説明

組成物および高い伝導性を有するパターニングされた金属層の提供方法

熱画像形成方法によってベース基体上にパターニングされた触媒層を含むパターニングされた基体を提供するステップの後、めっきして金属パターンを提供するステップを含む、高い伝導性の金属パターンの製造方法が開示される。提供される金属パターンは、電磁妨害遮蔽デバイスおよびタッチパッドセンサーを含む電気デバイスに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気用途向け伝導性金属パターンの提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイなどの、光透過性表面用の電磁妨害シールドおよびタッチスクリーンは、典型的には基体上に取り付けられた伝導性金属メッシュを含む。メッシュによって、他の電磁放射線を遮蔽しながら、可視光のかなりの部分を通過させることができる。そのような金属メッシュ物品を製造するために利用可能な種々の方法がある。たとえば、特許文献1には、ガラス基体と、オフセット印刷法でこの基体上に形成された幾何パターンとを有する電磁遮蔽プレートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,717,048号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
形成中のパターンの高分解能および正確なデジタル制御を可能にする;たとえば10ミクロンの線幅までの、微細な線を有するメッシュを作製する能力がある、伝導性金属パターンを提供するために有用な新規方法が必要とされている。さらに、従来のフォトリソグラフィー法に典型的に使用される、湿式処理ステップと、溶媒、エッチング液、およびマスクの使用とを最小限にすることが望ましい。湿式処理ステップおよび溶媒の排除は、金属メッシュの製造に用いられる従来の方法よりかなり環境にやさしい全体的方法を提供するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、高い伝導性を有するパターニングされた金属層の製造方法であって:
ベース基体上にパターニングされた触媒層を含むパターニングされた基体を提供するステップであって;前記パターニングされた基体が、
(a)ベースフィルムおよび触媒転写層を含む熱転写ドナーを提供する工程であって、触媒転写層が、(i)触媒画分;場合により(ii)付着促進剤画分;および、場合よりおよび独立して、(iii)ポリマーバインダー画分を含む工程;
(b)熱転写ドナーをレシーバーと接触させる工程であって、レシーバーがベース層を含む工程;ならびに
(c)触媒転写層の少なくとも一部を熱転写によってレシーバー上に転写して、パターニングされたレシーバーを前記パターニングされた基体として提供する工程
を含む熱画像形成方法によって製造されるステップと;
金属を前記パターニングされた基体上にめっきして、パターニングされた基体と接続したパターニングされた金属層を提供するステップと
を含む製造方法である。
【0006】
別の実施形態は、ベースフィルム、触媒転写層(A)、および前記ベースフィルムと前記触媒転写層(A)との間に介在するLTHC層を含む熱転写ドナーであって、前記触媒転写層(A)が、
(i)触媒層の総重量を基準にして、約1.0〜約99重量%の触媒画分(A)であって、Ag、Cu、およびそれらの合金から選択される金属粒子を含む触媒画分と;
(ii)ガラスフリット;ならびに金属水酸化物およびアルコキシドから選択される約0.5〜約10重量%の付着促進剤画分と;
(iii)約0.5〜約98.5重量%のポリマーバインダーと
を含む熱転写ドナーである。
【0007】
別の実施形態は、積層順で、ベースフィルム、触媒転写層(B)および付着促進剤層を含む熱転写ドナーであって、前記触媒転写層(B)が、
(i)触媒層の総重量を基準にして、約1.0〜約99重量%の触媒画分であって、Ag、Cu、およびそれらの合金から選択される金属粒子を含む触媒画分;
(iii)約1.0〜約99重量%のポリマーバインダー
を含み;
付着促進剤層が、ガラスフリット;ならびに金属水酸化物およびアルコキシドから選択される材料を含む熱転写ドナーである。
【0008】
別の実施形態は、パターニングされた金属層を基体上に有する電子デバイスであって、前記基体が可視光を実質的に通し;前記パターニングされた金属層が、積層順で前記基体上に:付着促進剤層、触媒層、およびめっき金属層を含み;前記パターニングされた金属層が約1ミリメートル以下の幅の少なくとも1つの線を有する、電子デバイスである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の実施形態による熱画像形成ドナー100の断面図である。
【図1B】本発明の実施形態による熱画像形成ドナー100の断面図である。
【図2A】レシーバーベース層202を有する熱画像形成レシーバー200の断面図である。
【図2B】パターニングされた黒色層204を有するレシーバー200の断面図である。
【図3】パターニングされた基体を作製するためのレーザー媒介転写方法を示している。
【図4A】パターニングされた触媒層の熱転写後の使用済み熱転写ドナーおよびレシーバー要素の分離を示している。
【図4B】パターニングされた触媒層の熱転写後の使用済み熱転写ドナーおよびレシーバー要素の分離を示している。
【図5】本発明の一実施形態によって提供されるパターニングされた金属層の側面図である。
【図6】パターニングされた金属層の顕微鏡写真である。
【図7】本発明の方法によって提供されるパターニングされた黒色層の境界内のめっきパターンの顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書ではすべての商標は大文字で示される。
【0011】
本明細書における、「アクリル」、「アクリル樹脂」、「(メタ)アクリル樹脂」、および「アクリルポリマー」という用語は、特に明記しない限り同義である。これらの用語は、メタクリル酸およびアクリル酸ならびにそれらのアルキルおよび置換アルキルエステルから誘導されるエチレン性不飽和モノマーの従来の重合から誘導される付加ポリマーの一般的種類を指す。これらの用語はホモポリマーおよびコポリマーを包含する。これらの用語は、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸およびグリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマーおよびコポリマーを包含する。本明細書におけるコポリマーという用語は、特に明記しない限り、2種以上のモノマーの重合から誘導されるポリマーを包含する。(メタ)アクリル酸という用語は、メタクリル酸およびアクリル酸の両方を包含する。(メタ)アクリレートという用語は、メタクリレートおよびアクリレートを包含する。
【0012】
「スチレンアクリルポリマー」、「アクリルスチレン」および「スチレンアクリル」という用語は、同義であり、上記の「アクリル樹脂」と、スチレン、および例えばα−メチルスチレンといった置換されたスチレンモノマーとのコポリマーを包含する。
【0013】
本明細書において用いられるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含める(includes)」、「含める(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらの任意の他の活用形は、非限定的な包含をカバーするものとする。例えば、一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、特に明記されていないかあるいはかかるプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含めてもよい。さらに、特に矛盾する記載がない限り、「または」は包括的な「または」を指し、限定的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、AおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0014】
また、単数形(「a」または「an」)の使用は、本明細書に記載の要素および成分を表すために用いられる。これは、単に便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を示すために用いられる。本明細書は、1つまたは少なくとも1つを含めるように読まれるべきであり、複数でないことを意図することが明白でない限り、単数形は複数形も含める。
【0015】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と同様なまたは等価な方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において用いることができるが、好適な方法および材料は以下に記載される。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例はあくまで例示であり、限定されるものではない。
【0016】
本明細書に記載されない範囲の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらは、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0017】
用語「メッシュ」は本明細書においてはウェブ様のパターンまたは構造を意味する。メッシュは、たとえば、自立スクリーン、およびベース層上に付着させられたまたは取り付けられたウェブ様パターンを含む。
【0018】
用語「熱画像形成ドナー」および「熱転写ドナー」は、本明細書においては同じ意味で用いることができ、同義語であることを意図される。
【0019】
本発明の一実施形態は、高い伝導性を有するパターニングされた金属層の製造方法である。この方法は、ベース基体上にパターニングされた触媒層を含むパターニングされた基体を提供することを必要とする。この実施形態は、パターニングされた基体が、
(a)ベースフィルムおよび触媒転写層を含む熱転写ドナーを提供する工程であって、触媒転写層が、(i)触媒画分;場合により(ii)付着促進剤画分;および、場合よりおよび独立して、(iii)ポリマーバインダー画分を含む工程;
(b)熱転写ドナーをレシーバーと接触させる工程であって、レシーバーがベース層を含む工程;ならびに
(c)触媒転写層の少なくとも一部を熱転写によってレシーバー上に転写して、パターニングされたレシーバーを前記パターニングされた基体として提供する工程
を含む熱画像形成方法によって製造されるステップの後;
金属を前記パターニングされた基体上にめっきして、パターニングされた基体と接続したパターニングされた金属層を提供するステップ
を含む熱画像形成方法によって製造されることを必要とする。この方法によって提供されるパターニングされた金属層は、基体に付着するまたは、必要に応じて、基体から分離される金属メッシュの形態にあってもよい。
【0020】
本明細書において、先ず、高い伝導性を有するパターニングされた金属層を得るための;熱画像形成方法に必要とされる熱転写ドナーの詳細が;その後、熱画像形成方法およびめっきステップの詳細が開示される。
【0021】
熱転写ドナー
本発明の一実施形態は、多層熱転写ドナーである。種々の実施形態において熱転写ドナーは、積層順で、ベースフィルム、および任意選択のLTHC層、触媒転写層および任意選択の保護可剥性カバー層を含む。他の実施形態は、ベースフィルムと触媒転写層との間に介在するおよび/または金属転写層のトップ上に存在する1つ以上の追加層を含むことができる。したがって、1つ以上の他の従来の熱転写ドナー要素層を熱画像形成ドナー中に含むことができ、そのような層としては中間層、プライマー層、剥離層、放出層、断熱層、下層、接着層、湿潤剤層、および光減衰層が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
図1Aは、本発明の一実施形態による熱画像形成ドナー100の断面図である。熱画像形成ドナー100は、ベースフィルム102、およびベースフィルム102の表面上にある触媒層106を含む。ベースフィルム102は、熱画像形成ドナー100の他の層を支持する。ベースフィルム102は、好ましくは透明である可撓性ポリマーフィルムを含む。ベースフィルム102の好適な厚さは約25μm〜約200μmであるが、より厚いまたはより薄い支持層を使用することもできる。ベースフィルムは、延伸フィルムを形成するために、当技術分野において周知の標準的な方法で延伸することができ、光熱変換(LTHC)層などの1種類以上の他の層をベースフィルム上にコーティングした後に、延伸プロセスを完了することができる。好ましいベースフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース、およびポリイミドからなる群から選択される材料を含む。
【0023】
光減衰剤(吸収剤または拡散剤)は、別個の層中に存在することができるし、ベースフィルム、LTHC層、または触媒層などの熱転写ドナーの他の機能層の1つの中に混入することもできる。一実施形態においては、ベースフィルムは、熱画像形成ステップ中にLTHC層中の放射線吸収剤上に放射線源が集中するのを補助できる染料などの光減衰剤を少量(典型的にはベースフィルムの0.2%〜0.5重量%)含み、それによって熱転写の効率が改善される。参照として本明細書に援用される米国特許第6645681号明細書(参照により本明細書に援用される)には、レーザー放射線源の集中を補助するためにベースフィルムを改質できる上記およびその他の方法が記載されており、レーザー放射線源の装置は、画像形成レーザーおよび非画像形成レーザーを含み、非画像形成レーザーは、画像形成レーザーと連絡する光検出器を有する。画像形成レーザーおよび非画像形成レーザーが動作する波長範囲(典型的には約350nm〜約1500nmの範囲内)によって、吸収剤および/または拡散剤が活性および不活性となる波長範囲が決定される。たとえば、非画像形成レーザーが670nm領域付近で動作し、画像形成レーザーが830nmで動作する場合、吸収剤および/または拡散剤の作用によって、830nm領域ではなく670nm領域内の波長の光が吸収または拡散されることが好ましい。本発明においては、光減衰剤は、好ましくは可視領域内の光を吸収または拡散し、一実施形態においては670nm付近の光を吸収する。好適な光減衰剤は当技術分野において周知であり、そのようなものとしては、市販のディスパース・ブルー(Disperse Blue)60およびソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料、ならびにカーボンブラックが挙げられる。好ましくは光減衰剤の量は、約400〜約750nmのある波長において光学濃度(OD)が0.1以上、より好ましくは約0.3〜約1.5となるのに十分な量である。
【0024】
光熱変換層(LTHC)
本発明の熱画像形成ドナーは、場合により、図1Bに示されるようにベースフィルムと別の層との間に介在する光熱変換層(LTHC)を有することができる。熱画像形成ドナー100は、ベースフィルム102と触媒層106との間に介在するLTHC層108を含む。LTHC層108は、放射線誘導熱転写のための熱画像形成ドナー100の一部として組み込まれ、発光源から熱転写ドナー内に放射される光エネルギーと結合する。典型的には、LTHC層(または別の層)中の放射線吸収剤は、電磁スペクトルの赤外領域、可視領域、および/または紫外領域内の光を吸収し、吸収した光を熱に変換する。放射線吸収剤は、典型的には高吸収性であり、画像形成放射線の放射線におけるODが0.1〜3以上、好ましくは0.2〜2となる。好適な放射線吸収材料としては、たとえば、染料(たとえば、可視染料、紫外染料、赤外染料、蛍光染料、および放射線偏光染料)、顔料、金属、金属化合物、金属化フィルム、および他の好適な吸収材料を挙げることができる。
【0025】
LTHC層の好適な放射線吸収剤およびバインダーは、当技術分野において周知であり、それらの一覧および参考文献は、例えば国際出願PCT/US05/38010号明細書、国際出願PCT/US05/38009号明細書;米国特許第6,228,555B1号明細書;マツオカ(Matsuoka),M.,「赤外吸収材料」(Infrared Absorbing Materials),プレナム・プレス(Plenum Press)、ニューヨーク(New York),1990;およびマツオカ(Matsuoka),M.,ダイオードレーザー用染料の吸収スペクトル(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers)、ぶんしん出版(Bunshin Publishing Co.),東京,1990に見ることができる。
【0026】
LTHC層用の好ましい種類の近赤外染料は、インドシアニン、多置換フタロシアニンや金属含有フタロシアニンなどのフタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択されるシアニン化合物である。好適な赤外吸収染料の供給元としては、H.W.サンズ社(H.W.Sands Corporation)(米国フロリダ州ジュピター(Jupiter,FL,US))、アメリカン・サイアナミッド社(American Cyanamid Co.)(ニュージャージー州ウェイン(Wayne,NJ))、サイテック・インダストリーズ(Cytec Industries)(ニュージャージー州ウエストパターソン(West Paterson,NJ))、グレンデール・プロテクティブ・テクノロジーズ社(Glendale Protective Technologies,Inc.)(フロリダ州レークランド(Lakeland,FL))およびハンプフォード・リサーチ社(Hampford Research Inc.)(コネチカット州ストラトフォード(Stratford,CT))が挙げられる。LTHC、キャリア層、および転写層用の好ましい染料は、CAS番号[128433−68−1]および分子量約619グラム/モルを有し、コネチカット州ストラトフォードのハンプフォード・リサーチ社(Hampford Research Inc,Stratford,CT)よりTIC−5cとして入手可能な2−[2−[2−クロロ−3−[(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムのトリフルオロメタンスルホン酸(1:1)との塩;CAS番号[162411−28−1]を有しH.W.サンズ社(H.W.Sands Corp)よりSDA 4927として入手可能な2−(2−(2−クロロ−3−(2−(1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン)−1−シクロヘキセン−1−イル)エテニル)−1,1−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−1H−ベンズ[e]インドリウム、分子内塩、遊離酸;ならびにH.W.サンズ社(H.W.Sands Corp)のインドレニン染料SDA 2860およびSDA 4733である。SDA 4927はLTHC層用に特に好ましい染料である。
【0027】
LTHC層は、バインダー中に粒子状放射線吸収剤を含むことができる。好適な顔料の例としてはカーボンブラックおよび黒鉛が挙げられる。
【0028】
重量パーセントの計算において溶媒を排除した層中の放射線吸収剤の重量パーセントは、一般に1重量%〜85重量%、好ましくは3重量%〜60重量%、最も好ましくは5重量%〜40重量%であり、これはLTHC層中に使用される個別の放射線吸収剤およびバインダーによって変動する。
【0029】
LTHC層中に使用すると好適なバインダーとしては、たとえば、フェノール樹脂(たとえば、ノボラックおよびレゾール樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、およびスチレンアクリル樹脂などのフィルム形成性ポリマーが挙げられる。LTHC層の%透過率は、放射線吸収剤の種類および量、ならびにLTHC層の厚さの影響を受ける。LTHC層は、好ましくは、熱転写画像形成方法において使用される画像形成放射線の波長における放射線透過率が約20%〜約80%、より好ましくは約40%〜約50%である。バインダーが存在する場合、放射線吸収剤対バインダーの重量比は、一般に重量で約5:1〜約1:1000、好ましくは重量で約2:1〜約1:100である。ポリマーまたは有機のLTHC層は、0.05μm〜20μm、好ましくは、0.05μm〜10μm、より好ましくは、0.10μm〜5μmの厚さにコーティングされる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態においては、LTHC層は、前出の参考文献の国際出願PCT/US05/38010号明細書および国際出願PCT/US05/38009号明細書に開示されるような組成を有する多種多様の水溶性または水分散性のポリマーバインダーを含むことができる。好ましくは、水分散性バインダーのその水相中の平均粒度は、0.1ミクロン未満であり、より好ましくは0.05ミクロン未満であり、好ましくは狭い粒度分布を有する。本発明において有用なLTHC層に好ましい水溶性または水分散性のポリマーバインダーは、アクリル樹脂および親水性ポリエステルの群から選択されるものであり、より好ましくは前出の参考文献の国際出願PCT/US05/38009号明細書に記載されるようなスルホン化ポリエステルから選択されるものである。
【0031】
LTHC層の他の好ましいポリマーバインダーは、無水マレイン酸ポリマー、ならびに無水マレイン酸ポリマーおよび/またはコポリマーをアルコール、アミン、およびアルカリ金属水酸化物で処理することによって得られる官能性を有するものなどのコポリマーである。無水マレイン酸系コポリマーの特定の種類は式(III)で表される構造を含み
【化1】

上式中、xおよびzは任意の正の整数であり;
yは、0または任意の正の整数であり;
21およびR22は、同種の場合も異種の場合もあり、個別に水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、およびハロゲンであり、但しR21およびR22の1つは芳香族基であり;
31、R32、R41、およびR42は、同種または異種であり、水素、または1〜約5個の炭素原子のアルキルであってよく;
50は:
a)1〜約20個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基;
b)1〜約20個の繰り返し単位であってよい、各オキシアルキレン基中に約2〜約4個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基のオキシアルキル化誘導体;
c)1〜約6個の繰り返し単位であってよい、各オキシアルキレン基中に約2〜約4個の炭素原子を含有するアルキル基、アラルキル基、アルキル置換アラルキル基のオキシアルキル化誘導体;
d)少なくとも1つの不飽和部分;
e)少なくとも1つのヘテロ原子部分;
f)Li、Na、K、およびNHから選択される塩を形成することができるアルカリ分子;ならびに
g)それらの組み合わせから選択される官能基である。
【0032】
LTHC層の好ましい無水マレイン酸ポリマーの1つは、R21、R31、R32、R33、R41、R42、R43が個別に水素であり、R22がフェニルであり、R50が2−(n−ブトキシ)エチルである式(III)のコポリマーを含む。LTHC層において有用な無水マレイン酸コポリマーの具体例の1つは、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社(Sartomer Corporation,Exton,PA)の製品のSMA1440Hなどのスチレン無水マレイン酸コポリマーである。
【0033】
本発明の一実施形態においては、好ましいLTHC層の1つは、インドシアニン、多置換フタロシアニンや金属含有フタロシアニンなどのフタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択される1種類以上の水溶性または水分散性の放射線吸収性シアニン化合物と;アクリル樹脂、親水性ポリエステル、スルホン化ポリエステル、ならびに無水マレイン酸ホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される1種類以上の水溶性のまたは水分散性のポリマーバインダーとを含む。最も好ましいLTHC層の1つは:第4級アンモニウム陽イオン化合物;ホスフェート陰イオン化合物;ホスホネート陰イオン化合物;1〜5個のエステル基と2〜10個のヒドロキシル基とを含む化合物;アルコキシル化アミン化合物;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種類以上の剥離改質剤をさらに含む。
【0034】
米国特許第5,256,506号明細書に記載されているように、粒子の形態、あるいは熱蒸着、e−ビーム加熱、およびスパッタリングなどの種々の技術によって堆積されたフィルムとしてのいずれかで、金属放射線吸収剤をLTHC層として使用することもできる。ニッケルおよびクロムがLTHC層108に好ましい金属であり、クロムが特に好ましい。加熱層用に、あらゆる他の好適な金属を使用することもできる。金属加熱層の好ましい厚さは、使用される金属の光吸収に依存する。クロム、ニッケル/バナジウム合金、またはニッケルの場合、80〜100オングストロームの層が好ましい。
【0035】
本発明において使用されるLTHC層に好ましい放射線吸収剤は、CrおよびNiから選択される金属膜、カーボンブラック、黒鉛からなる群から選択され、ならびに特に好ましくは、LTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料である。
【0036】
触媒転写層
熱転写によって提供される触媒転写層およびパターニングされた触媒層は、(i)触媒画分;場合により(ii)付着促進剤画分;ならびに、場合によりおよび独立して、(iii)ポリマーバインダー画分を含む。触媒転写層は、非伝導層または伝導層であることができる。触媒転写層の厚さは、約5nm〜約5μm、より好ましくは約100nm〜約3μmのいずれかの厚さであることができる。
【0037】
触媒画分は、パターニングされた触媒層の必須の特性、処理条件、めっき方法などに依存して、伝導性材料、または非伝導性材料であることができる。触媒画分は、基体に適用されるときに、めっきを、あるいは電解めっきまたは無電解めっき条件にかけられるときに、金属堆積を提供することができる1種以上の触媒を含む。
【0038】
無電解めっき用の一般的な触媒は、「Electroless Nickel Plating(無電解ニッケルめっき)」、Wolfgang Riedel,Finishing Publications Ltd(Stevenage,UK)、(1991年)に、具体的には34−36ページで議論されている。電解めっき用の一般的な触媒は、「Fundamentals of Electrochemical Deposition,Second Edition(電気化学堆積の基礎、第2版)」、Milan Paunovic and Mordechay Schlesinger,John Wiley & Sons,Inc.(2006年)に議論されているような金属および伝導形態のカーボンなどの伝導性材料である。
【0039】
一実施形態において触媒画分は、群:(1)粉末およびコロイドなどの、金属粒子;(2)金属酸化物;(3)有機金属錯体;(4)金属塩;(5)セラミックス、および金属塩、金属酸化物、金属錯体、金属またはカーボンでコーティングされた他の非伝導体粉末;ならびに(6)すべての伝導性形態でのカーボンから選択される1種以上の触媒を含み;(1)〜(5)の各金属はAg、Cu、Au、Fe、Ni、Al、Pd、Pt、Ru、Rh、Os、Ir、Snおよびそれらの合金からなる群から選択される。
【0040】
触媒として有用な金属合金の例は、ステンレス鋼、炭素鋼、低−および高−合金鋼;ならびにニッケル、銅、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタン、亜鉛、モリブデン、タングステン、スズ、鉛、銀およびマンガンの合金である。基体の包括的リストは、Gawrilov,G.G.:「Chemical(Electroless)Nickel Plating(化学(無電解)ニッケルめっき)」、Portcullis Press(Redhill,UK)1979年;およびSimon,H.:Galvanotechnik、74(1983)、776−771ページに見つけることができる。
【0041】
一実施形態においては、触媒は、インジウム−スズ−酸化物(ITO)、アンチモン−スズ−酸化物(ATO)、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、および亜鉛スズ酸化物(ZTO)などの透明伝導性酸化物などのドープおよび非ドープ金属酸化物粒子;それらの合金から選択される伝導性金属酸化物である。
【0042】
一実施形態において触媒画分は、約5nm〜約1500nmの平均最長寸法を有する金属粒子を含む。
【0043】
別の実施形態において触媒画分は、1種以上の有機金属錯体を含む。使用することができる有機金属錯体の例としては、アセチルアセトナト白金、シス−ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金、アセチルアセトナトパラジウム、ビス(ベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ヘキサフルオロアセチル−アセトナトパラジウムなどが挙げられる。
【0044】
別の実施形態において触媒画分は、1種以上の金属塩、たとえば、酢酸パラジウムおよび塩化パラジウムを含む。
【0045】
触媒として有用な白金コロイド懸濁液は、Shah,P.ら、Langmuir 15(1999)、1584−1587ページに開示されているように塩化白金酸(白金酸水素ヘキサクロル)から調製することができる。一般的に使用されるパラジウムコロイドは、Hidber,P.C.ら、Langmuir、12(1996)、5209−5215ページに開示されているような臭化テトラオクタデシルアンモニウム安定化パラジウムコロイドである。
【0046】
付着促進剤
種々の実施形態において触媒転写層は、熱転写が完了した後にレシーバーのベース層へのパターニングされた触媒層の接合を改善するのに有用である付着促進剤を有する。付着促進剤はまた、めっきが完了した後にパターニングされた基体へのパターニングされた触媒層の接合を改善する傾向がある。特定の付着促進剤では、典型的にはガラスフリットおよび金属酸化物では、基体へのパターニングされた触媒層およびパターニングされた金属層の最適な付着を実現するために加熱またはアニーリングなどの追加の処理が必要とされる。一実施形態において触媒層は、触媒層の総重量を基準にして、約0.5〜約10重量%、好ましくは約1.0〜約4.0重量%の付着促進剤画分を含む。
【0047】
付着促進剤として有用なガラスフリットは通常、約200〜700℃、好ましくは約350〜700℃、より好ましくは400〜620℃の軟化点を有する。付着促進剤として有用なガラスフリットは典型的には、約100nm〜約5ミクロン;好ましくは約100nm〜約800nmの平均粒度を有する。しかし、必要に応じて、100nm未満の平均粒度のガラスフリットを付着促進剤として使用することができる。ガラスフリットは好適には、上記の範囲の軟化点を有する従来のガラスフリットから選択され、次にベーキングされる。従来のガラスフリットの例としては、元素Al、Si、B、Na、Li、Ca、Mg、Mo、Ba、Bi、Zn、Zr、Ti、W、Sn、Sr、Co、Ru、V、Ta、W、Mn、Cu、Ag、Ce、Cd、およびPの酸化物を含む上記範囲の低い軟化点を有するガラスフリットが挙げられる。具体的なガラスは、PbO−SiO−Bガラス、PbO−SiO−B−ZnOガラス、PbO−SiO−B−Al−ZnOガラス、B−SiO−Bガラス、ZnO−SiO−Bガラスなどを含む。これらの材料は、独立してかまたは組み合わせて付着促進剤として使用することができる。一実施形態において付着促進剤画分は、ガラスフリットが使用されるとき、触媒層の総重量を基準にして、0.5〜約10重量%、好ましくは1.0〜約4.0重量%である。
【0048】
付着促進剤として有用な金属酸化物は、たとえば、NaO、CaO、CdO、BaO、ZrO、ZnO、MgO、CoO、NiO、FeO、MnO、PbOおよびそれらの組み合わせ;ならびにSiOと組み合わせてであることができる。
【0049】
付着促進剤として有用な金属水酸化物およびアルコキシドは、周期表の族IIIa〜VIIIa、Ib、IIb、IIIb、およびIVbならびにランタニド類のそれらを含む。具体的な付着促進剤は、Ti、Zr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、およびBからなる群から選択される金属の金属水酸化物およびアルコキシドである。好ましい金属水酸化物およびアルコキシドはTiおよびZrのそれらである。具体的な金属アルコキシド付着促進剤は、式(I)、(II)および(III):
【化2】

の化合物などのチタネートおよびジルコネート・オルトエステルおよびキレートであり、上式中、
MはTiまたはZrであり;
Rは一価のC〜Cの直鎖または分岐鎖アルキルであり;
Yは、−CH(CH)−、−C(CH)=CH−、または−CHCH−から選択される二価の基であり;
Xは、OH、−N(R、−C(O)OR、−C(O)R、−COから選択され;ここで、
は、場合によりヒドロキシルで置換されたまたはエーテル酸素で割り込まれた、−CHあるいはC〜Cの直鎖または分岐鎖アルキルであり;但し1個以下のヘテロ原子がどれか一個の炭素原子に結合しており;
はC〜Cの直鎖または分岐鎖アルキルであり;
は、NH、Li、Na、またはKから選択される。
【0050】
一実施形態において付着促進剤画分は、金属水酸化物およびアルコキシドが付着促進剤画分として使用されるとき、触媒層の総重量を基準にして、約0.5〜約20重量%、好ましくは約0.5〜約5.0重量%である。付着促進剤として有用な市販のチタネートおよびジルコネート・オルトエステルおよびキレートは、E.I.DuPont de Nemours,Inc.(Wilmington,DE)から入手可能なTYZOR(登録商標)有機チタネートおよびジルコネートである。具体的な有機ジルコネートはTYZOR(登録商標)212、217、TEAZ、およびCl−24有機ジルコネートである。具体的な有機チタネートはTYZOR(登録商標)TEおよびLA有機チタネートである。
【0051】
付着促進剤として有用なシリケート水酸化物およびアルコキシドは式(IV)
(R11O)4−mSi(R12
のものを含み、
上式中、
mは0、1、2、または3に等しい整数であり;
11は水素あるいはC〜Cの直鎖または分岐鎖アルキルであり;
12は、場合により1または2個の炭素−炭素二重結合を有し、場合により−NH、−CN、−NCO、または−OC(O)−CR13=CH(ここで、R13は水素またはC〜Cアルキルである)で置換された、C〜C12の直鎖または分岐鎖アルキルである。
【0052】
本発明に有用なシリケートアルコキシドの具体例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、および3−シアノプロピルトリメトキシシランである。
【0053】
一実施形態において付着促進剤画分は、シリケート水酸化物およびアルコキシドが付着促進剤画分として使用されるとき、触媒層の総重量を基準にして、約0.5〜約20重量%、好ましくは約0.5〜約5.0重量%である。
【0054】
付着促進剤として有用な有機ポリオールは、1分子当たり2個以上のヒドロキシル基を有する、および約30〜約200g/当量、好ましくは約30〜約100g/当量、より好ましくは約30〜約60g/当量のヒドロキシル当量を有する有機ポリオールを含む。より具体的な一実施形態において付着促進剤として有用な有機バインダーは、それぞれ場合により1種以上の−O−、−S−、−OC(O)−、および−NR11C(O)−(ここで、R11は水素あるいはC〜Cの直鎖または分岐鎖アルキルである)で割り込まれた;C〜C60の直鎖または分岐鎖アルキル;C〜C60の脂環式;および直鎖または分岐鎖アルキルと脂環式基との組み合わせからなるC〜C60基からなる群から選択される有機ポリオールである。一実施形態においては、付着促進剤画分は、エチレングリコール、グリコール誘導体、グリセロールおよびグリセロール誘導体、ペンタエリスリトール(CAS[115−77−5])、トリメチロールプロパン(CAS[77−99−6])、ジペンタエリスリトール(CAS[126−58−9])、ジトリメチロールプロパン(CAS[23235−61−2])、ソルビトール(CAS[50−70−4])、ソルビタンモノオレエート(CAS[1338−43−8])、ソルビタンモノラウレート(CAS[1338−39−2])、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(CAS[115−84−4])、2−メチル−1,3−プロパンジオール(CAS[2163−42−0])、ネオペンチルグリコール(CAS[126−30−7])、1,4−ブタンジオール(CAS[110−63−4])、および1,6−ヘキサンジオール(CAS[629−11−8])から選択される少なくとも1種のポリオールを含有することができる。
【0055】
一実施形態においては、付着促進剤画分として有用な有機バインダーは、エトキシル化ペンタエリスリトール(CAS[42503−43−7])、プロポキシル化ペンタエリスリトール(CAS[9051−49−4])、エトキシル化トリメチロールプロパン付加体、たとえば1モルの成分当たり3〜8モルのエチレンオキシドでのエトキシル化に相当するもの(CAS[50586−59−9])、1モルの成分当たり3〜9モル当量でのプロピレンオキシドに相当するエトキシル化トリメチロールプロパンプロピレンオキシド付加体(CAS[25723−16−4])、1モルの成分当たり20〜80のエチレンオキシドモルでのエチレンオキシド付加体に相当するエトキシル化ソルビタンモノオレエート(CAS[9005−65−6])、およびエトキシル化ソルビタンモノラウレート(CAS[9005−64−5])などのエトキシル化またはプロポキシル化化合物の少なくとも1種を含有することができる。
【0056】
一実施形態においては、付着促進剤画分として有用な有機バインダーは、超分岐ポリオール、たとえば樹枝状超分岐ポリオール、超分岐樹枝状ポリエーテルまたはポリエステル、超分岐ポリエーテルまたはポリエステル、アーボロール(arborol)、樹枝状またはカスケード状超分子およびそれらの超分岐一族、または1個以上の反応性ヒドロキシル基を有するポリエステル型の樹枝状高分子を含有することができる。そのような超分岐ポリオールは、たとえば「Dendritic Macromolecule and Process for Preparation Thereof(樹枝状高分子およびそれの製造方法)」という表題のPerstorp ABに譲渡されたHultらの米国特許第5,418,301号明細書、「Hyperbranched Macromolecule from Epoxide Nucleus and Hydroxy−functional Carboxylic Acid Chain Extenders(エポキシド核およびヒドロキシ官能性カルボン酸連鎖延長剤からの超分岐高分子)」という表題のPerstorp ABに譲渡されたSorensenらの米国特許第5,663,247号明細書、「Hyperbranched Dendritic Polyether and Process for Manufacture Thereof(超分岐樹枝状ポリエーテルおよびそれらの製造方法)」という表題のPerstorp ABに譲渡されたMagnussonらの米国特許第6,617,418号明細、および「Method for Producing Highly−Branched Glycidol−based Polyols(高度分岐グリシドール系ポリオールの製造方法)」という表題のBayer Aktiengesellschaftに譲渡されたSunderらの米国特許第6,765,082号明細書に記載されている。市販の超分岐鎖ポリオール製品は、Perstorpのもの、たとえば、16、12、6.4、32、64、14、および詳細不明の1分子当たりのそれぞれの平均OH官能性、ならびに2100、2500、3200、3500、5400、1500、および詳細不明のそれぞれの平均相対分子質量のBoltorn H20、H2003、H2004、H30、H40、P1000、およびH311を含む。超分岐ポリオールの例としては、ペンタエリスリトールをベースとするポリエーテル構造(V)およびポリエステル構造(VI):
【化3】

【0057】
【化4】

が挙げられる。
【0058】
一実施形態においては、付着促進剤画分として有用な有機バインダーは、−O−、−S−、−OC(O)−、および−NR11C(O)−で割り込まれた分岐鎖アルキルを含有することができる。−OC(O)−で割り込まれたポリオールの具体例は上に示される。アミドポリオールと呼ばれる、−NR11C(O)−で割り込まれたポリオールの具体例は、EMS Chemie(Domat/Ems,Switzerland)からPRIMID(登録商標)XL552ポリオールとして商業的に入手可能な、式(VII)である。
【化5】

【0059】
一実施形態において付着促進剤画分は、有機ポリオールが付着促進剤画分として使用されるとき、触媒層の総重量を基準にして、約0.5〜約20重量%、好ましくは約0.5〜約5.0重量%である。
【0060】
ポリマーバインダー画分
触媒層は、場合により、および付着促進剤が存在するかどうかとは無関係に、ポリマーバインダー画分を有する。一実施形態において触媒層は、ポリマーバインダー画分を有し、好ましくは、ポリマーバインダーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリヘテロ芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の伝導性(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー;アクリルラテックス、スチレンラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス;溶液系のアクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびスチレン−アクリル系ポリマー;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の非伝導性(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー;エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキル基はC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキルである)、ノルボルネン、酢酸ビニル、一酸化炭素、(メタ)アクリル酸からなる群から選択される1種以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルブチルアルデヒド、ビニルアルコールおよびビニルピロリドンからなる群から選択される繰り返し単位を含むビニル(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマー;ポリ(4−ビニル)ピリジン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、部分水素化ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるヘテロ原子置換スチレン系ポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマーならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
一実施形態においてポリマーバインダー画分は、アクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス、ならびにランダムおよびグラフトコポリマーなどの溶液系のアクリル系(コ)ポリマーおよびスチレン−アクリル系(コ)ポリマー;ならびにそれらの組み合わせ;エチレンと、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、一酸化炭素および(メタ)アクリル酸からなる群から選択される1種以上のモノマーとのコポリマー;ポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;ならびにポリビニルピロリドンおよびポリビニルピロリドン−コ−酢酸ビニルなどのそのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む。好ましくはラテックスは、約150nm未満、より好ましくは、約100nm未満の平均粒度を有する。好ましい溶液系のアクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびスチレン−アクリル系ポリマーは約100,000未満、好ましくは50,000未満、より好ましくは30,000未満のMを有する。一実施形態においてポリマーバインダー画分は約10〜約300の酸価を有する。この酸価は、ラテックスまたは溶液ポリマー中の酸官能性を中和するために必要とされる、標準中和技術によって測定されるような、1グラム当たりのKOHのマルチ当量である。酸官能性は一般に、アクリル酸、メタクリル酸等々の、エチレン性不飽和カルボン酸の共重合によってアクリル系ポリマーおよびスチレン−アクリル系ポリマーに組み込まれる。ポリマーバインダーとして有用な溶液系のアクリル系ポリマーおよびスチレンアクリル系ポリマーの市販の例としては、Carboset(登録商標)GA2300(Noveon)、Joncryl(登録商標)63(Johnson Polymer)、およびElvacite(登録商標)2028(Lucite International)が挙げられる。ポリマーバインダーとして有用なアクリルラテックスおよびスチレンアクリルラテックスの市販の例としては、Joncryl(登録商標)95、538および1915(コ)ポリマー(Johnson Polymer)が挙げられる。好適なラテックスポリマーの合成方法は国際公開第03/099574号パンフレットに報告されている。
【0062】
一実施形態において触媒層およびパターニングされた触媒層は、約1.0〜99重量%の触媒画分;約0.5〜10重量%の付着促進剤画分;および約0.5〜98.5重量%のポリマーバインダー画分を含む。
【0063】
別の実施形態は、有機ポリオールを含む付着促進剤画分と、約250未満;好ましくは約100未満の酸価を有するアクリルラテックスおよびスチレン−アクリルラテックスならびに溶液系のアクリル系(コ)ポリマーおよびスチレン−アクリル系(コ)ポリマーを含むポリマーバインダー画分とを含む触媒転写層を含む。好ましくは有機ポリオールは、上に議論されたような、アミドポリオールである。
【0064】
反射防止剤画分
本発明によって提供されるパターニングされた金属層が、たとえば、ディスプレイ装置用のフロント・フィルターとしてディスプレイ用途に使用されることになっているとき、触媒層は、場合によりおよび好ましくは、触媒層、およびその上にめっきされた金属層の反射率を下げるようにデザインされた反射防止剤画分を有する。具体的な実施形態において反射防止剤は、ルテニウム、マンガン、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、銅、およびそれらの合金;それらの酸化物;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される黒色顔料である。好ましい反射防止剤はRuO、Cr、Co、およびNiを含む。非伝導性反射防止剤の例は、Fe−Coクロマイト、Cr−Fe−Niスピネル、およびCu−クロマイトなどのセラミック系黒色物質である。触媒層が反射防止剤画分を含有するとき、触媒層の伝導性は多くの場合低下する。それ故、反射防止剤の量を調節することが望ましい。別の実施形態において反射防止剤は、処理により反射防止剤を提供する、反応性前駆体であることができる。反射防止剤の反応性前駆体の例としては、ルテニウム、マンガン、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、または銅などの金属;アルコキシド誘導体、β−ジケトンとの錯体、β−ケト酸エステルと錯体、およびこれらの金属の有機カルボキシレートエステルが挙げられる。それらは、ベーキングにより対応する酸化物に変換されて黒色および反射防止性を示す。そのようなものとして金属が反射防止剤の反応性前駆体として使用されるとき、それは、触媒画分として使用される金属粉末とは異なってもよいし、または一金属が二重機能を有してもよい。たとえば、銅粉末が触媒画分として使用されるとき、銅粉末の一部はベーキングにより黒色の酸化銅になる可能性がある。
【0065】
本発明の別の実施形態は、ベースフィルム、触媒転写層(A)、および前記ベースフィルムと前記触媒転写層(A)との間に介在するLTHC層を含む熱転写ドナーであって、前記触媒転写層(A)が、
(i)触媒層の総重量を基準にして、約1.0〜約99重量%の触媒画分(A)であって、Ag、Cu、およびそれらの合金から選択される金属粒子を含む触媒画分と;
(ii)ガラスフリット;ならびに金属水酸化物およびアルコキシドから選択される約0.5〜約10重量%の付着促進剤画分と;
(iii)約0.5〜約98.5重量%のポリマーバインダーと
を含む熱転写ドナーである。
【0066】
別の実施形態は、上記のような熱転写ドナーであって、触媒層(A)が、上記のように、成分(i)、(ii)、および(iii)から実質的になり;ポリマーバインダーが、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリヘテロ芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の伝導性(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー;アクリルラテックス、スチレンラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス;溶液系のアクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびスチレン−アクリル系ポリマー;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の非伝導性(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー;エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキル基はC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキルである)、ノルボルネン、酢酸ビニル、一酸化炭素、(メタ)アクリル酸からなる群から選択される1種以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルブチルアルデヒド、ビニルアルコールおよびビニルピロリドンからなる群から選択される繰り返し単位を含むビニル(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマー;ポリ(4−ビニル)ピリジン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、部分水素化ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるヘテロ原子置換スチレン系ポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマーならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、熱転写ドナーである。
【0067】
別の実施形態は、LTHC層が、CrおよびNiから選択される金属フィルム;カーボンブラック;黒鉛;およびLTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料からなる群から選択される1種以上の放射線吸収剤を含む熱転写ドナーである。
【0068】
別の実施形態は、LTHC層が、インドシアニン、フタロシアニン、およびメロシアニンからなる群から選択される1種以上の水溶性または水分散性の放射線吸収シアニン化合物と;アクリル樹脂、親水性ポリエステル、スルホン化ポリエステルならびに無水マレイン酸ホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される1種以上の水溶性または水分散性ポリマーバインダーとを含む熱転写ドナーである。
【0069】
熱転写ドナーは、本明細書において金属転写層の上として定義される、前記ベースフィルムとは反対側の触媒転写層の面上に配置される1つ以上の追加の転写層を有してもよい。追加の転写層の厚さは、約5nm〜約5μm、より好ましくは約100nm〜約3μmのいずれかの厚さであってよい。追加の転写層は、伝導層、半導体層、絶縁層、接着層、平坦化層、光減衰層または保護層として機能する、機能性層であってもよく、熱転写プロセスにおいて金属転写層とともに転写される。転写の後、追加の転写層は、レシーバーのパターニングされた触媒作用層とベース層との間に配置されるであろう。
【0070】
別の実施形態は、
積層順で、ベースフィルム、触媒転写層(B)および付着促進剤層を含む熱転写ドナーであって、前記触媒転写層(B)が、
(ii)触媒層の総重量を基準にして、約1.0〜約99重量%の触媒画分であって、Ag、Cu、およびそれらの合金から選択される金属粒子を含む触媒画分;
(iii)約1.0〜約99重量%のポリマーバインダー
を含み;
付着促進剤層が、ガラスフリット;ならびに金属水酸化物およびアルコキシドから選択される材料を含む熱転写ドナーである。
【0071】
別の実施形態は、積層順で、ベースフィルム、触媒層(B)および付着促進剤層を含む熱転写ドナーであって、前記触媒層(B)が、上記のように、成分(i)および(iii)から実質的になり;ポリマーバインダーが、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリヘテロ芳香族ビニレン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の伝導性(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー;アクリルラテックス、スチレンラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス;溶液系のアクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびスチレン−アクリル系ポリマー;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の非伝導性(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー;エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキル基はC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキルである)、ノルボルネン、酢酸ビニル、一酸化炭素、(メタ)アクリル酸からなる群から選択される1種以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルブチルアルデヒド、ビニルアルコールおよびビニルピロリドンからなる群から選択される繰り返し単位を含むビニル(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマー;ポリ(4−ビニル)ピリジン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、部分水素化ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるヘテロ原子置換スチレン系ポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマーならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される熱転写ドナーである。
【0072】
上記の実施形態における付着促進剤層は好ましくは、ガラスフリット;ならびに、上記のように、金属水酸化物およびアルコキシドから選択される材料を含む。別の実施形態において付着促進剤層は、アクリルラテックス、スチレンラテックスおよびスチレン−アクリルラテックス;溶液系のアクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびスチレン−アクリル系ポリマー;ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の非伝導性(コ)ポリマー/(コ)オリゴマー;エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキル基はC1〜C18の直鎖または分岐鎖アルキルである)、ノルボルネン、酢酸ビニル、一酸化炭素、(メタ)アクリル酸からなる群から選択される1種以上のモノマーとのコポリマー;ならびにポリ酢酸ビニルおよびそのコポリマー;酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルブチルアルデヒド、ビニルアルコールおよびビニルピロリドンからなる群から選択される繰り返し単位を含むビニル(コ)ポリマーまたは(コ)オリゴマー;ポリ(4−ビニル)ピリジン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、部分水素化ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるヘテロ原子置換スチレン系ポリマー;フェノール−アルデヒド(コ)ポリマーおよび(コ)オリゴマーならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーバインダーをさらに含む。
【0073】
別の実施形態は、上記のように、付着促進剤層を含む熱転写ドナーであって、付着促進剤層が、上に開示されたように、付着促進剤層の反射率を下げるようにデザインされた、反射防止剤画分をさらに含む熱転写ドナーである。反射防止剤画分を含む付着促進剤層は、追加の転写層として触媒転写層のトップ上に配置することができる。
【0074】
場合により、保護可剥性カバーシートが熱転写ドナーの最も外側の層上に存在してもよい。カバーシートは、下にある転写層を保護し、容易に除去可能である。
【0075】
触媒転写層を含む熱画像形成ドナーは、ベースフィルム、または、存在する場合、LTHC層の表面上に触媒転写層組成物の分散液を適用し、そのキャリア流体を揮発させることによって作製されてもよい。分散液の適用は、均一層が得られる、あるいは必要に応じて、パターニングされたまたは不均一の触媒転写層が得られるあらゆる方法によって行うことができる。ロッドコーティングおよびスピンコーティングなどのコーティング、吹き付け、印刷、ブレーディングまたはへら付けを使用することができる。コーティングおよび吹き付けは、均一な触媒転写層を得るために好ましい分散液の適用方法である。キャリア流体を蒸発させると触媒転写層が得られ、またはこの層は、加熱および/または減圧などのあらゆる従来の乾燥方法によって乾燥させることができる。
【0076】
レシーバー
熱画像形成方法は、パターニングされた触媒層を受けるための熱画像形成レシーバーの存在を必要とする。図2Aは、レシーバーベース層202を有する熱画像形成レシーバー200の断面図である。レシーバーベース層202は、熱転写ドナーのベースフィルムについて定義されたような寸法安定性のあるシート材料である。さらに、レシーバーベース層は、二酸化チタンなどの白色顔料入りのポリエチレンテレフタレート;アイボリー紙;またはTyvek(登録商標)スパンボンドポリオレフィンなどの合成紙などの、不透明な材料であることができる。ベース層材料はまたガラスであることができる。レシーバー用の好ましいベース層はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、たとえばKapton(登録商標)ポリイミド、およびガラスである。
【0077】
別の実施形態において熱画像形成レシーバーは、ベース層またはパターニングされた層上の連続層であってもよい、接着層、反射防止層等々の、1つ以上の任意選択の追加層を含んでもよい。特定の有用なレシーバーは、図2Bに示されるように、パターニングされた反射防止層204をさらに含む。パターニングされた反射防止層は、下に開示されるような類似の熱画像形成プロセスを用いて製造することができる。好適な反射防止層は、RuO、酸化コバルト、酸化ニッケル、鉄−コバルトクロマイト、銅クロマイト、および非伝導性カーボンブラックからなる群から選択される1種以上の非伝導性材料を含む。
【0078】
接触
本発明の熱転写ドナーは、熱画像形成レシーバーに接触させられる。この接触は、ドナーの触媒転写層と、または触媒転写層を覆うあらゆる任意選択層と行うことができる。「接触」とは、ドナーがレシーバーと非常に接近し、好ましくは数ミクロンの範囲内となることを意味する。あらかじめ印刷された層、繊維、または粒子などによって、ドナーとレシーバーとの間の間隙を制御するスペーサーとして機能させて、レシーバーをドナーから偏らせることができる。真空および/または圧力を使用して、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いに保持することができる。一代替法として、組立体の周囲部分で層を溶融させることによって、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いに保持することができる。さらなる一代替法として、ドナー要素100およびレシーバー要素200を互いにテープで留め、画像形成装置にテープで留めることができる。ピン/締め付けシステムを使用することもできる。さらに別の一代替法として、ドナー要素をレシーバー要素に積層することができる。ドナー要素100およびレシーバー要素200が可撓性である場合には、それらの組立体を、レーザー画像形成に有用なドラム上に好都合に取り付けることができる。
【0079】
転写
熱転写は、図3に示すようなレーザー媒介転写方法によって行うことができる。一実施形態においては、ドナー100とレシーバー200との組立体が、好ましくはレーザー放射線(R)の形態である熱に、レシーバー上に形成される所望のパターンの画像の曝露パターンで選択的に曝露される。レーザー放射線またはレーザービーム(R)、触媒転写層106と、存在する場合にはLTHC層108との間の界面付近に焦点が合わされ、その他の場合には106とベースフィルム102との間の界面付近に焦点が合わされる。触媒層をレシーバーに転写するのに十分な放射線が照射される。
【0080】
熱転写ドナー要素を加熱するために種々の発光源を使用することができる。類似の技術(たとえば、マスクを介した露光)の場合は、高出力光源(たとえば、キセノンフラッシュランプおよびレーザー)が有用である。デジタル画像形成技術の場合は、赤外レーザー、可視レーザー、および紫外レーザーが特に有用である。特に、ドナー要素の構造、転写層材料、熱転写の方式、および他のそのような要因に基づいて、他の光源および照射条件が好適となりうる。
【0081】
放射線は、好ましくはベースフィルム102の裏側、すなわち、触媒転写層を含有しない側から照射される。レーザー放射線は、好ましくは最大約600mJ/cm、より好ましくは約75〜440mJ/cmのレーザーフルエンスで照射される。約350nm〜約1500nmの動作波長のレーザーが好ましい。約750〜約870nm、および最高1200nmなどの領域で発光するダイオードレーザーが特に好都合であり、これらは小型、低コスト、安定性、信頼性、耐久性、および変調の容易さに関して実質的に好都合となる。このようなレーザーは、たとえば、スペクトラ・ダイオード・ラボラトリーズ(Spectra Diode Laboratories)(カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA))より入手可能である。レシーバーに画像を適用するために使用される装置の1つは、クレオ・スペクトラム・トレンドセッター(Creo Spectrum Trendsetter)3244Fであり、これは830nm付近で発光するレーザーを使用している。この装置は空間光変調器(Spatial Light Modulator)を利用して、約830nmのレーザーダイオードアレイからの5〜50ワットの出力の分割および変調を行っている。関連する光学素子によって、画像形成可能な要素上にこの光の焦点が合わせられる。これによって、0.1〜30ワットの画像形成光がドナー要素上に生成して、50〜240の個別のビームの配列として集中し、それぞれ約10×10〜2×10ミクロンのスポット中に10〜200mWの光を有する。米国特許第4,743,091号明細書に開示されるようにスポットごとに個別のレーザーを使用して、類似の露光を行うこともできる。この場合、各レーザーは、780〜870nmで電気的に変調された50〜300mWの光を発する。他の選択肢としては、500〜3000mWを放出するファイバー結合レーザーが挙げられ、そのそれぞれが変調され媒体上に焦点が合わせられる。このようなレーザーは、アリゾナ州トゥーソン(Tucson,AZ)のオプト・パワー(Opto Power)から入手することができる。
【0082】
熱画像形成に好適なレーザーとしては、たとえば、高出力(>90mW)シングルモードレーザーダイオード、ファイバー結合レーザーダイオード、およびダイオード励起固体レーザー(たとえば、Nd:YAGおよびNd:YLF)が挙げられる。レーザー露光滞留時間は、広範囲で変動させることができ、たとえば、百分の数マイクロ秒〜数十マイクロ秒以上とすることができ、レーザーフルエンスは、たとえば約0.01〜約5J/cm以上の範囲内とすることができる。
【0083】
熱画像形成方法は、触媒転写層の少なくとも一部が熱転写によって熱画像形成レシーバー上に転写されて、パターニングされた触媒層をレシーバーベースフィルム上に提供することを必要とする。レシーバーベースフィルム上のパターニングされた触媒層は、使用済み熱画像形成ドナーの除去によって、めっきステップのために必要とされる、パターニングされた基体になる。
【0084】
この方法の別の実施形態においては、ドナーは、ベースフィルムとは反対側の触媒転写層上に、付着促進剤層をさらに含み;前記転写は、付着促進剤層の対応する隣接部分を転写して、積層順でレシーバー上に、パターニングされた付着促進剤層および前記パターニングされた触媒層を有する前記パターニングされた基体を提供するステップをさらに含む。好ましい付着促進剤層は、ガラスフリット、金属水酸化物および金属アルコキシドから選択される材料を含む。用語「付着促進剤層の対応する隣接部分を一緒に転写するステップ」は、レシーバー上への露光触媒転写層の転写が、触媒転写層に隣接して存在する、露光付着促進剤層のレシーバー上への同時マッチング転写を含むことを意味する。触媒転写層が2つ以上の層を含むかまたは追加の転写層が触媒転写層のトップ上に存在する実施形態においては、これらの層は同様なやり方で転写される。
【0085】
この方法の別の実施形態において付着促進剤層は、上に開示されたような、反射防止剤画分をさらに含む。
【0086】
露光後、ドナー要素100およびレシーバー要素200は、図4Aおよび4Bに示されるように分離されて、触媒転写層106の転写されなかった部分がドナー要素100上に残り、パターニングされた触媒層はレシーバー要素200上に残る。通常、ドナーおよびレシーバーの分離は、これら2つの要素を単純に剥離して引き離すことによって行われる。これは、一般には必要とする剥離力は非常に小さく、ドナー要素をレシーバー要素から単純に分離することで行われる。これはあらゆる従来の分離技術を使用して行うことができ、手作業または自動的に行うことができる。
【0087】
別の実施形態は、レシーバーが、境界を有するパターニングされた反射防止層をさらに含む熱画像形成方法であって;レシーバー上への触媒転写層の少なくとも一部の前記転写がパターニングされた反射防止層の境界内である方法である。これは、パターニングされた触媒層の暗色化を可能にする別の有用な方法である。パターニングされた反射防止層は、予備画像形成プロセス;引き続く、パターニングされた反射防止層と正確に合わせた、パターニングされた触媒層の転写でレシーバーベース層上に堆積させることができる。
【0088】
通常、転写層の転写された部分は、レーザー放射線に露光した転写層部分に対応する。場合によっては、ドナー要素およびレシーバー要素の性質、ならびに転写プロセスパラメーターに依存するが、ドナー要素100およびレシーバー要素200が分離されるときに、レシーバー要素が、1つ以上の転写層の露光部分と未露光部分との両方を含む。熱画像形成レシーバーの表面上に1つ以上の熱転写層の露光部分と未露光部分とを含む、熱画像形成レシーバー上のパターンの解像度を向上させる方法の1つは:(a)熱画像形成レシーバーの前記表面を接着面に接触させて、一時的な積層体を得るステップと;(b)一時的な積層体から前記接着面を除去して、1つ以上の転写層の前記未露光部分が実質的に存在しない表面を有する熱画像形成レシーバーを得るステップとを含む。この方法を実施するのに好適な接着面は、市販の接着テープであり、たとえば、3Mカンパニー(3M company)より入手可能なスコッチ(Scotch)(登録商標)ブランドのテープである。粘着性ローラー、たとえば、SDIのほこり除去システム−1(赤)(Dust Removal System−1(red))(システムズ・ディビジョン社(Systems Division,Inc.)、アーバイン(Irvine),CA 92618−2005)の形態で入手可能な中間粘着性ローラーが上記方法に好適な接着面である。前述のLTHC層として使用されるクロムフィルムも、非常に穏やかな条件下で転写層の未露光部分を除去するための有用な低粘着性接着層となる。
【0089】
熱画像形成方法の別の実施形態は、
(d)パターニングされた基体をアニール温度にアニール期間加熱して、アニール化されたパターニングされた基体を提供するステップをさらに含み;前記金属のめっきは、前記アニール化されたパターニングされた基体をめっきするステップを含む。熱画像形成方法のこの態様は、パターニングされた触媒層中に存在するかまたはそれに隣接する、付着促進剤をレシーバーに固定するのに有用である。パターニングされた基体のアニーリングは、めっきステップによって提供されるパターニングされた金属層がベース層に接合したままであることを意図されるプロセスにおいて特に有用である。ガラスフリットは典型的には、上に開示されたように軟化または溶融温度に加熱される。ポリカルボキシレート、金属水酸化物およびアルコキシドと組み合わせたポリオールなどの他の付着促進剤もまた、アニール温度への加熱時に基体への改善された付着を与えることができる。ポリマーベース層については、アニール温度は通常80〜150℃であり;ガラスベース層については、アニール温度はより高く、ポリマーバインダーがパターニングされた触媒層中に存在するかどうかおよび付着促進剤の特定の性質に依存して、典型的には150〜550℃であることができる。
【0090】
めっき
この方法は、前記パターニングされた基体上に金属をめっきして、パターニングされた触媒層と接続したパターニングされた金属層を得るステップをさらに含む。本明細書において用語「めっき」は、パターニングされた触媒層の存在の結果として、パターニングされた触媒作用層上に選択的な金属堆積を提供するあらゆる方法を意味する。湿式めっきは、パターニングされた触媒層上に金属層を選択的に形成することができるので好ましい。湿式めっきは、無電解めっきおよび電解めっき、またはそれらの組み合わせを含み、パターニングされた触媒層の必要とされる伝導性に依存して適切に選択される。電解めっきは、還元することができる金属イオンを含有する電解質溶液に電流が通されることを必要とする通電プロセスである。最も一般的な電解めっきシステムは、陽極(めっきを受ける基体)として伝導性基体;めっきされるべきイオン形態の金属を含有する化学品溶液;および金属のフィルムを生成するために電子が供給されている陰極を含む。無電解めっきは、外部電力の使用なしに起こる、水溶液におけるいくつかの同時化学反応を含む非通電めっきである。無電解めっきシステムは一般に、金属へ還元することができる金属イオン;および電子を金属イオンに送ることができる化学還元剤を有する。最も一般的な無電解めっき方法は、還元剤として次亜リン酸ナトリウムと金属イオンとしてニッケル(II)イオンとを使用する無電解ニッケルめっきである。2つのめっきプロセスが組み合わせて用いられてもよい。パターニングされた触媒層が伝導性であるとき、電気めっきを最初から適用することができる。パターンの伝導性が不十分であるとき、小さい厚さを有する第1伝導性層が無電解めっきによって形成され;次に第2伝導性層が電解めっきによって形成されて、パターニングされた金属層を形成する。本発明の一実施形態は、めっき金属が、Ni、Cu、Fe、Cr、Sn、Mn、Mo、Ag、Au、W、Zn、およびそれらの合金からなる群から選択されるものである。好ましいめっき金属はNiおよびCuである。
【0091】
めっきプロセスは、パターニングされた触媒層上への金属の全体堆積に有益である可能性がある、めっきの技術分野で公知であるあらゆる処理プロセスをさらに含んでもよい。たとえば、パターニングされた基体は、金属の堆積前に、増感剤、クリーニング剤などで前処理されてもよい。
【0092】
めっきプロセスによって提供されるパターニングされた金属層は、単層あるいは2、3またはそれ以上のサブ層を有する多層であってもよい。パターニングされた金属層の厚さは通常、約0.1〜約20ミクロン、好ましくは約0.1〜約5ミクロンである。一実施形態においてパターニングされた金属層は、HP 3478Aマルチメーターの4プローブ抵抗関数を用いて測定されるとき1平方当たり0.2オーム未満の抵抗を有する。好ましくはパターニングされた金属層は、150〜500ミクロンの範囲のピッチ、および約10〜80ミクロンの線幅を有するメッシュを形成する線の幾何パターンの形態にある。
【0093】
暗色化剤
別の実施形態においては、この方法は、目視検査により明らかなように、金属層の反射率を下げるために、パターニングされた金属層を暗色化剤で処理して、暗色化されたパターニングされた金属層を得るステップをさらに含む。暗色化剤は、Cu、Niおよびそれらの合金のような金属を酸化する酸化剤とすることができる。たとえば、EBONOL(登録商標)−C酸化剤は、パターニングされた金属層の処理における暗色化剤として有用である;Cookson Electronics(Providence,RI)によって販売される銅および銅合金用の独自開発の黒色化剤である。
【0094】
図5は、レシーバーベース層202、パターニングされた反射防止層204、パターニングされた触媒層106、パターニングされた金属層210、および暗色化されたパターニングされた金属層212を含むレシーバー200を包含する一実施形態の側面図である。
【0095】
電子デバイス
別の実施形態は、基体上にパターニングされた金属層を有する電子デバイスであって、前記基体が可視光を実質的に通し;前記パターニングされた金属層が積層順で前記基体上に、付着促進剤層、触媒層、およびめっき金属層を含み;前記パターニングされた金属層が約1ミリメートル以下の幅の少なくとも1つの線を持ったパターンを有する電子デバイスである。好ましくはパターニングされた金属層は、約200ミクロン以下の幅の少なくとも1つの線を有する。他の実施形態においてパターニングされた金属層は、約150ミクロン以下、100ミクロン以下、50ミクロン以下、20ミクロン以下および10ミクロン以下の幅の少なくとも1つの線を有する。電子デバイスの別の実施形態においては、付着促進剤層は、ガラスフリット、ならびに金属水酸化物およびアルコキシドから選択される材料を含み;触媒層は、(i)触媒層の総重量を基準にして、約0.5〜約99重量%の触媒画分であって、Ag、Cu、およびそれらの合金から選択される金属粒子を含む前記触媒画分と;(ii)約0.5〜約99重量%のポリマーバインダーとを含む。
【0096】
別の実施形態は、上に開示されたような、電子デバイスであって、付着促進剤層が反射防止剤画分をさらに含む電子デバイスである。好ましい反射防止剤は上に開示された通りである。
【0097】
別の実施形態は、上に開示されたような、電子デバイスであって、付着促進剤層が反射防止剤画分をさらに含み;パターニングされた金属層が付着促進剤層とは反対側の金属層上に反射防止層をさらに含む電子デバイスである。
【0098】
電子デバイスの好ましい実施形態は、上に開示されたように、タッチパッドセンサーおよび電磁妨害(EMI)シールドを含む。
【0099】
上記のようなパターニングされた金属層を含むタッチパッドセンサーは、誘電体層、典型的には好適な誘電特性を有する有機ポリマーをさらに含む。一実施形態においてタッチパッドセンサーは、第1のパターニングされた金属層を有する第1ベース層;第2のパターニングされた金属層を有する第2ベース層;および第1のパターニングされた金属層と第2のパターニングされた金属層との間に配置された誘電体層を含む。別の実施形態においてタッチパッドセンサーは、2つの対向面を有するベース層、2つの対向面のそれぞれの上に配置されたパターニングされた金属層;およびパターニングされた金属層のそれぞれのトップ上の誘電体層を含む。
【0100】
この方法の種々の実施形態は、形成中のパターンの正確なデジタル制御;10ミクロンの線幅までの、微細な線を有するメッシュを作製する能力;および反射防止層、接着層、誘電体層等々の、他の層を金属パターンに正確な関係で配置する能力など、金属パターンの他の製造方法よりも優れたいくつかの利点を有する。さらにパターニングされた触媒層の製造のステップは乾式ステップである、すなわち、それらは、従来のフォトリソグラフィー法で典型的に使用される溶媒、エッチング液、およびマスクの使用を必要としない。従来の「湿式」処理を必要とする唯一のステップは、めっきステップである。したがって、この全体方法は、金属メッシュの製造に用いられる従来の方法より環境にやさしい可能性がある。
【0101】
材料、装置および方法
特に示されない限り、化学物質は、さらに精製せずに入手したままの状態で使用した。ポリマー、可塑剤、IR染料、および界面活性剤は、本明細書に挙げた供給元から入手するかまたはAldrichから購入した。カーボンブラック分散液などの顔料は、Penn Color,Inc.(Doylestown,PA)から入手した。銀ナノ粒子は、Ferro Co.−Electronic Material Systems(Cleveland,Ohio);Nanostructured & Amorphous Materials,Inc.、および三井物産株式会社から購入した。
【0102】
フラットベッドプリンターを、触媒転写層をガラス基体上に転写するために使用した。使用した画像形成ヘッドは、Creo/Kodak(Vancouver,Canada)によって製造されたSQUAREspot(登録商標)熱画像形成ヘッドであった。このヘッドを、論文「Thermal Transfer for Flat Panel Display Manufacturing(フラットパネルディスプレイ製造のための熱転写)」、Eran Elizur and Dan Gelbart、Journal of the Society for Information Display、第11巻、ナンバー1、199−202ページに記載されているようにフラットベッドスキャナーに取り付けた。
【0103】
Creo Trendsetter(登録商標)800(Creo/Kodak(Vancouver,Canada))を可撓性基体に画像形成するために用いた。Creo Trendsetter(登録商標)800は、5080dpi分解能で830nmの波長で12.5ワットの最大平均動作電力を有する改造されたThermal 1.7Headを用いる改造されたドラム型の画像形成装置である。この800Trendsetterを、約68℃の平均温度および約40〜50%の平均相対湿度の制御された温度/湿度環境で動作させた。それぞれの印刷実験について、熱画像形成レシーバーの部分をドラム上に位置決めした。ドナー要素の、触媒転写層でコーティングされた側がレシーバーの自由面に面するように、熱転写ドナーを取り付けた。画像形成組立体(assemblage)を、ドナーフィルムベースを通して裏側から露光した。真空ホールドダウン(vacuum hold down)を用いて、ドラムに機械的に固定された標準的なプラスチックまたは金属担体プレートにフィルムを取り付けた。Creo Trendsetter(登録商標)800サーマルプレートセッターを用いたある実験では、通常のドナーおよびレシーバーのサイズに適合するようにドラム上に直接機械加工された吸引孔を有する非標準ドラムを、標準的なドラム/担体プレート組立体の代わりとして用いた。約600mmのHg減圧によって、ドナーとレシーバーとを接触させた。レーザー出力は、コンピュータの制御下で、所望の画像形成パターンを形成するためのものであった。レーザー出力およびドラム速度は制御可能であり、受像表面上に転写される画像の目視検査によって判断されるような画像品質を最適化するために、それらを繰返し調節した。
【0104】
方法1:硬質基体上への熱転写
レシーバーベース層として機能する、ガラスパネルを、Micro 90、International Products,Corp.(Burlington,NJ)によって製造されるクリーニング液を使用して洗浄し、UVO(UVOは、表面が空気の存在下に約30mJ/秒cmの強度を有する遠紫外光(185nm〜254nm)に露光されるプロセスである)で約5分間処理し、次にDI水でリンスした。熱転写ドナーを、論文「Thermal Transfer for Flat Panel Display Manufacturing」、Eran Elizur and Dan Gelbart、Journal of the Society for Information Display、第11巻、ナンバー1、199−202ページに記載されているようにフラットベッドスキャナー上のレシーバーと減圧接触させた。熱画像形成ドナーとガラスパネルとの組立体を次に、Creo/Kodak(Vancouver,Canada)によって製造されたSQUARESPOT熱画像形成ヘッドを用いてドナーベースフィルムを通して先ず裏面から所望のパターンで露光した。迅速に移動するヘッドに21.5ワットの出力エネルギーの830nm赤外レーザーを備え付け、このヘッドをドナーベースフィルム上の、またはLTHC層が存在するときにはベースフィルムとLTHC層との界面上の約5μm×5μmのスポットサイズに焦点を合わせた。スキャン速度は典型的には0.5m/秒〜1.3m/秒の範囲であった。レーザー出力は、コンピュータの制御下で、所望のパターンを形成するためのものであった。レーザー出力およびスキャン速度は制御可能であり、レシーバー上のパターニングされた触媒層の目視検査によって判断されるような転写品質を最適化するために、それらを繰返し調節した。フラットベッド画像形成装置を、約70°Fの平均温度および約45〜55%の平均相対湿度の制御された温度/湿度環境で動作させた。
【0105】
評価方法
固有抵抗−固有抵抗は、HP 3478Aマルチメーター(Hewlett−Packard)の4プローブ抵抗関数を用いて測定した。典型的には一辺が約15mmのメッシュの正方形を測定した。
厚さ−転写される触媒層、Cuめっきおよび黒色化層の厚さは、KLA Tencor
P−15プロフィラーを用いて測定した。
付着性−付着性の定性的評価は、付着の変化が起こったかどうかを評価するための下記のクライテリアを用いることによって行った。小さな先の尖ったプローブをパターンの金属線に押し付けるために使用するとき、下記が観察された場合に1〜5の格付けを与えた:
1 金属線は基体から剥がれなかったか、小さいチップが剥がれたにすぎなかったかのどちらかであり、かなりの力を必要とした。
2 金属線はかなりの力を加えられて小片で基体から剥がれた。
3 金属線は最小限の努力で基体から剥がれ、隣接小片がエッジに沿ってほぐれた。
4 金属線は少ない努力で基体から離昇し、隣接メッシュの小さい区画が離れた。
5 金属線は接触と無関係に基体から剥がれるか、または接触したときにシングルピースとして基体から離れた。
【0106】
【表1】

【0107】
有機LTHC層
有機LTHC層を、上記のPCT/US05/38009号明細書の実施例の配合Lに報告されるように調製した。
LTHCコーティング配合物を以下の材料から調製した:(i)脱塩水:894g;(ii)ジメチルアミノエタノール:5g;(iii)ハンプフォード(Hampford)染料822(ハンプフォード・リサーチ(Hampford Research);配合物はSDA 4927に該当する):10g;(iv)ポリエステルバインダー(アメルテック・ポリエステル・クリア(Amertech Polyester Clear);アメリカン・インク・アンド・コーティング社(American Inks and Coatings Corp);ペンシルベニア州バレーフォージ(Valley Forge;PA)):65gの30%水溶液;(v)テゴウェット(TegoWet)(商標)251(4)(ポリシロキサンコポリマー):2.5g;(vi)ジメチルアミノエタノールエチルリン酸カリウム:14gの11.5%水溶液[この11.5%水溶液を、3部の水および0.5部のエチルリン酸(ethyl acid phosphate)(ストーファ・ケミカル社(Stauffer Chemical Company)、コネチカット州ウェストポート(Westport,CT):ルーブリゾール(Lubrizol)、オハイオ州ウィクリフ(Wickliffe,OH))ならびに十分な45%水酸化カリウム水溶液を組み合わせて4.5のpHを得た後、十分なジメチルアミノエタノールを加えて7.5のpHを得て、最後に水で希釈して、水を含まない化合物の11.5相対質量パーセントの、合計5部の最終水溶液を得ることによって調製した];(vii)架橋剤サイメル(Cymel)(商標)350(メラミンホルムアルデヒド樹脂、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries Inc.)、ニュージャージー州ウエストパターソン(West Paterson,NJ)):10gの20%溶液;ならびに(viii)アンモニウムp−トルエンスルホン酸:2gの10%水溶液。
【0108】
成分(ii)および(iii)を水に加え、最大で24時間攪拌させてから、他の成分を示した順序で加えた。この配合物を濾過する必要はない。その配合物をインラインコーティング(in−line coating)技術で以下のように適用した:PETベースフィルム組成物を溶融押し出しし、冷却された回転ドラム上にキャスティングし、75℃の温度でその元の寸法の約3倍になるまで押し出し方向に延伸した。次に、冷却された延伸フィルムの1つの側部をLTHCコーティング組成物でコーティングして、20〜30μmのウェットコーティング厚さを得た。直接グラビアコーティングシステムを用いて、コーティングをフィルムウェブに適用した。60QCHグラビアロール(パマルコ(Pamarco)によって供給される)を溶液に通して回転させて、溶液がグラビアロール表面を覆うようにする。グラビアロールを、フィルムウェブに対して反対方向に回転させ、1つの接触点でウェブにコーティングを適用する。コーティングされたフィルムを、100〜110℃の温度で乾燥器(stenter oven)内に通し、ここで、フィルムを乾燥させ、その元の寸法の約3倍になるまで横方向に延伸した。二軸延伸コーティングフィルムを、従来の手段によって約190℃の温度でヒートセットした。次に、コーティングポリエステルフィルムを、ロールに巻き付ける。最終的なフィルムの全厚は50μmであり;転写補助コーティング層の乾燥厚さは0.07μmである。PETベースフィルムは、ソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料を含有し、ベースフィルムのポリマーの、典型的に0.2重量%〜0.5重量%の最終染料濃度を得た。ソルベント・グリーン(Solvent Green)28染料(0.40重量%)を含有するベースフィルムは、670nmで1.2の吸収度、および830nmで<0.08の吸収度を有した。ドナー基体を、有機LTHCグリーン(Green)PETドナー基体と本明細書で呼ぶこととする。
【実施例】
【0109】
実施例1
この実施例では、付着促進剤としてガラスフリットを使用する黒ずんだ銅めっきメッシュの形成を説明する。
【0110】
ベースフィルムおよび触媒層を含む熱転写ドナーを先ず、次の手順を用いて作製した。Ag粉末(26.244g、粒度d50=220nmおよびd90=430nm)、DI水(10.358g)、CARBOSET GA 2300スチレン−アクリル系ポリマー(13.404g、水中28重量%)、ZONYL FSA界面活性剤(0.523g)、BYK−025消泡剤(0.299g)およびガラスフリット(0.529g、EG2922SMZ、Ferro Corporation(Cleveland,Ohio))の混合物を、音波処理プローブ(Dukane Co.Model 40TP200,Transducer Model 41C28)で15分間処理し、この間5分間隔でスパチュラで混合物を撹拌した。混合物が入った容器を、1時間音波処理を行いながら水浴中に入れ、この間0.5時間間隔でスパチュラで混合物を撹拌した。次にこの混合物を、室温の水浴中でプローブ音波処理をさらに15分間行って処理し、この間、5分間隔でスパチュラで混合物を穏やかに撹拌した。得られた分散液を2.0ミクロンWHATMAN GFM−150シリンジ−ディスクフィルター(Whatman Inc.(Clifton,New Jersey))で2回濾過した。
【0111】
有機LTHC Green PET熱転写ドナーベースフィルムを、コーティングの直前に加圧窒素流れで洗浄した。前述の分散液を、WATERPROOF Color Versatilityコーティングシステム(E.I.DuPont De Nemours,Inc.(Wilmington,DE))を用いて5.8フィート/分でCN#5ロッド(Buschman Corporation(Cleveland,Ohio))を使用してベースフィルム上に塗布した。ウェットフィルムを48℃で20分間乾燥させてベースフィルムおよび銀触媒層を含む熱転写ドナーを得た。
【0112】
熱転写ドナーを、ガラスパネル(厚さ約0.7mmのボロ−アルミノシリケートガラス)と減圧接触させた。このガラスレシーバーを、上記のようなフラットベッドスキャナーに取り付けた。熱転写を、約5mmの直線パターンで0.5〜1.3m/秒で変わるスキャン速度を用いる約20.5Wの画像形成面での全レーザー出力の画像形成ヘッドからの画像形成放射線にドナーを露光することによって行った。
【0113】
パターニングされた触媒層の転写の後、使用済みドナーをガラスから除去し、パターニングされた基体を得た。パターニングされたガラス基体を次に、10℃/分の速度で525℃に加熱されるFisher Scientific ISOTEMP Programmable Muffle Furnace Model 650(等温プログラム可能マッフル炉モデル650)においてアニール温度で加熱し、その温度に15分間放置した。サンプルを次に、炉への電力を切ることによって室温(RT)近くに冷却した。サンプルのアニーリングの後に、このサンプルメッシュは、110Ω/平方の抵抗を有し、プローブでこすることによって除去するのは困難であった。
【0114】
パターニングされた基体を次に、伝導性接着剤を有する、1/2インチ幅のCuテープを銀パターンの辺縁に沿って適用することによって電気めっきのために作製した。電気めっきを、Technic,Inc.「Mini Plating Plant 3」電気めっきシステムで行った。銅めっき浴電解質は、光沢剤「PC 65 B」が1容量%で添加された「PC−65」であった。両方ともTechnic Inc.(Cranston,RI)によって製造されている。めっき浴をめっきの間ずっと22℃に保った。約118Amp/mの電流密度を400秒間パターニングされた基体に適用し、銀パターン上に約8μmの銅を堆積して0.2Ω/平方未満の固有抵抗を有するパターニングされた銅層を得た。図6は、パターニングされた金属層の顕微鏡写真である。
【0115】
パターニングされたCu層の黒色化を、100℃に120秒間加熱されるEBONOL−C(製造供給元、都市州)の50重量%溶液中にめっきされたパターニングされた基体を浸漬することによって行った。得られた黒ずんだ銅めっきメッシュは、0.2Ω/平方未満の固有抵抗および低い反射率を有した。
【0116】
実施例2
この実施例では、付着促進剤として添加されたTYZOR(登録商標)212オルガノジルコネートを使用する黒ずんだCuめっきメッシュの形成を説明する。
【0117】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表2および3に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置でガラスプレート上に画像形成した。画像形成速度は0.5m/秒であった。画像形成の後、ドナーシートをガラスから除去して、画像形成されたAgパターンを有するパターニングされた基体を得た。パターニングされた基体を、Fisher Scientific Isotemp Programmable Muffle Furnace Model 650で10℃/分の速度で230℃に熱処理し、その温度に15分間放置した。パターニングされた基体を次に、発熱体への電力を切ることによってRTに冷却した。
【0118】
熱処理されたパターニングされた基体の電気めっきを、約248Amp/mの電流密度を300秒間サンプルに適用して、約5.7μmのCu厚さのパターニングされたCu層を得ることを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。Cuめっきメッシュの抵抗は0.2Ω/平方未満であった。
【0119】
パターニングされたCu層の黒色化を、100℃に7秒間加熱されるEbonol−Cの100%溶液中にめっきされたパターニングされた基体を浸漬することによって行った。得られたメッシュは、良好な伝導性および低い反射率を有した。
【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
実施例3
この実施例では、付着促進剤として添加された、有機ポリオール、PRIMID(登録商標)XL552ポリオールを使用する黒ずんだCuめっきメッシュの形成を説明する。
【0123】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表2および3に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置でガラスプレート上に画像形成した。画像形成速度は0.5m/秒であった。
【0124】
画像形成の後、ドナーシートをガラスから除去して、画像形成されたAgパターンを有するパターニングされた基体を得た。パターニングされた基体を次に、Fisher Scientific Isotemp Programmable Muffle Furnace Model 650で10℃/分の速度で230℃に熱処理し、その温度に15分間放置した。パターニングされた基体を次に、発熱体への電力を切ることによってRTに冷却した。熱処理されたAgメッシュの抵抗は、144Ω/平方であった。
【0125】
熱処理されたパターニングされた基体の電気めっきを、約248Amp/mの電流密度を300秒間サンプルに適用して、約5.7μmのCu厚さのパターニングされたCu層を得ることを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。Cuめっきメッシュの抵抗は0.2Ω/平方未満であった。
【0126】
パターニングされたCu層の黒色化を、100℃に7秒間加熱されるEbonol−Cの100%溶液中にめっきされたパターニングされた基体を浸漬することによって行った。得られたメッシュは、0.2Ω/平方未満の固有抵抗および低い反射率を有した。
【0127】
実施例4
この実施例では、付着促進剤の不存在下でのCuめっきメッシュの形成を説明する。
【0128】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表2および3に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置でガラスプレート上に画像形成した。画像形成速度は0.9m/秒であった。
【0129】
パターニングされた基体の電気めっきを、約124Amp/mの電流密度を480秒間サンプルに適用し、約7μmのCuを堆積することを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。得られたメッシュは、0.2Ω/平方未満の固有抵抗を有した。
【0130】
実施例5
この実施例では、黒ずんだCuめっきメッシュの生成を説明する。
【0131】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表4および5に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置で画像形成した。画像形成速度は0.6m/秒であった。
【0132】
画像形成の後、ドナーシートをガラスから除去して、画像形成されたAgパターンを有するパターニングされた基体を得た。パターニングされた基体を次に炉で、10℃/分の速度で525℃に熱処理し、その温度に15分間放置した。パターニングされた基体を次に、発熱体への電力を切ることによってRTに冷却した。この熱処理は、基体への良好な付着性をAgパターンに提供した。
【0133】
電気めっきを、約124Amp/mの電流密度を200秒間サンプルに適用し、約1
.4μmのCuをパターニングされた触媒層上に堆積することを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。めっきパターンは、パターンのエッジでわずかな離層を示した。
【0134】
めっきCuパターンの黒色化を、100℃に60秒間加熱されるEbonol−Cの50%溶液中にパターニングされた金属層を浸漬することによって行った。得られたメッシュは、良好な伝導性および低い反射率を有した。黒ずんだサンプルは、ガラスへの不十分な付着性を有し、ガラスプレートから容易に除去された。
【0135】
実施例6
この実施例では、付着促進剤としてガラスフリットを使用するCuめっきメッシュの生成を説明する。
【0136】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表4および5に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のCREO TRENDSETTER(登録商標)800を用いてMELINEX(登録商標)ST504のシート上に画像形成した。画像形成は、60rpmのドラム回転速度ならびに6.9、7.0、7.1および7.2Wのレーザー出力で行った。
【0137】
パターニングされた基体の電気めっきを、約226Amp/mの電流密度を480秒間サンプルに適用し、約7μmのCuを堆積することを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。得られたメッシュは、0.2Ω/平方未満の固有抵抗を有した。
【0138】
【表4】

【0139】
【表5】

【0140】
実施例7
この実施例では、Cuめっきメッシュの形成を説明する。
【0141】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表4および5に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置を用いてガラスプレート上に画像形成した。画像形成速度は0.9m/秒であった。
【0142】
電気めっきを、実施例1に記載されるものと同じ技法を用いて行った。パターニングされた金属層は、すべてのめっき条件下に基体から離層した。
【0143】
実施例8
この実施例では、ガラスプレート上でのCuめっきメッシュの生成を説明する。
【0144】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表4および5に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置でガラスプレート上に画像形成した。画像形成速度は0.8m/秒であった。
【0145】
電気めっきを、約248Amp/mの電流密度を200秒間サンプルに適用し、1.5μmのCuを堆積することを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。Cuの堆積は不規則であり、元の画像の数部分がパターン中の裂け目によってかまたはパターン中の他の非伝導性要素によってめっき電極から分離されることを示唆した。得られたメッシュのめっきエリアは、約0.5Ω/平方の固有抵抗を有した。
【0146】
実施例9
この実施例では、トリアセチルセルロースフィルム上でのCuめっきメッシュの生成を説明する。
【0147】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表4および5に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のCREO TRENDSETTER(登録商標)800を用いてTACフィルムのシート上に画像形成した。画像形成は、40rpmのドラム回転速度および4.0Wのレーザー出力で行った。
【0148】
電気めっきを、約344Amp/mの電流密度を180秒間サンプルに適用し、約5μmのCuを堆積することを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。得られたメッシュは、0.2Ω/平方未満の固有抵抗を有した。
【0149】
実施例10
この実施例では、付着促進剤としてガラスフリットを使用する黒ずんだCuめっきメッシュの形成を説明する。
【0150】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表6および7に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置でガラスプレート上に画像形成した。画像形成速度は0.6m/秒であった。
【0151】
画像形成の後、ドナーシートをガラスから除去して、画像形成されたAgパターンを有するパターニングされた基体を得た。パターニングされた基体を次に、10℃/分の速度で525℃に加熱される炉で熱処理し、その温度に15分間放置した。サンプルを次に、発熱体への電力を切ることによってRT近くに冷却した。この熱処理は、基体への良好な付着性をAgパターンに提供した。
【0152】
電気めっきを、約516Amp/mの電流密度を111秒間サンプルに適用することを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。得られためっきメッシュは、0.2Ω/平方未満の固有抵抗を有し、基体への良好な付着性を有した。
【0153】
めっきCuの黒色化を、100℃に60秒間加熱されるEbonol−Cの50%溶液中にめっきサンプルを浸漬することによって行った。得られたメッシュは、0.2Ω/平方未満の固有抵抗および低い反射率を有した。黒ずんだサンプルは、ガラス基体への良好な付着性を有した。
【0154】
【表6】

【0155】
【表7】

【0156】
実施例11
この実施例では、付着促進剤としてガラスフリット、およびパターニングされた触媒層用の黒色化剤としてRuOを使用する暗色化されたCuめっきメッシュの生成を説明する。
【0157】
ドナーシートを、実施例1に概説されるものと同じ一般手順ならびに表6および7に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置でガラスプレート上に画像形成した。画像形成速度は0.6m/秒であった。
【0158】
画像形成の後、ドナーシートをガラスから除去して、画像形成されたAgパターンを有するパターニングされた基体を得た。パターニングされた基体を次に、10℃/分の速度で525℃に加熱される炉で熱処理し、その温度に15分間放置した。サンプルを次に、発熱体への電力を切ることによってRT近くに冷却した。この熱処理は、基体への良好な付着性をAgパターンに提供した。
【0159】
電気めっきを、約516Amp/mの電流密度を111秒間サンプルに適用することを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。得られたメッシュは、約0.5Ω/平方の固有抵抗を有した。得られためっきパターンは、基体への良好な付着性を示した。
【0160】
実施例12
この実施例では、その上にパターニングされた黒色層を有するパターニングされた基体上でのパターニングされた金属層の形成を説明する。
【0161】
Crを含む第1ドナーシートを、次の成分:キシレン(12.018g)、ELVACITE(登録商標)2028(21.264g)、DEGDB(0.082g)、ガラスフリット(EG 2922 SMZ、8.612g)およびDuPont I−2218 Cr粉末(12.161g)で、実施例1に概説されるものと同じ一般手順に従って作製した。触媒層を含有する第2ドナーシートを、実施例1に記載されるものと同じ一般手順ならびに表6および7に示される成分およびプロセス変量を用いて作製した。
【0162】
第1ドナーシートを、前述のフラットベッド画像形成装置でガラスプレート上に画像形成した。画像形成速度は0.7m/秒であった。第1画像形成ドナーシートを除去してパターニングされた黒色層をその上に有するパターニングされた基体を得た。パターニングされた基体の位置を変えずに、第2ドナーシートを、0.7m/秒の画像形成速度を用いてパタニーングされた黒色層の境界内でパターニングされた基体上に画像形成した。
【0163】
画像形成の後、第2画像形成ドナーシートを除去して、積層順で、Ag触媒層、黒色層、およびガラス基体をを有するパターニングされた基体を得た。パターニングされた基体を次に、10℃/分の速度で525℃に加熱される炉で熱処理し、その温度に15分間放置した。サンプルを次に、発熱体への電力を切ることによってRT近くに冷却した。この熱処理は、基体への良好な付着性をAgパターンに提供した。
【0164】
電気めっきを、約190Amp/mの電流密度をサンプルに40秒間適用し、約4ミクロンのCuを堆積させることを除けば実施例1に記載されるものと同じ方法で行った。得られためっきパターンは、良好な伝導性を示した。図7は、パターニングされた黒色層の境界内のめっきパターンの顕微鏡写真を示す。
【0165】
【表8】

【0166】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い伝導性を有するパターニングされた金属層の製造方法であって:
ベース基板上にパターニングされた触媒層を含むパターニングされた基板を備えるステップであって;該パターニングされた基板が、
(a)ベースフィルムおよび触媒転写層を含む熱転写ドナーを備える工程であって、ここで触媒転写層が、(i)触媒画分;場合により(ii)付着促進剤画分;および場合によりおよび独立して、(iii)ポリマーバインダー画分を含む工程;
(b)熱転写ドナーをレシーバーと接触させる工程であって、ここでレシーバーがベース層を含む工程;そして
(c)触媒転写層の少なくとも一部を熱転写によってレシーバー上に転写して、パターニングされたレシーバーを上記パターニングされた基板として備える工程
を含む熱画像形成方法によって製造されるステップ;そして
金属を上記パターニングされた基板上にめっきして、パターニングされた触媒層と接続したパターニングされた金属層を備えるステップ
を含む製造方法。
【請求項2】
触媒転写層およびパターニングされた触媒層が、ガラスフリット;金属酸化物;金属水酸化物およびアルコキシド;シリケート水酸化物およびアルコキシド;および有機ポリオールから選択される付着促進剤画分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒画分が、群:(1)金属粒子;(2)金属酸化物;(3)有機金属錯体;(4)有機金属塩;(5)金属塩、金属酸化物、金属錯体、金属またはカーボンでコーティングされたセラミックスおよび他の非伝導体粉末;および(6)すべての伝導性形態でのカーボンから選択される1種以上の触媒であって;(1)〜(5)の各金属がAg、Cu、Au、Fe、Ni、Al、Pd、Pt、Ru、Rh、Os、Ir、Snおよびそれらの合金からなる群から選択される触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒転写層およびパターニングされた触媒層が、約1.0〜99質量%の触媒画分;約0.5〜10質量%の付着促進剤画分;および約0.5〜98.5質量%のポリマーバインダー画分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
転写がレーザー媒介転写によって実現され、該レーザーが約350〜1500nmの動作波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
熱転写ドナーが、ベースフィルムと触媒転写層との間に配置された、LTHC層であって、CrおよびNiから選択される金属フィルム;カーボンブラック;黒鉛;およびLTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外染料からなる群から選択される1種以上の放射線吸収剤を含むLTHC層をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
熱画像形成方法が、
(d)パターニングされた基板をアニール温度にアニール期間加熱して、アニールされたパターニングされた基板を備える工程
をさらに含み、金属のメッキが上記アニールされたパターニングされた基板をめっきすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
レシーバーが、境界を有するパターニングされた反射防止層をさらに含み;そしてレシーバー上への触媒転写層の少なくとも一部の転写がパターニングされた反射防止層の境界内である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
熱転写ドナーが、ベースフィルムとは反対側の触媒転写層上に、付着促進剤層をさらに含み;そして転写が、付着促進剤層の対応する近接部分を転写して、積層順で前記レシーバー上に、パターニングされた付着促進剤層および前記パターニングされた触媒層を有する前記パターニングされた基板を備えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
レシーバーが付着促進剤層をさらに含み;そして転写が触媒層の少なくとも一部を上記レシーバーの付着促進剤層上に転写することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ベースフィルム、触媒転写層(A)、および該ベースフィルムと該触媒転写層(A)との間に介在するLTHC層を含む熱転写ドナーであって、該触媒転写層(A)が、
(i)触媒層の総質量に基づいて、約1.0〜約99質量%の触媒画分(A)であって、Ag、Cu、およびそれらの合金から選択される金属粒子を含む触媒画分と;
(ii)ガラスフリット;および金属水酸化物およびアルコキシド;から選択される約0.5〜約10質量%の付着促進剤画分と;
(iii)約0.5〜約98.5質量%のポリマーバインダーと
を含む熱転写ドナー。
【請求項12】
LTHC層が、CrおよびNiから選択される金属フィルム;カーボンブラック;黒鉛;ならびにLTHC層内で約600〜1200nmの範囲内の吸収極大を有する近赤外色素からなる群から選択される1つまたはそれ以上の放射線吸収剤を含む、請求項11に記載のドナー。
【請求項13】
積層順で、ベースフィルム、触媒転写層(B)および付着促進剤層を含む熱転写ドナーであって、該触媒転写層(B)が、
(i)触媒層の総質量に基づいて、約1.0〜約99質量%の触媒画分であって、Ag、Cu、およびそれらの合金から選択される金属粒子を含む触媒画分;
(iii)約1.0〜約99質量%のポリマーバインダー
を含み;
ここで付着促進剤層が、ガラスフリット;および金属水酸化物およびアルコキシドから選択される材料を含む熱転写ドナー。
【請求項14】
パターニングされた金属層を基板上に有する電子デバイスであって、該基板が可視光を実質的に通し;上記パターニングされた金属層が、積層順で上記基板上に:付着促進剤層、触媒層、およびめっき金属層を含み;そして上記パターニングされた金属層が約1ミリメートルまたはそれ未満の幅の少なくとも1つの線を有する、電子デバイス。
【請求項15】
付着促進剤層が、ガラスフリット、ならびに金属水酸化物およびアルコキシドから選択される材料を含み;触媒層が(i)触媒層の総質量に基づいて、約1.0〜約99質量%の触媒画分であって、Ag、Cu、およびそれらの合金から選択される金属粒子を含む触媒画分と;(ii)約1.0〜約99質量%のポリマーバインダーとを含む、請求項14に記載の電子デバイス。
【請求項16】
付着促進剤層が反射防止剤画分をさらに含み;パターニングされた金属層が付着促進剤層とは反対側の金属層上に反射防止層をさらに含む、請求項14に記載の電子デバイス。
【請求項17】
電磁妨害(EMI)シールドまたはタッチパッドセンサーである請求項14に記載の電子でバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−503348(P2011−503348A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531216(P2010−531216)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/080851
【国際公開番号】WO2009/055515
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】