説明

組成物

【課題】種々の汚泥や抄紙系に対して各種凝集性能に優れる組成物であって、特に高分子凝集剤として優れる組成物の提供。さらに、種々の汚泥に対する脱水性能に優れ、特に造粒性に優れる汚泥脱水剤の提供。
【解決手段】(A)カチオン性水溶性高分子及び(B)多糖類の存在下に、カチオン性ラジカル重合性単量体とアニオン性ラジカル重合性単量体を重合させて得られた両性水溶性高分子を含む組成物。(A)成分としては、カチオン性単量体単位とノニオン性単量体単位を有する共重合体であって、カチオン当量値が0.05〜4.00meq/gを有する共重合体が好ましい。(B)成分としては、Ca/An<1.2を満たすものが好ましく、0.5%塩粘度が10〜100mPa.sを有するものが好ましい。本発明の組成物は、両性高分子凝集剤として好ましく使用でき、汚泥脱水剤としてより好ましく使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性水溶性高分子及び多糖類で変性した両性水溶性高分子を含む組成物に関するものであり、本発明の組成物は、高分子凝集剤として有用であり、特に汚泥脱水剤及び増粘剤等の用途に有用であり、これら技術分野で賞用され得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水溶性高分子、特に高分子量の水溶性高分子は、高分子凝集剤及び増粘剤等の種々の技術分野で利用されている。
【0003】
上記水溶性高分子としては、特に製紙廃水の汚泥脱水処理においては、廃水中に含まれるパルプとの馴染みが良く、優れた汚泥脱水性能を発揮するため、澱粉を水溶性高分子で変性した高分子(以下澱粉変性高分子という)を使用する場合がある。
【0004】
澱粉変性高分子又はその製造方法としては、特定のカチオンエーテル化澱粉を幹ポリマーとし、4級アンモニウム変性したカチオン性基をグラフト側鎖に持ち、特定粘度を有する高分子(特許文献1)、多糖類の幹ポリマーに、側鎖として(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸又はその塩とのコポリマーをグラフトさせたもの(特許文献2)、多糖類とジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩とを、レドックス重合開始剤またはセリウム系重合開始剤を使用して製造して得られたもの(非特許文献1)等がある。
【0005】
ところで、汚泥の脱水処理には、カチオン性高分子凝集剤が単独で使用されることが多かった。
しかしながら、近年、汚泥発生量の増加及び汚泥性状の悪化により、従来のカチオン性高分子凝集剤では、汚泥の処理量に限界があることや、脱水ケーキ含水率、SS回収率等の点で処理状態は必ずしも満足できるものではなく、これらの点を改善することが要求されているため、種々の両性高分子凝集剤やこれらを使用した脱水方法が検討される様になった。
例えば、無機汚泥を含まない無機凝集剤を添加したpHが5〜8の有機質汚泥に、特定イオン当量のカチオンリッチ両性高分子凝集剤を添加する汚泥の脱水方法(特許文献3)、pHが5〜8の有機質汚泥に、アクリレート系カチオン性高分子凝集剤と両性高分子凝集剤を併用する汚泥の脱水方法(特許文献4)、汚泥に無機凝集剤を添加し、pHを5未満に設定し、特定組成のアニオンリッチ両性高分子凝集剤を添加する脱水方法(特許文献5)および排水に無機凝集剤、アニオン性高分子及びカチオンリッチ両性高分子凝集剤を順次添加する有機性排水の処理方法(特許文献6)等が知られている。
【0006】
【特許文献1】特公昭62−21007号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平6−254306号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】日本化学会誌、1976年、10巻、1625〜1630頁
【特許文献3】特公平5−56199号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特許2933627号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特公平6−239号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開平6−134213号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3〜同6記載の両性高分子からなる汚泥脱水剤は、それなりに特長を有するものではあるが、最近の廃水の難脱水化傾向に対して、必ずしも有効的な方法とは言い難いものであった。
【0008】
又、特許文献1及び同2並びに非特許文献1記載の澱粉変性高分子を、汚泥脱水剤及び歩留向上剤等の高分子凝集剤として使用した場合、廃水の種類や紙料に含まれる原料パルプ種類等によっては、凝集・脱水性能が不十分となる場合があった。特に、適用する汚泥によっては、造粒性が不十分であった。より具体的には、廃水等に高分子凝集剤を添加した後、フロックを素早く形成し、かつ攪拌を続けても崩れにくいという点で、不十分であった。
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため、イオン当量の異なる2種の両性高分子を含む組成物からなる高分子凝集剤を提案している(特許文献7)。
この高分子凝集剤は、前記課題を解決する優れた性能を有するものであるが、さらなる汚泥脱水性能及び歩留り向上性能が要求される用途においては、不十分となる場合があった。特に、適用する汚泥によっては、造粒性が不十分であった。より、具体的には、前記と同様の点で不十分であった。
【0010】
本発明者らは、種々の汚泥に対して各種凝集性能に優れる組成物であって、特に高分子凝集剤として優れる組成物を見出すため鋭意検討を行い、さらに種々の汚泥に対する脱水性能に優れ、特に造粒性に優れる汚泥脱水剤を見出すため、鋭意検討を行ったのである。
【0011】
【特許文献7】特開2003−175302号公報(特許請求の範囲)
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、種々の検討の結果、カチオン性水溶性高分子及び多糖類で変性した両性水溶性高分子を含む組成物が有効であること見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書においては、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表し、アクリルアミド又はメタクリルアミドを(メタ)アクリルアミドと表す。
【0013】
1.組成物
本発明は、(A)カチオン性水溶性高分子〔以下(A)成分という〕及び(B)多糖類の存在下に、カチオン性ラジカル重合性単量体とアニオン性ラジカル重合性単量体を重合させて得られた両性水溶性高分子〔以下(B)成分という〕を含む組成物に関する。
以下、それぞれの成分について説明する。
【0014】
1−1.(A)成分
本発明で使用する(A)成分のカチオン性水溶性高分子は、カチオン性を有する高分子であれば種々のものが使用でき、カチオン性ラジカル重合性単量体(以下単にカチオン性単量体という)を重合させて得られたものが好ましい。
【0015】
カチオン性単量体としては、ラジカル重合性を有するものであれば種々の化合物が使用でき、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ‐2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩、並びにジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩等が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩が好ましく、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのハロゲン化アルキル付加物がより好ましい。
【0016】
本発明における(A)成分は、前記カチオン性単量体とノニオン性ラジカル重合性単量体(以下ノニオン性単量体という)併用したものが好ましい。
【0017】
ノニオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド及びヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加メトキシ(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド付加(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0018】
単量体としては、必要に応じて、前記以外の単量体を併用することもできる。当該単量体の例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びビニルアセテート等が挙げられる。
【0019】
本発明における(A)成分は、カチオン当量として0.05〜4.00meq/gを有するものが好ましい。カチオン当量が0.05meq/gに満たないと、汚泥脱水剤として使用した場合、脱水性が不足し、得られるケーキの含水率が不十分となることがある。一方、4.00meq/gを超えると、汚泥脱水剤として使用した場合、得られるフロックの造粒性が不十分となることがある。
本発明におけるカチオン当量値とは、コロイド滴定法により測定した値をいう。
本発明における(A)成分は、当該好ましいカチオン当量となる様にカチオン性単量体を使用すれば良いが、0.5〜55.0モル%使用したものが好ましい。
【0020】
(A)成分の製造方法については特に制限はなく、一般的な重合方法を採用することができる。例えば、水溶液重合であれば、重合開始剤として過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩や、レドックス系の重合開始剤等を用いて、熱ラジカル重合を行なう方法や、ベンゾイン及びアセトフェノン型の光重合開始剤を用いて紫外線照射により光ラジカル重合を行なうこともできる。又、逆相のエマルション重合であれば、前記重合開始剤以外に、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等の水不溶性開始剤を用いて重合を行っても良い。
【0021】
得られたゲル状の重合体は、その後、公知の方法で切断・細断する。細断した重合体は、バンド式乾燥機、回転式乾燥機、遠赤外線式乾燥機及び振動流動式乾燥機等の乾燥機を使用し、温度60〜150℃程度で乾燥し、ロール式粉砕機等で粉砕して粉末状の重合体とされ、粒度調整される。
油中水型(逆相)エマルション重合で得られた(A)成分を実際に使用する場合には、HLBの比較的高い親水性界面活性剤を添加し、水で希釈、転相させて水中油型エマルションとして使用する。
(A)成分としては、粉末状品のものが好ましく使用される。
【0022】
(A)成分としては、分子量の指標である0.5%塩粘度が30〜200mPa・sのものが好ましく、30〜120mPa・sのものがより好ましく、30〜90mPa・sのものが特に好ましい。この値が、30mPa・sに満たないと、汚泥脱水剤として使用した場合、得られるフロックの造粒性が不十分となることがある。一方、200mPa・sを超えると、汚泥脱水剤として使用した場合、脱水性が不足し、得られるケーキの含水率が不十分となることがある。
尚、本発明において0.5%塩粘度とは、4%塩化ナトリウム水溶液に重合体を0.5%溶解した試料を25℃で、B型粘度計にて、ローターNo.1又は2を用いて、60rpmで測定した値をいう。
【0023】
1−2.(B)成分
本発明で使用する(B)成分の両性水溶性高分子は、多糖類の存在下に、カチオン性単量体とアニオン性ラジカル重合性単量体(以下単にアニオン性単量体という)を重合させて得られたものである。
以下、それぞれの成分及び製造方法について説明する。
【0024】
1−2−1.多糖類
本発明における多糖類としては、種々のものが使用できる。
例えば、天然物系多糖類としては、澱粉が挙げられ、具体的には、馬鈴薯澱粉、モチ馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、モチトウモロコシ澱粉、高アミローストウモロコシ澱粉、小麦粉澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、グルマンナン及びガラクタン等、並びに小麦粉、トウモロコシ粉、切干甘藷及び切干タピオカ等の原料澱粉等が挙げられる。
澱粉以外の多糖類としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、デキストラン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、キチン並びにキトサン等が挙げられる。
【0025】
多糖類としては、澱粉が好ましく、具体的には、前記したもの等が挙げられ、馬鈴薯澱粉、モチ馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、モチトウモロコシ澱粉、高アミローストウモロコシ澱粉、小麦粉澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、グルマンナン及びガラクタン等が好ましい。
澱粉としては、化学的又は酵素的に修飾して得られる加工澱粉を使用することができる。加工方法としては、例えば、酸化、エステル化、エーテル化及び酸処理化等が挙げられる。
【0026】
本発明における多糖類としては、前記した多糖類を常法によりカチオン化又は両性化されたものが、後記する単量体との共重合性に優れ、又凝集剤としての性能に優れるため好ましい。
【0027】
多糖類のカチオン化は、常法に従えば良い。
カチオン化としては、原料澱粉をカチオン化剤で処理する方法が挙げられる。カチオン化剤の具体例としては、ジエチルアミノエチルクロライド等の3級アミン、並びに3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド及びグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
カチオン化された多糖類のカチオン置換度は、窒素原子換算で0.01〜0.06質量/質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.06質量/質量%である。
【0028】
多糖類としては、カチオン化後に、公知の反応がなされたものであっても良い。例えば、アニオン化反応がなされた両性多糖類でも良い。アニオン化反応の具体例としては、無機リン酸等によるリン酸エステル化;尿素リン酸化及び次亜ハロゲン酸塩等による酸化;モノクロロ酢酸によるカルボキシメチル化;並びに硫酸化等が挙げられる。
【0029】
多糖類としては、糊液として使用することが好ましいため、多糖類にクッキングの処理がなされたものを使用することが好ましい。ここで、クッキングとは、多糖類を糊化温度以上に加熱処理する方法である。この場合の加熱温度としては、使用する澱粉の種類に応じて適宜設定すれば良いが、70℃以上が好ましい。澱粉のクッキングは、バッチ式でも、連続式でも行うことができる。
クッキングは、前記カチオン化後に行うことも、カチオン化と同時に行うこともできる。
使用する澱粉糊液の粘度は、固形分濃度が10〜40質量%で、25℃においてB型粘度計で測定した値が、100〜10000mPa・sであることが好ましい。
【0030】
本発明で使用する多糖類の糊液は、水で希釈して3〜10質量%のスラリーとしたものを使用することが好ましい。
尚、使用する多糖類の糊液が老化し、固化したり、水への分散性が乏しくなった場合には、使用前にクッキングの処理がなされたものを使用することが好ましい。この場合のクッキングの方法としては、前記と同様の方法が挙げられる。
【0031】
1−2−2.カチオン性単量体
カチオン性単量体としては、前記と同様の単量体が使用できる。
これらの中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩が好ましく、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのハロゲン化アルキル付加物がより好ましい。
【0032】
1−2−3.アニオン性単量体
アニオン性単量体としては、ラジカル重合性を有するものであれば種々の化合物が使用でき、具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸及びその塩が挙げられる。塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0033】
1−2−4.その他の単量体
本発明における(B)成分は、前記カチオン性単量体及びアニオン性単量体を必須とするものであるが、必要に応じてノニオン性単量体を併用することができる。
ノニオン性単量体としては、前記と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0034】
単量体としては、必要に応じて、前記以外の単量体を併用することもできる。当該単量体の例としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0035】
1−2−5.製造方法
本発明の(B)成分は、多糖類の存在下、カチオン性単量体及びアニオン性単量体を重合させて得られたものである。
この場合の製造方法としては、重合開始剤及び多糖類の存在下、カチオン性単量体及びアニオン性単量体を、常法に従い重合させる方法等が挙げられる。
以下、使用するそれぞれの成分及び重合方法等について、説明する。
【0036】
1)多糖類と単量体の割合・組み合わせ
本発明の(B)成分における、多糖類と単量体の割合としては、多糖類及び全単量体の合計量に対して、単量体が50質量%以上が好ましく、50〜99質量%がより好ましい。
単量体の割合が50質量%に満たない場合は、得られる高分子が水に不溶性となったり、得られる高分子を凝集剤として使用する場合において、高分量の高分子が得られない場合がある。
【0037】
本発明における好ましい単量体の組合せとしては、[1]カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルアクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体、[2]カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルメタクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体、並びに[3]カチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキルメタクリレートの3級塩又は4級塩、ジアルキルアミノアルキルアクリレートの3級塩又は4級塩、アニオン性単量体としてアクリル酸塩及びノニオン性単量体としてアクリルアミドからなる共重合体がある。
【0038】
2)重合開始剤
重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、レドックス系重合開始剤及び光重合開始剤等が挙げられる。
以下、それぞれの重合開始剤について説明する。
【0039】
(1)アゾ系重合開始剤
アゾ系重合開始剤としては、種々の化合物が使用でき、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(10時間半減期温度69℃、以下括弧内の温度は同様の意味を示す)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(65℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトチル)(67℃)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](86℃)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩(56℃)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩(44℃)等を挙げることができる。
アゾ系重合開始剤は、単独で使用しても又は2種以上を併用しても良い。
【0040】
前記したアゾ系重合開始剤の中でも、水に対する溶解性が高い点、不溶解分を含有しないか又は含有量の少ない(B)成分を生成する点、高分子量の(B)成分を生成する点、(B)成分中の未反応単量体が少ない点等から、アゾ系重合開始剤として、10時間半減期温度が50℃以上の化合物が好ましく、50〜90℃の化合物がより好ましく、50〜70℃の化合物が更に好ましい。
【0041】
アゾ系重合開始剤の使用割合としては、多糖類及び単量体の合計量に対して、50〜5000ppmが好ましく、より好ましくは100〜3000ppmであり、更に好ましくは300〜1000ppmである。アゾ系重合開始剤の使用割合が50ppmに満たない場合は、重合が不完全で残存モノマーが多くなり、一方5000ppmを超えると得られる水溶液高分子が低分子量体となる。
【0042】
(2)レドックス系重合開始剤
レドックス系重合開始剤は、酸化剤と還元剤を併用したものである。
酸化剤としては、多糖類の水素引抜き効果があり、多糖類に単量体を好ましくグラフトできる点で、過酸化物が好ましい。過酸化物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド等の有機過酸化物、過酸化水素、並びに臭素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、重合開始時の低温状態においても水素引き抜き効果に優れる点で、過硫酸塩が好ましい。
還元剤としては、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩、アスコルビン酸及びその塩、ロンガリット、亜ニチオン酸及びその塩、トリエタノールアミン、並びに硫酸第一銅が挙げられる。
過酸化物と還元剤の好ましい組合わせとしては、過硫酸塩と亜硫酸塩、過硫酸塩と亜硫酸水素塩等が挙げられる。
【0043】
酸化剤の割合としては、多糖類及び単量体の合計量に対して、10〜1000ppmが好ましく、より好ましくは20〜500ppmであり、特に好ましくは40〜200ppmである。この割合が10ppmに満たないと、水素引き抜きが不十分となり、一方1000ppmを超えると、(B)成分の分子量が小さくなり十分な性能が発揮できないことがある。
還元剤の割合としては、多糖類及び単量体の合計量に対して10〜1000ppmが好ましく、より好ましくは20〜500ppmである。
【0044】
レドックス系重合開始剤を使用する場合には、重合促進剤として、塩化第二銅、塩化第一鉄、等の無機金属系の重合促進剤を添加することが好ましい。
【0045】
(3)光重合開始剤
光重合開始剤としては、多糖類の水素引抜き効果があり、多糖類に単量体を好ましくグラフトできる点で、ケタール型光重合開始剤及びアセトフェノン型光重合開始剤等が好ましい。この場合、光開裂して発生してベンゾイルラジカルが発生し、これが水素引抜き剤として機能する。
ケタール型光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1-オン及びベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
アセトフェノン型光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、4‐(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び2−ヒドロキシ−2メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕のオリゴマー等が挙げられる。
これら以外にも、ベンゾイン型光重合開始剤、チオキサントン型光重合開始剤及び特開2002−097236で記載された様なポリアルキレンオキサイド基を有する光重合開始剤も使用することができる。
【0046】
光重合開始剤の割合としては、多糖類及び単量体の合計量に対して、10〜1000ppmが好ましく、より好ましくは20〜500ppmであり、更に好ましくは40〜200ppmである。この量が10ppmに満たないと、水素引き抜きが不十分となるか又は残存モノマーが多くなることがあり、1000ppmを超えると(B)成分の分子量が小さくなり性能が発揮できないことがある。
【0047】
光重合開始剤を使用する場合には、トリエタノールアミン及びメチルジエタノールアミン等のアミン系光増感剤等の光増感剤を併用することもできる。
【0048】
3)重合形式
重合形式としては、水溶液重合、逆相懸濁重合及び逆相エマルション重合等が挙げられ、取り扱いが容易である点で、水溶液重合及び逆相エマルション重合が好ましい。
【0049】
水溶液重合を採用する場合においては、水性媒体中に、多糖類及び単量体を溶解又は分散させ、重合開始剤の存在下10〜100℃で重合させる方法等が挙げられる。原料の多糖類及び単量体は、水中に溶解又は分散させたものを、水性媒体に添加して使用する。
逆相エマルション重合を採用する場合においては、多糖類及び単量体を含む水溶液と、HLBが3〜6である疎水性界面活性剤を含む有機分散媒とを攪拌混合し乳化させた後、重合開始剤の存在下10〜100℃で重合させ、油中水型(逆相)重合体エマルションを得る方法が挙げられる。有機分散媒としては、ミネラルスピリット等の高沸点炭化水素系溶剤等が挙げられる。
水性媒体中又は有機分散媒中の多糖類及び単量体の割合は、目的に応じて適宜設定すれば良く、20〜70質量%が好ましい。
【0050】
重合方法としては、使用する重合開始剤の種類に従い、光重合やレドックス重合等を行えば良い。
具体的な重合方法としては、多糖類及び単量体を含む水溶液に、又は多糖類及び単量体を含む逆相乳化液に重合開始剤を添加すれば良い。
重合方法としては、光重合とレドックス重合を併用することも可能である。
【0051】
分子量の調節を行う場合、連鎖移動剤を使用しても良い。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール及びメルカプトプロピオン酸等のチオール化合物や、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸水素ナトリウム及び次亜リン酸ナトリウム等の還元性無機塩類等が挙げられる。
【0052】
本発明では、水溶液重合が好ましく、この場合、特に重合時間が早く生産性に優れるため、重合を光照射下で行うことが好ましい。
【0053】
光照射重合を行う場合において、照射する光としては、紫外線又は/及び可視光線が用いられ、そのうちでも紫外線が好ましい。
光照射の強度は、単量体の種類、光重合開始剤及び/又は光増感剤の種類や濃度、目的とする(B)成分の分子量、重合時間などを考慮して決定されるが、一般に0.5〜1,000W/m2が好ましく、5〜400W/m2がより好ましい。
光源としては、例えば、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ、メタルハライドランプ及び高圧水銀ランプ等を使用することができる。
【0054】
光照射重合反応において、単量体の水溶液の温度は特に制限されないが、光重合反応を温和な条件下で円滑に進行させるために、通常は、5〜100℃であることが好ましく、10〜95℃であることがより好ましい。重合開始時の温度としては、得られる(B)成分の分子量を大きいものとすることができ、さらに除熱が容易である点で、5〜15℃が好ましい。
【0055】
単量体の水溶液の光照射重合反応は、バッチ式で行っても、又は連続式で行っても良い。
【0056】
4)好ましい重合方法
(B)成分の製造方法としては、多糖類、アゾ系重合開始剤及び水素引抜き剤の存在下、カチオン性単量体及びアニオン性単量体を重合する方法が、多糖類に高分子量の重合体をグラフトすることができるうえ、残存モノマー量が少なく、得られる(B)成分を凝集剤として使用した場合、各種凝集性能に優れたものとなる理由で好ましい。
【0057】
アゾ系重合開始剤としては、前記と同様のものが挙げられる。
水素引抜き剤としては、レドックス系水素引抜き剤(以下RD引抜き剤という)及び光重合開始剤系水素引抜き剤(以下PT引抜き剤という)等が挙げられる。RD引抜き剤及びPT引抜き剤は、多糖類から水素引き抜きする他、単量体の重合開始剤としても機能する。
RD引抜き剤としては、酸化剤等が好ましく、具体例としては、前記と同様のものが挙げられる。この場合、還元剤と併用することが好ましい。
PT引抜き剤としては、ケタール型光重合開始剤及びアセトフェノン型光重合開始剤等が好ましく、具体例としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0058】
5)得られた(B)成分の処理方法
水溶液重合により得られた(B)成分は、通常ゲル状で、前記と同様の方法で、切断・細断、乾燥、粉砕して粉末状の高分子とされ、粒度調整され、あるいは添加剤等が加えられて使用される。
油中水型(逆相)エマルション重合で得られた(B)成分を実際に使用する場合には、前記と同様の方法で、水で希釈、転相させて水中油型エマルションとして使用する。
(B)成分としては、粉末状品のものが好ましく使用される。
【0059】
(B)成分としては、0.5%塩粘度が10〜100Pa・sのものが好ましく、後記する高分子凝集剤として使用する場合、安定した脱水処理を達成するためには、10〜80mPa・sのものがより好ましく、10〜50mPa・sのものが特に好ましい。この値が10〜100Pa・sの範囲外のものは、汚泥脱水剤として使用した場合、得られるフロックの造粒性が不十分となることがある。
【0060】
(B)成分は、多糖類に単量体の高分子がグラフト化した、グラフト共重合体が主成分であれば良いが、多糖類に単量体の高分子がグラフトしなかった重合体が存在していても良い。
【0061】
(B)成分としては、カチオン性単量体のアニオン性単量体に対するモル基準の割合Ca/Anが、Ca/An<1.2を満たすものが好ましく、Ca/Anが0.5〜0.9のものがより好ましい。
この様な(B)成分は、前記単量体割合を満たす様にカチオン性単量体とアニオン性単量体を共重合して得ることができる。
【0062】
1−3.組成物の調製方法
本発明の組成物は、前記(A)成分及び(B)成分を併用してなるものである。
本発明の組成物は、(A)成分及び(B)成分を混合することにより製造することができる。又、後記する汚泥の脱水や抄紙工程においては、それぞれの成分を別々に添加することもできる。
(A)成分及び(B)成分としては、それぞれ1種を使用することも、2種以上を併用することもでき、(A)成分及び(B)成分の1種づつを使用することが簡便であり好ましい。
組成物における(A)成分及び(B)成分の割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、(A)成分が40〜90質量%及び(B)成分が10〜60質量%の範囲が好ましい。
【0063】
2.用途
本発明で得られる組成物は、種々の用途に応用することが可能であり、特に高分子凝集剤として有用である。高分子凝集剤としては、さらに汚泥脱水剤等に好ましく使用できる。
本発明の高分子凝集剤は、特に汚泥脱水剤として有用なものである。以下、汚泥脱水剤について説明する。
【0064】
本発明の高分子凝集剤を汚泥脱水剤(以下高分子凝集剤ということもある)として使用する場合、高分子としては、粉末状のものや逆相乳化物が好ましく、粉末状のものがより好ましい。実際の使用に当たっては、高分子が粉末の場合には、粉末を水に溶解させ水溶液として使用する。又、高分子が逆相乳化物の場合には、水で希釈、転相させて水中油型エマルションとして使用する。
又、汚泥脱水剤として粉末のものを使用する場合には、使用に際して、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルファミン酸等を添加することが好ましい。又、脱水処理に悪影響がでないかぎり公知の添加剤と混合して使用しても良い。
【0065】
本発明の汚泥脱水剤は、種々の汚泥に適用可能であり、下水、し尿、並びに食品工業、化学工業及びパルプ又は製紙工業汚泥等の一般産業排水で生じる有機性汚泥及び凝集沈降汚泥を含む混合汚泥等を挙げることができる。
本発明の汚泥脱水剤は、特に繊維分が少ない汚泥や余剰比率の高い汚泥に好ましく適用できるものである。具体的には、余剰比率が10SS%以上の汚泥に好ましく適用でき、より好ましくは20〜50SS%の汚泥に適用できる。
【0066】
本発明の汚泥脱水剤を使用する脱水方法は、具体的には、汚泥に汚泥脱水剤を添加した後、脱水する方法である。
まず、汚泥に汚泥脱水剤を添加し、汚泥フロックを形成させる。フロックの形成方法は、公知の方法に従えば良い。
【0067】
又、必要に応じて、無機凝集剤、有機カチオン性化合物、アニオン性高分子凝集剤を併用することができる。
【0068】
無機凝集剤としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄及び硫酸第一鉄及びポリ硫酸鉄等を例示できる。
【0069】
有機カチオン性化合物としては、ポリマーポリアミン、ポリアミジン及びカチオン性界面活性剤等を例示できる。
【0070】
無機凝集剤又は有機カチオン性化合物を添加した場合においては、pHを4〜8とすることが、より効果的に汚泥の処理を行うことができるため好ましい。
pHの調整方法としては、無機凝集剤又は有機カチオン性化合物を添加した後、当該pH値を満たす場合は、特にpH調整の必要はないが、本発明で限定する範囲を満たさない場合は、酸又はアルカリを添加して調整する。
酸としては、塩酸、硫酸、酢酸及びスルファミン酸等を挙げることができる。又、アルカリとしては、苛性ソーダ、苛性カリ、消石灰及びアンモニア等が挙げられる。
【0071】
アニオン性高分子凝集剤としては、前記したアニオン性単量体の単独重合体及び前記したアニオン性単量体及びノニオン性単量体の共重合体等を挙げることができる。
【0072】
高分子凝集剤の汚泥に対する添加割合としては、5〜500ppmが好ましく、SSに対しては0.05〜1質量%が好ましい。高分子凝集剤とその他の高分子凝集剤を併用する場合は、全高分子凝集剤の合計量が前記添加割合を満たすことが好ましい。
【0073】
汚泥脱水剤、その他凝集剤の添加量、攪拌速度、攪拌時間等は、従来行われている脱水条件に従えば良い。
【0074】
このようにして形成したフロックは、公知の手段を用いて脱水し、脱水ケーキとする。
【0075】
脱水装置としては、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機及びスクリューデカンター等を例示することが出来る。
【0076】
又、本発明の汚泥脱水剤は、濾過部を有する造粒濃縮槽を使用する脱水方法にも適用可能である。
具体的には、汚泥に、無機凝集剤を添加し、さらに汚泥脱水剤を添加した後、又は汚泥脱水剤と共に、該汚泥の濾過部を有する造粒濃縮槽に導入し、該濾過部からろ液を取り出すと共に造粒し、この造粒物を脱水機で脱水処理する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0077】
本発明の組成物によれば、高分子凝集剤として使用した場合、汚泥脱水剤として種々の汚泥に対して、凝集攪拌混和槽でのフロックの成長性とその維持性という造粒性に特に優れ、濾過速度が速く、得られるフロックの自立性及び剥離性に優れるという、各種脱水性能に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
本発明は、(A)成分及び(B)成分を含む組成物である。
(A)成分としては、カチオン性単量体単位とノニオン性単量体単位を有する共重合体であって、カチオン当量値が0.05〜4.00meq/gを有する共重合体が好ましい。
(B)成分としては、Ca/An<1.2を満たすものが好ましく、0.5%塩粘度が10〜100mPa.sを有するものが好ましい。
当該組成物としては、両性高分子凝集剤として好ましく使用できる。
高分子凝集剤の好ましい用途としては、汚泥脱水剤が挙げられる。
汚泥脱水剤として使用する場合は、汚泥に対して、汚泥脱水剤を添加した後、脱水する汚泥の脱水方法に好ましく使用できる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
尚、以下において、「%」とは、質量%を意味し、「部」とは質量部を意味する。
【0080】
○製造例1
ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩(以下、「DAC」という。)水溶液、アクリル酸(以下、「AA」という。)水溶液及びアクリルアミド(以下、「AM」という。)水溶液を、各単量体がモル比でDAC/AA/AM=42/5/53(重量比でDAC/AA/AM=66.3/3.0/30.7)で固形分56%となる様に、ステンレス製反応容器に合計760g仕込んだ。
両性化澱粉スラリー〔王子コンスターチ(株)製エースKT−245。固形分:22%以下、「KT−245」という。〕を、イオン交換水を使用して、固形分5%まで希釈し、さらに80℃で30分加熱しクッキングし、固形分6%の両性化澱粉スラリーとした。当該両性化澱粉スラリーを、単量体及び澱粉の固形分換算合計量に対して3%分に相当する213gを仕込み、イオン交換水を20g加えて、全単量体及び澱粉の固形分濃度43%、総重量1.0kgに調整して、攪拌分散させた。
続いて、窒素ガスを60分間溶液に吹き込みながら溶液温度を10℃に調節後、全単量体及び澱粉の固形分重量を基準として、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩(以下、V−50という。)を1000ppm、塩化第二銅を0.3ppm、過硫酸アンモニウムを30ppm、亜硫酸水素ナトリウムを30ppmとなるように加えて、反応容器の上方から、100Wブラックライトを用いて6.0mW/cm2の照射強度で60分間照射して重合を行い、含水ゲル状の水溶性両性高分子を得た。
得られた両性高分子を容器から取り出し、乾燥・粉砕して粉末状の両性高分子を得た。この両性高分子をSCR−1という。
得られた高分子について、0.5%塩粘度(以下単に塩粘度という)を測定した。それらの結果を、表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
○製造例2〜同5
使用する成分及び割合を、上記表1の通り変更する以外は製造例1と同様の方法で高分子を製造した。尚、製造例3〜同5については、澱粉を使用せず、単量体のみを使用した。
得られた高分子について、塩粘度を測定した。それらの結果を、表1に示す。
【0083】
〇実施例1及び同2(汚泥脱水剤の用途)
下記表2に示す(A)成分及び(B)成分を、下記表2に示す割合で混合して組成物を製造した。これらを汚泥脱水剤として使用した。
【0084】
【表2】

【0085】
製紙汚泥(SS:39,200mg/l、VSS:20,700mg/l、繊維分380mg/l)200mlを300mlのビーカーに採取し、スリーワンモーターで100rpmにて60秒間攪拌後、続いて汚泥脱水剤の0.2%水溶液を汚泥に対して、80ppm添加した後、スリーワンモーターで100rpmにて60秒間攪拌してフロックを形成させた。この時のフロックの造粒性を下記の3段階で評価し、得られたフロックの粒径を測定した。
その後、ヌッチェに、80メッシュの濾布を敷き、その上に円筒を立て、前記汚泥フロック分散液を円筒内に流し込み、重力濾過した。10秒後の濾液容量を測定し、これを濾過速度とした。得られた濾液の外観を目視で観察し、下記の3段階で評価した。濾過後、円筒を取り外し、得られたケーキについて、下記の3段階で評価した。
評価結果を表3に示す。実施例1及び同2の汚泥脱水剤は、評価を行ったすべての凝集性に優れるものであった。
【0086】
・造粒性
優:攪拌すると直ちに粒径の大きなフロックを形成し、攪拌によってフロックが破壊され難かった。
良:攪拌すると直ちに粒径の大きなフロックを形成するが、攪拌によってフロックが破壊され易かった。
不良:攪拌を続けても粒径の比較的小さなフロックしか形成せず、例え形成しても攪拌により破壊されやすかった。
【0087】
・濾過外観
優:完全に透明。良好:僅かに浮遊物あり。不良:多くの浮遊物あり。
【0088】
・自立性
優:完全にケーキが自力で立った。良好:僅かにケーキが流れた。不良:ケーキが流れてしまった。
【0089】
○比較例1〜3
汚泥脱水剤としてCO−1、CO−2及びC−1を用いる以外は、実施例と同様の脱水試験を行った。それらの結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
比較例1で使用した汚泥脱水剤CO−1は、BL−1と同じ単量体組成を有する単独の両性高分子に相当するものであるが、攪拌と続けるとフロックが破壊されやすく、その結果として各種脱水性能が不十分なものであった。比較例2で使用した汚泥脱水剤CO−2は、BL−2と同じ単量体組成を有する単独の両性高分子からなるものであり、これもフロックの造粒性に劣り、各種脱水性能が不充分なものであった。(A)成分のみを使用した比較例3では、脱水性能のバランスには劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の組成物は、高分子凝集剤として好ましく利用でき、特に汚泥脱水剤としてより好ましく利用でき、汚泥脱水を行う種々の工業用途に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン性水溶性高分子及び(B)多糖類の存在下に、カチオン性ラジカル重合性単量体とアニオン性ラジカル重合性単量体を重合させて得られた両性水溶性高分子を含む組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、カチオン性ラジカル重合性単量体単位とノニオン性ラジカル重合性単量体単位を有する共重合体であって、カチオン当量値が0.05〜4.00meq/gを有する共重合体である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、カチオン性ラジカル重合性単量体のアニオン性ラジカル重合性単量体に対するモル基準の割合(以下Ca/Anという)がCa/An<1.2を満たすものである請求項1又は請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、0.5%塩粘度が10〜100mPa.sを有するものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の組成物を含有してなる高分子凝集剤。
【請求項6】
請求項5記載の高分子凝集剤からなる汚泥脱水剤。
【請求項7】
汚泥に対して、請求項6に記載の汚泥脱水剤を添加した後、脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。



【公開番号】特開2006−188694(P2006−188694A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375504(P2005−375504)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【分割の表示】特願2004−381099(P2004−381099)の分割
【原出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】