は配列番号62に応じた配列は、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質をコードする、
その際、配列番号3の配列は、UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質をコードする、
その際、配列番号4の配列は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、
又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換できるタンパク質をコードする、
その際、配列番号5の配列は、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移すことができるタンパク質をコードする、
その際、配列番号6の配列は、UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと、又は17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDP−グルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換できるタンパク質をコードする、
B)A)に応じた配列の1から誘導され、かつ、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60又は配列番号62に応じた配列と同じタンパク質又はペプチドをコードする、イントロン不含配列、
C)配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63に応じたアミノ酸配列を含むタンパク質又はペプチドをコードする配列、その際、配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63に応じたアミノ酸配列を含む前記タンパク質又はペプチドは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換することができる、
D)群A)〜C)の1に応じた配列と少なくとも80%同一である配列、
E)群A)〜D)の1に応じた配列の対ストランドとハイブリダイゼーションするか、又は遺伝暗号の縮重を考慮してハイブリダイゼーションするだろう配列、
F)1又は複数の塩基の置換、付加、逆位及び/又は欠失によって得られる、群A)〜E)の1に応じた配列の誘導体、及び
G)群A)〜F)の1に応じた配列に対する相補配列、
から選択されている単離DNA。
【請求項12】
請求項11に定義される群A)〜G)の1に記載のDNA配列を含むベクター。
【請求項13】
細胞の形質転換のための請求項12記載のベクターの使用。
【請求項14】
配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63、特に配列番号7のポリペプチド配列を有するか、又は、そのつどの参照配列 配列番号7、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61又は配列番号63、特に配列番号7に対しアミノ酸残基25%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの前記参照配列を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する酵素E1、その際、酵素E1のための酵素活性とは、Z−9−オクタデセン酸を17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号8又は配列番号11のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号8又は配列番号11に対しアミノ酸残基60%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、そのつどの参照配列 配列番号8又は配列番号11を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する酵素E2、その際、酵素E2のための酵素活性とは、UDP−グルコース及び17−ヒドロキシ−Z−9−オクタデセン酸を17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号11のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号11に対しアミノ酸残基60%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、参照配列 配列番号11を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する酵素E3、その際、酵素E3のための酵素活性とは、17−(β−D−グルコピラノシル−オキシ)−Z−9−オクタデセン酸及びUDP−グルコースを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸へと変換する能力が理解される、
配列番号9のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号9に対しアミノ酸残基50%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、配列番号9を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する酵素E4、その際、酵素E4のための酵素活性とは、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタートへと、又は、17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−モノアセタート及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと、又は17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン及びアセチル−補酵素Aを17−L−[(2′−O−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシル)−オキシ]−Z−9−オクタデセン酸−1′,4″−ラクトン−ジアセタートへと変換する能力が理解される、及び
配列番号10のポリペプチド配列を有するか、又は、配列番号10に対しアミノ酸残基45%までが欠失、挿入、置換又はこれら組み合わせによって変更されており、かつ、配列番号10を有する酵素の酵素活性のなお少なくとも50%を有するポリペプチド配列を有する酵素E5、その際、酵素E5のための酵素活性とは、ソホロリピッドを細胞から周囲媒体へと移す能力が理解される、
からなる群から選択された単離ポリペプチド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−511266(P2013−511266A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539252(P2012−539252)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065713
【国際公開番号】WO2011/061032
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】