説明

結晶シリコン粒子の製造方法及び結晶シリコン粒子の製造装置

【課題】 坩堝のノズル部からのシリコン融液の排出を中断することなく、結晶シリコン粒子を連続的に低コストに製造することができる結晶シリコン粒子の製造方法及び結晶シリコン粒子の製造装置を提供すること。
【解決手段】 結晶シリコン粒子の製造方法は、坩堝1のノズル部1aからシリコン融液4を粒状に排出し、排出された粒状のシリコン融液4を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子8を製造する結晶シリコン粒子8の製造方法であって、シリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定し、坩堝1へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が排出速度以上となるようにシリコン原料の供給重量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶シリコン粒子の製造方法及び結晶シリコン粒子の製造装置に関し、特に太陽電池等の光電変換装置に用いられる結晶シリコン粒子を得るのに好適な結晶シリコン粒子の製造方法及び結晶シリコン粒子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電変換装置として、結晶シリコンウエハを用いた光電変換効率(以下、変換効率ともいう)の高い太陽電池が実用化されている。この結晶シリコンウエハは、結晶性が良く、かつ不純物が少なくてその分布に偏りのない大型の単結晶シリコンインゴットから切り出されて作製されている。しかし、大型の単結晶シリコンインゴットは作製するのに長時間を要するために生産性が悪く、高価となるので、大型の単結晶シリコンインゴットを必要とせず、高変換効率の次世代太陽電池の出現が強く望まれている。
【0003】
そこで、今後の市場において有望な光電変換装置の一種として、光電変換素子として結晶シリコン粒子を用いた太陽電池が注目されている。
【0004】
現在、結晶シリコン粒子を作製するための原料は、単結晶シリコン材料を粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や流動床法によって気相合成された高純度シリコンを用いている。そして、原料のサイズあるいは重量による分別を行った後に、赤外線や高周波誘導コイルを用いて原料を容器内で溶融し、その後に自由落下させることによって球状化させる溶融落下法(ジェット法)、または高周波プラズマ加熱溶融法により球状化させる方法(例えば、特許文献,1,2を参照。)が用いられている。
【0005】
また、溶融半導体を振動させてノズルから溶融半導体を落下させ、ノズルから落下する液体または固体の粒子を、結晶化加熱手段によって加熱して再溶融して、その粒子が気相中に存在している状態で、粒子を単結晶または多結晶にする球状半導体粒子の製造方法及び製造装置が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0006】
また、特許文献3には、溶融半導体を振動させてノズルから溶融半導体を落下させ、ノズルから落下する液体または固体の粒子の冷却速度のプロファイルを緩やかにし、粒子にクラックが生じないように、かつアモルファス化しないようにする球状半導体粒子の製造方法及び製造装置が開示されている。
【特許文献1】国際公開第99/22048号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4188177号明細書
【特許文献3】特開2002−292265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された方法では、シリコン原料の重量の均一化が困難であり、そのため生産性が低いという問題点がある。シリコン原料の重量のバラツキは、製造される結晶シリコン粒子の大きさに影響するため、均一な重量のシリコン原料が必要とされるが、所望の均一の大きさ及び重量を有するシリコン原料を粉砕または分級等の方法で効率よく得ることは困難である。
【0008】
さらに、シリコン原料を粉砕する場合、粉砕工程において粉砕メディアからの汚染(コンタミ)が生じることから、不純物の混入が避けられないという問題点がある。
【0009】
また、高周波プラズマ加熱装置は非常に大きな電源等が必要であり、装置コストが高く使用電力が大きいことから、生産コストも高いという問題点がある。
【0010】
また、特許文献3に記載されている、溶融シリコンを落下中に結晶化させる溶融落下法においても、凝固後の結晶シリコン粒子の冷却プロファイルを緩やかにすることによって、結晶シリコン粒子にクラックが生じないように、かつアモルファス化しないようにして、結晶シリコン粒子を製造できるという効果があるが、坩堝内のシリコン融液を全て落下させてしまうと、それ以上製造できないという問題点がある。
【0011】
従って、本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、坩堝のノズル部からのシリコン融液の排出を中断することなく、結晶シリコン粒子を連続的に低コストに製造することができる結晶シリコン粒子の製造方法及び結晶シリコン粒子の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は、坩堝のノズル部からシリコン融液を粒状に排出し、排出された粒状の前記シリコン融液を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子を製造する結晶シリコン粒子の製造方法であって、前記シリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定し、前記坩堝へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が前記排出速度以上となるように前記シリコン原料の供給重量を制御するものである。
【0013】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、前記シリコン原料を前記坩堝に供給した後に、前記坩堝から排出された前記シリコン融液の総排出重量が前記坩堝内の前記シリコン融液の前回供給時における残留重量の20重量%に至るまでの間に、前記坩堝へ前記シリコン原料を供給する。
【0014】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、前記坩堝へ供給する前記シリコン原料の供給重量を、前記坩堝内の前記シリコン原料の残留重量の1重量%乃至25重量%とする。
【0015】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、製造された前記結晶シリコン粒子を収容する容器と、前記容器の重量を測定する重量計とを設け、前記重量計によって前記坩堝から排出された前記シリコン融液の排出重量を測定する。
【0016】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、前記容器と前記重量計との間に断熱材を設ける。
【0017】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、前記断熱材と前記重量計との間に強制冷却体を設ける。
【0018】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、前記容器が石英から成る。
【0019】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、前記坩堝から排出された粒状の前記シリコン融液を内側で落下させる落下管が設けられており、前記落下管の下端の開口の大きさよりも前記容器の収容口の大きさが大きい。
【0020】
本発明の結晶シリコン粒子の製造装置は、シリコン融液を収容する坩堝と、前記坩堝に設けられた、前記シリコン融液を粒状に排出するノズル部とを有し、前記ノズル部から排出された粒状の前記シリコン融液を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子を製造する結晶シリコン粒子の製造装置であって、前記シリコン融液の単位時間当たりの排出重量から排出速度を測定する排出速度測定手段と、前記坩堝へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が前記排出速度以上となるように前記シリコン原料の供給重量を制御する供給重量制御手段と、を有しているものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は、坩堝のノズル部からシリコン融液を粒状に排出し、排出された粒状のシリコン融液を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子を製造する結晶シリコン粒子の製造方法であって、シリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定し、坩堝へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が排出速度以上となるようにシリコン原料の供給重量を制御することから、坩堝のノズル部からのシリコン融液の排出を中断することなく、坩堝にシリコン原料を継続して供給することができる。従って、結晶シリコン粒子を高い生産性でもって低コストに、再現性良く、連続的に製造することができる。
【0022】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、シリコン原料を坩堝に供給した後に、坩堝から排出されたシリコン融液の総排出重量が坩堝内のシリコン融液の前回供給時における残留重量の20重量%に至るまでの間に、坩堝へシリコン原料を供給することから、シリコン原料の溶融速度が排出速度以上となるように制御することが容易となる。すなわち、粉体状または固体状のシリコン原料の供給によってシリコン融液の温度が急激に低下せず、シリコン融液が凝固することを抑制できる。その結果、坩堝のノズル部からのシリコン融液の排出を中断することなく、坩堝にシリコン原料を継続して投入することがより容易になり、結晶シリコン粒子を高い生産性でもって低コストに、再現性良く、連続的に製造することができる。
【0023】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、坩堝へ供給するシリコン原料の供給重量を、坩堝内のシリコン原料の残留重量の1重量%乃至25重量%とすることから、粉体状または固体状のシリコン原料の供給によってシリコン融液の温度が急激に低下せず、シリコン融液が凝固することを抑制できる。
【0024】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、製造された結晶シリコン粒子を収容する容器と、容器の重量を測定する重量計とを設け、重量計によって坩堝から排出されたシリコン融液の排出重量を測定することから、坩堝のノズル部から排出されるシリコン融液の排出量を正確に測定することができる。
【0025】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、容器と重量計との間に断熱材を設けることから、結晶シリコン粒子が容器に収集される際に、容器の下方へ熱を伝えにくくすることができ、熱による重量計の故障等の発生を効果的に抑制できる。
【0026】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、断熱材と重量計との間に強制冷却体を設けることから、結晶シリコン粒子が容器に収集される際に、容器の下方へ熱をより伝えにくくすることができ、熱による重量計の故障等の発生をより効果的に抑制できる。
【0027】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、容器が石英から成ることから、石英から成る容器は、安価で入手が容易であることに加え、要求に応じた形状への加工あるいは変形が容易であり、化学的にも安定している。その結果、低コストかつ安定的に不純物の少ない結晶シリコン粒子を製造することができる。
【0028】
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、坩堝から排出された粒状のシリコン融液を内側で落下させる落下管が設けられており、落下管の下端の開口の大きさよりも容器の収容口の大きさが大きいことから、落下管内を落下する結晶シリコン粒子が容器にきわめて容易に入ることとなる。これにより、作製された結晶シリコン粒子の重量を正確に測定することができる。
【0029】
本発明の結晶シリコン粒子の製造装置は、シリコン融液を収容する坩堝と、坩堝に設けられた、シリコン融液を粒状に排出するノズル部とを有し、ノズル部から排出された粒状のシリコン融液を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子を製造する結晶シリコン粒子の製造装置であって、シリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定する排出速度測定手段と、坩堝へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が排出速度以上となるようにシリコン原料の供給重量を制御する供給重量制御手段と、を有していることから、坩堝のノズル部からのシリコン融液の排出を中断することなく坩堝にシリコン原料を供給することができ、また、粒径のばらつきの小さい大量の結晶シリコン粒子を連続的に製造可能なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本実施の形態の結晶シリコン粒子の製造方法及び製造装置について、以下に添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の結晶シリコン粒子の製造装置の概略的構成を示すブロック図である。図1において、1は坩堝、1aは坩堝1の底部に設けられたノズル部、2は坩堝1の下方に上下方向に長手方向が配置された落下管、3は坩堝1内のシリコン原料を加熱し溶融させる誘導加熱コイル等の加熱装置、4は粒状のシリコン融液である。また、5はホッパー等のシリコン原料の貯留装置、6はシリコン原料の供給/停止を制御する弁、7は結晶シリコン粒子の収集部である。また、7aはシリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定する排出速度測定手段、20は貯留装置5内にあるシリコン原料の重量を測定するシリコン原料の重量測定手段、21はシリコン原料の供給重量を制御する供給重量制御手段である。
【0032】
また、図2は、結晶シリコン粒子の収集部7の概略構成を示す断面図である。図2において、8は結晶シリコン粒子、9は結晶シリコン粒子を収集する容器、10は断熱材、11は水冷装置等の強制冷却体、12は重量計である。
【0033】
本実施の形態の結晶シリコン粒子の製造方法は、坩堝1のノズル部1aからシリコン融液を粒状に排出し、排出された粒状のシリコン融液4を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子8を製造する結晶シリコン粒子8の製造方法であって、シリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定し、坩堝1へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が排出速度以上となるようにシリコン原料の供給重量を制御する。
【0034】
この構成により、坩堝1のノズル部1aからのシリコン融液の排出を中断することなく、坩堝1にシリコン原料を継続して供給することができる。従って、結晶シリコン粒子8を高い生産性でもって低コストに、再現性良く、連続的に製造することができる。
【0035】
坩堝1のノズル部1aからのシリコン融液の排出する際には、内部雰囲気ガスが大気圧よりも高圧の不活性ガスから成るとともにシリコン融液が入った坩堝1のノズル部1aからシリコン融液を粒状として排出して落下させる。落下管2の中で落下する粒状のシリコン融液4を、落下中に冷却して凝固させることによって、結晶シリコン粒子8を作製する坩堝1にシリコン原料を供給する際には、シリコン原料の貯留装置5から弁6を経由してシリコン原料を坩堝1に供給する。それにより結晶シリコン粒子8を連続的に製造する。
【0036】
坩堝1は、シリコン原料を加熱溶融してシリコン融液とするとともに、底部のノズル部1aから粒状のシリコン融液4として排出するものである。坩堝1内で加熱溶融されたシリコン融液は、ノズル部1aより落下管2中へ排出され、粒状のシリコン融液4となって落下管2の中を落下する。坩堝1は、シリコンの融点(1414℃)より高い融点を有する材料から成る。また坩堝1は、シリコン融液との反応が小さい材料から成ることが好ましく、シリコン融液との反応が大きい場合には、坩堝1の材料が不純物として結晶シリコン粒子8中へ多量に混入することとなる。例えば、坩堝1の材料としては、炭素,炭化珪素,酸化珪素,窒化珪素,酸化アルミニウム等が好ましい。
【0037】
坩堝1の内部の雰囲気ガスは大気圧よりも高圧の不活性ガスから成るが、具体的には坩堝1の内部の雰囲気ガス圧力は10kPa〜500kPa程度である。
【0038】
また、貯留装置5から坩堝1に供給するシリコン原料は、平均粒径50μm〜4mm程度の粒状あるいは破砕片状のものである。
【0039】
坩堝1のノズル部1aから下方に向けて上下方向に配置された落下管2は、ノズル部1aから排出された粒状のシリコン融液4を落下中に冷却して凝固させるものである。この落下管2の内部は所望の雰囲気ガスで所望の圧力に制御されている。この所望の雰囲気ガスとしては、不活性ガスがよく、特にはヘリウムガスまたはアルゴンガスが好ましい。ヘリウムガスまたはアルゴンガスは、粒状のシリコン融液4への雰囲気ガスからの不純物の混入を防ぐことができる。
【0040】
さらに、ヘリウムガスまたはアルゴンガスは、粒状のシリコン融液4との反応が小さく、粒状のシリコン融液4が凝固して結晶化する際の妨げとなる、粒状のシリコン融液4表面の反応層の形成が抑制できるため好ましい。
【0041】
また、不活性ガスの圧力は、ガス流入量とガス排出量を調整することにより制御することができる。その圧力は大気圧が好ましい。大きな減圧状態であるときには、冷却装置(図示せず)によって粒状のシリコン融液4の過冷却を制御する際に、冷却の制御が難しくなる。即ち、シリコン融液4の過冷却を大気圧の雰囲気ガス、特に不活性ガスから成る雰囲気ガス中で行うことが好ましい。
【0042】
なお、シリコン融液4の過冷却状態とは、ノズル部1aから排出された粒状のシリコン融液4の表面側が急冷されて、内部の温度の方が表面側の温度よりも大きい状態を意味する。この場合、過冷却状態の過冷却度(シリコンの融点−過冷却温度)が大きいと、粒状のシリコン融液4の表面に多数の結晶核が発生し、結晶シリコン粒子8が多結晶化し易くなる。従って、シリコン融液4の過冷却度が小さくなるように、落下管2の途中に抵抗加熱装置等の加熱部を設けることが好ましい。
【0043】
また、落下管2はシリコン融点よりも高い融点を有する材料から成ることが好ましい。その場合、粒状のシリコン融液4が斜め方向に排出されて落下管2の内壁に衝突したとしても、落下管2がその材料の融点以上に加熱されることはなく、落下管2の材料が衝突した粒状のシリコン融液4中へ不純物として混入することがない。また、落下管2の材料の融点がシリコンの融点よりも低いときには、粒状のシリコン融液4が斜め方向に排出されて落下管2の内壁に衝突した際に、落下管2が材料の融点以上に加熱されることとなり、衝突した粒状のシリコン融液4中へ落下管2の材料が不純物として混入することがある。
【0044】
そこで、落下管2にそれ自体をする冷却する冷却構造を付加して、粒状のシリコン融液4の衝突によって落下管2が材料の融点以上に加熱されないようにすることによって、粒状のシリコン融液4への不純物の混入を回避することが可能である。
【0045】
従って、落下管2の材料は、シリコンより高融点である炭素,炭化珪素,酸化珪素,窒化珪素,酸化アルミニウム等であることが好ましい。または、例えば二重管構造や水冷ジャケット等の冷却構造で冷却される落下管2の場合、落下管2の材料はステンレススチール,アルミニウム等であることが好ましい。
【0046】
加熱装置3は、坩堝1内にあるシリコンを加熱し溶融させるための装置である。加熱装置3は、高周波誘導コイル等の電磁誘導加熱装置や抵抗加熱装置等から成る。加熱温度は、シリコン原料を溶融するため、シリコンの融点である1414℃以上である。抵抗加熱装置を使用する場合、例えば坩堝1と同じ不活性ガスから成る雰囲気ガス中で坩堝1に接触させて加熱するものであり、炭素系ヒーターが使用可能である。また、炉心管(不図示)の外側の酸化性雰囲気から間接的に坩堝1を加熱する場合、炭化珪素または珪化モリブデンを含む抵抗線または抵抗板等を有する抵抗加熱装置を使用することができる。
【0047】
加熱装置3として、電磁誘導加熱装置を使用する場合、例えば坩堝1に炭素からなるサセプターを接触させ、炉心管の外側に高周波誘導コイルを設け、誘導電流によりサセプターを加熱することにより、坩堝1を加熱する方法等がある。
【0048】
貯留装置5は、シリコン原料を貯留するとともに、坩堝1へ供給するための装置である。貯留装置5は、内部の雰囲気ガス(不活性ガス)圧力の変化に耐え得る金属、例えば鉄,アルミニウム,銅およびこれらの金属を含むステンレススチール等の合金等からなる。
【0049】
また、貯留装置5は、シリコン原料が貯留装置5を構成する金属によって汚染されることを防ぐため、金属製の外側部材と非金属製の内壁部材とからなる2重構造であることがよい。この場合、非金属製の内側部材の材料は、石英ガラス,ポリテトラフルオロエチレン,塩化ビニールまたはポリエチレンテレフタラートであることが好ましい。これらの材料は、安価で入手が容易であることに加え、要求に応じた形状への加工あるいは変形が容易であり、化学的にも安定であるため、低コストにかつ安定的にシリコン原料を供給できる。
【0050】
また、貯留装置5から坩堝1へのシリコン原料の供給は、坩堝1から排出されたシリコン融液4の総排出重量が坩堝1内のシリコン融液の前回供給時における残留重量の20重量%に至るまでの間にすることがよい。この場合、坩堝1のノズル部1aからのシリコン融液4の排出を中断することなく、坩堝1の内部にシリコン原料を供給することができる。
【0051】
また、貯留装置5から坩堝1へのシリコン原料の供給重量を、坩堝1内のシリコン融液の重量の1重量%乃至25重量%とすることがよい。この場合、粉体状または固体状のシリコン原料の坩堝1への供給によってシリコン融液の温度が急激に低下しないようにして、シリコン融液が凝固することを抑制できる。
【0052】
またこの場合、製造される結晶シリコン粒子8の製造速度よりもシリコン原料の坩堝への供給速度を大きくすることができる。従って、坩堝1内のシリコン融液が次第に減少して結晶シリコン粒子8の製造が困難になることがなくなる。
【0053】
坩堝1内のシリコン融液の重量は500〜200000g程度であり、従って貯留装置7に供給するシリコン原料の重量は5g(500gの1重量%)乃至50000g(200000gの25重量%)程度となる。
【0054】
なお、結晶シリコン粒子8の製造の初期には坩堝1内にはシリコン融液は存在しないが、上記の数値範囲は、坩堝1内にシリコン融液が存在して稼動状態にある場合のものであることは言うまでもない。
【0055】
また、収集部7には、結晶シリコン粒子8を収容する容器9と、容器9の重量を測定する重量計12とが設けられている。重量計12によって坩堝1から排出されたシリコン融液4の排出重量を測定することができる。これにより、坩堝1から排出されるシリコン融液の重量を正確に測定することができる。
【0056】
坩堝1から排出されたシリコン融液の排出量を測定する方法として、単位時間当たりの排出重量から排出速度を測定する排出速度測定手段7aを用いる方法がある。排出速度測定手段7aは、重量計12によって得られた重量信号を受信し、単位時間当たりの重量の増加量から排出速度を測定する。その排出速度信号を供給重量制御手段21へ随時送信する。
【0057】
排出速度測定手段7aとしては、電気回路、電子回路、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ端末等を備えたものが用いられる。また、重量計12の重量値を目視で観察して排出速度を導出することもできる。
【0058】
また、坩堝1から排出されたシリコン融液の排出量を測定する方法として、坩堝1から排出されるシリコン融液をカメラ、CCDカメラ等の光学的手段によって測定する方法、目視によって観察する方法等も用いることができる。この場合、シリコン融液の排出体積量を測定し、それに基づいて排出重量を測定することになる。
【0059】
また、坩堝1の高さ方向の位置が、坩堝1内のシリコン原料の残留量によって変化する場合には、坩堝1の高さ方向の位置に基づいて坩堝1から排出されたシリコン融液の排出量を測定することができる。
【0060】
坩堝1へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度は、加熱装置3によって単位時間当たり溶融可能なシリコン原料の最大量として規定される。即ち、加熱装置3の所定の温度(シリコンの融点以上〜1600℃程度)によって単位時間(1秒、1分等)当りに溶融できる、室温付近の粉体状あるいは固体状のシリコン原料の最大量(最大重量、最大体積)によって決まる。
【0061】
また、溶融速度は、坩堝1内のシリコン融液をカメラ、CCDカメラ等の光学的手段によって観察しシリコン原料の溶融状態から導き出す方法、シリコン融液の温度を熱電対等によって測定して、その温度プロファイルからシリコン原料の溶融状態を間接的に特定して導き出す方法、坩堝1の温度変化と加熱装置3の出力変化と坩堝1に与える熱量変化とから間接的に導き出す方法等によって測定できる。
【0062】
また、容器9と重量計12との間に断熱材10を設けることが好ましい。この場合、結晶シリコン粒子8が容器9に収集される際に、容器9の下方へ熱を伝えにくくすることができ、熱による重量計12の故障等の発生を効果的に抑制できる。
【0063】
断熱材10の材料としては、カーボンフェルト,アルミナ,石英等が好ましい。断熱材10の厚みは3mm〜20mm程度がよい。この厚みの範囲内とすることにより、容器9の下方へ熱を伝えにくくする断熱効果を高くし、熱による重量計12の故障等の発生を抑制できる効果が得られる。また、断熱材10の取り替え、取り外しが容易に行え、メンテナンスを容易にすることができる。
【0064】
また、断熱材10と重量計12との間に強制冷却体11を設けることが好ましい。この場合、結晶シリコン粒子8が容器9に収集される際に、容器9の下方へ熱をより伝えにくくすることができ、熱による重量計12の故障等の発生をより効果的に抑制できる。
【0065】
強制冷却体11は、水冷管,油冷管,水冷ジャケット,油冷ジャケット等を有する液冷式冷却体、冷却ファン等を有する空冷式冷却体、氷等の低温固体を収納した固体式冷却体、熱電対等を有する電気式冷却体などであり、またはこれらの冷却体を組み合わせたものであってもよい。
【0066】
また、容器9は石英から成ることが好ましい。この場合、石英から成る容器9は、安価で入手が容易であることに加え、要求に応じた形状への加工あるいは変形が容易であり、化学的にも安定している。その結果、低コストかつ安定的に不純物の少ない結晶シリコン粒子8を製造することができる。
【0067】
また、坩堝1から排出された粒状のシリコン融液4を内側で落下させる落下管2が設けられており、落下管2の下端の開口の大きさよりも容器9の収容口の大きさが大きいことが好ましい。この場合、落下管2内を落下する結晶シリコン粒子8が容器9にきわめて容易に入ることとなる。これにより、作製された結晶シリコン粒子8の重量を正確に測定することができる。
【0068】
落下管2の下端の開口の形状と容器9の収容口の形状とは、相似形であることがよい。この場合、落下管2内を落下する結晶シリコン粒子8が容器9にさらに容易に入ることになる。
【0069】
落下管2の下端の開口の大きさよりも容器9の収容口の大きさが、面積比で5〜30%程度大きいことがよい。この面積比の範囲内とすることにより、落下管2内を落下する結晶シリコン粒子8が容器9に容易に入ることとなり、また、容器9の収容口が広いため結晶シリコン粒子8を早く冷ます効果がある。
【0070】
また、落下管2の下端が容器9の上端から下側に入り込んでいてもよい。この場合、落下管2内を落下する結晶シリコン粒子8が容器9にさらに容易に入ることになる。
【0071】
また、落下管2の下端と容器9の上端との間に隙間があってもよい。この場合、落下管2の下端と容器9の上端との間の隙間を通過する結晶シリコン粒子8をカメラ、CCDカメラ、目視等の光学的手段によって測定、観察し、坩堝1から排出されたシリコン融液の排出量を測定することもできる。従って、前記隙間を通過する結晶シリコン粒子8の大きさを測定し易くするためには、前記隙間は結晶シリコン粒子8の平均粒径よりも大きいことがよい。
【0072】
本実施の形態の結晶シリコン粒子8の製造装置は、シリコン融液を収容する坩堝1と、坩堝1に設けられた、シリコン融液を粒状に排出するノズル部1aとを有し、ノズル部1aから排出された粒状のシリコン融液4を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子8を製造する結晶シリコン粒子8の製造装置であって、シリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定する排出速度測定手段7aと、坩堝1へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が排出速度以上となるようにシリコン原料の供給重量を制御する供給重量制御手段21と、を有している。
【0073】
この構成により、坩堝1のノズル部1aからのシリコン融液の排出を中断することなく坩堝1にシリコン原料を供給することができ、また、粒径のばらつきの小さい大量の結晶シリコン粒子8を連続的に製造可能なものとなる。
【0074】
供給重量制御手段21は、排出速度測定手段7aから送信された排出速度信号を受信し、シリコン原料の供給重量を制御する。供給重量の制御は、弁6の開閉駆動を制御することによって行う。
【0075】
また、供給重量制御手段21は、貯留装置5内にあるシリコン原料の重量を測定するシリコン原料の重量測定手段20からの供給重量信号を用いて、シリコン原料の供給重量をより精密に制御してもよい。
【0076】
重量測定手段20及び供給重量制御手段21は、電気回路、電子回路、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ端末等を備えたものが用いられる。
【0077】
以上、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法及び製造装置について実施の形態を説明したが、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更を加えても何ら差し支えない。
【実施例】
【0078】
本発明の結晶シリコン粒子の製造方法及び製造装置の実施例について以下に説明する。
【0079】
図1、図2の製造装置を用いて結晶シリコン粒子8を以下のようにして製造した。
【0080】
なお、落下管2として石英製の円筒状のもの、貯留装置5としてホッパー、排出速度測定手段7aとしてパーソナルコンピュータ端末、容器9として石英製の円筒状のもの、断熱材10として厚み8mmでアルミナから成る板状のもの、強制冷却体11として水冷プレート、重量計12として螺旋状バネを有するバネ秤式のもの、供給重量制御手段21としてパーソナルコンピュータ端末を用いた。
【0081】
容器9の収容口の直径が190mm、落下管2の下端の開口の直径が180mmであり、容器9の収容口の直径が落下管2の下端の開口の直径よりも大きいものとした。落下管2の下端は容器9の上端から下方に5mm入り込ませた。
【0082】
まず、シリコン原料として、p型ドーパントとしての硼素(B)を1×1016原子/cm3添加した、平均粒径1mmの粒状シリコンを用いた。10000gの粒状シリコンをグラファイト製の坩堝1に入れ、抵抗加熱式のグラファイトヒーターからなる加熱装置3により坩堝1を1560℃程度に加熱し、シリコン原料を溶融させた。
【0083】
次に、坩堝1内のアルゴンガスの圧力を100kPaとして大気圧よりも大きくすることにより、シリコン融液の液面に圧力を加え、ノズル部1aから石英製の落下管2の内部へ粒状のシリコン融液4を落下させた。
【0084】
製造された結晶シリコン粒子8の総重量が所定の100gになったとき、供給重量制御手段21により閉じていた弁6を開いて、貯留装置5から坩堝1へ平均粒径1mmの粒状シリコンを100g供給した。このとき、排出速度が0.4g/秒であり、溶融速度が0.48g/秒であることから、溶融速度が排出速度よりも大きいものであった。
【0085】
その後、結晶シリコン粒子8を製造し続け、所定の重量の100gを製造したとき、供給重量制御手段21により再度弁6を開いて、貯留装置5から坩堝1へ平均粒径1mmの粒状のシリコン原料を100g供給した。このシリコン原料の供給工程を繰り返した。
【0086】
そして、貯留装置5から坩堝1へシリコン原料を断続的に供給して、結晶シリコン粒子8を継続して製造することができた。
【0087】
また、初期に坩堝1に供給した10000gのシリコン原料と同量の結晶シリコン粒子8を製造した後も、上記のように貯留装置5から断続的に坩堝1に供給することにより、結晶シリコン粒子8を継続して製造することができた。
【0088】
従来、初期供給量である10000gのシリコン原料がなくなったときに製造を中断していたが、本実施例では20000gの結晶シリコン粒子8を連続的に製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施の形態の結晶シリコン粒子の製造装置の1例を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態の結晶シリコン粒子の収集部の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0090】
1:坩堝
1a:ノズル部
2:落下管
3:加熱装置
4:粒状のシリコン融液
7a:排出速度測定手段
8:結晶シリコン粒子
9:容器
10:断熱材
11:強制冷却体
12:重量計
21:供給重量制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝のノズル部からシリコン融液を粒状に排出し、排出された粒状の前記シリコン融液を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子を製造する結晶シリコン粒子の製造方法であって、前記シリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定し、前記坩堝へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が前記排出速度以上となるように前記シリコン原料の供給重量を制御する結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン原料を前記坩堝に供給した後に、前記坩堝から排出された前記シリコン融液の総排出重量が前記坩堝内の前記シリコン融液の前回供給時における残留重量の20重量%に至るまでの間に、前記坩堝へ前記シリコン原料を供給する請求項1記載の結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項3】
前記坩堝へ供給する前記シリコン原料の供給重量を、前記坩堝内の前記シリコン原料の残留重量の1重量%乃至25重量%とする請求項1記載の結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項4】
製造された前記結晶シリコン粒子を収容する容器と、前記容器の重量を測定する重量計とを設け、前記重量計によって前記坩堝から排出された前記シリコン融液の排出重量を測定する請求項1乃至3のいずれか記載の結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項5】
前記容器と前記重量計との間に断熱材を設ける請求項4記載の結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項6】
前記断熱材と前記重量計との間に強制冷却体を設ける請求項5記載の結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項7】
前記容器が石英から成る請求項4乃至6のいずれか記載の結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項8】
前記坩堝から排出された粒状の前記シリコン融液を内側で落下させる落下管が設けられており、前記落下管の下端の開口の大きさよりも前記容器の収容口の大きさが大きい請求項1乃至7のいずれか結晶シリコン粒子の製造方法。
【請求項9】
シリコン融液を収容する坩堝と、前記坩堝に設けられた、前記シリコン融液を粒状に排出するノズル部とを有し、前記ノズル部から排出された粒状の前記シリコン融液を冷却して凝固させることによって結晶シリコン粒子を製造する結晶シリコン粒子の製造装置であって、前記シリコン融液の単位時間当たりの排出量から排出速度を測定する排出速度測定手段と、前記坩堝へ供給されたシリコン原料の単位時間当たりの溶融量である溶融速度が前記排出速度以上となるように前記シリコン原料の供給重量を制御する供給重量制御手段と、を有する結晶シリコン粒子の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−234850(P2009−234850A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82671(P2008−82671)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】