説明

給紙装置

【課題】給紙台3とサイドフェンス10が一体で昇降する給紙装置1において、給紙台の上下位置の変動や、用紙幅に係わらず、最上部の用紙に安定してエアを吹き付け、確実に重送を防止する。
【解決手段】フェンスの外面に上下動可能に設けられた用紙剥離用ファンFは、圧縮コイルばね15で上方に付勢されている。上方で本体2に設けられた位置決めブロック20の間隔は、サイドフェンス及びファンの間隔に対応して設定される。給紙台を上昇させて用紙を給紙位置に設定すると、ファンが位置決めブロックに下方から突き当たって給紙位置に位置決めされ、最上部の用紙の側縁に空気を吹き付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば画像形成装置の給紙機構として設けられ、給紙台上に積載した多数枚の用紙を上から順次送り出す給紙装置に係り、特に給紙台の上下方向の位置の変動や、用紙幅の大小に関わりなく、腰のない薄紙や平滑な塗工紙であっても、重送することなく確実に一枚ずつ送り出すことができる給紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば画像形成装置等に用紙を供給するための給紙機構として、多数枚の用紙を台上に積載し、最も上の用紙を給紙ローラに下方から当接させ、給紙ローラの駆動によって上の用紙から順次送り出していく給紙装置が知られている。このような給紙装置においては、用紙の送り出しに伴って積み重ねた用紙の高さが低くなるに連れ、台を上昇させて最も上の用紙と給紙ローラとの接触を保っている。以下に説明する各特許文献に記載の給紙装置は、このような給紙装置の一例を示すものである。
【0003】
下記特許文献1には、画像形成装置に設けられる給紙装置の発明が開示されている。この給紙装置は、画像形成装置の所定位置に設置される給紙カセットと、用紙幅に対応して間隔が調整できるように給紙カセットの底板上に設置された一対のサイドガイドと、給紙カセットの底板に対して昇降自在であり、サイドガイド間において用紙が積載されるボトムプレートと、サイドガイドの所定高さに形成された空気孔に連通して取り付けられた空気供給用のジャバラとを有している。所定位置に設置されたカセットの上方の所定位置には用紙を送り出すための給紙ローラが設けられているが、この給紙ローラの高さと、サイドガイドの空気孔の位置は略一致している。
【0004】
給紙にあたっては、高さ方向の位置が固定されたサイドガイドに対してボトムプレートのみが上昇して最も上の用紙が給紙ローラに下側から接触し、この状態で給紙ローラが駆動されることにより、用紙が上から一枚ずつ送り出されていく。用紙の枚数が減少すると、ボトムプレートが上昇して用紙と給紙ローラの接触が保たれる。この給紙の際、サイドガイドの空気孔から最上部の用紙に側方から空気を吹き付けて、重なった用紙間に空気層を抱き込ませることにより、用紙相互の密着を剥がし、腰のない薄紙や表面が平滑な塗工紙であっても、重送を起こすことなく給紙できるものとされている。
【0005】
また、特許文献2には、画像形成装置に設けられる給紙装置の発明が開示されている。この給紙装置では、画像形成装置の所定位置に設置されて用紙幅に対応して間隔が調整できる一対の側部規制部材と、用紙が積載されて側部規制部材の間で昇降自在とされた昇降プレートと、側部規制部材の上部内面側に開口した送風口に連通して取り付けられたファンとを有している。昇降プレートの上方の所定位置には用紙を送り出すための給紙ローラが設けられているが、この給紙ローラの高さと、側部規制部材の送風口の位置は略一致している。
【0006】
給紙にあたっては、高さ方向の位置が固定された側部規制部材に対して昇降プレートのみが上昇して最も上の用紙が給紙ローラに下側から接触し、この状態で給紙ローラが駆動されることにより、用紙が上から一枚ずつ送り出されていく。用紙の枚数が減少すると、昇降プレートが上昇して用紙と給紙ローラの接触が保たれる。この給紙の際、側部規制部材の送風口から最上部の用紙に側方から空気を吹き付けて、重なった用紙間に空気層を抱き込ませることにより、特許文献1記載の発明と同様、用紙相互の密着を剥がして重送を防止できるものとされている。
【0007】
以上説明した特許文献1及び2に記載された給紙装置は、用紙を積載して昇降する台板(ボトムプレート、昇降プレート)と、用紙の側縁を規制するサイドフェンス(サイドガイド、側部規制部材)とが、装置本体に関して互いに別々に取り付けられて独立しており、間隔調整可能とされて上下方向の位置が固定されているサイドフェンスに対し、用紙を積載した台板が用紙の供給に伴って干渉することなく昇降可能な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−335885号公報
【特許文献2】特開2008−87906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1及び2に記載された給紙装置は、用紙を積載して昇降する給紙台と、用紙の側縁を規制するサイドフェンスが、装置本体に関して互いに別々に取り付けられて独立した構造となっており、用紙を積載した給紙台が用紙の供給等に伴って昇降しても、サイドフェンスは所定位置に固定されて移動することがなく、両者は干渉しないようになっている。
【0010】
しかしながら、このように供給等に際して用紙が積載された給紙台を昇降させる給紙機構において、この用紙の側縁を規制するためのサイドフェンスを昇降機構とは独立して給紙台と干渉しないように、しかも間隔調整ができるように構成するのは簡単ではなく、構造上の複雑さが増大し、部品点数も増えてしまうという問題があった。
【0011】
従って、このような問題を解消し、構造の簡略化・部品点数の減少を促進する観点からは、用紙を積載して昇降する給紙台の上にサイドフェンスを間隔調整可能に一体に設け、給紙台とサイドフェンスを一緒に昇降させる構成とすることが好ましい。
【0012】
ところが、用紙を積載する給紙台の上にサイドフェンスを設け、給紙台とサイドフェンスを一緒に昇降させる構成とした場合には、用紙相互の密着を剥がして重送を防止するためにサイドフェンスに取り付けられた空気吹き付け手段(特許文献1及び2におけるジャバラの空気孔やファンの送風口)も給紙台が上昇すれば一緒に上昇してしまう。用紙を送り出す給紙ローラの高さ方向の位置は一定であるから、用紙が供給されて用紙の積載高さが減少する毎に給紙台とサイドフェンスが上昇すれば、用紙の最上面に対する空気吹き付け手段の位置が変化するので、重送防止のために必要な最上部の用紙の側縁に常にエアを吹き付けることが不可能になってしまう。
【0013】
また、特許文献2に記載の給紙装置のように、サイドガイドに形成された空気孔に空気供給用のジャバラを接続して空気を送る構造では、ボトムプレート上に積載する用紙の幅に応じてサイドガイドの間隔を変えることによりジャバラが伸縮して長さが変動する。従って、例えば用紙幅が狭い場合にはジャバラが伸びてエアの圧力損失が増大するので、風量も少なくなり、用紙の重送防止のための剥離効果が十分に得られなくなってしまう。
【0014】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、用紙を積載する給紙台の上にサイドフェンスを設け、給紙台とサイドフェンスを一緒に昇降させる簡単な基本構造の給紙装置において、給紙台の上下方向の位置の変動や、用紙幅の大小に関わりなく、最上部の用紙の側縁に安定してエアを吹き付けられるようにし、腰のない薄紙や平滑な塗工紙であっても重送することなく確実に一枚ずつ送り出すことができるようすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された給紙装置は、
用紙が積載される昇降自在の給紙台と、前記用紙の給紙方向に対して平行となるように前記給紙台の上面に配置されて前記用紙の一対の側縁を案内する一対のサイドフェンスとを備え、前記給紙台に積載された前記用紙の中の最上位の用紙を所定位置に配置された給紙ローラに下方から接触させて該給紙ローラの駆動により送り出す給紙装置において、
前記フェンスの外面に上下動可能に設けられ、前記最上位の用紙とその他の前記用紙とを送風によって分離する用紙剥離用ファンと、
前記用紙剥離用ファンを上方に付勢する付勢手段と、
前記給紙台の上方である所定の高さに配置され、前記付勢手段に付勢された前記用紙剥離用ファンが前記給紙台の上昇に伴って付き当てられ、前記給紙ローラに接触する前記最上位の用紙に対応した所定の高さに前記用紙剥離用ファンを位置決めする位置決め手段と、
を有することを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載された給紙装置は、請求項1記載の給紙装置において、
前記一対のサイドフェンスは、前記給紙台に積載される前記用紙の給紙方向に平行な中心線を基準として前記中心線に直交する前記用紙の幅方向に移動することによって間隔が調整自在であり、
前記位置決め手段は、前記サイドフェンスと共に移動する前記用紙剥離用ファンの位置に対応した位置に設定できるように前記幅方向について移動自在であることを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載された給紙装置は、請求項2記載の給紙装置において、
前記一対のサイドフェンスの位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に応じて前記位置決め手段を前記幅方向に移動させ、前記位置決め手段を前記用紙剥離用ファンに相対しうる位置に設定する位置設定手段とを有することを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載された給紙装置は、請求項3記載の給紙装置において、
下方位置にある前記給紙台の上に前記用紙を載置し、前記用紙の幅に合わせて前記サイドフェンスの間隔を設定した後、前記用紙の中の最上位の用紙を前記給紙ローラに下方から接触させて該給紙ローラの駆動により送り出すために前記給紙台を上方位置に移動させる給紙開始指令を与えた場合に、
前記給紙台が上昇を開始する前に、前記位置設定手段は、前記位置検出手段からの信号に基づき、前記位置決め手段を前記幅方向に移動させて前記用紙剥離用ファンに対応した位置に設定することを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載された給紙装置は、請求項4記載の給紙装置において、
前記給紙台の上昇によって前記サイドフェンスと前記位置決め手段が接触した場合に、前記サイドフェンスとの接触によって前記位置決め手段に加わる衝撃を吸収する衝撃吸収構造が前記位置決め手段に設けられ、
さらに前記給紙台の上昇を停止させる安全スイッチが設けられたことを特徴としている。
【0020】
請求項6に記載された給紙装置は、請求項5記載の給紙装置において、
用紙が供給されない状態においては、前記位置決め手段は、前記位置設定手段により、間隔が最も大きく設定された一対の前記サイドフェンスの外側の位置であるホームポジションに設定されることを特徴としている。
【0021】
請求項7に記載された給紙装置は、請求項6記載の給紙装置において、
前記給紙装置の前記給紙台が、前記給紙装置から送り出された用紙を受けいれる本体に対し、前記用紙の給紙方向に対して直交する水平な回動軸を介して、前記給紙台が実質的に水平な状態にある使用位置と、前記給紙台が実質的に垂直な状態となる収納位置との間で、上下方向に回動可能となるように取り付けられており、
前記位置決め手段が前記ホームポジションに設定されている場合には、前記給紙台は該位置決め手段と干渉することなく前記使用位置から前記収納位置に回動できるようになっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載された給紙装置によれば、フェンスの外面に設けられた用紙剥離用ファンは、給紙台の上方にある位置決め手段に下方から付き当てられて、給紙ローラに接触する最上位の用紙に対応した所定の高さに位置決めされる。用紙の供給に伴って給紙台上に載置された用紙の枚数が減少し、これに対応して給紙台が上昇しても、上方に付勢された用紙剥離用ファンが位置決め手段に下方から付き当てられた状態に変化はない。従って用紙剥離用ファンは、給紙ローラに接触する最上位の用紙に常に側方から空気を吹き付け、重なった用紙間に空気層を抱き込ませることにより用紙相互の密着を剥がすことができる。このため、腰のない薄紙や表面が平滑な塗工紙であっても、重送を起こすことなく給紙することができる。
【0023】
請求項2に記載された給紙装置によれば、請求項1記載の給紙装置による効果において、給紙台に載置する用紙の幅に合わせてサイドフェンスの間隔を調整することができ、また、このサイドフェンスに設けられた用紙剥離用ファンの位置に合わせて位置決め手段の位置を設定することができる。
【0024】
請求項3に記載された給紙装置によれば、請求項2記載の給紙装置による効果において、給紙台に載置した用紙の幅に合わせてサイドフェンスの間隔を設定すると、このサイドフェンスの位置が位置検出手段で検出されるので、その検出結果に応じて位置設定手段で位置決め手段を幅方向に移動させれば、位置決め手段を用紙剥離用ファンに対応する位置に設定することができる。
【0025】
請求項4に記載された給紙装置によれば、請求項3記載の給紙装置による効果において、給紙を行なうために給紙台を下方位置に設定し、その上に用紙を載置し、その用紙の幅に合わせてサイドフェンスの間隔を設定した後、給紙開始指令を与えれば、次のような効果を得ることができる。すなわち、給紙台が上昇を開始する前に、サイドフェンスの位置を示す位置検出手段からの信号に基づき、位置設定手段が位置決め手段を幅方向に移動させて用紙剥離用ファンに対応した位置に設定する。その後、給紙台が上昇して上方位置に移動するので、用紙剥離用ファンは位置決め手段に下側から突き当たって確実に給紙高さに設定され、同時に用紙の中の最上位の用紙が給紙ローラに下方から接触する。従って、用紙剥離用ファンによる最上位の用紙への送風と、給紙ローラの駆動により、重送を起こすことなく用紙を確実に送り出すことができる。
【0026】
請求項5に記載された給紙装置によれば、請求項4記載の給紙装置における給紙時に、何らかのトラブルにより、給紙台が上昇しても用紙剥離用ファンが位置決め手段に下側から突き当たらず、サイドフェンスが位置決め手段に接触した場合には、サイドフェンスとの接触によって位置決め手段に加わる衝撃は、位置決め手段に設けられた衝撃吸収構造が吸収する。同時に、安全スイッチの作動により給紙台の上昇が停止されるので、かかるトラブルにより装置が破損することはない。
【0027】
請求項6に記載された給紙装置によれば、請求項5記載の給紙装置による効果において、用紙が供給されない状態においては、位置決め手段は、位置設定手段により、間隔が最も大きく設定された一対の前記サイドフェンスの外側の位置であるホームポジションに設定されるので、給紙台に用紙を載置したり、給紙台に載置されている用紙を他のサイズの用紙に取り替えたり、用紙を給紙台に載置した後にサイドフェンスの間隔を用紙に合わせて調整する等、給紙に係わる種々の作業が行ないやすいという効果がある。
【0028】
請求項7に記載された給紙装置によれば、請求項6記載の給紙装置による効果において、位置決め手段がホームポジションに設定されている場合には、給紙台を略水平な使用位置から回動軸を中心に回動して持ち上げ、本体側の略垂直な収納位置まで移動させても移動中に位置決め手段と干渉することがないので、給紙を行なわない場合には用紙を取り去って給紙台を速やかかつ円滑に本体側に収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め後方に向いた視線で見た斜視図であって、給紙台が下限位置にあり、載置された用紙の幅が相対的に広い場合を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め前方に向いた視線で見た斜視図であって、給紙台が下限位置にあり、載置された用紙の幅が相対的に広い場合を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る給紙装置の正面図であって、給紙台が下限位置にあり、載置された用紙の幅が相対的に広い場合を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る給紙装置において、給紙台のサイドフェンスの幅調整機構等の構造を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る給紙装置の制御ブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め前方に向いた視線で見た斜視図であって、位置決めブロックが最外側のホームポジションにある場合を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め前方に向いた視線で見た斜視図であって、印刷開始直後の状態を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め後方に向いた視線で見た斜視図であって、給紙台が上限位置にあり、載置された用紙の幅が広い場合を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め前方に向いた視線で見た斜視図であって、給紙台が上限位置にあり、載置された用紙の幅が相対的に広い場合を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態に係る給紙装置の正面図であって、給紙台が上限位置にあり、載置された用紙の幅が相対的に広い場合を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め後方に向いた視線で見た斜視図であって、給紙台が下限位置にあり、載置された用紙の幅が相対的に狭い場合を示す図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め後方に向いた視線で見た斜視図であって、給紙台が上限位置にあり、載置された用紙の幅が相対的に狭い場合を示す図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め後方に向いた視線で見た斜視図であって、位置決めブロックがホームポジションにあり、給紙台が収納位置にある状態を示す図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態に係る給紙装置を斜め前方に向いた視線で見た斜視図であって、位置決めブロックがホームポジションにあり、給紙台が収納位置にある状態を示す図である。
【図15】図15は、本発明の実施形態の変形例である給紙装置を斜め前方に向いた視線で見た斜視図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態の変形例である給紙装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.給紙装置の構造(図1〜図5、図13及び図14)
図1〜図5、図13及び図14を参照して実施形態に係る給紙装置の構造について説明する。
この給紙装置1は、供給された用紙を所定の目的で処理するための装置、例えば供給された用紙に画像を形成する印刷装置等の画像形成装置に用紙供給手段として備えつけられるものである。
【0031】
図1〜図3に示すように、画像形成装置の本体2には、画像形成装置の画像形成部に用紙を供給するための給紙装置1が取り付けられている。なお本例では、給紙装置1が取り付けられる画像形成装置の本体2として、画像形成装置の筐体を構成する壁体の一部を図1〜図3中に示している。
【0032】
図1〜図3に示すように、給紙装置1は用紙Pを積載するための給紙台3を備えている。この給紙台3は、本体2に対して水平状態を保持しながら、用紙補充位置である下限位置と、画像形成装置に対する給紙位置である上限位置との間で、本体2側に設けられた図示しない公知の昇降機構と、図4及び図5に示す昇降モータM1とによって、自在に昇降することができる。
【0033】
この給紙台3の上限位置よりも上方の所定位置には、第1及び第2給紙ローラ4,5が本体2側に取り付けられており、これらのローラ4,5は図5に示す駆動モータM3で駆動されるようになっている。すなわち、上昇してくる給紙台3上の用紙Pを第1給紙ローラ4が本体2に向けて送り出し、この用紙Pは本体2に取り付けられたガイド板6の捌き部材7と第2給紙ローラ5に捌かれて、本体2側の図示しない画像形成部に1枚ずつ送り込まれるようになっている。
【0034】
図1〜図3、図13及び図14に示すように、この給紙台3の給紙方向に平行な左右一対の側縁には、給紙方向について同一の位置に、軸孔8が形成された係止具9がそれぞれ取り付けられている。図示はしないが、この各係止具9の軸孔8と、前述した本体2側の昇降機構との間には、用紙Pの給紙方向に対して直交する水平な回動軸が渡設されている。これによって給紙台3は、図1に示すように給紙台3が実質的に水平な状態にある使用位置と、図13及び図14に示すように給紙台3が実質的に垂直な状態となる収納位置との間で、回動軸(又は軸孔8)を中心として上下方向に回動できるように本体2に対して取り付けられている。
【0035】
図1〜図3及び図4に示すように、給紙台3の上面には、給紙台3の上に積載した用紙Pの一対の側縁を案内する一対のサイドフェンス10,10が設けられている。特に図4に示すように、一対のサイドフェンス10,10は、用紙Pの給紙方向に対して平行となるように給紙台3の上面に配置されている。図示はしないが、給紙台3の上面には、各サイドフェンス10ごとに、給紙方向に直交する用紙Pの幅方向に沿って案内溝が形成されている。また給紙台3内には、各サイドフェンス10ごとに、用紙Pの幅方向に対して平行に配置され、用紙Pの幅方向に対して平行に移動するラック11,11が、給紙方向について所定間隔をおいて互いに平行に配置されている。そして各サイドフェンス10の下端と各ラック11は、前記案内溝を介して連結されており、給紙台3内で2つのラック11は中央に配置された共通のピニオン12に係合して連動するようになっている。このピニオン12は自由に回転できるようになっており、ユーザーがサイドフェンス10に対して用紙Pの幅方向に力を加えれば、一対のサイドフェンス10,10は連動し、給紙方向に平行な用紙Pの中心線Cを基準として対称な態様で用紙Pの幅方向に移動するので、この中心線Cを基準とした所望の間隔に設定できる。従って、給紙台3の上に載置した用紙Pの幅に合わせてサイドフェンス10の間隔を任意に設定することができる。なお、このピニオン12をモータの駆動軸に取り付ける構成とすれば、該モータの駆動によってサイドフェンス10を移動させて間隔の調整・設定を行なうようにすることができる。
【0036】
図4及び図5に示すように、サイドフェンス10の位置を検出する位置検出手段としてのポテンショメータ13がラック11の移動に連動するように設けられている。従って、上述したようにサイドフェンス10を手動で動かし、一対のサイドフェンス10,10の間隔を所望の値に設定した場合、そのようなサイドフェンス10の移動量乃至設定位置は、ポテンショメータ13の出力信号として把握することができる。
【0037】
図1〜図3及び図5に示すように、各サイドフェンス10の外面側には、給紙台3の上に載置された用紙Pのうち、最上位の用紙Pとその他の用紙Pとを送風によって分離するために、用紙Pの側縁側に空気を吹き付ける用紙剥離用ファンFが設けられている。サイドフェンス10に対する用紙剥離用ファンFの取り付け構造を説明すると、まずサイドフェンス10の外面側には、サイドフェンス10の外面との間に間隔をあけて、サイドフェンス10の外面と平行に、上下方向に沿ってサイドフェンス10と略同一高さのスライド軸14が一体に取り付けられている。このスライド軸14には付勢手段としての圧縮コイルばね15が挿通して設けられており、さらにこの圧縮コイルばね15の上端と、スライド軸14の上端の固定端との間には、スライド軸14に挿通されたスライド体16が介装されている。そして、このスライド体16に対して、前述した用紙剥離用ファンFが設けられている。従って、圧縮コイルばね15の弾性力によってスライド体16及び用紙剥離用ファンFは常に上方に向けて付勢されるようになっている。そして、サイドフェンス10のスライド軸14の隣の位置には、上下方向に沿ってスリット状の貫通孔17が形成されており、この貫通孔17に用紙剥離用ファンFの送風口が合致している。従って、用紙剥離用ファンFがサイドフェンス10に対して上下方向に移動しても、用紙剥離用ファンFからの送風はサイドフェンス10の内側にある用紙Pの側縁に常に到達することができる。
【0038】
図1〜図3に示すように、用紙剥離用ファンFの位置決め手段である位置決めブロック20が、給紙台3の上方にある画像形成装置の本体2に取り付けられている。この位置決めブロック20は、給紙台3の上昇に伴って用紙剥離用ファンFが下方から付き当てられ、これによって給紙ローラ4と最上位の用紙Pが接触する所定高さの給紙位置に用紙剥離用ファンFを位置決めするための部材である。従って、この位置決めブロック20は、以下に説明するように、サイドフェンス10と共に移動する用紙剥離用ファンFの位置に対応した位置に設定できるように、用紙Pの幅方向について移動自在であることを特徴としている。
【0039】
図1〜図3及び図5に示すように、給紙台3の上方にある本体2には、位置決めブロック20を移動させて所望の位置に設定するための位置設定手段として、移動モータM2が取り付けられている。移動モータM2は、本体2に対して、給紙台3上にある用紙Pの幅方向の中央に相当する位置に取り付けられており、その駆動軸は、平面視において給紙方向に平行な用紙Pの中心線Cに一致する位置に配置されて水平な状態で後方に向けられている。
【0040】
移動モータM2の駆動軸にはピニオン21が取り付けられており、このピニオン21には一対のラック22,22が係合している。一対のラック22,22は用紙Pの幅方向に平行であり、互いに平行となるように水平に配置され、ピニオン21に対してそれぞれ上下から係合している。詳細は図示しないが、一対のラック22,22は本体2に対して用紙Pの幅方向に沿って移動できるように、本体2に設けられた図示しない案内手段に案内されている。
【0041】
各ラック22の外端部の下側には、ラックに直交するように下方に向けて案内棒23が一体に設けられており、位置決めブロック20は、この案内棒23に対して所定の移動範囲で上下動できるように取り付けられている。
【0042】
従って、移動モータM2が駆動されると、一対の位置決めブロック20,20は、一対のサイドフェンス10,10と同様、給紙方向に平行な用紙Pの中心線Cを基準として対称な態様で用紙Pの幅方向に移動することができ、用紙Pの中心線Cを基準とした所望の間隔に設定できる。そして、本例においては、図5に示すように、一対のサイドフェンス10,10の位置を表す前記ポテンショメータ13からの信号に従って制御手段30が移動モータM2を駆動制御し、設定された一対のサイドフェンス10,10の間隔に合わせて一対の位置決めブロック20,20の間隔が設定されるようになっている。
【0043】
図示はしないが、案内棒23と位置決めブロック20の間には衝撃吸収構造(衝撃吸収部材を含む)が設けられており、また各ラック22の外端部には図5に示すように安全スイッチ25が設けられ、移動範囲の最上部に来た位置決めブロック20によって作動するようになっている。
【0044】
この安全スイッチ25は、復帰ばねが設けられたアクチュエータの作動によって接点のON/OFFが切り替わるようになっている。常時はOFFであり、復帰ばねのばね力を越える力がアクチュエータに加わってアクチュエータが作動した場合にONとなり、信号を出力する。アクチュエータに加わる力がなくなれば、復帰ばねのばね力によってアクチュエータが元の位置に戻り、OFFとなる。
【0045】
安全スイッチ25の復帰ばねのばね力は、用紙剥離用ファンFを付勢している圧縮コイルばね15のばね力よりも大きく設定されている。従って、給紙する際に、位置決めブロック20の間隔が用紙剥離用ファンF,Fの間隔(又はサイドフェンス10,10の間隔)に対して正規に設定されており、給紙台3が上昇して用紙剥離用ファンFが位置決めブロック20に下から突き当たった場合には復帰ばねではなく圧縮コイルばね15が弾性変形するので、安全スイッチ25のアクチュエータが作動することはなく、安全スイッチ25がON信号を出力することはない。
【0046】
ところが、位置決めブロック20の位置がサイドフェンス10の位置に対して正しく設定されておらず、給紙時に給紙台3が上昇してサイドフェンス10が位置決めブロック20に突き当たってしまった場合には、そのまま給紙台3が上昇すると位置決めブロック20が上方に移動して安全スイッチ25が作動するので、図5に示すように安全スイッチ25からのON信号を受けた制御手段30からの指令によって昇降モータM1を停止させることにより、位置決めブロック20やラック22等、装置の各部が破損するのを未然に防止することができる。
【0047】
図5は、本実施形態における給紙装置1及び画像形成装置の制御システムの要部を示している。図5に示すように、この給紙装置1は、以上説明した給紙装置1の各部と、給紙装置1に連動する画像形成装置とを統合的に駆動制御するための制御手段30を備えている。
【0048】
この制御手段30には、主として、サイドフェンス10の位置を示すポテンショメータ13からの信号と、ユーザーが操作する制御パネル31からの指令信号と、安全スイッチ25からの信号が入力される。制御手段30はこれらの信号を処理し、給紙台3を昇降させる昇降モータM1と、位置決めブロック20を移動させる移動モータM2と、給紙ローラ4,5を駆動する駆動モータM3と、用紙剥離用ファンとを駆動するようになっている。その駆動の詳細については次項にて詳述する。
【0049】
2.給紙装置1の作用(図1〜図14)
画像形成装置で画像形成を開始するために、給紙装置1に給紙開始指令を与えた場合について説明する。
図1〜図3は、下限位置にある給紙台3の上に、相対的に幅が広い用紙Pが設置され、用紙Pが送り出される状態を示している。まず、用紙Pの補充作業から、この図に示す給紙状態に至るまでの作用について説明する。
【0050】
図6に示すように、用紙Pが供給されない状態においては、給紙台3は下限位置に設定され、一対の位置決めブロック20,20は、移動モータM2とラック22によって、その間隔が最も大きく設定されたホームポジションに設定されている。このホームポジションは、一対のサイドフェンス10,10の外側の位置である。このように、本実施形態では、非印刷時又は給紙台3の上に用紙Pが存在しない場合には、位置決めブロック20をサイドフェンス10の外側のホームポジションに自動的に退避させ、給紙台3の上方の空間を明けておくようにしてある。従って、給紙台3上に用紙Pが存在しない状態から、新たに給紙台3に用紙Pを載置したり、給紙台3に載置されている用紙Pを他のサイズの用紙Pに取り替えるために前の用紙Pを一旦全て撤去した場合には、給紙しようとする用紙Pを給紙台3に載置する作業や、その後にサイドフェンス10,10の間隔を当該用紙Pに合わせて調整する作業等、給紙に係わる種々の作業が行ないやすいという効果がある。
【0051】
なお、このように給紙台3の上に用紙Pが存在しない場合に、位置決めブロック20をサイドフェンス10の外側のホームポジションに自動的に退避させるためには、給紙台3に用紙Pの有無を検知する有無検知センサを設け、このセンサが用紙Pが無いことを検知した場合には、図5に示す制御手段30が移動モータM2を制御して位置決めブロック20を最外方のホームポジションに設定すればよい。
【0052】
図7に示すように、下限位置(下方の用紙補充位置)にある給紙台3の上に複数枚の用紙Pを重ねて載置し、この用紙Pの幅に合わせて一対のサイドフェンス10,10の間隔を設定し、その後で図5に示す制御パネル31の印刷開始ボタンを操作して給紙開始指令を与える。
【0053】
図5に示すように、サイドフェンス10の間隔を検知するポテンショメータ13からの信号が制御手段30に入り、制御手段30はこの信号を用いて移動モータM2を制御し、一対の位置決めブロック20を図6に示すホームポジションから内方に向けて移動させ、その間隔をサイドフェンス10の間隔に合わせて設定する。図7は、このように位置決めブロック20とラック22が用紙Pの用紙幅に合わせて適正な位置に移動した直後の状態を示している。この段階では、まだ給紙台3は下方にあるので、図7に示すように用紙剥離用ファンFと位置決めブロック20とは接していない。
【0054】
次に、図5に示すように、制御手段30が昇降モータM1を駆動して給紙台3を上方の給紙位置に向けて上昇させる。
【0055】
図1〜図3に示すように、給紙台3が上昇して給紙位置に設定され、給紙台3上に積載された用紙Pのうち、最上部の用紙Pが給紙ローラ4に接した状態になった時、用紙剥離用ファンFは位置決めブロック20に下方から突き当たり、用紙Pと給紙ローラ4が接している用紙供給位置に対応した高さに設定される。
【0056】
そして、画像形成部における画像形成にタイミングを合わせて制御手段30が給紙ローラ4,5の駆動モータM3を駆動し、給紙ローラ4,5が用紙Pを画像形成装置に送り込む。この時、制御手段30は用紙剥離用ファンFを駆動しており、用紙剥離用ファンFは、給紙位置にある最上位の用紙Pとその他の用紙Pとの間に空気を吹き込んでいるので、重ねられた用紙Pは確実に分離され、重送を起こすことなく最上位の1枚の用紙Pだけが画像形成装置に送り出される。
【0057】
以後、給紙によって用紙Pの枚数が減少すると、給紙台3の上に載置された用紙Pの高さが減少した分だけ給紙台3が上昇し、最上位の用紙Pが常に給紙ローラ4に接触する状態が維持され、同時に用紙剥離用ファンFは給紙位置に常に位置決めされて最上位の用紙Pの側縁に空気を吹き付けるので、用紙Pの重送は常に確実に防止される。
【0058】
図8〜図10は、図1〜図3に示す状態から徐々に給紙台3が上昇しながら給紙が進んで用紙Pの枚数が減少し、給紙台3が上限位置に近づいた状態を示している。これらの図に示すように、給紙の進行に伴って給紙台3が上昇した場合、給紙台3の上昇に伴って用紙剥離用ファンFが上方に移動しようとしても、所定位置に位置決めされた位置決めブロック20に突き当たって止められ、圧縮コイルばね15が縮退していく。すなわち、用紙剥離用ファンFは、用紙供給位置に位置決めされた状態が維持され、常に最上位の用紙Pの側縁側に対して用紙剥離のための送風を続けることができる。
【0059】
図11及び図12は、図1〜図3に比べて用紙Pの用紙幅が相対的に狭い場合を示したものである。図11は、給紙台3が下限位置にあり、多数枚の用紙Pが積載されている。図12は、給紙台3が上限位置にあり、給紙が進んで用紙Pの枚数が少なくなっている。このように、用紙Pの用紙幅が相対的に狭い用紙Pを給紙台3に積載した場合には、図5に示すように、狭い用紙Pの用紙幅に合わせてサイドフェンス10,10の間隔を設定すれば、その間隔を検知したポテンショメータ13からの信号が制御手段30に入り、制御手段30はこの信号を用いて移動モータM2を制御し、一対の位置決めブロック20,20の間隔をサイドフェンス10,10の間隔に合わせて自動的に設定するので、用紙剥離用ファンFを位置決めブロック20に付き当てて給紙位置の高さに設定する機能は用紙Pの用紙幅の広狭に係わらず確実に達成される。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では、用紙Pの幅に合わせて設定したサイドフェンス10,10の間隔に対応して位置決めブロック20,20の間隔を自動設定するようになっているが、何らかの理由で、位置決めブロック20の位置と、サイドフェンス10の位置が正しく対応して設定されていない状況が発生することも考えられる。そのような場合には、給紙時に給紙台3が上昇してサイドフェンス10が位置決めブロック20に突き当たってしまうが、そのまま給紙台3が上昇すると位置決めブロック20が上方に移動して安全スイッチ25が作動するので、図5に示すように安全スイッチ25からのON信号を受けた制御手段30からの指令によって昇降モータM1が停止し、位置決めブロック20やラック22等、装置の各部が破損するのを未然に防止することができる。
【0061】
図13及び図14は、給紙台3を収納した状態を示している。給紙台3を使用しない場合には、位置決めブロック20は最も外側のホームポジションに設定されているので、用紙Pが載置されていない給紙台3を矢印にて示すように図示しない回動軸(又は軸孔8)を中心として上方に回動させれば、位置決めブロック20と干渉することなく水平な使用位置から垂直な収納位置に移動して本体2側に収納することができる。
【0062】
なお、以上説明した実施形態では、用紙剥離用ファンFはサイドフェンス10の特定位置に取り付けられているので、用紙サイズが異なると、用紙剥離用ファンFが用紙Pの側縁に対して空気を吹き付ける位置が異なってくる場合がある。給紙時に用紙Pを剥離する目的では、なるべく用紙Pの中央付近に空気を送ることが好ましいとすれば、使用が想定される複数種類のサイズの用紙Pについて、いずれもなるべく側縁の中央付近に空気が送られるように、サイドフェンス10に対する用紙剥離用ファンFの取り付け位置を設定することが好ましい。又は、使用頻度の高い用紙Pサイズに合わせて、サイドフェンス10のある特定位置に用紙剥離用ファンFを取り付けている場合には、他サイズの用紙Pを使用する場合には、用紙剥離用ファンFの送風口に着脱可能な送風ダクトを設けて他サイズの用紙Pの側縁の中央位置に空気を送れるようにしてもよい。
【0063】
3.給紙装置の効果
以上説明したように、本実施形態の給紙装置1によれば、用紙Pのサイズに応じて幅が設定されるサイドフェンス10に用紙剥離用ファンFが取り付けられているので、用紙Pの用紙幅が変動しても用紙Pの側縁に一定の風量で直接空気を吹き付けて用紙Pを確実に剥離することができる。
【0064】
また、用紙剥離用ファンFはサイドフェンス10に対して上下動可能に取り付けられ、圧縮コイルばね15で可動範囲の上限位置に押し上げられた構成であるため、サイドフェンス10が給紙台3と共に上下動しても、用紙剥離用ファンFは本体2側の位置決めブロック20に押し付けられて常に一定の高さの給紙位置に設定されるので、給紙台3上の用紙Pの枚数が変わっても常に給紙位置にある用紙Pの側縁に剥離用の空気を吹き付けることができる。
【0065】
従って、実施形態の給紙装置1によれば、用紙サイズが変わっても、また給紙台3及びサイドフェンス10の上下位置が変動しても、常に最上部の用紙Pの側縁に安定した風量の空気を吹き付けることができ、腰のない薄紙や平滑な塗工紙の密着を剥がして重送を防止することができる。
【0066】
また、隔所に設置したファンからダクトを引き回して給紙台3上の用紙Pの側縁に空気を導くような複雑かつ嵩高な構造とは異なり、実施形態の給紙装置1は非常にコンパクトな構成であるため、前述したように給紙台3を軸を中心として本体2側に回動させて折りたたむ構成を採用することができた。
【0067】
4.実施形態の変形例である給紙装置1’について(図15及び図16)
前述した実施形態の変形例である給紙装置1’について図15及び図16を参照して説明する。変形例の給紙装置1’において、実施形態の給紙装置1と実質的に同一の部分については、実施形態における説明と同一の符号を図面中に付して実施形態の説明を援用する。また、以下の記述では実施形態から変形した部分を中心として、当該部分に対応する従来技術及びその課題と、課題を解決するために実施形態から変形した部分の構成及び作用効果等について説明する。
【0068】
実施形態の「背景技術」の項で説明し、特許文献1乃至2として示したように、従来、腰のない薄紙や表面が平滑な塗工紙の重送を防止する構造として、給紙台に積載された用紙の側面よりエアーを吹きつけ、用紙間に空気を抱きこませることで、用紙の密着を剥がし、用紙最上面から1枚ごとに給紙する装置が知られていた。それらの装置においては、目的の機能を満たすために、必要以上に大型のファンを用いて風量をアップさせる手法を選択していた。
【0069】
ファンの仕様であるが、例えば特許文献2の「発明の詳細な説明」の段落0049によると、送風手段の消費電力は6Wで、風量は0.5m3 /minと説明されている。また同文献の「図7」の送風手段によるファンの効果を示した特性図を見ると、薄紙の場合は、厚紙の約半分程度の風量と記載され、その場合でも、単純計算で消費電力3W、風量は0.25m3 /min程度になるはずである。
【0070】
しかしながら、このように大型のファンを用いると、エアの吹き付けで密着した用紙を剥がす効果は得られるものの、給紙装置の大型化や騒音の問題、消費電力の増大、コストアップなどの問題が生じてしまう。
【0071】
実施形態の改良である給紙装置1’では、上記の課題を踏まえ、少量の風量(従来の半分程度)でも、腰のない薄紙や表面が平滑な塗工紙を、確実に1枚ごとに給紙することができる、安価で小型で静かな給紙装置を提案することを目的としている。
【0072】
図15及び図16に示すように、この給紙装置1’では、少量の風量でも効果を最大限に発現するために、用紙Pの幅方向を規制する両側のサイドフェンス10’,10’の後端の位置を、用紙Pの後端面と同等かそれ以上後方に延長し、サイドフェンス10’,10’を長くしている。これによって、用紙を剥離するために用紙剥離用ファンFで用紙Pの側面にエアーを吹き付けた時、用紙Pの側面からエアーが漏れるのが抑制され、両側のサイドフェンス10’,10’と用紙Pの側面とでエアーを封じ込めることで、用紙Pの全面に空気を広げやすくなる。その結果、特に用紙間の密着を起こしやすい、腰のない薄紙や表面が平滑な塗工紙の重送を防止することが可能になった。
【0073】
これにより、用紙剥離用ファンFを小型のタイプのファンにすることが可能になり、前述した従来の課題を解決し、給紙装置の小型化や、静音化、低消費電力化、コストダウンなどのメリットが得られる。なお上記の方法は、用紙Pの側面に設置する用紙剥離用ファンFが、片側1つでも、両側2つを対向させたレイアウトの場合でもいずれも有効である。なお、従来はサイドフェンスの大きさを特に意識していなかったため、サイドフェンスが用紙Pの後端に達しない短さであったため、フェンスのない部分からエアーが漏れた状態で給紙する結果になり、エアによる剥離機能を満たすために風量の大きいファンを使用せざるを得なかったものと考えられる。
【符号の説明】
【0074】
1…給紙装置
2…本体
3…給紙台
4…第1給紙ローラ
10…サイドフェンス
13…位置検出手段としてのポテンショメータ
15…付勢手段としての圧縮コイルばね
17…給紙台の回動軸を支持する貫通孔
20…位置決め手段としての位置決めブロック
25…安全スイッチ
30…制御手段
M2…位置決めブロックの位置設定手段としての移動モータ
F…用紙剥離用ファン
P…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙が積載される昇降自在の給紙台と、前記用紙の給紙方向に対して平行となるように前記給紙台の上面に配置されて前記用紙の一対の側縁を案内する一対のサイドフェンスとを備え、前記給紙台に積載された前記用紙の中の最上位の用紙を所定位置に配置された給紙ローラに下方から接触させて該給紙ローラの駆動により送り出す給紙装置において、
前記フェンスの外面に上下動可能に設けられ、前記最上位の用紙とその他の前記用紙とを送風によって分離する用紙剥離用ファンと、
前記用紙剥離用ファンを上方に付勢する付勢手段と、
前記給紙台の上方である所定の高さに配置され、前記付勢手段に付勢された前記用紙剥離用ファンが前記給紙台の上昇に伴って付き当てられ、前記給紙ローラに接触する前記最上位の用紙に対応した所定の高さに前記用紙剥離用ファンを位置決めする位置決め手段と、
を有することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記一対のサイドフェンスは、前記給紙台に積載される前記用紙の給紙方向に平行な中心線を基準として前記中心線に直交する前記用紙の幅方向に移動することによって間隔が調整自在であり、
前記位置決め手段は、前記サイドフェンスと共に移動する前記用紙剥離用ファンの位置に対応した位置に設定できるように前記幅方向について移動自在であることを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記一対のサイドフェンスの位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に応じて前記位置決め手段を前記幅方向に移動させ、前記位置決め手段を前記用紙剥離用ファンに相対しうる位置に設定する位置設定手段とを有することを特徴とする請求項2記載の給紙装置。
【請求項4】
下方位置にある前記給紙台の上に前記用紙を載置し、前記用紙の幅に合わせて前記サイドフェンスの間隔を設定した後、前記用紙の中の最上位の用紙を前記給紙ローラに下方から接触させて該給紙ローラの駆動により送り出すために前記給紙台を上方位置に移動させる給紙開始指令を与えた場合に、
前記給紙台が上昇を開始する前に、前記位置設定手段は、前記位置検出手段からの信号に基づき、前記位置決め手段を前記幅方向に移動させて前記用紙剥離用ファンに対応した位置に設定することを特徴とする請求項3記載の給紙装置。
【請求項5】
前記給紙台の上昇によって前記サイドフェンスと前記位置決め手段が接触した場合に、前記サイドフェンスとの接触によって前記位置決め手段に加わる衝撃を吸収する衝撃吸収構造が前記位置決め手段に設けられ、
さらに前記給紙台の上昇を停止させる安全スイッチが設けられたことを特徴とする請求項4記載の給紙装置。
【請求項6】
用紙が供給されない状態においては、前記位置決め手段は、前記位置設定手段により、間隔が最も大きく設定された一対の前記サイドフェンスの外側の位置であるホームポジションに設定されることを特徴とする請求項5記載の給紙装置。
【請求項7】
前記給紙装置の前記給紙台が、前記給紙装置から送り出された用紙を受けいれる本体に対し、前記用紙の給紙方向に対して直交する水平な回動軸を介して、前記給紙台が実質的に水平な状態にある使用位置と、前記給紙台が実質的に垂直な状態となる収納位置との間で、上下方向に回動可能となるように取り付けられており、
前記位置決め手段が前記ホームポジションに設定されている場合には、前記給紙台は該位置決め手段と干渉することなく前記使用位置から前記収納位置に回動できるようになっていることを特徴とする請求項6記載の給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−144035(P2011−144035A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8239(P2010−8239)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】