説明

給水制御バルブ

【課題】カム部材の回転により操作軸を2次側から移動操作し、弁部を動作させる給水制御バルブにおいて、弁部が開弁状態の下で操作軸とバルブボデーとの間のシール部材が固着を起しても、固着解除して良好に給水制御動作を行わせることができるようにする。
【解決手段】給水制御バルブにおいて、操作軸56を2次側の流出水路34を通って延出させて操作軸56とバルブボデー30との間をOリング86にてシールするとともに、操作軸56をカム部材62と、ばね部材80の付勢力にて押上げ側に前進移動させ、また引込み側に後退移動させる。そしてOリング86が固着を起したときには操作軸56を、通常使用時における主弁36の最大開弁位置に対応した位置よりも更に設定ストローク分主弁36の開度を大とする側に前進移動させ、固着解除した上で後退移動させ、主弁36を閉弁状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は給水制御バルブに関し、詳しくは2次側の流出水路の側から操作軸にて弁部を操作するようになした給水制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブボデーに備えた1次側の流入水路と、2次側の流出水路と、それら流入水路と流出水路とで形成される水路上に設けられた弁部と、弁部を操作する操作軸とを有し、その操作軸により弁部を操作して弁部を開閉及び/又は開度変化させ、給水制御するようになした給水制御バルブが知られている。
またこのような給水制御バルブにおいて、操作軸をバルブボデーから2次側の流出水路を通って弁部の側に延出させ、流出水路の側で弁部を操作軸にて操作するようになしたものが公知である。
例えば下記特許文献1にこの種の給水制御バルブが開示されている。
図11はその具体例を示している。
【0003】
図において200はバルブボデー、202,204はそれぞれ1次側の流入水路,2次側の流出水路、206はそれら流入水路202と流出水路204とで形成される水路上に設けられた弁部で、208はその弁部206を操作する操作軸である。
ここで操作軸208は、バルブボデー200から2次側の流出水路204を通って弁部206の側に延出しており、流出水路204の側で弁部206を操作するものとなしてある。
【0004】
この給水制御バルブでは、流入水路202から流入した水がバルブボデー200と操作軸208との間を通って漏水するのを防ぐべく、操作軸208とバルブボデー200との間に、環状の弾性を有するシール部材としてOリング210を介在させ、かかるOリング210にて操作軸208とバルブボデー200との間を水密にシールするようにしている。
【0005】
図11に示す給水制御バルブの場合、操作軸208は、操作軸208に設けた雄ねじ212とバルブボデー200に設けた雌ねじ214とで螺合させてあり、操作軸208を正方向に回転させることで、操作軸208がねじ送りで図中上方の押上げ側に前進移動させられ、弁部206を開方向に動作させる。
また操作軸208をこれとは逆方向に回転させると、操作軸208がねじ送りで図中下向きの引込み側に後退移動させられ、弁部206を閉方向に動作させる。
【0006】
しかしながらこのように操作軸208をねじ送りで図中上方と下方とに進退移動させるようになした場合、操作軸208の回転角度と弁部206の開度とは比例関係となって一義的に定まってしまい、操作軸208の回転角度の変化に応じて弁部206の開度を様々なパターンで変化させること、即ち流量制御特性を操作軸208の回転角度の変化に対してリニアな関係でなく、他の異なった様々な関係で設定することができない問題がある。
【0007】
そこで回転運動により操作軸を軸方向に移動させるカム部材と、操作軸の上記弁部の側の一端側とは反対側の他端側に構成した従動部をカム部材のカム面に当接させる向きに操作軸を付勢するばね部材と、カム部材を回転駆動する電動モータ及び電動モータを作動制御する制御部を設け、カム部材の正方向回転により従動部に対するカム面の押上作用にて操作軸をばね部材の付勢力に抗し押上側に前進移動させ、弁部を開方向に動作させるとともに、カム部材の逆方向回転時に、ばね部材の付勢力による従動部のカム面への押圧作用にて操作軸を引込み側に後退移動させ、弁部を閉方向に動作させるようになすといったことが考えられる。
このようにカム部材にて操作軸を移動するようになした場合、カム面の形状を様々な形状に形成することによって、流量制御特性を様々に設定することが可能となる。
尚、このようにカム部材の回転により弁部を開閉方向に動作させるようになしたものについては従来公知である。
例えば下記特許文献2,特許文献3にカム部材の回転により弁部を開閉方向に動作させるようになした給水制御バルブが開示されている。
【0008】
ところで、上記のようにカム部材と、操作軸の他端側に構成した従動部をカム部材のカム面に対して当接させる向きに付勢するばね部材とにより、操作軸を押上げ側に前進移動させたり、引込み側に後退移動させたりして、弁部を開閉方向に動作させる給水制御バルブにあっては、ばね部材のばね力(付勢力)を強く設定しておくと、カム部材のカム面及び従動部の摺動摩耗が大となって、それらの部分が摩耗により削られてしまい、給水制御特性に悪影響が及んでしまう問題を生ずる。
従ってこの場合にはばね部材のばね力を可及的に小さく設定しておくことが望ましい。
【0009】
一方でそのようにばね部材のばね力を小さくしておくと、操作軸とバルブボデーの間を水密にシールするシール部材が固着を起したときが問題となる。
上記のようなシール部材を備えた給水制御バルブにあっては、長期間の放置によりシール部材が固着を起してしまうことがあり、而してシール部材が固着を起してしまうと、操作軸に対する摺動抵抗(移動抵抗)が大きくなってしまう。
【0010】
この場合、弁部が開弁状態でシール部材が固着を起すと、シール部材の固着による摺動抵抗がばね部材の付勢力に打ち勝つようになって、カム部材の逆方向回転により操作軸を引込み側に後退移動させることができなくなり、弁部を閉動作させることができなくなってしまう。即ち弁部がコントロール不能に陥ってしまう。
【0011】
尚、このように弁部が開弁状態のまま長期間放置されることによるシール部材の固着の現象は、例えば次のような場合に生じる。
即ち、給水バルブの施工時において、弁部を開弁状態としたまま元栓を閉じてしまうと、給水制御バルブはその状態では給水を行わないために、弁部が開弁状態のまま放置されてしまうといったことが起り得る。
【0012】
或いは給水制御バルブで流量調節を行うようにし、別途に設けた吐止水バルブにて吐水と止水とを行うようになしたものにあっては、給水制御バルブの弁部を開いたままの状態で、別途に設けた吐止水バルブを閉じておくことで、給水制御バルブの弁部が開いたまま長時間放置されてしまうことが起り得る。
【0013】
【特許文献1】特開2007−24059号公報
【特許文献2】特開2007−24061号公報
【特許文献3】特開平1−229184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上のような事情を背景とし、カム部材の回転により操作軸を2次側から移動操作し、弁部を開閉方向に動作させる形式の給水制御バルブにおいて、弁部が開弁状態の下で操作軸とバルブボデーとの間を水密にシールするシール部材が固着を起した場合であっても、その固着を解除して良好に給水制御動作を行わせることのできる給水制御バルブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
而して請求項1のものは、バルブボデーに備えた1次側の流入水路と、2次側の流出水路と、それら流入水路と流出水路とで形成される水路上に設けられた弁部と、該弁部を操作する操作軸と、を有し、該操作軸により該弁部を操作して該弁部を開閉及び/又は開度変化させ、給水制御するようになした給水制御バルブにおいて、前記操作軸の前記弁部側の一端側を前記バルブボデーから前記2次側の流出水路を通って延出させて、該操作軸と該バルブボデーとの間を弾性を有する環状のシール部材にて水密にシールするとともに、回転運動により前記操作軸を軸方向に移動させるカム部材と、該操作軸の前記弁部側の一端側とは反対側の他端側に構成した従動部を前記カム部材のカム面に当接させる向きに該操作軸を付勢するばね部材と、該カム部材を回転駆動する電動モータ及び該電動モータを作動制御する制御部を設け、該カム部材の正方向回転により前記従動部に対する前記カム面の押上作用にて該操作軸を前記ばね部材の付勢力に抗し押上げ側に前進移動させ、前記弁部を開方向に動作させるとともに、該カム部材の逆方向回転時に、前記ばね部材の付勢力による前記従動部の前記カム面への押圧作用にて該操作軸を引込み側に後退移動させ、前記弁部を閉方向に動作させるようになし、且つ前記制御部は、強制押上命令により前記操作軸を、通常使用時における前記弁部の設定した最大開弁位置に対応した位置よりも更に設定ストローク分該弁部の開度を大とする側に前進移動させた上で後退移動させ、該弁部を閉弁させるものとなしてあることを特徴とする。
【0016】
請求項2のものは、請求項1において、前記弁部が、パイロット弁の進退移動に追従して主弁を該パイロット弁と同方向に進退移動させるパイロット式弁部となしてあり、前記操作軸が該パイロット弁を操作するものとなしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように本発明は、カム部材の正方向回転により操作軸をばね部材の付勢力に抗して押上げ側に前進移動させ、弁部を開方向に動作させるとともに、カム部材の逆方向回転時に、ばね部材の付勢力による従動部のカム面への押圧作用にて操作軸を引込み側に後退移動させ、弁部を閉方向に動作させる給水制御バルブにおいて、カム部材を回転駆動する電動モータを作動制御する制御部を、強制押上命令により操作軸を、通常使用時における弁部の設定した最大開弁位置に対応した位置よりも更に設定ストローク分弁部の開度を大とする側に前進移動させた上で後退移動させ、弁部を閉弁させるものとなしたものである。
【0018】
本発明では、弁部が開弁状態の下でシール部材が固着を起し、カム部材を逆方向回転させてもばね部材の付勢力によって操作軸を引込み側に後退移動させることができなくなった場合、即ち弁部を閉方向に動作させられなくなった場合であっても、例えば水抜き操作部の操作等によって発せられる強制押上命令に基づいて、制御部が操作軸を固着位置から押上げ側に前進移動させる。
【0019】
詳しくは、電動モータによるカム部材の回転により、操作軸を通常使用時における弁部の設定した最大開弁位置に対応した位置よりも更に設定ストローク分操作軸を前進移動させる。
この時点でシール部材の固着が解除され、シール部材による摺動抵抗は通常の小さな摺動抵抗となる。
そして前進移動した操作軸は、その後ばね部材の付勢力の下でカム部材の逆方向回転とともに後退移動し、弁部を閉弁状態とする。
【0020】
かかる本発明によれば、弁部がどのような状態の下でシール部材が固着した場合であっても、その固着を解除して給水制御バルブを通常の正常な動作状態に回復させることができ、シール部材の固着により従来生じていた問題を解決することができる。
【0021】
本発明は、上記弁部を、パイロット弁の進退移動に追従して主弁を同方向に進退移動させるパイロット式弁部となし、上記操作軸を、そのパイロット弁を操作するものとなしておくことができる(請求項2)。
このようにすれば、操作軸をより小さな駆動力で移動させることができ、従ってカム部材を電動モータにて回転させるに際し、より小型の電動モータを用いることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は水栓で、12は水栓10における吐水管である。
吐水管12は、カウンタ上面等の取付面(図示省略)から起立する形態で設けられている。
吐水管12は、ここでは全体として逆U字状のグースネック形状をなしており、その先端に吐水口14が備えられている。
また吐水管12には、最上位から先端にかけて下向きに下がった下がり形状部且つその先端部の上面に、吐水の流量調節を行う回転式のダイヤル操作部16,自動吐止水のための赤外線式のセンサ18が設けられている。
【0023】
ここでダイヤル操作部16は電気的操作部として構成してあって、このダイヤル操作部16を回転させると、回転位置検出センサがこれを検知して、その回転位置に応じた信号を発生する。そしてその信号が後述の制御部28に送られる。
センサ18は、発光部から赤外線を発光し、人体による反射光を受光部で受光して人体検知を行う。水栓10は、このセンサ18による人体検知に基づいて自動吐水し、人体非検知に基づいて自動止水する。
【0024】
22は給水路で、この給水路22上に本実施形態の給水制御バルブ24が設けられている。
26はその駆動源となるステッピングモータ(電動モータ)で、給水制御バルブ24における制御部28に電気的に接続されている。
制御部28にはまた、上記のダイヤル操作部16(詳しくはその回転位置を検出する回転位置検出センサ)が電気的に接続されている。更にこの制御部28には、上記のセンサ18が電気的に接続されている。
【0025】
図2〜図4に、この給水制御バルブ24の具体的構成が示してある。
図において30はバルブボデーで、分割体30-1,30-2,30-3及び30-4の上下の分割構造とされている。
このバルブボデー30には、1次側の流入水路32と、2次側の流出水路34とが設けられており、それら流入水路32と流出水路34とで形成される主水路(水路)上に弁部が設けられている。
【0026】
36は、その弁部におけるダイヤフラム弁から成る主弁で、この主弁36は、図4にも示しているように硬質の主弁本体38と、これにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜40とから成っている。
この主弁36は、主弁座42に向けて進退移動して上記の主水路を開閉し、また開度を変化させる。
【0027】
詳しくは、主弁36は主弁座42への着座によって主水路を遮断し、また主弁座42から図中上向きに離間することによって主水路を開放する。
また主弁座42からの離間量に応じて主水路の開度を大小変化させ、主水路を流れる水の流量を調節する。
【0028】
この主弁36の図中上側、即ち主弁36に対し流出水路34と反対側に背圧室44が設けられている。
背圧室44は、内部の圧力を主弁36に対し図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁36には、これを貫通して1次側の流入水路32と背圧室44とを連通させる導入小孔46が設けられている。
導入小孔46は、流入水路32からの水を背圧室44に導いて背圧室44の圧力を増大させる。
【0029】
主弁36にはまた、これを貫通して背圧室44と2次側の流出水路34とを連通させる、水抜水路としてのパイロット水路48(図4参照)が設けられている。
このパイロット水路48は、背圧室44内の水を流出水路34に抜いて背圧室44の圧力を減少させる。
【0030】
45は上記弁部におけるパイロット弁で、その下部にはゴム等の弾性材から成るシール部材47が設けられている。
このパイロット弁45は図中上下方向、即ち主弁36に設けられたパイロット弁座50に対し図中上下方向(軸方向)に進退移動して、パイロット水路48の開度を変化させる。
【0031】
詳しくは、パイロット弁45がパイロット弁座50に着座することでパイロット水路48が閉鎖され、またパイロット弁45がパイロット弁座50から図中上向きに離間することで、パイロット水路48が開放される。
更にパイロット弁45のパイロット弁座50からの離間量に応じてパイロット水路48の開度が変化せしめられる。
【0032】
但しこの実施形態では、実際にはパイロット弁45が図中上下方向に進退移動すると、主弁36がこのパイロット弁45に追従して図中上下方向に進退移動する。
その際、主弁36はパイロット弁座50とパイロット弁45との間に一定の微小な追従間隙を保持した状態で、パイロット弁45の進退移動に追従して同方向に進退移動する。
【0033】
詳しくは、図6に示しているようにパイロット弁45が図中上方向に後退移動すると、パイロット水路48が開いて背圧室44内の水がパイロット水路48を通じて流出水路34に抜け、背圧室44の圧力が低下する。
すると背圧室44の圧力と流入水路32の圧力とをバランスさせるようにして、主弁36がパイロット弁45の後退移動に追従して上向きに後退移動し、主水路を開いて流入水路32から流出水路34へと水を流通させる(図6(II))。
【0034】
主弁36は、パイロット弁座50とパイロット弁45との間隙を一定に維持しつつ、パイロット弁45の更なる後退移動に追従して同方向に移動し、主水路の開度を更に拡くして、主水路における水の流量を増大変化させる(図6(III))。
【0035】
また逆にパイロット弁45が図中下向きに前進移動すると、図7(I)に示すように背圧室44の圧力と流入水路32の圧力とをバランスさせるようにして、主弁36がパイロット弁45の前進移動に追従して図中下向きに移動し、主水路の開度を減少変化させて、主水路における水の流量を減少させる(図7(II))。
そして最終的に主弁36及びパイロット弁45が主弁座42,パイロット弁座50に着座して、それぞれが閉弁状態となる(図7(III))。
【0036】
尚パイロット弁45からは図中下向きに細径のピン54が突出しており、このピン54が、主弁36の中心部の貫通孔を下向きに挿通している。
上記パイロット水路48は、このピン54と主弁36の貫通孔の内周面との間に狭小幅で環状に形成されている。
一方ピン54とは反対側において、パイロット弁45の上側に金属製のコイルばね52が配設されており、このコイルばね52によって、パイロット弁45が図中下向きに付勢されている。
【0037】
56は、図2及び図4に示しているようにパイロット弁45に対し図中上下方向に対向して同軸状に配置された操作軸で、図中57は操作軸56における軸部である。
軸部57は、バルブボデー30から2次側の流出水路34を通って弁部の側に一端側(上端側)が延出している。そして操作軸56は、パイロット弁45を介して主弁36を流出水路34側から操作する。
【0038】
尚この操作軸56における軸部57の上端近傍位置には、大径をなす止め輪58が装着されている。
この止め輪58は、パイロット弁45を図中上向きに後退移動させたときに、主弁36がこれに追従して移動しないとき、主弁36詳しくは硬質の主弁本体38に当接して、これを強制的に図中上側に持ち上げ、開弁させる働きをなす。
【0039】
図2において、60は駆動源となるステッピングモータ26の出力軸で、この出力軸60にカム部材62が一体回転状態に組み付けられている。
このカム部材62は円筒形状をなしていて、図5に示しているように中心部に挿入孔64を有しており、そこに出力軸60が上向きに挿入されている。
【0040】
図5に詳しく示しているように、この出力軸60とカム部材62の挿入孔64とには、切落し形状の平坦な係合面66,68がそれぞれ形成されており、出力軸60と挿入孔64とがそれら係合面66と68とにおいて互いに係合させられている。
そしてそれらの係合作用により、カム部材62が出力軸60と一体回転するようになっている。
ここでカム部材62の上面は、周方向に沿って図中反時計方向に移動するにつれ上方に移行する形状の、部分螺旋形状をなすカム面70とされている。
【0041】
上記操作軸56は、上側の軸部57と、下側のキャップ状の従動部材72とに分割されている。
従動部材72には、図5に示しているようにその中心部に挿込孔76が形成され、そこに軸部57が圧入によって挿し込まれることで、上側の軸部57と下側の従動部材72とが上下に結合されている。
【0042】
この従動部材72には、下向きに突出する従動部としての突起74が設けられており(即ち操作軸56の一端側(上端側)とは反対側の他端側(下端側)に従動部としての突起74が設けられており)、この突起74が、カム部材62の上面のカム面70に図中下向きに当接させられている。
従ってステッピングモータ26の出力軸60が回転し、そしてこれと一体にカム部材62が回転すると、操作軸56が上下方向に駆動され、パイロット弁45を介して主弁36を動作させる。
【0043】
詳しくは、操作軸56がパイロット弁45の下向きに突出したピン54に当接して、パイロット弁45を図中上下方向に進退移動させ、そしてこれに伴って主弁36を同方向に進退移動させて、主弁36を開閉及び開度変化させる。
【0044】
図2に示しているようにバルブボデー30、詳しくは分割体30-2には、その中心部に凹部77が形成されており、その凹部77の下部に、上記の従動部材72が上下に摺動可能に嵌挿されている。
一方凹部77の上部にはグリースキャップ78が嵌挿されている。このグリースキャップ78の内側にはグリース溜りが形成され、そこにグリースが保持されている。
【0045】
このグリースキャップ78と従動部材72との間には、金属製のコイルばねから成るばね部材80が介装されており、このばね部材80によって従動部材72が図中下向きに付勢されている。即ち操作軸56がばね部材80にて図中下向きに付勢されている。
【0046】
上記操作軸56は、分割体30-2の凹部77から分割体30-3の貫通孔82を貫通して、2次側の流出水路34へと突出している。
そして分割体30-3は、図3及び図4に示しているように貫通孔82の一部が環状の収容凹所84とされていて、そこに環状シール部材としての弾性を有するゴム製のOリング86が収容されている。
そしてこのOリング86によって、操作軸56とバルブボデー30との間、詳しくは分割体30-3との間が水密にシールされている。
【0047】
上記のようにこの実施形態では、操作軸56の下端側に構成された従動部材72の従動部となる突起74が、カム部材62の上面のカム面70に下向きに当接させられている。
従ってステッピングモータ26によりカム部材62を図8(B)3中矢印P方向で示す正方向(時計方向)に回転させると、突起74に対するカム面70の押上作用にて操作軸56が上向きに押し上げられ、前進移動する。
そして操作軸56の図中上向きの前進移動により、パイロット弁45が図中上向きに後退移動させられ、そしてそのパイロット弁45の図中上向きの後退移動に追従して主弁36が図中上向きの開弁方向に動作する。
【0048】
また逆にステッピングモータ26にてカム部材62を上記とは逆方向、即ち図8(B)中矢印Pと反対方向(反時計方向)に回転させると、ばね部材80の図中下向きの付勢力によって、従動部材72の突起74がカム面70に沿って下向きに移行し、ここにおいて操作軸56が図中下向きに引き込まれ、後退移動する。
これによりパイロット弁45が図中下向きに移動し、またこれに追従して主弁36が移動せしめられる。即ち主弁36が閉弁方向に動作せしめられる。
【0049】
ところで、カム部材62が逆方向(反時計方向)、即ち図8(B)中矢印Pと逆方向に回転したときに、従動部材72の突起74はばね部材80の付勢力にてカム部材62のカム面70に向けて押圧され、カム面70の動きに従動して図中下向きに移動するようになしてあるため、即ち操作軸56がばね部材80による図中下向きの付勢力にて下向きに移動するようになしてあるため、主弁36が開弁状態に長期間放置されていることによって、操作軸56とバルブボデー30との間を水密にシールするOリング86が固着を起すと、その状態からカム部材62が図8中矢印Pと逆方向に回転したときに、操作軸56がばね部材80の下向きの付勢作用によってカム面70の回転に従動して下向きに移動することができず、突起74とカム面70との間に隙間を生ぜしめてしまう。
【0050】
即ちステッピングモータ26にてカム部材62を回転させているにも拘らず、操作軸56が図中下向きに引込運動できず、主弁36は依然として開弁状態のままとなってしまう。即ち主弁36を閉弁方向に動作させることができず、コントロール不能に陥ってしまう。
【0051】
そこでこの実施形態では、Oリング86の固着(操作軸56との固着)現象により、操作軸56が引込み側に後退移動せず、主弁36が閉弁動作しないときには、特定の操作部、例えば水抜きのために設けられている水抜き操作部を使用者が操作することで、操作軸56を前進移動させた上で引込方向に後退移動させ、主弁36を閉弁させられるようになしてある。
【0052】
詳しくは、使用者による操作によって強制押上命令を発するようになし、そしてその強制押上命令に基づいて、制御部28により操作軸56を通常使用時における主弁36の設定した最大開弁位置に対応した位置よりも更に設定ストローク分主弁36の開度を大とする側に操作軸56を前進移動させる。
【0053】
この操作軸56の強制的な前進移動により、シール部材86の固着は解除され、シール部材86による摺動抵抗は元の小さな摺動抵抗へと戻る。
そこで制御部28は、更に引き続いて操作軸56を後退移動させ、主弁36を閉弁状態とする。
図9は、その際の操作軸56の前進移動量(カム部材62の回転角)と主弁36の開度、即ち給水流量との関係を表している。
【0054】
図9に示しているように、この実施形態ではステッピングモータ26に対して与えられるパルス数が300パルスで、主弁36の弁開度が小流量の状態となり、また400パルスで主弁36の弁開度が中流量で給水する状態となり、更に500パルスで主弁36の弁開度が大流量で給水する状態となる。
主弁36は、通常はこの大流量のときの主弁36の弁開度を最大開度として、それまでの範囲内で開閉動作する。
【0055】
而してこの通常動作の範囲内の何れかの給水流量の下でOリング86が固着を起し、操作軸56が引込み側に後退移動しなくなったとき、ここでは制御部28がステッピングモータ26を正方向に回転駆動し、これによって操作軸56を押上げ側に前進移動させる。
【0056】
詳しくは通常の動作範囲を超えて、つまり主弁36を図9の大流量に対応する最大開弁位置を越えて更に弁開度を大とする方向に、操作軸56を図中上向きに大きく前進移動させる(図8参照)。
具体的には、止水状態を基準としてステッピングモータ26に対し700パルスのパルスを与え、これに対応した量で操作軸56を図中上向きの押上げ側に前進移動させる。
そしてこのときの操作軸56の強制的な押上げによって、シール部材86による固着が解除される。
【0057】
図10は、その際の制御部28の制御の具体的な内容を表している。
同図に示しているように、この実施形態では主弁36が閉弁状態の下でも、強制押上命令に基づいて操作軸56が図9の強制押上位置(図8(B)に示す位置)まで強制的に押し上げられ、且つその状態に所定時間(ここでは30秒)保持される(ステップS10,S12,S14,S16,S18)。
そしてその後において、操作軸56が後退端まで引込み側に後退させられて主弁36が閉弁状態とされ、止水が行われる(ステップS20)。
【0058】
この一連の動作は、寒冷地等において水抜き操作部を操作したときに行われる水抜きのための動作である。
即ち主弁36が閉弁状態、つまり止水状態の下でOリング86が固着を生じていた場合であっても、支障無くその固着を解除して水抜きを行った上、主弁36を閉弁位置に持ち来すことができる。
【0059】
一方、主弁36が小流量で給水を行う弁開状態の下で止水信号が発せられた場合、Oリング86が特別に固着現象を起していなければ、強制押上命令が発せられることなくそのまま操作軸56が後退端まで後退移動し、そこで主弁36の閉弁即ち止水が行われる(ステップS22,S24,S20)。
【0060】
ところがこのときOリング86が固着を起していて、止水が行われない場合、使用者が水抜き操作部を操作することで、上記と同様にして操作軸56が一旦図9の強制押上位置(図8(B)に示す位置)まで押し上げられた後、即ち前進移動させられた後、そこに所定時間(30秒)操作軸56が保持された上で、引き続き操作軸56が後退端まで後退移動せしめられ、ここにおいて主弁36が閉弁状態となる(ステップS24,S26,S28,S20)。
【0061】
また主弁36が中流量で給水を行う弁開状態にあるときにおいても同様の動作が行われ、主弁36が閉弁位置に持ち来される(ステップS30,S32,S34,S36,S20)。
更に主弁36が大流量で給水を行う弁開状態にある状態の下でOリング86が固着を起していた場合においても、同様の動作により主弁36が閉弁位置に持ち来される(ステップS38,S40,S42,S44,S20)。
【0062】
以上のように本実施形態によれば、主弁36が通常動作範囲のどの状態の下でOリング86が固着した場合であっても、その固着を解除して給水制御バルブ24を通常の正常な動作状態に回復させることができ、Oリング86の固着により生ずる問題を解決することができる。
【0063】
また本実施形態では、パイロット弁45の進退移動に追従して主弁36を同方向に進退移動させるパイロット式弁部となし、上記操作軸56を、そのパイロット弁45を操作するものとなしてあることから、操作軸56をより小さな駆動力で移動させることができ、従ってカム部材62をステッピングモータ26にて回転させるに際し、より小型のステッピングモータ26を用いることが可能となる。
【0064】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態である給水制御バルブを有する水栓の概略全体図である。
【図2】同実施形態の給水制御バルブを示す正面断面図である。
【図3】図2の給水制御バルブの要部拡大図である。
【図4】図2の給水制御バルブの図3とは異なる要部拡大図である。
【図5】同実施形態における駆動力の伝達機構を各部品に分解して示す斜視図である。
【図6】同実施形態の作用説明図である。
【図7】図6に続く作用説明図である。
【図8】同実施形態の図6とは異なる作用説明図である。
【図9】同実施形態の操作軸の前進移動量と給水水量の関係を示した図である。
【図10】同実施形態における制御部の制御の内容を表した図である。
【図11】従来の給水制御バルブの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
24 給水制御バルブ
26 ステッピングモータ(電動モータ)
28 制御部
30 バルブボデー
32 流入水路
34 流出水路
36 主弁
45 パイロット弁
56 操作軸
62 カム部材
70 カム面
72 従動部材
74 突起(従動部)
80 ばね部材
86 Oリング(シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボデーに備えた1次側の流入水路と、2次側の流出水路と、それら流入水路と流出水路とで形成される水路上に設けられた弁部と、該弁部を操作する操作軸と、を有し、該操作軸により該弁部を操作して該弁部を開閉及び/又は開度変化させ、給水制御するようになした給水制御バルブにおいて、
前記操作軸の前記弁部側の一端側を前記バルブボデーから前記2次側の流出水路を通って延出させて、該操作軸と該バルブボデーとの間を弾性を有する環状のシール部材にて水密にシールするとともに、
回転運動により前記操作軸を軸方向に移動させるカム部材と、該操作軸の前記弁部側の一端側とは反対側の他端側に構成した従動部を前記カム部材のカム面に当接させる向きに該操作軸を付勢するばね部材と、該カム部材を回転駆動する電動モータ及び該電動モータを作動制御する制御部を設け、
該カム部材の正方向回転により前記従動部に対する前記カム面の押上作用にて該操作軸を前記ばね部材の付勢力に抗し押上げ側に前進移動させ、前記弁部を開方向に動作させるとともに、該カム部材の逆方向回転時に、前記ばね部材の付勢力による前記従動部の前記カム面への押圧作用にて該操作軸を引込み側に後退移動させ、前記弁部を閉方向に動作させるようになし、
且つ前記制御部は、強制押上命令により前記操作軸を、通常使用時における前記弁部の設定した最大開弁位置に対応した位置よりも更に設定ストローク分該弁部の開度を大とする側に前進移動させた上で後退移動させ、該弁部を閉弁させるものとなしてあることを特徴とする給水制御バルブ。
【請求項2】
請求項1において、前記弁部が、パイロット弁の進退移動に追従して主弁を該パイロット弁と同方向に進退移動させるパイロット式弁部となしてあり、前記操作軸が該パイロット弁を操作するものとなしてあることを特徴とする給水制御バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−7797(P2010−7797A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169528(P2008−169528)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】