説明

結晶成長方法およびその装置

【課題】結晶成長過程における組成変化を防止し、高品質かつ均一性の高い単結晶を製造する方法を提供する。
【解決手段】種子結晶27を浸して引き上げながら結晶29を育成する結晶成長装置において、原料溶液28の表面に析出した浮遊結晶を検出するための可視光を照射する第1レーザと、浮遊結晶を溶融するための加熱用のレーザ光を照射する第2レーザと、第1レーザからの可視光を、第2レーザからのレーザ光の光軸上に照射する手段32と、可視光が浮遊結晶に照射するように、第1および第2レーザのレーザ照射位置を調整する制御手段33とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長方法およびその装置に関し、より詳細には、TSSG法またはカイロポーラス法による結晶成長において、溶液表面に析出した浮遊結晶を消滅させ、均一な品質の単結晶を製造するための結晶成長方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化物バルク単結晶の結晶成長方法として、溶融した融液に種子結晶を浸して引き上げながら結晶を育成するチョクラルスキー法(CZ法)が知られている。また、原料中に溶媒を使用する溶液成長法の1種である溶液引き上げ(TSSG:Top-Seeded Solution-Growth)法、結晶の引き上げを行わずに溶液成長させるカイロポーラス法が知られている。TSSG法は、Si、GaAs、LiNbO3単結晶の結晶成長法として知られているCZ法と同様に、結晶の形状制御が可能であり、大型ウェハを作製するための結晶母材を得ることができる。その他に、固形原料を光学的に溶融し、溶融部分を移動させながら試料の精製、結晶の成長を行う浮遊帯域溶融(FZ:Floating Zone)法や、溶融した原料の融液または溶液をるつぼの中で固化させる、ブリッジマン法、温度勾配凝固法などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1に、従来のTSSG法による結晶成長装置を示す。結晶製造装置は、ヒータ4によって温度制御可能な縦型管状炉5を有し、縦型管状炉5内のるつぼ台2に原料溶液8を入れたるつぼ1を設置している。縦型管状炉5は、炉体ふた10により密閉され、内面に設置された均熱管3により、炉内の温度が一定に保たれるようになっている。このような構成において、引き上げ軸6の先端に取り付けられた種子結晶7を、溶融した原料溶液8に浸して、成長結晶9を育成する。
【0004】
成長温度の均一性を重視して、高品質単結晶を成長させるには、縦型管状炉5内、すなわち、るつぼ1と原料溶液8と成長結晶9とが位置する付近において、均一な温度分布が必要である。そこで上述したように、温度の均一性の高い抵抗加熱式の縦型管状炉5を構成している。また、引き上げ軸6には、酸化物や貴金属で形成された引き上げ軸を用いるのが、一般的である。
【0005】
原料は、素原料である酸化物や炭化物を所望の組成比となるよう秤量し、るつぼ1に充填する。溶媒として、結晶の構成成分である酸化物や炭化物を過剰に追加したり、結晶の構成成分と異なる酸化物や炭化物を追加して充填することもある。原料が投入されたるつぼ1を、縦型管状炉5内に設置されたるつぼ台2上に設置する。ヒータ4を加熱することで、原料を昇温溶解し、原料溶液8を準備する。種子結晶7が先端に取り付けられた引き上げ軸6を縦型管状炉5に導入し、原料溶液8に接触させ、結晶育成を開始する。
【0006】
種子結晶7を原料溶液8に接触させる際、すなわち種子付け過程では、原料溶液8の温度を調整し、種子結晶7が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸6を回転しながら引き上げると同時に、原料溶液8を、加熱量の調整により冷却して行く。この冷却により、原料溶液8は、過飽和状態となる。結晶成長に十分な過飽和状態が原料溶液8に実現すると、種子結晶7の先端に結晶が析出し始め、結晶成長が始まる。そして、引き続き原料溶液8を冷却することにより、種子付け、肩拡げ、定径部と順に成長過程が進行する。育成中は、その状態を形状センサもしくは重量センサを用いて検出し、成長が早い場合には昇温、成長が遅い場合には冷却を加えて、成長結晶9の直径制御を行う。また、引き上げ軸6を引き上げずに、成長結晶9を原料溶液8の中で成長させてもよい。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−107996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、結晶成長過程においては、結晶を成長させるために、炉内を冷却するので、原料溶液は、自然核が発生する確率が高い過飽和状態となる。従って、結晶が所望の大きさに成長する前に、原料溶解物表面に浮遊結晶が析出することがある。この浮遊結晶は、成長中の結晶に付着することにより、結晶の品質が悪化するという問題があった。図2に、第1の例を示す。図2(a)は、析出した浮遊結晶11aが成長結晶9の表面に付着した状態を示す。この場合、成長結晶9の成長過程の進行とともに、浮遊結晶の成長も進行する。この状態を放置すると、図2(b)に示すように、成長した浮遊結晶11bがるつぼ1の内面に接触し、成長結晶9の成長を妨げてしまう。
【0009】
図3に、第2の例を示す。図3(a)は、析出した浮遊結晶11aがるつぼ1の内面に付着した状態を示す。この場合、成長結晶9の成長過程の進行とともに、浮遊結晶の成長も進行する。この状態を放置すると、図3(b)に示すように、成長した浮遊結晶11bが成長結晶9の表面に接触し、成長結晶9の成長を妨げてしまう。
【0010】
図4に、第3の例を示す。図4(a)は、析出した浮遊結晶11aがるつぼ1の底面に沈降した状態を示す。この場合、成長結晶9の成長過程の進行とともに、浮遊結晶の成長も進行する。この状態を放置すると、図4(b)に示すように、成長した浮遊結晶11bが成長結晶9の底面に接触し、成長結晶9の成長を妨げてしまう。
【0011】
第1〜3の例において、るつぼ径に見合う大口径の成長結晶が得られないだけでなく、成長結晶9に浮遊結晶11が付着した場合、成長が進むにつれて成長結晶は多結晶化し、溶媒を結晶内に取り込む等の品質劣化が見られ、歩留まりが低下する。また、目的とする結晶が固溶体の材料である場合、原料溶液8の組成は、結晶の成長量に比例して変化するので、浮遊結晶11の成長と成長結晶9の成長とが同時に進行する。同じ体積の成長結晶9を成長させると、浮遊結晶11の成長がない場合と比較して、成長結晶9の組成の変化量は、浮遊結晶11の成長で消費された分だけ大きくなるという欠点があった。また、浮遊結晶が析出し、成長結晶9の成長を妨げる場合、種子結晶7とともに成長結晶9を再び溶解し、原料溶解物を再加熱後、次の結晶を育成しなければならない。従って、結晶の品質が悪化するだけでなく、結晶作製のために余計な手間と時間が必要となり歩留まりが低下していた。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、結晶成長過程における浮遊結晶の析出を防止し、高品質かつ均一性の高い単結晶を製造することができる結晶成長方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、炉内に設置されたるつぼ内の原料溶液に、種子結晶を浸して結晶を育成する結晶成長方法において、前記種子結晶を前記原料溶液に接触させると同時に、前記原料溶液を冷却し、結晶の成長過程において、前記原料溶液の表面に析出した浮遊結晶を、可視光レーザにより照射、検出し、前記可視光レーザの光軸上に、加熱用のレーザ光を照射することにより、前記浮遊結晶を溶融することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、炉内に設置されたるつぼ内の原料溶液に、種子結晶を浸して結晶を育成する結晶成長装置において、前記原料溶液の表面に析出した浮遊結晶を検出するための可視光を照射する第1レーザと、前記浮遊結晶を溶融するための加熱用のレーザ光を照射する第2レーザと、前記第1レーザからの前記可視光を、前記第2レーザからの前記レーザ光の光軸上に照射する手段と、前記可視光が浮遊結晶に照射するように、前記第1および第2レーザのレーザ照射位置を調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、結晶の成長過程において、析出した浮遊結晶を可視光レーザにより照射、検出し、可視光レーザの光軸上に、加熱用のレーザ光を照射することにより、浮遊結晶を溶融するので、るつぼ径に見合った大口径で、高品質かつ均一性の高い単結晶を製造することができ、歩留まりの向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、可視光レーザを浮遊結晶に照射することにより、浮遊結晶の存在する位置をレーザ照射位置として検出し、加熱用レーザを浮遊結晶に照射する。浮遊結晶を局所的に加熱して溶融することにより、析出した浮遊結晶を成長結晶の成長の妨げにならない段階で消滅させる。
【0017】
図5に、本発明の一実施形態にかかる結晶製造装置の構成を示す。結晶製造装置は、ヒータ24によって温度制御可能な縦型管状炉25を有し、縦型管状炉25内のるつぼ台22に原料溶液28を入れたるつぼ21を設置している。縦型管状炉25は、炉体ふた30により密閉され、内面に設置された均熱管23により、炉内の温度が一定に保たれるようになっている。縦型管状炉25内の均一な温度分布を実現するために、ヒータ24として、抵抗加熱式のヒータを用いる。このような構成において、引き上げ軸26の先端に取り付けられた種子結晶27を、溶融した原料溶液28に浸して、成長結晶29を育成する。また、結晶製造装置は、レーザ照射装置32と、これを駆動制御する駆動装置33とを備える。
【0018】
上述したように、種子付け過程では、原料溶液28の温度を調整し、種子結晶27が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸26を回転しながら、加熱量の調整により原料溶液28を冷却して行く。この冷却と、引き上げ軸26からの脱熱とにより、原料溶液28は、過飽和状態となり、種子結晶27の先端に結晶が析出し始め、結晶成長が始まる。なお、引き上げ軸26には、アルミナや白金で形成された引き上げ軸を用いるのが、一般的である。
【0019】
結晶成長過程において、炉体ふた30の監視窓31から、浮遊結晶の析出を監視する。浮遊結晶の析出を発見したら、レーザ照射装置32より可視光を照射する。駆動装置33を制御して、浮遊結晶に照射するように、レーザ照射位置を調整する。次に、加熱用レーザを浮遊結晶に照射して、浮遊結晶を溶融する。
【0020】
図6に、本発明の一実施形態にかかるレーザ照射装置の構成を示す。レーザ照射装置32は、浮遊結晶を溶融するための加熱用のCO2レーザ41と、レーザ照射位置を調整して、析出した浮遊結晶を可視光により照射するためのHe-Neレーザ42とを備えている。CO2レーザ41の光軸上には、ハーフミラー43を配置する。He-Neレーザ42からの可視光をミラー44とハーフミラー43とを介して、CO2レーザ41の光軸上に照射する。加熱用のレーザは、YAGレーザを用いることもできる。また、He-Neレーザの代わりに、他の可視光レーザを用いてもよい。レーザ照射位置の調整は、レーザ照射装置32を直接駆動してもよいし、レーザ照射装置32からの出力光を、ミラーを介して制御してもよい。
【0021】
結晶成長過程において析出した浮遊結晶は、1mm角以上に成長すると、目視で確認することができる。例えば、KTaxNb1-x3単結晶を成長させる場合、浮遊結晶がおよそ15〜20mm角に成長すると、原料溶液28に沈降するので、沈降する前に、レーザ照射装置32により溶融する。例えば、3mm角のKTaxNb1-x3結晶を溶融する場合、CO2レーザ41から波長10.6μm、出力20W、1秒の連続光を照射することにより浮遊結晶を溶融することができる。Nd:YAGレーザを用いる場合には、波長532nm、出力10W、30秒の連続光を照射することにより浮遊結晶を溶融することができる。
【0022】
このようにして浮遊結晶を溶融するので、浮遊結晶の成長により原料溶液28の組成が変化することはなく、成長結晶29の成長を妨げることもない。その結果、結晶品質の悪化を回避することができ、また、結晶作製時間の短縮、歩留まりの向上を図ることができる。
【0023】
本発明の実施例を、以下に説明する。本実施例は、一例であり、発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の改良を行いうることは言うまでもない。
【実施例1】
【0024】
TSSG法によるKTaxNb1-x3単結晶の製造法の実施例を、図5、6を用いて説明する。KTaxNb1-x3溶質原料は、素原料であるK2CO3とTa25とNb25とを所望の組成比となるように秤量し、るつぼ21に充填する。溶媒としてKを選択し過剰のK2CO3も併せてるつぼ21に充填する。KTaxNb1-x3溶質原料と過剰Kが投入されたるつぼ21を、縦型管状炉25内に設置されたるつぼ台22上に設置する。ヒータ24を加熱することで、原料を昇温溶解し、原料溶液28を準備する。種子結晶27が先端に取り付けられた引き上げ軸26を縦型管状炉25に導入し、原料溶液28に接触させ、結晶育成を開始する。原料の昇温溶解中、不要な炭酸基を脱ガスする為、結晶育成を開始する温度より高い過加熱過程を施す。
【0025】
種子結晶27を原料溶液28に接触させる際、すなわち種子付け過程では、原料溶液28の温度を調整し、種子結晶27が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸26を回転させながら、加熱量の調整により原料溶液28を冷却して行く。このとき、原料溶液28は過飽和度が高くなるために、種子結晶27の先端だけでなく、原料溶液28の表面にも自然核の発生により浮遊結晶が析出することが多い。
【0026】
実施例1では、発生した浮遊結晶が5mm角に成長し、以下の処理をおこなった。まず、駆動装置33を制御して、He-Neレーザ42からの可視光が浮遊結晶に照射するように、レーザ照射位置を調整する。次に、レーザ照射装置32の出力をCO2レーザ41に切り換えて、浮遊結晶に照射する。CO2レーザ41は、出力15W、1秒の連続光を照射して、浮遊結晶を溶融した。このとき、原料溶液28の温度を観測しても、CO2レーザ41の照射時間が短いために、原料溶液28の温度変化は0.1℃以下である。その後、種子結晶27の先端に析出した成長結晶29は、原料溶液28の温度の低下に伴って成長を続ける。
【0027】
成長結晶29が所望の大きさに成長した時点で、引き上げ軸26を高速で引き上げ、成長結晶29を原料溶液28から切り離し、結晶成長を停止する。結晶成長後、ヒータ24の加熱量を下げ、縦型管状炉25を室温まで冷却する。成長した結晶の定径部には、形状変動がないファセット面が表出した。レーザ照射による外形変化、欠陥発生も認められない。目視による観察で、色調均一でかつ欠陥の介在も認められないKTaxNb1-x3単結晶が得られる。この結晶を引き上げ方向に沿って切断し、研磨することでウェハを作製する。作製したウェハを顕微鏡観察しても点欠陥は認められず、高品質かつ均一性の高い単結晶を得られることが確認できる。
【実施例2】
【0028】
TSSG法によるKTaxNb1-x3単結晶の製造法の実施例を、図5、6を用いて説明する。KTaxNb1-x3溶質原料は、素原料であるK2CO3とTa25とNb25とを所望の組成比となるように秤量し、るつぼ21に充填する。溶媒としてKを選択し過剰のK2CO3も併せてるつぼ21に充填する。KTaxNb1-x3溶質原料と過剰Kが投入されたるつぼ21を、縦型管状炉25内に設置されたるつぼ台22上に設置する。ヒータ24を加熱することで、原料を昇温溶解し、原料溶液28を準備する。種子結晶27が先端に取り付けられた引き上げ軸26を縦型管状炉25に導入し、原料溶液28に接触させ、結晶育成を開始する。原料の昇温溶解中、不要な炭酸基を脱ガスする為、結晶育成を開始する温度より高い過加熱過程を施す。
【0029】
種子結晶27を原料溶液28に接触させる際、すなわち種子付け過程では、原料溶液28の温度を調整し、種子結晶27が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸26を回転させながら、加熱量の調整により原料溶液28を冷却して行く。このとき、原料溶液28は過飽和度が高くなるために、種子結晶27の先端だけでなく、るつぼ21の内面にも自然核の発生により浮遊結晶が付着することが多い。
【0030】
実施例2では、発生した浮遊結晶が5mm角に成長し、以下の処理をおこなった。まず、駆動装置33を制御して、He-Neレーザ42からの可視光が浮遊結晶に照射するように、レーザ照射位置を調整する。次に、レーザ照射装置32の出力をCO2レーザ41に切り換えて、浮遊結晶に照射する。CO2レーザ41は、出力20W、1秒の連続光を照射して、浮遊結晶を溶融した。このとき、原料溶液28の温度を観測しても、CO2レーザ41の照射時間が短いために、原料溶液28の温度変化は0.1℃以下である。その後、種子結晶27の先端に析出した成長結晶29は、原料溶液28の温度の低下に伴って成長を続ける。
【0031】
成長結晶29が所望の大きさに成長した時点で、引き上げ軸26を高速で引き上げ、成長結晶29を原料溶液28から切り離し、結晶成長を停止する。結晶成長後、ヒータ24の加熱量を下げ、縦型管状炉25を室温まで冷却する。成長した結晶の定径部には、形状変動がないファセット面が表出した。レーザ照射による外形変化、欠陥発生も認められない。目視による観察で、色調均一でかつ欠陥の介在も認められないKTaxNb1-x3単結晶が得られる。この結晶を引き上げ方向に沿って切断し、研磨することでウェハを作製する。作製したウェハを顕微鏡観察しても点欠陥は認められず、高品質かつ均一性の高い単結晶を得られることが確認できる。
【実施例3】
【0032】
TSSG法によるKTaxNb1-x3単結晶の製造法の実施例を、図5、6を用いて説明する。KTaxNb1-x3溶質原料は、素原料であるK2CO3とTa25とNb25とを所望の組成比となるように秤量し、るつぼ21に充填する。溶媒としてKを選択し過剰のK2CO3も併せてるつぼ21に充填する。KTaxNb1-x3溶質原料と過剰Kが投入されたるつぼ21を、縦型管状炉25内に設置されたるつぼ台22上に設置する。ヒータ24を加熱することで、原料を昇温溶解し、原料溶液28を準備する。種子結晶27が先端に取り付けられた引き上げ軸26を縦型管状炉25に導入し、原料溶液28に接触させ、結晶育成を開始する。原料の昇温溶解中、不要な炭酸基を脱ガスする為、結晶育成を開始する温度より高い過加熱過程を施す。
【0033】
種子結晶27を原料溶液28に接触させる際、すなわち種子付け過程では、原料溶液28の温度を調整し、種子結晶27が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸26を回転させながら、加熱量の調整により原料溶液28を冷却して行く。このとき、原料溶液28は過飽和度が高くなるために、種子結晶27の先端だけでなく、原料溶液28の表面にも自然核の発生により浮遊結晶が析出することが多い。
【0034】
実施例3では、発生した浮遊結晶が5mm角に成長し、以下の処理をおこなった。まず、駆動装置33を制御して、He-Neレーザ42からの可視光が浮遊結晶に照射するように、レーザ照射位置を調整する。次に、レーザ照射装置32の出力をCO2レーザ41に代えてNd:YAGレーザに切り換え、浮遊結晶に照射する。Nd:YAGレーザは、出力50W、0.5秒の連続光を照射して、浮遊結晶を溶融した。このとき、原料溶液28の温度を観測しても、CO2レーザ41の照射時間が短いために、原料溶液28の温度変化は0.1℃以下である。その後、種子結晶27の先端に析出した成長結晶29は、原料溶液28の温度の低下に伴って成長を続ける。
【0035】
成長結晶29が所望の大きさに成長した時点で、引き上げ軸26を高速で引き上げ、成長結晶29を原料溶液28から切り離し、結晶成長を停止する。結晶成長後、ヒータ24の加熱量を下げ、縦型管状炉25を室温まで冷却する。成長した結晶の定径部には、形状変動がないファセット面が表出した。レーザ照射による外形変化、欠陥発生も認められない。目視による観察で、色調均一でかつ欠陥の介在も認められないKTaxNb1-x3単結晶が得られる。この結晶を引き上げ方向に沿って切断し、研磨することでウェハを作製する。作製したウェハを顕微鏡観察しても点欠陥は認められず、高品質かつ均一性の高い単結晶を得られることが確認できる。
【実施例4】
【0036】
TSSG法によるK1-yLiyTaxNb1-x3(0<y<0.4)単結晶の製造法の実施例を、図5、6を用いて説明する。K1-yLiyTaxNb1-x3溶質原料は、素原料であるK2CO3とLi2CO3とTa25とNb25とを所望の組成比となるように秤量し、るつぼ21に充填する。溶媒としてKとLiの混合物を選択し過剰のK2CO3とLi2CO3も併せてるつぼ21に充填する。K1-yLiyTaxNb1-x3溶質原料と過剰なKとLiが投入されたるつぼ21を、縦型管状炉25内に設置されたるつぼ台22上に設置する。ヒータ24を加熱することで、原料を昇温溶解し、原料溶液28を準備する。種子結晶27が先端に取り付けられた引き上げ軸26を縦型管状炉25に導入し、原料溶液28に接触させ、結晶育成を開始する。原料の昇温溶解中、不要な炭酸基を脱ガスする為、結晶育成を開始する温度より高い過加熱過程を施した。
【0037】
種子結晶27を原料溶液28に接触させる際、すなわち種子付け過程では、原料溶液28の温度を調整し、種子結晶27が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸26を回転させながら、加熱量の調整により原料溶液28を冷却して行く。このとき、原料溶液28は過飽和度が高くなるために、種子結晶27の先端だけでなく、原料溶液28の表面にも自然核の発生により浮遊結晶が析出することが多い。
【0038】
実施例4では、発生した浮遊結晶が5mm角に成長し、以下の処理をおこなった。まず、駆動装置33を制御して、He-Neレーザ42からの可視光が浮遊結晶に照射するように、レーザ照射位置を調整する。次に、レーザ照射装置32の出力をCO2レーザ41に切り換えて、浮遊結晶に照射する。CO2レーザ41は、出力13W、1秒の連続光を照射して、浮遊結晶を溶融した。このとき、原料溶液28の温度を観測しても、CO2レーザ41の照射時間が短いために、原料溶液28の温度変化は0.1℃以下である。その後、種子結晶27の先端に析出した成長結晶29は、原料溶液28の温度の低下に伴って成長を続ける。
【0039】
成長結晶29が所望の大きさに成長した時点で、引き上げ軸26を高速で引き上げ、成長結晶29を原料溶液28から切り離し、結晶成長を停止する。結晶成長後、ヒータ24の加熱量を下げ、縦型管状炉25を室温まで冷却する。成長した結晶の定径部には、形状変動がないファセット面が表出した。レーザ照射による外形変化、欠陥発生も認められない。目視による観察で、色調均一でかつ欠陥の介在も認められないK1-yLiyTaxNb1-x3単結晶が得られる。この結晶を引き上げ方向に沿って切断し、研磨することでウェハを作製する。作製したウェハを顕微鏡観察しても点欠陥は認められず、高品質かつ均一性の高い単結晶を得られることが確認できる。
【実施例5】
【0040】
TSSG法によるKTaxNb1-x3単結晶の製造法の実施例を、図5、6を用いて説明する。KTaxNb1-x3溶質原料は、素原料であるK2CO3とTa25とNb25とを所望の組成比となるように秤量し、るつぼ21に充填する。溶媒としてKを選択し過剰のK2CO3も併せてるつぼ21に充填する。さらに、Na、Mg、Ca、Sr、Baなどの周期率表Ia族、IIa族の元素を不純物として添加する。添加量は、溶質と溶媒のK、Ta、Nbの総モル数に対して1%以下である。KTaxNb1-x3溶質原料と過剰Kと不純物とが投入されたるつぼ21を、縦型管状炉25内に設置されたるつぼ台22上に設置する。ヒータ24を加熱することで、原料を昇温溶解し、原料溶液28を準備する。種子結晶27が先端に取り付けられた引き上げ軸26を縦型管状炉25に導入し、原料溶液28に接触させ、結晶育成を開始する。原料の昇温溶解中、不要な炭酸基を脱ガスする為、結晶育成を開始する温度より高い過加熱過程を施す。
【0041】
種子結晶27を原料溶液28に接触させる際、すなわち種子付け過程では、原料溶液28の温度を調整し、種子結晶27が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸26を回転させながら、加熱量の調整により原料溶液28を冷却して行く。このとき、原料溶液28は過飽和度が高くなるために、種子結晶27の先端だけでなく、原料溶液28の表面にも自然核の発生により浮遊結晶が析出することが多い。
【0042】
実施例5では、発生した浮遊結晶が5mm角に成長し、以下の処理をおこなった。まず、駆動装置33を制御して、He-Neレーザ42からの可視光が浮遊結晶に照射するように、レーザ照射位置を調整する。次に、レーザ照射装置32の出力をCO2レーザ41に切り換えて、浮遊結晶に照射する。CO2レーザ41は、出力20W、1秒の連続光を照射して、浮遊結晶を溶融した。このとき、原料溶液28の温度を観測しても、CO2レーザ41の照射時間が短いために、原料溶液28の温度変化は0.1℃以下である。その後、種子結晶27の先端に析出した成長結晶29は、原料溶液28の温度の低下に伴って成長を続ける。
【0043】
成長結晶29が所望の大きさに成長した時点で、引き上げ軸26を高速で引き上げ、成長結晶29を原料溶液28から切り離し、結晶成長を停止する。結晶成長後、ヒータ24の加熱量を下げ、縦型管状炉25を室温まで冷却する。成長した結晶の定径部には、形状変動がないファセット面が表出した。レーザ照射による外形変化、欠陥発生も認められない。目視による観察で、色調均一でかつ欠陥の介在も認められないKTaxNb1-x3単結晶が得られる。この結晶を引き上げ方向に沿って切断し、研磨することでウェハを作製する。作製したウェハを顕微鏡観察しても点欠陥は認められず、高品質かつ均一性の高い単結晶を得られることが確認できる。
【実施例6】
【0044】
TSSG法によるLiNbO3単結晶の製造法の実施例を、図5、6を用いて説明する。LiNbO3溶質原料は、素原料であるLi23とNb25とを1対1の組成比となるように秤量し、るつぼ21に充填する。LiNbO3溶質原料が投入されたるつぼ21を、縦型管状炉25内に設置されたるつぼ台22上に設置する。ヒータ24を加熱することで、原料を昇温溶解し、原料溶液28を準備する。種子結晶27が先端に取り付けられた引き上げ軸26を縦型管状炉25に導入し、原料溶液28に接触させ、結晶育成を開始する。原料の昇温溶解中、不要な炭酸基を脱ガスする為、結晶育成を開始する温度より高い過加熱過程を施す。
【0045】
種子結晶27を原料溶液28に接触させる際、すなわち種子付け過程では、原料溶液28の温度を調整し、種子結晶27が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸26を回転させながら、加熱量の調整により原料溶液28を冷却して行く。このとき、原料溶液28は過飽和度が高くなるために、種子結晶27の先端だけでなく、原料溶液28の表面にも自然核の発生により浮遊結晶が析出することが多い。
【0046】
実施例6では、発生した浮遊結晶が3mm角に成長し、以下の処理をおこなった。まず、駆動装置33を制御して、He-Neレーザ42からの可視光が浮遊結晶に照射するように、レーザ照射位置を調整する。次に、レーザ照射装置32の出力をCO2レーザ41に切り換えて、浮遊結晶に照射する。CO2レーザ41は、出力10W、1秒の連続光を照射して、浮遊結晶を溶融した。このとき、原料溶液28の温度を観測しても、CO2レーザ41の照射時間が短いために、原料溶液28の温度変化は0.1℃以下である。その後、種子結晶27の先端に析出した成長結晶29は、原料溶液28の温度の低下に伴って成長を続ける。
【0047】
成長結晶29が所望の大きさに成長した時点で、引き上げ軸26を高速で引き上げ、成長結晶29を原料溶液28から切り離し、結晶成長を停止する。結晶成長後、ヒータ24の加熱量を下げ、縦型管状炉25を室温まで冷却する。成長した結晶の定径部には、形状変動がないファセット面が表出した。レーザ照射による外形変化、欠陥発生も認められない。目視による観察で、色調均一でかつ欠陥の介在も認められないLiNbO3単結晶が得られる。この結晶を引き上げ方向に沿って切断し、研磨することでウェハを作製する。作製したウェハを顕微鏡観察しても点欠陥は認められず、高品質かつ均一性の高い単結晶を得られることが確認できる。
【実施例7】
【0048】
TSSG法によるLiTaO3単結晶の製造法の実施例を、図5、6を用いて説明する。LiTaO3溶質原料は、素原料であるLi2CO3とTa25とを1対1の組成比となるように秤量し、るつぼ21に充填する。LiTaO3溶質原料が投入されたるつぼ21を、縦型管状炉25内に設置されたるつぼ台22上に設置する。ヒータ24を加熱することで、原料を昇温溶解し、原料溶液28を準備する。種子結晶27が先端に取り付けられた引き上げ軸26を縦型管状炉25に導入し、原料溶液28に接触させ、結晶育成を開始する。原料の昇温溶解中、不要な炭酸基を脱ガスする為、結晶育成を開始する温度より高い過加熱過程を施す。
【0049】
種子結晶27を原料溶液28に接触させる際、すなわち種子付け過程では、原料溶液28の温度を調整し、種子結晶27が溶解せずかつ結晶成長も生じない状態を実現する。その後、引き上げ軸26を回転させながら、加熱量の調整により原料溶液28を冷却して行く。このとき、原料溶液28は過飽和度が高くなるために、種子結晶27の先端だけでなく、原料溶液28の表面にも自然核の発生により浮遊結晶が析出することが多い。
【0050】
実施例7では、発生した浮遊結晶が3mm角に成長し、以下の処理をおこなった。まず、駆動装置33を制御して、He-Neレーザ42からの可視光が浮遊結晶に照射するように、レーザ照射位置を調整する。次に、レーザ照射装置32の出力をCO2レーザ41に切り換えて、浮遊結晶に照射する。CO2レーザ41は、出力25W、1秒の連続光を照射して、浮遊結晶を溶融した。このとき、原料溶液28の温度を観測しても、CO2レーザ41の照射時間が短いために、原料溶液28の温度変化は0.1℃以下である。その後、種子結晶27の先端に析出した成長結晶29は、原料溶液28の温度の低下に伴って成長を続ける。
【0051】
成長結晶29が所望の大きさに成長した時点で、引き上げ軸26を高速で引き上げ、成長結晶29を原料溶液28から切り離し、結晶成長を停止する。結晶成長後、ヒータ24の加熱量を下げ、縦型管状炉25を室温まで冷却する。成長した結晶の定径部には、形状変動がないファセット面が表出した。レーザ照射による外形変化、欠陥発生も認められない。目視による観察で、色調均一でかつ欠陥の介在も認められないLiTaO3単結晶が得られる。この結晶を引き上げ方向に沿って切断し、研磨することでウェハを作製する。作製したウェハを顕微鏡観察しても点欠陥は認められず、高品質かつ均一性の高い単結晶を得られることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来のTSSG法による結晶製造装置の構成を示す図である。
【図2】結晶成長過程において、浮遊結晶が析出する第1の例を示す図である。
【図3】結晶成長過程において、浮遊結晶が析出する第2の例を示す図である。
【図4】結晶成長過程において、浮遊結晶が析出する第3の例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる結晶製造装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるレーザ照射装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1,21 るつぼ
2,22 るつぼ台
3,23 均熱管
4,24 ヒータ
5,25 縦型管状炉
6,26 引き上げ軸
7,27 種子結晶
8,28 原料溶液
9,29 成長結晶
10,30 炉体ふた
11 浮遊結晶
31 監視窓
32 レーザ照射装置
33 駆動装置
41 CO2レーザ
42 He-Neレーザ
43 ハーフミラー
44 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に設置されたるつぼ内の原料溶液に、種子結晶を浸して結晶を育成する結晶成長方法において、
前記種子結晶を前記原料溶液に接触させると同時に、前記原料溶液を冷却し、
結晶の成長過程において、前記原料溶液の表面に析出した浮遊結晶を、可視光レーザにより照射、検出し、前記可視光レーザの光軸上に、加熱用のレーザ光を照射することにより、前記浮遊結晶を溶融することを特徴とする結晶成長方法。
【請求項2】
前記結晶の成分は、周期率表Ia族とVa族から構成されており、Ia族はリチウム、カリウムの少なくとも1つを含み、Va族はニオブ、タンタルの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶成長方法。
【請求項3】
前記結晶の成分は、周期率表Ia族とVa族から構成されており、Ia族はカリウムであり、Va族はニオブ、タンタルの少なくとも1つを含み、添加不純物として周期率表Ia、IIa族の1または複数種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の結晶成長方法。
【請求項4】
炉内に設置されたるつぼ内の原料溶液に、種子結晶を浸して結晶を育成する結晶成長装置において、
前記原料溶液の表面に析出した浮遊結晶を検出するための可視光を照射する第1レーザと、
前記浮遊結晶を溶融するための加熱用のレーザ光を照射する第2レーザと、
前記第1レーザからの前記可視光を、前記第2レーザからの前記レーザ光の光軸上に照射する手段と、
前記可視光が浮遊結晶に照射するように、前記第1および第2レーザのレーザ照射位置を調整する制御手段と
を備えたことを特徴とする結晶成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−155182(P2009−155182A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337890(P2007−337890)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】