説明

給紙無人搬送車システム

【課題】無人搬送車に搭載される載荷用テーブルに必要とされるスライドストロークを短縮し、無人搬送車のコンパクト化を実現する給紙無人搬送車システムを提供する。
【解決手段】輪転機と輪転機に対して新聞巻取紙を装着・回収する無人搬送車とを有する給紙無人搬送車システムにおいて、輪転機の給紙エリアに無人搬送車を誘導する誘導ラインが、一つの輪転機に対して複数設けられていることにより上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞巻取紙を保管場所と輪転機の設置場所との間で無人搬送車を用いて無人搬送する給紙無人搬送車システム(給紙AGVシステム)に関するものであって、さらに詳しくは、新聞巻取紙を垂直方向に昇降し輪転機に対して装着・回収する昇降ユニットを備えた無人搬送車を用いた給紙無人搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新聞社等においては、輪転機に対して新しい新聞巻取紙を装着したり、使用途中の新聞巻取紙を回収するために無人搬送車が一般に用いられている。そして、新聞巻取紙には、A巻と呼ばれる長さが1626mmのものと、C巻と呼ばれる長さが1219mmのものと、D巻と呼ばれる長さが813mmのものが汎用されている。
【0003】
そのため、従来の給紙無人搬送車システムに用いられている無人搬送車は、長さの異なる新聞巻取紙を輪転機に対して装着・回収することに対応するため、新聞巻取紙をスライド保持する載荷用テーブルを具備している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3199232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の給紙無人搬送車システムでは、輪転機に対して新聞巻取紙を装着・回収する際、新聞巻取紙のサイズと輪転機の装着位置に対応させるため、無人搬送車の載荷用テーブルに大きなスライドストロークを保有させる必要があった。その結果、スライド量の確保が無人搬送車のコンパクト化の妨げとなっていた。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、無人搬送車に搭載される載荷用テーブルに必要とされるスライドストロークを短縮し、無人搬送車のコンパクト化を実現する給紙無人搬送車システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、本請求項1に係る発明は、輪転機と該輪転機に対して新聞巻取紙を装着・回収する無人搬送車とを有する給紙無人搬送車システムにおいて、前記輪転機の給紙エリアに無人搬送車を誘導する誘導ラインが、一つの輪転機に対して複数設置されていることにより、前記課題を解決したものである。
【0008】
また、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る給紙無人搬送車システムにおいて、前記輪転機近傍に輪転機前通信点が設置され、前記無人搬送車が輪転機前通信点に到着した際に、輪転機から送信された要求巻取紙データと無人搬送車が有する積載巻取紙データとを比較して、両者のデータが一致している場合に、無人搬送車が給紙エリアに近接して設置されたAGV進入位置に移動することにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0009】
そして、本請求項3に係る発明は、請求項2に係る給紙無人搬送車システムにおいて、前記AGV進入位置が一つの輪転機に対して複数設置されており、前記無人搬送車が輪転機から巻取紙掛け位置信号を受け取るとともに該巻取紙掛け位置信号と積載巻取紙データとを基にAGV進入位置を決定することにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係る発明によれば、輪転機と輪転機に対して新聞巻取紙を装着・回収する無人搬送車とを有する給紙無人搬送車システムにおいて、輪転機の給紙エリアに無人搬送車を誘導する誘導ラインが、一つの輪転機に対して複数設置されていることにより、載荷用テーブルに要求されるスライド量が短縮されるので、無人搬送車の小型化が実現できる。
【0011】
また、載荷用テーブルのスライド量が短縮されることにより、載荷用テーブルのガイド機構部の摩耗が軽減されるので、無人搬送車の長寿命化が実現できる。
【0012】
さらに、無人搬送車の小型化により、走行時の台車軌跡範囲が減少するので、給紙無人搬送車システムのレイアウトの自由度が向上するとともに給紙フロアの省スペース化が実現できる。
【0013】
また、本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る給紙無人搬送車システムにおいて、輪転機近傍に輪転機前通信点が設置され、無人搬送車が輪転機前通信点に到着した際に、輪転機から送信された要求巻取紙データと無人搬送車が有する積載巻取紙データとを比較して、両者のデータが一致している場合に、無人搬送車が輪転機の給紙エリアに近接して設置されたAGV進入位置に移動することにより、輪転機が要求している巻取紙と無人搬送車に積載されている巻取紙のサイズが一致しているか否かを無人搬送車が輪転機に進入する前に認知できるので、運行サイクルの短時間化が実現できる。
【0014】
そして、本請求項3に係る発明によれば、請求項2に係る給紙無人搬送車システムにおいて、AGV進入位置が一つの輪転機に対して複数設置されており、無人搬送車が輪転機から巻取紙掛け位置信号を受け取るとともに巻取紙掛け位置信号と積載巻取紙データとを基にAGV進入位置を決定することにより、載荷用テーブルがより短いストロークで新聞巻取紙を輪転機に対して装着・回収できるAGV進入位置が決定されるので、運行サイクルの一層の短縮化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例の給紙無人搬送車システムの概念図。
【図2】従来の給紙無人搬送車システムの概念図。
【図3】本実施例の給紙無人搬送車システムの輪転機近傍のレイアウトを示す平面図。
【図4】本実施例の給紙無人搬送車システムの動作フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の給紙無人搬送車システムは、輪転機と輪転機に対して新聞巻取紙を装着・回収する無人搬送車とを有し、輪転機の給紙エリアに無人搬送車を誘導する誘導ラインが、一つの輪転機に対して複数設置されていることによって、無人搬送車に搭載される載荷用テーブルに必要とされるスライドストロークを短縮し、無人搬送車のコンパクト化を実現するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0017】
(本発明の給紙無人搬送車システムと従来品との対比)
本発明の一実施例である給紙無人搬送車システムを図1及び図2に基づいて説明する。ここで、図1は、本実施例の給紙無人搬送車システムの基本原理を説明するための概念図であり、図2は、本実施例の給紙無人搬送車システムの効果を明示するために示した従来の給紙無人搬送車システムの概念図である。
【0018】
まず最初に、従来の給紙無人搬送車システム200について、図2に基づいて説明する。従来の給紙無人搬送車システム200は、輪転機の給紙スペースの中央に誘導ライン240が設置されている。
【0019】
そして、図2(a)に示すように、輪転機にロングサイズのA巻の新聞巻取紙を給紙する際には、無人搬送車220は、誘導ライン240に誘導されて輪転機の給紙スペースの中央に進入する。この時、無人搬送車220の載荷用テーブル222は、ほとんどスライドしない。
【0020】
また、輪転機にハーフサイズのD巻の新聞巻取紙を給紙する際にも、無人搬送車220は、誘導ライン240に誘導されて輪転機の給紙スペースの中央に進入する。そのため、新聞巻取紙を給紙するために、載荷用テーブル222のスライド量S2が大きくなる。その結果、無人搬送車220の車幅も大きくなる。
【0021】
これに対して、本実施例の給紙無人搬送車システム100は、輪転機に対して無人搬送装置120を誘導する誘導ライン142、144が2つ設置されている。一方の誘導ライン142は、輪転機の給紙スペースの中央に設置されており、他方の誘導ライン144は、輪転機の給紙スペースの固定アーム134側に偏在して設置されている。
【0022】
そして、図1(a)に示すように、輪転機にロングサイズのA巻の新聞巻取紙を給紙する際には、無人搬送車120は、誘導ライン142に誘導されて輪転機の給紙スペースの中央に進入する。この時、無人搬送車120の載荷用テーブル122は、ほとんどスライドしない。
【0023】
一方、輪転機にハーフサイズのD巻の新聞巻取紙を給紙する際には、無人搬送車120は、誘導ライン144に誘導されて輪転機の給紙スペースに固定アーム134に寄って進入する。そのため、従来の給紙無人搬送車システム200に比べて、載荷用テーブル122のスライド量S1が小さくなる。すなわち、図1と図2の比較から分かるように、S1<S2となる。その結果、無人搬送車120の車幅も小さくすることができる。
【0024】
(無人搬送車 輪転機進入動作フロー)
次に、本実施例の給紙無人搬送車システムにおいて、無人搬送車(AGV)が輪転機に進入する動作フローについて、図3及び図4に基づいて説明する。ここで、図3は、本実施例の給紙無人搬送車システムの輪転機近傍のレイアウトであり、図4は、本実施例の給紙無人搬送車システムにおいて無人搬送車が輪転機に進入する動作フローを示したフローチャートである。
【0025】
本実施例の給紙無人搬送車システムにおいては、図3に示すように、一つの輪転機に対して2つの誘導ラインが設けられており、それらの誘導ラインに対応した2つのAGV進入位置が設定されている。一方のAGV進入位置は、輪転機の給紙エリアのほぼ中央に位置しており、他方のAGV進入位置は、輪転機の固定アーム側に寄って位置している。
【0026】
さらに、輪転機の近傍に無人搬送車と輪転機とが巻取紙に関するデータ及び巻取紙掛け位置に関するデータをやり取りするための輪転機前通信点が設置されている。
【0027】
そして、本実施例の給紙無人搬送車システムは、図4に示すフローに従って、無人搬送車が輪転機の給紙エリアに進入する。ここで、図4に示した符号S0〜S12は、以下に説明する各ステップの段階を示している。
【0028】
まず、動作フローがスタートすると(S0)、無人搬送車は所定の巻取紙を積載するとともに、積載した巻取紙のサイズに関するデータ(積載巻取紙データ)を取得する(S1)。そして、無人搬送車は床面に敷設された誘導ガイドに誘導されて所定の輪転機前通信点に到着する(S2)。そして、無人搬送車は輪転機が要求している巻取紙に関するデータ(要求巻取紙データ)を取得し、この要求巻取紙データと先に取得した積載巻取紙データとを比較し、両者が一致しているかどうかを判別する(S3)。両者が一致していない場合、異常であると判断し、輪転機への進入動作を停止する(S4)。
【0029】
要求巻取紙データと積載巻取紙データとが一致している場合、輪転機から巻取紙掛け位置信号を受け取る(S5)。そして、取得した巻取紙掛け位置信号と積載巻取紙データとに基づいて、2つのAGV進入位置のうちの、どちらが載荷用テーブルのスライド量が少なくなるかを判断し、一方のAGV進入位置が決定される(S6)。そして、決定されたAGV進入位置に無人搬送車を移動させる(S7)。そして、巻取紙掛け位置信号と積載巻取紙データとに基づいて、載荷用テーブルを駆動して巻取紙の位置を調整する(S8)。
【0030】
巻取紙の位置の調整が完了すると、無人搬送車は輪転機の給紙エリアに進入し、巻取紙を輪転機に装着する(S9)。巻取紙の装着が完了すると無人搬送車は輪転機から退出する(S10)。そして、無人搬送車は、待機位置まで移動してそこで待機する(S11)。そして、一連の輪転機進入動作フローが終了する。
【0031】
なお、本実施例においては、一つの輪転機に対して、2つのAGV進入位置を設置しているが、AGV進入位置の数は2つに限定されることはなく3つ以上であっても良い。ただし、前述したように新聞巻取紙のサイズとして用いられているのは、通常、A巻、C巻、D巻の3種類なので、AGV進入位置の数としては、2つ若しくは3つが用いられる。
【0032】
以上のように、本発明の給紙無人搬送車システムによれば、輪転機の給紙エリアに無人搬送車を誘導する誘導ラインが、一つの輪転機に対して複数設置されていることにより、載荷用テーブルに要求されるスライド量が短縮されるので、無人搬送車の小型化が実現できる。
【0033】
また、載荷用テーブルのスライド量が短縮されることにより、載荷用テーブルのガイド機構部の摩耗が軽減されるので、無人搬送車の長寿命化が実現できる。
【0034】
さらに、無人搬送車の小型化により、走行時の台車軌跡範囲が減少するので、給紙無人搬送車システムのレイアウトの自由度が向上する。
【0035】
また、輪転機近傍に輪転機前通信点が設置され、無人搬送車が輪転機前通信点に到着した際に、輪転機から送信された要求巻取紙データと無人搬送車が有する積載巻取紙データとを比較して、両者のデータが一致している場合に、無人搬送車が輪転機の給紙エリアに近接されたAGV進入位置に移動することにより、輪転機が要求している巻取紙と無人搬送車に積載されている巻取紙のサイズが一致しているか否かを無人搬送車が輪転機に進入する前に認知できるので、運行サイクルの短時間化が実現できる。
【0036】
そして、AGV進入位置が一つの輪転機に対して複数設置されており、無人搬送車が輪転機から巻取紙掛け位置信号を受け取るとともに巻取紙掛け位置信号と積載巻取紙データとを基に進入するAGV進入位置を決定することにより、載荷用テーブルがより短いストロークで新聞巻取紙を輪転機に対して装着・回収できるAGV進入位置が決定されるので、運行サイクルの一層の短縮化が実現できる。
【符号の説明】
【0037】
100、200 ・・・ 給紙無人搬送車システム
120、220 ・・・ 無人搬送車
122、222 ・・・ 載荷用テーブル
132、232 ・・・ (輪転機の)移動アーム
134、234 ・・・ (輪転機の)固定アーム
142、144、240 ・・・ 誘導ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪転機と該輪転機に対して新聞巻取紙を装着・回収する無人搬送車とを有する給紙無人搬送車システムにおいて、
前記輪転機の給紙エリアに無人搬送車を誘導する誘導ラインが、一つの輪転機に対して複数設置されていることを特徴とする給紙無人搬送車システム。
【請求項2】
前記輪転機近傍に輪転機前通信点が設置され、前記無人搬送車が輪転機前通信点に到着した際に、輪転機から送信された要求巻取紙データと無人搬送車が有する積載巻取紙データとを比較して、両者のデータが一致している場合に、無人搬送車が輪転機の給紙エリアに近接して設置されたAGV進入位置に移動することを特徴とする請求項1記載の給紙無人搬送車システム。
【請求項3】
前記AGV進入位置が一つの輪転機に対して複数設置されており、前記無人搬送車が輪転機から巻取紙掛け位置信号を受け取るとともに該巻取紙掛け位置信号と積載巻取紙データとを基にAGV進入位置を決定することを特徴とする請求項2記載の給紙無人搬送車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228828(P2010−228828A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75394(P2009−75394)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】