説明

結腸癌の早期検出および予後診断の方法

本発明者らは、結腸直腸癌(CRC)におけるプロモーターCpGアイランド過剰メチル化および転写サイレンシングによって影響を受けた遺伝子を特定するための、トランスクリプトーム全体にわたる手法を開発した。ヒト原発CRC試料のパネルにおいて細胞系をスクリーニングし、腫瘍特異的過剰メチル化を確認することにより、本発明者らは、すべての既知遺伝子の5%近くが、個々の腫瘍においてプロモーターがメチル化されている可能性があると推測している。本発明者らは、遺伝子突然変異と直接比較した場合、個々の腫瘍において過剰メチル化された非常に多くの遺伝子と、遺伝的変化もしくは後成的変化を含む個々の遺伝子内における非常に高頻度の過剰メチル化とを見いだしている。したがって、ヒト癌ゲノムにおける全範囲の変化を列挙するために、および癌のバイオマーカーを特定しかつ治療的手法を目的に合わせるための最も効果的な腫瘍のグループ分けを容易にするために、遺伝的スクリーニングおよび後成的スクリーニングの両方を実施するべきである。とりわけ、癌、前癌および癌を発症する可能性を診断的に検出するために、本発明者らが特定した遺伝子を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国立環境衛生科学研究所 (National Institute of Environmental Health Sciences)からの助成金交付ES11858、国立癌研究所からの助成金交付CA043318の下、合衆国政府基金を使用して成されたものである。これらの助成金交付の条件下、合衆国政府は本発明に対して特定の権利を保有する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、癌診断および治療学の分野に関する。特に、それは、大腸癌および前癌における特定の遺伝子の異常なメチル化パターンに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
DNAメチル化および発癌におけるその役割
すべての生物の細胞を作るための情報は、そのDNAに含まれている。DNAは、4種の塩基、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)およびシトシン(C)の固有の配列で構成されている。これらの塩基は、DNA二重らせんを形成する2本の鎖上のAとTおよびGとCの対合である。これらの対の鎖が、遺伝子と呼ばれる領域にグループ分けされた特定の分子を作るための情報を記憶する。各細胞内には、どの遺伝子がオンになる、すなわち発現するのかを制御して、その細胞固有の機能を規定するプロセスがある。これらの制御機構の一つは、シトシン(C)にメチル基を付加することによって提供される。メチル基で標識されたCはmCと表記できる。
【0004】
DNAメチル化は、一部の遺伝子が発現しているかどうかを決定する際に重要な役割を演じる。必要とされない遺伝子をオフにすることにより、DNAメチル化は、生物の正常な発達および機能にとって不可欠な制御機構である。または、異常なDNAメチル化は、加齢および多くの癌の発生とともに認められる変化の基礎となる機構の一つでもある。
【0005】
癌は、旧来、DNA内の染色体突然変異によって生じる遺伝子変化に関連づけられていた。突然変異は、遺伝性であるのか後天性であるのかにかかわらず、健常な状態を維持するためにきわめて重要な遺伝子の発現の損失を招くおそれがある。今や、比較的多数の癌が、多くの場合、DNA突然変異に近い不適切なDNAメチル化によって引き起こされるということを裏付ける証拠がある。多くの場合、DNAの過剰メチル化が決定的な遺伝子、たとえば腫瘍サプレッサー遺伝子またはDNA修復遺伝子を過ってオフにして、癌の発生および進行を許してしまう。遺伝子発現を制御するためのこの非突然変異プロセスは後成学と述べられる。
【0006】
DNAメチル化は、メチルトランスフェラーゼと呼ばれる酵素によって実行される、メチル基(m)がDNAの特定のシトシン(C)に付加されるDNAの化学的修飾である。この非突然変異(後成的)プロセス(mC)は、遺伝子発現調節における決定的要因である。J.G. Herman, Seminars in Cancer Biology, 9: 359-67, 1999(非特許文献1)を参照すること。
【0007】
遺伝子メチル化の現象は、長らく癌研究者たちの注目を集めてきたが、ヒト癌の進行におけるその真の役割は、認識されはじめたばかりである。正常な細胞では、メチル化が、CG塩基反復を少ししか有しないDNA領域において主に起こるが、CG塩基の長い反復を有するDNA領域であるCpGアイランドはメチル化されないまま残る。タンパク質発現を制御する遺伝子プロモーター領域は、多くの場合、CpGアイランドを多く含む。プロモーター領域における、通常非メチル化状態にあるこれらのCpGアイランドの異常なメチル化が、ヒト癌における特定の腫瘍サプレッサー発現の転写不活性化またはサイレンシングを生じさせる。
【0008】
腫瘍細胞中で過剰メチル化される遺伝子は、腫瘍の起源の組織に対して強い特異性を示す。癌の検出、癌の危険性の評価および治療に対する反応を改善するためには、すべてのタイプの癌の分子サインを使用することができる。プロモーター過剰メチル化事象は、そのような目的にとって最も有望なマーカーのいくつかを提供する。
【0009】
プロモーター遺伝子の過剰メチル化:有望な腫瘍マーカー
特定のプロモーター遺伝子の過剰メチル化に関する情報は、種々の癌の診断、予後診断および処置に有益でありうる。特定の遺伝子プロモーター領域のメチル化は、発癌において早期かつ頻繁に起こる場合があり、これらのマーカーを癌診断にとって理想的な標的となる。
【0010】
メチル化パターンは腫瘍特異的である。陽性シグナルが常に遺伝子の同じ場所で見つかる。リアルタイムPCRベースの方法は、高感度であり、定量的であり、かつ臨床使用に適している。DNAは、安定であり、かつ入手しやすい流体(たとえば血清、痰、糞便、血液および尿)およびパラフィン包埋組織の中で無傷の状態で見出される。適切な遺伝子マーカーのパネルが大部分のヒト癌に及ぶことができる。
【0011】
診断
癌がまだ限局性であり、容易に処置可能である間は、癌患者における臨床結果を改善するカギは、最早期段階での診断である。上記特性は、より高リスクな患者を分子ベースで特定することにより、より正確なスクリーニングおよび監視プログラムのための手段を提供する。また、それは、分子の特徴を有するが、悪性疾患に伴うすべての病理的または臨床的特徴をまだ有しない患者のより決定的な経過観察の正当化の理由を提供することもできる。
【0012】
現在、結腸直腸癌の早期検出は、
(1) 感度および特異性が非常に低い「便潜血試験」(FOBT)、
(2) 侵襲的であり、高額である(かつ供給が限られる) S字結腸鏡検査法および/または結腸鏡検査法、
(3) 比較的大きなポリープの検出のみが可能である、二重造影バリウム注腸後のX線検出法、または、まだ実験段階であるCT結腸画像法(バーチャル結腸鏡検査法とも呼ばれる)、および
(4) コストが大きく、感度が限られる、PreGen-Plus (Exact Sciences; LabCorp)と呼ばれる遺伝子突然変異解析試験法
によって実施されている。
【0013】
処置反応の予測
癌が分子事象を通してどのように発生するかに関する情報は、そのような癌がどのように特定の化学療法剤に反応しそうかということを臨床医がより正確に予測することを可能にする可能性がある。この方法で、腫瘍の化学感受性の知識に基づく療法を合理的に設計することができる。研究により、グリオーム患者におけるMGMTプロモーターの過剰メチル化が、療法に対する良好な反応、より高い全体生存率および進行までのより長い期間を示すということが示されている。
【0014】
現在、ヒト癌における正常な遺伝子機能の損失が遺伝的機構および後成的機構の両方により起こりうるということが、十分に確立されている(1、2)。ヒト腫瘍試料において突然変異した遺伝子の数が明らかにされつつある。最近、Sjoblomら(3)は、結腸直腸癌(CRC)および乳癌における13,023の遺伝子を配列決定し、1腫瘍あたり平均11の突然変異を発見して、腫瘍形成を駆動するのには比較的少数の遺伝的事象で十分であることを示唆した。対照的に、後成的変化の完全な範囲は十分には定められていない。癌遺伝子の最良に規定された後成的変化は、影響を受けた遺伝子の転写不活性化に関連するプロモーター領域におけるクラスター形成CpGジヌクレオチド、すなわちCpGアイランドのDNA過剰メチル化を含む。これらのプロモーターは、半分近くの全遺伝子に隣接して位置し(4)、正常な体細胞組織中では主としてメチル化されないままでいると考えられる。所与の腫瘍におけるそのような後成的損傷の正確な数は正確には知られていないが、より多くのランダムスクリーニング手法が、全ゲノムを効率的に包含するものは存在しないにしても、より多数の候補遺伝子を特定している(5〜12)。ゲノム中に存在する多数の潜在的標的プロモーターを鑑みて、本発明者らは、多くのさらなる過剰メチル化遺伝子が発見を待っていると仮定した(13)。
【0015】
当技術分野において、患者ケアの管理を改善するための、癌に関する新たな診断および予後マーカーならびに治療標的の継続的必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】J.G. Herman, Seminars in Cancer Biology, 9: 359-67, 1999
【発明の概要】
【0017】
本発明の一つの局面にしたがって、結腸直腸癌もしくはその前駆体または結腸直腸癌の素因を特定する方法が提供される。結腸直腸細胞または結腸直腸細胞からの核酸を含有する試験試料において後成的サイレンシングを検出する。後成的サイレンシングは、

からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の後成的サイレンシングである。後成的サイレンシングが検出される場合、新生物である細胞、新生物の前駆体である細胞、もしくは新生物形成の素因を有する細胞を含有するものとして、または、新生物である細胞、新生物の前駆体である細胞、もしくは新生物形成の素因を有する細胞からの核酸を含有するものとして、その試験試料を特定する。
【0018】
本発明のもう一つの局面にしたがって、細胞が癌に関連する少なくとも一つの遺伝子の後成的にサイレンシングされた転写を示す、該細胞の新生物成長を低減または阻害する方法が提供される。細胞中、後成的にサイレンシングされた遺伝子を決定する。遺伝子は、

からなる群より選択される。その細胞を、CpGジヌクレオチド脱メチル化剤、DNAメチルトランスフェラーゼインヒビターおよびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターからなる群より選択される一つまたは複数の剤と接触させることにより、細胞中で、後成的にサイレンシングされた遺伝子によってコードされたポリペプチドの発現を回復させる。それにより、細胞の無秩序な成長を低減または阻害する。
【0019】
本発明のもう一つの局面は、細胞が癌に関連する少なくとも一つの遺伝子の後成的にサイレンシングされた転写を示す、該細胞の新生物成長を低減または阻害する方法である。細胞中、後成的にサイレンシングされた遺伝子を決定する。遺伝子は、

からなる群より選択される。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する。ポリペプチドは該遺伝子によってコードされる。ポリペプチドを細胞中で発現させ、それにより細胞中のポリペプチドの発現を回復させる。
【0020】
本発明のさらに別の局面は、癌患者を治療する方法である。患者の癌細胞が、

からなる群より選択される後成的にサイレンシングされた遺伝子を有すると決定される。CpGジヌクレオチド脱メチル化剤、DNAメチルトランスフェラーゼインヒビターおよびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターからなる群より選択される一つまたは複数の剤を、患者の癌細胞中で後成的にサイレンシングされた遺伝子の発現を回復させるのに十分な量で患者に投与する。
【0021】
本発明のさらに別の局面は、癌患者を治療する方法である。患者の癌細胞が、

に示されるものから選択される後成的にサイレンシングされた遺伝子を有すると決定される。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを患者に投与する。ポリペプチドは、後成的にサイレンシングされた遺伝子によってコードされる。ポリペプチドを患者の腫瘍において発現させ、それにより癌におけるポリペプチドの発現を回復させる。
【0022】
本発明のさらに別の局面にしたがって、癌患者を治療するための治療戦略を選択する方法が提供される。患者の癌細胞中での遺伝子の発現がCpGジヌクレオチド脱メチル化剤、DNAメチルトランスフェラーゼインヒビターまたはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターによって再活性化される、遺伝子を特定する。遺伝子は、

からなる群より選択される。該癌患者を治療するために遺伝子の発現を増大させる治療剤をその癌患者のために選択する。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、試験試料におけるメチル化を評価するためのキットである。キットは、少なくとも以下の試薬:(a)メチル化シトシン残基を修飾するが、非メチル化シトシン残基を修飾しない試薬、または(b)非メチル化シトシン残基を修飾するが、メチル化シトシン残基を修飾しない試薬と、

に示されるものから選択される遺伝子についての転写開始点から約1kb以内である領域に増幅条件下で特異的にハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドプライマー対とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1A〜1Eは、HCT116 CRC細胞中のヒト癌細胞過剰メチロームの特定の手法。(図1A)指示された細胞系からのRNAを単離し、標識化し、ハイブリダイズし、スキャンし、蛍光スポット強度を、バックグラウンドサブトラクションおよびLoess変換により、Agilent Technologies 44Kヒトマイクロアレイを使用して正規化した。本発明者らの研究では、DNAメチルトランスフェラーゼ1 (DNMT1-/-)または3b (DNMT3b-/-)に関して親野生型HCT116細胞(WT)および同質遺伝子ノックアウト対応物を比較した。DKO細胞は、DNMT1およびDNMT3bに関して二重欠乏性である。(図1B)様々なDNAメチルトランスフェラーゼの遺伝子破損によるHCT116細胞中の遺伝子発現変化。DNMT1 (X軸)、3b (Z軸)および両DNMT (DKO、Y軸)の遺伝子破損によるHCT116細胞中の遺伝子発現レベルを対数目盛で示す三次元散布図。個々の遺伝子発現変化が黒で示され、4倍超の発現変化を示したDKO細胞中の遺伝子に関して三つの実験の平均(赤い点)または個々の実験の平均(青い点)が示されている。(図1C) HCT116細胞を、300nMトリコスタチンA (TSA)で18時間または5μM 5-デオキシアザシチジン(DAC)で96時間処理し、上記のように処理した。(図1D) TSA (X軸)またはDAC (Y軸)で処理されたHCT116細胞の遺伝子発現変化を倍率変化ごとにプロットした。黄色の点は、2倍を超える変化を示したDKO細胞からの遺伝子を示す。DKO細胞で見られる遺伝子発現増大に比較した場合の感度の損失に注目すること(DKO細胞における2倍超がDAC処理細胞では1.3倍超になっている)。緑の点は、野生型細胞における完全なプロモーターのメチル化、DKO細胞中およびAZA処理後の再発現を有することが検証された、ランダムに選択された遺伝子を示し、赤い点は、偽陽性として特定された、選択された遺伝子を示す(確認結果に関しては図5 (S2)を参照すること)。青い点は、この研究で使用されたHCT116細胞中で過剰メチル化され、完全にサイレンシングされることがすでに示されている11のガイド遺伝子の場所を示す(詳細な説明に関しては図4 (S1)を参照すること)。11のガイド遺伝子のうち五つを含む別個の遺伝子グループは、DAC処理後に2倍超の増大を示すが、TSA処理後には増大を示さない。これらの遺伝子は、本文中で説明するように、候補過剰メチル化遺伝子の上段を形成する。(図1E)デンドログラム解析によって特定された全トランスクリプトーム発現パターンの関連性。DNMT1および3b、DKOおよびDAC処理ならびにTSA処理の個々の単一遺伝子破損それぞれが、三つの別個のカテゴリーの遺伝子発現変化を生じる。
【図2】図2A〜2Cは、様々なヒトCRC細胞系におけるヒト癌細胞過剰メチロームの特性決定。(図2A) TSA (X軸)またはDAC (Y軸)で処理された、指示された細胞の遺伝子発現変化が倍率変化ごとにプロットされ、個々の遺伝子が黒で示されている。(図2B) DNA過剰メチロームの確認。DACまたはTSAによる細胞の処理によって規定される過剰メチル化遺伝子の特徴的なスパイクは、異なる特徴を有する二つの段からなる。上段の遺伝子は、TSAによって遺伝子発現が増大せず(<1.4倍)、野生型細胞において検出可能な発現を示さないが、DAC処理によって2倍超の増大を示したゾーンとして特定された。次段の遺伝子は、発現変化が上段の発現変化と同一であるが、DAC処理によって1.4倍〜2倍の増大を示す遺伝子のクラスターとして特定された。RT-PCRおよびMSPによる遺伝子発現確認は、DKO細胞中で2倍超増大した遺伝子を含む、HCT116細胞中の上段遺伝子に関して86%の確認頻度を示した。HCT116細胞中の次段遺伝子は、49%の頻度で確認され、SW480上段中では、65%の頻度で確認された。(図2C) CRC細胞系中で共有された候補過剰メチル化遺伝子。発現変化が上または次段カテゴリーの基準に当てはまる6細胞系すべてにおいて、全部で5,906の遺伝子を特定した。二つ、三つ、四つ、五つまたは六つの細胞系の間での遺伝子発現変化の重複が示された。2細胞系の間で共有された1414の遺伝子から6細胞系すべての間で共有された78の遺伝子にまで及ぶ。
【図3】図3A〜3Eは、ヒト腫瘍試料における過剰メチル化および遺伝子突然変異頻度の比較。(図3A)ヒト組織試料において検証された過剰メチローム遺伝子のメチル化解析。HCT116上段(BOLL、DDX43、DKK3、FOXL2、HoxD1、JPH3、Nef、Neuralized、PPP1R14a、RAB32、STK31、TLR2)、HCT116次段(Sa1L4、TP53AP1)またはSW480上段(ZFP42)から、検証された遺伝子リストからの20の遺伝子をランダムに選択し、CRC細胞系(白コラム)、正常な結腸(赤コラム)または原発腫瘍(緑コラム)におけるメチル化に関して解析した。メチル化の割合がY軸に示され、略された遺伝子名がX軸に示されている。少なくとも六つの異なる細胞系、非癌患者からの16〜40の結腸試料および遺伝子ごとに18〜61の原発CRC試料を試験した。(図3B)CAN遺伝子のメチル化解析。56の遺伝子を、CpGアイランドを含有する45の遺伝子を含め、過剰メチロームおよびCAN遺伝子リストと重複するものとして特定した。細胞系中にメチル化を有するこのリストから選択された遺伝子(26遺伝子)を、正常な結腸(図3B)および原発CRC(図3C)中でのメチル化に関して解析した。これらの遺伝子のメチル化の頻度が%値として示されている。(図3D) CANおよび過剰メチローム遺伝子リストと重複する13の遺伝子に関するメチル化と突然変異との関係。(図3E)ヒト癌における遺伝子不活性化機構のモデル。
【図4】図4A〜Dは、(S1)この研究で使用したガイド遺伝子。(図4A)HCT116細胞中で過剰メチル化され、完全にサイレンシングされることがすでに示されている11のガイド遺伝子の遺伝子名、Agilent Technologiesプローブ名、Genbankアクセッション番号および参考文献。(図4B)青い点および遺伝子名は、11のガイド遺伝子の場所を、TSA (X軸)対DAC (Y軸)遺伝子発現変化のプロット中または(図4C) DKO (X軸)対シングルノックアウト(Y軸)遺伝子発現変化のプロット中、対数目盛で示す。緑で囲まれた11のガイド遺伝子のうち五つが、AZA処理後に2倍超の増大を示すが、TSA処理後には増大を示さず、これらの同じ遺伝子は、DKO細胞中で3倍超の増大を有する(緑の円)。(図4D) DKOおよびDACプロット中のガイド遺伝子の直接比較。DKO細胞中では3倍超の発現変化およびDAC処理細胞中では2倍超の発現変化を示す、緑の円によって示される五つのガイド遺伝子の別個のグループが、本文で説明されるような候補過剰メチル化遺伝子の上段を規定する。別の3遺伝子は1.3倍増大し、三つはDAC処理で増大することができず、本文で説明されるような次段遺伝子の発現のための基準を確立することを可能にした。
【図5】(S2) HCT116細胞中の35の上段遺伝子の遺伝子発現およびメチル化確認。発現(HCT116およびDKO細胞のRT-PCRによる)およびプロモーターのメチル化(HCT116およびDKO細胞のMSPによる)状態の検証のために選択されたHCT116候補過剰メチル化遺伝子のリスト。遺伝子の記述がパネルの左側に示され、遺伝子名がPCR結果の隣に示されている。個々の遺伝子ごとに、水(RT-PCRおよびMSP)、インビトロメチル化DNA(MSPのIVD)およびアクチンB(ACTB)を対照として使用した。代表的な試料が示されている。緑の矢印は、アレイ結果を検証した遺伝子を特定し、赤の矢印は、検証しなかった遺伝子を特定する。
【図6】(S3) 発現 (HCT116およびDKO細胞のRT-PCRによる)およびプロモーターのメチル化(HCT116およびDKO細胞のMSPによる)状態の検証のために選択された35のHCT116候補次段遺伝子のリスト。遺伝子名がパネルの左側に示され、遺伝子名がPCR結果の隣に示されている。個々の遺伝子ごとに、水(RT-PCRおよびMSP)、インビトロメチル化DNA (MSPのIVD)およびアクチンB (ACTB)を対照として使用した。代表的な試料が示されている。本文中で説明するように、緑の矢印は、アレイ結果を検証した遺伝子を特定し、赤の矢印は、検証しなかった遺伝子を特定する。
【図7】(S4)発現(SW480およびDAC処理SW480細胞のRT-PCRによる)およびプロモーターのメチル化(SW480およびDAC処理SW480細胞のRT-PCRによる)状態の検証のために選択された48のSW480候補上段遺伝子のリスト。遺伝子名がパネルの左側に示され、遺伝子名がPCR結果の隣に示されている。個々の遺伝子ごとに、水(RT-PCR)、インビトロメチル化DNA (MSPのIVD)およびアクチンB(ACTB)を対照として使用した。代表的な試料が示されている。本文中で説明するように、緑の矢印は、アレイ結果を検証した遺伝子を特定し、赤の矢印は、検証しなかった遺伝子を特定する。
【図8】(表S1)過剰メチロームサイズの定量的推定。細胞系および段が左側に示され、同じく、1段あたり特定された遺伝子発現変化の数が示されている。段ごとの候補過剰メチル化遺伝子プールのサイズに関する計算は、段ごとに特定された遺伝子発現変化を0.86 (HCT116の上段の場合)、0.65 (SW480、CaCO2、HT29、COLO320およびRKOの上段の場合)または0.49 (HCT116、SW480、CaCO2、HT29、COLO320およびRKOの次段の場合)で乗じることによって実施した。これらの分数は、本文で記載されているような実験的に決定された確認頻度を表す。HCT116過剰メチロームのサイズの推定値は次のように導出した。532の86%=457上段遺伝子+1190の49%=583次段遺伝子。457+583=1040。SW480過剰メチロームは、579の遺伝子で、次の計算にしたがって推定した。318上段の66%=207および759下層の49%=372。207+372=579。過剰メチローム遺伝子リストと、乳癌または結腸癌で突然変異した遺伝子との重複が右側に示されている。
【図9】(表1)配列リスト中の配列に関する情報。遺伝子番号:遺伝子ごとの通し番号。遺伝子名:本特許で使用される遺伝子名。遺伝子ID:NCBIシステムからの遺伝子ID。遺伝子IDに関連する転写物ID:ENSEMBL注釈システムからのすべての転写物IDは、同じTSS [転写開始点。遺伝子IDは多数のTSSを有することができ、したがって、多数の転写物IDがそれらのTSSによってグループ分けされることに注意すること]を有する所与の遺伝子IDと対応する。配列番号1〜125:ゲノム配列コンテキスト(転写物のTSSの1000bp5'から転写物のTSSの200bp3'まで);NCBI build 36で見られるようなゲノムDNA配列。配列番号126〜250。存在するすべてのCpGジヌクレオチドの完全なメチル化を呈する配列の亜硫酸水素塩転換型。
【図10】比率カットオフ20での散布図BNIP3。
【図11】比率カットオフ20での散布図FOXE1。
【図12】比率カットオフ100での散布図SYNE1。
【図13】比率カットオフ300での散布図SOX17。
【図14】比率カットオフ20での散布図JAM3。
【図15】比率カットオフ150での散布図MMP2。注:76の対照および90の症例でこのマーカーを試験した。
【図16】比率カットオフ150での散布図GPNMB。注:76の対照および90の症例でこのマーカーを試験した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明者らは、ヒトCRC中でプロモーター過剰メチル化によってサイレンシングされた遺伝子を特定するための全ヒトトランスクリプトームマイクロアレイスクリーニングを記載する。この手法は、単一腫瘍における候補癌遺伝子を高い確認効率で容易に特定する。本発明者らは、候補過剰メチル化遺伝子のリストをCRC中で最近特定された突然変異遺伝子と比較することにより(3)、変化した腫瘍ゲノムと遺伝子過剰メチル化との間の重要な関係を立証する。本発明者らの研究は、後成的および遺伝的変化がヒト癌形成をどのように駆動するのかを理解するためのプラットフォームを提供する。
【0026】
本発明者らは、代表的な細胞培養系が利用可能であるいかなるヒト癌型に関しても、癌遺伝子プロモーターCpGアイランドDNA過剰メチロームの実質的な部分を規定する能力を有する遺伝子発現手法を記載する。これらの遺伝子の研究は、腫瘍形成を駆動する分子経路の理解に貢献し、癌リスク評価、早期診断および予後をモニタリングするのに有用な新規なDNA過剰メチル化バイオマーカーを提供し、癌予防および/または治療戦略の際に遺伝子再発現のより良いモニタリングを可能にする(13、22)。
【0027】
本発明者らは、ゲノム全体の配列決定戦略によって特定された突然変異遺伝子に対する本発明者らの手法によって発見された過剰メチローム遺伝子の直接比較により、遺伝的に変化した遺伝子よりも多くの後成的に変化した遺伝子が所与の腫瘍に存在するということを証明する。この事実の重要性は、両機構によって影響を受けた新たに発見された遺伝子に関して、結腸癌における所与の遺伝子の過剰メチル化の出現率が突然変異の場合よりもはるかに高いと思われるという本発明者らの発見の中で明らかになる。したがって、所与の癌型の中で、遺伝的異常および後成的異常の両方をスクリーニングすることができないことにより、遺伝子変化の全範囲および関連する細胞経路の異常の両方を顕著に過小評価するおそれがある。データはまた、遺伝子機能損失のための両機構を評価することが、個々の大腸腫瘍の中で経路破損に関して遺伝的解析のみが予測するよりも多くの共有を示すということを示す。本発明者らの発見は、重要な経路における分子変化による腫瘍のグループ分けのための最適な手法が、遺伝的遺伝子変化および後成的遺伝子変化の両方の規定に依存するということを強調する。したがって、本発明者らの発見は、プロモーターDNA過剰メチル化に関しては突然変異遺伝子を検査すべきであり、突然変異を発見するための配列決定に関してはDNA過剰メチル化遺伝子を優先的立場に置くべきということを考慮するために、癌における異常な遺伝的変化をマッピングするためのゲノム全体の戦略を奨励するはずである。
【0028】
この技術を使用して、本発明者らは、癌、癌前駆体および前癌において転写が後成的にサイレンシングされる、遺伝子のセットを見いだした。遺伝子は、

を含む。このような遺伝子の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の後成的サイレンシングの検出を、癌もしくは前癌または癌を発症する危険性の指示として使用することができる。
【0029】
遺伝子の後成的サイレンシングは、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。一つの方法は、正常な細胞または他の対照細胞中で発現する遺伝子が腫瘍細胞中では発現しにくい、または発現しないということを決定することである。しかし、たとえば体細胞突然変異によってサイレンシングの機構が遺伝的になることもあるため、この方法は、単独では、サイレンシングが後成的であることを示すことはできない。サイレンシングが後成的であるということを決定するための一つの方法は、DAC (5'-デアザシチジン)のような試薬または細胞DNAのヒストンアセチル化状態を変化させる試薬または細胞中に存在する後成機構に影響する他の処理によって処理し、サイレンシングが逆転している、すなわち遺伝子の発現が再活性化または回復していることを認めることである。後成的サイレンシングを決定するためのもう一つの手段は、サイレンシングされた遺伝子中のメチル化CpGジヌクレオチドモチーフの存在を決定することである。一般的に、これらのモチーフは、転写開始点の近く、たとえば約1kbp以内、約750bp以内または約500bp以内に存在する。ひとたび遺伝子が腫瘍細胞中の後成的サイレンシングの標的として特定されたならば、発現低下の決定を後成的サイレンシングの指標として使用することができる。
【0030】
遺伝子の発現は、当技術分野で公知の手段を使用して評価することができる。一般的には、発現を、試験試料および正常な非悪性細胞であってもよい対照試料において評価し、比較する。試験試料は、癌細胞もしくは前癌細胞またはそれらからの核酸を含有することができる。たとえば、試料は、結腸腺腫細胞、結腸進行腺腫細胞または結腸癌腫細胞を含有することができる。mRNA (核酸)またはタンパク質のいずれかを計測することができる。特異的mRNAを計測する場合には、核酸プローブへのハイブリダイゼーションを用いる方法を使用することができる。このような方法は、核酸プローブアレイ(マイクロアレイ技術)、インサイチューハイブリダイゼーションおよびノーザンブロットの使用を含む。また、RT-PCRのような増幅技術を使用してメッセンジャRNAを評価することもできる。今や、ゲノム技術における進歩が何千もの遺伝子の同時解析を可能にするが、多くは、同じ特異的プローブ-標的ハイブリダイゼーションの概念に基づく。配列決定ベースの方法が代替方法である。これらの方法は、表現配列標識(EST)の使用とともに始まったが、今や、短い標識に基づく方法、たとえば遺伝子発現の連続分析 (serial analysis of gene expression)(SAGE)および大規模平行シグネチャー配列解析(massively parallel signature sequencing)(MPSS) を含む。ディファレンシャルディスプレイ技術が、遺伝子発現を解析するさらに別の手段を提供する。この種の技術は、制限消化によって生成されるcDNAフラグメントのランダム増幅に基づき、二つの組織の間で異なるバンドが対象のcDNAを特定する。特異的タンパク質は、イムノアッセイ法および免疫細胞化学をはじめとする好都合な方法を使用して評価することができる。大部分のそのような方法は、特定のタンパク質またはタンパク質フラグメントに対して特異的である抗体を用いる。本発明のマーカーのmRNA (cDNA)およびタンパク質の配列は当技術分野で公知であり、一般に公開されている。
【0031】
メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを検出するためには、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを使用することができる。このようなエンドヌクレアーゼは、非メチル化認識部位と比べてメチル化認識部位を優先的に開裂させることができるか、またはメチル化認識部位と比べて非メチル化認識部位を優先的に開裂させることができる。前者の例は、Acc III、Ban I、BstN I、Msp IおよびXma Iである。後者の例は、Acc II、Ava I、BssH II、BstU I、Hpa IIおよびNot Iである。または、CpGジヌクレオチドモチーフのメチル化形態または非メチル化形態のいずれかを選択的に修飾する化学試薬を使用することもできる。
【0032】
修飾された産物は、直接的に検出することもできるし、容易に区別可能である産物を作製するさらなる反応の後で検出することもできる。修飾された産物を検出するためには、電気泳動法、クロマトグラフィー法および質量分析法をはじめとする、サイズおよび/または電荷の変化を検出する手段を使用することができる。選択的修飾のためのそのような化学試薬の例はヒドラジンおよび亜硫酸水素イオンを含む。ヒドラジン修飾DNAは、ピペリジンで処理して開裂させることができる。亜硫酸水素イオンで処理したDNAは、アルカリで処理することができる。ハイブリダイゼーション法、増幅法、配列決定法およびリガーゼ連鎖反応法をはじめとする、特定の配列に依存する他の手段を使用することもできる。望むならば、そのような技術の組み合わせを使用することもできる。
【0033】
電気泳動法の背後にある原理は、サイズおよび電荷による核酸の分離である。メチル化を検出するための数多くのアッセイ法が存在し、大部分は、特定の核酸産物の存在または非存在の決定に依存する。この目的には、ゲル電気泳動法が実験室で一般に使用されている。
【0034】
MALDI質量分析法をメチル化検出アッセイ法と併用して核酸産物のサイズを観察することもできる。質量分析法の背後にある原理は、核酸のイオン化およびそれらを質量電荷比にしたがって分離することである。電気泳動法と同様に、質量分析法を使用して、実験で作製された特定の核酸を検出してメチル化を決定することもできる。Tost, J. et al. Analysis and accurate quantification of CpG methylation by MALDI mass spectrometry. Nuc Acid Res, 2003, 31, 9を参照すること。
【0035】
被分析物質とクロマトグラフィーカラムとの間の多様な化学反応に基づいて混合物の成分を分離するためには、クロマトグラフィーの一形態である高速液クロマトグラフィーが使用される。まず、DNAを亜硫酸水素ナトリウムで処理すると、非メチル化シトシンはウラシルに転換されるが、メチル化シトシン残基は影響を受けないままである。潜在的なメチル化部位を含有する領域をPCRによって増幅し、変性高速液クロマトグラフィー(DHPLC)によって産物を分離することができる。DHPLCは、メチル化(シトシン含有)DNA配列と非メチル化(ウラシル含有) DNA配列とを区別する分解能力を有する。Deng, D. et al. Simultaneous detection of CpG methylation and single nucleotide polymorphism by denaturing high performance liquid chromatography. 2002 Nuc Acid Res, 30, 3を参照すること。
【0036】
ハイブリダイゼーション法は、二本鎖分子を形成するための二つの相補核酸鎖のアニーリングに基づく、特異的核酸配列を検出するための技術である。ハイブリダイゼーション法の使用の一例が、DNAのメチル化状態を決定するためのマイクロアレイアッセイ法である。非メチル化シトシンはウラシルに転換されるが、メチル化シトシン残基は影響を受けないままであるDNAの亜硫酸水素ナトリウム処理ののち、潜在的メチル化部位に相補的なオリゴヌクレオチドが、亜硫酸水素塩処理されたDNAにハイブリダイズすることができる。オリゴヌクレオチドは、非メチル化DNAおよびメチル化DNAをそれぞれ表すウラシル含有配列またはシトシン含有配列のいずれかに相補的であるように設計されている。コンピュータベースのマイクロアレイ技術が、どのオリゴヌクレオチドがDNA配列とハイブリダイズするのかを決定することができ、DNAのメチル化状態を演繹することができる。
【0037】
亜硫酸水素ナトリウム処理後の結果を決定するさらなる方法は、DNAを配列決定して亜硫酸水素塩修飾を直接的に観察することであろう。パイロシーケンシング技術が、リアルタイムの合成的配列決定法である。これは、DNA鎖伸長時に各デオキシヌクレオチド(dNTP)から放出されるピロリン酸塩(PPi)の間接的バイオルミノメトリアッセイに基づく。この方法は、エキソヌクレアーゼ欠乏KlenowDNAポリメラーゼの存在で、dNTPとのDNA鋳型-プライマー複合体を提供する。四つのヌクレオチドは所定の順序で反応混合物に順次に加えられる。ヌクレオチドが鋳型塩基に相補的であり、したがって組み込まれるならば、PPiが放出される。PPiおよび他の試薬は、リシフェラーゼ反応における基質として使用されて可視光を発生させ、その可視光がルミノメータまたは電荷結合素子によって検出される。発生した光は、DNAプライマーに加えられるヌクレオチドの数に比例し、ピログラムの形態で存在するヌクレオチドの数および型を示すピークを生じさせる。パイロシーケンシングは、DNAの亜硫酸水素ナトリウム転換ののち生じる配列差を利用することができる。
【0038】
区別可能な産物を作製するための反応では多様な増幅技術を使用することができる。それらの技術のいくつかはPCRを用いる。他の適当な増幅法としては、リガーゼ連鎖反応法(LCR)(Barringer et al, 1990)、転写増幅法(Kwoh et al. 1989、WO88/10315)、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅法(米国特許第6,410,276号)、コンセンサス塩基配列プライミングポリメラーゼ連鎖反応法(米国特許第4,437,975号)、随意プライミングポリメラーゼ連鎖反応法(WO90/06995)、核酸ベースの配列増幅法(NASBA)(米国特許第5,409,818号、同第5,554,517号、同第6,063,603号)、切れ目移動増幅法(WO2004/067726)がある。
【0039】
元のゲノムDNA中のCpGジヌクレオチドにおけるメチル化状態を反映する配列変化がPCRプライマー設計への二つの手法を提供する。第一の手法では、プライマーは、それ自体、任意の潜在的なDNAメチル化部位に「及ぶ」ことはない、またはそれにハイブリダイズしない。示差的なメチル化の部位における配列変異が二つのプライマーの間に位置している。このようなプライマーは、亜硫酸水素塩ゲノム配列決定、COBRA、Ms-SNuPEで使用される。第二の手法では、プライマーは、変換配列のメチル化型または非メチル化型のいずれかと特異的にアニールするように設計されている。標的に対して十分な相補性領域、たとえば12、15、18または20個のヌクレオチドがある場合には、プライマーはまた、ハイブリダイゼーションを妨げず、かつ他の操作にとって有用であることができるさらなるヌクレオチド残基を含有することができる。このような他の残基の例は、制限エンドヌクレアーゼ開裂、リガンド結合または因子結合またはリンカもしくはリピートのための部位であることができる。オリゴヌクレオチドプライマーは、修飾されたメチル化残基に対して特異的であるようなものであってもよいし、そうでなくてもよい。
【0040】
修飾されたDNAと非修飾DNAとを区別する一つの方法は、DNAの一方または他方の形態に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプライマーをハイブリダイズすることである。ハイブリダイゼーションののち、増幅反応を実施し、増幅産物をアッセイすることができる。増幅産物の存在は、試料がプライマーにハイブリダイズしたことを示す。プライマーの特異性は、DNAが修飾されたものであるのかどうかを示し、それが他方で、DNAがメチル化されたものであるのかどうかを示す。たとえば、亜硫酸水素イオンが非メチル化シトシン塩基を修飾して、それらをウラシル塩基へと変化させる。ウラシル塩基は、ハイブリダイゼーション条件下、アデニン塩基にハイブリダイズする。したがって、グアニン塩基の代わりにアデニン塩基を含むオリゴヌクレオチドプライマーは、亜硫酸水素イオン修飾DNAにハイブリダイズするであろうが、一方、グアニン塩基を含有するオリゴヌクレオチドプライマーはDNA中の非修飾(メチル化)シトシン残基にハイブリダイズするであろう。DNAポリメラーゼを使用する増幅および第二のプライマーが、容易に観察することができる増幅産物を生じさせる。このような方法はMSP (Methylation Specific PCR/メチル化特異的PCR、特許番号5,786,146、同6,017,704、同6,200,756)と呼ばれる。増幅産物は、場合によっては、特定の産物に対して特異的であることもできる特定のオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせることができる。または、修飾されたDNAおよび非修飾DNAの両方からの増幅産物にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを使用することもできる。
【0041】
修飾されたDNAと非修飾DNAとを区別するもう一つの方法は、特定の産物に対して特異的であることもできるオリゴヌクレオチドプローブを使用することである。そのようなプローブは、修飾されたDNAに、または修飾されたDNAの増幅産物に直接ハイブリダイズさせることができる。オリゴヌクレオチドプローブは、当技術分野で公知の任意の検出システムを使用して標識することができる。そのような検出システムとしては、蛍光成分、放射性同位元素標識成分、生体発光成分、発光成分、化学発光成分、酵素、基質、レセプタまたはリガンドがあるが、これらに限定されない。
【0042】
メチル化CpGジヌクレオチドの同定のためのさらに別の方法は、McCP2タンパク質のMBDドメインがメチル化DNA配列に選択的に結合する能力を利用する(Cross et al, 1994、Shiraishi et al, 1999)。制限エンドヌクレアーゼ消化ゲノムDNAが、固体マトリックスに固定された発現His標識メチル-CpG結合ドメインに添加され、高メチル化DNA配列を単離するための分取カラムクロマトグラフィーに使用される。
【0043】
リアルタイム化学が反応の早期段階におけるPCR増幅の検出を可能にし、DNAおよびRNAの定量をより容易かつより正確にする。リアルタイムPCRのいくつかの変形が公知である。そのような変形としては、蛍光体および蛍光クエンチャで標識された別個のプローブを有するTaqMan(商標)システムおよびモレキュラービーコン(商標)システムがある。Scorpion(商標)システムでは、ヘアピン構造の形態の標識プローブがプライマーにリンクされる。
【0044】
DNAメチル化解析は、MALDI-TOFF、MassARRAY、MethyLight、エチル化アレルの定量解析(QAMA)、酵素的領域メチル化アッセイ法(ERMA)、HeavyMethyl、QBSUPT、MS-SNuPE、MethylQuant、定量的PCR配列決定およびオリゴヌクレオチドベースのマイクロアレイシステムをはじめとする多数の技術で成功裏に実施されてきた。
【0045】
サイレンシングが試験および/または検出される遺伝子の数は異なることができ、一、二、三、四、五またはそれ以上の遺伝子を試験および/または検出することができる。場合によっては、少なくとも二つの遺伝子が選択される。
【0046】
試験は、診断的に実施することもできるし、治療的療法と併せて実施することもできる。試験は、治療的療法の効能を、化学療法剤であるのか、ポリヌクレオチドのような生物学的な剤であるのかを問わず、モニタリングするために使用することができる。試験はまた、どの治療的療法または予防法を患者に対して使用するのかを決定するために使用することもできる。そのうえ、試験は、剤を試験し、様々な患者グループに対するそれらの効能を決定するために、患者をグループに層別化するために使用することもできる。
【0047】
診断、予後または個別薬物使用のための試験試料は、外科的試料、たとえば生検材料または細針吸引物、パラフィン包埋結腸、直腸、小腸、胃、食道、骨髄、乳房、卵巣、前立腺、腎臓、肺、脳または他の器官組織、体液、たとえば血液、血清、リンパ液、脳髄液、唾液、痰、気管支液、管液、糞便、尿、リンパ節または精液から得ることができる。このような供給源は、くまなく挙げたわけではなく、例示的である。そのような検体または流体から得ることができる試験試料は、剥離した腫瘍細胞および/または死滅もしくは損傷した腫瘍細胞から放出される遊離核酸を含む。核酸としては、RNA、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、一本または二本鎖およびタンパク質会合核酸がある。そのような検体細胞から得られる精製または非精製形態の任意の核酸検体を出発核酸として使用することができる。
【0048】
細胞への正常な遺伝子発現を回復させるためには、脱メチル化剤をインビトロまたはインビボで細胞と接触させることができる。適当な脱メチル化剤としては、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-アザ-シチジン、ゼブラリン、プロカインおよびL-エチオニンがあるが、これらに限定されない。この反応は、診断、予後の決定および適当な治療的療法の決定に使用することができる。結腸、頭部および頚部、食道、胃、膵臓または肝臓の癌を治療するために脱メチル化剤が使用されるならば、

から選択される遺伝子の発現またはメチル化を試験することができる。
【0049】
後成的にサイレンシングされた遺伝子発現を回復させる代替方法は、非メチル化ポリヌクレオチドを細胞に導入して、その細胞の中で発現するようにすることである。様々な遺伝子治療ベクターおよびヒビクルが当技術分野で公知であり、特定の状況に適するように任意のものを使用することができる。特定のベクターは短期的発現に適し、特定のベクターは長期的発現に適している。特定のベクターは特定の器官にとって栄養性であり、特定の状況で適切であるようにこれらを使用することができる。ベクターはウイルス性または非ウイルス性であることができる。ポリヌクレオチドは、ベクター、たとえばウイルスベクターに含めることができるが、含める必要はなく、たとえば、リポソーム、マイクロバブルのようなマトリックスに製剤化することができる。ポリヌクレオチドは、対象に投与することによって細胞に導入することができ、それが細胞と接触し、細胞によって吸収され、コードされたポリペプチドが発現するようにする。好ましくは、特異的なポリヌクレオチドは、患者がそれに関して試験されており、サイレンシングされた型を有することが見いだされているポリヌクレオチドである。結腸、頭部および頚部、食道、胃、膵臓、肝臓の癌を治療するためのポリヌクレオチドは、一般的に、

から選択される遺伝子をコードする。
【0050】
メチル化サイレンシングされた遺伝子発現を示す細胞は一般に、脱メチル化剤を対象に投与することによってインビボで脱メチル化剤と接触させる。好都合な場合には、脱メチル化剤は、たとえばカテーテル処置法を使用して、対象中で無秩序な成長を示す細胞の部位もしくはその近くまたは血液が細胞部位に流れるところの血管中に投与することができる。同様に、処置される器官またはその部分を短絡化処置によって単離することができる場合、その短絡部を介して脱メチル化剤を投与して、細胞を含有する部位に脱メチル化剤を実質的に提供することができる。脱メチル化剤はまた、全身にまたは当技術分野で公知の他の経路で、投与することができる。
【0051】
ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする配列に加えて、機能的に連結される転写調節要素、翻訳調節要素等を含むことができ、ベクターに含まれることができるか、または、特定の細胞へのポリヌクレオチドの導入を容易にするマトリックス、たとえばリポソームもしくはマイクロバブルに製剤化されることができる裸のDNA分子の形態にあることができる。「機能的に連結される」とは、二つまたはそれ以上の分子が、単一ユニットとして働き、一方もしくは両分子またはそれらの組み合わせに帰することができる機能を発揮するように互いに対して配置されていることをいう。所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は調節要素に機能的に連結されていることができ、その場合、その調節要素は、通常それが細胞中で会合しているポリヌクレオチド配列に影響するのと同様に、その調節効果をポリヌクレオチドに付与する。
【0052】
哺乳動物またはヒトに投与するか、または細胞と接触させる所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの恒常的もしくは望むならば誘導性または組織特異的もしくは発生段階特異的発現を提供することができるプロモーター配列、ポリA認識配列およびリボソーム認識部位もしくは内部リボソーム導入部位または組織特異的であることができる他の調節要素、たとえばエンハンサーを含むことができる。ベクターはまた、所望により、原核生物または真核生物宿主システムまたは両方における複製に必要な要素を含有することができる。プラスミドベクターおよびウイルスベクター、たとえばバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、セムリキ森林ウイルスおよびアデノ関連ウイルスを含むこのようなベクターは周知であり、販売元(Promega, Madison WI., Stratagene, La Jolla CA., GIBCO/BRL, Gaithersburg MD.)から購入することができるか、または当業者によって構築されることができる(たとえば、いずれも参照により本明細書に組み入れられるMeth. Enzymol., Vol. 185, Goeddel, ed. (Academic Press, Inc., 1990)、Jolly, Canc. Gene Ther. 1:51-64, 1994、Flotte, J. Bioenerg. Biomemb. 25:37-42, 1993、Kirshenbaum et al., J. Clin. Invest. 92:381-387, 1993を参照すること)。
【0053】
所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を駆動するためには、テトラサイクリン(tet)誘導性プロモーターを使用することができる。tet誘導性プロモーターに機能的に連結されるポリヌクレオチドを含有する対象にテトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似物を投与すると、コードされたポリペプチドの発現が誘導される。または、ポリヌクレオチドは、組織特異的調節要素、たとえばα胎児タンパク質プロモーター(Kanai et al., Cancer Res. 57:461-465, 1997; He et al., J. Exp. Clin. Cancer Res. 19:183-187, 2000)またはアルブミンプロモーター(Power et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 203:1447-1456, 1994; Kuriyama et al., Int. J. Cancer 71:470-475, 1997)のような肝細胞特異的調節要素、ミオグロビンプロモーター(Devlin et al., J. Biol. Chem. 264:13896-13901, 1989; Yan et al., J. Biol. Chem. 276:17361-17366, 2001)のような筋細胞特異的調節要素、PSAプロモーター(Schuur et al., J. Biol. Chem. 271:7043-7051, 1996; Latham et al., Cancer Res. 60:334-341, 2000)のような前立腺細胞特異的調節要素、エラスターゼプロモーター(Ornitz et al., Nature 313:600-602, 1985; Swift et al., Genes Devel. 3:687-696, 1989)のような膵細胞特異的調節要素、白血症(CD43)プロモーター(Shelley et al., Biochem. J. 270:569-576, 1990; Kudo and Fukuda, J. Biol. Chem. 270:13298-13302, 1995)のような白血球特異的調節要素などに、機能的に連結されて、ポリペプチドの発現が個体中の特定の細胞または培養物、たとえば器官培養物中の混合細胞集団中の特定の細胞に限定されるようになっていることもできる。その多くが市販されている組織特異的調節要素をはじめとする調節要素は当技術分野で周知である(たとえば、InvivoGen; San Diego Calif.を参照すること)。
【0054】
ポリヌクレオチドを細胞、特に対象中の細胞に導入するためには、ウイルス発現ベクターを使用することができる。ウイルスベクターは、比較的高い効率で宿主細胞に感染し、特定の細胞型に感染することができるという利点を提供する。たとえば、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをバキュロウイルスベクター中にクローニングしたのち、それを使用して昆虫宿主細胞に感染させて、それにより、コードされたポリペプチドを大量に産生するための手段を提供することができる。特定の宿主システム、特に哺乳動物システムで使用するためのウイルスベクターが開発されており、たとえば、レトロウイルスベクター、他のレンチウイルスベクター、たとえばヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくもの、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、肝炎ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター等がある(いずれも参照により本明細書に組み入れられるMiller and Rosman, BioTechniques 7:980-990, 1992; Anderson et al., Nature 392:25-30 Suppl., 1998; Verma and Somia, Nature 389:239-242, 1997; Wilson, New Engl. J. Med. 334:1185-1187 (1996)を参照すること)。
【0055】
場合によってはベクターに含めることができるポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の多様な任意の方法によって細胞に導入することができる(いずれも参照により本明細書に組み入れられるSambrook et al., 前記、1989; Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Md. (1987, and supplements through 1995))。このような方法としては、たとえば、トランスフェクション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法および、ウイルスベクターの場合、感染法があり、細胞へのポリヌクレオチドの導入を容易にすることができ、細胞への導入の前にポリヌクレオチドを分解から保護することができるリポソーム、マイクロエマルション等の使用を含むことができる。特に有用な方法は、循環に注入することができるマイクロバブルにポリヌクレオチドを組み込む段階を含む。超音波が腫瘍に伝達されるように超音波源を配置することができ、ポリヌクレオチドを含有する循環するマイクロバブルが、腫瘍の部位で超音波によって破裂し、それゆえに、癌の部位でポリヌクレオチドを提供する。特定の方法の選択は、たとえば、ポリヌクレオチドが導入される細胞およびその細胞が培養状態にあるのか、または体内でインサイチュー状態にあるのかに依存する。
【0056】
ウイルスベクターの感染による細胞へのポリヌクレオチドの導入は、効率的に核酸分子を細胞に導入することができる。そのうえ、ウイルスは、非常に特殊化されており、一つまたはいくつかの特定の細胞型に感染し、その中で増殖する能力に基づいてベクターとして選択することができる。したがって、それら固有の特異性を使用して、ベクターに含まれる核酸分子を特定の細胞型に標的化することができる。HIVに基づくベクターを使用してT細胞に感染させ、アデノウイルスに基づくベクターを使用して、たとえば気道上皮細胞に感染させ、ヘルペスウイルスに基づくベクターを使用して神経細胞に感染させることができるなどである。他のベクター、たとえばアデノ関連ウイルスは、より大きな宿主細胞範囲を有することができ、したがって、種々の細胞型に感染させるために使用することができるが、ウイルスまたは非ウイルスベクターを特定のレセプタまたはリガンドで修飾して、レセプタ媒介事象を介して標的特異性を変化させることもできる。本発明のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含有するベクターは、細胞、たとえばポリヌクレオチドを含有するベクターの増殖を可能にする宿主細胞またはポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターのパッケージングを可能にするヘルパー細胞に含めることができる。ポリヌクレオチドは、細胞中に一時的に含めることができるか、またはたとえば細胞ゲノムへの組み込みによって安定な状態に維持することができる。
【0057】
遺伝子

によってコードされるポリペプチドは、対象中で無秩序な成長を示す細胞の部位に直接投与することができる。ポリペプチドは、本明細書に開示する方法を使用して望みどおり産生し、単離し、製剤化することができ、ポリペプチドが標的細胞の細胞膜を透過することができるように細胞と接触させることができる。ポリペプチドは、細胞膜を透過する輸送を促進するペプチドまたはポリペプチド成分を含む融合タンパク質の一部として提供することもできる。たとえば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV) TATタンパク質トランスダクションドメインまたは核局在化ドメインを対象のマーカーに融合させることができる。投与されるポリペプチドは、細胞へのポリペプチドの導入を容易にするマトリックスに製剤化することができる。
【0058】
公知の遺伝子およびタンパク質の代表として特定のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列がここで挙げられているが、当業者は、データベース中の配列が特定の個体中に存在する配列を表すということを理解するであろう。他の個体からの任意の対立遺伝子配列をも同様に使用することができる。これらは典型的には、1〜10残基、1〜5残基または1〜3残基で開示された配列とは異なる。そのうえ、対立遺伝子配列は典型的には、BLASTホモロジーツールのようなアルゴリズムを使用して計測されると、データベース配列と少なくとも95、96、97、98または99%同一である。
【0059】
脱メチル化剤、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのような剤は典型的には、対象への投与に適した組成物に製剤化される。したがって、本発明は、一つまたは複数の遺伝子のメチル化サイレンシングされた転写のせいで無秩序な成長を示す細胞に対し、調節された成長を回復させるのに有用である剤を含有する組成物を提供する。剤は、そのような無秩序な成長に関連する病的状態を患う対象を処置するための医薬として有用である。このような医薬は一般にキャリアを含む。許容可能なキャリアは当技術分野で周知であり、たとえば、水溶液、たとえば水もしくは生理食塩水もしくは他の溶媒または賦形剤、たとえばグルコール、グリセロール、油、たとえばオリーブ油または注射可能な有機エステルを含む。許容可能なキャリアは、たとえば複合体の吸収を安定化または増大させるように働く生理的に許容可能な化合物を含有することができる。このような生理学的に許容可能な化合物としては、たとえば、炭水化物、たとえばグルコース、スクロースもしくはデキストラン、抗酸化物質、たとえばアスコルビン酸もしくはグルタチオン、キレート化剤、低分子量タンパク質または他の安定剤もしくは賦形剤がある。当業者は、生理学的に許容可能な化合物をはじめとする許容可能なキャリアを察知する、または容易に決定することができるであろう。キャリアの性質は、治療剤の物理化学的特性および組成物の投与経路に依存する。治療剤または医薬の投与は、経口投与であることができるか、または非経口投与、たとえば静脈内、筋内、皮下、経皮、鼻腔内、気管支内、膣、直腸、腫瘍内投与または当技術分野で公知の他のそのような方法による投与であることができる。医薬組成物はまた、一つまたは複数のさらなる治療剤を含有することができる。
【0060】
治療剤は、被包材料、たとえば水中油型エマルション、マイクロエマルション、ミセル、混合ミセル、リポソーム、微小球、マイクロバブルまたは他のポリマーマトリックスの中に組み込むことができる(たとえば、いずれも参照により本明細書に組み入れられるGregoriadis, Liposome Technology, Vol. 1 (CRC Press, Boca Raton, Fla. 1984); Fraley, et al., Trends Biochem. Sci., 6:77 (1981)を参照すること)。たとえばリン脂質または他の脂質からなるリポソームは、比較的簡単に製造し、投与することができる非毒性で、生理学的に許容可能かつ代謝可能なキャリアである。「ステルス」リポソーム(たとえば、いずれも参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,882,679号、同第5,395,619号および同第5,225,212号を参照すること)が、本発明の方法で有用な組成物を調製する場合に特に有用なそのような被包剤の一例であるが、治療剤が循環中にとどまる時間を延ばすような他の「隠蔽された」リポソームを同様に使用することができる。また、たとえばカチオン性リポソームを特定のレセプタまたはリガンドで修飾することもできる(参照により本明細書に組み入れられるMorishita et al., J. Clin. Invest., 91:2580-2585 (1993))。加えて、たとえばアデノウイルス−ポリリシンDNA複合体を使用してポリヌクレオチド剤を細胞に導入することができる(たとえば、参照により本明細書に組み入れられるMichael et al., J. Biol. Chem. 268:6866-6869 (1993)を参照すること)。
【0061】
治療剤を含有する組成物の投与経路は、一部には、分子の化学構造に依存する。たとえばポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、消化管中で分解されることがあるため、経口的には効率的に送達されない。しかし、たとえば内在性プロテアーゼによる分解を受けにくくするか、または消化管中で吸収されやすくするためにポリペプチドを化学的に修飾する方法を使用することができる(たとえば、Blondelle et al., 前記、1995, Ecker and Crook, 前記、1995を参照すること)。
【0062】
本発明の方法を実施する際に投与される剤の合計量は、単一用量としてボーラス投与または比較的短期間の輸液によって対象に投与することができるか、あるいは多数の用量が長期間にわたって投与される分割処置プロトコルを使用して投与することができる。当業者は、対象における病的状態を処置するための組成物の量が、対象の年齢および健康状態ならびに投与経路および施される処置の回数をはじめとする多くの要因に依存するということを察知するであろう。これらの要因を考慮して、当業者は、具体的な用量を必要に応じて調節するであろう。一般に、組成物の製剤形態ならびに投与の経路および頻度は、はじめに、フェーズIおよびフェーズII治験を使用して決定される。
【0063】
組成物は、経口製剤形態、たとえば錠剤または液剤もしくは懸濁剤の形態として製剤化することができるか、あるいは経腸または非経口的適用に適した有機または無機キャリアまたは賦形剤との混合物を含むことができ、たとえば、錠剤、ペレット剤、カプセル剤、坐剤、液剤、乳剤、懸濁剤または使用に適した他の剤形のための薬学的に許容可能な通常の非毒性キャリアとで複合化することができる。キャリアとしては、上記で開示したものに加えて、グルコース、ラクトース、マンノース、アカシアガム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイドシリカ、ジャガイモデンプン、尿素、中鎖トリグリセリド、デキストランおよび製剤を固形、半固形または液体形に製造する際の使用に適した他のキャリアを挙げることができる。加えて、補助剤、安定剤、増粘剤または着色剤および香料、たとえばトリウロースのような安定化乾燥剤を使用することができる(たとえば米国特許第5,314,695号を参照すること)。
【0064】
診断および予後の精度および感度は、マーカー、たとえば5もしくは6種または9もしくは10種または14もしくは15種のマーカーの組み合わせを使用することによって達成することができるが、実用を考慮すると、少なめの組み合わせを使用せざるを得ないかもしれない。特定のガンに関して、2、3、4または5種のマーカーを含むマーカーの任意の組み合わせを使用することができる。本明細書で提供される個々のマーカーの具体的な開示を与えられると、2、3、4または5種のマーカーの組み合わせは容易に想定することができる。
【0065】
示差的にメチル化されたGpGアイランドのメチル化のレベルが疾病または癌に関する多様な情報を提供することができる。それを使用して個体における前癌または癌を診断することができる。前癌または癌前駆体は、結腸の最内側(管腔)の層において見出される癌の極めて初期である。それは、表在性癌と呼ばれる場合もある。または、それを使用して、個体における疾病または癌の経過を予測すること、または疾病もしくは癌に対する罹病性を予測すること、または個体における疾病もしくは癌の進行を病期決定することができる。それは、全体的生存率を予測するか、または疾病もしくは癌の再発率を予測すること、および個体が受けた処置過程の有効性を決定することに役立つことができる。基準レベルと比較した場合のメチル化レベルの増減および検出時の増減の変化が有用な予後値および診断値を提供する。
【0066】
予後法を使用して、癌腫に進行する可能性の高い腺腫を有する患者を特定することができる。そのような予測は、正常組織に対し、腺腫中で、表1(図9)に特定された遺伝子の少なくとも一つの後成的サイレンシングに基づいて行うことができる。そのような患者には、内視鏡的ポリープ切除術または摘除術および示唆される場合には外科的処置、化学療法、放射線、生物学的反応変更因子または他の療法をはじめとするさらなる適切な療法または予防法オプションを提供することができる。そのような患者はまた、より頻繁な結腸鏡検査、S状結腸鏡検査、バーチャル結腸鏡検査、ビデオカプセル内視鏡検査、PET-CT、分子画像診断または他の画像診断技術を含み、これらに限定されないさらなる診断またはモニタリング手法の推奨を受けることができる。
【0067】
癌患者を処置するための治療戦略は、後成的にサイレンシングされた遺伝子の再活性化に基づいて選択することができる。患者の癌細胞中での遺伝子の発現が脱メチル化剤によって再活性化されるか、または後成的にサイレンシングされる、

より選択される遺伝子を、まず特定する。次いで、その遺伝子の発現を高める処置を選択する。そのような処置は、再活性化剤またはポリヌクレオチドの投与を含むことができる。または、ポリペプチドを投与することもできる。
【0068】
本発明によるキットは、メチル化を試験するための試薬をアセンブルしたものである。キットは典型的に、すべての要素を含み、場合によっては取扱説明書をも含むパッケージの状態にある。パッケージは、望むときまで成分が混合しないように分割されてもよい。各成分は異なる物理的状態にあることができる。たとえば、一部の成分は凍結乾燥状態にあり、一部の成分は水溶液の状態にあってもよい。一部の成分は凍結していてもよい。個々の成分がキット内で別々のパッケージングされることができる。キットは、メチル化および非メチル化シトシン残基を示差的に修飾するための、上記のような試薬を含有することができる。望むならば、キットは、以下の遺伝子/マーカーの転写開始点から1kb以内の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを含有する。

典型的には、キットは、単一の遺伝子またはマーカーに関してフォワードプライマーおよびリバースプライマーの両方を含有する。十分な相補性領域、たとえば12、15、18または20のヌクレオチドがある場合には、プライマーはまた、ハイブリダイゼーションを妨げず、かつ他の操作にとって有用であることができるさらなるヌクレオチド残基を含有することもできる。例示的な他のそのような残基は、制限エンドヌクレアーゼ開裂、リガンド結合または因子結合またはリンカもしくはリピートのための部位であってもよい。オリゴヌクレオチドプライマーは、修飾されたメチル化残基に特異的であるようなものであってもよいし、そうでなくてもよい。キットは、場合によっては、オリゴヌクレオチドプローブを含有することができる。プローブは、修飾されたメチル化残基を含有する配列または非メチル化残基を含有する配列に特異的であることができる。キットは、場合によっては、メチル化シトシン残基を修飾するための試薬を含有することができる。キットはまた、増幅を実行するための成分、たとえばDNAポリメラーゼおよびデオキシリボヌクレオチドを含有することもできる。また、プライマーまたはプローブ上の検出可能な標識を含む検出手段がキットに設けられてもよい。キットはまた、本発明のマーカー(表1;図9)の一つに関して遺伝子発現を検出するための試薬を含有することもできる。このような試薬は、たとえばプローブ、プライマーまたは抗体を含むことができる。酵素またはリガンドの場合、マーカーの存在を評価するために基質または結合相手を求めることができる。
【0069】
本態様の一つの局面では、シトシン残基を修飾するが、メチル化シトシン残基を修飾しないヒドラジンと遺伝子を接触させ、その後、ヒドラジン処理した遺伝子配列を、ヒドラジン修飾シトシン残基における核酸分子を開裂させる試薬、たとえばピペリジンと接触させて、それによりフラグメントを含む産物を産生する。たとえば電気泳動法、クロマトグラフィー法または質量分析法を使用してフラグメントを分子量にしたがって分離し、分離パターンを同様に処理された対応する非メチル化遺伝子配列の分離パターンと比較することにより、メチル化シトシン残基を含有する試験遺伝子中の位置でギャップが明らかになる。そのようなものとして、ギャップの存在は、試験細胞の標的遺伝子中のCpGジヌクレオチド中のシトシン残基のメチル化を示す。
【0070】
亜硫酸水素イオン、たとえば亜硫酸水素ナトリウムが非メチル化シトシン残基を亜硫酸水素修飾シトシン残基に転換する。亜硫酸水素イオン処理した遺伝子配列をアルカリ条件に曝露すると、亜硫酸水素修飾シトシン残基をウラシル残基に転換することができる。亜硫酸水素ナトリウムはシトシンの5,6-二重結合と容易に反応して(ただし、メチル化シトシンとは反応し難い)、脱アミノ化を受けてスルホン化ウラシルを生じさせやすいスルホン化シトシン反応中間体を形成する。スルホネート基をアルカリ条件への曝露によって脱離させて、ウラシルを形成することができる。DNAをたとえばPCRによって増幅させ、配列決定して、試料のDNA中でCpG部位がメチル化されているかどうかを決定することができる。ウラシルは、Taqポリメラーゼによってチミンとして認識され、PCRにより、得られた産物は、出発鋳型DNA中で5-メチルシトシンが存在していた位置でのみシトシンを含有する。試験細胞の亜硫酸水素イオン処理遺伝子配列中のウラシル残基の量または分布を、同様に処理された対応する非メチル化遺伝子配列とで比較することができる。試験細胞からの遺伝子中のウラシル残基の量または分布の減少が、試験細胞の遺伝子中のCpGジヌクレオチド中のシトシン残基のメチル化を示す。ウラシル残基の量または分布はまた、亜硫酸水素イオン処理標的遺伝子配列を、アルカリ条件への曝露ののち、ウラシル残基を含有する標的遺伝子かまたはウラシル残基を欠く標的遺伝子のいずれかであるが両方ではない、ヌクレオチド配列に選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドと接触させる段階によって、かつオリゴヌクレオチドの選択的ハイブリダイゼーション(またはその欠如)を検出する段階によって検出することができる。
【0071】
試験化合物は、癌を処置するその潜在能力に関して試験することができる。試験のための癌細胞は、前立腺癌、肺癌、乳癌および大腸癌からなる群より選択することができる。表1(図9)に列挙されたものから選択される遺伝子の発現を決定し、細胞中の化合物によってそれが増大している場合には、または細胞中の化合物によって遺伝子のメチル化が低減している場合には、それを、癌を処置する潜在能力を有すると特定することができる。
【0072】
または、そのような試験は、化学療法剤に対する食道、頭部および頚部、胃、小腸、膵臓、肝臓の癌の患者の反応を決定するために使用することもできる。患者を化学療法剤で処置することができる。

より選択される遺伝子の発現が癌細胞中の化合物によって増大する場合には、または遺伝子のメチル化が癌細胞中の化合物によって低減する場合には、それを、患者を処置するのに有用なものとして選択することができる。
【0073】
上記開示は本発明を概説する。本明細書に開示されたすべての参考文献は参照により明示的に組み入れられる。例示の目的のためだけに提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の具体例を参照することにより、より完全な理解を得ることができる。
【0074】
実施例
実施例1
材料および方法
細胞培養および処理
HCT116細胞および同質遺伝子ノックアウト派生物を前記のように維持した(14)。薬物治療の場合、対数増殖期CRC細胞を、10% BCSおよび1×ペニシリン/ストレプトマイシンならびに5μM 5アザ-デオキシシチジン(DAC) (Sigma、原液:PBS中1mM)を含有するMcCoys 5A培地(Invitrogen)中、96時間、24時間ごとに培地およびDACを交換しながら培養した。300nMトリコスタチンA(Sigma、原液:エタノールに溶解した1.5mM)による細胞処理を18時間実施した。平行して、対照細胞を、等しい量のPBSまたはエタノールを薬物なしで加える偽処理に付した。
【0075】
マイクロアレイ解析
Triazol (Invitrogen)およびRNeasyキット(Qiagen)を製造者の取扱い指示にしたがって使用して、DNAアーゼ消化段階を含め、全RNAを対数増殖期細胞から収穫した。NanoDrop ND-100を使用してRNAを定量したのち、2100 Bioanalyzer (Agilent Technologies)を用いて品質評価を実施した。個体試料のRNA濃度は200ng/ulよりも高く、28s/18sの比は2.2よりも大きく、RNA完全性は10であった(10が最高スコア)。低RNA入力蛍光リニア増幅キットを製造者の取扱い指示にしたがって使用して、試料増幅および標識化手順を実施した。RNeasyミニキット(Qiagen)を使用して標識化cRNAを精製し、定量した。増幅の前にRNAスパイクイン対照(Agilent Technologies)をRNA試料に加えた。Cy3またはCy5で標識化された試料0.75マイクログラムを対照標的(Agilent Technologies)と混合し、Oligoマイクロアレイ上でアセンブルし、ハイブリダイズさせ、Agilentマイクロアレイプロトコルにしたがって処理した。AgilentのG2565BAマイクロアレイスキャナを用いて、Agilent Technologiesによって推奨される設定を使用してスキャニングを実施した。
【0076】
データ解析
すべてのアレイを、製造者によって推奨される品質チェックに付した。アーチファクトに関して画像を目視的に検査し、赤および緑の両チャネルのシグナルおよびバックグラウンド強さの分布を試験して異常なアレイを特定した。不規則さは認められず、すべてのアレイを保持し、使用した。R統計学的計算プラットフォーム(23)およびBioconductorバイオインフォマチックスソフトウェアプロジェクトからのパッケージ(24)を使用してすべての計算を実施した。Bioconductorからのlimmaパッケージで具現化されているようなバックグラウンドサブトラクションおよびLoEss正規化ののち、緑シグナルに対する赤シグナルの対数比を計算した(25、26)。同じ四分位数間範囲(75番目の百分位数―25番目の百分位数)を有するように個々のアレイをスケーリングした。色素交換(dye-swap)複製マイクロアレイに関して対数倍率変化を平均化して、条件ごとに発現値の単一セットを生成した。
【0077】
メチル化および遺伝子発現解析
TRIzol試薬(Invitrogen)を製造者の取扱い指示にしたがって用いてRNAを単離した。逆転写PCR (RT-PCR)の場合、Ready-To-Go(商標) You-Prime First-Strand Beads (Amersham Biosciences)をランダムヘキサマー(1反応あたり0.2μg)の添加とともに使用することによって全RNA 1μgを逆転写した。RTプライマー設計には、Primer3 (http://frodo.wi.mit.edu/cgi-bin/primer3/primer3_www.cgi)を使用した。MSP解析のために、標準的なフェノール-クロロホルム抽出法にしたがってDNAを抽出した。EZ DNAメチル化キット(Zymo Research)を使用してゲノムDNAの亜硫酸水素塩修飾を実施した。MSPPrimer (http://www.mspprimer.org)を使用して、非メチル化およびメチル化プロモーター配列に特異的なプライマー配列を設計した。MSPを前記のように実施した(20)。すべてのPCR産物(RT-PCRの場合には50μl全量の15μl、MSPの場合には25μl全量の7.5μl)を、GelStar Nucleic Acid Gel Stain (Cambrex Bio Science)を含有する2%アガロースゲルに直接装填し、紫外線照射下で視覚化した。MSP、亜硫酸水素塩配列決定およびRT-PCRのためのプライマー配列および条件は、要求すれば著者から得ることができる。
【0078】
ヒト腫瘍解析
University Hospital MaastrichtのDepartment of Pathologyのアーカイブから、原発CRCからのホルマリン固定パラフィン包埋組織を得た。Maastricht University, University Hospital MaastrichtおよびJohns Hopkins University HospitalのMedical Ethical Committeeによる認可を得た。Puregene DNA単離キット(Gentra Systems)を使用してDNAを単離した。
【0079】
実施例2
ゲノム全体の発現アレイベースの手法で、野生型HCT116CRC細胞を、二つの主要なヒトDNAメチルトランスフェラーゼの個々および組み合わせの遺伝子欠失を有する同質遺伝子パートナ細胞と比較することにより、過剰メチル化依存性遺伝子発現変化のグローバルな特定に対する本発明者らの最初の段階を実施した(図1A、14)。重要なことに、グローバルな5-メチルシトシンの実質的に完全な損失を有するDNMT1(-/-)DNMT3b(-/-)ダブルノックアウト(DKO) HCT116細胞では、野生型細胞中で基底発現を欠く、以前に個別に検査されたすべての過剰メチル化遺伝子が、遺伝子再発現を伴いながらプロモーター脱メチル化を受ける(14〜17)。44K Agilent Technologiesアレイプラットフォーム上での変化したシグナル強さにしたがって遺伝子を層別化することにより、遺伝子発現の独特なスパイクが、同質遺伝子野生型親細胞、すなわちDNMTの1または3bが個々に欠失しており、DNAメチル化において最小限の変化を含む同質遺伝子細胞系と比較した場合、DKO細胞中で増大することを認める(図1B)。
【0080】
本発明者らの以前の手法に基づくが、全トランスクリプトーム包含範囲を提供して(19)任意の癌細胞系中のサイレンシングされた過剰メチル化遺伝子を特定するように顕著に改変されている薬理学的戦略を使用して、本発明者らは、本発明者らの手法を試験した。高密度に過剰メチル化され、転写的に不活性の遺伝子の場合、DNA脱メチル化剤5-アザ-2'-デオキシシチジン(DAC)が、遺伝子再発現を誘導する十分に立証された能力を有する(18)。他方、これらの同じ遺伝子に関して、クラスIおよびIIのHDACインヒビターであるトリコスタチンA (TSA)は、単独では、再発現を誘導しない(19)。HCT116細胞をDACまたはTSAで処理したのち(図1C)、遺伝子発現がTSAによって増大せず(<1.4倍)、偽処理細胞では検出可能な発現を示さないゾーンを特定した。このゾーン内で、DKO細胞中で見られる遺伝子発現増大と重複するDAC誘導遺伝子発現の特徴的なスパイクを認めた(図1Dの黄色の点を図1Bの青い点と比較すること)。DACは分裂中の細胞のDNA中に組み込まれ、また、処理は96時間しか実施されなかったため、薬理学的手法における遺伝子増大を検出する感度は、DKO細胞の場合に比べて低下した。この遺伝子スパイクの特定は、DKO処理細胞中の遺伝子とDAC処理細胞中の遺伝子との間の密接な関係をTSA処理のみ後の遺伝子発現変化の別個のグループ分けとともに示すクラスター解析によって強調されるような、HDAC阻害に応答しない遺伝子のみの解析に絶対的に依存する(図1E)。これらのデータは、TSAによって再発現した高密度のCpGアイランドを有する遺伝子が検出可能な過剰メチル化を含まなかった、ゲノムのずっと少ない部分を対象とした以前の研究を立証する(19)。遺伝子発現増大の同様なスパイクを五つのさらなるヒトCRC細胞系(SW480、CaCO2、RKO、HT29およびCOLO320)中で見ることができ、この手法が癌細胞系で普遍的に有効であることを立証した(図2A)。
【0081】
実施例3
本発明者らの新規なアレイ手法がCpGアイランド過剰メチル化遺伝子を特定する際の感度を検討するために、まず、過剰メチル化され、完全にサイレンシングされ、DAC処理後にHCT116細胞中で再発現することが知られている11の遺伝子を試験した(図4 (S1A)) (14〜17)。試験したすべての遺伝子はTSA非応答ゾーン内にとどまり(図4 (S1BおよびC))、発現変化の方向はDAC処理細胞およびDKO細胞で十分に相関した(図4 (S1D))。重要なことに、DAC増大の場合、ガイド遺伝子のうち五つ(45%)が2倍またはそれ以上の倍率で増大し、さらに三つの遺伝子、すなわち全部で73%が1.3倍またはそれ以上の倍率で増大した。
【0082】
DKO誘導遺伝子増大とDAC誘導遺伝子増大との間で認められる感度差およびアレイプラットフォーム中でのガイド遺伝子の挙動に基づき、TSA陰性ゾーン内で、上段(2倍またはそれ以上の増加)の遺伝子および次段(1.4〜2倍増)の遺伝子を指定して、過剰メチル化癌遺伝子を特定した(図2B)。また、非処理細胞中で基底発現を有しないことに基づき、これらのゾーンから遺伝子を選択した。実際、HCT116細胞中、532の遺伝子の上段応答ゾーンに及ぶランダムに選択された35のうち30 (86%)および318の上段遺伝子からの48のそのようなSW480細胞遺伝子うち31 (65%)が、MSPによる計測によってCpG過剰メチル化されており(20)、RT-PCRによる計測によって元の細胞系中でサイレンシングされている(図5、7 (S2、S4)ことが証明された。また、次段のDAC処理HCT116細胞中の過剰メチル化遺伝子の発見の効率を試験した。この領域で特定された1190の遺伝子のうち、CpGアイランドを含有するランダムに選択された35の遺伝子のうち17 (49%)が、調和性遺伝子サイレンシングによって過剰メチル化されていた(図6(S3))。これは、新たな癌過剰メチル化遺伝子を特定するための以前のスクリーニングに比較して、本発明者らの手法が抜群に効率的であることを実証する(7、21)。このレベルの検証された過剰メチル化により、HCT116細胞中の過剰メチロームが推定1040の遺伝子およびSW480細胞の場合で推定579の遺伝子からなると計算する(計算の詳細な説明に関しては図8 (表S1)を参照すること)。過剰メチロームは、CaCO2中の532の遺伝子からRKO細胞中の1389の遺伝子にまで及ぶと推定されるであろう(図8 (表S1))。六つの細胞系のすべての段において全部で5906の固有の遺伝子が特定され、1細胞系あたり平均1000近くの過剰メチロームが得られた。
【0083】
実施例4
細胞培養ベースの手法における根本的問題は、それらの手法が原発腫瘍における不活性化の標的である遺伝子を特定するかどうかである。これを検討するため、HCT116上段(17遺伝子)、HCT116次段(2遺伝子)またはSW480上段(1遺伝子)から、検証された遺伝子リストからの20のCpGアイランド含有遺伝子をランダムに選択し、CRC細胞系のパネルにおけるメチル化に関して解析した。試験された遺伝子はすべて二つまたはそれ以上の細胞系中で過剰メチル化されていた(図3A)。かつ、20〜61の原発結腸癌のパネルにおけるこれら20の遺伝子および癌のない個人から得られた20〜40の正常と思われる結腸組織試料の状態を試験した。正常な結腸組織中では遺伝子の大部分(65%)は完全な非メチル化状態であったか、ほとんどメチル化されていなかったが、原発腫瘍の大多数(86%)ではメチル化されていた(図3A)。解析した20の遺伝子のうち13(65%)が「腫瘍特異的メチル化」の基準を満たし、細胞系中の高頻度のメチル化、正常な結腸中の低いまたは検出不可能なメチル化および腫瘍試料中の高頻度のメチル化を示した。本発明者らの戦略の効率は、細胞系中の過剰メチル化遺伝子を特定する場合には少なくとも1/2、癌特異的過剰メチル化遺伝子を特定する場合には少なくとも1/3の発見率を示唆する。
【0084】
実施例5
ヒト腫瘍形成の開始および進行にとって遺伝的機構および後成的機構の両方が重要であるということは明白であるが、これらの変化それぞれの相対的寄与は不十分にしか理解されていない。一握りの癌遺伝子に関するメチル化および突然変異頻度の間の比較が、いずれかの経路の優位性を確信的に実証したわけではない。重要なことに、この問題を問うためのゲノム全体の解析が実施されていない。
【0085】
癌遺伝子の最近のゲノム全体の配列決定において、Sjoblomら(3)は、突然変異が一般に低い出現率を有し、特定された遺伝子の90%が10%未満の突然変異頻度を含むということを認めた。さらには、一般的な結腸または乳腫瘍は、1腫瘍あたり平均11の突然変異しか含まず、単一腫瘍の間で重複はほとんどなかった。これらの低い頻度が、さらなる腫瘍において代替機構がこれらの遺伝子の不活性化を説明できるかどうかという問題を提起する。明らかに、今や本発明者らが個々の腫瘍の中で特定する非常に多くの候補過剰メチル化遺伝子(図2C)が、この後成的変化が多くの腫瘍サプレッサー遺伝子に関して突然変異に至る代替不活性化経路を提供するということを示唆している。
【0086】
遺伝的変化および後成的変化の両方に関して腫瘍をスクリーニングする重要性は、候補過剰メチル化遺伝子と189の突然変異癌(CAN)遺伝子との間のマッチをサーチした場合に著しく強調される。まず、5906の過剰メチローム遺伝子のリストを、乳およびCRC腫瘍で特定されたCAN遺伝子リストとで照合した。これは56の共通の遺伝子を特定し、うち45がCpGアイランドを含むものであった。これら45の遺伝子の26 (58%)が、上記のように特定されたすべての候補遺伝子の検証率と同様に、六つの細胞系の少なくとも一つで過剰メチル化されていることが証明され、さらなる研究に選択された。重要なことに、遺伝子のちょうど半分(13遺伝子)は、正常な結腸中ではメチル化されておらず、原発CRC腫瘍においてメチル化されており(図3B、C)、腫瘍特異的メチル化の特定に関して50%の頻度を示した。試験された遺伝子の事実上それぞれに関して、過剰メチル化の出現率は突然変異の出現率よりも著しく高い(図3D)。したがって、突然変異遺伝子の場合とは異なり、遺伝子の大多数の過剰メチル化は多くの腫瘍の間で共有される性質である。以前には特性決定されていない遺伝子における後成的サイレンシングおよび突然変異に関するこれらの発見が、腫瘍サプレッサー遺伝子としてのそれらの考えられる役割を固める(図3E)。
【0087】
実施例6
BNIP3、FOXE1、SYNE1、SOX17、JAM3、MMP2およびGPNMBに関して収集されたさらなる組織データ
材料および方法
組織確認に使用された臨床試料
リアルタイムMSPを使用して、77の正常組織および94の癌試料に対応する全部で171の結腸パラフィン包埋組織試料を処理した。表2は、組織確認に使用された試料セットの概要を示す。
【0088】
(表2)臨床試料セットの詳細

【0089】
パラフィン包埋組織試料からのDNA抽出
まず、ホルマリン固定パラフィン包埋試料をキシレン750μl中で2時間かけて脱パラフィン化した。次いで、70%エタノール250μlを加えたのち、13000rpmで15分間遠心分離した。上澄みを取り除き、試料を室温で20分間空気乾燥させた。従来的なフェノール/クロロホルム抽出法を使用してDNAを抽出し、50μl LoTe (3mM TRIS、0.2mM EDTA、pH8.0)中に再懸濁させた。続いて、Picogreen(登録商標) dsDNA数量化キット(Molecular Probes, Invitrogen)を製造者の推奨にしたがって使用してDNAを定量した。キットとともに提供されたλDNAを使用して標準曲線を作成した(1〜800ng/ml)。FluoStar Galaxyプレートリーダ(BMG Lab technologies, Germany)を使用してデータを収集した。
【0090】
DNA修飾
EZ-96DNAメチル化キット(Zymo Research)を製造者のプロトコルにしたがって使用して、ピペットロボット(Tecan)上、96穴フォーマットで、DNA 1μgを亜硫酸水素塩修飾に付した。基本的に、45μlのアリコートをM希釈バッファ5μlと混合し、1100rpmで振とうしながら37℃で15分間インキュベートした。次いで、希釈したCT転換試薬100μlを加え、試料を1100rpmで振とうしながら70℃で3時間、暗所にインキュベートした。転換ののち、氷上での10分間のインキュベーションおよびM結合バッファ400μlの添加によって試料を脱塩した。試料を、捕集プレート中、Zymo-Spin Iカラムに装填し、遠心分離ののち、M洗浄バッファ200μlで洗浄した。M脱スルホン化バッファ200μlをカラムに載せ、室温で15分間インキュベートした。カラムの遠心分離ののち、カラムをM洗浄バッファ200μlで2回洗浄した。最後に、DNAをカラムから125μl Tris-HCl 1mM pH8.0中に洗い出し、さらなる処理まで-80℃で貯蔵した。
【0091】
DNA増幅
7900HT高速リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)上でリアルタイムMSPを適用した。修飾されたDNA 5μlを、バッファ(16.6mM (NH4) 2SO4、67mM Tris (pH8.8)、6.7mM MgCl2、10mM β-メルカプトエタノール)、dNTPs (5mM)、フォワードプライマー(6ng)、リバースプライマー(18ng)、分子ビーコン(0.16μM)およびJumpstart DNA Taqポリメラーゼ(0.4単位、Sigma Aldrich)を含有するPCRミックス(全量10μl)に加えた。各遺伝子に使用したプライマー配列および分子ビーコン配列を表3にまとめる。使用したサイクルプログラムは以下のとおりであった。5分間95℃、次いで30秒間95℃の45サイクル、30秒間57℃でおよび30秒間72℃。標準曲線(2×106―20コピー)を含めて、未知の試料のコピー数を標準曲線に対するそれらのCt値の補間によって決定した。
【0092】
(表3)プライマー配列およびビーコン配列

【0093】
組織材料におけるマーカー確認
上記のようにして実験を実施した。表3に示すプライマーセットおよびビーコンプローブを使用して、結腸マーカー:BNIP3、FOXE1、SYNE1、SOX17、JAM3、MMP2およびGPNMBを組織材料において確認した。加えて、独立した参照β-アクチン(ACTB)を計測した。SDS 2.2ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して結果を生成し、Ct値(ソフトウェアによって自動的にセットされる、増幅曲線がしきい値と交差するところのサイクル数)としてエクスポートした。標準曲線を使用してコピー数を補外した。試料ごとのACTB (×1000)に対する対象遺伝子の比率を、各試料内の対象遺伝子ごとのメチル化DNAの相対レベルを表すための測度として使用した。
【0094】
正常試料(対照)および癌(症例)中のBNIP3、FOXE1、SYNE1、SOX17、JAM3、MMP2およびGPNMBのメチル化特異的PCR散布図を図10〜16に示す。計測値は、表記入を容易にするために1000を乗じた、ACTBに比較した場合の各遺伝子の蛍光強さ値の比率と定義されるメチル化比として表す。
【0095】
図10〜16に示すように、治験対照と症例グループとの間で比率における明白な差が認められた。
【0096】
参考文献


【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、結腸直腸癌もしくはその前駆体または結腸直腸癌の素因を特定する方法:
結腸直腸細胞または結腸直腸細胞からの核酸を含有する試験試料において、

からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の後成的サイレンシングを検出する段階、
新生物である細胞、新生物の前駆体である細胞、もしくは新生物形成の素因を有する細胞を含有するものとして、または、新生物である細胞、新生物の前駆体である細胞、もしくは新生物形成の素因を有する細胞からの核酸を含有するものとして、該試験試料を特定する段階。
【請求項2】
前記試験試料が腺腫細胞を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試験試料が腺腫細胞からの核酸を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記試験試料が癌腫細胞または癌腫細胞からの核酸を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの前記遺伝子が、

からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
結腸直腸細胞または結腸直腸細胞からの核酸を含有する前記試験試料において、

からなる群より選択される少なくとも一つの遺伝子の突然変異を検出する段階
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記試験試料が、新鮮な組織検体または凍結組織検体からの試験試料である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記試験試料が生検検体からの試験試料である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記試験試料が外科的検体からの試験試料である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記試験試料が細胞学的検体からの試験試料である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記試験試料が、全血、骨髄、脳髄液、腹膜液、胸膜液、リンパ液、血清、粘液、血漿、尿、乳び、糞便、精液、痰、乳頭吸引液、唾液、スワブ検体、結腸洗浄検体およびブラシ検体からなる群より選択される体液から単離される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
新生物組織の外科的除去が患者に推奨される、請求項8記載の方法。
【請求項13】
アジュバント化学療法が患者に推奨される、請求項8記載の方法。
【請求項14】
アジュバント放射線療法が患者に推奨される、請求項8記載の方法。
【請求項15】
結腸鏡検査またはS字結腸鏡検査が患者に推奨される、請求項11記載の方法。
【請求項16】
増大した頻度の結腸鏡検査が患者に推奨される、請求項8記載の方法。
【請求項17】
結腸の画像診断検査が患者に推奨される、請求項11記載の方法。
【請求項18】
少なくとも二つの遺伝子の後成的サイレンシングが検出される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
後成的サイレンシングが、前記遺伝子中のCpGジヌクレオチドモチーフのメチル化を検出する段階によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
後成的サイレンシングが、前記遺伝子のプロモーター中のCpGジヌクレオチドモチーフのメチル化を検出する段階によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
後成的サイレンシングが、前記遺伝子の発現の減少を検出する段階によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
後成的サイレンシングが、前記遺伝子のmRNAの減少を検出する段階によって検出される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記遺伝子の発現の減少が、対照試料との比較によって決定される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記遺伝子のmRNAの減少が、ヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションによって決定される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
発現の減少が、ヌクレオチド配列決定によって検出される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
発現の減少が、逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって検出される、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記RT-PCRが非定量的に実施される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記RT-PCRがリアルタイムでかつ定量的に実施される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
後成的サイレンシングが、前記遺伝子によってコードされるタンパク質の減少を検出する段階によって検出される、請求項21記載の方法。
【請求項30】
メチル化が、前記遺伝子の少なくとも一つの部分をメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと接触させることによって検出され、
該エンドヌクレアーゼが、非メチル化認識部位と比べてメチル化認識部位を優先的に開裂させ、それにより、該遺伝子の該部分の開裂が該遺伝子の該部分のメチル化を示す、
請求項19記載の方法。
【請求項31】
メチル化が、前記遺伝子の少なくとも一つの部分をメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと接触させることによって検出され、
該エンドヌクレアーゼが、メチル化認識部位と比べて非メチル化認識部位を優先的に開裂させ、それにより、該遺伝子が該メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼのための認識部位を含む場合、該遺伝子の該部分の開裂が該遺伝子の該部分の非メチル化を示す、
請求項19記載の方法。
【請求項32】
メチル化が、
前記試験細胞の前記遺伝子の少なくとも一つの部分を、メチル化シトシン残基と比べて非メチル化シトシン残基を選択的に修飾する化学試薬、または非メチル化シトシン残基と比べてメチル化シトシン残基を選択的に修飾する化学試薬と接触させることによって、および
該接触により生成される産物を検出する段階によって
検出される、請求項19記載の方法。
【請求項33】
前記検出段階が、
修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない少なくとも一つのプローブとのハイブリダイゼーション
を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記検出段階が、
非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない少なくとも一つのプローブとのハイブリダイゼーション
を含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記検出段階が、
修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない少なくとも一つのプライマーを用いる、増幅産物を生成する増幅
を含む、請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記検出段階が、
非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない少なくとも一つのプライマーを用いる、増幅産物を生成する増幅
を含む、請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記産物が、電気泳動、ハイブリダイゼーション、増幅、プライマー伸長、配列決定、リガーゼ連鎖反応、クロマトグラフィー、質量分析法およびそれらに組み合わせからなる群より選択される方法によって検出される、請求項32記載の方法。
【請求項38】
絶対的検出法である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
リアルタイム検出法である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
少なくとも二つの遺伝子に関して実施され、かつ
該少なくとも二つの遺伝子に関して生成された前記産物を比較する、
請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記化学試薬がヒドラジンである、請求項32記載の方法。
【請求項42】
前記遺伝子のヒドラジンと接触させた少なくとも一つの部分についてのピペリジンによる開裂をさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記化学試薬が亜硫酸水素イオンを含む、請求項32記載の方法。
【請求項44】
前記遺伝子の亜硫酸水素イオンと接触させた少なくとも一つの部分をアルカリで処理する段階をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
細胞の新生物成長を低減または阻害する方法であって、
該細胞が癌に関連する少なくとも一つの遺伝子の後成的にサイレンシングされた転写を示す、以下の段階を含む方法:
細胞が、

からなる群より選択される後成的にサイレンシングされた遺伝子を有すると決定する段階、
CpGジヌクレオチド脱メチル化剤、DNAメチルトランスフェラーゼインヒビターおよびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターからなる群より選択される一つまたは複数の剤と、該細胞を接触させることによって、該細胞中で後成的にサイレンシングされた該遺伝子によってコードされたポリペプチドの発現を回復させ、それにより該細胞の無秩序な成長を低減または阻害する段階。
【請求項46】
前記遺伝子が、

からなる群より選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記接触がインビトロで実施される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記接触が、前記細胞を含む哺乳動物対象に前記剤を投与することによってインビボで実施される、請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記剤が脱メチル化剤であり、かつ、
該剤が、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-アザ-シチジン、ゼブラリン、プロカインおよびL-エチオニンからなる群より選択される、
請求項45記載の方法。
【請求項50】
細胞の新生物成長を低減または阻害する方法であって、
該細胞が癌に関連する少なくとも一つの遺伝子の後成的にサイレンシングされた転写を示す、以下の段階を含む方法:
細胞が、

からなる群より選択される後成的にサイレンシングされた遺伝子を有すると決定する段階、
該遺伝子によってコードされたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを該細胞に導入し、該ポリペプチドを該細胞中で発現させ、それにより該細胞中の該ポリペプチドの発現を回復させる段階。
【請求項51】
前記遺伝子が、

からなる群より選択される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
以下の段階を含む、癌患者を治療する方法:
該患者の癌細胞が、

からなる群より選択される後成的にサイレンシングされた遺伝子を有すると決定する段階、
CpGジヌクレオチド脱メチル化剤、DNAメチルトランスフェラーゼインヒビターおよびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターからなる群より選択される一つまたは複数の剤を、該患者の癌細胞中の後成的にサイレンシングされた該遺伝子の発現を回復させるのに十分な量で該患者に投与する段階。
【請求項53】
前記剤が脱メチル化剤であり、かつ
該剤が、5-アザ-2'-デオキシシチジン、5-アザ-シチジン、ゼブラリン、プロカインおよびL-エチオニンからなる群より選択される、
請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記遺伝子が、

からなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項55】
以下の段階を含む、癌患者を治療する方法:
該患者の癌細胞が、

に示されるものから選択される後成的にサイレンシングされた遺伝子を有すると決定する段階、
後成的にサイレンシングされた該遺伝子によってコードされたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを該患者に投与し、該ポリペプチドを該患者の腫瘍において発現させ、それにより癌における該ポリペプチドの発現を回復させる段階。
【請求項56】
後成的にサイレンシングされた前記遺伝子が、

からなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
以下の段階を含む、癌患者を治療するための治療戦略を選択する方法:
該患者の癌細胞中での遺伝子の発現が、CpGジヌクレオチド脱メチル化剤、DNAメチルトランスフェラーゼインヒビターおよびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターからなる群より選択される一つまたは複数の剤によって再活性化され、
該遺伝子が、

からなる群より選択される、
該遺伝子を特定する段階、および
該癌患者を治療するための該遺伝子の発現を増大させる治療剤を選択する段階。
【請求項58】
前記遺伝子が、

からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
癌患者のための前記治療剤を処方する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項60】
前記治療剤を癌患者に投与する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項61】
前記治療剤が、前記遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項57記載の方法。
【請求項62】
前記脱メチル化剤が5-アザ-2'-デオキシシチジンである、請求項57記載の方法。
【請求項63】
前記治療剤が5-アザ-2'-デオキシシチジンである、請求項57記載の方法。
【請求項64】
前記癌細胞が外科的検体から得られる、請求項57記載の方法。
【請求項65】
前記癌細胞が生検検体から得られる、請求項57記載の方法。
【請求項66】
前記癌細胞が細胞学的試料から得られる、請求項57記載の方法。
【請求項67】
前記癌細胞が糞便、粘液、血清、血液または尿から得られる、請求項57記載の方法。
【請求項68】
パッケージ中に、
(a)メチル化シトシン残基を修飾するが、非メチル化シトシン残基を修飾しない試薬、または(b)非メチル化シトシン残基を修飾するが、メチル化シトシン残基を修飾しない試薬と、

に示されるものから選択される遺伝子の転写開始点から約1kb以内である領域に増幅条件下で特異的にハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドプライマー対と
を含む、試験試料におけるメチル化を評価するためのキット。
【請求項69】
前記遺伝子が、

からなる群より選択される、請求項68記載のキット。
【請求項70】
オリゴヌクレオチドプライマー対の少なくとも一つが、修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない、または、
該オリゴヌクレオチドプライマー対の少なくとも一つが、非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない、
請求項68記載のキット。
【請求項71】
(a)修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない、第一のオリゴヌクレオチドプローブ、
(b)非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない、第二のオリゴヌクレオチドプローブ、または
(c)該第一および第二のオリゴヌクレオチドプローブの両方
をさらに含む、請求項68記載のキット。
【請求項72】
(a)修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない、第一のオリゴヌクレオチドプローブ、
(b)非修飾メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にハイブリダイズするが、修飾された非メチル化CpGジヌクレオチドモチーフを含む配列にはハイブリダイズしない、第二のオリゴヌクレオチドプローブ、または
(c)該第一および第二のオリゴヌクレオチドプローブの両方
をさらに含む、請求項68記載のキット。
【請求項73】
オリゴヌクレオチドプローブをさらに含む、請求項68記載のキット。
【請求項74】
DNAを増幅するためのDNAポリメラーゼをさらに含む、請求項68記載のキット。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−517582(P2010−517582A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549298(P2009−549298)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/053689
【国際公開番号】WO2008/100913
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(398076227)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー (35)
【出願人】(509217873)オンコメチローム サイエンス ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】