説明

緊急通報システム、通報受信装置、緊急通報システムの制御方法

【課題】緊急通報に対して、所轄の消防署に対して簡単かつ確実に救急車の出動要請を行うこと。
【解決手段】本発明に係る緊急通報システムは、通報送信装置1は、通信回線3を介して通報受信装置2との間での音声通話を行う通話部41と、現在の自己位置情報を取得する位置情報取得部42と、取得された自己の位置情報を、通信回線3を介して通報受信装置3に送信する通信部43と、を備えている。通報受信装置2は、住所と、当該住所を所轄エリアとする消防署の消防署情報と、が対応付けられて記憶された消防署データベースを参照して、通報送信装置1から送信された位置情報が示す住所から当該住所に対応する所轄消防署を検索し、通報送信装置1との間の音声通話と、通報送信装置1と検索された所轄消防署との間の音声通話回線の接続と、を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緊急通報システム、通報受信装置、緊急通報システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居宅内等において、高齢者等の異常事態に対応するための緊急通報装置が利用されている。このような通報装置として、予め所定のコールセンターの電話が登録され、簡単な操作でコールセンターと連絡が取れるシステムが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、高齢者等が携帯可能な腕時計やペンダント等に無線送信機能を搭載し、このような装置に設けられた所定のボタンを押すと、公衆電話回線に接続された通報装置へと無線信号が伝達される。通報装置は、その無線信号の受信をトリガーとして、予め登録されたコールセンターに自動的に接続し、コールセンターからコールバックするシステムが開示されている
【0004】
このような通報装置は、既に全国に普及しており、多くの高齢者宅に設置されている。コールセンターでは、発信元の高齢者に異常が見られると判断した場合には、予めコールセンターで登録している高齢者宅の住所を管轄する消防署へと連絡をし、救急車を要請する。この場合、コールセンターでは所轄の消防署を事前に把握できており、第三者としての通報の許可を消防署から受けていることが前提となる。
【0005】
一方で、近年の携帯電話の普及に伴い、携帯電話の短縮ボタンを使用した同様のシステムも検討されている。例えば特許文献2に開示されるように、押しボタンを押すと所定のコールセンターに通報されるものであり、通報に併せて、GPS(Global Positioning System)の位置情報を収集して、通報されている場所を特定するシステムなどである。これらシステムを用いることで、屋内のみならず、屋外においても緊急時の通報ができることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−253042号公報
【特許文献1】特開2002−223322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、通報装置が携帯電話などである場合には、屋外でも通報が可能となるために、発信者が異常を訴えた際に、コールセンターに予め登録されている発信者宅の住所を管轄している消防署に連絡しても、発信した場所が発信者宅から離れていると消防署の管轄地域が異なることがある。このため、救急車の出動要請を行うことができないという問題がある。
【0008】
この問題に対して、コールセンターでGPSを用いて位置を検索して、その位置情報から発信場所を管轄している消防署に連絡するという方法も考えられる。しかし、コールセンターは第三者の立場であるために、非常時における連絡の許可の取り決めを、全国数百の消防署との間で事前に交わしておく必要がある。このため、事前に契約を前提とする方法では、実現することは非常に困難である。
【0009】
また、GPSの位置情報は、建物などの遮蔽により数百m以上の精度の誤差が発生することも多々あり、誤った位置情報を消防署に通達してしまう可能性があることからも、発信者の正確な場所に対して、救急車の出動を要請することは困難であった。
【0010】
従って本発明は、上述した課題を解決して、特殊かつ緊急性の高いこのような緊急通報に対して、所轄の消防署に対して簡単かつ確実に救急車の出動要請を行うことが可能な緊急通報システム、通報受信装置、緊急通報システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る緊急通報システムは、利用者からの緊急通報を送信する通報送信装置と、通信回線を介して前記通報送信装置からの緊急通報を受信する通報受信装置と、を備えた緊急通報システムであって、前記通報送信装置は、前記通信回線を介して前記通報受信装置との間での音声通話を行う通話手段と、現在の自己位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報取得手段により取得された自己の位置情報を、前記通信回線を介して前記通報受信装置に送信する通信手段と、を備え、前記通報受信装置は、住所と、当該住所を所轄エリアとする消防署の消防署情報と、が対応付けられて記憶された消防署データベースを参照して、前記通報送信装置から送信された前記位置情報が示す住所から当該住所に対応する所轄消防署を検索する消防署情報検索手段と、前記通報送信装置との間の音声通話と、前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線の接続と、を行う回線接続手段と、を備えるものである。
【0012】
これにより、通報送信装置から利用者が緊急通報を行った場合に、通報受信装置では通報送信装置の位置情報を自動的に取得して、その位置情報の所轄消防署を検索することで、該当の所轄消防署へと簡単に連絡することができる。また、利用者と所轄消防署との間での音声通話を可能としたことで利用者から直接救急車の要請を行わせることができるため、通報受信装置側は第三者の立場にありながら、全国にある所轄消防署に対して事前に契約を結ぶことなく簡単に対応することができる。さらに、利用者が直接救急車の要請を行うことができるため、出動を要請する際には利用者の位置に関してより確実な要請を行うことができる。
【0013】
また、前記通信手段は、前記利用者の識別情報と、前記位置情報取得手段により取得された自己の位置情報と、を、前記通信回線を介して前記通報受信装置に送信し、前記通報受信装置は、予め登録された利用者の識別情報が記憶された顧客データベースを参照して、前記通報送信装置から送信された前記利用者の識別情報が、前記顧客データベースに記憶されているか否かを判断する利用者特定手段を更に備え、前記回線接続手段は、前記通報送信装置から送信された前記利用者の識別情報が、前記顧客データベースに記憶されていると前記利用者特定手段により判断された場合には、前記通報送信装置との間での音声通話を許可するようにしてもよい。これにより、緊急通報の対象とする利用者を識別することができる。
【0014】
さらにまた、前記回線接続手段は、前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間での音声通話を行う際に、前記通報送信装置と、前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署と、自身との間の音声通話回線を接続して、三者通話状態を形成するようにしてもよい。これにより、通報受信装置側からも会話に参加することができ、通報送信装置の利用者と消防署との間の会話を補助することができる。
【0015】
また、前記通報送信装置は携帯電話であり、前記通信手段は、前記位置情報取得手段により取得された自己の位置情報を、電子メールを用いて、前記通信回線を介して前記通報受信装置に送信し、前記消防署情報検索手段は、地理情報システムを用いて、前記携帯電話より送信された前記電子メールから前記携帯電話の現在位置に対応する住所を割り出し、前記消防署データベースを参照して、前記割り出した住所に対応する所轄消防署を検索するようにしてもよい。
【0016】
また、前記通報送信装置との間の音声通話を保留状態として、前記通報受信装置自身と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線を接続して音声通話を可能とする第1のボタンと、前記第1のボタン操作による前記保留状態を解除し、前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線を接続して音声通話を可能とする第2のボタンと、を表示装置に表示する表示手段を更に備えるようにしてもよい。
【0017】
さらにまた、前記利用者の識別情報は、前記通報送信装置の通話回線の電話番号であるようにしてもよい。
【0018】
また、前記通報送信装置は、予め登録された通報受信装置に対して自動発信を行う操作ボタンを更に備えるようにしてもよい。
【0019】
本発明に係る通報受信装置は、通信回線を介して通報送信装置からの緊急通報を受信する通報受信装置であって、住所と、当該住所を所轄エリアとする消防署の消防署情報と、が対応付けられて記憶された消防署データベースを参照して、前記通報送信装置から送信される位置情報が示す住所から当該住所に対応する所轄消防署を検索する消防署情報検索手段と、前記通報送信装置との間の音声通話と、前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線の接続と、を行う回線接続手段と、を備えるものである。
【0020】
本発明に係る緊急通報システムの制御方法は、利用者からの緊急通報を送信する通報送信装置と、通信回線を介して前記通報送信装置からの緊急通報を受信する通報受信装置と、を備えた緊急通報システムの制御方法であって、前記通報送信装置において、現在の自己位置情報を取得し、取得した前記位置情報を、前記通信回線を介して前記通報受信装置に送信し、前記通報受信装置において、住所と、当該住所を所轄エリアとする消防署の消防署情報と、が対応付けられて記憶された消防署データベースを参照して、前記通報送信装置から送信された前記位置情報が示す住所から当該住所に対応する所轄消防署を検索し、前記通信回線を介して前記通報送信装置との間の音声通話を行い、前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線の接続を行うものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特殊かつ緊急性の高いこのような緊急通報に対して、所轄の消防署に対して簡単かつ確実に救急車の出動要請を行うことが可能な緊急通報システム、通報受信装置、緊急通報システムの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1にかかる緊急通報システムの概略的なシステム構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる通報送信装置の概観図である。
【図3】実施の形態1にかかる緊急通報システムのシステム構成図である。
【図4】実施の形態1にかかる通報受信装置の内部構成図である。
【図5】実施の形態1にかかる通報受信装置の通報着信時のシーケンス図である。
【図6】実施の形態1にかかる通報受信装置の利用者特定処理のフローチャートである。
【図7】実施の形態1にかかる通報受信装置の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる緊急通報システムの概略的なシステム構成図である。
緊急通報システムは、利用者からの緊急通報を送信する通報送信装置1と、通信回線3を介して通報送信装置1からの緊急通報を受信する通報受信装置2と、を備えている。
【0024】
通報送信装置1は、高齢者の自宅にある緊急通報装置や、緊急通報を行うことが可能な携帯端末(例えば、携帯電話)である。通報送信装置1は、通信回線3(例えば、公衆電話回線)を介して、通報受信装置2に接続される。
【0025】
通報受信装置2は、通報送信装置1からの緊急通報を受信する装置であり、コールセンター内に設置されている。通報受信装置2は、通信回線3を介して、通報送信装置1や、他の消防署の回線などに接続される。
【0026】
通報送信装置1は、通話部41と、位置情報取得部42と、通信部43と、を少なくとも備えている。通話部41は、通信回線3を介して通報受信装置2との間での音声通話を行う。これにより、通報送信装置1の利用者が、通報受信装置2のオペレータとの間で通話を行う。位置情報取得部42は、通報送信装置1の現在の自己位置情報を取得する。通信部43は、位置情報取得部42により取得された自己の位置情報を、通信回線3を介して通報受信装置2に送信する。
【0027】
図2は、本実施の形態にかかる通報送信装置の概観図である。
通報送信装置1は携帯端末とすることができ、図では、携帯電話型である場合の例を示している。通報送信装置1は、ディスプレイ11と、短縮ボタン12と、オフフックボタン13と、オンフックボタン14と、数字ボタン列15と、を備えている。短縮ボタン12は、予め登録した電話番号に対してワンプッシュでダイヤルすることができる。何らかの緊急事態が発生したときの緊急通報先として、コールセンターの電話番号が短縮ボタン12に登録されている。すなわち、通報送信装置1は、利用者により短縮ボタン12がプッシュされることで、コールセンターに対して自動発信を行う。
【0028】
利用者からの緊急通報は、ボタンを1回押すことで通報できることが好ましい。このため、予めコールセンターの電話番号が短縮ボタン12に登録されている。コールセンターの電話番号は、通報送信装置1の内部メモリに記憶されている。記憶方法としては、数字ボタン列15により入力してもよいし、専用のソフトウェアによりダウンロードするものとしてもよい。内部メモリは、携帯電話の電源電池を外してもその記憶内容を保持可能な不揮発性メモリであることが好ましい。短縮ボタン12がプッシュされると、メモリにアクセスしてコールセンターの電話番号を読み出し、電話の発信が開始される。コールセンターとの回線が接続された後、利用者は、スピーカとマイクを用いた音声通話が可能となる。
【0029】
通常の携帯電話では、電話が着信すると音や振動によりその利用者に着信を通知し、着信を確認した利用者がオフフックボタン13を押すことで、回線が接続されて通可能状態となる。すなわち、オフフックボタン13がプッシュされない限り、通話することができない。これは、一般の固定電話と同じ機能である。
【0030】
図3は、本実施の形態にかかる緊急通報システムのシステム構成図である。図では、通報送信装置1が携帯電話である場合の、緊急通報システムの回線接続構成を示している。
通報送信装置1は、携帯電話基地局31からの伝播が届く範囲内に位置する場合に、通話が可能である。この伝播が届く範囲は、セル33と呼ばれている。セル33は、数百mから数kmの範囲で設計されており、一般的には、正六角形に配置される。携帯電話基地局31は中継器32aに接続され、中継器32aは、通信回線3(ここでは、公衆電話回線網)に接続される。
【0031】
通報送信装置1からの緊急通報は、通信回線3を介して通報受信装置2が設置されたコールセンターへと送信される。コールセンター側では、中継器32bを介して通報受信装置2が緊急通報を受信する。
【0032】
通報受信装置2では、通報送信装置1の識別情報として発信電話番号から利用者を特定し、登録された利用者からの通報である場合には、電話回線の接続を維持して、電話機によりオペレータが通話を行う。一方で、登録されていない電話番号を受信した場合には、間違い電話であると認識して、回線を切断する。
【0033】
図4は、本実施の形態にかかる通報受信装置の内部構成図である。
通報受信装置2は、回線接続部201と、利用者特定部202と、顧客データベース203と、GIS(Geographic Information System)解析部204と、消防署データベース205と、表示部206と、電話機207と、を備えている。なお、回線接続部201が回線接続手段に相当し、GIS解析部204及び消防署データベース205が消防署情報検索手段に相当し、利用者特定部202及び顧客データベース203が利用者特定手段に相当する。
【0034】
回線接続部201は、通信回線3との接続を行う。詳細は後述するが、まず、回線接続部201は、通報送信装置1から送信された利用者の識別情報(例えば、通報送信装置1の電話番号)が、顧客データベース203に記憶されていると判断された場合には、通報送信装置1との間での音声通話を許可する。さらに、回線接続部201は、通報送信装置1との間の音声通話と、通報送信装置1と検索された所轄消防署との間の音声通話回線の接続と、を行う。
【0035】
利用者特定部202は、通報先の通報送信装置1の利用者を特定する。予め登録された利用者の識別情報が記憶された顧客データベース203を参照して、通報送信装置1から送信された利用者の識別情報が、顧客データベース203に記憶されているか否かを判断する。
【0036】
GIS解析部204は、通報送信装置1からの位置情報(例えば、測位情報が含まれた電子メール)を受信し、GPSの測位情報を入手する。なお、GIS解析部204による処理の詳細については後述する。
【0037】
消防署データベース205は、消防署データの格納及び検索を行う。消防署データベース205は、住所と、その住所を所轄エリアとする消防署の消防署情報と、を対応付けて記憶している。また、消防署データベース205は、通報送信装置1から送信された位置情報が示す住所から、その住所に対応する所轄消防署を検索する。消防署データベース205には、日本全国の各地域を所轄する消防署の情報が登録されている。消防署情報の登録は、例えば、一般書籍として販売されている「全国消防便覧、発行:ぎょうせい、編集:全国消防組織研究会」から、住所と、その住所を所轄エリアとする消防署とを紐付けして対応付けた上で行えばよい。
【0038】
以下、図5乃至図7を参照して、通報送信装置1が緊急通報を送信した場合の、通報受信装置2側での処理動作について説明する。
図5は、本実施の形態にかかる通報受信装置の通報着信時のシーケンス図である。
通報受信装置2では、通報送信装置1からの通報が入ると、回線接続部201にて通報を受信する。回線接続部201は、その受信情報を利用者特定部202に伝達する。
【0039】
図5を参照して、通報送信装置1からの信号を受信した電話交換機(中継器32b)と、通報受信装置2の利用者特定部202との間で伝達される信号について説明する。なお、以下の一連の動作は、ナンバーディスプレイ機能を搭載した利用者特定部202により実行される。また、通報送信装置1は、回線接続のダイヤル時に、モデム信号S102を通知する設定にしておく。
【0040】
まず、通報送信装置1が、通信回線3(公衆電話回線)に回線接続するための接続要求信号を送出すると、これを受信した着信側の交換機である通報受信装置2の中継器32bが、情報受信端末信号S100を回線接続部201へと送出する。なお、この情報受信端末信号S100は、ベル回路を切り離しているために、着信音は発生しない。
【0041】
利用者特定部202は、回線接続部201を介して情報受信端末信号S100を受信すると、一次応答信号S101を送出する。
交換機(中継器32b)は、一次応答信号S101を受信すると、通報送信装置1の電話番号情報を、モデム信号S102として回線接続部201へと送出する。
【0042】
利用者特定部202は、回線接続部201を介してモデム信号S102を受信すると、通報送信装置1の発信番号を解析すると共に、受信完了信号S103を送出し、ループ断を実行する。
交換機(中継器32b)は、受信完了信号S103を受信すると、通報受信装置2が通報送信装置1の発信番号を受信したと認識し、通常の電話の呼び出し番号S104を送出して、電話を呼び出す状態となる。
【0043】
図6は、本実施の形態にかかる通報受信装置の利用者特定処理のフローチャートである。
通報受信装置2は、常時、通報送信装置1からの着信待ちの状態となっている(S201)。
通報受信装置2に着信があると(S202で「はい」の場合)、利用者特定部202は、この通報送信装置1の電話番号情報をモデム信号から取得する(S203)。
【0044】
通報送信装置1の電話番号は利用者情報として顧客データベース203に予め登録されており、利用者特定部202は、今回取得した電話番号と、顧客データベース203に記憶された電話番号とを照合する(S204)。
照合の結果、今回取得した電話番号が顧客データベース203に記憶されていない場合には、予め登録されている利用者の通報送信装置1以外からの着信であると判断し、回線を切断する(S206)。
【0045】
一方で、照合の結果、今回取得した電話番号が顧客データベースに記憶されている利用者の電話番号と一致した場合には、利用者特定部202は、着信完了操作を行い、表示部206により該当する利用者の情報を表示させる(S206)。
表示部206により利用者情報が表示された後、回線接続部201は、電話機207に接続され、通報送信装置1との間での会話が可能となる。
【0046】
次に、GIS解析部204による処理の詳細と、消防署データベース205による消防署データの検索処理について説明する。なお、通報送信装置1が位置情報取得機能を搭載した携帯端末(例えば携帯電話)である場合には、その位置情報を通報受信装置2へと送信することができ、以下では、電子メールを用いて位置情報(例えば、測位情報)を通報受信装置2へと送信する場合を例に説明する。
【0047】
まず、通報送信装置1は、通報受信装置2による着信を確認すると、通報送信装置1内にあるGPS機能を用いて測位を行い、電子メールを利用して、その測位情報を送信する。ここで、GPSの測位情報は、上空約2万メートルを周回する複数のGPS衛星からの情報を入手し、緯度経度に変換された情報である。なお、位置情報取得機能としては、携帯電話基地局31が受信した通報送信装置1の伝播状況や、複数の基地局を用いて取得する位置情報などをも組み合わせて、位置をより精度良く判断する機能を有するものもある。
【0048】
通報受信装置2の回線接続部201は、通報送信装置1からの電子メールを受信すると、電子メールをGIS解析部204に伝達する。
GIS解析部204は、通報送信装置1からの電子メールを受信して、当該電子メールからGPSの測位情報を入手する。
なお、携帯電話のGPSによる測位は、屋外ではGPS衛星による情報であることから、その位置の精度は数mから十数m程度である。一方で、屋内では、GPSの伝播を受信しにくい、または、困難であることから、携帯電話基地局の位置情報などをも併用して使用している。
【0049】
GIS解析部204は、電子メールの測位情報から通報送信装置1の緯度経度の位置情報を取得し、その緯度経度から通報送信装置1の現在の住所を割り出す。なお、住所の割り出しは、管轄省庁などが提供するデータベースを利用すればよい。
例えば、入手した位置情報を、東経139度24分16秒、北緯35度20分1秒とした場合には、「神奈川県茅ヶ崎市1丁目1番地」であると住所を割り出すことができる。GIS解析部204は、割り出した住所を消防署データベース205へと伝達する。
【0050】
消防署データベース205は、GIS解析部204から伝達された住所から、その住所の所轄消防署を検索する。全国のほとんどの消防署は市町村ごとに所轄を持っていることから、市町村名のみにより消防署を割り出すことが可能である。割り出された消防署名、消防署の連絡先、位置情報から割り出された住所の詳細などが、表示部206によって表示される。
【0051】
図7は、本実施の形態にかかる通報受信装置の表示例を示す図である。
図に例示するように、通報送信装置1を保持している利用者の情報206aや、通報送信装置1により緊急通報が発信された場所と住所、発信された住所を管轄する消防署の情報などが、表示部206により表示装置に表示される。また、後述するボタン206bや、ボタン206cなども表示される。
【0052】
コールセンターのオペレータは、図7に例示したような情報を閲覧しながら、電話機207にて、利用者と会話を行う。なお、会話を行うに際して、最初に必要となるのは、会話相手が誰であるかを示す利用者情報206aであることから、表示部206は、着信から遅れることなく利用者特定部202の情報を表示させることが好ましい。位置情報や所轄消防署の情報は、少しのタイムラグがあって表示されても問題がない。オペレータは、利用者の病歴などを参考にして、通報が非常事態であるか否かを判断する。
【0053】
オペレータは、利用者からの通報で、救急車の要請をしたほうがよいと判断した場合には、図7に例示した「消防に連絡」ボタン206bをクリックする。ボタン206bがクリックされると、回線接続部201は、通報送信装置1との通話を保留状態に切り替えた上で、消防署データベース205にて検索された所轄消防署の電話番号に自動的にダイヤルを行う。これにより、通報受信装置2の回線と、該当消防署との回線とが接続される。
【0054】
オペレータは、消防署の回線に接続されるまでの間、電話機207にて接続を待機し、接続された場合には、消防署に対して、利用者が救急車の出動を求めている旨を伝える。このように、本実施の形態では、ボタン206bをクリックするだけで、簡単に、かつ、素早く管轄消防署へと連絡することができる。
【0055】
ここで、従来の緊急通報装置では、通報送信装置1が発信された場所は利用者宅であることを想定するため、事前に所轄の消防署を把握することができ、コールセンターでは、第三者としての通報の許可を消防署から受けることができる。しかし、通報送信装置1が携帯端末など屋外に持ち出し可能なものである場合には、その発信場所を特定することができないために、事前に全国数百の消防署との間で非常時における連絡の許可の取り決めを交わす必要があり、現実的には非常に困難であった。
そこで、本願発明者は、通報送信装置1の利用者が直接消防署と会話することができれば、当事者が通報することになるので、救急車の要請が可能となるという知見に基づいて本発明を完成させた。
【0056】
さらに、オペレータは、通報送信装置1が発信された場所の所轄消防署と連絡を行う際には、当該消防署に対して、通報送信装置1を使用して救急を求めている利用者の回線と、消防署の回線とを接続してよいか否かを確認する。
【0057】
所轄消防署の了解を得た後、オペレータは、図7に例示した「消防と接続」ボタン206cをクリックする。ボタン206cがクリックされると、回線接続部201は、通報送信装置1との回線の保留を解除すると共に、通報送信装置1の回線と、通報受信装置2の回線と、消防署の回線と、を接続して、三者通話状態を形成する。これにより、通報送信装置1で会話をしている利用者と所轄消防署との間で直接会話を行うことができ、当事者間で、直接救急を要請することができる。
【0058】
ここで、三者通話状態が形成されることで、オペレータもこの会話に一緒に参加することができ、利用者が怪我などにより気が動転して上手く説明できないような状況においても、オペレータが会話を補助することが可能となるという効果も奏する。また、通報を発信している位置を利用者自身が直接消防署に対して伝えることができるため、利用者が直接消防署に電話する場合と同じ状態となり、かつ、GPSの誤差がある場合にも、より確実な位置の情報を消防署に対して伝えることが可能となる。
【0059】
なお、上述では、回線接続部201は、ボタン206bがクリックされると通報送信装置1との通話を保留状態に切り替えた上で、消防署データベース205にて検索された所轄消防署の電話番号に自動的にダイヤルを行う方法を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回線接続部201は、ボタン206bのクリックに応じて、会議電話のように1つの会話サークルを形成して、そこに通報送信装置1と通報受信装置2の2つの回線の通話を放り込み、所轄消防署の回線を更に接続した上で所轄消防署との通話も会話サークルに放り込んで、三者通話状態を形成することも可能である。または、通報送信装置1からの通報が通報受信装置2に受信された時点で会話サークルを形成して両者の通話を放り込み、ボタン206bのクリックに応じて所轄消防署の通話を更に放り込む、など、三者通話状態を形成できる手法であればこれに限定されるものではない。
【0060】
以上説明したように、本発明によれば、通報送信装置から利用者が緊急通報を行った場合に、通報受信装置では通報送信装置の位置情報を自動的に取得して、その位置情報の所轄消防署を検索することで、該当の所轄消防署へと簡単に連絡することができる。また、利用者と所轄消防署との間での音声通話を可能としたことで利用者から直接救急車の要請を行わせることが可能となり、通報受信装置側は第三者の立場にありながら、全国にある所轄消防署に対して事前に契約を結ぶことなく簡単に対応することができる。さらに、利用者が直接救急車の要請を行うことも可能となるため、出動を要請する際には利用者の位置に関してより確実な要請を行うことができる。
【0061】
上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。)。
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 通報送信装置、
2 通報受信装置、
3 通信回線、
11 ディスプレイ、
12 短縮ボタン、
13 オフフックボタン、
14 オンフックボタン、
15 数字ボタン列、
31 携帯電話基地局、
32a、32b 中継器、
33 セル、
41 通話部、
42 位置情報取得部、
43 通信部、
201 回線接続部、
202 利用者特定部、
203 顧客データベース、
204 GIS解析部、
205 消防署データベース、
206 表示部、
206a 利用者情報、
206b、206c ボタン、
207 電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者からの緊急通報を送信する通報送信装置と、通信回線を介して前記通報送信装置からの緊急通報を受信する通報受信装置と、を備えた緊急通報システムであって、
前記通報送信装置は、
前記通信回線を介して前記通報受信装置との間での音声通話を行う通話手段と、
現在の自己位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段により取得された自己の位置情報を、前記通信回線を介して前記通報受信装置に送信する通信手段と、を備え、
前記通報受信装置は、
住所と、当該住所を所轄エリアとする消防署の消防署情報と、が対応付けられて記憶された消防署データベースを参照して、前記通報送信装置から送信された前記位置情報が示す住所から当該住所に対応する所轄消防署を検索する消防署情報検索手段と、
前記通報送信装置との間の音声通話と、前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線の接続と、を行う回線接続手段と、を備える
ことを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
前記通信手段は、
前記利用者の識別情報と、前記位置情報取得手段により取得された自己の位置情報と、を、前記通信回線を介して前記通報受信装置に送信し、
前記通報受信装置は、
予め登録された利用者の識別情報が記憶された顧客データベースを参照して、前記通報送信装置から送信された前記利用者の識別情報が、前記顧客データベースに記憶されているか否かを判断する利用者特定手段を更に備え、
前記回線接続手段は、
前記通報送信装置から送信された前記利用者の識別情報が、前記顧客データベースに記憶されていると前記利用者特定手段により判断された場合には、前記通報送信装置との間での音声通話を許可する
ことを特徴する請求項1に記載の緊急通報システム。
【請求項3】
前記回線接続手段は、
前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間での音声通話を行う際に、前記通報送信装置と、前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署と、自身との間の音声通話回線を接続して、三者通話状態を形成する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の緊急通報システム。
【請求項4】
前記通報送信装置は携帯電話であり、
前記通信手段は、
前記位置情報取得手段により取得された自己の位置情報を、電子メールを用いて、前記通信回線を介して前記通報受信装置に送信し、
前記消防署情報検索手段は、
地理情報システムを用いて、前記携帯電話より送信された前記電子メールから前記携帯電話の現在位置に対応する住所を割り出し、前記消防署データベースを参照して、前記割り出した住所に対応する所轄消防署を検索する
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の緊急通報システム。
【請求項5】
前記通報送信装置との間の音声通話を保留状態として、前記通報受信装置自身と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線を接続して音声通話を可能とする第1のボタンと、
前記第1のボタン操作による前記保留状態を解除し、前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線を接続して音声通話を可能とする第2のボタンと、
を表示装置に表示する表示手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の緊急通報システム。
【請求項6】
前記利用者の識別情報は、
前記通報送信装置の通話回線の電話番号である
ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の緊急通報システム。
【請求項7】
前記通報送信装置は、
予め登録された通報受信装置に対して自動発信を行う操作ボタン更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の緊急通報システム。
【請求項8】
通信回線を介して通報送信装置からの緊急通報を受信する通報受信装置であって、
住所と、当該住所を所轄エリアとする消防署の消防署情報と、が対応付けられて記憶された消防署データベースを参照して、前記通報送信装置から送信される位置情報が示す住所から当該住所に対応する所轄消防署を検索する消防署情報検索手段と、
前記通報送信装置との間の音声通話と、前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線の接続と、を行う回線接続手段と、を備える
通報受信装置。
【請求項9】
利用者からの緊急通報を送信する通報送信装置と、通信回線を介して前記通報送信装置からの緊急通報を受信する通報受信装置と、を備えた緊急通報システムの制御方法であって、
前記通報送信装置において、
現在の自己位置情報を取得し、
取得した前記位置情報を、前記通信回線を介して前記通報受信装置に送信し、
前記通報受信装置において、
住所と、当該住所を所轄エリアとする消防署の消防署情報と、が対応付けられて記憶された消防署データベースを参照して、前記通報送信装置から送信された前記位置情報が示す住所から当該住所に対応する所轄消防署を検索し、
前記通信回線を介して前記通報送信装置との間の音声通話を行い、
前記通報送信装置と前記消防署情報検索手段により検索された所轄消防署との間の音声通話回線の接続を行う
ことを特徴とする緊急通報システムの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−205174(P2011−205174A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67637(P2010−67637)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】