説明

線条体固定方法、線条体固定構造及び線条体ホルダ

【課題】 本発明は、線条体の見栄えを損なわず、傷や破損などの損傷を防止することができる線条体固定方法、線条体固定構造及び線条体ホルダを提供する。
【解決手段】 所定の経路上に配索されるライトファイバ1と、ライトファイバ1の外表面の一部を露出させ他の部分を覆うようにして保持するファイバホルダ3と、ファイバホルダ3に対応する形状に形成され、ライトファイバ1の所定の配索経路を画成する係合溝14を有するパネル13とを備え、ライトファイバ1がファイバホルダ3を介し、ライトファイバ1の非固定側部分の外表面が外部露出した状態で係合溝14に固定される。ライトファイバ1は、一端から内部に送り込まれた光を均一に反射する線条体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の経路上に配索される線条体を、配索経路を画成する被取付体の係合溝に取り付けるための線条体固定方法、線条体固定構造及び線条体ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、所定の経路に沿って配索される線条体を被取付体に固定する線条体固定方法としては、特許文献1〜3に示されているものがある。特許文献1は、底壁と、この底壁の両側から立ち上がる一対の脚部を有する電線取付具を用いて、住宅などの柱や壁などに電線を取り付ける方法を開示している。特許文献2は、自動車の車体パネルの板面に、この板面から突出する複数の断面L字状の固定リブを用いてフラットワイヤハーネスの幅方向両側を押さえて固定する方法を開示している。特許文献3は、一対の挟着部材の間に電線を挟んだ状態で固定ボルトを締結して、電線を支持固定する方法を開示している。
【0003】
【特許文献1】実開平7−30533号公報
【特許文献2】特開2004−229485号公報
【特許文献3】特開2001−314028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、線条体の一例としてのライトファイバは、自動車のインストルメントパネルや室内灯を補助する照明として、また建物のイルミネーションとして用いられる発光体であり、従来の線条体固定方法とは異なる方法で固定されなければならない。
【0005】
すなわち、ライトファイバに従来の線条体固定方法を適用すると、ライトファイバが被取付体に部分的に固定されることとなり、固定部分ではライトファイバが部分的に隠されてしまい光むらを生じて見栄えが悪くなったり、非固定部分ではライトファイバが車両振動などにより動いてしまいライトファイバにがたつきを生じて硬質の外表面に傷が付いたり破損したりするという問題を生じる可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、線条体の見栄えを損なわず、傷や破損などの損傷を防止することができる線条体固定方法、線条体固定構造及び線条体ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明の請求項1の線条体固定方法の発明は、所定の経路上に配索される線条体を、前記経路を画成する被取付体の係合溝に固定するための線条体固定方法であって、前記係合溝に固定される前記線条体の固定側部分を長尺の線条体ホルダで保持することと、保持した状態で前記線条体ホルダを該線条体の非固定側部分の外表面が外部露出するようにして前記係合溝に押し込むことと、該係合溝の内面と前記線条体ホルダの外面との接触面に働く面圧力により、前記線条体ホルダを介して前記線条体を前記係合溝に固定すること、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の線条体固定方法において、前記線条体ホルダが弾性を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の線条体固定構造の発明は、所定の経路上に配索される線条体と、該線条体の外表面の一部を露出させ他の部分を覆うようにして保持する長尺の線条体ホルダと、該線条体ホルダに対応する形状に形成され、前記線条体の所定の配索経路を画成する係合溝を有する被取付体と、を備え、前記線条体が、前記線条体ホルダを介し、前記線条体の非固定側部分の外表面が外部露出した状態で前記係合溝に固定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3記載の線条体固定構造において、前記線条体ホルダが弾性を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は4記載の線条体固定構造において、前記線条体は、一端から内部に送り込まれた光を均一に反射するライトファイバであることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項3〜5の何れか1項に記載の線条体固定構造において、前記線条体ホルダは、前記線条体の軸方向に延在する底壁と、該底壁の両側から同一方向に立ち上がり、該底壁とで囲まれる空間を保持空間とする一対の対向壁とを一体に備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7の線条体ホルダの発明は、所定の経路上に配索される線条体を、被取付体上で前記経路を形成する係合溝に保持させるために用いられる線条体ホルダであって、
前記線条体の軸方向に延在する底壁と、該底壁の両側から同一方向に立ち上がり、該底壁とで囲まれる空間を保持空間とする一対の対向壁とを備え、前記線条体の外表面の一部を外部露出させ他の部分を覆うようにして前記線条体を前記一対の対向壁の根元側を支点とする弾性復元力により保持することを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7記載の線条体ホルダにおいて、弾性を有することを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項7又は8記載の線条体ホルダにおいて、少なくとも一つの前記対向壁の内面に、前記保持空間から前記線条体が抜け出すことを防止する内側可撓係止部が突設されたことを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項7〜9の何れか1項に記載の線条体ホルダにおいて、少なくとも一つの前記対向壁の外面に、前記係合溝から抜け出すことを防止する外側可撓係止部が外向きに突設されたことを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明は、請求項7〜10の何れか1項に記載の線条体ホルダにおいて、前記内側可撓係止部及び前記外側可撓係止部の少なくも一つが、保持される前記線条体の中心軸と平行になるように条設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願の請求項1又は3記載の発明によれば、線条体を被取付体の係合溝に固定することで、線条体の非固定側部分である外表面を係合溝の開口端をから一様に露出させることができ、線条体の美観を損なうことなく、線条体を被取付体に固定することができる。線条体の固定側部分は、線条体と係合溝との隙間に応じたサイズの線条体ホルダを用いることにより、線条体/線条体ホルダの接触面と線条体ホルダ/係合溝の接触面とに面圧力が働き、線条体を係合溝から抜け出さないように固定することができる。線条体は線条体ホルダによって保護され、線条体のがたつきなどによる傷や破損などの損傷を防止することができる。
【0019】
請求項2又は4記載の発明によれば、構造の振動吸収性が高まると共に、線条体/線条体ホルダと線条体ホルダ/係合溝とがそれぞれ広い面積で隙間なく密着する。したがって、線条体の保護性が高まり、線条体のがたつきなどによる傷や破損などの損傷を確実に防止することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、線条体が発光体としてのライトファイバであるから、ライトファイバの光が遮られず、照明の光むらやライトファイバの美観が損なわれることを防止することができる。ライトファイバは、外表面が無垢の石英やプラスチックであるが、弾性を有する線条体ホルダによって保持されるから、ライトファイバの外表面と係合溝の内面とが直接に接することなく、ライトファイバの傷や破損などの損傷を効果的に防止することができる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、線条体ホルダは、線条体の軸方向に延在する底壁と、底壁の両側から同一方向に立ち上がる一対の対向壁とを一体に備えているから、線条体の固定側部分の外表面全体を軸方向と円周方向の両方向で連続して拘束することができ、線条体を部分的に拘束して固定する場合と比較して、発光体として用いられる線条体の光むらなどをなくすことができると共に、線条体を安定して保持することができる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、線条体ホルダは、線条体の軸方向に延在する底壁と、底壁の両側から同一方向に立ち上がる一対の対向壁とを一体に備えているから、線条体の固定側部分の外表面全体を軸方向と円周方向の両方向で連続して拘束することができ、線条体の固定側部分の周囲を安定して保持することができる。また、線条体の非固定側部分の外表面をこの線条体ホルダから一様に露出させることができ、線条体の装飾性を高めることができる。線条体にライトファイバが用いられた場合は、光むらをなくし、ライトファイバを一様に発光させることができる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、線条体ホルダの振動吸収性が高まると共に、線条体/線条体ホルダと線条体ホルダ/係合溝とがそれぞれ広い面積で隙間なく密着する。したがって、線条体の保護性が高まり、線条体のがたつきなどによる傷や破損などの損傷を確実に防止することができる。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、対向壁の内面に内側可撓係止部が相手側の対向壁に向かって設けられているから、線条体は内側可撓係止部を撓ませながら開口端から保持空間へ挿入され、内側可撓係止部が元位置に弾性復帰することで開口端を閉じ、保持空間から線条体が不用意に抜け出すことを防止することができる。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、対向壁の外面で係合溝の内面と接触する部分に外側可撓係止部が外向きに設けられているから、線条体ホルダは外側可撓係止部を撓ませながら係合溝に押し込まれ、係合溝の内面には一対の対向壁の開方向の弾性復元力と外側可撓係止部の弾性復元力が同時作用して、両弾性復元力の相乗効果により線条体ホルダが係合溝から抜け出すことが確実に防止される。
【0026】
請求項11記載の発明によれば、内側可撓係止部が保持される線条体の中心軸と平行に条設された場合は、係止部が任意の間隔で部分的に複数設けられた場合と比較して、線条体を一様な明るさで発光させることができ、装飾性を向上させることができる。外側可撓係止部が保持される線条体の中心軸と平行に条設された場合は、線条体や線条体ホルダは、可撓係止部により軸方向に連続して係止されるから、線条体や線条体ホルダが外れることを確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の実施の形態の具体例を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る線条体固定構造の一実施形態を示す。本実施形態の線条体固定構造は、装飾用のライトファイバ(線条体)1と、ライトファイバ1に光を供給する光源(不図示)と、ライトファイバ1を保持するファイバホルダ(線条体ホルダ)3と、このファイバホルダ3を介してライトファイバ1を固定させるパネル(被取付体)13とから構成されている。ライトファイバ1とファイバホルダ3とからファイバアッセンブリ11が構成されている。
【0028】
ライトファイバ1は、一端から内部に送り込まれた光をファイバ1内で均一に繰り返し反射させ、自身が光源でコントロールされた明るさで発光する発光体であり、プラスチックを構成材料として長尺かつ大径に成形されたものである。プラスチック製のライトファイバ1は、可撓性に優れるため、取り扱いの自由度が高く、任意の方向に湾曲させることが可能である。このようなライトファイバ1は、一例として、コア材をアクリル系樹脂、クラッド材をフッ素系樹脂で構成することができる。ライトファイバ1の長さは任意であり、長尺物を一体成形したり、複数の短尺物を光コネクタを用いて相互接続して用いたりすることも可能である。
【0029】
ライトファイバ1は、太いもので直径10mm程度のものが安定して製造されるようになっている。現在では、さらに太いものでも製造可能になっている。ファイバ径の太いものは、相互接続する際の軸ずれを吸収することができる。また、光の接続損失が少なく、ファイバ端面の研磨加工も容易であり、細いものに比べて取扱性が良好である。
【0030】
なお、ライトファイバ1の構成材料に石英を適用することも可能であるが、プラスチックに比べると可撓性が低く、また大径化に難点があるため、車両への適用は制限されている。
【0031】
図示しない光源は、ライトファイバ1の一端から内部へ光を入れ、ライトファイバ1を任意の明るさで、かつ、任意の色で発光させるための光源装置である。例えば、出力100Wのハロゲンランプ光源装置などを用いることができる。
【0032】
ファイバホルダ1は、塩化ビニールなどの弾性を有する樹脂材料から一体成形されたものである。樹脂材料は弾性を有する軟質材料に制限するものではなく、ポリプロピレンやポリエチレンなどの弾性を有しない硬質材料とすることもできる。
【0033】
図2や図4にその断面形状が示されているように、ライトファイバ1の軸方向に延在する底壁5と、底壁5の両側から同一方向に立ち上がる一対の対向壁6,6とを有し、U字状断面が長手方向に連続する樋状に形成されている(図3参照)。底壁5と一対の対向壁6,6は、滑らかに繋がれており、ライトファイバ1の外表面2とファイバホルダ3の内面とが隙間無く接触するようになっている。底壁5と一対の対向壁6,6で囲まれる内側の空間は保持空間10となっている。ライトファイバ1の非固定側部分2bの外表面2は、ファイバホルダ3の開口端9から露出している。
【0034】
一対の対向壁6,6の高さ寸法は、一対の対向壁6,6の端部がライトファイバ1より突出しないように、ライトファイバ1の直径と同程度ないしはそれより低く形成されている。底壁5及び一対の対向壁6,6の肉厚は、ファイバホルダ3の弾性や振動吸収性、ライトファイバ1とパネル13の係合溝14との隙間を考慮して設定されている。
【0035】
一対の対向壁6,6の内面6aでその先端側には、相互に対向する位置でライトファイバ1がファイバ保持空間10から不用意に抜け出すのを防止する内爪(内側可撓係止部)7が、ライトファイバ1の中心軸と平行になるように条設されている。内爪7は、根元側が太く先端側が細くなっていて、根元側を支点として撓み可能になっている。内爪7の突き出し長さは任意であり、ライトファイバ1の外観を損なわず、ライトファイバ1を係止できる程度の長さに形成されている。内爪7の裏面はライトファイバ1に対する係止面7aとして作用し、表面は傾斜形成された案内面7bとして作用する。
【0036】
ライトファイバ1の固定側部分2aをファイバホルダ3に取り付ける際は、ライトファイバ1を案内面7bの幅方向に沿ってスライドさせ、内爪7を根元側を支点として内向きに撓ませ、一対の対向壁6,6を押し広げながら、ファイバホルダ3の開口端9から底壁5に当接するまでライトファイバ1を押し込んで取り付ける。図2には、ライトファイバ1の固定状態が示されている。
【0037】
ライトファイバ1の取付後は、内爪7が元位置に弾性復元し、内爪7の係止面7aが略水平になる。ライトファイバ1は、一対の対向壁6,6の弾性力によって狭持され、内爪7の係止面7aによって係止され、ファイバホルダ3からの抜けが防止される。また、ライトファイバ1と内爪7は長手方向の全長に渡って線接触し、ライトファイバ1と一対の対向壁6,6及び底壁5は長手方向の全長に渡って面接触するから、ライトファイバ1の振動吸収性が向上し、がたつきが防止される。このようにして、ライトファイバ1の外表面2の一部を露出させた状態の組立体として、パネル13の係合溝14に固定する前の中間製品としてのファイバアッセンブリ11が構成される。
【0038】
一対の対向壁6,6の外面6bでその根元側には、ファイバホルダ3がパネル13の係合溝14から抜けるのを防止する外爪(外側可撓係止部)8がライトファイバ1の中心軸と平行になるように条設されている。外爪8は、ファイバホルダ3の長手方向の全長に渡って連続形成されているため、外爪8とパネル13の係合溝14の内面14aは線接触し、係止力が高められるようになっている。
【0039】
外爪8は、根元側から先端側にかけてやや上向き(挿入反対方向)に傾斜して形成されている。また、外爪8の根元側には部分的に細い部分が形成されていて、外爪8は外向き(開き方向に)に撓み易くなっている。外爪8の先端は、係合溝14内面14aとの接触面積が大きくなるように、丸く形成されている。このため、パネル13の係合溝14から抜け出す方向でファイバホルダ3に力が作用すると、外爪8の先端と係合溝14の内面14aとの摩擦力によって外爪8が抜けを妨げる方向に変形する。したがって、係合溝14からのファイバホルダ3の不用意な抜けを確実に防止することができる。
【0040】
ライトファイバ1が固定される被取付体としてのパネル13は、ライトファイバ1が自動車に適用される場合には、図5に示されるように、主として車室内のインストルメントパネル15やドアパネル16などであり、ライトファイバ1が建物に適用される場合には、内壁や外壁に取り付けられるパネルボードなどである。上述したように、ライトファイバ1が可撓性を有し、任意の方向に湾曲させて用いることができるため、ライトファイバ1を固定するパネル13は、平面的なものに限られず、3次元的に湾曲したものであってもよい。
【0041】
パネル13には、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などの樹脂材料から成形されたものが用いられる。パネル13面には、ライトファイバ1の所定の配索経路を形成する係合溝14が凹設されている。係合溝14の断面形状はファイバホルダ3との関係によって決定されるものであり、本実施形態ではU字状に形成されている(図2参照)。溝深さは、ライトファイバ1が多少出っ張っても構わないが、本実施形態では係合溝14からライトファイバ1が出っ張らない寸法に形成されている。溝幅は、ライトファイバ1の直径とファイバホルダ3の厚みとの関係で決定される。すなわち、ファイバアッセンブリ11が係合溝14に固定された際に、係合溝14とファイバアッセンブリ11とが接触し、ライトファイバ1がファイバホルダ3によって狭持される寸法に設定されている。
【0042】
ライトファイバ1の非固定側部分2bの外表面2が露出するようにして、ライトファイバ1をファイバホルダ3を介してパネル13に取り付けると、取り付けの際に内向きに撓んだ一対の対向壁6,6が外向きに弾性復元しようとする弾性力が、係合溝14の内面14aとファイバホルダ3の外面6bとの接触面に面圧力として働き、ファイバホルダ3ないしはファイバアッセンブリ11が係合溝14に固定される。
【0043】
図5には、ライトファイバ1の自動車への適用例が示されている。ライトファイバ1は、車室内のインストルメントパネル15と、ドアパネル16と、コンソールボックス17に取り付けられている。図示しないが、ライトファイバ1を、カーテシーランプやマップランプやルームランプや外装用途として用いることも可能である。
【0044】
以上のように、本実施形態の線条体固定構造によれば、ライトファイバ1がファイバホルダ3を介してパネル13に固定されるから、ライトファイバ1の非固定側部分2bである外表面2をパネル13の係合溝14の開口端をから一様に露出させることができ、照明の光むらやライトファイバ1の美観を損なうことを防止することができる。ライトファイバ1がパネル13から出っ張らないから、ライトファイバ1と他部品との干渉を回避することができる。弾性を有するファイバホルダ3を用いることによって、ライトファイバ1をがたつきなく固定でき、ライトファイバ1の傷や破損などの損傷を防止することができる。
【0045】
また、本実施形態のファイバホルダ3は、樋状断面で長手方向に連続して形成されているから、ライトファイバ1の固定側部分2aの外表面2全体を軸方向と円周方向の両方向で連続して拘束することができると共に、ライトファイバ1の非固定側部分2bの外表面2をこのファイバホルダ3から一様に露出させることができる。ファイバホルダ3の一対の対向壁6,6の内面6aと外面6bとには、それぞれ内爪7と外爪8とが条設されているから、ファイバホルダ3からのライトファイバ1の抜けを確実に防止することができると共に、パネル13の係合溝14からのファイバホルダ3の抜けを防止することができる。
【0046】
また、ファイバホルダ3を用いたライトファイバ1の固定方法によれば、ライトファイバ1の無垢の硬質面をファイバホルダ3で保護した状態で、パネル13に固定することができるため、ライトファイバ1の取り付け時の傷や損傷を防止でき、取付性やメンテナンス性を向上することもできる。
【0047】
次に、図6〜図9は、本発明の概念に含まれる本実施形態の変形例をそれぞれ示したものである。図6には、内爪7のないファイバホルダ3Aを用いてライトファイバ1を保持した変形例が示されている。一対の対向壁6,6は、先端側が根元側より厚く形成されると共に、対向間隔が狭くなっている。パネル13に対するライトファイバ1の固定状態において、ライトファイバ1は一対の対向壁6,6から弾性力を受けて、抜け出さないように固定されている。その他の構成は、図1〜4の実施形態と同一である。
【0048】
図7には、外爪8のないファイバホルダ3Bを用いてライトファイバ1を保持した変形例が示されている。一対の対向壁6,6は、根元側が先端側より厚くなっており、膨出部18が膨出形成されている。パネル13の係合溝14のコーナには、膨出部18に係合するコーナ溝19が形成されている。パネル13に対するライトファイバ1の固定状態において、ファイバホルダ1の膨出部18がコーナ溝19に密着して係合することにより、係合溝14からのファイバホルダ3Bの抜けが防止されるようになっている。その他の構成は、図1〜4の実施形態と同一である。
【0049】
図8には、内爪7及び外爪8のないファイバホルダ3Cを用いてライトファイバ1を保持した変形例が示されている。この変形例は、図6と図7の変形例を合体した変形例である。その他の構成は、図1〜4の実施形態と同一である。
【0050】
図9には、外爪8に代えて底壁5の外面に雄型の係止突部20を軸方向に条設したファイバホルダ3Dを用いてライトファイバ1を保持した変形例が示されている。係止突部20の先端側は、根元側に比べて部分的に太くなっている。パネル13の係合溝14には、係止突部20に係合する雌型の溝21が条設されている。パネル13に対するライトファイバ1の固定状態において、係止突部20と溝21が係合して係合溝14からのファイバホルダ3Dの抜けが防止されるようになっている。その他の構成は、図1〜4の実施形態と同一である。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態及び変形例に制限するものではなく、他の形態で実施することもできる。例えば、本実施形態では、線条体にライトファイバ1が適用されているが、芯線の周囲が絶縁被覆で覆われている着色された被覆電線(光通信ケーブル、同軸ケーブル、電力ケーブル等を)適用することも可能である。また、パネル13に固定されるライトファイバ1は1本に限られず、複数本とすることも可能である。
【0052】
また、ファイバホルダ3からライトファイバ1が抜けるのを防止する内爪7や、パネル13の係合溝14からファイバホルダ3が抜けるのを防止する外爪8は、それぞれ一対の対向壁6,6に設けられているが、何れか一方の対向壁6に選択的に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る線条体固定構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す線条体固定構造の断面図である。
【図3】本発明に係る線条体ホルダの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す線条体ホルダの断面図である。
【図5】ライトファイバ(線条体)の自動車への適用例を示す概念図である。
【図6】線条体ホルダの第1の変形例を示し、(a)は固定前、(b)は固定後をそれぞれ示す断面図である。
【図7】線条体ホルダの第2の変形例を示し、(a)は固定前、(b)は固定後をそれぞれ示す断面図である。
【図8】線条体ホルダの第3の変形例を示し、(a)は固定前、(b)は固定後をそれぞれ示す断面図である。
【図9】線条体ホルダの第4の変形例を示し、(a)は固定前、(b)は固定後をそれぞれ示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ライトファイバ(線条体)
3,3A,3B,3C,3D ファイバホルダ(線条体ホルダ)
5 底壁
6 対向壁
7 内爪(内側可撓係止部)
8 外爪(外側可撓係止部)
11 ファイバアッセンブリ
13,13A,13B,13C,13D パネル(被取付体)
14,14A,14B,14C,14D 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の経路上に配索される線条体を、前記経路を画成する被取付体の係合溝に固定するための線条体固定方法であって、
前記係合溝に固定される前記線条体の固定側部分を長尺の線条体ホルダで保持することと、
保持した状態で前記線条体ホルダを該線条体の非固定側部分の外表面が外部露出するようにして前記係合溝に押し込むことと、
該係合溝の内面と前記線条体ホルダの外面との接触面に働く面圧力により、前記線条体ホルダを介して前記線条体を前記係合溝に固定すること、
を備える線条体固定方法。
【請求項2】
前記線条体ホルダが弾性を有する請求項1記載の線条体固定方法。
【請求項3】
所定の経路上に配索される線条体と、
該線条体の外表面の一部を露出させ他の部分を覆うようにして保持する長尺の線条体ホルダと、
該線条体ホルダに対応する形状に形成され、前記線条体の所定の配索経路を画成する係合溝を有する被取付体と、を備え、
前記線条体が、前記線条体ホルダを介し、前記線条体の非固定側部分の外表面が外部露出した状態で前記係合溝に固定された線条体固定構造。
【請求項4】
前記線条体ホルダが弾性を有する請求項3記載の線条体固定構造。
【請求項5】
前記線条体は、一端から内部に送り込まれた光を均一に反射するライトファイバである請求項3又は4記載の線条体固定構造。
【請求項6】
前記線条体ホルダは、前記線条体の軸方向に延在する底壁と、該底壁の両側から同一方向に立ち上がり、該底壁とで囲まれる空間を保持空間とする一対の対向壁とを一体に備える請求項3〜5の何れか1項に記載の線条体固定構造。
【請求項7】
所定の経路上に配索される線条体を、被取付体上で前記経路を形成する係合溝に保持させるために用いられる線条体ホルダであって、
前記線条体の軸方向に延在する底壁と、該底壁の両側から同一方向に立ち上がり、該底壁とで囲まれる空間を保持空間とする一対の対向壁とを備え、前記線条体の外表面の一部を外部露出させ他の部分を覆うようにして前記線条体を前記一対の対向壁の根元側を支点とする弾性復元力により保持する線条体ホルダ。
【請求項8】
弾性を有する請求項7記載の線条体ホルダ。
【請求項9】
少なくとも一つの前記対向壁の内面に、前記保持空間から前記線条体が抜け出すことを防止する内側可撓係止部が突設された請求項7又は8記載の線条体ホルダ。
【請求項10】
少なくとも一つの前記対向壁の外面に、前記係合溝から抜け出すことを防止する外側可撓係止部が外向きに突設されたことを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の線条体ホルダ。
【請求項11】
前記内側可撓係止部及び前記外側可撓係止部の少なくも一つが、保持される前記線条体の中心軸と平行になるように条設されたことを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の線条体ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−113639(P2007−113639A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304330(P2005−304330)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】