説明

経路算出装置およびプログラム

【課題】 事情の異なる地域を移動する場合に、その事情の内容を運転者へ十分に伝えることができる技術を提供する。
【解決手段】 車両が国境に近づいたら、その近くの駐車場を運転者へ案内する(図6(a))。そして、その駐車場に到着すると、入国先の交通情報を表示させるか否かの問い合わせを行い(図6(c))、運転者が交通情報を表示させる旨の入力を行うと、交通情報を表示させる。このため、本件の場合、従来のように運転中に交通情報が案内される場合と比較して、運転者は交通情報の確認のみに集中できるため、より詳細な交通情報を十分な時間を割いて確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内のための経路を算出する経路算出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパのように地続きで国同士が接している地域においては、車両に乗ったまま国境を越えることができる場合がある。ところが、交通標識や制限速度等の交通規則は国毎に異なることが一般的であり、運転者は走行中の国の交通規則にしたがう必要ある。このため、運転者は走行する国の交通規則を理解する必要があるが、初めて走行する国やときどきしか走行しない国の交通規則についてはあいまいな記憶になりがちである。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載のような技術が知られている。この技術は、運転に関する事情の異なる州境を超えると、その新しく入った州における運転に関する留意事項を運転者に案内するものである(具体的には、特許文献1の段落「0079」等参照)。
【特許文献1】特開平11−108685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、新しい州に入ったことを検知した際に、その州における運転に関する留意事項を案内するため、運転中に案内がなされると考えられる。このため、案内内容を詳細なものにすることができない上、運転者が運転に集中している場合には案内内容が十分に伝わらないという問題が考えられる。
【0005】
本発明はこのような問題にかんがみなされたものであり、事情の異なる地域を移動する場合に、その事情の内容を乗員へ十分に伝えることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の経路算出装置は、車両において用いられる経路算出装置であって、地図情報を入力する地図情報入力手段と、地図情報入力手段が入力した地図情報に基づき、所定の出発地点から所定の目的地点までの経路を算出する経路算出手段と、を備える。そして、経路算出手段は、経路を算出する際、事情の異なる地域の境界を通過する経路を算出する場合は、境界付近で車両が停車可能な場所を特定し、その特定した場所を経由するように経路を算出するものである。
【0007】
なお、ここで言う「事情」というのは、例えば、法律、制度、言語、生活習慣、マナー、衛生環境等のような、当該地域において来訪者が知っておくべきことや知っておいたほうがよいことを意味する。また、ここで言う「境界付近」というのは、例えば、「その場所から境界まで休息等を取ることなく行くことができる程度の距離範囲内」というように定めればよいが、経路算出装置の利用方法等、様々な条件をかんがみて定めるべきものである。
【0008】
したがって、運転者がこのような経路算出装置の算出する経路にしたがって運転を行えば、事情の異なる地域の境界付近で車両を停止させることができ、その場所において、来訪先の地域の事情を確認することができる。つまり、運転者はそのような確認のみに集中することができる上、詳細な内容についても十分な時間を割いて確認することができる。
【0009】
このような経路算出装置は、さらに、車両の位置を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段を備えるようになっていてもよい(請求項2)。そして、経路算出手段は、経路を算出する際、位置情報取得手段が取得した位置情報に基づいて特定される地点を所定の出発地点とするようになっていてもよい。
【0010】
このようになっていれば、運転者等によって出発地点に関する情報を入力する必要がなくなるため、出発地点を現在位置とする場合の使い勝手が向上する。
また、請求項3に記載の経路算出装置は、車両において用いられる経路算出装置であって、車両の位置を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段と、地図情報を入力する地図情報入力手段と、位置情報取得手段が取得した位置情報に基づき車両の現在位置を特定し、特定した車両の現在位置の推移に基づき、事情の異なる地域の境界を車両が通過しそうか否かを判定し、境界を車両が通過しそうであると判定した場合は境界付近で車両が停車可能な場所を、車両の現在位置と地図情報入力手段が入力した地図情報とに基づいて特定し、車両の現在位置から停車可能場所までの経路を算出する経路算出手段と、を備えるものである。
【0011】
なお、ここで言う「事情」というのは、例えば、法律、制度、生活習慣、マナー、衛生環境等のような、当該地域において来訪者が知っておくべきことや知っておいたほうがよいことを意味する。また、ここで言う「境界付近」というのは、例えば、「その場所から境界まで休息等を取ることなく行くことができる程度の距離範囲内」というように定めればよいが、経路算出装置の利用方法等、様々な条件をかんがみて定めるべきものである。
【0012】
したがって、このような経路算出装置によれば、請求項1に記載の経路算出装置と同様、運転者は上述した事情の確認のみに集中することができる上、詳細な内容についても十分な時間を割いて確認することができる。また、乗員による意図的な経路案内指示がなくとも、自動的に上述した場所までの経路算出が行われるため、より確実に上記事情を運転者に伝えることができる。
【0013】
ところで、経路算出手段が特定する停車可能な場所は、車両の現在位置を基準にして境界の手前側でも奥側でもよいが、特に手前側であるとよい(請求項4)。このようになっていれば、事情の異なる地域に入る前に、運転者はその事情を確認することができるため、特にその事情が重要なもの(例えば交通ルール)である場合等に有効である。
【0014】
また、経路算出装置が算出した経路に基づき、他の装置が運転者に案内を行うようになっていてもよいが、経路算出装置自体が案内を行う案内手段を備えていてもよい。つまり、乗員に対する案内を行う案内手段と、経路算出手段が算出した経路を案内手段に案内させる案内制御手段とをさらに備えていてもよい(請求項5)。このような経路算出装置であれば、経路算出装置が算出した経路に基づいて経路案内を行う他の装置が不要になる。
【0015】
また、停車場所に停車した際には、上述した事情に関する情報を案内手段が案内するようになっていてもよい。つまり、上述した事情に関する情報を入力する情報入力手段を経路算出装置がさらに備え、案内制御手段は、車両が上述停車可能場所に到着すると、情報入力手段が入力した情報を案内手段に案内させるようになっていてもよい(請求項6)。
【0016】
このようになっていれば、停車後に運転者がガイド本等を参照する必要がなくなり、運転者の手間を省くことができる。
ところで、上述した停車可能場所に到達する少し前に、他の停車可能場所で休憩等の目的により停車するようなケースも考えられる。そのような場合は、その場所で上述した事情に関する情報を案内するようになっていてもよい。つまり、案内制御手段は、上述した停車可能場所に車両が到着するより所定前に、他の停車可能場所で車両の停車を確認すると、情報入力手段が入力した情報を案内手段に案内させるようになっていてもよい(請求項7)。そして、その場合は、案内制御手段は、上述した当初の停車可能場所への経路案内を案内手段に実行させない(つまり案内をキャンセルする)ようになっていればよい(請求項8)。
【0017】
なお、ここで言う「所定前」というのは、その場所で上述した事情に関する情報を案内しても問題のない程度の「前」を意味する。要するに、案内された内容を乗員が忘れてしまうほど遠い場所で案内しても意味がないおそれがあるからである。また、このように当初の停車可能場所でない場所で、上述した事情に関する情報を案内した場合において、目的地が設定されているのであれば、経由地(当初の停車可能場所)をキャンセルして経路を再算出するようになっているとよい。
【0018】
このようになっていれば、休憩等の目的で停車させた場所から出発した後すぐに再び停車する旨を案内されるようなことをなくすことができ、煩わしさを軽減することができる。
【0019】
ところで、請求項9に記載のような、請求項1〜請求項8の何れか記載の案内装置における経路算出手段として機能させるプログラムを、経路算出装置が内蔵するコンピュータに実行させるようになっていてもよい。このようになっていれば、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク、ROM、RAM等のコンピュータが読みとり可能な記録媒体にプログラムを記録し、そのプログラムを必要に応じてコンピュータにロードして起動することによりコンピュータを上述した経路算出手段として機能させることができる。つまり、上述した経路算出装置と同様の効果を奏し得ることとなる。また、プログラムはネットワーク等を用いて流通させることも可能であるため、経路算出装置の機能向上も容易である。
【0020】
また、請求項10に記載のような、請求項1〜請求項8の何れか記載の経路算出装置における案内制御手段として機能させるプログラムを、経路算出装置が内蔵するコンピュータに実行させるようになっていてもよい。このようにしてもコンピュータを上述し案内制御手段として機能させることができ、上述した経路算出装置と同様の効果を奏し得ることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0022】
[構成および動作の説明]
図1は、本発明の経路算出装置が有する機能が組み込まれたナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
ナビゲーション装置20は車両に搭載され、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群22と、操作スイッチ群22と同様に各種指示を入力可能であってナビゲーション装置20とは別体となったリモートコントロール端末(以下、リモコンと称す)23aと、リモコン23aからの信号を入力するリモコンセンサ23bと、パケット通信網等に接続して外部と通信を行う外部通信機24と、地図データや音声データ等が記録された地図記憶媒体からデータを入力する地図データ入力器25と、地図や各種情報の表示を行うための表示部26と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部27と、利用者が発話した音声に基づく電気信号を出力するマイクロフォン28と、車内LAN通信装置30と、上述した位置検出器21,操作スイッチ群22,リモコンセンサ23b,外部通信機24,地図データ入力器25,マイクロフォン28,車内LAN通信装置30からの入力に応じて各種処理を実行し、外部通信機24,表示部26,音声出力部27,車内LAN通信装置30を制御する制御部29とを備えている。
【0024】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信してその受信信号を出力するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ21bと、車両の前後方向の加速度等から走行した距離を検出するための距離センサ21cとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21cからの出力信号に基づいて制御部29が、車両の位置,方位,速度等を算出する。なお、GPS受信機21aからの出力信号に基づいて現在位置を求める方式は様々な方式があるが、単独測位方式、相対測位方式の何れであってもよい。
【0025】
操作スイッチ群22は、表示部26の表示面と一体に構成されたタッチパネル及び表示部26の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等から構成される。尚、タッチパネルと表示部26とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式,電磁誘導方式,静電容量方式,あるいはこれらを組み合わせた方式など各種の方式があるが、その何れを用いてもよい。
【0026】
外部通信機24は、路側に設置された光ビーコンや電波ビーコン等を介してVICSの情報センタから事故情報や渋滞情報等を取得する。また、パケット通信網にも接続され、そのパケット通信網に接続された様々なサーバ装置と通信を行うことができる。
【0027】
地図データ入力器25は、図示しない地図データ記憶媒体(例えばハードディスクやDVD−ROM等)に記憶された各種データを入力するための装置である。地図データ記憶媒体には、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、背景データ、道路データ、名称データ、マークデータ、交差点データ、施設のデータ、駐車可能場所のデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ等が記憶されている。また、後述する交通情報案内処理において、ユーザへ案内する情報に対応するデータも記憶されている。なお、地図データ記憶媒体からこれらのデータを入力する代わりに、通信ネットワークを介してデータを供給するサーバからこれらのデータを入力するようになっていてもよい。
【0028】
表示部26は、カラー表示装置であり、液晶ディスプレイ,有機ELディスプレイ,CRTなどがあるが、その何れを用いてもよい。表示部26の表示画面には、位置検出器21にて検出した車両の現在位置と地図データ入力器25より入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種施設のマーク等の付加データとを重ねて表示することができる。また、施設のガイド等も表示できる。
【0029】
音声出力部27は、地図データ入力器25より入力した施設のガイドや各種案内の音声を出力することができる。
マイクロフォン28は、利用者が音声を入力(発話)するとその入力した音声に基づく電気信号(音声信号)を制御部29に出力するものである。利用者はこのマイクロフォン28に様々な音声を入力することにより、ナビゲーション装置20を操作することができる。
【0030】
車内LAN通信装置30は、車内LANに接続され、その車内LAN上の各種のECU等と通信を行う。
制御部29は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。例えば、位置検出器21からの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ入力器25を介して読み込んだ現在位置付近の地図等を表示部26に表示する処理や、地図データ入力器25に格納された地図データと、操作スイッチ群22やリモコン23a等の操作に従って設定された目的地とに基づいて現在位置から目的地までの最適な経路を算出する処理や、その算出した経路を表示部26に表示させたり音声出力部27に音声として出力させることにより経路を案内する処理等を実行する。
【0031】
次に、制御部29が実行する処理のうち、本実施例のナビゲーション装置20に特徴的な処理である経路算出処理、自動経路算出処理、案内処理および交通情報案内処理について以下に説明する。なお、従来のナビゲーション装置が実行する一般的な処理については説明を省略する。
【0032】
(1)経路算出処理
まず、経路算出処理について図2のフローチャートを用いて説明する。経路算出処理は、運転者等のユーザによって操作スイッチ群22やリモコン23aが操作され、目的地点に関する情報が入力され、続いて経路を算出する指令が入力された際に、制御部29が実行を開始する処理である。
【0033】
制御部29は、経路算出処理の実行を開始すると、まず、現在位置からユーザによって指定された目的地点までの経路を算出する(S210)。ここで言う、現在位置というのは、位置検出器21から出力される信号に基づき特定した車両の現在位置である。また、この経路算出には、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から入力した地図データが用いられる。
【0034】
続いて、このS210で算出した経路の情報に基づき、経路途中に国境をまたぐ箇所があるか否かを判定する(S220)。この判定にも、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から入力した地図データが用いられる。
【0035】
このS220において、経路途中に国境をまたぐ箇所があると判定した場合には(S220:YES)、S210で算出した、国境をまたぐ箇所から最寄りの駐車可能場所を、地図データ記憶媒体が記憶するデータから検索する(S230)。そして、検索した場所を経由するように車両の現在位置から目的地点までの経路を再算出し(S240)、算出した経路に関する情報(経路情報)を制御部29内の所定記憶領域に記憶させる。なお、この再算出は、全経路を再算出する必要はなく、経由地点付近の経路のみ修正するようにして行えばよい。
【0036】
続いて、案内処理を起動し(S250)、本処理(経路算出処理)を終了する。なお、この案内処理については後述する。
一方、S220において、経路途中に国境をまたぐ箇所がないと判定した場合には(S220:NO)、上述したS250に処理を進め、案内処理を起動した後、本処理(経路算出処理)を終了する。
【0037】
(2)自動経路算出処理
次に、自動経路算出処理について図3のフローチャートを用いて説明する。自動経路算出処理は、経路算出処理、案内処理、交通情報案内処理の何れも実行していないときに、制御部29が実行する処理である。したがって、制御部29は、経路算出処理等の実行を開始すると、強制的に自動経路算出処理の実行を終了する。そして、経路算出処理等の実行を終了すると、再び自動経路算出処理の実行を開始する。
【0038】
制御部29は、自動経路算出処理の実行を開始すると、まず、近いうち(例えば15分以内)に車両が国境を越えそうか否かを判定する(S310)。この判定は、位置検出器21から出力される信号に基づいて特定した車両の現在位置の履歴と、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から入力した地図データとに基づいて行われる。具体的には例えば、現在の速度でこのまま道成に進むと仮定した場合に国境を越えそうか否か判定することによって行われる。また、このS310の処理の際に、国境を越えそうだと判断する場合にはその国境における国境を越えそうな場所についての特定も行う(後述するS340において利用)。
【0039】
このS310において、近いうちには車両が国境を越えることはないと判定した場合には(S310:NO)、本ステップにとどまり、上述した判定を繰り返す。一方、S310において、近いうちに車両が国境を越えると判定した場合には(S310:YES)、国境付近で駐車して入国先の交通情報の案内を受けるか否かの問い合わせをユーザに対して行う(S320)。具体的には、表示部26にその旨を表すメッセージを表示させたり、音声出力部27にその旨を表すメッセージを音声出力させたりすることによって実現される。
【0040】
続いて、「案内を受ける」という内容を意味する操作をユーザが行ったか否かを判定する(S330)。この判定は、操作スイッチ群22やリモコン23が「案内を受ける」という内容を意味する操作を受け付けたか否かによって行う。「案内を受ける」という内容を意味する操作をユーザが行わなかったと判断した場合には(S330:NO)、一定時間(例えば15分間)待機し(S370)、上述したS310に処理を戻す。
【0041】
一方、S330において、「案内を受ける」という内容を意味する操作をユーザが行ったと判断した場合には(S330:YES)、S310で国境を越えそうだと判断した際に特定した「国境を超えそうな場所」から最寄りの駐車場所を、地図データ記憶媒体が記憶するデータから検索する(S340)。そして、車両の現在位置から、S340で検索した駐車場所までの経路を算出し(S350)、案内処理を起動して(S360)、本処理(自動経路算出処理)を終了する。なお、この案内処理については後述する。
【0042】
(3)案内処理
次に、案内処理について図4のフローチャートを用いて説明する。案内処理は、経路算出処理や自動経路算出処理の処理過程(図2のS250,図3のS360)において呼び出され、制御部29が実行する処理である。
【0043】
制御部29は、案内処理の実行を開始すると、まず、位置検出器21から出力される信号に基づいて現在位置を算出する(S410)。そして、その算出した現在位置に関する情報と、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から入力した地図データとに基づいて、表示部26に現在位置付近の地図を表示させる(S420)。続いて、現在位置が、経路を案内するポイントであるか否かを判定する(S430)。この判定は、現在位置が例えば、交差点の手前であるか否か(交差点の手前であれば案内するポイントであると判定)、分岐点の手前であるか否か(分岐点の手前であれば案内するポイントであると判定)等によって行う。なお、この判定には、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から入力した地図データが用いられる。
【0044】
このS430において、現在位置が、経路を案内するポイントであると判定した場合には(S430:YES)、表示部26に案内地図や案内メッセージを表示させたり、音声出力部27に案内音声を出力させたりすることにより、経路の案内を行い(S440)、後述するS450に処理を進める。一方、現在位置が、経路を案内するポイントでないと判定した場合には(S430:NO)、後述するS450に処理を進める。
【0045】
ここで、S440において行う案内画面の一例を図6(a)と図6(b)に示す。図6(a)に示す画面601は、車両が後述する交通情報案内処理を実行するポイントである駐車場に近づいた際に表示される画面である。画面601は、ほぼ全体が現在位置付近の地図によって構成され、駐車場の位置を示すマークと自車位置を示すマークとが描かれている。そして、その一部に重なる形で、具体的な案内内容を示す文字が描かれている。
【0046】
また、図6(b)に示す画面603は、さらに駐車場に近づいたときに表示される画面である。画面603は、ほぼ全体が現在位置付近の地図によって構成され、その中の駐車場を表すマークの上に矢印が重ねられている。この結果、車両をその駐車場へ入れなさいという案内がなされていることが運転者に伝わる。
【0047】
図4に説明を戻し、S450では、現在位置が、交通情報案内処理を実行するポイントであるか否かを判定する。この判定は、現在位置が、経路算出処理のS230(図2参照)で検索した経由地点であるか否かを判定(経由地点であれば交通情報案内処理を実行するポイントであると判定)すること、または、現在位置が、自動経路算出処理のS340(図3参照)で算出した駐車場所であるか否かを判定(駐車場所であれば交通情報案内処理を実行するポイントであると判定)することである。
【0048】
このS450において、現在位置が、交通情報案内処理を実行するポイントであると判定した場合には(S450:YES)、後述する交通情報案内処理を呼び出して実行し(S470)、交通情報案内処理の実行を終了すると後述するS480に処理を進める。一方、現在位置が、交通情報案内処理を実行するポイントでないと判定した場合には(S450:NO)、現在、国境から所定距離内の駐車可能場所に駐車中であるか否かを判定する(S460)。ここで言う「所定距離内」というのは、例えば、国境まで30分程度で到達することができる距離を意味し、その距離内であれば後述する交通情報案内処理を実行しても問題ないと考えられる距離である。また、この判定には、地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から入力した地図データが用いられる。
【0049】
このS460において、現在、国境から所定距離内の駐車可能場所に駐車中であると判定した場合には(S460:YES)、後述する交通情報案内処理を呼び出して実行し(S470)、交通情報案内処理の実行を終了すると後述するS480に処理を進める。一方、現在、国境から所定距離内の駐車可能場所に駐車中でないと判定した場合には(S460:NO)、現在位置が、案内終了ポイントであるか否かを判定する(S480)。この判定には、現在位置が案内経路の目的地点であるか否かを判定することによって行う(現在位置が案内経路の目的地点であれば案内終了ポイントであると判定する)。
【0050】
このS480において、現在位置が、案内終了ポイントであると判定した場合には(S480:YES)、本処理(案内処理)を終了する。一方、現在位置が、案内終了ポイントでないと判定した場合には(S480:NO)、上述したS410に処理を戻す。
【0051】
(4)交通情報案内処理
次に、交通情報案内処理について図5のフローチャートを用いて説明する。交通情報案内処理は、上述した案内処理のS470(図4参照)において、制御部29が実行を開始する処理である。
【0052】
制御部29が交通情報案内処理の実行を開始すると、まず、禁止フラグがONであるか否かを判定する(S510)。この禁止フラグは、制御部29内の所定の記憶領域に設けられたフラグであり、以降の交通情報案内処理の実行を実質的に禁止するか否かを示すフラグである。なお、この禁止フラグは、経路算出処理や自動経路算出処理の実行が終了した際に初期化(OFF)にされる。
【0053】
このS510において、禁止フラグがONであると判定した場合には(S510:YES)、本処理(交通情報案内処理)を終了し、上述した案内処理のS470(図4参照)に続くステップへ処理を戻す。一方、禁止フラグがONでない、つまりOFFであると判定した場合には(S510:NO)、交通情報案内を行うか否かの問い合わせをユーザに対して行う(S515)。具体的には、表示部26にその旨を表す問い合わせ画面を表示させたり、音声出力部27にその旨を表すメッセージを音声出力させたりする。
【0054】
ここで、S515にて表示させる問い合わせ画面の一例を図6(c)に示す。図6(c)に示す画面603は、ほぼ全体が現在位置付近の地図によって構成され、その一部に重なる形で、交通情報を表示させるか否かの問い合わせメッセージと、入国先の国旗と、YESボタンとNOボタンが描かれている。そして、運転者は、この画面603を見て、YESボタンかNOボタンの何れかを選択することができるようになっている。これらの各ボタンは、表示部26と積層一体化されているタッチパネルを介することによってユーザが選択可能に構成されている。
【0055】
図5に説明を戻し、続いて、「交通情報案内を実行させる」という内容を意味する操作をユーザが行ったか否かを判定する(S520)。この判定は、操作スイッチ群22やリモコン23が「交通情報案内を実行させる」という内容を意味する操作を受け付けたか否かによって行う。「交通情報案内を実行させる」という内容を意味する操作をユーザが行ったと判定しなかった場合には(S520:NO)、本処理(交通情報案内処理)を終了し、上述した案内処理のS470(図4参照)に続くステップへ処理を戻す。一方、「交通情報案内を実行させる」という内容を意味する操作をユーザが行ったと判定した場合には(S520:YES)、交通情報案内を行う(S525)。この交通情報案内というのは、入国先の交通情報の案内であり、詳細については後述する。
【0056】
交通情報の案内を終えると、以降の交通情報案内処理の実行を実質的に禁止するため、上述した禁止フラグをONにする(S530)。続いて、現在位置は、目的地または交通情報の案内を行うための経由地(図2のS230で検索した場所)であるか否かを判定する(S535)。現在位置が、目的地または交通情報の案内を行うための経由地であると判定した場合には(S535:YES)、本処理(交通情報案内処理)を終了し、上述した案内処理のS470(図4参照)に続くステップへ処理を戻す。一方、現在位置が、目的地または交通情報の案内を行うための経由地であると判定しなかった場合には(S535:NO)、現在の案内経路は上述した経路算出処理(図2参照)によって算出されたものであるか否かを判定する(S540)。
【0057】
このS540において、現在の案内経路は経路算出処理によって算出されたものであると判定した場合には(S540:YES)、経由地をなくして、改めて経路を算出しなおす(S545)。そして、本処理(交通情報案内処理)を終了し、上述した案内処理のS470(図4参照)に続くステップへ処理を戻す。一方、現在の案内経路は経路算出処理によって算出されたものでない、つまり、自動経路算出処理(図3参照)によって算出されたものであると判定した場合には(S545:NO)、案内処理実行ポイントに到達したことにする(図4のS480において、YESと判定するようにする)。そして、本処理(交通情報案内処理)を終了し、上述した案内処理のS470(図4参照)に続くステップへ処理を戻す。
【0058】
ここで、上述したS525で行う、交通情報案内の具体的内容の一例について図7の画面例を用いて説明する。図7(a)に示す画面701は、入国先がスイスである場合に表示部26に表示される画面である。画面701は、主に、国選択ボタン701aと、標識表示ボタン701bと、交通ルール表示ボタン701cと、その他の情報表示ボタン701dとから構成される。これらの各ボタンは、表示部26と積層一体化されているタッチパネルを介することによってユーザが選択可能に構成されている。
【0059】
国選択ボタン701aが押下されると、スイス以外の国を選択することができる国選択画面が表示され、何れかの国をユーザが選択すると、その国に対応した画面701と同様の画面が表示部26に表示されるようになっている。
【0060】
標識表示ボタン701bが押下されると、スイスの標識一覧画面が表示部26に表示される(図7(b)の画面703参照)。この画面については後述する。
交通ルール表示ボタン701cが押下されると、スイスの交通ルールの説明画面が表示部26に表示される。この交通ルールというのは、スイスを訪問する上で運転者が知っておくべき交通ルールであり、例えば、右側通行なのか左側通行なのかといった情報や、有料道路の料金支払い方法や、ロータリーの通行方法等である。なお、この説明画面の表示と同時に、説明画面を説明するための音声が音声出力部27から出力される。
【0061】
その他の情報表示ボタン703dが押下されると、スイスに関する情報の説明画面が表示部26に表示される。このスイスに関する情報というのは、例えば、消防車や救急車を呼ぶための電話番号や、修理工場の電話番号や、観光情報や、文化等の情報である。なお、この説明画面の表示と同時に、説明画面を説明するための音声が音声出力部27から出力される。
【0062】
図6(b)に示す画面703は、上述した標識表示ボタン701bが押下された際に表示部26に表示される画面である。画面703は、主に、標識表示エリア703aと、前方画面送りボタン703bと、後方画面送りボタン703cとから構成される。
【0063】
標識表示エリア703aには、交通標識の一覧が表示され、表示された交通標識をユーザがタッチすれるとその交通標識の詳細説明がさらに表示部26に表示されるようになっている。なお、表示された交通標識をユーザがタッチする代わりに、交通標識の下に表示された数字列をユーザが操作スイッチ群22に設けられたテンキーを操作することによっても、該当する交通標識の詳細説明が表示部26に表示される。
【0064】
前方画面送りボタン703bが押下されると、標識表示エリア703aに表示しきれなかった標識のうち、現在表示中のものよりデータ内で前方に配置された標識が標識表示エリア703aに新たに表示される。
【0065】
後方画面送りボタン703bが押下されると、標識表示エリア703aに表示しきれなかった標識のうち、現在表示中のものよりデータ内で後方に配置された標識が標識表示エリア703aに新たに表示される。
【0066】
[実施形態の効果]
以上、本実施形態の構成および動作について説明したが、本実施形態のナビゲーション装置20によれば、目的地の設定が行われていなくても、国境を越えるような経路を通る場合には、国境付近において自動的に駐車場所への案内がなされて入国先の交通情報(標識の読み方や、交通ルール等)が案内される。このため、運転者は、車両を駐車させて入国先の交通情報を確認することができる。つまり、運転者は交通情報の確認のみに集中することができる上、従来のように運転中に案内される場合と比較して、より詳細な内容についても十分な時間を割いて確認することができる。
【0067】
また、目的地の設定が行われている場合にも、同様に、国境付近の駐車場所に案内されて入国先の交通情報が案内される。
そして、案内される駐車場所よりも手前で駐車させた場合は、その場所が国境から所定距離内であればその場で交通情報の案内可否を運転者が選択できる。さらに、その際、案内の実行を選択した場合には、国境に到達する前に再度、駐車場所に案内されるということがないように構成されている。このようにナビゲーション装置20は、使い勝手という点でも工夫がなされており、優れている。
【0068】
[他の実施形態]
以下、他の実施形態について説明する。
(イ)上記実施形態では、入国先の交通情報を案内するケースについて説明したが、これは説明のための一例であり、駐車場所で案内するものは入国先の交通情報に限らない。例えば、法律、制度、言語、生活習慣、マナー、衛生環境等が考えられる。また、このような案内を行う単位も国という単位ではなく、州や県や地域という単位であってもよい。
【0069】
(ロ)図7(b)に示す画面703において、標識表示エリア703に表示されている交通標識をユーザがタッチするとその交通標識の詳細説明がさらに表示部26に表示されるようになっていたが、この詳細説明は、出国側の交通標識と入国側の交通標識とを対応させて表示し、説明するようになっているとよい。このようになっていれば、「この標識は、○○国での△△標識に該当する」というような形でユーザが理解することができ、理解が容易となる。
【0070】
(ハ)図7(b)に示す画面703において、最初に標識表示エリア703に表示させる交通標識群は、この後の経路案内の際に出現すると推測される交通標識を集め、出現順に表示するようになっているとよい。このようになっていれば、より実用性が高まる。
【0071】
[特許請求の範囲の用語等との対応]
上記実施形態の用語と特許請求の範囲に記載の用語との対応を示す。位置検出器21が位置情報取得手段に相当し、地図データ入力器25が地図情報入力手段および情報入力手段に相当し、表示部26および音声出力部27が案内手段に相当し、制御部29が経路算出手段および案内制御手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】経路算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】自動経路算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】案内処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】交通情報案内処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】表示部に表示される画面例である。
【図7】表示部に表示される画面例である。
【符号の説明】
【0073】
20…ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…距離センサ、22…操作スイッチ群、23a…リモコン、23b…リモコンセンサ、24…外部通信機、25…地図データ入力器、26…表示部、27…音声出力部、28…マイクロフォン、29…制御部、30…車内LAN通信装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を入力する地図情報入力手段と、
前記地図情報入力手段が入力した前記地図情報に基づき、所定の出発地点から所定の目的地点までの経路を算出する経路算出手段と、
を備えた、車両において用いられる経路算出装置であって、
前記経路算出手段は、前記経路を算出する際、事情の異なる地域の境界を通過する経路を算出する場合は、前記境界付近で前記車両が停車可能な場所を特定し、その特定した場所を経由するように経路を算出すること、
を特徴とする経路算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路算出装置において、
さらに、前記車両の位置を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段を備え、
前記経路算出手段は、前記経路を算出する際、前記位置情報取得手段が取得した前記位置情報に基づいて特定される地点を前記所定の出発地点とすること、
を特徴とする経路算出装置。
【請求項3】
車両において用いられる経路算出装置であって、
前記車両の位置を特定するための位置情報を取得する位置情報取得手段と、
地図情報を入力する地図情報入力手段と、
前記位置情報取得手段が取得した前記位置情報に基づき前記車両の現在位置を特定し、特定した前記車両の現在位置の推移に基づき、事情の異なる地域の境界を前記車両が通過しそうか否かを判定し、前記境界を前記車両が通過しそうであると判定した場合は前記境界付近で前記車両が停車可能な場所を、前記車両の現在位置と前記地図情報入力手段が入力した前記地図情報とに基づいて特定し、前記車両の現在位置から前記場所までの経路を算出する経路算出手段と、
を備えることを特徴とする経路算出装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の経路算出装置において、
前記経路算出手段が特定する前記停車可能な場所は、前記車両の現在位置を基準として前記境界の手前側であること、
を特徴とする経路算出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の経路算出装置において、
さらに、
乗員に対する案内を行う案内手段と、
前記経路算出手段が算出した前記経路を前記案内手段に案内させる案内制御手段と、
を備えることを特徴とする経路算出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の経路算出装置において、
さらに、前記事情に関する情報を入力する情報入力手段を備え、
前記案内制御手段は、前記車両が前記停車可能場所に到着すると、前記情報入力手段が入力した前記情報を前記案内手段に案内させること、
を特徴とする経路算出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の経路算出装置において、
前記案内制御手段は、前記車両が前記停車可能場所に到着するより所定前に、他の停車可能場所で前記車両の停車を確認すると、前記情報入力手段が入力した前記情報を前記案内手段に案内させること、
を特徴とする経路算出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の経路算出装置において、
前記案内制御手段は、前記他の停車可能場所で前記情報を前記案内手段に案内させた場合は、当初の前記停車可能場所への経路案内を前記案内手段に実行させないこと、
を特徴とする経路算出装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れかに記載の経路算出装置における前記経路算出手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れかに記載の経路算出装置における前記案内制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−162429(P2006−162429A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354224(P2004−354224)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】