説明

組成物、並びに、該組成物を用いた膜、電荷輸送層、有機電界発光素子、及び電荷輸送層の形成方法

【課題】シロキサンポリマーを有機電界発光素子用材料として用いた有機電界発光素子において、効率及び耐久性が向上した有機電界発光素子の作製に有用な組成物を提供すること。該組成物を用いた膜、電荷輸送層、有機電界発光素子、及び電荷輸送層の形成方法を提供すること。
【解決手段】(A)側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマーと、(B)少なくとも一種類の架橋剤と、(C)溶媒とを含有する組成物、並びに、該組成物を用いた膜、電荷輸送層、有機電界発光素子、及び電荷輸送層の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、並びに、該組成物を用いた膜、電荷輸送層、有機電界発光素子、及び電荷輸送層の形成方法に関する。本発明の組成物は、有機電界発光素子用組成物として有用である。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用したデバイスとして、有機電界発光素子(以下、OLED、有機EL素子ともいう)、有機半導体を利用したトランジスタなどの研究が活発に行われている。特に、有機電界発光素子は、固体発光型の大面積フルカラー表示素子や安価な大面積な面光源としての照明用途としての発展が期待されている。一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
【0003】
有機EL素子は、発光層及びその他の有機層を、例えば蒸着などの乾式法又は塗布などの湿式法により成膜することで作製することができるが、生産性などの観点から湿式法が注目されている。
塗布法にて複数の有機層を有する有機EL素子を作製する場合、ある有機層上に、別の有機層形成用塗布液を塗布すると、下層が溶解し、層混合が起こるという問題がある。
特に正孔注入層、又は正孔輸送層などの低バンドギャップ材料上に、発光層を塗布法により成膜する場合、低バンドギャップ材料と発光層とが混合することで、発光効率の低下につながる。
下層の溶解を防ぐ為に、下層に高分子材料を用いる方法や、下層を塗布後に架橋硬膜する方法が行われている。しかしながら、アクルレートやメタクリレートなど汎用的な高分子材料では、合成時に微量混入する重合開始剤の影響から、素子性能が低下する。また、ポリエーテルなど重合開始剤を用いない高分子材料でも膨潤することで上層材料の混入が生じてしまう。
一方、塗布後に架橋硬膜する方法でも、重合開始剤の素子への悪影響が問題となるため、スチリル化合物などによる熱重合法が検討されているが、硬膜に高い温度が必要であること、長時間を要することなどの問題がある。
【0004】
前記重合開始剤の問題について、重合時に重合開始剤を用いる必要がない高分子化合物としては、シロキサンポリマーがある。
シロキサンポリマーを有機電界発光素子用材料として用いたものとして、例えば特許文献1には、アリールアミン部位を有するシランカップリング剤と任意のシランカップリング剤とを混合し、ゾルゲル反応によって製造された正孔輸送性シロキサンポリマーが記載されている。
また、特許文献2には、2個以上のアリールアミン部位を有し、該部位とシロキサンポリマーのケイ素原子が直接結合し、かつ該部位で架橋されたシロキサンポリマー(架橋比率100%)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3640444号公報
【特許文献2】特開2000−80167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術における、シロキサンポリマーを有機電界発光素子用材料として用いた有機電界発光素子は、効率及び耐久性が不十分であり、それらの更なる向上が求められていた。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、シロキサンポリマーを有機電界発光素子用材料として用いた有機電界発光素子において、効率及び耐久性が向上した有機電界発光素子の作製に有用な組成物を提供することを目的とする。
また本発明の別の目的は、上記組成物を用いた膜、電荷輸送層、有機電界発光素子、及び電荷輸送層の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記状況を鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行なったところ、側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマーと、少なくとも一種類の架橋剤と、溶媒とを含有する組成物を用いることで上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0010】
[1](A)側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマーと、(B)少なくとも一種類の架橋剤と、(C)溶媒とを含有する、組成物。
[2]前記少なくとも一種類の架橋剤(B)が、アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物を含む、上記[1]に記載の組成物。
[3]前記アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物が、電荷輸送部位を有する、上記[2]に記載の組成物。
[4]前記アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物が、ビニル基を有する、上記[2]又は[3]に記載の組成物。
[5]前記少なくとも一種類の架橋剤(B)が、複数のビニル基を有する化合物を含む、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]前記複数のビニル基を有する化合物が、更に電荷輸送部位を有する、上記[5]に記載の組成物。
[7]前記シロキサンポリマー(A)の側鎖の電荷輸送部位が、正孔輸送部位である、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]前記溶媒(C)が、第一の溶媒として芳香族炭化水素系溶媒と、該第一の溶媒より比誘電率の高い第二の溶媒とを含有する、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の組成物を塗布し、塗布された該組成物を加熱することにより形成された膜。
[10]上記[9]に記載の膜である電荷輸送層。
[11]上記[10]に記載の電荷輸送層を含有する有機電界発光素子。
[12]上記1〜8のいずれか一項に記載の組成物を塗布し、塗布された該組成物を加熱することを含む、電荷輸送層の形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シロキサンポリマーを有機電界発光素子用材料として用いた有機電界発光素子において、効率及び耐久性が向上した有機電界発光素子の作製に有用な組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、上記組成物を用いた膜、電荷輸送層、有機電界発光素子、及び電荷輸送層の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0014】
本発明の組成物は、(A)側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマーと、(B)少なくとも一種類の架橋剤と、(C)溶媒とを含有する。
本発明の組成物の使用が、効率及び耐久性が向上した有機電界発光素子の作製に有用である理由は定かではないが、以下のように推測される。
本発明の組成物は塗布後、成膜時に加熱されることで、架橋剤(B)分子間、及び/又は架橋剤(B)と側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマー(A)との間で架橋反応が進行する。この架橋反応により、架橋剤(B)を含有しない組成物を成膜した際に形成される膜より、膜のガラス転移温度(Tg)が高くなると考えられる。これにより、膜の強度が向上するだけでなく、シロキサンポリマー(A)の側鎖に含まれる電荷輸送部位同士が適度な距離間隔を保つことが可能となり、そのような成膜により得られる膜を有機電界発光素子の層として用いた場合に、素子の効率及び耐久性が向上するものと考えられる。
本発明に係る組成物は、例えば有機電界発光素子用組成物であり、典型的には正孔輸送層形成用組成物である。以下、この組成物の構成を説明する。
【0015】
[1](A)側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマー
本発明で使用可能なシロキサンポリマーとしては、ポリマーの側鎖に電荷輸送部位を有するポリマーであれば、公知のポリマーが使用可能である。
ここで電荷輸送部位とは、ホールの移動度が10−6〜100cm/Vs、若しくは、電子の移動度が10−6〜100cm/Vsの構造部位を意味する。電荷輸送部位としては、正孔輸送部位、電子輸送部位、バイポーラ性輸送性部位等が挙げられる。
本発明のシロキサンポリマー(A)の側鎖の電荷輸送部位は、正孔輸送部位であることが好ましい。
本発明のシロキサンポリマー(A)は、下記一般式(1−a)又は下記一般式(1−b)で表される構造を有することが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
(一般式(1−a)、及び一般式(1−b)中、R11及びR12は、各々独立にアルキル基、又はアリール基を表し、Lは各々独立に単結合又は2価の連結基を表し、HLは各々独立に電荷輸送部位を表す。*はシロキサンポリマーのケイ素原子に結合する部位を表す。)
【0018】
一般式(1−a)、及び一般式(1−b)中、R11及びR12は、各々独立にアルキル基、又はアリール基を表す。
該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
11及びR12はアルキル基であることが好ましい。
【0019】
は単結合又は2価の連結基を表す。Lで表される2価の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい2価の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
またLで表される2価の連結基に含まれる炭素数は3以上であることが好ましい。2価の連結基Lの炭素数が3未満の場合、立体的に混み合う為に側鎖導入率が低下する問題があり、該炭素数が13以上の場合、絶縁性部位の割合が増加する為、シロキサンポリマーの電荷輸送性が低下してしまうという問題がある。これらを考慮すると、2価の連結基Lの炭素数は好ましくは3以上12以下である。
【0020】
HLは電荷輸送部位を表す。HLで表される電荷輸送部位としては、正孔輸送部位、電子輸送部位、バイポーラ性輸送性部位等が挙げられる。
正孔輸送部位としては、トリアリールアミン誘導体であるNPD、TPDなどの誘導体やカルバゾール誘導体、金属フタロシアニン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン誘導体等の公知の化合物から誘導される1価の基又は2価の連結基が挙げられる。
電子輸送部位としては、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェナントレン誘導体、トリフェニレン誘導体、シロール誘導体、Al錯体、Zn錯体等の公知の化合物から誘導される1価の基又は2価の連結基が挙げられる。
バイポーラ性輸送性部位としては、ベンゾオキサゾール誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体等の公知の公知の化合物から誘導される1価の基又は2価の連結基が挙げられる。
【0021】
下記一般式(1−a)又は一般式(1−b)で表される構造(繰り返し単位)のシロキサンポリマー(A)中の含有量は、シロキサンポリマー(A)中の全繰り返し単位に対し、5〜99mol%が好ましく、より好ましくは50〜95mol%、更に好ましくは75〜90mol%である。
【0022】
上記一般式(1−a)又は一般式(1−b)で表される構造以外の、シロキサンポリマー(A)に含まれていてもよい構造としては、シロキサン結合を有する限り特に限定されず、従来公知の構造を含みうる。
【0023】
上記一般式(1−a)又は一般式(1−b)で表される構造を有するシロキサンポリマー(A)は、対応するアルコキシシラン化合物を重縮合することにより得られる。例えば、ゾルゲル法により得られる。
【0024】
本発明のシロキサンポリマー(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1000〜10万の範囲であり、より好ましくは1200〜50000、更により好ましくは2000〜30000である。重量平均分子量を、1000〜10万とすることにより、溶媒への溶解性と成膜性の向上が両立できる。
【0025】
分散度(分子量分布)は、通常1.1〜3.0であり、好ましくは1.2〜2.0の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、電荷(正孔/電子)輸送の移動度に優れる。
【0026】
本発明のシロキサンポリマー(A)は、以下に説明するシロキサンポリマー(A−1)又はシロキサンポリマー(A−2)であってもよい。
[1−1]シロキサンポリマー(A−1)
シロキサンポリマー(A−1)は、下記一般式(2−1)で表される繰り返し単位を有するシロキサンポリマーである。
【0027】
【化2】

【0028】
(一般式(2−1)中、R21はアルキル基、又はアリール基を表し、Lは炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは2個以上のトリアリールアミンユニットを含む基を表す。)
【0029】
一般式(2−1)中、R21はアルキル基、又はアリール基を表す。
該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
21は溶媒溶解性及び成膜性の向上という理由からアルキル基であることが好ましい。
【0030】
一般式(2−1)中、HLは2個以上のトリアリールアミンユニットを含む基を表す。
シロキサンポリマー(A−1)は、結晶性の高いトリアリールアミンユニットを含むペンダント基をシロキサン主鎖の側鎖に有することでアモルファス性が上昇し、成膜性が向上したと考えられる。
HLは下記一般式(2−2)で表されることが好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
(一般式(2−2)中、Ar21、Ar22、及びAr24は各々独立にアリーレン基を表し、Ar23、Ar25、及びAr26は各々独立にアリール基を表す。Z22は2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。nが0の場合、Ar22とAr24は単結合で結合している。*22は一般式(2−1)におけるLと結合する部位を表す。)
【0033】
一般式(2−2)中、Ar21、Ar22、及びAr24は各々独立にアリーレン基を表す。該アリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリーレン基であり、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、トリフェニレニレン基、などが挙げられ、ペンダント基導入率、及び電荷輸送性の向上という理由から、好ましくは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、などが挙げられ、最も好ましくはフェニレン基、ナフチレン基である。
【0034】
一般式(2−2)中、Ar23、Ar25、及びAr26は各々独立にアリール基を表す。該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基などが挙げられ、ペンダント基導入率、及び電荷輸送性の向上という理由から、好ましくは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、などが挙げられ、最も好ましくはフェニレン基、ナフチレン基である。
【0035】
一般式(2−2)中、Ar21〜Ar26で表されるアリーレン基又はアリール基は非重合性の置換基を有してもよい。該置換基としては、好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、t−ブチル基が更に好ましい。)、シリル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基により置換されたシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。)、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)、シアノ基、シクロアルキル基(好ましくはシクロヘキシル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20であり、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。)などが挙げられる。
【0036】
一般式(2−2)において、Ar21、Ar22、及びAr24がフェニレン基であり、Ar23、Ar25、及びAr26がフェニル基又はナフチル基を表すことが好ましい。
【0037】
一般式(2−2)中、Z22は2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、シリレン基が好ましい。
22が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジフェニルメチレン基などが挙げられ、好ましくは、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジフェニルメチレン基である。
【0038】
22が表すシクロアルキレン基としては、炭素数1〜10のシクロアルキレン基が好ましく、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、などが挙げられ、好ましくは、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基である。
【0039】
22が表すシリレン基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基が置換したシリレン基であり、より好ましくはジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基であり、更に好ましくはジフェニルシリレン基である。
【0040】
一般式(2−2)中、nは0又は1を表す。nが0の場合、Ar22とAr24は単結合で結合している。共役系が拡がり電荷輸送性が向上するという理由から、nは0であることが好ましい。
【0041】
一般式(2−2)中、mは1以上の整数を表す。mはトリアリールアミンユニットの繰り返し数を表すものであり、mが2以上の場合、トリアリールアミンユニットどうしは、Ar25とZ22とで結合する。電荷輸送性と溶媒への溶解性の両立という観点から、mは好ましくは1〜9の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
=0かつm=1の場合、Ar22とAr24は単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、Ar22とAr24、Ar24とAr25が単結合で結合している。
【0042】
一般式(2−2)は下記一般式(2−5)〜(2−7)のいずれかで表されることが好ましい。
【0043】
【化4】

【0044】
(一般式(2−5)中、R251〜R278はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基を表す。ただし、R251〜R255のうちいずれか1つと、一般式(2−1)におけるLとが結合する。Z25は単結合又は2価の連結基を表す。)
【0045】
【化5】

【0046】
(一般式(2−6)中、R251〜R282はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シリル基を表す。ただし、R251〜R255のうちいずれか1つと、一般式(2−1)におけるLとが結合する。Z26は単結合又は2価の連結基を表す。)
【0047】
【化6】

【0048】
(一般式(2−7)中、R251〜R282はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はシリル基を表す。ただし、R251〜R255のうちいずれか1つと、一般式(2−1)におけるLとが結合する。Z27は単結合又は2価の連結基を表す。)
【0049】
一般式(2−5)〜(2−7)において、R251〜R282は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はシリル基を表す。
該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、t−ブチル基が更に好ましい。
該シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基がより好ましい。
該アルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
該シリル基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基により置換されたシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。
一般式(2−5)〜(2−7)において、R251〜R282は水素原子、又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0050】
一般式(2−5)〜(2−7)において、Z25〜Z27は単結合又は2価の連結基を表す。該2価の連結基の具体例及び好ましい範囲は、前記Z22と同様である。Z25〜Z27は単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はシリレン基が好ましく、単結合又はジフェニルシリレン基がより好ましい。
【0051】
一般式(2−5)〜(2−7)において、R251〜R255のうちいずれか1つと、一般式(2−1)におけるLとが結合する。
【0052】
一般式(2−1)中、Lは炭素数3以上の2価の連結基を表す。
に含まれる炭素数は3以上である。Lの炭素数が3未満であると、剛直で側鎖の柔軟性が低下することで、該シロキサンポリマー(A−1)を成膜して得られる膜の膜質が低下する。また、Lの炭素数が3未満であると、シロキサンポリマー(A−1)の溶媒への溶解性も低下する。
は、絶縁性を有する部位であるため、シロキサンポリマー(A−1)の電荷輸送性を考慮すると、Lの炭素数は好ましくは3以上12以下であり、より好ましくは3以上10以下であり、更に好ましくは3以上7以下である。
また、本発明におけるシロキサンポリマー(A−1)を用いることで、有機EL素子特性において駆動電圧が大幅に低下するという予想外の効果が得られた。これは、トリアリールアミンユニットを有するペンダント基と、シロキサン主鎖のケイ素原子を、炭素数3以上のリンカーで連結することで、フレキシブルなリンカーを介して剛直なアリールアミンユニットをペンダントしているため、アリールアミンユニットの重なりが増したことで正孔移動度が上昇したためと推測される。
【0053】
該2価の連結基Lは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい2価の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
【0054】
は下記一般式(2−3)で表されることがより好ましい。
【0055】
【化7】

【0056】
(一般式(2−3)中、R22は水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。*23は一般式(2−1)におけるケイ素原子と結合する部位を表し、*24は一般式(2−1)におけるHLと結合する部位を表す。)
【0057】
一般式(2−3)中、R22は水素原子又はアルキル基を表す。該アルキル基としては、溶媒溶解性及び電荷輸送性という理由から、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
22は水素原子又はメチル基が特に好ましい
【0058】
一般式(2−3)中、Tは2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、2価の炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、などが挙げられ、溶媒溶解性及び電荷輸送性という理由から、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基である。
また、該アルキレン基中には、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を含んでもよく、該シクロアルキレン基、又はアリーレン基としては後述するTが表すシクロアルキレン基、又はアリーレン基と同様のものが挙げられる。
【0059】
が表すシクロアルキレン基としては、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、好ましくは、シクロヘキシレン基である。
が表すアリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、トリフェニレニレン基などが挙げられ、好ましくは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基である。
【0060】
としてはアルキレン基が好ましい。
【0061】
一般式(2−3)中、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表す。化学的安定性という理由から、Wは酸素原子が好ましい。
一般式(2−3)中、Vは2価の連結基を表す。Vの具体例及び好ましい範囲は前記Tの具体例及び好ましい範囲と同様である。
一般式(2−3)中、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。化学的安定性という理由から、Xは酸素原子が好ましい。
【0062】
一般式(2−3)中、pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは1〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。sが0の場合、TとVとは単結合で結合している。uが0の場合、WとXとは単結合で結合している。zが0の場合、Vは一般式(2−1)におけるHLと直接結合している。
【0063】
シロキサンポリマー(A−1)は、10〜50量体であることが好ましく、より好ましくは、30〜50量体である。50量体以上では、溶媒への溶解性が低下する。10量体以上であることで、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさないため好ましい。
【0064】
シロキサンポリマー(A−1)は、前記一般式(2−1)で表される構造以外の構造単位を含んでいてもよい。含んでもよい構造単位としては、−(SiR1112O)−単位などが挙げられる。R11及びR12はそれぞれ独立にアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。
シロキサンポリマー(A−1)において、−(SiR1112O)−単位の含有量は、前記一般式(2−1)で表される構造単位の合計の含有量に対して、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下であり、更に好ましくは−(SiR1112O)−単位を含まないことが好ましい。
【0065】
シロキサンポリマー(A−1)において、化学的安定性の低下若しくは不純物と反応することで電荷トラップサイトとなる可能性があるという理由から、主鎖中のケイ素原子に対する、未反応部位であるSi−H残渣の比率が0〜20モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
【0066】
シロキサンポリマー(A−1)の質量平均分子量(Mw)は10〜10であることが好ましく、10〜10であることがより好ましい。シロキサンポリマー(A−1)の数平均分子量(Mn)は10〜10であることが好ましく、10〜10であることがより好ましい。シロキサンポリマー(A−1)のMw及びMnはGPCにより測定でき、より詳細には、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求められる。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用できる。
シロキサンポリマー(A−1)の分散度(Mw/Mn)は1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。
【0067】
〔シロキサンポリマー(A−1)の合成方法〕
シロキサンポリマー(A−1)は、ポリメチルハイドロシロキサン等のポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンに、2個以上のアリールアミンユニットと炭素数3以上の連結基となる部位を有するモノマーをハイドロシリレーション反応させることで得ることができる。
ハイドロシリレーション反応を用いてシロキサンポリマーを得る方法は、塩素化シランの加水分解による脱水縮合法によりシロキサンポリマーを得る方法比べて、以下の点で優れる。
i)未反応の水酸基が残り、収率が高くなる。
ii)シロキサンポリマーの分子量分布が狭く、また再現性が向上する。
iii)低分子量体の環状シロキサンが生成しない(加水分解と脱水縮合を同時進行させる合成法では、低分子量体の環状シロキサンが生成し(実験化学講座 第4版 28巻)、該環状シロキサンは揮発性が高いため、有機EL素子作製プロセス中に素子外に蒸気となって拡散することが想定される。また、環状シロキサンは経時で二酸化ケイ素、二酸化炭素、水に分解するため、製造後の素子性能低下の懸念が大きい。)。
iv)酸が生じない(塩素化シランの加水分解では塩酸が生じて、これが酸触媒として機能することで重合が進行する(実験化学講座 第4版 28巻)。酸性条件下ではアミン化合物は分解の懸念がある)。
【0068】
ポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは、一般的に知られた脱水縮合法により得ることができ、分子量は反応時間及び反応温度を調節することで調整できる。また、末端部位はトリアルキルシラノールによりエンドキャップが可能である。こうして得られたポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは分取GPCを用いることで所望の分子量成分を分布狭く得られることができる。
【0069】
2個以上のアリールアミンユニットと炭素数3以上の連結基となる部位を有するモノマーとしては、下記一般式(2−4)で表される化合物であることが好ましい。
【0070】
【化8】

【0071】
(一般式(2−4)中、R23は水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。一般式(2−4)中、Ar21、Ar22、及びAr24は各々独立にアリーレン基を表し、Ar23、Ar25、及びAr26は各々独立にアリール基を表す。Z22は2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。nが0の場合、Ar22とAr24は単結合で結合している。)
【0072】
一般式(2−4)中、R23、T、W、V、X、p、s、u、zは前記一般式(2−3)におけるR22、T、W、V、X、p、s、u、zと同様である。Ar22、Ar24、及びAr25は前記一般式(2−2)におけるAr22、Ar24、及びAr25と同様である。Ar21、Ar23及びAr26は前記一般式(2−2)におけるAr23及びAr26と同様である。Z22、n、mは前記一般式(2−2)におけるZ22、n、mと同様である。
【0073】
一般式(2−4)で表されるモノマー化合物の具体例を以下に示すが、本発明においてはこれらに限定されない。
【0074】
【化9】

【0075】
【化10】

【0076】
【化11】

【0077】
【化12】

【0078】
【化13】

【0079】
シロキサンポリマー(A−1)を合成する際の各化合物の仕込み比(モル比)は、好ましくは、前記アルコキシシランを脱水縮合して得られる重縮合体:一般式(2−4)で表されるモノマー化合物が、未反応Si−Hの割合を減らすことが好ましいという理由から、1:1であり、より好ましくは0.9:1である。
【0080】
合成における反応温度は、反応性及び基質が均一系での反応という理由から、好ましくは40〜110℃であり、より好ましくは80〜110℃である。
反応時間は3時間〜48時間が好ましく、8時間〜48時間がより好ましい。
反応における触媒としては、ジシクロペンタジエニル白金触媒が好ましい。
溶媒としては、トルエンが好ましい。
また、シロキサンポリマー(A−1)の合成においては、重合開始剤は不要であり、有機電界発光素子への重合開始剤の混入による悪影響が起こらない。
【0081】
[1−2]シロキサンポリマー(A−2)
シロキサンポリマー(A−2)は、2個以上のトリアリールアミンユニットを一つのペンダント基として有し、該ペンダント基が炭素数3以上の2価の連結基を介してケイ素原子と連結し、かつ前記ペンダント基の0.1%以上10%以下が2個以上のケイ素原子と連結した構造を有する。
【0082】
シロキサンポリマー(A−2)が有するペンダント基は2個以上のトリアリールアミンユニットを有する。ここで、ペンダント基とは、シロキサンポリマー(A−2)における主鎖に含まれる基ではなく、側鎖の一部として含まれる基を表す。
【0083】
トリアリールアミンユニットとは、窒素原子に3つのアリール基が置換した構造を有する部位であり、本発明におけるシロキサンポリマー(A−2)が有する1つのペンダント基には、該ユニットを2個以上有する。
【0084】
本発明におけるシロキサンポリマー(A−2)は、下記一般式(3−a)で表される構造と下記一般式(3−b)で表される構造とを有することが好ましい。
【0085】
【化14】

【0086】
(一般式(3−a)、及び一般式(3−b)中、R31及びR32は、各々独立にアルキル基、又はアリール基を表し、Lは各々独立に炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは各々独立に2個以上のトリアリールアミンユニットを含むペンダント基を表す。x及びyは各シロキシ部位の数を表し、x:yは99.9:0.1〜90:10であり、x+yは10以上50以下である。*はシロキサンポリマー(A−2)のケイ素原子に結合する部位を表す。)
【0087】
一般式(3−a)で表される構造と一般式(3−b)で表される構造とを有するシロキサンポリマー(A−2)(以下、シロキサンポリマー(A−2−1)ともいう)は、一般式(3−a)で表される構造と一般式(3−b)で表される構造とが連続していても、連続していなくても良い。すなわち、シロキサンポリマー(A−2−1)は、一般式(3−a)で表される構造と一般式(3−b)で表される構造とのランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。
【0088】
一般式(3−a)、及び一般式(3−b)中、R31及びR32は、各々独立にアルキル基、又はアリール基を表す。
該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
31及びR32はアルキル基であることが好ましい。
【0089】
一般式(3−a)、及び一般式(3−b)中、HLは各々独立に2個以上のトリアリールアミンユニットを含むペンダント基を表す。HLは下記一般式(3−2)で表されることが好ましい。
【0090】
【化15】

【0091】
(一般式(3−2)中、Ar31、Ar32、Ar34、及びAr35は各々独立にアリーレン基を表し、Ar33及びAr36は各々独立にアリール基を表す。Z32は2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、Ar32とAr34は単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、Ar32とAr34、Ar34とAr35が単結合で結合している。*32及び*33は一般式(3−a)又は一般式(3−b)におけるLと結合する部位、又は水素原子と結合する部位を表す。)
【0092】
一般式(3−2)中、Ar31、Ar32、Ar34、及びAr35は各々独立にアリーレン基を表す。該アリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリーレン基であり、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、トリフェニレニレン基などが挙げられ、イオン化ポテンシャルの最適化や分子間の軌道の重なりを増加させ電荷注入・輸送性を増加させるという理由から、Ar31、Ar35は、フェニレン基、ナフチレン基が好ましく、Ar32、Ar34は、フェニレン基、フルオレニレン基、アントラセニレン基が好ましい。
【0093】
一般式(3−2)中、Ar33及びAr36は各々独立にアリール基を表す。該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基などが挙げられ、イオン化ポテンシャルの最適化や分子間の軌道の重なりを増加させ電荷注入・輸送性を増加させるという理由から、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。
【0094】
一般式(3−2)中、Ar31〜Ar36で表されるアリーレン基又はアリール基は置換基を有してもよい。該置換基としては、好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、t−ブチル基が更に好ましい。)、シリル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基により置換されたシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。)、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20であり、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。)などが挙げられる。
【0095】
一般式(3−2)において、Ar31、Ar32、Ar34、及びAr35がフェニレン基であり、Ar33及びAr36がナフチレン基を表すことが特に好ましい。
【0096】
一般式(3−2)中、Z32は2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、シリレン基が好ましい。
32が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基などが挙げられ、好ましくは、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基である。
【0097】
32が表すシクロアルキレン基としては、炭素数1〜10のシクロアルキレン基が好ましく、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基などが挙げられ、好ましくは、シクロヘキシレン基、である。
【0098】
32が表すシリレン基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が置換したシリレン基であり、より好ましくはジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基である。
【0099】
一般式(3−2)中、nは0又は1を表す。イオン化ポテンシャルを制御するために、nは0と1から適宜選択できる。
一般式(3−2)中、mは1以上の整数を表す。mはトリアリールアミンユニットの繰り返し数を表すものであり、mが2以上の場合、トリアリールアミンユニットどうしは、Ar35とZ32とで結合する。電荷輸送性とイオン化ポテンシャルの観点から適宜選択することができる。mは好ましくは1〜9の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
=0かつm=1の場合、Ar32とAr34は単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、Ar32とAr34、Ar34とAr35が単結合で結合している。
一般式(3−2)中、*32及び*33は一般式(3−a)又は一般式(3−b)におけるLと結合するか、又は水素原子と結合する部位を表す。*32が水素原子と結合する部位を表す場合、水素原子と結合したAr31は該水素原子とともにアリール基を形成する。*33が水素原子と結合する部位を表す場合、水素原子と結合したAr35は該水素原子とともにアリール基を形成する。
【0100】
一般式(3−a)、及び一般式(3−b)中、Lは各々独立に炭素数3以上の2価の連結基を表す。
に含まれる炭素数は3以上である。2価の連結基Lの炭素数が3未満の場合、立体的に混み合う為に側鎖導入率が低下する問題があり、該炭素数が3以上の場合、絶縁性部位の割合が増加する為、シロキサンポリマー(A−2)の電荷輸送性が低下してしまうという問題がある。これらを考慮すると、2価の連結基Lの炭素数は好ましくは3以上12以下である。
また、シロキサンポリマー(A−2)を用いることで、有機EL素子特性において駆動電圧が大幅に低下するという予想外の効果が得られた。これは、2個以上のトリアリールアミンユニットを有するペンダント基と、シロキサン主鎖のケイ素原子を、炭素数3以上のリンカーで連結することで、立体障害が緩和され、かつリンカーのフレキシビリティが増加したことで、アリールアミンユニットの重なりが増し、電荷移動度が上昇したためと推測される。
シロキサンポリマー(A−2)に含まれる絶縁性部位と電荷輸送性部位の質量比は5:95〜35:65が好ましく、10:90〜25:75がより好ましい。ここで、絶縁性部位とは電荷を流さない部位のことを指し、本発明におけるシロキサン主鎖やリンカー部位のことを指す。また、電荷輸送性部位とは電荷を流す部位のことを指し、本発明におけるトリアリールアミン部位のことを指す。
【0101】
該2価の連結基Lは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい2価の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
【0102】
は下記一般式(3−3)で表されることがより好ましい。
【0103】
【化16】

【0104】
(一般式(3−3)中、R33は水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。*34は一般式(3−a)若しくは一般式(3−b)における主鎖中のケイ素原子と結合する部位を表し、*35は一般式(3−a)若しくは一般式(3−b)におけるHLと結合する部位を表す。)
【0105】
一般式(3−3)中、R33は水素原子又はアルキル基を表す。該アルキル基としては、側鎖導入反応率の低下抑制及び化合物の結晶性を低下させるという理由から、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0106】
一般式(3−3)中、Tは2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、2価の炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、などが挙げられ、絶縁性部位を少なくし、かつ化合物の結晶性を低下させるという理由から、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、である。
また、該アルキレン基中には、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を含んでもよく、該シクロアルキレン基、又はアリーレン基としては後述するTが表すシクロアルキレン基、又はアリーレン基と同様のものが挙げられる。
【0107】
が表すシクロアルキレン基としては、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基などが挙げられ、好ましくは、シクロヘキシレン基である。
が表すアリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられ、好ましくは、フェニレン基である。
【0108】
としてはアルキレン基が好ましい。
【0109】
一般式(3−3)中、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表す。化合物の結晶性を低下させること、電荷トラップにつながらないこと、結合自身の安定性を向上させるという理由から、Wは酸素原子が好ましい。
一般式(3−3)中、Vは2価の連結基を表す。Vの具体例及び好ましい範囲は前記Tの具体例及び好ましい範囲と同様である。
一般式(3−3)中、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。ペンダント基の電荷耐性を低下させないという理由から、Xは−CH−が好ましい。
【0110】
一般式(3−3)中、pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。sが0の場合、TとVとは単結合で結合している。uが0の場合、WとXとは単結合で結合している。zが0の場合、Vは一般式(3−a)若しくは一般式(3−b)におけるHLと直接結合している。
絶縁性部位を小さくすることと化合物の結晶性を低下させることを両立するという理由から、p、s、u、zは、これらの合計が1〜10になることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。
【0111】
一般式(3−3)中、*34は一般式(3−a)若しくは一般式(3−b)における主鎖中のケイ素原子と結合する部位を表し、*35は一般式(3−a)若しくは一般式(3−b)におけるHLと結合する部位を表す。
【0112】
一般式(3−a)及び一般式(3−b)中、x及びyは、それぞれ一般式(3−a)で表される構造、及び一般式(3−b)で表される構造の数を表し、x:yは99.9:0.1〜90:10であり、x+yは10以上50以下である。
/yが99.9/0.1以下であることで、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こしにくくなるため好ましい。更に、通常は、有機電界発光素子においては、正孔輸送層とその上層とが界面混合をしたほうが電荷注入性が向上する(駆動電圧が低下する)と考えられているが、本発明では、界面混合を抑制することで、発光効率を向上させつつ、駆動電圧も低下させるという予想外の有利な効果を得ることができた。
/yが90/10以上であることで、ひび割れなどの膜質低下が起こりにくいため好ましい。
:yは、好ましくは99:1〜90:10であり、より好ましくは、97:3〜92:8である。
+yは、溶媒への溶解性、化合物純度制御の容易性という理由から、好ましくは、10以上45以下であり、より好ましくは15以上40以下であり、特に好ましくは15以上35以下である。
:yは一般式(3−a)及び一般式(3−b)の各々に対応するモノマーの仕込み比を調整することで制御することができる。
【0113】
一般式(3−b)中、*はシロキサンポリマー(A−2)のケイ素原子に結合する部位を表す。該ケイ素原子は、一般式(3−a)及び一般式(3−b)中に含まれる主鎖とは異なる主鎖中のケイ素原子であることが、溶媒への溶解性、溶剤による膨潤抑制という理由から好ましい。
【0114】
シロキサンポリマー(A−2)は、前記一般式(3−a)又は一般式(3−b)で表される構造以外の構造単位を含んでいてもよい。含んでもよい構造単位としては、−(SiR1112O)−単位などが挙げられる。R11及びR12はそれぞれ独立にアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。
シロキサンポリマー(A−2)において、−(SiR1112O)−単位の含有量は、前記一般式(3−a)で表される構造及び一般式(3−b)で表される構造単位の合計数に対して、好ましくは50%以下であり、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは−(SiR1112O)−単位を含まないことが好ましい。
【0115】
シロキサンポリマー(A−2)の質量平均分子量(Mw)は10000〜300000であることが好ましく、20000〜200000であることがより好ましく、50000〜150000であることが特に好ましい。シロキサンポリマー(A−2)の数平均分子量(Mn)は5000〜300000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましく、30000〜150000であることが特に好ましい。シロキサンポリマー(A−2)のMw及びMnはGPCにより測定でき、より詳細には、THF(テトラヒドロフラン)あるいはN−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求められる。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用できる。
シロキサンポリマー(A−2)の分散度(Mw/Mn)は1〜2であることが好ましく、1〜1.75であることがより好ましい。
【0116】
〔シロキサンポリマー(A−2)の合成方法〕
シロキサンポリマー(A−2)は、ポリメチルハイドロシロキサン等のポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンに、2個以上のアリールアミンユニットと炭素数3以上の連結基となる部位を有し、1個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマー、及び2個以上のアリールアミンユニットと炭素数3以上の連結基となる部位を有し、2個以上のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーをハイドロシリレーション反応により重合、及び架橋することで得ることができる。
【0117】
ポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは、一般的に知られた脱水縮合法により得ることができ、分子量は反応時間及び反応温度を調節することで調整できる。また、末端部位はトリアルキルシラノールによりエンドキャップが可能である。こうして得られたポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは分取GPCを用いることで所望の分子量成分を分布狭く得られることができる。
【0118】
ポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは、アルコキシシラン、アリールオキシシランの重縮合により得ることができる。アルコキシシラン、アリールオキシシランとしては、例えば、メチルジメトキシヒドロシラン、エチルジメトキシヒドロシランフェニルジメトキシヒドロシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、絶縁部位の割合を低下し、ポリシロキサン化合物の結晶性を低下させるという理由から、アルコキシシランである。
【0119】
1個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーとしては、前述のペンダント基の構造に、重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を有する化合物を挙げることができ、好ましくは、前記炭素数3以上の2価の連結基となる部分にエチレン性不飽和基を有する化合物である。
1個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーは下記一般式(3−4)で表されることが好ましい。
【0120】
【化17】

【0121】
(一般式(3−4)中、R33は水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。Ar31、Ar32、及びAr34は各々独立にアリーレン基を表し、Ar33、Ar35及びAr36は各々独立にアリール基を表す。Z32は2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、Ar32とAr34は単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、Ar32とAr34、Ar34とAr35が単結合で結合している。)
【0122】
一般式(3−4)中、R33、T、W、V、X、p、s、u、zは前記一般式(3−3)におけるR33、T、W、V、X、p、s、u、zと同様である。Ar32、Ar34、及びAr35は前記一般式(3−2)におけるAr32、Ar34、及びAr35と同様である。Ar31、Ar33及びAr36は前記一般式(3−2)におけるAr33及びAr36と同様である。Z32、n、mは前記一般式(3−2)におけるZ32、n、mと同様である。
【0123】
一般式(3−4)で表されるモノマー化合物の具体例としては、前記一般式(2−4)で表されるモノマー化合物の具体例と同様のものが挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されない。
【0124】
一般式(3−4)で表されるモノマー化合物は、アリールハライドとアリールアミンのPd触媒を用いたカップリング反応を段階的におこない、非対称構造とすることにより合成することができる。ここで、重合性の反応部位は、初めの反応工程に導入しても最後の反応工程に導入しても良いが、好ましくは最後の反応工程である。
反応温度は、50〜150℃が好ましく、60〜130℃がより好ましい。
反応時間は、1時間〜3日が好ましく、2時間〜1日がより好ましい。
溶媒としては、Pdカップリング反応に利用できるものであれば何でも良いが、特にトルエン、DME(1,2−ジメトキシエタン)、THF、DMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)が好ましい。
【0125】
シロキサンポリマー(A−2)において、2個以上のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーとしては、前記ペンダント基の構造に、重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を2個以上有する化合物を挙げることができ、好ましくは、前記炭素数3以上の2価の連結基となる部分にエチレン性不飽和基を有する化合物である。
以下、2個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーについて説明するが、3個以上のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーについても同様である。
2個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーとしては下記一般式(3−5)で表されることが好ましい。
【0126】
【化18】

【0127】
(一般式(3−5)中、R33は水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。Ar31、Ar32、Ar34、及びAr35は各々独立にアリーレン基を表し、Ar33及びAr36は各々独立にアリール基を表す。Z32は2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、Ar32とAr34は単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、Ar32とAr34、Ar34とAr35が単結合で結合している。)
【0128】
一般式(3−5)中、R33、T、W、V、X、p、s、u、zは前記一般式(3−3)におけるR33、T、W、V、X、p、s、u、zと同様である。Ar32、Ar34、及びAr35は前記一般式(3−2)におけるAr32、Ar34、及びAr35と同様である。Ar31、Ar33及びAr36は前記一般式(3−2)におけるAr31、Ar33及びAr36と同様である。Z32、n、mは前記一般式(3−2)におけるZ32、n、mと同様である。
【0129】
一般式(3−5)で表されるモノマー化合物は、一般式(3−4)と同様の反応を用いることにより合成することができる。ここで、重合性の反応部位は、最後の反応工程で2個同時に導入することが好ましい。
【0130】
シロキサンポリマー(A−2)を合成する際の各化合物の仕込み比(モル比)によって、架橋比率を制御することができ、好ましくは、前記アルコキシシランを重縮合して得られる重縮合体の一つのSi−Hに対して、1個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーを1〜1.2倍加えることが好ましく、2個以上のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーは、1個のケイ素原子と結合するペンダント基に対して、所望の架橋比率となる割合で加えることが好ましい。
【0131】
合成における反応温度は、モノマーの分解や二重結合の内部異性化や触媒活性を高めるという理由から、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは80〜120℃である。
反応時間はモノマーの反応性によって大きく異なるが、30分〜3日が好ましく、30分〜1日がより好ましい。
反応における触媒としては、白金触媒が好適に用いられる。溶媒としては、トルエンが好適に用いられる。
また、シロキサンポリマー(A−2)の合成においては、重合開始剤は不要であり、有機電界発光素子への重合開始剤の混入による悪影響が起こらない。
【0132】
本発明の組成物において、シロキサンポリマー(A)の組成物全体中の配合率は、組成物の全固形分中50〜95質量%が好ましく、より好ましくは60〜90質量%である。
また、本発明のシロキサンポリマー(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用(ポリマーブレンド)してもよい。
【0133】
[2](B)架橋剤
本発明の組成物は、少なくとも一種類の架橋剤(以下、“架橋剤(B)”ともいう)を含有する。本発明の組成物に使用可能な架橋剤としては、架橋剤(B)分子間、及び/又は架橋剤(B)と側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマー(A)との間で架橋反応が進行する限り特に限定されず、公知の架橋剤を有効に使用することができる。
少なくとも一種類の架橋剤(B)は好ましくは、(1)アルコキシシラン化合物若しくはクロロシラン化合物、及び/又は(2)複数のビニル基を有する化合物を含有する。以下それぞれについて説明する。
【0134】
(1)アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物
本発明の組成物がアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物を含有する場合、該組成物を塗布後、加熱することにより、アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物の間でゾルゲル反応が進行し、これら化合物が縮合することで架橋反応が進行する。
本発明の組成物において使用可能なアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシラン、ペンタフロオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシラン、プロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノエチルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシラン)プロピル]エチレンジアミン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、(トリエトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、フェネチルトリクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、ビス(トリクロロシリル)ヘキサン等の公知の化合物が挙げられ、アルコキシシランが好ましく、3級のアルコキシシラン化合物がより好ましい。
【0135】
本発明の組成物において使用可能なアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物としては、以下の一般式(S−1)又は(S−2)で表される化合物も好ましい。
【0136】
【化19】

【0137】
一般式(S−1)及び(S−2)中、Rは塩素原子(Cl)、メトキシ基(OCH)又はエトキシ基(OCHCH)を表す。
’はメチル基(CH)、エチル基(CHCH)又はフェニル基(Ph)を表す。
は炭素数3以上の2価の連結基を表す。
はn価の官能基を表す。
は1〜3の整数を表す。但し、nが2又は3のとき、複数のR、複数のR’及び複数のLは各々同一でも異なっていてもよい。
【0138】
は塩素原子(Cl)、メトキシ基(OCH)又はエトキシ基(OCHCH)を表し、メトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
’はメチル基(CH)、エチル基(CHCH)又はフェニル基(Ph)を表し、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0139】
は炭素数3以上の2価の連結基を表す。該2価の連結基Lは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい2価の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
【0140】
はn価の官能基を表す。Aで表される官能基としては任意の基が挙げられるが、フェニル基、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アミノ基等の公知の官能基が挙げられ、好ましくはフェニル基、アミノ基である。Aで表される官能基は後述の電荷輸送部位及び/又はビニル基を有していてもよく、Aで表される官能基自体が電荷輸送部位であってもよい。
【0141】
は1〜3の整数を表す。nは好ましくは1である。
【0142】
アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物は更に、電荷輸送部位及び/又はビニル基を有していてもよい。電荷輸送部位としては、正孔輸送部位、電子輸送部位、バイポーラ性輸送性部位等が挙げられ、これらの具体例及び好ましい例は、前述のHLで表される電荷輸送部位の具体例及び好ましい例と同様である。またアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物が更にビニル基を有することで、上述のようなゾルゲル反応による架橋反応に加え、シロキサンポリマー(A)に由来するSi−H基とビニル基との間でも反応が進行し、架橋反応が促進されるので好ましい。
電荷輸送部位を有するアルコキシシラン/クロロシラン化合物としては、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、APPROACHES TO ORGANIC LIGHT−EMITTERS VIA LAYER−BY−LAYER SELF−ASSEMBRLY、Polym. Prepr.、 1999、 40、 1196−1197に記載の化合物、Hole Mobilities in Sol−Gel Materials、Adv.Mater.Opt.Electron.、2000、10、69−79に記載の化合物、Air−stable,Cross−Likable,Hole−Inejection/Transporting Interlayers for Improved Charge Injection in Organic Light−Emitting Diodes、Chem.Mater.、2008、20、4873−4882に記載の化合物、Hybrid Organic−Inoganic Light−Emitting Diodes,Adv.Mate,1999,11,2,107−112に記載の化合物等の公知の材料が挙げられる。以下に、これら文献に記載の電荷輸送部位を有するアルコキシシラン/クロロシラン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
【化20】

【0144】
【化21】

【0145】
【化22】

【0146】
【化23】

【0147】
ビニル基を有するアルコキシシラン/クロロシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン等の公知の材料が挙げられ、アルコキシシラン化合物が好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランがより好ましい。
【0148】
(2)複数のビニル基を有する化合物
本発明の組成物において使用可能な複数のビニル基を有する化合物は、2個以上のビニル基を有することが好ましく、2〜4個のビニル基を有することがより好ましい。本発明の組成物が複数のビニル基を有する化合物を含有する場合、シロキサンポリマー(A)に由来するSi−H基とビニル基との間で反応が進行し、かつ一つの化合物中に複数のビニル基が存在することで架橋反応が進行する。
複数のビニル基を有する化合物の具体例としては、ブタジエン、ペンター1、4−ジエン、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオール ジビニルエーテル、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、アリルエーテル、オクタビニルオクタシラセスキオキサン、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、VEctomer4010、4020、4040、4050、4060、4210、4220、4230(モルフレックス社商品名)等が挙げられ、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンがより好ましい。
複数のビニル基を有する化合物は更に、電荷輸送部位を有していてもよい。電荷輸送部位としては、正孔輸送部位、電子輸送部位、バイポーラ性輸送部位等が挙げられ、これらの好ましい例は、前述のHLで表される電荷輸送部位の具体例及び好ましい例と同様である。
電荷輸送部位及び複数のビニル基を有する化合物の具体例としては、以下に記載する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
【化24】

【0150】
本発明において、架橋剤(B)は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
架橋剤(B)の組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。
【0151】
[3](C)溶媒
前記各成分を溶解させて組成物を調製する際に使用することができる溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等の公知の有機溶媒を挙げることができる。
【0152】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、クメンエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、等が挙げられ、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼンがより好ましい。芳香族炭化水素系溶媒の比誘電率は通常、3以下である。
【0153】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールがより好ましい。アルコール系溶媒の比誘電率は通常、10〜40である。
ケトン系溶媒としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられ、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートが好ましい。ケトン系溶媒の比誘電率は通常、10〜90である。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等が挙げられ、オクタン、デカンが好ましい。脂肪族炭化水素系溶媒の比誘電率は通常、1.5〜2.0である。
アミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。アミド系溶媒の比誘電率は通常、30〜40である。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0154】
本発明においては、芳香族炭化水素系溶媒(以下、“第一の溶媒”ともいう)と、第一の溶媒より比誘電率の高い第二の溶媒とを混合して使用してもよい。このような混合溶媒を使用することで、アルコキシシランの加水分解が促進され、縮合の反応性が向上する。
第二の溶媒としては、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒を使用することが好ましく、アルコール系溶媒を使用することがより好ましい。
第一の溶媒と第二の溶媒との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜70/30である。第一の溶媒を60質量%以上含有する混合溶媒がシロキサンポリマーの析出防止の観点で特に好ましい。
【0155】
[4]膜の形成
本発明は、本発明の組成物を塗布し、塗布された該組成物を加熱することにより形成された膜にも関する。また本発明の組成物から形成される膜は、電荷輸送層として有用である。更に本発明は、本発明の組成物を塗布し、塗布された該組成物を加熱することを含む、電荷輸送層の形成方法にも関する。
電荷輸送層としては、膜厚5〜50nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚5〜40nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、成膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
電荷輸送層としては、正孔輸送層、電子輸送層、励起子ブロック層、正孔ブロック
層、電子フブロック層であることが好ましく、より好ましくは正孔輸送層、励起子ブロック層であり、更に好ましくは正孔輸送層である。
本発明の組成物中の全固形分濃度は、一般的には0.05〜30質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
本発明の組成物中の粘度は、一般的には1〜30mPa・s、より好ましくは1.5〜20mPa・s、更に好ましくは1.5〜15mPa・sである。
【0156】
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶媒に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体又は層上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0157】
本発明の組成物の塗布方法は特に限定されず、従来公知のいかなる塗布方法によっても形成可能である。例えば、インクジェット法、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法、転写法、印刷法等が挙げられる。
【0158】
本発明の組成物の塗布後、加熱することにより、架橋剤(B)分子間、及び/又は架橋剤(B)と側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマー(A)との間で架橋反応が進行する。
塗布後の加熱温度及び時間は、架橋反応が進行する限り特に限定されないが、加熱温度は一般的に100℃〜200℃であり、好ましくは120℃〜160℃がより好ましい。加熱時間は一般的に1分〜120分であり、好ましくは1分〜60分が好ましく、より好ましくは1分〜30分である。
【0159】
また架橋反応が進行する限り、加熱に代えて次の重合方法によって架橋反応を進行させることも可能である。例えば、UV照射による架橋反応、白金触媒による架橋反応、塩化鉄などの鉄触媒による架橋反応等が挙げられる。これら重合方法は、加熱による重合方法と併用してもよい。
【0160】
[5]有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明における有機電界発光素子は、本発明の組成物から形成される電荷輸送層を有する。
より具体的には、本発明における有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該少なくとも一層の有機層として本発明の組成物から形成される電荷輸送層を有する。
【0161】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であり、発光層と陽極の間に更に少なくとも一層の有機層を含むが、これら以外にも更に有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。
図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0162】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0163】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/励起子ブロック層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0164】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0165】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0166】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0167】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0168】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0169】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法、インクジェット法、スプレー法等の溶液塗布プロセスのいずれによっても好適に形成することができる。
【0170】
本発明の組成物から形成される電荷輸送層の他、有機層のいずれか一層は湿式法により成膜することが特に好ましい。また、他の層については乾式法又は湿式法を適宜選択して成膜することができる。湿式法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0171】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、アルコール系溶剤(メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水等が挙げられる。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0172】
〔発光層〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層は発光材料を含有するが、該発光材料としては、燐光発光性化合物を含有することが好ましい。燐光発光性化合物は、三重項励起子から発光することができる化合物であれば特に限定されることはない。燐光発光性化合物としては、オルトメタル化錯体又はポルフィリン錯体を用いるのが好ましく、オルトメタル化錯体を用いるのがより好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0173】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」,150頁及び232頁,裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」,71〜77頁及び135〜146頁,Springer−Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体又は2−フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。また、これらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。中でもイリジウムが特に好ましい。このようなオルトメタル化錯体を含む有機層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、特願2000−254171号の段落番号0152〜0180にもその具体例が記載されている。
【0174】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg.Chem.,30,1685,1991、Inorg.Chem.,27,3464,1988、Inorg.Chem.,33,545,1994、Inorg.Chim.Acta,181,245,1991、J.Organomet.Chem.,335,293,1987、J.Am.Chem.Soc.,107,1431,1985等に記載の公知の手法で合成することができる。
【0175】
発光層中の燐光発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜20質量%であるのが好ましい。燐光発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか、又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されない場合がある。
【0176】
本発明において、発光層は必要に応じてホスト化合物を含有してもよい。
【0177】
上記ホスト化合物とは、その励起状態から燐光発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果、該燐光発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0178】
発光層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nmを超えると駆動電圧が上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡する場合がある。
【0179】
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層、及び正孔輸送層を有してもよい。正孔注入層、及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0180】
(電子注入層、電子輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層、及び電子輸送層を有してもよい。電子注入層、及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子注入層、電子輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0181】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0182】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0183】
(励起子ブロック層の説明)
励起子ブロック層は、発光層と正孔輸送層の界面、若しくは発光層と電子輸送層の界面のいずれか一方、又は両方に形成する層であり、発光層中で生成した励起子が正孔輸送層や電子輸送層へ拡散し、発光することなく失活するのを防止する層のことである。励起子ブロック層としては、カルバゾール誘導体からなることが好ましい。
【0184】
〔その他の有機層〕
本発明の有機電界発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0185】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0186】
〔封止〕
また、有機電界発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0187】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0188】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0189】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0190】
<側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマーの合成>
まず、以下のスキームに従って、モノマーである化合物1e、1f、1g、1h、1n,1sを合成した。
【0191】
【化25】

【0192】
【化26】

【0193】
(化合物1aの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(東京化成製)(4.2g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(東京化成製)(4.4g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(1800mL)中で10分間撹拌した後に、N−フェニル−1−ナフチルアミン(東京化成製)(80g),4−4’ジブロモビフェニル(和光純薬製)(204.8g)及びナトリウム tert−ブトキシド(東京化成製)(42.1g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水及び酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30)することにより、化合物1a(147.8g)を得た。
【0194】
(化合物1bの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(4g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(3.6g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(2800mL)中で10分間撹拌した後に、化合物1a(144g),1−ナフチルアミン(東京化成製)(122.4g)及びナトリウム tert−ブトキシド(39.2g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水及び酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/20)することにより、化合物1b(122g)を得た。
【0195】
(化合物1cの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(1.34g),2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジメチルアミノビフェニル(東京化成製)(1.02g),化合物1b(60g)及び4−ブロモアニソール(東京化成製)(24g)のTHF溶液(140mL)中に, 室温、不活性雰囲気下でヘキサメチルジシラザン リチウム(1.6mol/L THF溶液)を滴下した後、温度を65℃まで上げ、2時間撹拌した。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1)することにより、化合物1c(24g)を得た。
【0196】
(化合物1dの合成)
化合物1c(16g)のジクロロメタン溶液中に、氷冷下で1M 3臭化ホウ素 in CHCl(Aldrich製)(34mL)を滴下した。その後、室温まで温度を上昇させ、1時間撹拌した。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)することにより、化合物1d(15.2g)を得た。
【0197】
(化合物1eの合成)
化合物1d(0.6g)、5−ブロモ−1−ペンテン(東京化成製)(0.17g)及び炭酸カリウム(0.54g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(6.5mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1e(0.53g)を得た。
【0198】
(化合物1fの合成)
化合物1d(0.6g)、7−ブロモ−1−ヘプテン(Aldrich製)(0.2g)及び炭酸カリウム(0.54g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(6.5mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1f(0.59g)を得た。
【0199】
(化合物1gの合成)
化合物1d(0.6g)、10−ブロモ−1−デセン(Aldrich製)(0.25g)及び炭酸カリウム(0.54g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(6.5mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1g(0.63g)を得た。
【0200】
(化合物1hの合成)
化合物1b(3.2g)、4−ブロモスチレン(東京化成製)(1.37g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(東京化成製)(0.11g)、2,8,9−トリイソブチル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデセン(Aldrich製)(86mg)及びナトリウム ターシャリーブトキシド(東京化成製)(2.1g)を、不活性雰囲気下、脱水トルエン(50mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1h(3.15g)を得た。
【0201】
(化合物1iの合成)
パラジブロモベンゼン(東京化成製)(76g)のジエチルエーテル溶液(1000mL)中に、0℃、不活性雰囲気下、n−ブチルリチウム(in hexane,1.56M)(和光純薬製)(204mL)を滴下した。2時間撹拌した後、ジクロロジフェニルシラン(東京化成製)(40.4g)のジエチルエーテル溶液を滴下し、4時間撹拌した。反応終了後、無機塩を除去し、水及びジエチルエーテルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をヘキサン溶媒中で再結晶することにより、化合物1i(52.7g)を得た。
【0202】
(化合物1jの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(東京化成製)(0.65g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(東京化成製)(0.68g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(280mL)中で10分間撹拌した後に、N−フェニル−1−ナフチルアミン(東京化成製)(12.3g),化合物1i(50g)及びナトリウム tert−ブトキシド(東京化成製)(6.48g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水及び酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30)することにより、化合物1j(63.2g)を得た。
【0203】
(化合物1kの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(1.2g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.1g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(850mL)中で10分間撹拌した後に、化合物1j(60g),1−ナフチルアミン(東京化成製)(36.7g)及びナトリウム tert−ブトキシド(11.8g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水及び酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/20)することにより、化合物1k(49.5 g)を得た。
【0204】
(化合物1lの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0.45g),2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジメチルアミノビフェニル(東京化成製)(0.35g),化合物1k(25g)及び4−ブロモアニソール(東京化成製)(8.2g)のTHF溶液(50mL)中に,室温、不活性雰囲気下でヘキサメチルジシラザン リチウム(1.6mol/L THF溶液)を滴下した後、温度を65℃まで上げ、2時間撹拌した。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1)することにより、化合物1l(17.6g)を得た。
【0205】
(化合物1mの合成)
化合物1l(16g)のジクロロメタン溶液中に、氷冷下で1M 3臭化ホウ素 in CHCl(Aldrich製)(34mL)を滴下した。その後、室温まで温度を上昇させ、1時間撹拌した。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)することにより、化合物1m(15.2g)を得た。
【0206】
(化合物1nの合成)
化合物1m(5g)、5−ブロモ−1−ペンテン(東京化成製)(1.1g)及び炭酸カリウム(3.5g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(42mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水及び酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1n(3.3g)を得た。
【0207】
(化合物1sの合成)
上記スキームに示すとおり、化合物1aから化合物1eを合成した場合と同様の合成方法により化合物1oから化合物1sを13g得た。
【0208】
(合成例1)
<アリールアミンペンダント型シロキサンポリマー1の合成>
化合物1e(0.5g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(分子量=2,100〜2,400,MeHSiOのmol%=100%,以下本ポリマーから合成したアリールアミンペンダント型シロキサンポリマーを35量体とよぶ)(43mg)のトルエン溶液を、窒素雰囲気下、80度で10分間撹拌した。その反応溶液中にジクロロ(ジシクロペンタジエン)白金を10mg添加した後、12時間撹拌した。反応溶液を減圧にて濃縮し、濃縮液をIPA溶媒中へと滴下して沈殿物を得た。その沈殿物のトルエン溶液からイソプロピルアルコール/酢酸エチル=3/2溶媒への再沈殿精製を複数回繰り返すことで過剰量の化合物1eを除去した。得られたアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー1の分子量はMn=14,900,Mw=23,800であり、構造はNMRで確認した。また、このアリールアミンペンダント型シロキサンポリマー1のGPC及びNMR測定から未反応Si−Hは6mol%であることが分かった(未反応Si−Hは以下計算式より求めた)。
未反応Si−Hの割合=(100%反応した場合の理論分子量−GPC測定から求めた分子量)/59(MeSiOの分子量)/MeSiOのユニット数(合成例1では35)
【0209】
【化27】

【0210】
(合成例2)
<カルバゾールペンダント型シロキサンポリマー2の合成>
US特許5,414、059に記載のExample8、及びExample9に従い、アリルカルバゾール、並びにカルバゾールペンダント型シロキサンポリマー2を含む溶液が得られた。この反応溶液を減圧にて濃縮し、濃縮液をIPA溶媒中へと滴下して沈殿物を得た。その沈殿物のトルエン溶液からイソプロピルアルコール/酢酸エチル=3/2(体積比)溶媒への再沈殿精製を複数回繰り返し、真空乾燥することで、白色固体を得た。得られたカルバゾールペンダント型シロキサンポリマー2の分子量はMn=7,300,Mw=16400であった。
【0211】
A.実施例A−1〜A−4及び比較例A−1、A−2(緑発光素子の作製)
(実施例A−1)
<正孔輸送層形成用塗布液Aの調製>
80質量%の側鎖にNPDを有するシロキサンポリマー1と、20質量%の架橋剤Aとを電子工業用キシレンに溶解させ、全固形分濃度0.4質量%とし、これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用塗布液Aを調製した。
【0212】
【化28】

【0213】
<発光層形成用塗布液Aの調製>
95質量%のホスト化合物H−1と、5質量%の発光材料E−1とを、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、固形分濃度1.0質量%とし、これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、発光層形成用塗布液Aを調製した。
【0214】
【化29】

【0215】
<素子作製>
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚みで蒸着し成膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
このITO付ガラス基板上に、下記構造式で表されるPTPDES(重量平均分子量Mw=13,100、ケミプロ化成製。nは括弧内の構造の繰り返し数を意味し、整数である。)2質量部を電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解し、厚みが約40nmとなるようにスピンコート(2500rpm、20秒間)した後、120℃で10分間乾燥と160℃で60分間アニール処理することで、正孔注入層を成膜した。
【0216】
【化30】

【0217】
前記正孔注入層上に、上記のように調整した正孔輸送層形成用塗布液Aを、厚みが約10nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)した後、120℃で30分間乾燥と150℃で10分間アニール処理することで、正孔輸送層を成膜した。
【0218】
前記正孔輸送層上に上記のように調整した発光層形成用塗布液Aをグローブボックス(露点−68度、酸素濃度10ppm)内で厚みが約30nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)し、発光層とした。
次いで、発光層上に、電子輸送層として、下記構造式で表されるBAlq(ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニル−フェノラト)−アルミニウム(III))を、厚みが40nmとなるように真空蒸着法にて形成した。
【0219】
【化31】

【0220】
前記電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法にて形成した。更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子A−1を作製した。
【0221】
(実施例A−2、A−3及び比較例A−1)
実施例A−1における正孔輸送層形成用塗布液Aの調整において、以下の表1に記載の架橋剤を使用した以外は、実施例A−1と同様にして実施例A−2及びA−3の素子を得た。また比較のため、実施例A−1における正孔輸送層形成用塗布液Aの調整において、架橋剤を使用しない以外は、実施例A−1と同様にして比較例A−1の素子を得た。
【0222】
(実施例A−4、比較例A−2)
実施例A−1の素子の作製において、発光層形成用塗布液Aを使用した塗布により発光層を形成する代わりに、95質量%のホスト化合物H−1と、5質量%の発光材料E−1とを真空蒸着法にて蒸着することにより、膜厚30nmの発光層を形成した以外は、実施例A−1と同様にして、実施例A−4の素子を得た。
また比較のため、実施例A−4における正孔輸送層の形成において、架橋剤を使用しない以外は、実施例A−4と同様にして比較例A−2の素子を得た。
【0223】
<素子評価>
(a) 効率
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に電流密度2.5mA/cmの外部量子効率を輝度換算法により算出した。
(b) 耐久性
室温で初期の輝度が1000cd/mになるように直流電流を調整し、輝度が半減するまでに要した時間を耐久性の指標とした。
【0224】
以上の結果を、表1及び表2に示す。なお表1及び表2において、効率及び耐久性の結果は、比較例A−1及び比較例A−2の効率及び耐久性を1とした場合の相対値でそれぞれ記載した。
【0225】
【表1】

【0226】
【表2】

【0227】
前掲以外の、実施例A−1〜A−4及び比較例A−1、A−2で使用した化合物の構造を以下に記載する。
【0228】
【化32】

【0229】
B.実施例B−1、B−2及び比較例B−1(赤発光素子の作製)
(実施例B−1)
<正孔輸送層形成用塗布液Bの調製>
80質量%の側鎖にNPDを有するシロキサンポリマー1と、20質量%の上記架橋剤Aとを電子工業用キシレンに溶解させ、全固形分濃度0.4質量%とし、これを0.03μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用塗布液Bを調製した。
【0230】
<発光層形成用塗布液Bの調製>
90質量%のホスト化合物H−2と、10質量%の発光材料E−2とを、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、固形分濃度1.0質量%とし、これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、発光層形成用塗布液Bを調製した。
【0231】
【化33】

【0232】
<素子作製>
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚みで蒸着し成膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
このITO付ガラス基板上に、下記構造式で表される化合物A(US2008/0220265記載)0.5質量部をシクロヘキサノン99.5質量部に溶解し、厚みが約5nmとなるようにスピンコート(4000rpm、30秒間)した後、200℃で30分間乾燥することで、正孔注入層を成膜した。
【0233】
【化34】

【0234】
前記正孔注入層上に、上記のように調整した正孔輸送層形成用塗布液Bを、厚みが約10nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)した後、120℃で30分間乾燥することで、正孔輸送層を成膜した。
【0235】
前記正孔輸送層上に上記のように調整した発光層形成用塗布液Bをグローブボックス(露点−68度、酸素濃度10ppm)内で厚みが約30nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)し、発光層とした。
次いで、発光層上に、実施例A−1と同様に、電子輸送層としてBAlq、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、陰極として金属アルミニウムを成膜した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子B−1を作製した。
【0236】
(実施例B−2、比較例B−1)
実施例B−1における正孔輸送層形成用塗布液Bの調整において、以下の表3に記載の含有量の架橋剤を使用し、正孔輸送層の成膜時の乾燥を150℃で30分間に変更した以外は、実施例B−1と同様にして実施例B−2の素子を得た。また比較のため、実施例B−1における正孔輸送層形成用塗布液Bの調整において、架橋剤を使用しない以外は、実施例B−1と同様にして比較例B−1の素子を得た。
【0237】
以上のようにして得た各素子を、実施例A−1と同様に評価し、その結果を表3に示す。なお表3において、効率及び耐久性の結果は、比較例B−1の効率及び耐久性を1とした場合の相対値でそれぞれ記載した。
【0238】
【表3】

【0239】
【化35】

【0240】
C.実施例C−1、C−2及び比較例C−1(緑発光素子の作製)
(実施例C−1)
<正孔輸送層形成用塗布液Cの調製>
80質量%の側鎖にNPDを有するシロキサンポリマー1と、20質量%の上記架橋剤Aとを電子工業用キシレン/ベンジルアルコール(=質量比60/40)に溶解させ、全固形分濃度0.4質量%とし、これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用塗布液Cを調製した。
【0241】
<発光層形成用塗布液Cの調製>
95質量%のホスト化合物H−3と、5質量%の発光材料E−3とを、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させ、固形分濃度1.0質量%とし、これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、発光層形成用塗布液Cを調製した。
【0242】
【化36】

【0243】
<素子作製>
前記実施例B−1と同様に、ITO付ガラス基板上に、化合物Aを含む正孔注入層を成膜した。
【0244】
前記正孔注入層上に、上記のように調整した正孔輸送層形成用塗布液Cを、厚みが約10nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)した後、120℃で30分間乾燥と150℃で10分間アニール処理することで、正孔輸送層を成膜した。
【0245】
前記正孔輸送層上に上記のように調整した発光層形成用塗布液Cをグローブボックス(露点−68度、酸素濃度10ppm)内で厚みが約30nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)し、発光層とした。
次いで、発光層上に、実施例A−1と同様に、電子輸送層としてBAlq、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、陰極として金属アルミニウムを成膜した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子C−1を作製した。
【0246】
(実施例C−2、比較例C−1)
実施例C−1における正孔輸送層形成用塗布液Cの調整において、以下の表3に記載のの架橋剤を使用した以外は、実施例C−1と同様にして実施例C−2の素子を得た。また比較のため、実施例C−1における正孔輸送層形成用塗布液Cの調整において、架橋剤を使用しない以外は、実施例C−1と同様にして比較例C−1の素子を得た。
【0247】
以上のようにして得た各素子を、実施例A−1と同様に評価し、その結果を表4に示す。なお表4において、効率及び耐久性の結果は、比較例C−1の効率及び耐久性を1とした場合の相対値でそれぞれ記載した。
【0248】
【表4】

【0249】
前掲以外の、実施例C−2で使用した化合物の構造を以下に記載する。
【0250】
【化37】

【0251】
D.実施例D−1、D−2及び比較例D−1(緑発光素子の作製)
(実施例D−1)
<正孔輸送層形成用塗布液Dの調製>
化合物B(ケミプロ化成製)2質量部を脱水トルエン(関東化学製)98質量部に溶解させ、これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、正孔輸送層形成用塗布液Dを調製した。
【0252】
【化38】

【0253】
<励起子ブロック層形成用塗布液Dの調製>
90質量%の側鎖にカルバゾールを有するシロキサンポリマー2と、10質量%の上記架橋剤Aとを電子工業用キシレンに溶解させ、全固形分濃度0.4質量%とし、これを0.22μmのポアサイズを有するPTFEフィルターでろ過して、励起子ブロック層形成用塗布液Dを調製した。
【0254】
【化39】

【0255】
<素子作製>
前記実施例B−1と同様に、ITO付ガラス基板上に、化合物Aを含む正孔注入層を成膜した。
【0256】
前記正孔注入層上に、上記のように調整した正孔輸送層形成用塗布液Dを、厚みが約18nmとなるようにスピンコート(4000rpm、30秒間)した後、200℃で30分間乾燥することで、正孔輸送層を成膜した。
【0257】
前記正孔輸送層上に、上記のように調整した励起子ブロック層形成用塗布液Dを、厚みが約5nmとなるようにスピンコート(3000rpm、20秒間)した後、120℃で30分間乾燥と150℃で10分間アニール処理することで、励起子ブロック層を成膜した。
前記励起子ブロック層上に、実施例A−4と同様にし、発光層を真空蒸着法により成膜した。
次いで、発光層上に、実施例A−1と同様に、電子輸送層としてBAlq、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、陰極として金属アルミニウムを成膜した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子D−1を作製した。
【0258】
(実施例D−2、比較例D−1)
実施例D−1における励起子ブロック層形成用塗布液Dの調整において、以下の表5に記載の架橋剤を使用した以外は、実施例D−1と同様にして実施例D−2の素子を得た。また比較のため、実施例D−1における励起子ブロック層形成用塗布液Dの調整において、架橋剤を使用しない以外は、実施例D−1と同様にして比較例D−1の素子を得た。
【0259】
以上のようにして得た各素子を、実施例A−1と同様に評価し、その結果を表5に示す。なお表5において、効率及び耐久性の結果は、比較例D−1の効率及び耐久性を1とした場合の相対値でそれぞれ記載した。
【0260】
【表5】

【0261】
上記表1〜表5の結果から明らかのように、側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマーと、少なくとも一種類の架橋剤と、溶媒とを含有する組成物を使用した実施例の素子は、本発明の組成物を使用しない比較例の素子と比べて、効率及び耐久性が向上したことがわかる。
【符号の説明】
【0262】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)側鎖に電荷輸送部位を有するシロキサンポリマーと、(B)少なくとも一種類の架橋剤と、(C)溶媒とを含有する、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一種類の架橋剤(B)が、アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物が、電荷輸送部位を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物が、ビニル基を有する、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも一種類の架橋剤(B)が、複数のビニル基を有する化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記複数のビニル基を有する化合物が、更に電荷輸送部位を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記シロキサンポリマー(A)の側鎖の電荷輸送部位が、正孔輸送部位である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶媒(C)が、第一の溶媒として芳香族炭化水素系溶媒と、該第一の溶媒より比誘電率の高い第二の溶媒とを含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を塗布し、塗布された該組成物を加熱することにより形成された膜。
【請求項10】
請求項9に記載の膜である電荷輸送層。
【請求項11】
請求項10に記載の電荷輸送層を含有する有機電界発光素子。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を塗布し、塗布された該組成物を加熱することを含む、電荷輸送層の形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−15339(P2012−15339A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150596(P2010−150596)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】