説明

結晶化ガラス

【課題】人体及び環境に対して悪影響をおよぼす砒素成分やアンチモン成分を実質的に使用せずとも、垂直磁気記録方式等に代表される次世代の情報記録媒体基板用途としての物性を備えた結晶化ガラスを提供すること。とりわけ、高速回転化や落下衝撃に耐え得る高強度を有し、各ドライブ部材に合致する熱膨張特性や化学的耐久性をも兼ね備えた、溶融温度が低く、プレス成形等に適した生産性の高い情報記録媒体用ディスク基板用等の結晶化ガラスを提供すること。
【解決手段】酸化物基準において、SiO成分、LiO成分、Al成分を含有し、結晶相として二ケイ酸リチウムを含有し、Sn、Ce、Mn、W、Ta、Bi、Nb、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする結晶化ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化ガラスに関し、特に情報磁気記録媒体基板用結晶化ガラスに関する。
特に本発明は、人体及び環境に対して悪影響をおよぼす砒素成分やアンチモン成分を使用しなくとも、情報記録媒体基板用途としての物性を備えた結晶化ガラスを提供するものである。
【0002】
また、本発明は人体及び環境に対して悪影響をおよぼす砒素成分やアンチモン成分を使用しなくとも、情報記録媒体基板用途としての物性を備えたガラスを提供する。
【0003】
尚、本発明において「情報記録媒体」とは、パーソナルコンピュータのハードディスクとして使用される、固定型ハードディスク、リムーバル型ハードディスク、もしくはカード型ハードディスク、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、もしくはオーディオ用ハードディスク、カーナビ用ハードディスク、携帯電話用ハードディスクまたは各種電子デバイス用ハードディスクにおいて使用可能な情報磁気記録媒体を意味する。
【背景技術】
【0004】
近年、パーソナルコンピュータのマルチメディア化への対応のため、また、デジタルビデオカメラ・デジタルカメラで動画や音声等の大きなデータが扱われるようになり、大容量の情報磁気記録装置が必要となっている。その結果、情報磁気記録媒体は面記録密度を大きくするために、ビットおよびトラック密度を増加させ、ビットセルのサイズを縮小化する傾向にある。そのため、磁気ヘッドはディスク表面に従来よりも近接して作動しなければならなくなる。
【0005】
さらに記録密度が100Gb/inを超えると、このような小さい磁区では熱的に不安定になるため、100Gb/inを越える高記録密度化の要求に対して面内記録方式は物理的限界に到達している。
【0006】
これに対応するべく、垂直磁気記録方式の採用、量産化が進められている。この垂直磁気記録方式は磁化容易軸を垂直方向とするため、ビットサイズを極めて小さくすることができ、また、所望の媒体膜厚(面内記録方式の5〜10倍)を有することにより反磁界の低減や形状磁気異方性による効果も望むことができるため、従来の面内方向の磁気記録方式の高密度化において生じる記録エネルギーの減少や熱的不安定という問題を解決でき、面内磁気記録方式よりも格段の記録密度向上を実現できる。この様なことから、垂直磁気記録方式では実用レベルで100Gb/in以上の記録密度を達成することが量産レベルでは既に可能となっており、300Gb/inを越える記録密度に関する研究も既に行われている。
【0007】
この垂直磁気記録方式では、媒体面に対して垂直方向に磁化を行うため、従来の面内方向に磁化容易軸を有する媒体とは異なり、垂直方向に磁化容易軸を有する媒体が用いられる。垂直磁気記録方式の記録層として研究および実用化がなされているのは、バリウムフェライト膜、Co−γFeやCo系合金、FePt等のFe系合金、Ni系合金等の各種合金膜が挙げられる。
【0008】
ところが、これらの磁気記録媒体は、磁性体結晶粒子の微細化と垂直方向への生成のためにその成膜温度を高温化する必要がある。さらに最近の研究によれば、磁気特性向上のために高温(500〜900℃程度)でアニーリングを行う場合もある。
【0009】
これに対応すべく、基板にはアニーリング処理前後で材料形状が変化しにくい、耐熱性に優れた基板が求められている。また、高密度化に伴い磁気ヘッドの低浮上化を可能とするため、極めてスムーズな表面平滑度が必要とされている。
【0010】
上記物性を有する基板、およびそれを実現しうる結晶化ガラスが求められている一方で、従来ガラスの清澄剤として使用されている砒素成分は人体及び環境に対して悪影響をおよぼすおそれがあるため、これらの成分を使用しない物品の提供が求められ、アンチモン成分を清澄剤として使用する対応を行ってきた。
【0011】
しかしながら、近年、有害物質の更なる低減が求められており、人体や環境への影響が比較的軽微と考えられてきた有害物質の使用についても、その含有量を低減あるいは使用禁止されつつある傾向となり、ガラスの清澄剤として砒素成分よりも人体や環境負荷が軽微として一般的に使用されてきたアンチモンについても同様の対応が求められつつある。
【0012】
特許文献1には砒素成分やアンチモン成分を使用しない二珪酸リチウムを主結晶相とする情報記録媒体用結晶化ガラス基板が開示されている、しかしながら、当該文献の実施例22,23は、ヤング率が78、81GPaであることから情報記録媒体用途として今日求められる機械的強度を満足していない。従って、この文献によって開示された構成成分の組成範囲に、十分な清澄効果を得つつ、機械的強度を初めとして、情報記録媒体用途として今日求められる物性を備えた結晶化ガラスが存在するかは当業者にも未知であり、今日までその様な結晶化ガラスは得られていなかった。その上、清澄剤として使用するSnO成分、CeO成分の含有量がそれぞれ1モルであり、質量%に換算するとそれぞれ2.5%を超過する含有量となる。このようにSnO成分、CeO成分を多量に含有する場合、溶融ガラスの清澄効果が認められても、得られた結晶化ガラスの比重が大きくなってしまい、情報記録媒体用として求められる高ヤング率と低比重特性を同時に満足することは困難である。
また、SnO成分、またはCeO成分を多量に含有すると、情報記録媒体用途として求められる特性を阻害する結晶相が析出する可能性がある。
【特許文献1】特開2001−76336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、人体及び環境に対して悪影響をおよぼすおそれのある砒素成分やアンチモン成分を実質的に使用せずとも、垂直磁気記録方式等に代表される次世代の情報記録媒体基板用途としての物性を備えた結晶化ガラスを提供することにある。とりわけ、高速回転化や落下衝撃に耐え得る高強度を有し、各ドライブ部材に合致する熱膨張特性や化学的耐久性をも兼ね備えた、溶融温度が低く、プレス成形等に適した生産性の高い情報記録媒体用ディスク基板用等の結晶化ガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意試験研究を重ねた結果、清澄剤として使用する成分の含有量を特定の範囲に限定した結晶化ガラスは、所望の結晶相を析出させつつ溶融温度およびガラスの粘度が低く、情報記録媒体用途に供する場合においてプレス成形等に適しているため生産性が高く、十分な清澄効果が得られることを見いだした。加えて、磁気ヘッドの低浮上化に対応可能な極めて平滑な基板表面を有し、高速回転に対応した高ヤング率と低比重特性も兼ね揃えており、ドライブ搭載時の落下強度にも優れている(>1200G)ことを見出した。 より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0015】
(構成1)
酸化物基準において、SiO成分、LiO成分、Al成分を含有し、
結晶相として二ケイ酸リチウムを含有し、
Sn、Ce、Mn、W、Ta、Bi、Nb、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする結晶化ガラス。
(構成2)
結晶相としてモノケイ酸リチウム、α−石英、α−石英固溶体、β−石英固溶体の中から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする構成1に記載の結晶化ガラス。
(構成3)
Sn、Ceから選ばれる1種以上の元素を含有し、
それらの含有量は酸化物基準の質量%で、
SnO成分:0〜2.5%、
CeO成分:0〜2.5%、
但し、SnO成分とCeO成分の合計量 0.01〜5.0%、
である構成1または2に記載の結晶化ガラス。
(構成4)
原料として、硫酸塩、塩化物、およびフッ化物から選ばれる1種以上を用いることによって、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有し、
前記原料における前記硫酸塩、塩化物、及びフッ化物の含有量は、
硫酸塩、塩化物、およびフッ化物以外のガラス原料の酸化物基準の合計質量に対して、
硫酸塩:SO換算で0〜1.5質量%、
塩化物:Cl2換算で0〜1.5質量%、
フッ化物:F換算で0〜1.5質量%、
但し、SO+Cl2+F:0.01〜1.5質量%
である構成1〜3のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成5)
Mn、W、Ta、BiおよびNbから選ばれる1種以上の元素を含有し、それらの含有量は酸化物基準の質量%で、MnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分から選ばれる1種以上の合計の含有量が0.01〜2.5%である構成1〜4のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成6)
酸化物基準の質量%で
SiO:60〜78%、および
LiO:5〜12%、および
Al:4〜10%、および
:1.5〜3.0%、および
ZrO:1〜10%
の各成分を含有する構成1〜5のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成7)
酸化物基準の質量%で
BaO:0〜15%、および/または
SrO:0〜15%、および/または
MgO:0〜2%、および/または
CaO:0〜2%、および/または
ZnO:0〜3%、および/または
O:0〜3%、および/または
NaO:0〜3%,および/または
CsO:0〜3%,および/または
Gd成分、La成分、Y成分、Ga成分から選ばれる1種以上の合計の含有量:0〜15%、および/または
Sb成分:0.1%未満
の各成分を含有する構成1〜6のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成8)
酸化物基準の質量%で、LiO成分、NaO成分、KO成分、およびCsO成分の1種以上の合計量が5%〜14%である構成1〜7のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成9)
As成分およびSb成分を実質的に含有しない構成1〜8のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成10)
25℃〜100℃の温度範囲における平均線膨張係数が50〜120[10−7−1]であることを特徴とする構成1〜9のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成11)
前記結晶相の平均粒子径が100nm以下である構成1〜10のいずれかに記載の結晶化ガラス。
(構成12)
構成1〜11のいずれかに記載の結晶化ガラスを用いた情報記録媒体用基板。
(構成13)
ヤング率が85GPa以上であることを特徴とする、構成12に記載の情報記録媒体用基板。
(構成14)
構成12または13に記載の基板の表面に圧縮応力層を設けた情報記録媒体用基板。
(構成15)
前記圧縮応力層は表面層に存在するアルカリ成分よりもイオン半径の大きなアルカリ成分で置換することにより形成されてなる構成14に記載の情報記録媒体用基板。
(構成16)
前記圧縮応力層は基板の加熱、その後急冷によって形成されたことを特徴とする構成14または15に記載の情報記録媒体用基板。
(構成17)
表面粗度Ra(算術平均粗さ)が2Å以下であることを特徴とする構成12〜16のいずれかに記載の情報記録媒体用基板。
(構成18)
構成12〜17のいずれかに記載の情報記録媒体用基板を用いた情報記録媒体。
(構成19)
原料を溶融して溶融ガラスとし、前記溶融ガラス成形した後、熱処理により結晶化ガラスを得る結晶化ガラスの製造方法において、
前記原料の組成は酸化物基準の質量%で、
SiO:60〜78%、および
LiO:5〜12%、および
Al:4〜10%、および
:1.5〜3.0%、および
ZrO2:1〜10%
SnO:0〜2.5%、
CeO:0〜2.5%、
MnO+WO+Ta+Bi+Nb:0〜2.5%
の各成分を含有し、さらに上記原料の合計質量に対して、
硫酸塩:SO換算で0〜2.5質量%、
塩化物:Cl2換算で0〜2.5質量%、
フッ化物:F換算で0〜2.5質量%
を含有する結晶化ガラスの製造方法。
(構成20)
前記原料の組成は酸化物基準でSnO成分、CeO成分から選ばれる1種以上を含有し、酸化物基準の質量%で、
SnO+CeO:0.01〜5.0%
である構成18に記載の結晶化ガラスの製造方法。
(構成21)
前記原料の組成は硫酸塩、塩化物、フッ化物から選ばれる1種以上を含有し、
硫酸塩をSOと、塩化物をCl2と、フッ化物をFとそれぞれ換算した場合、
硫酸塩、塩化物、フッ化物以外の原料の合計質量に対し、
SO+Cl2+F:0.01〜1.5質量%である構成19または20に記載の結晶化ガラスの製造方法。
(構成22)
前記原料の組成は酸化物基準でMnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分から選ばれる1種以上を含有し、酸化物基準の質量%で、
MnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分から選ばれる1種以上の合計の含有量が0.01〜2.5%である構成19〜21のいずれかに記載の結晶化ガラスの製造方法。
【0016】
(構成23)
酸化物基準において、SiO成分、LiO成分、Al成分を含有し、
Sn、Ce、Mn、W、Ta、Bi、Nb、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とするガラス。
(構成24)
Sn、Ceから選ばれる1種以上の元素を含有し、
それらの含有量は酸化物基準の質量%で、
SnO成分:0〜2.5%、
CeO成分:0〜2.5%、
但し、SnO成分とCeO成分の合計量 0.01〜5.0%、
である構成23に記載のガラス。
(構成25)
原料として、硫酸塩、塩化物、およびフッ化物から選ばれる1種以上を用いることによって、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有し、
前記原料における前記硫酸塩、塩化物、及びフッ化物の含有量は、
硫酸塩、塩化物、およびフッ化物以外のガラス原料の酸化物基準の合計質量に対して、
硫酸塩:SO換算で0〜1.5質量%、
塩化物:Cl2換算で0〜1.5質量%、
フッ化物:F換算で0〜1.5質量%、
但し、SO+Cl2+F:0.01〜1.5質量%
である構成23または24のいずれかに記載のガラス。
(構成26)
Mn、W、Ta、BiおよびNbから選ばれる1種以上の元素を含有し、それらの含有量は酸化物基準の質量%で、MnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分から選ばれる1種以上の合計の含有量が0.01〜2.5%である構成23〜25のいずれかに記載のガラス。
(構成27)
酸化物基準の質量%で
SiO:60〜78%、および
LiO:5〜12%、および
Al:4〜10%、および
:1.5〜3.0%、および
ZrO:1〜10%
の各成分を含有する構成23〜27のいずれかに記載のガラス。
(構成28)
酸化物基準の質量%で
BaO:0〜15%、および/または
SrO:0〜15%、および/または
MgO:0〜2%、および/または
CaO:0〜2%、および/または
ZnO:0〜3%、および/または
O:0〜3%、および/または
NaO:0〜3%,および/または
CsO:0〜3%,および/または
Gd成分、La成分、Y成分、Ga成分から選ばれる1種以上の合計の含有量:0〜15%、および/または
Sb成分:0.1%未満
の各成分を含有する構成23〜27のいずれかに記載のガラス。
(構成29)
酸化物基準の質量%で、LiO成分、NaO成分、KO成分、およびCsO成分の1種以上の合計量が5%〜14%である構成23〜28のいずれかに記載のガラス。
(構成30)
As成分およびSb成分を実質的に含有しない構成23〜28のいずれかに記載のガラス。
(構成31)
構成23〜30のいずれかに記載のガラスを用いた情報記録媒体用基板。
(構成32)
構成23〜30のいずれかに記載のガラスを熱処理し分相させたものを用いた情報記録媒体用基板。
(構成33)
構成31または32に記載の基板の表面に圧縮応力層を設けた情報記録媒体用基板。
(構成34)
前記圧縮応力層は表面層に存在するアルカリ成分よりもイオン半径の大きなアルカリ成分で置換することにより形成されてなる構成33に記載の情報記録媒体用基板。
(構成35)
前記圧縮応力層は基板の加熱、その後急冷によって形成されたことを特徴とする構成33または34のいずれかに記載の情報記録媒体用基板。
(構成36)
表面粗度Ra(算術平均粗さ)が1Å以下であることを特徴とする構成31〜35のいずれかに記載の情報記録媒体用基板。
(構成37)
構成31〜36のいずれかに記載の情報記録媒体用基板を用いた情報記録媒体。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、人体及び環境に対して悪影響をおよぼすおそれのある砒素成分やアンチモン成分を実質的に使用せずとも、または砒素成分やアンチモン成分の含有量が0.1%未満であっても、情報記録媒体基板用途に耐えうる物性を備え、従来のような多量の砒素成分やアンチモン成分を含有させた場合と同等の清澄作用を有する結晶化ガラスを提供することができる。
【0018】
また、本発明の結晶化ガラスは結晶化処理前の中間体であるガラスは、研削・研磨等の機械的加工や、表面層への応力形成の為の加工等を施すことにより、情報記録媒体用基板用途に使用することが可能である。
上記本発明のガラスは本発明の結晶化ガラスに比べ、機械的強度の点で若干劣るが、研磨加工後に得られる表面粗さについてはより平滑な面が得られるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明について、具体的な実施態様について説明する。
本発明の結晶化ガラスは、二ケイ酸リチウムを主結晶相として含有する。この結晶相を含有することにより優れた耐熱性、機械的強度、高速回転化や落下衝撃に耐え得る高強度を有し、各ドライブ部材に合致する熱膨張特性や化学的耐久性を実現することができる。
【0020】
また、モノケイ酸リチウム、α−石英、α−石英固溶体、β−石英固溶体の中から選ばれる少なくとも1種以上を結晶相として含有しても良い。これらの結晶相は二珪酸リチウムが析出する際に副次的に析出する場合があるが、これらの結晶相は情報記録媒体用途に要求される特性を阻害するものではないからである。但し上記の結晶相以外の結晶相は情報記録媒体用途に要求される特性を阻害する可能性があり、含有することは好ましくない。
【0021】
ここで固溶体とは、α−石英(α−SiO)、β−石英(β−SiO)、それぞれの結晶において、一部が結晶を構成する元素以外の元素に置換されていたり、結晶間に原子が侵入しているものを言う。特に、β−石英固溶体は、化学式にてLiAlSi1−X(0<X<1)と表し、これより更に他の元素が置換または侵入されているものも含めたものの総称である。
【0022】
次に本発明の結晶化ガラスを構成する各組成成分について述べる。なお、各成分の含有量は酸化物基準の質量%で示す。ここで、「酸化物基準」とは、本発明の結晶化ガラスの構成成分の原料として使用される酸化物、硝酸塩等が溶融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定して、結晶化ガラス中に含有される各成分の組成を表記する方法であり、この生成酸化物の質量の総和を100質量%として、結晶化ガラス中に含有される各成分の量を表記する。
【0023】
また、本発明の結晶化ガラスを製造する場合は、特定組成の原料を白金坩堝や石英坩堝等で溶融し・急冷して原ガラスを作成し、該原ガラスを熱処理して結晶化することで得られる。前記原料の組成割合を酸化物基準で表した場合、上記結晶化ガラスを構成する各組成成分の含有量と基本的には同一となるが、一部の原料の組成割合は溶融時の揮発などにより結晶化ガラスを構成する成分含有量と異なる場合がある。以後の説明においては原料の組成割合と結晶化ガラスを構成する成分含有量が異なる場合のみ、その旨を明記する。
【0024】
本発明の結晶化ガラスにおいて、特定範囲のSn、Ce、Mn、W、Ta、Bi、Nb、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有させることで、情報記録媒体用基板に要求される物性を維持しつつ、As成分やSb成分と同様の高い清澄効果を得る事ができる。本発明においてこれらの元素は清澄剤として作用する。
【0025】
情報記録媒体用基板に要求される物性を維持しつつ、高い清澄効果を得るためには、Sn、Ceから選ばれる1種以上の元素を含有することが好ましい。清澄剤としてSnおよび/またはCe元素だけ使用しても清澄効果が得られるが、Sn、Ce以外の他の清澄剤と併用することもできる。高い清澄効果を得るためには、酸化物基準でSnO成分又はCeO成分の合計の含有量の下限が0.01%であることが好ましく、0.05%であることがより好ましく、0.1%であることが最も好ましい。但し、Sn、Ce以外の清澄剤を含有させる場合には前記合計量は0%でも良い。また、同様の効果を得るために、SnO成分及びCeO成分の各々の含有量の下限は0.05%がより好ましく、0.1%が最も好ましい。但し、Sn、Ce以外の清澄剤を含有させる場合には、SnO成分及びCeO成分の各々の含有量は0%でも良い。
一方、機械的強度を維持しつつ、比重を低くし、所望の結晶相を析出させ、かつ高い清澄効果を得るためには、SnO成分とCeO成分の合計の含有量の上限は、5.0%であることが好ましく、より好ましくは4.0%であり、最も好ましくは3.0%である。また、同様の効果を得るためにSnO成分及びCeO成分の各々の含有量の上限は2.5%が好ましく、2.0%がより好ましく、1.5%が最も好ましい。
さらに、前記の特徴を維持しつつ、より高い清澄効果を得るためには、SnO成分及びCeO成分の両成分を含有することがより好ましい。
【0026】
但し、本発明の結晶化ガラスの組成においては、ダイレクトプレス法(溶融ガラスを上下型で直接プレスする方法)を用いて情報記録媒体用基板を作製する場合には、プレス時の衝撃等が原因となって、リボイル(清澄後のガラスから再度泡が発生してしまう現象)が発生しやすくなり清澄効果が得られにくいので、ダイレクトプレス用に本発明の結晶化ガラスを用いる場合はSnO成分またはCeO成分のどちらか一方のみを含有させることが好ましい。
【0027】
S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素も情報記録媒体用基板用途として要求される物性を維持しつつ、清澄効果を得ることができ、上記元素のグループ単独で、または他の清澄剤成分と共に含有することができる。これらの元素は硫酸塩、塩化物、およびフッ化物を原料に用いることで含有させることができるが、これらの原料は溶融する際に一部が揮発するため、原料における含有量と結晶化ガラス中の含有量とは相違する。フッ化物成分は、例えばMgFやCaFとして、硫酸塩成分は、例えばMgSOやBaSOとして、塩化物成分は、例えばBaClやSnCl等として原料に含有させることができる。
これらの成分による清澄効果を得る場合には、これらの成分以外の酸化物基準で表わされた原料の質量の合計に対し、Fに換算したフッ化物成分、SOに換算した硫酸塩成分、Clに換算した塩化物成分の1種以上の合計の質量の割合の下限が0.01質量%であることが好ましく、0.03質量%であることがより好ましく、0.05質量%であることが最も好ましい。但し、硫酸塩、塩化物、およびフッ化物以外の他の清澄剤を含有させる場合には前記合計の質量の割合は0%でも良い。
また、同様の効果を得るために、これらの成分以外の酸化物基準で表わされた原料の質量の合計に対し、Fに換算したフッ化物成分、SOに換算した硫酸塩成分、Clに換算した塩化物成分各々の含有量の下限は0.01質量%がより好ましく、0.02質量%が最も好ましい。但し、S、Cl、およびF成分以外の清澄剤を含有させる場合は上記成分の各々の含有量は0%でも良い。
また、所望の結晶相を析出し、情報記録媒体用基板用途として要求される物性を維持しつつ清澄効果を得るためには、これらの成分以外の酸化物基準で表わされた原料の質量の合計に対し、Fに換算したフッ化物成分、SOに換算した硫酸塩成分、Clに換算した塩化物成分の1種以上の合計の質量の割合の上限としては1.5質量%で十分であり、1.2質量%がより好ましく、1.0質量%が最も好ましい。
また、同様の効果を得つつ、リボイルを抑制するために、これらの成分以外の酸化物基準で表わされた原料の質量の合計に対し、Fに換算したフッ化物成分、SOに換算した硫酸塩成分、Clに換算した塩化物成分各々の含有量の上限は1.5質量%が好ましく、1.0質量%が好ましく、特にダイレクトプレス時のリボイル抑制の点からは実質的に含まないことが最も好ましい。ここで実質的に含まないとは、人為的に含有させないことを言い、不純物としてごく微量含有することを許容するものである。
【0028】
Mn、W、Ta、BiおよびNbから選ばれる1種以上の元素も、情報記録媒体用基板用途として要求される物性を維持しつつ、清澄効果を得ることができ、上記元素のグループ単独で、または他の清澄剤成分と共に含有することができる。清澄効果を得る場合には、酸化物基準で、MnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分の1種以上の合計の含有量の下限が0.01%であることが好ましく、0.05%であることがより好ましく、0.1%であることが最も好ましい。但し、Mn、W、Ta、BiおよびNb以外の清澄剤を含有させる場合には合計量は0%でも良い。
また、所望の結晶相を析出し、情報記録媒体用基板用途として要求される物性を維持しつつ清澄効果を得るためには、これらの成分の合計の含有量の上限としては2.5%で十分であり、2%がより好ましく、特にダイレクトプレス時のリボイル抑制の点からは実質的に含まないことが最も好ましい。
【0029】
As成分やSb成分は清澄剤として作用するが、環境上有害となりうる成分であり、その使用は極力少なくするべきである。本発明の結晶化ガラスはAs成分やSb成分を含有しなくても清澄効果を得る事ができるため、環境への影響を軽減するためにAs成分やSb成分は各々0.1%未満であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0030】
SiO成分は、原ガラスの熱処理により主結晶相として前記結晶を析出する必須な成分であるが、その量が60%未満では、得られた結晶化ガラスの析出結晶が不安定で組織が肥大化しやすく、その結果機械的強度が低下し、研磨して得られる表面租度も大きくなりやすいので、含有量の下限は60%であることが好ましく、62%がより好ましく、64%が最も好ましい。また78%を超えると溶解、成形性が困難になり易く、その結果均質性が低下しやすくなるので、含有量の上限は78%とすることが好ましく、77%がより好ましく、76%が最も好ましい。
【0031】
LiO成分は、前記結晶相を構成する成分であり、必須で含有される。ガラスの低粘性化にも寄与する重要な成分であるが、その量が5%未満ではその効果が充分に得られにくいので、含有量の下限5%とすることが好ましく、5.5%がより好ましく、6%が最も好ましい。また12%を超えると、化学的耐久性の悪化が顕著になるため、含有量の上限は12%とすることが好ましく、11%がより好ましく、10.5%が最も好ましい。
【0032】
O成分は結晶粒子の微細化、ガラスの低粘性化のために有効であるので任意成分として添加することができる。この成分が3%を超えるとガラス化し難くなり、所望の結晶相を得難くなるので、含有量の上限を3%とすることが好ましい。より好ましい上限値は2.5%であり、さらに好ましい上限値は2%である。
【0033】
NaO成分は低粘性化のために有効であるので任意成分として添加することができる。この成分が3%を超えるとガラス化し難くなり、所望の結晶相を得難くなるので、含有量の上限を3%とすることが好ましい。より好ましい上限値は2.5%であり、さらに好ましい上限値は2%である。
【0034】
CsO成分は低粘性化のために有効であるので任意成分として添加することができる。この成分が3%を超えるとガラス化し難くなり、所望の結晶相を得難くなるので、含有量の上限を3%とすることが好ましい。より好ましい上限値は2.5%であり、さらに好ましい上限値は2%である。
【0035】
情報記録媒体基板用途としてアルカリ成分溶出量は出来るだけ少なくすることが好ましい。垂直磁気記録方式等に代表される次世代の情報記録媒体用途として使用しうるアルカリ成分の溶出量とするために、必須で含有されるLiO成分と、必要に応じて含有されるNaO成分、KO成分、CsO成分との1種以上の合計量を14%以下とすることが好ましく、13%以下とすることがより好ましく、12%以下とすることが最も好ましい。また、ガラスの粘性を下げやすくするために、LiO成分と、必要に応じて含有されるNaO成分、KO成分、CsO成分との1種以上の合計量を5%以上とすることが好ましく、6%以上とすることがより好ましく、7%以上とすることが最も好ましい。
【0036】
Al成分は、SiO同様前記結晶相を構成する成分であるとともにガラスの安定化、化学的耐久性向上にも寄与する重要な成分であるが、その量が4%未満ではガラス化が困難となりやすいので、含有量の下限は4%であることが好ましく、4.5%がより好ましく、5%が最も好ましい。また10%を超えるとかえって溶解、成形性、耐失透性が悪化し、その結果均質性が低下しやすくなるので、含有量の上限は、10%とすることが好ましく、9.5%がより好ましく、9%が最も好ましい。
【0037】
成分は核形成剤として添加することができ、低粘性化に寄与するとともにSiOとの共存により原ガラスの溶融、清澄性を向上するので、これらの効果を確実かつ十分に得るためには、含有量の下限は1.5%とすることが好ましく、1.6%がより好ましく、1.7%が最も好ましい。しかし、この成分の添加量が3%を超えるとガラス化し難くなり、失透が発生しやすくなるので、含有量の上限は3%とすることが好ましく、2.9%がより好ましく、2.8%が最も好ましい。
【0038】
ZrO成分は核形成剤として添加することができる。この成分は、ガラスの化学的耐久性の向上、物理的特性の向上に大きく寄与し、微細な結晶を得るためにも有効であるので、この効果を容易に得るには1%以上添加することが好ましく、1.2%以上添加することがより好ましく、1.4%以上添加することが最も好ましい。しかし、この成分の添加量が10%を超えると溶け残りやZrSiO(ジルコン)が発生しやすくなるので、含有量の上限は10%とすることが好ましく、8%がより好ましく、6%が最も好ましい。
【0039】
BaO成分は所望の結晶相を維持したままガラスの低粘性化を実現可能であるので任意に含有できる成分である。しかし、溶融状態のガラスの低粘性化と所望の結晶を析出させ、析出結晶の微細化のためにBaO成分は2.5%以上含有することがより好ましく、3.5%以上含有することが最も好ましい。また、BaO成分の含有量の上限は比重を適切な値とするために15%以下が好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下が最も好ましい。
【0040】
SrO成分はBaO成分と同様所望の結晶相を維持したままガラスの低粘性化を実現可能であるので任意に含有できる成分である。しかし、溶融状態のガラスの低粘性化と所望の結晶を析出させ、析出結晶の微細化のためにSrO成分は2.5%以上含有することがより好ましく、3.5%以上含有することが最も好ましい。
また、SrO成分の含有量の上限は比重を適切な値とするために15%以下が好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下が最も好ましい。
【0041】
BaO成分とSrO成分は化学的耐久性の悪化を引き起こすアルカリ成分の含有量を低減させる場合に、アルカリ成分に代わり、所望の結晶相を得つつ、工業的に求められるプレス成形性を満足するように溶融状態のガラスを低粘性化させるため非常に有効な成分である。この効果を十分に得たい場合、SrO成分およびBaO成分から選ばれる1種以上の合計量が3.5%を超えることが好ましく、3.6%以上がより好ましく、3.7%以上が最も好ましい。
また、SrO成分およびBaO成分はガラス成分中に多量に含有させても析出結晶の肥大化や結晶相への固溶が発生しにくい成分である反面、比重が増加する傾向にあるため、比重を適切な値とし、前記知見による効果を得るためには、SrO成分およびBaO成分から選ばれる1種以上の合計量が15%以下であることが好ましく、14%以下がより好ましく、13%以下が最も好ましい。
【0042】
MgO,CaO、ZnO成分は、ガラスの低粘性化、析出結晶相の微細化に有効であるので任意成分として添加することができる。しかし、MgOが2%、CaOが2%、またはZnOが3%を超えると、析出結晶が不安定で組織が肥大化しやすくなり、所望の結晶相が得られ難くなる。また原ガラスが失透しやすくなる。したがって、これらの成分の含有量の上限は、MgOが2%、CaOが2%、ZnOが3%であり、より好ましい上限値はMgOが1.6%、CaOが1.6%、ZnOが2.4%であり、さらに好ましい上限値はMgOが1.2%、CaOが1.2%、ZnOが1.8%である。
【0043】
Gd、La、Y、Ga成分はガラスの低粘性化、ヤング率向上による機械的特性の向上、結晶化処理温度の上昇すなわち耐熱性向上のために有効であるので、任意成分として添加することができるが、その量はこれら成分のうち1種以上の合計量が15%までで充分であり、合計量が15%を超えるとガラス化及び結晶化がし難くなる。したがって、これら成分の合計量の上限は15%とすることが好ましく、10%がより好ましく、8%が最も好ましい。
【0044】
成分はガラスの低粘性化に寄与し、溶解、成形性を向上するので、結晶化ガラスの特性を損なわない範囲で任意成分として添加することができる。しかしこの成分が5%以上だと原ガラスが分相しやすくなり、所望の結晶相を得難くなるので、含有量の上限を5%とすることが好ましい。より好ましい上限値は4%であり、さらに好ましい上限値は3%である。
【0045】
TiO成分は核形成剤として任意に添加することができる。しかし、この成分の添加量が5%を超えると所望の結晶相を得にくくなるとともに、結晶化後にTiO相が結晶相として析出する場合もあるので、含有量の上限は5%とすることが好ましく、4%がより好ましく、3%が最も好ましい。
【0046】
次に、本発明の結晶化ガラスの結晶相の平均粒子径についてであるが、前記平均結晶粒子径は、基板に加工し、表面を研磨した後の表面特性に影響を及ぼす。先に述べたように、情報記録媒体の面記録密度向上に伴い、ヘッドの浮上高さが最近では15nm以下となっており、今後は10nm以下からニアコンタクトレコーディング方式或いは完全に接触するコンタクトレコーディング方式の方向に進みつつあり、これに対応するには、ディスク基板等の基板表面の平滑性は従来品よりも良好でなければならない。
従来レベルの平滑性では、磁気記録媒体への高密度な入出力を行おうとしても、ヘッドと媒体間の距離が大きくならざるをえないため、磁気信号の入出力を行うことができない。またこの距離を小さくしようとすると、媒体(ディスク基板)の突起とヘッドが衝突し、ヘッド破損や媒体破損を引き起こしてしまう。したがって、この著しく低い浮上高さもしくは接触状態でもヘッド破損やディスク基板破損を引き起こさず、且つヘッドと媒体の吸着を生じない様にするため、表面粗度Ra(算術平均粗さ)の上限は2Åである。
そして、このような平滑な研磨面を得やすくするためには、結晶化ガラスの結晶粒子の平均粒子径の上限が100nm以下であることが好ましく、より好ましくは70nm以下、最も好ましくは50nm以下である。また、機械的強度および耐熱性を良好なものとするために、結晶化ガラスの結晶粒子の平均粒子径の下限は1nmが好ましい。
【0047】
本発明の結晶化前のガラスを情報記録媒体用基板用途として使用する場合には、研磨後の表面粗度Raは1Å以下の値を実現することができ、より好ましくは0.5Å以下の値を実現することができる。
【0048】
本発明の結晶化ガラスは微細な結晶粒子を均一に析出させることにより、機械的強度の向上を図ることができる。特に微細なクラックの成長を析出結晶粒子が防止するため、研磨加工時におけるチッピング等による微細な欠けを著しく低減できる。
【0049】
また、このような微細な結晶を均一に析出させ、かつ、表面に圧縮応力層を形成させることにより結晶化ガラスの機械的強度、とりわけリング曲げ強度を飛躍的に向上させることが可能となる。これら観点からも結晶粒子の平均粒子径の範囲は上記の範囲が好ましい。
【0050】
このため、例えば、本発明の結晶化ガラスを磁気記録媒体用ディスク基板等の基板とした場合、面記録密度を大きくすることができ、記録密度の向上するために基板自体を高回転化しても、撓みや変形が発生することがなく、この回転による振動が低減され、振動や撓みによるデータ読み取りのエラー数(TMR)を低下させることになる。その上、耐衝撃特性に優れているため、特にモバイル用途等の情報記録媒体としてヘッドクラッシュ、基板の破壊が発生しにくく、その結果、優れた安定動作性を示すこととなる。
【0051】
ここで、結晶粒子の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)像により測定した結晶像(n=100)の面積基準の粒子径の中央累積値(「メジアン径」d50)をいう。粒子径は得られた結晶像を平行な2直線で挟んだ時に2直線間の距離が最大となる値である。また、リング曲げ強度とは、直径が65mmで厚み0.635mmの薄い円板状試料を作成し、円形の支持リングと荷重リングにより該円板状試料の強度を測定する同心円曲げ法で測定した曲げ強度をいう。
【0052】
次に、ヤング率および比重について述べる。前記のように、記録密度およびデータ転送速度を向上するために、情報記録媒体ディスク基板の高速回転化傾向が進行しているが、この傾向に対応するには、基板材は高速回転時の撓みによるディスク振動を防止すべく、高剛性、低比重でなければならない。また、ヘッドの接触やリムーバブル記録装置のような携帯型の記録装置に用いた場合においては、それに十分耐え得る機械的強度、高ヤング率、表面硬度を有する事が好ましく、具体的には、ヤング率で85GPa以上であることが好ましく、88GPa以上であることがより好ましく、90GPa以上であることが最も好ましい。
【0053】
ところが、単に高剛性であっても比重が大きければ、高速回転時にその重量が大きいことによって撓みが生じ、振動を発生する。逆に低比重でも剛性が小さければ、同様に振動が発生することになる。また比重を低くし過ぎると、結果として所望の機械的強度を得ることが難しくなる。したがって、高剛性でありながら低比重という一見相反する特性のバランスを取らなければならず、その好ましい範囲はヤング率[GPa]/比重で32以上であり、より好ましい範囲は33以上であり、最も好ましい範囲は34以上である。また、比重についても、例え高剛性であっても2.7以下である必要があるが、2.2を下回ると、所望の剛性を有する基板は実質上得難い。
【0054】
また、平均線膨張係数についてであるが、ハードディスクの各構成部品との平均線膨張係数のマッチングを良好とするため、25〜100℃の範囲において、平均線膨張係数の下限が50[10−7−1]以上であることが好ましく、52[10−7−1]以上であることがより好ましく、55[10−7−1]以上であることが最も好ましい。同様の理由により、平均線膨張係数の上限が120[10−7−1]以下であるのが好ましく、110[10−7−1]以下であることがより好ましく、100[10−7−1]以下であることが最も好ましい。
本発明の結晶化ガラスは上記の平均線膨張係数を有するので、熱的な寸法安定性が求められる各種精密部材等の用途としても好ましく使用することができる。
【0055】
本発明の結晶化ガラスは表面に圧縮応力層を設けることにより、圧縮応力層を設ける前の結晶化ガラスが有する機械的強度をより向上させる効果を得られる。
【0056】
圧縮応力層の形成方法としては、例えば圧縮応力層形成前の結晶化ガラスの表面層に存在するアルカリ成分よりもイオン半径の大きなアルカリ成分とで交換反応させることによる化学強化法がある。また、結晶化ガラスを加熱し、その後急冷する熱強化法、結晶化ガラスの表面層にイオンを注入するイオン注入法がある。
【0057】
化学強化法としては、例えばカリウム又はナトリウムを含有する塩、例えば硝酸カリウム(KNO)、硝酸ナトリウム(NaNO)またはその複合塩の溶融塩に300〜600℃の温度にて0.5〜12時間浸漬する。これにより、結晶化ガラス中の残存ガラス成分に存在するリチウム成分(Liイオン)がLiよりもイオン半径の大きなアルカリ成分であるナトリウム成分(Naイオン)もしくはカリウム成分(Kイオン)との交換反応、または、残存ガラス成分に存在するナトリウム成分(Naイオン)よりもイオン半径の大きなアルカリ成分であるカリウム成分との交換反応が進行し、これにより結晶化ガラスの容積増加が起こり結晶化ガラス表面層中に圧縮応力が発生し、その結果、衝撃特性の指標であるリング曲げ強度が増加する。
【0058】
熱強化法については特に限定されないが、例えば結晶化ガラスを、300℃〜600℃に加熱した後に水冷および/または空冷等の急速冷却を実施することにより、ガラスの表面と内部の温度差によって生じる圧縮応力層も形成することができる。尚、上記化学処理法と組み合わせることにより圧縮応力層をより効果的に形成することができる。
【0059】
上記圧縮層の形成方法は、結晶化前のガラスを情報記録媒体用基板用途として使用する場合にも同様に適用可能である。
【0060】
本発明の結晶化ガラスを製造するには、上記の各成の原料を含有するガラス原料を溶融・急冷して原ガラスを作成し、該原ガラスを500℃〜650℃で熱処理し核形成工程を行い、この核形成工程の後に、600℃〜850℃の範囲で核形成工程より高い温度で熱処理することにより結晶成長工程を行う。
【0061】
本発明の結晶化前のガラスを情報記録媒体用基板用途として使用する場合には、材料の除歪及び機械的特性の向上を目的として、熱処理によるガラス中の分相形成を行っても良い。ガラス中に分相を形成するためには550℃〜600℃の範囲で3〜12時間の範囲でガラスを熱処理することが好ましい。
【0062】
また、情報記録媒体用基板を作製するためには、上記の条件で作製した溶融ガラスを下型に滴下し、上下型でプレスすることによってディスク状に成形し、必要に応じ形状加工を施し、公知の方法でラッピング加工、研磨加工を施せば良い。
【実施例】
【0063】
次に本発明の好適な実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
表1〜表7に実施例1〜34のガラス組成、溶解後のアモルファスガラスの1cm3当りの残存泡数、比重、ヤング率、ヤング率/比重、25℃〜100℃における平均線膨張係数(α)、結晶化熱処理最高温度、平均結晶粒子径および主結晶相を示す。なお、各実施例の組成は質量%で表した。ガラス原料に硫酸塩、塩化物、フッ化物を添加した場合は、これらの成分以外の酸化物基準で表わされた原料の質量の合計に対し、Fに換算したフッ化物成分、SOに換算した硫酸塩成分、Clに換算した塩化物成分の1種以上の合計の質量%で表わした。
また、平均線膨張係数はJOGIS(日本光学硝子工業会規格)16−2003「光学ガラスの常温付近の平均線膨張係数の測定方法」に則り、温度範囲を25℃から100℃に換えて測定した値をいう。
比重はアルキメデス法、ヤング率は超音波法を用いて測定した。
結晶相の同定はX線回折装置(パナリティカル社製、商品名:X’pert−MPD)で得たX線回折図形から求めた。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】














【0067】
【表3】








【0068】
【表4】






【0069】
【表5】

【0070】
【表6】




【0071】
【表7】















【0072】
本発明の上記実施例のガラスは、いずれも酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の原料を混合し、実施例11〜20、23〜30はさらに硫酸塩、塩化物、フッ化物を原料に添加し、これを通常の溶解装置を用いて約1400〜1500℃の温度で溶解し攪拌均質化した後、ディスク状に成形して、冷却しガラス成形体を得た。その後これを500〜650℃で約1〜12時間熱処理して結晶核形成後、600〜850℃の範囲内で結晶核形成温度よりも高い温度で約1〜12時間熱処理することにより結晶成長工程を行い、所望の結晶化ガラスを得た。次いで上記結晶化ガラスを平均粒径5〜30μmの砥粒にて約10分〜60分ラッピングし、内外径加工の後平均粒径0.5μm〜2μmの酸化セリウムにて約30分〜60分間研磨し、情報記録媒体用の基板を得た。この時の基板の表面粗度Ra(算術平均粗さ)はすべて2Å以下であった。なお、表面粗度Ra(算術平均粗さ)は原子間力顕微鏡(AFM)にて測定した。
【0073】
表1〜7に示されるとおり、本発明の結晶化ガラスの実施例は、結晶粒子径が90nm以下であり、その多くは50nm以下と微細であった。また、熱膨張特性も25℃〜100℃における平均線膨張係数が60〜85(10−7−1)の範囲であった。また、ガラス1cm中に含まれる残存泡数が1〜16個であり、アンチモン成分、砒素成分を多量に使用した場合の結果と遜色ない清澄特性を示した。また、実施例31〜34に関しては、ダイレクトプレス法を使用した際のプレス時のリボイルの発生が見られなかった。
【0074】
(比較例)
酸化物基準の質量%において、清澄剤を用いず、SiO成分を75.5%とした以外は実施例1と同様の組成で、同様の条件で結晶化ガラスを作製した。ガラス1cm中に含まれる残存泡数を観察したところ、残存泡数は70個であった。
【0075】
(実施例35)
また、実施例1の2.5インチHDD用研磨基板(65φ×0.635mmt)を400℃の硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩(KNO:NaNO=1:3)に0.5時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度が圧縮応力層形成前(500MPa)の3倍に向上していることが確認された。
【0076】
(実施例36)
また、実施例10の2.5インチHDD用研磨基板(65φ×0.635mmt)を400℃の硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩(KNO:NaNO=1:3)に0.5時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度が圧縮応力層形成前(500MPa)の5倍に向上していることが確認された。
【0077】
(実施例37)
また、実施例1の2.5インチHDD用研磨基板(65φ×0.635mmt)を300℃〜600℃に加熱した後に空冷法で急速冷却を実施し、表面に圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度が向上していることが確認された。
【0078】
(実施例38)
また、実施例32の2.5インチHDD用研磨基板(65φ×0.635mmt)を400℃の硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩(KNO:NaNO=3:1)に0.5時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度が圧縮応力層形成前(500MPa)の8倍に向上していることが確認された。また、0.16時間浸漬した場合のリング曲げ強度は、圧縮応力層形成前の3倍に向上しており、0.32時間浸漬した場合のリング曲げ強度は、圧縮応力層形成前の5倍に向上していることが確認された。
【0079】
(実施例39)
また、上記の実施例により得られた基板に、DCスパッタ法により、クロム合金下地層、コバルト合金磁性層を成膜し、さらにダイヤモンドライクカーボン層を形成し、次いでパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を塗布して、情報磁気記録媒体を得た。
【0080】
(実施例40)
実施例32の結晶化前のガラスを600℃、6時間で熱処理し、65φ×0.635mmtとなるように加工を施し内孔を有する円板状の基板を得た。TEM(透過電子顕微鏡)で観察したところ、分相状態となっていることが観察された。加工条件は基板表面を平均粒径5〜30μmの砥粒にて約10分〜60分のラッピングし、内外径加工の後、基板表面を平均粒径0.5μm〜2μmの酸化セリウムにて約30分〜60分間研磨した。研磨後の時の表面粗さRaは0.45Åと良好であった。
また、得られた基板に400℃の硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩(KNO:NaNO=3:1)に0.5時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度が2000MPaであり、結晶化ガラスを基板とする場合に比べ若干劣るが、情報記録媒体用基板として十分な強度を有していた。
【0081】
(実施例41)
実施例32の結晶化前のガラスを490℃、2時間で熱処理し、65φ×0.635mmtとなるように加工を施し内孔を有する円板状の基板を得た。加工条件は基板表面を平均粒径5〜30μmの砥粒にて約10分〜60分のラッピングし、内外径加工の後、基板表面を平均粒径0.5μm〜2μmの酸化セリウムにて約30分〜60分間研磨した。研磨後の時の表面粗さRaは0.48Åと良好であった。
また、得られた基板に400℃の硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩(KNO:NaNO=3:1)に0.5時間浸漬し、表面に圧縮応力層を形成した。この基板はリング曲げ強度が1800MPaであり、結晶化ガラスを基板とする場合に比べ若干劣るが、情報記録媒体用基板として十分な強度を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、各種情報磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体用基板の中でも、特に垂直磁気記録媒体やパターンドメディア用媒体、ディスクリートトラック用媒体等に用いられる結晶化ガラスにおいて、清澄剤として従来含有されていた有害物質である砒素、アンチモンを実質的に非含有またはアンチモン成分が0.1%未満の含有量としながらも、従来の製造方法と比較して同等の清澄効果を得ることができる。
また、量産レベルでのプレス成形性に対応しうる低粘度特性、磁気ヘッドの低浮上化に対応可能な極めて平滑な基板表面を有し、高速回転に対応した高ヤング率と低比重特性を備え、優れた機械的特性も兼ね揃えた結晶化ガラスを提供するものである。これにより、情報記録媒体用基板、とりわけ、HDD向け垂直磁気記録媒体用基板として有用である。
さらに、本発明の結晶化ガラスは清澄剤として砒素、アンチモンを実質的に非含有またはアンチモン成分が0.1%未満の含有量なので、直接通電による電気溶解において一般的に使用されるモリブデン電極の浸食を低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準において、SiO成分、LiO成分、Al成分を含有し、
結晶相として二ケイ酸リチウムを含有し、
Sn、Ce、Mn、W、Ta、Bi、Nb、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする結晶化ガラス。
【請求項2】
結晶相としてモノケイ酸リチウム、α−石英、α−石英固溶体、β−石英固溶体の中から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の結晶化ガラス。
【請求項3】
Sn、Ceから選ばれる1種以上の元素を含有し、
それらの含有量は酸化物基準の質量%で、
SnO成分:0〜2.5%、
CeO成分:0〜2.5%、
但し、SnO成分とCeO成分の合計量 0.01〜5.0%、
である請求項1または2に記載の結晶化ガラス。
【請求項4】
原料として、硫酸塩、塩化物、およびフッ化物から選ばれる1種以上を用いることによって、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有し、
前記原料における前記硫酸塩、塩化物、及びフッ化物の含有量は、
硫酸塩、塩化物、およびフッ化物以外のガラス原料の酸化物基準の合計質量に対して、
硫酸塩:SO換算で0〜1.5質量%、
塩化物:Cl2換算で0〜1.5質量%、
フッ化物:F換算で0〜1.5質量%、
但し、SO+Cl2+F:0.01〜1.5質量%
である請求項1〜3のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項5】
Mn、W、Ta、BiおよびNbから選ばれる1種以上の元素を含有し、それらの含有量は酸化物基準の質量%で、MnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分から選ばれる1種以上の合計の含有量が0.01〜2.5%である請求項1〜4のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項6】
酸化物基準の質量%で
SiO:60〜78%、および
LiO:5〜12%、および
Al:4〜10%、および
:1.5〜3.0%、および
ZrO:1〜10%
の各成分を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項7】
酸化物基準の質量%で
BaO:0〜15%、および/または
SrO:0〜15%、および/または
MgO:0〜2%、および/または
CaO:0〜2%、および/または
ZnO:0〜3%、および/または
O:0〜3%、および/または
NaO:0〜3%,および/または
CsO:0〜3%,および/または
Gd成分、La成分、Y成分、Ga成分から選ばれる1種以上の合計の含有量:0〜15%、および/または
Sb成分:0.1%未満
の各成分を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項8】
酸化物基準の質量%で、LiO成分、NaO成分、KO成分、およびCsO成分の1種以上の合計量が5%〜14%である請求項1〜7のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項9】
As成分およびSb成分を実質的に含有しない請求項1〜8のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項10】
25℃〜100℃の温度範囲における平均線膨張係数が50〜120[10−7−1]であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項11】
前記結晶相の平均粒子径が100nm以下である請求項1〜10のいずれかに記載の結晶化ガラス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の結晶化ガラスを用いた情報記録媒体用基板。
【請求項13】
ヤング率が85GPa以上であることを特徴とする、請求項12に記載の情報記録媒体用基板。
【請求項14】
請求項12または13に記載の基板の表面に圧縮応力層を設けた情報記録媒体用基板。
【請求項15】
前記圧縮応力層は表面層に存在するアルカリ成分よりもイオン半径の大きなアルカリ成分で置換することにより形成されてなる請求項14に記載の情報記録媒体用基板。
【請求項16】
前記圧縮応力層は基板の加熱、その後急冷によって形成されたことを特徴とする請求項14または15に記載の情報記録媒体用基板。
【請求項17】
表面粗度Ra(算術平均粗さ)が2Å以下であることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の情報記録媒体用基板。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれかに記載の情報記録媒体用基板を用いた情報記録媒体。
【請求項19】
原料を溶融して溶融ガラスとし、前記溶融ガラス成形した後、熱処理により結晶化ガラスを得る結晶化ガラスの製造方法において、
前記原料の組成は酸化物基準の質量%で、
SiO:60〜78%、および
LiO:5〜12%、および
Al:4〜10%、および
:1.5〜3.0%、および
ZrO2:1〜10%
SnO:0〜2.5%、
CeO:0〜2.5%、
MnO+WO+Ta+Bi+Nb:0〜2.5%
の各成分を含有し、さらに上記原料の合計質量に対して、
硫酸塩:SO換算で0〜2.5質量%、
塩化物:Cl2換算で0〜2.5質量%、
フッ化物:F換算で0〜2.5質量%
を含有する結晶化ガラスの製造方法。
【請求項20】
前記原料の組成は酸化物基準でSnO成分、CeO成分から選ばれる1種以上を含有し、酸化物基準の質量%で、
SnO+CeO:0.01〜5.0%
である請求項19に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項21】
前記原料の組成は硫酸塩、塩化物、フッ化物から選ばれる1種以上を含有し、
硫酸塩をSOと、塩化物をCl2と、フッ化物をFとそれぞれ換算した場合、
硫酸塩、塩化物、フッ化物以外の原料の合計質量に対し、
SO+Cl2+F:0.01〜1.5質量%である請求項19または20に記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項22】
前記原料の組成は酸化物基準でMnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分から選ばれる1種以上を含有し、酸化物基準の質量%で、
MnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分から選ばれる1種以上の合計の含有量が0.01〜2.5%である請求項19〜21のいずれかに記載の結晶化ガラスの製造方法。
【請求項23】
酸化物基準において、SiO成分、LiO成分、Al成分を含有し、
Sn、Ce、Mn、W、Ta、Bi、Nb、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とするガラス。
【請求項24】
Sn、Ceから選ばれる1種以上の元素を含有し、
それらの含有量は酸化物基準の質量%で、
SnO成分:0〜2.5%、
CeO成分:0〜2.5%、
但し、SnO成分とCeO成分の合計量 0.01〜5.0%、
である請求項23に記載のガラス。
【請求項25】
原料として、硫酸塩、塩化物、およびフッ化物から選ばれる1種以上を用いることによって、S、Cl、およびFから選ばれる1種以上の元素を含有し、
前記原料における前記硫酸塩、塩化物、及びフッ化物の含有量は、
硫酸塩、塩化物、およびフッ化物以外のガラス原料の酸化物基準の合計質量に対して、
硫酸塩:SO換算で0〜1.5質量%、
塩化物:Cl2換算で0〜1.5質量%、
フッ化物:F換算で0〜1.5質量%、
但し、SO+Cl2+F:0.01〜1.5質量%
である請求項23または24のいずれかに記載のガラス。
【請求項26】
Mn、W、Ta、BiおよびNbから選ばれる1種以上の元素を含有し、それらの含有量は酸化物基準の質量%で、MnO成分、WO成分、Ta成分、Bi成分およびNb成分から選ばれる1種以上の合計の含有量が0.01〜2.5%である請求項23〜25のいずれかに記載のガラス。
【請求項27】
酸化物基準の質量%で
SiO:60〜78%、および
LiO:5〜12%、および
Al:4〜10%、および
:1.5〜3.0%、および
ZrO:1〜10%
の各成分を含有する請求項23〜26のいずれかに記載のガラス。
【請求項28】
酸化物基準の質量%で
BaO:0〜15%、および/または
SrO:0〜15%、および/または
MgO:0〜2%、および/または
CaO:0〜2%、および/または
ZnO:0〜3%、および/または
O:0〜3%、および/または
NaO:0〜3%,および/または
CsO:0〜3%,および/または
Gd成分、La成分、Y成分、Ga成分から選ばれる1種以上の合計の含有量:0〜15%、および/または
Sb成分:0.1%未満
の各成分を含有する請求項23〜27のいずれかに記載のガラス。
【請求項29】
酸化物基準の質量%で、LiO成分、NaO成分、KO成分、およびCsO成分の1種以上の合計量が5%〜14%である請求項23〜28のいずれかに記載のガラス。
【請求項30】
As成分およびSb成分を実質的に含有しない請求項23〜28のいずれかに記載のガラス。
【請求項31】
請求項23〜30のいずれかに記載のガラスを用いた情報記録媒体用基板。
【請求項32】
請求項23〜30のいずれかに記載のガラスを熱処理し分相させたものを用いた情報記録媒体用基板。
【請求項33】
請求項31または32に記載の基板の表面に圧縮応力層を設けた情報記録媒体用基板。
【請求項34】
前記圧縮応力層は表面層に存在するアルカリ成分よりもイオン半径の大きなアルカリ成分で置換することにより形成されてなる請求項33に記載の情報記録媒体用基板。
【請求項35】
前記圧縮応力層は基板の加熱、その後急冷によって形成されたことを特徴とする請求項33または34のいずれかに記載の情報記録媒体用基板。
【請求項36】
表面粗度Ra(算術平均粗さ)が1Å以下であることを特徴とする請求項31〜35のいずれかに記載の情報記録媒体用基板。
【請求項37】
請求項31〜36のいずれかに記載の情報記録媒体用基板を用いた情報記録媒体。

【公開番号】特開2010−1201(P2010−1201A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186878(P2008−186878)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】